説明

チェーンテンショナ

【課題】チェックバルブのバルブシートの摩耗を抑制し、チェーンテンショナのダンパ作用を安定させる。
【解決手段】シリンダ9内にプランジャ10を軸方向に摺動可能に挿入し、そのプランジャ10を突出方向に付勢するリターンスプリング26を設け、シリンダ9とプランジャ10とで囲まれた圧力室12内に作動油を導入する給油通路13を設け、その給油通路13の圧力室12側の端部に作動油の逆流を防止するチェックバルブ14を設け、そのチェックバルブ14を、弁孔15を有するバルブシート16と、そのバルブシート16に接触、離反して弁孔15を開閉するチェックボール17と、そのチェックボール17の移動範囲を規制するリテーナ18とで構成したチェーンテンショナ1において、バルブシート16のチェックボール17に対する接触面28にクロム拡散層29を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車エンジンのカムシャフトを駆動するタイミングチェーンの張力保持に用いられるチェーンテンショナに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のエンジンは、一般に、クランクシャフトの回転をタイミングチェーンを介してカムシャフトに伝達し、そのカムシャフトの回転により燃焼室のバルブの開閉を行なう。ここで、チェーンの張力を適正範囲に保つために、支点軸を中心として揺動可能に設けたチェーンガイドと、そのチェーンガイドを介してチェーンを押圧するチェーンテンショナとからなる張力調整装置が多く用いられる。
【0003】
この張力調整装置に組み込まれるチェーンテンショナとして、一端が開口した有底筒状のシリンダ内にプランジャを軸方向に摺動可能に挿入し、そのプランジャをシリンダから突出する方向に付勢するリターンスプリングを設け、前記シリンダとプランジャとで囲まれた圧力室内に作動油を導入する給油通路を設け、その給油通路の圧力室側の端部に作動油の逆流を防止するチェックバルブを設けたものが知られている(特許文献1,2)。
【0004】
ここで、チェックバルブは、弁孔を有するバルブシートと、そのバルブシートに接触、離反して前記弁孔を開閉するチェックボールと、そのチェックボールの移動範囲を規制するリテーナとで構成されている。
【0005】
上記のチェーンテンショナは、前記プランジャのシリンダからの突出端でチェーンを押圧し、エンジン作動中は、チェーンの振動に応じてプランジャが前進と後退を繰り返し、そのプランジャの動きに合わせてチェックバルブが開閉する。
【0006】
また、エンジン作動中にチェーンの張力が大きくなると、そのチェーンの張力によってプランジャがシリンダ内に押し込まれる方向(以下、「押し込み方向」という)に移動し、チェーンの緊張を吸収する。このとき、圧力室内の作動油が、プランジャとシリンダの摺動面間のリーク隙間を通って流出し、その作動油の流量が制限されてダンパ作用が生じるので、プランジャはゆっくりと移動する。
【0007】
一方、エンジン作動中にチェーンの張力が小さくなると、リターンスプリングの付勢力によって、プランジャがシリンダから突出する方向(以下、「突出方向」という)に移動し、チェーンの弛みを吸収する。このとき、オイルポンプから供給される作動油が、給油通路を通って圧力室に流入するので、プランジャは速やかに移動する。
【0008】
また、特許文献2に記載のチェーンテンショナにおいては、前記プランジャをシリンダ内への挿入端が開口する有底筒状に形成し、そのプランジャの内周に形成した雌ねじにねじ係合する雄ねじを外周に有するスクリュロッドを設け、そのスクリュロッドの前記プランジャからの突出端を前記チェックバルブのバルブシートで支持するようにしている。
【0009】
このチェーンテンショナは、エンジン作動中、チェーンの張力が大きくなると、チェーンの振動によってスクリュロッドが徐々に回転し、プランジャの押し込み方向への移動を許容する。一方、エンジン停止時は、チェーンが振動しないので、カムの停止位置によってチェーンの力が大きくなっても、プランジャの雌ねじがスクリュロッドの雄ねじで受け止められ、プランジャの位置が固定される。そのため、エンジンを再始動するときに、チェーンの弛みを生じにくく、円滑なエンジン始動が可能である。
【特許文献1】特開2007−321899号公報
【特許文献2】特開2007−333095号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、これらのチェーンテンショナは、エンジン作動中に、チェーンの振動に応じてチェックバルブが開閉を繰り返すので、チェックバルブのバルブシートが摩耗しやすい。この摩耗が進行すると、チェックボールが弁孔を閉じたときにチェックボールとバルブシートの間に隙間が生じ、チェーンテンショナのダンパ作用が不安定となるおそれがある。
【0011】
また、特許文献2に記載のチェーンテンショナにおいては、チェーンの張力変動に応じてスクリュロッドが回転するので、バルブシートのスクリュロッドに対する接触面も摩耗しやすい。この摩耗が進行すると、スクリュロッドとバルブシートの間の摩擦抵抗が大きくなるので、エンジン作動中、チェーンの張力が大きくなっても、スクリュロッドが回転しなくなるおそれがある。
【0012】
この発明が解決しようとする課題は、チェックバルブのバルブシートの摩耗を抑制し、チェーンテンショナのダンパ作用を安定させることである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するため、前記バルブシートのチェックボールに対する接触面に高硬度層を設けたのである。
【0014】
このようにすると、バルブシートのチェックボールに対する接触面の摩耗が抑制されるので、チェックボールが弁孔を閉じたときにチェックボールとバルブシートの間に隙間が生じにくくなり、チェーンテンショナのダンパ作用が安定する。
【0015】
前記プランジャをシリンダ内への挿入端が開口する有底筒状に形成し、そのプランジャの内周に形成した雌ねじにねじ係合する雄ねじを外周に有するスクリュロッドを設け、そのスクリュロッドの前記プランジャからの突出端を前記チェックバルブのバルブシートで支持する場合、そのバルブシートの前記スクリュロッドに対する接触面に前記高硬度層を設けると好ましい。
【0016】
このようにすると、バルブシートのスクリュロッドに対する接触面が摩耗しにくくなるので、スクリュロッドとバルブシートの間の摩擦抵抗の増加を抑えることができる。そのため、エンジン作動中、チェーンの張力が大きくなったときに、スクリュロッドが確実に回転して、プランジャの押し込み方向への移動を許容する。また、バルブシートのチェックボールに対する接触面の高硬度層は、バルブシートのスクリュロッドに対する接触面の高硬度層と同時に形成することができるので、低コストである。
【0017】
前記高硬度層としては、例えば、クロム拡散層を採用することができ、このクロム拡散層の硬度をHv1400〜1800とすると、バルブシートの耐摩耗性を確保することができる。クロム拡散層の深さは、5μm以上とすると、クロム拡散層が摩耗して母材が露出するのを防止することができ、30μm以下とすると、クロム拡散層の剥離を防止することができる。
【0018】
また、前記高硬度層として、バナジウム拡散層を採用することができ、このバナジウム拡散層の硬度をHv2000〜2600とすると、バルブシートの耐摩耗性を確保することができる。バナジウム拡散層の深さは、5μm以上とすると、バナジウム拡散層が摩耗して母材が露出するのを防止することができ、30μm以下とすると、バナジウム拡散層の剥離を防止することができる。
【0019】
また、前記高硬度層として、ダイヤモンドライクカーボン層を採用することができ、このダイヤモンドライクカーボン層の硬度をHv1500〜2000とすると、バルブシートの耐摩耗性を確保することができる。ダイヤモンドライクカーボン層の深さは、5μm以上とすると、ダイヤモンドライクカーボン層が摩耗して母材が露出するのを防止することができ、10μm以下とすると、ダイヤモンドライクカーボン層中の残留応力によってダイヤモンドライクカーボン層の密着力が低下するのを防止することができる。
【発明の効果】
【0020】
この発明のチェーンテンショナは、バルブシートのチェックボールに対する接触面に高硬度層が設けられているので、バルブシートのチェックボールに対する接触面が摩耗しにくく、長期にわたって安定したダンパ作用を発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1に、この発明の第1実施形態のチェーンテンショナ1を組み込んだチェーン伝導装置を示す。このチェーン伝導装置は、エンジンのクランクシャフト2に固定されたスプロケット3と、カムシャフト4に固定されたスプロケット5とがチェーン6を介して連結されており、そのチェーン6がクランクシャフト2の回転をカムシャフト4に伝達し、そのカムシャフト4の回転により燃焼室のバルブ(図示せず)の開閉を行なう。
【0022】
チェーン6には、支点軸7を中心として揺動可能に支持されたチェーンガイド8が接触しており、チェーンテンショナ1は、そのチェーンガイド8を介してチェーン6を押圧している。
【0023】
図2に示すように、チェーンテンショナ1は、一端が開口した有底筒状のシリンダ9と、シリンダ9内に軸方向に摺動可能に挿入されたプランジャ10とを有する。シリンダ9は、ボルト11でエンジンブロック(図示せず)に固定されている。
【0024】
シリンダ9には、シリンダ9とプランジャ10とで囲まれた圧力室12に連通する給油通路13が形成されている。給油通路13は、給油ポンプ(図示せず)に接続されており、その給油ポンプから送り出された作動油を、圧力室12内に導入するようになっている。給油通路13の圧力室12側の端部には、圧力室12から給油通路13への作動油の逆流を防止するチェックバルブ14が設けられている。
【0025】
チェックバルブ14は、弁孔15を有するバルブシート16と、バルブシート16に接触、離反して弁孔15を開閉するチェックボール17と、チェックボール17の移動範囲を規制するリテーナ18とからなる。バルブシート16は、シリンダ9内に圧入して固定されている。
【0026】
プランジャ10とシリンダ9の摺動面間には、微小なリーク隙間19が形成されており、そのリーク隙間19を通って圧力室12内の作動油がリークするようになっている。
【0027】
また、シリンダ9には、シリンダ9の外面から内面に至る貫通孔20が形成され、その貫通孔20の内周に形成された雌ねじ21にビス22がねじ込まれており、そのビス22と雌ねじ21の間のねじ隙間を通って圧力室12内の空気が排出されるようになっている。
【0028】
プランジャ10は、シリンダ9内への挿入端が開放する有底筒状に形成されており、その内周に雌ねじ23が形成されている。プランジャ10内には、雌ねじ23にねじ係合する雄ねじ24を外周に有するスクリュロッド25が組み込まれている。スクリュロッド25は、一端がプランジャ10から突出しており、その突出端が、チェックバルブ14のバルブシート16で支持されている。
【0029】
プランジャ10とスクリュロッド25の間には、リターンスプリング26が組み込まれている。リターンスプリング26は、一端がスクリュロッド25で支持され、他端がスプリングシート27を介してプランジャ10を押圧しており、その押圧によって、プランジャ10をシリンダ9から突出する方向に付勢している。プランジャ10は、シリンダ9からの突出端がチェーンガイド8に当接し、そのチェーンガイド8を介してチェーン6を押圧する。
【0030】
雄ねじ24と雌ねじ23は、プランジャ10をシリンダ9内に押し込む方向の荷重が負荷されたときに圧力を受ける圧力側フランクのフランク角が、遊び側フランクのフランク角よりも大きい鋸歯状に形成されている。
【0031】
バルブシート16は焼結品または鍛造品であり、その強度を高めるために焼入れが施されている。さらに、バルブシート16は、図3に示すように、チェックボール17に対する接触面28に高硬度のクロム拡散層29が設けられている。また、図4に示すように、スクリュロッド25に対する接触面30にもクロム拡散層29が設けられている。
【0032】
チェックボール17に対する接触面28のクロム拡散層29と、スクリュロッド25に対する接触面30のクロム拡散層29は、バルブシート16にクロマイジング処理を施すことにより同時に形成することができる。クロム拡散層29の硬度は、Hv1400〜1800の範囲に設定されており、このクロム拡散層29の形成によってバルブシート16の耐摩耗性を確保している。
【0033】
クロム拡散層29の深さは、5μm以上30μm以下の範囲に設定すると好ましい。5μm以上とすると、クロム拡散層29が摩耗して母材が露出するのを防止することができ、30μm以下とすると、クロム拡散層29の剥離を防止することができる。
【0034】
次に、このチェーンテンショナ1の動作例を説明する。
【0035】
エンジン作動中、チェーン6の振動に応じてプランジャ10が前進と後退を繰り返し、そのプランジャ10の動きに合わせてチェックバルブ14が開閉する。ここで、チェーン6の張力が小さくなると、プランジャ10がリターンスプリング26の付勢力によって突出方向に移動し、チェーン6の弛みを吸収する。このとき、オイルポンプから供給される作動油が、給油通路13を通って圧力室12に流入するので、プランジャ10は速やかに移動する。
【0036】
一方、エンジン作動中にチェーン6の張力が大きくなると、そのチェーン6の張力によって、プランジャ10が押し込み方向に移動し、チェーン6の緊張を吸収する。このとき、圧力室12内の作動油が、プランジャ10とシリンダ9の摺動面間のリーク隙間19を通って流出し、ダンパ作用が生じるので、プランジャ10はゆっくりと移動する。また、スクリュロッド25は、チェーン6の振動によって徐々に回転し、プランジャ10の押し込み方向への移動を許容する。
【0037】
エンジン停止時に、カムシャフト4に接続したカム(図示せず)の停止位置によってチェーン6の張力が大きくなる場合があるが、この場合、チェーン6が振動しないので、プランジャ10の雌ねじ23がスクリュロッド25の雄ねじ24で受け止められ、プランジャ10の位置が固定される。そのため、エンジンを再始動するときに、チェーン6の弛みを生じにくく、円滑なエンジン始動が可能である。
【0038】
このチェーンテンショナ1は、バルブシート16のチェックボール17に対する接触面28にクロム拡散層29が設けられているので、バルブシート16のチェックボール17に対する接触面28が摩耗しにくく、チェックボール17が弁孔15を閉じたときにチェックボール17とバルブシート16の間に隙間が生じにくい。そのため、長期にわたって安定したダンパ作用を発揮することができる。
【0039】
また、このチェーンテンショナ1は、バルブシート16のスクリュロッド25に対する接触面30にもクロム拡散層29が設けられているので、バルブシート16のスクリュロッド25に対する接触面30の摩耗が抑えられ、スクリュロッド25とバルブシート16の間の摩擦抵抗が増加しにくい。そのため、エンジン作動中、チェーン6の張力が大きくなったときに、スクリュロッド25が確実に回転して、プランジャ10の押し込み方向への移動を許容する。
【0040】
ここで、バルブシート16のチェックボール17に対する接触面28のクロム拡散層29は、バルブシート16のスクリュロッド25に対する接触面30のクロム拡散層29と同時に形成することができるので、低コストである。
【0041】
上記実施形態では、バルブシート16の表面に設ける高硬度層としてクロム拡散層29を例に挙げて説明したが、クロム拡散層29にかえて、バナジウム拡散層を採用してもよい。この場合、バナジウム拡散層の硬度をHv2000〜2600とすると、バルブシート16の耐摩耗性を確保することができる。バナジウム拡散層の深さは、5μm以上とすると、バナジウム拡散層が摩耗して母材が露出するのを防止することができ、30μm以下とすると、バナジウム拡散層の剥離を防止することができる。
【0042】
また、クロム拡散層29にかえて、ダイヤモンドライクカーボン層を採用してもよい。この場合、ダイヤモンドライクカーボン層の硬度をHv1500〜2000とすると、バルブシート16の耐摩耗性を確保することができる。ダイヤモンドライクカーボン層の深さは、5μm以上とすると、ダイヤモンドライクカーボン層が摩耗して母材が露出するのを防止することができ、10μm以下とすると、ダイヤモンドライクカーボン層中の残留応力によってダイヤモンドライクカーボン層の密着力が低下するのを防止することができる。
【0043】
図5に、この発明の第2実施形態のチェーンテンショナ41を示す。第1実施形態に対応する部分は、同一の符号を付して説明を省略する。
【0044】
シリンダ9の内周には、レジスタリング42を収容する収容溝43が形成され、その収容溝43に収容されたレジスタリング42が、プランジャ10の外周を弾性的に締め付けている。プランジャ10の外周には、軸方向に一定の間隔をおいて複数の円周溝44が形成されており、レジスタリング42は、その円周溝44に係合している。
【0045】
各円周溝44内には、プランジャ10をシリンダ9から突出する方向に押圧したときに、レジスタリング42を拡径させてプランジャ10の移動を許容するテーパ面45と、プランジャ10をシリンダ9内に押し込む方向に押圧したときに、レジスタリング42を係止してプランジャ10の移動を制限するストッパ面46とが設けられており、エンジン停止時にチェーン6の張力が大きくなった場合に、円周溝44とレジスタリング42との係合によって、プランジャ10の押し込み方向の移動が制限されるようになっている。
【0046】
圧力室12内の圧力変動に対するチェックバルブ14の応答性を高めるため、チェックボール17とリテーナ18の間には、チェックボール17をリテーナ18に向けて付勢するバルブスプリング47が組み込まれている。
【0047】
バルブシート16は、第1実施形態と同様、チェックボール17に対する接触面28に高硬度のクロム拡散層(図示せず)が設けられている。クロム拡散層の硬度は、Hv1400〜1800の範囲に設定されており、クロム拡散層の深さは、5μm以上30μm以下の範囲に設定されている。
【0048】
このチェーンテンショナ41も、第1実施形態と同様、バルブシート16のチェックボール17に対する接触面28にクロム拡散層が設けられているので、バルブシート16のチェックボール17に対する接触面28が摩耗しにくく、チェックボール17が弁孔15を閉じたときにチェックボール17とバルブシート16の間に隙間が生じにくい。そのため、長期にわたって安定したダンパ作用を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】この発明の第1実施形態のチェーンテンショナを組み込んだチェーン伝導装置を示す正面図
【図2】図1のチェーンテンショナ近傍の拡大断面図
【図3】図2のバルブシートのチェックボールに対する接触面近傍の拡大断面図
【図4】図2のバルブシートのスクリュロッドに対する接触面近傍の拡大断面図
【図5】この発明の第2実施形態のチェーンテンショナを示す拡大断面図
【符号の説明】
【0050】
1 チェーンテンショナ
9 シリンダ
10 プランジャ
12 圧力室
13 給油通路
14 チェックバルブ
15 弁孔
16 バルブシート
17 チェックボール
18 リテーナ
23 雌ねじ
24 雄ねじ
25 スクリュロッド
26 リターンスプリング
28 チェックボールに対する接触面
29 クロム拡散層
30 スクリュロッドに対する接触面
41 チェーンテンショナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が開口した有底筒状のシリンダ(9)内にプランジャ(10)を軸方向に摺動可能に挿入し、そのプランジャ(10)をシリンダ(9)から突出する方向に付勢するリターンスプリング(26)を設け、前記シリンダ(9)とプランジャ(10)とで囲まれた圧力室(12)内に作動油を導入する給油通路(13)を設け、その給油通路(13)の圧力室(12)側の端部に作動油の逆流を防止するチェックバルブ(14)を設け、そのチェックバルブ(14)を、弁孔(15)を有するバルブシート(16)と、そのバルブシート(16)に接触、離反して前記弁孔(15)を開閉するチェックボール(17)と、そのチェックボール(17)の移動範囲を規制するリテーナ(18)とで構成したチェーンテンショナにおいて、
前記バルブシート(16)のチェックボール(17)に対する接触面(28)に高硬度層(29)を設けたことを特徴とするチェーンテンショナ。
【請求項2】
前記プランジャ(10)をシリンダ(9)内への挿入端が開口する有底筒状に形成し、そのプランジャ(10)の内周に形成した雌ねじ(23)にねじ係合する雄ねじ(24)を外周に有するスクリュロッド(25)を設け、そのスクリュロッド(25)の前記プランジャ(10)からの突出端を前記チェックバルブ(14)のバルブシート(16)で支持し、そのバルブシート(16)の前記スクリュロッド(25)に対する接触面(30)に前記高硬度層(29)を設けた請求項1に記載のチェーンテンショナ。
【請求項3】
前記高硬度層(29)がクロム拡散層である請求項1または2に記載のチェーンテンショナ。
【請求項4】
前記クロム拡散層(29)の硬度がHv1400〜1800の範囲にある請求項3に記載のチェーンテンショナ。
【請求項5】
前記クロム拡散層(29)の深さが5〜30μmの範囲にある請求項3または4に記載のチェーンテンショナ。
【請求項6】
前記高硬度層(29)がバナジウム拡散層である請求項1または2に記載のチェーンテンショナ。
【請求項7】
前記バナジウム拡散層の硬度がHv2000〜2600の範囲にある請求項6に記載のチェーンテンショナ。
【請求項8】
前記バナジウム拡散層の深さが5〜30μmの範囲にある請求項6または7に記載のチェーンテンショナ。
【請求項9】
前記高硬度層(29)がダイヤモンドライクカーボン層である請求項1または2に記載のチェーンテンショナ。
【請求項10】
前記ダイヤモンドライクカーボン層の硬度がHv1500〜2000の範囲にある請求項9に記載のチェーンテンショナ。
【請求項11】
前記ダイヤモンドライクカーボン層の深さが5〜10μmの範囲にある請求項9または10に記載のチェーンテンショナ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−90965(P2010−90965A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−260698(P2008−260698)
【出願日】平成20年10月7日(2008.10.7)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】