説明

デジタルPLL回路

【課題】
映像信号をサンプリングするためのサンプリングクロック信号として用いても、映像に乱れを生じさせないクロック信号を生成することのできるデジタルPLL回路を提供することを課題とする。
【解決手段】
映像信号のサンプリングに用いるサンプリングクロック信号として、入力電圧に応じた発振周波数のクロック信号を出力する電圧制御発振回路と、映像信号の制御に用いられる複合同期信号と、前記電圧制御発振回路の出力に基づく帰還信号との位相差を検出する位相差検出部と、前記位相差検出部で検出される位相差が所定の範囲内にある場合は当該位相差を選択して出力し、前記位相差検出部で検出される位相差が前記所定の範囲内にない場合は前記位相差検出部で検出される位相差の目標値を出力する出力部とを含み、前記出力部の出力に基づいて、前記電圧制御発振回路の入力電圧を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
最終出力であるクロック信号を分周してフィードバックし、基準クロック信号との位相差に基づき、基準クロック信号に同期した周波数のクロック信号を生成するデジタルPLL(Phase-locked loop)回路に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、従来のデジタルPLL回路を示すブロック図である。
【0003】
従来のデジタルPLL回路10は、デジタル位相比較器(DPD:Digital Phase Detector)11、内部高精度発振器12、アナログPLL(APLL:Analog Phase-locked loop)回路13、デジタルループフィルタ(DLF:Digital Loop Filter )14、デジタル/アナログ変換器(以下、D/Aコンバータ)15、電圧制御発振器(VCO:Voltage Controlled Oscillator )16、及び分周器17を含む。
【0004】
デジタル位相比較器11は、基準クロック信号REF_CLKと帰還クロック信号FB_CLKとの位相差をカウントし、位相差を表すデジタル位相差信号を出力する。
【0005】
デジタル位相比較器11は、基準クロック信号REF_CLKと帰還クロック信号FB_CLKとの位相差を出力するアナログ位相比較器と、位相差をカウントするデジタルカウンタとを含み、アナログ位相比較器から出力される位相差をデジタルカウンタでカウントし、デジタル位相差信号として出力する。デジタルカウンタでのカウントには、アナログPLL13を経て内部高精度発振器12から供給される位相差カウントクロックが用いられる。
【0006】
内部高精度発振器12は、デジタル位相比較器11のデジタルカウンタで位相差をカウントする際に用いる位相差カウントクロックを生成するための発振器であり、位相差カウントクロックは、アナログPLL13を経てデジタル位相比較器11に入力される。
【0007】
デジタルループフィルタ14は、DSP(Digital Signal Processor:デジタル信号プロセッサ)等の演算装置で構成されており、デジタル位相比較器11で検出された位相差(デジタル位相差信号)を元に生成した誤差信号を平均化して出力するデジタル型のループフィルタである。
【0008】
D/Aコンバータ15は、デジタルループフィルタ14から出力される誤差信号をアナログ信号に変換して出力する変換器である。デジタルループフィルタ14から出力される誤差信号は、電圧制御発振器16の発振周波数を制御するためのアナログ電圧値に変換される。
【0009】
電圧制御発振器16は、スレーブ発振器として用いられる発振器であり、例えば、バリキャップダイオードのように静電容量を変更可能な素子を含む発振器を用いることができる。D/Aコンバータ15から出力されるアナログ電圧値をバリキャップダイオードのpn接合間に印加することにより、デジタルループフィルタ14から出力される誤差信号に応じた発振周波数のクロック信号CLKを出力する。電圧制御発振器16から出力されるクロック信号CLKは、例えば、通信機器や映像機器等の電子機器に供給され、基準クロック信号等として用いられる。
【0010】
分周器17は、電圧制御発振器16から出力されるクロック信号CLKを分周し、帰還クロック信号FB_CLKとしてデジタル位相比較器11に帰還入力する分周器である。
【0011】
このような従来のデジタルPLL回路10では、電圧制御発振器16から出力されるクロック信号CLKが分周器17で分周され、帰還クロック信号FB_CLKとしてデジタル位相比較器11にフィードバックされる。そして、アナログPLL13を経て内部高精度発振器12から供給される位相差カウントクロックを用いて、基準クロック信号REF_CLKと帰還クロック信号FB_CLKとの位相差がカウントされる。カウントされた位相差は、デジタル位相差信号として出力される。
【0012】
デジタルループフィルタ14では、デジタル位相比較器11から出力されるデジタル位相差信号に基づいて生成した誤差信号が平均化されて、平均値としての誤差信号がD/Aコンバータ15に入力される。
【0013】
D/Aコンバータ15では、デジタルループフィルタ14から出力される誤差信号がアナログ信号(アナログ電圧値)に変換され、電圧制御発振器16に供給される。
【0014】
D/Aコンバータ15から電圧制御発振器16に供給されるアナログ電圧値は、バリキャップダイオードのpn接合間に印加されて静電容量が変更され、デジタルループフィルタ14から出力される誤差信号に応じた発振周波数のクロック信号CLKが電圧制御発振器16から出力される。
【0015】
以上より、スレーブ発振器である電圧制御発振器16から出力されるクロック信号CLKの周波数が基準クロック信号REF_CLKに同期するように制御される。
【0016】
従来のデジタルPLL回路10では、クロック信号CLKの周波数を高精度に制御するために、種々の改良が行われていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開平09−238070号公報
【特許文献2】特開2000−286697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
図2は、従来のデジタルPLL回路10から出力されるクロック信号を用いてアナログ映像信号をデジタル映像信号に変換するアナログ/デジタル変換器を示すブロック図である。
【0019】
アナログ/デジタル変換器(以下、A/Dコンバータ)20は、アナログ映像信号をデジタルサンプリングする際に用いるサンプリングクロック信号として、デジタルPLL回路10から供給されるクロック信号を用いている。このため、デジタルPLL回路10から出力されるクロック信号は、A/Dコンバータ20に入力されるアナログ映像信号に同期している必要がある。
【0020】
ここで、映像信号には、水平方向の同期を取るための水平同期信号(HSYNC:Horizontal Synchronizing signal)、垂直方向の同期を取るための垂直同期信号(VSYNC:Vertical Synchronizing signal)、及び複合同期信号(CSYNC:Composite Synchronizing signal)の3種類の同期信号が用いられる。このうち水平同期信号(HSYNC:Horizontal Synchronizing signal)は、A/Dコンバータ20に入力されるアナログ映像信号と同期している。
【0021】
複合同期信号(CSYNC)は、垂直同期信号(HSYNC)と水平同期信号(VSYNC)を複合させた信号であり、垂直同期信号と水平同期信号の論理積(AND)で与えられる。
【0022】
また、図2に示すデジタルPLL回路10では、基準クロック信号REF_CLKとして複合同期信号(CSYNC)を用いる。
【0023】
このため、デジタルPLL回路10において、複合同期信号(CSYNC)に同期するように生成されるクロック信号がサンプリングクロック信号としてA/Dコンバータ20に入力されることになる。
【0024】
すなわち、複合同期信号(CSYNC)に基づいて生成されるサンプリングクロック信号がA/Dコンバータ20に入力されるアナログ映像信号に同期している必要があることになる。
【0025】
図3は、水平同期信号(HSYNC)、垂直同期信号(VSYNC)、及び複合同期信号(CSYNC)の一例を示すタイミングチャートである。図3に示すように、水平同期信号(HSYNC)はライン毎にパルスを有し、垂直同期信号(VSYNC)は、フレーム毎にパルスを有する。
【0026】
ここで、複合同期信号(CSYNC)は、水平同期信号(HSYNC)と垂直同期信号(VSYNC)の論理積で与えられるため、区間Aのように、複合同期信号(CSYNC)がLレベルに保持される区間Aをライン毎に含む。
【0027】
この区間Aの間は、複合同期信号(CSYNC)と水平同期信号(HSYNC)が同期しないため、複合同期信号(CSYNC)を基準クロック信号REF_CLKとして用いてデジタルPLL回路10で生成されるサンプリングクロック信号は、A/Dコンバータ20に入力されるアナログ映像信号との同期が取れなくなる。
【0028】
このため、複合同期信号(CSYNC)に基づいて生成されるサンプリングクロック信号を用いると、上述の区間Aの間は、デジタル位相比較器11から出力されるカウント値のずれが大きくなり、アナログ映像信号に同期するサンプリングクロック信号を正しく生成できない区間が生じるという課題があった。
【0029】
正しく生成されないサンプリングクロック信号は、アナログ映像信号との同期が取れないため、アナログ映像信号のデジタルサンプリングが正しいタイミングで行われず、A/Dコンバータ20から出力されるデジタル映像信号に、ジッタ等の乱れが生じるという課題があった。
【0030】
そこで、映像信号をサンプリングするためのサンプリングクロック信号として用いても、映像に乱れを生じさせないクロック信号を生成することのできるデジタルPLL回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0031】
本発明の実施の形態の一観点のデジタルPLL回路は、映像信号のサンプリングに用いるサンプリングクロック信号として、入力電圧に応じた発振周波数のクロック信号を出力する電圧制御発振回路と、映像信号の制御に用いられる複合同期信号と、前記電圧制御発振回路の出力に基づく帰還信号との位相差を検出する位相差検出部と、前記位相差検出部で検出される位相差が所定の範囲内にある場合は当該位相差を選択して出力し、前記位相差検出部で検出される位相差が前記所定の範囲内にない場合は前記位相差検出部で検出される位相差の目標値を出力する出力部とを含み、前記出力部の出力に基づいて、前記電圧制御発振回路の入力電圧を制御する。
【発明の効果】
【0032】
映像信号をサンプリングするためのサンプリングクロック信号として用いても、映像に乱れを生じさせないクロック信号を生成することのできるデジタルPLL回路を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】従来のデジタルPLL回路を示すブロック図である。
【図2】従来のデジタルPLL回路10から出力されるクロック信号を用いてアナログ映像信号をデジタル映像信号に変換するアナログ/デジタル変換器を示すブロック図である。
【図3】水平同期信号(HSYNC)、垂直同期信号(VSYNC)、及び複合同期信号(CSYNC)の一例を示すタイミングチャートである。
【図4】実施の形態1のデジタルPLL回路100を示すブロック図である。
【図5】実施の形態2のデジタルPLL回路200を示すブロック図である。
【図6】実施の形態2のデジタルPLL回路200のCPU250によって実行される処理手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明のデジタルPLL回路を適用した実施の形態について説明する。
【0035】
[実施の形態1]
図4は、実施の形態1のデジタルPLL回路100を示すブロック図である。
【0036】
実施の形態1のデジタルPLL回路100は、デジタル位相比較器(DPD:Digital Phase Detector)111、内部高精度発振器112、アナログPLL(APLL:Analog Phase-locked loop)回路113、セレクタ150、位相差判定回路151、ROM(Read Only Memory:読み出し専用メモリ)152、デジタルループフィルタ(DLF:Digital Loop Filter )114、デジタル/アナログ(以下、D/Aコンバータ)変換器115、電圧制御発振器(VCO:Voltage Controlled Oscillator )116、及び分周器117を含む。実施の形態1のデジタルPLL回路100は、例えば、半導体基板上に形成された電子素子を含む集積回路で実現される。
【0037】
実施の形態1のデジタルPLL回路100のデジタル位相比較器111には、基準クロック信号REF_CLKとして映像信号の制御に用いられる複合同期信号(CSYNC)が入力される。
【0038】
また、電圧制御発振器116から出力されるクロック信号CLKは、映像信号のサンプリングに用いるサンプリングクロック信号として用いられる。
【0039】
従って、分周器117を経てデジタル位相比較器111にフィードバックされる帰還クロック信号FB_CLKは、映像信号の制御に用いられるサンプリングクロック信号を分周して得る帰還クロック信号である。
【0040】
このため、サンプリングクロック信号を分周して得る帰還クロック信号FB_CLKと、基準クロック信号REF_CLK(複合同期信号(CSYNC))の位相差をカウントすることにより、サンプリングクロックと複合同期信号(CSYNC)の位相差を把握することができる。
【0041】
なお、以下の説明では、サンプリングクロック信号を用いてアナログ映像信号をデジタル映像信号に変換するアナログ/デジタル変換器としては、図2に示したA/Dコンバータ20を援用する。
【0042】
デジタル位相比較器111は、基準クロック信号REF_CLKと帰還クロック信号FB_CLKとの位相差をカウントし、位相差を表すデジタル位相差信号を出力する位相差検出部である。すなわち、複合同期信号(CSYNC)と帰還クロック信号FB_CLKの位相差を表すデジタル位相差信号がデジタル位相比較器111から出力される。
【0043】
デジタル位相比較器111は、基準クロック信号REF_CLKと帰還クロック信号FB_CLKとの位相差を出力するアナログ位相比較器と、位相差をカウントするデジタルカウンタを含み、アナログ位相比較器から出力される位相差をデジタルカウンタでカウントし、デジタル位相差信号として出力する。デジタルカウンタでのカウントには、アナログPLL113を経て内部高精度発振器112から供給される位相差カウントクロックが用いられる。
【0044】
内部高精度発振器112は、デジタル位相比較器111のデジタルカウンタで位相差をカウントする際に用いる位相差カウントクロックを生成するための発振器であり、位相差カウントクロックは、アナログPLL113を経てデジタル位相比較器111に入力される。
【0045】
セレクタ150は、デジタル位相比較器111から入力されるデジタル位相差信号と、ROM152から入力される目標値信号とのいずれかを選択して出力する選択部であり、例えば、論理回路又はスリーステートバッファを含む回路として実現することができる。
【0046】
セレクタ150は、位相差判定回路151からデジタル位相差信号が所定の範囲内にあることを表す判定結果が入力された場合には、デジタル位相比較器111から入力されるデジタル位相差信号を選択して出力する。一方、位相差判定回路151からデジタル位相差信号が所定の範囲内にないことを表す判定結果が入力された場合には、セレクタ150は、ROM152から入力される目標値信号を選択して出力する。
【0047】
位相差判定回路151は、デジタル位相比較器111から入力されるデジタル位相差信号が所定の範囲内にあるか否かを判定し、判定結果を表す信号をセレクタ150に入力する位相差判定部である。位相差判定回路151としては、例えば、ファームウェア(プログラム)での判定、又はハードウェア構成の場合は組み合わせ論理回路を用いることができる。
【0048】
位相差判定回路151は、基準クロック信号REF_CLKと帰還クロック信号FB_CLKとの位相差の上限閾値と下限閾値を有しており、デジタル位相比較器111から入力されるデジタル位相差信号によって表される位相差が上限閾値と下限閾値の間(上限閾値と下限閾値で規定される範囲内)にあるか否かを判定する。
【0049】
なお、上限閾値は、複合同期信号(CSYNC)と帰還クロック信号FB_CLKの位相差の上限閾値であるため、A/Dコンバータ20から出力されるデジタル映像信号にジッタが含まれないような適切な値であればよい。この上限閾値は、使用環境に応じて設定されればよい。
【0050】
同様に、下限閾値は、複合同期信号(CSYNC)と帰還クロック信号FB_CLKの位相差の下限閾値であるため、A/Dコンバータ20から出力されるデジタル映像信号にジッタが含まれないような適切な値であればよい。この下限閾値は、使用環境に応じて設定されればよい。
【0051】
位相差判定回路151は、デジタル位相差信号によって表される位相差が上限閾値と下限閾値で規定される範囲内にあるか否かの判定結果を表す信号をセレクタ150に入力する。セレクタ150の出力は、位相差判定回路151から入力される判定結果を表す信号によって切り替えられる。
【0052】
ROM152は、目標値信号を格納する読み取り専用メモリであり、例えば、不揮発性の半導体メモリを用いることができる。ROM152には、デジタル位相差信号の目標値を表すデータが格納されており、この目標値は目標値信号としてセレクタ150の一方の入力信号にされている。
【0053】
ROM152に格納される目標値は、位相差判定回路151が判定に用いる所定の範囲を規定する上限閾値と下限閾値の間に存在し、複合同期信号(CSYNC)と帰還クロック信号FB_CLKの位相差が上限閾値と下限閾値で規定される範囲から外れた場合に、電圧制御発振器116の発振周波数を制御するための目標値である。
【0054】
ROM152に格納される目標値は、上限閾値と下限閾値の中央値であってもよく、また、上限閾値と下限閾値の間で目標値として適切な任意の値に設定されてもよい。ROM152に格納される目標値は、使用環境に応じて設定されればよい。
【0055】
デジタルループフィルタ114は、DSP(Digital Signal Processor:デジタル信号プロセッサ)等の演算装置で実現され、デジタル位相比較器111で検出された位相差(デジタル位相差信号)を元に生成した誤差信号を平均化して出力するデジタル型のループフィルタである。
【0056】
D/Aコンバータ115は、デジタルループフィルタ114から出力される誤差信号をアナログ信号に変換して出力する変換器である。デジタルループフィルタ114から出力される誤差信号は、電圧制御発振器116の発振周波数を制御するためのアナログ電圧値に変換される。すなわち、このアナログ電圧値は、複合同期信号(CSYNC)と帰還クロック信号FB_CLKの位相差に応じた電圧値に設定される。
【0057】
電圧制御発振器116は、スレーブ発振器として用いられる発振器であり、例えば、バリキャップダイオードのように静電容量を変更可能な素子を含む発振器を用いることができる。D/Aコンバータ115から出力されるアナログ電圧値をバリキャップダイオードのpn接合間に印加することにより、デジタルループフィルタ114から出力される誤差信号に応じた発振周波数のクロック信号CLKを出力する。電圧制御発振器116から出力されるクロック信号CLKは、図2に示すA/Dコンバータ20のサンプリングクロック信号として用いられる。
【0058】
分周器117は、電圧制御発振器116から出力されるクロック信号CLKを分周し、帰還クロック信号FB_CLKとしてデジタル位相比較器111に帰還入力する分周器である。
【0059】
このような実施の形態1のデジタルPLL回路100では、電圧制御発振器116からA/Dコンバータ20でサンプリングクロック信号として用いられるクロック信号CLKが出力される。クロック信号CLKは、分周器117で分周され、帰還クロック信号FB_CLKとしてデジタル位相比較器111にフィードバックされる。そして、アナログPLL113を経て内部高精度発振器112から供給される位相差カウントクロックを用いて、基準クロック信号REF_CLKと帰還クロック信号FB_CLKとの位相差がカウントされる。基準クロック信号REF_CLKは、複合同期信号(CSYNC)であるため、カウントされる位相差は、複合同期信号(CSYNC)と帰還クロック信号FB_CLKとの位相差である。カウントされた位相差は、デジタル位相差信号として出力される。
【0060】
セレクタ150は、位相差判定回路151から入力される判定結果を表す信号に応じて選択した信号を出力する。セレクタ150は、位相差判定回路151からデジタル位相差信号が上限閾値と下限閾値で規定される範囲内にあることを表す判定結果が入力された場合には、デジタル位相比較器111から入力されるデジタル位相差信号を選択して出力する。一方、位相差判定回路151からデジタル位相差信号が上限閾値と下限閾値で規定される範囲内にないことを表す判定結果が入力された場合には、セレクタ150は、ROM152から入力される目標値信号を選択して出力する。
【0061】
デジタルループフィルタ114では、セレクタ150から出力されるデジタル位相差信号又は目標値信号に基づいて生成した誤差信号が平均化されて、平均値としての誤差信号がD/Aコンバータ115に入力される。
【0062】
D/Aコンバータ115では、デジタルループフィルタ114から出力される誤差信号がアナログ信号(アナログ電圧値)に変換され、電圧制御発振器116に供給される。
【0063】
D/Aコンバータ115から電圧制御発振器116に供給されるアナログ電圧値は、バリキャップダイオードのpn接合間に印加されて静電容量が変更され、デジタルループフィルタ114から出力される誤差信号に応じた発振周波数のクロック信号CLKが電圧制御発振器116から出力される。
【0064】
以上、実施の形態1のデジタルPLL回路によれば、デジタル位相比較器111で複合同期信号(CSYNC)と帰還クロック信号FB_CLKの位相差を検出し、位相差が上限閾値と下限閾値で規定される範囲内にある場合はセレクタ150がデジタル位相差信号を選択して出力する。一方、位相差が上限閾値と下限閾値で規定される範囲内にない場合はセレクタ150がROM152に格納されている目標値を選択して出力する。
【0065】
このため、位相差が上限閾値と下限閾値で規定される範囲内にある場合は、デジタルループフィルタ114でデジタル位相差信号に基づいて生成した誤差信号が平均化され、平均値としての誤差信号がD/Aコンバータ115に入力される。この結果、電圧制御発振器116のバリキャップダイオードのpn接合間には、複合同期信号(CSYNC)と帰還クロック信号FB_CLKの位相差に基づくアナログ電圧値がD/Aコンバータ115から電圧制御発振器116に供給され、電圧制御発振器116から出力されるクロック信号CLKの周波数が基準クロック信号REF_CLKに同期するように制御される。こうして得られるクロック信号CLKは、図2に示すA/Dコンバータ20に入力されるアナログ映像信号と同期する。
【0066】
また、位相差が上限閾値と下限閾値で規定される範囲内にない場合は、位相差判定回路151の判定結果を表す信号によってセレクタ150の出力がROM152に格納されている目標値に切り替えられる。これにより、デジタルループフィルタ114で目標値に基づいて生成した誤差信号が平均化され、平均値としての誤差信号がD/Aコンバータ115に入力される。この結果、電圧制御発振器116のバリキャップダイオードのpn接合間には、目標値に基づくアナログ電圧値がD/Aコンバータ115から電圧制御発振器116に供給され、電圧制御発振器116から出力されるクロック信号CLKの周波数が制御される。こうして得られるクロック信号CLKは、図2に示すA/Dコンバータ20に入力されるアナログ映像信号と同期する。
【0067】
このように、実施の形態1のデジタルPLL回路100によれば、複合同期信号(CSYNC)と帰還クロック信号FB_CLKの位相差が上限閾値と下限閾値で規定される範囲内にない場合は、位相差の目標値を用いて電圧制御発振器116の発振周波数が制御される。
【0068】
従って、図3に示した区間Aのように、複合同期信号(CSYNC)がLレベルに保持される区間があり、複合同期信号(CSYNC)と帰還クロック信号FB_CLKの位相差が上限閾値と下限閾値で規定される範囲内にない場合であっても、クロック信号CLKは、図2に示すA/Dコンバータ20に入力されるアナログ映像信号と同期するように生成される。
【0069】
このため、複合同期信号(CSYNC)を基準クロック信号REF_CLKとして用いて生成したクロック信号CLKをサンプリングクロック信号として用いれば、A/Dコンバータ20でデジタル変換されるデジタル映像信号にジッタ等の乱れが含まれることを抑制できる。
【0070】
[実施の形態2]
図5は、実施の形態2のデジタルPLL回路200を示すブロック図である。実施の形態2のデジタルPLL回路200は、実施の形態1のデジタルPLL回路100のうちの選択出力部であるセレクタ150、位相差判定回路151、及びROM152をCPU(Central Processing Unit:中央演算装置)250に置き換えたものである。
【0071】
CPU250は、所定のプログラムを実行することにより、実施の形態1におけるセレクタ150、位相差判定回路151、及びROM152と同一の機能をすべて実現可能なCPUである。
【0072】
このため、CPU250は、デジタル位相比較器111から入力されるデジタル位相差信号と、ROM152から入力される目標値信号とのいずれかを選択して出力する機能(実施の形態1のセレクタ150に相当する機能)を有する。
【0073】
また、CPU250は、デジタル位相比較器111から入力されるデジタル位相差信号が所定の範囲内にあるか否かを判定する機能(実施の形態1の位相差判定回路151に相当する機能)を有する。
【0074】
また、CPU250は、内部メモリを有しており、実施の形態1におけるROM152が格納していた目標値を表すデータ、及び、実施の形態1におけるセレクタ150、位相差判定回路151、及びROM152と同一の機能を実現するために必要なプログラムを格納している。
【0075】
図6は、実施の形態2のデジタルPLL回路200のCPU250によって実行される処理手順を示す図である。この処理は、デジタル位相比較器111によって基準クロック信号REF_CLKと帰還クロック信号FB_CLKとの位相差がカウントされ、位相差を表すデジタル位相差信号としてCPU250に入力されることにより、CPU250によって実行される処理である。なお、CPU250は、デジタル位相差信号又は目標値信号をデジタルループフィルタ114に入力した後において、デジタル位相比較器111から再びデジタル位相差信号が入力されると、図6に示す処理を繰り返し実行する。
【0076】
CPU250は、デジタル位相比較器111からデジタル位相差信号が入力されると、処理を開始する(ステップS1)。
【0077】
次いで、CPU250は、デジタル位相差信号が表す位相差が、上限閾値と下限閾値で規定される範囲内にあるか否かを判定する(ステップS2)。
【0078】
デジタル位相差信号が表す位相差が、上限閾値と下限閾値で規定される範囲内にあると判定した場合は、CPU250は、デジタル位相比較器111から入力されるデジタル位相差信号をデジタルループフィルタ114に入力する(ステップS3A)。
【0079】
一方、デジタル位相差信号が表す位相差が、上限閾値と下限閾値で規定される範囲内にないと判定した場合は、CPU250は、デジタル位相比較器111から入力されるデジタル位相差信号に変えて、内部メモリに格納された目標値を表すデータを読み出し、目標値信号としてデジタルループフィルタ114に入力する(ステップS3B)。
【0080】
CPU250からデジタル位相差信号又は目標値信号が入力されると、デジタルループフィルタ114は、実施の形態1のデジタルPLL回路100と同様に、デジタル位相差信号又は目標値信号に基づいて生成した誤差信号が平均化されて、平均値としての誤差信号がD/Aコンバータ115に入力される。
【0081】
D/Aコンバータ115では、デジタルループフィルタ114から出力される誤差信号がアナログ信号(アナログ電圧値)に変換され、電圧制御発振器116に供給される。
【0082】
D/Aコンバータ115から電圧制御発振器116に供給されるアナログ電圧値は、バリキャップダイオードのpn接合間に印加されて静電容量が変更され、デジタルループフィルタ114から出力される誤差信号に応じた発振周波数のクロック信号CLKが電圧制御発振器116から出力される。
【0083】
以上、実施の形態2のデジタルPLL回路200によれば、デジタル位相比較器111で複合同期信号(CSYNC)と帰還クロック信号FB_CLKの位相差を検出し、位相差が上限閾値と下限閾値で規定される範囲内にある場合はCPU250がデジタル位相差信号を選択して出力する。一方、位相差が上限閾値と下限閾値で規定される範囲内にない場合はCPU250が目標値信号を選択して出力する。
【0084】
このため、位相差が上限閾値と下限閾値で規定される範囲内にある場合は、デジタルループフィルタ114でデジタル位相差信号に基づいて生成した誤差信号が平均化され、平均値としての誤差信号がD/Aコンバータ115に入力される。この結果、電圧制御発振器116のバリキャップダイオードのpn接合間には、複合同期信号(CSYNC)と帰還クロック信号FB_CLKの位相差に基づくアナログ電圧値がD/Aコンバータ115から電圧制御発振器116に供給され、電圧制御発振器116から出力されるクロック信号CLKの周波数が基準クロック信号REF_CLKに同期するように制御される。こうして得られるクロック信号CLKは、図2に示すA/Dコンバータ20に入力されるアナログ映像信号と同期する。
【0085】
また、位相差が上限閾値と下限閾値で規定される範囲内にない場合は、CPU250の出力は目標値信号に切り替えられる。これにより、デジタルループフィルタ114で目標値に基づいて生成した誤差信号が平均化され、平均値としての誤差信号がD/Aコンバータ115に入力される。この結果、電圧制御発振器116のバリキャップダイオードのpn接合間には、目標値に基づくアナログ電圧値がD/Aコンバータ115から電圧制御発振器116に供給され、電圧制御発振器116から出力されるクロック信号CLKの周波数が制御される。こうして得られるクロック信号CLKは、図2に示すA/Dコンバータ20に入力されるアナログ映像信号と同期する。
【0086】
このように、実施の形態2のデジタルPLL回路200によれば、複合同期信号(CSYNC)と帰還クロック信号FB_CLKの位相差が上限閾値と下限閾値で規定される範囲内にない場合は、位相差の目標値を用いて電圧制御発振器116の発振周波数が制御される。
【0087】
従って、図3に示した区間Aのように、複合同期信号(CSYNC)がLレベルに保持される区間があり、複合同期信号(CSYNC)と帰還クロック信号FB_CLKの位相差が上限閾値と下限閾値で規定される範囲内にない場合であっても、クロック信号CLKは、図2に示すA/Dコンバータ20に入力されるアナログ映像信号と同期するように生成される。
【0088】
このため、複合同期信号(CSYNC)を基準クロック信号REF_CLKとして用いて生成したクロック信号CLKをサンプリングクロック信号として用いれば、A/Dコンバータ20でデジタル変換されるデジタル映像信号にジッタ等の乱れが含まれることを抑制できる。
【0089】
以上、本発明の例示的な実施の形態のデジタルPLL回路について説明したが、本発明は、具体的に開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0090】
111 デジタル位相比較器
112 内部高精度発振器
113 アナログPLL回路
114 デジタルループフィルタ
115 D/Aコンバータ
116 電圧制御発振器
117 分周器
150 セレクタ
151 位相差判定回路
152 ROM
250 CPU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像信号のサンプリングに用いるサンプリングクロック信号として、入力電圧に応じた発振周波数のクロック信号を出力する電圧制御発振回路と、
映像信号の制御に用いられる複合同期信号と、前記電圧制御発振回路の出力に基づく帰還信号との位相差を検出する位相差検出部と、
前記位相差検出部で検出される位相差が所定の範囲内にある場合は当該位相差を選択して出力し、前記位相差検出部で検出される位相差が前記所定の範囲内にない場合は前記位相差検出部で検出される位相差の目標値を出力する出力部と
を含み、
前記出力部の出力に基づいて、前記電圧制御発振回路の入力電圧を制御する、デジタルPLL回路。
【請求項2】
前記出力部は、
前記位相差検出部によって検出される位相差が所定の範囲内にあるかどうか判定する位相差判定部と、
前記位相差検出部で検出される位相差と当該位相差の目標値とが入力され、前記位相差判定部によって前記位相差が所定の範囲内にあると判定された場合は前記位相差検出部で検出される位相差を選択して出力し、前記位相差判定部によって前記位相差が前記所定の範囲内にないと判定された場合は前記目標値を出力する位相差出力部と
を有する、請求項1に記載のデジタルPLL回路。
【請求項3】
前記目標値は、前記所定の範囲を規定する上限閾値と下限閾値の中央値である、請求項1又は2に記載のデジタルPLL回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−213226(P2010−213226A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−59998(P2009−59998)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】