説明

デリバリパイプの成形型

【課題】インジェクタ取付筒部の転写性を向上することのできるデリバリパイプの成形型を提供する。
【解決手段】成形型20は、燃料を複数のインジェクタに分配するデリバリパイプ10を、キャビティ36内に樹脂を射出して成形する。デリバリパイプ10におけるインジェクタを取付けるインジェクタ取付筒部12の外周面に対応する可動金型24に、樹脂の射出時にキャビティ36内のエアを排出するためのエア抜き通路58,62を設ける。可動金型24は、両型材40,42及び入れ子型44を備え、型合せによってエア抜き通路58,62を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料を複数のインジェクタに分配するデリバリパイプを、キャビティ内に樹脂を射出して成形するデリバリパイプの成形型に関する。
【背景技術】
【0002】
従来例にかかるデリバリパイプを説明する。図10はデリバリパイプを示す断面図、図11は同じく下面図である。なお、説明の都合上、図10の断面図を基準としてデリバリパイプの上下左右を定める。
図10に示すように、デリバリパイプ110は、例えば直列3気筒の内燃機関(エンジン)に使用されるものである。デリバリパイプ110は、樹脂製で、主体をなすパイプ本体部111と、パイプ本体部111の軸方向(図10において左右方向)に所定間隔を隔てて配列された3つのインジェクタ取付筒部112とを有している。インジェクタ取付筒部112は、パイプ本体部111から径方向(図10において下方)へ突出されており、インジェクタ(図示省略)を取付可能となっている。パイプ本体部111内には、その先端部(図10において右端部)が閉鎖された燃料通路114が形成されている。また、パイプ本体部111の基端部すなわち開口端部(図10において左端部)には、燃料供給系の配管部材(図示省略)が接続可能となっている。各インジェクタ取付筒部112内には、燃料通路114に連通する3つの分岐通路116が形成されている。なお、インジェクタ取付筒部112の基端部内には仕切壁117が形成されている。仕切壁117は、連通孔118を有しており、インジェクタ取付筒部112内とパイプ本体部111内とを連通可能に仕切っている(図11参照)。
【0003】
前記デリバリパイプ110の成形型を説明する。図12は成形型を示す断面図、図13は成形型の要部を示す断面図、図14は分岐通路用中子ピンを示す上面図である。
図12に示すように、成形型120は、固定金型122と可動金型124と燃料通路用中子ピン126と3本の分岐通路用中子ピン128とを備えている。分岐通路用中子ピン128の先端部(上端部)には、前記仕切壁117の連通孔118を成形する凸部134(図13及び図14参照)が突出されている。
【0004】
前記固定金型122に前記可動金型124を型合せした状態で、両金型122,124による成形空間部内に前記燃料通路用中子ピン126が挿入される。また、可動金型124に分岐通路用中子ピン128がそれぞれ挿入され、その中子ピン128の凸部134が燃料通路用中子ピン126に当接される(図13参照)。このようにして型締めされた固定金型122、可動金型124、燃料通路用中子ピン126及び各分岐通路用中子ピン128により、前記デリバリパイプ110(図10参照)を成形するキャビティ136が形成される。そして、固定金型122に設けられたゲート138(図12参照)から、キャビティ136内に樹脂(溶融樹脂材料)が射出されてデリバリパイプ110が成形される(図13参照)。また、冷却後に型開きされることにより、デリバリパイプ110が取出される。なお、デリバリパイプ110の仕切壁117は、パイプ本体部111の肉厚111tに比べ、1/2〜2/3程度の薄い肉厚117tで形成されている(図13参照)。なお、このようなデリバリパイプ110の成形型120は、例えば特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−284779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記従来のデリバリパイプ110の成形型120によると、樹脂の射出時のキャビティ136内のエアは、インジェクタ取付筒部112の外周面に対応する可動金型124と分岐通路用中子ピン128との円筒状の嵌合面170(図13参照)の隙間をエア抜き通路として排出される。しかし、使用燃料がアルコール燃料の場合、耐アルコール性を確保するため、デリバリパイプ110を耐アルコール性樹脂(例えばポリフタルアミド(PPA)等のエンジニアリングプラスチック)で成形する場合がある。この場合、耐アルコール性樹脂は流動性が悪いため、インジェクタ取付筒部112にエア溜りにより樹脂が充填されない部位が発生しやすく、インジェクタ取付筒部112の転写性が低下する。すると、インジェクタの取付けの関係上、高精度が要求されるインジェクタ取付筒部112の内周面の面粗さが悪化し、インジェクタ装着時におけるインジェクタとの間の気密が確保できなくなるおそれがある。なお、インジェクタ取付筒部112からエアを排出するために、分岐通路用中子ピン128にエア抜き通路を設定することが考えられる。しかし、インジェクタ取付筒部112の内周面に型合せ面及び/又はエア抜き通路の開口面が面し、インジェクタ取付筒部112の内周面の面粗さの悪化を招くため好ましくない。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、インジェクタ取付筒部の転写性を向上することのできるデリバリパイプの成形型を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題は、特許請求の範囲に記載された構成を要旨とするデリバリパイプの成形型により解決することができる。
請求項1に記載されたデリバリパイプの成形型によると、燃料を複数のインジェクタに分配するデリバリパイプを、キャビティ内に樹脂を射出して成形するデリバリパイプの成形型であって、前記デリバリパイプにおける前記インジェクタを取付けるインジェクタ取付筒部の外周面に対応する型部材に、樹脂の射出時にキャビティ内のエアを排出するためのエア抜き通路を設けたものである。このように構成すると、インジェクタ取付筒部の外周面に対応する型部材に設けられたエア抜き通路を通じて、樹脂の射出時にキャビティ内のエアを排出することができる。したがって、インジェクタ取付筒部にエア溜りにより樹脂が充填されない部位の発生を防止し、インジェクタ取付筒部の転写性を向上することができる。このことは、デリバリパイプを成形する樹脂が流動性の悪い樹脂である場合に有効である。また、インジェクタ取付筒部の外周面に対応する型部材にエア抜き通路を設けるため、インジェクタ取付筒部の内周面の面粗さを悪化することなく、また、エア抜き通路にかかる設計の自由度を増大することができる。
【0009】
また、請求項2に記載されたデリバリパイプの成形型によると、型部材は、前記インジェクタ取付筒部の段付円筒状の外周面を形成する複数の分割型材を備え、前記分割型材相互の型合せによって前記エア抜き通路を形成する構成としたものである。このように構成すると、型部材を構成する複数の分割型材相互の型合せによって、エア抜き通路を容易に形成することができる。
【0010】
また、請求項3に記載されたデリバリパイプの成形型によると、前記分割型材相互の型合せによって、前記インジェクタ取付筒部の先端側を細くする段付部を形成したものである。このように構成すると、インジェクタ取付筒部の外周面が先端側を細くする段付円筒状に形成されることで、デリバリパイプのインジェクタ取付筒部の離型性を向上することができる。また、分割型材相互の型合せによって、インジェクタ取付筒部の先端側を細くする段付部を容易に形成することができる。
【0011】
また、請求項4に記載されたデリバリパイプの成形型によると、前記デリバリパイプの主体をなすパイプ本体部内と前記インジェクタ取付筒部内とを連通可能に仕切る仕切壁を、前記パイプ本体部の肉厚と同等の肉厚で形成するものである。このように構成すると、仕切壁を、パイプ本体部の肉厚より薄い肉厚で形成する場合と比べて、仕切壁への樹脂の流動性を向上することができる。
【0012】
また、請求項5に記載されたデリバリパイプの成形型によると、前記デリバリパイプを成形する樹脂が耐アルコール性樹脂である。このように構成すると、エタノール燃料、メタノール燃料等のアルコールを含むアルコール性燃料に対する耐性を有するデリバリパイプを成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】一実施形態にかかるデリバリパイプを示す断面図である。
【図2】デリバリパイプを示す下面図である。
【図3】成形型を示す断面図である。
【図4】成形型の要部を示す断面図である。
【図5】図4のV−V線矢視断面図である。
【図6】分岐通路用中子ピンを示す上面図である。
【図7】図6のVII−VII線矢視断面図である。
【図8】入れ子型を示す上面図である。
【図9】図8のIX−IX線矢視断面図である。
【図10】従来例にかかるデリバリパイプを示す断面図である。
【図11】デリバリパイプを示す下面図である。
【図12】成形型を示す断面図である。
【図13】成形型の要部を示す断面図である。
【図14】分岐通路用中子ピンを示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。図1はデリバリパイプを示す断面図、図2は同じく下面図である。なお、説明の都合上、図1の断面図を基準としてデリバリパイプの上下左右を定める。
図1に示すように、デリバリパイプ10は、例えば直列4気筒の内燃機関(エンジン)に使用されるものである。デリバリパイプ10は、樹脂製で、主体をなすパイプ本体部11と、パイプ本体部11の軸方向(図1において左右方向)に所定間隔を隔てて配列された4つのインジェクタ取付筒部12とを有している。インジェクタ取付筒部12は、パイプ本体部11から径方向(図1において下方)へ突出されており、インジェクタ(図示省略)を取付可能となっている。パイプ本体部11の内周面は、基端部(図1において左端部)から先端部(図1において右端部)に向かって細くするテーパ状に形成されている。また、パイプ本体部11の外周面は、ストレート状に形成されている。また、パイプ本体部11内には、その先端部(図1において右端部)が閉鎖された燃料通路14が形成されている。また、パイプ本体部11の基端部すなわち開口端部(図1において左端部)には、燃料供給系の配管部材(図示省略)が接続可能となっている。
【0015】
前記各インジェクタ取付筒部12内には、前記燃料通路14に連通する分岐通路16が形成されている。また、インジェクタ取付筒部12の基端部内には仕切壁17が形成されている。仕切壁17は、連通孔18を有しており、パイプ本体部11内とインジェクタ取付筒部12内とを連通可能に仕切っている(図2参照)。連通孔18は、左右方向を長くする長細孔で形成されている。なお、仕切壁17の連通孔18は、必要な開口面積を確保できればよく、長細孔の他、丸孔、半円孔、楕円孔、角孔、異形孔等の形状でもよい。また、仕切壁17は、例えば、燃料の流量と燃料通路への圧力変動の伝達を規制するとともに、インジェクタに装着されたOリング(図示省略)の脱落を防止する。
【0016】
前記デリバリパイプ10の成形型について説明する。図3は成形型を示す断面図、図4は成形型の要部を示す断面図、図5は図4のV−V線矢視断面図、図6は分岐通路用中子ピンを示す上面図、図7は図6のVII−VII線矢視断面図、図8は入れ子型を示す上面図、図9は図8のIX−IX線矢視断面図である。
図3に示すように、成形型20は、固定金型22と可動金型24と燃料通路用中子ピン26と4本の分岐通路用中子ピン28とを備えている。
【0017】
前記固定金型22及び前記可動金型24は、前記デリバリパイプ10(図1参照)のパイプ本体部11及び各インジェクタ取付筒部12の外表面を成形するものである。すなわち、固定金型22は、上型に相当し、その下面側にパイプ本体部11の上半部に対応する成形面を有している。
また、可動金型24は、下型に相当し、固定金型22に対して上下方向に型合せ及び型開き可能となっている。可動金型24は、その上面側にパイプ本体部11の下半部に対応する成形面を有している。また、可動金型24には、インジェクタ取付筒部12の外周面に対応する4つの筒状成形面32(図4及び図5参照)が形成されている。
また、前記燃料通路用中子ピン26は、パイプ本体部11の燃料通路14の内壁面を成形するもので、丸棒状でかつ先細りテーパ状に形成されている。
また、前記分岐通路用中子ピン28は、インジェクタ取付筒部12の分岐通路16の内壁面を成形するもので、段付円柱状に形成されている。分岐通路用中子ピン28の先端部(上端部)には、前記仕切壁17の連通孔18を成形する凸部34(図6参照)が突出されている。
【0018】
前記固定金型22に前記可動金型24を型合せした状態で、両金型22,24による成形空間部内に前記燃料通路用中子ピン26が挿入される。また、可動金型24の各筒状成形面32内に各分岐通路用中子ピン28がそれぞれ挿入され、その分岐通路用中子ピン28の凸部34が燃料通路用中子ピン26に当接される(図4及び図5参照)。このようにして型締めされた固定金型22、可動金型24、燃料通路用中子ピン26、分岐通路用中子ピン28により、前記デリバリパイプ10を成形するキャビティ36が形成される。そして、固定金型22に設けられたゲート38(図3参照)から、キャビティ36内に樹脂(溶融樹脂材料)が射出されてデリバリパイプ10が成形される(図4及び図5参照)。また、本実施形態のデリバリパイプ10を成形する樹脂は、耐アルコール性樹脂(例えばポリフタルアミド(PPA)等のエンジニアリングプラスチック)である。
【0019】
また、冷却後に、前記型締め時と逆順で、各分岐通路用中子ピン28及び燃料通路用中子ピン26が抜き出され、可動金型24が型開きされることにより、デリバリパイプ10が取出される。なお、デリバリパイプ10の仕切壁17は、パイプ本体部11の肉厚、詳しくはインジェクタ取付筒部12に連続する部分の肉厚11tと同等の肉厚17tで形成されている(図4参照)。なお、本明細書でいう「パイプ本体部の肉厚と同等の肉厚」とは、パイプ本体部11の内周面のテーパ状の抜き勾配によるパイプ本体部11の軸方向の肉厚の変化分、及び、製造誤差の範囲を含むものであり、パイプ本体部11の肉厚11tとの差が15%以内の場合を同等と定義する。
【0020】
続いて、樹脂の射出時に前記成形型20のキャビティ36内のエアを排出するエア抜き構造について説明する。
図3に示すように、前記可動金型24は、上下の両型材40,42と入れ子型44とから構成されている。両型材40,42は、板状に形成されている。上側の型材40における筒状成形面32の下半部には、筒状成形面32と同心状をなす円環状の段付凹部46が形成されている(図9参照)。また、入れ子型44は、円環状に形成されている(図8参照)。入れ子型44は、上側の型材40の段付凹部46に同心状に嵌合されかつ上側の型材40に重ね合わされた下側の型材42により抜け止めされている。入れ子型44の内周面は、筒状成形面32の一部をなすものである。また、下側の型材42の下半部には、筒状成形面32と同心状をなす円環状の段付凹部48が形成されている(図7参照)。その段付凹部48には、筒状成形面32内に挿入された前記分岐通路用中子ピン28の基部側の大径軸部50が同心状に嵌合される。
【0021】
図9に示すように、前記筒状成形面32には、前記入れ子型44の内周部が張り出しており、該入れ子型44の上端面の内周部による段付面53が形成されている。段付面53により、上側の型材40と入れ子型44との型合せによる段付部が構成されている。
また、前記下側の型材42の上端部の筒状成形面32の上端部には、テーパ面54が形成されている。テーパ面54の上端縁は、入れ子型44の内周面の下端縁に整合している。テーパ面54により、下側の型材42と入れ子型44との型合せによる段付部が構成されている。
したがって、筒状成形面32が、両段付部(段付面53、テーパ面54)によって、前記インジェクタ取付筒部12の基端部から先端部に向かって次第に小径をなす段付円筒状に形成されている(図4及び図5参照)。なお、可動金型24は、デリバリパイプ10におけるインジェクタ取付筒部12の外周面に対応する「型部材」に相当する。また、上下の両型材40,42及び入れ子型44は、本明細書でいう「分割型材」に相当する。
【0022】
図9に示すように、前記入れ子型44の上下両端面には、複数個(図8では8個を示す)の通路溝56が放射状にかつ上下対称状に形成されている(図8参照)。通路溝56は、入れ子型44の内周側を浅くし、その外周側を深くする段付溝からなる。また、上側の通路溝56の溝開口が、上側の型材40の段付凹部46の環状平面からなる下向き平面で閉鎖されることによって、閉断面の第1エア抜き通路58が形成されている。すなわち、上側の型材40と入れ子型44との型合せによって第1エア抜き通路58が形成されている。第1エア抜き通路58の内端部(図9において左端部)は、筒状成形面32に開口されている。また、第1エア抜き通路58の外端部は、上側の型材40と入れ子型44との円筒状の嵌合面60の隙間、上側の型材40(詳しくは下面)と下側の型材42(詳しくは上面)との型合せ面61の隙間を介して外部(大気)に開放されている。なお、入れ子型44の上端面と、その上端面に対応する上側の型材40の面(詳しくは段付凹部46の環状平面からなる下向き平面)とが型合せ面59となっている。
【0023】
また、前記下側の通路溝56の溝開口が、前記下側の型材42(詳しくは上面)で閉鎖されることによって、閉断面の第2エア抜き通路62が形成されている。すなわち、下側の型材42と入れ子型44との型合せによって第2エア抜き通路62が形成されている。第2エア抜き通路62の内端部(図9において左端部)は、筒状成形面32に開口されている。また、第2エア抜き通路62の外端部は、上側の型材40と下側の型材42との型合せ面61の隙間を介して外部(大気)に開放されている。なお、入れ子型44の下端面と下側の型材42の上面とが型合せ面63となっている。
【0024】
図7に示すように、前記分岐通路用中子ピン28の大径軸部50の上端面の内周側には、環状溝64が形成されている(図6参照)。環状溝64は、前記インジェクタ取付筒部12の先端部(下端部)を成形する断面V字状に形成されている。また、大径軸部50の上端面には、複数個(図6では8個を示す)の通路溝66が放射状に形成されている。通路溝66は、大径軸部50の上端面の内周側を浅くし、その上端面の外周側を深くする段付溝からなる。また、通路溝66の溝開口が、下側の型材42の段付凹部48の環状平面からなる下向き平面で閉鎖されることによって、閉断面の第3エア抜き通路68が形成されている。すなわち、分岐通路用中子ピン28(詳しくは大径軸部50)と下側の型材42との型合せによって第3エア抜き通路68が形成されている。第3エア抜き通路68の内端部(図7においては左端部)は、筒状成形面32に開口している。また、第3エア抜き通路68の外端部は、下側の型材42と分岐通路用中子ピン28の大径軸部50との円筒状の嵌合面70の隙間を介して外部(大気)に開放されている。なお、分岐通路用中子ピン28の大径軸部50の上端面と、その上端面に対応する下側の型材42の面(詳しくは段付凹部48の環状平面からなる下向き平面)とが型合せ面72となっている。
【0025】
前記デリバリパイプ10の成形型20によると、デリバリパイプ10におけるインジェクタを取付けるインジェクタ取付筒部12の外周面に対応する可動金型24に、樹脂の射出時にキャビティ36内のエアを排出するための第1エア抜き通路58及び第2エア抜き通路62を設けたものである。これにより、可動金型24に設けられた第1エア抜き通路58及び第2エア抜き通路62を通じて、樹脂の射出時にキャビティ36内のエアを排出することができる。したがって、インジェクタ取付筒部12にエア溜りにより樹脂が充填されない部位の発生を防止し、インジェクタ取付筒部12の転写性を向上することができる。このことは、デリバリパイプ10を成形する樹脂が耐アルコール性樹脂すなわち流動性の悪い樹脂である場合に有効である。また、インジェクタ取付筒部12の外周面に対応する可動金型24にエア抜き通路58,62を設けるため、インジェクタ取付筒部12の内周面の面粗さを悪化することなく、また、エア抜き通路58,62にかかる設計の自由度を増大することができる。
【0026】
また、可動金型24(詳しくは下側の型材42)と分岐通路用中子ピン28の大径軸部50とにより、インジェクタを取付けるインジェクタ取付筒部12の外周面に対応しかつ樹脂の射出時にキャビティ36内のエアを排出するための第3エア抜き通路68を設けたものである。これにより、第3エア抜き通路68を通じて、樹脂の射出時にキャビティ36内のエアを排出することができる。
【0027】
また、可動金型24は、上下の両型材40,42及び入れ子型44を備え、上側の型材40と入れ子型44との型合せによって第1エア抜き通路58を形成し、下側の型材42と入れ子型44との型合せによって第2エア抜き通路62を形成する構成としたものである。したがって、上側の型材40と入れ子型44との型合せによって、第1エア抜き通路58を容易に形成することができるとともに、下側の型材42と入れ子型44との型合せによって、第2エア抜き通路62を容易に形成することができる。また、第1のエア抜き通路58及び第2エア抜き通路62を数多く配置することができるので、インジェクタ取付筒部12の転写性を向上し、内周面の面粗さの悪化を防止することができるとともに、デポジットの堆積を分散することができるので、可動金型24の洗浄工数を低減し、メンテナンスコストを低減することができる。
【0028】
また、上側の型材40と入れ子型44との型合せによって、インジェクタ取付筒部12の先端側(図9において下側)を細くする段付部(段付面53)を形成するとともに、下側の型材42と入れ子型44との型合せによって、インジェクタ取付筒部12の先端側(図9において下側)を細くする段付部(テーパ面54)を形成したものである。したがって、インジェクタ取付筒部12の外周面が先端側を細くする段付円筒状に形成されることで、インジェクタ取付筒部12の離型性を向上することができる。ひいては、デリバリパイプ10の離型不良の発生を防止することができる。また、上側の型材40と入れ子型44との型合せ、及び、下側の型材42と入れ子型44との型合せによって、インジェクタ取付筒部12の先端側を細くする段付部(段付面53、テーパ面54)を容易に形成することができる。
【0029】
また、デリバリパイプ10の主体をなすパイプ本体部11内とインジェクタ取付筒部12内とを連通可能に仕切る仕切壁17を、パイプ本体部11の肉厚11tと同等の肉厚17tで形成するものである(図4参照)。したがって、仕切壁17を、パイプ本体部11の肉厚11tより薄い肉厚で形成する場合と比べて、仕切壁17への樹脂の流動性を向上することができる。
【0030】
また、デリバリパイプ10を成形する樹脂が耐アルコール性樹脂である。したがって、エタノール燃料等のアルコールを含むアルコール性燃料に対する耐性を有するデリバリパイプ10を成形することができる。
【0031】
本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、可動金型24に設けるエア抜き通路の本数、経路、断面形状等は適宜変更することができる。また、可動金型24は、3つの分割型材で構成するものに限らず、一部材で構成してもよいし、あるいは、2つ又は3つ以上の分割型材で構成してもよい。また、可動金型24に設けるエア抜き通路は、分割型材の型合せによって形成する他、ドリル等による穴あけ加工によって形成することができる。また、仕切壁17の肉厚17tは、適宜増減することができる。また、デリバリパイプ10を成形する樹脂は、耐アルコール性樹脂に限らず、PA66(ポリアミド66)、PPA(ポリフタルアミド)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)等の樹脂でもよい。
【符号の説明】
【0032】
10…デリバリパイプ
11…パイプ本体部
12…インジェクタ取付筒部
17…仕切壁
20…成形型
24…可動金型(型部材)
36…キャビティ
40…上側の型材(分割型材)
42…下側の型材(分割型材)
44…入れ子型44(分割型材)
53…段付面(段付部)
54…テーパ面(段付部)
58…第1のエア抜き通路
62…第2のエア抜き通路
68…第3のエア抜き通路


【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を複数のインジェクタに分配するデリバリパイプを、キャビティ内に樹脂を射出して成形するデリバリパイプの成形型であって、
前記デリバリパイプにおける前記インジェクタを取付けるインジェクタ取付筒部の外周面に対応する型部材に、樹脂の射出時にキャビティ内のエアを排出するためのエア抜き通路を設けたことを特徴とするデリバリパイプの成形型。
【請求項2】
請求項1に記載のデリバリパイプの成形型であって、
前記型部材は、前記インジェクタ取付筒部の段付円筒状の外周面を形成する複数の分割型材を備え、
前記分割型材相互の型合せによって前記エア抜き通路を形成する構成とした
ことを特徴とするデリバリパイプの成形型。
【請求項3】
請求項2に記載のデリバリパイプの成形型であって、
前記分割型材相互の型合せによって、前記インジェクタ取付筒部の先端側を細くする段付部を形成したことを特徴とするデリバリパイプの成形型。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載のデリバリパイプの成形型であって、
前記デリバリパイプの主体をなすパイプ本体部内と前記インジェクタ取付筒部内とを連通可能に仕切る仕切壁を、前記パイプ本体部の肉厚と同等の肉厚で形成することを特徴とするデリバリパイプの成形型。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載のデリバリパイプの成形型であって、
前記デリバリパイプを成形する樹脂が耐アルコール性樹脂であることを特徴とするデリバリパイプの成形型。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−193661(P2012−193661A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−58131(P2011−58131)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(000116574)愛三工業株式会社 (1,018)
【Fターム(参考)】