テルペン系重合体及びその用途
【課題】 抗菌剤、防黴剤、害虫生物忌避剤として実用的に適用し得るテルペン系重合体を提供する。
【解決手段】 ヒドロキシ基又はホルミル基を有しかつ炭素−炭素二重結合を有するテルペン系化合物の重合体、あるいは当該テルペン系化合物とビニルエステル化合物との共重合体又はその加水分解物である、平均重合度が5〜50のテルペン系重合体であって、当該テルペン系重合体がテルペン系化合物とビニルエステル化合物との共重合体又はその加水分解物である場合、テルペン系化合物と、ビニルエステル化合物又はビニルアルコールとの共重合比が1:2〜1:25(モル比)であるテルペン系重合体。
【解決手段】 ヒドロキシ基又はホルミル基を有しかつ炭素−炭素二重結合を有するテルペン系化合物の重合体、あるいは当該テルペン系化合物とビニルエステル化合物との共重合体又はその加水分解物である、平均重合度が5〜50のテルペン系重合体であって、当該テルペン系重合体がテルペン系化合物とビニルエステル化合物との共重合体又はその加水分解物である場合、テルペン系化合物と、ビニルエステル化合物又はビニルアルコールとの共重合比が1:2〜1:25(モル比)であるテルペン系重合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テルペン系化合物の重合体、テルペン系化合物とビニルエステル化合物との共重合体及びその加水分解物であるテルペン系重合体、並びにその製造方法に関する。更には、当該重合体を含有する抗菌剤、防黴剤、害虫生物忌避剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、テルペン系化合物は抗菌性、防黴性、生物忌避性を有することが知られている(例えば、非特許文献1、2参照)。しかし、テルペン系化合物は、微弱ながらも揮発性であるため、その効力を長期にわたって持続させることができないという問題があった。
一方、テルペン系化合物は、テルペン系化合物の有する二重結合を利用して、酢酸ビニルとのラジカル共重合が可能であり、共重合して高分子化することにより、テルペン系化合物の揮発性を抑えることができることが知られている(例えば、非特許文献2参照)。しかし、この共重合体中のどのようなものが、抗菌剤、防黴剤、害虫生物忌避剤として実用的に適用し得るのかについては、具体的には何ら明らかにされていない。
【非特許文献1】堀口博著「防菌防黴の化学」三共出版,4−9頁,昭和61年2月25日発行
【非特許文献2】中国地域産学官コラボレーションシンポジウムinやまぐち要旨集,63頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
抗菌剤、防黴剤、害虫生物忌避剤として実用的に適用し得るテルペン系重合体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決すべく発明者が鋭意検討した結果、テルペン系重合体が特定の範囲内の平均重合度を持ち、そして当該重合体がビニルエステル化合物との共重合体である場合には、テルペン系化合物とビニルエステル化合物との共重合比が特定の範囲内の値である場合、実用可能なレベルで抗菌作用、防黴作用、害虫生物忌避作用を有することを見出した。さらには、当該共重合体の加水分解物が、実用可能なレベルで抗菌作用、防黴作用、害虫生物忌避作用を有することも見出した。すなわち、本発明は以下の通りである。
【0005】
〔1〕ヒドロキシ基又はホルミル基を有しかつ炭素−炭素二重結合を有するテルペン系化合物の重合体、あるいは当該テルペン系化合物とビニルエステル化合物との共重合体又はその加水分解物である、平均重合度が5〜50のテルペン系重合体であって、当該テルペン系重合体がテルペン系化合物とビニルエステル化合物との共重合体又はその加水分解物である場合、テルペン系化合物と、ビニルエステル化合物又はビニルアルコールとの共重合比が1:2〜1:25(モル比)であるテルペン系重合体。
〔2〕平均重合度が15〜50の、テルペン系化合物とビニルエステル化合物との共重合体であり、かつテルペン系化合物とビニルエステル化合物との共重合比が1:2〜1:25(モル比)である、上記〔1〕記載のテルペン系重合体。
〔3〕平均重合度が15〜50の、テルペン系化合物とビニルエステル化合物との共重合体の加水分解物であり、かつテルペン系化合物とビニルアルコールとの共重合比が1:2〜1:25(モル比)である、上記〔1〕記載のテルペン系重合体。
〔4〕ビニルエステル化合物が、酢酸ビニルである上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のテルペン系重合体。
〔5〕平均重合度が5〜30の、テルペン系化合物の重合体である、上記〔1〕記載のテルペン系重合体。
〔6〕テルペン系化合物が、ゲラニオール、シトラール、シトロネラール、シトロネロール、リナロール、ファルネソール、ネロリドール、ネロール、タキソール、オイゲノール、及びイソオイゲノールから選択される少なくとも1種である、上記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のテルペン系重合体。
〔7〕テルペン系化合物又はテルペン系化合物とビニルエステル化合物の混合物を、重合開始剤の存在下で反応させる、上記〔1〕記載のテルペン系重合体の製造方法。
〔8〕テルペン系化合物とビニルエステル化合物の混合物を、重合開始剤の存在下で反応させ、次いで生成物を加水分解する、上記〔1〕記載のテルペン系重合体の製造方法。
〔9〕上記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載のテルペン系重合体を含有する抗菌剤。
〔10〕上記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載のテルペン系重合体を含有する防黴剤。
〔11〕上記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載のテルペン系重合体を含有する害虫生物忌避剤。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、テルペン系重合体が、実用可能なレベルの抗菌作用、防黴作用、害虫生物忌避作用を有しており、また、高分子化により揮発の問題がなくなるため、これらの作用が長期にわたって持続する。さらに、高分子化により、抗菌作用、防黴作用、害虫生物忌避作用に関与する官能基が局所的に高濃度となるため、その集積効果によりこれらの作用が増大する。
また、当該重合体のうち、テルペン系化合物とビニルエステル化合物との共重合体については、ビニルエステル化合物と共重合されていることにより、加工性が向上し、フィルム等への加工や成形材料への混合が容易になる。さらに、当該共重合体の加水分解物は、水溶性であるため、水系溶媒が用いられる各種用途に広く適用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、平均重合度が5〜50のテルペン系重合体であって、(1)ヒドロキシ基又はホルミル基を有しかつ炭素−炭素二重結合を有するテルペン系化合物(以下、単にテルペン系化合物ともいう)の重合体、(2)当該テルペン系化合物とビニルエステル化合物との共重合体(テルペン系化合物とビニルエステル化合物との共重合比は1:2〜1:25(モル比))又は(3)その加水分解物(テルペン系化合物とビニルアルコールとの共重合比は1:2〜1:25(モル比))、の3つの態様があり、それぞれについて以下で説明する。
【0008】
(1)ヒドロキシ基又はホルミル基を有しかつ炭素−炭素二重結合を有するテルペン系化合物の重合体(以下、単にテルペン系化合物の重合体ともいう)
本発明において、テルペン系化合物の重合体とは、モノマーがテルペン系化合物のみからなる重合体をいい、テルペン系化合物1種の重合体(即ち、単独重合体)のみならずテルペン系化合物2種以上の共重合体をも含む。テルペン系化合物の重合体として好ましくはテルペン系化合物の単独重合体である。
【0009】
本発明において、ヒドロキシ基又はホルミル基を有しかつ炭素−炭素二重結合を有するテルペン系化合物とは、植物中又は精油中に存在する一群の不飽和炭化水素化合物のうちヒドロキシ基又はホルミル基を有するものをいい、当該ヒドロキシ基又はホルミル基が抗菌作用、防黴作用、害虫生物忌避作用を発現していると考えられる。本発明において使用されるヒドロキシ基又はホルミル基を有しかつ炭素−炭素二重結合を有するテルペン系化合物の例としては、ゲラニオール、シトラール、シトロネラール、シトロネロール、リナロール、ファルネソール、ネロリドール、ネロール、タキソール、オイゲノール、イソオイゲノール等を挙げることができる。
【0010】
テルペン系化合物の重合体においては、上記化合物のうち、抗菌作用の観点からは、ゲラニオール、シトラール、シトロネラール、ネロール、オイゲノール、イソオイゲノールが好ましく、ゲラニオール、シトラール、イソオイゲノールが特に好ましい。防黴作用の観点からは、ゲラニオール、オイゲノール、シトラール、シトロネラール、イソオイゲノールが好ましく、ゲラニオール、オイゲノール、イソオイゲノールが特に好ましい。害虫忌避作用の観点からは、シトラール、オイゲノール、ゲラニオール、イソオイゲノールが好ましく、イソオイゲノールが特に好ましい。
テルペン系化合物は1種又は2種以上を用いることができる。
【0011】
テルペン系化合物の重合体の平均重合度は5〜50であることが必須であり、平均重合度がこの範囲内であれば、重合体が優れた抗菌作用、防黴作用、害虫生物忌避作用を有する。さらに、難揮発性及び効果の持続性の観点から、平均重合度は5〜30であることが好ましく、7〜8であることがより好ましい。
本発明において、平均重合度は、元素分析装置(パーキンエルマー2400型、CHNS/O)を用い、重合体の末端の窒素の含有量を定量し、計算することにより求められる平均重合度をいう。
【0012】
(2)テルペン系化合物とビニルエステル化合物との共重合体
本発明において、当該共重合体は、1種又は2種以上のテルペン系化合物と1種又は2種以上のビニルエステル化合物との共重合体であり、好ましくは、1種のテルペン系化合物と1種のビニルエステル化合物との共重合体である。
【0013】
当該共重合体で使用されるテルペン系化合物としては、上記と同じテルペン系化合物が例示でき、抗菌作用の観点からは、ゲラニオール、シトラール、シトロネラール、イソオイゲノール、シトロネロール、リナロールが好ましく、シトロネラール、シトロネロール、リナロールが特に好ましい。防黴作用の観点からは、シトラール、シトロネラール、オイゲノール、ネロール、イソオイゲノールが好ましく、シトラール、オイゲノール、イソオイゲノールが特に好ましい。害虫忌避作用の観点からは、イソオイゲノール、ゲラニオール、リナロール、シトロネロールが好ましく、ゲラニオール、シトロネロールが特に好ましい。
テルペン系化合物は1種又は2種以上を用いることができる。
【0014】
当該共重合体で使用されるビニルエステル化合物は、上記テルペン系化合物とラジカル共重合し得るビニルエステル化合物であればその種類には特に制限はなく、例としては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバル酸ビニル、安息香酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等のビニルエステル化合物等が挙げられる。これらのうち、炭素数4〜9のビニルエステル化合物が好ましく、特に原料入手の容易さの観点から、酢酸ビニル、安息香酸ビニルが好ましい。また、テルペン系化合物との共重合体とした場合の成形材料向け用途やフィルム向け用途への適用の容易さの観点からは、酢酸ビニルが好ましい。
これらビニルエステル化合物は1種又は2種以上を用いることができる。
【0015】
当該共重合体の平均重合度は、5〜50であることが必須であり、平均重合度がこの範囲内であれば、重合体が優れた抗菌作用、防黴作用、害虫生物忌避作用を有する。さらに、難揮発性、効果の持続性及びフィルム化の容易性の観点から、平均重合度は15〜50であることが好ましく、25〜50であることがより好ましい。
ここでいう平均重合度の測定方法は、上記と同様である。
【0016】
テルペン系化合物とビニルエステル化合物との共重合体の共重合比(共重合体中のテルペン系化合物単位とビニルエステル化合物単位との比。すなわち、1種又は2種以上のテルペン系化合物単位:1種又は2種以上のビニルエステル化合物単位の比。)は、モル比で1:2〜1:25であることが必須であり、共重合比がこの範囲内であれば、当該共重合体が優れた抗菌作用、防黴作用、害虫生物忌避作用を有する。さらに共重合比は、官能基の集積効果の観点から、モル比で1:4〜1:25の範囲内であることが好ましく、1:4〜1:10の範囲内であることがより好ましく、1:4〜1:6の範囲内であることが最も好ましい。
本発明において、共重合比は、元素分析装置(パーキンエルマー2400型、CHNS/O)を用い、共重合体の炭素の含有率(%)を定量し、計算することにより求められる共重合比をいう。
【0017】
2種以上のテルペン系化合物を用いた場合、各テルペン系化合物間の共重合比には制限はない。同様に、2種以上のビニルエステル化合物を用いた場合、各ビニルエステル化合物間の共重合比には制限はない。
【0018】
(3)テルペン系化合物とビニルエステル化合物との共重合体の加水分解物
当該加水分解物は、(2)のテルペン系化合物とビニルエステル化合物との共重合体が加水分解されることにより、ビニルエステル単位がビニルアルコール単位に変換された共重合体であり、好ましくは、1種のテルペン系化合物と1種のビニルエステル化合物との共重合体の加水分解物である。当該ビニルエステル単位は、すべてビニルアルコール単位に変換されていなくてもよいが、加水分解物の水溶性を確保するために、ビニルエステル単位はビニルアルコール単位に70%以上変換されていることが好ましく、90%以上変換されていることが特に好ましい。
【0019】
当該加水分解物の平均重合度は5〜50であることが必須であり、平均重合度がこの範囲内であれば、重合体が優れた抗菌作用、防黴作用、害虫生物忌避作用を有する。さらに、難揮発性(無臭性)及び効果の持続性の観点から、平均重合度は15〜50であることがより好ましく、25〜50であることがより好ましい。
ここでいう平均重合度の測定方法は、上記と同様である。
【0020】
当該加水分解物の共重合比(テルペン系化合物単位とビニルアルコール単位(完全に加水分解されていない場合は、ビニルエステル化合物単位を含む。)との比、すなわち、1種又は2種以上のテルペン系化合物単位:ビニルアルコール単位の比。)は、モル比で1:2〜1:25であることが必須であり、共重合比がこの範囲内であれば、当該共重合体が優れた抗菌作用、防黴作用、害虫生物忌避作用を有する。さらに共重合比は、官能基の集積効果及び水溶性の観点から、モル比で1:4〜1:25の範囲内であることが好ましく、1:4〜1:10の範囲内であることがより好ましく、1:4〜1:6の範囲内であることが最も好ましい。
ここでいう共重合比の測定方法は、上記と同様である。
【0021】
加水分解物のビニルエステル単位のビニルアルコール単位への変換率は、ピリジンに溶かした無水酢酸による付加(アセチル化)を利用し、その付加量を定量することにより求めることができる。
【0022】
次に本発明のテルペン系重合体の製造方法について説明する。
(I)テルペン系化合物の重合体の製造方法
当該重合体は、重合開始剤を用いて1種又は2種以上のテルペン系化合物をラジカル重合することにより製造される。
【0023】
ラジカル重合の方法は、重合反応が進行する限り特に制限はされず、常法に従い行うことができる。重合方法の例としては、バルク重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合、分散重合、沈殿重合等が挙げられる。重合方法としては、溶媒が不要であり、反応時間を短縮できることから、バルク重合が好ましい。
【0024】
重合開始剤は、通常のラジカル重合に用いられる重合開始剤であれば特に制限なく使用でき、例としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、1,1’−アゾビスシクロヘキサン−1−カルボニトリル、2,2’−アゾビス−2−アミジノプロパン塩酸塩、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル、2,2’−アゾビスイソブチルアミジン塩酸塩、4,4’−アゾビス−4−シアノ吉草酸等のアゾ系開始剤;過酸化ベンゾイル、2,4−ジクロロ過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化アセチル、クメンヒドロペルオキシド、tert−ブチルヒドロペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、p−メンタンヒドロペルオキシド、ピナンヒドロペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、ジイソプロピルペルオキシジカルボナート、tert−ブチルペルオキシラウレート、ジ−tert−ブチルペルオキシフタレート、ジベンジルオキシド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロペルオキシド等の過酸化物系開始剤;ペルオキソ二硫酸アンモニウム、ぺルオキソ二硫酸ナトリウム、ぺルオキソ二硫酸カリウム等のぺルオキソ硫酸塩系開始剤;過酸化ベンゾイル−N,N−ジメチルアニリン、ペルオキソ二硫酸−亜硫酸水素ナトリウム等のレドックス系開始剤等が挙げられる。これらのうち、アゾ系開始剤、ぺルオキソ硫酸塩系開始剤が好ましく、より好ましくは、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ペルオキソ二硫酸アンモニウムである。これらのラジカル重合開始剤は、単独でもまたは2種以上を同時にまたは順次に使用することもできる。
重合開始剤の使用量は、反応条件及び重合体の目的とする重合度に応じて適宜決定されるが、通常は、テルペン系化合物1モルに対し、1/20〜1/100モルであり、好ましくは1/20〜1/50モルである。特にバルク重合において開始剤の量がこの範囲内であれば、平均重合度が5〜50である重合体が得られ易い。
【0025】
バルク重合以外で反応を行う場合、使用される溶媒は、反応を阻害しないものであれば特に制限はなく、例としては、水;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、γ−ブチロラクトン等のケトン類;n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、n−オクチルアルコール、n−ドデシルアルコール等のアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール等のグリコール類;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等のアルコールエーテル類;ギ酸n−プロピル、ギ酸イソプロピル、ギ酸n−ブチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸n−ヘキシル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル等のエステル類;2−オキシプロピオン酸メチル、2−オキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸n−プロピル、2−オキシプロピオン酸イソプロピル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸エチル等のモノオキシカルボン酸エステル類;メトキシ酢酸エチル、エトキシ酢酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル等のアルコキシカルボン酸エステル類;セロソルブアセテート、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート等のセロソルブエステル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;トリクロロエチレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N,N’−ジメチルイミダゾリジノン等のアミド類等が挙げられる。これらの溶媒は、単独でも2種以上を混合して使用してもよい。これらのうち、好ましい溶媒としては、水である。
溶媒の使用量は、濃度が重合度に影響を及ぼすものであるから、重合方法、使用するモノマーの反応性や重合開始剤種等に応じて適宜決定されるが、通常はテルペン系化合物1kgに対し、0.5〜4Lであり、好ましくは1〜3Lである。
【0026】
ラジカル重合の開始反応は、重合開始剤の種類に応じて、常法に従い、熱、光、放射線等により行うことができる。反応操作の容易さの観点から、熱により重合を開始させることが好ましい。
反応温度は、重合反応が進行するのに必要な温度以上であればよく、重合開始剤の分解温度、反応時間、溶媒及びモノマーの沸点等に応じて適宜選択される。好ましい反応温度としては50〜70℃であり、より好ましい反応温度としては60〜70℃である。
反応時間は、反応温度、使用する重合開始剤及びテルペン系化合物の種類・濃度等に応じて適宜選択される。好ましい反応時間としては、12〜500時間であり、より好ましい反応時間としては12〜240時間である。
【0027】
反応終了後、反応混合物より、常法により単離して目的とするテルペン系化合物の重合体を得ることができる。単離方法としては、例えば、反応温度を一旦上昇させて開始剤を完全に分解させた後、減圧下で溶媒や残存モノマー等を留去する方法、重合体に対する多量の貧溶媒に反応混合物を投入し、沈殿物をろ過により回収する方法等が挙げられる。
【0028】
(II)テルペン系化合物とビニルエステル化合物との共重合体の製造方法
テルペン系化合物とビニルエステル化合物との共重合体は、重合開始剤を用いて1種又は2種以上のテルペン系化合物と1種又は2種以上のビニルエステル化合物とをラジカル重合することにより製造される。
【0029】
当該ラジカル重合は、バルク重合、溶媒重合等、上記(I)と同様の重合方法を採用して行うことができ、使用される重合開始剤の種類及び溶媒の種類については上記(I)と同様である。
【0030】
当該ラジカル重合において、重合開始剤の量は、反応条件及び重合体の目的とする重合度に応じて適宜決定されるが、通常は、テルペン系化合物及びビニルエステル化合物の合計1モルに対し、0.001〜0.1モルであり、好ましくは0.01〜0.05モルである。特にバルク重合において開始剤の量がこの範囲内であれば、平均重合度が5〜50である共重合体が得られ易い。
当該ラジカル重合において、溶媒の使用量は、濃度が重合度に影響を及ぼすものであるから、重合方法、使用するモノマーの反応性や重合開始剤種等に応じて適宜決定されるが、通常は、テルペン系化合物及びビニルエステル化合物の合計1kgに対し、1〜5Lであり、好ましくは1〜2Lである。
【0031】
開始反応は、上記(I)と同様熱、光、放射線等により行うことができ、熱により行うことが好ましい。
反応温度は、重合反応が進行するのに必要な温度以上であればよく、重合開始剤の分解温度、反応時間、溶媒及びモノマーの沸点等に応じて適宜選択される。好ましい反応温度としては、40〜70℃であり、より好ましい反応温度としては60〜70℃である。
反応時間は、反応温度、使用する重合開始剤並びにテルペン系化合物及びビニルエステル化合物の種類・濃度等に応じて適宜選択される。好ましい反応時間としては、12〜500時間であり、より好ましい反応時間としては12〜240時間である。
【0032】
反応終了後、上記(I)と同様にして単離して、目的とするテルペン系化合物とビニルエステル化合物との共重合体を得ることができる。
【0033】
(III)テルペン系化合物とビニルエステル化合物との共重合体の加水分解物の製造方法
当該加水分解物は、上記(II)の方法により得られるテルペン系化合物とビニルエステル化合物との共重合体を、アルカリと作用させて加水分解することにより製造することができる。加水分解の方法としては、例えば、ポリ酢酸ビニルをポリビニルアルコールに変換する際に一般的に採用される方法(例えば、テルペン系化合物とビニルエステル化合物との共重合体をメタノール等の溶媒に溶解し、水酸化ナトリウムのメタノール溶液を添加する方法、水酸化ナトリウムのメタノール溶液に前記共重合体を添加する方法等)を採用することができる。
【0034】
本発明のテルペン系重合体は、抗菌剤、防黴剤、害虫生物忌避剤として有用である。
抗菌剤として使用する場合の対象となる菌は、大腸菌、枯草菌等の腐敗菌等であり、特に大腸菌、枯草菌に対して優れた抗菌作用を示す。
防黴剤として使用する場合の対象となる黴は、アオカビ、クロカビ等であり、特にアオカビ、クロカビに対して優れた防黴作用を示す。
害虫生物忌避剤として使用する場合の対象となる害虫生物は、ナメクジ、カタツムリ、シロアリ、アリ、ケラ、ダニ、原生生物(例、アメーバ、ゾウリムシ、アオミドロ等)等であり、特にナメクジ、アリ、原生生物に対して優れた害虫生物忌避作用を示す。
【0035】
抗菌剤、防黴剤、害虫生物忌避剤として使用する場合には、その使用形態には特に制限はなく、使用形態の例としては、(A)本発明のテルペン系重合体を成形体の中に混入させる、(B)本発明のテルペン系重合体を成形体化又はフィルム化する、(C)本発明のテルペン系重合体を溶液化する、(D)本発明のテルペン系重合体を溶液化し、基材(フィルム、テープ、繊維、成形体等)に塗布、又は当該基材を本発明のテルペン系重合体の溶液に浸漬し、乾燥して、基材表面を本発明のテルペン系重合体でコーティングする、(E)本発明のテルペン系重合体を塗料に混合する等が挙げられる。
【0036】
これらの使用態様の具体的な例としては、カテーテルに本発明のテルペン系重合体の溶液を塗布・乾燥してコーティングした抗菌カテーテル、ティッシュを本発明のテルペン系重合体溶液に浸漬し乾燥させた除菌ティッシュ、テープに本発明のテルペン系重合体の溶液を塗布・乾燥してコーティングしたナメクジ忌避テープ及びアリ忌避テープ、本発明のテルペン系重合体を塗料に混合した船底防汚塗料、網を本発明のテルペン系重合体溶液に浸漬してコーティングしたいけす防汚物ネット、本発明のテルペン系重合体の水溶液を含む消毒剤又は化粧水、包装紙を本発明のテルペン系重合体溶液に浸漬し乾燥させた果物包装紙、本発明のテルペン系重合体を成形した排水管等が挙げられる。
【0037】
本発明のテルペン系重合体が、(1)テルペン系化合物の重合体である場合には、テルペン系化合物の重合体は、粘性のある油状であるため、上記(C)〜(E)の使用態様が好ましく、(2)テルペン系化合物とビニルエステル化合物の共重合体である場合には、当該共重合体が油溶性であり、またビニルエステル化合物による成形性の向上効果があるため、上記(A)〜(E)の使用態様が好ましく、(3)テルペン系化合物とビニルエステル化合物の共重合体の加水分解物である場合には、当該加水分解物が水溶性であるため、上記(C)〜(E)の使用態様が好ましく、さらにこの場合、(C)及び(D)の使用態様においては、溶液は水溶液であることがより好ましく、(E)の使用態様においては、塗料は水性塗料であることがより好ましい。
【実施例】
【0038】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限られるものではない。最初に本発明の重合体の合成の実施例について示す。
【0039】
実施例1 イソオイゲノール単独重合体の合成
イソオイゲノール32.86g(200mmol)と、ぺルオキソ二硫酸アンモニウムを0.896g(4mmol)を水30mLに溶かした。これを60℃の水浴中で撹拌しながら7日間加熱した。反応後、適当量の水を加え、よく撹拌した後、デカンテーションで水を除いて未反応の開始剤を除いた。さらに減圧下で濃縮することにより、水と未反応のモノマーを除去し、イソオイゲノール単独重合体を得た(収率85%)。重合体生成の確認はFT−IRにて行った。イソオイゲノール及びイソオイゲノール単独重合体のFT−IR測定の結果を図1及び2に示す。
【0040】
実施例2 シトラール単独重合体の合成
シトラール30.4g(200mmol)にAIBN(4mmol)を加え、60℃で14日間反応を行った。水で洗った後、120℃に加熱し、AIBNを分解除去した。ロータリーエバポレーターで未反応モノマーを除去し、シトラール単独重合体を得た(収率81%)。重合体生成の確認はFT−IRにて行った。シトラール及びシトラール単独重合体のFT−IR測定の結果を図3及び4に示す。
実施例2a〜2c シトラール単独重合体の合成
シトラールとAIBNの仕込みモル比を1:0.005(実施例2a)、1:0.01(実施例2b)、1:0.02(実施例2c)として、実施例2と同様に反応を行い、重合度の異なるシトラール単独重合体を得た。
【0041】
実施例3 リナロール単独重合体の合成
リナロール30.5g(200mmol)にAIBN(4mmol)を加え、60〜70℃で7日間反応を行った。実施例2と同様の回収操作を行い、リナロール単独重合体を得た(収率50%)。
【0042】
実施例4 シトロネロール単独重合体の合成
シトロネロール30g(200mmol)にAIBN(4mmol)を加え、60〜70℃で14日間重合を行った。実施例2と同様の回収操作を行い、シトロネロール単独重合体を得た(収率60%)。
【0043】
実施例5 ゲラニオール単独重合体の合成
ゲラニオール30.5g(200mmol)とペルオキソ二硫酸アンモニウム0.92g(4mmol)の混合物を70℃で7日間反応させた。実施例1と同様の回収操作を行い、ゲラニオール単独重合体を得た(収率85%)。重合体生成の確認はFT−IRにて行った。ゲラニオール及びゲラニオール単独重合体のFT−IR測定の結果を図5及び6に示す。
実施例5a〜5b ゲラニオール単独重合体の合成
ゲラニオールとAIBNの仕込みモル比を1:0.07(実施例5a)、ゲラニオールとペルオキソ二硫酸アンモニウムの仕込みモル比を1:0.02(実施例5b)として、実施例5と同様に反応を行い、重合度の異なるゲラニオール単独重合体を得た。
【0044】
実施例6〜10 その他テルペン系化合物の単独重合体の合成
シトロネラール、ネロール、ネロリドール、ファルネソール、オイゲノールの単独重合体を実施例1又は2と同様の方法で得た。
【0045】
実施例11〜16 イソオイゲノール/酢酸ビニル共重合体及びイソオイゲノール/ビニルアルコール共重合体の合成
イソオイゲノール3g(18.27mmol)及び酢酸ビニル27g(313.6mmol)(モル比1:17)にペルオキソ二硫酸アンモニウム1.5214g(6.661mmol)を加え、60℃で7日間重合を行った。精製は、反応生成物をテトラヒドロフラン(THF)に溶かした後、激しくかき混ぜながら水を加え、沈殿した樹脂を回収して行った。この操作は2〜3回繰り返し、イソオイゲノール/酢酸ビニル共重合体を得た(収率85%)。
得られた共重合体の一部を加水分解するために、イソオイゲノール/酢酸ビニル共重合体1gをメタノール50mLに溶かし、水酸化ナトリウムの飽和メタノール溶液を過剰に加えた。数時間放置し、生じた白色沈殿を遠心分離機で分離し、上澄み液を捨てた。沈殿物をソックスレイ抽出機に移し、メタノールを循環させ、5時間抽出を行い、イソオイゲノール/ビニルアルコール共重合体を得た。この場合の収率は理論量の95%程度であった。
共重合比の異なるイソオイゲノール/酢酸ビニル共重合体及びイソオイゲノール/ビニルアルコール共重合体を得るために、イソオイゲノールと酢酸ビニルのモル比を1:11及び1:5.7とし、開始剤の量をイソオイゲノールと酢酸ビニルの合計に対して1/50モルとし、上記と同様の反応を行った。
【0046】
実施例17〜22 シトラール/酢酸ビニル共重合体及びシトラール/ビニルアルコール共重合体の合成
シトラール3g(19.45mmol)及び酢酸ビニル27g(313.6mmol)(モル比1:16)にペルオキソ二硫酸アンモニウム1.5200g(6.661mmol)を加え、60℃で14日間重合を行った。上記と同様の回収操作を行い、シトラール/酢酸ビニル共重合体を得た(収率73%)。
得られた共重合体の一部を加水分解するために、シトラール/酢酸ビニル共重合体1gを、水酸化ナトリウムを飽和させたメタノール50mLに溶かし、放置した。沈殿を遠心分離機で分離して、シトラール/ビニルアルコール共重合体を得た。
共重合比の異なるシトラール/酢酸ビニル共重合体及びシトラール/ビニルアルコール共重合体を得るために、シトラールと酢酸ビニルのモル比を1:11.1及び1:5.2とし、開始剤の量をシトラールと酢酸ビニルの合計に対して1/50モルとし、上記と同様の反応を行った。
【0047】
実施例23〜28 リナロール/酢酸ビニル共重合体及びリナロール/ビニルアルコール共重合体の合成
リナロール3g(19.4mmol)及び酢酸ビニル27g(313.6mmol)(モル比1:16.4)にペルオキソ二硫酸アンモニウム1.5220g(6.661mmol)を加え、60℃で7日間重合を行った。上記と同様の回収操作を行い、リナロール/酢酸ビニル共重合体を得た(収率80%)。
得られた共重合体の一部を加水分解するために、リナロール/酢酸ビニル共重合体1gに水酸化ナトリウムを飽和させたメタノール25mLに溶かし、60℃で数時間放置した。生成した沈殿を遠心分離機で分離し、メタノールで洗浄し、リナロール/ビニルアルコール共重合体を得た。
共重合比の異なるリナロール/酢酸ビニル共重合体及びリナロール/ビニルアルコール共重合体を得るために、リナロールと酢酸ビニルのモル比を1:10.7及び1:5.3とし、開始剤の量をリナロールと酢酸ビニルの合計に対して1/50モルとし、上記と同様の反応を行った。
【0048】
実施例29〜34 シトロネロール/酢酸ビニル共重合体及びシトロネロール/ビニルアルコール共重合体の合成
シトロネロール3g(19.19mmol)及び酢酸ビニル27g(313.6mmol)(モル比1:16.3)にペルオキソ二硫酸アンモニウム1.519g(6.656mmol)を加え、60〜70℃で14日間重合を行った。上記と同様の回収操作を行い、シトロネロール/酢酸ビニル共重合体を得た(収率86%)。
得られた共重合体の一部を加水分解するために、上記実施例23〜28と同様の操作を行い、シトロネロール/ビニルアルコール共重合体を得た。
共重合比の異なるシトロネロール/酢酸ビニル共重合体及びシトロネロール/ビニルアルコール共重合体を得るために、シトロネロールと酢酸ビニルのモル比を1:10.8及び1:5.4とし、開始剤の量をシトロネロールと酢酸ビニルの合計に対して1/50モルとし、上記と同様の反応を行った。
【0049】
実施例35〜40 ゲラニオール/酢酸ビニル共重合体及びゲラニオール/ビニルアルコール共重合体の合成
ゲラニオール3g(18.27mmol)及び酢酸ビニル27g(313.6mmol)(モル比1:16)にペルオキソ二硫酸アンモニウム1.5201g(6.661mmol)を加え、60〜65℃で7日間重合を行った。上記と同様の回収操作を行い、ゲラニオール/酢酸ビニル共重合体を得た(収率80%)。
得られた共重合体の一部を加水分解するために、上記実施例23〜28と同様の操作を行い、ゲラニオール/ビニルアルコール共重合体を得た。
共重合比の異なるゲラニオール/酢酸ビニル共重合体及びゲラニオール/ビニルアルコール共重合体を得るために、ゲラニオールと酢酸ビニルのモル比を1:10及び1:5.3とし、開始剤の量をゲラニオールと酢酸ビニルの合計に対して1/50モルとし、上記と同様の反応を行った。ゲラニオールと酢酸ビニルのモル比を1:5.3としたものについて、共重合体生成の確認をFT−IRにて行った。FT−IR測定の結果を図7に示す。
【0050】
実施例41〜70 その他のテルペン系化合物/酢酸ビニル共重合体及びその他のテルペン系化合物/ビニルアルコール共重合体の合成
シトロネラール、ネロール、ネロリドール、ファルネソール、オイゲノールについても、酢酸ビニルとの共重合体、ビニルアルコールとの共重合体を実施例11〜40と同様の合成法で得た。
【0051】
上記実施例で得られた本発明の重合体の平均重合度を、以下の方法により求めた。また、テルペン系化合物と酢酸ビニルとの共重合体の共重合比及びテルペン系化合物とビニルアルコールとの共重合体の共重合比を以下の方法により求めた。単独重合体の測定結果を表1に、共重合体の測定結果を表2に示す。
〔平均重合度〕
元素分析装置(パーキンエルマー2400型、CHNS/O)を用い、重合体の末端の窒素の含有量を定量し、計算することにより求めた。
〔共重合比〕
元素分析装置(パーキンエルマー2400型、CHNS/O)を用い、共重合体の炭素の含有率(%)を定量し、計算することにより求めた。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2−1】
【表2−2】
【0054】
本発明の重合体が難揮発性になっていることを確認するために、以下の試験を行った。
試験例1 難揮発性試験
シトラール、実施例2のシトラール単独重合体、実施例19のシトラール/酢酸ビニル共重合体、ゲラニオール、実施例5のゲラニオール単独重合体、実施例37のゲラニオール/酢酸ビニル共重合体について、熱分析装置(株式会社島津製作所製、DTG60)を用い、窒素気流下、10℃/分の昇温速度で加熱し、質量変化を測定することにより熱分析を行った。結果を図8〜13に示す。
図8〜10の結果より、シトラールよりもシトラール単独重合体及びシトラール/酢酸ビニル共重合体の方が、図11〜13の結果より、ゲラニオールよりもゲラニオール単独重合体及びゲラニオール/酢酸ビニル共重合体の方が温度上昇に対する重量減少が少なく、難揮発性であることがわかる。
【0055】
次に、本発明の重合体の抗菌作用、防黴作用、害虫生物忌避作用を、以下の試験例のように評価した。
試験例2 抗菌テスト(大腸菌、枯草菌)
実施例2a〜2c及び5a〜5eで得られた重合度の異なるシトラールの単独重合体及びゲラニオールの単独重合体をジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解させた。この際濃度は、各重合体がDMSO5μLあたり0.5mg、0.05mg、0.005mg含まれるように調整した。この溶液を大腸菌又は枯草菌を接種した固形培地に滴下し、その上にセロハンを置き、抗菌性について調べた。抗菌性の評価は、以下の基準に従って行った。結果を表3に示す。
菌の繁殖が全く認められないもの :+++
セロハンのふちの一部分に僅かに菌の繁殖が認められたもの :++
セロハンのふちの所々に僅かに菌の繁殖が認められたもの :+
セロハンの下部に菌の繁殖が認められたもの :−
また、本試験例の抗菌性評価の実態を図14に示す。
【0056】
【表3】
【0057】
表3の結果より、シトラールの単独重合体及びゲラニオールの単独重合体は、大腸菌、枯草菌に対して抗菌作用を示すことがわかる。
【0058】
試験例3 抗菌テスト(大腸菌、枯草菌)
実施例のテルペン系重合体5mgをジメチルスルホキシド100μLに溶かし、この溶液を5μLとり、セロハン(1cm2 )上に滴下して乾燥させた。寒天培地に大腸菌又は枯草菌を塗布し、本発明の重合体を塗布したセロハンを置き、25℃の暗所に3日間放置し、以下の基準に従って抗菌性の評価を行った。結果を表4に示す。
セロハン及びその近辺に菌の繁殖が全く認められないもの :+++
セロハンのふちの一部分に僅かに菌の繁殖が認められたもの :++
セロハンのふちの所々に僅かに菌の繁殖が認められたもの :+
セロハンの下部に菌の繁殖が認められたもの :−
【0059】
試験例4 抗菌性テスト(雑菌)
実施例のテルペン系化合物単独重合体の1〜5%DMSO溶液、実施例のテルペン系化合物/酢酸ビニル共重合体の1〜5%DMSO溶液、及び実施例のテルペン系化合物/ビニルアルコール共重合体の1〜5%水溶液を調製し、そこへ産業用ワイパー(商品名:キムワイプ(登録商標))を浸した。乾燥後、その産業用ワイパーで拭いた指、未処理の産業用ワイパーで拭いた指、何もしない指を寒天培地になすり付け、2日間放置し、テルペン系化合物/ビニルアルコール共重合体の水溶液で処理した産業用ワイパーで拭いた指を寒天培地になすり付けた場合の雑菌の繁殖具合を調べた。抗菌性の評価を、以下の基準に従って行った。結果を表4に示す。
雑菌の繁殖が全く認められないもの :+++
雑菌の繁殖が僅かに認められたもの :++
未処理の産業用ワイパーで拭いた指を寒天培地になすり
付けた場合と同程度に雑菌の繁殖が認められたもの :+
何もしない指を寒天培地になすり付けた場合の雑菌の繁
殖の度合い :−
【0060】
試験例5 ナメクジ忌避テスト
実施例のテルペン系重合体の500〜1000ppmテトラヒドロフラン溶液を調製し、その溶液にセロハン紙を浸した後、乾燥した。このようにして調製したセロハン紙をビーカーの内面上部に貼り付け、ビーカーの底にナメクジを置き、這い出るかどうかを調べた。ナメクジ忌避効果を、以下の基準により評価した。結果を表4に示す。
セロハン紙の手前でナメクジが動かなくなったもの :+
ナメクジがビーカーから這い出たもの :−
【0061】
試験例6 アリ忌避テスト
ナメクジ忌避テストに用いたと同じセロハン紙を割り箸の根元に巻き付け、上部にイチゴシロップを染み込ませた。この割り箸を蟻の多数見られる地面に差込み、アリがセロハン紙を越えてイチゴシロップを染み込ませた部分に集まるかどうかを調べた。比較のため、塗布していないセロハン紙を使用して同様の試験を行った。アリ忌避効果を、以下の基準により評価した。結果を表4に示す。
セロハン紙を越えたアリがいなかったもの :+
セロハン紙を越えてイチゴシロップを染み込ませた部分に
アリが集まったもの(比較試験と同等) :−
【0062】
試験例7 原生動物忌避テスト
ナメクジ忌避テストに用いた溶液を内容積50mLのサンプル管の内部に塗布した。これに水を入れ、15cmに切ったナズナ(ペンペングサ)を入れ、25℃で2週間放置した。ナズナの枯れ具合と水のにごり具合を調べた。塗布していないサンプル管を使用して行った試験と比較した。原生動物については顕微鏡でも調べた。原生動物忌避効果を、以下の基準により評価した。結果を表4に示す。
ナズナが枯れず、水のにごりがなかったもの :+
ナズナが枯れ、サンプル間の底部ににごりが
あったもの(比較試験と同等) :−
【0063】
試験例8 防黴性テスト
ナメクジ忌避テストに用いた溶液を産業用ワイパー(商品名:キムワイプ(登録商標))に染み込ませ、乾燥させた。この産業用ワイパー上の中心に、水で湿らせた3cm角のパンを置き、パンの乾燥を防ぐためラップで覆い、一週間放置した後、パンの表面のアオカビの生え具合を観察した。
また、クロカビについて、採取してきたクロカビを産業用ワイパーに塗布し、同様の試験を行った。以下の基準に従って抗菌性の評価を行った。結果を表4に示す。
(ただし、テルペン系化合物/ビニルアルコール共重合体のアオカビに対する防黴性テストについては、次の試験例9により評価した。)
パンの上部にすら黴がはえなかったもの :+++
パンの上部に黴がはえたが、産業用ワイパーとパンの
接触面には黴がはえなかったもの :++
パンの表面に黴がはえ、産業用ワイパーとパンの接触
面の所々に僅かに黴がはえたもの :+
パンの全面及び産業用ワイパーに黴がはえたもの :−
【0064】
試験例9 防黴性テスト
10%米糊5mLに、実施例のテルペン系化合物/ビニルアルコール共重合体を濃度0.01〜2%になるように加えた。1ヵ月程度放置し、表面のアオカビのはえ具合を、ビニルアルコール共重合体を加えないものと比較した。抗菌性の評価を、以下の基準に従って行った。結果を表4に示す。
全くアオカビがはえなかったもの :+++
2週間で僅かにアオカビがはえたもの :++
1週間で僅かにアオカビがはえたもの :+
1週間でアオカビが繁殖したもの(比較試験と同等) :−
【0065】
【表4】
【0066】
表4の結果より、実施例のテルペン系重合体が、抗菌作用、防黴作用、害虫生物忌避作用を示すことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明のテルペン系化合物の重合体、ビニルエステル化合物との共重合体及びその加水分解物は、抗菌剤、防黴剤、害虫生物忌避剤として利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】イソオイゲノールのFT−IRスペクトル。
【図2】イソオイゲノール単独重合体のFT−IRスペクトル。
【図3】シトラールのFT−IRスペクトル。
【図4】シトラール単独重合体のFT−IRスペクトル。
【図5】ゲラニオールのFT−IRスペクトル。
【図6】ゲラニオール単独重合体のFT−IRスペクトル。
【図7】ゲラニオール/酢酸ビニル共重合体のFT−IRスペクトル。
【図8】シトラールのTG曲線。
【図9】シトラール単独重合体のTG曲線。
【図10】シトラール/酢酸ビニル共重合体のTG曲線。
【図11】ゲラニオールのTG曲線。
【図12】ゲラニオール単独重合体のTG曲線。
【図13】ゲラニオール/酢酸ビニル共重合体のTG曲線。
【図14】試験例2の抗菌性評価の実態を示す写真。
【技術分野】
【0001】
本発明は、テルペン系化合物の重合体、テルペン系化合物とビニルエステル化合物との共重合体及びその加水分解物であるテルペン系重合体、並びにその製造方法に関する。更には、当該重合体を含有する抗菌剤、防黴剤、害虫生物忌避剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、テルペン系化合物は抗菌性、防黴性、生物忌避性を有することが知られている(例えば、非特許文献1、2参照)。しかし、テルペン系化合物は、微弱ながらも揮発性であるため、その効力を長期にわたって持続させることができないという問題があった。
一方、テルペン系化合物は、テルペン系化合物の有する二重結合を利用して、酢酸ビニルとのラジカル共重合が可能であり、共重合して高分子化することにより、テルペン系化合物の揮発性を抑えることができることが知られている(例えば、非特許文献2参照)。しかし、この共重合体中のどのようなものが、抗菌剤、防黴剤、害虫生物忌避剤として実用的に適用し得るのかについては、具体的には何ら明らかにされていない。
【非特許文献1】堀口博著「防菌防黴の化学」三共出版,4−9頁,昭和61年2月25日発行
【非特許文献2】中国地域産学官コラボレーションシンポジウムinやまぐち要旨集,63頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
抗菌剤、防黴剤、害虫生物忌避剤として実用的に適用し得るテルペン系重合体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決すべく発明者が鋭意検討した結果、テルペン系重合体が特定の範囲内の平均重合度を持ち、そして当該重合体がビニルエステル化合物との共重合体である場合には、テルペン系化合物とビニルエステル化合物との共重合比が特定の範囲内の値である場合、実用可能なレベルで抗菌作用、防黴作用、害虫生物忌避作用を有することを見出した。さらには、当該共重合体の加水分解物が、実用可能なレベルで抗菌作用、防黴作用、害虫生物忌避作用を有することも見出した。すなわち、本発明は以下の通りである。
【0005】
〔1〕ヒドロキシ基又はホルミル基を有しかつ炭素−炭素二重結合を有するテルペン系化合物の重合体、あるいは当該テルペン系化合物とビニルエステル化合物との共重合体又はその加水分解物である、平均重合度が5〜50のテルペン系重合体であって、当該テルペン系重合体がテルペン系化合物とビニルエステル化合物との共重合体又はその加水分解物である場合、テルペン系化合物と、ビニルエステル化合物又はビニルアルコールとの共重合比が1:2〜1:25(モル比)であるテルペン系重合体。
〔2〕平均重合度が15〜50の、テルペン系化合物とビニルエステル化合物との共重合体であり、かつテルペン系化合物とビニルエステル化合物との共重合比が1:2〜1:25(モル比)である、上記〔1〕記載のテルペン系重合体。
〔3〕平均重合度が15〜50の、テルペン系化合物とビニルエステル化合物との共重合体の加水分解物であり、かつテルペン系化合物とビニルアルコールとの共重合比が1:2〜1:25(モル比)である、上記〔1〕記載のテルペン系重合体。
〔4〕ビニルエステル化合物が、酢酸ビニルである上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のテルペン系重合体。
〔5〕平均重合度が5〜30の、テルペン系化合物の重合体である、上記〔1〕記載のテルペン系重合体。
〔6〕テルペン系化合物が、ゲラニオール、シトラール、シトロネラール、シトロネロール、リナロール、ファルネソール、ネロリドール、ネロール、タキソール、オイゲノール、及びイソオイゲノールから選択される少なくとも1種である、上記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のテルペン系重合体。
〔7〕テルペン系化合物又はテルペン系化合物とビニルエステル化合物の混合物を、重合開始剤の存在下で反応させる、上記〔1〕記載のテルペン系重合体の製造方法。
〔8〕テルペン系化合物とビニルエステル化合物の混合物を、重合開始剤の存在下で反応させ、次いで生成物を加水分解する、上記〔1〕記載のテルペン系重合体の製造方法。
〔9〕上記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載のテルペン系重合体を含有する抗菌剤。
〔10〕上記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載のテルペン系重合体を含有する防黴剤。
〔11〕上記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載のテルペン系重合体を含有する害虫生物忌避剤。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、テルペン系重合体が、実用可能なレベルの抗菌作用、防黴作用、害虫生物忌避作用を有しており、また、高分子化により揮発の問題がなくなるため、これらの作用が長期にわたって持続する。さらに、高分子化により、抗菌作用、防黴作用、害虫生物忌避作用に関与する官能基が局所的に高濃度となるため、その集積効果によりこれらの作用が増大する。
また、当該重合体のうち、テルペン系化合物とビニルエステル化合物との共重合体については、ビニルエステル化合物と共重合されていることにより、加工性が向上し、フィルム等への加工や成形材料への混合が容易になる。さらに、当該共重合体の加水分解物は、水溶性であるため、水系溶媒が用いられる各種用途に広く適用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、平均重合度が5〜50のテルペン系重合体であって、(1)ヒドロキシ基又はホルミル基を有しかつ炭素−炭素二重結合を有するテルペン系化合物(以下、単にテルペン系化合物ともいう)の重合体、(2)当該テルペン系化合物とビニルエステル化合物との共重合体(テルペン系化合物とビニルエステル化合物との共重合比は1:2〜1:25(モル比))又は(3)その加水分解物(テルペン系化合物とビニルアルコールとの共重合比は1:2〜1:25(モル比))、の3つの態様があり、それぞれについて以下で説明する。
【0008】
(1)ヒドロキシ基又はホルミル基を有しかつ炭素−炭素二重結合を有するテルペン系化合物の重合体(以下、単にテルペン系化合物の重合体ともいう)
本発明において、テルペン系化合物の重合体とは、モノマーがテルペン系化合物のみからなる重合体をいい、テルペン系化合物1種の重合体(即ち、単独重合体)のみならずテルペン系化合物2種以上の共重合体をも含む。テルペン系化合物の重合体として好ましくはテルペン系化合物の単独重合体である。
【0009】
本発明において、ヒドロキシ基又はホルミル基を有しかつ炭素−炭素二重結合を有するテルペン系化合物とは、植物中又は精油中に存在する一群の不飽和炭化水素化合物のうちヒドロキシ基又はホルミル基を有するものをいい、当該ヒドロキシ基又はホルミル基が抗菌作用、防黴作用、害虫生物忌避作用を発現していると考えられる。本発明において使用されるヒドロキシ基又はホルミル基を有しかつ炭素−炭素二重結合を有するテルペン系化合物の例としては、ゲラニオール、シトラール、シトロネラール、シトロネロール、リナロール、ファルネソール、ネロリドール、ネロール、タキソール、オイゲノール、イソオイゲノール等を挙げることができる。
【0010】
テルペン系化合物の重合体においては、上記化合物のうち、抗菌作用の観点からは、ゲラニオール、シトラール、シトロネラール、ネロール、オイゲノール、イソオイゲノールが好ましく、ゲラニオール、シトラール、イソオイゲノールが特に好ましい。防黴作用の観点からは、ゲラニオール、オイゲノール、シトラール、シトロネラール、イソオイゲノールが好ましく、ゲラニオール、オイゲノール、イソオイゲノールが特に好ましい。害虫忌避作用の観点からは、シトラール、オイゲノール、ゲラニオール、イソオイゲノールが好ましく、イソオイゲノールが特に好ましい。
テルペン系化合物は1種又は2種以上を用いることができる。
【0011】
テルペン系化合物の重合体の平均重合度は5〜50であることが必須であり、平均重合度がこの範囲内であれば、重合体が優れた抗菌作用、防黴作用、害虫生物忌避作用を有する。さらに、難揮発性及び効果の持続性の観点から、平均重合度は5〜30であることが好ましく、7〜8であることがより好ましい。
本発明において、平均重合度は、元素分析装置(パーキンエルマー2400型、CHNS/O)を用い、重合体の末端の窒素の含有量を定量し、計算することにより求められる平均重合度をいう。
【0012】
(2)テルペン系化合物とビニルエステル化合物との共重合体
本発明において、当該共重合体は、1種又は2種以上のテルペン系化合物と1種又は2種以上のビニルエステル化合物との共重合体であり、好ましくは、1種のテルペン系化合物と1種のビニルエステル化合物との共重合体である。
【0013】
当該共重合体で使用されるテルペン系化合物としては、上記と同じテルペン系化合物が例示でき、抗菌作用の観点からは、ゲラニオール、シトラール、シトロネラール、イソオイゲノール、シトロネロール、リナロールが好ましく、シトロネラール、シトロネロール、リナロールが特に好ましい。防黴作用の観点からは、シトラール、シトロネラール、オイゲノール、ネロール、イソオイゲノールが好ましく、シトラール、オイゲノール、イソオイゲノールが特に好ましい。害虫忌避作用の観点からは、イソオイゲノール、ゲラニオール、リナロール、シトロネロールが好ましく、ゲラニオール、シトロネロールが特に好ましい。
テルペン系化合物は1種又は2種以上を用いることができる。
【0014】
当該共重合体で使用されるビニルエステル化合物は、上記テルペン系化合物とラジカル共重合し得るビニルエステル化合物であればその種類には特に制限はなく、例としては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバル酸ビニル、安息香酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等のビニルエステル化合物等が挙げられる。これらのうち、炭素数4〜9のビニルエステル化合物が好ましく、特に原料入手の容易さの観点から、酢酸ビニル、安息香酸ビニルが好ましい。また、テルペン系化合物との共重合体とした場合の成形材料向け用途やフィルム向け用途への適用の容易さの観点からは、酢酸ビニルが好ましい。
これらビニルエステル化合物は1種又は2種以上を用いることができる。
【0015】
当該共重合体の平均重合度は、5〜50であることが必須であり、平均重合度がこの範囲内であれば、重合体が優れた抗菌作用、防黴作用、害虫生物忌避作用を有する。さらに、難揮発性、効果の持続性及びフィルム化の容易性の観点から、平均重合度は15〜50であることが好ましく、25〜50であることがより好ましい。
ここでいう平均重合度の測定方法は、上記と同様である。
【0016】
テルペン系化合物とビニルエステル化合物との共重合体の共重合比(共重合体中のテルペン系化合物単位とビニルエステル化合物単位との比。すなわち、1種又は2種以上のテルペン系化合物単位:1種又は2種以上のビニルエステル化合物単位の比。)は、モル比で1:2〜1:25であることが必須であり、共重合比がこの範囲内であれば、当該共重合体が優れた抗菌作用、防黴作用、害虫生物忌避作用を有する。さらに共重合比は、官能基の集積効果の観点から、モル比で1:4〜1:25の範囲内であることが好ましく、1:4〜1:10の範囲内であることがより好ましく、1:4〜1:6の範囲内であることが最も好ましい。
本発明において、共重合比は、元素分析装置(パーキンエルマー2400型、CHNS/O)を用い、共重合体の炭素の含有率(%)を定量し、計算することにより求められる共重合比をいう。
【0017】
2種以上のテルペン系化合物を用いた場合、各テルペン系化合物間の共重合比には制限はない。同様に、2種以上のビニルエステル化合物を用いた場合、各ビニルエステル化合物間の共重合比には制限はない。
【0018】
(3)テルペン系化合物とビニルエステル化合物との共重合体の加水分解物
当該加水分解物は、(2)のテルペン系化合物とビニルエステル化合物との共重合体が加水分解されることにより、ビニルエステル単位がビニルアルコール単位に変換された共重合体であり、好ましくは、1種のテルペン系化合物と1種のビニルエステル化合物との共重合体の加水分解物である。当該ビニルエステル単位は、すべてビニルアルコール単位に変換されていなくてもよいが、加水分解物の水溶性を確保するために、ビニルエステル単位はビニルアルコール単位に70%以上変換されていることが好ましく、90%以上変換されていることが特に好ましい。
【0019】
当該加水分解物の平均重合度は5〜50であることが必須であり、平均重合度がこの範囲内であれば、重合体が優れた抗菌作用、防黴作用、害虫生物忌避作用を有する。さらに、難揮発性(無臭性)及び効果の持続性の観点から、平均重合度は15〜50であることがより好ましく、25〜50であることがより好ましい。
ここでいう平均重合度の測定方法は、上記と同様である。
【0020】
当該加水分解物の共重合比(テルペン系化合物単位とビニルアルコール単位(完全に加水分解されていない場合は、ビニルエステル化合物単位を含む。)との比、すなわち、1種又は2種以上のテルペン系化合物単位:ビニルアルコール単位の比。)は、モル比で1:2〜1:25であることが必須であり、共重合比がこの範囲内であれば、当該共重合体が優れた抗菌作用、防黴作用、害虫生物忌避作用を有する。さらに共重合比は、官能基の集積効果及び水溶性の観点から、モル比で1:4〜1:25の範囲内であることが好ましく、1:4〜1:10の範囲内であることがより好ましく、1:4〜1:6の範囲内であることが最も好ましい。
ここでいう共重合比の測定方法は、上記と同様である。
【0021】
加水分解物のビニルエステル単位のビニルアルコール単位への変換率は、ピリジンに溶かした無水酢酸による付加(アセチル化)を利用し、その付加量を定量することにより求めることができる。
【0022】
次に本発明のテルペン系重合体の製造方法について説明する。
(I)テルペン系化合物の重合体の製造方法
当該重合体は、重合開始剤を用いて1種又は2種以上のテルペン系化合物をラジカル重合することにより製造される。
【0023】
ラジカル重合の方法は、重合反応が進行する限り特に制限はされず、常法に従い行うことができる。重合方法の例としては、バルク重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合、分散重合、沈殿重合等が挙げられる。重合方法としては、溶媒が不要であり、反応時間を短縮できることから、バルク重合が好ましい。
【0024】
重合開始剤は、通常のラジカル重合に用いられる重合開始剤であれば特に制限なく使用でき、例としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、1,1’−アゾビスシクロヘキサン−1−カルボニトリル、2,2’−アゾビス−2−アミジノプロパン塩酸塩、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル、2,2’−アゾビスイソブチルアミジン塩酸塩、4,4’−アゾビス−4−シアノ吉草酸等のアゾ系開始剤;過酸化ベンゾイル、2,4−ジクロロ過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化アセチル、クメンヒドロペルオキシド、tert−ブチルヒドロペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、p−メンタンヒドロペルオキシド、ピナンヒドロペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、ジイソプロピルペルオキシジカルボナート、tert−ブチルペルオキシラウレート、ジ−tert−ブチルペルオキシフタレート、ジベンジルオキシド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロペルオキシド等の過酸化物系開始剤;ペルオキソ二硫酸アンモニウム、ぺルオキソ二硫酸ナトリウム、ぺルオキソ二硫酸カリウム等のぺルオキソ硫酸塩系開始剤;過酸化ベンゾイル−N,N−ジメチルアニリン、ペルオキソ二硫酸−亜硫酸水素ナトリウム等のレドックス系開始剤等が挙げられる。これらのうち、アゾ系開始剤、ぺルオキソ硫酸塩系開始剤が好ましく、より好ましくは、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ペルオキソ二硫酸アンモニウムである。これらのラジカル重合開始剤は、単独でもまたは2種以上を同時にまたは順次に使用することもできる。
重合開始剤の使用量は、反応条件及び重合体の目的とする重合度に応じて適宜決定されるが、通常は、テルペン系化合物1モルに対し、1/20〜1/100モルであり、好ましくは1/20〜1/50モルである。特にバルク重合において開始剤の量がこの範囲内であれば、平均重合度が5〜50である重合体が得られ易い。
【0025】
バルク重合以外で反応を行う場合、使用される溶媒は、反応を阻害しないものであれば特に制限はなく、例としては、水;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、γ−ブチロラクトン等のケトン類;n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、n−オクチルアルコール、n−ドデシルアルコール等のアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール等のグリコール類;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等のアルコールエーテル類;ギ酸n−プロピル、ギ酸イソプロピル、ギ酸n−ブチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸n−ヘキシル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル等のエステル類;2−オキシプロピオン酸メチル、2−オキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸n−プロピル、2−オキシプロピオン酸イソプロピル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸エチル等のモノオキシカルボン酸エステル類;メトキシ酢酸エチル、エトキシ酢酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル等のアルコキシカルボン酸エステル類;セロソルブアセテート、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート等のセロソルブエステル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;トリクロロエチレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N,N’−ジメチルイミダゾリジノン等のアミド類等が挙げられる。これらの溶媒は、単独でも2種以上を混合して使用してもよい。これらのうち、好ましい溶媒としては、水である。
溶媒の使用量は、濃度が重合度に影響を及ぼすものであるから、重合方法、使用するモノマーの反応性や重合開始剤種等に応じて適宜決定されるが、通常はテルペン系化合物1kgに対し、0.5〜4Lであり、好ましくは1〜3Lである。
【0026】
ラジカル重合の開始反応は、重合開始剤の種類に応じて、常法に従い、熱、光、放射線等により行うことができる。反応操作の容易さの観点から、熱により重合を開始させることが好ましい。
反応温度は、重合反応が進行するのに必要な温度以上であればよく、重合開始剤の分解温度、反応時間、溶媒及びモノマーの沸点等に応じて適宜選択される。好ましい反応温度としては50〜70℃であり、より好ましい反応温度としては60〜70℃である。
反応時間は、反応温度、使用する重合開始剤及びテルペン系化合物の種類・濃度等に応じて適宜選択される。好ましい反応時間としては、12〜500時間であり、より好ましい反応時間としては12〜240時間である。
【0027】
反応終了後、反応混合物より、常法により単離して目的とするテルペン系化合物の重合体を得ることができる。単離方法としては、例えば、反応温度を一旦上昇させて開始剤を完全に分解させた後、減圧下で溶媒や残存モノマー等を留去する方法、重合体に対する多量の貧溶媒に反応混合物を投入し、沈殿物をろ過により回収する方法等が挙げられる。
【0028】
(II)テルペン系化合物とビニルエステル化合物との共重合体の製造方法
テルペン系化合物とビニルエステル化合物との共重合体は、重合開始剤を用いて1種又は2種以上のテルペン系化合物と1種又は2種以上のビニルエステル化合物とをラジカル重合することにより製造される。
【0029】
当該ラジカル重合は、バルク重合、溶媒重合等、上記(I)と同様の重合方法を採用して行うことができ、使用される重合開始剤の種類及び溶媒の種類については上記(I)と同様である。
【0030】
当該ラジカル重合において、重合開始剤の量は、反応条件及び重合体の目的とする重合度に応じて適宜決定されるが、通常は、テルペン系化合物及びビニルエステル化合物の合計1モルに対し、0.001〜0.1モルであり、好ましくは0.01〜0.05モルである。特にバルク重合において開始剤の量がこの範囲内であれば、平均重合度が5〜50である共重合体が得られ易い。
当該ラジカル重合において、溶媒の使用量は、濃度が重合度に影響を及ぼすものであるから、重合方法、使用するモノマーの反応性や重合開始剤種等に応じて適宜決定されるが、通常は、テルペン系化合物及びビニルエステル化合物の合計1kgに対し、1〜5Lであり、好ましくは1〜2Lである。
【0031】
開始反応は、上記(I)と同様熱、光、放射線等により行うことができ、熱により行うことが好ましい。
反応温度は、重合反応が進行するのに必要な温度以上であればよく、重合開始剤の分解温度、反応時間、溶媒及びモノマーの沸点等に応じて適宜選択される。好ましい反応温度としては、40〜70℃であり、より好ましい反応温度としては60〜70℃である。
反応時間は、反応温度、使用する重合開始剤並びにテルペン系化合物及びビニルエステル化合物の種類・濃度等に応じて適宜選択される。好ましい反応時間としては、12〜500時間であり、より好ましい反応時間としては12〜240時間である。
【0032】
反応終了後、上記(I)と同様にして単離して、目的とするテルペン系化合物とビニルエステル化合物との共重合体を得ることができる。
【0033】
(III)テルペン系化合物とビニルエステル化合物との共重合体の加水分解物の製造方法
当該加水分解物は、上記(II)の方法により得られるテルペン系化合物とビニルエステル化合物との共重合体を、アルカリと作用させて加水分解することにより製造することができる。加水分解の方法としては、例えば、ポリ酢酸ビニルをポリビニルアルコールに変換する際に一般的に採用される方法(例えば、テルペン系化合物とビニルエステル化合物との共重合体をメタノール等の溶媒に溶解し、水酸化ナトリウムのメタノール溶液を添加する方法、水酸化ナトリウムのメタノール溶液に前記共重合体を添加する方法等)を採用することができる。
【0034】
本発明のテルペン系重合体は、抗菌剤、防黴剤、害虫生物忌避剤として有用である。
抗菌剤として使用する場合の対象となる菌は、大腸菌、枯草菌等の腐敗菌等であり、特に大腸菌、枯草菌に対して優れた抗菌作用を示す。
防黴剤として使用する場合の対象となる黴は、アオカビ、クロカビ等であり、特にアオカビ、クロカビに対して優れた防黴作用を示す。
害虫生物忌避剤として使用する場合の対象となる害虫生物は、ナメクジ、カタツムリ、シロアリ、アリ、ケラ、ダニ、原生生物(例、アメーバ、ゾウリムシ、アオミドロ等)等であり、特にナメクジ、アリ、原生生物に対して優れた害虫生物忌避作用を示す。
【0035】
抗菌剤、防黴剤、害虫生物忌避剤として使用する場合には、その使用形態には特に制限はなく、使用形態の例としては、(A)本発明のテルペン系重合体を成形体の中に混入させる、(B)本発明のテルペン系重合体を成形体化又はフィルム化する、(C)本発明のテルペン系重合体を溶液化する、(D)本発明のテルペン系重合体を溶液化し、基材(フィルム、テープ、繊維、成形体等)に塗布、又は当該基材を本発明のテルペン系重合体の溶液に浸漬し、乾燥して、基材表面を本発明のテルペン系重合体でコーティングする、(E)本発明のテルペン系重合体を塗料に混合する等が挙げられる。
【0036】
これらの使用態様の具体的な例としては、カテーテルに本発明のテルペン系重合体の溶液を塗布・乾燥してコーティングした抗菌カテーテル、ティッシュを本発明のテルペン系重合体溶液に浸漬し乾燥させた除菌ティッシュ、テープに本発明のテルペン系重合体の溶液を塗布・乾燥してコーティングしたナメクジ忌避テープ及びアリ忌避テープ、本発明のテルペン系重合体を塗料に混合した船底防汚塗料、網を本発明のテルペン系重合体溶液に浸漬してコーティングしたいけす防汚物ネット、本発明のテルペン系重合体の水溶液を含む消毒剤又は化粧水、包装紙を本発明のテルペン系重合体溶液に浸漬し乾燥させた果物包装紙、本発明のテルペン系重合体を成形した排水管等が挙げられる。
【0037】
本発明のテルペン系重合体が、(1)テルペン系化合物の重合体である場合には、テルペン系化合物の重合体は、粘性のある油状であるため、上記(C)〜(E)の使用態様が好ましく、(2)テルペン系化合物とビニルエステル化合物の共重合体である場合には、当該共重合体が油溶性であり、またビニルエステル化合物による成形性の向上効果があるため、上記(A)〜(E)の使用態様が好ましく、(3)テルペン系化合物とビニルエステル化合物の共重合体の加水分解物である場合には、当該加水分解物が水溶性であるため、上記(C)〜(E)の使用態様が好ましく、さらにこの場合、(C)及び(D)の使用態様においては、溶液は水溶液であることがより好ましく、(E)の使用態様においては、塗料は水性塗料であることがより好ましい。
【実施例】
【0038】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限られるものではない。最初に本発明の重合体の合成の実施例について示す。
【0039】
実施例1 イソオイゲノール単独重合体の合成
イソオイゲノール32.86g(200mmol)と、ぺルオキソ二硫酸アンモニウムを0.896g(4mmol)を水30mLに溶かした。これを60℃の水浴中で撹拌しながら7日間加熱した。反応後、適当量の水を加え、よく撹拌した後、デカンテーションで水を除いて未反応の開始剤を除いた。さらに減圧下で濃縮することにより、水と未反応のモノマーを除去し、イソオイゲノール単独重合体を得た(収率85%)。重合体生成の確認はFT−IRにて行った。イソオイゲノール及びイソオイゲノール単独重合体のFT−IR測定の結果を図1及び2に示す。
【0040】
実施例2 シトラール単独重合体の合成
シトラール30.4g(200mmol)にAIBN(4mmol)を加え、60℃で14日間反応を行った。水で洗った後、120℃に加熱し、AIBNを分解除去した。ロータリーエバポレーターで未反応モノマーを除去し、シトラール単独重合体を得た(収率81%)。重合体生成の確認はFT−IRにて行った。シトラール及びシトラール単独重合体のFT−IR測定の結果を図3及び4に示す。
実施例2a〜2c シトラール単独重合体の合成
シトラールとAIBNの仕込みモル比を1:0.005(実施例2a)、1:0.01(実施例2b)、1:0.02(実施例2c)として、実施例2と同様に反応を行い、重合度の異なるシトラール単独重合体を得た。
【0041】
実施例3 リナロール単独重合体の合成
リナロール30.5g(200mmol)にAIBN(4mmol)を加え、60〜70℃で7日間反応を行った。実施例2と同様の回収操作を行い、リナロール単独重合体を得た(収率50%)。
【0042】
実施例4 シトロネロール単独重合体の合成
シトロネロール30g(200mmol)にAIBN(4mmol)を加え、60〜70℃で14日間重合を行った。実施例2と同様の回収操作を行い、シトロネロール単独重合体を得た(収率60%)。
【0043】
実施例5 ゲラニオール単独重合体の合成
ゲラニオール30.5g(200mmol)とペルオキソ二硫酸アンモニウム0.92g(4mmol)の混合物を70℃で7日間反応させた。実施例1と同様の回収操作を行い、ゲラニオール単独重合体を得た(収率85%)。重合体生成の確認はFT−IRにて行った。ゲラニオール及びゲラニオール単独重合体のFT−IR測定の結果を図5及び6に示す。
実施例5a〜5b ゲラニオール単独重合体の合成
ゲラニオールとAIBNの仕込みモル比を1:0.07(実施例5a)、ゲラニオールとペルオキソ二硫酸アンモニウムの仕込みモル比を1:0.02(実施例5b)として、実施例5と同様に反応を行い、重合度の異なるゲラニオール単独重合体を得た。
【0044】
実施例6〜10 その他テルペン系化合物の単独重合体の合成
シトロネラール、ネロール、ネロリドール、ファルネソール、オイゲノールの単独重合体を実施例1又は2と同様の方法で得た。
【0045】
実施例11〜16 イソオイゲノール/酢酸ビニル共重合体及びイソオイゲノール/ビニルアルコール共重合体の合成
イソオイゲノール3g(18.27mmol)及び酢酸ビニル27g(313.6mmol)(モル比1:17)にペルオキソ二硫酸アンモニウム1.5214g(6.661mmol)を加え、60℃で7日間重合を行った。精製は、反応生成物をテトラヒドロフラン(THF)に溶かした後、激しくかき混ぜながら水を加え、沈殿した樹脂を回収して行った。この操作は2〜3回繰り返し、イソオイゲノール/酢酸ビニル共重合体を得た(収率85%)。
得られた共重合体の一部を加水分解するために、イソオイゲノール/酢酸ビニル共重合体1gをメタノール50mLに溶かし、水酸化ナトリウムの飽和メタノール溶液を過剰に加えた。数時間放置し、生じた白色沈殿を遠心分離機で分離し、上澄み液を捨てた。沈殿物をソックスレイ抽出機に移し、メタノールを循環させ、5時間抽出を行い、イソオイゲノール/ビニルアルコール共重合体を得た。この場合の収率は理論量の95%程度であった。
共重合比の異なるイソオイゲノール/酢酸ビニル共重合体及びイソオイゲノール/ビニルアルコール共重合体を得るために、イソオイゲノールと酢酸ビニルのモル比を1:11及び1:5.7とし、開始剤の量をイソオイゲノールと酢酸ビニルの合計に対して1/50モルとし、上記と同様の反応を行った。
【0046】
実施例17〜22 シトラール/酢酸ビニル共重合体及びシトラール/ビニルアルコール共重合体の合成
シトラール3g(19.45mmol)及び酢酸ビニル27g(313.6mmol)(モル比1:16)にペルオキソ二硫酸アンモニウム1.5200g(6.661mmol)を加え、60℃で14日間重合を行った。上記と同様の回収操作を行い、シトラール/酢酸ビニル共重合体を得た(収率73%)。
得られた共重合体の一部を加水分解するために、シトラール/酢酸ビニル共重合体1gを、水酸化ナトリウムを飽和させたメタノール50mLに溶かし、放置した。沈殿を遠心分離機で分離して、シトラール/ビニルアルコール共重合体を得た。
共重合比の異なるシトラール/酢酸ビニル共重合体及びシトラール/ビニルアルコール共重合体を得るために、シトラールと酢酸ビニルのモル比を1:11.1及び1:5.2とし、開始剤の量をシトラールと酢酸ビニルの合計に対して1/50モルとし、上記と同様の反応を行った。
【0047】
実施例23〜28 リナロール/酢酸ビニル共重合体及びリナロール/ビニルアルコール共重合体の合成
リナロール3g(19.4mmol)及び酢酸ビニル27g(313.6mmol)(モル比1:16.4)にペルオキソ二硫酸アンモニウム1.5220g(6.661mmol)を加え、60℃で7日間重合を行った。上記と同様の回収操作を行い、リナロール/酢酸ビニル共重合体を得た(収率80%)。
得られた共重合体の一部を加水分解するために、リナロール/酢酸ビニル共重合体1gに水酸化ナトリウムを飽和させたメタノール25mLに溶かし、60℃で数時間放置した。生成した沈殿を遠心分離機で分離し、メタノールで洗浄し、リナロール/ビニルアルコール共重合体を得た。
共重合比の異なるリナロール/酢酸ビニル共重合体及びリナロール/ビニルアルコール共重合体を得るために、リナロールと酢酸ビニルのモル比を1:10.7及び1:5.3とし、開始剤の量をリナロールと酢酸ビニルの合計に対して1/50モルとし、上記と同様の反応を行った。
【0048】
実施例29〜34 シトロネロール/酢酸ビニル共重合体及びシトロネロール/ビニルアルコール共重合体の合成
シトロネロール3g(19.19mmol)及び酢酸ビニル27g(313.6mmol)(モル比1:16.3)にペルオキソ二硫酸アンモニウム1.519g(6.656mmol)を加え、60〜70℃で14日間重合を行った。上記と同様の回収操作を行い、シトロネロール/酢酸ビニル共重合体を得た(収率86%)。
得られた共重合体の一部を加水分解するために、上記実施例23〜28と同様の操作を行い、シトロネロール/ビニルアルコール共重合体を得た。
共重合比の異なるシトロネロール/酢酸ビニル共重合体及びシトロネロール/ビニルアルコール共重合体を得るために、シトロネロールと酢酸ビニルのモル比を1:10.8及び1:5.4とし、開始剤の量をシトロネロールと酢酸ビニルの合計に対して1/50モルとし、上記と同様の反応を行った。
【0049】
実施例35〜40 ゲラニオール/酢酸ビニル共重合体及びゲラニオール/ビニルアルコール共重合体の合成
ゲラニオール3g(18.27mmol)及び酢酸ビニル27g(313.6mmol)(モル比1:16)にペルオキソ二硫酸アンモニウム1.5201g(6.661mmol)を加え、60〜65℃で7日間重合を行った。上記と同様の回収操作を行い、ゲラニオール/酢酸ビニル共重合体を得た(収率80%)。
得られた共重合体の一部を加水分解するために、上記実施例23〜28と同様の操作を行い、ゲラニオール/ビニルアルコール共重合体を得た。
共重合比の異なるゲラニオール/酢酸ビニル共重合体及びゲラニオール/ビニルアルコール共重合体を得るために、ゲラニオールと酢酸ビニルのモル比を1:10及び1:5.3とし、開始剤の量をゲラニオールと酢酸ビニルの合計に対して1/50モルとし、上記と同様の反応を行った。ゲラニオールと酢酸ビニルのモル比を1:5.3としたものについて、共重合体生成の確認をFT−IRにて行った。FT−IR測定の結果を図7に示す。
【0050】
実施例41〜70 その他のテルペン系化合物/酢酸ビニル共重合体及びその他のテルペン系化合物/ビニルアルコール共重合体の合成
シトロネラール、ネロール、ネロリドール、ファルネソール、オイゲノールについても、酢酸ビニルとの共重合体、ビニルアルコールとの共重合体を実施例11〜40と同様の合成法で得た。
【0051】
上記実施例で得られた本発明の重合体の平均重合度を、以下の方法により求めた。また、テルペン系化合物と酢酸ビニルとの共重合体の共重合比及びテルペン系化合物とビニルアルコールとの共重合体の共重合比を以下の方法により求めた。単独重合体の測定結果を表1に、共重合体の測定結果を表2に示す。
〔平均重合度〕
元素分析装置(パーキンエルマー2400型、CHNS/O)を用い、重合体の末端の窒素の含有量を定量し、計算することにより求めた。
〔共重合比〕
元素分析装置(パーキンエルマー2400型、CHNS/O)を用い、共重合体の炭素の含有率(%)を定量し、計算することにより求めた。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2−1】
【表2−2】
【0054】
本発明の重合体が難揮発性になっていることを確認するために、以下の試験を行った。
試験例1 難揮発性試験
シトラール、実施例2のシトラール単独重合体、実施例19のシトラール/酢酸ビニル共重合体、ゲラニオール、実施例5のゲラニオール単独重合体、実施例37のゲラニオール/酢酸ビニル共重合体について、熱分析装置(株式会社島津製作所製、DTG60)を用い、窒素気流下、10℃/分の昇温速度で加熱し、質量変化を測定することにより熱分析を行った。結果を図8〜13に示す。
図8〜10の結果より、シトラールよりもシトラール単独重合体及びシトラール/酢酸ビニル共重合体の方が、図11〜13の結果より、ゲラニオールよりもゲラニオール単独重合体及びゲラニオール/酢酸ビニル共重合体の方が温度上昇に対する重量減少が少なく、難揮発性であることがわかる。
【0055】
次に、本発明の重合体の抗菌作用、防黴作用、害虫生物忌避作用を、以下の試験例のように評価した。
試験例2 抗菌テスト(大腸菌、枯草菌)
実施例2a〜2c及び5a〜5eで得られた重合度の異なるシトラールの単独重合体及びゲラニオールの単独重合体をジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解させた。この際濃度は、各重合体がDMSO5μLあたり0.5mg、0.05mg、0.005mg含まれるように調整した。この溶液を大腸菌又は枯草菌を接種した固形培地に滴下し、その上にセロハンを置き、抗菌性について調べた。抗菌性の評価は、以下の基準に従って行った。結果を表3に示す。
菌の繁殖が全く認められないもの :+++
セロハンのふちの一部分に僅かに菌の繁殖が認められたもの :++
セロハンのふちの所々に僅かに菌の繁殖が認められたもの :+
セロハンの下部に菌の繁殖が認められたもの :−
また、本試験例の抗菌性評価の実態を図14に示す。
【0056】
【表3】
【0057】
表3の結果より、シトラールの単独重合体及びゲラニオールの単独重合体は、大腸菌、枯草菌に対して抗菌作用を示すことがわかる。
【0058】
試験例3 抗菌テスト(大腸菌、枯草菌)
実施例のテルペン系重合体5mgをジメチルスルホキシド100μLに溶かし、この溶液を5μLとり、セロハン(1cm2 )上に滴下して乾燥させた。寒天培地に大腸菌又は枯草菌を塗布し、本発明の重合体を塗布したセロハンを置き、25℃の暗所に3日間放置し、以下の基準に従って抗菌性の評価を行った。結果を表4に示す。
セロハン及びその近辺に菌の繁殖が全く認められないもの :+++
セロハンのふちの一部分に僅かに菌の繁殖が認められたもの :++
セロハンのふちの所々に僅かに菌の繁殖が認められたもの :+
セロハンの下部に菌の繁殖が認められたもの :−
【0059】
試験例4 抗菌性テスト(雑菌)
実施例のテルペン系化合物単独重合体の1〜5%DMSO溶液、実施例のテルペン系化合物/酢酸ビニル共重合体の1〜5%DMSO溶液、及び実施例のテルペン系化合物/ビニルアルコール共重合体の1〜5%水溶液を調製し、そこへ産業用ワイパー(商品名:キムワイプ(登録商標))を浸した。乾燥後、その産業用ワイパーで拭いた指、未処理の産業用ワイパーで拭いた指、何もしない指を寒天培地になすり付け、2日間放置し、テルペン系化合物/ビニルアルコール共重合体の水溶液で処理した産業用ワイパーで拭いた指を寒天培地になすり付けた場合の雑菌の繁殖具合を調べた。抗菌性の評価を、以下の基準に従って行った。結果を表4に示す。
雑菌の繁殖が全く認められないもの :+++
雑菌の繁殖が僅かに認められたもの :++
未処理の産業用ワイパーで拭いた指を寒天培地になすり
付けた場合と同程度に雑菌の繁殖が認められたもの :+
何もしない指を寒天培地になすり付けた場合の雑菌の繁
殖の度合い :−
【0060】
試験例5 ナメクジ忌避テスト
実施例のテルペン系重合体の500〜1000ppmテトラヒドロフラン溶液を調製し、その溶液にセロハン紙を浸した後、乾燥した。このようにして調製したセロハン紙をビーカーの内面上部に貼り付け、ビーカーの底にナメクジを置き、這い出るかどうかを調べた。ナメクジ忌避効果を、以下の基準により評価した。結果を表4に示す。
セロハン紙の手前でナメクジが動かなくなったもの :+
ナメクジがビーカーから這い出たもの :−
【0061】
試験例6 アリ忌避テスト
ナメクジ忌避テストに用いたと同じセロハン紙を割り箸の根元に巻き付け、上部にイチゴシロップを染み込ませた。この割り箸を蟻の多数見られる地面に差込み、アリがセロハン紙を越えてイチゴシロップを染み込ませた部分に集まるかどうかを調べた。比較のため、塗布していないセロハン紙を使用して同様の試験を行った。アリ忌避効果を、以下の基準により評価した。結果を表4に示す。
セロハン紙を越えたアリがいなかったもの :+
セロハン紙を越えてイチゴシロップを染み込ませた部分に
アリが集まったもの(比較試験と同等) :−
【0062】
試験例7 原生動物忌避テスト
ナメクジ忌避テストに用いた溶液を内容積50mLのサンプル管の内部に塗布した。これに水を入れ、15cmに切ったナズナ(ペンペングサ)を入れ、25℃で2週間放置した。ナズナの枯れ具合と水のにごり具合を調べた。塗布していないサンプル管を使用して行った試験と比較した。原生動物については顕微鏡でも調べた。原生動物忌避効果を、以下の基準により評価した。結果を表4に示す。
ナズナが枯れず、水のにごりがなかったもの :+
ナズナが枯れ、サンプル間の底部ににごりが
あったもの(比較試験と同等) :−
【0063】
試験例8 防黴性テスト
ナメクジ忌避テストに用いた溶液を産業用ワイパー(商品名:キムワイプ(登録商標))に染み込ませ、乾燥させた。この産業用ワイパー上の中心に、水で湿らせた3cm角のパンを置き、パンの乾燥を防ぐためラップで覆い、一週間放置した後、パンの表面のアオカビの生え具合を観察した。
また、クロカビについて、採取してきたクロカビを産業用ワイパーに塗布し、同様の試験を行った。以下の基準に従って抗菌性の評価を行った。結果を表4に示す。
(ただし、テルペン系化合物/ビニルアルコール共重合体のアオカビに対する防黴性テストについては、次の試験例9により評価した。)
パンの上部にすら黴がはえなかったもの :+++
パンの上部に黴がはえたが、産業用ワイパーとパンの
接触面には黴がはえなかったもの :++
パンの表面に黴がはえ、産業用ワイパーとパンの接触
面の所々に僅かに黴がはえたもの :+
パンの全面及び産業用ワイパーに黴がはえたもの :−
【0064】
試験例9 防黴性テスト
10%米糊5mLに、実施例のテルペン系化合物/ビニルアルコール共重合体を濃度0.01〜2%になるように加えた。1ヵ月程度放置し、表面のアオカビのはえ具合を、ビニルアルコール共重合体を加えないものと比較した。抗菌性の評価を、以下の基準に従って行った。結果を表4に示す。
全くアオカビがはえなかったもの :+++
2週間で僅かにアオカビがはえたもの :++
1週間で僅かにアオカビがはえたもの :+
1週間でアオカビが繁殖したもの(比較試験と同等) :−
【0065】
【表4】
【0066】
表4の結果より、実施例のテルペン系重合体が、抗菌作用、防黴作用、害虫生物忌避作用を示すことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明のテルペン系化合物の重合体、ビニルエステル化合物との共重合体及びその加水分解物は、抗菌剤、防黴剤、害虫生物忌避剤として利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】イソオイゲノールのFT−IRスペクトル。
【図2】イソオイゲノール単独重合体のFT−IRスペクトル。
【図3】シトラールのFT−IRスペクトル。
【図4】シトラール単独重合体のFT−IRスペクトル。
【図5】ゲラニオールのFT−IRスペクトル。
【図6】ゲラニオール単独重合体のFT−IRスペクトル。
【図7】ゲラニオール/酢酸ビニル共重合体のFT−IRスペクトル。
【図8】シトラールのTG曲線。
【図9】シトラール単独重合体のTG曲線。
【図10】シトラール/酢酸ビニル共重合体のTG曲線。
【図11】ゲラニオールのTG曲線。
【図12】ゲラニオール単独重合体のTG曲線。
【図13】ゲラニオール/酢酸ビニル共重合体のTG曲線。
【図14】試験例2の抗菌性評価の実態を示す写真。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロキシ基又はホルミル基を有しかつ炭素−炭素二重結合を有するテルペン系化合物の重合体、あるいは当該テルペン系化合物とビニルエステル化合物との共重合体又はその加水分解物である、平均重合度が5〜50のテルペン系重合体であって、当該テルペン系重合体がテルペン系化合物とビニルエステル化合物との共重合体又はその加水分解物である場合、テルペン系化合物と、ビニルエステル化合物又はビニルアルコールとの共重合比が1:2〜1:25(モル比)であるテルペン系重合体。
【請求項2】
平均重合度が15〜50の、テルペン系化合物とビニルエステル化合物との共重合体であり、かつテルペン系化合物とビニルエステル化合物との共重合比が1:2〜1:25(モル比)である、請求項1記載のテルペン系重合体。
【請求項3】
平均重合度が15〜50の、テルペン系化合物とビニルエステル化合物との共重合体の加水分解物であり、かつテルペン系化合物とビニルアルコールとの共重合比が1:2〜1:25(モル比)である、請求項1記載のテルペン系重合体。
【請求項4】
ビニルエステル化合物が、酢酸ビニルである請求項1〜3のいずれかに記載のテルペン系重合体。
【請求項5】
平均重合度が5〜30の、テルペン系化合物の重合体である、請求項1記載のテルペン系重合体。
【請求項6】
テルペン系化合物が、ゲラニオール、シトラール、シトロネラール、シトロネロール、リナロール、ファルネソール、ネロリドール、ネロール、タキソール、オイゲノール、及びイソオイゲノールから選択される少なくとも1種である、請求項1〜5のいずれかに記載のテルペン系重合体。
【請求項7】
テルペン系化合物又はテルペン系化合物とビニルエステル化合物の混合物を、重合開始剤の存在下で反応させる、請求項1記載のテルペン系重合体の製造方法。
【請求項8】
テルペン系化合物とビニルエステル化合物の混合物を、重合開始剤の存在下で反応させ、次いで生成物を加水分解する、請求項1記載のテルペン系重合体の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれかに記載のテルペン系重合体を含有する抗菌剤。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれかに記載のテルペン系重合体を含有する防黴剤。
【請求項11】
請求項1〜6のいずれかに記載のテルペン系重合体を含有する害虫生物忌避剤。
【請求項1】
ヒドロキシ基又はホルミル基を有しかつ炭素−炭素二重結合を有するテルペン系化合物の重合体、あるいは当該テルペン系化合物とビニルエステル化合物との共重合体又はその加水分解物である、平均重合度が5〜50のテルペン系重合体であって、当該テルペン系重合体がテルペン系化合物とビニルエステル化合物との共重合体又はその加水分解物である場合、テルペン系化合物と、ビニルエステル化合物又はビニルアルコールとの共重合比が1:2〜1:25(モル比)であるテルペン系重合体。
【請求項2】
平均重合度が15〜50の、テルペン系化合物とビニルエステル化合物との共重合体であり、かつテルペン系化合物とビニルエステル化合物との共重合比が1:2〜1:25(モル比)である、請求項1記載のテルペン系重合体。
【請求項3】
平均重合度が15〜50の、テルペン系化合物とビニルエステル化合物との共重合体の加水分解物であり、かつテルペン系化合物とビニルアルコールとの共重合比が1:2〜1:25(モル比)である、請求項1記載のテルペン系重合体。
【請求項4】
ビニルエステル化合物が、酢酸ビニルである請求項1〜3のいずれかに記載のテルペン系重合体。
【請求項5】
平均重合度が5〜30の、テルペン系化合物の重合体である、請求項1記載のテルペン系重合体。
【請求項6】
テルペン系化合物が、ゲラニオール、シトラール、シトロネラール、シトロネロール、リナロール、ファルネソール、ネロリドール、ネロール、タキソール、オイゲノール、及びイソオイゲノールから選択される少なくとも1種である、請求項1〜5のいずれかに記載のテルペン系重合体。
【請求項7】
テルペン系化合物又はテルペン系化合物とビニルエステル化合物の混合物を、重合開始剤の存在下で反応させる、請求項1記載のテルペン系重合体の製造方法。
【請求項8】
テルペン系化合物とビニルエステル化合物の混合物を、重合開始剤の存在下で反応させ、次いで生成物を加水分解する、請求項1記載のテルペン系重合体の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれかに記載のテルペン系重合体を含有する抗菌剤。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれかに記載のテルペン系重合体を含有する防黴剤。
【請求項11】
請求項1〜6のいずれかに記載のテルペン系重合体を含有する害虫生物忌避剤。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2006−152035(P2006−152035A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−341222(P2004−341222)
【出願日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成16年5月25日 日本防菌防黴学会発行の「第31回 年次大会要旨集」に発表
【出願人】(502169478)財団法人岡山県産業振興財団 (8)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成16年5月25日 日本防菌防黴学会発行の「第31回 年次大会要旨集」に発表
【出願人】(502169478)財団法人岡山県産業振興財団 (8)
【Fターム(参考)】
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