説明

ディスプレイ用フィルタ及びこれを備えたディスプレイ

【課題】他の機能層を形成しても、表面が実質的に平坦であり、且つ優れた透明性と視認性を有するディスプレイ用フィルタを提供する。
【解決手段】透明基板(110)と、前記透明基板(110)上に形成されたメッシュ状の電磁波シールド層(120)と、前記電磁波シールド層(120)上に形成された第1の機能性層(130及び140)を有するディスプレイ用フィルタであって、
前記電磁波シールド層(120)の厚さが、0.01〜7μmであることを特徴とするディスプレイ用フィルタ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイパネル(PDP)、ブラウン管(CRT)ディスプレイ、液晶ディスプレイ、有機EL(電界発光)ディスプレイ、表面電界型ディスプレイ(SED)を含む電界放出型ディスプレイ(FED)等の各種ディスプレイに対して反射防止、近赤外線遮断、電磁波遮蔽等の各種機能を有するフィルタ、及びこのフィルタを備えたディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ(PDP)、ELディスプレイ等のフラットパネルディスプレイ、及びCRTディスプレイは、近年、大画面表示が主流となり、次世代の大画面表示デバイスとしてPDPが一般的になってきている。しかしながら、このPDPでは画像表示のため発光部に高周波パルス放電を行っているため、不要な電磁波の輻射や赤外線リモコン等の誤動作の原因ともなる赤外線の輻射のおそれがある。
【0003】
このため、PDPなどのディスプレイに用いられるフィルタとして、透明基板上に電磁波シールド層が形成されたものなどが知られている。さらに、従来のディスプレイ用フィルタには、耐傷付き性を付与するためのハードコート層、蛍光灯などの外部光源から照射された光線の反射を抑制して視認性を向上させるための反射防止層が積層される。例えば、特許文献1には、透明基板上にメッシュ状の電磁波シールド層と反射防止層とが積層されたディスプレイ用フィルタが開示されている。
【0004】
従来のディスプレイ用フィルタに用いられる電磁波シールド層には、例えば、(1)金属銀を含む透明導電薄膜、(2)金属線又は導電性繊維を網状にした導電メッシュ、(3)銅箔等の金属箔に開口部を設けたメッシュ状のもの、(4)導電性インクをメッシュ状に印刷したものなどの導電層が用いられる。なかでも、開口部により高い光透過性が得られることから(2)〜(4)のメッシュ状の導電層が好適に用いられている。導電性のメッシュの部分によって電磁波がシールドされ、開口部によって光の透過が確保される。
【0005】
このように電磁波シールド層は、金属などを含む導電層を用いることにより電磁波シールド性を確保しているが、この金属の光沢により外部光源から照射された光源を反射させてディスプレイに表示された画像の視認性を低下させる場合があった。このため、電磁波シールド層において金属導電層の表面にさらに黒化処理層を形成することにより防眩性を付与する手段なども用いられている。黒化処理層の形成は、例えば、金属導電層を酸化処理又は硫化処理などすることにより、金属導電層に含まれる銅などの金属の一部を酸化又は硫化させることにより行われる(特許文献1)。
【0006】
また、ディスプレイ表面に傷が付くとディスプレイに表示された画像の視認性が低下するため、ハードコート層を有するディスプレイ用フィルタなども知られている。また、従来のPDPを初めとする大型ディスプレイにおいては、蛍光灯などの外部光源から照射された光線の反射により表示された画像が見え難いという問題があった。そこで、反射防止層を有するディスプレイ用フィルタなども広く用いられている。さらに、赤外線を遮蔽するために、近赤外線遮蔽層が透明基板の一方の面に設けられたディスプレイ用フィルタなども提案されている。
【0007】
電磁波シールド層、ハードコート層、反射防止層及び近赤外線遮蔽層は、ディスプレイ用フィルタの用途に応じて積層して用いられる。例えば、特許文献2では、1枚の透明基板と、導電性メッシュと、最表層の反射防止フィルムと、近赤外線カットフィルムとが積層一体化されてなる積層体を備えたディスプレイ用フィルタが開示されている。
【0008】
【特許文献1】特開平10−338848号公報
【特許文献2】特開2001−142406号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来のディスプレイ用フィルタでは、上述の通り、視認性を向上させるために電磁波シールド層において金属導電層上にさらに黒化処理層を設ける必要がある。しかしながら、このような電磁波シールド層上に塗工液を直接塗布することにより他の機能層を形成すると、ディスプレイ用フィルタ表面に大きな凹凸が生じる問題がある。ディスプレイ用フィルタ表面に凹凸が生じると、透明性及び視認性の低下を招く場合がある。
【0010】
したがって、本発明は、他の機能層を形成しても、表面が実質的に平坦であり、且つ優れた透明性と視認性を有するディスプレイ用フィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は上記課題に鑑み種々の検討を行った結果、ハードコート層、反射防止層及び防眩層などの第1の機能性層が形成されるメッシュ状の電磁波シールド層の厚さを最適化することにより上記課題を解決できることを見出した。
【0012】
すなわち、本発明は、透明基板と、前記透明基板上に形成されたメッシュ状の電磁波シールド層と、前記電磁波シールド層上に形成された第1の機能性層を有するディスプレイ用フィルタであって、
前記電磁波シールド層の厚さが、0.01〜7μmであることを特徴とするディスプレイ用フィルタにより上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、電磁波シールド層の厚さを0.01〜7μmとすることにより、第1の機能性層を電磁波シールド層上に形成する際に表面の粗さが小さく、表面の平坦性に優れるディスプレイ用フィルタを提供することが可能となる。したがって、前記ディスプレイ用フィルタは、ディスプレイに表示された画像の視認性に優れ、プラズマディスプレイ(PDP)、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイなどのディスプレイ全面に設置されるディスプレイ用フィルタとして有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明のディスプレイ用フィルタは、透明基板と、前記透明基板上に形成されたメッシュ状の電磁波シールド層と、前記電磁波シールド層上に形成された第1の機能性層を有し、さらに前記電磁波シールド層が0.01〜7μm、好ましくは0.01〜5、より好ましくは0.01〜4μmの厚さを有する。電磁波シールド層がこのような厚さを有することにより、第1の機能層を形成しても、表面の平坦性に優れ、且つ優れた透明性と視認性を有するディスプレイ用フィルタを提供することが可能となる。
【0015】
なお、透明基板と電磁波シールド層との間に有機溶剤に侵される中間層等を有する場合、第1の機能性層などを形成する際に有機溶剤により中間層が白濁してヘイズ値が低下する恐れがある。したがって、本発明のディスプレイ用フィルタでは、電磁波シールド層が形成された透明基板は、耐溶剤性を有することが好ましく、架橋樹脂による中間層又は接着層を有するか、中間層を有していないことが好ましい。
【0016】
(第1の機能性層)
本願発明において、第1の機能性層としては、電磁波シールド層上に形成された何らかの機能を示す合成樹脂を含む層であればどのようなものでも良い。本発明では、一般に、第1の機能性層には、ハードコート層、反射防止層、及び/又は防眩層が好ましく挙げられる。また、反射防止層としては、屈折率の低い低屈折率層及び/又は屈折率の高い高屈折率層が挙げられる。
【0017】
前記第1の機能性層として具体的には、(1)ハードコート層のみからなるもの、(2)ハードコート層とハードコート層より屈折率の低い低屈折率層とからなるもの(この場合ハードコート層が電磁波シールド層と接している)、(3)ハードコート層、ハードコート層より屈折率の高い高屈折率層及びハードコート層より屈折率の低い低屈折率層からなるもの(この場合ハードコート層が電磁波シールド層と接している)などが挙げられる。層が多いほど、より良好な反射防止性が得られる。あるいは、第1の機能性層は、(4)防眩層のみからなるもの、又は(5)防眩層と防眩層より屈折率の低い低屈折率層とからなる(防眩層が電磁波シールド層と接している)ものであってもよい。防眩層は、いわゆるアンチグレア層であり、一般に優れた反射防止効果を有し、上記反射防止層を設けなくて良い場合が多い。これにより、他の層の屈折率の自由度が向上し、層の材料の選択肢が広がるため、コスト低減効果もある。防眩層と低屈折率層とからなる場合は、防眩層のみよりさらに優れた反射防止効果が得られる。
【0018】
本発明では、第1の機能性層が、ハードコート層を少なくとも含むのが好ましい。これにより、耐擦傷性に優れ、電磁波シールド層上に優れた平坦性を有する第1の機能性層を形成することができる。
【0019】
(ハードコート層)
前記第1の機能性層におけるハードコート層としては、アクリル樹脂層、エポキシ樹脂層、ウレタン樹脂層、シリコン樹脂層等の合成樹脂を主成分とする層である。
【0020】
ハードコート層の厚さは1〜20μm、好ましくは1〜10μm、さらに好ましくは8〜10μmである。ハードコート層の厚さが、1μm未満であると得られる第1の機能性層の表面粗さRaを十分に小さくできない恐れがあり、20μmを超えるとハードコート層の端部などにカールが発生する恐れがある。このようなカールが発生すると、ディスプレイ用フィルタの巻き取り時などにハンドリング性が低下する場合がある。
【0021】
ハードコート層に用いられる合成樹脂は、一般に熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂であり、紫外線硬化性樹脂が好ましい。紫外線硬化性樹脂は、短時間で硬化させることができ、生産性に優れ、またレーザにより除去し易い点からも好ましい。
【0022】
熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、レゾルシノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フラン樹脂、シリコン樹脂などを挙げることができる。
【0023】
ハードコート層としては、紫外線硬化性樹脂組成物(紫外線硬化性樹脂、光重合開始剤等からなる)を主成分とする層の硬化層が好ましく、通常その厚さは1〜20μm、好ましくは1〜10μmである。
【0024】
紫外線硬化性樹脂(モノマー、オリゴマー)としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルポリエトキシ(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカンモノ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、N−ビニルカプロラクタム、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、o−フェニルフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジプロポキシジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリス〔(メタ)アクリロキシエチル〕イソシアヌレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートモノマー類;ポリオール化合物(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、トリメチロールプロパン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,4−ジメチロールシクロヘキサン、ビスフェノールAポリエトキシジオール、ポリテトラメチレングリコール等のポリオール類、前記ポリオール類とコハク酸、マレイン酸、イタコン酸、アジピン酸、水添ダイマー酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の多塩基酸又はこれらの酸無水物類との反応物であるポリエステルポリオール類、前記ポリオール類とε−カプロラクトンとの反応物であるポリカプロラクトンポリオール類、前記ポリオール類と前記、多塩基酸又はこれらの酸無水物類のε−カプロラクトンとの反応物、ポリカーボネートポリオール、ポリマーポリオール等)と有機ポリイソシアネート(例えば、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジシクロペンタニルジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4’−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,2’−4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等)と水酸基含有(メタ)アクリレート(例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキサン−1,4−ジメチロールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート等)の反応物であるポリウレタン(メタ)アクリレート、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸の反応物であるビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートオリゴマー類等を挙げることができる。これら化合物は1種又は2種以上、混合して使用することができる。これらの紫外線硬化性樹脂を、熱重合開始剤とともに用いて熱硬化性樹脂として使用してもよい。
【0025】
ハードコート層とするには、上記の紫外線硬化性樹脂(モノマー、オリゴマー)の内、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の硬質の多官能モノマーを主に使用することが好ましい。
【0026】
紫外線硬化性樹脂の光重合開始剤として、紫外線硬化性樹脂の性質に適した任意の化合物を使用することができる。例えば、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノプロパン−1などのアセトフェノン系、ベンジルジメチルケタールなどのベンゾイン系、ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系、イソプロピルチオキサントン、2−4−ジエチルチオキサントンなどのチオキサントン系、その他特殊なものとしては、メチルフェニルグリオキシレートなどが使用できる。特に好ましくは、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノプロパン−1、ベンゾフェノン等が挙げられる。これら光重合開始剤は、必要に応じて、4−ジメチルアミノ安息香酸のごとき安息香酸系叉は、第3級アミン系などの公知慣用の光重合促進剤の1種または2種以上を任意の割合で混合して使用することができる。また、光重合開始剤のみの1種または2種以上の混合で使用することができる。特に1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャリティケミカルズ社製、イルガキュア184)が好ましい。
【0027】
光重合開始剤の量は、樹脂組成物に対して一般に0.1〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%である。
【0028】
さらに、ハードコート層は、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、老化防止剤、塗料加工助剤、着色剤等を少量含んでいても良い。特に、紫外線吸収剤(例、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤又はベンゾフェノン系紫外線吸収剤)を含むことが好ましく、これによりフィルタの黄変等の防止が効率的に行うことができる。その量は、樹脂組成物に対して一般に0.1〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%である。
【0029】
(反射防止層)
第1の機能性層における反射防止層は、ハードコート層上に設けられたハードコート層より屈折率が低い低屈折率層であるか、或いはハードコート層と低屈折率層との間にさらにハードコート層より屈折率が高い高屈折率層が設けられた複合膜である。
【0030】
(低屈折率層)
低屈折率層は、シリカ、フッ素樹脂等の微粒子、好ましくは中空シリカを10〜40重量%(好ましくは10〜30質量%)がポリマー(好ましくは紫外線硬化性樹脂)中に分散した層(硬化層)であることが好ましい。この低屈折率層の屈折率は、1.35〜1.45が好ましい。この屈折率が1.45超であると、反射防止フィルムの反射防止特性が低下する。膜厚は一般に10〜500nmの範囲、好ましくは20〜200nmである。
中空シリカとしては、平均粒径10〜100nm、好ましくは10〜50nm、比重0.5〜1.0、好ましくは0.8〜0.9のものが好ましい。
【0031】
(高屈折率層)
高屈折率層は、ポリマー(好ましくは紫外線硬化性樹脂)中に、ITO,ATO,Sb23,SbO2,In23,SnO2,ZnO、AlをドープしたZnO、TiO2等の導電性金属酸化物微粒子(無機化合物)が分散した層(硬化層)とすることが好ましい。金属酸化物微粒子としては、平均粒径10〜10000nm、好ましくは10〜50nmのものが好ましい。特にITO(特に平均粒径10〜50nmのもの)が好ましい。屈折率を1.64以上としたものが好適である。膜厚は一般に10〜500nmの範囲、好ましくは20〜200nmである。
【0032】
なお、高屈折率層が導電層である場合、この高屈折率層の屈折率を1.64以上とすることにより反射防止層の表面反射率の最小反射率を1.5%以内にすることができ、1.69以上、好ましくは1.69〜1.82とすることにより反射防止層の表面反射率の最小反射率を1.0%以内にすることができる。
【0033】
ハードコート層は、可視光線透過率が85%以上であることが好ましい。高屈折率層及び低屈折率層の可視光線透過率も、いずれも85%以上であることが好ましい。
【0034】
第1の機能性層がハードコート層と上記2層からなる反射防止層とにより構成される場合、例えば、ハードコート層の厚さは2〜20μm、高屈折率層の厚さは50〜150nm、低屈折率層の厚さは50〜150nmであることが好ましい。
【0035】
第1の機能性層における各層の形成は、有機溶剤を含む塗工液を塗布することにより行うのが好ましい。例えば、前記の通り、有機溶剤に、ポリマー(好ましくは紫外線硬化性樹脂)に必要に応じ上記の微粒子を配合し、得られた塗工液を、前記透明基板上に塗工し、次いで乾燥した後、紫外線照射して硬化すればよい。この場合、各層を1層ずつ塗工し硬化させてもよく、全層を塗工した後、まとめて硬化させてもよい。
【0036】
有機溶剤は、特に制限されないが、ポリマー(好ましくは紫外線硬化性樹脂)を溶解させ且つ乾燥が容易なものが好ましい。具体的には、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、アルコール系溶剤、セロソルブ系溶剤、石油系溶剤などが挙げられる。これらは、一種単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。
【0037】
塗工の具体的な方法としては、アクリル系モノマー等を含む紫外線硬化性樹脂をトルエン等の有機溶剤で溶液にした塗工液をグラビアコータ等によりコーティングし、その後乾燥し、次いで紫外線により硬化する方法を挙げることができる。このウェットコーティング法であれば、高速で均一に且つ安価に成膜できるという利点がある。このコーティング後に例えば紫外線を照射して硬化することにより密着性の向上、膜の硬度の上昇という効果が得られる。前記導電層も同様に形成することができる。
【0038】
紫外線硬化の場合は、光源として紫外〜可視領域に発光する多くのものが採用でき、例えば超高圧、高圧、低圧水銀灯、ケミカルランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、マーキュリーハロゲンランプ、カーボンアーク灯、白熱灯、レーザ光等を挙げることができる。照射時間は、ランプの種類、光源の強さによって一概には決められないが、数秒〜数分程度である。また、硬化促進のために、予め積層体を40〜120℃に加熱し、これに紫外線を照射してもよい。
【0039】
(防眩層)
第1の機能性層として用いられる防眩層としては、例えば、ポリマー微粒子(例、アクリルビーズ)等の透明フィラー(好ましくは平均粒径1〜10μm)及びバインダを有機溶剤に分散させた塗工液を塗布、乾燥することにより得られる防眩層、或いは、前述のハードコート層形成用材料及び透明フィラー(ポリマー微粒子;例、アクリルビーズ)を有機溶剤に分散させた塗工液を塗布、硬化させた、ハードコート機能を有する防眩層を挙げることができ、好ましい。防眩層の層厚は、一般に0.01〜20μmの範囲である。
【0040】
上述したように有機溶剤を含む塗工液を用いて第1の機能性層が形成されたディスプレイ用フィルタは、有機溶剤により侵食されずに高い透明性を有するのが好ましい。具体的には、前記ディスプレイ用フィルタのヘイズ(HAZE)値が5%以下であるのが好ましい。なお、前記ディスプレイ用フィルタのヘイズ値は、JIS K 7105(1981年)の手法に従って、全自動直読ヘイズコンピューターHGM−2DP(スガ試験機株式会社製)を用いて測定することができる。
【0041】
また、本発明のディスプレイ用フィルタでは、電磁波シールド層の厚さが最適化されることにより、前記電磁波シールド層上に形成された第1の機能性層が優れた平坦性を有する。具体的には、第1の機能性層の表面粗さRaを、0.30μm以下、特に0.10μm以下とすることができる。なお、第1の機能性層の表面粗さRaは、JIS B0601−2001に従って、表面粗さ計(サーフコム480A 東京精密株式会社製)を用いて測定することができる。
【0042】
(電磁波シールド層)
本発明のディスプレイ用フィルタに用いられる電磁波シールド層には、少なくとも金属導電層が用いられる。しかしながら、電磁波シールド層は、金属導電層と、前記金属導電層の少なくとも一部を被覆する黒色合金導電層とからなるのがより好ましい。このように、黒色の導電性を有する合金で金属導電層を被覆することにより、金属導電層及び黒色合金導電層の双方が導電性を有し、優れた電磁波シールド性を確保でき、さらに電磁波シールド層に導電性を低下させることなく優れた防眩性を付与することができる。さらに、黒色合金導電層は優れた防眩性を有することから黒色合金導電層の厚さを薄くすることができ、結果として防眩性を有する電磁波シールド層の厚さを薄くすることが可能となる。
【0043】
(黒色合金導電層)
黒色合金導電層は、金属導電層の少なくとも一部を被覆するように形成されるが、高い防眩性を得るためには、金属導電層の透明基板とは接していない表面の全面を被覆するように形成されるのが好ましい。
【0044】
黒色合金導電層としては、ニッケル及び亜鉛の合金、又はニッケル及びスズの合金からなる層を用いるのが好ましい。これにより、黒色度合い及び導電性に優れる黒色合金導電層が得られ、電磁波シールド層全体の厚さを薄くすることができる。
【0045】
ニッケルと亜鉛又はスズとの合金からなる黒色合金導電層におけるニッケルと亜鉛又はスズとの質量比(Ni/Zn)は、0.4〜1.4、特に0.2〜1.2とするのが好ましい。これにより黒色の色調が均質な黒色合金導電層を得ることができ、厚さが薄くても高い防眩性を有する電磁波シールド層を得ることができる。
【0046】
金属導電層上の少なくとも一部を被覆するように黒色合金導電層を作製するには、電解めっき及び無電解めっきなどを用いて行うのが好ましい。これにより厚さが薄い黒色合金導電層を簡易な方法で作製することができる。
【0047】
(金属導電層)
本発明のディスプレイ用フィルタにおいて、透明基板上に形成される金属導電層としては、金属を含み導電性を有する層であればよい。例えば、(1)銅などの金属からなるもの、(2)バインダ樹脂中に導電性粒子を分散させたもの、等を挙げることができる。
【0048】
(1)銅などの金属からなる金属導電層において、前記金属としては、銅、ステンレス、アルミニウム、ニッケル、鉄、真鍮、或いはこれらの合金、好ましくは銅、ステンレス、アルミニウムが用いられる。
【0049】
前記(1)の金属導電層を作製するには、まず、スパッタリング、イオンプレーティング、電子ビーム蒸着、真空蒸着、化学蒸着等の気相製膜法や、印刷、塗工などの方法を用いて透明基板上に前記金属からなる金属箔を形成し、その後、前記金属箔をエッチングして開口部を設けることによりメッシュ状にする方法など、公知の方法を用いて行えばよい。
【0050】
前記(1)の金属導電層を作製するには、上記方法の他にも、透明基板上に、溶剤に対して可溶な材料によってドットを形成し、フィルム面に溶剤に対して不溶な導電材料からなる導電材料層を形成し、フィルム面を溶剤と接触させてドット及びドット上の導電材料層を除去する方法を用いても良い。このような方法は、例えば、特開2001−332889号公報などに記載されている。
【0051】
(2)バインダ樹脂中に導電性粒子を分散させた金属導電層において、前記導電性粒子としては、例えば、アルミニウム、ニッケル、インジウム、クロム、金、バナジウム、スズ、カドミウム、銀、プラチナ、銅、チタン、コバルト、鉛等の金属、合金;或いはITO、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム−酸化スズ(ITO、いわゆるインジウムドープ酸化スズ)、酸化スズ−酸化アンチモン(ATO、いわゆるアンチモンドープ酸化スズ)、酸化亜鉛−酸化アルミニウム(ZAO;いわゆるアルミニウムドープ酸化亜鉛)等の導電性酸化物等を挙げることができる。特に、ITOが好ましい。
【0052】
バインダ樹脂の例としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、マレイン酸樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ポリイミド樹脂、含ケイ素樹脂等を挙げることができる。さらに、これらの樹脂のうち熱硬化性樹脂であることが好ましい。
【0053】
(2)の金属導電層を作製するには、導電性粒子をバインダ樹脂に分散させた導電性インクを透明基板上にメッシュ状に印刷する方法を用いることができる。前記導電性インクは導電性粒子及びバインダ樹脂の他に、適度な粘度に調整するため、さらに溶剤を含んでいてもよい。前記溶剤としては、ヘキサノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ステアリルアルコール、セリルアルコール、シクロヘキサノール、テルピネオール等のアルコール;エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート等のアルキルエーテルが挙げられる。
【0054】
導電性インクを透明基板上にメッシュ状に印刷するには、グラビア印刷、フレキソ印刷、グラビアオフセット印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷、静電印刷など公知の方法を用いて行えばよい。その後、必要に応じ室温〜120℃で乾燥させて硬化させる。
【0055】
金属導電層としては、黒色合金導電層の形成が容易であり、防眩性及び導電性に優れる電磁波シールド層が得られることから、上述したもののうち(1)の金属導電層を用いるのが好ましい。
【0056】
本発明において、電磁波シールド層の厚さは、上述した通り、0.01〜7μm、好ましくは0.01〜5、より好ましくは0.01〜4μmである。
【0057】
電磁波シールド層が金属導電層のみからなる場合、前記金属導電層の厚さは、0.01〜7μm、好ましくは0.01〜4μm、特に好ましくは2〜4μmである。前記金属導電層の厚さが、0.01μm未満であると導電性が低下して十分な電磁波シールド性が得られない恐れがあり、7μmを超えると、電磁波シールド層の厚さが増加するためディスプレイ用フィルタ表面の平坦化の観点から望ましくない。
【0058】
また、電磁波シールド層が、金属導電層と、前記金属導電層の少なくとも一部を被覆する黒色合金導電層とからなる場合、前記電磁波シールド層における黒色合金導電層の厚さは、0.001〜1μmとするのが好ましい。黒色合金導電層の厚さが、0.001μm未満では十分な電磁波シールド層に十分な防眩性を付与できない恐れがあり、1μmを超えると電磁波シールド層の厚さが増加して、ディスプレイ用フィルタ表面の平坦化の観点から望ましくない。また、前記電磁波シールド層における金属導電層の厚さは、好ましくは0.009〜6μm、より好ましくは0.009〜3μmである。このように本発明では、黒色合金導電層が導電性を有することにより、金属導電層の厚さを薄くしても十分な導電性を確保することが可能となり、全体として厚さが薄く電磁波シールド性にも優れる電磁波シールド層とすることができる。前記金属導電層の厚さが、0.009μm未満であると導電性が低下して十分な電磁波シールド性が得られない恐れがあり、6μmを超えると、電磁波シールド層の厚さが増加するためディスプレイ用フィルタ表面の平坦化の観点から望ましくない。
【0059】
電磁波シールド層におけるメッシュパターンの形状には特に制限はなく、例えば四角形の開口部が形成された格子状や、円形、六角形、三角形又は楕円形の開口部が形成されたパンチングメタル状などが挙げられる。また、開口部は規則的に並んだものに限らず、ランダムパターンとしても良い。
【0060】
電磁波シールド層におけるメッシュは、線幅1μm〜1mm、開口率40〜95%であるのが好ましい。より好ましい線幅は10〜500μm、開口率は50〜95%である。メッシュ状の電磁波シールド層において、線幅が1mmを超えると電磁波シールド性が向上するが、開口率が低下して、十分な光透過性が得られない恐れがある。また、線幅が1μm未満では、メッシュとしての強度が下がり取扱いが困難となる。また開口率が95%を超えるとメッシュとしての形状を維持することが困難であり、40%未満では十分な光透過性が得られない恐れがある。
【0061】
なお、電磁波シールド層の開口率とは、当該電磁波シールド層の投影面積における開口部分が占める面積割合を言う。
【0062】
本発明のディスプレイ用フィルタでは、電磁波シールド層において、防眩性を付与するための黒色合金導電層が形成されても十分な導電性を有する。したがって、電磁波シールド層は、1Ω/□以下、特に0.3Ω/□以下の表面抵抗値を有する。なお、電磁波シールド層の表面抵抗値は、四探針法(ロレスタAP:三菱油化製)により測定することができる。
【0063】
また、本発明のディスプレイ用フィルタにおいて、前記電磁波シールド層の周縁部の少なくとも一部は、第1の機能性層が形成されずに露出しているのが好ましい。電磁波シールド層の露出部は、PDPなどのディスプレイ本体と接地(アース)するための電極部(アース電極)となる。この露出部によって、ディスプレイに装着し易く且つ接地し易いディスプレイ用フィルタとすることができる。
【0064】
前記電磁波シールド層の露出部は、ディスプレイに接地し易いように電磁波シールド層の周縁部の少なくとも一部に形成されればよい。例えば、電磁波シールド層の周縁部に間欠的に露出部が形成されていてもよく、電磁波シールド層の周縁部全体に露出部が形成されていてもよい。
【0065】
このように電磁波シールド層に露出部を形成するには、第1の機能性層を塗工により形成する際に塗工部位を調整する方法、第1の機能性層の所定部位をレーザ照射して燃焼又は分解させることで除去する方法などが用いられる。レーザ照射技術としては、ラインビーム成形技術、レーザ光分岐技術、ダブルパルス技術等を、単独または組み合わせて用いることができる。レーザ光としては、YAGレーザ(2倍波、3倍波)、ルビーレーザ、エキシマレーザ、半導体レーザ、CO2レーザ、アルゴンレーザ等を用いることができる。
【0066】
(透明基板)
本発明のディスプレイ用フィルタに用いられる透明基板としては、透明度および可とう性を備え、その後の処理に耐えるものであれば特に制限はない。透明基板の材質としては、例えば、ガラス、ポリエステル(例、ポリエチレンテレフタレート、(PET)、ポリブチレンテレフタレート)、アクリル樹脂(例、ポリメチルメタクリレート(PMMA))、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン、セルローストリアセテート、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、金属イオン架橋エチレン−メタクリル酸共重合体、ポリウレタン、セロファン等を挙げることができる、これらの中で、加工処理(加熱、溶剤、折り曲げ)による劣化が少なく、透明性の高い材料であるPET、PC、PMMAが好ましい。なかでも、紫外線吸収性を有することから、PETであるのが好ましい。透明基板は、これらの材質からなるシート、フィルム、または板として用いられる。また、透明基材は紫外線吸収剤を含んでいてもよい。
【0067】
前記透明基板の厚さは、特に制限されないが、6〜250μm、特に6〜150μm程度であるのが好ましい。
【0068】
(第2の機能性層)
本発明のディスプレイ用フィルタでは、透明基板の電磁波シールド層が形成された面とは反対側の面に、第2の機能性層をさらに有するのが好ましい。第2の機能性層は、透明基板の電磁波シールド層が形成された面とは反対側の面に形成され、何らかの機能を示す合成樹脂を含む層であればどのようなものでも良い。第2の機能性層としては、一般に、近赤外線吸収層又は透明粘着剤層、或いはこれらの組合せである。第2の機能性層として具体的には、(1)近赤外線吸収層のみからなるもの、(2)透明粘着剤層からなるもの、又は(3)近赤外線吸収層及び透明粘着剤層からなるもの(この順で透明基板上に設けられている)からなることが好ましい。
【0069】
(近赤外線吸収層)
第2の機能性層として用いられる近赤外線吸収層(即ち、近赤外線遮蔽層)は、一般に、透明基板の表面に色素等を含む層を形成することにより得られる。近赤外線吸収層は、例えば色素及びバインダとして合成樹脂を含む塗工液を塗工、必要により乾燥して硬化させることにより得られる。フィルムとして使用する場合は、一般に近赤外線カットフィルムであり、例えば色素等を含有するフィルムである。
【0070】
色素としては、一般に800〜1200nmの波長に吸収極大を有するもので、例としては、フタロシアニン系色素、金属錯体系色素、ニッケルジチオレン錯体系色素、シアニン系色素、スクアリリウム系色素、ポリメチン系色素、アゾメチン系色素、アゾ系色素、ポリアゾ系色素、ジイモニウム系色素、アミニウム系色素、アントラキノン系色素、を挙げることができ、特にシアニン系色素又はスクアリリウム系色素が好ましい。これらの色素は、単独又は組み合わせて使用することができる。
【0071】
バインダとしての合成樹脂の例としては、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、スチレン樹脂、およびノルボルネン樹脂などが好ましく用いられる。これらは、1種単独で用いられてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0072】
本発明では、近赤外線吸収層に、ネオン発光の吸収機能を付与することにより色調の調節機能を持たせても良い。このために、ネオン発光の吸収層を設けても良いが、近赤外線吸収層にネオン発光の選択吸収色素を含有させても良い。
【0073】
ネオン発光の選択吸収色素としては、シアニン系色素、スクアリリウム系色素、アントラキノン系色素、フタロシアニン系色素、ポリメチン系色素、ポリアゾ系色素、アズレニウム系色素、ジフェニルメタン系色素、トリフェニルメタン系色素を挙げることができる。このような選択吸収色素は、585nm付近のネオン発光の選択吸収性とそれ以外の可視光波長において吸収が小さいことが必要であるため、吸収極大波長が575〜595nmであり、吸収スペクトル半値幅が40nm以下であるものが好ましい。
【0074】
また、近赤外線やネオン発光の吸収色素を複数種組み合わせる場合、色素の溶解性に問題がある場合、混合による色素間の反応ある場合、耐熱性、耐湿性等の低下が認められる場合には、すべての近赤外線吸収色素を同一の層に含有させる必要はなく、別の層に含有させても良い。
【0075】
また、光学特性に大きな影響を与えない限り、さらに着色用の色素、紫外線吸収剤、酸化防止剤等を加えても良い。
【0076】
本発明のディスプレイ用フィルタの近赤外線吸収特性としては、850〜1000nmの透過率を、20%以下、さらに15%するのが好ましい。また選択吸収性としては、585nmの透過率が50%以下であることが好ましい。特に前者の場合には、周辺機器のリモコン等の誤作動が指摘されている波長領域の透過度を減少させる効果があり、後者の場合は、575〜595nmにピークを持つオレンジ色が色再現性を悪化させる原因であることから、このオレンジ色の波長を吸収させる効果があり、これにより真赤性を高めて色の再現性を向上させたものである。
【0077】
近赤外線吸収層の厚さは、特に制限はないが、近赤外線の吸収性及び可視光透過性の点で、0.5〜50μm程度が好ましい。
【0078】
近赤外線吸収層は、色調補正用の色素を含有していることが好ましい。或いは色調補正用の色素を含む色調補正層を、近赤外線吸収層と同様にして設けても良い。
【0079】
色調補正用の色素としては、近赤外線遮蔽層の黄褐色〜緑色の色調を中性化してカラーバランスを整えるために、それらの補色となるようなものが好ましい。このような色素としては、無機系顔料、有機系顔料、有機系染料、色素等一般的なものが挙げることができる。無機顔料としては、コバルト化合物、鉄化合物、クロム化合物等を挙げることができ、有機顔料としては、アゾ系、インドリノン系、キナクリドン系、バット系、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系等を挙げることができ、前記有機系染料及び色素には、アゾ系、アジン系、アントラキノン系、インジゴイド系、オキサジン系、キノフタロン系、スクワリウム系、スチルベン系、トリフェニルメタン系、ナフトキノン系、ピラロゾン系、ポリメチン系等を挙げることができるが、これらの内で、発色性と耐久性の兼合いから有機系顔料が好適に用いられる。
【0080】
(透明粘着剤層)
透明粘着剤層は、本発明のディスプレイ用フィルタをディスプレイに接着するための層であり、接着機能を有するものであればどのような樹脂でも使用することができる。
【0081】
透明粘着剤層における接着機能を有する樹脂としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、アクリル樹脂(例、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、金属イオン架橋エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体)、部分鹸化エチレン−酢酸ビニル共重合体、カルボキシル化エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル−無水マレイン酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル−(メタ)アクリレート共重合体等のエチレン系共重合体を挙げることができる(なお、「(メタ)アクリル」は「アクリル又はメタクリル」を示す。)。その他、ポリビニルブチラール(PVB)樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコン樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ゴム系粘着剤、SEBS(スチレン/エチレン/ブチレン/スチレン)及びSBS(スチレン/ブタジエン/スチレン)等の熱可塑性エラストマー等も用いることができるが、良好な接着性が得られやすいのはアクリル樹脂系粘着剤、エポキシ樹脂である。
【0082】
透明粘着剤層の厚さは、一般に10〜50μm、好ましくは、20〜30μmの範囲が好ましい。ディスプレイ用フィルタは、一般に上記粘着剤層をディスプレイのガラス板に圧着することによる装備することができる。
【0083】
前記透明粘着剤層の材料として、EVAも使用する場合、EVAとしては酢酸ビニル含有量が5〜50重量%、好ましくは15〜40重量%のものが使用される。酢酸ビニル含有量が5重量%より少ないと透明性に問題があり、また40重量%を超すと機械的性質が著しく低下する上に、成膜が困難となり、フィルム相互のブロッキングが生じ易い。
【0084】
EVAなどを使用する場合、透明粘着剤層はさらに架橋剤を含んでいてもよい。架橋剤としては加熱架橋する場合は、有機過酸化物が適当であり、シート加工温度、架橋温度、貯蔵安定性等を考慮して選ばれる。使用可能な過酸化物としては、例えば2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド;2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン−3;ジーt−ブチルパーオキサイド;t−ブチルクミルパーオキサイド;2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン;ジクミルパーオキサイド;α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン;n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート;2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン;1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン;1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン;t−ブチルパーオキシベンゾエート;ベンゾイルパーオキサイド;第3ブチルパーオキシアセテート;2,5−ジメチル−2,5−ビス(第3ブチルパーオキシ)ヘキシン−3;1,1−ビス(第3ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン;1,1−ビス(第3ブチルパーオキシ)シクロヘキサン;メチルエチルケトンパーオキサイド;2,5−ジメチルヘキシル−2,5−ビスパーオキシベンゾエート;第3ブチルハイドロパーオキサイド;p−メンタンハイドロパーオキサイド;p−クロルベンゾイルパーオキサイド;第3ブチルパーオキシイソブチレート;ヒドロキシヘプチルパーオキサイド;クロルヘキサノンパーオキサイド等を挙げることができる。これらの過酸化物は1種を単独で又は2種以上を混合して、通常EVA100重量部に対して、5質量部以下、好ましくは0.5〜5.0質量部の割合で使用される。
【0085】
有機過酸化物は通常EVAに対し押出機、ロールミル等で混練されるが、有機溶媒、可塑剤、ビニルモノマー等に溶解し、EVAのフィルムに含浸法により添加しても良い。
【0086】
なお、EVAの物性(機械的強度、光学的特性、接着性、耐候性、耐白化性、架橋速度など)改良のために、各種アクリロキシ基又はメタクリロキシ基及びアリル基含有化合物を透明粘着剤層にさらに添加することができる。この目的で用いられる化合物としてはアクリル酸又はメタクリル酸誘導体、例えばそのエステル及びアミドが最も一般的であり、エステル残基としてはメチル、エチル、ドデシル、ステアリル、ラウリル等のアルキル基の他、シクロヘキシル基、テトラヒドロフルフリル基、アミノエチル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル基などが挙げられる。また、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多官能アルコールとのエステルを用いることもできる。アミドとしてはダイアセトンアクリルアミドが代表的である。
【0087】
その例としては、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセリン等のアクリル又はメタクリル酸エステル等の多官能エステルや、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、フタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル等のアリル基含有化合物が挙げられ、これらは1種を単独で或いは2種以上を混合して、通常EVA100質量部に対して0.1〜2質量部、好ましくは0.5〜5質量部用いられる。
【0088】
EVAを光により架橋する場合、透明粘着剤層には、上記過酸化物の代りに光増感剤が通常EVA100質量部に対して5質量部以下、好ましくは0.1〜3.0質量部使用される。
【0089】
この場合、使用可能な光増感剤としては、例えばベンゾイン、ベンゾフェノン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ジベンジル、5−ニトロアセナフテン、ヘキサクロロシクロペンタジエン、p−ニトロジフェニル、p−ニトロアニリン、2,4,6−トリニトロアニリン、1,2−ベンズアントラキノン、3−メチル−1,3−ジアザ−1,9−ベンズアンスロンなどが挙げられ、これらは1種を単独で或いは2種以上を混合して用いることができる。
【0090】
また、透明粘着剤層には、接着促進剤としてシランカップリング剤が併用されてもよい。このシランカップリング剤としては、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0091】
シランカップリング剤は、一般にEVA100質量部に対して0.001〜10質量部、好ましくは0.001〜5質量部の割合で1種又は2種以上が混合使用される。
【0092】
なお、本発明に係る透明粘着剤層には、その他、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、老化防止剤、塗料加工助剤、着色剤等を少量含んでいてもよく、また、場合によってはカーボンブラック、疎水性シリカ、炭酸カルシウム等の充填剤を少量含んでも良い。
【0093】
透明粘着剤層は、例えばEVAと上述の添加剤とを混合し、押出機、ロール等で混練した後、カレンダー、ロール、Tダイ押出、インフレーション等の成膜法により所定の形状にシート成形することにより製造される。
【0094】
透明粘着剤層上にはさらに剥離シートが設けられるのが好ましい。剥離シートの材料としては、ガラス転移温度が50℃以上の透明のポリマーが好ましく、このような材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ナイロン46、変性ナイロン6T、ナイロンMXD6、ポリフタルアミド等のポリアミド系樹脂、ポリフェニレンスルフィド、ポリチオエーテルサルフォン等のケトン系樹脂、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン等のサルフォン系樹脂の他に、ポリエーテルニトリル、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、トリアセチルセルロース、ポリスチレン、ポリビニルクロライド等のポリマーを主成分とする樹脂を用いることができる。これら中で、ポリカーボネート、ポリメチルメタアクリレート、ポリビニルクロライド、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレートが好適に用いることができる。厚さは10〜200μmが好ましく、特に30〜100μmが好ましい。
【0095】
本発明の一実施形態である上述したハードコート層及び低屈折率層からなる反射防止層を含む第1の機能性層と、近赤外線吸収層及び透明粘着剤層とを含む第2の機能性層とを有するディスプレイ用フィルタの模式断面図を図1に示す。図1に示すディスプレイ用フィルタでは、透明基板110と、前記透明基板110上に形成されたメッシュ状の電磁波シールド層120と、電磁波シールド層120上に形成されたハードコート層130と、ハードコート層130上に形成された低屈折率層140と、透明基板110の電磁波シールド層120が形成された面とは反対側の面に形成された近赤外線吸収層150と、前記近赤外線吸収層150上に形成された透明粘着剤層160とを有する。また、電磁波シールド層120は、金属導電層121と、前記金属導電層121上に形成された黒色合金導電層122とを有する。
【0096】
このように本発明のディスプレイ用フィルタでは、所定の厚さを有する電磁波シールド層を有することを特徴とする。これにより、表面の平坦性に優れる第1の機能性層を形成することができ、光の乱反射による視認性、透明性の低下が抑制されたディスプレイ用フィルタを得ることも可能となる。さらに、好ましくは前記電磁波シールド層が金属導電層と、黒色合金導電層とを有することにより、導電性を低下させることなく高い防眩性が付与された、厚さが薄い電磁波シールド層を有する。
【0097】
このような本発明のディスプレイ用フィルタは、特に制限されないが、ディスプレイの画像表示ガラス板の表面に透明粘着層を介して貼合する等の手段を用いて、ディスプレイに適用できる。このようなディスプレイとしては、表面電界型ディスプレイ(SED)を含む電界放出型ディスプレイ(FED)、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、ELディスプレイ等のフラットパネルディスプレイ(FPD)、及びCRTディスプレイなどが挙げられる。
【実施例】
【0098】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0099】
[実施例1]
1.メッシュ状金属導電層の形成
厚さ100μmの紫外線吸収剤を含むポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(幅:600mm、長さ100m)上に、ポリビニルアルコールの20%水溶液をドット状に印刷した。ドット1個の大きさは1辺が234μmの正方形状であり、ドット同士間の間隔は20μmであり、ドット配列は正方格子状である。印刷厚さは、乾燥後で約5μmである。
【0100】
その上に、銅を平均膜厚4μmとなるように真空蒸着した。次いで、常温の水に浸漬し、スポンジで擦ることによりドット部分を溶解除去し、次いで水でリンスした後、乾燥してPETフィルムの全面にメッシュ状の金属導電層を形成した。
【0101】
このフィルム表面の金属導電層は、正確にドットのネガパターンに対応した正方格子状のものであり、線幅は20μm、開口率は77%であった。また、金属導電層(銅層)の平均厚さは4μmであった。
【0102】
2.黒色合金導電層の形成
PETフィルム上に形成された金属導電層に対して下記条件により亜鉛−ニッケル合金めっきを行うことにより、金属導電層の全面を被覆する黒色合金導電層(厚さ0.1μm)を形成した。これにより、PETフィルム上に金属導電層及び黒色合金導電層からなるメッシュ状の電磁波シールド層を形成した。
【0103】
(めっき条件)
めっき液の温度:40℃
電流密度 :5〜10A/dm2
めっき時間 :10秒
めっき液量 :120m3
(めっき液組成)
ZnCl2を用いZn2+濃度が2.0g/l、NiCl2・6H2Oを用いてNi2+濃度が0.5g/l、KClを用いてK+濃度が250g/l、pH10めっき液を用いた。
【0104】
3.ハードコート層の形成
下記の配合:
ペンタエリスリトールトリアクリレート 80質量部
ITO(平均粒径150nm) 20質量部
メチルエチルケトン 100質量部
トルエン 100質量部
イルガキュア184(チバスペシャリティケミカル社製) 4質量部
を混合して得た塗工液を、上記電磁波シールド層の全面に、バーコータにより塗布し、紫外線照射により硬化させた。これにより、電磁波シールド層上に厚さ5μmのハードコート層(屈折率1.52)を形成した。
【0105】
4.低屈折率層の形成
下記の配合:
オプスターJN―7212(日本合成ゴム(株)製) 100質量部
メチルエチルケトン 117質量部
メチルイソブチルケトン 117質量部
を混合して得た塗工液を、上記ハードコート層上にバーコータを用いて塗布し、80℃のオーブン中で5分間乾燥させ、次いでその紫外線照射により硬化させた。これにより、ハードコート層上に厚さ90nmの低屈折率層(屈折率1.42)を形成した。
【0106】
5.近赤外線吸収層(色調補正機能を有する)の形成
下記の配合:
ポリメチルメタクリレート 30質量部
TAP−2(山田化学工業(株)製) 0.4質量部
Plast Red 8380(有本化学工業(株)製 0.1質量部
CIR−1085(日本カーリット(株)製) 1.3質量部
IR−10A((株)日本触媒製) 0.6質量部
メチルエチルケトン 152質量部
メチルイソブチルケトン 18質量部
を混合して得た塗工液を、PETフィルムの裏面全面にバーコータを用いて塗布し、80℃のオーブン中で5分間乾燥させた。これにより、PETフィルム上に厚さ5μmの近赤外線吸収層(色調補正機能を有する)を形成した。
【0107】
6.透明粘着剤層の形成
下記の配合:
SKダイン1811L(綜研化学(株)製) 100質量部
硬化剤L−45(綜研化学(株)製) 0.45質量部
トルエン 15質量部
酢酸エチル 4質量部
を混合して得た塗工液を、上記近赤外線吸収層上にバーコータを用いて塗布し、80℃のオーブン中で5分間乾燥させた。これにより、近赤外線吸収層上に厚さ25μmの透明粘着剤層を形成した。上記の通りにして各層が形成されたPETフィルムを60cm×100cmの寸法に切り出すことにより、ディスプレイ用フィルタを得た。
【0108】
実施例1で作製したディスプレイ用フィルタのヘイズ値を、JIS K 7105(1981年)の手法に従って、全自動直読ヘイズコンピューターHGM−2DP(スガ試験機株式会社製)を用いて測定した。前記ディスプレイ用フィルタのヘイズ値は3.0%であった。また、電磁波シールド層は十分な耐溶剤性を有し、優れた透明性を示した。
【0109】
また、実施例1で作製したディスプレイ用フィルタの低屈折率層の表面粗さRaを、JIS B0601−2001に従って、表面粗さ計(サーフコム480A 東京精密株式会社製)を用いて測定した。低屈折率層の表面粗さRaは0.05μmであり、優れた平坦性を示した。
【0110】
[実施例2]
1.メッシュ状金属導電層の形成
実施例1と同様にして、厚さ100μmの紫外線吸収剤を含むPETフィルム(幅:600mm、長さ100m)上に、全面にメッシュ状の金属導電層を形成した。この金属導電層は、線幅が20μmであり、開口率が77%であり、平均厚さが4μmであった。
【0111】
2.ハードコート層の形成
下記の配合:
ペンタエリスリトールトリアクリレート 80質量部
ITO(平均粒径150nm) 20質量部
メチルエチルケトン 100質量部
トルエン 100質量部
イルガキュア184(チバスペシャリティケミカル社製) 4質量部
を混合して得た塗工液を、上記金属導電層の全面に、バーコータにより塗布し、紫外線照射により硬化させた。これにより、金属導電層上に厚さ5μmのハードコート層(屈折率1.52)を形成した。そして、電磁波シールド層としての金属導電層、及びハードコート層が形成されたPETフィルムを60cm×100cmの寸法に切り出すことにより、ディスプレイ用フィルタを得た。
【0112】
[実施例3〜8、比較例1及び2]
メッシュ状金属導電層の厚さ及びハードコート層の厚さをそれぞれ表1に示す通りに変更した以外は、実施例2と同様にしてディスプレイ用フィルタを作製した。
【0113】
[評価]
実施例2〜7、比較例1及び2で作製したディスプレイ用フィルタについて下記評価を行った。結果はまとめて表1に示す。
【0114】
1.ハードコート層の表面粗さRa
ハードコート層の表面粗さRaを、JIS B0601−2001に従って、表面粗さ計(サーフコム480A 東京精密株式会社製)を用いて測定した。
【0115】
2.ハードコート層のカール発生
ディスプレイ用フィルタを15cm角に切り出し、それを平坦な台に載せ、フィルム端部と台との距離を測定した。4辺について測定し、測定間隔は3cmとした。最も大きい値を当該ディスプレイ用フィルタのカールの程度を示す値として下記のように判断した。
【0116】
ディスプレイ用フィルタ端部と台との距離が、1cm未満であったものを「◎」とし、1〜2cmであったものを「○」とし、2cmを超えたものを「×」とした。
【0117】
3.電磁波シールド性
ディスプレイ用フィルタを15cm角に切り出し、社団法人関西電子工業振興センターが定めたKEC法に従って、周波数100MHzの条件で電界シールド及び磁界シールドを測定した。測定には、シールド特性評価装置(アンリツ製)を用いた。
【0118】
なお、表1において、電界シールド及び磁界シールドともに20dB以上であったものを「○」とし、電界シールド及び磁界シールドの少なくとも一方が20dB未満であったものを「×」とした。
【0119】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】本発明の一実施形態であるディスプレイ用フィルタの模式断面図を示す。
【符号の説明】
【0121】
110 透明基板、
120 電磁波シールド層、
121 金属導電層、
122 黒色合金導電層、
130 ハードコート層、
140 低屈折率層、
150 近赤外線吸収層、
160 透明粘着剤層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板と、前記透明基板上に形成されたメッシュ状の電磁波シールド層と、前記電磁波シールド層上に形成された第1の機能性層を有するディスプレイ用フィルタであって、
前記電磁波シールド層の厚さが、0.01〜7μmであることを特徴とするディスプレイ用フィルタ。
【請求項2】
前記第1の機能性層が、ハードコート層を含むことを特徴とする請求項1に記載のディスプレイ用フィルタ。
【請求項3】
前記ハードコート層の厚さが、1〜20μmであることを特徴とする請求項2に記載のディスプレイ用フィルタ。
【請求項4】
前記第1の機能性層が有機溶剤を含む塗工液を塗布することにより形成され、ディスプレイ用フィルタのヘイズ値が5%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のディスプレイ用フィルタ。
【請求項5】
前記第1の機能性層の表面粗さRaが、0.3μm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のディスプレイ用フィルタ。
【請求項6】
前記電磁波シールド層が、金属導電層のみからなる請求項1〜5のいずれか1項に記載のディスプレイ用フィルタ。
【請求項7】
前記電磁波シールド層が、金属導電層と、前記金属導電層の少なくとも一部を被覆する黒色合金導電層とからなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のディスプレイ用フィルタ。
【請求項8】
前記電磁波シールド層の表面抵抗値が1Ω/□以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のディスプレイ用フィルタ。
【請求項9】
前記電磁波シールド層の周縁部の少なくとも一部が露出していることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のディスプレイ用フィルタ。
【請求項10】
前記透明基板の電磁波シールド層が形成された面とは反対側の面に、第2の機能性層をさらに有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のディスプレイ用フィルタ。
【請求項11】
第2の機能性層が、近赤外線吸収層及び/又は透明粘着剤層を含む請求項10に記載のディスプレイ用フィルタ。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載のディスプレイ用フィルタを備えたことを特徴とするディスプレイ。

【図1】
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【公開番号】特開2009−37237(P2009−37237A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−180208(P2008−180208)
【出願日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】