説明

トルク伝達装置

本発明は、自動車のパワートレーンで駆動ユニットの出力軸と、少なくとも2つの伝動装置入力軸を備えた伝動装置との間に使用するためのトルク伝達装置であって、当該トルク伝達装置が、少なくとも2つの摩擦クラッチ(5,6)を有しており、該摩擦クラッチ(5,6)が、それぞれ1つのクラッチディスク(9,10)を有しており、該クラッチディスク(9,10)が、それぞれ伝動装置入力軸の1つに連結可能であり、両クラッチディスクの摩擦フェーシングの間に中間プレッシャプレート(7)が配置されており、両クラッチディスクの摩擦フェーシングが、それぞれ中間プレッシャプレートとプレッシャプレートとの間に締込み可能であり、各プレッシャプレートが、摩擦フェーシングの、中間プレッシャプレートと反対の側に配置されている形式のものに関する。本発明によれば、中間プレッシャプレートが、少なくとも伝動装置入力軸の1つに少なくとも軸方向に支承部材(8)を介して支持されており、中間プレッシャプレートが、伝動装置入力軸の回転軸線に対して半径方向の変位可能性を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のパワートレーンで駆動ユニットの出力軸と、少なくとも2つの伝動装置入力軸を備えた伝動装置との間に使用するためのトルク伝達装置であって、当該トルク伝達装置が、少なくとも2つの摩擦クラッチを有しており、該摩擦クラッチが、それぞれ1つのクラッチディスクを有しており、該クラッチディスクが、それぞれ伝動装置入力軸の1つに連結可能であり、両クラッチディスクの摩擦フェーシングの間に中間プレッシャプレートが配置されており、該中間プレッシャプレートが、軸方向で両側に摩擦面を形成しているかもしくは支持しており、両クラッチディスクの摩擦フェーシングが、それぞれ中間プレッシャプレートとプレッシャプレートとの間に締込み可能であり、各プレッシャプレートが、摩擦フェーシングの、中間プレッシャプレートと反対の側に配置されており、さらに、両プレッシャプレートが、中間プレッシャプレートに少なくともねじり連結されていて、操作エレメントによって中間プレッシャプレートに対して軸方向に変位可能であり、少なくとも両摩擦クラッチが、前組付けされたクラッチユニットを形成しており、該クラッチユニットが、伝動装置側に前組付け可能であり、駆動ユニットの出力軸によって支持された駆動エレメントに、駆動ユニットと伝動装置との組立て時に少なくとも相対回動不能に結合可能である形式のものに関する。
【0002】
このような形式のトルク伝達装置は、たとえばドイツ連邦共和国特許出願公開第102005037514号明細書によって提案されている。
【0003】
本発明の課題は、冒頭で述べた形式のトルク伝達装置を構造的にも機能的にも改善することである。特にクラッチユニットの半径方向だけでなく軸方向でも申し分のない保持もしくは位置決めが保証されることが望ましい。特にトルク伝達装置の構造によって、駆動ユニットの出力軸の回転軸線と伝動装置入力軸との間の、多くの事例において存在する軸方向ずれもしくは場合により存在する整合誤差の少なくとも部分的な補償が可能となることが望ましい。
【0004】
この課題を解決するために本発明の構成では、中間プレッシャプレートが、少なくとも伝動装置入力軸の1つに少なくとも一方の軸方向に支承部材を介して支持されており、中間プレッシャプレートが、伝動装置入力軸の回転軸線に対して半径方向の変位可能性を有しているようにした。
【0005】
本発明の有利な構成によれば、半径方向の変位可能性が、伝動装置入力軸の1つに取り付けられた支承部材と、中間プレッシャプレートとの間に設けられている。
【0006】
本発明の有利な構成によれば、半径方向の変位可能性が、中間プレッシャプレートを少なくとも軸方向に支持する構成部材と、中間プレッシャプレートとの間に半径方向の遊びを設けることによって保証されている。
【0007】
本発明の有利な構成によれば、中間プレッシャプレートが、該中間プレッシャプレートと支承部材との間にかつ/または支承部材と、該支承部材を取り付ける伝動装置入力軸との間に設けられた移動抵抗に抗して半径方向に変位可能である。
【0008】
本発明の有利な構成によれば、中間プレッシャプレートを、規定された位置に半径方向で位置決めするために、移動抵抗が、十分に大きく設定されている。
【0009】
本発明の有利な構成によれば、移動抵抗が、少なくとも摩擦接続によって形成されるようになっている。
【0010】
本発明の有利な構成によれば、中間プレッシャプレートが、半径方向内側の周方向の領域を有しており、該領域が、軸方向に支持されており、かつ/または締め込まれている。
【0011】
本発明の有利な構成によれば、支承部材が、伝動装置入力軸の1つに取り付けられた軸受けを有しており、該軸受けが、中間プレッシャプレートを取り付けている。
【0012】
本発明の有利な構成によれば、支承部材が、転がり軸受けを有しており、該転がり軸受けが、伝動装置入力軸の1つに取り付けられたインナ軸受けレースと、アウタ軸受けレースとを備えており、該アウタ軸受けレースが、中間プレッシャプレートに少なくとも軸方向で作用結合されている。
【0013】
本発明の有利な構成によれば、支承部材を介して摩擦クラッチの操作力が支持されるようになっている。
【0014】
本発明の根底ある課題は、特に中間プレッシャプレートが、少なくとも伝動装置入力軸の1つに少なくとも一方の軸方向で支承部材によって支持されており、さらに、中間プレッシャプレートが、伝動装置入力軸の回転軸線に対して少なくとも僅かな半径方向の変位可能性を有していることによって解決される。中間プレッシャプレートを軸方向で支持する伝動装置入力軸に対する中間プレッシャプレートの半径方向のこのような形式の変位可能性もしくは位置決め可能性によって、トルク伝達装置の構成部材の間の半径方向の過度に大きな緊締を回避することができる。これによって、相応の伝動装置軸を支承する伝動装置軸受けの負荷軽減も行われる。少なくとも一方の軸方向への中間プレッシャプレートの軸方向の支持のためには、たとえば転がり軸受けによって形成されていてよい支承部材が、少なくともこの相応の軸方向に、対応配置された伝動装置入力軸に軸方向で固く支持されているかもしくは対応配置された伝動装置入力軸に結合されている。転がり軸受けは、単列の玉軸受けによって形成されていてよい。この玉軸受けは、生ぜしめられる負荷に相応に設計されている。
【0015】
半径方向の変位可能性が、伝動装置入力軸の1つに取り付けられた支承部材と、中間プレッシャプレートとの間に設けられていると特に有利であり得る。しかし、半径方向の変位可能性は、支承部材と、この支承部材を取り付ける伝動装置入力軸との間に配置されてもよい。
【0016】
特に簡単な形式では、半径方向の変位可能性を、半径方向の遊びを設けることによって保証することができる。この場合、この遊びは、中間プレッシャプレートを少なくとも軸方向に支持する構成部材と、中間プレッシャプレートとの間に設けることができる。しかし、相応の遊びは別の箇所に設けられてもよい。
【0017】
さらに、中間プレッシャプレートが、この中間プレッシャプレートと支承部材との間にかつ/または支承部材と、この支承部材を取り付ける伝動装置入力軸との間に設けられた移動抵抗に抗して半径方向に変位可能であると有利であり得る。この場合、中間プレッシャプレートを、規定された位置に半径方向で保持するために、移動抵抗が、十分に大きく設定されていると有利であり得る。この移動抵抗は、たとえば摩擦接続によって形成されてよい。
【0018】
軸方向の支持のためには、中間プレッシャプレートが、半径方向内側の環状の領域を有していてよく、この領域が、軸方向に支持されており、かつ/または締め込まれている。
【0019】
支承部材が、伝動装置入力軸、有利には中空軸の1つに取り付けられた軸受けを有していてよく、この軸受けが、中間プレッシャプレートを取り付けているかもしくは少なくとも軸方向に支持している。この場合、支承部材が、転がり軸受けを有していてよく、この転がり軸受けが、伝動装置入力軸の1つに取り付けられたインナ軸受けレースと、アウタ軸受けレースとを備えており、このアウタ軸受けレースが、中間プレッシャプレートと少なくとも軸方向に作用協働する。有利には、支承部材を介して摩擦クラッチの操作力が支持されるかもしくは受け止められる。
【0020】
本発明の更なる利点、特徴および詳細は、以下の記載から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明によるトルク伝達装置の断面図である。
【図2】図1に示したトルク伝達装置の個々の構成部材の斜視図である。
【図3】図1に示したトルク伝達装置の構成部材の別の斜視図である。
【図4a】たとえば図1〜図3によるトルク伝達装置に使用することができる支承部材もしくはエレメントの実施変化形態を示す図である。
【図4b】たとえば図1〜図3によるトルク伝達装置に使用することができる支承部材もしくはエレメントの実施変化形態を示す図である。
【図4c】たとえば図1〜図3によるトルク伝達装置に使用することができる支承部材もしくはエレメントの実施変化形態を示す図である。
【図4d】たとえば図1〜図3によるトルク伝達装置に使用することができる支承部材もしくはエレメントの実施変化形態を示す図である。
【図5】たとえば図1〜図3によるトルク伝達装置に使用することができる支承部材もしくはエレメントの実施変化形態を示す図である。
【図6a】たとえば図1〜図3によるトルク伝達装置に使用することができる支承部材もしくはエレメントの実施変化形態を示す図である。
【図6b】たとえば図1〜図3によるトルク伝達装置に使用することができる支承部材もしくはエレメントの実施変化形態を示す図である。
【図7a】たとえば図1〜図3によるトルク伝達装置に使用することができる支承部材もしくはエレメントの実施変化形態を示す図である。
【図7b】たとえば図1〜図3によるトルク伝達装置に使用することができる支承部材もしくはエレメントの実施変化形態を示す図である。
【図7c】たとえば図1〜図3によるトルク伝達装置に使用することができる支承部材もしくはエレメントの実施変化形態を示す図である。
【図7d】たとえば図1〜図3によるトルク伝達装置に使用することができる支承部材もしくはエレメントの実施変化形態を示す図である。
【図7e】たとえば図1〜図3によるトルク伝達装置に使用することができる支承部材もしくはエレメントの実施変化形態を示す図である。
【図7f】たとえば図1〜図3によるトルク伝達装置に使用することができる支承部材もしくはエレメントの実施変化形態を示す図である。
【0022】
図1に示したトルク伝達装置1は2つの下位ユニット3,4を有している。下位ユニット3は少なくとも2つの摩擦クラッチ5,6を有していて、ドイツ連邦共和国特許出願公開第102005037514号明細書に記載された形式に類似の形式で伝動装置もしくは変速機(図示せず)に前組付け可能である。しかし、この公知先行技術に対して、図1によるクラッチユニットは、以下にさらに詳しく記載するように、伝動装置入力軸に対する、両摩擦クラッチ5,6に共通の中間プレッシャプレート7の半径方向に変位の可能性によって区別される。伝動装置入力軸には、中間プレッシャプレート7と協働する支承部材8が取り付けられているかもしくは取り付けられる。図1による支承部材8は、ドイツ連邦共和国特許出願公開第102005037514号明細書の図1による支承部材に類似して形成されている。しかし、この支承部材は、たとえばドイツ連邦共和国特許出願公開第102005037514号明細書のその他の図面に相俟って公知になっているように、別の構成を有していてもよい。図1に示した支承部材8は、中空軸として形成された外側の伝動装置入力軸に取り付けるために設けられている。この外側の伝動装置入力軸は第2の伝動装置入力軸を収容する。
【0023】
さらに、本発明によるクラッチユニット1の改良形態に関して、ドイツ連邦共和国特許出願公開第102006022054号明細書に記載された特徴を示唆する。この場合、特に当該刊行物に記載された、少なくとも機関側に設けられたクラッチディスクの可能な分割を示唆する。このような分割によって、相応の伝動装置入力軸への支承部材8の組付けと軸方向の位置固定とが簡単となる。
【0024】
トルク伝達装置1は2つのクラッチディスク9,10を有している。両クラッチディスク9,10は、それぞれ伝動装置入力軸に相対回動不能に連結可能である。このためには、クラッチディスク9,10が、内側歯列を備えたボス9a,10aを有している。このボス9a,10aは伝動装置入力軸の外側歯列と協働する。ボス9aは、いわゆる「中空の伝動装置入力軸」に取付け可能である。この中空の伝動装置入力軸は、ボス10aに結合可能である同軸的に配置された別の伝動装置入力軸を収容する。
【0025】
図示の実施例では、クラッチディスク9,10がねじり振動ダンパを装備している。しかし、少なくとも一方のクラッチディスク9,10が、前記刊行物によって公知であるように、少なくともほぼねじり剛性的に形成されていてもよい。
【0026】
クラッチディスク9,10は半径方向外向きに摩擦フェーシング11,12を支持している。軸方向でこの摩擦フェーシング11,12の間には、それぞれ有利には、いわゆる「フェーシングばね弾性部材」が設けられている。このフェーシングばね弾性部材によって、摩擦クラッチ5,6により伝達可能なトルクのプログレッシブな増加もしくは減少が可能となる。
【0027】
クラッチディスク9,10の、中間プレッシャプレート7と反対の側には、それぞれ1つのプレッシャプレート13,14が配置されている。このプレッシャプレート13,14は相応の摩擦クラッチ5,6に対応配置することができる。
【0028】
摩擦クラッチ5のプレッシャプレート13は間接的にまたは直接的に中間プレッシャプレートに相対回動不能に結合されているものの、制限されて軸方向に変位可能に結合されている。このためには、たとえば板ばねエレメントが使用することができる。この板ばねエレメントは、有利には全周にわたって均一に分配されている。
【0029】
同様にもしくは類似して、摩擦クラッチ6のプレッシャプレート14も中間プレッシャプレート7に連結されている。
【0030】
中間プレッシャプレート7には、ハウジング15が結合されている。このハウジング15のうち、半径方向に延びる領域16しか図1に認めることができない。ハウジング15は、軸方向に延びる領域を有している。この領域はプレッシャプレート13に半径方向外側で被さり、中間プレッシャプレート7の、摩擦フェーシング11の半径方向外側に延びる領域に固く結合されている。この結合によって、ハウジング15も支承部材8によって少なくとも軸方向に軸方向で支持されている。
【0031】
プレッシャプレート14は環状の引張りエレメント17を支持している。この引張りエレメント17は、半径方向の領域16の、プレッシャプレート13と反対の側に、梃子エレメント40に対する支持領域18を形成している。梃子エレメント40は皿ばね状の構成部材によって形成されていてよい。この構成部材は、環状の配置で設けられた複数の梃子を有している。しかし、梃子エレメント40は複数の個別梃子によって形成されていてもよい。この場合、これらの個別梃子は、有利には結合エレメントを介して互いに連結されている。
【0032】
このような形式の構成部材の構成に関して、同じく前述した公知先行技術、特にドイツ連邦共和国特許出願公開第102005037514号明細書を示唆する。
【0033】
摩擦クラッチ5を操作するためには、軸方向でプレッシャプレート13とクラッチハウジング15の半径方向の領域16との間に同じく梃子エレメント41が設けられている。この梃子エレメント41はダイヤフラム状にもしくは皿ばね状に形成されていてよい。この場合、相応の梃子エレメント41は半径方向外側の領域でハウジング15の転動支持部19に支持されていて、半径方向でさらに内側に位置する領域でプレッシャプレート13の軸方向の突起もしくは支持領域13aを負荷する。これに関して、同じく前述した公知先行技術を示唆する。
【0034】
中間プレッシャプレート7は、ここでは環状の結合構成部材20に結合されている。この結合構成部材20は、ここではポット状に形成されている。結合構成部材20は、機関側に配置された半径方向の領域21を有している。この領域21は、ここでは弾み質量体として形成された駆動プレート22に結合可能である。この駆動プレート22は半径方向内側でねじ23によって原動機、たとえば特に内燃機関の出力軸に結合可能となる。駆動プレート22の半径方向外側の領域には、ねじ締結部材24が設けられている。このねじ締結部材24によって、結合構成部材20が、トルクコンバータに類似して、駆動プレート22に取り付けられる。
【0035】
皿状のもしくはポット状の結合構成部材20は、別の形式で駆動プレート22に結合されてもよい。したがって、たとえば両構成部材20,22の間に軸方向の差込み結合部が設けられてもよい。この差込み結合部は駆動ユニットと伝動装置との組合せ時に有効になる。差込み結合部もしくは差込み結合部を形成する異形成形部、たとえば歯列は、騒音を回避するために、周方向に緊締されていてよい。また、軸方向に有効な自動的なロック装置が設けられてもよい。
【0036】
結合構成部材20と駆動プレート22との間に形成したい、ここではねじ締結部材24によって保証される固い結合部は、有利には、両構成部材20,22の間の正確なセンタリングが行われるように形成されており、これによって、両クラッチ5,6を有するクラッチユニットを少なくとも部分的に結合構成部材20によって半径方向にセンタリングすることができる。
【0037】
特に図2および図3から知ることができるように、結合構成部材20と、中間プレッシャプレート7を有するクラッチユニットとの間の結合は、板ばね結合部材25によって行われる。この板ばね結合部材25は全周にわたって分配されて配置されている。図示の実施例では、2つのグループの板ばね結合部材26,27が設けられてる。これらの板ばね結合部材26,27は周方向で逆向きに作用する。これは、たとえば板ばね26の引張り負荷時に板ばね27が屈曲負荷され、逆に板ばね27の引張り負荷時に板ばね26が屈曲負荷されることを意味している。図示の実施例では、板ばね結合部材25が、それぞれ複数の個別板ばねによって形成されている。これらの個別板ばねは軸方向に互いに積層されている。この場合、互いに積層された個別板ばねの個数は、2〜10の間、有利には4〜8の間のオーダ内に位置している。
【0038】
板ばね結合部材25を形成する板ばね26,27は、図示の実施例では、一方で結合構成部材20に固く結合されていて、他方で中間プレッシャプレート7に固く結合されている。有利には、この結合は、図示のように、リベット締め部材28,29;30,31によって行われる。板ばねグループ26,27によって、結合構成部材20への、摩擦クラッチ5,6を有するクラッチユニットのカルダン式の懸架が可能となる。これは、板ばねグループ26,27によって、中間プレッシャプレート7と結合構成部材20との間の相対回動不能な結合が可能となるものの、少なくともある程度角度に関する位置決めが可能となることを意味している。
【0039】
特に図1から知ることができるように、中間プレッシャプレート7は、車両に組み付けられたトルク伝達装置1において、この場合に伝動装置の、中空の軸として形成された伝動装置入力軸に軸方向で位置決めされた支承部材8によって少なくとも軸方向に支持されるかもしくは位置決めされる。この場合、この軸方向の位置決めは、有利には、支承部材8を介して、摩擦クラッチ5,6を操作するために必要となる、図示の実施例では、前述した梃子エレメントによってクラッチユニットに導入される力が軸方向に支持されるように選択されている。したがって、図1による図示の実施例では、中間プレッシャプレート7が少なくとも軸方向で駆動プレート22に支持されていなければならない。しかし、両軸方向への中間プレッシャプレート7の軸方向の位置決めが行われるように、支承部材8が形成されていても有利であり得る。これは、特に両摩擦クラッチ5,6が、軸方向で異なる操作装置を有している場合に特に有利である。
【0040】
中間プレッシャプレート7は、支承部材8を取り付ける伝動装置入力軸に対して半径方向に制限されて変位可能であり、これによって、少なくとも駆動プレート22を駆動する駆動ユニットの出力軸と、支承部材8もしくはボス9a、10aを取り付ける伝動装置入力軸との間の整合誤差が可能にされている。
【0041】
図示の実施例では、この制限された半径方向の変位可能性は、作用に関して、軸受け8を取り付ける動装置入力軸と、中間プレッシャプレート7との間に、有利には環状の遊び32が設けられることによって保証される。図示の実施例では、この遊び32が作用に関して支承部材8もしくは支承部材8によって支持される中間エレメント33と、中間プレッシャプレート7の半径方向内側の領域34との間に設けられている。中間エレメント33は、軸方向の領域35と、この軸方向の領域に35に続く半径方向の領域36とを有している。この半径方向の領域36には、中間プレッシャプレート7の半径方向内側の領域34が軸方向に支持されている。図示の実施例では、この軸方向の支持が、摩擦フェーシングもしくは滑りフェーシング37の介在下で行われる。軸方向の位置固定のためには、半径方向内側の領域34の、半径方向の領域36と反対の側に位置固定エレメント38が設けられている。
【0042】
中間プレッシャプレート7と、軸受け8を取り付ける伝動装置軸もしくは中間エレメント33との間の軸方向の位置固定は実際に摩擦なしに行うことができるにもかかわらず、多くの使用事例では、中間プレッシャプレート7の半径方向内側の領域34が少なくとも僅かに軸方向に緊締されると特に有利であり、これによって、中間プレッシャプレート7を伝動装置入力軸もしくは支承部材8に対する半径方向の移動抵抗に抗して移動させることができる。このような移動抵抗を形成するためには、位置固定エレメント38が、たとえば皿ばね状の構成部材によって形成されていてよい。この構成部材は半径方向内側の領域34を中間エレメント33の半径方向の領域36の方向に負荷する。図示の実施例では、位置固定エレメント38と領域34との間の直接的な支持が行われている。しかし、多くの使用目的に対して、場合により皿ばね状に形成された軸方向に有効な位置固定エレメント38と、半径方向の領域34との間に少なくとも1つの摩擦フェーシングもしくは滑りフェーシングが介在されていると有利である。さらに、必要な場合には、このような摩擦フェーシングもしくは滑りフェーシングと位置固定エレメント38との間に環状の支持ディスクもしくは圧着ディスクが設けられてよい。このディスクは、有利には鋼から成っている。
【0043】
図1に示した実施例の変化形態では、相応の半径方向の遊び32が、支承部材8と、この支承部材8を取り付ける伝動装置入力軸との間に設けられてもよい。この場合、転がり軸受けの使用時には、伝動装置入力軸と支承部材のインナレースとの間で、場合により抵抗に抗する相応の軸方向の支持もしくは半径方向の移動可能性が可能にされなければならず、しかも、中間プレッシャプレート7の半径方向内側の領域34と、中間エレメント33との間で可能にされている形式に類似の形式で可能にされなければならない。
【0044】
数多くの使用事例では、支承部材8と中間プレッシャプレート7との間もしくは支承部材8と、この支承部材8を取り付けるかもしくは軸方向に支持する伝動装置入力軸との間に少なくとも僅かな揺動可能性が存在していても有利であり得る。この揺動可能性は、たとえば球台に類似に形成された支承部材もしくは支持部材によって保証される。この支承部材もしくは支持部材の中心点もしくは回動点は、有利には少なくともほぼトルク伝達装置1の回転軸線39もしくは駆動プレート22を駆動する駆動ユニットの出力軸に位置している。これによって、出力軸の回転軸線と伝動装置入力軸の回転軸線との間の、場合により存在する整合誤差を補償することができ、これによって、システム全体の内部の望ましくない負荷を回避することもできる。
【0045】
すなわち、機関と伝動装置との間のトルク伝達は、駆動プレート22と、環状の結合構成部材20と、板ばねアッセンブリ25とから成るほぼねじり剛性的な結合部を介して保証される。この場合、板ばねアッセンブリ25を介して、トルク伝達がクランクシャフトから、まず、中間プレッシャプレート7に伝達され、この中間プレッシャプレート7によってクラッチに伝達される。このアッセンブリは、下位ユニット3によって形成されたツインクラッチ2を内燃機関もしくはエンジンのクランクシャフトの回転軸線に対してセンタリングする。場合により存在する、クランクシャフトの回転軸線と伝動装置入力軸の回転軸線との間の角度ずれは、特に板ばねアッセンブリ25によって補償することができる。
【0046】
中間プレッシャプレート7と相応の伝動装置入力軸との間の軸方向の支承部材は、摩擦クラッチ5,6の操作力と、軸方向に作用する別の力とを吸収し、この力を相応の伝動装置入力軸で支持する。同時にこの軸方向の支承部材は、相応の伝動装置入力軸に対する少なくとも僅かな半径方向の変位可能性を有しているかもしくは僅かな半径方向の剛性を有していて、したがって、クランクシャフトの回転軸線と相応の伝動装置入力軸の回転軸線との間の半径方向ずれの補償を可能にする。
【0047】
軸方向の支承部材は種々異なる形式で形成されていてよく、たとえば軸方向の転がり軸受け、軸方向の滑り軸受けまたは、たとえば半径方向の転がり軸受けと軸方向の滑り軸受けとの組合せまたは逆に半径方向の滑り軸受けと軸方向の転がり軸受けとの組合せとして形成されていてよい。中間プレッシャプレート7もしくは下位ユニット3の伝動装置側の軸方向の支承部材は、軸受けの軸方向の離反に対する位置固定を伴って形成されていてよい。しかし、このような軸方向の位置固定が不要となる構成も可能である。後者の事例は、たとえばレリーズシステムを介して軸方向にプリロードがかけられた梃子エレメント40;41を備えたツインクラッチ2の事例であってよい。なぜならば、これによって、たとえば中間プレッシャプレート7の半径方向内側の領域34が、半径方向に延びる支持領域36の方向に常に軸方向で押圧されることが保証されるからである。
【0048】
種々異なる実施変化形態a)〜d)を示す図4から明らかであるように、半径方向の軸受けと軸方向の軸受けとの組合せは種々異なる形式で実現することができる。図4a)では、半径方向の支承が、簡単に図示した転がり軸受け、たとえば玉軸受け108によって行われる。この軸受け108には、軸方向の滑り支承部材137を形成するために、軸受けブシュとして形成された中間エレメント133が収縮嵌めされている。しかし、この中間エレメント133の、軸方向の支持のために働く半径方向の領域は、転がり軸受け108の外側の軸受けレースと一体に形成されていてもよい。半径方向の遊び132は、転がり軸受け108の外側の軸受けレースもしくは中間エレメント133と、中間プレッシャプレート7の半径方向内側の領域34との間に設けられている。
【0049】
図4には、軸方向の2つの支持リングもしくは位置決めリング138,142と、ここでは中空軸によって形成された伝動装置入力軸の端領域143とが示してある。中空軸の内部には、別の伝動装置入力軸が設けられていてよい。
【0050】
図4b)による構成では、半径方向の遊び132が、伝動装置入力軸143と、ここでは転がり軸受けとして形成された軸受け108との間に設けられている。この軸受け108の外側の軸受けレースには、中間プレッシャプレート7が取り付けられていて、軸方向に位置固定されている。軸受け108の内側の軸受けレースは、伝動装置入力軸143に取り付けられた支持プレート144を介して軸方向に支持される。軸受け108もしくは軸受け108の、ここでは半径方向内側の軸受けレースと、支持プレート144によって形成された軸方向の支持部材との間には、ここでは軸方向にばね弾性的に形成された支持ディスク145が設けられている。この支持ディスク145によって、軸受け108もしくは中間プレッシャプレート7の0.1〜0.5mmのオーダ内の軸方向のばね弾性もしくは変位を可能にすることができる。必要な場合には、軸受け108の、支持ディスク144と軸方向で反対の側に、同じく軸方向の位置固定リングが設けられてもよい。これによって、内側の軸受けレースの軸方向の締込みを保証することもできる。
【0051】
図4c)から知ることができるように、支承部材108は特殊軸受け、たとえば特に自動調心軸受け147を有していてもよい。この自動調心軸受け147は、図示のように、自動調心玉軸受けまたは自動調心ころ軸受けとして形成されていてよい。
【0052】
図4d)には、別の軸受け構成が示してある。
【0053】
図4a)による構成では、直径Da,Diの間の有効な滑り面が、図4b)〜図4d)による実施形態よりも大きく寸法設定されている。
【0054】
図5には、支承部材108の別の実施変化形態が示してある。この場合、作用に関して、伝動装置入力軸143と中間プレッシャプレート7の半径方向内側の領域34との間に半径方向に弾性的なエレメントもしくはばね弾性部材146が配置されている。このばね弾性部材146は、使用事例に応じて、それぞれ異なる程度に剛性的に形成されてよい。半径方向のばね弾性は種々異なるばねエレメントによって発生させることができる。これらのばねエレメントは、少なくとも図4a)〜図4d)および図5に概略的に示したギャップ132内に収容されている。図6には、このような形式のばねエレメント146の種々異なる実施形態が示してある。中間プレッシャプレート7の内側の領域34の半径方向の摩擦締込みと、半径方向に可撓性のばねエレメントとの組合せによって、ツイン摩擦クラッチのクラッチユニットの、自動車もしくは内燃機関の少なくとも特定の運転状態で場合により生ぜしめられる半径方向振動の減衰が生ぜしめられる。
【0055】
図7には、再度、前記図面に相俟って記載した支承部材がより詳細にかつ斜視的に示してある。
【0056】
実施例は、本発明の限定と解すべきものではない。むしろ、本開示の枠内で数多くの改良および変更、特に一般的な明細書および図面説明ならびに特許請求の範囲に記載されていて、図面に含まれた個々の特徴もしくはエレメントまたは方法ステップの組合せまたは変形によって形成することができるような改良および変更が可能となる。
【符号の説明】
【0057】
1 トルク伝達装置
2 ツインクラッチ
3 下位ユニット
4 下位ユニット
5 摩擦クラッチ
6 摩擦クラッチ
7 中間プレッシャプレート
8 支承部材
9 クラッチディスク
9a ボス
10 クラッチディスク
10a ボス
11 摩擦フェーシング
12 摩擦フェーシング
13 プレッシャプレート
13a 支持領域
14 プレッシャプレート
15 ハウジング
16 半径方向に延びる領域
17 引張りエレメント
18 支持領域
19 転動支持部
20 結合構成部材
21 半径方向の領域
22 駆動プレート
23 ねじ
24 ねじ締結部材
25 板ばね結合部材
26 板ばね
27 板ばね
28 リベット締め部材
29 リベット締め部材
30 リベット締め部材
31 リベット締め部材
32 環状の遊び
33 中間エレメント
34 半径方向内側の領域
35 軸方向の領域
36 半径方向の領域
37 摩擦フェーシングもしくは滑りフェーシング
38 位置固定エレメント
39 回転軸線
40 梃子エレメント
41 梃子エレメント
108 玉軸受け
132 半径方向の遊び
133 中間エレメント
137 軸方向の滑り支承部材
138 支持リングもしくは位置決めリング
142 支持リングもしくは位置決めリング
143 伝動装置入力軸
144 支持プレート
145 支持プレート
146 ばねエレメント
147 自動調心軸受け
Da 直径
Di 直径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のパワートレーンで駆動ユニットの出力軸と、少なくとも2つの伝動装置入力軸を備えた伝動装置との間に使用するためのトルク伝達装置であって、当該トルク伝達装置が、少なくとも2つの摩擦クラッチを有しており、該摩擦クラッチが、それぞれ1つのクラッチディスクを有しており、該クラッチディスクが、それぞれ伝動装置入力軸の1つに連結可能であり、両クラッチディスクの摩擦フェーシングの間に中間プレッシャプレートが配置されており、両クラッチディスクの摩擦フェーシングが、それぞれ中間プレッシャプレートとプレッシャプレートとの間に締込み可能であり、各プレッシャプレートが、摩擦フェーシングの、中間プレッシャプレートと反対の側に配置されており、さらに、両プレッシャプレートが、中間プレッシャプレートに少なくともねじり連結されていて、操作エレメントによって中間プレッシャプレートに対して軸方向に変位可能であり、少なくとも両摩擦クラッチが、前組付けされたクラッチユニットを形成しており、該クラッチユニットが、伝動装置側に前組付け可能であり、駆動ユニットの出力軸によって支持された駆動エレメントに、駆動ユニットと伝動装置との組立て時に少なくとも相対回動不能に結合可能である形式のものにおいて、中間プレッシャプレートが、少なくとも伝動装置入力軸の1つに少なくとも一方の軸方向に支承部材を介して支持されており、中間プレッシャプレートが、伝動装置入力軸の回転軸線に対して半径方向の変位可能性を有していることを特徴とする、トルク伝達装置。
【請求項2】
半径方向の変位可能性が、伝動装置入力軸の1つに取り付けられた支承部材と、中間プレッシャプレートとの間に設けられている、請求項1記載のトルク伝達装置。
【請求項3】
半径方向の変位可能性が、中間プレッシャプレートを少なくとも軸方向に支持する構成部材と、中間プレッシャプレートとの間に半径方向の遊びを設けることによって保証されている、請求項1または2記載のトルク伝達装置。
【請求項4】
中間プレッシャプレートが、該中間プレッシャプレートと支承部材との間にかつ/または支承部材と、該支承部材を取り付ける伝動装置入力軸との間に設けられた移動抵抗に抗して半径方向に変位可能である、請求項1から3までのいずれか1項記載のトルク伝達装置。
【請求項5】
中間プレッシャプレートを、規定された位置に半径方向で位置決めするために、移動抵抗が、十分に大きく設定されている、請求項4記載のトルク伝達装置。
【請求項6】
移動抵抗が、少なくとも摩擦接続によって形成されるようになっている、請求項4または5記載のトルク伝達装置。
【請求項7】
中間プレッシャプレートが、半径方向内側の周方向の領域を有しており、該領域が、軸方向に支持されており、かつ/または締め込まれている、請求項1から6までのいずれか1項記載のトルク伝達装置。
【請求項8】
支承部材が、伝動装置入力軸の1つに取り付けられた軸受けを有しており、該軸受けが、中間プレッシャプレートを取り付けている、請求項1から7までのいずれか1項記載のトルク伝達装置。
【請求項9】
支承部材が、転がり軸受けを有しており、該転がり軸受けが、伝動装置入力軸の1つに取り付けられたインナ軸受けレースと、アウタ軸受けレースとを備えており、該アウタ軸受けレースが、中間プレッシャプレートに少なくとも軸方向で作用結合されている、請求項1から8までのいずれか1項記載のトルク伝達装置。
【請求項10】
支承部材を介して摩擦クラッチの操作力が支持されるようになっている、請求項1から9までのいずれか1項記載のトルク伝達装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図4d】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7a】
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【図7b】
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【図7c】
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【図7d】
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【図7e】
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【図7f】
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【公表番号】特表2010−511130(P2010−511130A)
【公表日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−538584(P2009−538584)
【出願日】平成19年11月19日(2007.11.19)
【国際出願番号】PCT/DE2007/002100
【国際公開番号】WO2008/064648
【国際公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(390009070)ルーク ラメレン ウント クツプルングスバウ ベタイリグングス コマンディートゲゼルシャフト (236)
【氏名又は名称原語表記】LuK Lamellen und Kupplungsbau  Beteiligungs KG
【住所又は居所原語表記】Industriestrasse 3, D−77815 Buehl, Germany
【Fターム(参考)】