説明

テロメリゼーション混合物からの金属−錯体触媒の分離法

テロメリゼーション反応から得られた反応混合物からの金属−錯体触媒の分離法であって、その際、金属錯体触媒を、透過性が金属錯体触媒に対してよりテロメリゼーション生成物に対して良好である少なくとも1つの膜により分離する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テロメリゼーションに際して得られる反応混合物からの金属錯体触媒の分離法に関する。
【0002】
少なくとも2つの共役二重結合を有する非環状オレフィンのテロメリゼーション、殊に、1,3−ブタジエンを含有する炭化水素混合物、殊に分解(Crack)−Cと求核剤の反応による1−オクタ−2,7−ジエニル誘導体の製造は、最近になって頻繁に記載されかつ調査された反応である。
【0003】
その際に1,3−ブタジエン2モルおよび求核剤1モルとから生じるテロメリゼーション生成物(不飽和アミン、不飽和アルコールおよびその不飽和エステルおよび不飽和エーテル)は、有機合成のための出発物質である。酸素含有誘導体は、直鎖状C−アルコールおよびC−オレフィン、殊に1ーオクタノールおよび1−オクテンの製造のための前駆物質である。1−オクタノールはまた、例えば可塑剤の製造に使用される。1−オクテンは、ポリエチレンおよびポリプロピレンの変性のために切望されるコモノマーである。
【0004】
オクタジエニル誘導体を得るためのブタジエンと求核剤のテロメリゼーションは、金属錯体、殊にパラジウム化合物によって触媒される。
【0005】
テロメリゼーション反応の例は、なかでもE.J.Smutny,J.Am.Chem.Soc.1967,89,6793;S.Takahashi,T.Shibano,N.Hagihara,Tetrahedron Lett.1967,2451;EP0561779、US3,499,042、US3,530,187、GB1178812、GB1248593、US3,670,029、US3,670,032、US3,769,352、US3,887,627、GB1354507、DE2040708、US4,142,060、US4,146,738、US4,196,135、GB1535718、US4,104,471、DE2161750およびEP0218100の中で記載される。
【0006】
DE19523335の中では、触媒系の分離は触媒系と水溶性配位子の反応およびヘキサン/水混合物による引き続く抽出によって行われ、分離に際して、テロメリゼーション生成物はヘキサン相中で、および触媒は水相中で得られる。
【0007】
EP0561779の中では、蒸留、沈殿または抽出による触媒の分離が記載される。
【0008】
DE10149348の中では、蒸留、抽出、沈殿または吸着によるテロメリゼーション混合物からの触媒の分離が行われ、かつ場合により全体がまたは部分的にテロメリゼーション反応に返送される。
【0009】
DE10329042の中では、テロメリゼーションに関して、前で挙げられた保護権が引き合いに出される。
【0010】
DE10308111の中では、一般的に、溶解したまたはコロイド状で存在する固体、殊に触媒を、非水溶媒中の溶液から膜を用いて分離することが記載される。
【0011】
従来技術から公知の方法における欠点は、触媒、殊に触媒金属が、反応混合物からの触媒系の分離に際して頻繁に損失することである。触媒系の熱分離に際して金属錯体触媒の分解が頻繁に起き、かつこの錯体触媒の金属が、使用される装置の壁に析出する。金属の回収は、高いコストを掛けてしかたいてい可能ではない。殊に、触媒金属が高価な貴金属である場合、テロメリゼーション法の経済上の効果を悩ますのは、触媒分離に際して高価な触媒金属が損失することである。同様に頻繁に観察されるべきことは、分離法、例えば熱分離、沈殿または抽出によって、分離された触媒系の活性が減衰し、そのため返送された触媒系に大量の新鮮な触媒が供給されなければならなく、または所望された活性を達成するためにさらなる後処理工程が必要とされることである。加えて、従来技術において提案された方法の中には非常にコストが掛かるものがいくつかあり、殊に抽出法がそれである。
【0012】
この従来技術から出発して、本発明の課題は、従来技術の方法の欠点の1つ以上を有さない方法を提供するという点にあった。殊に本発明の課題は、簡単な分離法を提供するという点にあって、該分離法に際して、有利には、金属−錯体触媒は可能な限り完全にかつ可能な限り少ない活性損失で分離されうる。
【0013】
さらに、従来技術から公知の方法における欠点は、たいていの公知の溶媒安定性の膜がアルカリ安定性ではなく、もしくはアルカリ安定性の膜は十分な溶媒安定性を有さないことである。さらに、反応条件下で溶媒系に対して安定性であるのみならず、強アルカリ反応条件に対しても安定性である膜が提供されるべきである。
【0014】
意想外にも、金属錯体触媒の分離が膜によりほぼ反応に等しい条件下で行われる場合、金属錯体触媒が簡単な方法でテロメリゼーション混合物から分離されうることがわかり、その際、殊に、アルカリ金属化合物に対してかつ溶媒に対して安定性である膜が使用される。それ以外にもこの方法によって、金属錯体触媒の活性が極めて十分に維持されえ、かつ該金属錯体触媒が極めて十分に分離されうることが達成される。
【0015】
それに従って、本発明の対象は、テロメリゼーションから得られた反応混合物からの金属−錯体触媒の分離法であって、該分離法は、金属錯体触媒が、少なくとも1つの、有利には塩基性アルカリ金属化合物に対してかつ溶媒に対して安定性である膜により分離されることを特徴とする。
【0016】
本発明による方法は、分離された触媒の活性が極めて十分に保たれ続けるという利点を有する。これは、熱分離法に際して頻繁に観察されるべき触媒系の熱負荷が回避されることにおそらく関係している。加えて、該方法は簡単であり、かつ例えば抽出法または吸着法に際して不可避とされるような、分離された触媒がテロメリゼーションに再び返送される場合に生成物の汚染の危険性を孕む異種物質の使用が回避される。
【0017】
以下で、本発明による方法が例示的に記載されるが、本発明の保護範囲は特許請求の範囲および明細書から生ずるものであって、本発明はそれに制限されるべきでない。特許請求の範囲自体も、本発明の開示内容に含まれる。以下で、範囲、一般式または化合物の種類が示される場合、これらは、明確に言及されている化合物の相応する範囲または群を含むのみならず、個々の値(範囲)または化合物を省くことによって得ることのできる化合物の全ての部分範囲および部分群も含むべきである。
【0018】
テロメリゼーションから得られた反応混合物からの金属−錯体触媒の本発明による分離法は、金属錯体触媒が少なくとも1つの膜により分離されることを特徴とする。本発明に従って処理されるべきテロメリゼーションの反応混合物中で、金属錯体触媒の他になお遊離配位子、殊に遊離カルベン配位子またはオルガノリン配位子が存在しているケースにおいては、これらの遊離配位子も少なくとも1つの膜により分離される場合、有利でありうる。金属錯体触媒および場合により存在する遊離配位子の分離を達成するために、有利には、透過性が金属錯体触媒に対してよりも、かつ有利にはまた、場合によって存在する遊離配位子に対してよりもテロメリゼーション生成物に対して良好である膜が使用される。膜の適合性は、簡単な方法で前試験によって調査されえ、該前試験に際して、錯体触媒および/または遊離配位子の試験溶液およびテロメリゼーション生成物が、試験されるべき膜を介して送られ、引き続き得られた透過液(Permeat)および保持液(Retentat)が分析される。
とりわけ有利には、本発明による方法において、金属錯体触媒および/または遊離配位子(殊にカルベン配位子および/またはオルガノリン配位子)をテロメリゼーション生成物と比べて少なくとも60%の割合で保持する、その化学的または物理的な特性に基づき適している膜が使用される。
【0019】
膜の使用可能性に関するさらに他の前提は、膜がテロメリゼーション−反応混合物中に存在する全ての化合物に対して、殊に場合により存在する溶媒および塩基性化合物、殊にアルカリ金属の化合物に対して安定であるべきとする点にある。従って有利には、分離活性層として、例えばEP0781166またはDE10308111の中でおよびI.Cabasso,Encyclopedia of Polymer Science and Technology,John Wiley and Sons,New York,1987の"Membranes"の中で記載されるような、ポリイミド(PI)、芳香族ポリアミド(PA)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリベンズイミダゾール、アクリロニトリル/グリシジルメタクリレート(PANGMA)、ポリベンズイミダゾロン、ポリアクリルニトリル(PAN)、ポリアリールエーテルスルホン、ポリエステル、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート(PC)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオリド(PVDF)、ポリプロピレン(PP)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)等から選択された材料からのアルカリ安定性および溶媒安定性のナノフィルターポリマー層(Nanofiltrationspolymerschicht)を有するか、またはこれらの材料の1つからなる膜が使用される。とりわけ有利には、膜として、PDMSまたはポリアミドイミドを有するか、またはこれらの材料からなるものが使用される。膜として、本発明による方法において、その分離活性層が固有の微小孔構造(PIM)を有するポリマーから構成されているか、またはその分離活性層が疎水化されたセラミック膜を介して構成されているものも使用されうる。シランで疎水化されたセラミック膜を有するものは、例えばDE10308111の中で記載される。
【0020】
有利には使用される膜の排除限界(分画分子量,MWCO)は、1000g/モルを下回り、有利には600g/モルを下回り、とりわけ有利には400g/モルを下回る。そのような膜は、例えばHITK,HermsdorfまたはGMT,Rheinfeldenから入手されうる。排除限界は、どのモル質量g/分子molまで膜を通過しうるかを示す。
上で挙げられた材料の他に、膜はさらに他の材料を有してよい。殊に、膜は、分離活性層がその上に構成される支持材料または担体材料を有してよい。そのような複合膜の場合、本来の膜の他になお支持材料が存在する。支持材料の選択はEP0781166が記載しており、そこで明確に指摘される。さらに、本発明に従って使用可能な膜中には、殊に圧力変動または高い差圧に対して膜の安定性を高める補強材料、例えば無機酸化物または無機繊維の粒子、例えばセラミック繊維またはガラス繊維が存在していてよい。
【0021】
とりわけ有利には、本発明による方法の場合、テロメリゼーション生成物の溶解度パラメータが、テロゲンとしてのアルコール、殊にテロメリゼーションに際して得られるエーテルが用いられる場合、使用される膜の溶解度パラメータ(J.M.Prausnitz,Molecular Thermodynamics of Fluid−Phase Equilibria,Prentice−Hall,NJ,1969,p298)に対して少なくとも±50√(kJ/m)、有利には少なくとも±50√(kJ/m)、しかし、有利には±500√(kg/m)以下、有利には±400√(kJ/m)以下異なるような膜が使用される。
【0022】
テロゲンとしてのアルコール、つまり殊にエーテルが使用される場合、配位子、殊にカルベン配位子またはオルガノリン配位子(遊離したまたは錯体中で結合した)対テロメリゼーションの主生成物のモル体積比は、有利には1.5以上、有利には3.0以上、およびとりわけ有利には3.5以上であるのが望ましい。モル体積差が大きいことによって、膜による配位子およびヒドロホルミル化生成物のとりわけ良好な分離が達成される。溶解度パラメータおよび分子体積は、EP0781166B1の中で、殊に段落[0053]およびそれ以後の段落の中でならびにそこで引用される文献中に記載されたように測定されうる。
【0023】
膜は、本発明による方法において、有利には膜モジュールの形で使用される。膜はこれらのモジュール内で、分離された成分の濃度分極(膜により分離された成分の濃縮)、この場合、触媒−配位子系が阻止され、かつそれ以外に必要な駆動力(圧力)が印加されうる形で該膜の保持液側を流れるように配置される。透過液は、メンブレンの透過液側で透過液捕集室内において合一されかつモジュールから排出される。ポリマー膜の通例の膜モジュールは、膜ディスク(Menbranscheiben)、膜クッション(Membrankissen)または膜ポケット(Membrantaschen)の形の膜を有する。セラミック担体をベースとする膜の通例の膜モジュールは、管状モジュールの形の膜を有する。本発明による方法において、有利には膜モジュールの形の膜が使用され、それらは、膜が膜ポケットまたは膜クッションへと熱で接合または接着されている開管式(offenkanalig)クッションモジュール系、または膜が膜ポケットまたは膜クッションへと接着または接合されており、かつスペーサーにより透過液捕集管の周囲が巻き付けられている開管式(ワイド−スペーサー)ロールモジュール、または管状モジュールにおける膜モジュールを有する。膜が膜ポケットまたは膜クッションへと熱で接合または接着されている、開管式の供給系を有する膜モジュールは、例えばSolsep社、Apeldoorn(NL)およびMET社、London(UK)からSR−5もしくはStarmen 240(それは、例えばDegussa AG,Duesseldorfの商品名P84のポリアミドから製造されうる)の名称で入手されうる。セラミック担体上に管状膜を有する膜モジュールは、例えばInocermic社,Schmalkaldenから入手されうる。
【0024】
膜上での堆積を回避するために、有利には該方法は、膜分離工程、殊に第一の膜分離工程が、0.1〜15m/秒、有利には0.2〜4m/秒、有利には0.3〜1m/秒の膜での膜面流速(Ueberstroemungsgeschwindigkeit)で実施されるように実施される。
【0025】
本発明による方法は、1つ、2つまたはそれを上回る膜の使用下で、または1つ、2つまたはそれを上回る膜モジュールの使用下で実施されうる。膜の分離能力および所望された保持(Rueckhalt)に応じて、複数の膜もしくは膜モジュールの連続的な接続によって所望された保持が得られうる。この連続的な接続は、保持液または透過液のいずれか、有利には第一の膜分離の透過液を、供給流としてさらなる膜分離に送る方法で行われうる。第一の本発明による膜分離に場合により続くさらなる膜分離は、第一の膜分離と同じ条件下でか、または他の条件下、殊に他の温度または圧力下で実施されうる。
【0026】
有利には、本発明による方法は、テロメリゼーション混合物が供給流(フィード)として膜に送られ、かつ保持液流が部分的に膜に返送されるように行われる。その際、膜に返送された部分流はフィードと一緒にされる。膜に返送されない保持液流の部分は、供給流として1つまたは複数の後続する分離段階において使用されるか、またはしかし反応に返送されるかのいずれかである。
【0027】
有利には、透過液流対供給流(返送された保持液なし)の体積流−比は、1対5〜1対20、有利には1対7.5〜1対12.5、およびとりわけ有利には1対9〜1対11である。体積流比は、差圧の変化を介して、生み出される透過液体積流に対する保持液における量制御と組み合わせて調整されうる。
【0028】
膜を介して送られる体積流が透過液流の体積流より明らかに大きい場合、有利でありうる。それというのも、この簡単な方法により膜での高い膜面流速が調整されうるからである。有利には、膜に送られる流(返送された保持液を含む供給流)対透過液流の体積流比は、100〜10000対1、有利には500〜5000対1、およびとりわけ有利には750〜1250対1である。つまり有利には、比較的高い体積流が膜を介して循環される。反応に返送されるかまたはさらなる分離に供給される保持液流の部分の大きさは、フィード流(返送された保持液なし)と透過液流との差から明らかとなる。
【0029】
本発明による分離法は、圧力がかけられる工程として行われうる。有利には、膜分離は、保持液側対透過液側の圧力差が少なくとも0.5MPa、有利には0.5〜10MPa、有利には1〜5MPaで存在するように実施される。最小圧力差を明らかに下回る場合、膜貫通フローは非常にわずかである。圧力差が10MPaの値を超える場合、たいていの膜は圧縮し始め、これは同様に膜貫通フローの低下につながる。
【0030】
膜にて得られた透過液は、金属錯体触媒および/または遊離オルガノリン配位子の割合が保持液中におけるより少なくとも50%、有利には少なくとも70%、とりわけ有利には少なくとも80%、および極めて有利には90%を上回って小さい組成を有する。
【0031】
本発明の方法に従って得られる透過液は、従来の方法により後処理されうる。透過液は、例えば1つまたは複数の熱分離装置、例えば薄層式エバポレーター、落下フィルム式エバポレーター、フラッシュエバポレーターまたは蒸留塔によって実現される熱分離段階に供給されうる。塔頂生成物として、テロメリゼーション生成物ならびに場合によって反応しなかった炭化水素、例えばジエン、オレフィンまたは脂肪族化合物、場合により反応しなかったテロゲンおよび、テロメリゼーション生成物の範囲内の沸騰温度またはそれより低い温度を有する、場合によりテロメリゼーションに際して使用された溶媒が得られ、それはさらなる後処理に供給されうる。この第一の分離装置の塔底生成物として、錯体触媒および/または遊離配位子、場合によりテロメリゼーション生成物より沸点が高い溶媒ならびにテロメリゼーション中に発生した高沸点物を含有する混合物が得られる。この塔底生成物は、有利には、熱でまたは(膜−)フィルターを用いて行われうる一部の高沸点物の排出後にテロメリゼーションに返送される。
しかし、本発明の方法に従って得られる透過液は、例えば従来技術に記載されるような抽出、沈殿または吸着に供給してもよい。
【0032】
触媒、殊に活性金属錯体触媒の損失を可能な限り小さく保つために、有利には、該方法は、1つ以上の膜による膜分離によって、テロメリゼーション混合物中に元々存在する錯体金属触媒の少なくとも80%、有利には少なくとも90%、およびとりわけ有利には少なくとも95%がテロメリゼーション混合物から分離され、かつ後続の分離段階において錯体触媒の残りの割合が分離されるように実施される。
【0033】
透過液が熱分離段階に送られる前に該透過液から内容物質の一部が除去される場合、有利でありうる。殊に、熱分離段階が行われる加圧条件下でガス状に存在するそのような内容物質を透過液から分離することが有利でありうる。そのような内容物質は、例えば反応しなかった炭化水素、または反応しなかったテロゲンであってよい。有利には、この内容物質の分離のために透過液は脱気に供給され、そこで該透過液はより小さい圧力に、有利には熱分離段階における圧力と同じかまたは該圧力より最大10%高い圧力に放圧される。放圧後にガス状で存在する物質は分離され、かつ後処理または廃棄されえ、またはしかし反応に直接返送されうる。残留する、さらに液状で存在する透過液の構成成分は、次いで熱分離段階に供給される。
【0034】
錯体触媒および/または遊離配位子の膜分離および引き続く通例の分離での関連づけられた分離によって、錯体触媒はほぼ完全にテロメリゼーション混合物から比較的穏やかな方法で分離されえ、従って大部分が活性の形で工程に再び供給されうる。熱分離に際し場合によって発生する不活性触媒は、高沸点物と一緒に排出されえ、かつ例えば後処理によって純粋な元素の金属となって回収されうる。膜分離において場合により後続する通例の分離において分離された金属錯体触媒は、テロメリゼーションに返送されうる。同様に、場合により反応混合物中に存在する遊離配位子、有利にはオルガノリン配位子またはカルベン配位子から選択された遊離配位子は、膜によりかつ場合により後続する通例の分離において分離され、かつテロメリゼーションに返送されうる。
【0035】
本発明による方法のとりわけ有利な一実施態様において、テロメリゼーション混合物は、圧力および温度(℃)に関してテロメリゼーションの反応条件と最大0〜50%、有利には0〜30%、および有利には0〜10%異なる条件下で膜に送られる。とりわけ有利には、テロメリゼーション混合物は、圧力および温度に関してテロメリゼーションの反応条件と最大0〜50%未満、有利には0〜30%未満、有利には0〜10%未満、およびとりわけ有利には全く異ならない条件下で膜に送られる。
【0036】
テロメリゼーション混合物として、本発明による方法において、例えば上で挙げられた従来技術において得られる全ての公知のテロメリゼーション混合物が使用されうる。
【0037】
有利には、テロメリゼーションからの反応混合物として、少なくとも2つの共役二重結合を有する非環状オレフィンと少なくとも1つの求核剤(テロゲン)の、周期表の第8族、第9族または第10族の金属を含有する触媒の使用下でのテロメリゼーションによって得られるテロメリゼーション混合物が使用される。
【0038】
有利なテロメリゼーションにおいて、使用物質として、共役二重結合を有する純粋な非環状オレフィン、種々のそのようなオレフィンの混合物または1つ以上の上で挙げられたオレフィンと他の炭化水素の混合物が使用されうる。有利には、使用物質として、有利には少なくとも2つの共役二重結合を有する非環状オレフィン、有利には1つの非環状オレフィンを他の炭化水素との混合物として有する炭化水素の混合物が使用される。
【0039】
とりわけ有利には、テロメリゼーションにおいて、共役二重結合を有する非環状オレフィンとして1,3−ブタジエンおよび/またはイソプレンが、そのつど、純粋物質、純粋物質の混合物としてかまたは1つまたは両方のオレフィンと他の炭化水素の混合物においてのいずれかで使用される。極めて有利には、テロメリゼーションにおいて使用物質として、90質量%を超えてC−炭化水素を含有しかつ非環状オレフィンとして1,3−ブタジエンを有する混合物が使用される。
【0040】
テロメリゼーションのための使用物質として、とりわけ有利には、1,3−ブタジエンが富化された炭化水素流が適している。炭化水素流として、殊にC−炭化水素留分が使用されうる。該炭化水素流は、有利には、例えば1,3−ブタジエンと他のC−およびC−またはC炭化水素の混合物であってよい。そのような混合物は、例えば、精油所ガス、ナフサ、ガス油、LPG(液化石油ガス)、NGL(天然ガス液)等が反応させられる、エチレンおよびプロピレンの製造のための開裂(分解)−工程に際して生ずる。該工程に際して副生物として生ずるC−留分は、1,3−ブタジエンの他にモノオレフィン(1−ブテン、シス−ブタ−2−エン、トランス−ブタ−2−エン、イソブテン)、飽和炭化水素(n−ブタン、イソブタン)、アセチレン系不飽和化合物(エチルアセチレン(ブチン)、ビニルアセチレン(ブテニン)、メチルアセチレン(プロピン))ならびにアレン系不飽和化合物(主として1,2−ブタジエン)を含有してよい。さらに、これらの留分は少量のC−およびC炭化水素を含有してよい。C−留分の組成は、そのつどの開裂法、作動パラメータおよび使用物質に依存する。個々の成分の濃度は、典型的には以下の範囲内に存在する:
【表1】

【0041】
その反応混合物が本発明による方法において使用される有利なテロメリゼーションにおいて、有利には、35質量%を上回る1,3−ブタジエン含有率を有する炭化水素混合物が使用される。
【0042】
使用炭化水素は、本発明による方法において妨げとなりうる微量の酸素−、窒素−、硫黄−、ハロゲン−、殊に塩素−および重金属化合物を頻繁に有しうる。それゆえ、これらの物質をまず分離することが目的に適っている。妨げとなる化合物は、例えば二酸化炭素またはカルボニル化合物、例えばアセトンまたはアセトアルデヒドでありうる。これらの不純物の分離は、例えば、殊に水または水溶液による洗浄によってか、または吸着によって行われうる。水洗浄によって、親水性成分、例えば窒素成分が炭化水素混合物から完全にまたは部分的に除去されうる。窒素成分の例は、アセトニトリルまたはN−メチルピロリドン(NMP)である。酸素化合物も、部分的に水洗浄を介して除去されうる。水洗浄は水により直接、またはしかし、例えばNaHSOのような塩を有してよい水溶液により実施されうる(US3,682,779、US3,308,201、US4,125,568、US3,336,414またはUS5,122,236)。
【0043】
炭化水素混合物を水洗浄後に乾燥工程に流通させる場合、有利でありうる。乾燥は、従来技術において公知の方法に従って実施されうる。溶解した水が存在する場合、乾燥は、例えば乾燥剤としての分子ふるいの使用下または共沸蒸留によって実施されうる。遊離水は、例えば凝結剤による相分離によって分離されうる。
【0044】
吸着器は、微量範囲内の不純物を除去するために使用されうる。これはテロメリゼーション工程において、すでに微量の不純物に対して反応し顕著な活性減衰を伴う貴金属触媒が使用される場合、殊に有利でありうる。しばしば、窒素化合物または硫黄化合物は、前接続された吸着器を介して除去される。吸着剤の例は、酸化アルミニウム、分子ふるい、ゼオライト、活性炭または金属で含浸されたアルミナである(例えば、US4,571,445またはWO02/53685)。吸着剤は、異なる会社から、例えばAlcoa社からSelexsorb(R)の名称で、UOPまたはAxensから、例えば製品シリーズSAS、MS、AA、TG、TGSまたはCMGで販売される。
【0045】
テロメリゼーションにおいて使用される炭化水素混合物からの場合によって妨げとなるアセチレン系不飽和化合物の分離は、例えば抽出によって行われうる。そのような抽出は久しく公知であり、かつ後処理工程として、1,3−ブタジエンを分解−Cから取得する大部分の装置の一体型の構成要素である。アセチレン系不飽和化合物の分解−Cからの抽出分離法は、例えばErdoel und Kohle−Erdgas−Petrochemie vereinigt mit Brennstoffchemie Bd.34, Heft 8,Augst 1981,Seiten 343〜346の中で記載される。この方法の場合、第一の段階において、水を含有するNMPによる抽出蒸留によって、くり返し不飽和化された炭化水素ならびにアセチレン系不飽和化合物がモノオレフィンおよび飽和炭化水素から分離される。NMP抽出物からは、不飽和炭化水素が蒸留により分離され、かつ炭化水素蒸留物からは、水を含有するNMPによる第二の抽出蒸留によってC原子4個を有するアセチレン系不飽和化合物が分離される。分解−Cの後処理に際して、さらなる第二の蒸留によって純粋な1,3−ブタジエンが分離され、その際、副生物としてメチルアセチレンおよび1,2−ブタジエンが生ずる。
任意には、1,3−ブタジエン含有流からのアセチレン系化合物の分離は、例えば抽出剤としての1つ以上のイオン性液体の使用下で行われうる。
【0046】
有利にはアセチレン系化合物を5質量%未満含有する、抽出によって得られた炭化水素流は、とりわけ有利には、使用物質としてテロメリゼーションにおいて直接使用されうる。
【0047】
一方で、使用されるべき炭化水素流からのアセチレン系不飽和化合物の部分的な除去は、ジエンおよびモノオレフィンの存在下でのアセチレン系不飽和化合物の選択的水素化によって、例えば銅含有触媒、パラジウム含有触媒または混合触媒にて実施してよい。
【0048】
アセチレン系不飽和化合物として、テロメリゼーションにおいて使用される使用物質は、殊に、1,3−ブタジエンを有するC−炭化水素混合物が使用される場合、頻繁に、殊にビニルアセチレンおよび1−ブチンを含有する。
【0049】
本発明による方法において使用されるテロメリゼーション混合物は、有利には、触媒系として、金属のパラジウム(Pd)、鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、コバルト(Co)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ニッケル(Ni)または白金(Pt)の金属錯体触媒、殊に金属カルベン錯体が使用されるテロメリゼーションに由来する。配位子として、例えばリン配位子、例えばホスフィン、ホスフィニン、ホスフィナイトまたはホスファイト、例えばトリフェニルホスフィンおよび/またはカルベン配位子が使用されえ、その際、異なった配位子を同時に使用することも有利でありうる。
【0050】
有利には、テロメリゼーションに際して、パラジウム化合物、殊にパラジウムカルベン錯体が、触媒としてテロメリゼーション工程において使用される。触媒として使用される金属錯体触媒中の配位子は、とりわけ有利には、三価のリン化合物またはカルベンである。
とりわけ有利には、ヘテロ原子によって安定化された少なくとも1つのカルベンを配位子として有する金属錯体触媒が触媒としてテロメリゼーションにおいて使用される。このような配位子の例は、なかでも文献DE10128144、DE10149348、DE10148722、DE10062577、EP1308157およびWO01/66248の中で記載される。これらの文献および殊にそこで記載された配位子は、本出願の開示内容に含まれる。そのうえ活性錯体はなお、さらに他の配位子を有してよい。カルベン配位子は、非環状配位子(offene Liganden)または環状配位子であってよい。
【0051】
有利には、テロメリゼーションにおいて、テロメリゼーション触媒として一般式(VIII)
【化1】

[式中、R、R‘‘、R‘およびRは同じかまたは異なっており、水素または炭化水素基であり、その際、該炭化水素基は同じかまたは異なっており、炭素原子1〜50個を有するアルキル基、炭素原子2〜50個を有するアルケニル基、炭素原子2〜50個を有するアルキニル基および炭素原子6〜30個を有するアリール基の群から選択される、その中で少なくとも1個の水素原子が官能基で置換されていてよい直鎖状、分枝鎖状または環状基であり、
かつ/またはRおよびR‘‘および/またはR‘およびRは同じかまたは異なっており、炭素原子2〜20個を有する炭素骨格および式VIIIに従う窒素原子を有する環系の一部であり、その際、RおよびR‘‘および/またはR‘およびRの炭素原子は数えられず、かつその際、該環系の少なくとも1個の水素原子は官能基で置換されていてよく、かつ/または該環系の少なくとも1個の炭素原子はS、P、OおよびNからなる群から選択されるヘテロ原子で置換されていてよく、
かつ/またはRおよび/またはR‘‘および/またはR‘および/またはRは、炭素原子1〜20個からの橋によって配位子Lと結合しており、その際、基R、R‘‘、R‘およびRの炭素原子は一緒に数えられず、
およびLは、中性の二電子供与体、環系の一部および/またはアニオン性配位子であるさらに他の配位子であり、その際、官能基は、例えば:−CN、−COOH、−COO−アルキル−、−COO−アリール−、−OCO−アルキル−、−OCO−アリール−、−OCOO−アルキル−、−OCOO−アリール−、−CHO、−CO−アルキル−、−CO−アリール−、−O−アルキル−、−O−アリール−、−NH、−NH(アルキル)−、−N(アルキル)−、−NH(アリール)−、−N(アルキル)−、−F、−Cl、−Br、−I、−OH、−CF、−NO、−フェロセニル、−SOHおよび−POの群から選択されていてよく、その際、アルキル基は、例えば炭素原子1〜24個を含み、かつアリール基は、例えば炭素原子5〜24個を含んでよい]のカルベン配位子を有するパラジウムカルベン錯体が使用される。そのような配位子の製造は、例えばDE10148722から引き出されうる。
【0052】
有利には、その反応混合物が本発明による方法において膜に送られるテロメリゼーションにおいて、テロメリゼーション触媒として一般式(VIII)で示され、式中、
;R;は同じかまたは異なっており、炭素原子1〜24個を有する直鎖状、分枝鎖状、置換または非置換の環状または非環状アルキル基、または炭素原子6〜24個を有する置換または非置換の単環状または多環状アリール基または
炭素原子4〜24個およびN、O、Sの群からの少なくとも1個のヘテロ原子を有する単環状または多環状の、置換または非置換の複素環であり、
R‘、R‘‘:は同じかまたは異なっており、
水素、アルキル、アリール、ヘテロアリール、−CN、−COOH、−COO−アルキル−、−COO−アリール−、−OCO−アルキル−、−OCO−アリール−、−OCOO−アルキル−、−OCOO−アリール、−CHO、−CO−アルキル−、−CO−アリール−、−O−アルキル−、−O−アリール−、−NH、−NH(アルキル)−、−N(アルキル)−、−NH(アリール)−、−N(アルキル)−、−F、−Cl、−Br、−I、−OH、−CF、−NO、−フェロセニル、−SOH、−POであり、その際、アルキル基は炭素原子1〜24個を含み、かつアリール−およびヘテロアリール基は炭素原子5〜24個を含み、かつ基R‘およびR‘‘は、架橋する脂肪族環または芳香族環の一部であってもよい、カルベン配位子を有するパラジウムカルベン錯体が使用される。
【0053】
極めて有利には、5環を有するカルベン配位子が使用される。有利には本発明による方法において使用される5環を有する配位子は、例えば式IX、X、XIおよびXII
【化2】

[式中、R2;R3;は同じかまたは異なっており、
炭素原子1〜24個を有する直鎖状、分枝鎖状、置換または非置換の環状または非環状アルキル基、または
炭素原子6〜24個を有する置換または非置換の、単環状または多環状アリール基または
炭素原子4〜24個およびN、O、Sの群からの少なくとも1個のヘテロ原子を有する単環状または多環状の、置換または非置換の複素環であり、
、R、R、R:は同じかまたは異なっており、
水素、アルキル、アリール、ヘテロアリール、−CN、−COOH、−COO−アルキル−、−COO−アリール−、−OCO−アルキル−、−OCO−アリール−、−OCOO−アルキル−、−OCOO−アリール、−CHO、−CO−アルキル−、−CO−アリール−、−O−アルキル−、−O−アリール−、−NH、−NH(アルキル)−、−N(アルキル)−、−NH(アリール)−、−N(アルキル)−、−F、−Cl、−Br、−I、−OH、−CF、−NO、−フェロセニル、−SOH、−POであり、その際、アルキル基は炭素原子1〜24個を含み、かつアリール−およびヘテロアリール基は炭素原子5〜24個を含み、かつ基R‘およびR‘‘は、架橋する脂肪族環または芳香族環の一部であってもよい]のものが使用される。一般式IXまたはXに相当するカルベン配位子、およびこのような配位子を含有する錯体の例は、専門文献の中ですでに記載されている(W.A.Hermann,C.Koecher,Angew.Chem.1997,109,2257;Angew.Chem.Int.Ed.Engl.1997,36,2162;V.P.W.Boehm.C.W.K.Gstoettmayr,T.Weskamp,W.A.Hermann,J.Organomet.Chem.2000,595,186;DE4447066)。
【0054】
基RおよびRは、殊に、元素の窒素、酸素および硫黄から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含有する単環状または多環状の環、および場合により−CN、−COOH、−COO−アルキル−、−COO−アリール−、−OCO−アルキル−、−OCO−アリール−、−OCOO−アルキル−、−OCOO−アリール−、−CHO、−CO−アルキル−、−CO−アリール、−アリール−、−アルキル−、−O−アルキル、−O−アリール、−NH、−NH(アルキル)−、−N(アルキル)−、−NH(アリール)−、−N(アルキル)−、−F、−Cl、−Br、−I、−OH、−CF、−NO、−フェロセニル、−SOH、−POの群から選択されるさらに他の置換基を有してよい。アルキル基は炭素原子1〜24個を有し、かつアリール基は炭素原子5〜24個を有する。Pdが周期表の第8族〜第10族の金属として用いられるケースにおいて、1つまたは両方の配位子RおよびRは、有利にはこれらの意味を有する。
【0055】
、R、R、R、Rおよび/またはRは、そのつど同じかまたは異なっていてよく、かつ−H、−CN、−COOH、−COO−アルキル、−COO−アリール、−OCO−アルキル、−OCO−アリール、−OCOO−アルキル、−OCOO−アリール、−CHO、−CO−アルキル、−CO−アリール、−アリール、−アルキル、−アルケニル、−アリル、−O−アルキル、−O−アリール、−NH、−NH(アルキル)、−N(アルキル)、−NH(アリール)、−N(アルキル)、−F、−Cl、−Br、−I、−OH、−CF、−NO、−フェロセニル、−SOH、−POの群からの少なくとも1個の置換基を有してよく、その際、アルキル基は炭素原子1〜24個、有利には1〜20個を、アルケニル基は炭素原子2〜24個を、アリル基は炭素原子3〜24個を、および単環状または多環状アリール基は炭素原子5〜24個を含む。基R〜Rは、例えば(CH)−または(CH)−基を介して互いに共有結合していてよい。
【0056】
酸性水素原子を有する置換基は、プロトンの代わりに金属イオンまたはアンモニウムイオンも有してよい。
基RおよびRは、とりわけ有利には、5−および6員環のヘテロアルカン、ヘテロアルケンおよびヘテロ芳香族化合物、例えば1,4−ジオキサン、モルホリン、γ−ピラン、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピロール、フラン、チオフェン、ピラゾール、イミダゾール、チアゾールおよびオキサゾールから誘導される基であってよい。以下の表の中で、このような基RおよびRの具体的な例が示されている。この表において、〜は、そのつど5員複素環への結合点を示す。
【0057】
【化3】

【0058】
この発明の範囲内では、カルベン配位子とは、配位子として機能しうる遊離カルベンのみならずまた金属に配位されたカルベンとも理解される。触媒金属、殊に、反応条件下で活性触媒を形成する触媒金属として使用されるパラジウムは、種々の方法でテロメリゼーションの工程中に導入されうる。
【0059】
金属(パラジウム)は、
a)金属(パラジウム)が、有利には酸化状態(II)または(0)で存在する金属−カルベン錯体(パラジウム−カルベン錯体)としてかまたは
b)現場で触媒が形成される金属化合物(前駆物質としてのパラジウム化合物)の形で
テロメリゼーションの工程中に導入されうる。
【0060】
a)について
例は、パラジウム(0)カルベン−オレフィン−錯体、パラジウム(0)ジカルベン錯体およびパラジウム(II)ジカルベン錯体、パラジウム(0)カルベン−1,6−ジエン−錯体である。1,6−ジエンとして、例えばジアリルアミン、1,1′−ジビニルテトラメチルジシロキサン、2,7−オクタジエニルエーテルまたは2,7−オクタジエニルアミンが機能しうる。例は、以下の式I−a〜I−eを示す。
【0061】
【化4】

【0062】
【化5】

【0063】
該パラジウムのカルベン錯体は、種々の方法で製造されうる。簡単な手段は、例えばカルベン配位子の付加またはパラジウム錯体上の配位子のカルベン配位子との交換である。そうして、例えば錯体I−f〜I−iは、錯体のビス(トリ−o−トリルホスフィン)パラジウム(0)のリン配位子の交換によって得られる(T.Westkamp,W.A.Herrmann,J.Organomet.Chem.2000,595,186)。
【0064】
【化6】

【0065】
b)について
パラジウム前駆物質として、例えば:酢酸パラジウム(II)、塩化パラジウム(II)、臭化パラジウム(II)、テトラクロロパラジウム酸リチウム、アセチルアセトネートパラジウム(II)、パラジウム(0)−ジベンジリデンアセトン−錯体、プロピオン酸パラジウム(II)、塩化ビスアセトニトリルパラジウム(II)、二塩化ビストリフェニルホスファンパラジウム(II)、塩化ビスベンゾニトリルパラジウム(II)、ビス(トリ−o−トリルホスフィン)パラジウム(0)およびさらに他のパラジウム(0)−およびパラジウム(II)錯体が使用されうる。
【0066】
一般式IXおよびXに従うカルベンは、遊離カルベンの形でかまたは金属錯体として使用されえ、または現場でカルベン前駆物質から作製されうる。
【0067】
カルベン前駆物質として、例えば一般式XIIIおよびXIV
【化7】

【0068】
[式中、R、R、R、R、R、Rは、式IXにおける意味と同じ意味を有し、かつYは、1価のアニオン基または化学量論に従ってそれに応じて多価のアニオン基である]に従うカルベンの塩が適している。
【0069】
Yの例は、ハロゲン化物、硫酸水素塩、硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アリールスルホン酸塩、ホウ酸塩、炭酸水素塩、炭酸塩、アルキルカルボン酸塩、アリールカルボン酸塩およびフェノラートである。
【0070】
カルベンの塩から、相当するカルベンを、例えば塩基との反応によって遊離させることができる。
【0071】
形式的に全質量に対するパラジウム−金属のppm(質量)で示される金属錯体触媒の濃度は、テロメリゼーション混合物中で、有利には0.01〜1000ppm、有利には0.5〜100ppm、とりわけ有利には1〜50ppmである。カルベン配位子またはオルガノリン配位子、有利にはカルベン配位子対金属、殊に対Pdの比[モル/モル]は、有利には0.01:1〜250:1、とりわけ有利には1:1〜100:1および極めて有利には1:1〜50:1である。カルベン配位子の他に、なおさらに他の配位子、例えば上で挙げられたオルガノリン配位子、例えばトリフェニルホスフィンが反応混合物中に存在してよい。
【0072】
求核剤(VII)として、有利には一般式
1a−O−H (VIIa)、または(R1a)(R1b)N−H (VIIb)またはR1a−COOH (VIIc)
[式中、R1aおよびR1bは互いに無関係に、水素、直鎖状、分枝鎖状または環状のC〜C22−アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、C〜C18アリール基または−CO−アルキル−(C〜C)−基またはCO−アリール−(C〜C10)−基から選択されており、その際、これらの基は、−CN、−COOH、−COO−アルキル−(C〜C)、−CO−アルキル−(C〜C)、−アリール−(C〜C10)、−COO−アリール−(C〜C10)、−CO−アリール−(C〜C10)、−O−アルキル−(C〜C)、−O−CO−アルキル−(C〜C)、−N−アルキル−(C〜C)、−CHO、−SOH、−NH、−F、−Cl、−OH、−CF、−NOの群から選択される置換基を含有してよく、かつその際、基R1aおよびR1bは共有結合を介して互いに結合していてよい]の化合物が使用される。有利には、求核剤として、基R1aおよび場合によりR1bが水素、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−ブチル、s−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、オクテニル、オクタジエニル、イソノニル、2−エチルヘキシル、n−ノニル、フェニル、m−、o−、またはp−メチルフェニル、ナフチル、2,4−ジ−t−ブチルフェニル、2,6−ジ−t−ブチルメチルフェニル、水素カルボニル、メチルカルボニル、エチルカルボニル、プロピルカルボニルまたはフェニルカルボニルである化合物が使用される。
【0073】
とりわけ有利には、その反応混合物が本発明による方法において膜に送られるテロメリゼーションにおいて、求核剤(VII)として、水、アルコール、フェノール、ポリオール、カルボン酸、アンモニアおよび/または第一級または第二級アミンが使用される。特にこれは:
−水、アンモニア、
−モノアルコールおよびフェノール、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、アリルアルコール、n−ブタノール、i−ブタノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、イソノナノール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール、シクロペンタノールまたは2,7−オクタジエン−1−オール、フェノール、
−ジアルコール、例えばエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、2,3−ブタンジオールおよび1,3−ブタンジオール、
−ヒドロキシ化合物、例えばα−ヒドロキシ酢酸エステル、
−第一級アミン、例えばメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、オクチルアミン、2,7−オクタジエニルアミン、ドデシルアミン、エチレンジアミンまたはヘキサメチレンジアミン、
−第二級アミン、例えばジメチルアミン、ジエチルアミン、N−メチルアニリン、ビス(2,7−オクタジエニル)アミン、ジシクロヘキシルアミン、メチルシクロヘキシルアミン、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、ピペラジンまたはヘキサメチレンイミンまたは
−カルボン酸、例えばギ酸、酢酸、プロパン酸、ブテン酸、イソブテン酸、安息香酸、1,2−ベンゾールジカルボン酸(フタル酸)である。
【0074】
極めて有利には、求核剤(VII)としてテロメリゼーションにおいて、メタノール、エタノール、2−エチルヘキサノール、オクタノール、オクテノール、オクタジエノール、イソプロパノール、n−プロパノール、イソブタノール、n−ブタノール、イソノナノール、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、n−ブタン酸、イソブタン酸、安息香酸、フタル酸、フェノール、ジメチルアミン、メチルアミン、アンモニアおよび/または水が使用される。有利には、求核剤としてメタノールが使用される。
【0075】
求核剤対少なくとも2つの共役二重結合を有するテロメリゼーションにおいて反応されるべき出発オレフィンの比に関して、テロゲン中の活性水素原子の数が考慮されるべきである。そうして、例えばメタノールは1個の活性水素原子を有し、エチレングリコールは2個の活性水素原子を有し、メチルアミンは2個の活性水素原子を有する・・・。
【0076】
出発オレフィンと反応しうる求核剤の活性水素原子1モル当たり、有利には0.001モル〜10モルの出発オレフィンがテロメリゼーション反応において使用される。液相によるテロメリゼーションの反応の実施に際して、活性水素1モル当たり0.1モル〜2モルの出発オレフィンの比がとりわけ有利である。
【0077】
テロメリゼーションが溶媒の存在下で実施される場合、有利でありうる。テロメリゼーション反応のための溶媒として、反応条件にて液体として存在する場合、使用される求核剤、および/または不活性の有機溶媒が使用されうる。反応条件下で固体として存在する求核剤が使用される場合、またはテロメリゼーションの反応条件下で固体として生ずるとされる生成物の場合、溶媒の添加が有利である。適した溶媒は、なかでも脂肪族、脂環式および芳香族の炭化水素、例えばC〜C20−アルカン、低級アルカン(C〜C20)の混合物、シクロヘキサン、シクロオクタン、エチルシクロヘキサン、アルケンおよびポリエン、ビニルシクロヘキセン、分解−C−留分からのC−炭化水素、ベンゼン、トルエンおよびキシレン;極性溶媒、例えば第三級および第二級アルコール、アミド、例えばアセトアミド、ジメチルアセトアミドおよびジメチルホルムアミド、ニトリル、例えばアセトニトリルおよびベンゾニトリル、ケトン、例えばアセトン、メチルイソブチルケトンおよびジエチルケトン;カルボン酸エステル、例えば酢酸エチルエステル、エーテル、例えばジプロピルエーテル、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル、メチルオクチルエーテル、メチル第三級ブチルエーテル、エチル第三級ブチルエーテル、3−メトキシオクタン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アニソール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールおよびポリプロピレングリコールのアルキルエーテルおよびアリールエーテルおよび他の極性溶媒、例えばスルホラン、ジメチルスルホキシド、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートおよび水である。イオン性液体、例えばイミダゾリウム塩またはピリジニウム塩も溶媒として使用されうる。該溶媒は、単独でまたは種々の溶媒の混合物として使用されうる。
【0078】
しばしば、テロメリゼーション反応を塩基の存在下で実施することが有利である。有利には、7より小さいpKb値を有する塩基性成分、殊に、アミン、アルコレート、フェノラート、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩の群から選択される化合物が使用される。
【0079】
塩基性成分として、例えば、非環状または/および開鎖であってよいアミン、例えばトリアルキルアミン、アミド、脂肪族または/および芳香族カルボン酸のアルカリ塩または/およびアルカリ土類塩、例えば酢酸塩、プロピオン酸塩、安息香酸塩もしくは相応する炭酸塩、炭酸水素塩、アルカリ元素および/またはアルカリ土類元素のアルコラート、リン酸塩、リン酸水素塩または/および、有利にはリチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、セシウム、アンモニウム化合物およびホスホニウム化合物の水酸化物が適している。有利なのは、添加剤として、アルカリ元素およびアルカリ土類元素の水酸化物および一般式IV、VまたはVIに従う求核剤(VII)の金属塩である。
【0080】
ROMe RNMe RCOOMe
IV V VI
Me=一価の金属または一価の金属等価物で、RおよびRは、上でR1aに関して示された意味を有し、かつRは、上でR1bに関して示された意味を有する。
【0081】
有利には、塩基性成分について0.01モル%〜10モル%(出発オレフィンに対して)、有利には0.1モル%〜5モル%、および極めて有利には0.2モル%〜1モル%が使用される。
テロメリゼーションは連続的にまたは不連続的に運転されえ、かつ特定の反応器タイプの使用に制限されない。その中で反応が実施されうる反応器の例は、撹拌槽反応器、撹拌槽カスケード、流管およびループ型反応器である。種々の反応器の組み合わせ、例えば後接続された流管を有する撹拌槽反応器も可能である。
【0082】
高い空時収量を顧慮して、テロメリゼーションは、有利には使用オレフィンが完全に反応するまで実施されない。これは殊に、使用オレフィンが1,3−ブタジエンである場合、有利でありうる。このケースにおいては、殊に求核剤としてのメタノールが使用される場合、反応率は最大95%まで、とりわけ有利には88%まで制限される。
【0083】
テロメリゼーション反応が実施される温度は、有利には10〜180℃の範囲内、有利には30〜120℃の範囲内、およびとりわけ有利には40〜100℃の範囲内にある。反応は、有利には標準圧力でまたは高められた圧力で、殊に0.15〜30MPa、有利には0.2〜12MPa、とりわけ有利には0.5〜6.4MPa、および極めて有利には1〜5MPaの高められた圧力で実施される。
【0084】
従って本発明による方法は、膜分離がテロメリゼーションの反応条件の範囲内にある条件下で行われるその有利な実施態様において、該膜分離が、有利には5〜180℃、有利には15〜120℃、およびとりわけ有利には20〜100℃の温度で実施されるように実施される。極めて有利には、膜分離は80〜100℃の温度で実施される。有利には、膜分離は同じ理由から、標準圧力でまたは高められた圧力で、殊に0.075〜30MPa、有利には0.1〜12MPa、とりわけ有利には0.25〜6.4MPa、および極めて有利には0.5〜5MPaの高められた圧力で行われる。
【0085】
殊に、本発明による方法は、式II
【化8】

[式中、Xは、基OR1aまたはNR1a1bであり、その際、R1aおよびR1bは互いに無関係に、水素、直鎖状、分枝鎖状または環状C〜C22−アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、C〜C18アリール基または−CO−アルキル−(C〜C)−基または−CO−アリール−(C〜C10)−基から選択されており、その際、これらの基は、基−CN、−COOH、−COO−アルキル−(C〜C)、−CO−アルキル−(C〜C)−、−アリール−(C〜C10)、−COO−アリール−(C〜C10)、−CO−アリール−(C〜C10)、−O−アルキル−(C〜C)、−O−CO−アルキル−(C〜C)、−N−アルキル2−(C〜C)、−CHO、−SOH、−NH、−F、−Cl、−OH、−CF、−NOから選択される置換基を含有してよく、かつその際、基R1aおよびR1bは、共有結合を介して互いに結合していてよい]に従う化合物を1,3−ブタジエンを含有する炭化水素流から製造するために使用されうる。
【0086】
殊に、本発明による方法は、式IIIaまたはIIIb
【化9】

の化合物の製造に際して、1,3−ブタジエンと式VIIa、VIIbまたはVIIc
1a−O−H VIIa (R1a)(R1b)N−H VIIb R1a−COOH VIIc
その際、R1aおよびR1bは上で挙げられた意味を有する、に従う求核剤(VII)の反応によって得られるテロメリゼーション混合物の後処理のために使用されうる。
【0087】
とりわけ有利には、テロメリゼーションにより式IIの化合物が製造され、式中、XはOR1aまたはNR1a1bであり、
1aは、H、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−ブチル、s−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、オクテニル、オクタジエニル、イソノニル、2−エチルヘキシル、n−ノニル、フェニル、m−、o−、またはp−メチルフェニル、ナフチル、2,4−ジ−t−ブチルフェニル、2,6−ジ−t−ブチルメチルフェニル、水素カルボニル、メチルカルボニル、エチルカルボニル、プロピルカルボニルまたはフェニルカルボニルであり、かつ/または
1bは、H、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−ブチル、s−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、オクテニル、オクタジエニル、イソノニル、2−エチルヘキシル、n−ノニル、フェニル、m−、o−、またはp−メチルフェニル、ナフチル、2,4−ジ−t−ブチルフェニル、2,6−ジ−t−ブチルメチルフェニル、水素カルボニル、メチルカルボニル、エチルカルボニル、プロピルカルボニルまたはフェニルカルボニルである。極めて有利には、本発明による方法により、式IIIaに従うR1a=水素、メチル、エチル、フェニルまたはメチルカルボニルの化合物が製造される。式IIIaおよびIIIbの化合物は、シス形でもトランス形でも存在してよい。
【0088】
極めて有利には、テロメリゼーションにより2,7−オクタジエニル誘導体、殊に1−メトキシオクタ−2,7−ジエンが製造され、該誘導体から両方の二重結合の水素化および引き続くメタノール分解によって1−オクテンが製造されうる。
【0089】
本発明は図1および2を基にして例示的に記載されるが、該発明はこの実施態様に制限されるべきではない。
【0090】
図1では、本発明による方法の一実施態様の概略図が示されている。この実施態様の場合、テロメリゼーションの反応物1および返送流6が反応器Rの中に供給され、該反応器中でテロメリゼーションが行われる。その際、反応器は攪拌槽または管型反応器であってよい。テロメリゼーション混合物2は、膜Mに直接送られる。膜にて得られた保持液流3は、反応に返送される。膜にて得られた透過液流4は、熱分離装置Dの中に、例えば薄層式エバポレーターの中に送られる。この中で、テロメリゼーション生成物と、流5として熱分離装置を抜け出す場合により反応しなかったオレフィンと、高沸点物および膜分離において分離されなかった錯体触媒および/または遊離配位子を含有しかつ反応器Rの中に返送される流6とへの分離が行われる。
図2では、実施例1に従う試験装置中での工程の実施が概略的に示される。該工程は、取り付けられた攪拌機およびナノフィルターNを有する反応器Rの中での反応からなる。装置全体はアルゴンARにより洗浄されえ、かつ酸素不含に調整されうる。反応のために、パラジウム化合物および配位子を含有する出発材料混合物Eが反応器Rの中に装入されかつ反応させられる。反応生成物はナノフィルターNに移送される。ナノフィルターから、膜により主に反応生成物からなる透過液Pが得られる。ナノろ過に際して生ずる、触媒ならびに配位子を含有する保持液RTは反応器中に返送される。それによって、分離された触媒−配位子混合物が濃縮される。
【0091】
反応器出口でサンプルのPRMが、得られた反応混合物の分析のために採取されうる。高圧ポンプHPを用いて、反応混合物はナノフィルターNに通ずる循環路に供給される。再循環ポンプRPは、膜を流れる必要とされる流量を調整する。透過液側では、ナノフィルターから透過液Pが取り出される。透過液Pのための排出管路には、透過液のサンプルPPを採取するためのサンプル採取可能性が存在する。ナノフィルターからの保持液の排出管路には、サンプル採取装置が存在しており、該装置により保持液PRのサンプルが分析目的のために採取されうる。
【0092】
以下の実施例は本発明をより詳細に説明するものであるが、特許請求の範囲および明細書から生じる保護範囲を限定しない。
【0093】
実施例1
例えば図2の中で示される試験装置中に、テロメリゼーション反応のために出発材料(E)を、酸素排除下でアルゴン(Ar)により事前に洗浄することによって以下の組成で装入した:
・メタノール331.4g
・分解C4 1170g(そのうち1,3−ブタジエン511.2g)(Oxeno Olefinchemie GmbH)
・パラジウムアセチルアセテート0.1040g(Umicore)
・1,3−ジメシチルイミダゾリウムクロリド0.7658g(Degussa AG)
・ナトリウムメチレート7.6g(Aldrich)
・o−クレゾール13.42g(Aldrich)
・トリプロピレングリコール200.8g(Aldrich)
全ての出発材料が80℃で反応器中に装入された後、最後に、配位子(1,3−ジメシチルイミダゾリウムクロリド)を有するPd−触媒をメタノールの残留量(100g)とともに添加し、かつそれにより反応を開始させた。反応器にて1時間ごとにサンプル採取を行うことによって、反応挙動をGCにより調査した。
【0094】
反応を、25℃に冷却することによって240分後に中断した。引き続き、溶解した触媒系を有する反応生成物混合物をナノフィルター装置(N)を介して還流させた。これは高圧ポンプを介して供給され、かつ必要とされる膜間差圧を系において構築するユニットであった。そこから、ろ過されるべき媒体は再循環ポンプを介して80cmの面積を有するOsmota社の膜モジュール"Memcell"内に達した。このモジュール内にはPDMS型(放射線架橋6%)−PPSU(ポリフェニレンスルホン)(GKSS、Geesthacht)の膜が取り付けられており、該膜に30barの膜間差圧で1.7m/sで流した。ガス流出を防止するため透過液側で1.7barの圧力を調整し、それによって30barの膜間差圧にて、保持液側で31.7barを調整した。
【0095】
ナノフィルターを介した還流運転中に、系から膜を介して、主に反応生成物からなる透過液を取り出した。触媒ならびに配位子1.3−ジメシチルイミダゾリウムクロリドを、このバッチ濃縮の枠内で膜によって十分に保持し、かつ反応器(保持液)中で富化した。反応生成物全体がナノフィルター装置を介して反応器中で約10の体積濃縮係数分、富化された後、試験を終了した。
【0096】
ナノフィルターを、透過液フローおよびパラジウムの保持に関して試験した。第1表は、実施例1による試験の結果を示す。
【0097】
【表2】

【0098】
ナノフィルターは、15〜20[kg/mh]の間の特有の透過液フロー能力(Permeatflussleistungen)にてPdに対し約90%のほぼ安定な膜保持を示した。ナノフィルター全体を介しての量的関係は、Pd−材料の21.9%が系から透過液を介して取り出された一方で、最初の使用したパラジウム材料の78.1%は保持液中に残留することを示した。混合透過液の後処理のための第二のNF段階を介したさらなるPd保持のために定められた試験により、そこでも膜によるPd保持はなお85%であることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明による方法の一実施態様の概略を示す図
【図2】実施例1に従う試験装置中での工程の実施を概略的に示す図
【符号の説明】
【0100】
1 反応物、 2 テロメリゼーション混合物、 3 保持液流、 4 透過液流、 5 流、 6 返送流、 R 反応器、 M 膜、 D 熱分離装置、 P 透過液、 PP 透過液のサンプル、 PR 保持液のサンプル、N ナノフィルター、 RP 再循環ポンプ、 HP 高圧ポンプ、 R 反応器、 RT 保持液、 Ar アルゴン、 E 出発材料混合物、 PRM サンプル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テロメリゼーションから得られた反応混合物からの金属錯体触媒の分離法において、金属錯体触媒を少なくとも1つの膜により分離することを特徴とする、分離法。
【請求項2】
膜を、1000g/モルまでのモル質量を有する分子に対して透過性である膜から選択することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
膜を、分離活性層としてポリイミド(PI)、芳香族ポリアミド(PA)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリベンズイミダゾール、アクリロニトリル/グリシジルメタクリレート(PANGMA)、ポリベンズイミダゾロン、ポリアクリルニトリル(PAN)、ポリアリールエーテルスルホン、ポリエステル、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート(PC)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリベンズイミダゾール(PBI)、ポリビニリデンフルオリド(PVDF)、ポリプロピレン(PP)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)からのアルカリ安定性および溶媒安定性のナノフィルターポリマー層を有するか、またはその分離活性層が微小孔構造(PIM)を有するポリマーから構成されているか、またはその分離活性層が疎水化されたセラミック膜を介して構成されている膜から選択することを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
2つ以上の膜を使用することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
2つ以上の膜モジュールを使用することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
分離を、圧力をかけた工程として行うことを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
膜分離を、保持液側対透過液側の圧力差が少なくとも0.5MPaで存在するように実施することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
該方法を0.1〜15m/秒の膜での膜面流速で実施することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
クロスフローにおいて膜に送られる流(返送された保持液を含む新鮮な供給流)対透過液流の体積流比が100〜10000:1であることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
分離された金属錯体触媒をテロメリゼーションに返送することを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
オルガノリン配位子またはカルベン配位子から選択される、場合により反応混合物中に存在する遊離配位子を膜により分離し、かつテロメリゼーションに返送することを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
オルガノリン配位子またはカルベン配位子対テロメリゼーション生成物の分子−体積比が≧1.5であることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
テロメリゼーション混合物を、圧力および温度(℃)に関して最大0〜50%、テロメリゼーションの反応条件と異なる条件下で膜に送ることを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
テロメリゼーション混合物を、テロメリゼーションの反応条件下より0〜30%小さい圧力および/または温度で膜に送ることを特徴とする、請求項13記載の方法。
【請求項15】
テロメリゼーションからの反応混合物として、周期表の第8族、第9族または第10族の金属を含有する触媒の使用下で、少なくとも2つの共役二重結合を有する非環状オレフィンと少なくとも1つの求核剤のテロメリゼーションによって得られるテロメリゼーション混合物を使用することを特徴とする、請求項1から14までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
パラジウムカルベン錯体が金属−錯体触媒として存在するテロメリゼーション混合物を使用することを特徴とする、請求項1から15までのいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
テロメリゼーションにおいて、カルベン配位子またはオルガノリン配位子対金属[モル/モル]の比が0.01対1〜250対1であることを特徴とする、請求項16記載の方法。
【請求項18】
テロメリゼーションにおいて、求核剤(VII)として、水、アルコール、フェノール、ポリオール、カルボン酸、アンモニアおよび/または第一級または第二級アミンを使用することを特徴とする、請求項1から17までのいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
分離を80〜100℃の温度で実施することを特徴とする、請求項1から18までのいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
分離を0.5〜5MPaの差圧で実施することを特徴とする、請求項1から19までのいずれか1項記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2009−524511(P2009−524511A)
【公表日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−551675(P2008−551675)
【出願日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際出願番号】PCT/EP2006/069401
【国際公開番号】WO2007/085321
【国際公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(398054432)エボニック オクセノ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (63)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Oxeno GmbH
【住所又は居所原語表記】Paul−Baumann−Strasse 1, D−45764 Marl, Germany
【Fターム(参考)】