テクスチャ構造の形成方法および太陽電池の製造方法
【課題】基板の湾曲を抑えて特性の高い太陽電池を製造することが可能なテクスチャ構造の形成方法および太陽電池の製造方法を提供する。
【解決手段】厚さ300μm以下の半導体基板の一方の表面である第1の表面に窒化シリコン膜を形成する工程と、半導体基板の第1の表面とは反対側の第2の表面をエッチングすることによってテクスチャ構造を形成する工程と含み、窒化シリコン膜のシリコン原子に対する窒素原子の含有比率が1.3以上2以下であるテクスチャ構造の形成方法および太陽電池の製造方法である。
【解決手段】厚さ300μm以下の半導体基板の一方の表面である第1の表面に窒化シリコン膜を形成する工程と、半導体基板の第1の表面とは反対側の第2の表面をエッチングすることによってテクスチャ構造を形成する工程と含み、窒化シリコン膜のシリコン原子に対する窒素原子の含有比率が1.3以上2以下であるテクスチャ構造の形成方法および太陽電池の製造方法である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テクスチャ構造の形成方法および太陽電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、特に地球環境の保護の観点から、太陽光エネルギを電気エネルギに変換する太陽電池セルは次世代のエネルギ源としての期待が急激に高まっている。太陽電池セルの種類には、化合物半導体を用いたものや有機材料を用いたものなどの様々なものがあるが、現在、シリコン結晶を用いた太陽電池セルが主流となっている。
【0003】
現在、最も多く製造および販売されている太陽電池セルは、太陽光が入射する側の面(受光面)にn電極が形成されており、受光面と反対側の面(裏面)にp電極が形成された構成の両面電極型太陽電池セルである。また、太陽電池セルの受光面には電極を形成せず、太陽電池セルの裏面のみにn電極およびp電極を形成した裏面電極型太陽電池セルの開発も進められている。
【0004】
両面電極型太陽電池セルおよび裏面電極型太陽電池セルのいずれにおいても、シリコン基板の受光面にテクスチャ構造と呼ばれる微小なピラミッド状の凹凸を形成することによって、シリコン基板の受光面における入射光の反射を防止する技術は重要である。
【0005】
たとえば、特許文献1には、p型シリコン基板の一方の表面に常圧CVD法により酸化シリコン膜を形成した後に、酸化シリコン膜を形成していない側のp型シリコン基板の表面をアルカリ水溶液でエッチングすることによりテクスチャ構造を形成する方法が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、シリコン基板の受光面および裏面にそれぞれ熱酸化法により酸化シリコン膜を形成し、シリコン基板の受光面の酸化シリコン膜をフッ化水素水溶液で除去した後に、シリコン基板の受光面をアルカリ溶液でエッチングすることによりテクスチャ構造を形成する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−93194号公報
【特許文献2】特開2009−147070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の方法においては、アルカリ水溶液によるテクスチャ構造の形成時にマスクとして機能させるために、厚さ750nmといった厚膜の酸化シリコン膜を形成しなければならなかった。このような厚膜の酸化シリコン膜を形成した場合には、シリコン基板にかかる応力が大きくなるため、シリコン基板が湾曲し、太陽電池の製造が困難になるという問題があった。
【0009】
また、特許文献2に記載の方法においては、酸化シリコン膜自体の厚さを薄くすることができるが、酸化シリコン膜を形成する際に、シリコン基板を900℃〜1200℃の高温で加熱する必要があった。そのため、特許文献2に記載の方法を用いてテクスチャ構造を形成することによって作製された太陽電池においては、少数キャリアのライフタイムが悪化して、太陽電池の特性が低下するという問題があった。
【0010】
上記の事情に鑑みて、本発明の目的は、基板の湾曲を抑えて特性の高い太陽電池を製造することが可能なテクスチャ構造の形成方法および太陽電池の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、厚さ300μm以下の半導体基板の一方の表面である第1の表面に窒化シリコン膜を形成する工程と、半導体基板の第1の表面とは反対側の第2の表面をエッチングすることによってテクスチャ構造を形成する工程とを含み、窒化シリコン膜のシリコン原子に対する窒素原子の含有比率が1.3以上2以下であるテクスチャ構造の形成方法である。
【0012】
ここで、本発明のテクスチャ構造の形成方法は、窒化シリコン膜をフッ化水素水溶液を用いて除去する工程をさらに含むことが好ましい。
【0013】
また、本発明のテクスチャ構造の形成方法においては、窒化シリコン膜を形成する工程において、窒化シリコン膜を10nm以上40nm以下の厚さに形成することが好ましい。
【0014】
また、本発明のテクスチャ構造の形成方法においては、窒化シリコン膜を形成する工程において、窒化シリコン膜をプラズマCVD法またはスパッタリング法によって形成することが好ましい。
【0015】
また、本発明のテクスチャ構造の形成方法において、プラズマCVD法は、シリコン源としてシランガスを供給し、窒素源としてアンモニアガスを供給することによって行なわれ、シランガスおよびアンモニアガスは、それぞれ、シランガスに対するアンモニアガスの体積比が6以上12以下となるように供給されることが好ましい。
【0016】
また、本発明のテクスチャ構造の形成方法において、スパッタリング法は、窒素ガスまたはアンモニアガスのいずれか一方もしくは両方を含む雰囲気、または、窒素ガスまたはアンモニアガスのいずれか一方もしくは両方と希ガスとを含む雰囲気中でターゲットをスパッタリングすることにより行なわれることが好ましい。
【0017】
さらに、本発明は、厚さ300μm以下のシリコン基板の一方の表面である第1の表面に窒化シリコン膜を形成する工程と、シリコン基板の第1の表面とは反対側の第2の表面をエッチングすることによってテクスチャ構造を形成する工程と、フッ化水素水溶液を用いて窒化シリコン膜を除去する工程と、シリコン基板の第1の表面に不純物拡散層を形成する工程と、不純物拡散層上に電極を形成する工程とを含み、窒化シリコン膜のシリコン原子に対する窒素原子の含有比率が1.3以上2以下である太陽電池の製造方法である。
【0018】
ここで、本発明の太陽電池の製造方法において、窒化シリコン膜を形成する工程においては、窒化シリコン膜を10nm以上40nm以下の厚さに形成することが好ましい。
【0019】
また、本発明の太陽電池の製造方法において、窒化シリコン膜を形成する工程においては、窒化シリコン膜をプラズマCVD法またはスパッタリング法によって形成することが好ましい。
【0020】
また、本発明の太陽電池の製造方法において、プラズマCVD法は、シリコン源としてシランガスを供給し、窒素源としてアンモニアガスを供給することによって行なわれ、シランガスおよびアンモニアガスは、それぞれ、シランガスに対するアンモニアガスの体積比が、6以上12以下となるように供給されることが好ましい。
【0021】
また、本発明の太陽電池の製造方法において、スパッタリング法は、窒素ガスまたはアンモニアガスのいずれか一方もしくは両方を含む雰囲気、または、窒素ガスまたはアンモニアガスのいずれか一方もしくは両方と希ガスとを含む雰囲気中でシリコンターゲットをスパッタリングすることにより行なわれることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、基板の湾曲を抑えて特性の高い太陽電池を製造することが可能なテクスチャ構造の形成方法および太陽電池の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施の形態の裏面電極型太陽電池の製造方法のn型シリコン基板を準備する工程を図解する模式的な断面図である。
【図2】本実施の形態の裏面電極型太陽電池の製造方法の窒化シリコン膜を形成する工程を図解する模式的な断面図である。
【図3】本実施の形態の裏面電極型太陽電池の製造方法のn型シリコン基板の第2の表面にテクスチャ構造を形成する工程を図解する模式的な断面図である。
【図4】本実施の形態の裏面電極型太陽電池の製造方法の窒化シリコン膜を除去する工程を図解する模式的な断面図である。
【図5】本実施の形態の裏面電極型太陽電池の製造方法のn型不純物拡散領域およびp型不純物拡散領域をそれぞれ形成する工程を図解する模式的な断面図である。
【図6】本実施の形態の裏面電極型太陽電池の製造方法のパッシベーション膜を形成する工程を図解する模式的な断面図である。
【図7】本実施の形態の裏面電極型太陽電池の製造方法の反射防止膜を形成する工程を図解する模式的な断面図である。
【図8】本実施の形態の裏面電極型太陽電池の製造方法のパッシベーション膜にコンタクトホールを形成する工程を図解する模式的な断面図である。
【図9】本実施の形態の裏面電極型太陽電池の製造方法のn型用電極およびp型用電極を形成する工程を図解する模式的な断面図である。
【図10】実施例におけるサンプル1および2のXPSによる元素分析の結果を示す図である。
【図11】図10に示すSiの2p軌道に対応するピークの拡大図である。
【図12】図10に示すNの1s軌道に対応するピークの拡大図である。
【図13】図10に示すOの1s軌道に対応するピークの拡大図である。
【図14】図10に示すCの1s軌道に対応するピークの拡大図である。
【図15】図10に示すFの1s軌道に対応するピークの拡大図である。
【図16】図10に示すサンプル1のXPS分析におけるSiの2p軌道に対応するピークをSiの価数ごとに分けた図である。
【図17】図10に示すサンプル2のXPS分析におけるSiの2p軌道に対応するピークをSiの価数ごとに分けた図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図1〜図9の模式的断面図を参照して、本実施の形態の裏面電極型太陽電池の製造方法について説明する。なお、本発明の図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表すものとする。また、後述する各工程の前後に他の工程が含まれていてもよい。また、後述する各工程の順序は入れ替わっていてもよく、後述する各工程の少なくとも2つの工程が同時に行なわれてもよい。
【0025】
まず、図1に示すように、半導体基板の一例としてのn型シリコン基板1を準備する工程を行なう。n型シリコン基板1は、第1の表面1aと、第1の表面1aと反対側の第2の表面1bとを有している。
【0026】
n型シリコン基板1を準備する工程は、たとえば、チョクラルスキー法(CZ法)または浮遊帯溶融法(FZ法)などによって成長させたn型の単結晶シリコンインゴットをスライスし、当該スライスによって形成されたスライスダメージを除去することなどによって行なうことができる。なお、本実施の形態においては、半導体基板としてn型半導体基板であるn型シリコン基板1を用いる場合について説明するが、n型半導体基板以外の半導体基板を用いてもよく、たとえばp型シリコン基板などのp型半導体基板を用いてもよい。また、半導体基板の材質としては、単結晶シリコンに限定されるものではなく、多結晶シリコンなどの他の材質を用いてもよい。
【0027】
スライスダメージの除去は、たとえば、上記のスライス後の単結晶シリコンの表面をフッ化水素水溶液と硝酸との混酸または水酸化ナトリウムなどのアルカリ水溶液などでエッチングすることにより行なうことができる。
【0028】
また、n型シリコン基板1の厚さTは300μm以下とされるが、太陽電池への適用に耐え得る強度を有するとともに、薄型化によって製造コストを低減する観点からは、n型シリコン基板1の厚さTは100μm以上150μm以下とすることが好ましい。
【0029】
次に、図2に示すように、n型シリコン基板1の第1の表面1a上に窒化シリコン膜2を形成する工程を行なう。ここで、窒化シリコン膜2としては、シリコン原子(Si原子)に対する窒素原子(N原子)の含有比率(N原子数/Si原子数)が1.3以上2以下となるアモルファスの窒化シリコン膜が形成される。
【0030】
これは、本発明者が鋭意検討した結果、Si原子に対するN原子の含有比率(N原子数/Si原子数)が1.3以上2以下となる窒化シリコン膜2を形成することによって、従来と比べて以下の(i)〜(iii)の点で有利となることを見い出したためである。
【0031】
(i)窒化シリコン膜2をプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法またはスパッタリング法のような低温プロセスで形成することができるため、従来の熱酸化法のようにn型シリコン基板1を900℃〜1200℃といった高温で加熱する必要がない。これにより、n型シリコン基板1における少数キャリアのライフタイムの悪化を抑制することができるため、従来の熱酸化法を用いた場合と比べて太陽電池の特性を向上することができる。
【0032】
(ii)窒化シリコン膜2の厚さtを10nm以上40nm以下、好ましくは20nm以上30nm以下といった薄膜にした場合でも、後述するテクスチャ構造の形成に用いられるアルカリ水溶液に対するマスクとして機能させることができる。これにより、従来のように酸化シリコン膜を750nmの厚さに形成した場合と比べて、窒化シリコン膜2の厚さによるn型シリコン基板1の湾曲を抑えることができるため、従来の常圧CVD法による酸化シリコン膜を用いた場合よりも太陽電池を容易に製造することができる。
【0033】
(iii)窒化シリコン膜2のSi原子に対するN原子の含有比率(N原子数/Si原子数)を1.3以上2以下とすることによって、フッ化水素水溶液に対するエッチングレートを高くすることができる。これにより、後述するテクスチャ構造の形成後に、窒化シリコン膜2をフッ化水素水溶液で除去することができるため、リン酸を用いて窒化シリコン膜2を除去する必要がない。
【0034】
なお、プラズマCVD法で窒化シリコン膜2を形成する場合には、プラズマCVD装置内に、たとえば、シリコン源としてのシラン(SiH4)ガス、窒素源としてのアンモニア(NH3)ガス、およびキャリアガスとしての水素(H2)ガスがそれぞれ供給される。
【0035】
ここで、窒化シリコン膜2のSi原子に対するN原子の含有比率(N原子数/Si原子数)を1.3以上2以下とするためには、SiH4ガスに対するNH3ガスの供給量比[(NH3ガスの体積比)/(SiH4ガスの体積比)]は6以上12以下とされることが好ましい。また、H2ガスの供給量は、SiH4ガスの供給量と同程度とされることが好ましい。
【0036】
また、窒化シリコン膜2の形成時のプラズマCVD装置内の雰囲気の圧力は、たとえば50Pa〜70Paとすることができる。また、窒化シリコン膜2の形成時にプラズマCVD装置に印加される電力は、たとえば0.5kW〜1kWとすることができる。また、窒化シリコン膜2の形成時におけるn型シリコン基板1の温度は、たとえば300℃〜500℃とすることができる。
【0037】
また、スパッタリング法で窒化シリコン膜2を形成する場合には、スパッタリング装置内にシリコンターゲットを設置し、たとえば、窒素源としての窒素(N2)ガスおよびキャリアガスとしての希ガスが供給され、本実施の形態においてはアルゴン(Ar)ガスがそれぞれ供給される。ここで、窒化シリコン膜2のSi原子に対するN原子の含有比率(N原子数/Si原子数)を1.3以上2以下とするためには、N2ガスの供給量と、Arガスの供給量との比率(体積比)は、N2ガス:Arガス=1〜0.6:0〜0.4とされることが好ましい。なお、スパッタリング法で窒化シリコン膜2を形成する場合に、スパッタリング装置内に供給されるガスとしては、窒素ガスまたはアンモニアガスのいずれか一方もしくは両方、または、窒素ガスまたはアンモニアガスのいずれか一方もしくは両方と希ガスとの混合ガスを用いることが好ましい。
【0038】
また、窒化シリコン膜2の形成時のスパッタリング装置内の雰囲気の圧力は、たとえば0.5Pa〜10Paとすることができる。また、窒化シリコン膜2の形成時にスパッタリング装置に印加される電力は、たとえば5kW〜15kWとすることができる。また、窒化シリコン膜2の形成時におけるn型シリコン基板1の温度は、たとえば25℃〜500℃とすることができる。
【0039】
次に、図3に示すように、n型シリコン基板1の第2の表面1bにテクスチャ構造3を形成する工程を行なう。テクスチャ構造3を形成する工程は、たとえば、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムなどのアルカリ水溶液にイソプロピルアルコールを添加した液をたとえば70℃以上80℃以下に加熱したエッチング液を用いてn型シリコン基板1の第2の表面1bをエッチングすることにより行なうことができる。
【0040】
ここで、本実施の形態においては、上述したように、Si原子に対するN原子の含有比率(N原子数/Si原子数)が1.3以上2以下である窒化シリコン膜2をテクスチャ構造3の形成時のマスクとして用いていることから、窒化シリコン膜2の厚さtを10nm以上40nm以下、好ましくは20nm以上30nm以下といった薄膜にした場合でも、アルカリ水溶液に対するマスクとして機能させることができる。そのため、従来のようにn型シリコン基板1の湾曲を抑えられるため、従来の常圧CVD法による酸化シリコン膜を用いた場合と比べて太陽電池を容易に製造することができる。
【0041】
次に、図4に示すように、フッ化水素水溶液を含む液を用いて窒化シリコン膜2を除去する工程を行なう。窒化シリコン膜2を除去する工程は、たとえば、窒化シリコン膜2をフッ化水素水溶液に浸漬させて窒化シリコン膜2をエッチングすることにより行なうことができる。
【0042】
ここで、本実施の形態においては、Si原子に対するN原子の含有比率(N原子数/Si原子数)が1.3以上2以下である窒化シリコン膜2をテクスチャ構造3の形成時のマスクとして用いていることから、フッ化水素水溶液に対するエッチングレートを従来よりも高くすることができる。
【0043】
通常、窒化シリコン膜の除去にはリン酸が用いられるが、本実施の形態においては、フッ化水素水溶液を用いて窒化シリコン膜2を除去することができるため、リン酸を用いて窒化シリコン膜2を除去する必要がない。これにより、リン酸を用いて窒化シリコン膜を除去する場合における以下の(a)および(b)のような問題が生じない点で有利となる。
【0044】
(a)結晶シリコンを半導体基板として用いた結晶太陽電池の製造プロセスにおいては、通常、リン酸を用いた処理が行なわれない。そのため、リン酸を用いた処理を行なう場合には、新しい薬液の追加となることから、工場システムの複雑化と製造コストの増加を招く。特に、1日当たり数十万枚の半導体基板を浸漬させる必要がある場合には、薬液の使用量が膨大となることから、さらなる製造コストの増加を招く。
【0045】
(b)リン酸を用いて窒化シリコン膜2を除去する場合には、高温(少なくとも100℃以上であって、通常は140℃〜180℃程度)で処理する必要があることから、リンを含んだ薬液が蒸発することなどの危険性がある。
【0046】
次に、図5に示すように、n型シリコン基板1の第1の表面1aに、n型不純物拡散領域5およびp型不純物拡散領域6をそれぞれ形成する工程を行なう。n型不純物拡散領域5は、たとえば、リンなどのn型不純物を含むガスを用いた気相拡散、またはリンなどのn型不純物を含む溶液を塗布した後に加熱する塗布拡散などの方法により形成することができる。また、p型不純物拡散領域6は、たとえば、ボロンなどのp型不純物を含むガスを用いた気相拡散、またはボロンなどのp型不純物を含む溶液を塗布した後に加熱する塗布拡散などの方法により形成することができる。
【0047】
n型不純物拡散領域5およびp型不純物拡散領域6はそれぞれ図5の紙面の表面側および/または裏面側に伸びる帯状に形成されており、n型不純物拡散領域5とp型不純物拡散領域6とはn型シリコン基板1の第1の表面1aにおいて交互に所定の間隔をあけて配置されている。
【0048】
n型不純物拡散領域5はn型不純物を含み、n型の導電型を示す領域であれば特に限定されない。また、p型不純物拡散領域6はp型不純物を含み、p型の導電型を示す領域であれば特に限定されない。
【0049】
次に、図6に示すように、n型シリコン基板1の第1の表面1aにパッシベーション膜4を形成する工程を行なう。ここで、パッシベーション膜4を形成する工程は、たとえばプラズマCVD法により、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、または酸化シリコン膜と窒化シリコン膜との積層体などを形成することにより行なうことができる。
【0050】
次に、図7に示すように、n型シリコン基板1のテクスチャ構造3上に、反射防止膜7を形成する工程を行なう。ここで、反射防止膜7を形成する工程は、たとえばプラズマCVD法により、窒化シリコン膜などを形成することにより行なうことができる。
【0051】
次に、図8に示すように、n型シリコン基板1の第1の表面1a上に形成されたパッシベーション膜4にコンタクトホール9およびコンタクトホール10を形成する工程を行なう。ここで、コンタクトホール9は、n型不純物拡散領域5が露出するように形成され、コンタクトホール10は、p型不純物拡散領域6が露出するように形成される。
【0052】
なお、コンタクトホール9およびコンタクトホール10はそれぞれ、たとえば、フォトリソグラフィ技術を用いてコンタクトホール9およびコンタクトホール10の形成箇所に対応する部分に開口を有するレジストパターンをパッシベーション膜4上に形成した後にレジストパターンの開口からパッシベーション膜4をエッチングなどにより除去する方法、またはコンタクトホール9およびコンタクトホール10の形成箇所に対応するパッシベーション膜4の部分にエッチングペーストを塗布した後に加熱することによってパッシベーション膜4をエッチングして除去する方法などにより形成することができる。
【0053】
次に、図9に示すように、n型不純物拡散領域5上にn型用電極11を形成するとともにp型不純物拡散領域6上にp型用電極12を形成する工程を行なう。ここで、n型用電極11は、コンタクトホール9を通してn型不純物拡散領域5に接するようにして形成され、p型用電極12は、コンタクトホール10を通してp型不純物拡散領域6に接するようにして形成される。
【0054】
以上により、本実施の形態における裏面電極型太陽電池セルが完成する。
上述したように、熱酸化法によって形成された酸化シリコン膜のアルカリ水溶液への耐性は、常圧CVD法によって形成された酸化シリコン膜のアルカリ水溶液への耐性よりも高い。そのため、テクスチャ構造の形成時のマスクとして熱酸化法によって形成された酸化シリコン膜を用いた場合には、マスクの厚みを薄くすることができる。
【0055】
たとえば、常圧CVD法によって形成された酸化シリコン膜の厚さ750nmと同程度のマスク性能を持たせるためには、熱酸化法によって形成された酸化シリコン膜の厚さは100nm程度とすればよいが、以下の問題が発生する。
【0056】
すなわち、シリコン基板が熱酸化法による酸化シリコン膜の形成時に高温に曝された場合には、少数キャリアのライフタイムが悪化して、太陽電池の発電効率が低下する。少数キャリアのライフタイムが短くなる原因は、たとえばシリコン基板の表面に存在する金属などの不純物がシリコン基板内に拡散することによって、少数キャリアの再結合中心となるためと考えられる。
【0057】
このような現象は、特にCZ法によって製造された単結晶シリコン基板で顕著に現れ、FZ法によって製造された単結晶シリコン基板においては、CZ法によって製造された単結晶シリコン基板よりもその発生が抑えられる。そのため、熱処理時にシリコン基板内に含まれる酸素に起因して発生する再結合中心も、少数キャリアのライフタイムに影響するものと考えられる。
【0058】
本発明においては、熱酸化法よりも低温プロセスであるプラズマCVD法またはスパッタリング法により窒化シリコン膜を形成することができるため、半導体基板内における少数キャリアのライフタイムの悪化を抑制して、高い特性を有する太陽電池を製造することが可能となる。
【0059】
なお、本発明における裏面電極型太陽電池セルの概念には、上述した半導体基板の一方の表面側(裏面側)のみにn型用電極およびp型用電極の双方が形成された構成のものだけでなく、MWT(Metal Wrap Through)セル(半導体基板に設けられた貫通孔に電極の一部を配置した構成の太陽電池セル)などのいわゆるバックコンタクト型太陽電池セル(太陽電池セルの受光面側と反対側の裏面側から電流を取り出す構造の太陽電池セル)のすべてが含まれる。
【0060】
また、上記においては、裏面電極型太陽電池セルを製造する場合について説明したが、本発明は、裏面電極型太陽電池セル以外の両面電極型太陽電池セルなどの他の太陽電池にも適用できることは言うまでもない。
【実施例】
【0061】
(窒化シリコン膜の作製)
スパッタリング装置内に、シリコンターゲットと、厚さ150μmのn型単結晶シリコン基板とをそれぞれ互いに向かい合うようにして所定の距離を空けて設置した。そして、下記の成膜条件によりスパッタリング装置内に窒素源としてのN2ガスを供給しながら、シリコンターゲットのスパッタリングを行なうことによって、n型単結晶シリコン基板の表面上に厚さ26nmのアモルファスの窒化シリコン膜をスパッタリング法により形成した。その後、その窒化シリコン膜の表面をフッ化水素濃度が1質量%のフッ化水素水溶液に浸漬させて自然酸化膜を除去することによって、サンプル1の窒化シリコン膜を作製した。
【0062】
<成膜条件>
スパッタリング装置内の雰囲気の圧力:0.9Pa
n型単結晶シリコン基板の温度:25℃
N2ガスとArガスとの供給量比(体積比):N2ガス:Arガス=1:0
スパッタリング装置に印加される電力:12kW
また、上記と同様にして、厚さ150μmのn型単結晶シリコン基板の表面上に厚さ26nmのアモルファスの窒化シリコン膜を成膜し、窒素雰囲気で窒化シリコン膜を200℃で5分間熱処理を行なった後に、その窒化シリコン膜の表面をフッ化水素濃度が1質量%のフッ化水素水溶液に浸漬させて自然酸化膜を除去することによってサンプル2の窒化シリコン膜を作製した。
【0063】
(元素分析)
上記のようにして作製したサンプル1およびサンプル2の窒化シリコン膜について、以下の測定条件でXPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy)により元素分析を行なった。その結果を図10〜図17に示す。なお、図10〜図17の横軸は結合エネルギ(eV)を示し、図10〜図17の縦軸は強度(a.u.)を示している。また、図10〜図15においては、サンプル1の分析結果が実線で示されており、サンプル2の分析結果が破線で示されている。
【0064】
<測定条件>
励起X線:Al mono
検出領域:100μmφ
取出角:45°
検出深さ:約4〜5nm
また、図11は、図10に示すSiの2p軌道に対応するピークの拡大図であり、図12は、図10に示すNの1s軌道に対応するピークの拡大図である。また、図13は、図10に示すOの1s軌道に対応するピークの拡大図であり、図14は、図10に示すCの1s軌道に対応するピークの拡大図である。さらに、図15は、図10に示すFの1s軌道に対応するピークの拡大図である。
【0065】
また、図16は、図10に示すサンプル1のXPS分析におけるSiの2p軌道に対応するピークをSiの価数ごとに分けた図であり、図17は、図10に示すサンプル2のXPS分析におけるSiの2p軌道に対応するピークをSiの価数ごとに分けた図である。なお、図16および図17において、Si1〜Si5は、それぞれ、以下の結合および化合物が含まれていることを示している。
【0066】
<Si1〜Si5>
Si1:Si−Si
Si2:価数の小さいSiNx、SiOx等
Si3:Si3N4、SiOx等
Si4:SiON等
Si5:SiO2等
表1に、図10〜図15から算出したサンプル1およびサンプル2の元素分析結果を示す。
【0067】
【表1】
【0068】
表1に示すように、サンプル1においては、Siが37.2原子%、Nが53.1原子%含まれており、Si原子数に対するN原子数の比率(N原子数/Si原子数)は1.43であることが確認された。
【0069】
また、表1に示すように、サンプル2においては、Siが37.3原子%、Nが52.7原子%含まれており、Si原子数に対するN原子数の比率(N原子数/Si原子数)は1.41であることが確認された。
【0070】
表2に、図16および図17から算出したサンプル1およびサンプル2のSi1〜Si5のそれぞれのピークの面積比率(%)を示す。
【0071】
【表2】
【0072】
表2に示すように、サンプル1およびサンプル2のいずれにおいても、Siの2p軌道に対応するピークは、窒化シリコンの存在を示すSi3およびSi4のピークによってほとんど占められていた。そのため、サンプル1およびサンプル2は、それぞれ、窒化シリコンから形成されていることが確認された。
【0073】
(アルカリ耐性)
上記のようにして作製したサンプル1およびサンプル2について、それぞれ、アルカリ水溶液に対する耐性を評価した。
【0074】
具体的には、水酸化カリウム濃度が5質量%の水酸化カリウム水溶液(液温90℃)を用意し、その水酸化カリウム水溶液中にサンプル1およびサンプル2をそれぞれ900秒間浸漬させた。
【0075】
その結果、サンプル1およびサンプル2のいずれも、900秒間で5nmの厚さしかエッチングされておらず、上記の水酸化カリウム水溶液に対するエッチングレートは0.006nm/秒程度であることが確認された。
【0076】
一方、比較として、従来のテクスチャ構造の形成時のマスクとして用いられていた常圧CVD法による酸化シリコン膜についても上記と同様にしてアルカリ水溶液に対する耐性を評価した。
【0077】
その結果、従来のテクスチャ構造の形成時のマスクとして用いられていた常圧CVD法による酸化シリコン膜は1秒間で5.56nmの厚さがエッチングされたため、上記の水酸化カリウム水溶液に対するエッチングレートは5.56nm/秒程度であることが確認された。
【0078】
したがって、サンプル1およびサンプル2は、従来の常圧CVD法による酸化シリコン膜と比べてアルカリ水溶液に対する耐性を有しており、テクスチャ構造の形成時のマスクとして優れていることが確認された。
【0079】
また、テクスチャ構造の形成時のエッチング時間を考慮すると、サンプル1およびサンプル2をそれぞれテクスチャ構造の形成時のマスクとして用いる場合には、サンプル1およびサンプル2の厚さは、10nm以上40nm以下、好ましくは20nm以上30nm以下の薄膜で十分であることが確認された。
【0080】
(フッ化水素水溶液に対するエッチング性)
上記のようにして作製したサンプル1およびサンプル2について、それぞれ、フッ化水素水溶液に対するエッチング性についても評価した。
【0081】
具体的には、フッ化水素濃度が2.5質量%のフッ化水素水溶液を用意し、そのフッ化水素水溶液中に厚さ26nmのサンプル1およびサンプル2をそれぞれ200秒間浸漬させた。
【0082】
その結果、サンプル1およびサンプル2のいずれについても、200秒間で26nmの厚さのすべてがエッチングされたため、サンプル1およびサンプル2の上記のフッ化水素水溶液に対するエッチングレートは0.13nm/秒であることが確認された。
【0083】
一方、従来のパッシベーション膜に用いられる窒化シリコン膜については、上記のフッ化水素水溶液で20分間以上エッチングしても26nmの窒化シリコン膜をすべて除去することができなかったため、上記のフッ化水素水溶液に対するエッチングレートは0.0217nm/秒未満であることが確認された。
【0084】
したがって、サンプル1およびサンプル2のフッ化水素水溶液に対するエッチングレートを従来のパッシベーション膜に用いられる窒化シリコン膜のフッ化水素水溶液に対するエッチングレートよりも飛躍的に大きくできることが確認された。
【0085】
なお、従来のパッシベーション膜に用いられる窒化シリコン膜としては、プラズマCVD装置内に供給されるSiH4ガスと、NH3ガスと、N2ガスとの供給量比(体積比)を、SiH4ガス:NH3ガス:N2ガス=1:3:3とすることによって作製されたものを用いた。ここで、SiH4ガスがシリコン源であり、NH3ガスが窒化シリコンの窒素源であり、N2ガスは主にキャリアガスとしての用途である。
【0086】
(その他の例の評価)
スパッタリング法による窒化シリコン膜の成膜条件を下記のようにして変更したこと以外はサンプル1と同様にして、厚さ150μmのn型単結晶シリコン基板の表面上に厚さ26nmのアモルファスの窒化シリコン膜(サンプル3)を形成した。その後、サンプル3の窒化シリコン膜について、上記と同様にして、元素分析、アルカリ耐性およびフッ化水素水溶液に対するエッチング性の評価を行なった。その結果、サンプル3の窒化シリコン膜についても、上記のサンプル1およびサンプル2の窒化シリコン膜と同様の結果が得られることが確認された。
【0087】
<成膜条件>
スパッタリング装置内の雰囲気の圧力:1Pa
n型単結晶シリコン基板の温度:25℃
N2ガスとArガスとの供給量比(体積比):N2ガス:Arガス=0.85:0.15
スパッタリング装置に印加される電力:11kW
また、プラズマCVD装置内に、厚さ150μmのn型単結晶シリコン基板を設置して、下記の成膜条件により、n型単結晶シリコン基板の表面上に厚さ26nmのアモルファスの窒化シリコン膜(サンプル4)をプラズマCVD法により形成した。そして、サンプル4の窒化シリコン膜について、上記と同様にして、元素分析、アルカリ耐性およびフッ化水素水溶液に対するエッチング性の評価を行なった。その結果、サンプル4の窒化シリコン膜についても、上記のサンプル1およびサンプル2の窒化シリコン膜と同様の結果が得られることが確認された。
【0088】
<成膜条件>
プラズマCVD装置内の雰囲気の圧力:66Pa
n型単結晶シリコン基板の温度:450℃
SiH4ガスとNH3ガスとN2ガスとの供給量比(体積比):SiH4ガス:NH3ガス:N2ガス=1:11:10
プラズマCVD装置に印加される電力:500W
さらに、上記以外にも、厚さ150μmのn型単結晶シリコン基板の表面上にSi原子に対するN原子の含有比率(N原子数/Si原子数)がそれぞれ異なる厚さ26nmのアモルファスの窒化シリコン膜をプラズマCVD法またはスパッタリング法により複数作製した。そして、これらの窒化シリコン膜のそれぞれについて、上記と同様にして、元素分析、アルカリ耐性およびフッ化水素水溶液に対するエッチング性の評価を行なった。
【0089】
その結果、Si原子に対するN原子の含有比率(N原子数/Si原子数)が1.3以上2以下の範囲内にある窒化シリコン膜については、上記のサンプル1〜4と同様の結果が得られることが確認されたが、Si原子に対するN原子の含有比率(N原子数/Si原子数)が1.3以上2以下の範囲外の窒化シリコン膜については、上記のサンプル1〜4と同様の結果が得られないことが確認された。
【0090】
また、Si原子に対するN原子の含有比率(N原子数/Si原子数)が1.3以上2以下の窒化シリコン膜は、プラズマCVD装置内に、SiH4ガスとNH3ガスとH2ガスとを供給し、SiH4ガスの供給量に対するNH3ガスの供給量の比(体積比)を6以上12以下とすることによって安定して形成できることも確認された。
【0091】
さらに、Si原子に対するN原子の含有比率(N原子数/Si原子数)が1.3以上2以下の範囲内にある窒化シリコン膜が形成された厚さ150μmのn型単結晶シリコン基板については、Si原子に対するN原子の含有比率(N原子数/Si原子数)が1.3以上2以下の範囲外の窒化シリコン膜が形成された厚さ150μmのn型単結晶シリコン基板と比べて、n型単結晶シリコン基板の湾曲が抑制されることも確認された。
【0092】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は、テクスチャ構造の形成方法および太陽電池の製造方法に好適に利用できる可能性がある。
【符号の説明】
【0094】
1 n型シリコン基板、1a 第1の表面、1b 第2の表面、2 窒化シリコン膜、3 テクスチャ構造、4 パッシベーション膜、5 n型不純物拡散領域、6 p型不純物拡散領域、7 反射防止膜、9,10 コンタクトホール、11 n型用電極、12 p型用電極。
【技術分野】
【0001】
本発明は、テクスチャ構造の形成方法および太陽電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、特に地球環境の保護の観点から、太陽光エネルギを電気エネルギに変換する太陽電池セルは次世代のエネルギ源としての期待が急激に高まっている。太陽電池セルの種類には、化合物半導体を用いたものや有機材料を用いたものなどの様々なものがあるが、現在、シリコン結晶を用いた太陽電池セルが主流となっている。
【0003】
現在、最も多く製造および販売されている太陽電池セルは、太陽光が入射する側の面(受光面)にn電極が形成されており、受光面と反対側の面(裏面)にp電極が形成された構成の両面電極型太陽電池セルである。また、太陽電池セルの受光面には電極を形成せず、太陽電池セルの裏面のみにn電極およびp電極を形成した裏面電極型太陽電池セルの開発も進められている。
【0004】
両面電極型太陽電池セルおよび裏面電極型太陽電池セルのいずれにおいても、シリコン基板の受光面にテクスチャ構造と呼ばれる微小なピラミッド状の凹凸を形成することによって、シリコン基板の受光面における入射光の反射を防止する技術は重要である。
【0005】
たとえば、特許文献1には、p型シリコン基板の一方の表面に常圧CVD法により酸化シリコン膜を形成した後に、酸化シリコン膜を形成していない側のp型シリコン基板の表面をアルカリ水溶液でエッチングすることによりテクスチャ構造を形成する方法が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、シリコン基板の受光面および裏面にそれぞれ熱酸化法により酸化シリコン膜を形成し、シリコン基板の受光面の酸化シリコン膜をフッ化水素水溶液で除去した後に、シリコン基板の受光面をアルカリ溶液でエッチングすることによりテクスチャ構造を形成する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−93194号公報
【特許文献2】特開2009−147070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の方法においては、アルカリ水溶液によるテクスチャ構造の形成時にマスクとして機能させるために、厚さ750nmといった厚膜の酸化シリコン膜を形成しなければならなかった。このような厚膜の酸化シリコン膜を形成した場合には、シリコン基板にかかる応力が大きくなるため、シリコン基板が湾曲し、太陽電池の製造が困難になるという問題があった。
【0009】
また、特許文献2に記載の方法においては、酸化シリコン膜自体の厚さを薄くすることができるが、酸化シリコン膜を形成する際に、シリコン基板を900℃〜1200℃の高温で加熱する必要があった。そのため、特許文献2に記載の方法を用いてテクスチャ構造を形成することによって作製された太陽電池においては、少数キャリアのライフタイムが悪化して、太陽電池の特性が低下するという問題があった。
【0010】
上記の事情に鑑みて、本発明の目的は、基板の湾曲を抑えて特性の高い太陽電池を製造することが可能なテクスチャ構造の形成方法および太陽電池の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、厚さ300μm以下の半導体基板の一方の表面である第1の表面に窒化シリコン膜を形成する工程と、半導体基板の第1の表面とは反対側の第2の表面をエッチングすることによってテクスチャ構造を形成する工程とを含み、窒化シリコン膜のシリコン原子に対する窒素原子の含有比率が1.3以上2以下であるテクスチャ構造の形成方法である。
【0012】
ここで、本発明のテクスチャ構造の形成方法は、窒化シリコン膜をフッ化水素水溶液を用いて除去する工程をさらに含むことが好ましい。
【0013】
また、本発明のテクスチャ構造の形成方法においては、窒化シリコン膜を形成する工程において、窒化シリコン膜を10nm以上40nm以下の厚さに形成することが好ましい。
【0014】
また、本発明のテクスチャ構造の形成方法においては、窒化シリコン膜を形成する工程において、窒化シリコン膜をプラズマCVD法またはスパッタリング法によって形成することが好ましい。
【0015】
また、本発明のテクスチャ構造の形成方法において、プラズマCVD法は、シリコン源としてシランガスを供給し、窒素源としてアンモニアガスを供給することによって行なわれ、シランガスおよびアンモニアガスは、それぞれ、シランガスに対するアンモニアガスの体積比が6以上12以下となるように供給されることが好ましい。
【0016】
また、本発明のテクスチャ構造の形成方法において、スパッタリング法は、窒素ガスまたはアンモニアガスのいずれか一方もしくは両方を含む雰囲気、または、窒素ガスまたはアンモニアガスのいずれか一方もしくは両方と希ガスとを含む雰囲気中でターゲットをスパッタリングすることにより行なわれることが好ましい。
【0017】
さらに、本発明は、厚さ300μm以下のシリコン基板の一方の表面である第1の表面に窒化シリコン膜を形成する工程と、シリコン基板の第1の表面とは反対側の第2の表面をエッチングすることによってテクスチャ構造を形成する工程と、フッ化水素水溶液を用いて窒化シリコン膜を除去する工程と、シリコン基板の第1の表面に不純物拡散層を形成する工程と、不純物拡散層上に電極を形成する工程とを含み、窒化シリコン膜のシリコン原子に対する窒素原子の含有比率が1.3以上2以下である太陽電池の製造方法である。
【0018】
ここで、本発明の太陽電池の製造方法において、窒化シリコン膜を形成する工程においては、窒化シリコン膜を10nm以上40nm以下の厚さに形成することが好ましい。
【0019】
また、本発明の太陽電池の製造方法において、窒化シリコン膜を形成する工程においては、窒化シリコン膜をプラズマCVD法またはスパッタリング法によって形成することが好ましい。
【0020】
また、本発明の太陽電池の製造方法において、プラズマCVD法は、シリコン源としてシランガスを供給し、窒素源としてアンモニアガスを供給することによって行なわれ、シランガスおよびアンモニアガスは、それぞれ、シランガスに対するアンモニアガスの体積比が、6以上12以下となるように供給されることが好ましい。
【0021】
また、本発明の太陽電池の製造方法において、スパッタリング法は、窒素ガスまたはアンモニアガスのいずれか一方もしくは両方を含む雰囲気、または、窒素ガスまたはアンモニアガスのいずれか一方もしくは両方と希ガスとを含む雰囲気中でシリコンターゲットをスパッタリングすることにより行なわれることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、基板の湾曲を抑えて特性の高い太陽電池を製造することが可能なテクスチャ構造の形成方法および太陽電池の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施の形態の裏面電極型太陽電池の製造方法のn型シリコン基板を準備する工程を図解する模式的な断面図である。
【図2】本実施の形態の裏面電極型太陽電池の製造方法の窒化シリコン膜を形成する工程を図解する模式的な断面図である。
【図3】本実施の形態の裏面電極型太陽電池の製造方法のn型シリコン基板の第2の表面にテクスチャ構造を形成する工程を図解する模式的な断面図である。
【図4】本実施の形態の裏面電極型太陽電池の製造方法の窒化シリコン膜を除去する工程を図解する模式的な断面図である。
【図5】本実施の形態の裏面電極型太陽電池の製造方法のn型不純物拡散領域およびp型不純物拡散領域をそれぞれ形成する工程を図解する模式的な断面図である。
【図6】本実施の形態の裏面電極型太陽電池の製造方法のパッシベーション膜を形成する工程を図解する模式的な断面図である。
【図7】本実施の形態の裏面電極型太陽電池の製造方法の反射防止膜を形成する工程を図解する模式的な断面図である。
【図8】本実施の形態の裏面電極型太陽電池の製造方法のパッシベーション膜にコンタクトホールを形成する工程を図解する模式的な断面図である。
【図9】本実施の形態の裏面電極型太陽電池の製造方法のn型用電極およびp型用電極を形成する工程を図解する模式的な断面図である。
【図10】実施例におけるサンプル1および2のXPSによる元素分析の結果を示す図である。
【図11】図10に示すSiの2p軌道に対応するピークの拡大図である。
【図12】図10に示すNの1s軌道に対応するピークの拡大図である。
【図13】図10に示すOの1s軌道に対応するピークの拡大図である。
【図14】図10に示すCの1s軌道に対応するピークの拡大図である。
【図15】図10に示すFの1s軌道に対応するピークの拡大図である。
【図16】図10に示すサンプル1のXPS分析におけるSiの2p軌道に対応するピークをSiの価数ごとに分けた図である。
【図17】図10に示すサンプル2のXPS分析におけるSiの2p軌道に対応するピークをSiの価数ごとに分けた図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図1〜図9の模式的断面図を参照して、本実施の形態の裏面電極型太陽電池の製造方法について説明する。なお、本発明の図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表すものとする。また、後述する各工程の前後に他の工程が含まれていてもよい。また、後述する各工程の順序は入れ替わっていてもよく、後述する各工程の少なくとも2つの工程が同時に行なわれてもよい。
【0025】
まず、図1に示すように、半導体基板の一例としてのn型シリコン基板1を準備する工程を行なう。n型シリコン基板1は、第1の表面1aと、第1の表面1aと反対側の第2の表面1bとを有している。
【0026】
n型シリコン基板1を準備する工程は、たとえば、チョクラルスキー法(CZ法)または浮遊帯溶融法(FZ法)などによって成長させたn型の単結晶シリコンインゴットをスライスし、当該スライスによって形成されたスライスダメージを除去することなどによって行なうことができる。なお、本実施の形態においては、半導体基板としてn型半導体基板であるn型シリコン基板1を用いる場合について説明するが、n型半導体基板以外の半導体基板を用いてもよく、たとえばp型シリコン基板などのp型半導体基板を用いてもよい。また、半導体基板の材質としては、単結晶シリコンに限定されるものではなく、多結晶シリコンなどの他の材質を用いてもよい。
【0027】
スライスダメージの除去は、たとえば、上記のスライス後の単結晶シリコンの表面をフッ化水素水溶液と硝酸との混酸または水酸化ナトリウムなどのアルカリ水溶液などでエッチングすることにより行なうことができる。
【0028】
また、n型シリコン基板1の厚さTは300μm以下とされるが、太陽電池への適用に耐え得る強度を有するとともに、薄型化によって製造コストを低減する観点からは、n型シリコン基板1の厚さTは100μm以上150μm以下とすることが好ましい。
【0029】
次に、図2に示すように、n型シリコン基板1の第1の表面1a上に窒化シリコン膜2を形成する工程を行なう。ここで、窒化シリコン膜2としては、シリコン原子(Si原子)に対する窒素原子(N原子)の含有比率(N原子数/Si原子数)が1.3以上2以下となるアモルファスの窒化シリコン膜が形成される。
【0030】
これは、本発明者が鋭意検討した結果、Si原子に対するN原子の含有比率(N原子数/Si原子数)が1.3以上2以下となる窒化シリコン膜2を形成することによって、従来と比べて以下の(i)〜(iii)の点で有利となることを見い出したためである。
【0031】
(i)窒化シリコン膜2をプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法またはスパッタリング法のような低温プロセスで形成することができるため、従来の熱酸化法のようにn型シリコン基板1を900℃〜1200℃といった高温で加熱する必要がない。これにより、n型シリコン基板1における少数キャリアのライフタイムの悪化を抑制することができるため、従来の熱酸化法を用いた場合と比べて太陽電池の特性を向上することができる。
【0032】
(ii)窒化シリコン膜2の厚さtを10nm以上40nm以下、好ましくは20nm以上30nm以下といった薄膜にした場合でも、後述するテクスチャ構造の形成に用いられるアルカリ水溶液に対するマスクとして機能させることができる。これにより、従来のように酸化シリコン膜を750nmの厚さに形成した場合と比べて、窒化シリコン膜2の厚さによるn型シリコン基板1の湾曲を抑えることができるため、従来の常圧CVD法による酸化シリコン膜を用いた場合よりも太陽電池を容易に製造することができる。
【0033】
(iii)窒化シリコン膜2のSi原子に対するN原子の含有比率(N原子数/Si原子数)を1.3以上2以下とすることによって、フッ化水素水溶液に対するエッチングレートを高くすることができる。これにより、後述するテクスチャ構造の形成後に、窒化シリコン膜2をフッ化水素水溶液で除去することができるため、リン酸を用いて窒化シリコン膜2を除去する必要がない。
【0034】
なお、プラズマCVD法で窒化シリコン膜2を形成する場合には、プラズマCVD装置内に、たとえば、シリコン源としてのシラン(SiH4)ガス、窒素源としてのアンモニア(NH3)ガス、およびキャリアガスとしての水素(H2)ガスがそれぞれ供給される。
【0035】
ここで、窒化シリコン膜2のSi原子に対するN原子の含有比率(N原子数/Si原子数)を1.3以上2以下とするためには、SiH4ガスに対するNH3ガスの供給量比[(NH3ガスの体積比)/(SiH4ガスの体積比)]は6以上12以下とされることが好ましい。また、H2ガスの供給量は、SiH4ガスの供給量と同程度とされることが好ましい。
【0036】
また、窒化シリコン膜2の形成時のプラズマCVD装置内の雰囲気の圧力は、たとえば50Pa〜70Paとすることができる。また、窒化シリコン膜2の形成時にプラズマCVD装置に印加される電力は、たとえば0.5kW〜1kWとすることができる。また、窒化シリコン膜2の形成時におけるn型シリコン基板1の温度は、たとえば300℃〜500℃とすることができる。
【0037】
また、スパッタリング法で窒化シリコン膜2を形成する場合には、スパッタリング装置内にシリコンターゲットを設置し、たとえば、窒素源としての窒素(N2)ガスおよびキャリアガスとしての希ガスが供給され、本実施の形態においてはアルゴン(Ar)ガスがそれぞれ供給される。ここで、窒化シリコン膜2のSi原子に対するN原子の含有比率(N原子数/Si原子数)を1.3以上2以下とするためには、N2ガスの供給量と、Arガスの供給量との比率(体積比)は、N2ガス:Arガス=1〜0.6:0〜0.4とされることが好ましい。なお、スパッタリング法で窒化シリコン膜2を形成する場合に、スパッタリング装置内に供給されるガスとしては、窒素ガスまたはアンモニアガスのいずれか一方もしくは両方、または、窒素ガスまたはアンモニアガスのいずれか一方もしくは両方と希ガスとの混合ガスを用いることが好ましい。
【0038】
また、窒化シリコン膜2の形成時のスパッタリング装置内の雰囲気の圧力は、たとえば0.5Pa〜10Paとすることができる。また、窒化シリコン膜2の形成時にスパッタリング装置に印加される電力は、たとえば5kW〜15kWとすることができる。また、窒化シリコン膜2の形成時におけるn型シリコン基板1の温度は、たとえば25℃〜500℃とすることができる。
【0039】
次に、図3に示すように、n型シリコン基板1の第2の表面1bにテクスチャ構造3を形成する工程を行なう。テクスチャ構造3を形成する工程は、たとえば、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムなどのアルカリ水溶液にイソプロピルアルコールを添加した液をたとえば70℃以上80℃以下に加熱したエッチング液を用いてn型シリコン基板1の第2の表面1bをエッチングすることにより行なうことができる。
【0040】
ここで、本実施の形態においては、上述したように、Si原子に対するN原子の含有比率(N原子数/Si原子数)が1.3以上2以下である窒化シリコン膜2をテクスチャ構造3の形成時のマスクとして用いていることから、窒化シリコン膜2の厚さtを10nm以上40nm以下、好ましくは20nm以上30nm以下といった薄膜にした場合でも、アルカリ水溶液に対するマスクとして機能させることができる。そのため、従来のようにn型シリコン基板1の湾曲を抑えられるため、従来の常圧CVD法による酸化シリコン膜を用いた場合と比べて太陽電池を容易に製造することができる。
【0041】
次に、図4に示すように、フッ化水素水溶液を含む液を用いて窒化シリコン膜2を除去する工程を行なう。窒化シリコン膜2を除去する工程は、たとえば、窒化シリコン膜2をフッ化水素水溶液に浸漬させて窒化シリコン膜2をエッチングすることにより行なうことができる。
【0042】
ここで、本実施の形態においては、Si原子に対するN原子の含有比率(N原子数/Si原子数)が1.3以上2以下である窒化シリコン膜2をテクスチャ構造3の形成時のマスクとして用いていることから、フッ化水素水溶液に対するエッチングレートを従来よりも高くすることができる。
【0043】
通常、窒化シリコン膜の除去にはリン酸が用いられるが、本実施の形態においては、フッ化水素水溶液を用いて窒化シリコン膜2を除去することができるため、リン酸を用いて窒化シリコン膜2を除去する必要がない。これにより、リン酸を用いて窒化シリコン膜を除去する場合における以下の(a)および(b)のような問題が生じない点で有利となる。
【0044】
(a)結晶シリコンを半導体基板として用いた結晶太陽電池の製造プロセスにおいては、通常、リン酸を用いた処理が行なわれない。そのため、リン酸を用いた処理を行なう場合には、新しい薬液の追加となることから、工場システムの複雑化と製造コストの増加を招く。特に、1日当たり数十万枚の半導体基板を浸漬させる必要がある場合には、薬液の使用量が膨大となることから、さらなる製造コストの増加を招く。
【0045】
(b)リン酸を用いて窒化シリコン膜2を除去する場合には、高温(少なくとも100℃以上であって、通常は140℃〜180℃程度)で処理する必要があることから、リンを含んだ薬液が蒸発することなどの危険性がある。
【0046】
次に、図5に示すように、n型シリコン基板1の第1の表面1aに、n型不純物拡散領域5およびp型不純物拡散領域6をそれぞれ形成する工程を行なう。n型不純物拡散領域5は、たとえば、リンなどのn型不純物を含むガスを用いた気相拡散、またはリンなどのn型不純物を含む溶液を塗布した後に加熱する塗布拡散などの方法により形成することができる。また、p型不純物拡散領域6は、たとえば、ボロンなどのp型不純物を含むガスを用いた気相拡散、またはボロンなどのp型不純物を含む溶液を塗布した後に加熱する塗布拡散などの方法により形成することができる。
【0047】
n型不純物拡散領域5およびp型不純物拡散領域6はそれぞれ図5の紙面の表面側および/または裏面側に伸びる帯状に形成されており、n型不純物拡散領域5とp型不純物拡散領域6とはn型シリコン基板1の第1の表面1aにおいて交互に所定の間隔をあけて配置されている。
【0048】
n型不純物拡散領域5はn型不純物を含み、n型の導電型を示す領域であれば特に限定されない。また、p型不純物拡散領域6はp型不純物を含み、p型の導電型を示す領域であれば特に限定されない。
【0049】
次に、図6に示すように、n型シリコン基板1の第1の表面1aにパッシベーション膜4を形成する工程を行なう。ここで、パッシベーション膜4を形成する工程は、たとえばプラズマCVD法により、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、または酸化シリコン膜と窒化シリコン膜との積層体などを形成することにより行なうことができる。
【0050】
次に、図7に示すように、n型シリコン基板1のテクスチャ構造3上に、反射防止膜7を形成する工程を行なう。ここで、反射防止膜7を形成する工程は、たとえばプラズマCVD法により、窒化シリコン膜などを形成することにより行なうことができる。
【0051】
次に、図8に示すように、n型シリコン基板1の第1の表面1a上に形成されたパッシベーション膜4にコンタクトホール9およびコンタクトホール10を形成する工程を行なう。ここで、コンタクトホール9は、n型不純物拡散領域5が露出するように形成され、コンタクトホール10は、p型不純物拡散領域6が露出するように形成される。
【0052】
なお、コンタクトホール9およびコンタクトホール10はそれぞれ、たとえば、フォトリソグラフィ技術を用いてコンタクトホール9およびコンタクトホール10の形成箇所に対応する部分に開口を有するレジストパターンをパッシベーション膜4上に形成した後にレジストパターンの開口からパッシベーション膜4をエッチングなどにより除去する方法、またはコンタクトホール9およびコンタクトホール10の形成箇所に対応するパッシベーション膜4の部分にエッチングペーストを塗布した後に加熱することによってパッシベーション膜4をエッチングして除去する方法などにより形成することができる。
【0053】
次に、図9に示すように、n型不純物拡散領域5上にn型用電極11を形成するとともにp型不純物拡散領域6上にp型用電極12を形成する工程を行なう。ここで、n型用電極11は、コンタクトホール9を通してn型不純物拡散領域5に接するようにして形成され、p型用電極12は、コンタクトホール10を通してp型不純物拡散領域6に接するようにして形成される。
【0054】
以上により、本実施の形態における裏面電極型太陽電池セルが完成する。
上述したように、熱酸化法によって形成された酸化シリコン膜のアルカリ水溶液への耐性は、常圧CVD法によって形成された酸化シリコン膜のアルカリ水溶液への耐性よりも高い。そのため、テクスチャ構造の形成時のマスクとして熱酸化法によって形成された酸化シリコン膜を用いた場合には、マスクの厚みを薄くすることができる。
【0055】
たとえば、常圧CVD法によって形成された酸化シリコン膜の厚さ750nmと同程度のマスク性能を持たせるためには、熱酸化法によって形成された酸化シリコン膜の厚さは100nm程度とすればよいが、以下の問題が発生する。
【0056】
すなわち、シリコン基板が熱酸化法による酸化シリコン膜の形成時に高温に曝された場合には、少数キャリアのライフタイムが悪化して、太陽電池の発電効率が低下する。少数キャリアのライフタイムが短くなる原因は、たとえばシリコン基板の表面に存在する金属などの不純物がシリコン基板内に拡散することによって、少数キャリアの再結合中心となるためと考えられる。
【0057】
このような現象は、特にCZ法によって製造された単結晶シリコン基板で顕著に現れ、FZ法によって製造された単結晶シリコン基板においては、CZ法によって製造された単結晶シリコン基板よりもその発生が抑えられる。そのため、熱処理時にシリコン基板内に含まれる酸素に起因して発生する再結合中心も、少数キャリアのライフタイムに影響するものと考えられる。
【0058】
本発明においては、熱酸化法よりも低温プロセスであるプラズマCVD法またはスパッタリング法により窒化シリコン膜を形成することができるため、半導体基板内における少数キャリアのライフタイムの悪化を抑制して、高い特性を有する太陽電池を製造することが可能となる。
【0059】
なお、本発明における裏面電極型太陽電池セルの概念には、上述した半導体基板の一方の表面側(裏面側)のみにn型用電極およびp型用電極の双方が形成された構成のものだけでなく、MWT(Metal Wrap Through)セル(半導体基板に設けられた貫通孔に電極の一部を配置した構成の太陽電池セル)などのいわゆるバックコンタクト型太陽電池セル(太陽電池セルの受光面側と反対側の裏面側から電流を取り出す構造の太陽電池セル)のすべてが含まれる。
【0060】
また、上記においては、裏面電極型太陽電池セルを製造する場合について説明したが、本発明は、裏面電極型太陽電池セル以外の両面電極型太陽電池セルなどの他の太陽電池にも適用できることは言うまでもない。
【実施例】
【0061】
(窒化シリコン膜の作製)
スパッタリング装置内に、シリコンターゲットと、厚さ150μmのn型単結晶シリコン基板とをそれぞれ互いに向かい合うようにして所定の距離を空けて設置した。そして、下記の成膜条件によりスパッタリング装置内に窒素源としてのN2ガスを供給しながら、シリコンターゲットのスパッタリングを行なうことによって、n型単結晶シリコン基板の表面上に厚さ26nmのアモルファスの窒化シリコン膜をスパッタリング法により形成した。その後、その窒化シリコン膜の表面をフッ化水素濃度が1質量%のフッ化水素水溶液に浸漬させて自然酸化膜を除去することによって、サンプル1の窒化シリコン膜を作製した。
【0062】
<成膜条件>
スパッタリング装置内の雰囲気の圧力:0.9Pa
n型単結晶シリコン基板の温度:25℃
N2ガスとArガスとの供給量比(体積比):N2ガス:Arガス=1:0
スパッタリング装置に印加される電力:12kW
また、上記と同様にして、厚さ150μmのn型単結晶シリコン基板の表面上に厚さ26nmのアモルファスの窒化シリコン膜を成膜し、窒素雰囲気で窒化シリコン膜を200℃で5分間熱処理を行なった後に、その窒化シリコン膜の表面をフッ化水素濃度が1質量%のフッ化水素水溶液に浸漬させて自然酸化膜を除去することによってサンプル2の窒化シリコン膜を作製した。
【0063】
(元素分析)
上記のようにして作製したサンプル1およびサンプル2の窒化シリコン膜について、以下の測定条件でXPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy)により元素分析を行なった。その結果を図10〜図17に示す。なお、図10〜図17の横軸は結合エネルギ(eV)を示し、図10〜図17の縦軸は強度(a.u.)を示している。また、図10〜図15においては、サンプル1の分析結果が実線で示されており、サンプル2の分析結果が破線で示されている。
【0064】
<測定条件>
励起X線:Al mono
検出領域:100μmφ
取出角:45°
検出深さ:約4〜5nm
また、図11は、図10に示すSiの2p軌道に対応するピークの拡大図であり、図12は、図10に示すNの1s軌道に対応するピークの拡大図である。また、図13は、図10に示すOの1s軌道に対応するピークの拡大図であり、図14は、図10に示すCの1s軌道に対応するピークの拡大図である。さらに、図15は、図10に示すFの1s軌道に対応するピークの拡大図である。
【0065】
また、図16は、図10に示すサンプル1のXPS分析におけるSiの2p軌道に対応するピークをSiの価数ごとに分けた図であり、図17は、図10に示すサンプル2のXPS分析におけるSiの2p軌道に対応するピークをSiの価数ごとに分けた図である。なお、図16および図17において、Si1〜Si5は、それぞれ、以下の結合および化合物が含まれていることを示している。
【0066】
<Si1〜Si5>
Si1:Si−Si
Si2:価数の小さいSiNx、SiOx等
Si3:Si3N4、SiOx等
Si4:SiON等
Si5:SiO2等
表1に、図10〜図15から算出したサンプル1およびサンプル2の元素分析結果を示す。
【0067】
【表1】
【0068】
表1に示すように、サンプル1においては、Siが37.2原子%、Nが53.1原子%含まれており、Si原子数に対するN原子数の比率(N原子数/Si原子数)は1.43であることが確認された。
【0069】
また、表1に示すように、サンプル2においては、Siが37.3原子%、Nが52.7原子%含まれており、Si原子数に対するN原子数の比率(N原子数/Si原子数)は1.41であることが確認された。
【0070】
表2に、図16および図17から算出したサンプル1およびサンプル2のSi1〜Si5のそれぞれのピークの面積比率(%)を示す。
【0071】
【表2】
【0072】
表2に示すように、サンプル1およびサンプル2のいずれにおいても、Siの2p軌道に対応するピークは、窒化シリコンの存在を示すSi3およびSi4のピークによってほとんど占められていた。そのため、サンプル1およびサンプル2は、それぞれ、窒化シリコンから形成されていることが確認された。
【0073】
(アルカリ耐性)
上記のようにして作製したサンプル1およびサンプル2について、それぞれ、アルカリ水溶液に対する耐性を評価した。
【0074】
具体的には、水酸化カリウム濃度が5質量%の水酸化カリウム水溶液(液温90℃)を用意し、その水酸化カリウム水溶液中にサンプル1およびサンプル2をそれぞれ900秒間浸漬させた。
【0075】
その結果、サンプル1およびサンプル2のいずれも、900秒間で5nmの厚さしかエッチングされておらず、上記の水酸化カリウム水溶液に対するエッチングレートは0.006nm/秒程度であることが確認された。
【0076】
一方、比較として、従来のテクスチャ構造の形成時のマスクとして用いられていた常圧CVD法による酸化シリコン膜についても上記と同様にしてアルカリ水溶液に対する耐性を評価した。
【0077】
その結果、従来のテクスチャ構造の形成時のマスクとして用いられていた常圧CVD法による酸化シリコン膜は1秒間で5.56nmの厚さがエッチングされたため、上記の水酸化カリウム水溶液に対するエッチングレートは5.56nm/秒程度であることが確認された。
【0078】
したがって、サンプル1およびサンプル2は、従来の常圧CVD法による酸化シリコン膜と比べてアルカリ水溶液に対する耐性を有しており、テクスチャ構造の形成時のマスクとして優れていることが確認された。
【0079】
また、テクスチャ構造の形成時のエッチング時間を考慮すると、サンプル1およびサンプル2をそれぞれテクスチャ構造の形成時のマスクとして用いる場合には、サンプル1およびサンプル2の厚さは、10nm以上40nm以下、好ましくは20nm以上30nm以下の薄膜で十分であることが確認された。
【0080】
(フッ化水素水溶液に対するエッチング性)
上記のようにして作製したサンプル1およびサンプル2について、それぞれ、フッ化水素水溶液に対するエッチング性についても評価した。
【0081】
具体的には、フッ化水素濃度が2.5質量%のフッ化水素水溶液を用意し、そのフッ化水素水溶液中に厚さ26nmのサンプル1およびサンプル2をそれぞれ200秒間浸漬させた。
【0082】
その結果、サンプル1およびサンプル2のいずれについても、200秒間で26nmの厚さのすべてがエッチングされたため、サンプル1およびサンプル2の上記のフッ化水素水溶液に対するエッチングレートは0.13nm/秒であることが確認された。
【0083】
一方、従来のパッシベーション膜に用いられる窒化シリコン膜については、上記のフッ化水素水溶液で20分間以上エッチングしても26nmの窒化シリコン膜をすべて除去することができなかったため、上記のフッ化水素水溶液に対するエッチングレートは0.0217nm/秒未満であることが確認された。
【0084】
したがって、サンプル1およびサンプル2のフッ化水素水溶液に対するエッチングレートを従来のパッシベーション膜に用いられる窒化シリコン膜のフッ化水素水溶液に対するエッチングレートよりも飛躍的に大きくできることが確認された。
【0085】
なお、従来のパッシベーション膜に用いられる窒化シリコン膜としては、プラズマCVD装置内に供給されるSiH4ガスと、NH3ガスと、N2ガスとの供給量比(体積比)を、SiH4ガス:NH3ガス:N2ガス=1:3:3とすることによって作製されたものを用いた。ここで、SiH4ガスがシリコン源であり、NH3ガスが窒化シリコンの窒素源であり、N2ガスは主にキャリアガスとしての用途である。
【0086】
(その他の例の評価)
スパッタリング法による窒化シリコン膜の成膜条件を下記のようにして変更したこと以外はサンプル1と同様にして、厚さ150μmのn型単結晶シリコン基板の表面上に厚さ26nmのアモルファスの窒化シリコン膜(サンプル3)を形成した。その後、サンプル3の窒化シリコン膜について、上記と同様にして、元素分析、アルカリ耐性およびフッ化水素水溶液に対するエッチング性の評価を行なった。その結果、サンプル3の窒化シリコン膜についても、上記のサンプル1およびサンプル2の窒化シリコン膜と同様の結果が得られることが確認された。
【0087】
<成膜条件>
スパッタリング装置内の雰囲気の圧力:1Pa
n型単結晶シリコン基板の温度:25℃
N2ガスとArガスとの供給量比(体積比):N2ガス:Arガス=0.85:0.15
スパッタリング装置に印加される電力:11kW
また、プラズマCVD装置内に、厚さ150μmのn型単結晶シリコン基板を設置して、下記の成膜条件により、n型単結晶シリコン基板の表面上に厚さ26nmのアモルファスの窒化シリコン膜(サンプル4)をプラズマCVD法により形成した。そして、サンプル4の窒化シリコン膜について、上記と同様にして、元素分析、アルカリ耐性およびフッ化水素水溶液に対するエッチング性の評価を行なった。その結果、サンプル4の窒化シリコン膜についても、上記のサンプル1およびサンプル2の窒化シリコン膜と同様の結果が得られることが確認された。
【0088】
<成膜条件>
プラズマCVD装置内の雰囲気の圧力:66Pa
n型単結晶シリコン基板の温度:450℃
SiH4ガスとNH3ガスとN2ガスとの供給量比(体積比):SiH4ガス:NH3ガス:N2ガス=1:11:10
プラズマCVD装置に印加される電力:500W
さらに、上記以外にも、厚さ150μmのn型単結晶シリコン基板の表面上にSi原子に対するN原子の含有比率(N原子数/Si原子数)がそれぞれ異なる厚さ26nmのアモルファスの窒化シリコン膜をプラズマCVD法またはスパッタリング法により複数作製した。そして、これらの窒化シリコン膜のそれぞれについて、上記と同様にして、元素分析、アルカリ耐性およびフッ化水素水溶液に対するエッチング性の評価を行なった。
【0089】
その結果、Si原子に対するN原子の含有比率(N原子数/Si原子数)が1.3以上2以下の範囲内にある窒化シリコン膜については、上記のサンプル1〜4と同様の結果が得られることが確認されたが、Si原子に対するN原子の含有比率(N原子数/Si原子数)が1.3以上2以下の範囲外の窒化シリコン膜については、上記のサンプル1〜4と同様の結果が得られないことが確認された。
【0090】
また、Si原子に対するN原子の含有比率(N原子数/Si原子数)が1.3以上2以下の窒化シリコン膜は、プラズマCVD装置内に、SiH4ガスとNH3ガスとH2ガスとを供給し、SiH4ガスの供給量に対するNH3ガスの供給量の比(体積比)を6以上12以下とすることによって安定して形成できることも確認された。
【0091】
さらに、Si原子に対するN原子の含有比率(N原子数/Si原子数)が1.3以上2以下の範囲内にある窒化シリコン膜が形成された厚さ150μmのn型単結晶シリコン基板については、Si原子に対するN原子の含有比率(N原子数/Si原子数)が1.3以上2以下の範囲外の窒化シリコン膜が形成された厚さ150μmのn型単結晶シリコン基板と比べて、n型単結晶シリコン基板の湾曲が抑制されることも確認された。
【0092】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は、テクスチャ構造の形成方法および太陽電池の製造方法に好適に利用できる可能性がある。
【符号の説明】
【0094】
1 n型シリコン基板、1a 第1の表面、1b 第2の表面、2 窒化シリコン膜、3 テクスチャ構造、4 パッシベーション膜、5 n型不純物拡散領域、6 p型不純物拡散領域、7 反射防止膜、9,10 コンタクトホール、11 n型用電極、12 p型用電極。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ300μm以下の半導体基板の一方の表面である第1の表面に窒化シリコン膜を形成する工程と、
前記半導体基板の前記第1の表面とは反対側の第2の表面をエッチングすることによってテクスチャ構造を形成する工程とを含み、
前記窒化シリコン膜のシリコン原子に対する窒素原子の含有比率が、1.3以上2以下である、テクスチャ構造の形成方法。
【請求項2】
前記窒化シリコン膜をフッ化水素水溶液を用いて除去する工程をさらに含む、請求項1に記載のテクスチャ構造の形成方法。
【請求項3】
前記窒化シリコン膜を形成する工程においては、前記窒化シリコン膜を10nm以上40nm以下の厚さに形成する、請求項1または2に記載のテクスチャ構造の形成方法。
【請求項4】
前記窒化シリコン膜を形成する工程においては、前記窒化シリコン膜をプラズマCVD法またはスパッタリング法によって形成する、請求項1から3のいずれかに記載のテクスチャ構造の形成方法。
【請求項5】
前記プラズマCVD法は、シリコン源としてシランガスを供給し、窒素源としてアンモニアガスを供給することによって行なわれ、
前記シランガスおよび前記アンモニアガスは、それぞれ、前記シランガスに対する前記アンモニアガスの体積比が、6以上12以下となるように供給される、請求項4に記載のテクスチャ構造の形成方法。
【請求項6】
前記スパッタリング法は、窒素ガスまたはアンモニアガスのいずれか一方もしくは両方を含む雰囲気、または、窒素ガスまたはアンモニアガスのいずれか一方もしくは両方と希ガスとを含む雰囲気中でターゲットをスパッタリングすることにより行なわれる、請求項4に記載のテクスチャ構造の形成方法。
【請求項7】
厚さ300μm以下のシリコン基板の一方の表面である第1の表面に窒化シリコン膜を形成する工程と、
前記シリコン基板の前記第1の表面とは反対側の第2の表面をエッチングすることによってテクスチャ構造を形成する工程と、
フッ化水素水溶液を用いて前記窒化シリコン膜を除去する工程と、
前記シリコン基板の前記第1の表面に不純物拡散層を形成する工程と、
前記不純物拡散層上に電極を形成する工程とを含み、
前記窒化シリコン膜のシリコン原子に対する窒素原子の含有比率が、1.3以上2以下である、太陽電池の製造方法。
【請求項8】
前記窒化シリコン膜を形成する工程においては、前記窒化シリコン膜を10nm以上40nm以下の厚さに形成する、請求項7に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項9】
前記窒化シリコン膜を形成する工程においては、前記窒化シリコン膜をプラズマCVD法またはスパッタリング法によって形成する、請求項7または8に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項10】
前記プラズマCVD法は、シリコン源としてシランガスを供給し、窒素源としてアンモニアガスを供給することによって行なわれ、
前記シランガスおよび前記アンモニアガスは、それぞれ、前記シランガスに対する前記アンモニアガスの体積比が、6以上12以下となるように供給される、請求項9に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項11】
前記スパッタリング法は、窒素ガスまたはアンモニアガスのいずれか一方もしくは両方を含む雰囲気、または、窒素ガスまたはアンモニアガスのいずれか一方もしくは両方と希ガスとを含む雰囲気中でシリコンターゲットをスパッタリングすることにより行なわれる、請求項9に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項1】
厚さ300μm以下の半導体基板の一方の表面である第1の表面に窒化シリコン膜を形成する工程と、
前記半導体基板の前記第1の表面とは反対側の第2の表面をエッチングすることによってテクスチャ構造を形成する工程とを含み、
前記窒化シリコン膜のシリコン原子に対する窒素原子の含有比率が、1.3以上2以下である、テクスチャ構造の形成方法。
【請求項2】
前記窒化シリコン膜をフッ化水素水溶液を用いて除去する工程をさらに含む、請求項1に記載のテクスチャ構造の形成方法。
【請求項3】
前記窒化シリコン膜を形成する工程においては、前記窒化シリコン膜を10nm以上40nm以下の厚さに形成する、請求項1または2に記載のテクスチャ構造の形成方法。
【請求項4】
前記窒化シリコン膜を形成する工程においては、前記窒化シリコン膜をプラズマCVD法またはスパッタリング法によって形成する、請求項1から3のいずれかに記載のテクスチャ構造の形成方法。
【請求項5】
前記プラズマCVD法は、シリコン源としてシランガスを供給し、窒素源としてアンモニアガスを供給することによって行なわれ、
前記シランガスおよび前記アンモニアガスは、それぞれ、前記シランガスに対する前記アンモニアガスの体積比が、6以上12以下となるように供給される、請求項4に記載のテクスチャ構造の形成方法。
【請求項6】
前記スパッタリング法は、窒素ガスまたはアンモニアガスのいずれか一方もしくは両方を含む雰囲気、または、窒素ガスまたはアンモニアガスのいずれか一方もしくは両方と希ガスとを含む雰囲気中でターゲットをスパッタリングすることにより行なわれる、請求項4に記載のテクスチャ構造の形成方法。
【請求項7】
厚さ300μm以下のシリコン基板の一方の表面である第1の表面に窒化シリコン膜を形成する工程と、
前記シリコン基板の前記第1の表面とは反対側の第2の表面をエッチングすることによってテクスチャ構造を形成する工程と、
フッ化水素水溶液を用いて前記窒化シリコン膜を除去する工程と、
前記シリコン基板の前記第1の表面に不純物拡散層を形成する工程と、
前記不純物拡散層上に電極を形成する工程とを含み、
前記窒化シリコン膜のシリコン原子に対する窒素原子の含有比率が、1.3以上2以下である、太陽電池の製造方法。
【請求項8】
前記窒化シリコン膜を形成する工程においては、前記窒化シリコン膜を10nm以上40nm以下の厚さに形成する、請求項7に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項9】
前記窒化シリコン膜を形成する工程においては、前記窒化シリコン膜をプラズマCVD法またはスパッタリング法によって形成する、請求項7または8に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項10】
前記プラズマCVD法は、シリコン源としてシランガスを供給し、窒素源としてアンモニアガスを供給することによって行なわれ、
前記シランガスおよび前記アンモニアガスは、それぞれ、前記シランガスに対する前記アンモニアガスの体積比が、6以上12以下となるように供給される、請求項9に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項11】
前記スパッタリング法は、窒素ガスまたはアンモニアガスのいずれか一方もしくは両方を含む雰囲気、または、窒素ガスまたはアンモニアガスのいずれか一方もしくは両方と希ガスとを含む雰囲気中でシリコンターゲットをスパッタリングすることにより行なわれる、請求項9に記載の太陽電池の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−256801(P2012−256801A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130255(P2011−130255)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]