説明

トコフェロールの使用

本発明は、環状シロキサンの開環重合における共触媒としての、トコフェロールの使用に関する。更に、本発明は、ヒドリドを含む環状シロキサンが、モノマーを収得するための第一の触媒の存在下で、一般式(I)HC=CH−(CHR) −O−(CHRCR) 、又は(II)HC=CH−(CHR) −R(式中、nは、0〜4の整数であり、mは、0〜5の整数であり、R、R、R、R、及びRは、それぞれ独立して、水素又はC〜Cのアルキルであり、Rは、カルボニル基を含む飽和環状炭化水素である)を有する、炭素−炭素二重結合を含む親水性分子と反応し、そして第二の触媒及び共触媒としてのトコフェロールの存在下で、前記モノマーを重合する、親水性ポリシロキサンポリマーを製造する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トコフェロールの使用、及び親水性ポリシロキサンを製造する方法に関する。また、本発明は、親水性ポリシロキサン、親水性シロキサンエラストマーを製造する方法、及び親水性シロキサンエラストマーに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリシロキサンは、例えば界面活性剤、被覆剤、分散剤、分散安定化剤、放出剤、食品添加物、シーリング剤、管及び医療用軟膏等の、産業における多くの用途に適用される。また、ポリシロキサンは、例えば既知の丸薬の被覆剤として、及び埋め込み可能な、膣内の、又は子宮内の装置としての両方における、薬物輸送における応用等の、医療産業における多くの用途にも適用される。最も一般的に使用されるポリシロキサンはポリジメチルシロキサン(PDMS)であり、これは疎水性が高く、安定で、そして熱耐性の材料である。PDMSは、薬物の放出速度を制御する膜としての使用に特に適している。しかしながら、PDMSは疎水性であるため、薬物が親水性であるか疎水性であるかを問わず、全ての薬物に使用され得ない。
【0003】
しかしながら、ホスファゼン塩基触媒を介して、環状シロキサンの開環重合によりポリシロキサンを生産する場合、大量の触媒が必要となり、それにより、保管中のポリマーの架橋を引き起こす。
【0004】
α−トコフェロール等の、立体障害のフェノール及びそれらの誘導体は、重合反応において、その反応を遅らせ、並びにゲル及びオリゴマーの形成を防止するために使用されている。また、トコフェロールは、その抗酸化効果により、ポリマーの安定化剤としても使用されている。
【0005】
しかしながら、環状シロキサンの開環重合の過程で使用される触媒の量を減少させるために適した共触媒を提供する必要性は、なおも存在する。また、保管の間に収得されるそのポリマーの架橋の(完全に回避できないときは)強力な減少が可能な成分を提供する必要性も存在する。
【0006】
医学的応用に関して、薬物の放出速度は、伝統的に、例えば表面領域の修飾、膜の厚み、速度を制御する薬物の量又は充填剤の量等の、薬物放出系のパラメーターを変化させることにより制御されてきた。しかしながら、放出速度の顕著な変化が必要な場合、又は輸送装置の外形(dimension)が変更され得ない場合、ポリマーの構成が変更される必要がある。
【0007】
ポリジメチルシロキサンの分散特性は、ポリマーに、放出速度を低下又は増大させる置換基を付加することにより変化し得ることが知られている。
【0008】
PDMSへのポリエチレンオキシド(PEO)基の修飾は、薬物の放出速度を増大させ得る。Journal of Controlled Release 10 (1989) 251-260においてUllman らは、ポリエチレンオキシド及びPDMSを含むブロック(block)コポリマーで作られた膜、並びにこれらの膜を通る異なるステロイドの放出を公開する。この公開によると、PEO基の量が増大すると、親水性ステロイドの放出は増大し、親油性ステロイドの放出は低下する。その研究において、前記PEOは、シロキサン基のケイ素原子と、尿素結合を介して結合している。
【0009】
フィンランド特許第107339号は、少なくとも1つのエラストマー及び場合によっては非架橋ポリマーを含むシロキサンを基礎とする、エラストマー組成物による薬物の放出速度の制御、並びに前記エラストマー組成物の製造方法を開示する。前記組成物のエラストマー又はポリマーは、アルコキシ末端グラフト若しくはポリシロキサン単位のブロック、又はこれらの混合物として、ポリアルキレンオキシド基を含む前記アルコキシ末端グラフト又はブロックは、シロキサン単位と、ケイ素−炭素結合を介して結合している。
【0010】
Hu らによる"Synthesis and drug release property of polysiloxane containing pendant long alkyl ether group", Gaofenzi Xuebao: (1) 62-67, 1997 Kexue (CA 126:200090)の公開は、重合段階後にエーテル基がグラフトされた、シリコーンを基礎とするポリマーを示し、そして、ヒドロシル化触媒(Pt)をそのポリマー中に残している。前記ポリマーは、シリコーンゴムと混合されたときに有用である。前記公開は、単純なエーテル基のみを開示する。開示されたようにグラフトされたポリマーは、薬物の放出速度を減少させる。
【0011】
US6,346,553は、水−油乳濁物及びシリコーン−水乳濁物の両方において界面活性剤としての使用に適する、アルキルメチルシロキサン−ポリアルキレンオキシド−ジメチルシロキサン−コポリマー、並びにそのコポリマーを製造する方法を開示する。前記コポリマーは、直鎖又は分岐鎖オレフィンと環状シロキサンとの間のヒドロシル化反応により、白金触媒を使用して、アルキル化環状シロキサンを蒸留して、酸性触媒の存在下で前記テトラメチルジシロキサン及び場合によってはもう一つの環状シロキサンの混合物を重合して、生産され得る。収得されたポリマーは、最終的に末端が不飽和のポリアルキレンオキシドポリマーでヒドロシル化される。
【0012】
US8,294,634は、ジメチルシロキサン、アルキル置換環状シロキサン、及びオキシアルキレン基を含む環状シロキサンの混合物を、溶媒の非存在下で加熱することにより、シロキサン組成物を製造する方法を示す。重合触媒は、例えば、水酸化、アルコキシド、若しくはシラノレート(silanolate)アルカリ金属、ルイス酸、酸性ホスファゼン、又は塩基性ホスファゼンであり得る。前記組成物は、白金の残留量は僅かであり、又は白金を全く含まない。
【0013】
US3,427,271は、ジメチルシロキサン単位、メチル−オキシアルキルシロキサン単位、並びにメチル基及び高級アルキル基で置換されたシロキサン単位から形成される、有機ポリシロキサンを開示する。前記重合反応は、白金触媒を使用する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的及び概要
上記を考慮して、触媒の量を減少させるために適した共触媒を提供することが、本発明の目的である。また、保管中の前記ポリマーの架橋を減少させることも、一つの目的である。
【0015】
本発明の目的の一つは、薬剤の放出速度が容易に制御される、白金を含まないエラストマーを提供することである。
【0016】
なおもう一つの目的は、十分な機械的特性を有するエラストマーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
従って、本発明は、環状シロキサンの開環重合において、共触媒としてトコフェロールを使用することに関する。
【0018】
本発明は更に、ヒドリドを含む環状シロキサンが、モノマーを収得するための第一の触媒の存在下で、一般式(I)又は(II):
(I) HC=CH−(CHR)−O−(CHRCR)
(II) HC=CH−(CHR)−R
(式中、
nは、0〜4の整数であり、
mは、0〜5の整数であり、
R、R、R、R、及びRは、それぞれ独立して、水素又はC〜Cのアルキルであり、
は、カルボニル基を含む飽和環状炭化水素である)
を有する、炭素−炭素二重結合を含む親水性分子と反応し、そして第二の触媒及び共触媒としてのトコフェロールの存在下で、前記モノマーを重合する、親水性ポリシロキサンポリマーを製造する方法に関する。
【0019】
また、本発明は、式(III):
(III) EB−[B−B−B]−EB
(式中、
EBは、エンドブロッカー基(end blocker group)であり、
、B、及びBは、それぞれ独立して、1つの親水基及び1つのメチル基を含む−Si−O−鎖、2つのメチル基を含む−Si−O−鎖、並びに1つのビニル基及び1つのメチル基を含む−Si−O−鎖からなる群から選択され、前記B、B、及びBが、ポリシロキサンの鎖の中に無作為に分布するものであり、そして、
kは、15〜50,000の整数である)
を有し、本発明に係る方法により収得可能な、親水性ポリシロキサンを提供する。
【0020】
なおも更に本発明は、架橋触媒の存在下で、本発明に係るポリシロキサンを架橋することを含む、親水性シロキサンエラストマーを製造する方法、及び前記方法により収得可能な親水性シロキサンエラストマーに関する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一の態様に係る、モノマーの合成の例を示す。
【図2】本発明の一の態様に係る、アニオン性開環重合の例を示す。
【図3】薬物放出を測定するための配置を示す。
【図4】本発明に係るエラストマーについて測定された、幾つかの薬物透過性の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
発明の詳細な説明
本発明は、環状シロキサンの開環重合における、トコフェロールの共触媒としての使用に関する。
【0023】
後に実験の項で示されるように、環状シロキサンの開環重合において、トコフェロールを共触媒として使用することにより、そのような反応に必要な触媒の量は減少する。更に、開環重合における共触媒としてトコフェロールが使用された場合、保管中の前記ポリマーの架橋は、著しく減少する。
【0024】
本発明の一の態様において、前記トコフェロールは、D’L−アルファ−トコフェロール、RRR−アルファ−トコフェロール、酢酸D’L−アルファ−トコフェロール、及び酢酸RRR−アルファ−トコフェロールからなる群から選択される。また、これらの化合物の混合物も、当然に使用され得る。
【0025】
もう一つの態様において、前記環状シロキサンは、ヘプタメチルシクロテトラシロキサン及びテトラメチルシクロテトラシロキサンからなる群から選択される。
【0026】
更に本発明は、ヒドリドを含む環状シロキサンが、モノマーを収得するための第一の触媒の存在下で、一般式(I)又は(II):
(I) HC=CH−(CHR)−O−(CHRCR)
(II) HC=CH−(CHR)−R
(式中、
nは、0〜4の整数であり、
mは、0〜5の整数であり、
R、R、R、R、及びRは、それぞれ独立して、水素又はC〜Cのアルキルであり、
は、カルボニル基を含む飽和環状炭化水素である)
を有する、炭素−炭素二重結合を含む親水性分子と反応し、そして第二の触媒及び共触媒としてのトコフェロールの存在下で、前記モノマーを重合する、親水性ポリシロキサンポリマーを製造する方法に関する。
【0027】
また、上に列挙された細目及び態様は、本発明に係る方法にも援用される。
【0028】
従って、本発明は、重合及びそのポリマーの保管中に、いかなる望ましくない架橋をも生じさせないポリジメチルシロキサンポリマーを提供する、親水性ポリシロキサンを製造する方法に関する。これらのポリマーは、架橋され、PDMSエラストマーよりも親水性のエラストマーを形成し得る。そのようなエラストマーは、ドラッグデリバリーシステムに基づき、ポリマーからの薬物の放出速度を容易に、及び正確に制御することを可能とする。
【0029】
本発明の一の態様において、親水性部分を含むモノマーは、重合の前に精製される。これにより、ヒドロシル化反応から残留した触媒を基本的に含まない、親水性シリコーンエラストマーの製造が可能となる。この第一段階において白金が使用されているとき、この態様により得られたエラストマーは、架橋段階で白金が使用されていない限り、基本的に白金を含まない。
【0030】
収得されたモノマーは、減圧下の蒸留等の、任意の既知の方法で精製され得る。この精製の目的は、未反応の不飽和開始材料、それらから形成されたアルキル化産物の除去、及び、特に残留白金等の、触媒の残留物の除去である。目下、蒸留は、最終的なエラストマーから白金触媒を完全に排除する最も単純な方法であり、そして、それゆえ、本発明において好ましい方法である。
【0031】
一の態様において、ヒドリドを含む環状シロキサンは、ヘプタメチルシクロテトラシロキサン及びテトラメチルシクロテトラシロキサンからなる群から選択される。また、他の更なる環状シロキサンは、オクタメチルシクロテトラシロキサン等の共重合においても使用され得る。
【0032】
もう一つの態様において、親水性分子は、アリルエチルエーテル、アリルメチルエーテル、アリルプロピルエーテル、アリルブチルエーテル、アリルペンチルエーテル、ブチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、テルト−ペンチルビニルエーテル、及び酢酸アリルからなる群から選択される。
【0033】
ヒドロシル化反応における反応温度は、室温から250〜300℃まで様々であり、好ましくは20〜170℃であり、そして、より好ましくは50〜170℃であり、なおもより好ましくは50〜95℃である。特に、反応混合物中に水が存在することにより、又は希釈物中でその触媒がスラリーになっていることにより、触媒の活性が低下しているときは、その反応物が100℃以上に加熱されることが必要であり得る。
【0034】
適切な触媒は、例えば、白金を基礎とする、又は白金の複合体を基礎とする、US3,220,972、US3,715,334、US3,775,452、US3,814,730、US4,421,903、及びUS4,288,345等に記載される、ヒドロシル化触媒である。幾つかの適切な触媒は、塩化白金酸化物、白金−アセチルアセトネート、白金ジビニルジシロキサン複合体、ヘキサメチル二白金(hexamethyldiplatinum)、及びエチレン、プロピレン、有機ビニルシロキサン、又はスチレン等の、二重結合を有する異なる化合物とハロゲン化プラチナとの複合体である。また、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、及びイリジウム、又はそれらの複合体も使用され得る。
【0035】
一の好ましい態様において、第一の触媒は、白金触媒である。重合の前に前記モノマーが好ましく精製されているとき、収得されるポリマー及び更に収得されるエラストマーは、架橋段階で白金が使用されない限り、白金を含まない。
【0036】
前記重合は、均一重合、又は重合段階でコモノマーが存在する場合、共重合であり得る。前記コモノマーは、例えば、1,3,5,7−テトラビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン等の、ビニルを含む環状又は直鎖状低分子量シロキサンからなる群から選択される、ビニルコモノマーであり得る。従って、前記環状シロキサンは、異なる環状及び/又は直鎖状シロキサンと共重合され得る。
【0037】
前記開環重合は、典型的には、酸性又は塩基性触媒のいずれかにより触媒される。適切な塩基性触媒の例は、水酸化アルカリ金属及びそれらとアルコールとの複合体、アルカリ金属アルコキシド、アルカリ金属シラノレート、並びに異なる リン酸硝酸ハロゲン化物(phosphorous nitric halide)である。好ましい触媒は、カリウムシラノレート、及びホスファゼン塩基である。適切な酸性触媒の例は、硫酸等の強酸、酢酸若しくはトリフルオロメタンスルホン酸、三フッ化ホウ素若しくは塩化アルミニウム等のルイス酸、又は強力な酸性のイオン交換樹脂である。
【0038】
例えば、重合は、溶媒中で、溶媒を用いず、又は乳濁物として実行され得る。ある場合、適切な溶媒は、反応率を制御するために、及び所定の程度の重合を達成するために使用され得る。溶媒が使用されるとき、幾つかの適切な溶媒は、ヘキサン及びヘプタン等の液体炭化水素、ポリジオルガノシロキサン等のシリコーン、トリアルキルシラノール等のシラノール、並びにある場合には、1〜8個の炭素原子を含むアルコール等のアルコールである。ある場合には、反応物中に水が存在することにより、その反応物の制御がより容易になる。
【0039】
なおももう一つの態様において、エンドブロッカー(end−blocker)は、重合段階中に存在する。前述のエンドブロッカーは、1,1,3,3−テトラビニルジメチシロキサン(dimethysiloxane)等の直鎖状低分子量シロキサンからなる群から選択され得る。前記エンドブロッカーは、前記ポリマーのモル質量を制御するために、又はポリマー鎖の末端へ官能基を導入するために使用され得る。
【0040】
本発明の一の態様によると、前記第二の触媒は、ホスファゼン塩基、アンモニウムシラノレート、カリウムシラノレート、リチウムシラノレート、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0041】
ホスファゼン塩基は、重合反応における有効な触媒であり、そして使用される触媒の量はかなり少なくなり得て、例えば、シロキサンの量に対して1〜2000ppm、好ましくは2〜2000ppmm、そしてより好ましくは2〜500ppmである。また、実際に、触媒の量は、反応率、及びポリマーの所望されるモル質量にも依存する。触媒の量は、例えば、2〜200ppmであり得る。
【0042】
任意の適切なホスファゼン塩基は、特に液体の状態のもの、または液体に溶解され得るものが、触媒として使用され得る。市販のホスファゼン塩基の幾つかの例は、1−テルト−ブチル−4,4,4−トリス(ジメチルアミノ)−2,2−ビス[トリス(ジメチルアミノ)−ホスフォラニリデンアミノ]−2Δ,4Δ−カテナジ(ホスファゼン)、1−テルト−ブチル2,2,4,4,4−ペンタキス(ジメチルアミノ)−2Δ,4Δ−カテナジ(ホスファゼン)、及び1−テルト−オクチル−4,4,4−トリス(ジメチルアミノ)2,2−ビス[トリス(ジメチルアミノ)−ホスフォラミリデンアミノ] −2Δ,4Δ−カテナジ(ホスファゼン)である。
【0043】
重合段階における反応時間は、30分〜数時間と様々であり得て、触媒の活性及び所望の生産物に依存する。重合温度は、室温から250℃と様々であり得て、好ましくは80〜200℃、そして好ましくは120〜150℃である。
【0044】
前記重合反応は、一定間隔でサンプルを採取し、それらを、ゲル平衡クロマトグラフィーによるモル質量の追跡等の、任意的な既知の方法で解析することにより、制御され得る。前記重合反応は、触媒を不活性化する適切な中和剤の添加により、終了され得る。典型的には、前記反応は、窒素等の不活性空気下で実施される。
【0045】
また、本発明は、
式(III):
(III) EB−[B−B−B]−EB
(式中、
EBは、エンドブロッカー基であり、
、B、及びBは、1つの親水基及び1つのメチル基を含む−Si−O−鎖、2つのメチル基を含む−Si−O−鎖、並びに1つのビニル基及び1つのメチル基を含む−Si−O−鎖からなる群から独立して選択され、当該B、B、及びBが、ポリシロキサンの鎖の中に無作為に分布するものであり、そして、
kは、15〜50,000の整数である)
を有する親水性ポリシロキサンに関する。
【0046】
この親水性ポリシロキサンは、本発明に係る方法により収得され得る。
【0047】
本発明の一の態様において、親水基は、プロピルエチルエーテル、エチルブチルエーテル、プロピルシクロヘキサノン、プロピルメチルエーテル、ジプロピルエーテル、プロピルブチルエーテル、プロピルペンチルエーテル、エチルプロピルエーテル、エチル−テルト−ペンチルエーテル、及び酢酸プロピルからなる群から選択される。
【0048】
本発明のもう一つの態様によると、エンドブロッカー基は、直鎖状低分子量シロキサンからなる群から選択される。
【0049】
本発明の一の態様によると、ポリマー材料は、硬化、即ち、架橋触媒による架橋が可能である。ある態様によると、前記架橋触媒はペルオキシドである。エラストマーが白金を含まない必要がない場合は、白金を基礎とする触媒が使用され得る。また、上に列挙した細目及び態様は、本発明に係るこの親水性ポリシロキサンにも援用され得る。
【0050】
なおも更に、本発明は、架橋触媒の存在下で、本発明に係るポリシロキサンの架橋を含む、親水性シロキサンエラストマーを製造する方法、及び前述の方法により収得可能な親水性シロキサンエラストマーに関する。一の態様によると、前記架橋触媒は、例えば、ペルオキシド架橋触媒、又は白金架橋触媒であり得る。白金を含まないエラストマーが必要であるときは、ペルオキシド架橋触媒が採用されることが好ましい。
【0051】
なおももう一の側面によると、本発明は、上記方法により収得可能な親水性シロキサンエラストマーに関する。
【0052】
また、上に列挙された細目及び態様は、この方法及び本発明に係るエラストマーにも援用される。
【0053】
前記エラストマーは、典型的には、ペルオキシド、放射線、ヒドロシル化、又は濃縮等の、任意的な既知の触媒及び/又は開始要素を使用する架橋により製造される。例えば、ジ−テルト−ブチルペルオキシド及び2,5−ビス−(テルト−ブチルペルオキシド)−2,5−ジメチルヘキサン若しくはベンゾイルペルオキシド、テルト−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、並びに/又は2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド等の、有機ビニルに特異的な、又は非特異的なペルオキシドが使用され得る。触媒の量は様々であり、例えば、100部のシロキサンの重量あたり0.1〜5部となる。
【0054】
本明細書中で使用されるとき、シロキサンを基礎とするエラストマーは、二基置換のシロキサン単位で作られたエラストマーを表し得る。ここで、その置換基は、置換された、又は置換されていない低級アルキル、好ましくはC〜Cアルキル、又はフェニル基であり得る。ケイ素原子に結合した一定量の置換基は、ケイ素−炭素結合によりケイ素原子に結合した、置換されたオキシアルキル基である。
【0055】
本文中のC〜Cアルキルは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、及びヘキシル、並びにそれらの全ての異性体を意味する。
【0056】
以下において、置換されたオキシアルキル基という用語が使用されるとき、それは、ケイ素−炭素結合によりケイ素原子に結合した、置換されたオキシアルキル基を意味する。
【0057】
一の態様によると、エラストマー組成物は、1つの単独のシロキサンを基礎とするポリマーから形成され得る。もう一の態様において、エラストマー組成物は、2つの相互貫入エラストマーから形成され得る。そして、第一のエラストマーは、上記のような置換されたオキシアルキル基を含み得て、及び、第二のエラストマーは、PDMS等のシロキサンを基礎とするエラストマーであり得る。また、第二のエラストマーは、上記のような置換されたオキシアルキル基をも含み得る。
【0058】
本発明に係るエラストマー組成物は、薬物の放出速度を制御するための、膜(若しくはフィルム)又はマトリックスとして使用され得る。薬物とは、哺乳類に投与され得る任意的な種類の医薬活性成分を意味する。前記膜又はフィルムは、鋳造、押出し、プレス、成型、被覆、噴霧、又は浸漬等の、任意的な既知の方法により製造され得る。
【0059】
前記エラストマーの薬物放出速度は、置換されたオキシアルキル基の量、及び/又はその薬物の性質により制御され得る。
【0060】
なおももう一の態様によると、前記エラストマー組成物は、シロキサンを基礎とするエラストマー(例えばPDMS)、及び置換されたオキシアルキル基を含む少なくとも1つのポリシロキサンポリマー又はコポリマーを含む、混合物であり得る。また、前記シロキサンを基礎とするエラストマーは、そのような置換されたオキシアルキル基を含み得る。
【0061】
また、一の態様によると、前記エラストマー組成物は、前記エラストマー組成物から作られたフィルムの強度を増大させるために、アモルファスシリカ等の充填剤をも含み得る。他の可能な充填剤には、酸化アルミニウム、酸化チタン、マイカ、炭酸カルシウム、様々な繊維、及び硫酸バリウムが含まれる。充填剤の量は、その充填剤の特性、及びエラストマーの使用に依存する。シリカ等の強化充填剤は、典型的には、重量で1〜50部、好ましくは15〜40部の量が、そして他の充填剤においては、重量で1〜200部の量が使用される。
【実施例】
【0062】
実験
重合は、100mlの丸底ガラス管中のオイルバス中で、機械的攪拌を行いながら、そして窒素空気中で実行された。D’L−α−トコフェロール(0.01重量%)、ビニルコモノマー(例えばテトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン(MV4)(0.01重量%)、又はビニルコポリマー、及びエンドブロッカー(例えばテトラメチルジビニルジシロキサン)等の、モノマー及び原料ケミカルが、前記管中に加えられた。原料ケミカル間の化学量論の変化を通じて、ポリマーの分子量、及び生産されたエラストマーの架橋密度が変化し得る。重合温度は、150℃であり、そしてかなり激しく混合(200〜400rpm)された。反応溶液の温度が150℃に到達したとき、50ppmの1−テルト−ブチル−4,4,4−トリス(ジメチルアミノ)−2,2−ビス[トリス(ジメチルアミノ)−ホスフォラニリデンアミノ]−2Δ,4Δ−カテナジ(ホスファゼン)触媒が、マイクロシリンジで、隔壁を通してその溶液の表面の下に添加された。開環重合は、すぐに開始され、そして即座に終了するか、又は約30分間徐々になされるかいずれかであった。重合が目的とするところまで達したとき、触媒は、同量のリン酸トリス(トリメチルシリル)の添加により不活性化された。反応の早期の段階で、その粘性は急速に上昇し、そして幾つかの実験においては、その粘性は重合中に僅かに低下し始めた。この現象は、重合がその熱力学的平衡に進行したときの、低分子量の環状分子及び直鎖状分子の量の増大に起因していた。
【0063】
実施例1
原料ケミカル
置換基:アリルエチルエーテル(Aldrich)
開始シロキサン:ヘプタメチルシクロテトラシロキサン(Clariant)
モノマー合成の触媒:Pt−ジビニルテトラメチルジシロキサン、キシレン中に2.3重量%のPtが含まれている(ABCR)
重合触媒:ホスファゼン塩基(1−テルト−ブチル−4,4,4−トリス(ジメチルアミノ)−2,2−ビス[トリス(ジメチルアミノ)−ホスフォラニリデンアミノ]−2Δ,4Δ−カテナジ(ホスファゼン)) (Fluka Chimika)
共触媒:D’L−α−トコフェロール(Roche)
ビニルコモノマー:1,3,5,7−テトラビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、MV(Gelest)
エンドブロッカー:ビニル終末化(terminated)ポリ(ジメチルシロキサン)、DMS−V21(ABCR)
重合触媒不活性化剤:リン酸トリス(トリメチルシリル) (Fluka Chimika)
【0064】
モノマー合成
ヘプタメチルシクロテトラシロキサン及びアリルエチルエーテルは、還流冷却器に備え付けられている50ml丸底ガラス管中で量り取られ、使用された化学量論的関係は、1.1:1(ビニル:SiH)であった。前記管はオイルバス中に置かれ、そして前記管を通して窒素が除去された。前記オイルバスは、65℃まで加熱され、そして触媒(20ppmのPt)が、マイクロシリンジで、隔壁を通してその反応溶液中に加えられた。数分後、発熱が認められ、そして前記媒体の色が透明から茶色に変化した。前記反応は、SiH(2100cm−1)及びビニル(1650cm−1)の吸収の消失により、FT−IRで追跡された。サンプルは、基本的に毎時間採取され、そして、FTIRによると、2.5時間後に、前記反応は終了した(1650cm−1にあるビニルのピークが消失した)。
【0065】
こうして生産されたモノマー(1,1−3,3−5,5−7−ヘプタメチル−7−プロピルエチルエーテル−シクロテトラシロキサン)は、減圧下(P<10mbar)で蒸留された。未蒸留液の殆どは、未反応のヘプタメチルシクロテトラシロキサンであることが見出された。また、蒸留は、前記モノマー(蒸留液)から白金を除去するためにも実行された。前記モノマーの純度は、ガスクロマトグラフィー(Agilent Technologies 6890 N network GC System, FID detector)で解析され、そして、95%の純度(領域%)であることが見出された。
【0066】
1,1−3,3−5,5−7−ヘプタメチル−7−プロピルエチルエーテル−シクロテトラシロキサンの重合
開環重合は、100mLの丸底ガラス管中で、転倒攪拌により、窒素空気中で実行された。重合温度は、150℃に設定された。前記管には、25gのモノマー(98.69重量%)、0.01重量%のD’L−α−トコフェロール、0.10重量%のMV、及び1.20重量%のエンドブロッカーが加えられた。前記反応媒体が目標の温度に達したとき、ホスファゼン触媒(50ppm)が隔膜を通して添加された。重合はゆっくりと始まり、10分後までは、粘性の顕著な増大が認められた。重合は、ゆっくりと混合しながら30分間続けられ、その後、触媒は、同量のリン酸トリス(トリメチルシリル)により不活性化された。
【0067】
そして、前記ポリマーは、短経路の拭浄された薄膜蒸留装置中で(P<1mbar、T=90℃)、揮発性成分から抜き取られた。これは、未反応のモノマー及び低分子量の環状及び直鎖状分子をポリマーから除去するために実行された。
【0068】
実施例2
原料ケミカル
置換基:n−ブチルビニルエーテル(BASF)
開始シロキサン:ヘプタメチルシクロテトラシロキサン(Clariant)
モノマー合成の触媒:Pt−ジビニルテトラメチルジシロキサン、キシレン中に2.3重量%のPtが含まれている(ABCR)
重合触媒:ホスファゼン塩基(1−テルト−ブチル−4,4,4−トリス(ジメチルアミノ)−2,2−ビス[トリス(ジメチルアミノ)−ホスフォラニリデンアミノ]−2Δ,4Δ−カテナジ(ホスファゼン)) (Fluka Chimika)
ビニルコモノマー:1,3,5,7−テトラビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、MV(Gelest)
エンドブロッカー:1,1,3,3−テトラビニルジメチルジシロキサン (ABCR)
重合触媒不活性化剤:リン酸トリス(トリメチルシリル) (Fluka Chimika)
【0069】
モノマー合成
実施例1におけるものと同一の段階が、本モノマー合成に使用された。使用された置換基(n−ブチルビニルエーテル)は、その反応をより迅速に進行させ(合計時間0.5時間)、そして完了させた。FTIRによると、余分なSi−H(2050cm−1で)は認められなかった。生産物である1,1−3,3−5,5−7−ヘプタメチル−7−エチルブチルエーテル−シクロテトラシロキサンは、蒸留により精製された。
【0070】
1,1−3,3−5,5−7−ヘプタメチル−7−エチルブチルエーテル−シクロテトラシロキサンの重合
実施例1におけるものと同一の段階が、本ポリマー合成に使用された。加えられた原料ケミカルは、25gの1,1−3,3−5,5−7−ヘプタメチル−7−エチルブチルエーテル−シクロテトラシロキサン(99.4重量%)、0.10重量%のビニルコモノマー(MV)、及び0.80重量%のエンドブロッカーであった。重合を開始するために、必要となる触媒の量は100ppmであり、これは30分置きに2段階、隔膜を通して加えられた。重合の結果、実施例1と比較して、より低分子量のポリマーが生じた。
【0071】
実施例3
原料ケミカル
置換基:n−ブチルビニルエーテル(BASF)
開始シロキサン:ヘプタメチルシクロテトラシロキサン(Clariant)
モノマー合成の触媒:Pt−ジビニルテトラメチルジシロキサン、キシレン中に2.3重量%のPtが含まれている(ABCR)
重合触媒:ホスファゼン塩基(1−テルト−ブチル−4,4,4−トリス(ジメチルアミノ)−2,2−ビス[トリス(ジメチルアミノ)−ホスフォラニリデンアミノ]−2Δ,4Δ−カテナジ(ホスファゼン)) (Fluka Chimika)
共触媒:D’L−αートコフェロール(Roche)
ビニルコモノマー:1,3,5,7−テトラビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、MV(Gelest)
エンドブロッカー:1,1,3,3−テトラビニルジメチルシロキサン (ABCR)
重合触媒不活性化剤:リン酸トリス(トリメチルシリル) (Fluka Chimika)
【0072】
モノマー合成
実施例1におけるものと同一の段階が、本モノマー合成に使用された。異なる置換基(n−ブチルビニルエーテル)で行われる今回の反応は、かなり迅速であり、そしてそれは0.5時間後には終了した。FT−IRによると、Si−H基は残留していなかった。
【0073】
1,1−3,3−5,5−7−ヘプタメチル−7−エチルブチルエーテル−シクロテトラシロキサンの重合
実施例1におけるものと同一の段階が、本重合に使用された。重合はより迅速に開始され(粘性により)、そして、実施例1及び2よりも徹底的であった。
【0074】
実施例4
原料ケミカル
置換基:2−アリルシクロヘキサノン(Aldorich)
開始シロキサン:ヘプタメチルシクロテトラシロキサン(Clariant)
モノマー合成の触媒:Pt−ジビニルテトラメチルジシロキサン、キシレン中に2.3重量%のPtが含まれている(ABCR)
重合触媒:ホスファゼン塩基(1−テルト−ブチル−4,4,4−トリス(ジメチルアミノ)−2,2−ビス[トリス(ジメチルアミノ)−ホスフォラニリデンアミノ]−2Δ,4Δ−カテナジ(ホスファゼン)) (Fluka Chimika)
共触媒:D’L−αートコフェロール(Roche)
ビニルコモノマー:1,3,5,7−テトラビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、MV(Gelest)
【0075】
モノマー合成
実施例1におけるものと同一の段階が、本モノマー合成に使用された。ヒドロシル化反応が、2時間の間に徐々に生じ(FTIRによる)、色が同時に黄色になった。生産物である1,1−3,3−5,5−7−ヘプタメチル−7−プロピルシクロヘキサノン−シクロテトラシロキサンが、蒸留により精製ざれた。
【0076】
1,1−3,3−5,5−7−ヘプタメチル−7−プロピルシクロヘキサノン−シクロテトラシロキサンの重合
実施例1におけるものと同一の段階が、本重合に使用された。重合は、触媒の量が800ppmになるまで(徐々に添加された)開始されなかった。重合は、実施例1=3におけるものより緩慢に進行した。
【0077】
実施例5
原料ケミカル
置換基:n−ブチルビニルエーテル(BASF)
開始シロキサン:ヘプタメチルシクロテトラシロキサン(Clariant)
モノマー合成の触媒:Pt−ジビニルテトラメチルジシロキサン、キシレン中に2.3重量%のPtが含まれている(ABCR)
重合触媒:ホスファゼン塩基(1−テルト−ブチル−4,4,4−トリス(ジメチルアミノ)−2,2−ビス[トリス(ジメチルアミノ)−ホスフォラニリデンアミノ]−2Δ,4Δ−カテナジ(ホスファゼン)) (Fluka Chimika)
共触媒:D’L−α−トコフェロール(DSM)
ビニルコモノマー:1,3,5,7−テトラビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、MV(Gelest)
エンドブロッカー;1,1,3,3−テトラビニルジメチルシロキサン、(Fluka Chimika)
重合触媒不活性化剤:リン酸トリス(トリメチルシリル) (Fluka Chimika)
【0078】
モノマー合成
実施例1におけるものと同一の段階が、本モノマー合成に使用された。反応時間は、実施例1及び2よりも迅速で、約10分であった。FTIRによると、反応が終了した時点で、前記媒体には、SiH基が全く含まれていなかった。生産物である1,1−3,3−5,5−7−ヘプタメチル−7−エチルブチルエーテル−シクロテトラシロキサンが、蒸留により精製ざれた。
【0079】
1,1−3,3−5,5−7−ヘプタメチル−7−エチルブチルエーテル−シクロテトラシロキサンの重合
実施例1におけるものと同一の段階が、本重合に使用された。重合反応は、成功した。
【0080】
実施例6
原料ケミカル
置換基:アリルエチルエーテル(Aldrich)
開始シロキサン:ヘプタメチルシクロテトラシロキサン(Clariant)
モノマー合成の触媒:Pt−ジビニルテトラメチルジシロキサン、キシレン中に2.3重量%のPtが含まれている(ABCR)
重合触媒:ホスファゼン塩基(1−テルト−ブチル−4,4,4−トリス(ジメチルアミノ)−2,2−ビス[トリス(ジメチルアミノ)−ホスフォラニリデンアミノ]−2Δ,4Δ−カテナジ(ホスファゼン)) (Fluka Chimika)
共触媒:D’L−α−トコフェロール(Roche)
ビニルコモノマー:1,3,5−トリビニル−1,3,5−トリメチルシクロテトラシロキサン、MV(Gelest)
エンドブロッカー;ビニル終末化ポリ(ジメチルシロキサン)、DMS−V21(ABCR)
重合触媒不活性化剤:リン酸トリス(トリメチルシリル) (Fluka Chimika)
強化ヒュームドシリカ:Aerosil R106(Degussa)
硬化剤:テルトブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、あるいはTBPEH(Interchim Austria)
【0081】
アリルエチルエーテル及びヘプタメチルシクロテトラシロキサンは、還流冷却器に備え付けられている50ml丸底ガラス管中で量り取られた。ビニル/SiHの化学量論は、1.1:1であった。前記管はオイルバス中に置かれ、そしてその反応物は窒素空気中に置かれた。オイルバスは、65℃まで加熱され、そして触媒(20ppmのPt)が、隔壁を通して添加された。数分後、発熱が認められ、そして同時に、反応媒体の色が透明から茶色に変化した。前記反応は、SiH(2100cm−1)及びビニル(1650cm−1)の吸収の消失により、FT−IRで追跡された。サンプルは、基本的に毎時間採取され、そして、FTIRによると、2.5時間後に、前記反応は終了した(1650cm−1にあるビニルのピークが消失した)。こうして生産されたモノマー(1,1−3,3−5,5−7−ヘプタメチル−7−プロピルエチルエーテル−シクロテトラシロキサン)は、減圧下(p<10mbar)で蒸留された。未蒸留液の殆どは、未反応のヘプタメチルシクロテトラシロキサンであることが見出された。また、蒸留は、前記モノマー(蒸留液)から白金を除去するためにも実行された。前記モノマーの純度はGCで解析され、そして、95%の純度(領域%)であることが見出された。
【0082】
1,1,3,3,5,5,7−ヘプタメチル−7−プロピルエチルエーテル−シクロテトラシロキサンの重合
開環重合は、100mLの丸底ガラス管中で、転倒攪拌により、窒素空気中で実行された。重合温度は、150℃に設定された。前記管には、25gのモノマー(98.09重量%)、0.01重量%のD’L−α−トコフェロール、0.70重量%のMV、及び1.20重量%のエンドブロッカーが加えられた。前記反応媒体が目標の温度に達したとき、ホスファゼン触媒(50ppm)が隔膜を通して添加された。重合はゆっくりと始まり、10分後までは、粘性の顕著な増大が認められる。重合は、ゆっくりと混合しながら30分間続けられ、その後、触媒は、同量のリン酸トリス(トリメチルシリル)により不活性化された。
【0083】
そして、前記ポリマーは、短経路の拭浄された薄膜蒸留装置中で(P<1mbar、T=90℃)、揮発性成分から抜き取られた。これは、未反応のモノマー及び低分子量の環状及び直鎖状分子をポリマーから除去するために実行された。
【0084】
エラストマーの生産
前記抜き取られたポリマーは、25重量%のヒュームドシリカ、及び1.5重量%のTBPEH−ペルオキシドと共に、混練ミル(mill)中で混ぜ合わされる。前記ミル中の基材が均質となったとき、放出フィルムの間の加熱プレス(120℃)中で、異なる厚さのシートを生産するために使用された。次に、これらのシートは、ペルオキシド分解生産物を除去するため、真空オーブン(100℃、P<10mbar、1時間)中で後硬化された。
【0085】
実施例7〜16
これらの実施例において、重合が可能な、親水性に改変されたモノマーが生産された。そして、これらのモノマーは、ビニル−機能性コモノマーと共に共重合された。次に、生産されたポリマーは、シリカと共に混合され、そして、ビニル−特異性ペルオキシドを使用して硬化され、それから、薬物の放出に関する医療用途におけるそれらの使用が試験された。
【0086】
モノマーの生産
使用されるモノマーは、ヘプタメチルシクロテトラシロキサン(HMCTS、Clariant)のヒドロシル化により合成され、そして二重結合を含む親水性分子が選択された。親水基は主に、末端に二重結合を有するエーテル様構造であった。白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン(Pt−DVTMDS、ABCR)複合体は、ヒドロシル化の触媒として使用され、また、場合によっては、固体白金及びパラジウム触媒も試験された。ビニル/Si−Hの比は、最も通常は、1.1:1であった。反応は、第一に、8mLのバイアル中で、その反応溶液をオイルバス中で攪拌しながら、単純に加熱することにより実行された。この小スケールの実験が成功したときは、次の段階は、前記反応をスケールアップし、そして蒸留及び重合に十分な材料を生産することであった。最も通常の温度は65℃であり、使用される触媒の量は20ppmであった。
【0087】
幾つかの成分は、それらの略称と共に下に記載される。例えば、
HMCTSは、ヘプタメチルシクロテトラシロキサンを表し、
Pt−DVTMDSは、白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン複合体を表し、
MVは、1,3,5,7−テトラビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンを表し、
MVは、1,3,5,トリビニル−1,3,5−トリメチルシクロトリシロキサンを表し、
D4gAMEは、1,1,3,3,5,5,7−ヘプタメチル−7−プロピルメチルエーテルシクロテトラシロキサンを表し、
D4gAEEは、1,1,3,3,5,5,7−ヘプタメチル−7−プロピルエチルエーテルシクロテトラシロキサンを表し、
D4gBVEは、1,1,3,3,5,5,7−ヘプタメチル−7−エチルブチルエーテルシクロテトラシロキサンを表し、
D4gACHNは、1,1,3,3,5,5,7−ヘプタメチル−7−プロピルシクロヘキサノンシクロテトラシロキサンを表し、
DMS−V21は、ビニル末端化ポリジメチルシロキサンを表し、及び、
TBPEHは、テルト−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエートを表す。
【0088】
これらの例において、4つの異なる誘導体が、モノマー合成について試験された。それらの構造、名称、略称、及び生産者は、表1に示されている。
【0089】
【表1】

【0090】
ヒドロシル化は、末端の二重結合において最も容易に起こるため、試験された全ての分子は、それを有していた。図1は、モノマー合成の一例として、ヘプタメチルシクロテトラシロキサン及びアリルメチルエーテルから、ヒドロシル化を経てされる、D4gAMEモノマーの合成の反応式を示す。
【0091】
ヒドロシル化反応は、FT−IR(Nicolet 760)によりモニターされた。前記反応は、2100cm−1におけるSi−H IRの強力な吸収、又は1650cm−1におけるC−Cの吸収が消失するときに、開始したと認識された。殆どの場合において、反応時間は、約3時間であり、幾らかの未反応の材料が残る。しかしながら、ブチルビニルエーテルは、30分以内に完全にヒドロシル化され、反応溶液に残余Si−H基を残さない。
【0092】
【表2】

【0093】
モノマー合成は、アリルメチルエーテル、アリルエチルエーテル、n−ブチルビニルエーテル及びアリルシクロヘキサノンにおいて、成功裡に実行された。これら全ては、20ppmのPt−DVTMDS触媒と共に、65℃で、十全に反応した。反応時間は、表2から見られるように、かなり大きく異なっていた。大スケール(100g)の反応は、還流冷却機及び窒素吸入口が取り付けられた、250mLの丸底フラスコ中で実行された。ヒドロシル化の第一段階の間に顕著に発熱するため、触媒は、反応混合物に慎重に添加されなければならなかった。
【0094】
モノマーの精製
重合の前に、モノマーは、少なくとも95%の純度(ガスクロマトグラフィーのピークからの領域%として判定される)を達成するため、蒸留されなければならなかった。蒸留は、小型蒸留装置、オイルバス、及び吸引ポンプを使用して遂行された。圧力は、10mbar以下まで減圧され、そして最も通常は、オイルバスの温度は、主要な生産物が蒸留されるまで、約110℃まで高められなければならなかった。蒸留後、集められたモノマー蒸留物は、GC−MSで純度を再び測定され、そして、モノマーの容器に20容積%の4Åのモレキュラーシーブを添加することにより、乾燥させられた。
【0095】
重合
重合実験は、8mLのバイアルに、約2gの乾燥したモノマー及び50ppmの触媒を入れて、開始された。異なるモノマー及び反応条件について試験が行われた。前記反応は、アニオン性開環重合であり、カリウムシラノレートとホスファゼン塩基の両方の触媒が、有用であり得た。図2は、DAEEのアニオン性開環重合の模式図を示す。この小スケールの実験において成果が挙げられた後、10〜50gという、より大きなバッチが、30mLのバイアル及び100mLの三つ首フラスコにおいて、エンドブロッカー、ビニルコモノマー、及び任意的にD’L−α−トコフェロール等の添加剤等が加えられて作られた。
【0096】
試験された全ての試薬、及び重合におけるそれらの用途は、表3に示されている。1つの実験において、各型の1つのみが使用された。
【0097】
【表3】

【0098】
重合は、窒素空気中で、そして激しく攪拌して、行われた。温度は、150℃に設定された。重合の時間は、30分から2時間まで様々であり、モノマー及び温度に依存していた。殆どの反応はかなり迅速であるが、最高の重合の程度及び終了を達成するために、重合が起こった後も30分間攪拌及び加熱が継続された。最後に、前記反応は、リン酸トリス(トリメチルシリル) (Fluka Chimika)でクエンチされた。
【0099】
1,3,5,7−テトラビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン(MV)等のビニルコモノマーが、前記反応媒体に添加された。また、他のビニル含有物質も試験された(表3を参照されたい)。良好なポリマーは、ビニルメチルシロキサン−ジメチルシロキサン−コポリマーを使用して達成されたが、これらのポリマーが保管された時、数日後にある程度の架橋が生じた。この問題に対する好ましい解決方法は、抗酸化剤及び安定化剤である、D’L−α−トコフェロール(ビタミンE)を添加することであった。それは、望ましくない架橋を防止し、そして、重合における共触媒効果をも有していた。開環重合を開始するために、より少量の触媒が必要となる。表4において、D4gBVEを使用した幾つかの開環重合実験が示されている。ここで、D’L−α−トコフェロールの有無により実験結果に差異が生じたことが、容易に見て取れる。
【0100】
【表4】

【0101】
表5において、全ての誘導体化されたモノマーについてされた重合実験の要約が示されている。
【0102】
【表5】

【0103】
低分子量化合物の除去
低分子量化合物は、更なる工程の前にポリマーから除去されなければならなかった。もしこれらの化合物が残存していると、得られるエラストマーが、低い引張強度、及び過剰な量の抽出可能物を有することとなる。小スケールでは、低分子量物質は、小型蒸留装置及び吸引ポンプを使用して、ポリマーから蒸発させられた。これは、揮発性物質を除去するための最も有効な手段ではなかった。なぜなら、幾つかのポリマーサンプルは、短経路蒸留装置(VTA−VKL70−4−SKR−T Short Path Distillation Unit)の使用に十分な大きさの体積を作り出すことが出来るように組み合わされたからであった。短経路蒸留ユニットは、吸引−及び分散ポンプ、並びに油循環(oil circulating)系(Huber, Unistat 385w Circulation Thermolat)と共に設置された。
【0104】
小スケールにおいて、小型蒸留装置が使用されたとき、温度は120℃まで上昇し、及び圧力は2mbar未満まで低下した。より大きなスケールにおいて、短経路蒸留装置が使用されたとき、温度は90度、圧力は0.2mbarであった。
【0105】
エラストマーの生産
抜き取り後、前記ポリマーは、小型の研究室用混合機中で、25重量%の乾燥したシリカ(Aerosil R 106)及び1.5重量%のテルト−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート(TBPEH)と混ぜ合わせられる。シリカは、0.5gずつ徐々に加えられ、そして、その基材は、均質な材料を得るため、15分間混合された、
【0106】
浸透性試験のためのサンプル膜は、研究室用の加熱プレス(Enerpac)を使用して、厚さが0.4mmの円形スペーサー成型(round spacer mould)で生産された。材料は、放出ライナー(release liner)と金属盤の間で100barの油圧がかけられ、120℃で6分間圧縮された。
【0107】
機械試験のための厚板は、浸透性サンプルと同様に生産された。しかし、厚さが2mmの長方形(6.1cm×8.2cm)スペーサーが使用された点が異なる。
【0108】
続いて、エラストマーフィルムは、100倍で、及び100mbarの圧力を掛けて、1時間、後硬化された。特に、ポリ(DgAEE)の厚さ2mmのフィルムは、後硬化の間に僅かに黄色になる。
【0109】
特徴付け
GC−MSによるモノマーの分析
ガスクロマトグラフィー質量分析(GC−MS)装置(Agilent Technologies)は、合成されたモノマーを特徴付けるために使用された。サンプルは、n−ヘキサン中に希釈され(約0.1mg/ml)、そして各サンプルから、2つの注射物がとられた。収量及び純度は、CGピークの領域%として推定され、そして必要な場合、主要な不純物及び副産物は、MSスペクトルから同定された。全ての実験における最大の不純物は、開始材料の、ヘプタメチルシクロテトラシロキサンであった。
【0110】
GPCによるポリマーの分析
数平均及び質量平均モル質量、並びに多分散性は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いた合成ポリマーから判定される。使用されたGPC装置は、ポンプ(Waters 515)、インジェクター(Waters 717Pius)RI−Detector(Waters 2414)、及びカラムオーブン(Perkin−Elmer Model 101 LC Colmun Oven)から構成されていた。分析は、5つのカラム及びポリスチレンスタンダードにより実行された。モル質量は、162〜1000000g/molの範囲で判定された。
【0111】
サンプルは、ポリマーをトルエン(J. T. Baker)で希釈することにより生産された。また、トルエンは、キャリア溶液としても使用された。フローは、0.3ml/分に設定された。トルエンは、フローを安定化させ、そしてカラム及びインジェクターを洗浄するために、測定が行われる前夜から前記装置内を循環させられた。
【0112】
薬物浸透性の解析
薬物浸透性解析は、図3において模式的に示された、隣り合った分散セルを使用して実行された。この系は、ドナーセル1及びレセプターセル2とされる2つの類似したガラスチャンバー、それらを取り囲むウォータージャケット3、並びにそれらに備え付けられるマグネチックスターラー4から構成されていた。前記ドナーセル1は、飽和濃度のエストラジオールが存在する1%シクロデキストリン溶液(参照番号6)が充填されていた。エストラジオールは、セルの間に設置されたエラストマー膜5を透過して、溶液(1%シクロデキストリン)を含むレセプターセル2に拡散した。使用された膜の厚さは0.2mm及び0.4mmであり、各膜は、正確に測定された。
【0113】
試験時間は5日間であり、そして、毎日2.8μlのサンプルが前記レセプターセル溶液から、サンプリングポート7を通じて採取された。サンプリングの後、取り出された分の溶液は、純粋な37℃のシクロデキストリンで置換された。温度は、ヒト体内の条件を模倣するため、ウォーターバス(Lauda)で、37℃に定常的に維持された。
【0114】
採取された溶液サンプルは、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)により、エストラジオールが分析された。HPLCによる濃度分析の結果から、透過性は、時間に対する測定濃度をプロットし、そしてプロットされた点の傾向直線の傾きを求めることにより計算された。
【0115】
引張強度及び伸長
引張強度測定のためのサンプルは、所望の厚さ(2mm)のプレスされたエラストマーの断片から打ち抜かれた。試験サンプルは、2型ISO37試料であった。引張強度は、Mosanto T2000装置を100N又は1kNセルで使用して測定された。伸長の測定を可能とするため、高い伸び計(high extensometer)(ゲージ長20mm)が前記装置に取り付けられた。伸び率は、500mm/分であった。解析の前に、前記サンプルは、一定の室温及び湿度(23℃、50%)で24時間維持された。
【0116】
抽出可能物
エラストマーからのヘキサンに抽出可能物の量は、0.3gのエラストマーを量り取り、30mlのバイアルに入れ、そして20mlのn−ヘキサンを加えることにより判定された。3つの測定が、並行して実行された。サンプルは、室温で24時間振盪され、そして翌日、ヘキサン溶液が回収された。固体のサンプルは、新しいヘキサンでもう一度洗浄され、そして40℃、及び圧力が10mbarより低い吸引オーブン中で1時間乾燥させられた。乾燥後、サンプルは、室温でもう一時間安定化され、それから計量された。抽出可能物は、処理前と処理後との間のサンプルの質量の違いのパーセンテージとして計算された。
【0117】
加えて、抽出可能物は、抽出された溶液中の通常の環式化合物(common cyclic)(D〜D)及び抽出された化合物種の生じ得るより大きな断片の量を評価することが出来るように、GPC及びGC(Agilent Technologies 6890 N Network GC System, FID detector)で分析された。
【0118】
結果
合成及びポリマー
試験された4つの誘導体化モノマー候補物質の全てのうち、結果的に2つが、モノマーからエラストマーへの全合成経路を進行させられた。
【0119】
ポリマー合成は、DgAEE及びDgBVEにおいて、成功裡に実行された。モル質量は、殆どが140,000g/mol程度であった。
【0120】
薬物透過性
目的の透過性は、参照エラストマー(非修飾PDMS)の透過性の10倍であった。図4において、ポリ(DgAEE)、ポリ(DgBVE)、及び参照PDMSエラストマー膜におけるエストラジオール透過性測定値のプロット結果が示されている。時間(hour)単位の時間は横座標に示され、そしてμg単位の放出されたエストラジオールの量は縦座標に示される。正方形はポリ(DgAEE)を表し、三角形はポリ(DgBVE)を表し、及びダイヤ形は参照PDMSエラストマーを表す。
【0121】
引張強度及び伸張
引張強度及び伸張測定の結果は、表6に示されている。最初のサンプルは、後硬化をさせずに、そして1kNのセルで測定された。他のサンプルは、後硬化後に、そして100kNのセルで解析された。後硬化サンプルに使用されたポリマーは、より有効な短経路蒸留ユニットで抜き取られた。
【0122】
【表6】

【0123】
抽出可能物
抽出可能物は、後硬化された場合とされない場合との両方において測定された。結果は、表7に示されている。後硬化サンプルに使用されたポリマーは、より有用な短経路蒸留ユニットで抜き取られた。
【0124】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状シロキサンの開環重合における共触媒としてのトコフェロールの使用。
【請求項2】
前記トコフェロールが、D’L−α−トコフェロール、RRR−α−トコフェロール、酢酸D’L−α−トコフェロール、及び酢酸RRR−α−トコフェロールからなる群から選択されることにより特徴付けられる、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記環状シロキサンが、ヘプタメチルシクロテトラシロキサン、及びテトラメチルシクロテトラシロキサンからなる群から選択されることにより特徴付けられる、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
ヒドリドを含む環状シロキサンが、モノマーを収得するための第一の触媒の存在下で、一般式(I)又は(II):
(I) HC=CH−(CHR)−O−(CHRCR)
(II) HC=CH−(CHR)−R
(式中、
nは、0〜4の整数であり、
mは、0〜5の整数であり、
R、R、R、R、及びRは、それぞれ独立して、水素又はC〜Cのアルキルであり、
は、カルボニル基を含む飽和環状炭化水素である)
を有する、炭素−炭素二重結合を含む親水性分子と反応し、そして第二の触媒及び共触媒としてのトコフェロールの存在下で、前記モノマーを重合する、親水性ポリシロキサンポリマーを製造する方法。
【請求項5】
前記環状シロキサンが、ヘプタメチルシクロテトラシロキサン、及びテトラメチルシクロテトラシロキサンからなる群から選択されることにより特徴付けられる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
請求項4に記載の方法により収得可能な、親水性ポリシロキサン。
【請求項7】
架橋触媒の存在下で、請求項6に記載のポリシロキサンを架橋することを含む、親水性シロキサンエラストマーを製造する方法。
【請求項8】
前記架橋触媒が、ペルオキシド架橋触媒、及び白金架橋触媒からなる群から選択されることにより特徴付けられる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
請求項7に記載の方法により収得可能な親水性シロキサンエラストマー。
【請求項10】
白金を含まないことにより特徴付けられる請求項9に記載の親水性シロキサンエラストマー。
【請求項11】
式(III):
(III) EB−[B−B−B]−EB
(式中、
EBは、エンドブロッカー基(end blocker group)であり、
、B、及びBは、それぞれ独立して、1つの親水基及び1つのメチル基を含む−Si−O−鎖、2つのメチル基を含む−Si−O−鎖、並びに1つのビニル基及び1つのメチル基を含む−Si−O−鎖からなる群から選択され、前記B、B、及びBが、ポリシロキサンの鎖の中に無作為に分布するものであり、そして、
kは、15〜50,000の整数である)
を有し、請求項7に記載される方法により収得可能な親水性ポリシロキサン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−521547(P2010−521547A)
【公表日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−553171(P2009−553171)
【出願日】平成20年3月11日(2008.3.11)
【国際出願番号】PCT/FI2008/050113
【国際公開番号】WO2008/110666
【国際公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(504058776)バイエル シエーリング ファーマ オサケユイチア (4)
【Fターム(参考)】