説明

テルルおよびセレン薄膜のALDのための前駆体の合成および使用

Sb−Te、Ge−Te、Ge−Sb−Te、Bi−Te、およびZn−Te薄膜などのTe含有薄膜を形成するための原子層堆積(ALD)プロセスが提供される。Sb−Se、Ge−Se、Ge−Sb−Se、Bi−Se、およびZn−Se薄膜などのSe含有薄膜を形成するためのALDプロセスも、提供される。式(Te、Se)(SiRのTeおよびSe前駆体が使用されることが好ましい(式中、R、R、およびRはアルキル基である)。これらのTeおよびSe前駆体を合成するための方法も提供される。相変化メモリ素子において当該TeおよびSe薄膜を使用するための方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(共同研究協約の当事者)
本願の請求項に係る発明は、2003年11月14日に署名されたヘルシンキ大学(University of Helsinki)とエーエスエム・マイクロケミストリー(ASM Microchemistry)との間の共同研究協約によって、もしくはその共同研究協約のために、および/または共同研究協約に関連してなされた。当協定は、請求項に係る発明がなされた日およびその日以前に発効しており、請求項に係る発明は、当協定の範囲内で取り組まれた活動の結果としてなされたものである。
【0002】
本願は、概して、原子層堆積により、テルル(Te)またはセレン(Se)を含む薄膜を形成するための方法および化合物に関する。このような膜は、例えば、相変化メモリ(PCM)素子および光学記憶媒体において使用される可能性がある。
【背景技術】
【0003】
TeおよびSeを含む薄膜は、例えば、不揮発性の相変化メモリ(PCM)、太陽電池、および光学記憶材料を含めた多くの異なる用途で使用される。PCMセルの動作は、その活性物質の非晶状態と結晶状態との間の抵抗率の差に基づく。3桁を超える抵抗率の差は、多くの異なる相変化合金によって得ることができる。PCMセルにおけるスイッチングは、一般に、適切な電流パルスを用いてその物質を局所的に加熱することにより成し遂げられる。この電流パルスは、パルスの強度に依存して、その物質を結晶状態または非晶状態にする。
【0004】
実に様々な異なるPCMセル構造が報告されており、その多くは溝または孔のような構造を使用する。スパッタリングはPCM材料を調製する際に典型的に使用されてきたが、より要求が厳しいセル構造はより良好な共形性および堆積プロセスのより多くの制御を要求するであろう。スパッタリングは単純な孔および溝構造を形成することができる可能性があるが、しかしながら、将来のPCM用途は、スパッタリング技術を使用しては形成することができないより複雑な三次元的なセル構造を要求するであろう。より高い精度および制御を有するプロセス、例えば原子層堆積(ALD)が、これらの複雑な構造体を作製するために必要とされるであろう。原子層堆積プロセスを使用することで、上記堆積法に勝る、より良好な共形性および堆積された膜の組成のより良好な制御を含めたより高い精度および制御が与えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
Te含有薄膜およびSe含有薄膜を堆積するための原子層堆積プロセスは、一部は適切な前駆体の欠如のために、限定されている。
【0006】
それゆえ、ALDによってテルルおよびセレンを含む相変化材料の薄膜を制御可能にかつ信頼性高く形成するための方法を求めるニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願明細書に開示される方法は、テルルを含む薄膜を形成するため、およびこのような方法で使用することができる前駆体を製造するための信頼性の高い原子層堆積(ALD)方法を提供する。
【0008】
本発明の1つの態様によれば、TeまたはSeを含有する薄膜を形成するための原子層堆積プロセスが提供される。いくつかの実施形態では、このプロセスは複数の堆積サイクルを含む。いくつかの実施形態では、各堆積サイクルは、第1の気相反応物質のパルスを反応チャンバーに提供して、基体上に当該第1の反応物質のわずかに約1単分子層を形成する工程と、過剰の第1の反応物質を当該反応チャンバーから除去する工程と、第2の気相TeまたはSe反応物質のパルスを当該反応チャンバーに提供し、その結果、当該第2の気相反応物質は当該基体上で当該第1の反応物質と反応して、TeまたはSeを含有する薄膜を形成する工程であって、このTeまたはSe反応物質はTe(SiRまたはSe(SiR(式中、R、R、およびRは1以上の炭素原子を有するアルキル基である)である工程と、過剰の第2の反応物質および(もしあるなら)反応副生成物を当該反応チャンバーから除去する工程とを含む。
【0009】
本発明の別の態様によれば、反応チャンバーの中で基体上にSb含有薄膜を形成するためのALDプロセスが提供される。このプロセスは複数の堆積サイクルを含み、各サイクルは、第1の気相Sb反応物質のパルスを当該反応チャンバーに提供し、当該基体上に当該Sb反応物質のわずかに約1単分子層を形成する工程であって、当該Sb反応物質はSbX(式中、Xはハロゲンである)を含む工程と、過剰の第1の反応物質を当該反応チャンバーから除去する工程と、第2の気相反応物質のパルスを当該反応チャンバーに提供し、その結果、当該第2の気相反応物質は当該基体上で当該Sb反応物質と反応して、Sb含有薄膜を形成する工程と、過剰の第2の反応物質および(もしあるなら)反応副生成物を当該反応チャンバーから除去する工程とを含む。
【0010】
本発明の別の態様によれば、反応チャンバーの中で基体上にGe含有薄膜を形成するためのALDプロセスが提供される。このプロセスは、Ge前駆体を含む第1の気相反応物質パルスを当該反応チャンバーの中へと提供し、当該基体上に当該Ge前駆体のわずかに約1単分子層を形成する工程であって、このGe前駆体は、GeXの式(式中、Xはハロゲン化物(F、Cl、BrまたはI)である)を有する工程と、過剰の第1の反応物質を当該反応チャンバーから除去する工程と、第2の気相反応物質パルスを当該反応チャンバーの中へと提供し、その結果、この第2の気相反応物質は当該基体上でこのGe前駆体と反応する工程と、過剰の第2の反応物質および(もしあるなら)反応副生成物を当該反応チャンバーから除去する工程と、所望の厚さの膜が形成されるまでこの提供する工程および除去する工程を繰り返す工程とを含む。
【0011】
本発明の別の態様によれば、TeまたはSeを含有する薄膜を形成するためのALDプロセスが提供される。このプロセスは、基体を第1の前駆体を含む気相反応物質パルスおよびTeまたはSeを含む第2の前駆体を含む気相反応物質パルスと交互にかつ逐次的に接触させる工程であって、この第2の前駆体は2つのSi原子に結合したTeまたはSeを含む工程と、所望の厚さの薄膜が得られるまでこの交互かつ逐次的なパルスを繰り返す工程と、を含む。
【0012】
本発明の別の態様によれば、TeまたはSe前駆体を製造するためのプロセスが提供される。このプロセスは、IA族金属をTeまたはSeを含む物質と反応させることにより第1の生成物を形成する工程と、その後ハロゲン原子に結合されたケイ素原子を含む第2の反応物質を加え、これにより2つのケイ素原子に結合したTeまたはSeを含む化合物を形成する工程と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】種々のタイプのPCM構造体の概略的な断面を図示する。
【図2】1つの実施形態に係るSb−Te膜を形成するための方法を一般的に図示するフローチャートである。
【図3】1サイクルあたりの未変性の酸化物を具えたケイ素上、およびタングステン上でのSb−Te膜の平均の堆積された厚さ 対 Te前駆体パルス長さのグラフである。
【図4】エネルギー分散型X線(EDX)分析によって測定された、未変性の酸化物を具えたケイ素上のSb−Te膜の組成のグラフである。
【図5】EDX分析によって測定された、タングステン上のSb−Te膜の組成のグラフである。
【図6】ガラス上のSb−Te薄膜のx線回折図である。
【図7】1つの実施形態に係るGe−Te膜を形成するための方法を一般的に図示するフローチャートである。
【図8】ガラス上のGe−Te薄膜の微小角入射x線回折図である。
【図9】1つの実施形態に係るGe−Sb−Te膜を形成するための方法を一般的に図示するフローチャートである。
【図10】1サイクルあたりのGe−Sb−Te膜の平均の堆積された厚さ 対 Ge前駆体パルス長さのグラフである。
【図11】EDX分析によって測定された、Ge−Sb−Te膜の組成のグラフである。
【図12】様々なGe前駆体パルス長さを用いて形成されたガラス上のいくつかのGe−Sb−Te薄膜のx線回折図を集めたものである。
【図13】ガラス上のGe−Sb−Te薄膜の微小角入射x線回折図である。
【図14】1つの実施形態に係るBi−Te膜を形成するための方法を一般的に図示するフローチャートである。
【図15】Bi−Te薄膜の微小角入射x線回折図である。
【図16】1つの実施形態に係るZn−Te膜を形成するための方法を一般的に図示するフローチャートである。
【図17】Zn−Te薄膜の微小角入射x線回折図である。
【図18】1つの実施形態に係るTeおよびSe前駆体を形成するための方法を一般的に図示するフローチャートである。
【図19】Sb−Te薄膜の組成 対 膜成長温度のグラフである。
【図20】タングステン基体およびケイ素基体上でSbTe薄膜の1サイクルあたりの平均成長速度 対 温度のグラフである。
【図21】SbTe薄膜の1サイクルあたりの成長速度 対 Sb前駆体のパルス長さのグラフである。
【図22】SbTe薄膜の1サイクルあたりの成長速度 対 Te前駆体のパルス長さのグラフである。
【図23】基体の表面にわたるGe−Sb−Te(GST)薄膜の組成のグラフである。
【図24】GST薄膜の1サイクルあたりの平均成長速度 対 GeBr前駆体温度のグラフである。
【図25】種々のGeBr前駆体温度についての、基体表面にわたるGST薄膜の1サイクルあたりの平均成長速度のグラフである。
【図26】高アスペクト比の溝パターンで堆積されたGST薄膜の電界放出型走査型電子顕微鏡(FESEM)写真である。
【図27】GST薄膜の微小角入射x線回折図である。
【図28A】GST薄膜の組成 対 GeCl−ジオキサン前駆体のパルス長さのグラフである。
【図28B】GST薄膜の組成 対 Ge−Teサイクル化比率のグラフである。
【図29】エネルギー分散型X線(EDX)分析によって測定された、Cu−In−Se膜の組成のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
上で論じたように、Te含有膜およびSe含有膜は、相変化メモリ(PCM)、太陽電池、および光学記憶材料を含めた様々な用途で使用される。PCMセルは様々な異なる構成を有することができる。典型的には、このPCMセルは、トランジスタと、最上部の金属接点と抵抗の下部電極との間の抵抗とを含む。さらなるPCM構成が、例えばLacaita,Solid−State Electronics、50(2006)24−31による「Phase change memories:State−of−the−art,challenges and perspectives」に開示されている。この文献は、その全体を参照により本願明細書に援用したものとする。図1は、円柱型(pillar)セル、キノコ型(mushroom)セル、および孔開き型(pore)セルを含めたPCMセルの3つの構成の概略的な断面を図示する。
【0015】
太陽電池吸収体材料は、様々な異なる物質を含むことができる。もっとも有望な太陽電池吸収体材料のいくつかは、CuInSe系の黄銅鉱物質である。CuSeも太陽電池で使用することができる。
【0016】
本発明の実施形態は全体的にはPCMに関して論じられるが、当業者なら、本願明細書で教示される原理および利点は他の装置および用途に適用できるということはわかるであろう。さらには、いくつかのプロセスが本願明細書に開示されるが、当業者は、当該プロセスの中の他の開示された工程のうちのいくつかが存在しなくてでさえも、開示された工程の特定のものが有用であることを認識するであろうし、そして同様にその後の、その前のおよび介在する工程を加えることができるということを認識するであろう。
【0017】
テルル化アンチモン(Sb−TeおよびSbTeを含む)、テルル化ゲルマニウム(GeTeを含む)、テルル化ゲルマニウムアンチモン(GST;GeSbTe)、テルル化ビスマスBiTe(BiTeを含む)、およびテルル化亜鉛(ZnTeを含む)薄膜は、原子層堆積(ALD)タイプのプロセスによって基体上に堆積することができる。ALDタイプのプロセスは、前駆体化学物質の制御された自己制御的な表面反応に基づく。前駆体を交互にかつ逐次的に反応チャンバーの中へと供給することにより、気相反応は回避される。気相反応物質は、例えば、反応物質パルス間に過剰の反応物質および/または反応物質副生成物を反応チャンバーから除去することにより、反応チャンバーの中で互いから分離される。
【0018】
テルルは、−2、0、+2、+4、および+6を含めたいくつかの酸化状態を有する。アンチモンは、−3、+3、0および+5を含めたいくつかの酸化状態を有し、そのうちで+3が最も一般的である。−2の酸化状態のTeを有する化学量論的なSb−Te膜はSbTeを含む。ゲルマニウム(Ge)は、0、+2、および+4の酸化状態を有する。
【0019】
Teが−2の酸化状態を有するテルル(Te)化合物は、一般にテルル化物と呼ばれる。Teが0の酸化状態を有するテルル化合物は、一般にテルル化合物と呼ばれる。しかしながら、簡単のために、本願明細書で使用する場合、Teを含む薄膜はテルル化物と呼ばれる。従って、本願明細書でテルル化物と呼ばれる膜は、−2以外の酸化状態を有するTe、例えば、0、+2、+4、および+6の酸化状態を含んでもよい。特定の酸化状態が意図されているのはどの場合かは、当業者には明らかであろう。
【0020】
手短に言うと、基体が反応チャンバーの中へと投入され、一般には低められた圧力で適切な堆積温度へと加熱される。堆積温度は、反応物質の熱分解温度より低いが反応物質の凝縮を回避し所望の表面反応のための活性化エネルギーを与えるのに十分高いレベルに維持される。当然、いずれかの所定のALD反応のための適切な温度範囲は、関与する表面停止および反応物質種に依存する。この場合、この温度は堆積されようとする膜の種類に応じて変わり、好ましくは約400℃以下、より好ましくは約200℃以下、最も好ましくは約20℃〜約200℃である。
【0021】
第1の反応物質は、気相パルスの形態でチャンバーの中へと導かれまたはパルス供与されて、基体の表面と接触される。条件は、この第1の反応物質のわずかに約1単層が自己制御的な態様で当該基体表面上に吸着されるように選択されることが好ましい。適切なパルス供与時間は、特定の状況に基づいて当業者が容易に決定することができる。過剰の第1の反応物質および(もしあるなら)反応副生成物は、不活性ガスを用いてパージすることなどによって、その反応チャンバーから除去される。
【0022】
反応チャンバーをパージすることは、気相前駆体および/または気相副生成物が、例えば真空ポンプを用いてそのチャンバーを排出することにより、および/または反応器内部のガスをアルゴンまたは窒素などの不活性ガスで置き換えることにより、反応チャンバーから除去されるということを意味する。典型的なパージ時間は約0.05〜20秒、より好ましくは約1〜10、さらにより好ましくは約1〜2秒である。しかしながら、必要に応じて、極めて高いアスペクト比の構造または複雑な表面形態を有する他の構造にわたる共形性の高い段階的被覆が必要とされる場合など、他のパージ時間を利用することができる。
【0023】
第2のガス状の反応物質がチャンバーの中へとパルス供与され、そこでこの第2のガス状の反応物質は上記表面に結合された第1の反応物質と反応する。過剰の第2の反応物質および上記表面反応のガス状の副生成物(もしあるなら)は、好ましくは不活性ガスを用いてパージすることにより、および/または排出により、この反応チャンバーから除去される。パルス供与する工程およびパージする工程は、所望の厚さの薄膜が基体上に形成されるまで繰り返され、各サイクルがわずかに1単分子層を残す。反応物質の供与および反応空間のパージを含むさらなる段階が、三元物質などのより複雑な物質を形成するために含まれてもよい。
【0024】
上述のように、各サイクルの各パルスまたは段階は自己制御的であることが好ましい。反応を受ける構造表面を飽和させるために、過剰の反応物質前駆体が各段階において供給される。表面飽和は、(例えば、物理的大きさまたは「立体障害」の制限にさらされている)すべての利用できる反応性部位の反応物質の占有を確実にし、従って優れた段階的被覆を確実にする。
【0025】
過剰の反応物質を除去する工程は、当該反応空間の内容物のいくらかを排出する工程、および/またはヘリウム、窒素または別の不活性ガスを用いて当該反応空間をパージする工程を含むことができる。いくつかの実施形態では、パージする工程は、不活性なキャリアガスをその反応空間へと流し続けつつ、反応性ガスの流れを止める工程を含むことができる。
【0026】
当該ALDタイプのプロセスで用いられる前駆体は、この前駆体が当該反応チャンバーの中へと導かれて基体表面と接触される前にこの前駆体が気相中にある限りは、標準条件(室温および大気圧)下で固体、液体またはガス状の物質であってよい。気化された前駆体を基体上へと「パルス供与(pulsing)」することは、前駆体蒸気が限られた時間のあいだチャンバーの中へと導かれるということを意味する。典型的には、パルス供与時間は約0.05〜10秒である。しかしながら、当該基体の種類およびその表面積によっては、このパルス供与時間は10秒よりもさらに長くてもよい。パルス供与時間は、ある場合には、分の桁であってもよい。最適のパルス供与時間は、特定の状況に基づいて当業者が決定することができる。
【0027】
当該前駆体の質量流量も、当業者が決定することができる。いくつかの実施形態では、金属前駆体の流量は好ましくは約1〜1000seemであるがこれらに限定されず、より好ましくは約100〜500seemである。
【0028】
反応チャンバー中の圧力は、典型的に約0.01〜約20mbar(約0.01〜約20hPa)、より好ましくは約1〜約10mbar(約1〜約10hPa)である。しかしながら、特定の状況が与えられれば当業者が決定できるとおり、ある場合にはこの圧力はこの範囲よりも高くなることもあり、または低くなることもある。
【0029】
膜の堆積を開始する前に、基体は、典型的には適切な成長温度に加熱される。この成長温度は、形成される薄膜の種類、前駆体の物性などに応じて変わる。この成長温度は、形成される薄膜の各種類に言及して下記でより詳細に論じられる。成長温度は、非晶性薄膜が形成されるように堆積された物質についての結晶化温度未満であることができるし、またはそれは、結晶性薄膜が形成されるように結晶化温度を超えることができる。好ましい堆積温度は、反応物質前駆体、圧力、流量、反応器の配置、堆積された薄膜の結晶化温度、および基体の組成(堆積されるべき物質の性質を含む)など(これらに限定されない)の多くの要因に応じて変わってもよい。特定の成長温度は当業者によって選択されてもよい。
【0030】
使用してもよい適切な反応器の例としては、アリゾナ州、フェニックスのエーエスエム・アメリカ(ASM America,Inc.)およびエーエスエム・ヨーロッパ(ASM Europe B.V.)、オランダ、アルメールから入手可能なF−120(登録商標) 反応器、Pulsar(登録商標) 反応器およびAdvance(登録商標) 400シリーズ反応器などの市販のALD装置が挙げられる。これらのALD反応器に加えて、当該前駆体をパルス供与するための適切な装置および手段を具えたCVD反応器を含めた薄膜のALD成長が可能な多くの他の種類の反応器を用いることができる。好ましくは、反応物質は反応チャンバーに到達するまで別々に保たれ、前駆体についての共有されたラインは最小化される。しかしながら、2004年8月30日出願の米国特許出願第10/929,348号、および2001年4月16日出願の同第09/836,674号に記載される予備反応チャンバーの使用など、他の配置は可能である。これらの開示は、参照により本願明細書に援用したものとする。
【0031】
成長プロセスは、任意に、クラスターツールに連結された反応器または反応空間の中で実施することができる。クラスターツールでは、各反応空間は1つの種類のプロセスに専用になっているため、各モジュールの中の反応空間の温度を一定に保つことができ、これは、基体が各実施の前にプロセス温度まで加熱される反応器と比べて、スループットを改善する。
【0032】
自立型反応器はロードロックを具えることができる。その場合、各実施のあいだに反応空間を冷却することは必要ではない。
【0033】
以下の例は、本発明の特定の好ましい実施形態を例証する。それらは、エーエスエム・マイクロケミストリー(ASM Microchemistry Oy)、エスポーにより供給されるF−120(商標) ALD反応器の中で実施された。
【実施例】
【0034】
原子層堆積のためのTeおよびSe前駆体
以下の前駆体のいずれもが、本願明細書に開示される種々のALDプロセスで使用することができる。特に、TeおよびSeを含む前駆体が開示される。
【0035】
いくつかの実施形態では、当該TeまたはSe前駆体は2つのケイ素原子に結合したTeまたはSeを有する。例えば、それは、A(SiR(式中、AはTeまたはSeであり、R、R、およびRは1以上の炭素原子を含むアルキル基である)の一般式を有することができる。このR、R、およびRアルキル基は、揮発性、蒸気圧、毒性などの当該前駆体の所望の物性に基づいて、各リガンドの中で互いに独立に選択することができる。いくつかの実施形態では、R、Rおよび/またはRは水素、アルケニル、アルキニルまたはアリール基であってもよい。いくつかの実施形態では、R、R、Rは、N、O、F、Si、P、S、Cl、BrまたはIなどのヘテロ原子を含有するいずれかの有機基であってもよい。いくつかの実施形態ではR、R、Rはハロゲン原子であってもよい。いくつかの実施形態では、当該Te前駆体はTe(SiMeBu)であり、Se前駆体はSe(SiMeBu)である。他の実施形態では、当該前駆体はTe(SiEt、Te(SiMe、Se(SiEtまたはSe(SiMeである。より好ましい実施形態では、当該前駆体はTe−SiまたはSe−Si結合、最も好ましくはSi−Te−SiまたはSi−Se−Si結合構造を有する。
【0036】
いくつかの実施形態では、当該TeまたはSe前駆体は、[R−Si−A−Si−[X(式中、AはTeまたはSeであり、R、R、R、R、RおよびRは、独立に、アルキル、水素、アルケニル、アルキニルまたはアリール基であるように選択することができる)の一般式を有する。いくつかの実施形態では、R、R、R、R、RおよびRは、N、O、F、Si、P、S、Cl、BrまたはIなどのヘテロ原子も含有するいずれの有機基であってもよい。いくつかの実施形態では、R、R、R、R、RおよびRはハロゲン原子であってもよい。いくつかの実施形態では、XおよびXはSi、N、またはOであってもよい。いくつかの実施形態では、XおよびXは異なる元素である。XがSiである実施形態では、Siは3つのR基に結合されることになる、例えば[RSi]−Si−A−Si−[SiR。XがNである実施形態では、窒素は2つだけのR基に結合されることになる([RN]−Si−A−Si−[NR)。XがOである実施形態では、酸素は1つだけのR基に結合されることになる。例えば[R−O]−Si−A−Si−[O−R。R、R、R、R、RおよびR基は、揮発性、蒸気圧、毒性などの当該前駆体の所望の物性に基づいて、各リガンドの中で互いに独立に選択することができる。
【0037】
いくつかの実施形態では、当該TeまたはSe前駆体は、以下からなる群から選択される:RSi−Si−A−Si−SiR;RN−Si−A−Si−NR;R−O−Si−A−Si−O−R;またはケイ素と当該R基のうちの1つとの間の二重結合を有するRSi−A−SiR。他の実施形態では、当該TeまたはSe前駆体はTeまたはSe原子および複数のSi原子を含む環または環状構造を含むか、または複数のTe原子または複数のSe原子を含む。これらの実施形態では、AはTeまたはSeであり、R、R、R、R、RおよびRは、アルキル、水素、アルケニル、アルキニル、またはアリール基からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、当該TeまたはSe前駆体はA(SiRではない。
【0038】
いくつかの実施形態では、当該TeまたはSe前駆体は上記の式に類似した式を有するが、しかしながらこのSi原子は当該リガンド中のR基のうちの1つへの二重結合(例えばA−Si=)(式中、AはTeまたはSeである)を有する。例えば、この前駆体の式の部分構造は下記で表される:
【化1】

【0039】
いくつかの実施形態では、当該前駆体はSiおよびTeまたはSeの複数の原子を含有する。例えば、1つの実施形態での前駆体の部分構造は下記で表される(式中、AはTeまたはSeである):
【化2】

【0040】
上に示した部分式の中のSi原子は1以上のR基にも結合されてもよい。いくつかの実施形態では、本願明細書に記載されるR基のいずれも、使用することができる。
【0041】
いくつかの実施形態では、当該前駆体は、環状構造または環構造でSi−Te−SiまたはSi−Se−Si結合構造を含有する。例えば、1つの実施形態での前駆体の部分構造は下記で表される(式中、AはTeまたはSeである)。
【化3】

【0042】
上記R基はアルキル、アルケニル、アルキニル、アルキルシリル、アルキルアミンまたはアルコキシド基を含むことができる。いくつかの実施形態では、このR基は置換されているかまたは分岐している。いくつかの実施形態では、このR基は置換されておらず、かつ/または分岐していない。上記の部分式中のSi原子もまた、1以上のR基に結合されていてもよい。いくつかの実施形態では、本願明細書に記載されるR基のいずれも、使用することができる。
【0043】
本発明のTeまたはSe前駆体と組み合わせたALDのための金属前駆体
以下の金属前駆体のいずれも、本願明細書に開示される種々のALDプロセスで使用することができる。本願明細書に開示されるTeおよびSe前駆体と組み合わせて使用することができるいくつかの金属前駆体。特に、金属が窒素、酸素または炭素に結合されておりかつケイ素と結合を形成する能力を有する金属前駆体が好ましい。
【0044】
いくつかの実施形態では、この金属前駆体は金属−有機または有機金属の前駆体である。いくつかの実施形態では、この金属前駆体はハロゲン化物前駆体である。いくつかの実施形態では、当該金属前駆体は付加体形成配位子を有する。
【0045】
好ましい前駆体としては、金属ハロゲン化物、アルキル、アルコキシド、アミド、シリルアミド、アミジネート、シクロペンタジエニル、カルボキシレート、β−ジケトナートおよびβ−ジケトイミンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
金属前駆体の中の好ましい金属としては、Sb、Ge、Bi、Zn、Cu、In、Ag、Au、Pb、Cd、Hgが挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
より好ましいSb前駆体としては、SbCl、SbBrおよびSbIなどのSbハロゲン化物、Sb(OEt)などのSbアルコキシドならびにSbアミドが挙げられる。
【0048】
より好ましいGe前駆体としては、GeClおよびGeBrなどのGeハロゲン化物、GeCl−ジオキサンなどのGeClならびにGeBrの付加体形成した誘導体が挙げられる。
【0049】
より好ましいBi前駆体としては、BiClなどのBiハロゲン化物が挙げられる。
【0050】
より好ましいZn前駆体としては、元素状Zn、ZnClなどのZnハロゲン化物、およびZn(Et)またはZn(Me)などのアルキル亜鉛化合物が挙げられる。
【0051】
より好ましいCu化合物としては、Cu(II)−ピルベートなどのCuカルボキシレート、CuClおよびCuClなどのCuハロゲン化物、Cu(acac)またはCu(thd)などのCu β−ジケトナートならびにCu−アミジネートが挙げられる。
【0052】
より好ましいIn化合物としては、InClなどのInハロゲン化物、およびIn(CHなどのInアルキル化合物が挙げられる。
【0053】
より好ましいPb化合物としてはテトラフェニル鉛PhPbまたはテトラエチル鉛EtPbなどのPbアルキルが挙げられる。
【0054】
ALDサイクルにおけるTeおよびSe化合物についてのパルス供与順序
ALDサイクルにおける反応物質についてのパルス供与順序は、当業者が選択することができる。好ましくは、当該TeまたはSe化合物前駆体パルスは、当該堆積サイクルにおいては、当該金属前駆体パルスおよびパージの後にされる。しかしながら、TeおよびSe化合物についての異なるパルス供与スキームを使用することができる。いくつかの実施形態では、当該TeまたはSe化合物は第2の前駆体としてパルス供与される。いくつかの実施形態では、当該TeまたはSe化合物は第1の前駆体としてパルス供与される。当業者は、Ge−Sb−Teなどの3種以上の元素を含む膜の堆積のための適切なパルス供与スキームを決定することができる。
【0055】
Sb−Teの原子層堆積
いくつかの実施形態では、SbTe、好ましくはSbTe、膜は、好ましくはプラズマの使用なしにALDによって堆積される。しかしながらある場合には、必要に応じて、プラズマが使用されてもよい。例えば、元素状Te膜またはTeに富む膜が所望される場合、水素プラズマ、水素ラジカルまたは原子状水素などのプラズマが使用されてもよい。プラズマについての別の使用は当該膜のドーピングであり、例えばO、NまたはSiによるドーピングは、プラズマを使用して行われてもよい。水素プラズマを用いないALDによってSb−Te薄膜を形成するための信頼性の高い方法は、これまでには当該技術分野で公知ではない。多くの前駆体が膜の成長を生じないかまたは極めて毒性が高いため、ALDプロセスと適合性の適切なTeおよびSb前駆体を見出すことは、ずっと困難であった。水素化物反応物質HTeおよびHSeは、非常に毒性が高いガスであり、従って用いて作業することは困難である。水素−Teおよび水素−Se結合を含有する他の反応物質も、極めて毒性が高いと考えられる。例えば、ヒ素系化合物の毒性は、水素−As結合の数が増加するにつれて増加することが知られている。TeおよびSe化合物の毒性も水素−Teおよび水素−Se結合の数が増加するにつれて増加する可能性が高い。アルキル誘導体RTeおよびRSeは、より毒性が低くかつ揮発性も低い。しかしながら、それらはそれほど反応性ではない。本願明細書に記載される化合物のうちのいくつかは、何らかのレベルの毒性を有する可能性がある。しかしながら、実現可能であれば、十分な反応性とともにより低い毒性を有する前駆体を使用することが好ましい。
【0056】
図2は、1つの実施形態に係るSb−Te薄膜を形成するための方法(20)を一般的に図示するフローチャートである。いくつかの実施形態によれば、SbTe薄膜は、各堆積サイクルが、
Te前駆体を含む第1の気相反応物質パルスを反応チャンバーの中へと提供して、わずかに約1単分子層のTe前駆体を基体上に形成する工程(21)と、
過剰の第1の反応物質を当該反応チャンバーから除去する工程(23)と、
Sb前駆体を含む第2の気相反応物質パルスを当該反応チャンバーの中へと提供して、その結果、このSb前駆体が当該基体上で当該Te前駆体と反応してSbTeを形成する工程(25)と、
過剰の第2の反応物質および(もしあるなら)反応副生成物を当該反応チャンバーから除去する工程(27)と
を含む、複数のSb−Te堆積サイクルを含むALDタイプのプロセスによって反応チャンバーの中で基体上に形成される。
【0057】
これはSb−Te堆積サイクルと呼ぶこともできる。各Sb−Te堆積サイクルは、典型的には多くとも約1単層のSbTeを形成する。このSb−Te堆積サイクルは、所望の厚さの膜が形成されるまで繰り返される(29)。いくつかの実施形態では、約10Å〜約2000Å、好ましくは約50Å〜約500ÅのSb−Te膜が形成される。
【0058】
図示されたSb−Te堆積サイクルはTe前駆体の提供で開始するが、他の実施形態では、この堆積サイクルはSb前駆体の提供で開始する。
【0059】
いくつかの実施形態では、当該反応物質および反応副生成物は、窒素またはアルゴンなどの不活性なキャリアガスを流し続けつつTeまたはSb前駆体の流れを停止することにより、反応チャンバーから除去することができる。
【0060】
好ましくは、当該Te前駆体は、Te(SiR(式中、R、R、およびRは1以上の炭素原子を含むアルキル基である)の式を有する。このR、R、およびRアルキル基は、揮発性、蒸気圧、毒性など、この前駆体の所望の物性に基づいて選択することができる。いくつかの実施形態では、当該Te前駆体はTe(SiMeBu)である。他の実施形態では、この前駆体はTe(SiEtまたはTe(SiMeである。
【0061】
いくつかの実施形態では、当該Sb供給源はSbXである(式中、Xはハロゲン元素である)。より好ましくは、このSb供給源はSbClまたはSbIである。
【0062】
いくつかの実施形態では、当該Te前駆体はTe(SiEtであり、Sb前駆体はSbClである。
【0063】
このSb−Te薄膜を形成する間の基体温度は、好ましくは250℃未満、より好ましくは200℃未満、なおより好ましくは100℃未満である。非晶性薄膜が所望される場合、この温度は、なおさらに約90℃以下へと下げられてもよい。いくつかの実施形態では、堆積温度は約80℃未満、約70℃未満、またはさらに約60℃未満であってもよい。
【0064】
反応器の圧力は、当該堆積のために使用される反応器に大きく依存して変わってもよい。典型的には、反応器圧力は通常の常圧未満である。
【0065】
当業者は、選択された前駆体の特性に基づいて最適な反応物質蒸発温度を決定することができる。本願明細書に記載される方法によって合成することができるTe(SiMeBu)およびTe(SiEtなどの当該Te前駆体についての蒸発温度は、典型的には約40℃〜45℃である。Te(SiMeは、Te(SiMeBu)またはTe(SiEtよりもわずかに高い蒸気圧を有し、従ってTe(SiMe蒸発温度はわずかにより低い約20〜30℃である。SbClなどのSb前駆体についての蒸発温度は、典型的に約30℃〜35℃である。
【0066】
当業者は、選択された前駆体の特性および堆積されたSb−Te薄膜の所望の特性に基づいて、日常的な実験を通して最適な反応物質パルス時間を決定することができる。好ましくは、当該TeおよびSb反応物質は、約0.05〜10秒間、より好ましくは約0.2〜4秒間、最も好ましくは約1〜2秒間、パルス供与される。過剰の反応物質および(もしあるなら)反応副生成物が除去されるパージ工程は、長さが、好ましくは約0.05〜10秒、より好ましくは約0.2〜4秒、最も好ましくは1〜2秒である。
【0067】
当該Sb−Te薄膜の成長速度は、反応条件に依存して変わるであろう。後述するように、初期の実験では、この成長速度は、より高い反応温度については約0.019〜0.025Å/サイクルの間で変わった。より高い成長速度は、より低い温度で観察された。約0.65Å/サイクルという最大成長速度がより低い温度、約60℃で観察された。
【0068】
いくつかの実施形態では、SbTe薄膜が基体上に堆積され、PCMセルにおける活性物質を形成する。SbTe薄膜は、好ましくは約10Å〜約2000Åの厚さを有する。
【0069】
実施例1
SbClおよびTe(SiMeBu)の交互かつ逐次的なパルスを使用してSb−Te薄膜を形成した。パルス長さおよびパージ長さは、SbClについては1秒および2秒であり、Te(SiMeBu)については1秒および4秒であった。Sb−Te薄膜は、およそ100℃でケイ素表面、ソーダ石灰ガラス、およびロジウム上に成長した。このSb−Te薄膜は、約9nm〜約12nmの厚さまで堆積された。
【0070】
各膜のモルフォロジーを、FESEM(電界放出型走査型電子顕微鏡)写真を使用して比較した。それらのFESEM写真では、ケイ素基体上に形成した膜上に目に見える孤立した島がある。しかしながら、ソーダ石灰ガラス、およびロジウム上で成長した膜は連続的であった。
【0071】
実施例2
Te(SiEtをTe供給源として、およびSbClをSb供給源として使用して、Sb−Te膜を、およそ150℃でケイ素上およびタングステン上に堆積した。SbClパルス長さは約1秒であり、パージ長さは約2秒であった。Te(SiEtパルス長さは約0.2秒〜2.0秒の間で変えた一方で、パージ長さは約2秒であった。成長速度および組成を、様々なTe前駆体パルス長さを用いて形成した薄膜について測定した。結果を図3〜図5に図示する。これらの図は、このEDX測定技術に付随する不確実性を見積もる各点についてのエラーバーをも示す。図3に見られるように、1サイクルあたりの成長速度は、Te前駆体のパルス長さに依存して、未変性の酸化物を具えたケイ素上で約0.019〜0.025Å/サイクル、およびタングステン上で約0.023〜0.073Å/サイクルの範囲に及ぶ。これらの膜の正確な組成も、未変性の酸化物を具えたケイ素(図4)およびタングステン(図5)上でのTe前駆体のパルス長さとともに変化した。
【0072】
図6は、以下を含む堆積サイクルを使用して150℃でソーダ石灰ガラス上で成長したSb−Te膜のx線回折図である:
【0073】
SbClの1秒のパルス、
【0074】
2秒のパージ、
【0075】
2秒のTe(SiEtのパルス、および
【0076】
2秒のパージ。
【0077】
SbTe結晶反射(図6)は、SbTe薄膜の中の高結晶化度および強い(001)配向を示す。
【0078】
実施例3
Te(SiEtをTe供給源として、およびSbClをSb供給源として使用して、様々な温度および様々な前駆体パルス長さで基体上にSb−Te膜を堆積した。図19は、様々な成長温度でタングステン基体上に堆積されたSb−Te薄膜の組成のグラフである。このSb−Te薄膜は、各反応物質パルス間での2秒のパージとともにTe(SiEtおよびSbCl反応物質の1秒パルスを使用して堆積した。堆積されたSb−Te膜は、約100℃以下の温度についてはSbTeの化学量論比に近かった。加えて、EDX分析によっては塩素不純物は検出されなかった。約120℃を超えるより高い温度については、このSb−Te膜はSbTeの化学量論比よりもわずかに多いアンチモンを含有していた。
【0079】
図20は、タングステン基体およびケイ素基体上に堆積されたSb−TeについてのSb−Teの1サイクルあたりの平均成長速度 対 成長温度のグラフである。このSb−Te薄膜は、各反応物質パルス間での2秒のパージとともにTe(SiEtおよびSbCl反応物質の1秒パルスを使用して堆積した。観察された成長速度はより低い温度でより高く、約70℃の温度で約0.65Å/サイクルという最大平均成長速度となった。この成長速度は、約120℃を超える基体温度で0.1Å/サイクル未満まで低下した。タングステンおよびケイ素基体上での成長速度は同様の傾向を示したが、しかしながら、タングステン上で観察された成長速度のほうがわずかに高かった。
【0080】
図21および図22は、それぞれSbおよびTeパルス長さを変えたケイ素基体上でのSb−Te薄膜の堆積についての、1サイクルあたりの平均成長速度のグラフである。SbClおよびTe(SiEtをそれぞれSbおよびTe供給源として使用した。この薄膜を60℃の温度で堆積した。1秒のパルス長さを、変化しない反応物質について使用した。前駆体パルス間のパージ長さは2秒であった。両方のグラフは、約0.6Å/サイクルの飽和成長速度を示す。
【0081】
実施例4
Te(SiMeをTe供給源として、およびSbClをSb供給源として使用して、およそ90℃でケイ素上およびタングステン上にSb−Te膜を堆積した。SbClパルス長さは約1秒であり、パージ長さは約2秒であった。Te(SiMeパルス長は約2秒であり、パージ長さは約2秒であった。SbCl供給源温度は約30℃であり、Te(SiMeは室温、約22℃にあった。2000サイクル後、膜をEDXによって分析すると、この膜はSbTeであることが明らかになった。
【0082】
Sb−Seの原子層堆積
他の実施形態では、SbSe、好ましくはSbSe、膜は、Te前駆体の代わりにSe前駆体を使用することにより、実質的に上記のとおりにして形成することができる。このSe前駆体は、好ましくはSe(SiR(式中、R、R、およびRは1以上の炭素原子を有するアルキル基である)の式を有する。当業者は、揮発性、蒸気圧、毒性などの当該前駆体の所望の物性に基づいて、R、R、およびRアルキル基を選択することができる。いくつかの実施形態では、このSe前駆体はSe(SiMeBu)である。他の実施形態では、このSe前駆体はSe(SiEtである。Sb−Se薄膜を形成するためのALDプロセス条件、例えば温度、パルス/パージ時間などは、Sb−Te膜の堆積について上記したとおりであってよい。
【0083】
Ge−TeのALD
他の実施形態では、GeTe、好ましくはGeTe、薄膜が、プラズマを使用することなくALDによって形成される。図7は、いくつかの実施形態に係るGe−Te薄膜を形成するための方法(70)を一般的に図示するフローチャートである。Ge−Te薄膜は、各堆積サイクルが、
Te前駆体を含む第1の気相反応物質パルスを反応チャンバーの中へと提供して、わずかに約1単分子層のTe前駆体を基体上に形成する工程(71)と、
過剰の第1の反応物質を当該反応チャンバーから除去する工程(73)と、
Ge前駆体を含む第2の気相反応物質パルスを当該反応チャンバーの中へと提供して、その結果、このGe前駆体が当該基体上で当該Te前駆体と反応する工程(75)と、
過剰の第2の反応物質および(もしあるなら)反応副生成物を当該反応チャンバーから除去する工程(77)と
を含む、複数のGe−Te堆積サイクルを含むALDタイプのプロセスによって基体上に形成される。
【0084】
これは、Ge−Te堆積サイクルと呼ぶことができる。各Ge−Te堆積サイクルは、典型的には多くとも約1単層のGe−Teを形成する。このGe−Te堆積サイクルは所望の厚さの膜が形成されるまで繰り返される(79)。いくつかの実施形態では、約10Å〜約2000ÅのGe−Te膜が形成される。
【0085】
図示されたGe−Te堆積サイクルは、Te前駆体の提供で開始するが、他の実施形態では、この堆積サイクルはGe前駆体の提供で開始する。
【0086】
いくつかの実施形態では、当該反応物質および反応副生成物は、窒素またはアルゴンなどの不活性なキャリアガスを流し続けつつTeまたはGe前駆体の流れを停止することにより、反応チャンバーから除去することができる。
【0087】
好ましくは、当該前駆体は、Te(SiR(式中、R、R、およびRは好ましくは1以上の炭素原子を有するアルキル基である)の式を有する。当業者は、揮発性、蒸気圧、毒性などの当該前駆体の所望の物性に基づいて、R、R、およびRアルキル基を選択することができる。いくつかの実施形態では、当該Te前駆体はTe(SiMeBu)である。他の実施形態では、当該Te前駆体はTe(SiEtまたはTe(SiMeである。
【0088】
好ましくは、当該Ge供給源はGeXまたはGeX(式中、Xはハロゲン元素である)である。いくつかの実施形態では、このGe供給源はGeBrである。いくつかの実施形態では、このGe供給源は配位性の配位子(ジオキサン配位子など)を有するハロゲン化ゲルマニウムである。好ましくは、この配位性の配位子を有するGe供給源は、二ハロゲン化ゲルマニウム錯体、より好ましくは二塩化ゲルマニウムジオキサン錯体GeCl−Cである。
【0089】
当該Ge−Te薄膜の堆積の間の基体温度は、好ましくは約300℃未満、より好ましくは約200℃未満、なおより好ましくは約150℃未満である。GeBrをこのGe前駆体として使用する場合は、このプロセス温度は典型的には約130℃より高い温度である。
【0090】
いくつかの実施形態では、しかしながら、当該Ge−Te薄膜の堆積の間の基体温度は130℃未満であることが好ましい。例えば、GeCl−C(塩化ゲルマニウムジオキサン)などの配位性の配位子を有するハロゲン化ゲルマニウムをGe前駆体として使用する場合、プロセス温度は約90℃まで低くてもよい。GeCl−Cの蒸発温度は約70℃であり、このため約90℃という低さの堆積温度を許容することができる。
【0091】
当業者は、選択された前駆体の特性、他の反応条件および堆積された薄膜の所望の特性に基づいて、反応物質パルス時間を決定することができる。好ましくは、TeおよびGe反応物質パルスは約0.05〜10秒であり、より好ましくはこの反応物質パルスは約0.2〜4秒であり、最も好ましくは反応物質パルスは長さが約1〜2秒である。当該パージ工程は、長さが好ましくは約0.05〜10秒、より好ましくは約0.2〜4秒、最も好ましくは約1〜2秒である。
【0092】
当該Ge−Te薄膜の成長速度は、前駆体パルスの長さを含めた反応条件に応じて変わってもよい。後で論じるように、初期の実験では、約0.15Å/サイクルという成長速度が、約150℃の基体温度を用いて、未変性の酸化物を具えたケイ素上で観察された。
【0093】
実施例5
Te(SiEtをTe供給源として、およびGeBrをGe供給源として使用して、Ge−Te薄膜を、およそ150℃で未変性の酸化物を具えたケイ素およびガラス基体上に堆積した。
【0094】
1秒のGeBrパルス、
【0095】
2秒のパージ、
【0096】
1秒のTe(SiEtパルス、および
【0097】
2秒のパージ。
【0098】
1サイクルあたりの成長速度は、約0.15Å/サイクルと算出された。図8はガラス上のGeTe膜についてのx線回折図結果を図示し、これはこの膜が弱く結晶性であるということを示す。エネルギー分散型x線(EDX)分析は、この膜は約56%〜約58%Geおよび42%〜44%テルルでわずかにゲルマニウムに富むことを示した。
【0099】
実施例6
Te(SiEtをTe供給源として、およびGeCl−CをGe供給源として使用して、Ge−Te薄膜を、およそ90℃で基体上に堆積した。
【0100】
1秒のGeCl−Cパルス、
【0101】
2秒のパージ、
【0102】
1秒のTe(SiEtパルス、および
【0103】
2秒のパージ。
【0104】
1サイクルあたりの成長速度は約0.42Å/サイクルと算出され、これはGeBrを用いて達成した成長速度よりも高い。X線回折図の結果は、この薄膜がかなりの分率の非晶相のGeTeとともに菱面体GeTeを含んでいるということを示した。エネルギー分散型x線(EDX)分析は、この膜は約54%Geおよび46%テルルでわずかにゲルマニウムに富むことを示した。
【0105】
実施例7
Te(SiMeをTe供給源として、およびGeCl−CをGe供給源として使用して、Ge−Te膜を、およそ90℃でケイ素上およびタングステン上に堆積した。このGeCl−Cパルス長さは約1秒であり、パージ長さは約2秒であった。Te(SiMeパルス長さは約2秒であったのに対し、パージ長さは約2秒であった。GeCl−C供給源温度は約70℃であり、Te(SiMeは室温、約22℃であった。1000サイクル後、膜をEDXによって分析したところ、この膜がGeTeであることが明らかになった。
【0106】
GeSeのALD
他の実施形態では、GeSe、好ましくはGeSe膜は、Te前駆体の代わりにSe前駆体を使用する以外は実質的に上記のとおりにして形成することができる。このSe前駆体は、好ましくはSe(SiR(式中、R、R、およびRは好ましくは1以上の炭素原子を有するアルキル基である)の式を有する。当業者は、揮発性、蒸気圧、毒性などの当該前駆体の所望の物性に基づいて、R、R、およびRアルキル基を選択することができる。いくつかの実施形態では、このSe前駆体はSe(SiMeBu)である。他の実施形態では、このSe前駆体はSe(SiEtである。GeSe薄膜を形成するためのALDプロセス条件、例えば温度、パルス/パージ時間などは、日常的な実験に基づいて当業者が選択することができ、そしてそれらは実質的にGeTe薄膜を形成することについて上記したとおりである。
【0107】
Ge−Sb−TeのALD
いくつかの実施形態によれば、GeSbTe、好ましくはGeSbTe、(GST)薄膜は、複数の堆積サイクルを含むALDタイプのプロセスによって基体上に形成される。特に、いくつかのGe−TeおよびSb−Te堆積サイクルが、所望の化学量論および所望の厚さを有するGST膜を堆積するために提供される。このGe−TeおよびSb−Teサイクルは上記のとおりであってよい。当業者なら、Ge−Teサイクルの前に複数のSb−Te堆積サイクルを連続的に実施することができるということ、および引き続くSb−Te堆積サイクルの前に複数のGe−Te堆積サイクルを連続的に実施することができるということはわかるであろう。特定のサイクル比は、所望の組成を達成するように選択することができる。いくつかの実施形態では、このGST堆積プロセスはGe−Te堆積サイクルで始まり、他の実施形態では、このGST堆積プロセスはSb−Te堆積サイクルで始まる。同様に、このGST堆積プロセスはGe−Te堆積サイクルまたはSb−Te堆積サイクルで終了してもよい。
【0108】
いくつかの好ましい実施形態では、Sb−TeおよびGe−Teサイクルは1:1の比で与えられ、これはそれらが交互に実施されるということを意味する。他の実施形態では、全サイクル数(Ge−TeサイクルおよびSb−Teサイクルを合わせたもの)に対するSb−Teサイクルの比は、堆積されたGST薄膜中のGeおよびSbの組成がおよそ同じであるように選択される。いくつかの実施形態では、Ge−Teサイクルに対するSb−Teサイクルの比は約100:1〜1:100であってよい。
【0109】
図9は、1つのこのような実施形態に係るGe−Sb−Te(GST)薄膜を形成するための方法(90)を一般的に図示するフローチャートである。図9に図示するように、この方法は、
Te前駆体を含む第1の気相反応物質パルスを反応チャンバーの中へと提供して、当該Te前駆体のわずかに約1単分子層を基体上に形成させるする工程(91)と、
過剰の第1の反応物質を当該反応チャンバーから除去する工程(92)と、
Sb前駆体を含む第2の気相反応物質パルスを当該反応チャンバーの中へと提供して、その結果、このSb前駆体が、当該基体上で当該Te前駆体と反応する工程(93)と、
過剰の第2の反応物質および(もしあるなら)反応副生成物を当該反応チャンバーから除去する工程(94)と、
Te前駆体を含む第3の気相反応物質パルスを当該反応チャンバーの中へと提供して、当該Te前駆体のわずかに約1単分子層を当該基体上に形成させる工程(95)と、
過剰の第3の反応物質を当該反応チャンバーから除去する工程(96)と、
Ge前駆体を含む第4の気相反応物質パルスを当該反応チャンバーの中へと提供して、その結果、当該Ge前駆体が当該基体上で当該Te前駆体と反応する工程(97)と、
過剰の第4の反応物質および(もしあるなら)反応副生成物を当該反応チャンバーから除去する工程(98)と
を含む。
【0110】
この提供する工程および除去する工程は所望の厚さの膜が形成されるまで繰り返される(99)。
【0111】
プロセス条件、前駆体、およびパルス/パージ時間は、上で論じられたプロセス条件、前駆体、およびパルス/パージ時間と実質的に同様である。
【0112】
いくつかの実施形態では、このGST薄膜は堆積されたままで結晶性である可能性がある。他の実施形態では、非晶性のGST薄膜が堆積される。いくつかの実施形態では、この非晶性薄膜は窒素などの不活性ガスの存在下でアニーリングされてもよい。この基体および薄膜は、アニーリング工程の間、堆積温度よりも高い温度で加熱されてもよい。好ましくは、このアニーリング工程の間の基体温度は約130℃より上である。より好ましくは、このアニーリング工程の間の基体温度は約250℃より上である。最も好ましくはこのアニーリング工程の間の温度は300℃より上である。このアニーリング工程は、薄膜の結晶性を変える可能性がある。いくつかの実施形態では、非晶性薄膜はアニーリング工程の間に結晶化する可能性がある。いくつかの実施形態では、結晶性のGST薄膜の結晶性は、このアニーリング工程の間に変わる可能性がある。
【0113】
実施例8
Sb−TeおよびGe−Teの交互のALDサイクルによって、Ge−Sb−Te薄膜を基体の上に形成した。Sb−Te:Ge−TeALDサイクルの比は1:1であった。基体温度は約150℃であった。反応物質ならびにパルス長さおよびパージ長さは以下のとおりであった。
【0114】
SbCl 1秒、
【0115】
パージ 2秒、
【0116】
Te(SiEt 1秒、
【0117】
パージ 2秒、
【0118】
GeBr 0.2〜2秒(変えた)
【0119】
パージ 2秒、
【0120】
Te(SiEt 1秒、および
【0121】
パージ 2秒。
【0122】
これらの実験からの結果を図10〜図13に示す。図10は、全体の膜の厚さをTe(SiEtパルスの数で割ることにより算出した1サイクルあたりの平均堆積厚さを図示する。1サイクルあたりに堆積された膜の厚さは、0.05〜0.15Å/サイクルの間で変化した。図11は、堆積されたGe−Sb−Te薄膜の原子組成を図示する。このGe−Sb−Te組成は、0.6〜2.0秒のGeBrパルス長さについては化学量論に近い。膜の成長速度はSb−Te単独については約0.025Å/サイクルであったので、これらの結果は、Sb−Te堆積はSb−Te単独上よりもGe−Te上でのほうがより効率的であるということを示す。
【0123】
このGe−Sb−Te薄膜のモルフォロジーおよび結晶構造もGeBrパルス長さに応じて変化した。図12は、GeBrの0.2秒、1.0秒、および1.5秒パルスを用いて形成したGe−Sb−Te薄膜についてのx線回折図を示す。GeBrの0.2秒のパルスを用いて形成した膜は、SbTe結晶性構造に対応するピークを有する結晶構造を示す。GeBrのパルス長さが増加するにつれて、この膜はGe−Sb−Teにより近い結晶構造を発達させた。図13は、GeBrの1秒のパルスを用いて形成した膜についての微小角入射x線回折図を示す。この膜はGeSbTeの結晶反射を呈する。
【0124】
1サイクルあたりの成長速度を種々のGeBr供給源温度について検討した。プロセス条件はこの実施例で上に記載したとおりであり、GeBrパルス長さは1秒であった。図24は1サイクルあたりの成長速度 対 90℃〜125℃の間のGeBrの供給源温度を図示する。温度が高くなるにつれて、1サイクルあたりの成長速度は増加した。
【0125】
この基体にわたるこのGe−Sb−Te薄膜の組成も検討した。図23は、当該基体上の種々の場所でのこのGe−Sb−Te薄膜の組成のグラフである。これらの平坦な線は、このGe−Sb−Te薄膜の組成がこの基体にわたって一貫しているということを示す。図25は、90℃、100℃、および120℃の基体堆積温度についての、当該基体上の異なる場所での1サイクルあたりの平均成長速度のグラフである。1サイクルあたりの平均成長速度は温度の上昇に伴って増加し、この基体にわたってわずかに変化した。
【0126】
実施例9
Sb−TeおよびGe−Teの交互のALDサイクルによって、Ge−Sb−Te薄膜を基体上に形成した。Sb−Te:Ge−Te ALDサイクルの比は1:1であった。GeCl−Cの物性のため、より低い堆積温度が可能である。反応物質ならびにパルス長さおよびパージ長さは以下のとおりであった。
【0127】
SbCl 1秒、
【0128】
パージ 2秒、
【0129】
Te(SiEt 1秒、
【0130】
パージ 2秒、
【0131】
GeCl−C 1〜6秒(変えた)
【0132】
パージ 2秒、
【0133】
Te(SiEt 1秒、および
【0134】
パージ 2秒。
【0135】
これらの実験からの結果を図26〜図28に示す。
【0136】
図26は、高アスペクトの溝構造に堆積されたGST薄膜のFESEM写真である。堆積条件は実質的にこの実施例で上に記載したとおりであったが、しかしながら、Ge−Te/(Ge−Te+SbTe)循環比率0.33を使用した。このFESEM写真は、約65nmの溝構造における膜の厚さはこの構造体の異なる部分においても実質的に同じであるということを示す。この写真は、これらの前駆体を使用するALDプロセスは高アスペクト比の構造(溝構造など)の中で均一かつ非常に共形性の薄膜を堆積することができるということを示す。
【0137】
図27は、高温XRD測定に供された23%Ge、28%Sb、および49%Teの組成を有するGST薄膜の微小角入射x線回折図である。このGST薄膜は、窒素の流れの存在下でアニーリングし、その場でXRD測定を行ったものである。このGST薄膜は、約90℃の温度で堆積されたままでは非晶性であった。このGST薄膜は130℃で結晶化し始め、準安定性の岩塩構造に属する反射を呈し始めた。アニーリング温度が徐々に上昇するにつれて、この結晶構造は安定な六方晶系の相へと変化した。立方晶相および六方晶相は図27で明瞭に見分けられる。
【0138】
図28Aは、GeCl−ジオキサンの様々なパルス長さを用いて堆積したGST薄膜の組成を図示する。図28Aは、GeCl−ジオキサンパルス長さが使用した反応器の中で約4秒未満である場合、GeCl−ジオキサンのパルス長さを増加させると当該GST薄膜の中のGeの量が増加し、Teの量が減少するということを示す。図28Aはまた、GeCl−ジオキサンパルス長さが使用した反応器の中で約4秒を超える場合は、膜組成が飽和するということも示す。飽和は、異なる反応器では異なるGeCl−ジオキサンパルス長さで起こる可能性がある。図28Bは、種々のGe−Te/(Ge−Te+Sb−Te)循環比率についての種々のGST薄膜の組成のグラフである。図28Bは、約0.35という循環比率は、GeおよびSbのほぼ等しい組成を有するGST薄膜を生じるはずであるということを示す。
【0139】
実施例10
70℃および90℃の成長温度でSbCl、Te(SiEtおよびGeCl−ジオキサンを前駆体として使用することにより、Pulsar(登録商標) 2000反応器の中で200mmケイ素基体上にSb−TeおよびGe−Sb−Te膜を堆積した。SbCl、Te(SiEtおよびGeCl−ジオキサンについての前駆体温度は、それぞれ45℃、60℃および60℃であった。SbCl、Te(SiEtおよびGeCl−ジオキサンについての前駆体パルス時間は、それぞれ約0.5秒、0.5秒および約5〜約15秒であった。SbCl、Te(SiEtおよびGeCl−ジオキサンについての前駆体パージ時間は1秒〜20秒の範囲で変えた。膜は、この200mmウェーハにわたって比較的良好な均一性の完全被覆を有していた。EDXは、この膜がほぼ化学量論的なSbTeおよびGeSbTeであるということを明らかにした。
【0140】
Ge−Sb−SeのALD
他の実施形態では、GeSbSe、好ましくはGeSbSe膜が、Ge−Sb−Teについての上記のプロセスにおけるTe前駆体の代わりにSe前駆体を使用することにより、形成できる。このSe前駆体は、好ましくは、Se(SiR(式中、R、R、およびRは好ましくは1以上の炭素原子を有するアルキル基である)の式を有する。当業者は、揮発性、蒸気圧、毒性などの当該前駆体の所望の物性に基づいて、R、R、およびRアルキル基を選択することができる。いくつかの実施形態では、このSe前駆体は、Se(SiMeBu)であり、他の実施形態ではSe(SiEtである。Ge−Sb−Se薄膜を形成するためのALDプロセス条件は、実質的にGST膜を形成することについて上に記載したとおりであり、Sb−Se堆積サイクルがSb−Te堆積サイクルの代わりに用いられ、Ge−Se堆積サイクルがGe−Te堆積サイクルの代わりに用いられる。
【0141】
Bi−TeのALD
図14は、いくつかの実施形態に係るBi−Te薄膜を形成するための方法(140)を一般的に図示するフローチャートである。BiTe、好ましくはBiTe、薄膜は、各Bi−Te堆積サイクルが、
Te前駆体を含む第1の気相反応物質パルスを反応チャンバーの中へと提供して、わずかに約1単分子層のTe前駆体を基体上に形成する工程(141)と、
過剰の第1の反応物質を当該反応チャンバーから除去する工程(143)と、
Bi前駆体を含む第2の気相反応物質パルスを当該反応チャンバーの中へと提供して、その結果、このBi前駆体が当該基体上でTe前駆体と反応する工程(145)と、
過剰の第2の反応物質および(もしあるなら)反応副生成物を当該反応チャンバーから除去する工程(147)と
を含む、複数のBi−Te堆積サイクルを含むALDタイプのプロセスによって基体上に形成される。
【0142】
各Bi−Te堆積サイクルは、典型的には、多くとも約1単層のBi−Teを形成する。このBi−Te堆積サイクルは、所望の厚さの膜が形成されるまで繰り返される(149)。いくつかの実施形態では、約10Å〜約2000ÅのBi−Te膜が形成される。
【0143】
図示されたBi−Te堆積サイクルはTe前駆体の提供で開始するが、他の実施形態では、この堆積サイクルはBi前駆体の提供で開始する。
【0144】
いくつかの実施形態では、当該反応物質および反応副生成物は、窒素またはアルゴンなどの不活性なキャリアガスを流し続けつつTeまたはBi前駆体の流れを停止することにより、反応チャンバーから除去することができる。
【0145】
好ましくは、当該Te前駆体は、Te(SiR(式中、R、R、およびRは1以上の炭素原子を含むアルキル基である)の式を有する。このR、R、およびRアルキル基は、揮発性、蒸気圧、毒性などの当該前駆体の所望の物性に基づいて、選択することができる。いくつかの実施形態では、当該Te前駆体はTe(SiMeBu)である。他の実施形態では、この前駆体はTe(SiEtである。
【0146】
好ましくは、当該Bi前駆体は、BiX(式中、Xはハロゲン元素である)の式を有する。いくつかの実施形態では、このBi前駆体はBiClである。
【0147】
このBi−Te堆積サイクルの間のプロセス温度は、好ましくは300℃未満、より好ましくは200℃未満である。パルスおよびパージ時間は、典型的には5秒未満、好ましくは約1〜2秒である。当業者は、特定の状況に基づいてパルス/パージ時間を選択することができる。
【0148】
実施例11
BiClおよびTe(SiEt前駆体を使用して、BiTe膜を、約175℃の温度でケイ素およびガラス基体上に堆積した。この前駆体のパルスおよびパージ時間は、それぞれ1秒および2秒であった。1サイクルあたりの平均成長速度は約1.2Å/サイクルであった。この膜の分析により、膜組成はBiTeについての化学量論比に近いことが示された。図15は、BiTe膜の微小角入射x線回折図であり、この図は、この膜が結晶性であること、およびBiTeに対応するピークが顕著であるということを示した。
【0149】
Bi−SeのALD
他の実施形態では、Bi−Teについて上に記載したALDプロセスにおけるTe前駆体の代わりにSe前駆体を使用することにより、BiSe、好ましくはBiSe膜が形成される。当該Se前駆体は、好ましくは、Se(SiR(式中、R、R、およびRは好ましくは1以上の炭素原子を有するアルキル基である)の式を有する。当業者は、揮発性、蒸気圧、毒性などの当該前駆体の所望の物性に基づいて、R、R、およびRアルキル基を選択することができる。いくつかの実施形態では、このSe前駆体はSe(SiMeBu)であり、他の実施形態では、このSe前駆体はSe(SiEtである。温度、パルス/パージ時間などのBi−Se薄膜を形成するためのALDプロセス条件は、当業者が選択することができ、実質的にBi−Teについて上に記載したとおりである。
【0150】
Zn−TeのALD
図16は、Zn−Te薄膜を形成するための方法(160)を一般的に図示するフローチャートである。ZnTe、好ましくはZnTe、薄膜は、各Zn−Te堆積サイクルが、
Te前駆体を含む第1の気相反応物質パルスを反応チャンバーの中へと提供して、わずかに約1単分子層のTe前駆体を基体上に形成する工程(161)と、
過剰の第1の反応物質を当該反応チャンバーから除去する工程(163)と、
Zn前駆体を含む第2の気相反応物質パルスを当該反応チャンバーの中へと提供して、その結果、このZn前駆体が当該基体上で当該Te前駆体と反応する工程(165)と、
過剰の第2の反応物質および(もしあるなら)反応副生成物を当該反応チャンバーから除去する工程(167)と
を含む、複数のZn−Te堆積サイクルを含むALDタイプのプロセスによって基体上に形成することができる。
【0151】
このZn−Teサイクルは、所望の厚さの膜が形成されるまで繰り返される(169)。いくつかの実施形態では、約10Å〜約2000ÅのZn−Te膜が形成される。
【0152】
図示されたZn−Te堆積サイクルはTe前駆体の提供で開始するが、他の実施形態では、この堆積サイクルはZn前駆体の提供で開始する。
【0153】
いくつかの実施形態では、当該反応物質および反応副生成物は、窒素またはアルゴンなどの不活性なキャリアガスを流し続けつつTeまたはZn前駆体の流れを停止することにより、反応チャンバーから除去することができる。
【0154】
好ましくは、当該Te前駆体は、Te(SiR(式中、R、R、およびRは好ましくは1以上の炭素原子を有するアルキル基である)の式を有する。当業者は、揮発性、蒸気圧、毒性などの当該前駆体の所望の物性に基づいて、R、R、およびRアルキル基を選択することができる。いくつかの実施形態では、当該Te前駆体はTe(SiMeBu)である。他の実施形態では、当該Te前駆体はTe(SiEtである。
【0155】
好ましくは、当該Zn前駆体は、ZnX(式中、Xはハロゲン元素またはアルキル基である)の式を有する。いくつかの実施形態では、このZn前駆体はZnClまたはZn(Cである。
【0156】
Zn−Te堆積サイクルの間のプロセス温度は、好ましくは500℃未満、より好ましくは約400℃である。パルスおよびパージ時間は、典型的には、5秒未満、好ましくは約0.2〜2秒、より好ましくは約0.2〜1秒である。当業者は、特定の状況に基づいて適切なパルス/パージ時間を選択することができる。
【0157】
実施例12
ZnClおよびTe(SiEtの交互かつ逐次的なパルスを使用して、Zn−Te膜を、約400℃の堆積温度で未変性の酸化物を具えたケイ素およびガラス基体上に堆積した。それぞれ0.4秒および0.5秒のパルス長さおよびパージ長さを両方の前駆体について使用した。
【0158】
1サイクルあたりの平均成長速度は、約0.6Å/サイクルであった。この膜のEDX分析により、この膜は47%Znおよび53%Teの組成で化学量論に近いことが示された。図17は、形成されたZn−Te薄膜のx線回折図であり、この膜が立方晶構成を有する結晶性であるということを例証する。
【0159】
Zn−SeのALD
他の実施形態では、上に概略を示した堆積サイクルにおけるTe前駆体の代わりにSe前駆体を使用することにより、ZnSe、好ましくはZnSe、膜を形成することができる。当該Se前駆体は、好ましくは、Se(SiR(式中、R、R、およびRは好ましくは1以上の炭素原子を有するアルキル基である)の式を有する。当業者は、揮発性、蒸気圧、毒性などの当該前駆体の所望の物性に基づいて、R、R、およびRアルキル基を選択することができる。いくつかの実施形態では、このSe前駆体はSe(SiMeBu)であり、他の実施形態ではSe(SiEtである。温度、パルス/パージ時間などのZn−Se薄膜を形成するためのALDプロセス条件は、当業者が選択することができ、実質的にZn−Teの堆積について上に記載したとおりである。
【0160】
実施例13
反応物質の交互かつ逐次的なパルスを使用して、Cu−In−Se膜を、約340℃の堆積温度で、未変性の酸化物を具えたケイ素基体およびガラス基体の両方の上に堆積した。反応物質はCuCl、InCl、およびSe(SiEtであり、それぞれ325℃、275℃および35℃の供給源温度にあった。Cu−Seサイクルは、CuClおよびSe(SiEtの交互かつ逐次的なパルスを含んでいた。In−Seサイクルは、InClおよびSe(SiEtの交互かつ逐次的なパルスを含んでいた。(In−Se)サイクルに対する(Cu−Se)サイクルのパルス供与比は1:1であった。それぞれ1秒および2秒のパルス長さおよびパージ長さをすべての前駆体について使用した。図29は、堆積されたCu−In−Se膜のEDX分析を示す。EDX分析により、堆積された膜はCu、InおよびSeからなることが明らかになった。
【0161】
セレン化物およびテルルを含む化合物のALD
表1は、種々のプロセス条件下でガラス、およびケイ素基体上に堆積したテルルまたはセレンを含む種々の薄膜を示す。表1の中の薄膜は、Te(SiEtをテルル供給源として、またはSe(SiEtをセレン供給源として使用して堆積した。
【0162】
【表1】

【0163】
表1に示すように、成長温度は、いくつかの膜を堆積するためにはより高かった。なぜなら、それらの金属前駆体はより高い蒸発温度を有したためである。これらの結果は、Te(SiEtおよびSe(SiEt前駆体がより高い温度で、例えばおよそ300℃〜400℃で使用できるということを確認する。一般に、表1で形成した薄膜は良好な成長速度を呈した。さらに、これらの薄膜のほとんどについての組成は理論的な化学量論比に近かった。
【0164】
一般に、これらの堆積された薄膜は、薄膜表面にわたって目に見える変動がほとんどない良好な品質にあるように見えた。
【0165】
堆積された銅−セレン(Cu−Se)薄膜は、Cu(II)−ピルベートを銅前駆体として用いた場合に興味深い結果を示した。堆積された薄膜の化学量論は成長温度とともに変動した。CuSeは、165℃の成長温度で堆積された。Cu2−xSeは、200℃の成長温度で堆積された。CuSeは、300℃の成長温度で堆積された。
【0166】
いくつかの実施形態では、上記の薄膜のいずれも、対応する前駆体のパルスを当該成長プロセスに加えることにより、相変化メモリ用途用の所望のドーパント、例えばN、O、Si、S、In、Ag、Sn、Au、As、Bi、Zn、Se、Te、Ge、SbおよびMnでドーピングすることができる。
【0167】
例えば、CuInSeのような太陽電池吸収体材料については、膜の特性を改変して所望の特性を達成するために、Inのうちのいくらかは、例えばGaで置き換えることができ、Seのうちのいくらかは、例えばSで置き換えることができる。
【0168】
いくつかの実施形態では、太陽電池吸収体材料はTeを含むことができる。いくつかの実施形態では太陽電池吸収体材料はSeを含むことができる。
【0169】
いくつかの実施形態では、Cu−Se薄膜は太陽電池吸収体材料として使用することができる。他の実施形態では、Cu−Se薄膜は、例えば上記のとおりのドーピングにより、または当該Cu−Se薄膜の特性の他の改変により、太陽電池吸収体材料を形成するように改変することができる。いくつかの実施形態では、Cu−In−Se薄膜は太陽電池吸収体材料として使用することができる。いくつかの実施形態では、InまたはSe原子のうちのいくらかまたはすべてを置き換えるためにドーピングしたCu−In−Se薄膜は、太陽電池吸収体材料として使用される。
【0170】
いくつかの実施形態では、上記の薄膜のいずれも、ケイ素、酸化ケイ素、未変性の酸化物を具えたケイ素、ガラス、半導体、金属酸化物、および金属などのいずれの種類の基体または表面の上に堆積することができる。ある場合には、タングステン表面などの金属表面は、図3に示すとおりのより高い成長速度のため、好ましい。他の適切な金属表面としては、TiN、TaN、Ti、Ta、Nb、NbN、MoN、Mo、WN、Cu、Co、Ni、Fe、Alおよび貴金属が挙げられるが、これらに限定されない。
【0171】
Te(SiRまたはSe(SiRは、ALDプロセスに対して必要とされる比較的低温での適切な蒸気圧、および比較的高い分解温度を有する。従って、これらの前駆体は本願明細書に記載される膜以外の他の膜のALDに対しても使用することができる。
【0172】
前駆体合成
本願明細書に記載されるALDプロセスで使用される前駆体のいくつかを製造するための方法も提供される。いくつかの実施形態では、TeまたはSeを含む前駆体は、2つのケイ素原子に結合したTeまたはSe原子を有する。特に、Te(SiRまたはSe(SiR(式中、R、R、およびRは好ましくは1以上の炭素原子を有するアルキル基である)の式を有するTeおよびSe前駆体を合成することができる。いくつかの実施形態では、合成されるTe前駆体はTe(SiMeBu)であり、他の実施形態ではTe(SiEtである。合成されるSe前駆体は、いくつかの実施形態ではSe(SiMeBu)であり、他の実施形態ではSe(SiEtである。
【0173】
いくつかの実施形態では、合成されるTeまたはSe前駆体は、A(SiR(式中、AはTeまたはSeであり、R、R、およびRは1以上の炭素原子を含むアルキル基である)の一般式を有する。このR、R、およびRアルキル基は、揮発性、蒸気圧、毒性などの当該前駆体の所望の物性に基づいて、各リガンドの中で互いに独立に選択することができる。いくつかの実施形態では、R、Rおよび/またはRは水素、アルケニル、アルキニルまたはアリール基であってもよい。いくつかの実施形態では、R、R、Rは、N、O、F、Si、P、S、Cl、BrまたはIなどのヘテロ原子を含有するいずれかの有機基であってもよい。いくつかの実施形態では、R、R、Rはハロゲン原子であってもよい。いくつかの実施形態では、当該Te前駆体は、Te(SiMeBu)であり、当該Se前駆体はSe(SiMeBu)である。他の実施形態では、当該前駆体はTe(SiEt、Te(SiMe、Se(SiEtまたはSe(SiMeである。より好ましい実施形態では、この前駆体はTe−SiまたはSe−Si結合、最も好ましくはSi−Te−SiまたはSi−Se−Si結合構造を有する。
【0174】
いくつかの実施形態では、合成されるTeまたはSe前駆体は2つのケイ素原子に結合したTeまたはSe原子を有する。例えば、この前駆体は、[R−Si−A−Si−[X(式中、AはTeまたはSeであり、R、R、R、R、RおよびRは、独立に、アルキル、水素、アルケニル、アルキニルまたはアリール基であるように選択することができる)の一般式を有していてもよい。いくつかの実施形態では、R、R、R、R、RおよびRは、N、O、F、Si、P、S、Cl、BrまたはIなどのヘテロ原子を含有するいずれの有機基であってもよい。いくつかの実施形態では、R、R、R、R、RおよびRはハロゲン原子であってもよい。いくつかの実施形態では、XおよびXはSi、N、またはOであってもよい。いくつかの実施形態では、XおよびXは異なる元素である。XがSiである実施形態では、Siは3つのR基に結合されることになる。例えば[RSi]−Si−A−Si−[SiR。XがNである実施形態では、窒素は2つだけのR基に結合されることになる([RN]−Si−A−Si−[NR)。XがOである実施形態では、酸素は1つだけのR基に結合されることになる。例えば[R−O]−Si−A−Si−[O−R。R、R、R、R、RおよびR基は、揮発性、蒸気圧、毒性などの当該前駆体の所望の物性に基づいて、各リガンドの中で互いに独立に選択することができる。
【0175】
いくつかの実施形態では、合成されるTeまたはSe前駆体は上記の式に類似した式を有するが、しかしながらそのSi原子は当該リガンド中のR基のうちの1つへの二重結合(例えばA−Si=。式中、AはTeまたはSeである)を有する。例えば、この前駆体の式の部分構造は下記で表される:
【化4】

【0176】
いくつかの実施形態では、合成される前駆体はSiおよびTeまたはSe複数の原子を含有する。例えば、1つの実施形態における前駆体の部分構造は下記で表される(式中、AはTeまたはSeである):
【化5】

【0177】
上に示した部分式の中のSi原子は1以上のR基にも結合されてもよい。いくつかの実施形態では、本願明細書に記載されるR基のいずれも、使用することができる。
【0178】
いくつかの実施形態では、合成される前駆体は、環状構造または環構造でSi−Te−SiまたはSi−Se−Si結合構造を含有する。例えば、1つの実施形態での前駆体の部分構造は下記で表される(式中、AはTeまたはSeである)。
【化6】

【0179】
R基はアルキル、アルケニル、アルキニル、アルキルシリル、アルキルアミンまたはアルコキシド基を含むことができる。いくつかの実施形態では、このR基は置換されているかまたは分岐している。いくつかの実施形態では、このR基は置換されておらず、かつ/または分岐していない。上記の部分式中のSi原子もまた、1以上のR基に結合されていてもよい。いくつかの実施形態では、本願明細書に記載されるR基のいずれも、使用することができる。
【0180】
図18は、TeまたはSe前駆体を形成するための方法(180)を一般的に図示するフローチャートである。いくつかの実施形態では、このTeまたはSe前駆体を製造するためのプロセスは、
IA族金属をTeまたはSeを含む物質と反応させることにより、第1の生成物を形成する工程(181)と、
その後、RSiX(式中、R、RおよびRは1以上の炭素原子を有するアルキル基であり、Xはハロゲン原子である)を含む第2の反応物質を当該第1の生成物に加え(183)、これによりA(SiR(式中、AはTeまたはSeである)を形成する工程(185)と
を含む。
【0181】
いくつかの実施形態では、Li、Na、KなどのIA族元素状金属は、元素状TeまたはSeと組み合わせられる。いくつかの実施形態では、当該TeまたはSeを含む物質は、元素状TeまたはSeである。好ましくは、このIA族元素は粉末または薄片として準備され、上記元素状TeまたはSeは金属粉末として準備される。
【0182】
いくつかの実施形態では、テトラヒドロフラン(THF、(CHO)などの溶媒がこのIA族金属およびTeまたはSeに加えられる。好ましくは、IA金属の溶解性を促進し、それゆえTeまたはSeを還元することを助けもするために、ナフタレン(C10)がこの混合物に加えられる。
【0183】
いくつかの実施形態では、この混合物は加熱され、この反応の完結までアルゴンなどの不活性ガス下でこの溶液を還流させるために、還流冷却器が使用される。この還流期間の間に、この溶液の色は、透明かつ無色から紫色(リチウムを反応物質として用いる場合。他のIA族元素は異なる色を生成する)へ、次いで白色沈殿物を伴う透明な溶液へと変化する。所望の中間体生成物が形成された後に、溶液を冷却することができる。
【0184】
いくつかの実施形態では、次いでケイ素含有化合物がこの混合物に加えられる。好ましくは、このケイ素含有化合物はハロゲン原子に結合されたケイ素原子を含む。好ましくは、当該ケイ素含有化合物は、RSiX(式中、R、R、およびRは好ましくは1以上の炭素原子を有するアルキル基であり、Xは好ましくはハロゲン原子である)の式を有する。R、R、およびRは、蒸気圧、融点などを含めた最終生成物の所望の前駆体特性に基づいて、選択することができる。いくつかの実施形態では、R、Rおよび/またはRは水素、アルケニル、アルキニルまたはアリール基であってもよい。いくつかの実施形態では、R、R、Rは、N、O、F、Si、P、S、Cl、BrまたはIなどのヘテロ原子を含有するいずれかの有機基であってもよい。いくつかの実施形態では、R、R、Rはハロゲン原子であってもよい。いくつかの実施形態では、R、R、およびRはすべて同じ基であってもよい。他の実施形態では、R、R、およびRはすべて異なる基であってもよい。いくつかの実施形態では、R、R、およびRはすべてエチル基(Et)である。他の実施形態では、RおよびRはメチル基であり、Rはtertブチル基(MeBu)である。いくつかの実施形態では、XはClである。いくつかの好ましい実施形態では、ケイ素含有化合物は、EtSiClまたはBuMeSiClの式を有する。
【0185】
いくつかの実施形態では、当該ケイ素含有化合物は[R−Si−X(式中、R、RおよびRは、独立に、アルキル、水素、アルケニル、アルキニルまたはアリール基であるように選択することができ、Xは好ましくはハロゲン原子である)の一般式を有する。いくつかの実施形態ではR、RおよびRは、N、O、F、Si、P、S、Cl、BrまたはIなどのヘテロ原子を含有するいずれかの有機基であってもよい。いくつかの実施形態ではR、RおよびRはハロゲン原子であってもよい。いくつかの実施形態ではXはSi、N、またはOであってもよい。XがSiである実施形態では、Siは3つのR基に結合されることになる。例えば[RSi]−Si−X。XがNである実施形態では、窒素は2つだけのR基に結合されることになる([RN]−Si−X)。XがOである実施形態では、酸素は1つだけのR基に結合されることになる。例えば[R−O]−Si−X。R、RおよびR基は、揮発性、蒸気圧、毒性などの当該前駆体の所望の物性に基づいて、各リガンドの中で互いに独立に選択することができる。
【0186】
いくつかの実施形態では、当該ケイ素含有化合物は上記の式に類似した式を有するが、しかしながらこのSi原子は、当該リガンド中のR基のうちの1つへの二重結合(例えば結合構造X−Si=R。式中、Rは、独立にアルキル、水素、アルケニル、アルキニルまたはアリール基であるように選択することができ、Xは好ましくはハロゲン原子である)を有する。いくつかの実施形態では、RはN、O、F、Si、P、S、Cl、BrまたはIなどのヘテロ原子を含有するいずれかの有機基であってもよい。例えば、当該ケイ素含有化合物の式の部分構造は下記で表される:
【化7】

【0187】
いくつかの実施形態では、当該ケイ素含有化合物は上記の式に類似した式を有するが、しかしながらこのSi原子はケイ素に結合した2つのX原子を有する(例えば結合構造X−Si−R。式中、RおよびRは、独立に、アルキル、水素、アルケニル、アルキニルまたはアリール基であるように選択することができ、Xは好ましくはハロゲン原子である)。いくつかの実施形態では、RおよびRは、N、O、F、Si、P、S、Cl、BrまたはIなどのヘテロ原子を含有するいずれかの有機基であってもよい。例えば、当該ケイ素含有化合物の式の部分構造は下記で表される:
【化8】

【0188】
いくつかの実施形態では、当該ケイ素含有化合物は上記の式に類似した式を有するが、しかしながらR基を介して橋架けした2つのSi原子が存在する(例えば結合構造X−Si−R−Si−X。式中、R基はアルキル、アルケニル、アルキニル、アルキルシリル、アルキルアミンまたはアルコキシド基を含むことができる)。いくつかの実施形態では、このR基は置換されているかまたは分岐している。いくつかの実施形態では、このR基は置換されておらず、かつ/または分岐しておらず、Xは好ましくはハロゲン原子である。いくつかの実施形態では、Rは、N、O、F、Si、P、S、Cl、BrまたはIなどのヘテロ原子を含有するいずれの有機基であってもよい。
【0189】
いくつかの実施形態では、当該ケイ素含有化合物は、RSi−Si−X、RN−Si−X、R−O−Si−X、ケイ素と当該R基のうちの1つとの間の二重結合を有するRSi−Xからなる群から選択されるか、またはR−Si−Xを含む(式中、R、R、およびRはアルキル、水素、アルケニル、アルキニル、またはアリール基からなる群から選択され、Xはハロゲン原子である)。いくつかの実施形態では、当該ケイ素含有化合物は式XSiRの化合物ではない。
【0190】
当該混合物は、反応が完結するまで継続的に撹拌される。この反応が実質的に完結した後、最終生成物は、いずれの溶媒、副生成物、過剰の反応物質、または最終生成物の中では所望されないいずれの他の化合物から分離され単離される。生成物は、標準の温度および圧力で固体または液体である可能性がある。
【0191】
以下は、Te化合物を合成する実施例であるが、同様の合成方法を、対応するSe化合物を合成するために使用することができる。
【0192】
実施例14
Te(SiMeBu)を以下のプロセスによって製造した。まず、1.15gのリチウム(165.68mmol)を、600mlのシュレンク瓶(Schlenk bottle)の中の10.58g(89.22mmol)のTe粉末および0.7g(5.47mmol)のナフタレンを伴う300mlの乾燥THFに加えた。得られた混合物を加熱し、還流冷却器をこの瓶に取り付けた。この溶液を、アルゴン雰囲気で還流させた。この溶液は、最初は、未溶解の固体のLiおよびTeを伴った無色であった。この還流期間の間に、この混合物は紫色に変わり、次いで白色沈殿物を伴う透明な溶液に戻った。この白色沈殿物が形成した後、この溶液を0℃へと冷却した。
【0193】
次に、25.00gのBuMeSiCl(165.87mmol)をこの混合物に加えた。この混合物を、絶え間なく室温で一晩撹拌した。次いでこの混合物を乾固するまでエバポレーションした。100mlのトルエンをこの乾燥混合物に加えて、この混合物の濾過を容易にした。次いでトルエン溶液を濾過した。次いで、生成物を含むこの濾液を、乾固するまでエバポレーションし、真空下で加熱してこの粗生成物の中に含有されるあらゆる残留ナフタレンを除去した。回収した生成物は27.34gあり、これより約77%という算出した反応効率を得た。この生成物の組成は、核磁気共鳴(NMR)、質量分析(MS)および単結晶x線回折によってTe(SiMeBu)であると確認した。生成したTe(SiMeBu)は44℃の融点をもつ固体であった。
【0194】
実施例15
Te(SiEtを、実施例14に記載したプロセスと同様のプロセスによって製造した。まず、0.23gのリチウムを、600mlのシュレンク瓶の中の2.12gのTe粉末および0.3gのナフタレンを伴う300mlの乾燥THFに加えた。得られた混合物を加熱し、還流冷却器をこの瓶に取り付けた。この溶液を、アルゴン雰囲気で約4時間還流させた。この溶液は、最初は、未溶解の固体のLiおよびTeを伴った無色であった。この還流期間の間に、この混合物は紫色に変わり、次いで白色沈殿物を伴う透明な溶液に戻った。この白色沈殿物が形成した後、この溶液を0℃へと冷却した。
【0195】
次に、5.0gのEtSiClをこの混合物に加えた。この混合物を、絶えず室温で一晩撹拌した。最終生成物を、他の反応物質およびあらゆる副生成物から単離した。回収した生成物は4.8gあり、約80%という反応効率を得た。この生成物の組成は、核磁気共鳴(NMR)、質量分析(MS)によってTe(SiEtであると確認した。この化合物は、室温では茶色がかった液体であった。
【0196】
本発明の範囲から逸脱せずに種々の改変および変更をなすことができるということは、当業者には分かるであろう。類似の他の改変および変更は、添付の特許請求の範囲によって画定される本発明の範囲の内に包含されるということが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の堆積サイクルを含む、反応チャンバーの中で基体上にTeまたはSeを含有する薄膜を形成するための原子層堆積(ALD)方法であって、各サイクルは、
第1の気相反応物質のパルスを前記反応チャンバーに提供して、前記基体上に前記第1の反応物質のわずかに約1単分子層を形成する工程と、
過剰の第1の反応物質を前記反応チャンバーから除去する工程と、
第2の気相TeまたはSe反応物質のパルスを前記反応チャンバーに提供して、その結果、前記第2の気相反応物質は前記基体上で前記第1の反応物質と反応して、TeまたはSeを含有する薄膜を形成する工程であって、前記TeまたはSe反応物質はTe(SiRまたはSe(SiR(式中、R、R、およびRは1以上の炭素原子を有するアルキル基である)である工程と、
過剰の第2の反応物質および(もしあるなら)反応副生成物を前記反応チャンバーから除去する工程と
を含む、方法。
【請求項2】
前記TeまたはSe反応物質の中のTeまたはSeは水素原子に結合していない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記TeまたはSe反応物質の中のTeまたはSeは、−2の酸化状態を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記TeまたはSe反応物質は、Te(SiEt2、Te(SiMe、Se(SiEt、またはSe(SiMeである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の気相反応物質はSbを含み、前記第2の気相反応物質はTeを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記堆積温度は約80℃未満である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の気相反応物質はSbClである、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の気相反応物質パルスはGeを含み、堆積された薄膜はGe−Teを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の気相反応物質はGeBrまたはGeCl−Cである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
複数のGe−Te堆積サイクルをさらに含み、前記Ge−Te堆積サイクルは、
Ge前駆体を含む第1の気相反応物質パルスを前記反応チャンバーの中へと提供して、前記基体上に前記Ge前駆体のわずかに約1単分子層を形成する工程と、
過剰の第1の反応物質を前記反応チャンバーから除去する工程と、
Te前駆体を含む第2の気相反応物質パルスを前記反応チャンバーの中へと提供して、その結果、前記Te前駆体は前記基体上で前記Ge前駆体と反応する工程であって、前記Te前駆体は式Te(SiR(式中、R、R、およびRはアルキル基である)を有する工程と、
を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記Ge−Te堆積サイクルおよびSb−Te堆積サイクルは約1:1の比で実施される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記Ge前駆体はGeX(式中、Xはハロゲンである)またはGeCl−Cを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の気相反応物質はBiを含み、堆積された膜はBi−Teを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の気相反応物質はBiX(式中、Xはハロゲンである)である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の気相反応物質はBiClである、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の気相反応物質はZnを含み、堆積された膜はZn−Teを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の気相反応物質はZnX(式中、Xはハロゲンである)である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の気相反応物質はZnClである、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
堆積された膜は相変化メモリを構成する、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
堆積された膜は、Sb−Te、Ge−Te、Ge−Sb−Te、Bi−Te、またはZn−Teのうちの1以上を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
堆積された膜はGe−Sb−Teを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
堆積された薄膜は、O、N、Si、S、In、Ag、Sn、Au、As、Bi、Zn、Se、Te、Ge、Sb、およびMnを含む1以上のドーパントでドーピングされたSb−Te、Ge−Te、Ge−Sb−Te、Bi−Te、またはZn−Teのうちの1以上を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
堆積された膜は太陽電池吸収体を構成する、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記第1の気相反応物質はBiを含み、堆積された膜はBi−Seを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記第1の気相反応物質はBiX(式中、Xはハロゲンである)である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記第2の気相反応物質はSe(SiEtである、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記第1の気相反応物質はCuを含み、堆積された膜はCu−Seを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記第2の気相反応物質はSe(SiEtである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記第1の気相反応物質はCuClである、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
複数のIn−Se堆積サイクルをさらに含み、前記In−Se堆積サイクルは、
In前駆体を含む第1の気相反応物質パルスを前記反応チャンバーの中へと提供して、前記基体上に前記In前駆体のわずかに約1単分子層を形成する工程と、
過剰の第1の反応物質を前記反応チャンバーから除去する工程と、
Se前駆体を含む第2の気相反応物質パルスを前記反応チャンバーの中へと提供して、その結果、前記Se前駆体は前記基体上で前記In前駆体と反応する工程であって、前記Se前駆体は、式Se(SiR(式中、R、R、およびRはアルキル基である)を有する工程と、
を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記In−Se堆積サイクルおよびCu−Se堆積サイクルは約1:1の比で実施される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記In前駆体はInX(式中、Xはハロゲンである)であり、前記Se前駆体はSe(SiEtである、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
複数の堆積サイクルを含む、反応チャンバーの中で基体上にSb含有薄膜を形成するための原子層堆積(ALD)方法であって、各サイクルは、
第1の気相Sb反応物質のパルスを前記反応チャンバーの中へと提供して、前記基体上に前記Sb反応物質のわずかに約1単分子層を形成する工程であって、前記Sb反応物質はSbX(式中、Xはハロゲンである)を含む工程と、
過剰の第1の反応物質を前記反応チャンバーから除去する工程と、
第2の気相反応物質のパルスを前記反応チャンバーに提供して、その結果、前記第2の気相反応物質は前記基体上で前記Sb反応物質と反応して、Sb含有薄膜を形成する工程と、
過剰の第2の反応物質および(もしあるなら)反応副生成物を前記反応チャンバーから除去する工程と、
を含む方法。
【請求項34】
反応チャンバーの中で基体上にGe含有薄膜を形成するための方法であって、
Ge前駆体を含む第1の気相反応物質パルスを前記反応チャンバーの中へと提供して、前記基体上に前記Ge前駆体のわずかに約1単分子層を形成する工程であって、前記Ge前駆体は、GeX(式中、Xはハロゲン化物(F、Cl、BrまたはI)である)の式を有する工程と、
過剰の第1の反応物質を前記反応チャンバーから除去する工程と、
第2の気相反応物質パルスを前記反応チャンバーの中へと提供して、その結果、前記第2の気相反応物質は前記基体上で前記Ge前駆体と反応する工程と、
過剰の第2の反応物質および(もしあるなら)反応副生成物を前記反応チャンバーから除去する工程と、
所望の厚さの膜が形成されるまで前記提供する工程および除去する工程を繰り返す工程と、
を含む方法。
【請求項35】
TeまたはSeを含有する薄膜を形成するための原子層堆積方法であって、
基体を、第1の反応物を含む気相反応物質パルスおよびTeまたはSeを含む第2の前駆体を含む気相反応物質パルスに交互にかつ逐次的に接触させる工程であって、前記第2の前駆体は2つのSi原子に結合したTeまたはSeを含む工程と、
所望の厚さの薄膜が得られるまで、前記交互かつ逐次的なパルスを繰り返す工程と、
を含む方法。
【請求項36】
前記第2の前駆体の中のTeまたはSeは−2の酸化状態を有する、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記第2の前駆体の中のTeまたはSeは水素原子に結合していない、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記第2の前駆体は、Te(SiRでもなくSe(SiRでもない(式中、R、R、およびRは1以上の炭素原子を有するアルキル基である)、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
前記第2の前駆体は、RSi−Si−A−Si−SiR、RN−Si−A−Si−NR、またはR−O−Si−A−Si−O−R(式中、AはTeまたはSeであり、R、R、R、R、RおよびRは、アルキル、水素、アルケニル、アルキニル、またはアリール基からなる群から選択される)の式を有する、請求項35に記載の方法。
【請求項40】
前記第2の前駆体は、R基への二重結合を有するケイ素原子を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項41】
前記第2の前駆体は、複数のTe原子または複数のSe原子を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項42】
前記第2の前駆体は、TeまたはSe原子および複数のSi原子を含む環構成または環状構成を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項43】
TeまたはSe前駆体を製造するための方法であって、
IA族金属をTeまたはSeを含む物質と反応させることにより、第1の生成物を形成する工程と、
その後、ハロゲン原子に結合されたケイ素原子を含む第2の反応物質を加え、これにより2つのケイ素原子に結合したTeまたはSeを含む化合物を形成する工程と、
を含む方法。
【請求項44】
第1の生成物を形成する工程は、溶媒としてTHFを、触媒としてナフタレンを使用することを含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記第2の反応物質はRSiX(式中、R、RおよびRは1以上の炭素原子を有するアルキル基である)を含む、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
前記第2の反応物質はEtSiClを含み、Te(SiEtが形成される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記第2の反応物質はBuMeSiClを含み、Te(SiBuMeが形成される、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
前記第2の反応物質はMeSiClを含み、Te(SiMeが形成される、請求項45に記載の方法。
【請求項49】
前記IA族金属はLiである、請求項43に記載の方法。
【請求項50】
前記TeまたはSeを含む物質は元素状TeまたはSeである、請求項43に記載の方法。
【請求項51】
前記第2の反応物質は[RSi]−Si−X、[RN]−Si−X、または[R−O]−Si−X(式中、R、RおよびRはアルキル、水素、アルケニル、アルキニルまたはアリール基を含む)を含む、請求項43に記載の方法。
【請求項52】
前記第2の反応物質はケイ素と前記R基のうちの1つとの間の二重結合を有するRSiXを含む、請求項43に記載の方法。
【請求項53】
前記第2の反応物質はX−Si−R(式中、RおよびRはアルキル、水素、アルケニル、アルキニルまたはアリール基である)を含む、請求項43に記載の方法。
【請求項54】
前記第2の反応物質はX−Si−R−Si−X(式中、Rはアルキル、水素、アルケニル、アルキニルまたはアリール基である)を含む、請求項43に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28A】
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【図28B】
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【図29】
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【公表番号】特表2011−518951(P2011−518951A)
【公表日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−506454(P2011−506454)
【出願日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際出願番号】PCT/US2009/041561
【国際公開番号】WO2009/132207
【国際公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(501380070)エーエスエム インターナショナル エヌ.ヴェー. (26)
【氏名又は名称原語表記】ASM INTERNATIONAL N.V.
【Fターム(参考)】