説明

ダンパ連結構造

【課題】制震ダンパと建築構造体との連結部に球面軸受を用いなくとも球面軸受を用いた場合と同様に動作でき、かつそのコストアップを防止することができるダンパ連結構造を提供する。
【解決手段】建築構造体62,64と制震ダンパ32の端部との間に連結されて両者間に力を伝えるダンパ連結構造54,56において、建築構造体と制震ダンパの端部との間に設けられ無端状に形成された無端部材72と、建築構造体と無端部材との間に設けられ、建築構造体と制震ダンパの端部との間を第1の軸線の回りに相対回転可能にする第1回転手段80,82と、無端部材と制震ダンパの端部との間に設けられ、無端部材と制震ダンパの端部との間を、第1の軸線と直交する第2の軸線の回りに相対回転可能にする第2回転手段86,88とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば油圧式制震ダンパの連結構造に関し、特にそのダンパの両端部を建築構造体に連結するためのダンパ連結構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のダンパ連結構造としては、例えば図11から図13に示すようなものがある(特許文献1参照)。図11に示す従来の油圧式制震ダンパ50は、その油圧シリンダ32の一端部に連結部材52の一端部が連結されており、この連結部材52の他端部は図12に示すように、球面軸受60を介して建築構造体の一方のブラケット57に連結されている。
【0003】
他方、図11に示すように、油圧シリンダ32に対して上記連結部材52と反対側のピストンロッド34の先端部は、球面軸受60を介して建築構造体の他方のブラケット58に連結されている。
【0004】
球面軸受60は、図13に示すように、建築構造体側のブラケット57と、前記連結部材52の先端部に固定されて上記ブラケット57を挟むようにその両側に配置された一対の軸支持部材61に両端部が支持された、軸部材63との間に設けられて、軸支持部材61とブラケット57との間の回動方向が所定の範囲内で自在となるようにそれらを連結している。
【0005】
すなわち球面軸受60は、その軸孔が軸部材63に嵌合しその外周面に凸球状面が形成された軸受内輪部材65と、外周部が外輪支持部材67に支持され内周面に上記軸受内輪部材65の凸球状面と摺接可能な凹球状面が形成された軸受外輪部材69により構成されている。
【0006】
前記建築構造体において、上記のような油圧式制震ダンパ50にその軸線方向に地震等の外力が加わった場合、その油圧シリンダ32と、ピストンロッド34に連結するピストンとの間には相対移動が発生し、シリンダ32内のピストンの表裏いずれかの面には移動方向とは反対の方向に減衰力が加わる。このためピストンには、その表裏両面側の一対の油圧室間の圧力差に比例した減衰力が加わることとなり、この減衰力により油圧式制震ダンパ50は制震動作を発揮することができる。
【特許文献1】特開2004−108577号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような従来のダンパ連結構造にあっては、図13に示すように、軸部材63と軸受内輪部材65との接触部C1、軸受内輪部材65と軸受外輪部材69との接触部C2、軸受外輪部材69と外輪支持部材67との接触部C3、さらには軸部材63と軸支持部材61との接触部C4にガタがあり、これらのガタが累積してさらに大きなガタとして作用する。
【0008】
上記球面軸受60のように、複数箇所のガタが累積されて大きなガタとして作用するようになると、油圧式制震ダンパ50に往復方向に加わる外力の方向が逆方向に切換ったときに、そのガタ分だけブラケット57と軸支持部材61間が相対変位する当初の間は油圧式制震ダンパ50には減衰力が全く生じないことになる。
【0009】
このため、風揺れのような、上記累積されるガタと同じ位の振幅の小さな外力が加わったときは油圧式制震ダンパ50には減衰力が全く生じないので、人に不快な揺れを体感させることが防止できないと共に、地震のような振幅が大きな外力が加わったときはそのエネルギー吸収量が低下して、油圧式制震ダンパ50が外力を抑える能力が、上記ガタがない場合よりも低下してしまうという問題があった。
【0010】
また、上記従来のダンパ連結構造にあっては、図13に示すように、球面を有する部材、すなわち軸受内輪部材65や軸受外輪部材69を用いているので、その部材に球面を形成するための複雑で高精度の加工を施さなければならないため、ダンパ連結構造のコストアップを招くという問題があった。
【0011】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みて、制震ダンパと建築構造体との連結部において球面軸受と同様の動作が可能であり、かつ球面軸受より低価格となるダンパ連結構造を提供することを課題とするものである。
【0012】
また本発明は、上記問題点に鑑みて、制震ダンパと建築構造体との連結部において球面軸受と同様の動作が可能であり、かつ球面軸受より低価格となる他、各構成部材間のガタを確実に除去することができるダンパ連結構造を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために本発明は、
建築構造体と制震ダンパの端部との間に連結されて両者間に力を伝えるダンパ連結構造において、
前記建築構造体と前記制震ダンパの端部との間に設けられ無端状に形成された無端部材と、
前記建築構造体と前記無端部材との間に設けられ、前記建築構造体と前記制震ダンパの端部との間を第1の軸線の回りに相対回転可能にする第1回転手段と、
前記無端部材と前記制震ダンパの端部との間に設けられ、前記無端部材と前記制震ダンパの端部との間を、前記第1の軸線と直交する第2の軸線の回りに相対回転可能にする第2回転手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明のダンパ連結構造において、
前記第1回転手段は、前記建築構造体に設けられる部材と前記無端部材に共に嵌合し前記第1の軸線を軸線とする第1のピンを有し、
前記第2回転手段は、前記制震ダンパの端部又はこれに設けられる部材と前記無端部材に共に嵌合し前記第2の軸線を軸線とする第2のピンを有することを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明のダンパ連結構造は、前記第1、第2のピンの前記無端部材の中心から遠い方の外側端部にテーパが形成され、この外側端部が断面がくさび上のリング部材を介して周囲の部材に嵌合することを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明のダンパ連結構造は、前記第1、第2のピンの前記外側端部と、前記無端部材の中心に近い内側端部との間に、前記外側端部の方が径が大きくなるような段部が形成されたことを特徴とするものである。
【0017】
また、本発明のダンパ連結構造は、前記第1、第2のピンの前記外側端部が嵌合する部材にあけられた孔は、前記外側端部の径より大きな径を有することを特徴とするものである。
【0018】
また、本発明のダンパ連結構造は、前記第1、第2のピンの前記外側端部に、第1、第2のピンの前記無端部材の中心に近い内側端部の径と同じ径から、外側に向かって径が小さくなるようなテーパが形成されたことを特徴とするものである。
【0019】
また、本発明のダンパ連結構造は、前記第1、第2のピンの内側端部が嵌合する孔に圧入され、前記外側端部のテーパと前記断面がくさび状のリング部材が相対回転可能となっていることを特徴とするものである。
【0020】
また、本発明のダンパ連結構造は、前記断面がくさび状のリング部材が含油金属材料により形成されたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0021】
このような本発明によれば、
建築構造体と制震ダンパの端部との間に連結されて両者間に力を伝えるダンパ連結構造において、
前記建築構造体と前記制震ダンパの端部との間に設けられ無端状に形成された無端部材と、
前記建築構造体と前記無端部材との間に設けられ、前記建築構造体と前記制震ダンパの端部との間を第1の軸線の回りに相対回転可能にする第1回転手段と、
前記無端部材と前記制震ダンパの端部との間に設けられ、前記無端部材と前記制震ダンパの端部との間を、前記第1の軸線と直交する第2の軸線の回りに相対回転可能にする第2回転手段とを備えたことにより、
ダンパ連結構造は、制震ダンパと建築構造体との連結部において球面軸受と同様の動作が可能であり、かつ球面軸受より低価格となる。
【0022】
また、本発明のダンパ連結構造は、
前記第1回転手段は、前記建築構造体に設けられる部材と前記無端部材に共に嵌合し前記第1の軸線を軸線とする第1のピンを有し、
前記第2回転手段は、前記制震ダンパの端部又はこれに設けられる部材と前記無端部材に共に嵌合し前記第2の軸線を軸線とする第2のピンを有することにより、
制震ダンパと建築構造体との連結部において球面軸受と同様の動作が可能であり、かつ球面軸受より低価格となる。
【0023】
また、本発明のダンパ連結構造は、前記第1、第2のピンの前記無端部材の中心から遠い方の外側端部にテーパが形成され、この外側端部が断面がくさび上のリング部材を介して周囲の部材に嵌合することにより、各構成部材間のガタを確実に除去することができる。
【0024】
また、本発明のダンパ連結構造は、前記第1、第2のピンの前記外側端部と、前記無端部材の中心に近い内側端部との間に、前記外側端部の方が径が大きくなるような段部が形成されたことにより、ピンの長さ方向位置を容易に決めることができるため、組立性を向上させることができる。
【0025】
また、本発明のダンパ連結構造は、前記第1、第2のピンの前記外側端部が嵌合する部材にあけられた孔は、前記外側端部の径より大きな径を有することにより、ピンを容易に挿入することができるため、組立性を向上させることができる。
【0026】
また、本発明のダンパ連結構造は、前記第1、第2のピンの前記外側端部に、第1、第2のピンの前記無端部材の中心に近い内側端部の径と同じ径から、外側に向かって径が小さくなるようなテーパが形成されたことにより、各構成部材間のガタを確実に除去することができる。
【0027】
また、本発明のダンパ連結構造は、前記第1、第2のピンの内側端部が嵌合する孔に圧入され、前記外側端部のテーパと前記断面がくさび状のリング部材が相対回転可能となっていることにより、各構成部材間のガタを確実に除去することができる。
【0028】
また、本発明のダンパ連結構造は、前記断面がくさび状のリング部材が含油金属材料により形成されたことにより、摺動性の向上と防錆効果が得られるため、回転動作がスムーズとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明に係るダンパ連結構造を実施するための最良の形態について、図面に基づいて具体的に説明する。
図1から図9は、本発明の第1の実施の形態に係るダンパ連結構造について説明するために参照する図である。従来のダンパ連結構造における部材と同様の部材には同じ符号を用いて説明するものとする。
【0030】
図1に示すように、本実施の形態に係るダンパ連結構造は、油圧シリンダ32(制震ダンパ)及びその一端部に連結されている連結部材52が、全体としてブレース(筋交い、diagonal brace)を構成し、そのブレースが油圧シリンダ32により制震機能を有していて、それを建築構造体に連結するために用いられるものである。
【0031】
本実施の形態は、その油圧シリンダ32の一端部に連結部材52の一端部が連結されており、この連結部材52の他端部に設けられた連結部53は、連結構造54を介して柱や梁などの建築構造体に固定された固定フレーム62に連結されている。
【0032】
他方、油圧シリンダ32において上記連結部材52と反対側の端部から外部へ軸線方向に突出するピストンロッド34の先端部は、連結構造56を介して柱や梁などの建築構造体に固定された固定フレーム64に連結されている。
【0033】
図2(a)に示すように、連結部材52の連結部53に連結される連結構造54は、回転軸を支持する軸支持部材66を介して、図1に示す固定フレーム62に連結されるようになっている。
【0034】
また、図2(b)に示すように、油圧シリンダ32のピストンロッド34に連結される連結構造56は、回転軸を支持する軸支持部材68を介して、図1に示す固定フレーム64に連結されるようになっている。
【0035】
図2(a)に示す軸支持部材66は、図3に示すように、固定フレーム62に接触して固定される底板部66aを有し、その底板部66aの両端部から一対の立上り部66b,66bが立ち上がるよう形成され、その立上り部66bの先端部に回転軸を支持する軸受孔66cが形成されている。
【0036】
図2(b)に示す軸支持部材68にも、軸支持部材66の底板部66a、立上り部66b,66b及び軸受孔66cと同様の底板部、立上り部68b,68b及び軸受孔68cが形成されている(図6参照)。
【0037】
図4に示すように、軸支持部材66の一対の立上り部66b,66b間には、連結部材52の連結部53が中央部に配置されていると共に、連結部53を囲むように形成されたロの字部材72(無端部材)が配置されている。
【0038】
このロの字部材72の図中4辺を構成する各辺部材の中央部には、互いに対向する嵌合孔74,74及び嵌合孔76,76が開口するように形成されている。嵌合孔74は、軸支持部材66の軸受孔66cと同一軸線上に配置されており、嵌合孔76は、連結部53にその長さ方向に対して直交方向に伸びるよう形成された貫通孔53aと同一軸線上に配置されている。
【0039】
ロの字部材72の嵌合孔74には、段付ピン80の等径部80aが隙間無く圧入されており、この段付ピン80の段部において等径部80aより大きな径を有するテーパ部80bが、軸支持部材66の軸受孔66c内に配置されている。
【0040】
段付ピン80のテーパ部80bと軸支持部材66の軸受孔66cとの間には、外開きのテーパ状の隙間が形成されており、この隙間には断面がくさび状のリング部材82が隙間無く嵌合して、このリング部材82が脱落しないように、脱落防止用板84を軸支持部材66の立上り部66bにネジ止めすることにより、リング部材82が保持されている。
【0041】
リング部材82は含油メタルにより形成されているので、段付ピン80のテーパ部80bはリング部材82内で回転可能に常時潤滑されている。
【0042】
連結部材52の連結部53の貫通孔53aの両端開口部には、段付ピン86の等径部86aが隙間無く圧入されており、この段付ピン86の段部において等径部86aより大きな径を有するテーパ部86bが、ロの字部材72の嵌合孔76内に配置されている。
【0043】
段付ピン86のテーパ部86bとロの字部材72の嵌合孔76との間には、外開きのテーパ状の隙間が形成されており、この隙間には断面がくさび状のリング部材88が隙間無く嵌合して、このリング部材88が脱落しないように、脱落防止用板90をロの字部材72にネジ止めすることにより、リング部材88が保持されている。
【0044】
リング部材88は含油メタルにより形成されているので、段付ピン86のテーパ部86bはリング部材88内で回転可能に常時潤滑されている。
【0045】
図2(b)に示すように、ピストンロッド34の先端部には、ナックル部材92のネジ部92aがネジ締結されている。ナックル部材92は、図5に示すように、そのネジ部92aの軸方向に隣接してナックル本体92bが形成され、このナックル本体92bにはその軸線方向に対して直交方向に伸びる軸線を有する貫通孔92cが形成されている。
【0046】
図6に示すように、軸支持部材68の一対の立上り部68b,68b間には、図5に示すようなナックル部材92のナックル本体92bが中央部に配置されていると共に、ナックル本体92bを囲むように形成された、図7に示すようなロの字部材94(無端部材)が配置されている。
【0047】
このロの字部材94の図中4辺を構成する各辺部材の中央部には、互いに対向する嵌合孔96,96及び嵌合孔98,98が開口するように形成されている。嵌合孔96は、軸支持部材68の軸受孔68cと同一軸線上に配置されており、嵌合孔98は、ナックル部材92の貫通孔92cと同一軸線上に配置されている。
【0048】
ロの字部材94の嵌合孔96には、段付ピン100の等径部100aが隙間無く圧入されており、この段付ピン100の段部において等径部100aより大きな径を有するテーパ部100bが、軸支持部材68の軸受孔68c内に配置されている。
【0049】
段付ピン100のテーパ部100bと軸支持部材68の軸受孔68cとの間には、外開きのテーパ状の隙間が形成されており、この隙間には断面がくさび状のリング部材102が隙間無く嵌合して、このリング部材102が脱落しないように、脱落防止用板104を立上り部68bにネジ止めすることにより、リング部材102が保持されている。
【0050】
リング部材102は含油メタルにより形成されているので、段付ピン100のテーパ部100bはリング部材102内で回転可能に常時潤滑されている。
【0051】
ナックル部材92の貫通孔92cには、両端部にテーパ部106aが形成されたテーパピン106の等径部106bが隙間無く圧入されており、このテーパピン106のテーパ部106aがロの字部材94の嵌合孔98内に配置されている。
【0052】
テーパピン106のテーパ部106aとロの字部材94の嵌合孔98との間には、外開きのテーパ状の隙間が形成されており、この隙間には断面がくさび状のリング部材108が隙間無く嵌合して、このリング部材108が脱落しないように、脱落防止用板110をロの字部材94にネジ止めすることにより、リング部材108が保持されている。
【0053】
リング部材108は含油メタルにより形成されているので、テーパピン106のテーパ部106aはリング部材108内で回転可能に常時潤滑されている。
【0054】
図8は、連結構造54の組み立て手順を説明するための分解図である。
連結構造54の組み立てを行うときは、まず、連結部材52の連結部53をロの字部材72の内側空間に嵌合させて、連結部53の貫通孔53aとロの字部材72の嵌合孔76との位置を、互いに同一軸線上となるように合わせる。
【0055】
次に、連結部53の貫通孔53aに段付ピン86の等径部86aを圧入させ、段付ピン86の段部が連結部53の、貫通孔53aが開口するその周囲の面に当接して止まるまで、段付ピン86を貫通孔53aに押し込む。
【0056】
それから、ロの字部材72の嵌合孔76と段付ピン86のテーパ部86bとの間の隙間内にリング部材88を嵌合させ、ロの字部材72、リング部材88及び段付ピン86の各部材間の微小なギャップが無くなるまでリング部材88を押し込む。このようにリング部材88を押し込むために、リング部材88の外側端面に接触させた脱落防止用板90を、ネジ部材の締め付けを介してロの字部材72に向かって押圧する。
【0057】
次に、軸支持部材66の一対の立上り部66b,66b間にロの字部材72の外側形状を挟んで、軸支持部材66の軸受孔66cとロの字部材72の嵌合孔74との位置を、互いに同一軸線上となるように合わせる。
【0058】
それから、ロの字部材72の嵌合孔74に段付ピン80の等径部80aを圧入させ、段付ピン80の段部がロの字部材72の嵌合孔74が開口するその周囲の面に当接して止まるまで、段付ピン80の等径部80aを嵌合孔74内に押し込む。
【0059】
次に、ロの字部材72の嵌合孔74と段付ピン80のテーパ部80bとの間の隙間内にリング部材82を嵌合させ、ロの字部材72、リング部材82及び段付ピン80の各部材間の微小なギャップが無くなるまでリング部材82を押し込む。このようにリング部材82を押し込むために、リング部材82の外側端面に接触させた脱落防止用板84を、ネジ部材の締め付けを介して軸支持部材66の立上り部66bに向かって押圧する。
このようにして、連結構造54の組み立てが完了する。
【0060】
図9は、連結構造56の組み立て手順を説明するための分解図である。
連結構造56の組み立てを行うときは、まず、油圧シリンダ32のピストンロッド34の先端部にナックル部材92のネジ部92aをネジ締結させ、このナックル部材92のナックル本体92bをロの字部材94の内側空間に嵌合させて、ナックル部材92の貫通孔92cとロの字部材94の嵌合孔98との位置を、互いに同一軸線上となるように合わせる。
【0061】
次に、ナックル部材92の貫通孔92cにテーパピン106の等径部106bを圧入させ、テーパピン106のテーパ部106aと等径部106bとの境界線が、ナックル部材92の貫通孔92cが開口するその周囲の面と一致するまで、テーパピン106の等径部106bを貫通孔92c内に押し込む。
【0062】
それから、ロの字部材94の嵌合孔98とテーパピン106のテーパ部106aとの間の隙間内にリング部材108を嵌合させ、ロの字部材94、リング部材108及びテーパピン106の各部材間の微小なギャップが無くなるまでリング部材108を押し込む。このようにリング部材108を押し込むために、リング部材108の外側端面に接触させた脱落防止用板110を、ネジ部材の締め付けを介してロの字部材94に向かって押圧する。
【0063】
次に、軸支持部材68の一対の立上り部68b,68b間にロの字部材94の外側形状を挟んで、軸支持部材68の軸受孔68cとロの字部材94の嵌合孔96との位置を、互いに同一軸線上となるように合わせる。
【0064】
それから、ロの字部材94の嵌合孔96に段付ピン100の等径部100aを圧入させ、段付ピン100の段部がロの字部材94の嵌合孔96が開口するその周囲の面に当接して止まるまで、段付ピン100を嵌合孔96内に押し込む。
【0065】
次に、ロの字部材94の嵌合孔96と段付ピン100のテーパ部100bとの間の隙間内にリング部材102を嵌合させ、ロの字部材94、リング部材102及び段付ピン100の各部材間の微小なギャップが無くなるまでリング部材102を押し込む。このようにリング部材102を押し込むために、リング部材102の外側端面に接触させた脱落防止用板104を、ネジ部材の締め付けを介して軸支持部材68の立上り部68bに向かって押圧する。
このようにして、連結構造56の組み立てが完了する。
【0066】
このような本発明の第1の実施の形態によれば、段付ピン80,86,100、テーパピン106及びピストンロッド34の各軸線がX,Y,Zの3軸に相当し、この3軸各々の周りに自在に、各部材間の相対回転を許容することができるので、連結構造56,54は、油圧シリンダ32及び連結部材52と建築構造体の固定フレーム64,62との連結部において、球面軸受を用いた場合と同様に動作することができる。
【0067】
また、球面軸受のように球面を有する部材を用いる必要が無いので、部材に球面を形成するための複雑で高精度の加工を施す必要も無いため、ダンパ連結構造が球面軸受より低価格となる。
【0068】
また、各ピンの内側端部を嵌合する孔に圧入したり、外側端部のテーパ部に断面がくさび状のリング部材を嵌合させて構成したため、各構成部材間のガタを確実に除去することができる。
【0069】
また、上記実施の形態によれば、段付ピン80,86,100のテーパ部80b,86b,100bと、それらの等径部80a,86a,100aとの間に、テーパ部の方が径が大きくなるような段部が形成されているため、段付ピンの等径部が圧入する孔に圧入する際に、その孔が開口する面にその段部がぶつかることにより、ピンの圧入が完了したことを容易に知ることができる。
【0070】
また、上記実施の形態によれば、各ピンのテーパ部が嵌合する部材にあけられた孔は、テーパ部の径より大きな径を有するように構成したため、ピンの等径部が圧入する孔の入口と、その孔に圧入するピンの等径部先端との間の位置合せを目視できるので、その位置合せを容易に行うことができる。
【0071】
図10は、本発明の第2の実施の形態に係るダンパ連結構造を示す図である。
前記第1の実施の形態においては、柱と梁により長方形状に構成された建築構造体の対角線上にブレースを設けた場合について説明したのに対し、この第2の実施の形態においては、V字状に配置された2本のブレース121,122の図中下端連結部に連結フレーム124及び軸支持部材68を介して連結構造56と連結し、建築構造体に固定された固定フレーム126に軸支持部材66を介して連結構造54が連結された点において異なるものであり、その他の点においては、前記実施の形態と同様のものである。
【0072】
このような本発明の第2の実施の形態においても、油圧シリンダ32の両端部と建築構造体との連結部に球面軸受を用いなくとも、連結部において球面軸受を用いた場合と同様に動作させることができ、かつダンパ連結構造が球面軸受より低価格となる他、その各構成部材間のガタを確実に除去することができる。
【0073】
なお、前記実施の形態においては、軸支持部材66と68の双方が、それぞれの立上り部66b,68bの左右対称形の中心線を、油圧シリンダ32の軸線と平行方向に伸びるように配置させた場合について説明したが、本発明は軸支持部材66と68の一方又は双方の左右対称形の中心線が、油圧シリンダ32の軸線と直交するようにダンパ連結構造を構成することもできる。
【0074】
また、前記実施の形態においては、本発明を油圧シリンダ32に適用した場合について説明したが、本発明は、連結部において球面軸受と同様の動作をする必要があると共に、各構成部材間のガタを防止する必要があるものであれば、油圧式以外の制震ダンパにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】油圧シリンダ32を建築構造体に連結するために用いられるダンパ連結構造を示す正面図である。
【図2】連結構造54,56各々の連結状態を示す図であり、図2(a)は連結構造54とその周辺部材との連結状態を示す図、図2(b)は連結構造56とその周辺部材との連結状態を示す図である。
【図3】軸支持部材66を示す図であり、図3(a)はそれを軸受孔66cの軸線方向から見た図、図3(b)は図3(a)における軸支持部材66のA矢視図である。
【図4】連結構造54の組立状態を示す、図2(a)に示す連結構造54のA−A線矢視断面図である。
【図5】ナックル部材92を示す図であり、図5(a)はその貫通孔92cの軸線方向から見た側面図、図5(b)は図5(a)におけるナックル部材92のA矢視図である。
【図6】連結構造56の組立状態を示す、図2(b)に示す連結構造56のB−B線矢視断面図である。
【図7】図6におけるロの字部材94を単体で示す正面図である。
【図8】軸支持部材66と連結部材52の連結部53とを連結する連結構造54の分解図である。
【図9】軸支持部材68とピストンロッド34のナックル部材92とを連結する連結構造56の分解図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態に係るダンパ連結構造の取付状態を示す図である。
【図11】従来のダンパ連結構造を示す図である。
【図12】図11に示すダンパ連結構造の部分拡大図である。
【図13】図11,12における球面軸受60の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0076】
32 油圧シリンダ
34 ピストンロッド
50 油圧式制震ダンパ
52 連結部材
53 連結部
53a 貫通孔
54 連結構造
56 連結構造
57 ブラケット
58 ブラケット
60 球面軸受
61 軸支持部材
62 固定フレーム
63 軸部材
64 固定フレーム
65 軸受内輪部材
66 軸支持部材
66a 底板部
66b 立上り部
66c 軸受孔
67 外輪支持部材
68 軸支持部材
68b 立上り部
68c 軸受孔
69 軸受外輪部材
72 ロの字部材
74 嵌合孔
76 嵌合孔
80 段付ピン
80a 等径部
80b テーパ部
82 リング部材
84 脱落防止用板
86 段付ピン
86a 等径部
86b テーパ部
88 リング部材
90 脱落防止用板
92 ナックル部材
92a ネジ部
92b ナックル本体
92c 貫通孔
94 ロの字部材
96 嵌合孔
98 嵌合孔
100 段付ピン
100a 等径部
100b テーパ部
102 リング部材
104 脱落防止用板
106 テーパピン
106a テーパ部
106b 等径部
108 リング部材
110 脱落防止用板
121,122 ブレース
124 連結フレーム
126 固定フレーム
C1 接触部
C2 接触部
C3 接触部
C4 接触部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築構造体と制震ダンパの端部との間に連結されて両者間に力を伝えるダンパ連結構造において、
前記建築構造体と前記制震ダンパの端部との間に設けられ無端状に形成された無端部材と、
前記建築構造体と前記無端部材との間に設けられ、前記建築構造体と前記制震ダンパの端部との間を第1の軸線の回りに相対回転可能にする第1回転手段と、
前記無端部材と前記制震ダンパの端部との間に設けられ、前記無端部材と前記制震ダンパの端部との間を、前記第1の軸線と直交する第2の軸線の回りに相対回転可能にする第2回転手段と
を備えたことを特徴とするダンパ連結構造。
【請求項2】
前記第1回転手段は、前記建築構造体に設けられる部材と前記無端部材に共に嵌合し前記第1の軸線を軸線とする第1のピンを有し、
前記第2回転手段は、前記制震ダンパの端部又はこれに設けられる部材と前記無端部材に共に嵌合し前記第2の軸線を軸線とする第2のピンを有する
ことを特徴とする請求項1に記載のダンパ連結構造。
【請求項3】
前記第1、第2のピンの前記無端部材の中心から遠い方の外側端部にテーパが形成され、この外側端部が断面がくさび状のリング部材を介して周囲の部材に嵌合することを特徴とする請求項2に記載のダンパ連結構造。
【請求項4】
前記第1、第2のピンの前記外側端部と、前記無端部材の中心に近い内側端部との間に、前記外側端部の方が径が大きくなるような段部が形成されたことを特徴とする請求項2に記載のダンパ連結構造。
【請求項5】
前記第1、第2のピンの前記外側端部が嵌合する部材にあけられた孔は、前記外側端部の径より大きな径を有することを特徴とする請求項3に記載のダンパ連結構造。
【請求項6】
前記第1、第2のピンの前記外側端部に、第1、第2のピンの前記無端部材の中心に近い内側端部の径と同じ径から、外側に向かって径が小さくなるようなテーパが形成されたことを特徴とする請求項3に記載のダンパ連結構造。
【請求項7】
前記第1、第2のピンの内側端部が嵌合する孔に圧入され、前記外側端部のテーパと前記断面がくさび状のリング部材が相対回転可能となっていることを特徴とする請求項3又は6に記載のダンパ連結構造。
【請求項8】
前記断面がくさび状のリング部材が含油金属材料により形成されたことを特徴とする請求項7に記載のダンパ連結構造。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−14068(P2008−14068A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−187830(P2006−187830)
【出願日】平成18年7月7日(2006.7.7)
【出願人】(000233239)日立機材株式会社 (225)
【Fターム(参考)】