説明

データ処理システム、データ処理装置、データ処理要求装置及びコンピュータのプログラム

【課題】 クライアントにより要求されるデータ処理の許否判断にかかる負荷を軽減する。
【解決手段】 少なくとも1つのデータ処理サービスを提供する複合機300と、複合機300にデータ処理サービスを要求するクライアント装置200と、を含むデータ処理システム1であって、クライアント装置200は、複合機300について予め利用が許可されたデータ処理サービスの情報を含む利用許可情報を取得し、取得された利用許可情報を提示して、複合機300にデータ処理サービスを要求し、複合機300は、要求されたデータ処理サービスの提供の可否を、提示された利用許可情報に基づいて判断し、クライアント装置200は、複合機300により要求したデータ処理サービスが許可された場合に、複合機300にデータ処理サービスにより処理されるデータを送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クライアントの要求を受けてデータ処理サービスを提供するデータ処理システムの制御に関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータ等のクライアント装置から処理要求を受けて、プリンタ、複合機、サーバ等のデータ処理装置がサービスを提供するようなサービス提供システムがある。このようなサービス提供システムの一例として、パーソナルコンピュータが、ネットワークを介してプリンタへと印刷データを送信して、印刷を要求するシステムがある。このようなシステムでは、ユーザ毎に利用できる印刷機能の範囲を制限する(例えば、白黒印刷は許可するが、カラー印刷は許可しない等)ことが望まれる場合がある。
【0003】
そこで、従来では、プリンタにユーザ名とそのユーザに対して許可する印刷機能を予め登録しておいて、受信された印刷ジョブに含まれるユーザ名と突合せて、要求された印刷の提供の可否を決定しているものがある(特許文献1を参照)。
【特許文献1】特開2004−268424号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の例に代表されるようなサービス提供システムでは、プリンタ、すなわちサービスを提供する側が、処理対象のデータ(印刷ジョブ)を受け取ってから、処理の提供の可否を決定していた。そのため、サービスの提供が拒否され印刷が実行されない場合でも、印刷ジョブ等の無用なデータ通信がされており、通信負荷や処理負荷がかかってしまっていた。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的の1つは、クライアント装置により要求されるデータ処理を許可するか否かの判断にかかる負荷を軽減することができるデータ処理システムを提供することにある。
【0006】
また、他の目的の1つは、クライアント装置により利用されたデータ処理の履歴を正確に管理することができるデータ処理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係るデータ処理システムは、少なくとも1つのデータ処理サービスを提供するデータ処理装置と、前記データ処理装置にデータ処理サービスを要求するデータ処理要求装置と、を含むデータ処理システムであって、前記データ処理要求装置は、前記データ処理装置について予め利用が許可されたデータ処理サービスの情報を含む利用許可情報を取得する情報取得手段と、前記情報取得手段により取得された利用許可情報を提示して、前記データ処理装置にデータ処理サービスを要求する要求手段と、を含み、前記データ処理装置は、前記要求手段により要求されたデータ処理サービスの提供の可否を、前記提示された利用許可情報に基づいて判断する判断手段、を含み、前記データ処理要求装置は、前記判断手段により前記要求したデータ処理サービスが許可された場合に、前記データ処理装置に当該データ処理サービスにより処理されるデータを送信する、ことを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係るデータ処理要求装置は、少なくとも1つのデータ処理サービスを提供するデータ処理装置にデータ処理サービスを要求するデータ処理要求装置であって、前記データ処理装置について予め利用が許可されたデータ処理サービスの情報を含む利用許可情報を取得する情報取得手段と、前記情報取得手段により取得された利用許可情報を提示して、前記データ処理装置にデータ処理サービスを要求する要求手段と、を含み、前記データ処理装置により、前記提示された利用許可情報に基づいて前記要求手段により要求したデータ処理サービスが許可された場合に、前記データ処理装置に当該データ処理サービスにより処理されるデータを送信する、ことを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係るデータ処理装置は、少なくとも1つのデータ処理サービスを提供するデータ処理装置であって、前記データ処理装置について利用が許可されたデータ処理サービスを示した利用許可情報を提示して要求される、データ処理サービスの処理要求を受け付ける要求受付手段と、前記要求受付手段により要求を受け付けたデータ処理サービスの提供の可否を、前記提示された利用許可情報に基づいて判断する判断手段と、を含む、ことを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係るコンピュータ(パーソナルコンピュータ、サーバコンピュータ、プリンタ、携帯情報端末(PDA)、携帯電話機、ゲーム装置等を含む、以下同様)を機能させるためのプログラムは、少なくとも1つのデータ処理サービスを提供するデータ処理装置にデータ処理サービスを要求するコンピュータを、前記データ処理装置について予め利用が許可されたデータ処理サービスの情報を含む利用許可情報を取得する情報取得手段、前記情報取得手段により取得された利用許可情報を提示して、前記データ処理装置にデータ処理サービスを要求する要求手段、及び、前記提示された利用許可情報に基づいて前記要求手段により要求したデータ処理サービスが前記データ処理装置により許可された場合に、前記データ処理装置に処理対象のデータを送信する、コンピュータとして機能させるためのプログラムである。
【0011】
また、本発明に係るコンピュータを機能させるためのプログラムは、少なくとも1つのデータ処理サービスを提供するコンピュータを、前記データ処理装置について利用が許可されたデータ処理サービスを示した利用許可情報を提示して要求される、データ処理サービスの処理要求を受け付ける要求受付手段、及び、前記要求受付手段により要求を受け付けたデータ処理サービスの提供の可否を、前記提示された利用許可情報に基づいて判断する判断手段、として機能させるためのプログラムである。
【0012】
プログラムは、CD−ROM(Compact Disk - Read Only Memory)、DVD−ROM(Digital Versatile Disk - Read Only Memory)、メモリーカードその他のあらゆるコンピュータが読み取り可能な情報記憶媒体に格納することとしてよい。
【0013】
本発明では、データ処理サービスを提供するデータ処理装置にデータ処理を要求するデータ処理要求装置が、データ処理装置について予め利用が許可されたデータ処理サービスの情報を含む利用許可情報を取得する。データ処理サービスとは、プリント処理、FAX処理、環境設定処理等の複数の処理を含むものであってよい。そして、データ処理要求装置は、データ処理装置にデータ処理サービスの要求を、先に取得した利用許可情報を提示して行う。データ処理装置は、データ処理要求装置から要求されたデータ処理サービスの提供の可否を、提示された利用許可情報に基づいて判断し、その判断結果をデータ処理要求装置に通知する。データ処理要求装置は、データ処理装置により要求したデータ処理サービスが許可された場合に、そのデータ処理サービスにより処理されるデータを送信する。
【0014】
本発明によると、データ処理装置は、データ処理要求装置により要求されるデータ処理の可否の判断を、提示された利用許可情報に基づいて行うことで、その判断を確実に行いつつも、処理にかかる負荷を軽減できる。そして、無用なデータ通信を回避することもできる。
【0015】
また、本発明の一態様では、前記利用許可情報は、データ処理サービスの利用が許可される条件を示した条件情報をさらに含み、前記判断手段は、前記利用許可情報に含まれる条件情報により示される条件を満たさない場合には、前記要求されたデータ処理サービスの提供を許可しない、ことを特徴とする。こうすることで、データ処理要求装置にデータ処理サービスを利用する条件を柔軟に付与できる。
【0016】
また、本発明の一態様では、前記データ処理システムは、前記利用許可情報を生成し、前記データ処理装置に送信する利用許可情報管理装置をさらに含み、前記情報取得手段は、前記利用許可情報管理装置により送信された利用許可情報を受信して取得し、前記データ処理装置は、前記データ処理要求装置に対して提供したデータ処理サービスの履歴情報を記憶する履歴記憶手段、をさらに含み、前記利用許可情報管理装置は、前記履歴記憶手段に記憶された履歴情報を取得して管理する履歴情報管理手段、を含む、ことを特徴とする。こうすることで、データ処理要求装置によるデータ処理サービスの利用実績を一元管理して、利用実績を正しく把握することができる。
【0017】
また、本発明の一態様では、前記データ処理サービスは、印刷処理サービスを少なくとも含み、前記データ処理要求装置は、前記印刷処理サービスが許可された場合に、前記データ処理装置に印刷ジョブデータを送信する、ことを特徴とする。こうすることで、印刷ジョブデータのようにデータサイズが比較的大きなデータを、無用にネットワークに伝送させないようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施の形態(以下、実施形態とする)について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0019】
図1には、本発明の実施形態に係るデータ処理システムのシステム構成図を示す。図1に示されるように、データ処理システム1は、チケット管理サーバ100、クライアント装置200と複合機300(300A,300B)を含む。チケット管理サーバ100と、クライント装置200及び複合機300とは、ネットワーク10を介してデータの通信が行われる。
【0020】
チケット管理サーバ100は、クライアント装置200にサービスチケットを発行する管理サーバである。サービスチケットとは、複合機300において提供される、プリント、FAX、スキャン、環境設定等の各種サービスについて、予め利用が許可されたサービス情報と、そのサービスの利用条件との情報が含まれる利用許可情報である。なお、サービスチケット及び、サービスチケットを利用した処理の詳細については後述する。
【0021】
複合機300は、プリント、FAX、スキャン、環境設定等の様々な機能を備え、クライアント装置200からの処理要求に応じて前記各機能の1つ又は複数を実行するデータ処理装置である。複合機300は、クライアント装置200からデータ処理サービスの要求を受ける際に、サービスチケットの提示を受ける。そして、要求されたデータ処理サービスの提供の可否を、提示されたサービスチケットの情報に基づいて判断する。
【0022】
クライアント装置200は、複合機300にデータ処理サービスを要求するデータ処理要求装置である。クライアント装置200は、複合機300にデータ処理サービスを要求する際には、チケット管理サーバ100から取得したサービスチケットを提示する。そして、複合機300に要求したデータ処理サービスの提供が許可された場合には、そのデータ処理サービスにおいて処理されるデータを複合機300に送信する。
【0023】
以上の処理を実現するために、本実施形態に係るデータ処理システム1が備える構成を、以下に説明する。
【0024】
図2に示されるのは、データ処理システム1に含まれる、チケット管理サーバ100、クライアント装置200及び複合機300のそれぞれの機能を示した機能ブロック図である。
【0025】
[チケット管理サーバ]
図2に示されるように、チケット管理サーバ100は、機能的な構成として、利用者情報記憶部102、提供サービス情報記憶部104、チケット発行部106、利用実績管理部108、課金集計部110と通信部112を含む。各部は、一般的なコンピュータシステムを構成する、プロセッサ、メモリ、ハードディスク、通信インターフェース等のハードウェアによりそれぞれ実現される機能である。
【0026】
利用者情報記憶部102には、サービスの利用者のリストが記憶される。利用者のリストは、データ処理システム1において、各利用者を識別できるユーザIDにより構成される。ユーザIDは、クライアント装置200を利用するアカウント名であってもよいし、電子メールアドレスのような情報であってもよい。そして、ユーザIDに関連づけて、その利用者が使用しているクライアント装置200の環境情報やユーザの属するグループ情報等が記憶されることとしてもよい。
【0027】
提供サービス情報記憶部104には、各複合機300が提供するデータ処理サービスの情報が記憶される。図3には、複合機300により提供されるデータ処理サービスの一例を示す。図3に示されるように、データ処理サービスにはそれぞれのサービスを識別するサービス識別情報が対応づけられている。サービス識別情報と、データ処理サービスとを対応づけた情報テーブルは、データ処理システム1における各装置がそれぞれ記憶しておくこととしてよい。データ処理システム1においては、サービス識別情報に基づいて、データ処理サービスが指定される。本実施形態においては、複合機300により提供されるデータ処理サービスとして、デバイス設定/参照サービス(サービス識別情報:S01)、ファームウェアの更新サービス(S02)、利用者登録サービス(S03)、ネットワーク設定サービス(S04)、白黒印刷サービス(S11)、カラー印刷サービス(S12)等が含まれる。
【0028】
チケット発行部106では、クライアント装置200に発行するサービスチケットが生成される。サービスチケットとは、複合機300が提供するデータ処理サービス毎に、生成、発行されるものである。図4には、サービスチケットに含まれるデータの一例を示す。図4に示されるように、本実施形態に係るサービスチケットには、チケット番号、デバイス識別情報、有効期限、発行先情報、利用許可サービス情報、利用履歴情報(利用日、利用者、利用端末)が含まれる。
【0029】
チケット番号は、サービスチケットの識別番号である。チケット番号は、発行先情報に示される本チケットの受信者の識別情報に基づいて暗号化される。そして、サービス要求の際には、チケット番号が復号化されていないサービスチケットは無効として扱うこととする。こうして、正規の発行先の者以外には配布したサービスチケットが利用できないようにする。
【0030】
デバイス識別情報は、本サービスチケットにより利用が許可されるデータ処理装置、すなわち複合機300のそれぞれを識別する情報である。デバイス識別情報は、データ処理システム1において、各複合機300を識別可能な情報であればよく、複合機300のマシン名、固定のIPアドレス、MACアドレス等の物理的な識別情報のいずれか、もしくはそれ以外の識別情報であってもよい。
【0031】
有効期限は、本サービスチケットの有効期限を示す情報である。有効期限を過ぎたサービスチケットは無効なものとして扱われる。
【0032】
発行先情報とは、本サービスチケットを配布する先を指定する情報である。発行先としては、利用者を指定してもよいし、利用者の属するグループ、もしくは利用者が使用するクライアント装置200を指定することとしてもよい。
【0033】
利用許可サービス情報には、サービスチケットの発行先に利用を許可したサービスを示すサービス識別情報と、その利用条件が含まれる。利用条件には、例えば、送信データの最大データサイズ、サービスの利用可能期間、サービスの利用可能回数についての制限条件が含まれることとしてよい。
【0034】
そして、サービスチケットには、サービスチケットが利用される際に情報が付加される利用履歴情報を格納するデータ領域が含まれる。利用履歴情報には、サービスチケットの利用日、利用者、利用端末が含まれることとしてよい。なお、利用履歴情報は、サービスチケットが発行された後に、クライアント装置200又は複合機300において付加されるものである。
【0035】
利用日とは、本サービスチケットを用いてデータ処理サービスを利用した日時を示す情報である。同一のサービスチケットを用いてデータ処理サービスの提供を複数回受けた場合には、その各回の利用日時を記憶することとしてもよいし、最終利用日時を記憶することとしてもよい。
【0036】
利用者とは、本サービスチケットを用いてデータ処理サービスを利用した利用者名を示す情報である。利用者は、データ処理システム1において識別されるユーザIDにより指定されることとしてよい。
【0037】
利用端末とは、本サービスチケットを用いてデータ処理サービスを要求したクライアント装置200を識別する識別情報である。クライアント装置200の識別情報は、データ処理システム1において、各クライアント装置200を識別可能な情報であればよく、クライアント装置200のマシン名、固定のIPアドレス、MACアドレス等の物理的な識別情報のいずれか、もしくはそれ以外の識別情報であってもよい。
【0038】
利用実績管理部108では、チケット発行部106により発行されたサービスチケットの発行実績情報と、実際に利用されたサービスチケットの利用実績情報とを管理する。発行実績情報としては、発行したサービスチケットのサービス番号に対応づけて、各サービスチケットの記憶内容が記憶される。利用実績情報は、利用されたサービスチケットを定期的に回収し、そのサービスチケットの利用履歴情報に含まれる情報に基づいて集計される。
【0039】
課金集計部110では、利用実績管理部108により管理される発行実績情報と、利用実績情報とに基づいて、実際に利用されたデータ処理サービスの集計処理が行われる。そして、その集計データに基づいて、データ処理サービスの課金処理が行われる。発行情報と利用実績情報との両方を突き合わせた集計処理が行われる。
【0040】
通信部112では、ネットワークインターフェースを介してデータ通信が行われる。チケット管理サーバ100は、通信部112によりネットワーク10を介して、クライアント装置200及び複合機300とのデータ通信を行う。
【0041】
[クライアント装置]
次に、クライアント装置200の機能ブロックについて説明する。クライアント装置200は、機能的な構成として、通信部202、チケット管理部204、機能制限部206、プリンタドライバ部208とサービス要求部210を含む。各部は、一般的なコンピュータシステムを構成する、プロセッサ、メモリ、ハードディスク、通信インターフェース等のハードウェアによりそれぞれ実現される機能である。
【0042】
通信部202では、ネットワーク10を介してデータの送受信が行われる。クライアント装置200は、通信部202を介して、チケット管理サーバ100により送信されるサービスチケットを受信する。受信されたサービスチケットは、チケット管理部204に出力される。
【0043】
チケット管理部204では、受信されたサービスチケットが格納される。サービスチケットが複数受信された場合には、それぞれのサービスチケットがチケット管理部204に格納される。チケット管理部204では、サービスチケットが利用された場合には、その利用履歴に基づいてサービスチケットの利用履歴情報が更新される。
【0044】
機能制限部206では、チケット管理部204を参照して、利用者により要求されるデータ処理サービスのサービスチケットが格納されているか否かの判断が行われる。該当するサービスチケットが格納されていないと判断された場合には、データ処理サービスの要求が拒否される。また、サービスチケットに含まれるチケット番号が、当該利用者の識別情報に基づいて復号化できない場合にも、データ処理サービスの要求が拒否される。
【0045】
サービス要求部210では、機能制限部206によりデータ処理サービスが要求可能だと判断された場合に、複合機300に対して当該データ処理サービスの提供が要求される。サービス要求部210では、要求するデータ処理を示した情報に、サービスチケットが付加されたサービス要求信号が、複合機300に送信される。そして、この送信したサービス要求に対して、複合機300によりデータ処理の提供を可能か否かが判断され、その判断結果がクライアント装置200に通知される。
【0046】
プリンタドライバ部208では、複合機300により印刷出力を要求する印刷データの生成が行われる。プリンタドライバ部208では、例えば、文書作成アプリケーション等のアプリケーションにおいて、文書印刷を指定された場合に、印刷対象の文書に基づいて複合機300により解釈可能なPDLデータが生成される。
【0047】
そして、例えば、サービス要求部210により要求された印刷処理サービスが許可された場合には、プリンタドライバ部208により生成された印刷データが、通信部202を介して複合機300に送信される。これは、他のデータ処理サービス、スキャン、FAX、環境設定についても、複合機300からの許可通知があった段階で、その各サービスの詳細な設定情報が送信されるものである。例えば、スキャンであれば、読み取り解像度、カラー設定、画像データフォーマット等の設定情報、FAXであれば、送信先番号や送信画像データ等、環境設定であれば、環境設定の設定値等が送信されるものである。
【0048】
[複合機]
次に、複合機300の機能ブロックについて説明する。複合機300は、機能的な構成として、通信部302、処理提供判断部304、サービス提供部306と履歴管理部308を備える。各部は、一般的なコンピュータシステムを構成する、プロセッサ、メモリ、ハードディスク、通信インターフェース等のハードウェアによりそれぞれ実現される機能である。
【0049】
通信部302では、クライアント装置200により送信されたサービス要求信号が受信される。上述したように、サービス要求信号には、要求されたデータ処理サービスを示すサービスの識別情報とサービスチケットの各情報が含まれる。
【0050】
処理提供判断部304では、受信したサービス要求信号に基づいて、要求されたサービスが提供可能であるか否かが判断される。サービスが提供可能か否かは、サービスチケットに含まれるデバイス識別情報が、要求を受け付けた複合機300のものと合致するか否か、サービスチケットに含まれるサービス識別情報と要求されたサービスとが合致しているか否か、サービスの利用条件を満たしているか否か、についてそれぞれ判断される。そして、上記の各判断において一つでも否定的な判断が得られた場合には、サービスの提供が拒否される。そして、上記の判断結果は、通信部302を介してクライアント装置200に通知される。
【0051】
サービス提供部306では、処理提供判断部304によりサービスの提供が許可された場合に、クライアント装置200にサービス提供が行われる。クライアント装置200により送信された処理対象のデータが、通信部302を介して受信されると、その受信したデータに対して、先に要求された処理が実行される。本実施形態においては、サービス提供部306は、プリント部306A、スキャン部306B、FAX部306C、環境設定部306Dを含む。
【0052】
プリント部306Aでは、クライアント装置200から受信した印刷データに基づいて形成したイメージを紙媒体に転写する処理が行われる。
【0053】
スキャン部306Bでは、紙媒体を走査して紙媒体に形成された画像のイメージデータが読み取られる。
【0054】
FAX部306Cでは、紙媒体を走査して読み取った画像データが公衆回線を使って転送される。
【0055】
環境設定部306Dでは、例えばネットワーク設定や、ファームウェアの更新確認等のセットアップ関連の処理が行われる。
【0056】
履歴管理部308では、提示されたサービスチケットの情報と、サービス提供部306により提供されたサービスの履歴情報が管理される。履歴管理部308で管理される履歴情報は、所定のタイミングでチケット管理サーバ100に送信される。送信された履歴情報は、チケット管理サーバ100の課金集計部110に格納される。
【0057】
以下、上記のデータ処理システム1において行われる処理の詳細を、図5乃至図8に示されたフロー図及びシーケンス図を参照しつつ説明する。
【0058】
[チケット発行処理]
チケット管理サーバ100により行われるサービスチケット発行処理の詳細を、図5のフロー図を参照しつつ説明する。
【0059】
まず、利用者情報記憶部102が参照されて、チケットの利用者の情報がメモリに読み込まれる。次に、提供サービス情報記憶部104が参照されて、複合機300により提供されているデータ処理サービス、例えば、印刷サービス(カラー/白黒)、FAXサービス、利用者登録サービス、ネットワーク設定サービス等のリストが読み込まれる。読み込まれたサービスのうち、利用者に許可する情報が設定される。設定はチケット管理サーバ100の管理者により行われるものであってよい。また、サービスの利用条件についても合わせて設定される。利用条件は、期間、回数、ジョブサイズ等により設定されるものである。
【0060】
設定されたサービス情報、利用条件に基づいて、利用者に対して提供を許可したデータ処理サービスに関するサービスチケットが生成される。生成されたサービスチケットは、クライアント装置200に送信される。なお、生成されたサービスチケットに関するチケット発行情報は、利用実績管理部108に記憶される。
【0061】
また、クライアント装置200は、チケット管理サーバ100により送信されたサービスチケットを受信する。そして、受信したサービスチケットを、チケット管理部204に記憶する。
【0062】
[サービス要求処理]
図6には、クライアント装置200、複合機300、チケット管理サーバ100によるサービス要求処理に関するシーケンス図を示す。
【0063】
クライアント装置200では、利用者からデータ処理サービスの要求を受け付ける(S201)。そして、要求されたデータ処理サービスに該当するサービスチケットが、チケット管理部204から検索される(S202)。ここで該当するサービスチケットが検索されなかった場合には(S203:N)、要求不可として処理を終了する。また、サービスチケットが検索された場合には(S203:Y)、複合機300に、所望のデータ処理サービスを要求する要求信号が送信される(S204)。ここで、要求信号には、サービスチケットが付加されて送信される。
【0064】
複合機300では、クライアント装置200から送信された要求信号を受信する。ここで要求されたデータ処理サービスの提供が可能か否かを、要求信号に含まれるサービスチケットに基づいて判断する。この判断処理の詳細については、図7に示すフロー図を参照しつつ説明する。
【0065】
複合機300では、クライアント装置200により送信された要求信号を受信する(S301)。そして、受信した要求信号に含まれるサービスチケットの検証を行う(S302)。サービスチケットの検証は、以下の3点に基づいて行われる。まず1点目は、サービスチケットに含まれるデバイス識別情報が、複合機300のデバイス識別情報と合致するか否かが判断される。2点目は、サービスチケットの有効期限が、切れていないかが判断される。そして、3点目は、サービスチケットに示されたデータ処理サービスが、複合機300で許可しているものか否かが判断される。上記のすべての検証点についての肯定的な判断が得られた場合には、クライアント装置200へのデータ処理サービスが許可される。逆に、一つでも否定的な判断があった場合には、クライアント装置200へのデータ処理サービスが許可されないこととなる。
【0066】
クライアント装置200へのデータ処理サービスが許可された場合には(S303:Y)、クライアント装置200にデータ処理を受け付ける旨の許可通知が行われ(S304)、許可されない場合には(S303:N)、拒否通知が行われる(S305)。
【0067】
そして、クライアント装置200は、複合機300による判断結果を受信する(S206)。ここで、許可通知が受信された場合には(S207:Y)、処理対象のデータを複合機300に向けて送信する(S208)。例えば、クライント装置が、印刷を要求する場合には、このフェーズで初めて印刷ジョブデータが送信される。一方で、拒否通知が受信された場合には(S207:N)、クライアント装置に接続されたディスプレイに要求が拒否された旨の表示がされる。
【0068】
そして、複合機300では、クライアント装置200から受信した処理対象のデータに基づいて、要求されたデータ処理が実行される(S209)。そして、実行されたデータ処理の処理結果が、クライアント装置200に通知される(S210)。クライアント装置200では、データ処理が正常に終了したことが確認されると、サービスチケットにおける利用履歴情報の内容が更新される(S211)。
【0069】
また、利用されたサービスチケットの情報に関しては、複合機においても記憶されることとしてよい。そして、記憶されたサービスチケットの履歴情報は、チケット管理サーバ100による要求(S212)があった場合に、チケット管理サーバ100に送信される(S213)。チケット管理サーバ100は、受信した利用履歴情報を、サービスチケットの発行情報とともに利用実績管理部108において管理する。
【0070】
[課金処理]
次に、チケット管理サーバ100におけるサービスチケットの管理と、提供されたデータ処理サービスの課金関連処理について、図8のフロー図を参照しつつ説明する。
【0071】
チケット管理サーバ100は、複合機300に対してサービスチケットの送信要求を発信して、使用済みのサービスチケットを回収する(S401)。そして、チケット管理サーバ100では、利用実績管理部108において管理されるサービスチケットの発行履歴情報と、使用済みのサービスチケットの情報との突き合わせを行う(S402)。そして、正常に行われたと確認されたデータ処理サービスに対して、ユーザ毎の集計を行う(S403)。そして、ユーザ毎のデータ処理について、予め定められた課金単位に基づいて、課金すべき金額を算出する(S404)。算出された課金金額は、各ユーザに通知される(S405)。
【0072】
以上説明した本実施形態に係るデータ処理システムによれば、データ処理装置(複合機)は、データ処理要求装置(クライアント装置)により要求されるデータ処理の可否の判断を、提示されたサービスチケットに基づいて簡易な処理で行い、処理にかかる負荷を軽減できる。そして、データ処理要求装置は、サービスチケットを提示して許可が下りた後に処理対象のデータを送信するため、無用なデータ通信を回避することもできる。また、サービスチケットには、データ処理サービスの利用条件が指定されることで、データ処理要求装置にデータ処理サービスを利用する条件を柔軟に付与できる。また、利用許可情報管理装置(チケット管理サーバ)によりサービスチケットの発行、及び、利用実績の管理が行われることで、データ処理サービスの利用実績を一元管理して、利用実績を正しく把握し、課金処理を行うことができる。
【0073】
また、本発明によれば、サービスチケットの発行量を制御管理することで、それぞれのデータ処理装置におけるサービスの利用量も管理することができる。こうすることで、容易に負荷制御、運用コストの管理等が実現できる。
【0074】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。
【0075】
例えば、上記実施形態では、クライアント装置においても、利用者が要求したデータ処理サービスに該当するサービスチケットがあるか否かを判断しているが、クライアント装置側では利用の可否に関する判断を行わず、すべてをデータ処理装置側(複合機)で行わせることとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】データ処理システムのシステム構成図である。
【図2】チケット管理サーバ、クライアント装置及び複合機のそれぞれの機能ブロック図である。
【図3】複合機により提供されるデータ処理サービスの一例を示す図である。
【図4】サービスチケットに含まれるデータの一例を示す図である。
【図5】サービスチケット発行処理のフロー図である。
【図6】サービス要求処理のシーケンス図である。
【図7】サービス提供の可否の判断処理のフロー図である。
【図8】チケット管理サーバにおける課金処理のフロー図である。
【符号の説明】
【0077】
1 データ処理システム、10 ネットワーク、100 チケット管理サーバ、102 利用者情報記憶部、104 提供サービス情報記憶部、106 チケット発行部、108 利用実績管理部、110 課金集計部、112 通信部、200 クライアント装置、202 通信部、204 チケット管理部、206 機能制限部、208 プリンタドライバ部、210 サービス要求部、300,300A,300B 複合機、302 通信部、304 処理提供判断部、306 サービス提供部、306A プリント部、306B スキャン部、306C FAX部、306D 環境設定部、308 履歴管理部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのデータ処理サービスを提供するデータ処理装置と、前記データ処理装置にデータ処理サービスを要求するデータ処理要求装置と、を含むデータ処理システムであって、
前記データ処理要求装置は、
前記データ処理装置について予め利用が許可されたデータ処理サービスの情報を含む利用許可情報を取得する情報取得手段と、
前記情報取得手段により取得された利用許可情報を提示して、前記データ処理装置にデータ処理サービスを要求する要求手段と、を含み、
前記データ処理装置は、
前記要求手段により要求されたデータ処理サービスの提供の可否を、前記提示された利用許可情報に基づいて判断する判断手段、を含み、
前記データ処理要求装置は、前記判断手段により前記要求したデータ処理サービスが許可された場合に、前記データ処理装置に当該データ処理サービスにより処理されるデータを送信する、
ことを特徴とするデータ処理システム。
【請求項2】
請求項1に記載のデータ処理システムであって、
前記利用許可情報は、データ処理サービスの利用が許可される条件を示した条件情報をさらに含み、
前記判断手段は、
前記利用許可情報に含まれる条件情報により示される条件を満たさない場合には、前記要求されたデータ処理サービスの提供を許可しない、
ことを特徴とするデータ処理システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のデータ処理システムであって、
前記データ処理システムは、
前記利用許可情報を生成し、前記データ処理装置に送信する利用許可情報管理装置をさらに含み、
前記情報取得手段は、
前記利用許可情報管理装置により送信された利用許可情報を受信して取得し、
前記データ処理装置は、
前記データ処理要求装置に対して提供したデータ処理サービスの履歴情報を記憶する履歴記憶手段、をさらに含み、
前記利用許可情報管理装置は、
前記履歴記憶手段に記憶された履歴情報を取得して管理する履歴情報管理手段、を含む、
ことを特徴とするデータ処理システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載のデータ処理システムであって、
前記データ処理サービスは、印刷処理サービスを少なくとも含み、
前記データ処理要求装置は、
前記印刷処理サービスが許可された場合に、前記データ処理装置に印刷ジョブデータを送信する、
ことを特徴とするデータ処理システム。
【請求項5】
少なくとも1つのデータ処理サービスを提供するデータ処理装置にデータ処理サービスを要求するデータ処理要求装置であって、
前記データ処理装置について予め利用が許可されたデータ処理サービスの情報を含む利用許可情報を取得する情報取得手段と、
前記情報取得手段により取得された利用許可情報を提示して、前記データ処理装置にデータ処理サービスを要求する要求手段と、を含み、
前記データ処理装置により、前記提示された利用許可情報に基づいて前記要求手段により要求したデータ処理サービスが許可された場合に、前記データ処理装置に当該データ処理サービスにより処理されるデータを送信する、
ことを特徴とするデータ処理要求装置。
【請求項6】
少なくとも1つのデータ処理サービスを提供するデータ処理装置にデータ処理サービスを要求するコンピュータを、
前記データ処理装置について予め利用が許可されたデータ処理サービスの情報を含む利用許可情報を取得する情報取得手段、
前記情報取得手段により取得された利用許可情報を提示して、前記データ処理装置にデータ処理サービスを要求する要求手段、及び、
前記提示された利用許可情報に基づいて前記要求手段により要求したデータ処理サービスが前記データ処理装置により許可された場合に、前記データ処理装置に処理対象のデータを送信する、
コンピュータとして機能させるためのプログラム。
【請求項7】
少なくとも1つのデータ処理サービスを提供するデータ処理装置であって、
前記データ処理装置について利用が許可されたデータ処理サービスを示した利用許可情報を提示して要求される、データ処理サービスの処理要求を受け付ける要求受付手段と、
前記要求受付手段により要求を受け付けたデータ処理サービスの提供の可否を、前記提示された利用許可情報に基づいて判断する判断手段と、を含む、
ことを特徴とするデータ処理装置。
【請求項8】
少なくとも1つのデータ処理サービスを提供するコンピュータを、
前記データ処理装置について利用が許可されたデータ処理サービスを示した利用許可情報を提示して要求される、データ処理サービスの処理要求を受け付ける要求受付手段、及び、
前記要求受付手段により要求を受け付けたデータ処理サービスの提供の可否を、前記提示された利用許可情報に基づいて判断する判断手段、
として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−134969(P2008−134969A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−322310(P2006−322310)
【出願日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】