説明

データ伝送方法及びそれを用いたセンサシステム

【課題】移動する検出ユニットで検出された検出データを読み取り装置へ、効率良く伝送する。
【解決手段】読み取り装置30から供給された電源電力が、非接触の磁界結合を介して、検出対象物に装着された検出ユニット10へ伝送される。センサ素子11及び検出回路12により、検出対象物の温度、圧力等が検出される。電圧判定回路20−1,20−2では、受電した電源電力の大きさを判定し、この判定結果が動作保証値以上のときには、制御回路13を動作モードに設定して検出データを送信させる。判定結果が動作保証値よりも小さいが検出データの保持可能な値以上のときには、回路13を保持モードに設定して検出データを保持させ、判定結果が動作保証値以上に回復したときには、動作モードへ復帰させ、保持させた検出データを送信させる。判定結果が検出データの保持可能な値よりも小さいときには、回路13を停止モードに設定して動作を停止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動する検出対象物の物理量(例えば、温度、圧力、応力、変位、加速度、電気量等)を、その検出対象物に装着したセンサにて検出し、この検出したデータを非接触で読み取り装置側へ伝送するデータ伝送方法及びそれを用いたセンサシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、移動する検出対象物の物理量をセンサにて検出してこの検出したデータを読み取り装置側へ伝送するセンサシステムとして、例えば、下記の特許文献1、2、3に記載された技術が知られている。この特許文献1〜3に記載されたセンサシステムでは、センサ素子及び送信機を有する検出ユニットを車両のタイヤ側に装着し、その検出ユニットによりタイヤの空気圧や温度を検出してこの検出データを無線で送信し、この送信データを、車両本体に取り付けた読み取り装置側の受信機で受信してタイヤに異常が生じているか否かを判定して車両の安全性を向上させるようになっている。
【0003】
【特許文献1】特開2004−161113号公報
【特許文献2】特開2003−291615号公報
【特許文献3】特開平10−104103号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の検出ユニットから読み取り装置へのデータ伝送方法及びそれを用いたセンサシステムでは、次の(A)、(B)のような課題があった。
【0005】
(A) データ伝送上の課題
従来は、センサ素子及び送信機を有する検出ユニットを車両のタイヤ側に装着し、タイヤの空気圧や温度を検出してこの検出データを無線で車両本体側の受信機へ送信する構成になっている。ところが、特許文献1の段落0028に記載されているように、車両の走行中にはタイヤの回転に伴ってこれに装着された検出ユニットも回転するので、この検出ユニットの回転角度によって車両本体側の受信機の受信感度が変化し、ある回転角度の範囲において受信機で受信が出来ない点(この点を「ヌルポイント」ともいう。)が生じる。これを防止するためには、送信電波の電力を大きくすればよいが、電波法の規制や混信等の問題が生じるので、そのような対策がとれない。そこで、特許文献lの技術では、ヌルポイントを避けたタイヤの回転角度の範囲(例えば、180°±60°の範囲)で、送信機から検出データを受信機へ無線送信するようにしている。
【0006】
しかし、このような構成では、タイヤの1回転中の限られた回転角度範囲の時間内に検出データを伝送しなければならないので、タイヤの回転速度が速くなってその回転角度範囲の時間が短くなると、検出ユニットが回転して検出データの送信を完了する前に、途中でデータ伝送が遮断される虞があった。これを回避するために、短時間にデータ伝送を完了させようとすると、データ伝送レートを高くしなければならないが、データ伝送レートを高くすると、無線通信に要する帯域が広がって通信回線の信号対雑音比(S/N比)を許容値以上に確保することが難しくなるという問題が生じる。
【0007】
(B) 電池消耗に対する保守点検上の課題
従来は、検出ユニット内に電源電力供給用の電池が設けられているので、電池消耗に対する保守点検が必要になり、不利不便であった。これを解消するために、読み取り装置側において電源源力を重畳した送信信号を作り、これを非接触で検出ユニット側へ送り、該検出ユニット側でその送信信号を復調して電源電力を取り出し、検出ユニットの内部回路に供給することが考えられる。しかし、前記(A)の問題と同様に、タイヤの1回転中に途中で送信信号が遮断され、読み取り装置側から検出ユニットへ、十分な電源電力を供給することが難しく、この結果、検出ユニットから読み取り装置側へ、検出データを最後まで伝送することができないという問題が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のデータ伝送方法は、移動する検出対象物に装着され、外部から与えられる電源電力を受電すると共に制御信号を受信し、前記受電した電源電力及び前記受信した制御信号に基づき、前記検出対象物における物理量の変化を検出して検出データを外部へ送信する検出ユニットと、前記検出ユニットから離間して設置され、前記検出ユニットに対して非接触で、前記電源電力が重畳された前記制御信号を前記検出ユニットへ送信し、且つ前記検出ユニットから送信された前記検出データを受信する読み取り装置と、を備えたセンサシステムにおけるデータ伝送方法である。
【0009】
そして、前記検出ユニットでは、前記受電した電源電力の大きさを判定し、前記判定結果が動作保証値以上のときには、前記検出ユニットを動作モードに設定して前記検出データを送信させて一定の時間待たせ、前記判定結果が前記動作保証値よりも小さいが前記検出データの保持可能な値以上のときには、前記検出ユニットを保持モードに設定して前記検出データを保持させ、前記判定結果が前記動作保証値以上に回復したときには、前記保持モードから前記動作モードへ移行させ、一定の待ち時間後に前記保持させた検出データを送信させ、前記判定結果が前記検出データの保持可能な値よりも小さいときには、停止モードに設定して前記検出ユニットの動作を停止させる。
【0010】
本発明のセンサシステムは、前記と同様の検出ユニットと読み取り装置とを備えたセンサシステムである。
【0011】
そして、前記検出ユニットは、前記受電した電源電力の大きさを判定して判定結果を出力する判定手段と、前記判定結果が動作保証値以上のときには、前記検出ユニットを動作モードに設定して前記検出データを送信させて一定の時間待たせる第1の設定手段と、前記判定結果が前記動作保証値よりも小さいが前記検出データの保持可能な値以上のときには、前記検出ユニットを保持モードに設定して前記検出データを保持させる第2の設定手段と、前記保持モードにおける前記判定結果が前記動作保証値以上に回復したときには、前記保持モードから前記動作モードへ移行させ、一定の待ち時間後に前記保持させた検出データを送信させる第3の設定手段と、前記判定結果が前記検出データの保持可能な値よりも小さいときには、前記検出ユニットを停止モードに設定して前記検出ユニットの動作を停止させる第4の設定手段とを有している。
【発明の効果】
【0012】
本発明のデータ伝送方法及びそのセンサシステムによれば、検出ユニット側における受電時間が短くて一連の動作シーケンスを一度に完結できない場合でも、受電状態の回復を待って動作を継続出来る。送信の中断後は、保持モードで保持していた検出データを送るところから再開するので、検出データを送り終えるまでに必要な電源電力が連続して供給され続けないといけない時間を短縮出来る。更に、例えば結合磁界が中断される時間が短い場合でも、待ち時間分は信号を送らない時間があるので、読み取り装置側で信号伝送が中断したと判断でき、誤って一連のデータ送信と受け取ることはない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
センサシステムは、移動する検出対象物に装着され、外部から与えられる電源電力を受電すると共に制御信号を受信し、前記受電した電源電力及び前記受信した制御信号に基づき、前記検出対象物における物理量の変化を検出して検出データを外部へ送信する検出ユニットと、前記検出ユニットから離間して設置され、前記検出ユニットに対して非接触の磁界結合で、前記電源電力が重畳された前記制御信号を前記検出ユニットへ送信し、且つ前記検出ユニットから送信された前記検出データを受信する読み取り装置とを備えている。
【0014】
前記検出ユニットは、前記受電した電源電力の大きさを判定して判定結果を出力する判定手段と、前記判定結果が動作保証値以上のときには、前記検出ユニットを動作モードに設定して前記検出データを送信させてタイマ回路により一定の時間待たせる第1の設定手段と、前記判定結果が前記動作保証値よりも小さいが前記検出データの保持可能な値以上のときには、前記検出ユニットを保持モードに設定して前記検出データを保持レジスタに保持させる第2の設定手段と、前記保持モードにおける前記判定結果が前記動作保証値以上に回復したときには、前記保持モードから前記動作モードへ移行させ、タイマ回路により一定の待ち時間後に前記保持させた検出データを送信させる第3の設定手段と、前記判定結果が前記検出データの保持可能な値よりも小さいときには、前記検出ユニットを停止モードに設定して前記検出ユニットの動作を停止させる第4の設定手段とを有している。
【実施例1】
【0015】
(実施例1の構成)
(図1、図2の構成)
図1は、本発明の実施例1を示すセンサシステムの概略の構成図である。図2は、図1のセンサシステムが適用される車両のタイヤを示す斜視図である。
【0016】
図1に示すセンサシステムは、移動する検出対象物として、例えば、図2に示す車両のタイヤ1の圧力とこの圧力に密接に関連する温度を検出するものであり、タイヤ1の例えば側部内に埋設される検出ユニット10と、この検出ユニット10から離間して車両本体側に取り付けられ、該検出ユニット10に対して非接触の磁界結合で電源電力の供給及びデータの送受信を行う読み取り装置30とを備えている。図2のタイヤ1は、回転するので、検出ユニット10と読み取り装置30の距離が近いエリア2では、読み取り装置30から検出ユニット10へ供給される駆動磁界が検出ユニット10に届いて動作する。これに対し、検出ユニット10と読み取り装置30の距離が遠いエリア3では、読み取り装置30から検出ユニット10へ供給される駆動磁界が検出ユニット10に届く強度が弱くなってしまう。
【0017】
検出ユニット10は、タイヤ1の温度を検出する温度検出用センサ素子11A及びタイヤ1の圧力を検出する圧力検出用センサ素子11Bを有するセンサ素子11を備え、このセンサ素子11に、温度用検出回路12A及び圧力用検出回路12Bを有する検出回路12が接続されている。
【0018】
例えば、センサ素子11を構成する温度検出用センサ素子11Aは、温度依存性の大きなサーミスタ抵抗素子等で構成され、圧力検出用センサ素子10Bは、外圧によって静電容量値が変化する可変コンデンサ等で構成されている。検出回路12を構成する温度用検出回路12Aは、温度検出用センサ素子11Aで検出された温度検出値をディジタル信号からなる温度検出データに変換する等の機能を有する回路、圧力用検出回路12Bは、圧力検出用センサ素子11Bで検出された圧力検出値をディジタル信号からなる圧力検出データに変換する等の機能を有する回路である。
【0019】
検出回路12には、温度用制御回路13A及び圧力用制御回路13Bを有する制御回路13が接続されている。制御回路13は、検出ユニット10の全体を制御する回路であり、例えば、中央処理装置(以下「CPU」という。)、或いは個別回路等により構成されている。
【0020】
制御回路13には、保持レジスタ14、第1のタイマ回路15−1、及び第2のタイマ回路15−2が接続されている。保持レジスタ14は、制御回路13が駆動電力不足で保持モードになった時に検出データを保持するためのレジスタである。第1のタイマ回路15−1は、検出ユニット10が読み取り装置30へ1回のデータ送信を完了すると一定時間T1だけ検出ユニット10の動作を待たせるための回路である。第2のタイマ回路15−2は、制御回路13が十分な駆動電力を供給されて保持モードから動作モードに復帰して再度動作を開始する前に一定時間T2だけ該検出ユニット10の動作を待たせるための回路である。
【0021】
又、検出ユニット10は、読み取り装置30に対して非接触で電源電力及び信号の授受を行うアンテナコイル16を有し、このアンテナコイル16がバーアンテナ17に巻装されている。アンテナコイル16には、図示しないコンデンサが接続され、これらのアンテナコイル16及びコンデンサが、読み取り装置30から供給される交流磁界の周波数に同調している。アンテナコイル16には更に、電源手段(例えば、整流回路)18が接続され、この整流回路18に蓄積手段(例えば、コンデンサ)19が接続されると共に、該整流回路18が第1、第2の電圧判定回路20−1,20−2を介して制御回路13に接続されている。
【0022】
整流回路18は、アンテナコイル16に誘導される交流起電圧を整流して検出ユニット駆動用の直流電源電圧を生成し、これを第1、第2の電圧判定回路を介して制御回路13等に与える回路である。コンデンサ19は、電源ライン及び基準電位(グランド電位)間に接続され、整流回路18で生成された直流電源電圧の電荷を蓄積するものである。コンデンサ19は、充電可能な電池等の他の蓄積手段に置き換えても良い。第1の電圧判定回路20−1は、第1及び第3の設定手段としての機能を有し、整流回路18で生成された直流電源電圧を検出ユニット10の動作保証値と比較し、動作保証値よりも低い電圧になると、制御回路13に対してリセットをかけるための回路である。第2の電圧判定回路20−2は、第2及び第4の設定手段として機能を有し、動作保証値よりも低いが、検出データの保持可能な電圧を受電しているか否かの判定を行い、この判定結果を制御回路13へ与える回路である。整流回路18、コンデンサ19、電圧判定回路20−1,20−2により、判定手段が構成されている。
【0023】
アンテナコイル16は、クロック検出回路(CK検出回路)21を介して制御回路13に接続されると共に、第1の受信手段(例えば、受信回路)22を介して制御回路13に接続され、この制御回路13が第1の送信手段(例えば、送信回路)23を介してアンテナコイル16に接続されている。
【0024】
クロック検出回路21は、アンテナコイル16に誘導される交流起電圧に重畳されたクロック信号を検出して制御回路13に与える回路である。受信回路22は、アンテナコイル16に誘導される交流起電圧に重畳された読み取り装置30からの制御信号を受信し、この制御信号を復調等してコマンド(命令)やデータを制御回路13に与える回路である。制御回路13は、与えられるコマンドの実行を制御して検出データを出力したり、データを処理する等の機能を有している。送信回路23は、制御回路13から与えられる検出データの変調等を行って送信信号を生成し、この送信信号をアンテナコイル16の磁界結合を介して読み取り装置30へ伝送させる回路である。
【0025】
読み取り装置30は、アンテナコイル16と磁界結合されるループアンテナ31と、電源電力用のキャリア(例えば、125KHzの搬送波)を発振する発振回路32と、この発振回路32に接続された変調回路33と、この変調回路33とループアンテナ31の間に接続された第2の送信手段(例えば、送信回路)34と、ループアンテナ31に接続された第2の受信手段(例えば、受信回路)35とを有している。更に、変調回路33及び受信回路35には、データ処理及び制御機能を有する制御回路36が接続され、この制御回路36が、及びインタフェース37を介して、センサシステム全体を制御するコンピュータで構成された上位コントローラ38に接続されている。
【0026】
変調回路33は、発振回路32から与えられる電源電力用のキャリアにより、制御回路36から出力されるコマンドやデータを変調する回路である。送信回路34は、変調回路33で変調された変調信号を送信信号に変換し、この送信信号をループアンテナ31を介して検出ユニット10へ伝送させる回路である。受信回路35は、検出ユニット10からループアンテナ31を介して送られてくる検出データ等を受信して復調し、この復調した検出データ等を制御回路36へ出力する回路である。制御回路36は、受信回路35からの検出データ等を入力し、この検出データ等に対して補正演算等を行い、この処理結果をインタフェース37を介して上位コントローラ38へ送る回路である。
【0027】
(図3の構成)
図3は、図1中の温度検出用センサ素子11A、温度用検出回路12A及び温度用制御回路13Aの構成例を示す回路図である。
【0028】
センサ素子11Aは、例えば、温度によって抵抗値Rthが変化する温度依存性の大きなサーミスタ抵抗素子で構成され、このセンサ素子11Aに検出回路12Aが接続されている。検出回路12Aは、例えば、CR発振回路の発振周波数を決める静電容量素子及び抵抗素子からなる時定数回路の内の抵抗素子を用いて温度を検出する回路であり、この検出回路12Aに制御回路13Aが接続されている。制御回路13Aは、検出回路12Aを制御するための各種の制御信号及び温度検出データ(例えば、カウント数N1,N2)を出力する制御部や、演算部、データ記憶部等を有しており、CPU等で構成されている。
【0029】
検出回路12Aは、基準となる固定抵抗値Rrefを有する基準素子(例えば、基準抵抗素子)41Aと、センサ素子11Aに接続された第1の発振回路42−1Aと、基準抵抗素子41Aに接続され、第1の発振回路42−1Aと同一特性の第2の発振回路42−2Aとを有している。第1の発振回路42−1Aは、センサ素子11Aと共にCR発振回路を構成し、制御回路13Aの制御信号により動作して、センサ素子11Aの抵抗値に対応した周波数で発振してクロック信号を出力する回路である。第2の発振回路42−2Aは、基準抵抗素子41Aと共にCR発振回路を構成し、制御回路13Aの制御信号により動作して、基準抵抗素子41Aの抵抗値に対応した周波数で発振してクロック信号を出力する回路である。
【0030】
この検出回路12Aには、制御回路13Aの制御信号により動作してカウント(計数)回数である設定回数(例えば、設定値)M1を設定する第1のメモリ43−1Aと、制御回路13Aの制御信号により動作して設定値M2を設定する第2のメモリ43−2Aと、基準のクロック信号からなる基準周波数信号frefを出力する水晶発振回路等で構成された基準信号源45Aとが設けられている。第1のメモリ43−1Aの出力側には、第1の計数手段(例えば、第1のカウンタ)44−1Aが接続され、第2のメモリ43−2Aの出力側にも、第1のカウンタ44−1Aと同一特性の第2の計数手段(例えば、第2のカウンタ)44−2Aが接続されている。
【0031】
第1のカウンタ44−1Aは、制御回路13Aの制御信号により動作し、第1のメモリ43−1Aに設定された設定値M1の回数だけ、発振回路42−1Aの出力クロック信号の数をカウントするものであり、この出力側に第3の計数手段(例えば、第3のカウンタ)44−3Aが接続されている。第2のカウンタ44−2Aは、制御回路13Aの制御信号により動作し、第2のメモリ43−2Aに設定された設定値M2の回数だけ、発振回路42−2Aの出力クロック信号の数をカウントするものであり、この出力側に第4の計数手段(例えば、第4のカウンタ)44−4Aが接続されている。
【0032】
第3のカウンタ44−3Aは、制御回路13Aの制御信号により動作し、第1のカウンタ44−1Aが設定値M1の回数だけカウント動作を行っている期間に、基準信号源45Aから出力される基準周波数信号frefのクロック数をカウントし、このカウント数N1を制御回路13Aに記憶させる。第4のカウンタ44−4Aは、第3のカウンタ44−3Aと同一特性であり、制御回路13Aの制御信号により動作し、第2のカウンタ44−2Aが設定値M2の回数だけカウント動作を行っている期間に、基準信号源45Aから出力される基準周波数信号frefのクロック数をカウントし、このカウント数N2を制御回路13Aに記憶させる。カウント数N1は、設定値M1に対応し、カウント数N2は、設定値M2に対応している。
【0033】
(図4の構成)
図4は、図1中の圧力検出用センサ素子11B、圧力用検出回路12B、及び圧力用制御回路13Bの構成例を示す回路図であり、図3中の要素(数字+A)と共通の要素には、共通の符号(同一数字+B)が付されている。
【0034】
図4の回路では、図3のサーミスタ抵抗からなるセンサ素子11A、及び基準抵抗素子41Aに代えて、容量式のセンサ素子11B、及び基準容量素子41Bを設け、そのセンサ素子11Bを用いてタイヤ1の圧力を検出するようになっている。
【0035】
この図4の回路では、各回路ブロックを制御するための各種の制御信号及び圧力検出データを出力する制御回路13Bと、この制御回路13Bの制御信号により動作してセンサ素子11Bの容量値Csで決まる発振周波数で発振する第1の発振回路42−1Bと、制御回路13Bの制御信号により動作して基準容量素子41Bの固定の容量値Crefで決まる発振周波数で発振する第2の発振回路42−2Bと、制御回路13Bの制御信号により動作してカウント回数である設定値M1を設定する第1のメモリ43−1Bと、制御回路13Bの制御信号により動作して設定値M3を設定し、これに対応するカウント数N3を制御回路13Bへ与える第3のメモリ43−3Bとを有している。
【0036】
第2の発振回路42−2B及び第1のメモリ43−1Bの出力側には、第2のカウンタ44−2Bが接続されている。第2のカウンタ44−2Bは、制御回路13Bの制御信号により動作し、第1のメモリ43−1B内の設定値M1の回数だけ第2の発振回路42−2Bの出力クロック信号数をカウントするものであり、この出力側に第1のカウンタ44−1Bが接続されている。第1のカウンタ44−1Bは、制御回路13Bの制御信号により動作して、第2のカウンタ44−2Bがカウント動作している間に、第1の発振回路42−1Bの出力クロック信号数をカウントしてこのカウント数N1を制御回路13Bへ出力するものである。制御回路13Bは、各種の制御信号及び圧力検出データ(例えば、カウント数N1,N3)を出力する機能を有している。
【0037】
(実施例1の動作)
本実施例1では、以下の(1)〜(5)のような動作が行われる。
【0038】
(1) 参考例のデータ伝送方法
本実施例1に対する参考例として、例えば、図1の検出ユニット10内に保持レジスタ14、第2の電圧判定回路20−2、及び第2のタイマ回路15−2を設けないセンサシステムが考えられる。このようなセンサシステムにおけるデータ伝送方法は、例えば、以下のステップS1〜S5により実行される。
【0039】
ステップS1において、図1の読み取り装置30内の上位装置38から、検出ユニット10を動作させるためのコマンドやデータが出力されると、このコマンドやデータが、インタフェース37を介して制御回路36へ送られ、この制御回路36の制御により、読み取り装置30が動作モードへ移行する。読み取り装置30が動作モードに移行すると、変調回路33が動作し、キャリア発振回路32から出力される電源源力用のキャリアにより、制御回路36からの制御信号が変調される。この変調信号が送信回路34で送信信号に変換され、ループアンテナ31へ送られと、このループアンテナ31から交流磁界が発生する。
【0040】
タイヤ1の側部内に埋設された検出ユニット10がタイヤ1と共に回転し、この検出ユニット10のアンテナコイル16がループアンテナ31に近接すると、このループアンテナ16に交流起電圧が誘導される。誘導された交流起電圧は、整流回路18で整流されて直流電源電圧が生成され、コンデンサ19が充電される。第1の電圧判定回路20−1は、その受電された直流電源電圧と検出ユニット10の動作保証値とを比較して、検出ユニット10の動作可能な電圧を受電出来たか否かの判定を行う。
【0041】
ステップS2において、第1の電圧判定回路20−1は、検出ユニット10の動作保証値以上の電圧を受電出来たと判定した時には、制御回路13に掛けていたリセットを解除してこの制御回路13を初期状態にすると共に、受電した直流電源電圧を制御回路13へ供給し(パワーリング)、検出ユニット10を動作モードへ移行させる。
【0042】
ステップS3において、動作モードへの移行により、アンテナコイル16に誘導された交流起電圧から、クロック検出回路21によりクロックが検出されて制御回路13へ供給されると共に、その交流起電圧が、受信回路22で受信されて復調され、この復調された読み取り装置30からのコマンドやデータが制御回路13へ送られる。これにより、制御回路13内の図3の温度用制御回路13A、温度用検出回路12A及び温度検出用センサ素子11Aと、図4内の圧力用制御回路13B、圧力用検出回路12Bび圧力検出用センサ素子11Bとが動作し、タイヤ1の温度及び圧力が検出される。
【0043】
ステップS4において、タイヤ1の温度及び電圧の検出データは、制御回路13から出力され、送信回路23によって例えば次のような送信信号に変換される。
送信信号=同期信号+スタート信号+
検出データ+誤り検出訂正コード+エンド信号
【0044】
この送信信号において、同期信号、スタート信号、及びエンド信号は、データ伝送のために付加される信号である。又、非接触で動作する検出ユニット10から読み取り装置30へのデータ伝送は、動作条件により外乱の影響で不安定になったりすることがあるので、これを訂正するために、誤り検出訂正コードが付加されている。このような送信信号は、アンテナコイル16及びループアンテナ31の電磁結合を介して読み取り装置30側へ送られる。読み取り装置30側へ送られた送信信号は、受信回路35で受信されて復調され、制御回路36へ送られる。制御回路36において、所定の演算処理等が行われて温度検出データ及び圧力検出データが算出され、この算出結果がインタフェース37を介して上位コントローラ38へ送られる。
【0045】
ステップS5において、ステップS4での検出ユニット10から読み取り装置30への検出データの送信後は、第1のタイマ回路15−1によって制御回路13が待ち時間のモードになる。第1のタイマ回路15−1を設けた理由は、検出ユニット10側においてデータ検出とデータ送信を連続して繰り返して行い、検出データを読み取り装置30側へ切れ目無く送信すると、読み取り装置30側では受信が難しいので、データ送信が完了すると、一定時間、検出ユニット10の動作を待たせるようにしている。
【0046】
このステップS5の待ち時間が経過すると、ステップS3へ戻り、ステップS3→ステップS4→ステップS5の動作を繰り返す。この動作中に、検出ユニット10側での受電電圧が低くなって動作が出来なくなった場合は、これが第1の電圧判定回路20−1で判定されて制御回路13が停止モードになり、この制御回路13がリセットされて初期化される。
【0047】
このような参考例のセンサシステムでは、次の(i)、(ii)のような利点がある。
(i) 検出ユニット10は、読み取り装置30から供給される電源電力を非接触で受電して、タイヤ1の温度及び圧力の検出データを読み取り装置30側へ返すことが出来る。
【0048】
(ii) 読み取り装置30と検出ユニット10との距離が遠くなり、磁界結合が弱くなって検出ユニット10が動作出来なくなると、これが第1の電圧判定回路20−1で検出されて停止モードになるので、誤動作や暴走を起こすこともない。
【0049】
しかし、読み取り装置30と検出ユニット10との電磁結合が不安定で、読み取り装置30から検出ユニット10へ連続して電源電力を供給出来ない場合は、検出ユニット10の動作が途中で中断してリセットが掛かってしまい、検出データを読み取り装置30へ最後まで送れないことが発生し易いという欠点がある。
【0050】
そこで、このような欠点を解決するために、本実施例1では、検出ユニット10内に保持レジスタ14、第2のタイマ回路15−2及び第2の電圧判定回路20−2を設けている。
【0051】
(2) 図1のセンサシステムのデータ伝送方法
図1のセンサシステムにおけるデータ伝送方法は、例えば、以下のステップSP1〜SP12により実行される。
【0052】
ステップSP1において、前記ステップS1と同様に、読み取り装置30が動作モードへ移行し、送信信号がループアンテナ31へ送られ、このループアンテナ31から交流磁界が発生する。タイヤ1と共にこれに埋設された検出ユニット10が回転し、この検出ユニット10のアンテナコイル16がループアンテナ31に近接すると、このループアンテナ16に交流起電圧が誘導される。誘導された交流起電圧は、整流回路18で整流されて直流電源電圧が生成され、コンデンサ19が充電される。受電された直流電源電圧は、第1の電圧判定回路20−1によってセンサユニット10の動作保証値と比較され、動作可能な電圧を受電出来たか否かの判定が行われると共に、第2の電圧判定回路20−2によって検出データの保持可能な値と比較され、動作保証値よりも低い電圧であるが、検出データの保持可能な電圧を受電出来たか否かの判定が行われる。
【0053】
ステップSP2において、第1の電圧判定回路20−1により、動作保証値以上の電圧を受電出来なかったと判定されたが、第2の電圧判定回路20−2により、動作保証値よりも低い電圧であるが、検出データの保持可能な電圧を受電出来たと判定された時には、制御回路13に掛けられていたリセットが解除され、この制御回路13が初期状態に設定されると共に、保持レジスタ14も初期状態に設定される。
【0054】
ステップSP3において、検出ユニット10から読み取り装置30への検出データの送信動作の場合よりも回路の消費電流が十分小さい保持モードになり、センサ素子11及び検出回路12により検出された検出データが、保持レジスタ14に保持される。保持モード中は回路の消費電流が十分小さいので、この保持モードを維持するには、受電した直流電源電圧が低くてもよい。短時間であれば、受電電圧が全く無くなっても、コンデンサ19に充電されていた電荷で保持モードを維持できる。
【0055】
ステップSP4において、磁界結合が大きくなって、受電している直流電源電圧が高くなり、第1の電圧判定回路20−1により、動作保証値以上の電圧を受電出来たか否かの判定が行われる。
【0056】
ステップSP5において、第1の電圧判定回路20−1により、動作保証値以上の電圧を受電出来たと判定されると、検出ユニット10が保持モードから動作モードへ移行し、受電した直流電源電圧が制御回路13へ供給(パワーリング)され、検出ユニット10が通常動作を行う。
【0057】
ステップSP6において、制御回路13により、保持レジスタ14のフラグが調べられる。
【0058】
ステップSP7において、保持レジスタ14のフラグが立っていれば、第2のタイマ回路15−2による一定の待ち時間だけ待つ。一定の待ち時間を入れるのは、保持モードになっていた時間が極めて短いと、読み取り装置30側から見て一連の動作に見えて異常なデータを受信したと判定される問題を避けるためである。つまり、一定の待ち時間があれば、読み取り装置30側においてデータ伝送が中断したと判定できるので、その問題を回避できる。
【0059】
ステップSP8において、ステップSP6でフラグが立っていなければ、制御回路13内の図3の温度用制御回路13A、温度用検出回路12A及び温度検出用センサ素子11Aと、図4内の圧力用制御回路13B、圧力用検出回路12Bび圧力検出用センサ素子11Bとが動作し、タイヤ1の温度及び圧力が検出される。
【0060】
ステップSP9において、温度及び圧力の検出データに、データ取得済みフラグが付加されて保持レジスタ14に保存される。
【0061】
ステップSP10において、ステップSP7又はSP9の処理後、保持レジスタ14に保持された検出データが制御回路13から出力され、前記ステップS4と同様に、送信回路23によって送信信号に変換され、アンテナコイル16及びループアンテナ31の電磁結合を介して読み取り装置30側へ送られる。
【0062】
ステップSP11において、保持レジスタ14に保持された検出データの送信後、制御回路13によって保持レジスタ14のフラグが初期化される。
【0063】
ステップSP12において、第1のタイマ回路15−1による一定の待ち時間だけ待つ。その後、ステップSP8へ戻る。
【0064】
以上のステップSP1〜SP12の処理において、ステップSP6〜SP12の動作中に磁界結合が弱くなって、第1の電圧判定回路20−1により、動作保証値以上の受電が出来ないと判定されると、保持モードへ移行する。又、ステップSP3の保持モード中に更に磁界結合が弱くなって、第2の電圧判定回路20−2により、検出データの保持可能な電圧を受電出来出来ないと判定されると、停止モードになって制御回路13にリセットが掛けられて初期化される。
【0065】
(3) 図3の動作
先ず、第1の発振回路42−1Aが、制御回路13Aの制御信号により、センサ素子11Aの抵抗値Rthに対応する周波数で発振すると共に、第2の発振回路42−2Aが、制御回路13Aの制御信号により、基準抵抗素子41Aの抵抗値Rrefに対応する周波数で発振する。制御回路13Aの制御信号により、第1のメモリ43−1A内の設定値M1が第1のカウンタ44−1Aにロードされると共に、制御回路13Aの制御信号により、第2のメモリ43−2A内の設定値M2が第2のカウント44−2Aにロードされる。制御回路13Aの制御信号により第1、第2のカウンタ44−1A,44−2Aが動作し、第1のカウンタ44−1Aにより、第1の発振回路42−1Aから出力されるクロック信号の数がカウントされると共に、第2のカウント44−2Aにより、第2の発振回路42−2Aから出力されるクロック信号の数がカウントされる。
【0066】
第1のカウンタ44−1Aが設定値M1回のカウント動作を行っている期間に、制御回路13Aの制御信号により第3のカウンタ44−3Aが動作し、基準周波数信号frefのクロック数がカウントされ、このカウント数N1が制御回路13Aに記憶される。同時に、第2のカウント44−2Aが設定値M2回のカウント動作を行っている期間に、制御回路13Aの制御信号により第4のカウンタ44−4Aが動作し、基準周波数信号frefのクロック数がカウントされ、このカウント数N2が制御回路13Aに記憶される。
【0067】
(4) 図4の動作
先ず、制御回路13Bの制御信号により、第1のメモリ43−1B内の設定値M1が第2のカウンタ44−2Bにロードされると共に、制御回路13Bの制御信号により、第1の発振回路42−1Bがセンサ素子11Bの容量値Csで決まる発振周波数で発振し、第2の発振回路42−2Bが基準容量素子31Bの容量値Crefで決まる発振周波数で発振する。制御回路13Bの制御信号により動作する第2のカウンタ44−2Bによって、第2の発振回路42−2Bから出力されるクロック信号の数がカウントされる。
【0068】
第2のカウンタ44−2Bが設定値M1回のカウント動作を行っている期間に、制御回路13Bの制御信号により第1のカウンタ44−1Bが動作し、第1の発振回路42−1Bから出力されるクロック信号の数がカウントされ、このカウント数N1が制御回路13Bに記憶される。
【0069】
このような(3)、(4)の動作が終了すると、図3の制御回路13Aの制御信号により第3、第4のカウンタ44−3A,34−4Aがリセットされると共に、図4の制御回路13Bの制御信号により、第1のカウンタ44−1Bがリセットされる。そして、制御回路13Aに記憶された図3のカウント数N1,N2等の検出データが、送信回路17によって送信信号に変換され、アンテナコイル16及びループアンテナ31の電磁結合を介して読み取り装置30側へ送られる。
【0070】
(5) 図5は、参考例と比較した図1のデータ伝送方法を示すタイムチャートである。この図5の横軸は、時間である。
【0071】
図5に示すように、参考例のセンサシステムでは、検出ユニット10から読み取り装置30への1回の動作(51)は、(検出動作(51a)+検出データ送信動作(51b))であり、読み取り装置30から検出ユニット10への電源電力供給(パワーリング)の継続時間が十分長いときには(50−1)、例えば2回の動作(51,51)が行われる。パワーリングの継続時間は長いが(50−2)、送信中に検出ユニット10の受電電圧が低下するか(50−2a)、或いは受電が中断されたときには(50−2b)、動作中に送信が停止し、その後、受電電圧が上昇しても、パワーリングの残りの時間が短すぎて検出データを送信できない。又、パワーリングの継続時間が短く(50−3)、しかも送信中に受電が短時間中断されたときには(50−3a)、検出データを送信できない。
【0072】
これに対し、本実施例1のセンサシステムでは、パワーリングの継続時間が十分長いときには(50−1)、参考例と同様に、(検出動作(52a)+検出データ送信動作(52b))の1回の動作(52)が例えば2回行われる。パワーリングの継続時間は長いが(50−2)、送信中に検出ユニット10の受電電圧が低下するか(50−2a)、或いは受電が中断されたときには(50−2b)、受電電圧の低下(50−2a)により保持モード(52c)になって検出データが保持レジスタ14に保持され、この保持モード中に仮に短時間の受電中断(50−2b)があっても、コンデンサ19の蓄積電荷によって保持モードを維持出来る。その後、受電電圧が上昇して動作モードに移行すれば、保持レジスタ14に保持された検出データが送信されるので、送信動作(52)を完了出来る。又、パワーリングの継続時間が短く(50−3)、しかも送信中に受電が短時間中断されたときには(50−3a)、コンデンサ19の蓄積電荷により保持モード(52d)になって検出データが保持レジスタ14に保持され、受電状態の回復後にその保持された検出データが送信されるので、送信動作(52)を完了出来る。
【0073】
(実施例1の効果)
本実施例1によれば、以下の(A)〜(C)のような効果がある。
【0074】
(A) 図1の効果
本実施例1のセンサシステムでは、磁界結合が強くて検出ユニット10の受電電圧が十分に高いときには、下記のようなステップST1〜ST4を順次実行してステップST2〜ST4の処理を繰り返す。
【0075】
検出ユニット10が電源電圧を受電して内部動作を初期化(ステップST1)→タイヤ1の温度検出・圧力検出(ステップST2)→検出データの送信(ステップST3)→第1のタイマ回路15−1による待ち時間(ステップST4)→ステップST2へ戻る。
【0076】
検出ユニット10の動作中に受電電圧が全くなくなるか、或いは受電電圧が極めて弱くなって検出データの保持すら出来ない状態になれば、第2の電圧判定回路20−2により制御回路13にリセットが掛かって停止モードになる。その後、電源電圧を受電すると、ステップST1より動作を再開する。ステップST3を実行中に磁界結合が弱くなって受電電圧が低くなり、ステップST2で検出した検出データの保持が可能な場合は、第2の電圧判定回路20−2により、ステップST3の場合よりも回路の消費電流が十分小さい保持モードになり、検出データを保持レジスタ14で保持する。磁界結合強度が回復して受電電圧が高くなると、第2のタイマ回路15−2によって一定の待ち時間後、ステップST3の最初から実行し、保持レジスタ14に保持された検出データを送信する構成になっている。そのため、次の(a)〜(d)のような効果がある。
【0077】
(a) 検出ユニット10側における受電時間が短くて一連の動作シーケンスを一度に完結できない場合でも、受電状態の回復を待って動作を継続出来る。
【0078】
(b) 送信の中断後は、保持モードで保持していた検出データを送るところから再開するので、検出データを送り終えるまでに必要な電源電圧が連続して供給され続けないといけない時間を短縮出来る。
【0079】
(c) 駆動磁界が中断される時間が短い場合でも、第2のタイマ回路15−2の待ち時間分は信号を送らない時間があるので、読み取り装置30側で信号伝送が中断したと判断でき、誤って一連のデータ送信と受け取ることはない。
【0080】
(d) 読み取り装置30側で受信するには、本来のデータが送られてくるので、特段の処理を必要としない。
【0081】
(B) 図3、図4の効果
センサ素子11A,11Bと発振回路42−1A,42−1Bとの組み合わせ、及び、基準抵抗素子41Aや基準容量素子41Bと発振回路42−2A,42−2Bとの組み合わせで、タイヤ1の温度や圧力を検出しているので、初期状態での発振周波数がばらついても、所定の条件(カウント数N1=N2)に初期調整(即ち、オフセット調整)出来る。センサ素子11A,11Bと発振回路32−1A,42−1Bとの組み合わせで、所定の温度や圧力の変化を加えたときの温度検出データや圧力検出データ(カウント値)を所定の値(=N2−N1)に調整(即ち、フルスケール調整)出来る。更に、センサ素子11A,11Bによる発振と、基準抵抗素子41Aや基準容量素子41Bによる発振とに、同一特性の発振回路42−1A,42−2A又は42−1B,42−2Bを使い、発振周波数の変化を相対的に検出しているので、発振回路42−1A,42−2A又は42−1B,42−2Bの特性変動が原因で発振周波数が同じ割合で変化しても、キャンセルされて影響を与えないので、発振回路42−1A,42−2A又は42−1B,42−2Bのばらつきや変動の影響を受け難い。
【実施例2】
【0082】
図6は、本発明の実施例2を示すセンサシステムの他の適用例を示す概略の斜視図である。
【0083】
この適用例では、回転するコンベア60上に製品61を載せて搬送する装置において、温度検出用の検出ユニット10Aがコンベア60に装着され、このコンベア60の近傍に読み取り装置30が配設され、検出ユニット10Aで検出されたコンベア60の検出温度データが非接触で読み取り装置30へ送信される。このようなセンサシステムにおいても、実施例1とほぼ同様の作用効果を奏する。
【実施例3】
【0084】
図7は、本発明の実施例3を示すセンサシステムの他の適用例を示す概略の斜視図である。
【0085】
この適用例では、樹脂製等の配管70の中にボール状のキャリア71を本来流す液体72と共に流す(転がす)ための装置において、ボール状のキャリア71内に温度、圧力、PH等を検出するための検出ユニット10Bが設けられている。配管70の複数箇所に配置された各検出エリア73には、読み取り装置30のループアンテナ31に代えてアンテナコイル31Bがそれぞれ巻装されている。この装置では、読み取りエリア73内にボール状のキャリア71が来ると、読み取り装置30のアンテナコイル31Bと検出ユニット10のアンテナコイル16との磁界結合により、読み取り装置30から検出ユニット10Bへ非接触で電源電力が供給され、該検出ユニット10Bが動作する。
【0086】
ボール状のキャリア71は回転(転がる)ので、検出ユニット10B側のアンテナコイル16の磁界を受ける方向と、読み取り装置30側のループアンテナ31Bからの駆動磁界の方向が完全に直交すると、駆動磁界があってもアンテナコイル16には誘導起電圧が発生しないので、検出ユニット10Bが動作できず、駆動磁界が途切れ途切れになってしまう。このような場合でも、本実施例3のデータ伝送方法を使えば、検出ユニット10Bの検出データを読み取り装置30へ的確に送信できる。
【0087】
なお、本発明は、図示の実施例1〜3に限定されず、種々の変形や利用形態が可能である。この変形や利用形態としては、例えば、次の(a)〜(d)のようなものがある。
【0088】
(a) 検出ユニッ10,10A,10B及び読み取り装置30は、図示以外の他の回路構成に変更出来る。例えば、図3、図4では、基準素子として、物理量の変化に対して電気的な特性値が一定の基準抵抗素子41Aや基準容量素子41Bを用いているが、これに代えて、物理量の変化に対して電気的な特性値がセンサ素子11A,11Bとは異なる他の素子を用い、これに対応して図3、図4の回路構成を変更しても良い。又、図3、図4では、第1の発振回路42−1A,42−1Bと第2の発振回路42−2A,42−2Bの2つの発振回路を用いているが、これに代えて、1つの共通発振回路を設け、これを切り替え手段で切り替えて使用する構成に変更しても良い。
【0089】
(b) 検出ユニット10、10A,10Bと読み取り装置30とは、磁界結合により電力及び信号の授受を行う構成にしているが、電波結合等の他の非接触結合方式に変更しても良い。
【0090】
(c) 図1では、センサ素子11として、温度検出用センサ素子11A及び圧力検出用センサ素子11Bを使用し、図6では、温度検出用の検出ユニット10Aを使用し、図7では、温度、圧力、PH等を検出する検出ユニット10Bを使用しているが、移動する検出対象物の物理量としては、温度、圧力、PH以外に、応力、変位、加速度、電気量等の種々のものが適用出来る。
【0091】
(d) 本発明のセンサシステムは、車両のタイヤ1、コンベア50、配管70以外に、読み取り装置30に対して検出ユニット10、10A,10B側が循環運動をして通信が繰り返されるような種々の装置やシステムに適用出来る。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の実施例1を示すセンサシステムの概略の構成図である。
【図2】図1のセンサシステムが適用される車両のタイヤを示す斜視図である。
【図3】図1中の温度検出用センサ素子11A、温度用検出回路12A及び温度用制御回路13Aの構成例を示す回路図である。
【図4】図1中の圧力検出用センサ素子11B、圧力用検出回路12B、及び圧力用制御回路13Bの構成例を示す回路図である。
【図5】参考例と比較した図1のデータ伝送方法を示すタイムチャートである。
【図6】本発明の実施例2を示すセンサシステムの他の適用例を示す概略の斜視図である。
【図7】本発明の実施例3を示すセンサシステムの他の適用例を示す概略の斜視図である。
【符号の説明】
【0093】
1 タイヤ
10,10A,10B 検出ユニット
11,11A,11B センサ素子
12,12A,12B 検出回路
13,13A,13B 制御回路
14 保持レジスタ
15−1,15−2 タイマ回路
16,31B アンテナコイル
18 整流回路
19 コンデンサ
20−1,20−2 電圧判定回路
22,35 受信回路
23,34 送信回路
30 読み取り装置
31 ループアンテナ
60 コンベア
70 配管
71 キャリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動する検出対象物に装着され、外部から与えられる電源電力を受電すると共に制御信号を受信し、前記受電した電源電力及び前記受信した制御信号に基づき、前記検出対象物における物理量の変化を検出して検出データを外部へ送信する検出ユニットと、
前記検出ユニットから離間して設置され、前記検出ユニットに対して非接触で、前記電源電力が重畳された前記制御信号を前記検出ユニットへ送信し、且つ前記検出ユニットから送信された前記検出データを受信する読み取り装置と、
を備えたセンサシステムにおけるデータ伝送方法であって、
前記検出ユニットでは、前記受電した電源電力の大きさを判定し、
前記判定結果が動作保証値以上のときには、前記検出ユニットを動作モードに設定して前記検出データを送信させて一定の時間待たせ、
前記判定結果が前記動作保証値よりも小さいが前記検出データの保持可能な値以上のときには、前記検出ユニットを保持モードに設定して前記検出データを保持させ、前記判定結果が前記動作保証値以上に回復したときには、前記保持モードから前記動作モードへ移行させ、一定の待ち時間後に前記保持させた検出データを送信させ、
前記判定結果が前記検出データの保持可能な値よりも小さいときには、停止モードに設定して前記検出ユニットの動作を停止させることを特徴とするデータ伝送方法。
【請求項2】
前記検出ユニットと前記読み取り装置とは、非接触の磁界結合により信号の授受を行うことを特徴とする請求項1記載のデータ伝送方法。
【請求項3】
前記検出対象物に装着された前記検出ユニットは、前記読み取り装置に対して循環運動をして通信が繰り返されることを特徴とする請求項1又は2記載のデータ伝送方法。
【請求項4】
移動する検出対象物に装着され、外部から与えられる電源電力を受電すると共に制御信号を受信し、前記受電した電源電力及び前記受信した制御信号に基づき、前記検出対象物における物理量の変化を検出して検出データを外部へ送信する検出ユニットと、
前記検出ユニットから離間して設置され、前記検出ユニットに対して非接触で、前記電源電力が重畳された前記制御信号を前記検出ユニットへ送信し、且つ前記検出ユニットから送信された前記検出データを受信する読み取り装置と、
を備えたセンサシステムであって、
前記検出ユニットは、
前記受電した電源電力の大きさを判定して判定結果を出力する判定手段と、
前記判定結果が動作保証値以上のときには、前記検出ユニットを動作モードに設定して前記検出データを送信させて一定の時間待たせる第1の設定手段と、
前記判定結果が前記動作保証値よりも小さいが前記検出データの保持可能な値以上のときには、前記検出ユニットを保持モードに設定して前記検出データを保持させる第2の設定手段と、
前記保持モードにおける前記判定結果が前記動作保証値以上に回復したときには、前記保持モードから前記動作モードへ移行させ、一定の待ち時間後に前記保持させた検出データを送信させる第3の設定手段と、
前記判定結果が前記検出データの保持可能な値よりも小さいときには、前記検出ユニットを停止モードに設定して前記検出ユニットの動作を停止させる第4の設定手段と、
を有することを特徴とするセンサシステム。
【請求項5】
前記判定手段は、前記受電した電源電力を直流電力に変換する整流回路と、前記変換された直流電力を蓄積する蓄積手段と、前記変換された直流電力の大きさを判定して判定結果を出力する判定回路とにより、構成したことを特徴とする請求項4記載のセンサシステム。
【請求項6】
前記一定の時間、及び前記一定の待ち時間は、タイマ回路により計時することを特徴とする請求項4又は5記載のセンサシステム。
【請求項7】
前記検出データは、保持レジスタに保持させることを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載のセンサシステム。
【請求項8】
前記検出ユニットと前記読み取り装置とは、非接触の磁界結合により信号の授受を行うことを特徴とする請求項4〜7のいずれか1項に記載のセンサシステム。
【請求項9】
前記検出対象物に装着された前記検出ユニットは、前記読み取り装置に対して循環運動をして通信が繰り返されることを特徴とする請求項4〜8のいずれか1項に記載のセンサシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−200080(P2007−200080A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−18686(P2006−18686)
【出願日】平成18年1月27日(2006.1.27)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】