説明

ダブルスポット法による固さを与えるための芯材用の架橋可能なベース層

平面形成体をコーティングするためおよび/または貼り合わせるためのダブルスポットを有する芯材において、上側スポットがアミン末端基を有する架橋性のコポリアミドを基礎に存在し、下側スポットがOH末端基を有するポリエステルからなり、付加的に架橋剤ならびにアクリル分散液および/またはPUR分散液を有することを特徴とする、平面形成体をコーティングするためおよび/または貼り合わせるためのダブルスポットを有する芯材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダブルスポットコーティングの際の跳ね返り遮断部(Rueckschlagsperre)としてのベーススポットを製造するための、100〜150℃の融点を有する、テレフタル酸、イソフタル酸およびブタンジオールまたは12モル%まで、特に6〜10モル%の少量の別のジオール、例えばヘキサンジオールまたはポリエチレングリコールまたはPTHFとの組合せ物のブタンジオールを基礎とする市販のOH基を末端に有するコポリエステルと、粉末状化された遊離イソシアネートまたはブロック化イソシアネートとからなる粉末状混合物、水性エピクロロヒドリンまたは液状または固体のエポキシドを基礎とする架橋可能な溶融接着剤コーティングに関する。上側スポットは、アミン調整されたコポリアミドからなり、下側スポットとの良好な結合を保証する。殊に、本発明は、服飾産業、特に上に着る衣服のための固さを与えることができる芯材を網目状にコーティングするための溶融接着剤材料に関する。
【0002】
減少された洗濯安定性および清浄化安定性に関連し、かつ弱くなった付着力に関連した問題を解決するために、改善された溶融接着剤材料が開発され、しかも改善されたコーティング技術が開発された。デュオスポットコーティングまたはダブルスポットコーティングは、例えばドイツ連邦共和国特許出願公告第2214236号明細書、ドイツ連邦共和国特許出願公告第2231723号明細書、ドイツ連邦共和国特許出願公告第2536911号明細書およびドイツ連邦共和国特許出願公告第3230579号明細書中に記載されている。
【0003】
コーティング基材は、微細なタイター(Titer)の単繊維ないしミクロフィブリルを有する微細な糸ならびに合成糸、例えば捲縮嵩高アクリル糸またはポリエステル糸が使用されることによって改善された。元来使用される織物は、十分にウェブ編織フリースおよび編織フリースによって代替されており、この場合最後に記載された材料は、フリースと編織製品とからなる組合せ物である。この新規の組合せ物は、極めて柔軟で、しかも極めて開放的な構造を生じるが、しかし、特に溶融接着剤材料の跳ね返りまたは浸透に関連してコーティング方法および溶融接着剤材料について高度な要件が課されている。
【0004】
費用および品質の根拠は、芯材1m当たりにコーティングされるコーティング量が明らかに減少されたことに帰因した。早期のコーティング量は、10〜20g/mが普通であったけれども、現在では、このコーティング量は、7〜12g/mである。
【0005】
前記の少量にも拘わらず、十分な付着力および安定性は、保証されていなければならず、即ちこの場合には、固有の接着がもはや提供されないので、溶融接着剤は、芯材中に吸収されてはならない。
【0006】
従って、本発明は、減少されたコーティング量の場合に、高い付着強さ、ベース層への上側スポットの良好な結合ならびに良好な洗濯安定性および清浄化安定性を有する効果的な跳ね返り遮断部を見い出すという課題に基づくものであった。
【0007】
一連の跳ね返り遮断部は、公知である。高度に溶融される酸調整されたコポリアミドおよびポリエチレンまたは高度に粘稠な熱可塑性ポリウレタン粉末を基礎とする架橋性のアクリレート分散液またはポリウレタン分散液または粉末充填されたペースト。
【0008】
全ての系は、コーティングの際には、多少とも大きな欠点、上側スポットへの結合または洗濯物に対する安定性を有する。更に、分散液は、粗い毛髪状の芯材上に使用することは不可能である。
【0009】
自己架橋性のアクリレート分散液またはポリウレタン分散液をコーティングする場合には、既にコーティング中に部分架橋を生じ、このことは、ステンシル被覆、ひいてはステンシル細孔の閉塞をまねく。被覆の費用のかかる清浄化は、必要である。生産に不可避の停止状態が起きた場合には、多大な困難が生じる。更に、ベース層へ上側スポットが結合することは、問題である。酸調整されたポリアミド、ポリエチレンおよびポリウレタンを基礎とする高粘稠な粉末充填された系は、必要とされる跳ね返りの安全性を満たさない。
【0010】
ドイツ連邦共和国特許第19808809号明細書中には、遊離イソシアネートが水に対して安定化されていることが記載されており、この場合遊離イソシアネートは、不活性のポリエチレンマトリックス中に押し出され、引続き再び微粉砕される。更に、ベーススポットのための安定した架橋性系を得ることに成功した。前記系の欠点は、水安定性のイソシアネートの費用のかかる、したがって高価な製造にあり、さらにポリエチレンマトリックスは、拡散速度を妨害し、このことは、反応速度の減少を意味する。
【0011】
1つの好ましい実施態様において、OH末端基を有する市販のコポリエステルは、不動態化された三量体ジイソシアネート(ドイツ連邦共和国特許出願公開第3517333号明細書A1の記載と同様)と混合され、回転スクリーン印刷において水性ペーストとして加工される。
【0012】
ところで、意外なことに、極めて反応性の系ならびにその製造を特許請求の範囲の記載により、約100〜130℃の範囲内の活性化温度および水安定性で行なうことに成功した。平面形成体をコーティングするためおよび/または貼り合わせるための本発明による架橋性溶融接着剤材料は、溶融接着剤材料中に存在する反応性成分が最初に溶融液中で架橋下に反応することを示す。
【0013】
ポリイソシアネート、殊に固体のポリイソシアネートは、イソシアネート反応性の媒体、例えばジアミン(ヘキサメチレンジアミン)と一緒に分散され、それによって表面的に包囲する媒体に対して安定化される。この失活は、イソシアネート粒子が表面上でイソシアネートの全含量に対して、化学量論的に不足量の失活剤を用いて処理されたことによって達成される。不動態化された含量は、0.01〜10%、有利に0.1〜5%の範囲内にある。
【0014】
しかし、別の架橋剤、例えば水性エピクロロヒドリンまたはエポキシドが使用されてもよい。約100〜130℃で炉中での引続く乾燥の場合に、ダブルスポットのための架橋された跳ね返り遮断部を得ることができるようにするために、架橋は、数秒間で導入される。それによって、キャップされたイソシアネート(キャッピング剤としてのカプロラクタムまたはオキシムまたは二量体化によって得ることができる)が高すぎる活性化温度を必要とし、さらに定着の際に異質物質を全く遊離しないという、イソシアネート含有の系の通常の問題は、回避させることができる。別の問題は、ブロック化されていないイソシアネートが既にペースト中で水と反応することであった。
【0015】
2個を上廻る遊離NCO基および100〜130℃の溶融範囲を有する固体のイソシアネートは、適している(例えば、Degussa AG社のVestanat T 1890)。使用されたポリエステルに対してポリイソシアネートの含量は、3〜20質量%、特に5〜10質量%の範囲内にある。
【0016】
また、架橋成分としては、90〜130℃、特に100〜120℃の溶融範囲、2000〜6000、特に2500〜3000の分子量および1分子当たり2個を上廻るエポキシ基を有するエポキシドが適当であり、例として、ビスフェノールAが挙げられる。
【0017】
意外なことに、使用されたオーミック接触上側スポット材料上への下側スポットの特に良好な結合が示された。上側スポットとしてのアミン調整されたコポリアミドは、下側スポット用ペーストの反応性成分と反応し、2個のスポットの境界層との最適な結合を形成させ、この場合この結合は、通常の酸調整されたポリアミドでは不可能である。ベーススポットおよび上側スポットに適した製品は、低粘稠で低い溶融温度の型である。融点は、90〜150℃、有利に115〜130℃であり、この場合溶解粘度ηrelは、1.2〜1.7、特に1.25〜1.5の範囲内にある。それによって、境界層は、架橋剤含有ペーストと反応し、2個のスポットの極めて安定した結合を得る。ベーススポットのためのコーティング量は、1.5〜5g/m、有利に2〜4g/mであり、上側スポットのためのコーティング量は、使用に応じて4〜8g/m、特に5〜7g/mである。ベーススポットは、ペーストとして網目状にコーティングされてよい。使用されるコポリアミドは、C〜C15の鎖長を有するジカルボン酸、Clおよびジアミンを基礎としている(ピペラジン、ヘキサメチレンジアミン、MPD、IPDC+C10)。
【0018】
ベースペースト中のポリエステルの含量(乾燥物質に対して)は、1〜20質量%、有利に5〜15質量%の範囲内にある。
【0019】
アクリレート分散液および/またはポリウレタン分散液としては、全ての通常の型が使用されてよい。自己架橋性のブチルアクリレート、例えばDegussa AG社のPLEXTOL BV 411は、特に好適である。固体に対するポリエステル:アクリレート(PUR)の比1:5〜1:20、有利に1:7〜1:15。
【0020】
実施例:
OH末端基を有するコポリエステル(VESTAMELT 4680-P1)とDegussa社の三量体化されたポリイソシアネート(VESTAGON T 1890)とからなる粉末混合物をジアミン(例えば、ヘキサメチレンジアミン)および通常の分散剤と水中で分散させ、不動態化させた(NCO基に対して等モル不足量のジアミン1:50)。通常のアクリレート分散液、例えばPLEXTOL BV 441および濃稠化剤、例えばStockhausen社のMirox TXをドイツ連邦共和国特許出願公告第2007971号明細書、ドイツ連邦共和国特許出願公告第2229308号明細書、ドイツ連邦共和国特許出願公告第2407505号明細書およびドイツ連邦共和国特許出願公告第2507504号明細書の記載と同様に加工し、印刷可能なペーストに変え、回転スクリーン印刷装置を用いてCP 66のステンシルを用いて捲縮嵩高糸を有するポリエステルニット25g上に印刷した。コーティング量は、3g/mであった。なお湿った網目状スポット上にVESTAMELT X 1027-P816を散布し、過剰量を吸い取り、乾燥炉中で130℃で乾燥させ、焼結させた。上側スポット(VESTAMELT X 1027-P816)は、5g/mの被覆を有し、したがって全体量は、8g/mであった。
【0021】
ベーススポットのペースト処方
水500g、
Mirox TX 10g(ポリアクリル酸誘導体)、
Intrasol 12/18/5 20g(エトキシル化脂肪アルコール)、
PLEXTOL BV 441 400g、
VESTAMELT 4680-P1 20g、
VESTANATT 1890 3g、
ヘキサメチレンジアミン0.15g。
【0022】
結果:
前記芯材の5cm幅のストリップを木綿−ポリエステル混紡からなるシリコーン処理されたブラウス材料に対して127℃の接合温度、10秒間および4Nの線形圧力で定着させ、引続きこの複合体を60℃の洗濯物の下方に入れた。初期付着力:13N/5cm、
60℃の洗濯物:10N/5cm、
再固定化:0.1N/10cm。
【0023】
比較例1:(公知技術水準)
同様の芯材上に酸調整されたポリアミドおよびポリエチレンを基礎とするペースト系をコーティングし、同様の上側スポット材料(VESTAMELT X 1027-PS 16)を散布し、乾燥させ、焼結させた。等量のベーススポットおよび上側スポットをコーティングした。
【0024】
ペースト処方:
水1500g、
Mirox TX 35g、
Intrasol 12/18/5 40g、
Schaettifix 1820 400g(ND−ポリエチレン)、
VESTAMELT 250-P1 200g。
【0025】
Schaettifix 1829は、128〜130℃の融点および20g/10分間のMFR値を有する低圧ポリエチレンである。
【0026】
結果:
初期付着力:9N/5cm、
60℃の洗濯物:5N/5cm、
再固定化:0.9N/10cm。
【0027】
比較例2:
同様の芯材上に酸調整されたポリアミドおよびアクリレート分散液を基礎とするペースト系をコーティングし、同様の上側スポット材料(VESTAMELT X 1027-P816)を散布し、乾燥させ、焼結させた。等量のベーススポットおよび上側スポットをコーティングした。
【0028】
ペースト処方:
水500g、
Mirox TX 10g、
Intrasol 12/18/5 20g、
PLEXTOLBF440 400g、
初期付着力:6N/5cm、
60℃の洗濯物:3N/5cm、
再固定化:1.9N/10cm。
【0029】
前記の新規技術の利点は、既に乾燥条件で下側スポットが架橋し、なお上側スポットの溶融中にアミン末端化のために下側スポットと架橋し、それによって最適な結合を得ることができることにある。
コーティング後に下側スポットが強力に分子量の点で形成されているので、この下側スポットは、もはやニット中に降下しない。引続く定着の際に、上側スポットの低粘稠なポリアミドは、定着すべき上側物質の流れを強制的に進行させる。それというのも、この低粘稠なポリアミドは、下向きに流れ去ることができず、それによって既に最少の溶融接着剤量で極めて高い付着力が達成されるからである。特に洗濯物の場合にこれまで系の弱点であった、上側スポットとベーススポットとの間の分離層は、これまでの公知の系の場合ほどには、強く加水分解により攻撃されえず、したがって本質的によりいっそう高い安定性を示す。
【0030】
使用された製品:
VESTAMELT 4680-P1は、120℃の融点を有する、テレフタル酸とイソフタル酸とブタンジオールとポリグリコールとを基礎とするDegussa AG社のコポリエステルである。VESTAMELT X1027-P816は、アミン末端基100〜400m Val/kg、有利に250〜350m Val/kg、融点120℃を有するDegussa AG社の第三級コポリアミドである。
【0031】
VESTANAT T 1890/100は、3〜4個の官能基を有するポリイソシアネートであり、融点は、100〜115℃である。これは、Degussa AG社の製品である。
【0032】
PLEXTOLBV411 PLEXTOL B V 411は、自己架橋性のアクリルポリマーの水性分散液である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダブルスポット法による平面形成体をコーティングするためおよび/または貼り合わせるための溶融接着剤材料において、
上側スポットがアミン末端基を有する架橋性のコポリアミドを基礎に存在し、下側スポットがOH末端基を有するポリエステルからなり、付加的に架橋剤ならびにアクリル分散液および/またはPUR分散液を含有することを特徴とする、溶融接着剤材料。
【請求項2】
上側スポットがアミン調整されたコポリアミドである、請求項1記載の溶融接着剤材料。
【請求項3】
上側スポットが90〜150℃の溶融範囲および1.2〜1.7の範囲内の溶解粘度ηrelを有するアミン調整されたコポリアミド粉末である、請求項1または2記載の溶融接着剤材料。
【請求項4】
下側スポットがOH末端基を有するコポリエステルである、請求項1から3までのいずれか1項に記載の溶融接着剤材料。
【請求項5】
下側スポットがアクリレート分散液および/またはポリウレタン分散液を含有する、請求項1記載の溶融接着剤材料。
【請求項6】
架橋成分がイソシアネートの群に由来し、1分子当たり2個を上廻る反応性基を有する、請求項1から5までのいずれか1項に記載の溶融接着剤材料。
【請求項7】
イソシアネートが100〜130℃の溶融範囲を有する、請求項1から6までのいずれか1項に記載の溶融接着剤材料。
【請求項8】
架橋成分として90〜130℃の溶融範囲、2000〜6000の分子量範囲および1分子当たり2個を上廻るエポキシ基を有するエポキシドを使用する、請求項1から7までのいずれか1項に記載の溶融接着剤材料。
【請求項9】
架橋成分が粉末状の遊離イソシアネートまたはブロック化イソシアネートである、請求項1から8までのいずれか1項に記載の溶融接着剤材料。
【請求項10】
架橋成分がエピクロロヒドリンである、請求項1から9までのいずれか1項に記載の溶融接着剤材料。
【請求項11】
ダブルスポット技術のためのベーススポットとしての反応性のOH末端基を有するコポリエステルが跳ね返り遮断部として使用されている、請求項1から10までのいずれか1項に記載の溶融接着剤材料。
【請求項12】
ベーススポットが不動態化されたイソシアネートおよびOH末端基を有するコポリエステルからなり、ペーストとして網目状にコーティングされている、請求項1から11までのいずれか1項に記載の溶融接着剤材料。
【請求項13】
架橋反応が触媒によって促進されている、請求項1から12までのいずれか1項に記載の溶融接着剤材料。
【請求項14】
コポリエステルがテレフタル酸および/またはイソフタル酸および/またはアジピン酸および/またはドデカン二酸ならびにブタンジオールおよび/またはヘキサンジオールおよび/またはポリグリコールおよび/またはPTHFを基礎に存在している、請求項1から13までのいずれか1項に記載の溶融接着剤材料。
【請求項15】
平面形成体をコーティングするためおよび/または貼り合わせるための請求項1から14までのいずれか1項に記載の溶融接着剤材料の使用。
【請求項16】
衣服のための芯材において、この芯材に請求項1から15までのいずれか1項に記載の溶融接着剤材料が備えられていることを特徴とする、衣服のための芯材。

【公表番号】特表2007−508463(P2007−508463A)
【公表日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−530232(P2006−530232)
【出願日】平成16年8月16日(2004.8.16)
【国際出願番号】PCT/EP2004/051806
【国際公開番号】WO2005/035614
【国際公開日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(501073862)デグサ アクチエンゲゼルシャフト (837)
【氏名又は名称原語表記】Degussa AG
【住所又は居所原語表記】Bennigsenplatz 1, D−40474 Duesseldorf, Germany
【Fターム(参考)】