説明

テレビ用緩衝材、テレビ用緩衝材の製造方法、および、テレビ

【課題】従来のシリコーンゴムを用いたテレビ用緩衝材と同程度の滑り性を有すると共に、層構成をより単純なものとすること。
【解決手段】シリコーンゴムを主成分として含む発泡ゴム層240と、樹脂フィルム216と、粘着材層214と、がこの順に積層され、発泡ゴム層240の厚み方向における発泡構造が略均一であり、発泡ゴム層240の樹脂フィルム216が設けられた側と反対側の面に発泡セルに起因する凹部が存在し、かつ、発泡ゴム層240の樹脂フィルム216が設けられた側と反対側の面の摩擦力として測定された最大引っ張り荷重が3N以下であるテレビ用緩衝材、その製造方法、および、当該テレビ用緩衝材を用いたテレビ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テレビ用緩衝材、テレビ用緩衝材の製造方法、および、テレビに関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶テレビなどのガラス製のディスプレイパネルを備えたテレビでは、ディスプレイパネルと、このディスプレイパネルを支持するフレームとの間に、ディスプレイパネルの外縁部に沿ってシリコーンゴムやウレタン樹脂などを用いた緩衝材が配置されている(特許文献1、2参照)。
【0003】
一方、ディスプレイパネルが、フレームに対して非平行に取り付けられると、ディスプレイパネルの画像表示面が湾曲したり、斜めになる等により、画像が歪んで見えることになる。このため、テレビ用緩衝材には、平坦性が求められる。また、ディスプレイパネルの電源がONの状態では、自身が発熱することで、ディスプレイパネルを構成するガラス基板が熱膨張する。これに加えて、テレビが夏場の高温環境下に放置された場合も、ディスプレイパネルを構成するガラス基板が熱膨張する。それゆえ、ガラス基板とテレビ用緩衝材とが粘着すると、両部材の熱膨張係数が異なるため、ディスプレイパネルの温度変化によってディスプレイパネルに歪みが生じることになる。このため、テレビ用緩衝材には、ディスプレイパネルを構成するガラス基板に対して、滑り性に優れることも要求される。
【0004】
しかしながら、従来のウレタン樹脂製のテレビ用緩衝材は、耐久性や圧縮永久ひずみがあまりよくなく、平坦性に劣る場合がある。これに対して、従来のシリコーンゴムを用いたテレビ用緩衝材は、従来のウレタン樹脂製のテレビ用緩衝材よりも耐久性や圧縮永久ひずみが良いので平坦性に優れている。この従来のシリコーンゴムを用いたテレビ用緩衝材は、粘着材層、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム、接着材層、低硬度のシリコーンゴム層、および、高硬度のシリコーンゴム層をこの順に積層した層構成を有している。ここで、粘着材層はフレームに対してテレビ用緩衝材を固定するために設けられ、低硬度のシリコーンゴム層はクッション性を確保するために設けられる。
【0005】
なお、シリコーンゴムは、硬度が低いほど粘着性が高く、硬度が高いほど粘着性が低い特性を有することが知られている。ここで、低硬度のシリコーンゴム層は粘着性が高いため、滑り性は確保できない。このため、この低硬度のシリコーンゴム層上に、低粘着性の高硬度のシリコーンゴム層をさらに設けることで、テレビ用緩衝材とディスプレイパネルとの間の滑り性を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−092362号公報
【特許文献2】特開2008−033093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のシリコーンゴムを用いたテレビ用緩衝材は、5層を積層した複雑な層構成である。このため、生産に際しては、少なくとも各層に対応または関連した工程の実施が必要となるため、工程数が多くなる。このため、従来のシリコーンゴムを用いたテレビ用緩衝材は、生産性が低く、コストが高い。したがって、従来のシリコーンゴムを用いたテレビ用緩衝材と同程度の滑り性を確保したまま、生産性を向上し、低コスト化を図るためには、層構成をより単純化する必要がある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、従来のシリコーンゴムを用いたテレビ用緩衝材と同程度の滑り性を有すると共に、層構成のより単純なテレビ用緩衝材、その製造方法、および、当該テレビ用緩衝材を用いたテレビを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は以下の本発明により達成される。すなわち、
本発明のテレビ用緩衝材の製造方法は、少なくとも一方の面が粗面であるカバー基材と、該カバー基材の粗面に接して設けられ、未加硫シリコーンゴムと発泡剤とを主成分として含む未加硫ゴム層と、を有する第一のシート、および、キャリア基材と、該キャリア基材の片面に接して設けられた粘着材層と、該粘着材層上に設けられた樹脂フィルムと、を有する第二のシートを、第一のシートの未加硫ゴム層が設けられた面と、第二のシートの樹脂フィルム層が設けられた面と、を圧着することで、第一のシートと第二のシートとを貼り合わせた積層体を形成する積層体形成工程と、積層体を加熱処理して、未加硫ゴム層を加硫および発泡させる加硫・発泡工程と、を少なくとも経て、粘着材層と、樹脂フィルムと、シリコーンゴムを主成分として含む発泡ゴム層と、がこの順に積層されたテレビ用緩衝材を作製することを特徴とする。
【0010】
本発明のテレビ用緩衝材の製造方法の一実施態様は、第一のシートおよび第二のシートが帯状の長尺シートであり、積層体形成工程において、シートの長手方向に連続的に搬送される第一のシートと、シートの長手方向に連続的に搬送される第二のシートとを、第一のシートおよび第二のシートの長手方向を一致させた状態で連続的に貼り合わせることで、帯状の積層体を連続的に形成し、加硫・発泡工程において、積層体形成工程を経て連続的に形成された帯状の積層体を、当該積層体の長手方向に搬送させつつ加熱処理する、ことが好ましい。
【0011】
第一の本発明のテレビ用緩衝材は、本発明のテレビ用緩衝材の製造方法により作製されたことを特徴とする。
【0012】
第二の本発明のテレビ用緩衝材は、シリコーンゴムを主成分として含む発泡ゴム層と、樹脂フィルムと、粘着材層と、がこの順に積層され、発泡ゴム層の厚み方向における発泡構造が略均一であり、発泡ゴム層の樹脂フィルムが設けられた側と反対側の面に発泡セルに起因する凹部が存在し、かつ、発泡ゴム層の樹脂フィルムが設けられた側と反対側の面の摩擦力として測定された最大引っ張り荷重が3N以下であることを特徴とする。
【0013】
第三の本発明のテレビ用緩衝材は、シリコーンゴムを主成分として含む発泡ゴム層と、樹脂フィルムと、粘着材層と、がこの順に積層され、発泡ゴム層の厚み方向における発泡構造が略均一であり、発泡ゴム層の樹脂フィルムが設けられた側と反対側の面に発泡セルに起因する凹部が存在し、かつ、発泡ゴム層の樹脂フィルムが設けられた側と反対側の面が艶消し面であることを特徴とする。
【0014】
第一〜第三の本発明のテレビ用緩衝材の一実施態様は、発泡ゴム層の硬度が50°以下の範囲内であることが好ましい。
【0015】
第一〜第三の本発明のテレビ用緩衝材の他の実施態様は、ガラス基板を用いたディスプレイパネルを備えたテレビの緩衝材として用いられることが好ましい。
【0016】
第一〜第三の本発明のテレビ用緩衝材の他の実施態様は、ディスプレイパネルが、液晶ディスプレイパネルであることが好ましい。
【0017】
本発明のテレビは、ガラス基板を用いたディスプレイパネルと、該ディスプレイパネルを支持するフレームと、ディスプレイパネルとフレームとの間に挟持された状態で配置される第一〜第三の本発明のテレビ用緩衝材から選択されるいずれか1つのテレビ用緩衝材と、を少なくとも備えることを特徴とする。
【0018】
本発明のテレビの一実施態様は、ディスプレイパネルが、液晶ディスプレイパネルであることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、従来のシリコーンゴムを用いたテレビ用緩衝材と同程度の滑り性を有すると共に、層構成のより単純なテレビ用緩衝材、その製造方法、および、当該テレビ用緩衝材を用いたテレビを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】発泡ゴム層表面の摩擦力の測定方法を説明する側面図である。
【図2】引っ張り距離Dに対する荷重値Fの変化の一例を示すグラフである。
【図3】本実施形態のテレビ用緩衝材の製造方法の一過程を示す概略模式図である。
【図4】本実施形態のテレビ用緩衝材の製造方法の他の過程を示す概略模式図である。
【図5】貼り合わせ前の第一のシートおよび第二のシートの層構造について示す模式断面図である。
【図6】第一のシートと第二のシートとを貼り合わせた積層体の層構造について示す模式断面図である。
【図7】本実施形態のテレビ用緩衝材の層構造について示す模式断面図である。
【図8】図7に示す発泡ゴム層を拡大して示す拡大断面図である。
【図9】本実施形態のテレビについて示す模式断面図である。
【図10】比較例3のテレビ用緩衝材の層構造について示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本実施形態のテレビ用緩衝材の製造方法は、少なくとも一方の面が粗面であるカバー基材と、該カバー基材の粗面に接して設けられ、未加硫シリコーンゴムと発泡剤とを主成分として含む未加硫ゴム層と、を有する第一のシート、および、キャリア基材と、該キャリア基材の片面に接して設けられた粘着材層と、該粘着材層上に設けられた樹脂フィルムと、を有する第二のシートを、第一のシートの未加硫ゴム層が設けられた面と、第二のシートの樹脂フィルム層が設けられた面と、を圧着することで、第一のシートと第二のシートとを貼り合わせた積層体を形成する積層体形成工程と、積層体を加熱処理して、未加硫ゴム層を加硫および発泡させる加硫・発泡工程と、を少なくとも経て、粘着材層と、樹脂フィルムと、シリコーンゴムを主成分として含む発泡ゴム層と、がこの順に積層されたテレビ用緩衝材を作製することを特徴とする。
【0022】
本実施形態のテレビ用緩衝材の製造方法により作製されたテレビ用緩衝材は、粘着材層、樹脂フィルム、および、シリコーンゴムを主成分として含む発泡ゴム層(以下、「発泡ゴム層」と略す場合がある)がこの順に積層された3層構成を有し、従来のシリコーンゴムを用いた5層構成のテレビ用緩衝材(以下、「従来品」と称す場合がある)と比べて、層構成がより単純である。ここで、粘着材層は、フレームに対してテレビ用緩衝材を接着して固定するために利用されるものであり、テレビ中では、発泡ゴム層の表面が、ディスプレイパネルのガラス基板と接触することになる。この発泡ゴム層は、ゴム材料が有する弾性に加えて、発泡セルを有するためにテレビ用緩衝材として必要なクッション性が確保できる。
【0023】
しかし、この発泡ゴム層は、発泡セルを有する低硬度のシリコーンゴムを主成分として含むため、本来的には粘着性が高い。このため、ディスプレイパネルのガラス基板に対する滑り性が、従来品と比べて大幅に劣るようにも思われる。一方、発泡ゴム層は、カバー基材の粗面に接して設けられ、未加硫シリコーンゴムと発泡剤とを主成分として含む未加硫ゴム層を、加硫および発泡させることで形成される。すなわち、発泡ゴム層の表面はカバー基材の粗面が転写された面である。このため、発泡ゴム層の表面全体は凹凸を有する粗面であるため、発泡ゴム層の表面と、ディスプレイパネルのガラス基板との真実接触面積は非常に小さくなる。それゆえ、発泡ゴム層の表面の局所における粘着性は高くても、発泡ゴム層の表面とディスプレイパネルのガラス基板との間での粘着性は低くなり、従来品と同程度の良好な滑り性が得られる。
【0024】
なお、以上に説明した本実施形態のテレビ用緩衝材の製造方法により作製された本実施形態のテレビ用緩衝材は、下記(i)〜(iv)に示す特徴、または、(i)〜(iii)および(v)に示す特徴を少なくとも有する。
(i)既に説明したように、本実施形態のテレビ用緩衝材は、発泡ゴム層と、樹脂フィルムと、粘着材層と、がこの順に積層された層構成を有する。
(ii)本実施形態のテレビ用緩衝材では、発泡ゴム層の厚み方向における発泡構造が略均一である。
(iii)本実施形態のテレビ用緩衝材では、発泡ゴム層の樹脂フィルムが設けられた側と反対側の面(発泡ゴム層表面)に発泡セルに起因する凹部が存在する。
(iv)本実施形態のテレビ用緩衝材では、発泡ゴム層の樹脂フィルムが設けられた側と反対側の面(発泡ゴム層表面)の摩擦力として測定された最大引っ張り荷重が3N以下である。
(v)本実施形態のテレビ用緩衝材では、発泡ゴム層の樹脂フィルムが設けられた側と反対側の面(発泡ゴム層表面)が、艶消し面である。
【0025】
以上に説明したような特徴を有する本実施形態のテレビ用緩衝材は、上述した本実施形態のテレビ用緩衝材の製造方法により製造することができるが、勿論、これ以外の製造方法によって製造してもよい。
【0026】
ここで、(ii)発泡ゴム層の厚み方向における発泡構造が略均一となる理由は、未加硫ゴム層が、カバー基材と樹脂フィルムとの間に挟まれた状態で、加硫・発泡工程が実施されるためである。すなわち、加硫・発泡工程では、未加硫ゴム層は、直接加熱されるのではなく、カバー基材および樹脂フィルムを介して間接的に加熱される。このため、未加硫ゴム層の厚み方向における温度分布が生じにくく、略均一となり、未加硫ゴム層の厚み方向に対して、略均一な加硫・発泡が生じるためである。
【0027】
また、(iii)発泡ゴム層の樹脂フィルムが設けられた側と反対側の面(発泡ゴム層表面)に発泡セルに起因する凹部が存在する理由は、未加硫ゴム層の片側面がカバー基材と接触した状態で、加硫・発泡工程が実施されるためである。すなわち、未加硫ゴム層のカバー基材側近傍の部分は、カバー基材により覆われている。このため、加硫・発泡工程の実施に際して、未加硫ゴム層のカバー基材側近傍の部分で、発泡によりガスが発生した場合に、ガスが外部へと逃げることができない。このため、発泡により生じたガスは、未加硫ゴム層のカバー基材側近傍の部分と、カバー基材との間で発泡セルを形成することになる。このため、加硫・発泡工程を少なくとも経た後に、発泡ゴム層と、カバー基材とを離間すると、発泡ゴム層の表面には、発泡セルに起因する凹部が存在することになる。
【0028】
また、(iv)発泡ゴム層の樹脂フィルムが設けられた側と反対側の面(発泡ゴム層表面)の摩擦力として測定された最大引っ張り荷重が3N以下となる理由は、既述したように、発泡ゴム層の表面は、発泡セルに起因する凹部が存在し、かつ、カバー基材の粗面が転写された面であり、ディスプレイパネルに対する真実接触面積をより小さくできるためである。ここで、発泡ゴム層表面が、上述したような条件を満たす場合、発泡ゴム層表面に入射する可視光の乱反射が著しくなるため、上記(v)項に示したように、発泡ゴム層表面は艶消し面となる。なお、最大引っ張り荷重は2N以下が好ましく、その下限値は0Nに近い程好ましい。
【0029】
ここで、最大引っ張り荷重は、下記(1)〜(4)に示す測定方法を実施することにより求められる。
(1)上面が水平面と一致するアルミ板上に、2本のテレビ用緩衝材サンプル(幅2mm、長さ140mm)を、粘着材層が下面側となるように、互いに平行に25mmの間隔を置いて貼りつけて固定する。
(2)次に、アルミ板上に固定された2本のテレビ用緩衝材上に、アクリル樹脂板(縦70mm、横50mm)を、テレビ用緩衝材サンプルの長手方向と、アクリル樹脂板の縦方向とが一致するように配置し、アクリル樹脂板を介して、2本のテレビ用緩衝材に対して1.70Nの荷重を加える。
(3)その後、アクリル樹脂板を、アクリル樹脂板の縦方向に対して、引っ張り速度10mm/s、引っ張り距離量を10mmに設定して引っ張る。そして、この引っ張りを実施している期間中における、2本のテレビ用緩衝材サンプルの上面とアクリル樹脂板の下面との摩擦力を、引っ張り距離の増加に対する荷重値の変化としてテンシロン試験機(オリエンテック社製、RTC−1210A)により測定する。
(4)ここで、測定された引っ張り距離の増加に対する荷重値のうち、最大値を示す荷重値を最大引っ張り荷重として求める。
【0030】
図1は、発泡ゴム層表面の摩擦力の測定方法を説明する側面図である。図1に示すように、摩擦力の測定に際しては、アルミ板10上に測定サンプル(テレビ用緩衝材、幅2mm、長さ140mm)20を貼り付けて固定し、さらにこの測定サンプル上に、重り30を配置する。なお、アルミ板10は、その上面10Tが、水平面と一致するように配置される。また、アルミ板10の幅方向(図1中の左右方向)の長さは、測定サンプル20と略同程度である。測定サンプル20はその長手方向が、アルミ板10の幅方向と一致するように、アルミ板10の上面10Tに、2本平行に25mmの間隔を置いて配置される。なお、図1中では、紙面に明示される測定サンプル20の他に、紙面の奥側にもう一本の測定サンプル20(図1中、不図示)が配置されている。また、重り30は、鉄板等からなる板状支持体32と、この板状支持体32の下面32Bに貼り付けて固定されたアクリル樹脂板34と、板状支持体32の上面32Tの中央部に配置された重り本体36とから構成されている。この板状支持体32とアクリル樹脂板34とは同サイズ(縦70mm、横50mm)であり、互いの面が完全に重なり合うように板状支持体32とアクリル樹脂板34とが貼り合わせられている。そして、アクリル樹脂板34の下面34Bが、測定サンプル20の上面20Tと接触するように、重り30が、アルミ板10の幅方向の中央部近傍に配置される。この場合、アクリル樹脂板34の縦方向と、測定サンプル20の長手方向とが一致するように重り30が配置される。なお、この状態で、測定サンプル20の上面20Tには、1.7Nの荷重が加わる。
【0031】
また、板状支持体32の端面のうち、アルミ板10の幅方向のうち一方の側(図中では左側)を向く端面32Sには、金属製のワイヤー40の一端が接続されている。そしてこのワイヤー40の他方の端は、アルミ板10の斜め上方(図中では、左上)に配置されたテンシロン試験機50(オリエンテック社製、RTC−1210A)に接続されている。なお、端面32Sに略対向する位置には、滑車60が配置されている。ここで、ワイヤー40は、端面32Sから滑車60までの間は、水平面と平行を成し、かつ、測定サンプル20の長手方向とも平行を成すように張られており、滑車60からテンシロン試験機50までの間は、鉛直方向と一致するように張られている。また、端面32Sと平行を成す水平方向において、端面32Sとワイヤー40の接続位置は、2本の測定サンプル20の中間に位置している。
【0032】
ここで、不図示の駆動装置によってテンシロン試験機50を鉛直方向の上方側に引っ張る。この際、重り30は、滑車60側、すなわち、図中の矢印P方向へと引っ張られる。なお、この際の引っ張りは、引っ張り速度を10mm/s、引っ張り距離量を10mmに設定して実施する。そして、この引っ張りを実施している期間中における、2本の測定サンプル20の上面20Tとアクリル樹脂板34の下面34Bとの摩擦力を、引っ張り距離の増加に対する荷重値の変化としてテンシロン試験機50により測定する。この際、図2に示すように、引っ張り距離Dに対する荷重値Fの変化を示すグラフが得られる。そして、引っ張り距離Dが0mm〜10mmの範囲内における荷重値Fの最大値Fmaxを最大引っ張り荷重として求める。
【0033】
本実施形態のテレビ用緩衝材の製造方法では、方形状の第一のシートと、方形状の第二のシートとを用いたバッチ生産方式により実施することもできるが、生産性向上の観点からは、連続生産方式により実施することが特に好ましい。連続生産方式を採用する場合、第一のシートおよび第二のシートとしては帯状の長尺シートを用いる。そして、積層体形成工程では、シートの長手方向に連続的に搬送される第一のシートと、シートの長手方向に連続的に搬送される第二のシートとを、第一のシートおよび第二のシートの長手方向を一致させた状態で連続的に貼り合わせることで、帯状の積層体を連続的に形成する。続いて、加硫・発泡工程では、積層体形成工程を経て連続的に形成された帯状の積層体を、この積層体の長手方向に搬送させつつ加熱処理する。なお、加硫・発泡工程における積層体の搬送速度は、積層体形成工程における第一のシートおよび第二のシートの搬送速度と同一に設定されることが特に好ましい。
【0034】
本実施形態のテレビ用緩衝材の製造方法に用いられる第一のシートは、カバー基材の片面(粗面)に未加硫シリコーンゴムと発泡剤とを主成分として含むゴム原料を塗布して、未加硫ゴム層を形成することで作製される。なお、第一のシートとして、連続生産方式に用いられる帯状の長尺シートを用いる場合には、カバー基材も、帯状の長尺シートが用いられる。そして、カレンダーロール機を用いてカバー基材の片面に未加硫ゴム層を連続的に形成する。なお、カバー基材は、少なくとも片面が粗面であればよい。ここで「粗面」とは、表面粗さ(中心線平均粗さRa)が0.2μm〜2.0μm程度の範囲を意味する。カバー基材を構成する材料は、一連の製造過程において加わる外力に対して適度に変形でき、また、一連の製造過程における加熱処理に対して耐熱性を有するものであれば特に限定されない。但し、上述した観点や実用性を考慮すれば、カバー基材を構成する材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂が好ましい。また、カバー基材としては、少なくとも片面が粗面である市販の樹脂フィルムを利用できる。なお、両面が平滑面を成す市販の樹脂フィルムでは、目視観察した場合、両面共に光沢面を成すが、少なくとも片面が粗面を有する市販の樹脂フィルム(いわゆるシボ付き樹脂フィルム)において、当該粗面側を目視で観察した場合、艶消し面を成す。なお、このような艶消し面を成す粗面の粗さは、概ね表面粗さ(中心線平均粗さRa)が0.2μm以上である。
【0035】
なお、本実施形態のテレビ用緩衝材の製造方法に用いられる第二のシートを構成する材料や厚みも、一連の製造過程において加わる外力に対して適度に変形でき、また、一連の製造過程における加熱処理に対して耐熱性を有するものであれば特に限定されない。しかし、上述した観点や実用性を考慮すれば、第二のシートを構成するキャリア基材および樹脂フィルムを構成する材料もポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂であることが好ましい。また、粘着材層を構成する材料としては、一連の製造過程において加わる熱によって粘着性が喪失しない接着剤であれば公知の接着剤が利用でき、たとえば、アクリル系接着剤が利用できる。
【0036】
また、加硫・発泡工程を終えた段階で得られたシートは、キャリア基材の片面に、粘着材層と、樹脂フィルムと、発泡ゴム層と、カバー基材とがこの順に積層されたシートである。ここで、テレビ用緩衝材として最終的に利用される部材・層は、粘着材層、樹脂フィルムおよび発泡ゴム層である。このため、カバー基材を剥離する剥離工程を必要に応じて実施してもよい。なお、キャリア基材は、通常、テレビの組み立てに際してテレビ用緩衝材が使用される直前まで、粘着材層と接触させた状態が維持される。この理由は、粘着材層のキャリア基材が設けられた側の面(テレビのフレームに貼り付けられる面)の粘着性が劣化するのを防ぐためである。
【0037】
さらに、加硫・発泡工程を終えた段階で得られたシートは、生産性向上の観点から、通常は、複数本の帯状のテレビ用緩衝材が採取できるサイズを有する。このため、通常は、加硫・発泡工程を終えた段階で作製されたシートを所定のサイズに切断する切断工程が実施される。なお、この切断工程では、基本的に、キャリア基材を除く各部材・層のみを切断することが好ましい。これにより1枚の大きなサイズのキャリア基材上に、複数本のテレビ用緩衝材が固定して配置された状態となるため、テレビ用緩衝材のテレビの組み立てメーカーへの出荷等において取り扱い性に優れる。
【0038】
また、切断工程は、必要に応じて2回以上に分けて実施してもよい。たとえば、連続生産方式の場合、加硫・発泡工程を終えた段階で得られるシートは、長手方向に連続する帯状の長尺シートである。このため、この長尺シートを、長手方向に対して、一定の間隔でキャリア基材も含めて切断することで方形状のシートを得る第一の切断工程を実施する。次に、この方形状のシートに対して、キャリア基材を除く各部材・層のみを切断することで、テレビ用緩衝材として利用可能なサイズに切断する第二の切断工程を実施することができる。また、加硫・発泡工程を終えた段階で得られたシートに対しては、発泡ゴム層の加硫処理をより確実とするために、必要に応じて、第二の加硫工程を実施してもよい。
【0039】
図3および図4は、本実施形態のテレビ用緩衝材の製造方法の一過程を示す概略模式図であり、具体的には、連続生産方式によりテレビ用緩衝材を製造する場合の一例を示したものである。なお、図3は、カレンダーロール機を用いた第一のシートの製造方法について説明する図であり、図4は、積層体形成工程および加硫・発泡工程について説明する図である。
【0040】
まず、第一のシートの作製に際しては、図3に示すカレンダーロール機100を用いる。このカレンダーロール機100は、その主要部が押圧ロール102と、この押圧ロール102に対向配置されたゴム原料供給ロール104と、押圧ロール102およびゴム原料供給ロール104の間にカバー基材SCを供給するカバー基材供給ロール106と、押圧ロール102およびゴム原料供給ロール104の間から排出される第一のシートS1を巻き取る巻取ロール108と、不図示のロール駆動用モータとから構成される。ここで、押圧ロール102およびゴム原料供給ロール104は、両者の間(コーティング・エリアC)をカバー基材SCが通過可能であると共に、カバー基材SCに対して適度な押圧力が加わるように配置されている。そして、第一のシートS1の作製に際しては、押圧ロール102が時計回り方向(図中、矢印R1方向)に回転し、ゴム原料供給ロール104が反時計まわり(図中、矢印R2方向)に回転する。また、カバー基材供給ロール106は、コーティング・エリアCにおけるカバー基材SCの搬送方向上流側(図中、押圧ロール102の左側)に配置されている。そして、カバー基材SCは、粗面が外周側を向くように、カバー基材供給ロール106に巻回されると共に、コーティング・エリアCの通過に際しては、この粗面がゴム原料供給ロール104側に対向し、接触するように配置される。
【0041】
一方、混練機等により所定の組成に調整されたゴム原料は、不図示のゴム原料供給装置により、ゴム原料供給ロール104の押圧ロール102が配置された側と略反対側の外周面に供給される。そして、ゴム原料カバー基材供給ロール106の反時計回り方向(矢印R1方向)への回転により、ゴム原料供給ロール104の外周面上に付与されたゴム原料がコーティング・エリアCへと運ばれる。
【0042】
よって、コーティング・エリアCをカバー基材SCが通過する際に、カバー基材SCの粗面側にゴム原料が塗布されると共に、押圧ロール102およびゴム原料供給ロール104の押圧力により、カバー基材の粗面側にゴム原料が薄膜状に延伸される。これにより、コーティング・エリアCから排出されたカバー基材SCの粗面側に、未加硫ゴム層が形成された第一のシートS1が得られる。そして、この第一のシートS1は、未加硫ゴム層が外周側を向くように、巻取ロール108に巻き取られる。なお、巻取ロール108は、コーティング・エリアCにおけるカバー基材SCの搬送方向下流側(図中、押圧ロール102の右側)に配置されている。
【0043】
次に、第一のシートS1および第二のシートを用いて、図4に示すラミネート装置110および加熱炉112により、積層体形成工程および加硫・発泡工程を連続的に実施する。ここで、図4中に示すラミネート装置110は、その主要部が、第一のラミネートロール120と、この第一のラミネートロール120に対向配置された第二のラミネートロール122と、第一のラミネートロール120および第二のラミネートロール122の間に第一のシートS1を供給する第一のシート供給ロール124と、第一のラミネートロール120および第二のラミネートロール122の間に第二のシートS2を供給する第二のシート供給ロール126と、不図示のロール駆動用モータとから構成されている。また、第一のシートS1等のシート状部材の搬送の安定性向上等を目的として、適所に搬送ロール128が配置されている。
【0044】
ここで、第一のラミネートロール120および第二のラミネートロール122は、両者の間(ラミネート・エリアL)を、第一のシートS1および第二のシートS2が同時に通過可能であると共に、このラミネート・エリアLを同時に通過する第一のシートS1および第二のシートS2に対して貼り合わせに必要な押圧力が加わるように配置されている。そして、第一のシートS1と第二のシートS2とを貼り合わせた積層体の形成に際しては、第一のラミネートロール120が時計回り方向(図中、矢印R3方向)に回転し、第二のラミネートロール122が反時計回り方向(図中、矢印R4方向)に回転する。
【0045】
また、第一のシート供給ロール124は、ラミネート・エリアLにおける第一のシートS1の搬送方向上流側(図中、第一のラミネートロール120の左側)に配置されている。なお、第一のシート供給ロール124としては、第一のシートS1が巻き取られた巻取ロール108がそのまま用いられる。また、第二のシート供給ロール126は、ラミネート・エリアLにおける第二のシートS2の搬送方向上流側(図中第二のラミネートロール122の上方側)に配置されている。なお、第二のシートS2は、樹脂フィルムが設けられた側の面が外周面側を向くように、第二のシート供給ロール126に巻回されている。
【0046】
ここで、第一のシート供給ロール124から供給される第一のシートS1は、ラミネート・エリアLの通過に際して、カバー基材側の面が第一のラミネートロール120の外周面と接触するように供給される。また、第二のシート供給ロール126から供給される第二のシートS2は、ラミネート・エリアLの通過に際して、キャリア基材側の面が第二のラミネートロール122の外周面と接触するように供給される。そして、ラミネート・エリアLを、第一のシートS1と第二のシートS2とが同時に通過する際に、これら2つのシートS1、S2に対して、第一のラミネートロール120および第二のラミネートロール122により押圧力が加えられる。このため、ラミネート・エリアLを通過する第一のシートS1の未加硫ゴム層側の面と第二のシートS2の樹脂フィルム側の面とが連続的に貼り合わせされ、積層体SLが連続的に形成される。そして、ラミネート・エリアLの第一のシートS1および第二のシートS2が進入する側の反対側から、積層体SLが排出される。
【0047】
ラミネート・エリアLから排出された積層体SLは、ラミネート・エリアLの搬送方向下流側に配置された加熱炉112へと搬送され、加熱炉112内を一方向に搬送される。この際、積層体SLが加熱され、未加硫ゴム層の加硫および発泡が進行する。また、未加硫ゴム層の加硫の進行に伴い、未加硫ゴム層と樹脂フィルムとの界面の密着性が向上する。なお、加熱炉112における加熱温度としては、最大温度が150℃〜200℃程度の範囲内が好ましい。また、加熱時間(積層体SLが、加熱炉112を通過するのに要する時間)としては、1分〜3分程度の範囲内が好ましい。そして、この加熱処理を終えた積層体SLを、所定のサイズに切断して、テレビ用緩衝材を得る。なお、加熱処理を終えた積層体SLに対しては、発泡ゴム層の加硫反応をより進行させる2次加硫を行うために、再度の加熱処理を実施してもよい。また、発泡ゴム層と樹脂フィルムとの貼り合わせ界面での密着性をより向上させるために、積層体形成工程を実施する前に第二のシートS2の樹脂フィルムが設けられた側の面をコロナ放電などにより予め表面処理しておいてもよい。
【0048】
次に、本実施形態のテレビ用緩衝材や、その製造過程において用いる第一のシート、第二のシートおよび積層体の層構造について説明する。図5は、貼り合わせ前の第一のシートおよび第二のシートの層構造について説明する模式断面図である。ここで、図5の上段に示す第一のシート200は、カバー基材202と、このカバー基材の粗面202Rに接して設けられた未加硫ゴム層204とを有する。また、図5の下段に示す第二のシート210は、キャリア基材212と、キャリア基材212の片面に接して設けられた粘着材層214と、粘着材層214のキャリア基材212が設けられた側と反対側の面に接して設けられた樹脂フィルム216と、を有する。
【0049】
そして、積層体形成工程において、第一のシート200の未加硫ゴム層204が設けられた側の面(貼り合わせ面)200Lと、第二のシート210の樹脂フィルム216が設けられた側の面(貼り合わせ面)210Lとを貼り合わせて、図6に示す積層体230を得る。この積層体230は、キャリア基材212の片面に、粘着材層214、樹脂フィルム216、未加硫ゴム層204、および、カバー基材202がこの順に積層された層構造を有する。
【0050】
続いて、図6に示す積層体230を加熱処理して、未加硫ゴム層204の加硫・発泡処理を行う。これにより、図7に示すように、粘着材層214、樹脂フィルム216、および、発泡ゴム層240がこの順に積層されたテレビ用緩衝材250を得ることができる。なお、図7に示すテレビ用緩衝材250は、加硫・発泡処理の後、カバー基材202のみがテレビ用緩衝材250から剥離された状態を示したものである。そして、粘着材層214の樹脂フィルム216が設けられた側と反対側の面には、粘着材層214の粘着性を保護するために、キャリア基材212が接着されたままの状態となっている。
【0051】
また、発泡ゴム層240は、図8の拡大断面図に示すように、厚み方向に対して発泡セル242が略均一に分散して存在しており、厚み方向における発泡構造が略均一である。また、発泡ゴム層240の表面244には、発泡セル242に起因する凹部246が存在する。これに加えて、表面244の内、凹部246が形成されていない領域は、カバー基材202の粗面に対応した形状となっている。このため、表面244では光が乱反射され、肉眼で見た場合、艶消し面となる。これに加えて、テレビ用緩衝材250をテレビの組み立てに用いた場合、表面244の内、凹部246が形成されていない領域の全面がディスプレイパネルと接触するのでは無く、この領域の一部(出っ張った部分近傍)のみがフレームと接触することになる。よって、ディスプレイパネルと表面244との真実接触面積を非常に小さくすることができる。このため、発泡ゴム層240が硬度20°程度の低硬度、すなわち、高い粘着性を示すものであっても、ディスプレイパネルと表面244との間の摩擦力が増大するのを抑制できる。
【0052】
なお、発泡ゴム層240の硬度は、テレビ用緩衝材250として必要な適度なクッション性が得られるように、発泡セル242の密度やサイズなどを適宜選択することにより制御できるが、5°〜50°の範囲内が好ましく、15°〜30°の範囲内がより好ましい。なお、発泡ゴム層240の硬度は、JIS K−6253に準拠して測定された値を意味する。
【0053】
また、発泡ゴム層240の厚みとしては、適度なクッション性を確保する観点から150μm〜5000μm程度の範囲内とすることが好ましい。また、樹脂フィルム216の厚みは特に限定されないが、実用上50μm〜125μm程度の範囲内とすることが好ましい。粘着材層214の厚みも特に限定されるものではないが、実用上15μm〜50μm程度の範囲内とすることが好ましい。
【0054】
本実施形態のテレビ用緩衝材250は、ガラス基板を用いたディスプレイパネルを備えたテレビの組み立てに用いられる。なお、ガラス基板を用いたディスプレイパネルとしては、代表的には液晶ディスプレイパネルが挙げられるが、その他にもプラズマディスプレイパネルなども挙げられる。図9は、本実施形態のテレビ用緩衝材を用いたテレビの一例を示す模式断面図であり、テレビ中においてテレビ用緩衝材が配置された部分の近傍について示す断面図である。なお、図9中では、ディスプレイパネル、フレーム、および、テレビ用緩衝材以外のその他のテレビを構成する部材、および、テレビ用緩衝材の断面構造の詳細については記載を省略してある。図9に示すテレビ300は、フレーム310と、フレーム310の片面側に設けられた凹部312内にはめ込むように配置されたディスプレイパネル320とを有している。そして、テレビ用緩衝材250は、凹部312の側壁面から出っ張るように設けられた凸部314の頂面314Tと、ディスプレイパネル320との間に配置されている。なお、テレビ300の組み立てに際しては、頂面314Tに対して、テレビ用緩衝材250の粘着材層214側の面を貼り合わせるようにして、頂面314Tにテレビ用緩衝材250を接着し、固定する。そして、テレビ用緩衝材250の発泡ゴム層250の表面と、ティスプレイパネル320を構成するガラス基板の表面とが接触するように、ティスプレイパネル320をフレーム310の凹部312に嵌め込む。
【実施例】
【0055】
以下に、本発明を実施例を挙げて説明するが、本発明は以下の実施例にのみ限定されるものでは無い。
【0056】
(実施例1)
図3に示すカレンダーロール機100、ならびに、図4に示すラミネート装置110および加熱炉112を用いて以下の手順でテレビ用緩衝材を作製した。
【0057】
まず、帯状のカバー基材202として、シボ付きPETフィルム(厚み0.075 mm、幅 300mm、一方の面は平滑面、他方の面は粗面(Ra=0.3μm)、パナック株式会社製)を準備した。そして、図3に示すカレンダーロール機100を用いて、このPETフィルムの粗面202Rに、厚み1.0mmの未加硫ゴム層204を形成することで、第一のシート200を得た。なお、未加硫ゴム層204の形成に用いたゴム原料は、以下に示す各材料をミキシングロールで混練したものを用いた。
<ゴム原料の組成>
・シリコーンゴム(信越化学工業株式会社製、KE-561UA):100重量部
・加硫剤(信越化学工業株式会社製、C25−A/B)
C25−A:0.5重量部、C25−B:2.0重量部
・発泡剤(信越化学工業株式会社製、KEP26):3.0重量部
・着色剤(信越化学工業株式会社製、W2):4.0重量部
【0058】
また、第二のシート210(厚み0.175mm、幅300mm)は、このシートを構成する各層が予め積層されたものを用いた。なお、キャリア基材212は、厚み0.125mmのPETフィルム(東レ社製、S−10)であり、粘着材層214は、厚み0.025mmのアクリル系接着剤(パナック社製)からなり、樹脂フィルムは、厚み0.025mmのPETフィルム(東レ社製、S−10)である。
【0059】
次に、第一のシート200および第二のシート210を用いて、図4に示すラミネート装置110および加熱炉112を用いて、積層体230の形成と、加硫・発泡処理とを連続的に実施した。この際、第一のシート200、第二のシート210および積層体230の搬送速度を2.0m/分に設定し、積層体230の加熱温度および加熱時間を、それぞれ 最大温度200℃、2分に設定した。但し、ここで言う「加熱時間」とは、積層体230の長手方向のある点が、加熱炉112内に突入してから排出されるまでの時間を意味する。
【0060】
カバー基材を剥離した後に、加硫・発泡処理を終えた積層体230については、その長手方向に対して500mm毎に切断(1次切断)し、150℃、120分の2次加硫処理をさらに実施した後、縦480mm、横2.0mmとなるように切断(2次切断)した。これにより片面にキャリア基材212が付いた状態のテレビ用緩衝材を得た。
【0061】
得られたテレビ用緩衝材の発泡ゴム層240の厚みは2.0mmであり、未加硫ゴム層204の厚みの2倍であることが判った。また発泡ゴム層240の表面244を蛍光灯照明下で目視観察すると艶消し面であることが確認された。また、発泡ゴム層240の表面244および断面を光学顕微鏡により観察した。その結果、表面244には、発泡セル242に起因する凹部246が存在しており、発泡ゴム層240の厚み方向に対して存在する発泡セル242のサイズ・密度も同程度であり、厚み方向における発泡構造も略均一であることが判った。以上の観察結果から、得られたテレビ用緩衝材は、図7および図8に示すテレビ用緩衝材250と同様の層構成を有することが判った。また、発泡ゴム層240の硬度を測定したところ20°であった。
【0062】
(比較例1)
カバー基材202として、両面が平滑面からなるPETフィルム(東レ社製、S−56)を用いた以外は、実施例1と同様にして、片面にキャリア基材212が付いた状態のテレビ用緩衝材を作製した。
【0063】
得られたテレビ用緩衝材の発泡ゴム層の厚みは2.0mmであり、実施例1と同様に、未加硫ゴム層204の厚みの2倍であることが判った。また発泡ゴム層の表面を蛍光灯照明下で目視観察すると光沢面であることが確認された。また、発泡ゴム層の表面および断面を光学顕微鏡により観察した。その結果、表面には、発泡セルに起因する凹部が存在しており、発泡ゴム層の厚み方向に対して存在する発泡セルのサイズ・密度も同程度であり、厚み方向における発泡構造も略均一であることが判った。以上の結果から、得られたテレビ用緩衝材は、発泡ゴム層の表面がカバー基材202の平滑面が転写された面からなる点を除いては、実施例1のテレビ用緩衝材と同様の構造を有すると考えられる。また、発泡ゴム層の硬度を測定したところ実施例1と同様に20°であった。
【0064】
(比較例2)
図3に示すカレンダーロール機100を用いて、実施例1で用いた第二のシート210の樹脂フィルム216が設けられた側の面に、実施例1で用いたゴム原料を用いて未加硫ゴム層を形成した。なお、この未加硫ゴム層の厚みは、実施例1で用いた第一のシート200の未加硫ゴム層204と同じ厚みである。
【0065】
続いて、第二のシート210の片面に未加硫ゴム層が形成された積層体を用いて、実施例1と同様の条件で、加熱炉112を用いた加硫・発泡処理、1次切断、2次加硫処理、2次切断を行い、片面にキャリア基材212が付いた状態のテレビ用緩衝材を得た。
【0066】
得られたテレビ用緩衝材の発泡ゴム層の厚みは1.5mmであり、未加硫ゴム層204の厚みの1.5倍であることが判った。すなわち、実施例1と比較して発泡倍率が小さくなっていることが判った。また、発泡ゴム層の表面を蛍光灯照明下で目視観察すると光沢面であることが確認された。また、発泡ゴム層の表面および断面を光学顕微鏡により観察した。その結果、表面は、平滑面であり、発泡セルに起因する凹部の存在も確認されなかった。また、発泡セルは、発泡ゴム層の厚み方向に対して、発泡ゴム層の表面近傍には存在しておらず、発泡ゴム層の表面近傍は、薄い皮膜で覆われた状態となっていた。また、発泡ゴム層の硬度を測定したところ40°であり、実施例1と比較してやや高い値を示した。
【0067】
(比較例3)
従来品として、図10に示す層構成を有するテレビ用緩衝材400を以下の手順で作製した。なお、このテレビ用緩衝材は、粘着材層402、樹脂フィルム404、接着材層406、低硬度シリコーンゴム層408、高硬度シリコーンゴム層410がこの順に積層されたものである。
【0068】
−高硬度シリコーン層および低硬度シリコーンゴム層の形成−
両面が平滑面からなる帯状のPETフィルムの片面に、ダイコーターから任意の厚さに押し出させた液状シリコーンゴムを塗布して未加硫ゴム層を形成し、この未加硫ゴム層を最大温度200℃にて 30秒間加熱することによりPETフィルムの片面にシリコーンゴム層が形成されたシリコーンゴムシートを得た。このシリコーンゴム層(2次加硫処理前の高硬度シリコーンゴム層410)の硬度は80°であった。なお、使用した液状シリコーンゴムは信越化学工業株式会社製、KE−1930A/Bであり、KE−1930A、KE−1930Bの配合比率(重量比)は、1:1とした。
【0069】
次に、図3に示すカレンダーロール機100を用いて、上記のシリコーンゴムシートのシリコーンゴム層が設けられた側の面に、下記組成からなるゴム原料を塗布して未加硫ゴム層を形成したシートを作製した。なお、未加硫ゴム層の形成に用いたゴム原料は、以下に示す各材料をミキシングロールで混練したものを用いた。
<ゴム原料の組成>
・シリコーンゴム(信越化学工業株式会社製、KE−922U):100重量部
・加硫剤(信越化学工業株式会社製、C−8):2.0重量部
・着色剤(信越化学工業株式会社製、W2):4.0重量部
【0070】
次に、PETフィルムの片面に、シリコーンゴム層と、未加硫ゴム層とが、この順に積層されたシートに対して、200℃で、60分間の加硫処理を行うことで、シリコーンゴム層の2次加硫処理と、未加硫ゴム層の加硫処理をおこなった。これにより、PETフィルムの片面に、高硬度シリコーンゴム層410と、低硬度シリコーンゴム層408とがこの順に積層されたシートを得た。さらに、このシートからPETフィルムを剥がすことで、高硬度シリコーンゴム層410と、低硬度シリコーンゴム層408とが積層されたゴム層積層体を得た。なお、未加硫ゴム層の加硫処理により形成された低硬度シリコーンゴム層408の硬度は30°であった。
【0071】
−貼り合わせおよび切断−
キャリア基材212の片面に粘着材層402と、樹脂フィルム404とが積層されたシートの樹脂フィルム404が設けられた側の面にスクリーン印刷機で#150メッシュの版を使用し接着剤を印刷した。そして、この接着剤が印刷された面に、ゴム層積層体の低硬度シリコーンゴム層408が設けられた側の面を貼り合わせて、120℃、30分間加熱し接着した。これを所定のサイズに切断した。これにより、片面にキャリア基材212が設けられた図10に示すテレビ用緩衝材400を得た。
【0072】
なお、キャリア基材212は実施例1で用いたものと同じものである。また、粘着材層402は、厚み0.025mmのアクリル系粘着材(パナック社製)からなり、樹脂フィルム404は、厚み0.025mmのPETフィルム(東レ社製、S−10)からなる。また、接着材層406は厚みが0.025mmであり、接着材層406の形成に用いた接着材はシリコーン系接着材(信越化学工業株式会社製、KE−1934A/B)である。また、高硬度シリコーンゴム層410の表面を蛍光灯照明下にて目視観察したところ、光沢面であることが確認された。また、この面を光学顕微鏡で観察したところ平滑面であることが確認された。
【0073】
(評価)
各実施例および比較例のサンプルについて、サンプルのゴム層が形成された面の摩擦力(最大引っ張り荷重)を、図1に示した測定方法により測定した。また、サンプルのゴム層が形成された面を手で触った際の粘着感、および、サンプルのゴム層が形成された面とガラス基板との密着性について評価した。これらの評価結果を、各サンプルの層構成、ゴム層の硬度、および、ゴム層が形成された面の光沢感の目視評価結果と共に、表1に示す。表1に示す結果から明らかなように、実施例1のサンプルは、比較例3の従来品サンプルと同等の滑り性を有するにも係らず、層数は3層であり、より単純な層構成を有していることが判った。
【0074】
【表1】

【0075】
なお、表1中に示す、摩擦力の評価基準、ならびに、粘着感およびガラス基板に対する密着性の評価方法・評価基準は以下の通りである。
【0076】
−摩擦力−
摩擦力の評価基準は以下の通りである。
A:摩擦力として測定された最大引っ張り荷重が3N以下。
B:摩擦力として測定された最大引っ張り荷重が3Nを超え6N以下。
C:摩擦力として測定された最大引っ張り荷重が6Nを超える。
【0077】
−粘着感−
粘着感は、各サンプルのゴム層の表面を手で触った際のべたつき感の有無・程度により評価した。評価基準は以下の通りである。
A:顕著なべたつき感がある。
B:若干のべたつき感がある。
C:べたつき感が殆ど無い。
【0078】
−ガラス基板に対する密着性−
ガラス基板に対する密着性は以下の手順で実施した。まず、表面が平滑面からなる2枚のガラス基板間にサンプルを配置して、圧力を加えた状態でベーク炉中にて70℃の温度で、168時間放置した。なお、サンプルに対して加える圧力は、圧力を加える前のサンプルの総厚みを基準(100%)とした際に、2枚のガラス基板間に配置した状態のサンプルの総厚みが90%となるように調製した。続いて、2枚のガラス基板間に挟まれたサンプルをベーク炉から取り出して室温まで冷却した後、サンプルのゴム層表面とガラス基板との界面を剥離しようとした際の剥離の容易さを評価した。評価基準は以下の通りである。
A:ゴム層表面とガラス基板とを容易に剥離できる。
B:ゴム層表面とガラス基板とは容易に剥離しないが、ゆっくりと端から剥がせば、剥離できる。
C:ゴム層表面とガラス基板とは剥離できない。あるいは、無理に剥離しようとすると、サンプルが破壊される。
【符号の説明】
【0079】
10 アルミ板
10T 上面
20 測定サンプル(テレビ用緩衝材)
20T 上面
30 重り
32 板状支持体
32B 下面
32T 上面
32S 端面
34 アクリル樹脂板
34B 下面
40 ワイヤー
50 テンシロン試験機
60 滑車
100 カレンダーロール機
102 押圧ロール
104 ゴム原料供給ロール
106 カバー基材供給ロール
108 巻取ロール
110 ラミネート装置
112 加熱炉
120 第一のラミネートロール
122 第二のラミネートロール
124 第一のシート供給ロール
126 第二のシート供給ロール
128 搬送ロール
200 第一のシート
200L 貼り合わせ面
202 カバー基材
204 未加硫ゴム層
202R 粗面
210 第二のシート
210L 貼り合わせ面
212 キャリア基材
214 粘着材層
216 樹脂フィルム
230 積層体
240 発泡ゴム層
242 発泡セル
244 (発泡ゴム層240の)表面
246 (発泡セル242に起因する)凹部
250 テレビ用緩衝材
300 テレビ
310 フレーム
312 凹部
314 凸部
314T (凸部314の)頂面
320 ディスプレイパネル
400 テレビ用緩衝材
402 粘着材層
404 樹脂フィルム
406 接着材層
408 低硬度シリコーンゴム層
410 高硬度シリコーンゴム層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方の面が粗面であるカバー基材と、該カバー基材の上記粗面に接して設けられ、未加硫シリコーンゴムと発泡剤とを主成分として含む未加硫ゴム層と、を有する第一のシート、および、
キャリア基材と、該キャリア基材の片面に接して設けられた粘着材層と、該粘着材層上に設けられた樹脂フィルムと、を有する第二のシートを、
上記第一のシートの未加硫ゴム層が設けられた面と、上記第二のシートの樹脂フィルム層が設けられた面と、を圧着することで、上記第一のシートと上記第二のシートとを貼り合わせた積層体を形成する積層体形成工程と、
上記積層体を加熱処理して、上記未加硫ゴム層を加硫および発泡させる加硫・発泡工程と、を少なくとも経て、
上記粘着材層と、上記樹脂フィルムと、シリコーンゴムを主成分として含む発泡ゴム層と、がこの順に積層されたテレビ用緩衝材を作製することを特徴とするテレビ用緩衝材の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のテレビ用緩衝材の製造方法において、
前記第一のシートおよび前記第二のシートが帯状の長尺シートであり、
前記積層体形成工程において、
シートの長手方向に連続的に搬送される前記第一のシートと、シートの長手方向に連続的に搬送される前記第二のシートとを、
前記第一のシートおよび前記第二のシートの長手方向を一致させた状態で連続的に貼り合わせることで、帯状の積層体を連続的に形成し、
前記加硫・発泡工程において、
前記積層体形成工程を経て連続的に形成された帯状の積層体を、当該積層体の長手方向に搬送させつつ加熱処理する、
ことを特徴とするテレビ用緩衝材の製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のテレビ用緩衝材の製造方法により作製されたことを特徴とするテレビ用緩衝材。
【請求項4】
シリコーンゴムを主成分として含む発泡ゴム層と、樹脂フィルムと、粘着材層と、がこの順に積層され、
上記発泡ゴム層の厚み方向における発泡構造が略均一であり、
上記発泡ゴム層の上記樹脂フィルムが設けられた側と反対側の面に発泡セルに起因する凹部が存在し、かつ、
上記発泡ゴム層の上記樹脂フィルムが設けられた側と反対側の面の摩擦力として測定された最大引っ張り荷重が3N以下であることを特徴とするテレビ用緩衝材。
【請求項5】
シリコーンゴムを主成分として含む発泡ゴム層と、樹脂フィルムと、粘着材層と、がこの順に積層され、
上記発泡ゴム層の厚み方向における発泡構造が略均一であり、
上記発泡ゴム層の上記樹脂フィルムが設けられた側と反対側の面に発泡セルに起因する凹部が存在し、かつ、
上記発泡ゴム層の上記樹脂フィルムが設けられた側と反対側の面が艶消し面であることを特徴とするテレビ用緩衝材。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれか1つに記載のテレビ用緩衝材において、
前記発泡ゴム層の硬度が50°以下の範囲内であることを特徴とするテレビ用緩衝材。
【請求項7】
ガラス基板を用いたディスプレイパネルと、
該ディスプレイパネルを支持するフレームと、
上記ディスプレイパネルと上記フレームとの間に挟持された状態で配置される請求項3〜6のいずれか1つに記載のテレビ用緩衝材と、を少なくとも備えることを特徴とするテレビ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−47299(P2012−47299A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−191138(P2010−191138)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】