説明

チタンゼオライト触媒の製造方法

炭化水素の転化反応に用いる触媒の製造方法であって、前記触媒はチタンゼオライトと炭質材料を含み、前記触媒は該触媒に含まれるチタンゼオライトの総重量に対して0.01〜0.5重量%の量で前記炭質材料を含み、当該方法は、
(i)チタンゼオライトを含む触媒を製造する工程;
(ii)前記触媒を、前記炭化水素転化反応において使用する前に、不活性雰囲気中で少なくとも一種の炭化水素を含む流体に接触させることにより、炭質材料を、該触媒に含まれるチタンゼオライトの総重量に対して0.01〜0.5重量%の量で(i)の触媒に付着させて炭質材料含有触媒を得る工程、
を含み、
(ii)において前記触媒を酸素含有ガスに接触させないことを特徴とする製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素の転化反応に用いる触媒の製造方法であって、前記触媒はチタンゼオライトと炭質材料を含み、前記触媒は該触媒に含まれるチタンゼオライトの総重量に対して0.01〜0.5重量%の量で前記炭質材料を含み、当該方法は、
(i)チタンゼオライトを含む触媒を製造する工程;
(ii)前記触媒を、前記炭化水素転化反応において使用する前に、不活性雰囲気中で少なくとも一種の炭化水素を含む流体に接触させることにより、炭質材料を、該触媒に含まれるチタンゼオライトの総重量に対して0.01〜0.5重量%の量で(i)の触媒に付着させて炭質材料含有触媒を得る工程、
を含み、
(ii)において前記触媒を酸素含有ガスに接触させないことを特徴とする製造方法に関する。また、本発明は、上記方法で得られる触媒であって、該炭質材料をチタンゼオライトの総重量に対して0.01〜0.5重量%で含むものに関する。また、本発明は、上記触媒を炭化水素の転化、特に酸化に使用する方法に関する。また、本発明は、少なくとも一種のチタンゼオライトと炭質材料を含む触媒の存在下でプロピレンオキシドを製造するプロセスであって、前記触媒がチタンゼオライトの総重量に対して0.01〜0.5重量%で前記炭質材料を含み、前記プロセスが、
(i)チタンゼオライトを含む触媒を提供する工程、
(ii)前記触媒を、前記炭化水素転化反応で使用する前に、不活性雰囲気中で少なくとも一種の炭化水素を含む流体と接触させることにより、炭質材料を、該触媒に含まれるチタンゼオライトの総重量に対して0.01〜0.5重量%の範囲で(i)の触媒に付着させて炭質材料含有触媒を得る工程、
(iii)(ii)で得られた触媒を、プロピレン、ヒドロペルオキシド及び少なくとも一種の溶媒を含む反応混合物に接触させる工程、
を含み、(ii)において、前記触媒を酸素含有ガスに接触させないプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
炭化水素の転化過程中で使用される触媒で、その使用前に炭化水素で前処理されているものは、すでに報告されている。
【0003】
前もって炭化された触媒の製造方法が、例えばUS4,001,346に記載されており、この特許には炭化水素の分解で形成されるコークス層を析出させて、ZSM−5構造を有するアルミノケイ酸ゼオライトを含む触媒を修飾する方法が開示されている。US4,001,346に記載の前処理工程は二工程からなる方法であり、第一段階目では、コークス含量が約15〜約75重量%である触媒が与えられ(このコークスは実質的にこの触媒を非活性化する)、第二段階目では、この触媒が高温の酸素含有雰囲気に曝されて、コークス含量を目標値にまで減少させられている。この前処理は、興味ある反応中で、具体的にはトルエンのメチル化によるパラキシレンの選択的製造中で、非炭化触媒を用いて実施され、その後空気流中で析出物を燃焼させてこの触媒を再生する。
【0004】
同様に、EP0272830B1には、触媒上に炭質材料を付着させてアルキル化活性を抑え、続いてこの触媒を高温でガス状酸化剤を用いて処理して約95重量%を超える量の炭質材料を除くことからなるアルキル化触媒の活性化が記載されている。EP0272830B1の方法にかけられる触媒は、フレッシュな触媒、即ち興味ある反応で既に使用されていないもの、
あるいは失活したあるいは部分的に失活した触媒である。したがってここでも、過剰の炭質材料を触媒上に付着させ、活性な触媒を得るために続いて酸化剤での処理を必要とする二工程法が記載されている。
【0005】
同様に、触媒の活性化と再生が、WO01/41926A1に記載されている。ここでは、失活した水酸化触媒をオゾンに接触させてこの水酸化触媒を活性化させる方法が記載されている。
【0006】
US4,638,106には、アルコール(例えばメタノール)やそのエーテル誘導体(例えばジメチルエーテル)の転化に用いられる酸性のアルミノケイ酸塩触媒またはガリケイ酸触媒の触媒寿命を改善する方法が述べられている。US4,638,106は、二工程法であり、ここでは、まず小量のコークス前駆体をゼオライトの周りに析出させ、次いで得られた触媒を不活性雰囲気中で熱処理してこのコークス前駆体をコークスに変換する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】US4,001,346
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような先行技術のもとで、本発明の目的は、炭化水素の転化反応に用いると改善された触媒性能を示す触媒の製造方法を提供することである。また、本発明の目的は、このような改善された触媒と、この触媒の炭化水素の転化への、特にプロピレンのエポキシ化への使用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
驚くべきことに、炭化水素転化反応で触媒を使用する前に炭質材料をこの触媒に付着させるという特異な前処理工程で、改善された触媒が得られることが明らかとなった。
【0010】
したがって、本発明は、炭化水素の転化反応に用いる触媒の製造方法であって、前記触媒はチタンゼオライトと炭質材料を含み、前記触媒は該触媒に含まれるチタンゼオライトの総重量に対して0.01〜0.5重量%の量で前記炭質材料を含み、当該方法は、
(i)チタンゼオライトを含む触媒を製造する工程;
(ii)前記触媒を、前記炭化水素転化反応において使用する前に、不活性雰囲気中で少なくとも一種の炭化水素を含む流体に接触させることにより、炭質材料を、該触媒に含まれるチタンゼオライトの総重量に対して0.01〜0.5重量%の量で(i)の触媒に付着させて炭質材料含有触媒を得る工程、
を含み、
(ii)において前記触媒を酸素含有ガスに接触させないことを特徴とする製造方法を提供する。
【0011】
先行技術の方法とは対照的に、本発明の方法においては、新規の触媒を得るために、チタンゼオライト含有触媒を、不活性雰囲気中で少なくとも一種の炭化水素を含む流体で処理する。上記の前処理方法で、炭質材料が制御された状態で触媒上に形成される。したがって、この触媒は過剰の炭質材料で不活性化されているのではない。代わって、制御された量の炭質材料を表面上に持つ活性触媒が直接得られる。また、得られた触媒は、付着工程の後で酸素含有ガスで処理されるのでなく、また炭質材料の付着後にUS4,638,106の熱処理にかけられるのでもない。驚くべきことに、本発明の方法で製造される触媒は、炭化水素転化反応で、好ましくは酸化反応、さらに好ましくはプロピレンのエポキシ化などのエポキシ化反応で用いられると、高活性値を維持したまま高選択的な変換を行うことができることがわかった。
【0012】
本発明の方法の工程(i)では、チタンゼオライトを含む触媒が製造される。このチタンゼオライトに関して、上記チタンゼオライト含有触媒が所望の炭化水素転化プロセスに触媒として使用できる限り、特に制限はない。
【0013】
(i)の少なくとも一種のチタンゼオライトに関して、制限はない。
【0014】
チタンゼオライトは、アルミニウムを含まず、ケイ酸塩格子中のSi(IV)の一部がTi(IV)のチタンで置換されたゼオライトである。これらのチタンゼオライトは、特にMWW型の結晶構造をもつものや、これらの可能な製造方法が、例えばWO02/28774A2に記載されており、その内容を本発明に引用として組み込む。
【0015】
すべての好適なチタンゼオライトやこれらの材料の二種以上の混合物、例えば、特にメソ多孔性及び/又は微多孔性のチタンゼオライトが使用される。本発明で用いられる「メソポア」は、DIN66134により求めた孔径が2nm〜50nmの範囲の空孔をいい、「マイクロポア」は、2nm未満の孔径をいう。
【0016】
この点で、ペンタシル構造をもつチタンゼオライトをあげることができる。これらのチタンゼオライトのいくつかが、例えば、W.M. Meier、D.H. Olson and Ch. Baerlocherの、「ゼオライト構造型のアトラス](Atlas ofzeolite Structure Types)、Elsevier、4版、London 1996に記載されている。
【0017】
特に、本発明は、上述のような方法と、上記方法で得られる、少なくとも一種のチタンゼオライトを含む触媒で、その少なくとも一種のチタンゼオライトが、X線回折により構造型が、ABW、ACO、AEI、AEL、AEN、AET、AFG、AFI、AFN、AFO、AFR、AFS、AFT、AFX、AFY、AHT、ANA、APC、APD、AST、ASV、ATN、ATO、ATS、ATT、ATV、AWO、AWW、BCT、BEA、BEC、BIK、BOG、BPH、BRE、CAN、CAS、SCO、CFI、SGF、CGS、CHA、CHI、CLO、CON、CZP、DAC、DDR、DFO、DFT、DOH、DON、EAB、EDI、EMT、EON、EPI、ERI、ESV、ETR、EUO、FAU、FER、FRA、GIS、GIU、GME、GON、GOO、HEU、IFR、IHW、ISV、ITE、ITH、ITW、IWR、IWW、JBW、KFI、LAU、LEV、LIO、LIT、LOS、LOV、LTA、LTL、LTN、MAR、MAZ、MEI、MEL、MEP、MER、MFI、MFS、MON、MOR、IVIOZ、MSO、MTF、MTN、MTT、MTW、MWW、NAB、NAT、NES、NON,NPO、NSI、OBW、OFF、OSI、OSO、OWE、PAR、PAU、PHI、PON、RHO、RON、RRO、RSN、RTE、RTH、RUT、RWR、RWY、SAO、SAS、SAT、SAV、SBE、SBS、SBT、SFE、SFF、SFG、SFH、SFN、SFO、SGT、SOD、SOS、SSY、STF、STI、STT、TER、THO、TON、TSC、UEI、UFI、UOZ、USI、UTL、VET、VFI、VNI、VSV、WIE、WEN、YUG、ZON、あるいはこれらの一種以上の混合物に帰属できるものに関する。
【0018】
本発明においては、MFI、MEL、MWW、BEAまたはFERの構造、あるいはこれらの二つ以上の混合構造を持つチタンゼオライト、例えば、混合MFI/MEL構造、MFI/MWW構造、MFI/FER構造、MFI/BEA構造、MEL/MWW構造、MEL/BEA構造、MEL/FER構造、MWW/BEA構造、MWW/FER康応またはMFI/MEL/MWW構造が好ましい。特に好ましい少なくとも一種のチタンゼオライトは、MFI構造またはMWW構造または混合MFI/MWW構造をもつゼオライトであり、より好ましくはMFI構造をもつゼオライトである。
【0019】
したがって、本発明はまた、その触媒がMFI、MEL、MWW、BEAまたはFER構造を有する、あるいはこれらの二種以上の混合構造を有する少なくとも一種のチタンゼオライトを触媒含む方法を、特に好ましくは、その触媒がMFI構造を有する少なくとも一種のチタンゼオライトである方法を提供する。
【0020】
MFI構造をとるチタンゼオライトは、特異なX線回折パターンにより、また赤外領域における約960cm-1の格子振動帯により特定される。このように、これらのチタニウムゼオライトは、アルカリ金属チタネートや結晶性および非晶質TiO2相とは異なっている。
【0021】
この少なくとも一種のチタンゼオライトは、さらに周期律表のIIA、IVA、VA、VIA、VIIA、VIIIB、IB、IIB、IIIB、IVB、VB族から選ばれる、例えばアルミニウムやホウ素、ジルコニウム、クロム、スズ、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、バナジウム、鉄、ニオブ、コバルト、ニッケル、またはこれら元素の二種以上の混合物のからなる群から選ばれる元素を含むことができる。この触媒が二種以上のチタンゼオライトを、例えば五種、四種、三種または二種のチタンゼオライト含む場合、これらのチタンゼオライトは、同一あるいは異なる他元素を、あるいは異なる複数の元素を含むことができる。本発明のチタンゼオライトが実質的にSiとOとTiとからなることが最も好ましい。
【0022】
また、本発明は、この触媒が上述の方法で得られる、少なくとも一種のチタンゼオライトと触媒中に含まれるチタンゼオライトの総量に対して0.01〜0.5重量%の範囲にある炭質材料とからなる触媒であり、その少なくとも一種のチタニウムゼオライトが、MFI、MEL、MWW、BEAまたはFER構造、あるいはこれらの二種以上の混合構造をもつチタンゼオライトであるものに関する。
【0023】
(i)の触媒に含まれるチタンゼオライトは、原則的にはいずれの考えうる方法で製造することができる。通常、本発明の少なくとも一種のチタンゼオライトの合成は、酸化ケイ素の活性供給源と酸化チタンなどのチタン供給源と、さらに水懸濁液中で、例えば塩基性懸濁液で所望のチタンゼオライトを形成することのできる少なくとも一種のテンプレート化合物とを含む水熱系で行われる。通常、有機テンプレートが用いられる。好ましくは、合成は、高温で、例えば150〜200℃の範囲の、好ましくは160〜180℃の範囲の温度で行われる。
【0024】
原則的には、いずれの適当な化合物を酸化ケイ素供給源として用いることもできる。代表的な酸化ケイ素(SiO2)供給源には、ケイ酸塩やシリカヒドロゲル、ケイ酸、コロイダルシリカ、ヒュームドシリカ、テトラアルコキシシラン、ケイ素水酸化物、沈降性シリカ、クレーが含まれる。いわゆる「湿式法二酸化ケイ素」といわゆる「乾式法二酸化ケイ素」の両方が使用可能である。これらの場合、この二酸化ケイ素は、非晶質であることが特に好ましく、その二酸化ケイ素粒子の大きさは、例えば5〜100nmの範囲であり、二酸化ケイ素粒子の表面積は、例えば50〜500m2/gの範囲である。コロイド状二酸化ケイ素は、特にルドックス(R)、シトン(R)、ナルコ(R)またはスノーテックス(R)として市販されている。「湿式法」二酸化ケイ素は、特にハイシル(R)、ウルトラシル(R)、ブルカシル(R)、サントセル(R)、バルロン・エステルシル(R)、トクシル(R)またはニップシル(R)として市販されている。「乾式法」二酸化ケイ素は、特にアエロジル(R)、レオロシル(R)、キャブ−O−シル(R)、フランシル(R)またはアークシリカ(R)として市販されている。また、二酸化ケイ素前駆化合物を酸化ケイ素源として用いることも本発明の範囲に含まれる。例えば、テトラエトキシシランまたはテトラプロポキシシランなどのテトラアルコキシシランが前駆化合物としてあげられる。
【0025】
テンプレートとしては、所望のゼオライト構造が得られるならいずれのテンプレートを使用することもできる。窒素またはリンを含む有機化合物が、例えば第三級アミンや4級アンモニウム化合物(例えば、テトラメチルアンモニウムやテトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、ジベンジルジメチルアンモニウム、ジベンジルジエチルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム、2−(ヒドロキシアルキル)トリアルキルアンモニウム(ただし、アルキルは、メチル、またはエチル、またはメチルとエチル))などの窒素含有有機塩基が、この少なくとも一種のチタンゼオライトの製造用のテンプレートとして好ましく用いられる。本方法で有用なアミンの非限定的な例としては、トリメチルアミンやトリエチルアミン、トリプロピルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブテンジアミン、ペンテンジアミン、プロパンジアミン、ブタンジアミン、ペンタンジアミン、ヘキサンジアミン、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ベンジルアミン、アニリン、ピリジン、ピペリジン、ピロリジンがあげられる。本発明においては、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシドが特に好ましい。特に、MFI構造をもつチタンゼオライト(チタンシリカライト1(TS−1)としても知られている)の製造には、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、より好ましくはテトラ−n−プロピルアンモニウムヒドロキシドが用いられる。
【0026】
本発明の方法のある好ましい実施様態においては、後述のように、この少なくとも一種の気孔形成剤が、後の工程で焼成により除かれる。
【0027】
通常チタンゼオライトの合成はオートクレーブ中で回分的に行ない、チタンゼオライトが得られるまでこの反応懸濁液をそこで発生する圧力に長時間あるいは数日間かける。本発明のある好ましい実施様態によれば、この合成が一般的には高温で進行し、その水熱結晶化工程中の温度が、通常150〜200℃の範囲、好ましくは160〜180℃の範囲である。通常この反応は数時間から数日間の範囲の時間行われ、好ましくは12時間〜48時間、より好ましくは20〜30時間の範囲の時間行われる。
【0028】
また、これらの合成中に種結晶を加えることも考えられる。当業界では公知のように、種結晶の添加のよりゼオライトの結晶化を早め、結晶化速度を上昇させることができる。使用する場合、これらの種結晶は所望のチタンゼオライトの結晶であってもよいし、異なるチタンゼオライトの結晶であってもよい。
【0029】
本発明のある実施様態においては、得られる結晶性チタンゼオライトが反応懸濁液から分離され、必要なら洗浄、乾燥される。懸濁液から結晶性チタンゼオライトを分離するあらゆる既知の方法が使用可能である。特に濾過や限外濾過、透析濾過、遠心分離の方法をあげる必要がある。
【0030】
得られる結晶性チタンゼオライトを洗浄する場合、この洗浄工程をいずれの適当な洗浄物質を用いて行うことができ、例えば、水や、アルコール(具体的にはメタノール、エタノール、またはメタノールとプロパノール、またはエタノールとプロパノール、またはメタノールとエタノールとプロパノール)、または水と少なくとも一種のアルコール(例えば、水とエタノールまたは水とメタノール、または水とエタノール、または水とプロパノール、または水とメタノールとエタノール、または水とメタノールとプロパノール、または水とエタノールとプロパノール、または水とエタノールとメタノールとプロパノール)を用いて実施できる。水、または水と少なくとも一種のアルコールの混合物、好ましくは水とエタノールが、洗浄物質として用いられる。
【0031】
この少なくとも一回の洗浄方法に加えて、あるいはこれに置き換えて、分離されたチタンゼオライトを、濃酸または希酸あるいは二種以上の酸の混合物で処理することもできる。
【0032】
チタンゼオライトを少なくとも一種の酸で洗浄及び/又は処理する場合、後述のように本発明の特に好ましい実施様態においては、これに続いて少なくとも一回の乾燥工程が行われる。
【0033】
結晶性チタンゼオライトの乾燥は、一般に80〜160℃の範囲の温度で行われ、好ましくは90〜145℃、特に好ましくは100〜130℃の範囲の温度で行われる。
【0034】
他の実施様態においては、濾過や限外濾過、透析濾過、遠心分離法などの分離方法に代えて、この懸濁液を噴霧方法に、例えば噴霧造粒や噴霧乾燥にかけることができる。
【0035】
結晶性チタンゼオライトの分離を噴霧法で行う場合は、分離工程と乾燥工程を結合して単一工程としてもよい。その場合、反応懸濁液そのものを使用できるし、あるいは濃縮した反応懸濁液を使用することもできる。また、噴霧乾燥または噴霧造粒の前に、懸濁液に−反応懸濁液そのものにまたは濃縮懸濁液に−、例えば少なくとも一種の適当なバインダー及び/又は少なくとも一種の気孔形成剤として、適当な添加物を添加することができる。適当なバインダーは後で詳述する。気孔形成剤として、上述の気孔形成剤のすべてを使用可能である。懸濁液を噴霧乾燥する場合、もし添加するなら、気孔形成剤を二つの方法で添加可能である。まず、気孔形成剤を噴霧乾燥の前に反応混合物に添加できる。しかし、気孔形成剤の一部を噴霧乾燥の前に反応混合物に添加し、気孔形成剤の残りを噴霧乾燥後の材料に添加することも可能である。
【0036】
懸濁液をまず濃縮して懸濁液中のチタンゼオライトの含量を増やす場合、濃縮は、例えば蒸発で、例えば減圧下での蒸発で行われるか、クロスフロー濾過で行われる。同様に、上記懸濁液を二つの分画に分離してこの懸濁液を濃縮することもできる。その場合、一方の画分に含まれている固体を、濾過、透析濾過、限外濾過または遠心分離法で分離し、任意の洗浄工程及び/又は乾燥工程後に、懸濁液の他の分画に再懸濁させる。このようにして得られる濃縮懸濁液を、次いで噴霧方法に、例えば噴霧造粒や噴霧乾燥にかけることができる。
【0037】
本発明の他の実施様態においては、懸濁液からこの少なくとも一種のチタンゼオライトを分離し、このチタンゼオライトを、必要なら上述の少なくとも一種の適当添加物とともに再懸濁させて濃縮を行う。なおこの場合、再懸濁の前に、チタンゼオライトを少なくとも一回の洗浄工程及び/又は少なくとも一回の乾燥工程にかけてもよい。次いで、再懸濁されたチタンゼオライトをスプレー法に、好ましくは噴霧乾燥にかけてもよい。
【0038】
噴霧乾燥は、よく分散した液固スラリー、懸濁液または溶液で、しばしばさらにバインダーを含むものを噴霧器に送り、熱気流中でフラッシュ乾燥させてスラリー、懸濁液または溶液を直接乾燥する方法である。この噴霧器は、数個の異なる型の噴霧器からなっていてもよい。最もよく用いられるのはホイール噴霧であり、これは、高速回転するホイールまたは円板を用いてスラリーを液滴としてホイールからチャンバー内に飛び出させ、チャンバー槽の壁面上にぶつかる前に瞬間的に乾燥させるものである。この噴霧を、スラリーを静水圧を利用して小さなノズルから押し出す単一流体ノズルで行うこともできる。ノズルからガス圧を用いてスラリーを押し出すマルチ流体ノズルを使用することもできる。噴霧乾燥や噴霧造粒法で得られる噴霧材料は、例えば流動床乾燥と同様に、固体及び/又は中空球を含むことができ、実質的に、例えば直径が5〜500μmの範囲、または5〜300μmの範囲にある球を含んでいてもよい。用いるノズルは、単一部品からなるものであっても複数の部品からなるものであってもよい。回転噴霧装置の使用も可能である。使用するキャリアガスの供給口温度は、例えば200〜600℃の範囲であり、好ましくは300〜500℃の範囲である。このキャリアガスの出口温度は、例えば50〜200℃の範囲である。空気や、酸素含量が最高で10体積%、好ましくは最高で5体積%、より好ましくは5体積%未満、例えば最高で2体積%である希薄空気または酸素窒素混合物を、キャリアガスとしてあげることができる。これらの噴霧方法は、向流または並流で実施できる。
【0039】
好ましくは本発明において、チタンゼオライトは、従来の濾過または遠心分離により反応懸濁液から分離され、必要なら乾燥及び/又は焼成後に、少なくとも一種のバインダー材料及び/又は一種の気孔形成剤の混合物に、より好ましくは水性混合物に再懸濁される。得られた懸濁液は、次いで噴霧乾燥または噴霧造粒にかけることが好ましい。得られる噴霧材料を、上述のように行われる他の洗浄工程にかけてもよい。必要に応じて洗浄された噴霧材料を、次いで上述のようにして乾燥、焼成させる。
【0040】
本発明の他の実施様態においては、上記の懸濁液の噴霧乾燥の前にチタンゼオライトを結晶化させない。したがって、まず、酸化ケイ素の供給源を、好ましくは二酸化ケイ素と酸化チタン供給源とチタンゼオライトを形成可能なテンプレート化合物とを含む懸濁液を調整する。次いで、この懸濁液を噴霧乾燥する。次いで、必要なら他の気孔形成剤を、この噴霧乾燥したチタンゼオライトに添加する。
【0041】
上述の方法で得られる噴霧乾燥したチタンゼオライトは、必要なら少なくとも一回の洗浄方法及び/又は少なくとも一回の酸処理にかけてもよい。少なくとも一回の洗浄方法及び/又は少なくとも一回の酸処理を行う場合、少なくとも一回の乾燥工程及び/又は少なくとも一回の焼成工程が続くことが好ましい。
【0042】
必要に応じてスプレー法で得られた上記の少なくとも一種の結晶性チタンゼオライトを、少なくとも一回の焼成工程にかけてもよく、本発明のある好ましい実施様態においては、この工程は乾燥工程に続いて、あるいは乾燥工程に代えて行われる。この少なくとも一回の焼成工程は、一般には350〜750℃の範囲の温度で、好ましくは400〜700℃、特に好ましくは450〜650℃の範囲の温度で行われる。
【0043】
結晶性チタンゼオライトの焼成は、いずれか適当なガス雰囲気下で行なうことができ、その場合、空気及び/又は希薄空気が好ましい。また、この焼成は、好ましくはマッフル炉、回転コーン及び/又はベルト焼成炉中で行われ、その際の焼成は、一般に1時間以上、例えば1〜24時間または4〜12時間の範囲の時間行われる。本発明の方法においては、例えば、ゼオライト材料を、1回、2回以上、それぞれ少なくとも1時間、例えばそれぞれ4時間〜12時間、好ましくは4時間〜8時間焼成することができ、その際、焼成工程の間の温度を一定とすることができるし、あるいは連続的にまたは非連続的に温度を変化させることができる。焼成を2回以上行う場合、個々の工程での焼成温度は、異なっていても同じであってもよい。
【0044】
したがって、本発明のある好ましい実施様態は、上述の方法であって、懸濁液から、例えば濾過または噴霧乾燥により分離されたチタンゼオライトが、適当な洗浄物質で洗浄され、次いで少なくとも一回の乾燥工程にかけられる方法に関する。乾燥は、一般に80〜160℃の範囲の温度で行われ、好ましくは90〜145℃、特に好ましくは100〜130℃の範囲の温度で行われる。乾燥後に焼成工程が行われることが最も好ましい。この工程は、一般に350〜750℃の範囲の温度で行われ、好ましくは400〜700℃、特に好ましくは450〜650℃の範囲の温度で行われる。
【0045】
上述のようにして製造された結晶性チタンゼオライトは、工程(ii)において直接触媒として使用できる。必要なら、ゼオライト構造及び/又はチタン含量において相互に異なる二つ以上の異なる結晶性チタンゼオライトの混合物が、触媒として用いられる。しかしながら、結晶体自体を触媒として用いるのでなく、少なくとも一種のチタンゼオライトを含む成形体に加工された結晶体を使用することが望ましいことが多い。したがって、ある好ましい実施様態においては、上述のように少なくとも一種のチタンゼオライトを含む成形体が触媒として用いられる。
【0046】
一般に、成形体を触媒として用いる場合、この触媒は、本発明のチタンゼオライトに加えて、あらゆる考えうる他の化合物を、例えば、特に少なくとも一種のバインダー及び/又は少なくとも一種の気孔形成剤を含んでいてもよい。また、この触媒は、上記の少なくとも一種のバインダー及び/又は少なくとも一種の気孔形成剤の代わりに、あるいは上記の少なくとも一種のバインダー及び/又は少なくとも一種の気孔形成剤に加えて、少なくとも一種の糊剤を含んでいてもよい。
【0047】
バインダーとしては、成形される少なくとも一種のチタンゼオライトを付着及び/又は結合させて、バインダーが無ければ存在しうる物理吸着以上に持っていくことのできるすべての化合物が好適である。このバインダーの例としては、SiO2やAl23、TiO2、ZrO2、MgO、クレーなどの金属酸化物や、これらの化合物の二種以上の混合物があげられる。粘土鉱物や、α−、β−、γ−、δ−、η−、κ−、χ−またはθ−アルミナなどの天然アルミナや人造アルミナや、ギブサイトやバイヤライト、ベーマイト、擬ベーマイト、またはトリアルミニウムトリイソプロピラートなどのアルコキシアルミン酸エステルなどのこれらの無機または有機金属前駆化合物が、Al23バインダーとして特に好ましい。さらに好ましいバインダーは、高極性基と無極性基を持つ両親媒性化合物とグラファイトである。他のバインダーは、例えば、モンモリロナイトやカオリン、メタカオリン、ヘクトライト、ベントナイト、ハロイサイト、ディッカイト、ナクライトまたはアナクサイトなどのクレーである。
【0048】
これらのバインダーはそのまま使用できる。成形体の製造中に、少なくとも一種の他の工程でバインダーの前駆化合物を使用することも本発明の範囲に含まれる。このようなバインダー前駆体の例としては、テトラアルコキシシラン、テトラアルコキシチタネート、テトラアルコキシジルコネートまたは二つ以上の異なるテトラアルコキシシランの混合物、または二つ以上の異なるテトラアルコキシチタネートの混合物、または二つ以上の異なるテトラアルコキシジルコネートの混合物、または少なくとも一種のテトラアルコキシシランと少なくとも一種のテトラアルコキシチタネートの混合物、または少なくとも一種のテトラアルコキシシランと少なくとも一種のテトラアルコキシジルコネートの混合物、または少なくとも一種のテトラアルコキシチタネートと少なくとも一種のテトラアルコキシジルコネートの混合物、または少なくとも一種のテトラアルコキシシランと少なくとも一種のテトラアルコキシチタネートと少なくとも一種のテトラアルコキシジルコネートの混合物があげられる。
【0049】
本発明において、完全にまたは部分的にSiO2からなるバインダーが、あるいは少なくとも一つの他の工程でSiO2を形成するSiO2前駆体からなるバインダーが、極めて好ましい。この点で、コロイダルシリカといわゆる「湿式法」シリカといわゆる「乾式法」シリカのすべてが使用できる。このシリカが、非晶質シリカであって、そのシリカ粒子の大きさが例えば5〜100nmの範囲にあり、シリカ粒子の表面積が50〜500m2/gの範囲にあるものが特に好ましい。
【0050】
コロイダルシリカ、好ましくはアルカリ性及び/又はアンモニア性溶液としてのコロイダルシリカが、より好ましくはアンモニア性溶液としてのコロイダルシリカが、特に例えば、ルドックス(R)、シトン(R)、ナルコ(R)またはスノーテックス(R)として市販されている。「湿式法」シリカは、特に例えばハイ・シル(R)、ウルトラシル(R)、ブルカシル(R)、サントセル(R)、バルロン−エステルシル(R)、トクシル(R)またはニップシル(R)として市販されている。「乾式法」シリカは、特に、例えばアエロ−シル(R)、レオロシル(R)、キャブ−O−シル(R)、フランシル(R)またはアークシリカ(R)として市販されている。本発明においては、特にコロイダルシリカのアンモニア性溶液が好ましい。したがって、本発明は、上述のように成形体を含む触媒であって、該成形体が上述のようにチタンゼオライトを含み、さらにバインダー材料としてSiO2を含み、(i)で用いるバインダーがSiO2を含有するあるいは形成するバインダーである触媒に関する。
【0051】
しかしながら本発明において、このチタンゼオライトをバインダーを使用せずに成形することもできる。
【0052】
したがって本発明はまた、上記方法であって、(i)において、上記の少なくとも一種のチタンゼオライトを成形して、少なくとも一種のチタンゼオライトと好ましくは少なくとも一種のバインダー、特にシリカバインダーを含む成形体を得る方法に関する。
【0053】
望ましいなら、さらなる加工のために、また触媒成形体の形成のために、チタンゼオライトと少なくとも一種のバインダーまたは少なくともバインダー−前駆体の混合物に、少なくとも一種の気孔形成剤を添加してもよい。本発明の成形過程で使用可能な気孔形成剤は、製品の成形体に特定の孔径及び/又は特定の孔径分布及び/又は特定の気孔体積を付与するすべての化合物である。特に、製品の成形体に、マイクロポア及び/又はマイクロポア、特にメソポアとマイクロポアを与える気孔形成剤が好ましい。
【0054】
したがって、本発明はまた、上述の方法であって、(i)においてチタンゼオライトを成形して、チタンゼオライトと好ましくは少なくとも一種のバインダー、特にシリカバインダーを含む成形体、特にマイクロポアとメソポアをもつ成形体を得る方法に関する。
【0055】
使用可能な気孔形成剤の例としては、上記の気孔形成剤があげられる。本発明の成形過程で用いられる気孔形成剤は、水中または水系溶媒混合物中に分散可能、懸濁可能または乳化可能なポリマーであることが好ましい。特に好ましいポリマーは、重合型のビニル化合物であり、具体的にはポリエチレンオキシドなどのポリアルキレンオキシド、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、セルロースまたはメチルセルロースなどのセルロース誘導体などの炭水化物、または糖類または天然繊維などである。他の好適な気孔形成剤は、例えばパルプまたはグラファイトである。
【0056】
所望なら、上記の孔径分布を達成するために二種以上の気孔形成剤を使用してもよい。本発明の方法の特に好ましい実施様態においては、後述のように気孔形成剤を焼成で除いて多孔性触媒成形体が得られる。チタンゼオライトの成形のために、少なくとも一種のバインダーとチタンゼオライトの混合物にメソポア及び/又はマイクロポアを与える気孔形成財、特に好ましくはメソポアを与える気孔形成剤を加えることが好ましい。
【0057】
しかしながら本発明において、このチタンゼオライトを気孔形成剤を使用せずに触媒成形体に得ることもできる。
【0058】
工程(i)の前に、触媒成形体を得るために成形される混合物に、バインダーと必要なら気孔形成剤に加えて、他の成分を、例えば少なくとも一種の糊剤を添加することもできる。
【0059】
本発明の方法で少なくとも一種の糊剤を使用する場合、この糊剤は上記の少なくとも一種の気孔形成剤の代わりに又は加えて用いられる。特に気孔形成剤として作用することもできる化合物を、糊剤として使用できる。用いることのできる糊剤は、本目的に好適な既知のすべての化合物である。これらは、好ましくはセルロースや、メチルセルロースなどのセルロース誘導体、バレイショ澱粉などの澱粉、壁紙プラスター、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリイソブテンまたはポリテトラヒドロフランなどの有機ポリマー、特に親水性ポリマーである。水、アルコールまたはグリコール、またはこれらの混合物を、例えば水とアルコールまたは水とグリコールの混合物、具体的には水とメタノール、または水とエタノール、または水とプロパノール、または水とプロピレングリコールを糊剤として使用することもあげられる。セルロース、セルロース誘導体、水、及びこれら化合物の二種以上の混合物、例えば水とセルロースまたは水とセルロース誘導体を、糊剤として用いることが好ましい。本発明の方法の特に好ましい実施様態においては、以下に述べるように、この少なくとも一種の糊剤が焼成により除かれて成形体を与える。
【0060】
本発明の他の実施様態においては、成形して成形体を与える混合物に、少なくとも一種の酸性添加物を添加することができる。酸性添加物を使用する場合、焼成で除去可能な有機酸性化合物が好ましい。この点で、ギ酸やシュウ酸及び/又はクエン酸などのカルボン酸があげられる。これら酸性化合物を二種以上で使用することもできる。
【0061】
これらの成分の、上記成形して成形体を与える混合物への添加順序は特に重要ではない。例えばバインダーと気孔形成剤と糊剤と、また必要なら少なくとも一種の酸性化合物の組合せを用いる場合、まず少なくとも一種のバインダーを、次いで少なくとも一種の気孔形成剤、次いで少なくとも一種の酸性化合物、最後に少なくとも一種の糊剤を添加することもできるし、またこの順序を、少なくとも一種のバインダー、少なくとも一種の気孔形成剤、少なくとも一種の酸性の化合物、少なくとも一種の糊剤の順に変更することもできる。
【0062】
少なくとも一種のバインダー及び/又は少なくとも一種の糊剤及び/又は少なくとも一種の気孔形成剤及び/又は少なくとも一種の酸性添加物をチタンゼオライトを含む混合物へ添加した後で、この混合物を通常10〜180分間均一化させる。均一化には、特に混練機、エッジミルまたは押出機の使用が特に好ましい。この混合物を混練することが好ましい。工業規模では、均一化にはエッジミル中での研磨が好ましい。
【0063】
この均一化は、原則として約10℃〜糊剤の沸点の範囲の温度で、大気圧またはやや加圧下で行われる。必要なら、その後で少なくとも一種の上記化合物を添加することもできる。押し出し可能なプラスチック材料が生成するまで、このようにして得られる混合物を均一化、好ましくは混練する。
【0064】
均一化した混合物を次いで成形して成形体を得る。すべての既知の適当な成形方法、例えば押出成形や噴霧乾燥、噴霧造粒、ブリケット化(他のバインダーの存在/非存在下での機械的圧縮)、ペレット化(即ち円運動及び/又は回転運動での圧密化)を使用できる。
【0065】
好ましい成形方法は、少なくとも一種のチタンゼオライトを含む混合物の成形に従来の押出機を使用する方法である。したがって、例えば直径が1〜10mmの、好ましくは2〜5mmの押出物が得られる。このような押出成形装置は、例えば、“Ullmann’s Enzyklopadie die der Technischen Chemie”, 4版, vol.2, page 295以下, 1972に記載されている。押出機の利用に加えて、成形体の製造に押出プレスを使用することもできる。本発明で製造される成形体の形状は自由に選択可能である。特に、球、卵型、円柱状または錠剤状が可能である。また、中空構造、例えば中空円筒状またはハニカム構造または星型構造をあげることもできる。
【0066】
成形は、常圧または常圧より高い圧力で行うことができ、例えば1bar〜数百barの範囲の圧力で行うことができる。また、この成形は、常温または常温より高い温度で、例えば20〜300℃の温度範囲で実施可能である。成形工程で乾燥及び/又は焼成を行う場合には、最高で600℃の温度が考えられる。最後に、この成形は、雰囲気中であるいは制御された雰囲気中で実施可能である。制御された雰囲気とは、例えば不活性ガス雰囲気、還元的雰囲気及び/又は酸化的雰囲気である。
【0067】
成形を行う場合、成形工程の後に少なくとも一回の乾燥工程が続くことが好ましい。この少なくとも一回の乾燥工程は、通常80〜160℃の温度範囲で行われ、好ましくは90〜145℃、特に好ましくは100〜130℃の温度範囲で、通常6時間以上、例えば6〜24時間の範囲で行われる。しかしながら、乾燥する材料の水分率によっては、短い乾燥時間も、例えば、約1、2、3、4時間または5時間も可能である。
【0068】
この乾燥工程の前及び/又は後に、得られた押出物を、例えば微粉砕することが好ましい。粒子径が0.1〜5mmである、特に0.5〜2mmである顆粒またはチップが得られることが好ましい。
【0069】
本発明のある好ましい実施様態によれば、成形体の乾燥の後に、それぞれ少なくとも一回の焼成工程が続くことが好ましい。焼成は、通常350〜750℃の範囲の温度で行われ、好ましくは400〜700℃、特に好ましくは450〜650℃の範囲の温度で行われる。この焼成はいずれか適当なガス雰囲気下で行われ、その場合は空気及び/又は希薄空気が好ましい。また、この焼成は、マッフル炉、回転キルン及び/又はベルト焼成炉で行うことが好ましく、その場合、焼成の所要時間は通常1時間以上であり、例えば1〜24時間の範囲、あるいは3〜12時間の範囲である。したがって、本発明の方法では、例えば、触媒成形体を1回、2回またはそれ以上、いずれの場合も少なくとも1時間、例えばいずれの場合も3〜12時間の範囲の間で焼成でき、その際、焼成工程の温度を一定としても連続的にまたは不連続的に変化させてもよい。焼成を2回以上行う場合、個々の工程での焼成温度は同じであっても異なっていてもよい。
【0070】
したがって、本発明は、炭化水素の転化反応に使用する触媒を製造する方法であって、前記触媒は、少なくとも一種のチタンゼオライトと、前記触媒に含まれるチタンゼオライトの総量に対して0.01〜0.05重量%の炭質材料とを含み、当該方法は、
(i)少なくとも一種のチタンゼオライトとシリカバインダーを含む成形体を含む触媒を製造して、続いてこの触媒を乾燥及び焼成する工程、
(ii)不活性雰囲気中でこの触媒を炭化水素に接触させることにより、(i)の触媒上に炭質材料を、触媒中に含まれるチタンゼオライトの総量に対して0.01〜0.5重量%の範囲で付着させて、炭質材料含有触媒を得る工程、
を含み、前記触媒を酸素含有ガスに接触させないことを特徴とする方法に関する。
【0071】
本発明の方法の特に好ましい実施様態においては、(ii)の炭化水素での処理に先立ってこの触媒が水熱処理にかけられる。水熱処理は当業界の熟練者には既知のいずれか適当な方法を用いて行うことができる。したがって、この触媒または成形触媒は、通常水または水蒸気に接触させられる。
【0072】
通常、上記水熱処理は、本発明の触媒を水とともにオートクレーブに入れ、そのスラリーを100〜200℃の範囲の温度、好ましくは120〜150℃の範囲の温度で、1.5〜5barの範囲、好ましくは2〜3barの範囲の圧力で、1〜48時間の範囲、好ましくは24〜48時間の範囲の時間加熱して行われる。通常少なくとも一回の洗浄工程が、好ましくは水を洗浄物質とする洗浄工程が続く。
【0073】
水で処理した後、この触媒を乾燥及び/又は焼成することが好ましく、その場合、乾燥と焼成は上述のように行われる。
【0074】
したがって、本発明はまた、上述の方法であって、(ii)の前に触媒を水熱処理に付し、該水熱処理が、好ましくは、
(I)この触媒を、オートクレーブ内で、好ましくは1.5〜5barの圧力で、100〜200℃の範囲の温度で、1〜48時間水で処理する工程、
(II)この触媒を乾燥させる工程;及び
(III)この触媒を焼成する工程、
を含む方法に関する。
【0075】
本発明のある好ましい実施様態においては、この水熱処理がオートクレーブ中で触媒成形体を攪拌しながら行われ、その際、攪拌速度は摩擦をできる限り避けることのできる特定の攪拌速度に調整される。しかしながら、円柱状押出物の形の触媒を使用する場合、端部が丸まった円柱状押出物を形成するためにいくらかの摩擦が望ましい。端部が丸まった押出物では、例えばチューブ反応器などの適当な反応器中で固定床触媒としてこの押出物を使用する際に、大きな嵩密度が達成可能である。また、上記他の方法中での、したがって工程(ii)や炭化水素転化反応中での上記触媒からの粉塵の形成が減少する。
【0076】
本発明の他の実施様態においては、触媒の磨耗した部分を混合して、上述のように成形して成形体とする混合物に添加物として再利用するか、少なくとも一回のチタンゼオライトの製造方法で種結晶として再利用する。
【0077】
したがって、本発明のある実施様態においては、(i)の少なくとも一種のチタンゼオライトを、少なくとも一種のバインダーとまた必要なら一種以上の他の上述の添加物と上記触媒の水熱処理に由来する触媒の磨耗した部分とを混合し、成形して成形体を得る。磨耗部に含まれるチタンゼオライトが、成形体の製造のために混合されるチタンゼオライトと同一の構造を有していても異なる構造を有していてもよい。
【0078】
成形は上述のように実施でき、このために例えば押出成形または噴霧方法を利用できる。このようにして得られる成形体、即ち触媒を、工程(ii)の前に水熱処理にかけることができる。
【0079】
したがって、本発明はまた、上述の方法で得られる、マイクロポアとメソポアをもち、触媒の総重量に対して49.5〜80%、好ましくは69.5〜80重量%でのチタンゼオライトと、触媒成形体の総重量に対して19.5〜50%、好ましくは19.5〜30重量%の少なくとも一種のバインダー、好ましくはシリカバインダーと、チタンゼオライトの重量に対して0.01〜0.5重量%の炭質材料とを含む触媒であって、その少なくとも一種のチタンゼオライトが、MFl、MEL、MWW、BEAまたはFER構造またはこれらの二種以上の混合構造を有するチタンゼオライトである触媒に関する。
【0080】
工程(i)に続いて、(ii)において不活性雰囲気中で触媒を炭化水素に接触させて炭質材料を触媒上に形成する。
【0081】
「炭化水素」は、水素と炭素を含むあらゆる化合物をさす。通常工程(ii)で用いられる炭化水素は、(ii)で得られた触媒を用いる炭化水素転化反応において転化される炭化水素に相当する。したがって、本発明はまた、(ii)において上記触媒が炭化水素の転化に用いられ、この炭化水素が(ii)で用いられる炭化水素に相当する方法に関する。しかしながら、両方の炭化水素が異なっていてもよい。本発明の方法の工程(ii)で用いることのできる炭化水素の例としては、ベンゼンやトルエン、エチルベンゼン、キシレンなどの非極性芳香族化合物や、アルケンやアルキン、好ましくはC2−C15−アルケンまたはアルキン、またアルカンなどの飽和脂肪族炭化水素、アルコールなどの高極性脂肪族炭化水素があげられる。炭化水素としてオレフィンを用いることが好ましい。用いるオレフィンの例としては、特に制限されるのではないが、プロピレンや1−ブテン、2−ブテン、2−メチルプロピレン、1−ペンテン、2−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、3−ヘキセン、メチルペンテンのいろいろな異性体、エチルブタン、ヘプテン、メチルヘキセン、メチルペンテン、プロピルブタン、好ましくは1−オクテンを含むオクテン、これらの他の高級類縁体があげられ、またブタジエンやシクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、スチレン、メチルスチレン、ジビニルベンゼン、塩化アリル、アリルアルコール、アリルエーテル、アリルエチルエーテル、酪酸アリル、酢酸アリル、アリルベンゼン、アリルフェニルエーテル、アリルプロピルエーテル、アリルアニソールがあげられる。
【0082】
好ましくはこの炭化水素がC3−C12オレフィンであり、より好ましくはC3−C8オレフィンである。最も好ましくは、このオレフィンはプロピレンC36である。使用されている「炭化水素」は、また上述の化合物の二種以上の混合物を含んでいてもよい。「炭化水素」は、小量の不純物を含むもの、上述の化合物のいずれの混合物も、または上述の化合物の二種以上の混合物をも含むものとする。例えばプロピレンを使用する場合、そのプロピレンは、いずれの供給源からのものであってもよく、本発明の方法の適当ないずれのグレードであってもよい。適当なグレードとしては、以下の例には限定されないが、例えば、ポリマーグレードのプロピレン(一般的には、99%以上のプロピレン)、化学グレードのプロピレン(一般的には、94%以上のプロピレン)、また粗精製グレードのプロピレン(一般的には、60%以上のプロピレン)があげられる。本発明の方法には、化学グレードのプロピレンで、残る6%以下の不純物のほとんどがプロパンであるものを使用することが最も好ましい。したがって、本発明によれば、「プロピレン」はまた、少量のプロパンと、場合によっては他の少量の不純物を含むプロピレン混合物を含み、例えば少なくとも94%のプロピレンと6%以下のプロパンの混合物も含んでいる。
【0083】
したがって、本発明はまた、(ii)で用いる炭化水素がオレフィン、好ましくはプロピレンである方法、及びこの方法により得ることが可能な又は得られた触媒に関する。
【0084】
「不活性雰囲気」として、従来の不活性ガス、例えば窒素や一酸化炭素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴンまたはこれらの二種以上の混合物を使用できる。窒素が不活性雰囲気として用いることが好ましい。これらの不活性ガスは通常量の不純物を含んでいてもよいが、実質的に酸化剤を、特にヒドロペルオキシドまたは酸素を含んでいてはならない。
【0085】
表面上に特定の量の炭質材料が形成された所望の触媒を得るためには、工程(ii)で用いる条件を、例えば用いる流体の温度や流量を、慎重に制御することが重要である。
【0086】
本発明によれば、工程(ii)は昇温下で行われ、好ましくは100〜500℃の範囲の温度、より好ましくは200〜490℃の範囲の温度、さらに好ましくは300〜480℃の範囲の温度、より好ましくは400〜470℃の範囲の温度、最も好ましくは420〜460℃の範囲の温度で行われる。原則として、まず不活性雰囲気中で触媒を加熱し、次いでこの触媒をこの温度で炭化水素含有流体に接触させることができる。しかしながら、このような不活性雰囲気中での予備加熱をすることなく、炭化水素含有流体の非存在下で触媒を直接加熱することも考えられる。上述の高温にまで加熱するために、触媒と流体との接触に先立ち、あるいは接触中に、温度を連続的または段階的に上げることができる。ある好ましい実施様態においては、この触媒が不活性雰囲気中で、好ましくは窒素雰囲気中で所望温度にまで加熱され、その温度に達した後でその触媒が炭化水素に接触させられる。炭化水素と接触する間に、この触媒と窒素との接触を継続することが好ましい。この触媒を、空気または不活性ガス中で、好ましくは不活性ガス中、より好ましくは窒素中で加熱し、次いで炭化水素を含有する流体と不活性雰囲気流を触媒の上に十分な時間流して、触媒中に含まれるチタンゼオライトの総重量に対して0.01〜0.5重量%の範囲の量で、好ましくは0.01〜0.3重量%、最も好ましくは0.01〜0.1重量%で炭質材料を上記触媒に付着させる。この触媒は、通常炭化水素を含有する流体と不活性雰囲気に1〜72時間の範囲の時間、好ましくは6〜48時間、最も好ましくは12〜36時間の範囲の時間接触させられる。通常、この流体は触媒に、0.5〜2barの範囲の圧力で、好ましくは0.75〜1.5barの範囲、最も好ましくは0.95〜1.05barの範囲の圧力で、すなわち、実質的に周囲圧力で接触させられる。
【0087】
不活性雰囲気、好ましくは窒素が工程(ii)が行われるゾーンに、好ましくは反応器に供給される流量は、通常200〜1000Nl/h(ノルマルリットル/時)の範囲であり、好ましくは400〜900Nl/h、より好ましくは600〜800Nl/hの範囲である。
【0088】
不活性雰囲気中で炭化水素含有流体が工程(ii)が行われるゾーン、好ましくは反応器に供給される流量は、通常10〜100Nl/h(ノルマルリットル/時)の範囲であり、好ましくは15〜90Nl/h、より好ましくは20〜80Nl/hの範囲である。
【0089】
この不活性雰囲気中の炭化水素含有流体、好ましくは窒素中の炭化水素は、ガス状、液体状または超臨界流体状で供給可能である。ある好ましい実施様態においては、この(ii)で供給される流体がガス状である。
【0090】
工程(ii)は反応器中で行わることが好ましく、その場合にはいずれか適当な反応器が使用できる。適当な反応器としては、バッチ、固定床、輸送床、流動床、移動床、シェル&チューブ、トリクルベッドなどの反応器や、連続/断続流装置やスイング反応器が上げられるが、好ましくは固定床である。
【0091】
好ましくは、工程(ii)は、同一の反応器内で行われ、この反応器は以下の炭化水素転化プロセスにも使用される。工程(ii)で得られた触媒を、直接炭化水素転化反応で用いることが好ましい。本明細書中で用いるこの「直接」は、(ii)の触媒上への炭質材料の付着と上記触媒の炭化水素転化反応での使用の間に、焼成により、例えばこの触媒を酸素含有雰囲気に接触させて炭質材料を触媒から除くことのない実施様態を示す。同様に、工程(ii)の後で、この触媒は、炭化水素が高温下の、例えば300℃を超える温度の不活性ガスで処理される他の熱処理工程にかけられない。しかしながら、「直接」は、触媒を炭化水素転化プロセス中で使用する前に触媒が、例えばパージされる実施様態も含んでいる。(ii)の流体中に含まれる炭化水素が炭化水素転化反応で転化される炭化水素に相当しない場合は、このような追加のパージ工程は、好ましくはこれらの異なる炭化水素間の接触が最小となるように、好ましくは完全に無くなるように行うことが好ましい。(ii)の流体中に含まれる炭化水素が炭化水素転化反応中に転化される炭化水素に相当する場合、パージ工程を行わないことが好ましい。用いるパージ媒体が、触媒上にまたは続いて行われる炭化水素転化になんら悪影響を与えてはならない。もし用いるなら、このパージ媒体はガス状であり、(ii)の流体中に含まれる上記少なくとも一種の炭化水素のすべてを実質的に除くのに効果的な量で用いることが好ましい。パージガスとして、通常不活性ガスまたは不活性ガス混合物が用いられる。
【0092】
本発明のある好ましい実施様態においては、この触媒が(iii)で炭化水素の転化に用いられ、その炭化水素は(ii)で用いる炭化水素に相当する。(ii)で用いられる炭化水素が炭化水素転化反応で転化される炭化水素である場合、この変換反応は、原理的には接触処理の最後に単に条件を変更することで、工程(ii)の直後に開始させることができる。この場合、通常パージ工程は行われない。この実施様態は、パージの時間とコストを低減させることができるという利点をもっている。
【0093】
したがって、本発明はまた、(ii)において上記触媒が炭化水素の転化に用いられ、その炭化水素が(ii)で用いられた炭化水素に相当する方法に関する。
【0094】
上述のように、工程(ii)で用いられる条件は、上述の改善された触媒性能をもつ触媒が得られるように、また触媒上に形成される炭質材料の量を制御するために慎重に調整する必要がある。触媒活性の一部または全部が失われ、続いて酸素含有ガスでの処理を必要とする付着工程に代えて、あるいは続いて触媒の活性化のために炭質材料をしばらく加熱する必要のある処理が必要となる付着工程に代えて、本発明の(ii)の付着工程は、他の処理なしに直接、所望量の炭質析出物をもち改善された触媒活性をもつ触媒を与えることを言及する必要がある。
【0095】
上記触媒は、炭質材料の量が、触媒に含まれるチタンゼオライトの総重量に対して0.01〜0.5重量%の範囲であることに、好ましくは0.01〜0.1重量%、最も好ましくは0.03〜0.04重量%の範囲にあることに特徴がある。
【0096】
驚くべきことに、特に、プロピレンのエポキシ化用の本発明のTS−1触媒に関して、好ましくは溶媒として好ましくはメタノールの存在下で過酸化水素を酸化剤とするプロピレンのエポキシ化用の触媒に関して、一定量の付着炭質材料を有する触媒が特に好適であることがわかった。さらに驚くべきことに、この特定の実施様態では炭質材料の量があまり高くなってはいけないことがわかった。結果として、触媒において、特にプロピレンのエポキシ化、好ましくは溶媒として好ましくはメタノールの存在下で酸化剤として過酸化水素を用いるプロピレンのエポキシ化の触媒として用いられるS−1触媒において、炭質材料の量が0.01〜0.06重量%の範囲であることが、好ましくは0.02〜0.05重量%の範囲、より好ましくは0.03〜0.04重量%の範囲であることが必要であることがわかった。
【0097】
触媒中の炭質材料の量は、総有機炭素(total organic carbon、TOC)分析で決められる。
【0098】
通常、この触媒、また本発明の方法で得られる触媒は、同一組成の触媒で炭化水素と接触していないものと較べると高い破砕強度をもっている。本発明において、上記の破砕強度は、予備力が0.5Nで、予備力下でのずり速度が10mm/minで、続く試験速度が1.6mm/minであるZwick社のBZ2.5/TSIS型装置で決められる。この装置は、固定された回転可能で自由に動くラムと内蔵の厚みが0.3mmの羽根を有している。羽根を備えたこの移動型ラムは、力を取り出すためのロードセルに連結されており、測定中は測定する触媒が置かれた固定回転盤の方向に移動する。この試験機はコンピューターで制御され、これが測定結果を記録し評価する。いずれの場合も、得られる数値は10個の触媒の測定の平均値である。この触媒は円柱状の形状を有し、その平均長は直径の約2〜3倍である。この触媒に0.3mm厚の羽根で徐々に大きな力を加えて触媒が切断されるまで圧力をかける。この羽根は触媒に対して、触媒成形体の縦軸に直角に当てられている。この目的のために必要な力が切断硬度(単位N)である。
【0099】
本発明の方法で得られる成形体が、切断硬度が少なくとも22Nである、好ましくは22〜30N、より好ましくは22〜25Nである炭質材料を含むことが好ましい。
【0100】
(i)の触媒と(ii)の触媒は、炭質材料の含量と破砕強度が違うだけでなく、例えばその色においても異なっている。なお、この色は付着方法中で変化する。一般的には、その上に多量の炭質材料が析出した触媒は、その上に少量の炭質材料が付着した触媒より灰色が深くなる傾向がある。
【0101】
本発明の触媒で触媒可能な変換は、例えば水素化や、脱水素、酸化、エポキシ化、重合反応、アミノ化、水和と脱水、求核及び求電子置換反応、付加および脱離反応、二重結合及び骨格の異性化、ジヒドロ環化、複素芳香族のヒドロキシル化、エポキシド−アルデヒド転移、メタセシス、メタノール用のオレフィン製造、ディールス・アルダー反応、炭素−炭素二重結合の形成(例えば、オレフィンの二量体化またはオレフィンの三量体化)、アルドール縮合型の縮合反応である。反応させる炭化水素によっては、これらの触媒反応は、気相または液相または超臨界相で行われる。好適な炭化水素は、ベンゼンやトルエン、エチルベンゼン、キシレンなどの非極性芳香族化合物や、アルケンやアルキンなどの飽和脂肪族炭化水素(好ましくはC2−C15−アルケンまたはアルキンまたはアルカン)、アルコールなどの高極性脂肪族炭化水素である。
【0102】
本発明の触媒は、炭化水素の酸化に特に好適であり、好ましくはオレフィンの酸化に特に好適である。好適なオレフィンの例としては、特に限定されないが、プロピレンや1−ブテン、2−ブテン、2−メチルプロピレン、1−ペンテン、2−ペンテン、2−メチル1−ブテン、2−メチル−2−ブテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、3−ヘキセン、メチルペンテンのいろいろな異性体、エチルブタン、ヘプテン、メチルヘキセン、メチルペンテン、プロピルブタン、好ましくは1−オクテンなどのオクテン、これらの他の高級類縁体があげられ、さらにはブタジエンやシクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、スチレン、メチルスチレン、ジビニルベンゼン、塩化アリル、アリルアルコール、アリルエーテル、アリルエチルエーテル、酪酸アリル、酢酸アリル、アリルベンゼン、アリルフェニルエーテル、アリルプロピルエーテル、アリルアニソールがあげられる。好ましくは、このオレフィンがC3−C12−オレフィンであり、より好ましくはC3−C8−オレフィンである。このオレフィンがプロピレンであることが最も好ましい。特に好ましくはこの触媒がプロピレンの酸化に使用され、より好ましくはプロピレンのエポキシ化に使用される。
【0103】
したがって、本発明はまた、上記の触媒の変換への利用、好ましくは炭化水素の酸化、好ましくはオレフィン、より好ましくはプロピレンの酸化、特にプロピレンのエポキシ化への利用に関する。
【0104】
また、本発明は、上記の使用方法であって、前記炭化水素の転化プロセスが、少なくとも一種のチタンゼオライトと炭質材料を含む触媒の存在下でプロピレンオキシドを製造するプロセスであり、前記触媒がチタンゼオライトの総重量に対して0.01〜0.5重量%で前記炭質材料を含み、前記プロセスが、
(i)チタンゼオライトを含む触媒を提供する工程、
(ii)前記触媒を、前記炭化水素転化反応で使用する前に、不活性雰囲気中で少なくとも一種の炭化水素を含む流体と接触させることにより、炭質材料を、該触媒に含まれるチタンゼオライトの総重量に対して0.01〜0.5重量%の範囲で(i)の触媒に付着させて炭質材料含有触媒を得る工程、
(iii)(ii)で得られた触媒を、プロピレン、ヒドロペルオキシド及び少なくとも一種の溶媒を含む反応混合物に接触させる工程、
を含み、(ii)において、前記触媒を酸素含有ガスに接触させないことを特徴とする使用方法に関する。
【0105】
本発明はまた、上記の使用方法であって、(iii)において、触媒がシリカライト1触媒であり、ヒドロペルオキシドが過酸化水素で、溶媒がメタノールである利用に関する。
【0106】
本発明はまた、上記の利用であって、触媒が炭質材料を、触媒に含まれるチタンゼオライトの総重量に対して0.01〜0.1重量%の量で、好ましくは0.01〜0.06重量%、より好ましくは0.02〜0.05重量%、より好ましくは0.03〜0.04%の量で含み、(ii)において、炭質材料が(i)の触媒上に、触媒に含まれるチタンゼオライトの総重量に対して0.01〜0.1重量%の量で、好ましくは0.01〜0.06重量%、より好ましくは0.02〜0.05重量%、より好ましくは0.03〜0.04重量%の量で含まれている使用方法に関する。
【0107】
(iii)の化学反応がプロピレンのエポキシ化である場合、プロピレンが工程(ii)でも使われていることが好ましい。
【0108】
また、「プロピレン」はまた、いずれの供給源からのいずれのグレードのプロピレンをも含み、例えば化学グレードやポリマーグレードのプロピレンを含む。本発明によれば、同じグレードまたは異なるグレードのプロピレンを、それぞれ工程(ii)と変換反応で使用できる。
【0109】
ある好ましい実施様態においては、工程(ii)で用いるプロピレン流を、必要なら精製工程の後で炭化水素転化反応に再循環させてもよく、好ましくはエポキシ化反応に再循環させてもよい。
【0110】
(iii)の化学反応がオレフィンのエポキシ化、好ましくはプロピレンのエポキシ化である場合は、本発明において原理的にはいずれの適当な酸化剤を用いてもよい。この酸化剤は、例えば酸素またはいずれか適当な過酸化物である。本発明ではヒドロペルオキシド、例えば第三級のヒドロペルオキシドを使用することが好ましい。過酸化水素の使用が特に好ましい。好ましくは、メタノールなどの少なくとも一種のアルコール、またはアセトニトリルなどのニトリル、またはこれらの混合物で、必要ならさら水を含むものを用いてもよい。
【0111】
特にMFI構造を持つチタンゼオライトを含む触媒の存在下でプロピレンがプロピレンオキシドに変換される場合には、酸化剤としての過酸化水素と共に、メタノールを溶媒として用いることが好ましい。
【0112】
したがって、本発明はまた、
(i)チタンゼオライトを含む触媒、好ましくはMFI構造をもつチタンゼオライトを含む触媒を製造する工程;
(ii)この触媒を不活性雰囲気中でプロピレンに接触させることにより、(i)で得られた触媒上に炭質材料を付着させる工程;
(iii)(ii)で得られた触媒を、プロピレンのエポキシ化、好ましくは溶媒としてメタノールをまた酸化剤としてヒドロペルオキシドを用いるプロピレンのエポキシ化に直接使用する工程、を含むプロピレンのエポキシ化方法であって、
(iii)で得られる触媒は、炭質材料を、触媒に含まれるチタンゼオライトの総重量に対して0.01〜0.5重量%の範囲で、好ましくは0.01〜0.1重量%、最も好ましくは0.03〜0.04重量%の範囲で含み、この炭質材料の含量はTOC分析で求めたものであることを特徴とする方法に関する。
【0113】
また、本発明は、上記の炭化水素の転化方法であって、この炭化水素の転化方法が、少なくとも一種のチタンゼオライトと炭質材料を含む触媒の存在下でプロピレンオキシドを製造する方法であり、その触媒が炭質材料を、チタンゼオライトの総重量に対して0.01〜0.5重量%の範囲の量で含み、その方法が、
(i)チタンゼオライトを含む触媒を提供する工程、
(ii)上記触媒を、上記炭化水素転化反応中でその触媒を使用する前に、不活性雰囲気中で少なくとも一種の炭化水素を含む流体に接触させることにより、炭質材料を、(i)の触媒に、該触媒に含まれるチタンゼオライトの総重量に対して0.01〜0.5重量%の範囲で付着させて炭質材料含有触媒を得る工程、
(iii)(ii)で得られた触媒をプロピレン、ヒドロペルオキシド及び少なくとも一種の溶媒を含む反応混合物に接触させる工程、
を含み、
(ii)において、触媒を酸素含有ガスに接触させない方法に関する。
【0114】
また、本発明は、上記のプロピレンのエポキシ化方法であって、(iii)において、触媒がチタンシリカライト1触媒であり、ヒドロペルオキシドが過酸化水素であり、溶媒がメタノールである方法に関する。
【0115】
また、本発明は、上記のプロピレンのエポキシ化方法であって、該触媒が炭質材料を、触媒に含まれるチタンゼオライトの総重量に対して0.01〜0.1重量%の量で、好ましくは0.01〜0.06重量%、より好ましくは0.02〜0.05重量%、より好ましくは0.03〜0.04%の量で含み、(ii)において、炭質材料が、(i)の触媒上に、触媒に含まれるチタンゼオライトの総重量に対して0.01〜0.1重量%の量で、好ましくは0.01〜0.06重量%、より好ましくは0.02〜0.05重量%、より好ましくは0.03〜0.04重量%の量で析出させられる方法に関する。
【0116】
本発明はまた、本方法で得られるまたは得られたプロピレンオキシドに関する。
【0117】
本発明の(ii)で得られた触媒をメタノールを溶媒とするプロピレンのエポキシ化で使用する方法は、少なくとも二つの反応工程で溶媒としてのメタノールの存在下でプロピレンを過酸化水素と反応させてプロピレンオキシドと未反応のプロピレンとメタノールと水を含む混合物Mを得ることからなり、少なくともこの二つの反応工程の間でプロピレンオキシドが蒸留で分離されることが好ましい。したがって、本発明の方法は、以下の順で工程(a)〜(c)を、即ち
(a)プロピレンと過酸化水素との反応でプロピレンオキシドと未反応プロピレンを含む混合物を与える工程と、
(b)工程(i)から得られる混合物中からの未反応プロピレンを分離する工程と、
(c)工程(ii)で分離されたプロピレンを過酸化水素と反応させる工程を含む。
【0118】
したがって、このエポキシ化方法は、工程(a)と(c)に加えて、少なくとも一つの他の反応工程を、また工程(b)に加えて少なくとも一つの他の分離工程を含みうる。ある好ましい実施様態においては、このエポキシ化方法がこれらの3つの工程からなる。
【0119】
工程(a)と(c)では、反応の実施にあたり特に制限はない。
【0120】
したがって、反応工程の一つを回分的または半連続的または連続的に行い、それとは独立して他の反応工程をバッチ式または半連続的または連続的に行うことができる。さらに好ましい実施様態においては、反応工程(a)と(c)の両方を連続的に行うことができる。
【0121】
工程(i)のエポキシ化反応を本発明の触媒の存在下で行うことが好ましい。工程(a)と(c)の両方を本発明の触媒の存在下で行うことがさらに好ましい。工程(a)と(c)の反応は、懸濁液中または固定床方式で行うことが好ましく、固定床方式で行うことが最も好ましい。
【0122】
本発明の方法において、工程(a)と(c)で同じ反応器を使ってもよいし、異なる型の反応器を使ってもよい。したがって、反応工程の一つを、等温反応器または断熱反応器中で実施し、他の反応工程を、これから独立して等温反応器または断熱反応器で行うことができる。この点で用いられる「反応器」は、単一の反応器を含むか、少なくとも二つの直列的に連結された反応器のカスケード、並列で作動する少なくとも二つの反応器、あるいは少なくとも二つの反応器が直列につながり少なくとも二つの反応器が並列に作動する多数の反応器を含んでいる。ある好ましい実施様態においては、本発明の工程(a)が、並列で作動する少なくとも二つの反応器で実施され、本発明の工程(c)が単一の反応器で実施される。
【0123】
上述の反応器のそれぞれ、特に好ましい実施様態の反応器のそれぞれは、下降流または上昇流運転モードで運転できる。
【0124】
反応器が下降流モードで運転される場合、固定床反応器(好ましくは円管状、多円管状または多板状反応器)を使用することが好ましく、少なくとも一つの冷却ジャケットを備えたものを使用することが最も好ましい。この場合、このエポキシ化反応は30〜80℃の温度で行われ、反応器中の温度状態は、冷却ジャケット中の冷却媒体の温度が少なくとも40℃であり触媒床の最高温度が60℃となるようにあるレベルに維持される。反応器が下降流運転の場合、反応が単相で実施できるように、より好ましくは単一の液相で、または二相または三相などの多相系で実施できるように、温度や圧力、供給量、出発原料の相対量などの反応条件を選ぶことができる。下降流運転モードでは、エポキシ化反応を、メタノールを含む水性過酸化水素が多い液相とオレフィンが多い有機液相、好ましくはプロペンを多く含む相を含む多相反応混合物中で行うことが特に好ましい。
【0125】
反応器を上昇流モードで運転する場合、固定床反応器を使うことが好ましい。工程(a)で少なくとも二台の固定床反応器を使用し、工程(c)で少なくとも二台の反応器を使用することがさらに好ましい。さらに他の実施様態においては、工程(a)で使用される少なくとも二つの反応器が、直列に連結されているか並列で運転され、より好ましくは並列に運転される。一般的には工程(a)及び/又は(c)で用いられる少なくとも一つの反応器に、冷却ジャケットなどの冷却手段を取り付ける必要がある。工程(a)で並列に連結され交互に運転可能な少なくとも二つの反応器を用いることが特に好ましい。反応器が上昇流モードで運転される場合、工程(a)の並列に連結された二つ以上の反応器は、特に好ましくはチューブ反応器、多チューブ反応器または多板反応器であり、より好ましくは多チューブ反応器であり、特に好ましくは多数のチューブを持つ、例えば1〜20000個のチューブ、好ましくは10〜10000個、より好ましくは100〜8000個、より好ましくは1000〜7000個、特に好ましくは3000〜6000個のチューブをもつシェル&チューブ反応器である。エポキシ化反応で使用した触媒を再生するために、連続方法の間に、各工程で少なくとも一つの反応器を常に一つ以上の出発原料の反応に供しながら、並列に連結された少なくとも一つの反応器をそれぞれの反応工程のための運転から切り離してこの反応器中に存在する触媒を再生することができる。
【0126】
冷却ジャケットを備えた上述の反応器中で反応媒体の冷却のため用いられる冷却媒体には、特に制限はない。特に好ましいのは、油脂、アルコール、液体塩、または河川水、カン水、及び/又は海水などの水(いずれの場合も、例えば、好ましくは本発明の反応器と本発明の方法が用いられる化学プラントに近い河川及び/又は湖及び/又は海から抜き取り可能で、濾過及び/又は沈降によるいずれかの必要な適当な懸濁物質の除去の後で他の処理なしに直接反応器の冷却に使用できるもの)である。好ましくは閉路を循環させられる二次冷却水が、冷却目的に特に有用である。この二次冷却水は、通常少なくとも一種の防汚剤が好ましくは添加されている実質的に脱イオン化または脱ミネラル化された水である。より好ましくは、この二次冷却水が本発明の反応器と、例えば冷却塔との間を循環する。また、この二次冷却水を、例えば少なくとも一つの向流型熱交換器内で、例えば河川水、カン水及び/又は海水で交流冷却することが好ましい。
【0127】
工程(c)では、シャフト反応器を使用することが好ましく、連続運転のシャフト反応器がより好ましく、連続運転の断熱シャフト反応器の使用が特に好ましい。
【0128】
したがって、本発明はまた、上述の方法であって、工程(a)ではそれぞれ1〜20000本の内管をもち、上昇流モードで連続的に並列で運転されている少なくとも二つのシェル&チューブ反応器が使用され、工程(c)では連続的に上昇流モードで運転されている断熱シャフト反応器が使用されている方法に関する。少なくとも一つのこれらの反応器中の反応が、より好ましくは工程(a)の少なくとも二つの反応器中の反応、さらに望ましくは状態(a)と(c)で用いられるすべての反応器中の反応が、それぞれの反応器中に単一の液相が存在するように実施されることがさらに好ましい。
【0129】
本発明の方法では、過酸化水素が、過酸化水素の水溶液の形で使用されるが、その含量は一般的には1〜90重量%であり、好ましくは10〜70重量%、より好ましくは10〜60重量%である。20〜50重量%未満の過酸化水素の溶液が特に好ましい。
【0130】
本発明の他の実施様態においては、粗製の過酸化水素水溶液が使用できる。粗製の過酸化水素水溶液として、実質的に純粋な水で、アントラキノン方法と呼ばれる方法に由来する混合物を抽出して得られる溶液を使用できる(例えば、Ullmann’s Encycolpedia of Industrial Chemistry, 5版, volume 3 (1989) pages 447−457を参照)。この方法では、生成する過酸化水素が作業中の溶液から、一般的には抽出により分離される。この抽出は実質的に純粋な水で実施でき、粗製の過酸化水素水溶液が得られる。本発明のある実施様態においては、この粗製溶液をさらに精製することなく使用できる。このような粗製溶液の製造は、例えば、欧州特許出願EP1122249A1に記載されている。「実質的に純粋な水」については、EP1122249A1の3ページの第10段落を参照されたい。なお、この文献を引用として採用する。
【0131】
使用が好ましい過酸化水素を作るには、例えばアントラキノン方法が使用でき、この方法により実質的に過酸化水素の世界全体の生産量が生産されている。アントラキノン方法の概説が、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry, 5版, volume 13, pages 447−456に述べられている。
【0132】
陽極酸化で硫酸をペルオキソ二硫酸に変換し、同時に陰極で水素を発生させて過酸化水素を得ることも考えられる。続くペルオキソ一硫酸を経由するペルオキソ二硫酸の加水分解で、過酸化水素と再生された硫酸が得られる。
【0133】
もちろん、元素からの過酸化水素の製造も可能である。
【0134】
本発明の方法で過酸化水素を使用する前に、例えば市販の過酸化水素水から望ましくないイオンを除くこともできる。可能な方法は、特にUS5,932,187、DE4222109A1またはUS5,397,475に記載されているものである。イオン交換体床の高さHが2.5F1/2以下である、特に1.5F1/2以下であるような断面積Fと高さHをもつ、少なくとも一つの非酸性のイオン交換体床を含む装置内でのイオン交換により、過酸化水素水から過酸化水素水中に存在する少なくとも一種の塩を除くこともできる。本発明の目的のためには、原則として、カチオン交換体及び/又はアニオン交換体を含むすべての非酸性イオン交換体床を使用することができる。カチオン交換体とアニオン交換体を一つのイオン交換体床中で混合床として使用することもできる。本発明のある好ましい実施様態においては、ただ一種の非酸性イオン交換体が使用される。塩基性のイオン交換体の使用がさらに好ましく、塩基性アニオン交換体の使用が特に好ましく、弱塩基性アニオン交換体の使用が極めて好ましい。
【0135】
反応器内の圧力は、一般的には10〜30barの範囲であり、より好ましくは15〜25barの範囲である。冷却水の温度は、好ましくは20〜70℃の範囲であり、より好ましくは25〜65℃、特に好ましくは30〜60℃の範囲である。
【0136】
本発明の好ましい実施様態においては、工程(a)の一台以上の反応器が固定床反応器である場合、それから得られる生成物は、実質的にプロピレンオキシドと未反応のプロピレン、メタノール、水、過酸化水素とからなる。
【0137】
ある好ましい実施様態においては、工程(a)から得られる生成物混合物のメタノール含量が生成物混合物の総重量に対して55〜75重量%の範囲で、特に好ましくは60〜70重量%の範囲であり、水分率が生成物混合物の総重量に対して5〜25重量%の範囲、特に好ましくは10〜20重量%の範囲であり、プロピレンオキシド含量が生成物混合物の総重量に対して5〜20重量%の範囲、特に好ましくは8〜15重量%の範囲であり、プロピレン含量が生成物混合物の総重量に対して1〜10重量%の範囲、特に好ましくは1〜5重量%の範囲である。
【0138】
工程(a)から得られる生成物混合物の温度は、好ましくは40〜60℃の範囲であり、より好ましくは45〜55℃の範囲である。(b)の蒸留塔に供給される前に、この生成物混合物を少なくとも一つの熱交換器内で50〜80℃の範囲の温度に、より好ましくは60〜70℃の範囲の温度に加熱することが好ましい。
【0139】
本発明の目的では、工程(a)から得られる生成物流の加熱が、少なくとも部分的に工程(b)の蒸留塔の底流を用いて行われる。したがって、全体としてのエポキシ化方法の熱の一体化がさらに改善される。ある好ましい実施様態においては、(b)で使用する蒸留塔から得られる底流の50〜100%が、より好ましくは80〜100%、特に好ましくは90〜100%が、(a)で得られる生成物流を45〜55℃の範囲の温度から65〜70℃の範囲の温度へ加熱するのに用いられる。
【0140】
工程(b)では未反応のプロピレンが工程(a)よりの混合物から分離される。この分離は少なくとも一台の蒸留塔を使用する蒸留で行われる。工程(a)で用いる少なくとも一台の反応器、好ましくは少なくとも二台の反応器から得られる、未反応のプロピレンとプロピレンオキシドとメタノールと水と未反応の過酸化水素を含む反応混合物が蒸留塔に供給される。この蒸留塔は、好ましくは塔頂圧力が1〜10barで運転され、より好ましくは1〜5barで、より好ましくは1〜3barで、さらに好ましくは1〜2barで、例えば1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9あるいは2barで運転される。特に好ましい実施様態においては、この蒸留塔の理論段数が5〜60であり、好ましくは10〜50、特に好ましくは15〜40である。
【0141】
さらに好ましい実施様態においては、(a)から得られる反応混合物が(b)の蒸留塔に、塔頂から2〜30理論段数下の所に、好ましくは塔頂から10〜20理論段数下の所に供給される。
【0142】
(b)の蒸留塔の塔頂では、実質的にプロピレンオキシドとメタノールと未反応プロペンからなる流体が得られる。塔頂では、水分率が、塔頂で得られる混合物の総重量に対して0.5重量%以下、好ましくは0.4重量%以下、さらに望ましくは0.3重量%以下であり、過酸化水素含量が100ppm以下、好ましくは20ppm以下、さらに望ましくは10ppm以下である混合物が得られる。
【0143】
蒸留塔の塔底では、実質的にメタノールと水と未反応の過酸化水素からなる流体が得られる。塔底では、プロペン含量が塔底で得られる混合物の総重量に対して50ppm以下、好ましくは10ppm以下、さらに望ましくは5ppm以下であり、プロピレンオキシド含量が50ppm以下、好ましくは20ppm以下、さらに望ましくは10ppm以下である混合物が得られる。
【0144】
さらに好ましい実施様態においては、(b)で用いる蒸留塔が、少なくとも一つの側面引抜口を持つ、好ましくは側面引抜口を一つもつ壁分割型カラムである。この壁分割型カラムの理論段数が20〜60であることが好ましく、30〜50であることがより好ましい。
【0145】
この壁分割型カラムの流入部と引抜部の上の全体領域が、好ましくは、カラム内の理論段数の総数の5〜50%、より好ましくは15〜30%であり、流入部の濃縮領域が、カラム内の理論段数の総数の5〜50%、より好ましくは15〜30%であり、流入部の回収領域が、15〜70%、より好ましくは20〜60%であり、引抜部の回収領域が、好ましくは5〜50%、より好ましくは15〜30%であり、引抜部の濃縮領域が好ましくは15〜70%、より好ましくは20〜60%であり、カラムの流入部と引抜部の下の全体領域の理論段数が好ましくは5〜50%であり、より好ましくは15〜30%であることが好ましい。
【0146】
また、(a)で得られた生成物混合物がカラムに導入される供給口と、メタノールの一部、好ましくはメタノールの0〜50%の、より好ましくは1〜40%、さらに好ましくは5〜30%、特に好ましくはメタノールの10〜25%が中間ボイラーとして取り出される側面引抜部、さらに好ましくは直接工程(a)に循環される側面引抜口を、理論段数の位置で塔内の異なる高さに配置することが有利である。供給口は、側面抜取口の1〜25理論段数上か下の位置、より好ましくは5〜15理論段数上か下の位置に置くことが好ましい。
【0147】
本発明の方法で用いる個々の壁カラムは、ランダム充填物か規則性充填物を含む充填塔かトレイカラムとすることが好ましい。例えば薄板または比表面積が100〜1000m2/m3、好ましくは約250〜750m2/m3であるメッシュ充填物を規則性充填材として用いることができる。このような充填材を使用すると、高い分離効率と低い理論段数当りの圧力損失が得られる。
【0148】
上述の塔構成で、流入部分の濃縮部と取り出し部分の回収部と流入部分と回収部と取り出し部分の濃縮部からなる分離壁で区切られた塔の領域に、またはその一部に、規則性充填材またはランダム充填材が充填される。これらの領域でこの分割壁が熱的に絶縁されていてもよい。
【0149】
壁分割型カラムでの圧力差を、加熱力に対する制御変数として用いることができる。この蒸留は、塔頂圧力で1〜10barで行うことが、好ましくは1〜5bar、より好ましくは1〜3bar、さらに好ましくは1〜2bar、例えば1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9または2barで行うことが有利である。
【0150】
蒸留は、65〜100℃の温度範囲で、より好ましくは70〜85℃の温度範囲で行うことが好ましい。この蒸留温度は塔底で測定されたものである。
【0151】
このような分割壁面カラムを使用する場合、(b)の蒸留塔の塔頂でプロピレンオキシドとメタノールと未反応のプロピレンからなる流体が得られる。塔頂では、水分率が塔頂で得られる混合物の総重量に対して500ppm以下、好ましくは400ppm以下、さらに望ましくは300ppm以下であり、過酸化水素含量が50ppm以下、好ましくは20ppm以下、さらに望ましくは10ppm以下である混合物が得られる。また、得られる塔頂流のプロピレン含量は、塔頂流の総重量に対して15〜35重量%、好ましくは20〜30重量%さらに望ましくは20〜25重量%であり、プロピレンオキシド含量は、50〜80重量%、好ましくは55〜75重量%、特に好ましくは60〜70重量%であり、メタノール含量は、5〜20重量%、より好ましくは7.5〜17.5重量%、特に好ましくは10〜15重量%である。
【0152】
蒸留塔の側面抜取口では、実質的にメタノールと水からなる流体が得られる。塔の側面抜取口では、メタノール含量が塔の側面抜取口で得られる混合物の総重量に対して少なくとも95重量%、好ましくは少なくとも96重量%さらに望ましくは少なくとも97重量%であり、水分率が5重量%以下、好ましくは3.5重量%以下、さらに望ましくは2重量%以下である混合物が得られる。
【0153】
蒸留塔の塔底では、実質的にメタノールと水と未反応の過酸化水素からなる流体が得られる。塔底では、プロペン含量が塔底で得られる混合物の総重量に対して50ppm以下、好ましくは10ppm以下、さらに望ましくは5ppm以下であり、プロピレンオキシド含量が50ppm以下、好ましくは20ppm以下、さらに望ましくは10ppm以下である混合物が得られる。
【0154】
壁分割型カラムの側面から抜き出した流体の少なくとも一部を、溶媒として本発明の方法の工程(a)に循環させることができる。側面抜取口から抜き出した流体の少なくとも90%を、より好ましくは少なくとも95%を工程(a)に再循環することが好ましい。
【0155】
蒸留塔、好ましくは壁分割型蒸留塔から抜き出された実質的にメタノールと水と未反応の過酸化水素からなる底流は、次いで工程(c)の反応器に送られる。この底流を、反応器に投入する前に、例えば一工程冷却または二工程冷却により、好ましくは20〜40℃の温度に、より好ましくは30〜40℃の温度に冷却することが好ましい。工程(c)の反応器に投入する前に、フレッシュなプロペンを直接さらに工程(c)の反応器に加えるか、(b)で得られた底流に加えることがさらに好ましい。これに代えて、あるいはこれに加えて、フレッシュな過酸化水素を加えることもできる。
【0156】
工程(a)〜(c)をもつ全体方法の過酸化水素における選択性は、好ましくは78〜99%の範囲であり、より好ましくは88〜97%の範囲、特に好ましくは90〜96%の範囲である。
【0157】
全体としての過酸化水素変換率は、好ましくは少なくとも99.5%であり、より好ましくは少なくとも99.6%、より好ましくは少なくとも99.7%、特に好ましくは少なくとも99.8%である。
【0158】
工程(c)から得られる反応混合物のメタノール含量は、好ましくは反応混合物の総重量に対して50〜90重量%であり、より好ましくは60〜85重量%、特に好ましくは70〜80重量%である。水分率は、好ましくは反応混合物の総重量に対して5〜45重量%の範囲であり、より好ましくは10〜35重量%、特に好ましくは15〜25重量%の範囲である。プロピレンオキシド含量は、好ましくは反応混合物の総重量に対して1〜5重量%の範囲であり、より好ましくは1〜4重量%、特に好ましくは1〜3重量%の範囲である。プロピレン含量は、好ましくは反応混合物の総重量に対して0〜5重量%の範囲であり、より好ましくは0〜3重量%、特に好ましくは0〜1重量%の範囲である。
【0159】
工程(c)の反応器から取り出された生成物混合物を、高純度プロピレンオキシドが上記生成物混合物から適切に分離されるさらに下流の工程に供給することもできる。また、工程(b)の蒸留塔上部から抜き出された流体を工程(c)の反応器から抜き出された生成物混合物と混合し、次いで上記の下流の精製工程に送ることもできる。あるいは、工程(c)の反応器から抜き出された生成物混合物と工程(b)の蒸留塔の塔頂流を上記の下流の精製工程に別々に送ることができる。
【0160】
本発明において、驚くべきことに、本触媒また本発明の方法で得られるあるいは得られた触媒の選択性のため、炭化水素転化プロセスにおける触媒性能が、本発明の(ii)のように炭化水素に接触させられていない同一組成物の触媒と較べて改善されていることが明らかとなった。触媒性能の改善は、この触媒が長寿命及び/又は有価生成物に関わる高選択性及び/又は副生成物及び/又は二次生成物に対する低選択性及び/又は改善された活性を示すことを意味する。通常、本発明の前処理触媒では、特に表面に炭質材料が0.01〜0.06重量%の量で、より好ましくは0.02〜0.05重量%、さらに好ましくは0.03〜0.04重量%の量で析出した触媒では、エポキシ化反応副生成物と二次生成物に対する改善された選択性が達成される。特に、この改善は、過酸化水素でプロピレンをエポキシ化するのに使用される、特に溶媒としてのメタノールまたはメタノール/水混合物の存在下でのエポキシ化に使用されるTS−1ゼオライトを含有する触媒になされ、過酸化水素を元とするプロピレンオキシドへの高選択性が長期間達成され、またメトキシプロパノールや酸素、ヒドロペルオキシドなどの副生成物や二次生成物に対する低選択性が達成される。
【0161】
本発明の特徴と利点を示すため、以下に実施例を述べる。しかしながら、これらの実施例は説明を目的として提供されるものであって、本発明を制限するものではないことに留意いただきたい。しかしながら、これらの実施例は、明白に、本発明の方法で製造した触媒が上述のような優れた選択特性を示し、また改善された切断強度を持つことを示している。
【実施例】
【0162】
1. TS−1触媒の調整
粉末の合成
出発原料:
720kgのテトラエトキシシラン(TEOS)
400kgのテトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAOH) (40重量%水溶液)
16kgのテトラエトキシチタン(TEOT)
550kgの脱イオン水
【0163】
反応容器に550kgの脱イオン水を入れ、攪拌した。攪拌しながら400kgのTPAOHを添加した。攪拌を1時間継続した。得られた混合物を適当な容器に移した。この反応容器を、合計で2回、2000lの脱イオン水で洗った。洗浄した反応容器に、300kgのTEOSを添加し攪拌した。80kgのTEOSと16kgのTEOTの混合物を、この300kgのTEOSに添加した。残りのTEOSを加えた。次いでTPAOH溶液を添加し、得られた混合物をさらに1時間攪拌した。次いでこの反応容器を加熱し、得られたエタノールを蒸留で分離した。容器の内温が95℃に達したとき、反応容器を冷却した。容器中に得られた懸濁液に1143kgの水を添加し、この混合物をさらに1時間攪拌した。24時間以内の時間、175℃で自発圧力下で結晶化を行った。得られたチタンシリカライト1結晶を分離・乾燥し、空気中500℃で焼成した。
【0164】
成形
混和機中でTS−1粉末とワコセルを混合し、5分間混合した。10分以内に上記ポリスチレン分散体を連続的に添加した。次いで15lのルドックスを連続的に添加した。得られた混合物を5分間混合し、15分以内にPEOを連続的に添加し、次いで10分間混合した。次いで水を添加した。直径が1.5mmの円孔をもつマトリックスを通して、この成形可能な物質を押し出した。得られたストランドをバンドドライヤ中で120℃の温度で2時間乾燥し、希薄空気(100m3/hの空気/100m3/hの窒素)中で550℃の温度で焼成した。収量は89kg(押出物I)であった。
この方法を繰り返した。収量は88kgであった(押出物II)。
【0165】
水処理
出発原料
(a)88kgの押出物I
890kgの脱イオン水
(b)87kgの押出物II
880kgの脱イオン水
【0166】
(a)には、攪拌容器に水を入れ、押出物Iを加えた。84mbarの圧力で容器を内温で139〜143℃まで加熱した。得られた圧力は2.1〜2.5barの範囲であった。水処理を36時間行った。押出物を濾過で分離し、大気下で123℃で16時間乾燥し、2℃/minの速度で470℃まで加熱し、空気下で490℃の温度で5時間維持した。収量は81.2kgであった。
【0167】
(b)には、攪拌容器に水を入れ、押出物IIを添加した。84mbarの圧力でこの容器を内温で141〜143℃まで加熱した。得られた圧力は2.3〜2.5barの範囲であった。水処理を36時間行った。押出物を濾過で分離し、空気中で123℃で16時間乾燥し、2℃/minの速度で470℃まで加熱し、空気中で490℃の温度で5時間維持した。収量は77.3kgであった。
【0168】
2.触媒押出物(b)上への炭質材料の析出

2.1 180gの触媒押出物(b)を縦型反応器に充填した。この反応器は、底部に18gの直径が2〜3mmのステアタイトペレットを有していた。この反応器は、頂上部に17gの直径が5mmのステアタイトペレットを有していた。流速が600Nl/h(ノルマルリットル/時)の窒素下で、この反応器を段階的に450℃の温度まで加熱した。この温度を維持した。次いでこの反応器に、流量が20Nl/hでプロペンを16時間通過させた。次いで窒素下でこの触媒を冷却し、大気温度で反応器から取り出した。収量:180g。この灰色のストランドを、得られた押出物から手で分離した。灰色ストランドの収量:24g
【0169】
2.2 176gの触媒押出物(b)を縦型反応器に充填した。この反応器は、底部に18gの直径が2〜3mmのステアタイトペレットを含んでいた。この反応器は、頂上部に21gの直径が5mmのステアタイトペレットを含んでいた。流速が600Nl/h(ノルマルリットル/時)の窒素下で、この反応器を段階的に450℃の温度まで加熱した。この温度を維持した。次いでこの反応器に、流量が30Nl/hでプロペンを30時間通過させた。次いで窒素下でこの触媒を冷却し、大気温度で反応器から取り出した。収量:176g。この灰色のストランドを、得られた押出物から手で分離した。灰色ストランドの収量:31g。
【0170】
2.3 175gの触媒押出物(b)を縦型反応器に充填した。この反応器は、底部に18gの直径が2〜3mmのステアタイトペレットを含んでいた。この反応器は、頂上部に24gの直径が5mmのステアタイトペレットを含んでいた。流速が600Nl/h(ノルマルリットル/時)の窒素下で、この反応器を段階的に450℃の温度まで加熱した。この温度を維持した。次いでこの反応器に、流量が39Nl/hでプロペンを12時間通過させた。次いで窒素下でこの触媒を冷却し、大気温度で反応器から取り出した。収量:175g。この灰色のストランドを、得られた押出物から手で分離した。灰色ストランドの収量:20g。
【0171】
2.4 177gの触媒押出物(b)を縦型反応器に充填した。この反応器は、底部に18gの直径が2〜3mmのステアタイトペレットを含んでいた。この反応器は、頂上部に19gの直径が5mmのステアタイトペレットを含んでいた。流速が750Nl/h(ノルマルリットル/時)の窒素下で、この反応器を段階的に450℃の温度まで加熱した。この温度を維持した。次いでこの反応器に、流量が35Nl/hでプロペンを21時間通過させた。次いで窒素下でこの触媒を冷却し、大気温度で反応器から取り出した。収量:177g。この灰色のストランドを、得られた押出物から手で分離した。灰色ストランドの収量:47g。
【0172】
2.5 179gの触媒押出物(b)を縦型反応器に充填した。この反応器は、底部に19gの直径が2〜3mmのステアタイトペレットを含んでいた。この反応器は、頂上部に26gの直径が5mmのステアタイトペレットを含んでいた。流速が600Nl/h(ノルマルリットル/時)の窒素下で、この反応器を段階的に450℃の温度まで加熱した。この温度を維持した。次いでこの反応器に、流量が39Nl/hでプロペンを30時間通過させた。次いで窒素下でこの触媒を冷却し、大気温度で反応器から取り出した。収量:179g。この灰色のストランドを、得られた押出物から手で分離した。灰色ストランドの
【0173】
2.6 184gの触媒押出物(b)を縦型反応器に充填した。この反応器は、底部に18gの直径が2〜3mmのステアタイトペレットを含んでいた。この反応器は、頂上部に28gの直径が5mmのステアタイトペレットを含んでいた。流速が600Nl/h(ノルマルリットル/時)の窒素下で、この反応器を段階的に450℃の温度まで加熱した。この温度を維持した。次いでこの反応器に、流量が70Nl/hでプロペンを30時間通過させた。次いで窒素下でこの触媒を冷却し、大気温度で反応器から取り出した。収量:178g。この灰色のストランドを、得られた押出物から手で分離した。灰色ストランドの収量:16g。
【0174】
2.7 2.1〜2.6で得られた灰色ストランドを混合し、その総有機炭素含量(TOC含量)を測定した結果、0.074重量%であった。これらのストランドを以下、触媒A1と称す。上の2.1〜2.6に記載の灰色ストランドの分離後に残る白色ストランドを混合して、その総有機炭素含量(TOC含量)を測定したところ、0.031重量%であった。これらのストランドを以下、触媒A2と称す。上記1に記載の水処理後に得られたストランド(押出物(b))を、以下、触媒Cと称す。
【0175】
3. エポキシ化試験
触媒A1(本発明)と触媒A2(本発明)と触媒C(比較用)を、溶媒としてのメタノール中で過酸化水素によるプロピレンのエポキシ化用の触媒として用いた。反応器として、長さが1400mmで外径が10mm、内径が7mmの縦型チューブ反応器を用いた。この反応器は冷却ジャケットを備えていた。15gの各触媒をこの反応器に充填した。反応器を通して、次の出発原料を、以下の流速で通過させた:メタノール(49g/h);過酸化水素(9g/h);プロピレン(7g/h)。冷却ジャケットを通過する冷却媒体を用いて、反応器から排出される反応混合物で求めた過酸化水素変換率が実質的に90%で一定となるように反応混合物の温度を調整した。通常50〜100時間の誘導期間の後、この温度は35〜45℃の範囲であった。反応器内の圧力は20barで一定に保った。固定床触媒以外の反応混合物は単一の液相となっていた。
【0176】
過酸化水素水として過酸化水素水溶液(安定化された40重量%の過酸化水素)を使用した。安定化剤として、この過酸化水素流は、1モルの過酸化水素あたり111μモルのナトリウムイオンと、1モルの過酸化水素あたり91.8μモルのリン(P)と1kgの過酸化水素あたり80mgの硝酸塩を含んでいた。この過酸化水素流は、ナトリウム以外に、極微量(10重量ppb未満)の他金属(鉄、アルミニウム、スズ、パラジウム)を含んでいた。このような過酸化水素水溶液は、例えばソルベイ社から、粗製洗浄過酸化水素水溶液として市販されている。プロピレンとしては、ポリマーグレードのプロペン(99.9重量%のプロペン)を使用した。
【0177】
反応器を出る生成物流は、周囲圧力まで減圧して容器に移し、ここで気相と液相を分離した。ガス量は定量的に測定し、その組成はガスクロマトグラフィーで分析した。過酸化物の総濃度はヨウ素滴定で決定した。H22の濃度は、チタニルスルフェート方法を用いる熱量測定で決定した。これら二つの値の差は、一般的にはヒドロペルオキシプロパノール(1−ヒドロペルオキシ−2−プロパノールと2−ヒドロペルオキシ−1−プロパノール)の濃度の良い指標となる。これは、過剰のトリフェニルフォスフィンを用いるこの混合物の還元前後のプロピレングリコールの量をGCで測定して確認した。他のすべての有機成分は、FID検出器を用い1,4−ジオキサン内部標準とするGCで求めた。特に、副産物と二次生成物の酸素、メトキシプロパノール(MOP)、ヒドロペルオキシドに対するエポキシ化方法の選択性を決定した。選択性は、過酸化水素当りの選択性として計算した。
【0178】
200時間、300時間、400時間、500時間後のエポキシ化方法のそれぞれの値を、下の表1に示す。この表から、本発明の好ましい触媒が、炭質材料を含まない比較用触媒Cと較べて優れた選択特性をもつことは明らかである。また、触媒A2の炭質材料の量(0.01〜0.06重量%の最も好ましい範囲にある)が、0.074重量%の量(触媒A1)よりさらに好ましいことがわかる。
【0179】
また、上述のように三触媒の比較を許す内標準として選ばれた過酸化水素変換率の90%を達成するには、触媒Cでは、300時間の運転後、チューブ反応器のジャケットを通過する冷却媒体の温度を42℃まで上げる必要があった。本発明の触媒では、400時間後のこの温度が、触媒A2では40℃、触媒A1では42℃であった。400時間後では上記温度が、触媒Cでは44℃であったが、触媒A2では41.5℃、触媒A2では42℃に過ぎなかった。500時間後では上記温度が、触媒Cで45℃であったが、触媒A1とA2では、ともに43℃であった。
【0180】
明らかに、本発明の触媒は、特に工業規模の方法で重要な長期運転試験において改善された寿命特性を示した。また、下表1に示すような副生成物と二次生成物に対する優れた選択性に加えて、触媒A2も、上記の温度による寿命特性に関して最も優れた触媒であることがわかった。
【0181】
【表1】

【0182】
触媒A1とA2の、上に詳述したZwick装置を用いて測定した破砕強度は23Nより少し大きい。しかしながら、触媒Cの切断強度は20.8Nであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素の転化反応に用いる触媒の製造方法であって、前記触媒はチタンゼオライトと炭質材料を含み、前記触媒は該触媒に含まれるチタンゼオライトの総重量に対して0.01〜0.5重量%の量で前記炭質材料を含み、
当該方法は、
(i)チタンゼオライトを含む触媒を製造する工程;
(ii)前記触媒を、前記炭化水素転化反応において使用する前に、不活性雰囲気中で少なくとも一種の炭化水素を含む流体に接触させることにより、炭質材料を、該触媒に含まれるチタンゼオライトの総重量に対して0.01〜0.5重量%の量で(i)の触媒に付着させて炭質材料含有触媒を得る工程、
を含み、
(ii)において前記触媒を酸素含有ガスに接触させないことを特徴とする製造方法。
【請求項2】
(ii)において前記流体がガス流である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記不活性雰囲気が不活性ガスまたは不活性ガス混合物であり、前記不活性雰囲気は好ましくは窒素である請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
(ii)において、前記流体が前記少なくとも一種の炭化水素と不活性ガスまたは不活性ガス混合物を含むガス流であり、該ガス流において、不活性ガスまたは不活性ガス混合物に対する炭化水素の体積比が1:50〜1:5の範囲である請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
(i)で用いる少なくとも一種の炭化水素が、炭化水素の転化プロセスで転化される炭化水素に相当する請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記炭化水素がオレフィン、好ましくはプロピレンである請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
(ii)の接触を400〜500℃の範囲の温度で行う請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
(ii)の接触を12〜48時間の範囲の時間行う請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記チタンゼオライトがMFI、MEL、MWW、BEAまたはFER構造、またはこれらの二種以上の混合構造を、好ましくはMFI構造をもつ請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
(ii)の前後のいずれにおいても前記触媒をシリル化処理に付さない請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
(i)の後で(ii)の前に、前記触媒を水熱処理に付し、該水熱処理が、好ましくは、
(I)前記触媒を、オートクレーブ内で、好ましくは2〜3barの圧力で、好ましくは130〜150℃の範囲の温度で、好ましくは12〜48時間水で処理する工程、
(II)前記触媒を、好ましくは100〜150℃の範囲の温度で乾燥させる工程;及び
(III)乾燥した触媒を、好ましくは450〜500℃の範囲の温度で焼成する工程、
を含む請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
(i)において、前記チタンゼオライトを成形して、好ましくは押出成形して、チタンゼオライトと好ましくは少なくとも一種のバインダー、特にシリカバインダーを含む成形体を得る請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記触媒が、該触媒に含まれるチタンゼオライトの総重量に対して0.01〜0.1重量%、好ましくは0.01〜0.06重量%、より好ましくは0.02〜0.05重量%、更に好ましくは0.03〜0.04重量%の量で前記炭質材料を含み、(ii)において、前記炭質材料を、前記触媒に含まれるチタンゼオライトの総重量に対して0.01〜0.1重量%、好ましくは0.01〜0.06重量%、より好ましくは0.02〜0.05重量%、更に好ましくは0.03〜0.04重量%の量で(i)の触媒に付着させる請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
チタンゼオライトと炭質材料を含む触媒であって、該触媒に含まれるチタンゼオライトの総重量に対して0.01〜0.5%質量%、好ましくは0.01〜0.1重量%、より好ましくは0.01〜0.06重量%、より好ましくは0.02〜0.05重量%、より好ましくは0.03〜0.04重量%の量で炭質材料を含み、当該触媒は請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法によって得られることが可能であり又は得られるものであり、前記チタンゼオライトはMFI、MEL、MWW、BEAまたはFER構造またはこれらの二種以上の混合構造を、好ましくはMFI構造をもつことを特徴とする触媒。
【請求項15】
前記成形体がマイクロポアとメソポアを含む請求項12に従属する請求項14に記載の触媒。
【請求項16】
前記成形体が、該成形体の総重量に対して70〜80重量%の量のチタンゼオライト及び炭質材料と、20〜30重量%のバインダー、好ましくはシリカバインダーを含む請求項15に記載の触媒。
【請求項17】
前記成形体の、明細書中に詳細に説明したZwick社のBZ2.5/TS1S型装置を用いて求めた破砕強度が少なくとも22N、好ましくは22〜25Nである請求項15または16に記載の触媒。
【請求項18】
請求項14〜17のいずれか一項に記載の触媒を、炭化水素の転化プロセスにおいて、好ましくは炭化水素の酸化、より好ましくはオレフィンのエポキシ化、特にプロピレンのエポキシ化プロセスにおいて使用する方法。
【請求項19】
前記炭化水素の転化プロセスが、少なくとも一種のチタンゼオライトと炭質材料を含む触媒の存在下でプロピレンオキシドを製造するプロセスであり、前記触媒がチタンゼオライトの総重量に対して0.01〜0.5重量%で前記炭質材料を含み、
前記プロセスが、
(i)チタンゼオライトを含む触媒を提供する工程、
(ii)前記触媒を、前記炭化水素転化反応で使用する前に、不活性雰囲気中で少なくとも一種の炭化水素を含む流体と接触させることにより、炭質材料を、該触媒に含まれるチタンゼオライトの総重量に対して0.01〜0.5重量%の範囲で(i)の触媒に付着させて炭質材料含有触媒を得る工程、
(iii)(ii)で得られた触媒を、プロピレン、ヒドロペルオキシド及び少なくとも一種の溶媒を含む反応混合物に接触させる工程、
を含み、
(ii)において、前記触媒を酸素含有ガスに接触させない請求項18に記載の使用方法。
【請求項20】
(iii)において、前記触媒がチタンシリカライト1触媒であり、前記ヒドロペルオキシドが過酸化水素であり、前記溶媒がメタノールである請求項19に記載の使用方法。
【請求項21】
前記触媒は、該触媒に含まれるチタンゼオライトの総重量に対して0.01〜0.1重量%、好ましくは0.01〜0.06重量%、より好ましくは0.02〜0.05重量%、より好ましくは0.03〜0.04重量%の量で前記炭質材料を含み、(ii)において、前記炭質材料を、該触媒に含まれるチタンゼオライトの総重量に対して、0.01〜0.1重量%、好ましくは0.01〜0.06重量%、より好ましくは0.02〜0.05重量%、より好ましくは0.03〜0.04重量%の量で(i)の触媒に付着させる請求項19または20に記載の使用方法。

【公表番号】特表2013−512082(P2013−512082A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−540397(P2012−540397)
【出願日】平成22年11月23日(2010.11.23)
【国際出願番号】PCT/EP2010/067987
【国際公開番号】WO2011/064191
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【出願人】(590000020)ザ ダウ ケミカル カンパニー (24)
【氏名又は名称原語表記】THE DOW CHEMICAL COMPANY
【Fターム(参考)】