説明

トルクインデックスセンサ

【課題】トルクセンサとインデックスセンサの機能を併せ持ち、部品点数が少なく、コンパクトなトルクインデックスセンサを提供する。
【解決手段】操舵操作によって回転する回転軸2が受けるトルクを偶数個の磁気検出素子3a,3bによって検出するトルク検出部4と、トルク検出部4の磁気検出素子3a,3bによって回転軸2の回転基準位置を検出する回転基準位置検出部5とを備え、回転基準位置検出部5は、回転軸2に伴って回転され、周囲に案内溝6が形成されたカラー7と、カラー7の回転に伴い案内溝6に案内されて磁気検出素子3a,3bに対して接近/離反するインデックス用磁石8とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トルクセンサとインデックスセンサの機能を併せ持つコンパクトなトルクインデックスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の電動パワーステアリング装置は、運転者が操舵操作を行うステアリングホイールと、ステアリングホイールにより回転される入力軸と、入力軸の回転によりトルク(操舵トルク)が加えられる連結軸(トーションバー)と、連結軸に加えられたトルクにより回転される出力軸と、連結軸に加えられたトルクに応じて駆動される操作補助用モータとを備え、出力軸に連結された舵取機構に操作補助用モータの駆動力を伝えることにより、運転者の操舵操作を補助するようになっている。
【0003】
電動パワーステアリング装置において、操作補助用モータの駆動を制御するためには、連結軸に加えられるトルクを検出する必要がある。
【0004】
従来、トルクセンサに関しては、特許文献1に記載のように、入力軸に設けられ硬質磁性体からなる略円筒状の円筒磁気部と、出力軸に設けられ円筒磁気部の磁場内に配置されて磁気回路を形成する軟質磁性体からなるリング形状の一対のリング磁気部(磁気ヨーク)と、リング磁気部と磁気結合しリング磁気部からの磁束を誘導することにより磁束を集めるリング形状の一対の集磁リングと、集磁リングが誘導した磁束を検出する磁気検出素子と、演算部を備え、該演算部において、磁気検出素子の出力と連結軸の捩れ弾性(トルク対捩れ角特性)とに基づいて、連結軸に加えられるトルクを演算するものが知られている。
【0005】
また、電動パワーステアリング装置においては、操舵トルクと共に操舵操作に伴って変化する操舵用の車輪の向き(操舵角)も検出する必要がある。
【0006】
従来、操舵角センサに関しては、特許文献2に記載のように、出力軸と平行に位置する2つの軸の周りに出力軸の回転に連動して回転する互いに歯数の異なる1対の歯車と、それぞれの歯車の回転角度を検出する複数の磁気検出素子とを備え、各磁気検出素子によって検出されたそれぞれの回転角度の組み合わせに基づいて、操舵角の検出を行う操舵角センサが知られている。この特許文献2のような操舵角センサを機械式操舵角センサという。
【0007】
特許文献2のような機械式操舵角センサのほかに、今、新しい方式として、出力軸の回転位置に基準位置を定め、出力軸が回転基準位置にあることを検出(インデックス)することで出力軸の回転数を検出して操舵角の検出に利用するインデックス式操舵角センサがある。例えば、電動パワーステアリング装置には、操作補助用モータが備えられており、操作補助用モータの回転角に基づいて出力軸の相対角度を得ることができるが、インデックス式操舵角センサは、この操作補助用モータから得られる出力軸の相対角度と、出力軸が回転基準位置にあることを検出することで検出される出力軸の回転数とに基づいて出力軸の絶対角を得ることによって、操舵角の検出を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−149062号公報
【特許文献2】特開2007−269281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者らは、インデックス式操舵角センサの技術に着目し、電動パワーステアリング装置に、トルクセンサとインデックス式操舵角センサ用のインデックスセンサとを併設しようと考えた。
【0010】
しかし、単に、トルクセンサとインデックスセンサとを併設したのでは、二つのセンサを併設しただけに過ぎず、部品点数が多くなるだけでなく、コンパクト化がなされないという課題がある。
【0011】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、トルクセンサとインデックスセンサの機能を併せ持ち、部品点数の削減及びコンパクト化に寄与することが可能なトルクインデックスセンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために本発明は、操舵操作によって回転する回転軸が受けるトルクを偶数個の磁気検出素子によって検出するトルク検出部と、前記トルク検出部の前記磁気検出素子によって前記回転軸の回転基準位置を検出する回転基準位置検出部とを備え、前記回転基準位置検出部は、前記回転軸に伴って回転され、周囲に案内溝が形成されたカラーと、前記カラーが1回転するのに伴い前記案内溝に案内されて前記磁気検出素子に対して1回のみ接近/離反するインデックス用磁石と、を備えるものである。
【0013】
前記案内溝は、前記インデックス用磁石を前記磁気検出素子から遠い位置に保持する平坦部と、前記インデックス用磁石を前記磁気検出素子に対して前記遠い位置から接近させる接近用傾斜部と、接近させた前記インデックス用磁石を前記磁気検出素子から前記遠い位置に離反させる離反用傾斜部とを有してもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明は次の如き優れた効果を発揮する。
【0015】
(1)共通の部材を使用してトルクセンサとインデックスセンサの機能を併せ持つので、部品点数が少なく、コンパクトなトルクインデックスセンサの提案が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態を示すトルクインデックスセンサの回転基準位置における側断面図である。
【図2】図1の矢印Aから見た磁気検出素子付近の拡大正面図である。
【図3】(a)はカラーの側面図、(b)は可動コマの側面図及び上面図、(c)はスラストガイドの側面図及び上面図である。
【図4】図1のトルクインデックスセンサの回転基準位置から90°回転した位置における側断面図である。
【図5】図1のトルクインデックスセンサの回転基準位置から180°回転した位置における側断面図である。
【図6】回転軸の1回転における磁気検出素子の出力電圧(電圧比)の変化を示したグラフである。
【図7】本発明のトルクインデックスセンサのトルク検出部の分解説明図である。
【図8】(a)、(b)は、本発明においてトルク検出用磁石と検出ヨークとの回転位置ずれに応じて磁束が変化することを説明するためのイメージ図である。
【図9】本発明においてトルク検出に係る磁束を説明するための磁気検出素子付近の拡大側面図である。
【図10】本発明において連結軸が受けるトルクと磁気検出素子の出力との関係を示したトルク対磁気検出出力特性図である。
【図11】本発明において回転軸の回転角度と磁気検出素子の出力との関係を示した回転角度対磁気検出出力特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0018】
図1に示されるように、本発明のトルクインデックスセンサ1は、操舵操作によって回転する回転軸2が受けるトルクを偶数個の磁気検出素子3a,3bによって検出するトルク検出部4と、トルク検出部4の磁気検出素子3a,3bによって回転軸2の回転基準位置を検出する回転基準位置検出部5とを備え、回転基準位置検出部5は、回転軸2に伴って回転され、周囲に案内溝6が形成されたカラー7と、カラー7が1回転するのに伴い案内溝6に案内されて磁気検出素子3a.3bに対して1回のみ接近/離反するインデックス用磁石8とを備える。
【0019】
ここで、回転軸2は、図示しない車両のステアリングホイールに固定された入力軸、タイヤに連結された出力軸、入力軸と出力軸とを連結する連結軸のいずれであってもよい。
【0020】
トルク検出部4については、従来から知られているものであるが、本発明では、回転基準位置検出部5との組み合わせに特徴を有するので、後に詳しく述べることにする。ここでは、トルク検出部4のうち、磁気検出素子3a,3bとその周辺のみ説明しておく。すなわち、トルク検出部4の部材として、軸方向両端にそれぞれ集磁リング9a,9bが設けられ、各集磁リング9a,9bの一側にそれぞれ近接部10a,10bが設けられる。集磁リング9a,9bと近接部10a,10bは、トルク検出部4内の磁束を磁気検出素子3a,3bに導くためのものである。
【0021】
図2に示されるように、一方の磁気検出素子3aは、検出面Fが一方の近接部10aに臨ませて配置され、他方の磁気検出素子3bは、検出面Fが他方の近接部10bに臨ませて配置される。2つの磁気検出素子3a,3bは、軸方向の同じ位置に周方向に並べて配置されているが、検出面Fの軸方向位置が異なり、磁気検出素子3aは検出面Fが近接部10aに近づけて配置され、磁気検出素子3bは、検出面Fが近接部10bに近づけて配置される。
【0022】
図1に示されるように、回転基準位置検出部5のカラー7は、回転軸2に取り付けられた回転軸2と同軸の円筒であり、回転軸2の回転に随伴して回転する。カラー7は、軸方向に適宜な厚さを有する。案内溝6は、カラー7の外周面に、一部で屈曲しながらカラー7を1周して元に戻るように形成される。
【0023】
案内溝6は、インデックス用磁石8を磁気検出素子3a,3bから遠い位置に保持する平坦部6aと、インデックス用磁石8を磁気検出素子3a,3bに対して前記遠い位置から接近させる接近用傾斜部6bと、接近させたインデックス用磁石6を前記遠い位置に離反させる離反用傾斜部6c(図4参照)とを有する。平坦部6aは、カラー7の磁気検出素子3a,3bの側とは反対側の端部に、軸に対して傾斜させずに設けられる。接近用傾斜部6bは、平坦部6aに接続している境界からカラー7の磁気検出素子3a,3bの側の端部まで、軸に対して傾斜させて設けられる。離反用傾斜部6cは、接近用傾斜部6bに接続している境界から平坦部6aまで、軸に対して接近用傾斜部6bとは逆に傾斜させて設けられる。これにより、案内溝6は、接近用傾斜部6bと離反用傾斜部6cの境界が最も磁気検出素子3a,3bに対して近いことになる。本実施形態においては、接近用傾斜部6bと離反用傾斜部6cとの境界に可動コマ11が来た位置を回転基準位置とした。
【0024】
回転基準位置検出部5は、インデックス用磁石8を保持して移動可能な可動コマ11と、可動コマ11の移動を軸方向のみに規制するスラストガイド12とを備える。可動コマ11は、カラー7の径方向外方に、カラー7の外周に面して設けられる。可動コマ11は、回転軸2の径方向内方に突き出され案内溝6に係合される第1突起11aと、回転軸2の径方向外方に突き出されスラストガイド12に形成されるスラスト溝13に係合される第2突起11bとを有する。スラストガイド12は、カラー7の径方向外方に、カラー7から可動コマ11を挟むためのスペースを空けて、静止系に固定されて設けられる。スラストガイド12には、回転軸2の軸と平行に延びたスラスト案内溝13が形成される。なお、カラー7、可動コマ11、スラストガイド12は、非磁性材料から構成される。
【0025】
図3(a)に示されるように、カラー7の案内溝6は、平坦部6aと接近用傾斜部6bと離反用傾斜部6cとを有し、回転軸2の軸と平行な基準線C1に対して接近用傾斜部6bと離反用傾斜部6cはそれぞれ角度θをなす。案内溝6の断面は図示しないが、案内溝6はスラスト案内溝13と同様に断面半円状である。
【0026】
図3(b)に示されるように、可動コマ11は、案内溝6に係合するための半球状の第1突起11aと、スラスト案内溝13に係合するための2つの半球状の第2突起11bとを有する。
【0027】
図3(c)に示されるように、スラストガイド12は、断面半円状で回転軸2の軸と平行に延びた2つのスラスト案内溝13を有する。
【0028】
図1に示されるように、可動コマ11は、カラー7とスラストガイド12に挟み込まれ、第1突起11aが案内溝6に係合し、2つの第2突起11bがそれぞれスラスト案内溝13に係合することで、3点支持されると共に、軸方向への移動が許容される。
【0029】
次に、回転基準位置検出部5の動作を説明する。
【0030】
図4に示されるように、回転軸2が回転基準位置から90°回転した位置にあるとき、カラー7も随伴して90°回転しているので、矢印Bの位置には平坦部6aが来ている。このため、可動コマ11が平坦部6aに案内され、インデックス用磁石8は磁気検出素子3a,3bから遠い位置に保持される。
【0031】
図5に示されるように、回転軸2が回転基準位置から180°回転した位置にあるときも、カラー7も随伴して180°回転しているので、矢印Bの位置には平坦部6aが来ている。このため、図4の場合と同様、可動コマ11が平坦部6aに案内され、インデックス用磁石8は磁気検出素子3a,3bから遠い位置に保持される。
【0032】
図5の状態から回転軸2が360°近くまで回転すると、カラー7も随伴して360°近くまで回転し、矢印Bの位置に接近用傾斜部6bが来る。可動コマ11が接近用傾斜部6bに案内されることで、インデックス用磁石8は磁気検出素子3a,3bに近づいていく。図1に示されるように、回転軸2が回転基準位置(360°=0°)まで回転すると、カラー7も随伴して0°まで回転し、インデックス用磁石8は最も磁気検出素子3a,3bに近づく。さらに、回転軸2が回転すると、カラー7も回転して0°を超えるため、可動コマ11が離反用傾斜部6cに案内され、インデックス用磁石8は磁気検出素子3a,3bから遠ざかる。なお、回転軸2の回転方向が図示の矢印と逆方向である場合、これまで説明した離反用傾斜部6cが接近用傾斜部6bとなり、これまで説明した接近用傾斜部6bが離反用傾斜部6cとなる。よって、図1、3〜5には、逆回転時の符号を括弧内に記す。
【0033】
このようにして回転軸2が1回転、すなわちカラー7が1回転するのに伴い、インデックス用磁石8が案内溝6に案内されて磁気検出素子3a.3bに対して1回のみ接近/離反する。
【0034】
ここで、図1中に、インデックス用磁石8から磁気検出素子3a,3bに至るまでの磁路を示すと、磁路はN極から集磁リング9aと集磁リング9bとに分かれて入り、集磁リング9aからは近接部10aを経て磁気検出素子3aに至り、集磁リング9bからは近接部10bを経て磁気検出素子3bに至る。このような磁路が形成されるのは、図4、図5の状態でもおおむね同じであるが、図1の状態においてインデックス用磁石8が磁気検出素子3a,3bに最も接近しているため、磁気検出素子3a,3bに与えられる磁束密度が大きい。
【0035】
回転角度に対する磁気検出素子3a,3bの出力電圧の変化を各々、回転角度180°における出力電圧に対する電圧比で示すと、図6に示されるように、磁気検出素子3a,3bの出力電圧は回転基準位置の近傍で大きくなる。ここで、例えば、角度θは30°、インデックス用磁石8のストローク距離(インデックス用磁石8の回転軸2の軸方向の移動距離)は6mmである。図6のグラフの急峻さは角度θに依存すると思われる。
【0036】
以上のように、本発明のトルクインデックスセンサ1にあっては、回転基準位置検出部5が、回転軸2に伴って回転され、周囲に案内溝6が形成されたカラー7と、カラー7が1回転するのに伴い案内溝6に案内されて磁気検出素子3a.3bに対して1回のみ接近/離反するインデックス用磁石8とを備えるので、磁気検出素子3a,3bの出力電圧から回転基準位置を検出することができる。
【0037】
回転基準位置検出部5は、カラー7、可動コマ11、スラストガイド12が、例えば、樹脂のような非磁性材料から構成されるため、加工がしやすい。このため、磁気検出素子3a,3bとインデックス用磁石8との相対位置を決定づける案内溝6が容易に精密かつ任意形状に調整して加工できる。
【0038】
回転基準位置検出部5は、周囲に案内溝6を設けたカラー7と回転軸2の軸と平行にスラスト案内溝13を設けたスラストガイド12を有するので、インデックス用磁石8が取り付けられた可動コマ11が軸方向のみに移動する。このためインデックス用磁石8は、磁気検出素子3a,3bの並び方向(回転軸2の周方向)には移動しない。もし仮に、磁石が磁気検出素子3a,3bの並び方向に移動すると、磁気検出素子3a,3bの出力電圧の和には複数箇所のピークが発生するおそれがあるが、回転基準位置検出部5はそのおそれがない。
【0039】
次に、トルク検出部4について詳述する。
【0040】
図7に示されるように、トルク検出部4は、図示しない入力軸に取り付けられたトルク検出用磁石71と、図示しない出力軸に取り付けられてトルク検出用磁石71を非接触で囲む一対の検出ヨーク72a,72bと、各検出ヨーク72a,72bの周囲を非接触で囲む一対の集磁リング9a,9bと、集磁リング9a,9bにそれぞれ取り付けられて磁気検出素子3a,3bを挟む一対の近接部10a,10bとを備える。入力軸と出力軸は、連結軸73により連結される。
【0041】
トルク検出用磁石71は、複数のN極とS極が周方向に所定ピッチで交互に配置された円筒状磁石である。トルク検出用磁石71は、入力軸と同軸で、入力軸と一体的に回転する。
【0042】
検出ヨーク72a,72bは、トルク検出用磁石71から適宜な狭い間隙を隔ててトルク検出用磁石71の周囲を非接触で囲む円環に、トルク検出用磁石71における同一磁極の配置ピッチと同じピッチで複数の爪が形成されてなる。各検出ヨーク72a,72bは、互いに軸方向に異なる位置に配置される。検出ヨーク72a,72bは、出力軸と同軸で、出力軸と一体的に回転する。
【0043】
図8(a)に詳しく示されるように、検出ヨーク72a,72bは、二等辺三角形状の爪を互いに周方向に半ピッチずつずらせて出力軸に対して同軸に取り付けられる。検出ヨーク72a,72bは、トルク検出用磁石71からの磁束を連結軸の捩れ変形に応じて異なる分布で導くためのものである。
【0044】
図7の円内拡大図に示されるように、一方の磁気検出素子3aは、検出面Fが基端方向(図示上)に臨ませて配置され、もう一方の磁気検出素子3bは、検出面Fが先端方向(図示下)に臨ませて配置される。2つの磁気検出素子3a,3bは、軸方向の同じ位置に周方向に並べて配置されているが、検出面Fの軸方向位置が異なる。
【0045】
また、一方の磁気検出素子3aの検出方向は、基端に向けられ、もう一方の磁気検出素子3bの検出方向は、先端に向けられている。このように、2つの磁気検出素子3a,3bは、検出方向を異ならせて設けられる(図2参照)。
【0046】
次に、図7のトルク検出部4の動作について図8(a)、(b)を用いて説明する。
【0047】
図8(a)に示されるように、ステアリングホイールが操舵操作されておらず連結軸73がトルクを受けていない中立状態では、検出ヨーク72a,72bは、それぞれの爪の先端がトルク検出用磁石71のN極とS極の境界を指す。これにより、検出ヨーク72aにおいても検出ヨーク72bにおいても爪がトルク検出用磁石71のN極に対向する面積とS極に対向する面積とが等しくなり、検出ヨーク72a,72b共に、爪を介してN極から入る磁束とS極へ出る磁束とが等しくなるので、検出ヨーク72a,72b間には、磁束は生じない。
【0048】
図8(b)に示されるように、ステアリングホイールが操舵操作されて連結軸73がトルクを受けているトルク付加状態では、連結軸73に捩れ変形が生じることにより、入力軸に取り付けられているトルク検出用磁石71と出力軸に取り付けられている検出ヨーク72a,72bとの周方向の相対位置が変化する。検出ヨーク72aでは、爪がN極に対向する面積がS極に対向する面積よりも大きくなる。よって、爪を介してN極から入る磁束が爪を介してS極に出る磁束よりも大きくなる。検出ヨーク72bでは、逆に爪がN極に対向する面積がS極に対向する面積よりも小さくなる。よって、爪を介してN極から入る磁束が爪を介してS極に出る磁束よりも小さくなる。その結果、検出ヨーク72a,72bに磁気の極性の差異が発生し、検出ヨーク72a,72b間に磁束が生じる。この磁束が集磁リング9a,9bによって導かれ、近接部10a,10bに集められる。
【0049】
その結果、図9に示されるように、2つの近接部10a,10b間に磁束が発生する。磁束は、2つの磁気検出素子3a,3bでそれぞれ検出される。このとき、図8(a)の状態から図8(b)の状態に変化する間の2つの近接部10a,10b間の磁束密度は、トルク検出用磁石71と検出ヨーク72a,72bとの周方向の位置ずれ、すなわち連結軸73の捩れ変形の大きさに比例する。すなわち、磁気検出素子3a,3bの出力は、連結軸73が受けるトルクに比例する。
【0050】
図10に、連結軸73が受けるトルクに対するそれぞれの磁気検出素子3a,3bの出力Vtの変化を示す。ただし、インデックス用磁石8が磁気検出素子3a,3bから十分に離れており、インデックス用磁石8による磁束の影響はないものとする。磁気検出素子3a,3bは検出した磁束密度を電圧として出力するため、トルクに比例した出力Vtが得られる。連結軸73がトルクを受けていない中立状態のときの出力Vtの値をVoffとする。2つの磁気検出素子3a,3bは、検出方向が互いに逆方向であるため、検出される出力の増減方向が逆方向となる。すなわち、検出方向が基端方向である磁気検出素子8aの出力のグラフが右上がりであるとすると、検出方向が先端方向である磁気検出素子8bの出力のグラフが右下がりとなる。
【0051】
このようにして、トルク検出部4は、トルクを表す信号を検出することができる。
【0052】
本発明のトルクインデックスセンサ1は、トルク検出部4の磁気検出素子3a,3bを利用して、回転基準位置検出用の信号が得られるようにしたものである。前述のように、磁気検出素子3a,3bは、トルクに対して出力の増減方向が逆方向となるように構成されている。そこで、回転基準位置検出部5では回転軸2の回転に対して磁気検出素子3a,3b出力の増減方向が同じになるようにする。これにより、磁気検出素子3a,3bの出力の差からはトルクを表す信号が得られ、出力の和からは回転基準位置検出用の信号が得られる。トルクは、磁気検出素子3a,3bの出力の差とトルクの関係を記憶している記憶部(図示せず)の値と、検出された出力の差とを比較することにより得られる。
【0053】
以下、トルク検出部4と複合されている回転基準位置検出部5の動作を説明する。
【0054】
すでに説明したように、回転軸2の回転に伴いカラー7が回転すると、インデックス用磁石8が磁気検出素子3a,3bに対して接近/離間する。その結果、磁気検出素子3a,3bではインデックス用磁石8による磁束の変化が検出される。
【0055】
図11に、出力軸3の回転角度と磁気検出素子3a,3bの各出力Viを回転角度全周における最大出力ViMaxで規格化した値の関係を示す。ただし、トルクインデックスセンサ1は、連結軸がトルクを受けていない中立状態であり、トルク検出用磁石71による磁束の影響はないものとする。回転軸2が回転基準位置から遠い状態、すなわちインデックス用磁石8が磁気検出素子3a,3bから十分に離れている状態のとき、本実施形態においては、第1突起11aが案内溝6の平坦部6aにあるときの出力Viの値をVoffとする。インデックス用磁石8が磁気検出素子3a,3bに最も接近しているとき、本実施形態においては、接近用傾斜部6bと離反用傾斜部6cとの境界に可動コマ11が来た位置を回転軸2が回転基準位置にあるときとし、このときの回転角度を0度と表す。
【0056】
図11に示されるように、出力Viは、回転軸2の回転角度が0度のとき最大であり、回転角度が正負のどちらに振れても急速に減少し、回転角度が約±10度を超えるとVoffとなる。これより、出力Viが極大値になったとき、あるいは所定の閾値を超えたときに、出力軸3が回転基準位置にあると判定できる。
【0057】
次に、トルク検出と回転基準位置検出を同時に行う動作を説明する。
【0058】
図示しない演算部において、2つの磁気検出素子3a,3bの出力を用いて式(1)及び式(2)の演算を行うことにより、トルクに係る出力Vtと回転基準位置に係る出力Viを得ることができる。
【0059】
【数1】

【0060】
ただし、V1、V2は、磁気検出素子3a,3bの出力である。連結軸がトルクを受けていない中立状態であって、かつ、回転軸2が回転基準位置から遠い状態のときの出力V1、V2の値をオフセット値Voffとする。
【0061】
このように、2つの磁気検出素子3a,3bの出力V1、V2の差を取って、その1/2からオフセット値Voffを差し引くことにより、トルクに係る出力Vtが得られる。一方、2つの磁気検出素子3a,3bの出力V1、V2の和の1/2からオフセット値Voffを差し引くことにより、回転基準位置に係る出力Viが得られる。
【0062】
回転基準位置に係る出力Viは、適切な値を閾値にすることにより、回転軸2が回転基準位置にあることを判定することができる。なお、オフセット値Voffは、必要に応じて値を変更してもトルク及び回転基準位置の情報を損なうことはない。
【0063】
以上説明したように、本発明のトルクインデックスセンサ1によれば、トルク検出用磁石71の磁束とインデックス用磁石8の磁束とが重畳して磁気検出素子3a,3bに加わるようにすると共に、磁気検出素子3a,3bの検出方向を互いに異ならせたので、磁気検出素子3a,3bの出力V1、V2からトルクに係る出力Vtと回転基準位置に係る出力Viを導き、トルクと回転基準位置を検出することができる。言い換えると、1つのトルクインデックスセンサ1の中に、共通の磁気検出素子3a,3bを使用するトルク検出部4と回転基準位置検出部5とを有するので、部品点数の削減が可能であり、しかも、コンパクト化が可能なトルクインデックスセンサ1が得られる。
【符号の説明】
【0064】
1 トルクインデックスセンサ
2 回転軸
3a,3b 磁気検出素子
4 トルク検出部
5 回転基準位置検出部
6 案内溝
7 カラー
8 インデックス用磁石
9a,9b 集磁リング
10a,10b 近接部
11 可動コマ
12 スラストガイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操舵操作によって回転する回転軸が受けるトルクを偶数個の磁気検出素子によって検出するトルク検出部と、
前記トルク検出部の前記磁気検出素子によって前記回転軸の回転基準位置を検出する回転基準位置検出部とを備え、
前記回転基準位置検出部は、
前記回転軸に伴って回転され、周囲に案内溝が形成されたカラーと、
前記カラーが1回転するのに伴い前記案内溝に案内されて前記磁気検出素子に対して1回のみ接近/離反するインデックス用磁石と、
を備えることを特徴とするトルクインデックスセンサ。
【請求項2】
前記案内溝は、前記インデックス用磁石を前記磁気検出素子から遠い位置に保持する平坦部と、前記インデックス用磁石を前記磁気検出素子に対して前記遠い位置から接近させる接近用傾斜部と、接近させた前記インデックス用磁石を前記磁気検出素子から前記遠い位置に離反させる離反用傾斜部とを有することを特徴とする請求項1記載のトルクインデックスセンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−209196(P2011−209196A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−78842(P2010−78842)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】