説明

トランスノルセルトラリン及びセロトニン受容体1A作動剤/拮抗剤を含む組成物及びその使用

種々の神経疾患を治療、予防、及び管理する方法及び組成物が本明細書に提供される。この方法は、トランスノルセルトラリンを、セロトニン受容体1A作動剤、拮抗剤、又は調節物質と組み合わせて投与することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2009年5月13日に出願された米国仮特許出願第61/177,997号の優先権を主張し、その全体を引用により本明細書に組み込む。
【0002】
(1.分野)
情動障害及び他の種々の神経疾患を治療、予防、及び管理するための方法及び組成物が本明細書に与えられる。
【背景技術】
【0003】
(2.背景)
(2.1トランスノルセルトラリン)
(1S,4S)-シス-4-(3,4-ジクロロフェニル)-1,2-3,4-テトラヒドロ-1-ナフタレンアミンは、ノルセルトラリンとしても知られ、セルトラリンの代謝物であり、米国でZoloft(登録商標)の商標で販売されている。そのトランス異性体(「トランスノルセルトラリン」)、すなわち(1R,4S)-トランス-4-(3,4-ジクロロフェニル)-1,2-3,4-テトラヒドロ-1-ナフタレンアミン及び(1S,4R)-トランス-4-(3,4-ジクロロフェニル)-1,2-3,4-テトラヒドロ-1-ナフタレンアミンは、例えば米国特許第7,087,785B2号(「‘785号特許」;その全体を引用により本明細書に組み込む)に記載されており、それぞれ以下の化学構造を有する。
【化1】

【0004】
セルトラリンの主な臨床用途はうつ病の治療である。さらに、情動障害及び他の種々の中枢神経疾患の治療、予防、又は管理におけるトランスノルセルトラリンの使用も‘785号特許に開示されている。そのような疾患には、うつ病、気分障害、不安障害、行動障害、摂食障害、薬物濫用障害、及び性機能障害があるが、これらに限定されない。
【0005】
(2.2神経疾患の治療)
セロトニン、すなわち5-HTは、種々の中枢神経疾患の治療において重要な役割を果たすことが知られている。とりわけ、5-HT1A(セロトニン1A)受容体は、脳内の5-HT放出を制御する重要な機構を与える。これらの受容体は縫線核中で接合部前に位置し、そこで自己受容体として機能して5-HTニューロンの発火率を抑制する。5-HT1A受容体は皮質辺縁系領域で接合部後にも位置し、そこでやはり5-HTニューロンの発火活性を低減させる。選択的セロトニン再取込み阻害剤(SSRI)又はセロトニンノルエピネフリン再取込み阻害剤(SNRI)による治療の開始時に、5-HT1A自己受容体は5-HTにより活性化され、5-HTニューロン発火の低減につながる。しかし、SSRI又はSNRI治療が続くにつれ、5-HT1A自己受容体は脱感作され、発火活性が復活する。この適応的な変化は、少なくとも部分的に、種々の神経疾患の治療におけるSSRI及びSNRIの効能の遅れの原因であると考えられている。
【0006】
したがって、5-HT受容体の脱感作が最低限にでき、5-HTニューロン発火の増加が維持され得る、種々の神経疾患の治療、予防、又は管理に関して必要性が存在する。
【発明の概要】
【0007】
(3.概要)
セロトニン受容体1A受容体作動剤(完全又は部分)、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、もしくは立体異性体と組み合わせたトランスノルセルトラリン、又はその医薬として許容し得る塩、もしくは溶媒和物(例えば、水和物)を対象(例えば、患者)に投与することを含む、神経疾患を治療、予防、又は管理する方法が本明細書に与えられる。本明細書に与えられる方法により治療、予防、又は管理され得る神経疾患は、本明細書中で他の場所に詳細に記載される。
【0008】
トランスノルセルトラリン、又はその医薬として許容し得る塩、もしくは溶媒和物(例えば、水和物)、及びセロトニン受容体1A受容体拮抗剤(完全又は部分)、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、もしくは立体異性体を含む医薬組成物及び剤形も与えられる。該組成物及び剤形は、任意に1種以上の他の治療剤を含んでよい。
【0009】
トランスノルセルトラリン、又はその医薬として許容し得る塩、もしくは溶媒和物(例えば、水和物)、及び5-HT1A受容体の調節物質、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、もしくは立体異性体を含む医薬組成物及び剤形も提供される。該組成物及び剤形は、任意に1種以上の他の治療剤を含んでよい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
(4.図面の簡単な説明)
【図1】(1R,4S)-トランス-4-(3,4-ジクロロフェニル)-1,2-3,4-テトラヒドロ-1-ナフタレンアミンがセロトニン1A受容体拮抗剤WAY-100635と組み合わされて投与された場合に得られた背側縫線核5-HT発火率の増加を表す。
【図1A】WAY-100635により予備治療されたラットの背側縫線核5-HTニューロンの自発活性に対する、(1R,4S)-トランス-4-(3,4-ジクロロフェニル)-1,2-3,4-テトラヒドロ-1-ナフタレンアミンの静脈内投与の効果を示す、積分発火ヒストグラムの例である。
【図1B】背側縫線核における(1R,4S)-トランス-4-(3,4-ジクロロフェニル)-1,2-3,4-テトラヒドロ-1-ナフタレンアミンの各投与量で観察された基礎発火率の増加パーセントの平均(±SEM)を表す。
【図1C】5-HTニューロンの単一スパイクの数の平均(±SEM)を表す。
【図1D】5-HTニューロンのバーストの数の平均(±SEM)を表す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(5.詳細な説明)
本明細書に提供される特定の実施態様は、セロトニン1A受容体作動剤又は拮抗剤と組み合わせて使用される場合、トランスノルセルトラリンが、神経疾患を治療する治療効力に有利に影響するという発見に部分的に基づいている。特定の理論により制限されることなく、トランスノルセルトラリンとセロトニン1A受容体作動剤又は拮抗剤との組みあわせは、5-HTニューロン発火の著しい増大を生み出す。やはり特定の理論により制限されることなく、トランスノルセルトラリンとセロトニン受容体1A受容体作動剤又は拮抗剤との組みあわせは、抗神経疾患活性のより速い開始、神経疾患を治療するための向上した効能、及び治療耐性神経疾患を治療するための向上した効能を与え得る。
【0012】
したがって、特定の実施態様において、中枢神経系疾患を治療、予防、及び/又は管理する方法及び組成物が本明細書に提供される。
【0013】
(5.1定義)
本明細書では、他に示されない限り、「治療する(treat)、(treating)」及び「治療(treatment)」という用語は、疾病もしくは疾患、又は疾病もしくは疾患に関連する1つ以上の症状の根絶又は緩解を意味する。特定の実施態様において、該用語は、そのような疾病又は疾患を持つ対象への1種以上の予防剤又は治療剤の投与から生じる、疾病又は疾患の拡大又は悪化を最低限にすることを意味する。いくつかの実施態様において、該用語は、他の追加の活性薬剤の有無にかかわらず、特定の疾病の症状の発症後の、本明細書に提供される化合物の投与を意味する。
【0014】
本明細書では、他に示されない限り、「予防する(prevent)、(preventing)」及び「予防(prevention)」という用語は、疾病もしくは疾患、又はその1つ以上の症状の発症、再発、又は拡大の予防を意味する。特定の実施態様において、該用語は、他の追加の活性化合物の有無にかかわらず、症状の発症前の、特に本明細書に提供されている疾病又は疾患の危険性のある患者への、本明細書に提供される化合物による治療又は該化合物の投与を意味する。該用語は、特定の疾病の症状の阻害又は低減を包含する。特に疾病の家族歴のある患者は、特定の実施態様において予防レジメンの候補である。さらに、症状再発の病歴を持つ患者も、予防の潜在的候補である。この点で、「予防」という用語は、「予防的治療」という用語と交換可能に使用できる。
【0015】
本明細書では、特記されない限り、「管理する(manage)、(managing)」及び「管理(management)」という用語は、疾病もしくは疾患、又はその1つ以上の症状の進行、拡大、又は悪化の予防又は減速を意味する。多くの場合、予防剤及び/又は治療剤から対象が得る有利な効果は、疾病又は疾患の治癒にはならない。この点で、「管理」という用語は、疾病の再発を予防又は最低限にするための、特定の疾病を既に患っている患者の治療を包含する。
【0016】
本明細書では、特記されない限り、化合物の「治療上有効な量」は、疾病もしくは疾患の治療もしくは管理において治療効果を与えるのに十分な量、又は該疾病もしくは疾患に関連する1つ以上の症状を遅延又は最低限にするのに十分な量である。化合物の治療上有効な量は、疾病又は疾患の治療又は管理において治療効果を与える、単独又は他の療法と組み合わされた治療剤の量を意味する。「治療上有効な量」という用語は、療法全体を向上させる量、疾病もしくは疾患の症状もしくは原因を低減もしくは回避する量、又は他の治療剤の治療効力を増大させる量を包含しうる。
【0017】
本明細書では、特記されない限り、化合物の「予防上有効な量」は、疾病もしくは疾患を予防し、又はその再発を予防するに十分な量である。化合物の予防上有効な量は、疾病の予防において予防効果を与える、単独又は他の薬剤と組み合わされた治療剤の量を意味する。「予防上有効な量」という用語は、予防全体を向上させる量、又は他の予防剤の予防効力を増大させる量を含みうる。
【0018】
本明細書では、特記されない限り、「対象」という用語は、霊長目動物(例えば、ヒト)、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、マウスなどを含むがこれらに限定されない哺乳動物などの動物を含むように本明細書において定義される。具体的な実施態様において、対象はヒトである。
【0019】
本明細書では、他に示されない限り、「医薬として許容し得る塩」という用語は、無機酸及び有機酸を含む、医薬として許容し得る非毒性の酸から製造される塩を意味する。好適な非毒性の酸には、酢酸、アルギン酸、アントラニル酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、フロ酸、グルコン酸、グルタミン酸、グルコレン酸(glucorenic)、ガラクツロン酸、グリシド酸、臭化水素酸、塩化水素酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、硝酸、パモ酸、パントテン酸、フェニル酢酸、プロピオン酸、リン酸、サリチル酸、ステアリン酸、コハク酸、スルファニル酸、硫酸、酒石酸、p-トルエンスルホン酸などがあるがこれらに限定されない無機酸及び有機酸がある。
【0020】
本明細書では、他に示されない限り、「溶媒和物」という用語は、本明細書に提供される化合物又はその塩であって、非共有結合の分子間力により結合した化学量論又は非化学量論的な量の溶媒をさらに含むものを意味する。溶媒が水である場合、溶媒和物は水和物である。
【0021】
本明細書では、特記されない限り、「神経疾患」という用語は、哺乳動物の中枢神経系又は末梢神経系の任意の病態を意味する。「神経疾患」という用語は、神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、及び筋萎縮性側索硬化症)、神経精神病(例えば、統合失調症及び全般性不安障害などの不安)、及び情動障害(例えば、うつ病及び注意欠陥障害)を含むが、これらに限定されない。例示的な神経疾患には、MLS(小脳性運動失調症)、ハンチントン病、ダウン症候群、多発梗塞性認知症、エピレクティキュス状態(status epilecticus)、挫傷(例えば、脊髄損傷及び頭部損傷)、ウイルス感染が誘発する神経変性(例えば、AIDS、脳症)、てんかん、良性健忘、非開放性頭部損傷、睡眠障害、うつ病(例えば、双極性障害)、認知症、運動障害、精神病、アルコール依存症、心的外傷後ストレス障害などがあるが、これらに限定されない。「神経疾患」は、該疾患に関連する任意の病態も含む。例えば、神経変性疾患を治療する方法は、神経変性疾患に関連する記憶喪失及び/又は認知喪失を治療する方法を含む。例示的な方法は、神経変性疾患に特有なニューロン機能の喪失の治療又は予防も含むだろう。「神経疾患」は、少なくとも部分的にモノアミン(例えば、ノルエピネフリン)シグナル伝達経路に関与する任意の疾病又は病態(例えば、心血管疾患)も含む。
【0022】
本明細書では、特記されない限り、「情動障害」という用語は、うつ病、注意欠陥障害、多動性を伴う注意欠陥障害、双極性及び躁状態などを含む。「注意欠陥障害(ADD)」及び「多動性を伴う注意欠陥障害(ADDH)」又は注意欠陥/多動性障害(ADHD)という用語は、「精神失調の診断と統計の手引き(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)」第4版、American Psychiatric Association(1997年)(DSM-IV(商標))にある容認された意味に従い本明細書において使用される。
【0023】
本明細書では、特記されない限り、「うつ病」という用語は、大うつ病性障害(MDD)、双極性障害、季節性情動障害(SAD)、及び気分変調症を含むがこれらに限定されない全形態のうつ病を含む。「大うつ病性障害」は、本明細書において「単極性うつ」及び「大うつ病」と交換可能に使用される。「うつ病」は、全形態の疲労(例えば、慢性疲労症候群)及び認知障害など、通常うつ病に関連する任意の病態も含みうる。
【0024】
本明細書では、特記されない限り、「強迫性障害」、「薬物濫用」、「月経前症候群」、「不安」、「摂食障害」、及び「片頭痛」という用語は、当分野において認められた意味に一致して本明細書において使用される。例えば、DSM-IV(商標)を参照されたい。例えば、本明細書では「摂食障害」という用語は、摂食を避ける異常な欲望又は異常に大量の食品を消費する制御不可能な衝動を意味する。これらの障害は、患者の社会的に健康な状態に影響するだけでなく、身体的に健康な状態にも影響することがある。摂食障害の例には、神経性無食欲症、過食、及び気晴らし食いがあるが、これらに限定されない。
【0025】
本明細書では、特記されない限り、「疼痛」という用語は、不快な感覚体験及び感情体験を意味する。本明細書での「疼痛」という用語は全ての範疇の疼痛を意味し、刺激又は神経反応に関して記載される疼痛、例えば、体性痛(有害な刺激に対する正常な神経反応)及び神経因性疼痛(明らかな有害な入力がないことが多い、傷害を受けた又は変更された感覚経路の異常な反応);時間に関して分類される疼痛、例えば、慢性疼痛及び急性疼痛;例えば、軽度、中程度、又は重症など重症度に関して分類される疼痛;並びに病態又は症候群の症状又は結果である疼痛、例えば、炎症性疼痛、ガンの疼痛、AIDSの疼痛、関節症、片頭痛、三叉神経痛、心臓虚血、及び糖尿病性末梢神経因性疼痛がある。例えば、引用によりその全体が本明細書に組み込まれる「ハリソン内科学原理(Harrison's Principles of Internal Medicine)」93〜98ページ(Wilsonら編、第12版、1991年);Williamsらの文献J. Med. Chem. 42: 1481-1485 (1999)を参照されたい。「疼痛」は、混合病因疼痛(mixed etiology pain)、二重機構疼痛(dual mechanism pain)、異痛症、カウザルギー、中枢性疼痛、知覚過敏、痛感過敏、感覚異常、及び痛覚過敏も含むものとする。さらに、「疼痛」という用語は、神経系の機能不全から生じる疼痛を含む。これは、神経因性疼痛の臨床的特徴と可能性のある通常の病態生理学的な機構とを併せ持つが、神経系のある部分に特定可能な傷害により引き起こされるのではない器質性疼痛状態である。
【0026】
本明細書では、「体性痛」という用語は、傷害又は病気、例えば、外傷、火傷、感染、炎症、又はガンなどの疾病プロセスなどの有害な刺激に対する正常な神経の反応を意味し、皮膚痛(例えば、皮膚、筋肉、又は関節由来)及び内臓痛(例えば、臓器由来)の両方を含む。
【0027】
本明細書では、「神経因性疼痛」という用語は、神経系への損傷から生じる異質な神経状態の群を意味する。該用語は、末梢及び/又は中枢感覚経路への傷害又はその機能不全、及び神経系の機能不全から生じる疼痛も意味し、明らかな有害な刺激なしに疼痛が起こり、又は持続することが多い。これには、末梢性神経障害に関連する疼痛並びに中枢神経因性疼痛も含まれる。よく見られる種類の末梢性神経因性疼痛には、糖尿病性神経障害(糖尿病性末梢神経因性疼痛、又はDN、DPN、もしくはDPNPとも呼ばれる)、ヘルペス後神経痛(PHN)、及び三叉神経痛(TGN)がある。脳又は脊髄への損傷を含む中枢神経因性疼痛には、脳卒中、脊髄損傷後、及び多発性硬化症の結果として起こることがあり、この用語に包含される。神経因性疼痛の定義に含まれるものとする他の種類の疼痛には、神経因性ガン性疼痛から生じる疼痛、HIV/AIDSが誘発する疼痛、幻肢痛、及び複合性局所疼痛症候群があるが、これらに限定されない。
【0028】
該用語は、感覚消失、異痛症(非有毒な刺激が生み出す疼痛)、痛覚過敏、及び痛感過敏(遅延した知覚、加重、及び痛みのある残感覚)を含むがこれらに限定されない、神経因性疼痛の通常の臨床的特徴も含む。疼痛は、侵害受容性と神経因性の種類の組み合わせであることが多く、例えば機械的脊椎痛及び神経根傷害又は脊髄症がある。
【0029】
本明細書では、特記されない限り、「急性疼痛」という用語は、典型的には侵襲性の処置、外傷、及び疾病に関連する有毒な化学的、熱的、又は機械的刺激に対する正常で予測される生理的反応を意味する。それは一般的には時間が限られており、組織傷害をする恐れのある、かつ/又は組織傷害を生み出す刺激に対する適切な反応として見られることがある。該用語は、短い期間又は突然の発症により特徴づけられる疼痛も意味する。
【0030】
本明細書では、特記されない限り、「慢性疼痛」という用語は、広範囲の疾患、例えば、外傷、悪性腫瘍、及び関節リウマチなどの慢性炎症性疾患において起こる疼痛を包含する。慢性疼痛は、約6ヶ月より長く続くこともある。さらに、慢性疼痛の強度は、有毒な刺激又は根元的なプロセスの強度と不釣り合いなことがある。該用語は、慢性疾患に関連する疼痛、又は根元的な疾患の消散もしくは傷害の治癒を過ぎても持続し、根元的なプロセスから予測されるよりも強いことの多い疼痛も意味する。それは頻繁に再発しやすい。
【0031】
本明細書では、特記されない限り、「炎症性疼痛」という用語は、組織の傷害及びその生じた炎症プロセスに反応する疼痛である。炎症性疼痛は、治癒を促進する生理的反応を惹起する点で適応性である。しかし、炎症はニューロン機能に影響することもある。COX2酵素により誘導されるPGE2、ブラジキニン、及び他の物質を含む炎症メディエーターは、痛みを伝達するニューロンの受容体に結合してその機能を変え、その興奮性を高め、それにより痛覚を増大させる。慢性疼痛の多くが炎症成分を有する。該用語は、炎症又は免疫系疾患の症状又は結果として生じる疼痛も意味する。
【0032】
本明細書では、特記されない限り、「内臓痛」という用語は、内臓内に位置する疼痛を意味する。
本明細書では、特記されない限り、「混合病因疼痛」という用語は、炎症性成分及び神経因性成分の両方を含む疼痛を意味する。
本明細書では、特記されない限り、「二重機構疼痛」という用語は、末梢性の過敏化及び中枢性の過敏化の両方により増幅及び維持される疼痛を意味する。
【0033】
本明細書では、特記されない限り、「カウザルギー」という用語は、外傷性の神経損傷後の持続する灼熱感、異痛症、及び痛感過敏の症候群を意味し、血管運動機能障害及び発汗の機能障害並びに後の栄養変化を伴うことが多い。本明細書では、特記されない限り、「中枢性疼痛」という用語は、中枢神経系の一次損傷又は機能不全により起こる疼痛を意味する。
【0034】
本明細書では、特記されない限り、「知覚過敏」という用語は、特殊感覚を除き、刺激に対する感受性の増加を意味する。
【0035】
本明細書では、特記されない限り、「痛感過敏」という用語は、刺激、特に反復性の刺激に対する異常に痛みのある反応、並びに上昇した閾値により特徴づけられる有痛症候群を意味する。異痛症、知覚過敏、痛覚過敏、又は感覚異常とともに起こることがある。
【0036】
本明細書では、特記されない限り、「感覚異常」という用語は、自発性か誘発性かに関わらず、不快な異常感覚を意味する。特定の実施態様において、感覚異常には痛覚過敏及び異痛症が含まれる。
【0037】
本明細書では、特記されない限り、「痛覚過敏」という用語は、通常痛みのある刺激に対する増加した反応を意味する。それは、閾値上刺激に対する増加した疼痛を反映する。
本明細書では、特記されない限り、「異痛症」という用語は、通常痛みを起こさない刺激による疼痛を意味する。
【0038】
本明細書では、特記されない限り、「糖尿病性末梢神経因性疼痛(DPNP)」という用語は、糖尿病性神経障害、DN、又は糖尿病性末梢神経障害とも呼ばれ、糖尿病に関連する神経障害により起こる慢性疼痛を意味する。DPNPの典型的な提示は、「灼熱痛」又は「電撃痛」としてだけでなく重症のうずく痛みとしても説明できる脚の疼痛又は刺痛である。一般性は低いが、患者は、その疼痛を、痒い、引き裂かれるとして、又は歯痛のように説明することがある。その疼痛は、異痛症及び痛覚過敏を伴うことがあり、しびれなどの症状がないこともある。
【0039】
本明細書では、特記されない限り、「帯状疱疹後神経痛(PHN)」とも呼ばれる「ヘルペス後神経痛」という用語は、神経繊維及び皮膚を冒す有痛性の病態を意味する。特定の理論に限定はされないが、それは帯状疱疹の合併症であり、最初に水痘を起こす水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)の第2の発病である。
【0040】
本明細書では、特記されない限り、「神経因性ガン性疼痛」という用語はガンの結果としての末梢神経因性疼痛を意味し、腫瘍による神経の浸潤又は圧迫により直接起こることも、放射線療法及び化学療法(化学療法誘発性神経障害)などのガンの治療により間接的に起こることもある。
【0041】
本明細書では、特記されない限り、「HIV/AIDS末梢神経障害」又は「HIV/AIDS関連神経障害」という用語は、急性又は慢性の炎症性脱髄性神経障害(それぞれAIDP及びCIDP)などのHIV/AIDSにより起こる末梢神経障害並びにHIV/AIDSの治療に使用される薬剤の副作用として生じる末梢神経障害を意味する。
【0042】
本明細書では、特記されない限り、「幻肢痛」という用語は、切断された肢のあった箇所から来るように感じられる疼痛を意味する。幻肢痛は、麻痺の後(例えば、脊髄損傷後)の肢に起こることもある。「幻肢痛」は本質的に通常慢性である。
【0043】
本明細書では、特記されない限り、「三叉神経痛(TN)」という用語は、神経の枝が分布している顔の部分(唇、目、鼻、頭皮、額、上顎、及び下顎)に刺すような強い電撃様の痛みの発現を起こす、第5脳神経(三叉神経)の障害を意味する。それは「自殺病」としても知られる。
【0044】
本明細書では、特記されない限り、以前は反射性交感神経性ジストロフィー(RSD)として知られていた「複合性局所疼痛症候群(CRPS)」という用語は、時間経過と共に良くならずにむしろ悪化する、傷害の重症度に釣り合わない連続した強い痛みが主な症状である慢性の疼痛病態を意味する。該用語は、末梢神経以外の組織損傷により起こる病態を含む1型CRPS及び主要神経損傷により症状が誘発されカウザルギーと呼ばれることもある2型CRPSを包含する。
【0045】
本明細書では、特記されない限り、「線維筋痛症」という用語は、疲労及びある種類の他の症状を伴う、びまん性又は特異的な筋肉、関節、又は骨の痛みにより特徴づけられる慢性の病態を意味する。以前は、線維筋痛症は、線維炎、慢性筋肉痛症候群、心因性リウマチ、及び緊張性筋肉痛などの他の名前で知られていた。
【0046】
本明細書では、特記されない限り、「痙攣」という用語は神経疾患の1つを意味し、「発作」と交換可能に使用されるが、発作には多くの種類があり、そのいくつかは痙攣でなく微弱又は軽度の症状を有する。全種類の発作は、脳内の無秩序で突然の電気的活性により起こりうる。いくつかの実施態様において、痙攣は、筋肉が収縮と緩和を繰り返す、急速で制御不可能な震えである。
【0047】
(5.2治療、予防、及び管理の方法)
一実施態様において、治療上又は予防上有効な量のトランスノルセルトラリン、又はその医薬として許容し得る塩、もしくは溶媒和物、及び完全又は部分セロトニン1A選択的拮抗剤もしくは作動剤、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、もしくは立体異性体を対象(例えば、患者)に投与することを含む、中枢神経系疾患を治療、予防、又は管理する方法が本明細書に提供される。
【0048】
一実施態様において、該トランスノルセルトラリンは(1R,4S)-トランスノルセルトラリン、すなわち(1R,4S)-トランス-4-(3,4-ジクロロフェニル)-1,2-3,4-テトラヒドロ-1-ナフタレンアミンである。他の実施態様において、該トランスノルセルトラリンは(1S,4R)-トランスノルセルトラリン、すなわち(1S,4R)-トランス-4-(3,4-ジクロロフェニル)-1,2-3,4-テトラヒドロ-1-ナフタレンアミンである。
【0049】
本明細書に記載される方法と関連して使用できるセロトニン1A選択的拮抗剤又は作動剤の例には、ブスピロン(Buspar(登録商標))、ピンドロール(Visken(登録商標))、エルトプラジン、タンドスピロン(Sediel(登録商標))、レコゾタン、AV-965、及びWAY-100635があるが、これらに限定されない。
【0050】
一実施態様において、該セロトニン1A受容体作動剤はブスピロン(Buspar(登録商標))である。他の実施態様において、該セロトニン1A受容体作動剤はタンドスピロン(Sediel(登録商標))である。他の実施態様において、該セロトニン1A受容体作動剤はエルトプラジンである。他の実施態様において、該セロトニン1A受容体拮抗剤はWAY-100635である。他の実施態様において、該セロトニン1A受容体拮抗剤はレコゾタンである。他の実施態様において、該セロトニン1A受容体拮抗剤はAV-965である。他の実施態様において、該セロトニン1A受容体拮抗剤はピンドロール(セロトニン1A部分作動剤としても記載される)である。一実施態様において、該トランスノルセルトラリンは(1S,4R)-トランスノルセルトラリンであり、該セロトニン1A拮抗剤はWAY-100635である。他の実施態様において、該トランスノルセルトラリンは(1R,4S)-トランスノルセルトラリンであり、該セロトニン1A拮抗剤はWAY-100635である。WAY-100635は、例えば、Benjaminらの文献Psychopharmacology, 188(2): 244-251 (2006)に記載されており、例えば、Sigma/RBI(カナダ、オンタリオ州、オークビル)から市販されている。
【0051】
他の実施態様において、治療上又は予防上有効な量のトランスノルセルトラリン、又はその医薬として許容し得る塩、もしくは溶媒和物、及びセロトニン1A受容体調節物質、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、もしくは立体異性体を対象(例えば、患者)に投与することを含む、中枢神経系疾患を治療、予防、又は管理する方法が本明細書に提供される。
【0052】
一実施態様において、該トランスノルセルトラリンは(1S,4R)-トランスノルセルトラリンであり、該セロトニン受容体1A拮抗剤はピンドロールである。他の実施態様において、該トランスノルセルトラリンは(1R,4S)-トランスノルセルトラリンであり、該セロトニン受容体1A拮抗剤はピンドロールである。
【0053】
一実施態様において、該トランスノルセルトラリンは(1S,4R)-トランスノルセルトラリンであり、該セロトニン受容体1A作動剤はブスピロンである。他の実施態様において、該トランスノルセルトラリンは(1R,4S)-トランスノルセルトラリンであり、該セロトニン受容体1A作動剤はブスピロンである。
【0054】
一実施態様において、該トランスノルセルトラリンは(1S,4R)-トランスノルセルトラリンであり、該セロトニン受容体1A作動剤はエルトプラジンである。他の実施態様において、該トランスノルセルトラリンは(1R,4S)-トランスノルセルトラリンであり、該セロトニン受容体1A作動剤はエルトプラジンである。
【0055】
一実施態様において、該トランスノルセルトラリンは(1S,4R)-トランスノルセルトラリンであり、該セロトニン受容体1A作動剤はタンドスピロン(Sediel(登録商標))である。他の実施態様において、該トランスノルセルトラリンは(1R,4S)-トランスノルセルトラリンであり、該セロトニン受容体1A作動剤はタンドスピロン(Sediel(登録商標))である。
【0056】
一実施態様において、該トランスノルセルトラリンは(1S,4R)-トランスノルセルトラリンであり、該セロトニン受容体1A拮抗剤はレコゾタンである。他の実施態様において、該トランスノルセルトラリンは(1R,4S)-トランスノルセルトラリンであり、該セロトニン受容体1A拮抗剤はレコゾタンである。一実施態様において、該トランスノルセルトラリンは(1S,4R)-トランスノルセルトラリンであり、該セロトニン受容体1A拮抗剤はAV-965である。他の実施態様において、該トランスノルセルトラリンは(1R,4S)-トランスノルセルトラリンであり、該セロトニン受容体1A拮抗剤はAV-965である。
【0057】
いくつかの実施態様において、該トランスノルセルトラリンは、セロトニン1A受容体でセロトニンの活性を調節する特定の他の薬剤と組み合わせて使用できる。そのような薬剤には、セロトニン1A受容体調節物質及び部分セロトニン1A作動剤又は拮抗剤がある。
【0058】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される方法は、1種以上の他の活性薬剤の投与を任意に含むことがある。そのような薬剤には、本明細書に与えられる神経疾患の治療、予防、及び/又は管理に従来利用されている薬物及び療法があるが、これらに限定されない。
【0059】
一実施態様において、抗うつ剤様作用をもたらす方法が本明細書に提供される。該方法は、対象(例えば、哺乳動物)に、治療上有効な量のトランスノルセルトラリン、又はその医薬として許容し得る塩、もしくは溶媒和物を、選択的セロトニン1A受容体作動剤又は拮抗剤と組み合わせて投与することを含む。抗うつ剤様作用は、当分野に公知であるもの及び本明細書に記載されるものなどの疾病の動物モデルを使用して測定できる。
【0060】
他の実施態様において、神経疾患は、うつ病(例えば、大うつ病性障害、双極性障害、単極性障害、気分変調症、及び季節性情動障害);認知障害;線維筋痛症;疼痛(例えば、神経因性疼痛);精神病態により生じる睡眠障害を含む睡眠関連障害(例えば、睡眠時無呼吸、不眠症、ナルコレプシー、脱力発作);慢性疲労症候群;注意欠陥障害(ADD);注意欠陥多動性障害(ADHD);レストレスレッグ症候群;統合失調症;不安(例えば、全般性不安障害、社会不安障害、パニック障害);強迫性障害;心的外傷後ストレス障害;季節性情動障害(SAD);月経前不機嫌;閉経後の血管運動症状(例えば、ほてり、寝汗);神経変性疾患(例えば、パーキンソン病、アルツハイマー病、及び筋萎縮性側索硬化症);躁状態;気分変調性障害;気分循環性障害;肥満;及び薬物の濫用又は依存症(例えば、コカイン中毒、ニコチン中毒)である。他の実施態様において、本明細書に提供される化合物は、認知障害及びうつ病など合併する2種以上の病態/疾患を治療するのに有用である。
【0061】
特定の実施態様において、神経疾患には、限定はされないが、老人性認知症、アルツハイマー型認知症、認識、記憶喪失、記憶喪失/健忘症候群、てんかん、意識障害、昏睡、注意の低下、言語障害、レノックス症候群、自閉症、及び多動症候群を含む大脳機能障害がある。
【0062】
神経因性疼痛には、ヘルペス後(又は帯状疱疹後)神経痛、反射性交感神経性ジストロフィー/カウザルギー、又は神経外傷、幻肢痛、手根管症候群、及び末梢神経障害(糖尿病性神経障害又は慢性のアルコール使用から起こる神経障害など)があるが、これらに限定されない。
【0063】
本明細書に提供される方法及び/又は組成物を利用して治療、予防、及び/又は管理できる他の例示的な疾病及び病態には、肥満;片頭痛(migraine)又は片頭痛(migraine headache);不随意排尿、尿滴下又は尿漏出、腹圧性尿失禁(SUI)、切迫尿失禁、運動性尿失禁、反射性尿失禁、受動性失禁、及び溢流性失禁を含むがこれらに限定されない尿失禁;心理的及び/又は生理的因子により起こる性機能不全、勃起不全、早漏、膣内乾燥、性的興奮の欠如、絶頂感を得ることの不能を含むがこれらに限定されない男性又は女性の性機能不全、及び性的欲求の抑制、性的興奮の抑制、女性絶頂感の抑制、男性絶頂感の抑制、機能性性交疼痛症、機能性膣痙攣、及び不定型心理的性機能不全を含むがこれらに限定されない心理的性機能不全がある。
【0064】
一実施態様において、該神経疾患はうつ病である。他の実施態様において、該神経疾患は不安障害である。他の実施態様において、該神経疾患は疼痛である。他の実施態様において、該神経疾患は神経因性疼痛である。他の実施態様において、該神経因性疼痛は糖尿病性神経障害である。
【0065】
一実施態様において、該神経疾患は神経変性疾患である。一実施態様において、該神経変性疾患はパーキンソン病である。他の実施態様において、該神経変性疾患はアルツハイマー病である。
【0066】
一実施態様において、該神経疾患は、失禁、例えば、尿失禁である。他の実施態様において、該神経疾患は性機能不全である。
一実施態様において、該神経疾患は肥満であり、患者に供給する治療上有効な量の化合物は、該患者が心的飽和を感じるのに十分な量である。
一実施態様において、本明細書に記載される化合物は、前記化合物への中毒を起こさずに、中枢神経疾患を治療、予防、及び/又は管理する。
【0067】
トランスノルセルトラリンが選択的セロトニン1A受容体作動剤又は拮抗剤と組み合わされて使用される場合、該トランスノルセルトラリン及びセロトニン1A受容体作動剤又は拮抗剤は、同一又は異なる投与経路を利用して同時又は連続的に投与できる。いくつかの実施態様において、トランスノルセルトラリンは、セロトニン1A受容体作動剤又は拮抗剤の投与の前に投与される。他の実施態様において、トランスノルセルトラリン及びセロトニン1A受容体作動剤又は拮抗剤は同時に投与される。他の実施態様において、トランスノルセルトラリンは、セロトニン1A受容体作動剤又は拮抗剤の投与の後に投与される。
【0068】
治療上又は予防上有効な投与量の有効成分を患者に与えるために、任意の好適な投与経路を利用できる。例えば、経口、粘膜(例えば、鼻腔内、舌下、頬側、直腸、膣内)、非経口(例えば、静脈内、筋肉内)、経皮、及び皮下経路を利用できる。例示的な投与経路には、経口、経皮、及び粘膜がある。そのような経路に好適な剤形には、経皮パッチ、点眼液、スプレー、及びエアゾールがあるが、これらに限定されない。経皮組成物は、クリーム、ローション、及び/又は乳剤の形態をとることもでき、皮膚に塗るために適切な接着剤に含まれてよく、この目的のために当分野に従来あるマトリックス又はリザーバータイプの経皮パッチに含まれてもよい。例示的な経皮剤形は、「リザーバータイプ」又は「マトリックスタイプ」のパッチであり、皮膚に貼付され特定の時間着用されて、所望量の有効成分の浸透を可能にする。必要な時にパッチを新しいパッチに交換して、患者へ有効成分の一定な投与を与えることができる。
【0069】
本明細書に記載される疾患を治療、予防、及び/又は管理するために対象(例えば、患者)に投与すべき量は、利用される特定の化合物の活性、投与経路、投与の時間、利用される特定の化合物の排泄又は代謝の速度、治療の期間、利用される特定の化合物と組み合わせて使用される他の薬剤、化合物、及び/又は物質、治療される患者の年齢、性別、体重、病態、全般的な健康状態、及び以前の病歴、並びに医学分野に周知である類似の因子を含む種々の因子により変わるであろう。
【0070】
当分野の通常の技量を有する医師又は獣医師は、要求される有効量を容易に決定し、処方できる。例えば、医師又は獣医師であれば、所望の治療効果を達成するために要求されるより低いレベルで、利用される化合物の投与量を始め、所望の効果が達成されるまで徐々に用量を増やすことができるだろう。
【0071】
一般的に、本明細書に提供される化合物の好適な1日量は、治療効果又は予防効果を生み出すのに有効な最低の投与量である、化合物の量であろう。そのような有効な投与量は、一般的に上述の因子に依存するだろう。一般的に、患者に対する本明細書に記載される化合物の、経口、静脈内、脳室内、及び皮下投与量は、1日あたり体重キログラムあたり約0.005mgから体重キログラムあたり約5mgの範囲だろう。一実施態様において、本明細書に提供される化合物の経口投与量は、1日あたり約0.1mgから約5gの範囲だろう。一実施態様において、本明細書に提供される化合物の経口投与量は、1日あたり約0.25mgから約2gの範囲だろう。一実施態様において、本明細書に提供される化合物の経口投与量は、1日あたり約0.5mgから約1gの範囲だろう。一実施態様において、本明細書に提供される化合物の経口投与量は、1日あたり約1mgから約500mgの範囲だろう。他の実施態様において、本明細書に提供される化合物の経口投与量は、1日あたり約2mgから約250mgの範囲だろう。他の実施態様において、本明細書に提供される化合物の経口投与量は1日あたり約3mgから約300mgの範囲だろう。一実施態様において、本明細書に提供される化合物の経口投与量は1日あたり約5mgから約300mgの範囲だろう。他の実施態様において、本明細書に提供される化合物の経口投与量は1日あたり約10mgから約100mgの範囲だろう。他の実施態様において、本明細書に提供される化合物の経口投与量は1日あたり約25mgから約50mgの範囲だろう。他の実施態様において、本明細書に提供される化合物の経口投与量は1日あたり約30mgから約200mgの範囲だろう。上述の用量範囲のそれぞれは、単一又は複数の単位用量製剤(unit dosage formulation)として製剤できる。
【0072】
(5.3医薬組成物)
一実施態様において、トランスノルセルトラリン、又はその医薬として許容し得る塩、もしくは溶媒和物;セロトニン1A受容体拮抗剤、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、もしくは立体異性体;及び医薬として許容し得る担体又は賦形剤を含む医薬組成物が本明細書に提供される。好適なセロトニン1A受容体拮抗剤の例は、本明細書中で他の場所に与えられる。
【0073】
他の実施態様において、トランスノルセルトラリン、又はその医薬として許容し得る塩、もしくは溶媒和物;セロトニン1A受容体作動剤、又は医薬として許容し得る塩、溶媒和物、もしくは立体異性体;及び医薬として許容し得る担体又は賦形剤を含む医薬組成物が本明細書に提供される。好適なセロトニン1A受容体作動剤の例は、本明細書中で他の場所に与えられる。
【0074】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される医薬組成物は、任意に、1種以上の他の活性薬剤を含んでよい。好適な薬剤の例は、本明細書中で他の場所に与えられる。
【0075】
特定の医薬組成物は、患者への経口、粘膜(例えば、鼻腔内、舌下、膣内、頬側、気管、気管支、又は直腸)、非経口(例えば、皮下、静脈内、ボーラス注入、筋肉内、又は動脈内)、又は経皮投与に好適である単一単位剤形である。剤形の例には、錠剤;カプレット;軟質弾性もしくは硬質のゼラチンカプセルなどのカプセル;カシェ剤;トローチ剤;ロゼンジ剤;分散剤;坐剤;軟膏;パップ剤(湿布);ペースト剤;散剤;投薬単位バイアル(UDV)噴霧液剤;包帯剤;クリーム剤;膏薬;液剤;パッチ剤;エアゾール(例えば、鼻腔内スプレー又は吸入器);ゲル剤;懸濁剤(例えば、水性又は非水性液体懸濁剤、水中油滴型エマルション、又は油中水滴型エマルション)、液剤、及びエリキシル剤を含む、患者への経口又は粘膜投与に好適な液体剤形;患者への非経口投与に好適な液体剤形;及び再構成して患者への非経口投与に好適な液体剤形を与えられる滅菌された固体(例えば、結晶性又は非晶性の固体)があるが、これらに限定されない。
【0076】
一実施態様において、該剤形は経口剤形である。他の実施態様において、該経口剤形は、カプセル、錠剤、又はシロップ剤である。他の実施態様において、該剤形は非経口剤形である。
【0077】
製剤は投与様式に適しなくてはならない。例えば、経口投与は、投与された化合物が消化管内で分解されないように保護する腸溶性コーティングを必要とすることがある。他の例において、化合物をリポソーム製剤で投与して、分解酵素から化合物を遮蔽し、循環系中の輸送を促進し、細胞膜を通り細胞内部位への送達を実施することができる。
【0078】
剤形の組成、形状、及び種類は、典型的にはその用途により変わるだろう。例えば、疾病の急性治療に使用される剤形は、同じ疾病の慢性治療に使用される剤形よりも、それを構成する1種以上の有効成分を多量に含むことがある。同様に、非経口剤形は、同じ疾病を治療するのに使用される経口剤形よりも、それを構成する1種以上の有効成分を少量含むことがある。特定の剤形が互いに異なるこのような方法及び他の方法は、当業者には明らかであろう。例えば、「レミントンの製薬科学(Remington's Pharmaceutical Sciences)」、第18版、Mack Publishing, Easton PA (1990年)を参照されたい。
【0079】
本明細書に提供される医薬組成物の選択される用量レベル及び投与頻度は、種々の因子、例えば、投与経路、投与の時間、治療剤の排泄速度、治療の期間、患者に利用される他の薬物、化合物、及び/又は物質、治療される患者の年齢、性別、体重、病態、全般的な健康状態、及び以前の病歴、並びに医学分野に周知である類似の因子によるだろう。例えば、投与計画は、健常な成人に比べて、妊婦、授乳中の母親及び子供では変わることがあり得る。通常の技量を有する医師は、要求される治療上有効な量の医薬組成物を容易に決定し処方することができる。
【0080】
本明細書に提供される医薬組成物は、医薬として許容し得る担体をさらに含んでよい。「医薬として許容し得る担体」という用語は、1種以上の医薬として許容し得る賦形剤を意味する。そのような賦形剤の例は当分野に周知であり、引用によりその全体が本明細書に組み込まれるUSP(米国薬局方)(XXI)/NF (XVI)に収載されており、制限なしに、結合剤、希釈剤、充填剤、崩壊剤、超崩壊剤、滑沢剤、界面活性剤、粘着防止剤、安定剤などがある。「添加剤」という用語は、本明細書では「賦形剤」という用語と同義である。
【0081】
「医薬として許容し得る」という用語は、健全な医学的判断の範囲内で、過度な毒性、刺激、アレルギー反応、又は他の問題もしくは合併症なしに、ヒト及び動物への投与及びその組織及び体液に接触するように使用するのに好適で、妥当な医学的に健全なベネフィット/リスク比に釣り合う、化合物、物質、組成物、及び/又は剤形を意味する。
【0082】
さらに、「医薬として許容し得る」賦形剤という用語は、ある剤形の有効成分と賦形剤成分のいずれの間にも、不都合な化学的又は物理的な不適合性が全くないことを意味するように使用される。例えば、不都合な化学反応は、本明細書に提供される方法及び組成物に使用される化合物の効力が、1種以上の賦形剤の添加により有害に増加又は減少するものである。不都合な化学反応の他の例は、剤形の味が、受け入れがたいほど、過度に甘く、酸っぱくなるなどのものである。各賦形剤は、製剤の他の成分と適合性があり患者に有害でないという意味で、「許容し得る」ものでなくてはならない。
【0083】
物理的な不適合性は、剤形の種々の成分とその賦形剤(複数可)との間の不適合性を意味する。例えば、賦形剤(複数可)及び有効成分(複数可)の組み合わせは、剤形(例えば、錠剤、トローチ剤など)の所望の形状、その安定性などが、望まれる処方された投与計画に従った剤形の投与を可能にするほど十分に維持されない程度に、過度に吸湿性の混合物又は過度に分離された混合物を形成することがある。
【0084】
本明細書に提供される医薬組成物又は剤形に使用される全ての賦形剤が、USP/NFにおける医薬成分及びその組み合わせの基準に好ましくは合致するか、又は超えることに留意される。USP/NFの目的は、療法の実施に利用される材料及び物質及びその製剤に当局の基準及び明細を与えることである。USP/NFは、タイトル、定義、説明、並びに正体、品質、強度、純度、包装、及びラベル表示の基準を制定し、実行可能な場合には、バイオアベイラビリティー、安定性、正しい取扱い及び貯蔵の手順、その検査の方法、及びその製造又は調製の方式を与える。
【0085】
医薬製品の安定性は、具体的な容器中で、特定の製剤が、例外はあるものの、物理的、化学的、微生物的、治療的、及び毒性学的な仕様内に留まり、表示された効力レベルの少なくとも約80%、好ましくは約90%、より好ましくは約95%を維持する能力であると定義される。そのため、例えば、有効期限は、医薬製品が推奨される状態で貯蔵される場合安定なままでいる時間であると定義される。
【0086】
多くの因子が医薬製品の安定性に影響し、例えば、治療成分(複数可)の安定性、治療成分と不活性成分との間の潜在的な相互作用がある。熱、光、及び湿気などの物理的因子は、化学反応を開始又は加速させることがある。
【0087】
(5.3.1経口剤形)
経口投与に好適な本明細書に提供される医薬組成物は、個別の剤形、例えば限定はされないが、錠剤(例えば、チュアブル錠)、カプレット、カプセル、及び液剤(例えば、味付きシロップ)などとして呈することができる。そのような剤形は所定量の有効成分を含み、当業者に公知である製剤の方法により製造できる。例えば、全般的には、「レミントン:調剤の科学及び実務(Remington: The Science and Practice of Pharmacy)」、第20版(2000年)を参照されたい。
【0088】
典型的な経口剤形は、従来の医薬配合技術に従い、有効成分を少なくとも1種の賦形剤と均質に混合することにより製造される。賦形剤は、投与のために望まれる製剤の形態により、多種多様な形態をとり得る。
【0089】
投与の容易さのため、錠剤及びカプセルは最も有利な経口用量単位形態(oral dosage unit form)を表し、その場合固体の賦形剤が使用される。望まれる場合、錠剤は標準の水性又は非水性技術により被覆できる。そのような剤形は、調剤のどのような方法によっても製造できる。一般的に、医薬組成物及び剤形は、有効成分を、液体担体、微粉砕された固体担体、又は両方と一様かつ均質に混合し、次いで、必要な場合所望の体裁に製品を成形することにより製造される。
【0090】
本開示による医薬組成物又は剤形の大量生産は、治療薬成分の他に、賦形剤又は添加剤、例えば、希釈剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、着色剤、香料、甘味剤など、又はそれらの混合物を必要とすることがある。これらの添加剤及び他の添加剤を取り入れることにより、種々の剤形(例えば、錠剤、カプセル、カプレット、トローチなど)を製造できる。これらには、例えば、硬質ゼラチンカプセル、カプレット、糖衣錠、作用を遅くする腸溶性コート錠、多重圧縮剤、持効性錠、溶液用錠剤、発泡性錠、頬側及び舌下錠、トローチなどがある。
【0091】
そのため、トローチ、錠剤、又はカプセルなどの、本明細書に提供される医薬組成物の単位投薬形態(unit dose form)又は投与製剤(dosage formulation)は、所望量の有効成分のそれぞれを、1種以上の医薬として適合性のある、又は許容し得る賦形剤と医薬として適合性のある量で、以下に記載のとおり、合わせて、投薬単位投与製剤、所望量のそれぞれの有効成分を生み出すことにより形成できる。投薬形態又は投与製剤は当分野に周知である方法により形成できる。
【0092】
錠剤は、患者に与えられる利点(例えば、用量の正確度、小型であること、携帯性、味があまりしないこと、並びに投与の簡便さ)及び製造者に与えられる利点(例えば、製造の簡潔性及び経済性、安定性、並びに包装、輸送、及び分注における簡便さ)の両方のため、好ましい剤形であることが多い。錠剤は、治療原薬を好適な添加剤とともに、又は添加剤なしで含む固体の医薬剤形である。
【0093】
錠剤は、典型的には、成型、圧縮、又は一般的に許容されている錠剤形成法により製造される。したがって、打錠剤は通常大量製造法により製造されるが、成型錠剤は小規模の操作を含むことが多い。例えば、錠剤製造の3種の一般的な方法がある:(1)湿式造粒法;(2)乾式造粒法;及び(3)直接打錠。これらの方法は当業者に周知である。例えば、「レミントン:調剤の科学及び実務(Remington: The Science and Practice of Pharmacy)」第20版(2000年)を参照されたい。米国薬局方XXI、U.S. Pharmacopeial Convention, Inc.,メリーランド州、ロックビル(1985)も参照されたい。
【0094】
種々の錠剤製剤は、本明細書に記載される方法及び組成物により製造できる。それらには、糖衣錠、フィルムコート錠、腸溶性コート錠、多重圧縮錠、持効性錠などの錠剤形態がある。糖衣錠(SCT)は、糖のコーティングを含む打錠剤である。そのようなコーティングは着色されていてよく、不快な味又は臭いを持つ原薬を隠し、酸化されやすい物質を保護するのに有利である。フィルムコート錠(FCT)は、水溶性物質の薄い膜又はフィルムにより覆われている打錠剤である。被膜形成性を持つ多くのポリマー性物質を使用できる。フィルムコーティングは糖のコーティングと同じ一般的な特性を与え、被覆操作に要する時間の大幅な低減という利点が加えられる。腸溶性コート錠も、本明細書に提供される方法及び組成物における使用に好適である。腸溶性コート錠(ECT)は、胃液中での溶解に耐えるが、腸の中で崩壊する物質により被覆された打錠剤である。腸溶性コーティングは、胃の中で不活性化又は分解する原薬を含む錠剤に、粘膜を刺激するものに、又は薬剤の遅延放出の手段として使用できる。
【0095】
多重圧縮錠(MCT)は、層状錠剤又はプレスコート錠などの、1回以上の圧縮サイクルにより製造された打錠剤である。層状剤は、あらかじめ圧縮された顆粒に追加の錠剤顆粒を圧縮して製造される。操作を繰り返して、2層、3層、又はそれ以上の層の多層錠を生み出すことができる。典型的には、層状錠の製造には特殊な錠剤プレスが必要である。例えば、引用により本明細書にその全体が組み込まれる米国特許第5,213,738号を参照されたい。
【0096】
プレスコート錠は、多重圧縮錠のもう1つの形態である。そのような錠剤は、有核錠とも呼ばれ、先に圧縮された錠剤を打錠機に入れ、先に形成された錠剤の周りにもう1つの顆粒層を圧縮して製造される。これらの錠剤は全て打錠剤の利点、すなわち、溝削り、組み合わせ文字付け、崩壊の速度などを、コア錠剤中の原薬の味のマスキングという点の糖衣錠の特性を保ちながら有する。プレスコート錠を利用して、不適合性の複数の原薬を分離することもできる。さらに、それらを利用して、コア錠剤に腸溶性コーティングを与えることもできる。両方の種類の錠剤(すなわち、層状錠及びプレスコート錠)は、例えば、持効性剤形のデザインで使用できる。
【0097】
持効性錠の形態で本明細書に提供される医薬組成物又は単位剤形は、長期間薬剤を与えるよう原薬を放出するように製剤された打錠剤を含むことがある。原薬の放出が、投与後のある期間、又はある生理学的条件が存在するまで妨げられる遅延作用錠を含む、多くの錠剤の種類がある。胃腸液に完全な投与量の原薬を周期的に放出する複効錠を形成できる。また、含まれる原薬の増分を胃腸液に連続的に放出する延長放出錠も形成できる。
【0098】
賦形剤があってもなくても、本明細書に提供される薬剤又は治療成分が、利用可能な装置により圧力によって固体の剤形(例えば、錠剤)に製造されるためには、結晶又は粉末形態にある物質が、いくつかの物理的特性を持つことが必要である。そのような特性には、例えば、自由に流動する能力、粉末としては圧縮されて結合する能力、及び道具から容易に剥離する能力があり得る。多くの物質はこれらの性質を全く持たないか、いくつかしか持たないので、錠剤製剤及び製造の方法は、圧縮して錠剤又は類似の剤形になるべき物質にこれらの望ましい特性を与えるように開発されてきた。
【0099】
述べられたとおり、薬物又は治療成分に加えて、錠剤及び類似の剤形は、賦形剤又は添加剤と呼ばれる多くの物質を含むことがある。これらの添加剤は、錠剤、カプレット、カプセル、トローチなどの剤形の製剤において果たす役割により分類される。一群の添加剤には、結合剤、希釈剤(充填剤)、崩壊剤、滑沢剤、及び界面活性剤があるが、これらに限定されない。一実施態様において、希釈剤、結合剤、崩壊剤、及び滑沢剤は同じではない。
【0100】
錠剤機に使用されるとき物質が流動するように、錠剤成分のミックスから自由流動性粉末を与えるために、結合剤が使用される。結合剤は、錠剤に結合性も与える。結合剤が少なすぎると流動の問題を与え、一体性を維持しない錠剤を生み出すが、多すぎると、錠剤からの薬物又は有効成分の放出(溶解速度)に悪影響を与えることがある。そのため、十分な量の結合剤を錠剤に加えて、錠剤からの薬物成分の溶解速度に悪影響を与えることなく、錠剤成分の自由流動性ミックスを与えなければならない。低投与量の錠剤では、良好な圧縮性の必要は、圧縮助剤と呼ばれる好適な希釈賦形剤の使用により、ある程度除かれることがある。使用される結合剤の量は製剤の種類及び投与の様式により変わり、当業者には容易に認識される。
【0101】
本明細書に提供される投与製剤とともに使用するのに好適な結合剤には、コーンスターチ、ポテトスターチ、又は他のスターチ、ゼラチン、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸、他のアルギン酸塩、粉末化トラガカント、グアーガムなどの天然ゴム及び合成ゴム、セルロース及びその誘導体(例えば、エチルセルロース、酢酸セルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム)、ポリビニルピロリドン(ポビドン)、メチルセルロース、アルファ化デンプン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えば、番号2208、2906、2910)、微結晶性セルロース、又はこれらの混合物があるが、これらに限定されない。好適な形態の微結晶性セルロースは、例えば、AVICEL-PH-101、AVICEL-PH-103、及びAVICEL-PH-105として販売されている物質(アメリカ合衆国、ペンシルバニア州、マーカスフックのFMC Corporation, American Viscose Division, Avicel Salesから市販されている)などがある。
【0102】
許容される大きさの錠剤、カプセル、又は他の所望の剤形が製造されるように散剤(例えば、錠剤又はカプセル中の)に嵩を与えるために、充填剤又は希釈剤が使用される。典型的には、治療成分は、希釈剤を混合することにより好適な大きさの簡便な剤形に形成される。結合剤を含むと、薬物(複数可)の充填剤への結合が起こって、バイオアベイラビリティーに影響を与えることがある。したがって、十分な量の充填剤を使用して、充填剤を含む剤形からの薬物成分の放出に悪影響を与えることなく、所望の希釈比率を得なくてはならない。さらに、剤形の治療成分(複数可)と物理的及び化学的に適合性のある充填剤を使用すべきである。使用される充填剤の量は製剤の種類及び投与の様式により変わり、当業者には容易に認識される。充填剤の例には、ラクトース、グルコース、スクロース、フルクトース、タルク、炭酸カルシウム(例えば、顆粒又は粉末)、微結晶性セルロース、粉末化セルロース、デキストレート、カオリン、マンニトール、ケイ酸、ソルビトール、スターチ、アルファ化デンプン、又はこれらの混合物があるが、これらに限定されない。
【0103】
崩壊剤を使用して、投与形態(例えば、錠剤)を、水性環境に曝された時に崩壊させる。崩壊剤が多すぎると、大気中の水分によりボトル中で崩壊し得る錠剤を生み出すだろう。少なすぎると崩壊を起こすには不十分なことがあり、そのため剤形からの薬物(複数可)又は有効成分(複数可)の放出の速度及び程度を変えることがある。したがって、薬物成分の放出を有害に変えるほど少なすぎず多すぎない十分な量の崩壊剤を使用して、本明細書に提供される剤形を形成しなければならない。使用される崩壊剤の量は製剤の種類及び投与の様式により変わり、当業者には容易に認識される。崩壊剤の例には、寒天、アルギン酸、炭酸カルシウム、微結晶性セルロース、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ポラクリリンカリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、ポテトスターチ又はタピオカスターチ、他のスターチ、アルファ化デンプン、粘土、他のアルギン、他のセルロース、ゴム類、又はこれらの混合物があるが、これらに限定されない。
【0104】
対象への投与時に、例えば対象の胃の中でかなり迅速に溶解する投与形態が望まれる場合、クロスカルメロースナトリウム又はデンプングリコール酸ナトリウムなどがあるがこれらに限定されない超崩壊剤を使用できる。本明細書では「超崩壊剤」という用語は、経口投与後に胃の中で薬物又は有効成分の迅速な崩壊をもたらす崩壊剤を意味する。超崩壊剤を使用すると、薬物又は有効成分(複数可)の迅速な吸収を促進でき、より迅速な作用開始を生じ得る。
【0105】
製造機械(例えば、打錠機)のパンチへの剤形成分の付着は避けなければならない。例えば、薬物がパンチ表面に蓄積すると、錠剤表面に穴が開き、したがって許容できなくなる。また、薬物又は賦形剤がこのように粘着すると、錠剤をダイから外すときに不必要に高い押出し力が必要になる。過剰な押出し力は高い破損率につながることがあり、ダイの過剰な磨滅は言うまでもなく、製造コストを上昇させる。実際には、湿塊化(wet-massing)により、又はステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤の使用により、粘着を低減することが可能である。しかし、良好な抗粘着性を有する薬物塩を選択してもこの問題を最低限にできる。
【0106】
述べられたとおり、錠剤パウダーミックスの錠剤機への流れを促進し、錠剤を圧縮した後ダイ中の錠剤の粘着を防止するために、滑沢剤が使用される。滑沢剤が少なすぎると満足のいく錠剤が製造できず、多すぎると水不浸透性疎水性コーティングを持つ錠剤が製造されるが、これは、滑沢剤が通常ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムなどの疎水性物質であるために形成し得る。さらに、水不浸透性疎水性コーティングは、錠剤の崩壊及び薬物成分(複数可)の溶解を阻害することがある。そのため、薬物成分(複数可)の望まれる崩壊及び/又は溶解に有害に干渉する水不浸透性疎水性コーティングを形成せずに、圧縮された錠剤をダイから容易に放出させる十分な量の滑沢剤を使用すべきである。
【0107】
本明細書に提供される組成物と使用するのに好適な滑沢剤の例には、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、鉱油、軽油、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコール、他のグリコール、ステアリン酸、ラウリル硫酸ナトリウム、タルク、水素化植物油(例えば、落花生油、綿実油、ヒマワリ油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油、及び大豆油)、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸エチル、ラウリン酸エチル、寒天、又はこれらの混合物があるが、これらに限定されない。追加の滑沢剤には、例えば、シロイドシリカゲル(AEROSIL 200、メリーランド州ボルチモアのW.R. Grace Co.製)、合成シリカの凝固したエアゾール(テキサス州プラノのDeaussa Co.により販売)、CAB-O-SIL(マサチューセッツ州ボストンのCabot Co.により販売されている発熱性二酸化ケイ素製品)又はこれらの混合物がある。
【0108】
湿潤性を向上させ、かつ/又は溶解を促進するために、界面活性剤が剤形に使用され、難溶性又は不溶性薬物(複数可)又は有効成分を含む医薬組成物又は剤形に特に有用である。界面活性剤の例には、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、例えば、TWEENとして市販されているもの(例えば、Tween 20及びTween 80)、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンステアラート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ(オキシエチレン)/ポリ(オキシプロピレン)ブロックコポリマー(polyer)、例えばポロキサマー(例えば、PLURONICとして市販)、プロピレンオキシド及びエチレンオキシドのエチレンジアミンへの連続的な付加から誘導される四官能性ブロックコポリマー、例えば、ポリキサミン(polyxamine)(例えば、TETRONIC(BASF)として市販)、デキストラン、レシチン、スルホコハク酸ナトリウムのジアルキルエステル、例えば、Aerosol OT、ラウリル硫酸ナトリウム、アルキルアリールポリエーテルスルホナート又はアルコール、例えば、TRITON X-200又はチロキサポール、p-イソノニルフェノキシポリ(グリシドール)(例えば、Olin-10G又はSurfactant 10-G(Olin Chemicals))、又はこれらの混合物があるが、これらに限定されない。医薬として許容し得る他の界面活性剤は当分野に周知であり、医薬賦形剤のハンドブック(Handbook of Pharmaceutical Excipients)に記載されている。
【0109】
本明細書に提供される医薬組成物又は剤形とともに使用するための他の種類の添加剤には、凝結防止剤又は付着防止剤、抗微生物保存剤、コーティング剤、着色剤、乾燥剤、調味料及び香料、可塑剤、粘度増加剤、甘味剤、緩衝剤、保湿剤などがあるが、これらに限定されない。
【0110】
凝結防止剤の例には、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、二酸化ケイ素、コロイド状二酸化ケイ素、タルク、又はこれらの混合物があるが、これらに限定されない。
抗微生物保存剤の例には、塩化ベンザルコニウム溶液、塩化ベンゼトニウム、安息香酸、ベンジルアルコール、ブチルパラベン、塩化セチルピリジニウム、クロロブタノール、クレゾール、デヒドロ酢酸、エチルパラベン、メチルパラベン、フェノール、フェニルエチルアルコール、酢酸フェニル水銀、硝酸フェニル水銀、ソルビン酸カリウム、プロピルパラベン、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、ソルビン酸、チメルソル(thimersol)、チモール、又はこれらの混合物があるが、これらに限定されない。
【0111】
本明細書に提供される組成物とともに使用するための着色剤の例には、医薬として許容し得る染料及びレーキ、カラメル、赤色酸化第二鉄、黄色酸化第二鉄、又はこれらの混合物があるが、これらに限定されない。乾燥剤の例には、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、シリカゲル、又はこれらの混合物があるが、これらに限定されない。
【0112】
利用できる調味料の例には、アラビアゴム、トラガカント、アーモンドオイル、アネトール、アニス油、ベンズアルデヒド、カラウェー、カラウェーオイル、カルダモンオイル、カルダモンの種子、複合カルダモンチンキ、チェリージュース、シナモン、シナモンオイル、クローブオイル、ココア、コリアンダーオイル、エリオジクチオン、エリオジクチオン流動エキス、酢酸エチル、エチルバニリン、ユーカリ油、フェンネル油、カンゾウ、純カンゾウエキス、カンゾウ流動エキス、ラベンダーオイル、レモンオイル、メントール、サリチル酸メチル、グルタミン酸一ナトリウム、ナツメグオイル、オレンジ花精油、オレンジ花水、オレンジオイル、スイートオレンジピールチンキ、複合オレンジスピリッツ、ハッカ、ハッカ油、ハッカスピリッツ、マツ葉油、ローズオイル、ストロンガーローズウォーター(stronger rose water)、スペアミント、スペアミントオイル、チモール、トルーバルサムチンキ、バニラ、バニラチンキ、及びバニリン、又はこれらの混合物があるが、これらに限定されない。
【0113】
甘味剤の例には、アスパルテーム、デキストレート、マンニトール、サッカリン、サッカリンカルシウム、サッカリンナトリウム、ソルビトール、ソルビトール溶液、又はこれらの混合物があるが、これらに限定されない。
【0114】
本明細書に提供される組成物とともに使用するための例示的な可塑剤には、ヒマシ油、ジアセチル化モノグリセリド、フタル酸ジエチル、グリセリン、モノ及びジアセチル化モノグリセリド、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、及びトリアセチン、又はこれらの混合物があるが、これらに限定されない。好適な粘度増加剤には、アラビアゴム、寒天、アラミン酸(alamic acid)、モノステアリン酸アルミニウム、ベントナイト、ベントナイトマグマ、カルボマー934、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム12、カラギーナン、セルロース、微結晶性セルロース、ゼラチン、グアーガム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(番号2208;2906;2910)、マグネシウムアルミニウムシリケート、メチルセルロース、ペクチン、ポリビニルアルコール、ポビドン、シリカゲル、コロイド状二酸化ケイ素、アルギン酸ナトリウム、トラガカント、及びキサンタンガム、又はこれらの混合物があるが、これらに限定されない。
【0115】
本明細書に提供される組成物に使用できる緩衝剤には、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなど、又はこれらの混合物があるが、これらに限定されない。保湿剤の例には、グリセロール、他の保湿剤、又はこれらの混合物があるが、これらに限定されない。
【0116】
本明細書に提供される剤形は、下記の1種類以上をさらに含むことがある:(1)パラフィンなどの溶解遅延剤;(2)4級アンモニウム化合物などの吸収加速剤;(3)セチルアルコール及びグリセロールモノステアラートなどの湿潤剤;(4)カオリン及びベントナイト粘土などの吸収剤;(5)酸化防止剤、例えば、水溶性酸化防止剤(例えば、アスコルビン酸、システイン塩酸塩、重硫酸ナトリウム、メタ重硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど)、油溶性酸化防止剤(例えば、パルミチン酸アスコルビル、ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、アルファトコフェロールなど);及び(6)金属キレート剤、例えば、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸など。
【0117】
錠剤又はカプレットなど、本明細書に提供される剤形は、任意に被覆されていてよい。不活性なコーティング剤は、典型的には、好適な溶媒に分散した不活性な被膜形成剤を含み、着色剤及び可塑剤などの医薬として許容し得る他の補助剤をさらに含むことがある。好適な不活性なコーティング剤及び被覆の方法は当分野に周知であり、水性又は非水性被膜被覆技術又はミクロカプセル化があるが、これらに限定されない。被膜形成剤又はコーティング剤の例には、ゼラチン、製薬用グレーズ(pharmaceutical glaze)、シェラック、スクロース、二酸化チタン、カルナウバ蝋、微結晶蝋、セルロース類、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えば、番号2208、2906、2910)、ヒドロキシプロピルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えば、番号200731、220824)、ヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、任意に架橋していてもよいエチルセルロース、及びカルボキシメチルセルロースナトリウム;ポリビニルピロリドン(polyvinyl pyrrolidione)、ポリ酢酸フタル酸ビニルなどのビニル;ポリエチレングリコールなどのグリコール;アクリル、例えば、ジメチルアミノエチルメタクリラート-メタクリラート酸エステルコポリマー、及びエチルアクリラート-メチルメタクリラートコポリマー;及び他の含水炭素ポリマー、例えば、マルトデキストリン及びポリデキストロース、又はこれらの混合物があるが、これらに限定されない。使用されるコーティング剤及び担体ビヒクル(水性又は非水性)の量は製剤の種類及び投与の様式によって異なり、当業者には容易に認識される。
【0118】
被膜形成性ポリマーのコーティングは、従来のコーティングパン、Accelacota、High-Cola、又はWorsterエアサスペンションカラム(air suspension column)などのいくつかの種類の装置の1つを利用して、任意に錠剤又はカプレット(例えば、カプセル状錠剤)に被覆できる。そのような装置は、典型的には、塵及び溶媒又は水蒸気を除去して迅速に乾燥させるための排気装置を有する。スプレーガン又は他の好適な噴霧装置をコーティングパンに導入して、錠剤床の迅速で均一な被覆につながるスプレーパターンを与えることができる。通常、熱風又は冷たい乾燥空気がスプレーサイクルにより連続又は交互に錠剤床に導入されて、被膜被覆溶液の乾燥を促進する。
【0119】
コーティング溶液を、連続的又は断続的な噴霧乾燥サイクルにおいて、容積式空気ポンプ(positive pneumatic displacement)又は蠕動ポンプシステムを利用して噴霧できる。特定の種類の噴霧塗布が、コーティングパンの乾燥効率により選択される。ほとんどの場合、コーティング材料は、錠剤が所望の厚さまで均一に塗布され、錠剤の所望の外観が得られるまで噴霧される。腸溶性、緩徐放出コーティング、又は速効性錠剤用の迅速溶解タイプのコーティングなど、多くの異なる種類のコーティングを塗布できる。好ましくは、有効成分のより迅速な放出を可能とし、早い開始を生み出すために、迅速溶解タイプのコーティングが使用される。例えば、錠剤に塗布される被膜形成性ポリマーのコーティングの厚さは、さまざまになり得る。しかし、厚さが、ゼラチンカプセルの外観、感覚(触感及び食感)、及び機能をまねることが好ましい。治療剤(複数可)のより迅速な又は遅延した放出が望ましい場合、当業者ならば、もしあるとすれば、膜の種類及び厚さを認識し、有効成分の所望の血中濃度、放出速度、有効成分の溶解度、及び剤形の所望の性能などの特性に基づいて使用するだろう。
【0120】
錠剤などの最終剤形の被覆に使用するためのいくつかの好適な被膜形成剤には、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(PHARMACOAT 606 6 cps)、ポリビニルピロリドン(ポビドン)、エチルセルロース(ETHOCEL 10 cps)、メタクリル酸及びメタクリル酸エステルの種々の誘導体、酢酸フタル酸セルロース、又はこれらの混合物がある。
【0121】
製造の方法及び剤形(錠剤又はカプレットなど)に組み込むべき賦形剤又は添加剤は、製造の容易さ(例えば、錠剤の迅速な圧縮)を考慮しながら、所望の物理的特性を錠剤製剤に与えるように選択される。製造後、投与形態は、好ましくは、いくつかの追加の属性を持たなければならず、例えば錠剤では、そのような属性には、外観、硬さ、崩壊能力及び均一性があり、これらは製造の方法及び錠剤製剤中に存在する添加剤の両方により影響される。
【0122】
さらに、本明細書に提供される医薬組成物の錠剤又は他の剤形は、その貯蔵寿命の間通常の取扱い及び貯蔵条件下で、その元の大きさ、形状、重量、及び色を保たなければならないことに留意される。したがって、例えば、容器の底の過剰な粉末又は固体粒子、錠剤表面のひび割れ又は欠片、錠剤の表面又は容器の壁の結晶の出現は、被覆していない錠剤の物理的な不安定性を表す。そのため、錠剤の軽度で、均一な、再現性のある振とう及びタンブリングを行って、錠剤が十分な物理的安定性を有することを確実にしなければならない。錠剤の硬さは、市販の硬度計により測定できる。さらに、有効成分のインビトロのアベイラビリティーは、感知できるほど時間とともに変化してはいけない。
【0123】
本明細書に提供される医薬組成物の錠剤及び他の剤形、例えば、糖衣丸、カプセル、丸薬、及び顆粒などは、任意に刻み目をつけ、又は腸溶性コーティング及び医薬製剤分野に周知である他のコーティングなど、コーティング及びシェルとともに製造できる。
【0124】
(5.3.2非経口剤形)
非経口剤形は、皮下、静脈内(ボーラス注入を含む)、筋肉内、及び動脈内を含むが、これらに限定されない種々の経路により患者に投与できる。そのような投与は、通常、汚染物質に対する患者の天然の防御機構を迂回するので、非経口剤形は、滅菌されているか、又は患者への投与の前に滅菌可能であることが好ましい。非経口剤形の例には、注射用溶液、注射用の医薬として許容し得るビヒクルにすぐに溶解又は懸濁させるための乾燥製品、注射用の懸濁液、及びエマルションがあるが、これらに限定されない。
【0125】
本明細書に提供される非経口剤形を提供するのに使用できる好適なビヒクルは当業者に周知である。例には、下記のものがあるが、これらに限定されない;米国薬局方注射水;塩化ナトリウム液、リンゲル液、デキストロース液、デキストロース及び塩化ナトリウム液、及び乳酸リンゲル液などがあるが、これらに限定されない水性ビヒクル;エチルアルコール、ポリエチレングリコール、及びポリプロピレングリコールなどの水混和性ビヒクル;及びコーン油、綿実油、落花生油、ゴマ油、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、及び安息香酸ベンジルなどの非水性ビヒクル。
【0126】
本明細書に開示される1種以上の有効成分(すなわち、本明細書に提供される方法及び組成物に使用される化合物)の溶解度を増加させる化合物も非経口剤形に組み込むことができる。
【0127】
(5.2.3経皮、局所、及び粘膜剤形)
本明細書に提供される経皮、局所、及び粘膜剤形には、眼科用液剤、スプレー、エアゾール、クリーム、ローション、軟膏、ゲル剤、液剤、乳剤、懸濁剤、又は当業者に公知である他の形態があるが、これらに限定されない。例えば、「レミントンの製薬科学(Remington's Pharmaceutical Sciences)」第16版及び第18版、Mack Publishing, Easton PA (1980 & 1990);及び「医薬剤形入門(Introduction to Pharmaceutical Dosage Forms)」第4版、Lea & Febiger, Philadelphia (1985)を参照されたい。経皮剤形には、「リザーバータイプ」又は「マトリックスタイプ」パッチがあり、これは皮膚に貼布して特定の期間着用し、所望量の有効成分の浸透を可能にするものである。
【0128】
本明細書に提供される経皮、局所、及び粘膜剤形の提供に使用できる好適な賦形剤(例えば、担体及び希釈剤)及び他の物質は製薬分野の当業者に周知であり、ある医薬組成物又は剤形が与えられる特定の組織に依存する。
【0129】
治療すべき具体的な組織によって、追加の成分を、本明細書に提供される有効成分による治療の前に、組み合わせて、又はその後に使用できる。例えば、浸透促進剤を使用して、有効成分の組織への送達を助けることができる。
【0130】
医薬組成物又は剤形のpH、又は医薬組成物又は剤形が与えられる組織のpHを調整して、1種以上の有効成分の送達を向上させることができる。同様に、溶媒担体の極性、そのイオン強度、又は張性を調整して、送達を向上させることができる。ステアラートなどの化合物を医薬組成物又は剤形に加えて、送達を向上させるために1種以上の有効成分の親水性又は親油性を好都合にも変えることができる。この点で、ステアラートは、製剤のための脂質ビヒクルとして、乳化剤又は界面活性剤として、及び送達向上もしくは浸透促進剤として機能できる。有効成分の種々の塩又は溶媒和物(例えば、水和物)を使用して、得られる組成物の性質をさらに調整できる。
【0131】
(5.2.4安定性が向上した組成物)
特定の賦形剤の適合性は、剤形中の具体的な有効成分にも依存することがある。例えば、いくつかの有効成分の分解は、ラクトースなどの賦形剤により、又は水に曝された時に加速されることがある。1級又は2級アミンを含む有効成分は、そのような加速された分解を特に起こしやすい。したがって、ラクトース他の単糖類又は二糖類を、あるとしてもほとんど含まない医薬組成物及び剤形が本明細書に提供される。本明細書では、「ラクトースフリー」という用語は、存在するラクトースの量が、もしあるとしても、有効成分の分解速度を実質的に増加させるのに不十分であることを意味する。
【0132】
本明細書に提供されるラクトースフリー組成物は、当業者に周知であり、例えば米国薬局方(USP) 25-NF20 (2002)に収載されている賦形剤を含んでよい。一般的に、ラクトースフリー組成物は、有効成分、結合剤/充填剤、及び滑沢剤を医薬として適合性があり医薬として許容し得る量で含む。好ましいラクトースフリー剤形は、有効成分、微結晶性セルロース、アルファ化デンプン、及びステアリン酸マグネシウムを含む。
【0133】
水は一部の化合物の分解を促進し得るので、有効成分を含む無水の医薬組成物及び剤形がさらに提供される。例えば、水の添加(例えば、5%)は、貯蔵寿命又は時間経過に対する製剤の安定性などの特性を測定するために、長期の貯蔵を摸する手段として医薬分野で広く認められている。例えば、Jens T. Carstensenの文献「薬物の安定性:原理及び実際(Drug Stability: Principles & Practice)」第2版、Marcel Dekker, NY, NY, 1995, 79-80を参照されたい。実際に、水及び熱は一部の化合物の分解を加速させる。このように、水分及び/又は湿気は製剤の製造、取扱い、包装、貯蔵、輸送、及び使用の間に通常遭遇されるので、製剤に対する水の影響は大きな重要性を持ち得る。
【0134】
本明細書に提供される無水の医薬組成物及び剤形は、無水又は低水分含有成分及び低水分又は低湿の条件を利用して製造できる。ラクトース及び1級又は2級アミンを含む少なくとも1種の有効成分を含む医薬組成物及び剤形は、製造、包装、及び/又は貯蔵の間に水分及び/又は湿気へのかなりの接触が予想される場合、無水であることが好ましい。
【0135】
無水医薬組成物は、その無水性が維持されるように製造及び貯蔵されなければならない。したがって、無水の組成物は、好適な製剤キットに含まれるように水への曝露を防ぐと知られている材料を利用して包装されることが好ましい。好適な包装の例には、密封ホイル、プラスチック、投薬単位容器(例えば、バイアル)、ブリスターパック、及びストリップパックがあるが、これらに限定されない。
【0136】
有効成分が分解する速度を低下させる1種以上の化合物を含む医薬組成物及び剤形も本発明に提供される。そのような化合物は、本明細書において「安定剤」と呼ばれ、アスコルビン酸などの酸化防止剤、pH緩衝剤、又は塩緩衝剤があるが、これらに限定されない。
【0137】
賦形剤の量及び種類と同様に、剤形中の有効成分の量及び具体的な種類も、患者に投与される経路などがあるがこれに限定されない因子に依存して変わり得る。
【0138】
(5.3.5遅延放出剤形)
本明細書に提供される方法及び組成物に使用される有効成分は、制御放出手段又は当業者に周知である送達装置により投与することができる。例には、それぞれ引用により本明細書に組み込まれる米国特許第3,845,770号;同第3,916,899号;同第3,536,809号;同第3,598,123号;及び同第4,008,719号、同第5,674,533号、同第5,059,595号、同第5,591,767号、第5,120,548号、同第5,073,543号、同第5,639,476号、同第5,354,556号、及び同第5,733,566号に記載されているものがあるが、これらに限定されない。そのような剤形を使用して、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、他のポリマーマトリックス、ゲル、透過膜、浸透システム、多層コーティング、微粒子、リポソーム、ミクロスフィア、又はこれらの組み合わせを利用して1種以上の有効成分の緩徐放出又は制御放出を与えることができ、種々の比率で望まれる放出プロファイルを与えることができる。本明細書に記載されているものを含む、当業者に公知である好適な制御放出製剤は、本明細書に提供される方法及び組成物に使用される化合物とともに使用するために容易に選択できる。したがって、制御放出用にされている錠剤、カプセル、ゲルキャップ、及びカプレットなどがあるがこれらに限定されない経口投与に好適な単一単位剤形が本明細書に提供される。
【0139】
制御放出医薬製品は全て、非制御の対応物により達成されるよりも薬物療法を向上させるという共通の目標を有する。理想的には、医療における最適に設計された制御放出製剤の利用には、最低限の時間で最低限の原薬が病態の治癒又は制御に使用されるという特徴がある。制御放出製剤の利点には、薬物の活性延長、投薬頻度の低減、及び患者のコンプライアンス向上がある。さらに、制御放出製剤を使用して、作用の発現の時間又は薬物の血中濃度などの他の特性に影響を与えることができ、そのため副作用(例えば、有害作用)の発生に影響を与えることができる。
【0140】
ほとんどの制御放出製剤は、所望の治療効果を素早く生み出す量の薬物(有効成分)を最初に放出し、長期間にわたりこのレベルの治療効果又は予防効果を維持する薬物の他の量を徐々にかつ継続的に放出するように設計されている。体内のこの一定の薬物レベルを維持するため、薬物は、代謝されて体から排泄される薬物の量を置換する速度で剤形から放出されなければならない。有効成分の制御放出は、pH、温度、酵素、水、又は他の物理的条件又は化合物があるがこれらに限定されない種々の条件により刺激することができる。
【0141】
(5.3.6キット)
いくつかの場合で、本明細書に提供される方法及び組成物に使用される複数の有効成分は、同時に、又は同じ投与経路により患者に投与されないのが好ましい。したがって、開業医により使用される場合、患者への適切な量の有効成分の投与を単純化できるキットが提供される。
【0142】
一実施態様において、キットは、本明細書に提供される方法及び組成物に使用される化合物、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、もしくは立体異性体の単一単位剤形、及びこれらの化合物と組み合わせて使用できる他の薬剤の単一単位剤形を含む。本明細書に提供されるキットは、有効成分の投与に使用される装置をさらに含んでよい。そのような装置の例には、シリンジ、点滴バッグ、パッチ、及び吸入器があるが、これらに限定されない。
【0143】
本明細書に提供されるキットは、1種以上の有効成分の投与に使用できる医薬として許容し得るビヒクルをさらに含む。例えば、有効成分が、非経口投与のために再構成されなければならない固体形態で与えられる場合、キットは、有効成分を溶かして非経口投与に好適な粒子のない滅菌溶液を形成できる好適なビヒクルの密封容器を含んでよい。医薬として許容し得るビヒクルの例には、米国薬局方注射水;塩化ナトリウム液、リンゲル液、デキストロース液、デキストロース及び塩化ナトリウム液、及び乳酸リンゲル液などがあるが、これらに限定されない水性ビヒクル;エチルアルコール、ポリエチレングリコール、及びポリプロピレングリコールなどの水混和性ビヒクル;及びコーン油、綿実油、落花生油、ゴマ油、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、及び安息香酸ベンジルなどの非水性ビヒクルがあるが、これらに限定されない。
【0144】
特定の実施態様は、以下の非限定的な実施例に例示されている。物質及び方法の両方に対する多くの改良が、本開示の趣旨及び範囲から逸脱せずに実施可能であることが、当業者には明らかであろう。
【実施例】
【0145】
(6.実施例)
(6.1選択的セロトニン1A受容体拮抗剤の存在下での5-HTニューロン活性に対するトランスノルセルトラリンの興奮効果)
(6.1.1.手順)
(6.1.1.1動物)
体重が250から300gの雄のSprague Dawleyラット(Charles River、ケベック州、サン・コンスタン)を実験に使用した。ラットを個別に収容し、標準的な実験条件(12:12時間明暗サイクル、水及び飼料を自由に摂取)下においた。動物は全て、カナダ動物管理協会(CCAC)のガイドラインに従って取扱いし、この研究のプロトコルは当地の動物管理委員会(カナダ、オンタリオ州、オタワ、Ottawa Health Research Institute)により認証された。
【0146】
(6.1.1.2インビボの電気生理学的記録)
ラットに抱水クロラール(400mg/kg;i.p.)により麻酔をかけ、定位フレーム中においた。背側縫線核(DR)中の5-HTニューロンの電気生理学的記録を、予め2M NaCl溶液を充填したシングルバレルガラスマイクロピペット(R&D Scientific Glass, メリーランド州、スペンサービル)を利用して実施した。そのインピーダンスは典型的には4-7MΩであった。
【0147】
(6.1.1.3 DR 5-HTニューロンの記録)
シングルバレルガラスマイクロピペットを、下記の座標(ラムダからのmm)を使用して置いた:AP, +1.0から1.2;L, 0±0.1;V, 5から7。次いで、推定された5-HTニューロンを、下記の基準を利用して同定した:ゆっくりした(0.5-2.5Hz)規則正しい発火率及び長期間の(2-5ms)二相又は三相の細胞外波形(Aghajanian and Vandermaelen, 1982b)。すでに示されたとおり、5-HTニューロンはバースト活性を示す(Hajosらの文献Neuroscience, 69(1): 189-197 (1995))。5-HTニューロンのこの時折の発火パターンを、Hajosらにより設定された基準に従いスパイク間隔バースト分析(spike interval burst analysis)により分析した。バーストの開始は、0.005秒より短いスパイク間間隔を持つ2つのスパイクの発生と定義した。
【0148】
(6.1.1.4ニューロン反応性の評価)
トリプル再取込み阻害剤の全身投与の60秒後に、ベースライン発火率のパーセントを測定した。種々のパラメーターを決定して、トランスノルセルトラリンとWAY-100635との同時投与の電気生理学的効果を調査した。これらのパラメーターには、トラックあたりの単一スパイク、バースト、細胞の数、及び5-HTニューロンの発火率がある。
【0149】
(6.1.1.5統計分析)
電気生理学的データは、ベースライン発火率のパーセントの平均±S. E. Mとして、又は同じニューロンから測定される単一スパイク又はバーストの平均±S.E.Mとして表した。データの分析は、治療、治療及び予備治療、又は治療及び脳の領域を主な因子として、一元配置分散分析又は二元配置分散分析(ANOVA)を利用して実施した。フィッシャーの保護付き最小有意差検定(Fisher's PLSD-test)を利用して、群の間の統計的有意性を分析した。2つの群を比較する実験では、対応のあるスチューデントt検定を利用した。各実験において、p<0.05のレベルを、統計的に有意な効果の証拠とみなした。
【0150】
(6.1.2結果)
DA及び/又はNEの増加が、5-HTニューロンの発火率に対する(1R,4S)-トランスノルセルトラリンに関連する阻害効果を制限するかどうかを決定するため、DR中の電気生理学的効果を、5-HT1A受容体拮抗剤WAY-100635により予備治療されたラットで評価した。DR 5-HTニューロンの基礎発火率のパーセントの一元配置分散分析は、治療因子の全体的に有意な興奮効果を示した[F(3,20) = 8.2, p<0.001]。
【0151】
WAY-100635により予備治療したラットにおいて、(1R,4S)-トランスノルセルトラリン(0.5-2 mg/kg; iv)は、DR 5-HT発火率の有意な上昇を惹起した(図1A及び1B)。(1R,4S)-トランスノルセルトラリンの興奮効果が単一スパイク及び/又はバースト活性の変更による可能性を検討するため、より詳細な分析を実施した。2つの別々な一元配置分散分析は、単一スパイクの数[F(3,20) = 4.5, p<001]及びバーストの数[F(3,20) = 3.1, p<0.05]の治療因子の全体的な有意な効果を示した。そのため、WAY-100635により予備治療されたラットにおいて、(1R,4S)-トランスノルセルトラリンは、単一スパイク及びバーストの数を有意に増加させた(図1C及び1D)。先の知見(Haddjeriらの文献Neuropsychopharmacology 29(10):1800-1806, (2004))に一致して、WAY-100635(100μg/kg;iv)単体は、DR 5-HTニューロンの自発発火率を変えなかった(1.3±0.1対1.4±0.1(n=8))。
【0152】
5-HT1A自己受容体遮断の状態におけるDR 5-HTニューロンに対する(1R,4S)-トランスノルセルトラリンの興奮効果を支持して、(1R,4S)-トランスノルセルトラリンの投与後にトラックあたりに記録されるニューロンの数及びその平均発火率の有意な増加があった(表1)。ドラッグナイーブなラットにおいて、DR 5-HTニューロンの亜集団は単一スパイクモードで、2つ(ダブレット)又は時には3つのスパイクを持つバースト活性で放電することが、先に報告された(Hajosらの文献Neuroscience 69(1):189-187 (1995))。本研究では、約15%の5-HTニューロン(6/38)がバースト活性を示した。このパーセンテージは、以下の表1に示されるとおり、WAY-100635と(1R,4S)-トランスノルセルトラリンの組み合わせにより2倍になった(12/36ニューロン)。
【表1】

【0153】
したがって、(1R,4S)-トランスノルセルトラリンが、WAY-100635の急性静脈内投与後にラットに急性投与された時、5-HTニューロンの放電は著しく増加した。さらに、トラックあたり記録される5-HTニューロンの平均数及びその発火率は、WAY-100635と(1R,4S)-トランスノルセルトラリンとの組みあわせ後に有意に増加し、そのため5-HTニューロンの亜集団がこれらの薬剤状態で活性化され得ることを示している。さらに、(1R,4S)-トランスノルセルトラリンの興奮効果は、WAY-100635の存在下で明確になったが、ダブレットスパイク活性で放電する5-HTニューロンの数の増加という特徴がある。そのような効果は、単一スパイク活性のみが増加した場合よりも高い程度で神経終末での5-HT放出を増加させ得る。
【0154】
これに一致して、5-HT、NE、及びDAトランスポーターの同時遮断により誘起される皮質細胞外5-HT濃度の増加が、WAY-100635のミックスへの添加により増強されることが最近示された(Weikopらの文献Eur. Neuropsychopharmacol. 17(10): 658-671 (2007))。すべて合わせると、これらの結果は、ノルアドレナリン作動性及び/又はドーパミン作動性の伝達の増加が、DRの制御に主要な興奮性の役割を果たし、これは5-HTニューロンに対する(1S,4R)-トランスノルセルトラリンのSSRI成分の阻害効果を制限し、WAY-100635により逆転され得ることを示唆している。そのため、この結果は、トランスノルセルトラリンと選択的セロトニン1A受容体作動剤/拮抗剤との組みあわせが、より良い効能、並びにより速い効果の開始を与え得ることを示す。
【0155】
本出願書に言及された特許、特許出願、及び刊行物の全てを、その全体として本明細書に組み込む。さらに、本出願書における引用文献の引用又は特定は、そのような引用文献が従来技術として利用可能であることを認めるものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)治療上又は予防上有効な量のトランスノルセルトラリン、又はその医薬として許容し得る塩、もしくは溶媒和物;及び2)治療上又は予防上有効な量のセロトニン受容体1A拮抗剤、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、もしくは立体異性体を患者に投与することを含む、神経疾患を治療、予防、又は管理する方法。
【請求項2】
前記トランスノルセルトラリンが(1R,4S)-トランスノルセルトラリンである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記トランスノルセルトラリンが(1S,4R)-トランスノルセルトラリンである、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記セロトニン受容体1A拮抗剤が、ピンドロール、WAY-100635、レコゾタン、又はAV-965である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記セロトニン受容体1A拮抗剤が、トランスノルセルトラリンの投与の前に投与される、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記神経疾患が、うつ病、認知障害、線維筋痛症、疼痛、睡眠関連疾患、慢性疲労症候群、注意欠陥障害(ADD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)、レストレスレッグ症候群、統合失調症、不安、強迫性障害、心的外傷後ストレス障害、季節性情動障害(SAD)、月経前不機嫌、閉経後の血管運動症状、神経変性疾患、躁状態、気分変調性障害、気分循環性障害、肥満、又は薬物の濫用もしくは依存症である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記神経疾患がうつ病である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
1)治療上又は予防上有効な量のトランスノルセルトラリン、又はその医薬として許容し得る塩、もしくは溶媒和物;及び2)治療上又は予防上有効な量のセロトニン受容体1A作動剤、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、もしくは立体異性体を患者に投与することを含む、神経疾患を治療、予防、又は管理する方法。
【請求項9】
前記トランスノルセルトラリンが(1R,4S)-トランスノルセルトラリンである、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記トランスノルセルトラリンが(1S,4R)-トランスノルセルトラリンである、請求項8記載の方法。
【請求項11】
前記セロトニン受容体1A作動剤が、ブスピロン、エルトプラジン、又はタンドスピロンである、請求項8記載の方法。
【請求項12】
前記セロトニン受容体1A作動剤が、トランスノルセルトラリンの投与の前に投与される、請求項8記載の方法。
【請求項13】
前記神経疾患が、うつ病、認知障害、線維筋痛症、疼痛、睡眠関連疾患、慢性疲労症候群、注意欠陥障害(ADD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)、レストレスレッグ症候群、統合失調症、不安、強迫性障害、心的外傷後ストレス障害、季節性情動障害(SAD)、月経前不機嫌、閉経後の血管運動症状、神経変性疾患、躁状態、気分変調性障害、気分循環性障害、肥満、又は薬物の濫用もしくは依存症である、請求項8記載の方法。
【請求項14】
前記神経疾患がうつ病である、請求項13記載の方法。
【請求項15】
1)治療上又は予防上有効な量のトランスノルセルトラリン、又はその医薬として許容し得る塩、もしくは溶媒和物;及び2)治療上又は予防上有効な量のセロトニン受容体1A調節物質、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、もしくは立体異性体を患者に投与することを含む、神経疾患を治療、予防、又は管理する方法。
【請求項16】
1)有効量のトランスノルセルトラリン、又はその医薬として許容し得る塩、もしくは溶媒和物;2)有効量の選択的セロトニン受容体1A作動剤もしくは拮抗剤、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、もしくは立体異性体;及び3)医薬として許容し得る担体又は賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項17】
前記トランスノルセルトラリンが(1R,4S)-トランスノルセルトラリンである、請求項16記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記トランスノルセルトラリンが(1S,4R)-トランスノルセルトラリンである、請求項16記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記セロトニン受容体1A拮抗剤が、ピンドロール、レコゾタン、AV-965、又はWAY-100635である、請求項16記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記セロトニン受容体1A作動剤が、タンドスピロン、ブスピロン、又はエルトプラジンである、請求項16記載の医薬組成物。
【請求項21】
追加の活性薬剤をさらに含む、請求項16記載の医薬組成物。

【図1】
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【公表番号】特表2012−526832(P2012−526832A)
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−510964(P2012−510964)
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【国際出願番号】PCT/US2010/034473
【国際公開番号】WO2010/132521
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(511145546)スノビオン プハルマセウトイカルス インコーポレイテッド (7)
【Fターム(参考)】