説明

トルク断続クラッチ

【課題】寸法精度を出し易く、潤滑オイルによる抵抗を減少させて応答性向上を可能とする。
【解決手段】相対回転可能なクラッチ筒体83及びクラッチ・リング85の対向面相互に周方向に所定間隔で形成された突歯87,89を備え、クラッチ・リング85のクラッチ筒体83に対する回転軸芯方向への相対移動により突歯87,89を係脱させてクラッチ筒体83及びクラッチ・リング85間の回転連動遮断を行うトルク断続クラッチ81であって、クラッチ筒体83に、突歯87よりも回転軸芯方向の突出高さが低い突当て部137を突歯87に対し回転方向の位相をずらして設け、クラッチ筒体83及びクラッチ・リング85相互の突歯87,89の噛合い係合位置で、突当て部137を他方の突歯89に突き当ててクラッチ筒体83及びクラッチ・リング85相互の回転軸芯方向での突き当てを行わせることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の動力伝達装置などに供されるトルク断続クラッチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のトルク断続クラッチとして、特許文献1に記載されたものがある。このトルク断続クラッチは、回転軸に固定された筒体と回転軸上を摺動可能なスリーブとを備え、筒体には,低い歯たけのドグ歯と高い歯たけのドグ歯とが交互に形成されている。スリーブには、ドグ歯が形成されている。スリーブのドグ歯は,筒体のドグ歯とドグ歯との間の歯溝に噛み合って一方から他方へ動力を伝達することができる。
【0003】
かかる構造では、スリーブのドグ歯の歯先面が筒体の低い歯たけのドグ歯と高い歯たけのドグ歯との間の歯溝に噛み合うものである。
【0004】
したがって、スリーブの全てのドグ歯の歯先面が筒体の歯溝底に突き当たることになる。
【0005】
このため、スリーブの全てのドグ歯の歯先面と筒体の歯溝底との寸法精度を出す必要があり、コスト高になるという問題があった。
【0006】
また、全ての歯溝に潤滑オイルが入り込むから、スリーブの全てのドグ歯が筒体の歯溝に噛合い移動するとき、オイルの排除抵抗が大きくなり、スリーブの噛合い移動の妨げとなり、噛合い方向の入り性(応答性)向上の障害となっていた。
【0007】
さらに、全ての歯先面と歯溝底との間に潤滑オイルが介在することになり、オイルの粘性抵抗が全ての歯先面と歯溝底との間で加算されて大きくなり、スリーブの噛合い離脱移動の妨げとなり、噛合い離脱方向の抜け性(応答性)向上の障害となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−108239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
解決しようとする問題点は、全てのドグ歯の歯先面と歯溝底との寸法精度を出す必要があってコスト高となり、また、潤滑オイルによる抵抗により応答性向上の障害となっていた点である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、寸法精度を出し易く、潤滑オイルによる抵抗を減少させて応答性向上を可能とするため、相対回転可能な一対の回転体の対向面相互に周方向に所定間隔で形成された突歯を備え、前記回転体の回転軸芯方向への相対移動により前記突歯を係脱させて前記回転体間の回転連動遮断を行うトルク断続クラッチであって、前記回転体の一方に、同じ回転体の突歯よりも回転軸芯方向の高さが低く歯溝の底よりも高い突当て部を設け、前記回転体相互の突歯の噛合い係合位置で、前記突当て部を他方の回転体の突歯に突き当てて前記回転体相互の回転軸芯方向での突き当てを行わせることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、上記構成であるから、突歯の係脱と、突当て部を突歯に突き当てて回転体相互の回転軸芯方向での突き当てとを分けて行わせることができる。
【0012】
このため、突き当て箇所を減少させて寸法精度が出し易くなり、コストダウンを可能とする。
【0013】
突き当て箇所の減少と歯先の隙間形成とにより、潤滑オイルの排除抵抗、粘性抵抗を減少させることができ、噛合い方向、噛合い離脱方向の応答性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】車両のスケルトン平面図である。(実施例1)
【図2】フロント・デファレンシャル装置周辺を示す拡大断面図である。(実施例1)
【図3】クラッチ筒体の断面図である。(実施例1)
【図4】クラッチ・リングの断面図である。(実施例1)
【図5】クラッチ筒体の突歯を歯溝と共に示す正面図である。(実施例1)
【図6】クラッチ・リングの突歯を歯溝と共に示す正面図である。(実施例1)
【図7】クラッチ筒体及びクラッチ・リングの離脱及び噛合いを示す側面図である。(実施例1)
【図8】クラッチ筒体及びクラッチ・リングの離脱及び噛合いを示す要部側面図である。(実施例1)
【図9】クラッチ筒体及びクラッチ・リングの離脱及び噛合いを示す要部側面図である。(比較例)
【発明を実施するための形態】
【0015】
寸法精度を出し易く、潤滑オイルによる抵抗を減少させて応答性向上を可能にするという目的を、突歯の噛合いとは別個の突当て部により実現した。
【実施例1】
【0016】
図1は、本発明の実施例1に係り、トルク伝達装置の配置を示し、縦置きフロントエンジン・リヤ・ドライブベース(FRベース)の四輪駆動車のスケルトン平面図である。
【0017】
図1のように、四輪駆動車1は、エンジン3、モーター・ジェネレーター4、トランスミッション5、トランスファ7、リヤ・デファレンシャル装置9、フロント・デファレンシャル装置11、アクスル・ディス・コネクト機構13を備えている。
【0018】
トランスファ7は、出力駆動軸15がトランスミッション5の出力側部に結合され、この出力駆動軸15にスプロケット17が回転自在に支持されている。このスプロケット17及び出力駆動軸15間にフロント側断続機構18が設けられている。
【0019】
すなわち、スプロケット17には、クラッチ・ギヤ19が一体に設けられている。出力駆動軸15には、クラッチ・ギヤ21が固定され、カップリング・スリーブ23の移動によってクラッチ・ギヤ19,21間の結合の断続が行われる。カップリング・スリーブ23は、ソレノイドなどの電磁アクチュエータ25により駆動されるようになっている。
【0020】
トランスファ7には、出力駆動軸15と平行に伝動軸27が支持され、この伝動軸27にスプロケット29が固定されている。スプロケット29には、スプロケット17との間にチェーン31が掛け回されている。
【0021】
トランスファ7の出力駆動軸15は、プロペラ・シャフト33を介してドライブ・ピニオン・シャフト35に結合され、ドライブ・ピニオン・シャフト35のドライブ・ピニオン・ギヤ37がリヤ・デファレンシャル装置9のリング・ギヤ39に噛み合っている。
【0022】
リヤ・デファレンシャル装置9には、左右の車軸41,43を介して後輪45,47が連動連結されている。
【0023】
トランスファ7の伝動軸27は、プロペラ・シャフト49を介してドライブ・ピニオン・シャフト51側に結合されている。ドライブ・ピニオン・シャフト51のピニオン・ギヤ53は、フロント・デファレンシャル装置11のリング・ギヤ55に噛み合っている。
【0024】
フロント・デファレンシャル装置11には、一方において車軸57を介し前輪59が連動連結され、他方においてアクスル・ディス・コネクト機構13を介設した車軸61を介し前輪63が連動連結されている。このアクスル・ディス・コネクト機構13により、車軸61を分断・接続することができる。
【0025】
したがって、エンジン3又はエンジン3及びモーター・ジェネレーター4の出力が、トランスミッション5から、一方では、出力駆動軸15を介し直結状態でトルクが伝達される。すなわち、出力駆動軸15、プロペラ・シャフト33、ドライブ・ピニオン・シャフト35、ドライブ・ピニオン・ギヤ37、リング・ギヤ39を介してリヤ・デファレンシャル装置9へトルク伝達を行うことができる。
【0026】
リヤ・デファレンシャル装置9からは、左右の車軸41,43を介して左右の後輪45,47へ出力することができる。
【0027】
また、他方では、クラッチ・ギヤ19,21がカップリング・スリーブ23により結合され、アクスル・ディス・コネクト機構13が車軸57接続状態であると、出力駆動軸15からスプロケット17、チェーン31、スプロケット29、伝動軸27、プロペラ・シャフト49、ドライブ・ピニオン・シャフト51、ドライブ・ピニオン・ギヤ53、リング・ギヤ55を介してフロント・デファレンシャル装置11へトルクが伝達される。
【0028】
フロント・デファレンシャル装置11からは、左右の車軸57,61を介して左右の前輪59,63へ出力することができる。
【0029】
アクスル・ディス・コネクト機構13により車軸57が分断されると、フロント・デファレンシャル装置11から左右の前輪59,63へのトルク伝達はなされない。
このとき、電磁アクチュエータ25の駆動によりにカップリング・スリーブ23を移動させ、クラッチ・ギヤ19,21間の結合を遮断すると、トランスファ7及びフロント・デファレンシャル装置11間のスプロケット17、チェーン31、スプロケット29、伝動軸27、プロペラ・シャフト49、ドライブ・ピニオン・シャフト51、ドライブ・ピニオン・ギヤ53、リング・ギヤ55等の回転停止を行わせ、無駄な駆動を避けることができる。
【0030】
したがって、フロント側断続機構14及びアクスル・ディス・コネクト機構13の断続制御により、二輪駆動及び四輪駆動を選択的に行うことができる。
【0031】
図2は、フロント・デファレンシャル装置周辺を示す拡大断面図である。
【0032】
図2のように、フロント・デファレンシャル装置11は、デフ・ケース65外にリング・ギヤ55がボルト57により固定され、デフ・ケース65内にピニオン・シャフト67を介してピニオン・ギヤ69,71が回転自在に支持されている。ピニオン・ギヤ69,71には、左右のサイド・ギヤ73,75が噛合い、両サイド・ギヤ73,75に車軸57,61側の中間軸77,79がスプライン嵌合している。
【0033】
一方の中間軸79には、アクスル・ディス・コネクト機構13が介設され、このアクスル・ディス・コネクト機構13は、本発明実施例のトルク断続クラッチ81の相対回転可能な一対の回転体としてクラッチ筒体83及びクラッチ・リング85を備えている。
【0034】
クラッチ筒体83及びクラッチ・リング85の対向面相互には、周方向に所定間隔で突歯87,89を備えている。クラッチ筒体83及びクラッチ・リング85の回転軸芯方向への相対移動により突歯87,89を係脱させ、クラッチ筒体83及びクラッチ・リング85間の回転連動遮断を行う。
【0035】
さらに説明すると、中間軸79は、第1,第2の軸91,93とに分断され、第1の軸91にクラッチ・リング85が結合され、第2の軸93にクラッチ筒体83が結合されている。
【0036】
図3は、クラッチ筒体の断面図である。
【0037】
図2、図3のように、クラッチ筒体83は、中間壁95を挟んで一側にフランジ部97が設けられ、他側に筒部99が設けられている。フランジ部97の相手側対向面に前記突歯87が形成されている。フランジ部97内周側及びフランジ部97隣接外周部には、軸受嵌合部101,103が形成され、軸受嵌合部103に隣接する外周部には、シール受け部105が形成されている。筒部99の内周には、インナー・スプライン107が形成されている。
【0038】
このクラッチ筒体83は、軸受嵌合部101に嵌合する軸受109により第1の軸91に連れ持ち支持され、軸受嵌合部103に嵌合する軸受111によりハウジング113に回転自在に支持されている。
【0039】
なお、ハウジング113は、デフ・キャリヤ115に取り付けられている。
【0040】
クラッチ筒体83の筒部99では、第2の軸93のスプライン117がインナー・スプライン107にスプライン係合し、止め輪119で抜け止めが行われている。
【0041】
図4は、クラッチ・リングの断面図である。
【0042】
図2、図4のように、クラッチ・リング85は、相手側対向面に前記突歯89が形成され、内周にスライド噛合い部121が突設されている。
【0043】
スライド噛合い部121は、第1の軸91のスライド噛合い受け部123に噛合い、軸方向スライド可能で周方向に係合している。
【0044】
クラッチ筒体83及びクラッチ・リング85間には、ウェーブ・スプリング125が介設され、クラッチ・リング85が噛合い離脱方向へ付勢されている。
【0045】
このクラッチ・リング85は、電磁アクチュエータ127の駆動により回転軸芯方向へ移動可能に支持されて前記相対移動を行わせる。
【0046】
電磁アクチュエータ127は、デフ・キャリヤ115側に支持された電磁石129と、第1の軸91側にステンレス・リング131を介して支持されたスチール製等の磁性体リング133とからなっている。
【0047】
電磁石129に通電すると電磁石129の回りでデフ・キャリヤ115側に形成される磁束ループにより磁性体リング133がクラッチ・リング85側へ移動し、ステンレス・リング131の突部131aによりクラッチ・リング85をウェーブ・スプリング125の付勢力に抗してクラッチ筒体83方向へ移動させる。
【0048】
このような動作によるクラッチ筒体83及びクラッチ・リング85の噛合い断続で前記二輪駆動、四輪駆動を行わせることができる。
[突当て部]
図5は、クラッチ筒体の突歯を歯溝と共に示す正面図、図6は、クラッチ・リングの突歯を歯溝と共に示す正面図、図7は、クラッチ筒体及びクラッチ・リングの離脱及び噛合いを示す側面図である。
【0049】
図5、図7のように、回転体の一方であるクラッチ筒体83に、回転軸芯方向の突出高さが他の突歯87よりも低く突出する突状の突当て部137を突歯87に対し回転方向の位相をずらして設けている。
【0050】
すなわち、2枚分の隣接する突歯を切除し、その中央である元の歯溝の部分に突当て部137を形成する。切除する突歯は、少なくとも2枚であり、切除する突歯を増やして突当て部137を形成することもできる。
【0051】
このため、突当て部137と両側の突歯87との間隔139は、歯溝141よりも広くなっている。間隔139の底部側には、自然R143が形成され、歯溝141には、自然R145が形成されている。
【0052】
この突当て部137は、周方向3箇所に等間隔で設定されている。この突当て部137は、少なくとも3箇所に設定されれば良く、伝達トルクに応じて設定箇所を増やすこともできる。また、突き当て部137は、クラッチ・リング85側に形成することもできる。
【0053】
突歯87及び突当て部137の先端は、平坦に形成されている。
【0054】
図6、図7のように、クラッチ・リング85の突歯89は、相手側の突歯87に噛合うように一定間隔で形成されている。歯溝147には、自然R149が形成されている。
【0055】
突歯89の先端も、平坦に形成されている
なお、突当て部137は、突歯87に対し、回転方向の位相をずらした位置に設ければよいので、突状に形成することなく、突歯87間全体の面として形成することもできる。
【0056】
また、突当て部137は、位相をずらさずに、従来のドグ・クラッチにおいて、同じ回転体の一部の歯溝を除き、他の歯溝の歯底を深く形成することで、相対的に浅くなった歯底を突当て部とすることも可能である。
【0057】
そして、図7の下段図(4WD)のように、クラッチ筒体83及びクラッチ・リング85相互の突歯87,89の噛合い係合位置で、突当て部137を他方の突歯89先端の何れかに突き当ててクラッチ筒体83及びクラッチ・リング85相互の回転軸芯方向での突き当てを行わせる。
【0058】
このとき、突歯87,89相互は、歯側面で回転方向に係合する。
【0059】
したがって、電磁石129に通電すると前記のようにクラッチ・リング85が移動してクラッチ筒体83に図7下段のように噛合い、通電が解除されるとウェーブ・スプリング125の付勢力でクラッチ・リング85の移動が戻され、図7上段(2WD)のように離脱する。
【0060】
クラッチ・リング85がクラッチ筒体83に対して相対回転しながら噛合い移動するときでも、クラッチ筒体83及びクラッチ・リング85の突歯87,89の歯丈は、均一であり、突当て部137の丈は、突歯87の歯丈よりも低いため、突当て部137等が欠けるようなこともない。
【0061】
また、クラッチ・リング85は、歯丈均一の突歯89が等間隔で形成されているため、クラッチ筒体83に対する任意の噛合い位置でと突当て部137に何れかの突歯89を突き当てることができる。
【0062】
図8は、実施例に係るクラッチ筒体及びクラッチ・リングの離脱及び噛合いを示す要部側面図、図9は、比較例に係るクラッチ筒体及びクラッチ・リングの離脱及び噛合いを示す要部側面図である。図9の比較例は、突当て部137のない、従来のドグ・クラッチである。
【0063】
本発明実施例の図8では、2WDから4WDヘ移行すると、突当て部137が突歯89の何れかに突き当りながら両突歯87,89の噛合いが行われる。
【0064】
このため、クラッチ筒体83及びクラッチ・リング85相互間の突き当て箇所を減少させることができ、寸法精度を確保する箇所を減少させることができる。
【0065】
また、突歯87,89相互の歯丈方向の噛合い高さが調整され、突歯87,89と歯溝149,141との間に自然R149,143による隙間が形成される。このため、歯溝149,141から潤滑オイルが排除され易く、且つ結合離脱の際に歯先と歯溝の底との間で潤滑オイルによる粘性抵抗を受け難くすることができる。
【0066】
これに対し、図9の従来のドグ・クラッチでは、突歯87A,89Aが全て噛合い、突歯87Aの平坦な歯先が突歯89A間の歯溝147Aの平坦な底に全て突き当る。
【0067】
このため、突歯87A,89Aの噛合い時に、歯溝141A、147A内の潤滑オイルが排除され難く、且つ結合離脱の際に突歯87Aの歯先及び歯溝147Aの底間で潤滑オイルによる粘性抵抗を受け易くなる。
[実施例の効果]
本発明の実施例では、相対回転可能なクラッチ筒体83及びクラッチ・リング85の対向面相互に周方向に所定間隔で形成された突歯87,89を備え、クラッチ・リング85のクラッチ筒体83に対する回転軸芯方向への相対移動により突歯87,89を係脱させてクラッチ筒体83及びクラッチ・リング85間の回転連動遮断を行うトルク断続クラッチ81であって、クラッチ筒体83に、回転軸芯方向の突出高さが突歯87よりも低い突当て部137を突歯87に対し回転方向の位相をずらして設け、クラッチ筒体83及びクラッチ・リング85相互の突歯87,89の噛合い係合位置で、突当て部137を他方の突歯89に突き当ててクラッチ筒体83及びクラッチ・リング85相互の回転軸芯方向での突き当てを行わせる。
【0068】
このため、突当て部137と突歯89との突き当て箇所を減少させて寸法精度が出し易くなり、コストダウンを可能とする。
【0069】
突歯87,89相互の歯丈方向の噛合い高さが調整され、突歯87,89と歯溝149,141との間に自然R149,143による隙間が形成されるため、潤滑オイルの排除抵抗、粘性抵抗を減少させることができ、噛合い方向、噛合い離脱方向の応答性を向上させることができる。
【0070】
突当て部137は、少なくとも周方向3箇所に設定された。
【0071】
このため、 突当て部137の突き当てを安定させることができ、クラッチ筒体83及びクラッチ・リング85間でのがたつきを抑制することができる。
【0072】
突当て部137は、クラッチ筒体83の対向面で周方向に隣接する少なくとも2個の突歯を切除して形成した。
【0073】
このため、突歯87が不必要に減少することなく、噛合い強度を維持することができる。
【0074】
クラッチ筒体83及びクラッチ・リング85は、車軸61上でトルク分断・接続を行う
アクスル・ディス・コネクト機構13に備えられた。
【0075】
このため、アクスル・ディス・コネクト機構13のコストダウン及び噛合い方向、噛合い離脱方向の応答性向上を可能とする。
【0076】
アクスル・ディス・コネクト装置13は、車軸61側の第1,第2の軸91,93にクラッチ・リング85とクラッチ筒体83とがそれぞれ結合されると共にクラッチ・リング85が電磁アクチュエータ127の駆動により回転軸芯方向へ移動可能に支持されて相対移動を行わせる。
【0077】
このため、潤滑オイルの排除抵抗、粘性抵抗を減少による電磁アクチュエータ127での応答性向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0078】
13 アクスル・ディス・コネクト機構
81 トルク断続クラッチ
83 クラッチ筒体
85 クラッチ・リング
87,89 突歯
91 第1の軸
93 第2の軸
127 電磁アクチュエータ
137 突当て部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対回転可能な一対の回転体の対向面相互に周方向に所定間隔で形成された突歯を備え、
前記回転体の回転軸芯方向への相対移動により前記突歯を係脱させて前記回転体間の回転連動遮断を行うトルク断続クラッチであって、
前記回転体の一方に、同じ回転体の突歯よりも回転軸芯方向の高さが低く歯溝の底よりも高い突当て部を設け、
前記回転体相互の突歯の噛合い係合位置で、前記突当て部を他方の回転体の突歯に突き当てて前記回転体相互の回転軸芯方向での突き当てを行わせる、
ことを特徴とするトルク断続クラッチ。
【請求項2】
請求項1記載のトルク断続クラッチであって、
前記突当て部は、突状に形成されて同じ回転体の突歯に対し回転方向の位相をずらした位置に設けられた、
ことを特徴とするトルク断続クラッチ。
【請求項3】
請求項1又は2記載のトルク断続クラッチであって、
前記突当て部は、少なくとも周方向3箇所に設定された、
ことを特徴とするトルク断続クラッチ。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載のトルク断続クラッチであって、
前記突当て部は、前記回転体の一方の対向面で周方向に隣接する少なくとも2個の突歯を切除して形成した、
ことを特徴とするトルク断続クラッチ。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載のトルク断続クラッチであって、
前記一対の回転体は、車軸上でトルク分断・接続を行うアクスル・ディス・コネクト機構に備えられた、
ことを特徴とするトルク断続クラッチ。
【請求項6】
請求項5記載のトルク断続クラッチであって、
前記アクスル・ディス・コネクト装置は、前記車軸側の第1,第2の軸に前記回転体がそれぞれ結合されると共にこの回転体の一方が電磁アクチュエータの駆動により回転軸芯方向へ移動可能に支持されて前記相対移動を行わせる、
ことを特徴とするトルク断続クラッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−145148(P2012−145148A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−2735(P2011−2735)
【出願日】平成23年1月11日(2011.1.11)
【出願人】(000225050)GKNドライブラインジャパン株式会社 (409)
【Fターム(参考)】