説明

ドアトリムの取り付け構造

【課題】オーナメントを小型化でき、軽量化でき、材料コストを低廉化でき、オーナメントのデザインの自由度を上げることができるドアトリムの取り付け構造を提供する。
【解決手段】ドアトリム本体24と、ドアトリム本体24の意匠面24M側に重なるオーナメント40とを備えたドアトリム2がインナパネル4に固定されている車両用のドアトリムの取り付け構造であって、ドアトリム本体24がインナパネル4に固定され、オーナメント40がドアトリム本体24に固定され、オーナメント40の裏面に係合爪41,42が突設され、係合爪41,42は、ドアトリム本体24に形成された開口28K1,28K2に挿通されて、インナパネル4に取り付けられたインナウエザストリップ5に係合している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
ドアトリム本体と、前記ドアトリム本体の意匠面側に重なるオーナメントとを備えたドアトリムがインナパネルに固定されている車両用のドアトリムの取り付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
オーナメントが意匠面側に固定されるドアトリム本体は樹脂で成形されており強度が十分ではない。そのために、ドアトリム本体へのオーナメントの固定強度を向上させる工夫が必要になる。
そこで、従来、特許文献1に開示されているように(図2や段落番号(0013)等参照)、オーナメントの上端部をドアトリム本体の上端部側に延出してオーナメントの上端部でドアトリム本体の上端部を覆い、ドアトリム本体の上端部よりも車室内側に位置したオーナメントの上端部から係合爪を下方に延出し、この係合爪をインナパネルの上端部に外嵌させていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−25966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の構造によれば、オーナメントの上端部をドアトリム本体の上端部側に延出してオーナメントの上端部でドアトリム本体の上端部を覆い、ドアトリム本体の上端部よりも車室内側に位置したオーナメントの上端部から係合爪を下方に延出し、この係合爪をインナパネルの上端部に外嵌させていたために、オーナメントが大型化し、重量が重くなり、材料コストが高くなるとともに、オーナメントのデザインの自由度が低くなっていた。
本発明は上記実状に鑑みて成されたもので、その目的は、オーナメントを小型化でき、軽量化でき、材料コストを低廉化でき、オーナメントのデザインの自由度を上げることができる車両用のドアトリムの取り付け構造を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の特徴は、
ドアトリム本体と、前記ドアトリム本体の意匠面側に重なるオーナメントとを備えたドアトリムがインナパネルに固定されている車両用のドアトリムの取り付け構造であって、
前記ドアトリム本体が前記インナパネルに固定され、
前記オーナメントが前記ドアトリム本体に固定され、
前記オーナメントの裏面に係合爪が突設され、
前記係合爪は、前記ドアトリム本体に形成された開口に挿通されて、前記インナパネルに取り付けられたインナウエザストリップに係合している点にある。(請求項1)
【0006】
ドアトリム本体がインナパネルに固定され、オーナメントの裏面に突設された係合爪が、ドアトリム本体に形成された開口に挿通されて、インナパネルに取り付けられたインナウエザストリップに係合しているから、インナウエザストリップを介してオーナメントをインナパネルに固定することができ、ドアトリム本体へのオーナメントの固定強度を向上させることができる。
例えば、オーナメントの上端部をドアトリム本体の上端部側に延出してドアトリム本体の上端部をオーナメントの上端部で覆い、ドアトリム本体の上端部よりも車室内側に位置したオーナメントの上端部から係合爪を下方に延出し、この係合爪をインナパネルの上端部に外嵌させる手段に比べると、オーナメントを小型化でき、軽量化でき、材料コストを低廉化でき、オーナメントのデザインの自由度を上げることができる。
また、ドアトリム本体の開口の周縁部に係合爪を形成した構造よりも係合爪とその周りの部分の剛性を向上させることができる。
例えば、オーナメントに係合爪が設けられていない場合は、ドアトリム本体側でインナパネルへの固定を行わなければならず、インナパネルに係合させる爪形状をドアトリム本体に設けることになる。その為に、ドアトリム本体の穴を塞いで係合爪の座面を確保しなくてはならない。従って、その分重量が増加するが、本発明によれば、開口を塞ぐことがなくなるため軽量化に貢献できる。(請求項1)
【0007】
本発明において、
前記係合爪は前記オーナメントの裏面に複数突設されて、前記複数の係合爪が前記インナウエザストリップの被係合部を挟持していると、次の作用を奏することができる。(請求項2)
【0008】
複数の係合爪がインナウエザストリップの被係合部を挟持することで、オーナメントのがたつきを防止することができる。(請求項2)
【0009】
本発明において、
前記複数の係合爪はドア前後方向に千鳥状に配置され、
上側の1又は2以上の前記係合爪と下側の1又は2以上の係合爪とで前記インナウエザストリップの被係合部を挟持していると、次の作用を奏することができる。(請求項3)
【0010】
上下に互いに対向する上側の係合爪と下側の係合爪でインナウエザストリップの被係合部を挟持する場合よりも、ドア前後方向(インナウエザストリップの長手方向)でより長い範囲にわたってインナウエザストリップの被係合部を挟持することができる。
また、ドア前後方向で、ある長さのインナウエザストリップの被係合部を挟持するのに、その長さと同一長さの上側の係合爪と下側の係合爪で挟持する場合よりも、ドア前後方向における係合爪の長さを短くすることができる。これにより、係合爪に要する材料コストを低廉化でき、しかも、軽量化を図ることができる。(請求項3)
【0011】
本発明において、
前記上側の係合爪と前記下側の係合爪はドア前後方向で間隔を空けて位置していると、次の作用を奏することができる。(請求項4)
【0012】
同じ位置に上下を押さえる係合爪を配置すると、スライド型を用いなければならないなど、型構造が複雑になるが、本発明によれば、前記上側の係合爪と前記下側の係合爪が上下方向で重ならないから、成形型を同一方向に同時に型抜きすることができ、成形型の構造を簡素化することができる。(請求項4)
【0013】
本発明において、
前記開口は前記ドアトリム本体にドア前後方向に複数形成されて、前記複数の係合爪が前記複数の開口に各別に挿通され、
隣り合う前記開口の間のドアトリム本体部分に補強リブが形成されていると、次の作用を奏することができる。(請求項5)
【0014】
前記開口は前記ドアトリム本体にドア前後方向に複数形成されて、前記複数の係合爪が前記複数の開口に各別に挿通されているから、前記複数の係合爪が挿通される単一の開口がドアトリム本体に形成されている構造に比べると、ドアトリム本体の強度の低下を防ぐことができる。
しかも、前記補強リブで前記ドアトリム本体部分を補強することができてドアトリム本体の強度の低下をより確実に防ぐことができる。これにより、係合爪をドア前後方向に長い幅広の係合爪に形成するとともに、前記係合爪に対応させてドアトリム本体にドア前後方向に長い開口を形成することができる。その結果、インナウエザストリップの被係合部に係合爪を確実に係合させることができる。
また、複数の係合爪を複数の開口に各別に挿通させる時、それぞれの係合爪の左右方向の位置がほぼ決まる為、係合爪のインナウエザストリップに対する位置決め効果を得ることができる。(請求項5)
【0015】
本発明において、
前記オーナメントはドア前後方向で前記ドアトリム本体の前側の上部に設けられたオーナメント固定部に固定され、
前記係合爪は前記オーナメントの上端部の裏面に突設されていると、次の作用を奏することができる。(請求項6)
【0016】
前記オーナメントは前記ドアトリム本体の前側の上部に設けられたオーナメント固定部に固定され、前記係合爪は前記オーナメントの上端部の裏面に突設されており、乗員が手で掴みやすいドアトリムの前側上部の付近に前記係合爪が配置されているから、ドアトリムの外れ方向(乗員が掴んで引く方向)に対する固定力を向上させることができる。
【0017】
本発明において、
アウタパネルの上端部に取り付けられたアウタウエザストリップの上端よりも高所に位置する上壁が前記ドアトリム本体の前側の上端部から車室外側に張り出し、
前記上壁の車室外側の端部から下方にフランジが張り出していると、次の作用を奏することができる。(請求項7)
【0018】
アウタパネルの上端部に取り付けられたアウタウエザストリップの上端よりも車両上方側に位置する上壁が前記ドアトリム本体の前側の上端部から車室外側に張り出しているから、ドアの窓用開口(ウインドガラスが配置される開口)の下端ラインをインストルメントパネルから連続したラインとして表現することができて、デザイン性を向上させることができる。
また、前記上壁の車室外側の端部からフランジが下方に張り出しているから、ドアトリム本体の前側の上端部の裏側をフランジで覆い隠して、前記裏側がウインドガラスを通して車室外側から見えてしまうことを防止することができる。
このような構造において、ドアトリム本体の前側の上端部に係合爪を突設しようとすると、成形工程で型抜きする際に係合爪が邪魔になって型抜きすることができなくなる。
そのために、前記上壁とフランジを備えた上側部品をドアトリム本体とは別部品として製作しなければならず、この別部品同士を固定する構造が増えることにより、製作コストが高くなるとともに重量が増加する。
これに対して、本発明の上記構成によれば、係合爪をドアトリム本体とは別部品のオーナメントに設けてあるから、ドアトリム本体の成形工程で型抜きする際に係合爪が邪魔になることがなくて円滑に型抜きすることができる。従って、製作コスト・重量増加を抑えて意図した意匠形状を実現でき、デザイン性をより向上させることができる。(請求項7)
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、
オーナメントを小型化でき、軽量化でき、材料コストを低廉化でき、オーナメントのデザインの自由度を上げることができる車両用のドアトリムの取り付け構造を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】ドアを車室内側から見た斜視図
【図2】オーナメントとドアトリム本体との分解斜視図
【図3】オーナメントとドアトリム本体の固定構造を車室外側から見た斜視図
【図4】(a)は、ドアトリム本体の開口と、この開口から突出した係合爪との拡大斜視図、(b)は、図4(a)よりもドア前方側に位置するドアトリム本体の開口と、この開口から突出した係合爪との拡大斜視図
【図5】オーナメントとインナウエザストリップとの係合構造を示す断面図
【図6】(a)はオーナメントの上面図、(b)はオーナメントを車室外側から見た図
【図7】オーナメントをドア後方側から見た図
【図8】(a)はオーナメントの開口(第1爪挿通孔)を示す斜視図(b)はオーナメントの開口(第2爪挿通孔)を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
図1に、自動車の車体の側部に開閉自在に設けられるサイドドア50を示してある。このサイドドア50は窓用開口47が上部に形成されたドアパネル1と、窓用開口47の下方のドアパネル1を車室内側W1から覆う内装材としての樹脂製のドアトリム2とを備えている。ドアパネル1の窓用開口47にはウインドガラスGが昇降自在に設けられている。
【0022】
図5に示すように、ドアパネル1は車室外側W2のアウタパネル3と車室内側W1のインナパネル4とから成る。アウタパネル3とインナパネル4は周縁部同士が接合され、周縁部よりも内方側の内方部同士が互いに間隔を空けて対向している。
【0023】
インナパネル4の上端部4Jは、上下方向中央側のインナパネル部分4Hに対して車室外側W2に張り出すパネル上面部4J1と、パネル上面部4J1の張り出し端部から上方に立ち上がる取り付けフランジ4J2とから成り、この取り付けフランジ4J2に、ウインドガラスGとの間をシールするゴム状弾性体から成るインナウエザストリップ5が取り付けられている。
【0024】
また、アウタパネル3の上端部3Jに取り付けフランジ3J1が形成され、取り付けフランジ3J1に、ウインドガラスGとの間をシールするゴム状弾性体から成るアウタウエザストリップ6が取り付けられている。
【0025】
[インナウエザストリップ5の構造]
図5に示すように、インナウエザストリップ5は、下側が開放した断面U字状の取り付け基部11と、取り付け基部11の車室外側W2の側壁11S2の上端部から突出してウインドガラスGの車室内側W1の面に圧接する第1上側シールリップR1と、前記車室外側W2の側壁11S2の下端部から突出してウインドガラスGの車室内側W1の面に圧接する第1下側シールリップR2と、取り付け基部11の上壁11Jから上方に突出して後述のドアトリム本体24のフランジ24Fに車室外側W2から圧接する第2上側シールリップR3とを備えている。
【0026】
第1上側シールリップR1と第1下側シールリップR2は、車室外側W2になるにつれて上方に位置するように傾斜している。また、第2上側シールリップR3の上端部は、背面が車室外側W2を向く断面くの字状に形成されて前記フランジ24Fの下端部に圧接している。
【0027】
さらに、前記インナウエザストリップ5は、取り付け基部11の車室内側W1の側壁11S1の上端部から突出する係合リップR4(被係合部に相当)と、取り付け基部11の車室内側W1の側壁11S1の内面から突出してインナパネル4の上端部4Jの取り付けフランジ4J2に圧接する上下複数の内側リップR5と、取り付け基部11の車室内側W1の側壁11S1の下端部から下方に突出してインナパネル4の上端部4Jのパネル上面部4J1に上方から圧接する第2下側シールリップR6とを備え、前記取り付け基部11がインナパネル4の上端部4Jの取り付けフランジ4J2に外嵌している。前記係合リップR4は、背面が車室外側W2の斜め上方を向く断面くの字状に形成されている。
【0028】
[アウタウエザストリップ6の構造]
アウタウエザストリップ6は下側が開放した断面U字状の取り付け基部21と、取り付け基部21の車室内側W1の側壁21S1の上端部から突出してウインドガラスGの車室外側W2の面に圧接する上側シールリップR7と、取り付け基部21の車室外側W2の側壁21S2の内面から突出して、アウタパネル3の上端部3Jの取り付けフランジ3J1に圧接する内側リップR8とを備え、取り付け基部21がアウタパネル3の上端部3Jの取り付けフランジ3J1に外嵌している。アウタウエザストリップ6の上端6Jはベルトラインを形成している。
【0029】
[ドアトリム2の構造]
図1〜図3に示すように、ドアトリム2は、インナパネル4に対向するドアトリム本体24と、ドアトリム本体24の意匠面24M側に重なる加飾部品としてのオーナメント40と、乗員の腕を載せるアームレスト46とを備えている。
【0030】
[ドアトリム本体24の構造]
ドアトリム本体24の周部の裏側(意匠面24Mとは反対側)に複数のクリップ座30(図1,図3参照)が分散配設され、クリップ座30に保持されたクリップ29を介してドアトリム本体24がインナパネル4に取り付けられている。クリップ29はインナパネル4に形成されたクリップ孔に挿通係合される。
【0031】
図2〜図5に示すように、アウタパネル3の上端部3Jに取り付けられたアウタウエザストリップ6の上端6Jよりも高所に位置する上壁24Jがドアトリム本体24の上端部から車室外側W2に張り出し、上壁24Jの車室外側W2の端部からフランジ24Fが下方に張り出している。
【0032】
前記上壁24Jの上面(ドアトリム本体24の上端縁)はドア前方側Frほど上側に位置するように緩やかに傾斜し、前記フランジ24Fはドア前方側Frほど上下方向の長さ(フランジの張り出し長さ)が長く設定されている。そして、ドア前後方向でドアトリム本体24の前側の上部にオーナメント固定部28が設けられ、オーナメント固定部28に前後一対の開口28Hが形成されている。
【0033】
図3,図4(a),図8(a)に示すように、ドア前後方向でオーナメント固定部28の後半部側の上端部28Jに、後述の複数の係合爪41,42を各別に挿通させる複数の角孔状の第1爪挿通孔28K1(開口に相当)がドア前後方向に間隔を空けて形成されている。そして、隣り合う第1爪挿通孔28K1の間のドアトリム本体部分28Aに上下方向に延びる第1補強リブ16が形成されている。第1補強リブ16はクランク状に形成されて、上片の上端がドアトリム本体の24の上壁24Jの下面に連なっている。第1補強リブ16は、オーナメント固定部28のドア前後方向中間部にも形成されている。
【0034】
また、図3,図4(b),図8(b)に示すように、ドア前後方向でオーナメント固定部28の前半部側の上端部28Jに、後述の複数の係合爪41,42を纏めて挿通させる単一の角孔状の第2爪挿通孔28K2(開口に相当)がドア前後方向に長く形成されている。
【0035】
オーナメント固定部28の後半部側では複数の係合爪41,42を複数の第1爪挿通孔28K1に各別に挿通させ、オーナメント固定部28の前半部側では複数の係合爪41,42を単一の第2爪挿通孔28K2に纏めて挿通させている。このように構成したのは次の効果を得ることができるからである。すなわち、(1)後半部側の乗員近くのドアトリムとオーナメントの見切りをきれいに見せるため、個別の挿通孔に通し、前後方向の位置が決まりやすくなる。(2)ドアトリムのフランジ24Fの高さが、開口28K1付近の方が低くなり、剛性が低くなる為、それを補うべく挿通孔を小さくし、リブで補強することにより、剛性不足を補うことができる。
【0036】
[オーナメント40の構造]
図1,図2,図6(a),図6(b),図7に示すように、前記オーナメント40はドア前後方向に長く形成されている。このオーナメント40の上端40Jはドア前後方向に延びる直線状に形成され、下端40Kはドア前方側Frほど下方に位置するように少しだけ傾斜し、ドア後方側Rrの後端40Uはドア後方側Rrほど上方に位置するように傾斜し、ドア前方側Frの前端40Nはドア後方側Rrほど下方に位置するように傾斜している。前端40Nと後端40Uは突曲面に形成され、後端40Uと上端40Jの間のコーナー部と、後端40Uと下端40Kの間のコーナー部とはそれぞれ円弧状に形成されている。40Mはオーナメント40の意匠面である。
【0037】
また、ドア前後方向でドア後方側Rrのオーナメント40の後半部に、ドア前後方向に長い長孔40Hが形成されている。長孔40Hの周囲のオーナメント部分40Aは、車室内側W1ほど小径のテーパ筒状に構成されている。
【0038】
図2,図3,図6(a),図6(b),図7に示すように、オーナメント40の裏面に複数の溶着ボスBが分散配設されて前記裏面から突出している。前記複数の溶着ボスBはドアトリム本体24の開口28Hの周縁部に形成されたボス挿通孔に挿通され、ボス挿通孔から突出した溶着ボスBの端部が溶着される。
【0039】
[係合爪41,42の構造]
図3,図4(a)に示すように、ドア前後方向でオーナメント40の後半部側の上端部40J1の裏面に複数の係合爪41,42が突設され、図3,図4(b),図5に示すように、前半部側の上端部40J2の裏面に複数の係合爪41,42が突設されている。前記後半部側の上端部40J1の裏面に突設された複数の係合爪41,42から成る係合部と、前記前半部側の上端部40J2の裏面に突設された複数の係合爪41,42から成る係合部とはほぼ同一構造である。以下、前記後半部側の係合部の係合爪41,42、及びその係合構造について説明する。
【0040】
複数の係合爪41,42は前記後半部側の上端部40J1の裏面にドア前後方向に千鳥状に配置され、上側の係合爪41と下側の係合爪42がドア前後方向で間隔を空けて位置している。そして、複数の係合爪41,42が、ドアトリム本体24のオーナメント固定部28に形成された複数の第1爪挿通孔28K1に各別に挿通されて、上側の1個の係合爪41と下側の2個の係合爪42とでインナウエザストリップ5の係合リップR4(被係合部)を挟持している。
【0041】
下側の2個の係合爪42は上側の1個の係合爪41よりもドア前後方向の長さが短い幅狭の板状に形成されている。下側の2個の係合爪42の突出端部は、背面が車室外側W2の斜め上方を向く断面くの字状に形成されて、屈曲部よりも基端部側でインナウエザストリップ5の係合リップR4に圧接する(図5参照)。また、下側の2個の係合爪42の上面に第2補強リブ36が立設されている。この第2補強リブ36は係合リップR4と干渉しないように係合爪42の基端部側に配置されている。
【0042】
上側の1個の係合爪41は、ドア前後方向の長さが下側の2個の係合爪42よりも長い幅広の板状に形成されている。上側の1個の係合爪41の突出端部41T(詳しくは、突出端部41Tの幅方向両端部)は、背面が車室外側W2の斜め上方を向く断面くの字状に形成されて、インナウエザストリップ5の係合リップR4の屈曲部K(図5参照)に外嵌して圧接する。前記突出端部41Tのドア前後方向の中央部は切り欠かれている。
【0043】
これにより、上側の1個の係合爪41と下側の2個の係合爪42とでインナウエザストリップ5の係合リップR4を確実に挟持することができる。また、上側の1個の係合爪41の上面に第2補強リブ36が立設されている。この第2補強リブ36は上側の1個の係合爪41の全幅にわたる長さに設定されている。前記複数の係合爪41,42(上側の1個の係合爪41と下側の2個の係合爪42)はスライド型により成形される。
【0044】
図3,図6(a),図7に示すように、オーナメント40の下端部と前端部の裏面に複数の第2の係合爪61が形成され、複数の第2の係合爪61が、オーナメント固定部28に形成された複数の係合孔62に各別に挿通係合されている。オーナメント固定部28にもクリップ座30が設けられている。
【0045】
上記の構成により、
(1) ドアトリム本体24がインナパネル4に固定され、オーナメント40の裏面に突設された係合爪41,42が、ドアトリム本体24に形成された複数の第1爪挿通孔28K1と単一の第2爪挿通孔28K2にそれぞれ挿通されて、インナパネル4に取り付けられたインナウエザストリップ5に係合しているから、インナウエザストリップ5を介してオーナメント40をインナパネル4に固定することができ、ドアトリム本体24へのオーナメント40の固定強度を向上させることができる。
例えば、オーナメントの上端部をドアトリム本体の上端部側に延出してドアトリム本体の上端部をオーナメントの上端部で覆い、ドアトリム本体の上端部よりも車室内側に位置したオーナメントの上端部から係合爪を下方に延出し、この係合爪をインナパネルの上端部に外嵌させる手段に比べると、オーナメント40を小型化でき、軽量化でき、材料コストを低廉化でき、オーナメント40のデザインの自由度を上げることができる。
また、ドアトリム本体24の前記第1爪挿通孔28K1と第2爪挿通孔28K2の周縁部に係合爪を形成した構造よりも係合爪41,42とその周りの部分の剛性を向上させることができ、かつ、前記第1爪挿通孔28K1と第2爪挿通孔28K2を塞ぐことがなくなるため軽量化に貢献できる。
【0046】
(2) 複数の係合爪41,42がインナウエザストリップ5の係合リップR4を挟持することで、オーナメント40のがたつきを防止することができる。
【0047】
(3) 複数の係合爪41,42はドア前後方向に千鳥状に配置されているから、例えば、上下に互いに対向する上側の係合爪41と下側の係合爪42でインナウエザストリップ5の係合リップR4を挟持する場合よりも、ドア前後方向(インナウエザストリップ5の長手方向)でより長い範囲にわたってインナウエザストリップ5の係合リップR4を挟持することができる。
また、ドア前後方向で、ある長さのインナウエザストリップ5の係合リップR4を挟持するのに、その長さと同一長さの上側の係合爪41と下側の係合爪42で挟持する場合よりも、ドア前後方向における係合爪41,42の長さを短くすることができる。これにより、係合爪41,42に要する材料コストを低廉化でき、しかも、軽量化を図ることができる。
【0048】
(4) 上側の係合爪41と下側の係合爪42がドア前後方向で間隔を空けて位置しており、上側の係合爪41と下側の係合爪42が上下方向で重ならないから、成形型を上下方向に型抜きすることができ、成形型の構造を簡素化することができる。
【0049】
(5) 隣り合う第1爪挿通孔28K1の間のドアトリム本体部分28Aを第1補強リブ16で補強することができてドアトリム本体24の強度の低下を防ぐことができる。これにより、係合爪41,42をドア前後方向に長い幅広の係合爪に形成するとともに、係合爪41,42に対応させてドアトリム本体24にドア前後方向に長い第1爪挿通孔28K1を形成することができる。その結果、インナウエザストリップ5の係合リップR4に係合爪41,42を確実に係合させることができる。
また、複数の係合爪41,42を複数の第1爪挿通孔28K1に各別に挿通させる時の位置決め効果を得ることができる。
【0050】
(6) オーナメント40はドアトリム本体24の前側の上部に設けられたオーナメント固定部28に固定され、前記係合爪41,42はオーナメント40の上端部の裏面に突設されており、乗員が手で掴みやすい個所に係合爪41,42が配置されているから、ドアトリム2の外れ方向の負担を軽減させることができる。
【0051】
(7) アウタパネル3の上端部3Jに取り付けられたアウタウエザストリップ6の上端6J(ベルトライン)よりも車両上方側に位置する上壁24Jがドアトリム本体24の前側の上端部24T(図5参照)から車室外側W2に張り出しているから、窓用開口47の下端ラインをインストルメントパネルから連続したラインとして表現することができて、デザイン性を向上させることができる。
また、前記上壁24Jの車室外側W2の端部からフランジ24Fが下方に張り出しているから、ドアトリム本体24の前側の上端部24Tの裏側をフランジ24Fで覆い隠して、前記裏側がウインドガラスGを通して車室外側W2から見えてしまうことを防止することができる。
このような構造において、ドアトリム本体24の前側の上端部24Tに係合爪を突設しようとすると、成形工程で型抜きする際に係合爪が邪魔になって型抜きすることができなくなる。
そのために、前記上壁24Jとフランジ24Fを備えた上側部品をドアトリム本体24とは別部品として製作しなければならず、製作コストが高くなるとともに重量が増加する。
これに対して、本発明の上記構成によれば、係合爪41,42をドアトリム本体24とは別部品のオーナメント40に設けてあるから、ドアトリム本体24の成形工程で型抜きする際に係合爪41,42が邪魔になることがなくて円滑に型抜きすることができる。従って、製作コスト・重量増加を抑えて意図した意匠形状を実現でき、デザイン性をより向上させることができる。
【符号の説明】
【0052】
2 ドアトリム
3 アウタパネル
4 インナパネル
5 インナウエザストリップ
6 アウタウエザストリップ
6J アウタウエザストリップの上端(ベルトライン)
16 補強リブ(第1補強リブ)
24 ドアトリム本体
24F フランジ
24J 上壁
24M 意匠面
24T ドアトリム本体の前側の上端部
28 オーナメント固定部
28A ドアトリム本体部分
28K1 開口(第1爪挿通孔)
28K2 開口(第2爪挿通孔)
40 オーナメント
41 係合爪(上側の係合爪)
42 係合爪(下側の係合爪)
R4 被係合部(係合リップ)
W2 車室外側

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドアトリム本体と、前記ドアトリム本体の意匠面側に重なるオーナメントとを備えたドアトリムがインナパネルに固定されている車両用のドアトリムの取り付け構造であって、
前記ドアトリム本体が前記インナパネルに固定され、
前記オーナメントが前記ドアトリム本体に固定され、
前記オーナメントの裏面に係合爪が突設され、
前記係合爪は、前記ドアトリム本体に形成された開口に挿通されて、前記インナパネルに取り付けられたインナウエザストリップに係合しているドアトリムの取り付け構造。
【請求項2】
前記係合爪は前記オーナメントの裏面に複数突設されて、前記複数の係合爪が前記インナウエザストリップの被係合部を挟持している請求項1記載のドアトリムの取り付け構造。
【請求項3】
前記複数の係合爪はドア前後方向に千鳥状に配置され、
上側の1又は2以上の前記係合爪と下側の1又は2以上の前記係合爪とで前記インナウエザストリップの被係合部を挟持している請求項2記載のドアトリムの取り付け構造。
【請求項4】
前記上側の係合爪と前記下側の係合爪はドア前後方向で間隔を空けて位置している請求項3記載のドアトリムの取り付け構造。
【請求項5】
前記開口は前記ドアトリム本体にドア前後方向に複数形成されて、前記複数の係合爪が前記複数の開口に各別に挿通され、
隣り合う前記開口の間のドアトリム本体部分に補強リブが形成されている請求項4記載のドアトリムの取り付け構造。
【請求項6】
前記オーナメントはドア前後方向で前記ドアトリム本体の前側の上部に設けられたオーナメント固定部に固定され、
前記係合爪は前記オーナメントの上端部の裏面に突設されている請求項1〜5のいずれか一つに記載のドアトリムの取り付け構造。
【請求項7】
アウタパネルの上端部に取り付けられたアウタウエザストリップの上端よりも高所に位置する上壁が前記ドアトリム本体の前側の上端部から車室外側に張り出し、
前記上壁の車室外側の端部から下方にフランジが張り出している請求項6記載のドアトリムの取り付け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−81912(P2012−81912A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−231207(P2010−231207)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】