説明

データ処理装置、データ記録装置、データ再生装置、および、複数の記録層を有する記録媒体

【課題】複数層の追記型または書換型の記録媒体にコンテンツをダウンロードして記録するために、予め準備されたイメージデータを可能な限り簡易に修正してディスクに書き込み可能にする。
【解決手段】データ処理装置は、各々が第1および第2記録容量を有する第1および第2記録層を備えた記録媒体の両記録層にわたって分割して書き込まれるデータを生成する。第1データのデータサイズは第1記録容量よりも小さく、第2データのデータサイズは第2記録容量よりも小さいデータ格納部と、第1記録層のデータ記録可能領域の最終アドレスを取得する通信部と、第1データの先頭が第1記録層のデータ記録可能領域の先頭アドレスから書き込まれ、かつ、取得した最終アドレスに第1データの終端が書き込まれるように第1データのデータサイズを調整する制御部と、データサイズが調整された第1データと第2データを出力する出力部とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2層ディスクへのビデオコンテンツのダウンロードサービスのために使用される、イメージデータのデータ処理装置、当該イメージデータの記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
市販される再生専用DVD−Videoディスク(以下、DVD−Videoディスクと記す)を作成する際には、予め、カッティング・マスター・フォーマット(Cutting Master Format;CMF)に準拠したデータが準備され、このデータに基づいて原盤が作成される。そしてその原盤を用いて、DVD−Videoディスクが作成される。2層の記録層を有するDVD−Videoディスク(記録容量8.54ギガバイト(10の9乗バイト))が作成される際には、各層毎に、CMFに準拠したデータが準備される。
【0003】
図12は、CMFに準拠したデータ(以下「CMFデータ」と記述する。)のデータ構造を示す。非特許文献1は、このデータ構造を規定する。
【0004】
CMFデータは、4つのファイル101〜104に分けられて構成されている。DDVID.DAT101はCMFの識別情報を格納している。VOBTBL.DAT102は、ビデオマネージャーおよび各ビデオタイトルセットの位置情報を格納している。CONTROL.DAT103は、リードイン領域に記録されるコントロールデータの情報を格納している。IMAGE.DAT104は、データ記録領域に記録されるイメージデータを格納している。
【0005】
図13は、2層DVD−Videoディスク(以下「ディスク」と記述する。)の層構造と、ディスクにイメージデータが記録される際のデータ配置を示す。まずディスクの構造を説明する。
【0006】
ディスクはいわゆるオポジットトラックパスであり、ディスクの各セクタには物理アドレスが割り当てられている。
【0007】
ディスクには、リードイン領域111、データ領域112およびミドル領域113から構成される第1層(Layer0;L0層)と、ミドル領域114、データ領域115およびリードアウト領域116から構成される第2層(Layer1;L1層)とが設けられている。物理アドレスは領域111〜113、領域114〜116の順に徐々に大きくなるよう割り当てられている。
【0008】
2層DVD−Videoディスクでは、L0層のデータ領域112の先頭アドレスは固定されているが、終端アドレスは固定されていない。終端アドレスはデータ領域112の記録データのサイズに応じて決定される。L0層のミドル領域113はデータ領域112の直後に設けられるため、ミドル領域113の開始位置もまた、データ領域112の記録データのサイズに応じて決定される。
【0009】
L1層のミドル領域114は、L0層のミドル領域113と対称になるように設定されている。その結果、L0層のデータ領域112の終端位置とL1層のデータ領域115の開始位置とは、ディスクに垂直な方向から見るとほぼ一致している。
【0010】
L0層のデータ領域112の終端アドレスとL1層のデータ領域115の先頭アドレスとは、物理セクタ番号の空間では2の補数の関係にあり、かつ、論理セクタ番号の空間では連続している。
【0011】
L1層のデータ領域115の終端アドレスは固定されておらず、終端アドレスは、L1層のデータ領域115の先頭アドレス、および、データ領域115の記録データのサイズに応じて決定される。L1層のデータ領域115の直後にはL1層のリードアウト領域116が設けられる。よって、リードアウト領域116の開始位置もまた、データ領域115の記録データのサイズに応じて決定され得る。
【0012】
このような構造のディスクを作成する際には、上述のように各層に対応してCMFデータが準備される。本例では、L0層のデータ領域112に対してはIMAGE.DAT117が準備され、L1層のデータ領域115に対してはIMAGE.DAT118が準備される。各層のデータ領域に対応するイメージデータが準備されると、そのデータのサイズおよび上述の領域の配置に関する条件に応じて、ミドル領域とリードアウト領域が設定される。
【非特許文献1】DVD Cutting Master Format Specification Ver.1.00: for DVD Video and DVD ROM、[平成18年9月19日検索]、インターネット<URL:http://www.dvdforum.org/tech-dvd_cutting_master_format_spec.htm>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
市販される再生専用DVD−Videoディスクの作成にあたっては、蓄積対象となるデータが予め得られているため、上述の各領域の開始位置および終了位置を調整しながら、CMFデータを作成することが可能である。
【0014】
しかしながら、このような各領域の開始位置および終了位置の調整は、複数の記録層を有する追記型または書換型の光ディスクにデータを書き込む際には不可能である。その理由は、L0層のデータ領域、ミドル領域、L1層のミドル領域およびデータ領域は、固定されて設けられているためである。
【0015】
よって、たとえばビデオコンテンツのダウンロードサービスによって取得したコンテンツデータが、複数層をまたいで書き込まなければならないほど大きいデータサイズを有するときは、追記型または書換型の光ディスクを利用できないという問題が生じる。
【0016】
図14は、2層DVD−Rディスクの物理構造を示す。DVD−Videoディスクと同様、リードイン領域(L−i121)の最後のアドレスは固定値である。一方、L0層のデータ記録可能領域122の終端アドレスおよびミドル領域123の先頭アドレスはディスク製造時に設定されている。
【0017】
物理セクタ番号のアドレス空間に関し、L0層のデータ記録可能領域122の終端のアドレスおよびL1層のデータ記録可能領域125の先頭アドレスは、2の補数の関係にある。他方、論理セクタ番号の空間では、これらのアドレスは連続している。このため、L1層のミドル領域124の最後のアドレスもディスク製造時に設定されている。なお、リードアウト領域(L−o126)は、データが記録された後で設定することが可能である。
【0018】
図14に示す2層DVD−Rディスクでは、ミドル領域123および124がディスク製造時に固定される。したがって、イメージデータのデータサイズとL0層のデータ記録可能領域122の領域サイズとが一致しない限り、イメージデータをL0層に記録すると、イメージデータとミドル領域の間にデータ記録可能領域122の未記録領域が残る。よって、L0層に記録されたイメージデータの論理セクタアドレスと、L1層に記録されたイメージデータの論理セクタアドレスとが連続せずに離れてしまう。これでは、L0層とL1層との間で論理セクタアドレスが連続していることを前提として設計されているDVDプレーヤは、コンテンツを正しく再生することができない。
【0019】
特に、2層DVD−Rディスクでは、ディスク製造装置の製造誤差に起因して、L0層のデータ記録可能領域122とL1層のデータ記録可能領域125の位置が垂直方向から見た時に、所定の範囲でずれることがある。「製造誤差」とは、たとえばメーカの製造装置の相違によって発生するトラックピッチの製造誤差、2枚の記録層の張り合わせ誤差である。2層DVD−RディスクのL1層にデータを記録する場合、L0層において垂直方向に対応する位置にデータが記録されていないと、L1層に正しくデータが記録できない。このため、2層DVD−Rディスクでは、L1層とL0層の製造誤差を考慮して、L0層のデータ記録領域のサイズが、L1層のデータ記録領域のサイズより大きくなっている。
【0020】
図14は、L0層のデータ記録可能領域122が、L1層のデータ記録可能領域125より大きいときの例を示す。記録可能容量が2層DVD−Videoディスクと2層DVD−Rディスクとで同じであるとすると、2層DVD−RディスクのL0層のデータ記録可能領域の方が、2層DVD−VideoディスクのL0層のデータ領域よりも大きくなる。仮に、2層DVD−Videoディスクを基準にしてイメージデータを作成すると、2層DVD−Rディスクでは上述の未記録領域が残るという問題が発生する。
【0021】
なお、L0層に書き込まれるイメージデータに続けて、L1層に記録すべきイメージデータの一部を上述の未記録領域に書き込むという対応が考えられる。しかしながら、DVD−Videoフォーマットでは、ビデオデータの最小連続単位であるセルが、層の境界を含んで記録されてはならないという制約が存在する。よってこの対応は適切ではない。既存のCMFデータの作成方法との整合性に鑑みれば、各層に記録されるイメージデータの境界においてセルが分割された状態のCMFデータを準備する必要がある。
【0022】
本発明の目的は、複数層の追記型または書換型の記録媒体にコンテンツをダウンロードして記録するために、予め準備されたイメージデータを可能な限り簡易に修正して記録媒体に書き込み可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明によるデータ処理装置は、第1記録容量を有する第1記録層および第2記録容量を有する第2記録層を備えた記録媒体に対し、前記第1記録層および前記第2記録層にわたって書き込まれるデータを生成する。前記データ処理装置は、書き込み対象のデータを第1データおよび第2データに分割して保持するデータ格納部であって、前記第1データのデータサイズは前記第1記録容量よりも小さく、前記第2データのデータサイズは前記第2記録容量よりも小さいデータ格納部と、前記第1記録層のデータ記録可能領域の最終アドレスを取得する通信部と、前記第1データの先頭が前記第1記録層のデータ記録可能領域の先頭アドレスから書き込まれ、かつ、取得した前記最終アドレスに前記第1データの終端が書き込まれるように前記第1データのデータサイズを調整する制御部と、データサイズが調整された前記第1データ、および、前記第2データを出力する出力部とを備えている。
【0024】
前記制御部は、前記最終アドレスに基づいてデータを追加することにより、前記第1データのデータサイズを調整してもよい。
【0025】
前記第1記録層のデータ記録可能領域の先頭アドレスは予め定められており、前記制御部は、前記第1記録容量を有する前記第1記録層のデータ記録可能領域であって、前記先頭アドレスおよび前記最終アドレスに基づいて特定されるデータ記録可能領域の領域サイズと、保持している前記第1データのデータサイズとの差に等しいデータサイズを有するデータを追加してもよい。
【0026】
前記第1データは、コンテンツのデータ、および、前記コンテンツのデータの配置を管理する管理情報を含んでおり、前記データの追加に起因して前記コンテンツのデータの配置が変動したとき、前記制御部は前記管理情報を更新してもよい。
【0027】
前記記録媒体は、固有の識別情報を保持しており、前記通信部は前記識別情報を取得し、前記制御部は、前記識別情報を利用して前記コンテンツのデータを暗号化するとともに、暗号化したことを示すスクランブル情報を前記第1データの一部として生成してもよい。
【0028】
本発明によるデータ記録装置は、第1記録層および第2記録層を備えた記録媒体に対し、サーバから受け取ったデータを、前記第1記録層および前記第2記録層にわたって書き込む。前記データ記録装置は、前記第1記録層のデータ記録可能領域の最終アドレスを前記サーバに送信し、前記最終アドレスに基づいてデータサイズが調整された第1データ、および、第2データを受信する通信制御部と、データサイズが調整された前記第1データを前記第1記録層に書き込み、前記第2データを前記第2記録層に書き込むドライブ制御部とを備えている。
【0029】
前記記録媒体は、固有の識別情報を保持しており、前記通信制御部は、前記識別情報を前記サーバに送信し、その後、前記識別情報によって暗号化され、かつデータサイズが調整された前記第1データを受信してもよい。
【0030】
前記記録媒体には、記録単位が定められており、前記第1データには、暗号化されたコンテンツのデータ、前記コンテンツのデータが暗号化されていることを示すスクランブル情報、および、前記コンテンツのデータの配置を管理する管理情報が含まれており、前記ドライブ制御部は、前記暗号化されたコンテンツのデータを、前記記録単位ごとに分割して書き込み、かつ、前記記録単位のヘッダに前記スクランブル情報を書き込んでもよい。
【0031】
前記ドライブ制御部が、前記第1記録層のデータ記録可能領域の先頭アドレスから前記第1データを書き込むことにより、前記第1データの終端が、前記最終アドレスに書き込まれてもよい。
【0032】
本発明によるデータ再生装置は、上記データ記録装置によって記録された記録媒体から、データを読み出す。前記データ再生装置は、読み出しの開始を指示する制御部と、前記第1記録層のデータ記録可能領域の先頭アドレスから前記第1データを読み出し、前記第2記録層のデータ記録可能領域の先頭アドレスから前記第2データを読み出すドライブ制御部とを備え、前記ドライブ制御部は、前記第1データの終端が前記最終アドレスに書き込まれていることにより、前記第2記録層のデータ記録可能領域の先頭アドレスとして、前記最終アドレスの次のアドレスから前記第2データを読み出す。
【0033】
本発明による記録媒体は、第1記録容量のデータを書き込み可能な第1記録層および第2記録容量のデータを書き込み可能な第2記録層にわたって、データが書き込まれている。前記記録媒体には、前記第1記録層においては、データ記録可能領域の先頭アドレスから第1データが書き込まれ、最終アドレスに前記第1データの終端が書き込まれており、前記第1データは、前記第1データのデータ長を調整するためのデータを含んでおり、前記第2記録層においては、データ記録可能領域の先頭アドレスから第2データが書き込まれている。
【発明の効果】
【0034】
本発明のデータ処理装置によれば、第1記録層のデータ記録可能領域の最終アドレスを取得して、第1記録層の最終アドレスに第1データの末尾が書き込まれるように第1データのデータサイズを調整し、加工された第1データを生成する。そのような第1データを第1記録層に書き込むと第1記録層の末尾までデータで埋められるため、第1記録層の末尾データのアドレスと、第2記録層の先頭データのアドレスとが連続する。これにより、再生時において、第1記録層から第2記録層へのアクセス時のアドレッシングを確実にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明によるデータ処理装置の実施形態を説明する。
【0036】
(実施形態1)
図1(a)、(b1)、(b2)および(c)は、イメージデータを2層光ディスク19への書き込むための、イメージデータのデータサイズ調整方法の概要を示す。図1(c)は2層光ディスク19の断面を模式的に示す。2層光ディスク19は、2層DVD−Rディスクであるとするが、2層DVD−RWディスクなどの、複数層を有する記録可能な光ディスクであればよい。図1(a)および(b2)は、それぞれL0層およびL1層に書き込まれることを想定して準備されたイメージデータ21、および、イメージデータ26が示されている。図1(b1)は本実施形態の処理によって加工されたイメージデータを示す。
【0037】
図1(c)に示すように、L0層には先頭から順にリードイン領域11、データ記録可能領域12およびミドル領域13が形成されている。L0層のデータ記録可能領域12の先頭セクタの物理アドレスはSで示し、終端の物理アドレスはXで示す。ミドル領域13は予め形成されている。
【0038】
アドレスがオポジットトラックパスで形成されているので、物理アドレスは、L0層のミドル領域13からL1層のミドル領域14へと続く。L1層のミドル領域14に続いてデータ記録可能領域15が形成されている。なお、図1(c)にはリードアウト領域16が形成されているが、データが記録される前のディスク19には、リードアウト領域16は設けられていない。
【0039】
データ記録可能領域15の先頭アドレスはXにバーを付けて示す。これは、L0層のデータ記録可能領域12の最終アドレスXの2の補数を表す。以下ではデータ記録可能領域15の先頭アドレスを「Y」と示す。またL1層のデータ記録可能領域15の終端アドレスを「E」と示す。
【0040】
L0層およびL1層にわたって書き込まれるデータは、2つに分割されている。分割された各データは、ダウンロードサービスに供するためにサーバに保持されている。「ダウンロードサービス」とは、ユーザが課金されたコンテンツ(たとえばビデオコンテンツ)を選択して購入することにより、ネットワークを介して、ユーザが当該コンテンツのデータをサーバからダウンロードすることを可能にするサービスを言う。たとえば、ビデオ・オン・デマンドでユーザがコンテンツを購入するダウンロードサービスである。
【0041】
イメージデータ21、および、イメージデータ26は、DVD−Video規格に適合するデータ構造を有している。各イメージデータのデータサイズは、L0層およびL1層の各データ記録可能領域12および15の最低領域サイズよりも小さい。
【0042】
この「最低領域サイズ」は、2層DVD−Rディスクの規格に基づいて決定される。当該規格では、製造されたディスクのデータ記録可能領域に関する製造誤差の許容範囲を規定している。「最低領域サイズ」は、規格上認められた製造誤差によって最も小さくなったときのデータ記録可能領域の領域サイズとして、予め定められる。このため、2層DVD−RディスクのL0層のデータ記録領域の終端の物理アドレスは、メーカごと、または、製造ロットごとに異なる場合がある。
【0043】
イメージデータ21の先頭には、ボリューム・ファイル構造を示す情報22が配置され、その後ろに、L0層用のDVD−Videoデータ23が配置される。論理セクタ空間では、論理セクタ番号(Logical Sector Number:LSN)がセクタ毎に割り当てられる。イメージデータ21の先頭はLSN0、L0層用のDVD−Videoデータの先頭と終端は、それぞれLSNaとLSNbで示されている。
【0044】
イメージデータ26の先頭にはL1層用のDVD−Videoデータ27が配置され、その後、ボリューム・ファイル構造28が配置される。図1では、オポジットトラックパスなので、L1層において、論理セクタ番号は、ミドル領域14からリードアウト領域16の方向に、データ記録領域15内の各物理セクタに割り振られることに注意されたい。
【0045】
本実施形態による処理では、(1)2層DVD−RディスクのL0層およびL1層にわたってデータを書き込むにあたり、L0層のデータ記録可能領域12の最終アドレスXを取得し、(2)L0層データ記録可能領域12の先頭アドレスSからイメージデータ21が書き込まれるとき、取得した最終アドレスXに基づいて、そのイメージデータ21の末尾がデータ記録可能領域12の終端アドレスXに書き込まれるようにイメージデータ21のデータサイズを調整する。
【0046】
ここでいう「データサイズを調整する」とは、イメージデータ21のボリューム・ファイル構造を示す情報22とDVD−Videoデータ23との間に、追加データ(パディングデータ)を挿入することを意味する。
【0047】
図1(b1)は、追加データ25が挿入された、調整後のイメージデータ24を示す。追加データ25のデータサイズは、(X−S)−bである。これは、L0層のデータ記録可能領域12の領域サイズとL0層用のイメージデータ21のデータサイズとの差に相当する。追加データは、たとえばダミーデータであり、全て「0」の値で埋められている。
【0048】
追加データ25の挿入によってDVD−Videoデータ23の配置がシフトされるため、ボリューム・ファイル構造を示す情報22中の各ファイルの位置を指定しているファイル管理情報が更新される。イメージデータ24のボリューム・ファイル構造を示す情報は、更新後のファイル管理情報が格納されている。最初にアクセスすべきデータ位置として、図1(a)に示されるDVD−Videoデータ23の先頭部分を指し示すようにファイル管理情報を変更することにより、追加データ25が挿入されたとしても再生処理に影響はない。管理情報の詳細は、図8を参照しながら後述する。
【0049】
生成されたイメージデータ24は、L0層のアドレスSから、L0層のデータ記録可能領域12に書き込まれる。また、イメージデータ26はL1層のアドレスYからデータ記録可能領域15に書き込まれる。
【0050】
その後、ディスクに対してファイナライズ処理が行われる。ファイナライズ処理を行う時点で、L1層のデータ記録可能領域15内のデータが記録されたアドレスEの次から、リードアウト領域16が形成される。上述のように、L1層に書き込まれるイメージデータのデータサイズは、ブランク状態のディスクにおけるL1層のデータ記録可能領域よりも小さければよい。
【0051】
なお、ファイナライズ処理に関連して、L0層,L1層に記録されるボリューム構造の中のパラメータも更新されるが、その詳細もまた後述する。
【0052】
上述のように、本実施形態においては、各ディスクのデータ記録可能領域の終端アドレスに応じて、イメージデータのデータサイズを追加データの挿入によって調整する。その結果、L0層およびL1層にわたってデータを書き込んだとき、L0層に記録されたイメージデータの論理セクタアドレスと、L1層に記録されたイメージデータの論理セクタアドレスとが連続する。よって、DVDプレーヤがコンテンツのデータを確実に読み出し、コンテンツを再生することが可能になる。
【0053】
上述した、当初のイメージデータ(図1(a)および(b2))の保持、最終アドレスXの取得、および、追加データ25の挿入によるイメージデータのデータサイズの調整は、ダウンロードサービスのために設置されたサーバによって行われる(詳細は後述する)。データサイズが調整されたイメージデータは、たとえばユーザが保有する記録装置にダウンロードされ、2層DVD−Rに書き込まれる。これらの処理を実現するために、ユーザの記録装置には、装填された2層DVD−Rの最終アドレスXをサーバに送信する機能が必要とされる。
【0054】
図2は、ダウンロードサービスに利用される機器の接続構成の例を示す。HDD内蔵光ディスクレコーダ20(以下「レコーダ20」と記述する。)とビデオサーバ30とは、インターネット10を介して互いに接続されている。ビデオサーバ30はダウンロードサービス提供者によって設置される。レコーダ20はユーザの家庭に設置される。
【0055】
また、ビデオサーバ30とダウンロード端末40とは、専用回線35を介して互いに接続されている。ダウンロード端末40は、たとえば駅や街中の売店に設置される。ユーザは、ダウンロード端末40を操作してビデオコンテンツを選択し、所定の金額を支払い、ビデオコンテンツが2層ディスクに記録され、そのディスクを受け取る。
【0056】
以下では、インターネット10を介してビデオサーバ30と接続されたレコーダ20を例として本実施形態による処理を説明するが、専用回線35を介してビデオサーバ30と接続されたダウンロード端末40を利用しても、レコーダ20と同等の処理を行うことが可能である。
【0057】
次に図3および図4を参照しながら、レコーダ20およびビデオサーバ30の具体的なハードウェア構成を説明する。
【0058】
図3は、本実施形態によるレコーダ20のハードウェアの構成を示す。レコーダ20はその基本的な機能として、放送局から送信される番組の信号を受信して、その信号に基づいて生成したデータストリームを、2層DVD−Rディスク(以下「2層光ディスク205a」と記述する。)またはハードディスク205bに書き込む機能(番組録画機能)を有しているとする。なお、受信する番組の信号はアナログ放送番組の信号であってもよいし、デジタル放送番組の信号であってもよい。図3には、アナログ放送番組を録画するための構成を示している。
【0059】
さらに、レコーダ20は、後述するようにダウンロードサービスを提供するビデオサーバ30へ所定の要求を送信し、ビデオサーバ30からコンテンツデータを受信し、そのデータを複数の記録層を有する光ディスクに書き込む機能(ダウンロード記録機能)を有している。なお、ダウンロード記録機能は本実施形態によるレコーダ20に必須であるが、上述した番組録画機能は例であり、本実施形態において必須ではない。
【0060】
以下、レコーダ20の構成要素を説明する。
【0061】
レコーダ20は、チューナ201と、ADコンバータ202と、MPEG−2エンコーダ203と、ドライブ制御部204と、MPEG−2デコーダ206と、グラフィック制御部207と、メモリ208と、DAコンバータ209と、CPUバス213と、ネットワーク制御部214と、指示受信部215と、システム制御部250とを含む。図3には、2層光ディスク205aがレコーダ20内に記載されているが、2層光ディスク205aはレコーダ20から取り外し可能であり、レコーダ20自体の構成要素ではない。
【0062】
システム制御部250は主としてCPU211、プログラムROM210およびRAM212によって構成されており、レコーダ20内の信号の流れを含む全体的な処理を制御する。他の構成要素はシステム制御部250からの指示に基づいて動作する。
【0063】
プログラムROM210、CPU211およびRAM(メモリ)212はそれぞれCPUバス213に接続されている。
【0064】
プログラムROM210はレコーダ20を制御するためのソフトウェアプログラムを格納している。CPU211は、プログラムROM210から読み出してRAM212上に展開したプログラム212aを実行することにより、プログラムに基づいて規定される処理を実現するための制御信号を生成し、CPUバス213を介して各構成要素に出力する。メモリ212は、プログラム212aの他に、CPU211がプログラム212aを実行するために必要なデータ212bを格納するためのワーク領域を有する。
【0065】
たとえばシステム制御部250は、ユーザがダウンロードサービスを受けるためにビデオサーバ30への接続操作を行うと、後述するネットワーク制御部214に対して、インターネット10を介してビデオサーバ30にアクセスするよう指示する。またシステム制御部250は、ユーザによって行われた番組の録画開始操作および終了操作に基づいて、録画の開始指示および終了指示を出力する。
【0066】
チューナ201は、放送局から送信されたアナログ放送電波を選局して受信し、番組の映像および音声信号をADコンバータ202に出力する。ADコンバータ202は入力された信号をデジタル変換してMPEG−2エンコーダ203に供給する。MPEG−2エンコーダ203(以下「エンコーダ203」と記述する)は、録画の開始指示を受け取ると、供給されたデジタルデータをMPEG−2形式に圧縮符号化して、DVD−video規格に準拠したMPEG−2プログラムストリーム(以下「プログラムストリーム」と称する)を生成し、ドライブ制御部204に入力する。この処理は、エンコーダ203が録画の終了指示を受け取るまで継続される。エンコーダ203は圧縮符号化を行うために、フレームデータ等を一時的に保持するバッファ(図示せず)等を有する。
【0067】
ドライブ制御部204は、光ヘッド(図示せず)を利用して2層光ディスク205aへのデータの書き込み処理、および2層光ディスク205aからのデータの読み出し処理を制御する。またドライブ制御部204は、磁気ヘッド(図示せず)を利用してハードディスク205bへのデータの書き込み処理、およびハードディスク205bからのデータの読み出し処理を制御する。
【0068】
ドライブ制御部204は、ダウンロードサービスの利用中に2層光ディスク205aが装填されたか否かを監視する。そして2層光ディスク205aが装填されたと判断すると、そのL0層のデータ記録可能領域12の終端アドレスX(図1(c))を特定して、ネットワーク制御部214を経てビデオサーバ30に送信する。またドライブ制御部204は、ビデオサーバ30から送られてきたイメージデータを、ネットワーク制御部214を介して受け取ると、そのデータを2層光ディスク205aに書き込む。ここで、データを一旦ハードディスク205bに記録してから、2層光ディスク205aに記録しても良い。
【0069】
またドライブ制御部204は録画の開始指示を受けて録画開始処理を行い、その後プログラムストリームを受け取って2層光ディスク205aまたはハードディスク205bへの書き込みを開始する。またドライブ制御部204は、録画の終了指示を受けた後、プログラムストリームの入力がなくなると書き込み処理を終了し、録画終了処理を行う。
【0070】
なお、ドライブ制御部204は2層光ディスク205aおよびハードディスク205bの両方に対する情報の授受を制御するとして説明しているが、2層光ディスク205aのドライブ装置およびハードディスク205bのドライブ装置の各々に設けられてもよい。
【0071】
一方、番組等のコンテンツの再生時には、システム制御部250による読み出しの開始指示に基づいて、ドライブ制御部204は2層光ディスク205aまたはハードディスク205bからデータを読み出す。ドライブ制御部204は、読み出したデータをMPEG−2デコーダ206に出力する。MPEG−2デコーダ206(以下「デコーダ206」と記述する)は、供給されたMPEG−2圧縮符号化データを伸長して非圧縮データに変換し、グラフィック制御部207に供給する。グラフィック制御部207には内部演算用のメモリ208が接続されており、オン・スクリーン・ディスプレイ(On Screen Display;OSD)機能を実現できる。例えば、グラフィック制御部207は種々のメニュー画像を映像と合成してDAコンバータ209に出力する。DAコンバータ209は、入力されたOSD合成画像および音声データをアナログ変換して出力する。
【0072】
CPUバス213はレコーダ20内の信号を伝送する経路であり、チューナ201、ADコンバータ202、エンコーダ203、ドライブ制御部204、デコーダ206、グラフィック制御部207、DAコンバータ209が接続されている。また、CPUバス213には、前述のシステム制御部250の各構成要素も接続されている。
【0073】
ネットワーク制御部214は、レコーダ20をインターネット10に接続するためのインターフェイス機能を有しており、インターネット10を介してデータを授受する。
【0074】
ネットワーク制御部214からビデオサーバ30に対して送信するデータは、たとえばコンテンツの購入要求、ダウンロード要求、L0層のデータ記録可能領域12の最終アドレスXを特定する情報である。ネットワーク制御部214がビデオサーバ30から受信するデータは、たとえば購入可能なコンテンツのタイトルリストの情報、購入したコンテンツのイメージデータである。なおイメージデータは、L0層へ書き込むためのイメージデータと、L1層へ書き込むためのイメージデータとに分かれている。
【0075】
指示受信部215は、レコーダ20に付属するリモコン(図示せず)がユーザによって操作されたときにおいて、リモコンからその操作に対応する信号を受信する。指示受信部215は、たとえばリモコンから入力されたビデオサーバ30への接続操作、録画開始操作、録画終了操作に対応する信号を受信する。指示受信部215はさらに、レコーダ20に設けられた操作ボタンを含んでもよい。
【0076】
図4は、本実施形態によるビデオサーバ30のハードウェアの構成を示す。
【0077】
ビデオサーバ30は、複数のビデオコンテンツ(たとえば映画)のCMFデータをハードディスク等の記録媒体に保持しており、ユーザがビデオコンテンツの購入手続きを完了すると、購入されたビデオコンテンツのCMFデータをユーザのレコーダ20に送信する。ビデオコンテンツのデータはレコーダ20によってDVD−Rに書き込まれ、その後DVD−Videoディスクと同等の再生専用ディスクとして取り扱われる。
【0078】
送信するビデオコンテンツデータのデータサイズが大きく、2層DVD−Rでなければそのデータを完全に書き込みできないときには、ビデオサーバ30は、2層DVD−RのL0層およびL1層の書き込まれるCMFデータ(以下それぞれ「L0層用CMFデータ」および「L1層用CMFデータ」)の組をそれぞれ保持している。
【0079】
このようなコンテンツが購入されたとき、ビデオサーバ30はレコーダ20に対し、レコーダ20に装填された2層DVD−Rの情報、具体的には、L0層のデータ記録可能領域12の最終アドレスXのアドレス情報の送信を要求する。ビデオサーバ30がレコーダ20から最終アドレスXのアドレス情報を受け取ると、ビデオサーバ30は、L0層用CMFデータのデータサイズを調整する。具体的には、L0層用CMFデータの先頭がL0層データ記録可能領域の先頭アドレスから書き込まれるとき、L0層用CMFデータの終端が、取得した最終アドレスXに書き込まれるように、追加データを挿入することによってL0層用CMFデータのデータサイズを調整し、加工されたL0層用CMFデータを生成する。その後、ビデオサーバ30は、加工されたL0層用CMFデータ、および、L1層用CMFデータをレコーダ20に送信する。
【0080】
次に、ビデオサーバ30の構成を説明する。
【0081】
ビデオサーバ30は、ドライブ制御部304と、ハードディスク305と、バス313と、ネットワーク制御部314と、システム制御部350とを含む。ビデオサーバ30の構成はレコーダ20の構成と類似しており、レコーダ20の構成要素のうち、番組録画機能のみに利用される構成要素を省いたものである。
【0082】
ビデオサーバ30に対して、外部からコンテンツデータ300が入力されると、ドライブ制御部304はコンテンツデータ300をハードディスク305に書き込む。このコンテンツデータ300はCMFデータであるとする。データサイズが比較的大きいときには、2層DVD−RのL0層用/L1層用CMFデータの組がそれぞれ格納される。なお、セキュリティーを高めるために、CMFデータはCPRM(Content Protection for Recordable Media)方式によって暗号化されているとする。CPRM方式では、記録対象となるディスクごとの固有の情報を用いて暗号化が行われる。ディスクごとの固有の情報として、ディスクのBCA(burst cutting area)領域に記録されたメディアの識別情報(ディスクキー)が利用される。BCA領域は、リードイン領域の中に設定されている。BCA領域にはバーコード状のパターンが設けられており、そのパターンによってその光ディスクを識別するディスクキーを記録することができる。このパターンは、製品の出荷時点から記録されている。BCA領域を有する記録型DVDとして、DVD−R,DVD−RW、DVD−RAMが知られている。
【0083】
なお、コンテンツデータ300が符号化された単なるMPEG形式の符号化データである場合には、システム制御部350においてCMFデータを生成する処理を行って、そのCMFデータをハードディスク305に書き込んでもよい。
【0084】
システム制御部350は、ROM310と、CPU311と、RAM312によって構成されており、ビデオサーバ30内の信号の流れを含む全体的な処理を制御する。
【0085】
プログラムROM310はビデオサーバ30を制御するためのソフトウェアプログラム、たとえばコンテンツの購入処理プログラム、L0層用CMFデータの加工処理プログラムを格納している。
【0086】
CPU311は、プログラムROM310から読み出してRAM312上に展開したプログラムを実行する。CPU311が、たとえばL0層用CMFデータの加工処理プログラムを実行すると、CPU311は、レコーダ20から受け取ったアドレス情報に基づいてL0層用CMFデータに追加データを挿入し、加工されたL0層用CMFデータを生成する。そしてCPU311は、そのデータをネットワーク制御部314からレコーダ20に送信する。なお、ネットワーク制御部314の機能は、レコーダ20のネットワーク制御部214の機能と同じであるので説明は省略する。
【0087】
本実施形態においてはビデオサーバ30がL0層用CMFデータのデータサイズを調整するとして説明している。その理由は、映画などのビデオコンテンツには、多くの場合著作権保護の観点からデータの自由な改変が認められていないためである。
【0088】
なお、録画中の番組または以前録画した番組のデータを、既存のレコーダが2層DVD−RにDVD−Video形式で書き込む際には、レコーダ20はL0層用CMFデータを自ら生成する。このときレコーダは、最小連続単位であるセル間の境界が、L0層のデータ記録可能領域の最終位置に来るように符号化処理または再符号化処理を行っている。予めL0層用CMFデータを準備し、そのCMFデータに追加データを挿入する処理は行われていないことに留意されたい。
【0089】
次に、ディスクに記録されるビデオコンテンツのディレクトリ・ファイルのファイル構造を説明し、その後、L0層用CMFデータに対する追加データ25の挿入に関連して、どのような処理が行われるかを説明する。
【0090】
図5は、ディスクに記録するビデオコンテンツのディレクトリ・ファイルの一例を示す。
【0091】
図5に示すように、Rootディレクトリ30の下に、ビデオコンテンツ用のVIDEO_TSディレクトリ31が設けられる。ビデオコンテンツの各ファイルは、VIDEO_TSディレクトリ31の下に記録される。
【0092】
VIDEO_TS.IFOファイル32には、各ビデオタイトルセットを管理するビデオマネージャー情報(VMGI)が格納される。VIDEO_TS.VOBファイル33には、ビデオマネージャー用のメニュー(VMG Menu)を表示するためのビデオオブジェクトが格納される。VIDEO_TS.BUPファイル34には、ビデオマネージャー情報のバックアップ(VMGI backup)が記録される。ビデオマネージャーは、ファイル32、33、34から構成される。
【0093】
VTS_01_0.IFOファイル35には、第1のビデオタイトルセットの情報(VTSI#1)が格納される。VTS_01_0.VOBファイル36には、第1のビデオタイトルセットのメニュー用のビデオオブジェクト(VTS#1 Menu)が格納される。
【0094】
第1のビデオタイトルセットのビデオオブジェクト(VTS#1)は、便宜上、VTS_01_1.VOBファイル37と、VTS_01_2.VOBファイル38とに分割されて格納される。これは、ファイルのサイズを所定のサイズより小さくするためである。この例では、4GBより小さくなるように約6GBのビデオオブジェクトが2つのファイルに分割されている。
【0095】
ISO9660も併用して記録される場合は、各ファイルは、1GBより小さいことが望ましい。なお、ファイルとして分割されているが、ディスク上には隣接して記録されているため、ビデオオブジェクトが独立した位置に分割され格納されるわけではない。VTS_01_0.BUPファイル39は、第1のビデオタイトルセットの情報のバックアップ(VTSI#1 backup)が格納される。
【0096】
VTS_02_0.IFOファイル40には、第2のビデオタイトルセットの情報(VTSI#2)が格納される。VTS_02_0.VOBファイル41には、第2のビデオタイトルセットのメニュー用のビデオオブジェクト(VTS#2 Menu)が格納される。第2のビデオタイトルセットのビデオオブジェクト(VTS#2)は、VTS_02_1.VOBファイル42に格納される。この例では、このビデオオブジェクトは約2GBである。
【0097】
VTS_02_0.BUPファイル43には、第2のビデオタイトルセットの情報のバックアップ(VTSI#2 backup)が格納される。
【0098】
図6(a)〜(c)は、DVD−Videoディスク用に作成されたイメージデータと、本発明の2層DVD−R/RWディスク用に修正されたイメージデータとの関係を示す図である。図6(a)および(b)は、DVD−Videoディスク用に作成されたイメージデータの例である。図6(a)は、ビデオコンテンツのデータの配置とビデオマネージャーから指定されるアドレスのポインターを示している。図6(b)は、ビデオコンテンツのファイルの配置とファイル構造の中に格納されるファイル管理情報としてのファイルエントリ(FileEntry)からのアドレスのポインターを示している。図6(c)は、2層DVD−Rディスク用に修正されたイメージデータの例である。
【0099】
L0層用とL1層用の2つのイメージデータは、2層DVD−Videoディスクの論理アドレス空間に書き込まれるために準備されている。この論理アドレス空間の先頭からUDF(universal disk format)のボリューム構造50、UDFのファイル構造51が配置され、UDFボリューム構造により指定されるパーティション(ボリューム構造とボリューム構造の間の空間)に、ビデオコンテンツが配置される。
【0100】
図6(a)は、図5で説明した例に対応しており、ビデオマネージャー情報(VMGI)52、ビデオマネージャーのメニュー(VMG Menu)53、ビデオマネージャー情報のバックアップ(VMGI backup)54、第1のビデオタイトルセットとして、ビデオタイトルセット情報(VTSI#1)55、そのメニュー(VTS#1 Menu)56、ビデオオブジェクト(VTS#1)57、ビデオタイトルセット情報のバックアップ(VTSI#1 backup)58、第2のビデオタイトルセットとして、ビデオタイトルセット情報(VTSI#2)59、そのメニュー(VTS#2 Menu)60、ビデオオブジェクト(VTS#2)61、ビデオタイトルセット情報のバックアップ(VTSI#2 backup)62が配置される。最後に、UDFのボリューム構造が配置される。
【0101】
ここで、図6(a)〜(b)にまたがる破線64は、オリジナルのイメージデータが作成された時点で想定される層の境界を表している。このため、VTS#1の前半がL0層用のイメージデータに含まれ、その後半がL1層用のイメージデータに含まれ、各々が各層に書き込まれる。
【0102】
図7は第1のビデオタイトルセットの詳細を示す。ビデオオブジェクト(VTS#1)57は、ビデオの最小連続再生単位としてのセル(CELL#1から#4)66から69で構成される。DVD−Videoの制約として、各セルは層を跨いではならないので、層境界64においてセルが分割されている。
【0103】
再生専用のDVD−Videoプレーヤ(以下「DVDプレーヤ」)による再生時、DVDプレーヤは、ビデオマネージャー情報52の各ビデオタイトルセットへのポインターを参照して、ビデオタイトルセットへジャンプする。ビデオタイトルセットの中の各ビデオデータのビデオタイトルセット情報55または59には、ポインター情報が格納されている。DVDプレーヤは、このポインター情報を参照して、再生を実行する。DVDプレーヤは、ファイル構造を利用してビデオマネージャー情報52の先頭アドレスを取得し、それ以後は、ファイル構造にアクセスする必要は無い。アクセスに必要な情報は、ビデオコンテンツの中に格納されているからである。
【0104】
図6(b)は、各ビデオコンテンツのデータのファイルを表す。データの配置は、図6(a)と同じである。しかしながら、各ファイルの配置情報は、ファイル構造51の中のファイルエントリに登録されており、これらの情報を用いて各ファイルへアクセスすることが可能である。
【0105】
図6(c)は、2層DVD−Rに書き込むためにビデオサーバ30のシステム制御部350によって修正されたイメージデータである。2層DVD−R/RWディスクのL0層のデータ記録可能領域の終端は、破線65で示されている。
【0106】
オリジナルのL0層用のイメージデータの中のファイル構造51とVIDEO_TSファイル.IFO32との間に追加データ25が挿入されて、VIDEO_TSファイル.IFO32以降のファイルの配置が後ろにシフトされる。この結果、修正されたL0層用イメージデータのIMAGE2.DATのサイズが追加データ25の分だけ大きくなる。一方、L1層用イメージデータにおいて、ビデオコンテンツのデータの配置は変更しない。
【0107】
しかしながら、L0層用とL1層用のイメージデータIMAGE2.DATから構成される論理セクタ空間では、L1層用のイメージデータの中のビデオコンテンツのデータの配置も追加データの分だけシフトされる。更に、パーティションのサイズも追加データの分だけ伸び、ボリューム構造63の配置も追加データの分だけシフトされる。
【0108】
VIDEO_TS.IFOファイル32の先頭のアドレスは、ファイル構造を辿ることによって特定することが可能であり、CMFデータのVOBTBL.DATの情報から特定することも可能である。
【0109】
また、追加データが挿入されても、ビデオコンテンツの各データの相対的な位置関係は変わらない。したがって、図6(a)に示したビデオマネージャおよびビデオタイトルセットに格納されているアドレス情報を変更する必要は無い。
【0110】
ファイル構造51に格納されているファイルエントリの各ファイルの配置情報(アドレス)に追加データのデータサイズを加算することにより、シフトされた各ファイルの配置情報が更新される。また、ボリューム構造50に登録されているパーティションのサイズも更新し、ボリューム構造63に登録されているアドレス情報も更新する。
【0111】
図8(a)および(b)は、セクタ毎に記録されるボリューム・ファイル構造のデータの例を示す。この図は、図5、図6に示す内容に対応している。イメージデータから構成される論理セクタ空間には、LSNがセクタごとに割り当てられる。ボリューム・ファイル構造はUDFに準拠している。
【0112】
図8(a)を参照すると、LSN16から18には、開始拡張領域記述子(Beginning Extended Area Descriptor)、NSR記述子(NSR Descriptor)、終端拡張領域記述子(Terminating Extended AreaDescriptor)が格納されている。これらの情報は、ボリューム認識列(Volume Recognition Sequence)とよばれ、このディスクがUDFの親規格である、ECMA167規格に準拠していることを示している。
【0113】
LSN32から35には、主ボリューム記述子(Primary Volume Descriptor)、区画記述子(Partition Descriptor)、論理ボリューム記述子(Logical Volume Descriptor)、終端記述子(Terminating Descriptor)が格納されている。これらの情報は、ボリューム記述子列(Volume Descriptor Sequence)と呼ばれる。特に、区画(パーティション)の配置情報は、区画記述子に登録され、ファイル構造の先頭の情報が、論理ボリューム記述子に登録されている。
【0114】
LSN256には、開始ボリューム記述子ポインター(Anchor Volume Descriptor Pointer)が格納される。このポインターにはボリューム記述子列の位置情報が登録されている。このポインターは、LSN256と論理セクタ空間の終端Nとに格納される。また、各記述子には、その記述子が格納されている論理セクタ番号が登録されている。よって、記述子が移動する場合は、この番号を変更しなければならない。この例では、LSN0から256までがボリューム構造、LSN272から288までがファイル構造を示している。
【0115】
LSN272には、Rootディレクトリのファイルエントリが格納され、Rootディレクトリの位置情報を示す。なお、UDFでは、ファイル集合記述子がファイル構造の先頭情報として格納されるが、図8では割愛している。LSN273には、Rootディレクトリが格納され、このサブディレクトリであるVIDEO_TSディレクトリのファイルエントリの位置情報が格納されている。LSN274には、VIDEO_TSディレクトリのファイルエントリが格納され、VIDEO_TSディレクトリの位置情報が格納されている。LSN275には、VIDEO_TSディレクトリが格納され、このディレクトリの登録されている各ファイルのファイルエントリの位置情報が格納されている。
【0116】
LSN276から288には、VIDEO_TSディレクトリに登録されている各ファイルのファイルエントリが格納されている。ここで、ファイルエントリの中に登録されるファイルの位置情報は、図8(b)に示すように、エクステント長(Extent Length)、エクステントポジション(Extent Position:エクステントの先頭アドレスの情報)の形式で登録されている。
【0117】
図7で説明したように、2層DVD−R/RWディスクにイメージデータを格納する時に、VIDEO_TSディレクトリに登録されているファイルの位置が追加データ25の分だけ移動する。よってLSN276から288に格納される各ファイルエントリが指し示すファイルの位置情報のうち、エクステントポジションに登録されている値に追加データ25のサイズが加算されて、この値が更新される。また、パーティションのサイズが大きくなるので、LSN33の区画記述子に登録されているパーティションの配置情報が更新される。また、各記述子(Descriptor)は、自身が格納された論理セクタの番号をTagIDの中に格納することになっているため、最後に記録される開始ボリューム記述子ポインターの中の論理セクタ番号Nも更新される。
【0118】
シフトされた各ファイルの配置情報を更新するもう一つの方法は、パーティションの位置を更新することである。区画記述子に登録されるパーティションの位置情報をパーティションが追加データの分だけシフトするように修正すればよい。この場合、図示していないが、パーティション内の各ファイルはパーティションの先頭からの相対アドレスである論理ブロック番号でアドレッシングされるので、各ファイルの管理情報を更新する必要はない。
【0119】
図9は、本実施形態によるレコーダ20とビデオサーバ30との処理の手順を示す。
【0120】
図9において、左側はレコーダ20の処理を示し、右側はビデオサーバ30の処理を示す。なお図9の処理が開始される前提として、ユーザがレコーダ20を利用してビデオサーバ30への接続操作を行い、レコーダ20とビデオサーバ30との間で接続が確立されているとする。
【0121】
まず、ステップS1では、ユーザがレコーダ20を操作して、購入可能なコンテンツのタイトルリストから購入するタイトルを選択する。タイトルリストの情報は、たとえばレコーダ20とビデオサーバ30とが接続されたときにビデオサーバ30からレコーダ20に送信されてもよいし、インターネット10などを介してレコーダ20が事前に取得してもよい。
【0122】
ユーザが選択した購入するタイトルを特定する情報は、ダウンロード要求として、インターネット10を通じて、ビデオサーバ30に送られる。
【0123】
ステップS2では、コンテンツを記録するためにユーザが2層DVD−Rディスクを挿入すると、レコーダ20のドライブ(ドライブ制御部204)は、挿入されたディスクを検出し、スタートアップ処理を行ってディスクにデータを書き込み可能な状態にする。
【0124】
ステップS3では、ドライブ制御部204は、挿入された2層DVD−Rディスクのリードイン領域から情報を読み取り、L0層のデータ記録可能領域の終端アドレスXとディスクキーを取得し、これらの情報をビデオサーバ30に送る。
【0125】
ステップS4では、ビデオサーバ30は、ユーザが選択したタイトルを特定する情報を受信して、その情報に基づいて対応するイメージデータを検索する。
【0126】
ステップS5では、ビデオサーバ30は、受信した終端アドレスXに基づいて、ステップS4で検索されたデータの内、L0層イメージデータ内のビデオコンテンツのデータの配置をシフトし、L0層イメージデータを加工する。
【0127】
ステップS6では、ビデオサーバ30は、予めCPRM方式で暗号化されているデータの暗号が複号できるように、受信したディスクキーを利用して暗号解読キーの生成・発行のための所定の処理を行う。CPRM方式においては、ディスクキーから暗号解読キーが作られるので、ビデオサーバ30に蓄積されるイメージデータは、ディスク毎に暗号化しなくても良い。暗号化されたデータは複数のディスクで使用することが出来る。生成された暗号解読キーはイメージデータ内の所定の場所に格納される。
【0128】
ステップ7では、ビデオコンテンツの各ファイルのファイルエントリを修正して、シフトされたビデオコンテンツの配置情報を更新する。さらに、ボリューム構造の情報として、パーティションのサイズ、論理セクタ番号Nに格納される開始ボリューム記述子ポインターの情報も更新する。この処理により、2層DVD−Rディスクへの書き込みのために最適化されたL0層イメージデータが得られる。
【0129】
ステップS8では、ビデオサーバ30は、ステップS5およびS6で修正したイメージデータをレコーダ20に送信する。
【0130】
ステップS9では、レコーダ20はイメージデータを受信する。ステップS10では、レコーダ20は受信したイメージデータを2層ディスクに書き込む。書き込み後のデータを確認すると、このディスクはユーザに提供される。
【0131】
なお、これまでの説明では、オリジナルのイメージデータはCMFデータであるとしたが、これに限定されない。例えば、記録層毎のイメージデータを予め準備するとしたが、1つのイメージデータでも良い。層境界は、他の情報で指定することも出来るからである。例えば、CONTROL.DATの中に格納しても良いし、DVD−Videoフォーマットのデータの中からセル境界を調べるようにしても良い。
【0132】
なお、次に図1(b1)に示すように、CPRM暗号化が行われたCMFデータ24に対して、追加データ25が挿入される。この処理は、ビデオサーバ30によって行われる。なお、追加データ25として挿入される領域に、メディアキーブロックのデータを記録してもよい。メディアキーブロックとは、ディスクキーをライセンサが発行する全てのデバイスキーで暗号化した、いわば暗号化鍵束のようなデータである。
【0133】
ビデオオブジェクトデータを準備するためには、オリジナルの素材データをMPEG2等の圧縮フォーマットでエンコードして作成される。しかしながら、パッケージやダウンロードサービスで提供される場合には、高画質が要求されるためにエンコード処理に時間がかかり、リアルタイムでエンコードすることができない。よって、セルの境界は、予め想定した層境界で分割しておく必要がある。また、ビデオサーバ30に格納されるイメージデータの形式がCMF以外の形式に準拠するものであっても、上述の方法と同様に、利用される2層DVD−Rディスクに合わせてイメージデータを修正することが有用である。
【0134】
なお、2層DVD−Videoディスクと比べ、2層DVD−R/RWディスクのL0層のデータ記録可能領域のサイズは大きい。このため、2層DVD−Videoディスクを作成するためにビデオコンテンツを準備するときに、2層DVD−R/RWディスクの最大容量8.54GBをすべて必要とするデータではなく、最大容量よりもある程度(たとえば数十MB)小さいデータを用意することで、ダウンロードサービスに対して、再エンコードする必要が無くなる。
【0135】
追加データとして、DVD−Videoフォーマットに準拠した他のビデオコンテンツを記録してもよい。通常、追加データは数十MBであるので、短編のビデオコンテンツを記録することも出来る。この場合、ファイル構造にこれらのファイルに対応したファイル管理情報が追加登録される。
【0136】
なお、ファイル構造としてISO9660に準拠したファイル管理情報を追加しても良い。
【0137】
ビデオコンテンツの終端から論理セクタ空間の終端に記録されるボリューム構造までの領域は通常空いているので、この領域に、PC(personal computer)等で使用するデータを追加し、L1層のデータ記録可能領域の最大まで、有効にデータを記録するようにしても良い。
【0138】
なお、ダウンロード端末の場合には、L0層のデータ記録可能領域の終端アドレスXを所定のアドレスとなるディスクのみを使うようにしてもよい。本発明の目的は、様々な用途でダウンロードサービスが低コストで行えるようにすることであるので、この効果に変わりはない。なぜならば、ダウンロードサービスに求められるものは、店舗に設置できないほどの数のタイトルを提供できるよう準備することにある。このため、既に発売したDVD−Videoディスクを作成する時に使用されたCMFフォーマットのデータは、L0層に記録されるイメージデータが、通常、タイトルごとに異なっている。本実施形態によれば、これらのCMFフォーマットのデータについて再エンコードを行う必要が無く、ダミーデータを挿入し、暗号化方式に対応して暗号化を施せば良いので、オーサリングのコストを抑えることができる。
【0139】
(実施形態2)
実施形態1においては、L0層用CMFデータのデータサイズを調整する例を説明した。このCMFデータは、CPRM方式で暗号化されているとした。
【0140】
本実施形態においては、CMFデータがCPRM方式とは異なる暗号化方式で暗号化されたときの、データの記録方法を説明する。
【0141】
記録型ディスクに適した暗号化方式は、CPRM方式以外では、AACS(advanced access content system)やCSS(copy scrambling system)が知られている。以下では、実施形態1の処理に加え、CSS方式でデータを暗号化したときの処理を説明する。CSS方式を採用する場合には、記録対象となるディスクごとの固有の情報を用いて暗号化が行われる。
【0142】
ディスクごとの固有の情報として、リードイン領域(Lead-in area)に記録されたメディアの識別情報(ディスクキー)が利用される。
【0143】
なお、既存のDVD−Rにはディスクキーは設けられていない。したがって、DVD−Rを利用する場合には固有のディスクキーが設定された新たな種類のディスクが必要となる、もしくは、予め有効なディスクキーが記録された新たな種類のディスクが必要となる。本実施の形態では、CSS暗号化の一例として、使用されるディスクキーは予めリードイン領域に記録された状態でディスクが供給されることを前提として説明する。
【0144】
以下、図10(a)〜(e)を参照しながら説明する。なお、本実施形態による処理は、実施形態1において説明したレコーダ20およびビデオサーバ30によって実行することが可能である。以下では、同じレコーダ20およびビデオサーバ30を利用して本実施形態による処理を説明する。
【0145】
図10(a)、(b1)、(c)〜(e)は、イメージデータを2層光ディスク29への書き込むための処理の概要を示す。
【0146】
まず図10(c)は、ディスクキー91が格納されているディスク29上の位置を示している。ディスクキー91は、ディスク29の内周位置に設けられたリードイン領域に格納されている。
【0147】
図10(a)には、L0層に書き込まれることを想定して準備されたイメージデータ21が示されている。なお、L1層に書き込まれるべきイメージデータは図1の(b2)と同様であるため、その記載は省略する。
【0148】
図10(a)に示されるように、L0層用DVD−Videoデータ23は、複数のビデオオブジェクト(VOB)を含んでおり、各VOBは複数のVOBユニット(VOBU)を含んでいる。VOBU80は、主として、映像の再生時間にして0.4秒から1秒までの範囲内の映像データを含むデータ単位である。
【0149】
VOBU80は、MPEGプログラムストリームの下位階層であるパックが複数集まって構成されている。パックには複数の種類が存在する。たとえば、“V”で示されるビデオパック、および”A”で示されるオーディオパックである。各パックのデータサイズ(パック長)は一定(2キロバイト(2048バイト))である。
【0150】
たとえばビデオパック(V)81は、パックヘッダ82およびビデオデータ83を格納している。なお、このビデオデータは、暗号化されていなくてもよいし、暗号化されていてもよい。
【0151】
レコーダ20は図10(c)に示すディスクキー91をビデオサーバ30に送信する。
【0152】
図10(d)は、ビデオパックの一部がディスクキー91によって暗号化されたCMFデータ84を示す。ビデオサーバ30は、ディスクキー91を利用して、ビデオデータ83を暗号化する。暗号解読キーは、コンテンツ内(たとえばVIDEO_TS.IFOファイル内)に格納され、コンテンツの再生時に、レコーダ20によって読み出される。
【0153】
高いセキュリティを実現するためには、すべてのビデオデータを暗号化することが好ましいが、そうすると復号化処理に時間を要するという弊害が生じる。したがって、全体の50%〜60%程度のビデオパックに格納されたビデオデータのみを暗号化すればよい。
CMFデータ84のL0層用DVD−Videoデータ85では、暗号化されていないビデオパック86と、暗号化されたビデオパック87とが混在している。
【0154】
暗号化されたビデオパック87では、パックヘッダ88、および、ディスクキー91によって暗号化されたビデオデータ89が含まれている。ここで留意すべきは、ビデオパック87のパックヘッダ88内にはスクランブル情報が設けられていることにある。スクランブル情報とは、そのパックのビデオデータが暗号化されているか否かを示しており、たとえば「1」のときはそのビデオデータが暗号化されていることを示し、「0」のときはそのビデオデータが暗号化されていないことを示す。
【0155】
なお、仮に、当初のビデオデータがCPRMによって暗号化されていたとしても、いったん復号し、その後ディスクキー91を利用してCSSによって暗号化する処理を行うことは可能である。このような暗号方式を変更する処理は、たとえ再生時間が2時間ほどの比較的データサイズが大きいビデオデータであっても、リアルタイムに処理を行うことが出来るためである。よって、ユーザが選択したタイトルのビデオデータの送信時に処理を行う上で支障にはならない。
【0156】
次に図10(b1)に示すように、CMFデータ84に対して、追加データ25が挿入された後、CSS暗号化が行われる。この処理は、ビデオサーバ30によって行われる。
【0157】
一方、追加データ25が挿入されてデータサイズが調整されたCMFデータ84は、ディスク29のデータ記録可能領域12に過不足無く書き込まれる。この処理はレコーダ20によって行われる。これらの処理は実施形態1で説明したとおりである。
【0158】
図10(e)は、暗号化されたビデオパックが書き込まれたセクタ部分を詳細に示している。ディスク29はセクタ構造を有しており、セクタヘッダ93とセクタ94との組からなる記録単位92が存在する。各セクタのセクタサイズはビデオパックのデータサイズと同じ2キロバイトである。
【0159】
図10(e)に示すセクタ94には、ビデオパック87がそのまま格納されている。よって、セクタ94にはビデオパック87に格納されていたスクランブル情報90や暗号化ビデオデータ89が格納されている。
【0160】
本実施形態による記録処理の特徴のひとつは、追加データ25が挿入されてL0層に記録するイメージデータのデータサイズが調整された後、セクタヘッダ93にもスクランブル情報95を書き込むことにある。スクランブル情報95はスクランブル情報90のコピーであり、その内容は互いに同一である。
【0161】
セクタヘッダ93にスクランブル情報95を格納する理由は、ドライブによる読み出しを制限するためである。データを読み出すドライブは、そのデータが暗号化されているか否かを判断することはできない。一方、暗号化されているとしても、コンテンツのデータが無条件に読み出されることは好ましくない。そこでDVD規格に対応する既存のドライブは、セクタヘッダ93内のスクランブル情報が「1」を示しているときにはその後のセクタを読み出さず、スクランブル情報が「0」を示しているときのみ、その後のセクタを読み出すように設計されている。
【0162】
本実施形態においては、追加データが挿入されて記録するイメージデータのサイズが調整された後で、そのスクランブル情報を、暗号化されているか否かを示すスクランブル情報と同一の値に設定することにより、ドライブによる読み出しを制限することが可能になる。図10(a)または(d)の状態で、セクタヘッダの情報を作成すると、図示していないが、セクタヘッダに記録される物理セクタの番号が、追加データが挿入された後で、データの記録位置が変わるために更新が必要になる。このため、スクランブル情報の設定は追加データが挿入された後で行うのが効率的である。
【0163】
ドライブは、セクタヘッダ内のスクランブル情報を読み出すだけで、続くセクタ内のデータを読み出してよいか否かを判断できる。これにより、ドライブは、不正規なソフトウェアに対して暗号化されたデータを読み出さないので、不正規なソフトウェアでのコンテンツの再生を制限することが出来る。
【0164】
図11は、本実施形態によるレコーダ20とビデオサーバ30との処理の手順を示す。図11による処理が実施形態1による図9の処理と異なる点は、図9のステップS6およびS10に代えて、それぞれステップS11、S12の処理が行われることにある。以下、相違点のみを説明する。
【0165】
ステップS2においてレコーダ20に、2層DVD−Rディスクが挿入されると、レコーダ20は2層DVD−RディスクのCSS暗号化で用いられるディスクキーを読み出す。
【0166】
ステップS3において、L0層のデータ記録領域の終端アドレスXと共に、読み出したディスクキーをビデオサーバ30に送信する。
【0167】
その後のステップS5において、ビデオサーバ30は、受信した終端アドレスXに基づいて、L0層イメージデータ内の暗号化されたビデオコンテンツのデータの配置をシフトし、L0層イメージデータを加工する。
【0168】
ステップS11において、ビデオサーバ30は、受け取ったディスクキーを利用して、ユーザが要求したタイトルのビデオコンテンツのデータをCSS暗号化し、パックヘッダにスクランブル情報を設定する。ここで、CSS暗号化においては、予めディスクに記録されたディスクキーで暗号の解読が行われるので、ビデオサーバ30において、ディスクキーを利用して、CSSの暗号化が必要になる。
【0169】
一方、レコーダ20は、ステップS12において、レコーダ20は受信したイメージデータを2層DVD−Rディスクに書き込みながら、パックヘッダのスクランブル情報をコピーして、セクタヘッダに書き込む。
【0170】
以上の処理によって作成された2層DVD−Rディスクによれば、ドライブによる暗号化データの読み出しを制限することが可能になる。
【0171】
なお、2層ディスクを例に説明したが、本発明は3層以上の多層ディスクであっても適用可能である。本実施の形態1および2で説明した第1層と第2層が多層ディスクにも含まれるからである。
【0172】
本発明の好ましい実施形態により本発明を例示して説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきである。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0173】
本発明は、複数の記録層を有するディスクにビデオコンテンツをダウンロード記録するサービスにおいて、記録型2層ディスクに対して確実かつ効率よくイメージデータを変更することが可能な、データ処理装置、および、データ記録装置を提供するものとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0174】
【図1】(a)、(b1)、(b2)および(c)は、イメージデータを2層光ディスク19への書き込むための、イメージデータのデータサイズ調整方法の概要を示す図である。
【図2】ダウンロードサービスに利用される機器の接続構成の例を示す図である。
【図3】実施形態1によるレコーダ20のハードウェアの構成を示す図である。
【図4】実施形態1によるビデオサーバ30のハードウェアの構成を示す図である。
【図5】ディスクに記録するビデオコンテンツのディレクトリ・ファイルの一例を示す図である。
【図6】(a)〜(c)は、DVD−Videoディスク用に作成されたイメージデータと、本発明の2層DVD−R/RWディスク用に修正されたイメージデータとの関係を示す図である。
【図7】第1のビデオタイトルセットの詳細を示す図である。
【図8】(a)および(b)は、セクタ毎に記録されるボリューム・ファイル構造のデータの例を示す図である。
【図9】実施形態1によるレコーダ20とビデオサーバ30との処理の手順を示す図である。
【図10】(a)、(b1)、(c)〜(e)は、イメージデータを2層光ディスク19への書き込むための処理の概要を示す図である。
【図11】実施形態2によるレコーダ20とビデオサーバ30との処理の手順を示す図である。
【図12】CMFに準拠したデータのデータ構造を示す図である。
【図13】2層DVD−Videoディスクの層構造と、当該ディスクにイメージデータが記録される際のデータ配置を示す図である。
【図14】2層DVD−Rディスクの物理構造を示す図である。
【符号の説明】
【0175】
10 インターネット
11 リードイン領域
12 L0のデータ記録可能領域
13 L0のミドルエリア
14 L1のミドルエリア
15 L1のデータ記録可能領域
16 リードアウト領域
21、24 L0用のイメージデータ
26 L1用のイメージデータ
20 HDD内蔵光ディスクレコーダ
30 ビデオサーバ
204、304 ドライブ制御部
205a 2層光ディスク
205a ハードディスク
214、314 ネットワーク制御部
250、350 システム制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1記録容量を有する第1記録層および第2記録容量を有する第2記録層を備えた記録媒体に対し、前記第1記録層および前記第2記録層にわたって書き込まれるデータを生成するデータ処理装置であって、
書き込み対象のデータを第1データおよび第2データに分割して保持するデータ格納部であって、前記第1データのデータサイズは前記第1記録容量よりも小さく、前記第2データのデータサイズは前記第2記録容量よりも小さいデータ格納部と、
前記第1記録層のデータ記録可能領域の最終アドレスを取得する通信部と、
前記第1データの先頭が前記第1記録層のデータ記録可能領域の先頭アドレスから書き込まれ、かつ、取得した前記最終アドレスに前記第1データの終端が書き込まれるように前記第1データのデータサイズを調整する制御部と、
データサイズが調整された前記第1データ、および、前記第2データを出力する出力部と
を備えた、データ処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記最終アドレスに基づいてデータを追加することにより、前記第1データのデータサイズを調整する、請求項1に記載のデータ処理装置。
【請求項3】
前記第1記録層のデータ記録可能領域の先頭アドレスは予め定められており、
前記制御部は、前記第1記録容量を有する前記第1記録層のデータ記録可能領域であって、前記先頭アドレスおよび前記最終アドレスに基づいて特定されるデータ記録可能領域の領域サイズと、保持している前記第1データのデータサイズとの差に等しいデータサイズを有するデータを追加する、請求項2に記載のデータ処理装置。
【請求項4】
前記第1データは、コンテンツのデータ、および、前記コンテンツのデータの配置を管理する管理情報を含んでおり、
前記データの追加に起因して前記コンテンツのデータの配置が変動したとき、前記制御部は前記管理情報を更新する、請求項2に記載のデータ処理装置。
【請求項5】
前記記録媒体は、固有の識別情報を保持しており、
前記通信部は前記識別情報を取得し、
前記制御部は、前記識別情報を利用して前記コンテンツのデータを暗号化するとともに、暗号化したことを示すスクランブル情報を前記第1データの一部として生成する、請求項4に記載のデータ処理装置。
【請求項6】
第1記録層および第2記録層を備えた記録媒体に対し、サーバから受け取ったデータを、前記第1記録層および前記第2記録層にわたって書き込むデータ記録装置であって、
前記第1記録層のデータ記録可能領域の最終アドレスを前記サーバに送信し、前記最終アドレスに基づいてデータサイズが調整された第1データ、および、第2データを受信する通信制御部と、
データサイズが調整された前記第1データを前記第1記録層に書き込み、前記第2データを前記第2記録層に書き込むドライブ制御部と
を備えた、データ記録装置。
【請求項7】
前記記録媒体は、固有の識別情報を保持しており、
前記通信制御部は、前記識別情報を前記サーバに送信し、その後、前記識別情報によって暗号化され、かつデータサイズが調整された前記第1データを受信する、請求項6に記載のデータ記録装置。
【請求項8】
前記記録媒体には、記録単位が定められており、
前記第1データには、暗号化されたコンテンツのデータ、前記コンテンツのデータが暗号化されていることを示すスクランブル情報、および、前記コンテンツのデータの配置を管理する管理情報が含まれており、
前記ドライブ制御部は、前記暗号化されたコンテンツのデータを、前記記録単位ごとに分割して書き込み、かつ、前記記録単位のヘッダに前記スクランブル情報を書き込む、請求項6に記載のデータ記録装置。
【請求項9】
前記ドライブ制御部が、前記第1記録層のデータ記録可能領域の先頭アドレスから前記第1データを書き込むことにより、前記第1データの終端が、前記最終アドレスに書き込まれる、請求項6に記載のデータ記録装置。
【請求項10】
請求項9に記載のデータ記録装置によって記録された記録媒体から、データを読み出す再生装置であって、
読み出しの開始を指示する制御部と、
前記第1記録層のデータ記録可能領域の先頭アドレスから前記第1データを読み出し、前記第2記録層のデータ記録可能領域の先頭アドレスから前記第2データを読み出すドライブ制御部と
を備え、前記ドライブ制御部は、前記第1データの終端が前記最終アドレスに書き込まれていることにより、前記第2記録層のデータ記録可能領域の先頭アドレスとして、前記最終アドレスの次のアドレスから前記第2データを読み出す、データ再生装置。
【請求項11】
第1記録容量のデータを書き込み可能な第1記録層および第2記録容量のデータを書き込み可能な第2記録層にわたって、データが書き込まれた記録媒体であって、
前記第1記録層においては、データ記録可能領域の先頭アドレスから第1データが書き込まれ、最終アドレスに前記第1データの終端が書き込まれており、前記第1データは、前記第1データのデータ長を調整するためのデータを含んでおり、
前記第2記録層においては、データ記録可能領域の先頭アドレスから第2データが書き込まれている、記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−103064(P2008−103064A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−241252(P2007−241252)
【出願日】平成19年9月18日(2007.9.18)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】