説明

チャンバー式シールド掘進機

【課題】レベルスイッチに付着した泥を容易に落とすことができるチャンバー式シールド掘進機を提供する。
【解決手段】シールド掘進機本体2の前部に形成したカッタ室3の後方に、そのカッタ室3内の泥水4を下部から取り込むと共に、上部に空気層5を形成した圧力調整室6を設け、圧力調整室6内の泥水レベルが一定となるよう空気層5の圧力を調整してカッタ室3内の土圧を切羽の土圧になるよう制御して掘進するチャンバー式シールド掘進機1において、圧力調整室6内に泥水4のレベルを検出するレベルスイッチ22を上下に複数並べて設けると共に、各レベルスイッチ22に対向してそのレベルスイッチ22を洗浄する洗浄ノズル23を設けたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カッタ室内の土圧を切羽の土圧になるよう制御して掘進するチャンバー式シールド掘進機に関する。
【背景技術】
【0002】
チャンバー式シールド掘進機としては、特許文献1記載のものが知られている。図3に示すように、このチャンバー式シールド掘進機30は、カッタ室31の後方に、そのカッタ室31内の泥水を下部から取り込むと共に、上部に空気層32を形成した圧力調整室33を設け、その圧力調整室33内の泥水レベルが一定となるよう空気層32の圧力を調整してカッタ室31内の土圧を切羽の土圧になるよう制御するものである。圧力調整室33内には、泥水に浸ることでオンとなるレベルスイッチ34が上下に複数並べて設けられており、これらレベルスイッチ34のオンオフ状態を検出することにより水位を測定できるようになっている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−120176号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、シールド掘進機30を稼動するうちに、レベルスイッチ34に泥が付着することも考えられ、レベルスイッチ34の検出部が泥で覆われると測定不能となる虞もあるが、圧力調整室33内は、土圧を受けるために非常に高圧となっており、人手によるメンテナンスは困難であり、レベルスイッチ34が泥に覆われても泥を落とす手段がないという課題があった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、レベルスイッチに付着した泥を容易に落とすことができるチャンバー式シールド掘進機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明は、シールド掘進機本体の前部に形成したカッタ室の後方に、そのカッタ室内の泥水を下部から取り込むと共に、上部に空気層を形成した圧力調整室を設け、その圧力調整室内の泥水レベルが一定となるよう空気層の圧力を調整してカッタ室内の土圧を切羽の土圧になるよう制御して掘進するチャンバー式シールド掘進機において、上記圧力調整室内に泥水のレベルを検出するレベルスイッチを上下に複数並べて設けると共に、各レベルスイッチに対向してそのレベルスイッチを洗浄する洗浄ノズルを設けたものである。
【0007】
上記洗浄ノズルは、上記レベルスイッチの列に沿って設けられた送水管に形成されるとよい。
【0008】
上記送水管は、最下段の洗浄ノズルが形成された下部から上部へ向けて送水するように形成されるとよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、レベルスイッチに付着した泥を容易に落とすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の好適実施の形態を添付図面を用いて説明する。
【0011】
図1及び図2に示すように、チャンバー式シールド掘進機1は、シールド掘進機本体2の前部に形成したカッタ室3と、カッタ室3の後方に設けられカッタ室3内の泥水4を下部から取り込むと共に、上部に空気層5を形成する圧力調整室6と、圧力調整室6内の泥水レベルが一定となるよう空気層5の圧力を調整してカッタ室3内の土圧を切羽の土圧になるよう制御する圧力制御装置(図示せず)とを有する。
【0012】
カッタ室3は、シールド掘進機本体2の前端隔壁7に前方に延出して設けられるカッタ8の切削土を収容するためのものである。前端隔壁7は、径方向の中央に前方に突出する中央突出部9を有し、カッタ8は、中央突出部9に回転自在に設けられている。具体的には、カッタ8は、前端隔壁7の中央突出部9に回転自在に支持されたリング状部材10と、リング状部材10に前方に延びて設けられた複数の中間ビーム11と、中間ビーム11の前端に設けられたカッタ面板12と、カッタ面板12に設けられたカッタビット13とからなる。リング状部材10は、シールド掘進機本体2に設けられた駆動モータ14から動力を受けて回転駆動されるようになっている。また、カッタ8と前端隔壁7との間の空間のうち、中央突出部9の径方向外方の空間は、仕切壁15を介して前後に仕切られている。仕切壁15は、リング板状に形成されており、中央突出部9の外周面前端に内周端が気密に接合されると共に、カッタフード16の内周面に外周端が気密に接合されている。仕切壁15とカッタ8との間には、カッタ室3が形成され、仕切壁15と前端隔壁7の外周部との間には、圧力調整室6が形成されている。カッタ室3には、泥水4を供給するための送泥管17が接続されると共に、泥水4を排出するための排泥管18が接続されており、カッタ8で掘削した土砂を泥水4と共に循環させるようになっている。また、仕切壁15には、カッタ室3内の泥水4を圧力調整室6に導入するための流路19が形成されている。流路19は、仕切壁15の下部に前後に貫通する開口を形成してなるものであり、流路19の上方の圧力調整室6内に空気層5を形成するようになっている。
【0013】
圧力調整室6は、中央突出部9の外周に環状に形成されている。また、圧力調整室6には、シールド掘進機本体2の機内に設けられる水位検出装置20が接続されている。水位検出装置20は、上下に延びると共に上端を密閉された管21内に圧力調整室6内の泥水4を導入し、この泥水4の水位を超音波にて検出するように構成したものである。またさらに、圧力調整室6内には、泥水4のレベルを検出するためのレベルスイッチ22が上下に複数並べて設けられると共に、各レベルスイッチ22に対向してそのレベルスイッチ22を洗浄する洗浄ノズル23が設けられている。レベルスイッチ22は、絶縁体(図示せず)を介して離間される複数の電極(図示せず)を有し、これら電極間の通電の有無を検出することで水中にあるか否かを検出するセンサからなる。レベルスイッチ22は、前端隔壁7の左右の一側部に上下に並べて取り付けられている。洗浄ノズル23は、レベルスイッチ22に洗浄水を噴射するためのものであり、レベルスイッチ22の列に沿って設けられた送水管24に形成されている。具体的には、洗浄ノズル23は、送水管24に形成された孔からなる。送水管24は、シールド掘進機本体2の機内側から圧力調整室6内に延びて設けられており、機内側の基端を給水源(図示せず)に接続されることで各洗浄ノズル23に洗浄水を供給するようになっている。送水管24は、最下段の洗浄ノズル23が形成された下部から上部へ向けて送水するように形成されており、下段側の洗浄ノズル23が泥水4中に位置されていても確実に洗浄水を噴射できるようになっている。
【0014】
また、圧力調整室6には、空気層5の圧力を調整すべく吸排気する給気管25と排気管26がそれぞれ接続されている。圧力制御装置は、水位検出装置20と各レベルスイッチ22からの水位情報に基づいて圧力調整室6内の水位を一定にするように制御するものであり、水位を上げるときには圧力調整室6内の圧気を排気管26から逃がし、水位を下げるときには給気管25から圧力調整室6内に空気を供給するように構成されている。
【0015】
次に本実施の形態の作用を述べる。
【0016】
切羽側の土圧が上昇した場合、土圧と空気層5の圧力がバランスする位置まで圧力調整室6内の泥水4の水位が上昇する。これによって空気層5中の最下段のレベルスイッチ22が泥水4に浸かると、泥水4に浸かったレベルスイッチ22の通電がONとなり、圧力制御装置に水位が上昇した旨の信号が入力される。なお、このとき水位検出装置20も水位を検出し、圧力制御装置に水位情報を発する。
【0017】
レベルスイッチ22及び水位検出装置20から信号等を受けた圧力制御装置は、給気管25から圧力調整室6内に空気を送り、空気層5の圧力を上昇させて圧力調整室6内の水位を下げる。上記レベルスイッチ22が空気層5に戻り、水位が元の位置に戻ったら、圧力制御装置は、給気管25を図示しないバルブで閉じ、給気を止める。これにより、カッタ室3内の土圧が切羽の土圧と同じとなり、切羽に臨む地山が安定される。
【0018】
このようにして、レベルスイッチ22が泥水4に浸かったり空気層5に戻ったりを繰り返すと、レベルスイッチ22の検出部に土砂が付着して検出部が土砂で覆われることも考えられる。このため、定期的にレベルスイッチ22を洗浄し、レベルスイッチ22に付着した土砂を落とす。具体的には、送水管24の基端に給水源を接続し、各洗浄ノズル23から洗浄水を噴射させる。洗浄ノズル23から噴射された洗浄水は、レベルスイッチ22に当たり、レベルスイッチ22に付着した土砂を洗い落とす。このとき、送水管24は、下部から上部へ向けて送水するように形成されているため、送水管24下部の洗浄ノズル23が泥水4中に位置されていている場合であっても、洗浄水の圧を泥水圧よりも高くすることで泥水4中のレベルスイッチ22に確実に洗浄水を噴射することができる。
【0019】
このように、圧力調整室6内に泥水4のレベルを検出するレベルスイッチ22を上下に複数並べて設けると共に、各レベルスイッチ22に対向してそのレベルスイッチ22を洗浄する洗浄ノズル23を設けたため、レベルスイッチ22に付着した泥を容易に落とすことができる。
【0020】
また、洗浄ノズル23は、レベルスイッチ22の列に沿って設けられた送水管24に形成されるものとしたため、簡易で安価なものにできる。
【0021】
送水管24は、最下段の洗浄ノズル23が形成された下部から上部へ向けて送水するように形成されるものとしたため、洗浄ノズル23が泥水4中に位置されていている場合であっても、洗浄ノズル23から洗浄水を確実に噴射することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の好適実施の形態を示すチャンバー式シールド掘進機の要部側断面図である。
【図2】図1のA−A線矢視断面図である。
【図3】従来のチャンバー式シールド掘進機の側断面図である。
【符号の説明】
【0023】
1 シールド掘進機
2 シールド掘進機本体
3 カッタ室
4 泥水
5 空気層
6 圧力調整室
22 レベルスイッチ
23 洗浄ノズル
24 送水管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド掘進機本体の前部に形成したカッタ室の後方に、そのカッタ室内の泥水を下部から取り込むと共に、上部に空気層を形成した圧力調整室を設け、その圧力調整室内の泥水レベルが一定となるよう空気層の圧力を調整してカッタ室内の土圧を切羽の土圧になるよう制御して掘進するチャンバー式シールド掘進機において、上記圧力調整室内に泥水のレベルを検出するレベルスイッチを上下に複数並べて設けると共に、各レベルスイッチに対向してそのレベルスイッチを洗浄する洗浄ノズルを設けたことを特徴とするチャンバー式シールド掘進機。
【請求項2】
上記洗浄ノズルは、上記レベルスイッチの列に沿って設けられた送水管に形成される請求項1記載のチャンバー式シールド掘進機。
【請求項3】
上記送水管は、最下段の洗浄ノズルが形成された下部から上部へ向けて送水するように形成された請求項2記載のチャンバー式シールド掘進機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−248509(P2008−248509A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−88649(P2007−88649)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】