説明

トナー供給ローラおよび現像装置

【課題】高速プリント化と,画質低下の抑制とを両立させたトナー供給ローラおよびそれを有する現像装置を提供すること。
【解決手段】トナー供給ローラ3は,現像ローラと当接する発泡弾性体層32の表面に,ローラの周方向に連続した凹凸を形成する凸部33を有する。また,発泡弾性体層32は,電気抵抗が103Ω〜107Ωの範囲内となる導電性を有する。また,発泡弾性体層32の表面の硬さ,すなわち直径が50mmの円板をトナー供給ローラ3に押し付けた際に,発泡弾性体層32の外周面から発泡弾性体層32を厚さ方向に30%圧縮させるのに必要な力が1.5N以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,電子写真方式の画像形成装置の現像装置に組み込まれ,現像ローラにトナーを供給するトナー供給ローラに関する。
【背景技術】
【0002】
複写機,プリンタ,ファクシミリ等の画像形成装置においては,電子写真用感光体や静電記録用誘電体等の像担持体上に形成された静電潜像を現像して可視化する現像装置が利用されている。現像装置は,大別して,主としてトナーとキャリアとからなる2成分現像剤にて現像を行う2成分現像方式と,主として1成分現像剤にて現像を行う1成分現像方式とが知られている。
【0003】
1成分現像方式の現像装置は,トナーを像担持体(例えば,感光体ドラム)に搬送する現像ローラと,現像ローラ上のトナー層の層厚を規制するとともにトナーを摩擦帯電する規制部材と,現像ローラと当接して現像ローラ上へトナーを供給するとともに現像後に現像ローラ上に残留するトナーの剥離を行うトナー供給ローラとを備えている。現像ローラは,その両端部に設けられたスペーサ部材に回転可能に支持されており,感光体ドラムに対して軸方向に対向配置されている。また,トナー供給ローラは,バネ等の付勢部材によって現像ローラに強く当接するように配置されている。
【0004】
トナー供給ローラの機能として,現像ローラへのトナーの搬送機能は勿論必要であるが,それとともに感光体ドラムに現像されず,現像ローラ上に残留したトナーの掻き取り機能も必要となる。すなわち,トナー供給ローラは,トナーの供給機能とトナーの掻き取り機能とを兼ねていなければならない。
【0005】
また,近年,高速プリント化が要請されている。そのため,トナー供給ローラの,トナーの供給性能およびトナーの掻き取り性能を向上させる必要がある。解決策としては,現像ローラへの侵入量を増やす,ニップ幅を増やす,発泡弾性体ローラの回転数を増やす等,機械的な力を増す方法が考えられる。しかし,何れの場合も,トナー供給ローラの性能は向上するものの,現像ローラとの摩擦力が過大となる。そのため,ローラの摩耗や損傷が発生したり,トナーの劣化が促進されて異常帯電が惹起される。従って,長期使用する場合には,濃度低下,地汚れ等の画像不良を発生させる。
【0006】
そこで,特許文献1,特許文献2,特許文献3に開示されたトナー供給ローラのように,発泡弾性体層の表面が凹凸形状をなすトナー供給ローラが注目される。トナー供給ローラの表面に凹凸形状を持たせると,凸部によってトナーが掻き取られることから,トナーへのストレスを増加させることなく,トナーの搬送性の加えてトナーの掻き取り性も向上する。また,トナーを搬送するために静電気的な力を必要としないため,トナー供給ローラ用の電源が必要ない。そのため,構成の単純化,低コスト化に資する。
【特許文献1】特開平11−52707号公報
【特許文献2】特開平11−52708号公報
【特許文献3】特開平11−52709号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら,前記した従来のトナー供給ローラでは,次のような問題があった。すなわち,凹凸形状を有するトナー供給ローラを使用し,静電気的な力を利用せずに高速プリント化が可能であるか試験したところ,現像ローラの周速が300mm/s以上でかつトナー供給ローラの周速が50mm/s以上であり,プロセス速度が200mm/s以上である高速現像プロセスでは画像不良が生じた。具体的には,画像の先端部から後端部までの濃度の均一性を示す「ベタ追随性」の低下や,表面の凹凸形状に起因する「濃度ムラ」が生じた。
【0008】
上記したベタ追随性の低下や濃度ムラの発生は,トナーの供給量不足によって起きる。つまり,高速現像プロセスにおいては,凹凸形状を有するのみではトナー供給ローラの搬送能力に限界がある結果となった。
【0009】
そこで,トナー供給ローラに所定のバイアスを印加し,静電気的な力で搬送性能を補強することが考えられる。しかし,静電気的な力を生じさせるには,ローラの構成材料である発泡弾性体に導電物を添加する必要がある。トナー供給ローラは,この導電物の添加により導電性を得ることができるが,一方で導電物を過剰に添加すると発泡弾性体に要求される物性が失われる。具体的には,発泡弾性体の硬度が上昇する,硬度の環境変動が大きくなるといった問題が発生する。そのため,トナーへのストレスが大きくなり,トナー劣化を引き起こしてしまう。
【0010】
本発明は,前記した従来のトナー供給ローラが有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,高速プリント化と,画質低下の抑制とを両立させたトナー供給ローラおよびそれを有する現像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題の解決を目的としてなされたトナー供給ローラは,芯材と,芯材の外周面上に位置する発泡弾性体層とを備え,発泡弾性体層の表面には,ローラの周方向に連続した凹凸を形成し,ローラの軸方向に延びる凸部が設けられ,トナーの搬送に供するトナー供給ローラであって,発泡弾性体層の内周面と外周面との間の電気抵抗は,103Ω〜107Ωの範囲内であり,発泡弾性体層の外周面に直径が50mmの円板を押し当て発泡弾性体層の外周面から発泡弾性体層を厚さ方向に30%圧縮させるのに必要な力が1.5N以下となることを特徴としている。
【0012】
本発明のトナー供給ローラは,現像ローラと当接する発泡弾性体層の表面に,ローラの周方向に連続した凹凸を形成する凸部が設けられている。そのため,トナーの保持力および掻き取り力が高く,凹凸面を有しないものと比較して,トナーの搬送能力および掻き取り能力が高い。
【0013】
また,トナー供給ローラの発泡弾性体層の電気抵抗(内周面と外周面との間の電気抵抗)が103Ω〜107Ωの範囲内であり,発泡弾性体層は導電性を有している。発泡弾性体層が導電性を有することで,トナーの搬送時に静電気的な力が作用し,搬送能力が補強される。これにより,現像プロセスを高速化(現像ローラの周速が300mm/s以上)したとしてもトナーの安定供給が可能である。
【0014】
なお,電気抵抗が107Ωよりも高いと,静電気的な力が弱く,高速化に対応可能な搬送能力が得られない。一方,電気抵抗が103Ωよりも低いと,静電気的な力は得られるものの,導電物の添加量が多くなりすぎてローラ自身が硬くなる。そのため,トナーを劣化させてしまう。さらには,大電流化に伴ってローラ自身を破壊してしまうおそれがある。よって,発泡弾性体層の電気抵抗は103Ω〜107Ωの範囲内が好適である。
【0015】
また,発泡弾性体層の表面の硬さ,すなわち直径が50mmの円板をトナー供給ローラの発泡弾性体層に押し当てた際に,発泡弾性体層の外周面から発泡弾性体層を厚さ方向に30%圧縮させるのに必要な力は1.5N以下である。本条件を満たす硬さであれば,トナーへのストレスは少なく,画質の低下が抑制される。
【0016】
また,本発明の現像装置は,本発明のトナー供給ローラと,トナーを担持し,トナー供給ローラと圧接する現像ローラとを備えた現像装置であって,現像ローラに印加されるバイアスVbとトナー供給ローラに印加されるバイアスVrとが次の式(A)を満たすことを特徴としている。
Vr−Vb≦−10 (A)
【0017】
すなわち,トナー供給ローラに印加するバイアスVrのほうが,現像ローラに印加するバイアスVbよりも負極性が強く,その差を10V以上とする。これにより,静電気的な力が確実に作用し,負極性のトナーを安定して現像ローラに供給することができる。
【0018】
また,本発明の現像装置は,トナー供給ローラの周速θ1と現像ローラの周速θ2とが次の式(B)を満たす関係であることとするとよりよい。
0.5≦θ1/θ2≦2 (B)
【0019】
すなわち,トナー供給ローラの周速θ1と現像ローラとの周速θ2との差が小さい方がトナーの安定供給およびトナー劣化防止の点で優れる。つまり,周速比(θ1/θ2)が0.5よりも小さいと,トナーの供給が追いつかない。一方,周速比が2よりも大きいと,トナーへのストレスが過大となる。従って,式(B)に規定する範囲が画質低下を抑制する上で適切である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば,高速プリント化と,画質低下の抑制とを両立させたトナー供給ローラおよびそれを有する現像装置が実現している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下,本発明を具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。なお,本実施の形態は,非磁性の1成分トナーを収容・供給する現像装置を備えた電子写真方式の画像形成装置に本発明を適用したものである。
【0022】
実施の形態の画像形成装置100は,図1に示すように,像担持体である感光体ドラム11を有し,その感光体ドラム11の周囲に,感光体ドラム11の表面を一様に帯電するための帯電装置12と,感光体ドラム11の表面に静電潜像を形成するための露光装置13と,感光体ドラム11上の静電潜像を可視像(トナー像)とするための現像装置14と,感光体ドラム11上のトナー像を用紙に転写するための転写装置15と,転写残トナーを感光体ドラム11から取り除くためのクリーニング装置16とを感光体ドラム11の回転方向に沿って備えている。さらに,用紙搬送路には,転写位置への用紙の搬送タイミングを調節するためのタイミングローラ17および転写されたトナー像を用紙に定着させるための定着装置18が設けられている。本形態では,帯電装置12,転写装置15,定着装置18はいずれもローラ形状のものを用いている。また,クリーニング装置16には,クリーニングブレードを用いる。
【0023】
続いて,画像形成装置100による画像形成の動作について簡単に説明する。画像形成装置100は,スタート信号や画像データ等を受信することにより動作を開始する。感光体ドラム11は,図1中の矢印方向に回転駆動される。そして,帯電装置12と対向する位置で,帯電ローラによって一様に帯電される。次に,露光装置13によって露光され,表面上に画像データに基づいた静電潜像が形成される。
【0024】
次に,静電潜像が現像装置14の位置に達すると,現像ローラに印加された現像バイアス電圧と感光体ドラム11の静電潜像との間で形成される電界により帯電したトナーが移動し,静電潜像がトナーによって現像される。
【0025】
一方,用紙搬送路を搬送されてきた用紙は,タイミングローラ17にて画像先端位置にタイミングを合わせられ,感光体ドラム11と転写装置15との間に搬送される。そして,転写装置15によって感光体ドラム11上のトナー像が用紙に転写される。さらに,転写されたトナー像を保持した用紙はさらに搬送され,定着装置18によって熱と圧力とが加えられることにより,トナー像が用紙に定着される。また,転写装置15によって用紙に転写されず,感光体ドラム11上に残った転写残トナーはクリーニング装置16によって掻き取られる。これにより,1枚分の画像形成が終了する。
【0026】
続いて,現像装置14について詳説する。現像装置14は,図2に示すように,非磁性1成分トナーを収容する現像容器1と,トナーを担持しトナーを感光体ドラム11に向けて搬送する現像ローラ2と,現像ローラ2へのトナーの供給および現像ローラ2上のトナーの掻き取りを行うトナー供給ローラ3と,現像ローラ2上のトナーの厚みを規制するトナー量規制部材4と,トナー漏れを防止するとともに現像後に現像ローラ2上に残留するトナーを除電するトナー除電部材5とを備えている。また,現像ローラ2には,電源62が接続され,現像のためのバイアスが印加される。また,トナー供給ローラ3には,電源63が接続され,トナーの搬送性能を補強するためのバイアスが印加される。
【0027】
現像装置14では,トナー供給ローラ3によって現像容器1内のトナーをトナー供給ローラ3から現像ローラ2に搬送する。現像ローラ2に供給されたトナーは,現像ローラ2の回転に伴ってトナー量規制部材4により摩擦帯電されつつ薄層化され,感光体ドラム2との対向部にて静電潜像を可視化する。
【0028】
トナー供給ローラ3は,図3および図4に示すように,芯金31と,その芯金31の周囲に位置し,発泡部材からなる発泡弾性体層32とを有している。芯金31には,鉄,ステンレス,アルミ,樹脂等の材料が使用される。なお,芯金31としては,防錆処理を行った金属であれば適用可能である。また,発泡弾性体層32は,ポリウレタン,ニトリルゴム,エチレンプロピレンゴム,エチレンプロピレンジエンゴム,スチレンブタジエンゴム,ブタジエンゴム,イソプレンゴム,天然ゴム,シリコーンゴム,アクリルゴム,クロロプレンゴム,ブチルゴム,エピクロルヒドリンゴム等のゴム原料,もしくはこれらゴム原料の製造原料である単量体等によって得られる発泡弾性体により形成される。上記ゴム原料単体であってもまたはこれらゴム原料の2種以上を組み合わせて得られる発泡弾性体であってもよい。また,ポリエチレン,ポリスチレン等の熱可塑性樹脂のゴム発泡体により形成することも可能であるが,耐久性に優れたポリウレタン発泡体が好ましい。本形態では,ポリウレタンフォームを使用した。
【0029】
ポリウレタンフォームを形成するウレタン原料としては,トナー供給ローラ3の発泡弾性体層32が規定の特性を具備することができるものであればよく,特に制限はない。公知の原料の中から適宜に選択する。
【0030】
例えば,ウレタン原料を構成するポリオール成分としては,一般に軟質ポリウレタンフォームの製造に用いられる,ポリエーテルポリオール,ポリエステルポリオール,ポリマーポリオール等の公知のポリオール類の何れも適用可能である。また,ポリイソシアネート成分としては,公知の少なくとも2官能以上のポリイソシアネートが適用可能である。例えば,2,4−および2,6−トリレンジイソシアネート(TDI),オルトトルイジンジイソシアネート(TODI),ナフチレンジイソシアネート(NDI),キシリレンジイソシアネート(XDI)4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)およびカルボジイミド変成MDI,ポリメチレンポリフェニルイソシアネート,ポリメリックポリイソシアネート等が単独でまたは併用して使用可能である。
【0031】
また,これらポリオール成分とポリイソシアネート成分とが配合されてなるウレタン原料には,これらを用いて形成された弾性体層を有するトナー供給ローラ3を規定の特性を具備するものとすることができる限り,更に,架橋剤,発泡剤(水,低沸点物,ガス体等),界面活性剤,触媒等を添加することができる。また,同様に,これらを用いて形成されたポリウレタンフォームからなる弾性体層を有するトナー供給ローラ3を規定の特性を具備するものとすることができる限り,そのような原料には,必要に応じて難燃剤や充填剤,さらには帯電防止剤等も添加することができる。
【0032】
ウレタンフォームの硬度調節は,ポリオール,ポリイソシアネート,これらに添加する架橋剤や,触媒の種類や,配合量,成形条件を十分に吟味することによって達成可能である。例えば,数平均分子量が2500〜4000,官能基数(OH基の数)2〜4のポリオールを用いるMDIのような剛直性が低い構造を有するポリイソシアネートを用いる,ポリイソシアネートの含有量を少なくする,発泡剤として用いる水の配合量を少なくする等の方法がある。
【0033】
また,発泡弾性体層32の表面は,周方向に連続した凹凸形成をなしている。さらにその凸部33は,所定のピッチでストライプ状をなすように,ローラの軸方向に実質的に平行になるように形成されている。なお,凸部33は,ローラの軸方向に延びる形状であればよく,直線状に限らず,螺旋状に延びる形状であってもよい。
【0034】
発泡弾性体層32の表面に凹凸を形成する手段としては,公知の方法を採用する。例えば,芯金31が組み込まれた内面に凹凸を有する金型内で発泡させる一体成形方法,凹凸形状となるように発泡弾性体を切削して加工する方法,ガラスビーズ等を用いてブラスト処理することにより形成する方法がある。
【0035】
本形態では,スキン層除去の手間や金型のメンテナンスの手間を考慮し,導電性を付与した発泡弾性体に芯金31を通し,接着固定した後に断面が凹凸となるように切削することで凹凸を形成した。この方法では,切削する際の刃の大きさ,枚数,形状等によって凹凸のサイズを調整できる。
【0036】
凸部33の大きさは,形状維持や画像ムラ等を考慮し,その高さが500μm〜2000μm,ピッチが1000μm〜2000μmの範囲内であることが好ましい。凸部33の形状は,台形や半円形,V字形,三角形等が適用可能であり,特に限定するものではないが,本発明では台形形状としている。
【0037】
発泡弾性体層32に導電性を付与する方法としては,公知の方法を採用する。例えば,カーボンブラックやポリピロールやイオン導電物質等の導電性物質を混合した原料から発泡成形する方法,導電性物質を含む含浸液を発泡弾性体に含浸させ,加熱乾燥によって得る方法がある。本形態では,カーボンブラックを含む含浸液を発泡弾性体に含浸させる方法を採用した。本方法は,あらかじめ導電性物質を混合させる方法と比較して,発泡形成が容易であり,発泡弾性体が有する特性を損なわない。そのため,抵抗値や硬度の変動を極力抑えることができる。
【0038】
カーボンブラックとしては,ファーネスブラック,サーマルブラック,チャンネルブラック,アセチレンブラック,ケッチェンブラック,カラーブラック等のカーボンブラックおよびグラファイトが適用可能である。また,カーボンブラック,グラファイト等の表面にビニル系単量体を分岐状に重合させたカーボンブラック−高分子樹脂,グラファイト−高分子樹脂等の複合系のものを使用してもよい。
【0039】
具体的な含浸液調整方法および含浸方法,含浸液固定方法は,次のとおりである。まず,カーボンブラックをバインダとともに水または有機溶剤に混合し,所定粘度の含浸液を調整する。バインダは,カーボンブラックを発泡弾性体内に付着固定させるためのものである。バインダとしては,付着固定させた後にも弾性を有するもの,例えばゴムのラテックス等が好ましい。また,含浸液の粘度は特に限定しないが,含浸液が発泡弾性体層内に含浸しやすくなる点から言えば,8〜15cps(25℃)程度にすることが好ましい。粘度の調整のためには,カーボンブラックと水または有機溶剤との配合量を調整する。また,界面活性剤を添加して調整してもよい。
【0040】
次に,含浸液を発泡弾性体層32の表面から含浸させる。含浸方法は,含浸液を発泡弾性体層32の表面に塗布する方法,あるは含浸液に発泡弾性体層32を漬ける方法等がある。含浸の程度は,含浸層の厚みが発泡弾性体層32の表面から0.02mm〜0.1mmの範囲内にすることが好ましい。なお,その含浸程度の調節は,含浸液を搾り出す条件,発泡弾性体層32を構成するセルサイズ,および含浸液の濃度ないし粘度を調節することによって行う。
【0041】
本形態では,これまでの含浸液調整,含浸方法により,ローラの硬度を著しく上昇させることなく,トナー供給ローラ3の抵抗値(発泡弾性体層32の外周面から内周面までの抵抗値)を所定の範囲にすることができる。本形態では,その抵抗値を103Ω〜107Ωの範囲内とする。なお,抵抗値を小さくするほど大電流となり,ローラ自身を破壊するおそれがある。そのため,ローラの耐圧を考慮したより好ましい範囲は104Ω〜107Ωであり,さらに好ましくは105Ω〜107Ωの範囲内である。
【0042】
その後,ローラを加熱することにより,含浸液中の水または有機溶剤を蒸発させて乾燥させるとともに,含浸液中のバインダを硬化させる。それにより,導電性物質を発泡弾性体層32内のセル壁,セル骨格に付着固定させることができ,発泡弾性体層32が導電性を得る。加熱乾燥条件は,発泡弾性体層32の材質,サイズ,バインダの種類等によって異なるが,一般的に120℃〜130℃で20分〜30分間行う。
【0043】
[実施の形態の評価]
続いて,実施の形態にかかるトナー供給ローラの評価結果について説明する。本評価では,コニカミノルタ社製の「magicolor5450」(以下,「評価機」とする)を利用し,トナー供給ローラの構成を変えて評価を行った。具体的に,直径が5mmの鉄製芯金を利用し,発泡弾性体層の外径は12mm(厚さ:3.5mm)のものを使用した。なお,トナーは,評価機用のシアントナー(平均体積粒径:7μm,軟化点:60℃)を使用した。
【0044】
[第1の評価]
第1の評価では,トナー供給ローラの発泡弾性体層の「凹凸」,「抵抗値」,「硬さ」を評価要素とし,「ベタ追随性」および「トナー劣化度」について評価を行った。そして,高速現像プロセスを実現するのに必要な条件として,現像ローラの周速を450mm/s(=トナー供給ローラの周速,つまり周速比が1.0)とした。また,現像ローラに印加されるバイアスVbとトナー供給ローラに印加されるバイアスVrとの電位差(Vr−Vb)を−40Vとした。なお,各評価要素および評価項目の詳細については次の通りである。
・凹凸
発泡弾性層の表面に凹凸(凸部の高さ:800μm,凸部のピッチ:500μm)を有するものと有しないものとを用意した。凹凸が形成されたものは「有」と表記し,凹凸が形成されていない,すなわち平坦な表面のものは「無」と表記した。
・抵抗値の測定
評価機のトナーカートリッジにトナー供給ローラをセットし,評価機用の現像ローラの代わりに同外径の鉄製ローラをセットし,その鉄製ローラに電圧10Vを印加した際にトナー供給ローラに流れる電流値を計測し,その電流値から抵抗値を算出した。すなわち,発泡弾性体層の内周面と外周面との間の電気抵抗を測定した。
・硬さ
プッシュプルゲージ(株式会社イマダ製)を用い,直径が50mmのアルミ製円板によって発泡弾性体層を厚さ方向に30%圧縮させたとき(すなわち,発泡弾性体層の最小層厚が通常時の層厚の70%となるまでアルミ製円板を押し込んだとき(押し込み速度は10mm/min))の荷重を硬さとした。
・ベタ追随性
評価機によってベタ画像を印字し,現像ローラの1周目のトナー搬送量と10周目のトナー搬送量との差が0.1g/m2以下で「◎」とし,0.1g/m2より多く0.3g/m2以下で「○」とし,0.3g/m2よりも多いと「×」とした。
・トナー劣化度
評価機によってベタ画像を印字し,印字が5000枚の時点におけるトナー表面のSEM(Scanning Electron Microscope)写真を撮り,外添剤の埋没およびトナーの割れを評価した。外添剤の埋没およびトナーの割れがほぼない場合は「◎」とし,外添剤の埋没およびトナーの割れが少ない場合は「○」とし,外添剤の埋没およびトナーの割れが多い場合は「×」とした。
【0045】
評価結果を表1に示す。
【表1】

【0046】
表1に示したように,実施例1〜4のトナー供給ローラは,表面に凹凸を有している。さらには,抵抗値が103Ω〜107Ωの範囲内であり,ローラの硬さも1.5N以下となっている。すなわち,ローラの表面に凹凸を有し,抵抗値および硬さが上記の範囲内であれば,本評価のような高速現像プロセスであっても,ベタ追随性およびトナー劣化度ともに良好な結果が得られることがわかる。
【0047】
一方,比較例1では,抵抗値が108Ωと高いため,ローラがほぼ絶縁体となってしまう。そのため,トナーの搬送性能において静電気的な力が得られない。従って,本評価のような高速現像プロセスでは,ベタ追随性について良好な結果が得られなかった。
【0048】
また,比較例2では,抵抗値が102Ωと低いため,静電気的な力が得られる。そのため,ベタ追随性については良好な結果が得られた。しかし,低抵抗とするためにはカーボンブラックの含浸量が多く,ローラの硬さが1.8Nと高い。従って,トナーへのストレスが大きく,トナー劣化度について良好な結果が得られなかった。
【0049】
また,比較例3では,表面に凹凸が形成されていない。そのため,トナーの搬送性能において機械的な力が弱い。従って,本評価のような高速現像プロセスでは,ベタ追随性について良好な結果が得られなかった。
【0050】
[第2の評価]
続いて,トナー供給ローラと現像ローラとの「電位差」(トナー供給ローラへのバイアスVr−現像ローラへのバイアスVb)と,「ベタ追随性」との関係について評価を行った。第2の評価では,現像ローラの周速を450mm/s(周速比は1.0)とし,トナー供給ローラとして先の実施例1のローラを使用した。また,現像ローラへのバイアスVbを−60Vとし,トナー供給ローラへのバイアスVrを変化させた。なお,本評価では,負極性トナーを使用している。
【0051】
評価結果を表2に示す。
【表2】

【0052】
表2に示したように,実施例5〜7では電位差が−10V以下となっており,ベタ追随性について良好な結果が得られた。この結果から,トナー供給ローラへのバイアスVrが現像ローラへのバイアスVbよりも負極性が強く,Vr−Vbが−10V以下であればトナーの搬送性能について静電気的な力が補強されることがわかる。また,より好ましくはその電位差が−80V以下であればよいことがわかった。
【0053】
一方,比較例4では,Vr−Vbが−5Vしかない。そのため,トナーの搬送性能において静電気的な力が殆ど得られない。従って,本評価のような高速現像プロセスでは,ベタ追随性について良好な結果が得られなかった。
【0054】
[第3の評価]
続いて,トナー供給ローラと現像ローラとの「周速比」(トナー供給ローラ周速θ1/現像ローラ周速θ2)と,「ベタ追随性」および「トナー劣化度」との関係について評価を行った。第3の評価では,現像ローラの周速θ1を450mm/sとし,トナー供給ローラの周速θ2を変化させた。また,トナー供給ローラとして先の実施例1のローラを使用した。
【0055】
評価結果を表3に示す。
【表3】

【0056】
表3に示したように,実施例8〜10のローラは,周速比(θ1/θ2)が0.5〜2.0の範囲内となっている。すなわち,ローラの周速比が上記の範囲内であれば,本評価のような高速現像プロセスであっても,ベタ追随性およびトナー劣化度ともに良好な結果が得られることがわかる。
【0057】
一方,比較例5では,周速比が0.3,つまりトナー供給ローラの周速θ1が135mm/sと遅い。そのため,トナーの供給が追いつかない。従って,本評価のような高速現像プロセスでは,ベタ追随性にて良好な結果が得られなかった。
【0058】
また,比較例6では,周速比が2.5,つまりトナー供給ローラの周速θ1が1125mm/sと速い。そのため,トナーの供給については十分に行われる。しかし,速度の増加で現像ローラとトナー供給ローラとの摺擦回数が増える。よって,トナーへのストレスが増加する。従って,トナー劣化度について良好な結果が得られなかった。
【0059】
以上詳細に説明したように本形態のトナー供給ローラ3は,発泡弾性体層32の表面に,ローラの周方向に連続した凹凸を形成する凸部33を有する。そのため,トナーの保持力が高く,凹凸面を有しないものと比較して,トナーの搬送能力が高い。また,発泡弾性体層32は,電気抵抗が103Ω〜107Ωの範囲内となる導電性を有する。そのため,トナーの搬送時に静電気的な力が作用し,トナーの搬送能力を補強する。具体的には,トナー供給ローラ3へのバイアスVrと現像ローラへのバイアスVbとの電位差(Vr−Vb)が−10V以下となるように両バイアスを調節する。これにより,良好なトナー搬送能力が得られ,現像プロセスを高速化(現像ローラの周速が300mm/s以上)したとしても搬送能力の低下に起因する画質低下は生じない。
【0060】
また,発泡弾性体層32の表面の硬さ,すなわち直径が50mmの円板をトナー供給ローラ3に押し付けた際に,発泡弾性体層32の外周面から発泡弾性体層32を厚さ方向に30%圧縮させるのに必要な力は1.5N以下である。この硬さであれば,トナーへのストレスは少ない。そのため,トナーの劣化に起因する画質低下は生じない。よって,現像プロセスの高速化と,画質低下の抑制とを両立したトナー供給ローラおよびそれを有する現像装置が実現している。
【0061】
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,本発明は,カラープリンタ,モノクロプリンタ,コピー機,ファクシミリ等の各種の画像形成装置に適用可能である。
【0062】
また,像担持体としてローラ形状の感光体ドラムを用いているが,ベルト状の感光体ベルトを使用してもよい。また,帯電装置は,ローラ帯電方式のほか,コロナ放電方式の帯電チャージャ,ブレード,ブラシ等を使用してもよい。また,露光装置は,レーザによるものでもLEDによるものでもよい。また,転写装置は,転写ローラのほか,転写チャージャを使用してもよい。あるいは,感光体から用紙へ直接トナー像を転写する方式のほか,中間転写体を備え,2段階以上の転写を行う方式であってもよい。また,クリーニング装置は,クリーニングブレードのほか,クリーニングブラシ,クリーニングローラまたはそれらの組合せでもよい。あるいは,現像装置によって転写残トナーの回収を行うものであってもよい。また,定着装置は,定着ローラのほか,定着ベルトを用いてもよいし,非接触方式のものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】実施の形態にかかる画像形成装置の概略構成を示す図である。
【図2】実施の形態にかかる現像装置の概略構成を示す図である。
【図3】実施の形態にかかるトナー供給ローラの概略構成を示す図である。
【図4】図3に示したトナー供給ローラのX−X断面を示す図である。
【符号の説明】
【0064】
1 現像容器
2 現像ローラ
3 トナー供給ローラ
31 芯金(芯材)
32 発泡弾性体層
33 凸部
11 感光体ドラム
14 現像装置
100 画像形成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材と,前記芯材の外周面上に位置する発泡弾性体層とを備え,前記発泡弾性体層の表面には,ローラの周方向に連続した凹凸を形成し,ローラの軸方向に延びる凸部が設けられ,トナーの搬送に供するトナー供給ローラにおいて,
前記発泡弾性体層の内周面と外周面との間の電気抵抗は,103Ω〜107Ωの範囲内であり,
前記発泡弾性体層の外周面に直径が50mmの円板を押し当て前記発泡弾性体層の外周面から前記発泡弾性体層を厚さ方向に30%圧縮させるのに必要な力が1.5N以下となることを特徴とするトナー供給ローラ。
【請求項2】
請求項1に記載するトナー供給ローラと,トナーを担持し,前記トナー供給ローラと圧接する現像ローラとを備えた現像装置において,
前記現像ローラに印加されるバイアスVbと前記トナー供給ローラに印加されるバイアスVrとが次の式(A)を満たすことを特徴とする現像装置。
Vr−Vb≦−10 (A)
【請求項3】
請求項2に記載する現像装置において,
前記トナー供給ローラの周速θ1と前記現像ローラの周速θ2とが次の式(B)を満たす関係であることを特徴とする現像装置。
0.5≦θ1/θ2≦2 (B)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−96531(P2008−96531A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−275614(P2006−275614)
【出願日】平成18年10月6日(2006.10.6)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】