説明

チェンジレバーのシフトロック機構の制御装置

【課題】部品点数の増大を抑制しかつ構造を簡単にしつつ、をロック部材を作動するソレノイドの発熱を効果的に抑制するとともに消費電力を効果的に低減する。
【解決手段】ソレノイドのオン条件が成立すると、シフトロック機構のソレノイドに、ソレノイドのオン条件成立期間中、被吸引部材を吸引する比較的高い第1の電圧と、この第1の電圧より低く、被吸引部材を吸引された状態に保持する第2の電圧とが交互に繰り返してソレノイドに印加される。これにより、ソレノイドの発熱を効果的に抑制することができるとともに、消費電力を低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の変速機の変速制御を行うために操作されるチェンジレバーのシフトロック機構の制御装置の技術分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の変速機においては、チェンジレバーユニットのチェンジレバーがパーキング位置(Pレンジ)に設定されているとき、このチェンジレバーはシフトロック機構によりロックされている。これにより、チェンジレバーはシフトロック機構のロックが解除されないと、Pレンジ以外の他のレンジ(チェンジレバーのシフト位置)にシフトすることができないようにされている。
【0003】
従来、このようなシフトロック機構として、チェンジレバーをロックするロック部材(被吸引部材)と、このロック部材を作動するソレノイドとを用いたシフトロック機構が知られている(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。これらの特許文献1および2に記載のシフトロック機構の制御装置では、いずれも、チェンジレバーをPレンジから他のレンジにシフト操作するときのみにソレノイドに通電してシフトロックを解除するようになっている。このソレノイドの通電制御により、チェンジレバーがPレンジ以外の他のレンジに設定されたときにもソレノイドに連続して通電する場合に比べてソレノイドへの通電時間が短時間にされ、ソレノイドの発熱が最小限に抑えられてソレノイドの耐久性が向上し、かつ電源の消耗が低減されている。
【0004】
一方、変速機に用いられている油圧制御装置の電磁弁において、この電磁弁のソレノイドに対する通電および遮断を交互に繰り返して電磁弁を制御する変速機制御装置が知られている(例えば、特許文献3参照)。この特許文献3に記載のソレノイドは、シフトロック機構以外において用いられているソレノイドである。そして、このソレノイドの通電制御により、ソレノイドの発熱を抑えることが可能となるとともに、電源の消耗を低減することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−200480号公報。
【特許文献2】特開平8−320062号公報。
【特許文献3】特開2009−85341号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1および2に記載のシフトロック機構では、チェンジレバーがPレンジ以外の他のレンジに設定されるときにはソレノイドが通電されないため、ロック部材がチェンジレバーをロックしない位置に保持するための保持機構が必要となる。このため、部品点数が多くなるばかりでなく、構造が複雑であるという問題がある。そこで、特許文献3に記載のソレノイドの通電制御を、特許文献1および2に記載のシフトロック機構におけるソレノイドの通電制御に適用することで、部品点数の増大を抑制しかつ構造を簡単にしつつ、ソレノイドの発熱をより効果的に抑えるとともに、電源の消耗をより効果的に低減することが考えられる。
【0007】
特許文献3には、所定条件が整っている場合に、ソレノイドに対して通電と遮断とを交互に繰り返すことについては開示されているが、通電時のソレノイドへの印加電圧につい
ては開示されていない。一般的には、電磁弁が安定して確実に作動するためには、比較的高い印加電圧が必要であり、そのために、特許文献3に記載の電磁弁のソレノイドにはこのような高電圧が印加されると考えられる。
【0008】
変速機においては、ソレノイドに対する通電と遮断とを比較的長時間繰り返す必要がある環境が生じる場合がある。このような場合、前述のような高電圧がソレノイドに印加されても、長時間連続して通電させたときに比較してソレノイドの発熱および消費電力の低減することが可能であると考えられる。
【0009】
しかし、ソレノイドへの印加電圧が高電圧であることから、ソレノイドに対する通電と遮断とを繰り返す時間が長くなればなるほど、ソレノイドの発熱を効果的に抑制することは難しくなるばかりでなく、消費電力を効果的に低減することも難しくなることが考えられる。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、部品点数の増大を抑制しかつ構造を簡単にしつつ、被吸引部材を作動するソレノイドの発熱を効果的に抑制するとともに消費電力を効果的に低減することができるチェンジレバーのシフトロック機構の制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述の課題を解決するために、本発明に係るチェンジレバーのシフトロック機構の制御装置は、チェンジレバーがパーキングレンジに設定されているときに、前記チェンジレバーをロックして前記チェンジレバーがパーキングレンジから他のレンジに移動するのを禁止するとともに、ソレノイドに通電することで前記チェンジレバーのロックを解除するチェンジレバーのシフトロック機構の制御装置であって、前記ソレノイドのオン条件成立を検知してオン条件検知信号を出力するソレノイドオン条件検知部と、前記ソレノイドオン条件検知部からの前記オン条件検知信号により、オン条件成立期間中、比較的高い第1の電圧と前記第1の電圧より低い第2の電圧とを交互に繰り返し前記ソレノイドに印加して通電するソレノイド制御信号出力部を有する制御部とを備えることを特徴としている。
【0012】
また、本発明に係るチェンジレバーのシフトロック機構の制御装置は、前記制御部が、前記第1の電圧と前記第2の電圧とを交互に繰り返す電圧印加パターンであって、車両運転状況および車両状況の少なくとも一方の状況に応じて複数予め設定された電圧印加パターンが格納されたメモリと、前記ソレノイドオン条件検知部からの前記オン条件検知信号により、前記メモリ内に格納されている複数の電圧印加パターンのうち、そのときの車両運転状況および車両状況の少なくとも一方の状況に応じた電圧印加パターンを選択するとともに、選択した電圧印加パターンのパターン出力信号を前記ソレノイド制御信号出力部に出力する電圧印加パターン選択部とを有し、前記ソレノイド制御信号出力部が、前記電圧印加パターン選択部から出力された電圧印加パターンに基づいた電圧を前記ソレノイドに印加することを特徴としている。
【0013】
更に、本発明に係るチェンジレバーのシフトロック機構の制御装置は、前記チェンジレバーの移動に連動して回動するとともに、前記チェンジレバーがパーキングレンジに設定されたとき変速機をロックするパーキングレバーと、前記パーキングレバーをロックして前記パーキングレバーが回動するのを禁止するとともに、ソレノイドに通電することで前記パーキングレバーのロックを解除するパーキングレバーロック機構とを有し、前記シフトロック機構のソレノイドと前記パーキングレバーロック機構のソレノイドとが兼用されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
このように構成された本発明に係るチェンジレバーのシフトロック機構の制御装置によれば、シフトロック機構のソレノイドがオンとなる条件が成立したときは、このソレノイドのオン条件成立期間中、ソレノイドに比較的高い第1の電圧と、この第1の電圧より低い第2の電圧とを交互に繰り返して印加している。これにより、ソレノイドに高い電圧をソレノイドのオン条件成立期間中に連続して印加する場合に比べて、ソレノイドの発熱を効果的に抑制することができるとともに、消費電力を低減することができる。また、ソレノイドの印加電圧を制御するだけであるの、特許文献1および2に記載のようにロック部材を保持する保持機構が不要となる。これにより、部品の増大を抑制できるとともに、構造を簡単にすることができる。しかも、高い第1の電圧を断続的に繰り返しソレノイドに印加しているので、ソレノイドの必要な吸引力を確保することができる。車両の運転状況や車両状況の違いにより、第1の電圧が変化しても、高い第1の電圧を断続的に繰り返すことで、ソレノイドの必要な吸引力を確保することができる。これにより、ソレノイドにより吸引される被吸引部材の摺動抵抗が大きくなっても、被吸引部材をチェンジレバーのシフトロック解除位置に設定することが可能となる。
【0015】
また、車両の運転状況や車両状況の違いに応じて、種々の電圧印加パターンを設定しているので、ソレノイドのオン条件成立時点での車両の運転状況や車両状況に応じた電圧印加パターンを選択し、選択した電圧印加パターンで電圧をソレノイドに印加することが可能となる。これにより、電圧をソレノイドに車両の運転状況や車両状況に応じて一層効果的にかつ効率よく印加することが可能となる。
【0016】
更に、シフトロック機構のソレノイドとパーキングレバーロック機構のソレノイドとを兼用しているので、ソレノイドを互いに個別に設けなくて済ませることができる。これにより、部品点数の増加を防止でき、チェンジレバーユニットの小型化および軽量化をともに効果的に図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るチェンジレバーのシフトロック機構の制御装置の実施の形態の一例を示すブロック図である。
【図2】この例のチェンジレバーユニットの一例を示す、シフト回動軸の中心を通る縦断面図である。
【図3】図2に示す例のチェンジレバーユニットにおけるセレクト回動軸の中心を通る縦断面図である。
【図4】(a)はチェンジレバーの操作を説明する図、(b)はチェンジレバーユニットのシフトパターンの一例を示す図、(c)はチェンジレバーユニットのシフトパターンの他の例を示す図である。
【図5】(a)は電圧印加パターンの一例を示す図、(b)は電圧印加パターンの他の一例を示す図である。
【図6】図6はシフトロック機構25の制御のフローの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。
図1は本発明に係るチェンジレバーのシフトロック機構の制御装置の実施の形態の一例を示すブロック図である。
【0019】
図1に示すように、この例のチェンジレバーのシフトロック機構が用いられている変速機の変速制御装置1は、マグネット2と、ホール素子3と、変速機4の電子制御部(TCU:Transmission Control Unit)5とを備える。また、TCU5は、レンジ位置信号入
力部6、変速制御信号出力部7、メモリ8、電圧印加パターン選択部9、およびソレノイド制御信号出力部10を有する。そして、マグネット2およびホール素子3により、チェ
ンジレバーの位置検出装置11が構成される。また、TCU5のメモリ8、TCU5の電圧印加パターン選択部9、TCU5のソレノイド制御信号出力部10、チェンジレバーの位置検出装置11、イグニッションスイッチ12、およびブレーキスイッチ13により、この例のチェンジレバーのシフトロック機構の制御装置14が構成される。その場合、チェンジレバーの位置検出装置11、イグニッションスイッチ12、およびブレーキスイッチ13により、シフトロック機構のソレノイド15をオンとすべきソレノイドオン条件を検知するソレノイドオン条件検知部16が構成される。
【0020】
チェンジレバーおよびその位置検出装置11は変速機のチェンジレバーユニット(CLU:Change Lever Unit)に設けられる。図2はチェンジレバーユニットの一例を示し、
シフト回動軸の中心を通る縦断面図、図3はこの例のチェンジレバーユニットのセレクト回動軸の中心を通る縦断面図である。
図2および図3に示すように、この例のCLU17は、ユニット本体18と、このユニット本体18の上端開口を閉塞するようにユニット本体18の上端に着脱可能に取り付けられるケース19とを備えている。
【0021】
ユニット本体18内にはシフト回動軸20がその中心軸線まわりに回動可能に設けられている。また、このシフト回動軸20には、セレクト回動軸21がシフト回動軸20を直交するように貫通して設けられている。更に、このセレクト回動軸21に、チェンジレバー22の一端部が回動可能に取り付けられている。したがって、チェンジレバー22はシフト回動軸20を中心に回動可能となっているとともに、セレクト回動軸21を中心に回動可能となっている。
【0022】
図4(a)に示すように、ケース19の上端部には、この例のCLU17のシフトパターンに対応して形成されかつチェンジレバー22が貫通するシフトパターン孔23が設けられている。このシフトパターン孔23は、チェンジレバー22が操作されるときこのチェンジレバー22が通過する通路となっている。図4(b)に示すように、この例のシフトパターン24は、所定間隔を置いて互いに平行に配置された2つの第1のシフト列Si1および第2のシフト列Si2と、1つのセレクト列Seとを有する。その場合、第1および第2のシフト列Si1,Si2とセレクト列Seとは互いに直交している。
【0023】
第1のシフト列Si1には、パーキング(P)、ニュートラル(N)およびリバース(R)の3つのレンジがこれらの順に一列に配置されている。また、第2のシフト列Si2には、ドライブ(D)、シフトアップ(UP)およびシフトダウン(DOWN)の3つのレンジがこれらの順に一列に配置されている。更に、セレクト列Seには、ニュートラル(N)、ドライブ(D)およびドライブ保持(A/M)の3つのレンジがこれらの順に一列に配置されている。なお、第1のシフト列Si1のNレンジはセレクト列SeのNレンジと同じであり、また第2のシフト列Si2のDレンジはセレクト列SeのDレンジと同じである。そして、シフトパターン孔23は、これらの第1および第2のシフト列Si1,Si2とセレクト列Seとに対応した形状に形成されている。
【0024】
また、シフトパターン24は前述の図4(b)に示す例に限定されることはなく、図4(c)に示すように、第1のシフト列Si1においてPレンジ、Rレンジ、およびNレンジが図4(c)において上方からこれらの順に配置されるシフトパターン24を用いることもできる。その他、シフトパターンが本発明のチェンジレバーのシフトロック機構の制御装置に適用可能であれば、どのようなシフトパターン24を用いることもできる。
【0025】
図4(a)に二点鎖線で示すように、CLU17はチェンジレバー22のシフトロック機構25が設けられている。シフトロック機構25は、チェンジレバー22をロックする被吸引部材としてのロック部材26と、ロック部材26を作動するソレノイド15とを有
している。ロック部材26は、チェンジレバー22の移動をロックするロック位置と、チェンジレバー22の移動ロックを解除するロック解除位置との間で移動可能とされている。そして、ロック部材26はソレノイド15への通電時にソレノイド15の電磁力で直接的またはソレノイドで駆動される鉄心に連結されたワイヤあるいはロッドを介して間接的に吸引されて作動してロック解除位置に移動するとともに、ソレノイド15への通電遮断時(非通電時)に図示しないスプリングの付勢力でロック位置に移動する。図4(a)に二点鎖線で示すロック部材26はロック位置に移動している状態を示す。なお、シフトロック機構25は図4(a)にはきわめて模式的に示されているが、ソレノイドの電磁力でチェンジレバー22のロックを解除するシフトロック機構であれば、従来公知のどのようなシフトロック機構を用いることも可能である。したがって、このシフトロック機構25の詳細な説明は省略する。
【0026】
図2および図3に示すように、シフト回動軸20には、パーキングレバー27がチェンジレバー22の隣りに配設されている。このパーキングレバー27は、チェンジレバー22が図2に実線で示す第1のシフト列Si1内に位置するとき、連結部材28がパーキングレバー27の係合孔に嵌合することでチェンジレバー22に回動方向に係合する。これにより、チェンジレバー22が第1のシフト列Si1内で操作されるとき、チェンジレバー22の移動に連動して回動するようになっている。図示しないが、パーキングレバー27はパーキングケーブルを介して自動変速機等の変速機(TM)を機械的にロックする変速機ロック機構に連結されている。そして、チェンジレバー22がPレンジに設定されたとき、パーキングレバー27が連動して回動することでパーキングケーブルを介して変速機ロック機構が作動し、変速機が機械的にロックされる。
【0027】
また、パーキングレバー27は、チェンジレバー22が第1のシフト列Si1のNレンジから第2のシフト列Si2のDレンジの方へ所定位置に移動したとき、連結部材28がパーキングレバー27の係合孔から脱出することでチェンジレバー22から分離されるようになっている。したがって、チェンジレバー22は第1のシフト列Si1以外で操作されるときチェンジレバー22の移動に連動しない。更に、パーキングレバー27がチェンジレバー22から分離するとき、パーキングレバー27は、ケース19に設けられたパーキングレバーロック機構29によってロックされ、チェンジレバー22から分離した位置に保持されるようになっている。パーキングレバーロック機構29はパーキングレバー27の回動をロックするロック部材30と、ロック部材30を作動するソレノイドとを有する。その場合、この例のパーキングレバーロック機構29のソレノイドは、前述のチェンジレバー22のシフトロック機構25のソレノイド15が兼用されている。
【0028】
パーキングレバーロック機構29によるパーキングレバー27のロックは、ソレノイド15によって作動されるロック部材30がパーキングレバー27のロック孔に進入してパーキングレバー27に回動方向に係合することで行われる(図2にロック部材30によるパーキングレバー27のロック状態を二点鎖線で示す)。
【0029】
図2に示すように、チェンジレバー位置検出装置11のマグネット2は、チェンジレバー22の下端(チェンジレバー22のユニット本体18側の端)に設けられている。また、チェンジレバー位置検出装置11のホール素子3はユニット本体18に、マグネット2が対向可能に設けられている。したがって、CLU17はこの例のチェンジレバー位置検出装置11を備えている。そして、ホール素子3は、ホール素子3においてチェンジレバー22の位置に応じて変化するマグネット2の磁気を検出して電圧信号として出力する。その場合、ホール素子3は、その中心がセレクト回動軸21の中心を通りかつシフト回動軸20と直交する直線上に位置するように設けられている。そして、チェンジレバー22がシフト回動軸20と直交する位置のとき、マグネット2の中心がホール素子3の中心に対向するようになっている。
【0030】
この例のホール素子3は3DホールICであり、チェンジレバー22のセレクト方向の位置に応じたセレクト位置信号およびチェンジレバー22のシフト方向の位置に応じたシフト位置信号をそれぞれ出力する。
【0031】
次に、この例のチェンジレバー22のシフトロック機構の制御装置14によるシフトロック機構25のソレノイド15への通電制御について説明する。この例のシフトロック機構の制御装置14では、ソレノイド15のオン条件検知部16からのソレノイドオン条件検知信号によりソレノイド15のオン条件が成立している間は、電圧が連続してソレノイド15に印加される。その場合、印加電圧は、ソレノイド15による被吸引部材(例えばロック部材26あるいは電磁弁の場合は弁体等)を吸引して移動させる吸引力を発生する高電圧(第1の電圧;吸引電圧)と、この高電圧より低く、吸引により移動した被吸引部材を吸引移動状態に保持する程度の吸引力を発生する低電圧(第2の電圧;保持電圧)とを交互に変化させて繰り返す電圧印加パターンに設定される。
【0032】
ところで、一般に、車両走行中はソレノイド15にはオルタネータの発電電圧(例えば、14V等)が印加され、また、車両停車中はバッテリーの電圧(例えば、12V等)が印加される。このように車両運転状況により、ソレノイド15の印加電圧が変化する。そこで、この印加電圧の変化を考慮して、高電圧(第1の電圧;吸引電圧)および低電圧(第2の電圧;保持電圧)の各一例として、各印加電圧が次のように設定される。すなわち、高電圧(第1の電圧;吸引電圧)として、例えば12Vが設定され、また、低電圧(第2の電圧;保持電圧)として、ソレノイド保持電圧に必要な例えば5Vが設定される。
【0033】
更に、車両の長期間使用後のオルタネータの発電電圧変化、バッテリーの電圧変化、被吸引部材の摺動抵抗の変化等により、車両状況が変化する。そこで、この例のソレノイド15への通電制御では、ソレノイド15への電圧印加パターンを予め複数設定している。図5(a)は電圧印加パターンの一例を示す図、図5(b)は電圧印加パターンの他の一例を示す図である。
【0034】
図5(a)に示す電圧印加パターンの例では、高電圧(第1の電圧;吸引電圧)による一定の吸引時間t1および低電圧(第2の電圧;保持電圧)による一定の保持時間t2を交互に繰り返すパターンである。その場合、高電圧と低電圧とからなる1回あたりの電圧印加についての吸引時間t1と保持時間t2との和である周期T1は、各回の電圧印加毎にすべて一定に設定される。
【0035】
また、図5(b)に示す電圧印加パターンの例では、一部の回の高電圧(第1の電圧;吸引電圧)による吸引時間および低電圧(第2の電圧;保持電圧)による保持時間を異ならせて交互に繰り返すパターンである。すなわち、図5(b)に示す例では、第1回目の高電圧と低電圧とからなる電圧印加では、前述の図5(a)に示す例の高電圧と低電圧とからなる電圧印加と同じである。そして、第2回目の高電圧と低電圧とからなる電圧印加では、高電圧による吸引時間t3が第1回目の高電圧と低電圧とからなる電圧印加における高電圧による吸引時間t1より長く(t3>t1)設定されるとともに、低電圧による保持時間t4が第1回目の高電圧と低電圧とからなる電圧印加における高電圧による保持時間t2より短く(t4<t2)設定される。第3回目以降の高電圧と低電圧とからなる電圧印加は、第2回目の電圧印加と同じである。その場合、電圧印加の周期T1,T2は
第1回目からすべての回で一定(T1=T2)に設定される。電圧印加の周期は任意の回で異ならせることもできるが、ソレノイド15への電圧印加の制御を簡単かつ良好にするために、図5(a)および(b)に示すように電圧印加の第1回目からすべての回で一定に設定されることが好ましい。なお、高電圧と低電圧とを交互に繰り返す電圧印加パターンは、図5(a)および(b)に示す例に限定されなく、他の種々異なる電圧印加パター
ンが可能である。種々設定された電圧印加パターンは、TCU5のメモリ6に格納される。
【0036】
次に、チェンジレバー22のシフトロック機構25の制御について説明する。図6はシフトロック機構25の制御のフローの一例を示す図である。
図6に示すように、ステップS1で車両が駐車等により運転されない状態では、イグニッションスイッチ12がオフ(OFF)にされており、シフトロック機構25のソレノイド15は非通電となっている。また、ステップS2でこの状態ではチェンジレバー22がPレンジに設定されているとともに、シフトロック機構25でロックされている。ステップS3で車両を運転するために、イグニッションスイッチ12がオン(ON)にされる。
【0037】
そして、ステップS4でブレーキペダルが踏み込まれてブレーキが作動しかつブレーキスイッチ13がオンすることで、ソレノイド15のオン条件が成立したか否かが判断される。ソレノイド15のオン条件が成立していないと判断されると、このステップS4の処理が繰り返される。ソレノイド15のオン条件が成立したと判断されると、ステップS5で電圧がソレノイド15に、選択された電圧印加パターンでの前述の第1の電圧と前述の第2の電圧とを交互に繰り返して印加される。これにより、ソレノイド15の通電が行われ、ステップS6でシフトロック機構25によるチェンジレバー22のロックが解除される。したがって、チェンジレバー22がPレンジ以外の他のレンジに移動可能となる。
【0038】
ステップS7でチェンジレバー22がNレンジからDレンジに向かって所定位置になったか否かが判断される。チェンジレバー22が所定位置になったと判断されると、ステップS8でソレノイド15が非通電にされ、ステップS9でパーキングレバー27がロックされる。したがって、パーキングレバー27の回動がロックされる。次いで、ステップS10でDレンジからNレンジに向かって所定位置になったか否かが判断される。チェンジレバー22が所定位置(前述のチェンジレバー22がNレンジからDレンジに向かう場合の所定位置と同じ位置であってもよいし、異なる位置であってもよい)になったと判断されると、ステップS11で電圧がソレノイド15に、選択された電圧印加パターンでの前述の第1の電圧と前述の第2の電圧とを交互に繰り返して印加される。これにより、ソレノイド15の通電が行われ、ステップS12でパーキングレバーロック機構29によるパーキングレバー27のロックが解除される。したがって、パーキングレバー27が回動可能となる。
【0039】
次に、ステップS13でチェンジレバー22がPレンジになったか否かが判断される。チェンジレバー22がPレンジになっていないと判断されると、このステップS13の処理が繰り返される。チェンジレバー22がPレンジになったと判断されると、ステップS14でソレノイドオン条件が不成立となったか否かが判断される。ソレノイドオン条件が不成立になっていないと判断されると、このステップS14の処理が繰り返される。そして、ステップS15でソレノイド15が非通電にされ、ステップS16でチェンジレバー22がシフトロック機構25によりロックされ、Pレンジ以外の他のレンジへの移動が禁止される。最後にステップS17でイグニッションスイッチ12がオフにされる。ステップS7およびS10でチェンジレバー22が所定位置になっていないと判断されたときは、いずれも、ステップS13に移行し、ステップS13以降の各処理が行われる。
【0040】
この例のチェンジレバー22のシフトロック機構25の制御装置14によれば、シフトロック機構25のソレノイド15がオンとなる条件が成立したときは、このソレノイドのオン条件成立期間中、ソレノイド15に、ロック部材26を吸引して作動させる比較的高い第1の電圧と、ロック部材26の吸引を保持しかつ第1の電圧より低い第2の電圧とを交互に繰り返して印加している。これにより、ソレノイド15に高い電圧をソレノイドのオン条件成立期間中に連続して印加する場合に比べて、ソレノイド15の発熱を効果的に
抑制することができるとともに、消費電力を低減することができる。また、ソレノイド15の印加電圧を制御するだけであるの、特許文献1および2に記載のようにロック部材を保持する保持機構が不要となる。これにより、部品の増大を抑制できるとともに、構造を簡単にすることができる。しかも、高い第1の電圧を断続的に繰り返しソレノイド15に印加しているので、ソレノイド15の必要な吸引力を確保することができる。車両の運転状況や車両状況の違いにより、第1の電圧が変化しても、高い第1の電圧を断続的に繰り返すことで、ソレノイド15の必要な吸引力を確保することができる。これにより、ソレノイド15により吸引される被吸引部材であるロック部材26の摺動抵抗が大きくなっても、ロック部材26をチェンジレバー22のシフトロック解除位置に設定することが可能となる。
【0041】
また、車両の運転状況や車両状況の違いに応じて、種々の電圧印加パターンを設定しているので、ソレノイド15のオン条件成立時点での車両の運転状況や車両状況に応じた電圧印加パターンを選択し、選択した電圧印加パターンで電圧をソレノイド15に印加することが可能となる。これにより、電圧をソレノイド15に車両の運転状況や車両状況に応じて一層効果的にかつ効率よく印加することが可能となる。
【0042】
更に、シフトロック機構25のソレノイド15とパーキングレバーロック機構29のソレノイド15とを兼用しているので、ソレノイドを互いに個別に設けなくて済ませることができる。これにより、部品点数の増加を防止でき、CLU17の小型化および軽量化をともに効果的に図ることが可能となる。
【0043】
なお、本発明は前述の例に限定されることはなく、種々の設計変更が可能である。例えば、前述の例では、シフトロック機構25のソレノイド15とパーキングレバーロック機構29のソレノイド15とを兼用しているが、ソレノイドはシフトロック機構25とパーキングレバーロック機構29とで個別に設けるとともに、個別に設けたソレノイドをそれぞれ独立して設けることもできる。その場合、シフトロック機構25の制御のフローは、図6に示すフローのステップS7ないしS12がキャンセルされて、ステップS6からS13に移行するフローとなる。
【0044】
また、前述の例では、シフトロック機構25がチェンジレバー22をロックするロック部材26、ロック部材26を作動するソレノイド15、およびロック部材26を付勢するスプリングで構成しているが、シフトロック機構25は、チェンジレバー22をロックするロック部材26を作動制御する流体を弁体で供給排出しかつソレノイドを有する電磁弁、および電磁弁の弁体を付勢するスプリングで構成することもできる。更に、ソレノイドオン条件は、前述の例ではチェンジレバー22のPレンジ検知、イグニッションスイッチ12のオン、およびブレーキスイッチ13のオンに基づいて設定しているが、例えばハンドル把持検知等の他の要素を用いることもできる。要は、特許請求の範囲に記載された技術事項の範囲内で種々の設計変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明に係るチェンジレバーのシフトロック機構の制御装置は、車両の変速機の変速制御を行うために操作されるチェンジレバーのシフトロック機構の制御装置に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0046】
1…変速制御装置、2…マグネット、3…ホール素子、4…変速機、5…電子制御部(TCU)、6…レンジ位置信号入力部、7…変速制御信号出力部、8…メモリ、9…電圧印加パターン選択部、10…ソレノイド制御信号出力部、11…チェンジレバーの位置検出装置、12…イグニッションスイッチ、13…ブレーキスイッチ、14…シフトロック機
構の制御装置、15…ソレノイド、16…ソレノイドオン条件検知部、17…チェンジレバーユニットCLU、20…シフト回動軸、21…セレクト回動軸、22…チェンジレバー、23…シフトパターン孔、24…シフトパターン、25…シフトロック機構、26…ロック部材、27…パーキングレバー、28…連結部材、29…パーキングレバーロック機構、30…ロック部材、Si1…第1のシフト列、Si2…第2のシフト列、Se…セレクト列

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チェンジレバーがパーキングレンジに設定されているときに、前記チェンジレバーをロックして前記チェンジレバーがパーキングレンジから他のレンジに移動するのを禁止するとともに、ソレノイドに通電することで前記チェンジレバーのロックを解除するチェンジレバーのシフトロック機構の制御装置であって、
前記ソレノイドのオン条件成立を検知してオン条件検知信号を出力するソレノイドオン条件検知部と、前記ソレノイドオン条件検知部からの前記オン条件検知信号により、オン条件成立期間中、比較的高い第1の電圧と前記第1の電圧より低い第2の電圧とを交互に繰り返し前記ソレノイドに印加して通電するソレノイド制御信号出力部を有する制御部とを備えることを特徴とするチェンジレバーのシフトロック機構の制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1の電圧と前記第2の電圧とを交互に繰り返す電圧印加パターンであって、車両運転状況および車両状況の少なくとも一方の状況に応じて複数予め設定された電圧印加パターンが格納されたメモリと、前記ソレノイドオン条件検知部からの前記オン条件検知信号により、前記メモリ内に格納されている複数の電圧印加パターンのうち、そのときの車両運転状況および車両状況の少なくとも一方の状況に応じた電圧印加パターンを選択するとともに、選択した電圧印加パターンのパターン出力信号を前記ソレノイド制御信号出力部に出力する電圧印加パターン選択部とを有し、
前記ソレノイド制御信号出力部は、前記電圧印加パターン選択部から出力された電圧印加パターンに基づいた電圧を前記ソレノイドに印加することを特徴とする請求項1に記載のチェンジレバーのシフトロック機構の制御装置。
【請求項3】
前記チェンジレバーの移動に連動して回動するとともに、前記チェンジレバーがパーキングレンジに設定されたとき変速機をロックするパーキングレバーと、前記パーキングレバーをロックして前記パーキングレバーが回動するのを禁止するとともに、ソレノイドに通電することで前記パーキングレバーのロックを解除するパーキングレバーロック機構とを有し、
前記シフトロック機構のソレノイドと前記パーキングレバーロック機構のソレノイドとが兼用されていることを特徴とする請求項1または2に記載のチェンジレバーのシフトロック機構の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−61996(P2012−61996A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−209153(P2010−209153)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(000003333)ボッシュ株式会社 (510)
【Fターム(参考)】