説明

ドアパネル

【課題】熱交換機能を有するドアパネルを提供する。
【解決手段】ドアパネル本体20は、外側板21と、この外側板21より薄い板厚の板金を凹凸状にプレス成形して外側板21の内側面に凹部を固定した内側板23とを具備している。内側板23の凸部29によって、それらの内側に空間部22を連続的に形成する。この空間部22内に、外側板21および内側板23の少なくとも一方に接触させた配管41を配設する。この配管41は、外側板21または内側板23のいずれかに貼着した発泡素材が空間部22内で膨張する膨張力によって、貼着側とは反対側に押し付け、発泡材24により配管41を固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換体を内蔵したドアパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
図9は、作業機械としての油圧ショベル10を示し、下部走行体11に上部旋回体12が旋回可能に設けられ、この上部旋回体12上にキャブ13、作業装置14、エンジンなどの動力装置15が搭載されている。動力装置15は、上部カバー16およびサイドドア17などにより覆われている。
【0003】
この種のサイドドア17のドアパネルには換気機能があり、ラジエータおよびオイルクーラなどからなるクーリングパッケージを備えたラジエータ室のドアパネルにあっては、これらのドアパネルを経て外部空気を吸引している(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−169849号公報(第5−6頁、図1−3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来は、空気の流れが接触するドアパネル自体に熱交換機能はなく、効率の良い熱交換がなされていない。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、熱交換機能を有するドアパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載された発明は、外側板と、外側板の内側に一体化された内側板と、外側板と内側板との間に連続的に形成された空間部と、空間部にて外側板および内側板の少なくとも一方に接触させて配設された熱交換体とを具備したドアパネルである。
【0007】
請求項2に記載された発明は、請求項1記載のドアパネルにおいて、空間部に充填された発泡材を具備したものである。
【0008】
請求項3に記載された発明は、請求項1または2記載のドアパネルにおける熱交換体を、外側板および内側板を冷却する低温流体を供給する配管としたものである。
【0009】
請求項4に記載された発明は、請求項1または2記載のドアパネルにおける熱交換体を、冷却する必要のある高温流体を供給する配管としたものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載された発明によれば、ドアパネルを構成する外側板と内側板との間に連続的に形成された空間部にて、外側板および内側板の少なくとも一方に熱交換体を接触させて配設したので、空気の流れが接触するドアパネル自体に熱交換機能をもたせることができ、効率の良い熱交換が可能なドアパネルを提供できる。
【0011】
請求項2に記載された発明によれば、発泡材により、ドアパネル自体から発生する音を効果的に減衰させることができるとともに、発泡材の膨張力により配管を外側板または内側板に押圧固定することができ、特別な配管押さえを不要にできるとともに、配管と外側板または内側板との間の熱伝達性能を確保できる。
【0012】
請求項3に記載された発明によれば、低温流体によりドアパネル自体を冷却する熱交換機能により、ドアパネルを通過する気体を効率よく冷却できる。
【0013】
請求項4に記載された発明によれば、高温流体からドアパネルを介して外部に熱を放出する熱交換機能により、高温流体を効率よく冷却できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を、図1乃至図8に示された一実施の形態を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
図5は、作業機械としての油圧ショベル10を示し、下部走行体11に上部旋回体12が旋回可能に設けられ、この上部旋回体12上にキャブ13、作業装置14、エンジンなどの動力装置15が搭載されている。動力装置15は、上部カバー16およびサイドドア17などにより覆われている。
【0016】
図6は、サイドドア17のドアパネル本体20を示し、このドアパネル本体20は、外側板21と、この外側板21より薄い板厚の板金を凹凸状にプレス成形して外側板21の内側面に凹部を固定するとともに凸部と外側板21との間に空間部22を形成する内側板23と、これらの外側板21と内側板23との間の空間部22に充填された発泡材24とを具備している。
【0017】
図1にも示されるように、外側板21の周縁部は、内側板23の周縁部を包みこむように折返して押しつぶすようにヘミング加工したへミング加工部25を備えている。
【0018】
内側板23は、凹状に成形された凹部27が外側板21に接着剤により接合され、この凹部27の内部に複数ブロックに分割された通気用開口部28が穿設され、さらに、凹部27に対し凸部29が膨出成形されている。接着剤は、外側板21と内側板23とを接合するとともにシールするため、粘性と熱硬化性を有するペーストタイプ構造用接着剤が望ましい。
【0019】
図2に示されるように、外側板には、例えばハニカムコア形状に穿設された通気穴30が、内側板23の複数ブロックの通気用開口部28と対応する複数ブロックに分割されて設けられている。
【0020】
内側板23の凹部27には、上下の凸部29間に縦方向に設けられた柱状の補強用凸部31により複数の通気用開口部28が区画形成されている。また、横方向の凸部29には、縦方向の補強用凹部32が形成されている。これらの補強用凸部31および補強用凹部32は、凹部27および凸部29で得られる内側板23の面強度をさらに高める働きがあり、縦方向および横方向の曲げ力に対する耐力を向上できる。
【0021】
外側板21と内側板23との間に設けられた空間部22は、凸部29により連続的に形成されている。すなわち、凸部29には、一側の補強板装着用の凸部29aから、複数列の横方向の凸部29bを介して、他側の凸部29cが連続的に形成されている。
【0022】
補強板装着用の凸部29aの内側には、ヒンジ取付用の内部補強板33が接着されている。この内部補強板33の一側部には、下部および上部の配管挿通穴34,35が穿設され、それらの間に位置する2つの配管挿通溝36,37が切欠形成されている。
【0023】
上記のような内側板23の凸部29a,29b,29cによって、それらの内側に連続的に形成された空間部22には、外側板21および内側板23の少なくとも一方に接触させた熱交換体としての配管41が配設されている。
【0024】
この配管41は、図3に示されるように外側板21および内側板23の補強用凹部32によって挟まれた状態にある箇所では、外側板21および内側板23によって固定され、また、図6に示されるように配管41と外側板21または内側板23との間に余裕空間がある場合は、外側板21または内側板23のいずれかに貼着された発泡素材24aが空間部22に膨張する膨張力によって、発泡素材24aの貼着側とは反対側に押し付けられ、吸音用の発泡材24が配管41の固定手段として機能する。
【0025】
図2に戻って、内側板23の最下段の凸部29bには、配管41の一端部および他端部を内側板23の内部から外部へ引き出すための2つの配管引出孔42,43が穿設されている。
【0026】
配管41は、内側板23の配管引出孔42,43から外部へ引き出される一端の引出部41aから他端の引出部41bにわたって、最下段一側部41c、左外側部41d、最上段部41e、右上段部41f、準上段部41g、左内側部41h、準下段部41i、右下段部41j、最下段他側部41kが順次折曲形成され、外側板21に沿って配設されている。
【0027】
配管41の最下段一側部41cは、内部補強板33の配管挿通穴34を通り、左外側部41dは、内部補強板33の内部を通り、最上段部41eは、内部補強板33の配管挿通穴35を通り、準上段部41gは、内部補強板33の配管挿通溝36を通り、左内側部41hは、内部補強板33の内部を通り、準下段部41iは、内部補強板33の配管挿通溝37を通って配設されている。
【0028】
図4に示されるように、配管41の一端の引出部41aおよび他端の引出部41bには、管継手部44,45がそれぞれ設けられ、これらの管継手部44,45により接続されたフレキシブルホース(図示せず)を介して、外部配管と連通させることで、ドア開閉動作を妨げないようにする。
【0029】
この配管41は、外側板および内側板を冷却する低温流体を供給する通路として機能させるか、または、冷却する必要のある高温流体を供給する通路として機能させる。
【0030】
低温流体としては、冷凍サイクルの冷媒ガス、または冷却液などの熱媒体であり、高温流体としては、ラジエータとの間で循環される温度上昇されたエンジンのクーラント液や、オイルクーラとの間で循環される温度上昇された油圧回路の作動油である。
【0031】
図7に示されるように、サイドドア17のドアパネル本体20の一側は、このドアパネル本体20の一側部に取付けられたヒンジ51により、上部旋回体12上に設置された機体側のフレーム52の一側部材52aに水平方向開閉自在に取付けられている。このドアパネル本体20は、垂直面部20aに対し、上部がフレーム52側に折曲されて折曲面部20bが形成されている。
【0032】
このドアパネル本体20のヒンジ51とは反対側のラッチ取付穴部53には、ドアパネル本体20の垂直面部20aをフレーム52側に係脱可能なラッチ機構部54が設けられている。一方、ドアパネル本体20の開閉にともないドアパネル本体20が当接される方向に対向してフレーム52の他側部材52bに固定された取付板55より前記ラッチ機構部54と係合するストライカ56が突設されている。
【0033】
このラッチ機構部54の上側には、ドアパネル本体20の内側板23を凹状に成形した制振係合部57が設けられている。一方、機体側のフレーム52の他側部材52bには、ドアパネル本体20の開閉にともない制振係合部57と係脱自在の制振プランジャ58が、取付板59を介して取付けられている。
【0034】
図8に示されるように、このドアパネル本体20へのヒンジ51の取付構造は、一方のヒンジプレート60に対して回動自在に軸支された他方のヒンジプレート61が内側板23に取付けられるが、その取付用の補強構造として、内側板23の内面には内部補強板33が接着されている。
【0035】
すなわち、内部補強板33の裏面に溶接付けされたナット62と、このナット62に螺合するボルト63とにより、内側板23のヒンジ取付面部64上に位置する他方のヒンジプレート61が締着されている。この他方のヒンジプレート61とボルト63の頭部との間にはワッシャ65が介在されている。
【0036】
次に、この図1乃至図8に示された実施の形態の作用効果を説明する。
【0037】
ドアパネル本体20の内部に、このドアパネル本体20を冷却するための熱媒体の配管41をドアパネル本体20の外側板21または内側板23に沿わせて設置し、熱媒体をドアパネル本体20の内部にめぐらすことができるようにする。
【0038】
要するに、配管41を、ドアパネル本体20を冷却する低温流体の通路とした場合は、その低温流体によりドアパネル本体20が冷却されるので、このドアパネル本体20を冷却板として機能させ、ドアパネル本体20の通気穴30を通過する気体を冷却する。
【0039】
例えば、エンジンのクーラント液を冷却するラジエータや、油圧回路の作動油を冷却するオイルクーラなどが必要とする冷風を吸引するサイドドア17においては、配管41に冷媒ガスや冷却液を通すことで、ドアパネル本体20を冷やして冷却板として機能させる。
【0040】
一方、配管41を、冷却する必要のある高温流体の通路とした場合は、ドアパネル本体20が放熱板として機能し、高温流体からドアパネル本体20を介して外部に熱を放出することができ、高温流体を冷却する。
【0041】
例えば、配管41にエンジンのクーラント液や油圧回路の作動油を導くことで、高温となったクーラント液や作動油の熱をサイドドア17のドアパネル本体20から放熱させて、クーラント液や作動油を冷却する。
【0042】
また、極寒冷地仕様車両の場合は、ドアパネルが凍るのを避けたり、オーバークールを避けるために、配管41にラジエータ温水や作動油などを供給して、サイドドア17を暖めるようにしても良い。
【0043】
このように、図示された実施の形態によれば、ドアパネル本体20は、外側板21とこの外側板21より薄い内側板23とで形成された中空の閉断面構造により軽量化を図ることができるとともに、内側板23とこれより厚い外側板21とで形成された十分な高さをもった中空の閉断面構造により、外側からの衝撃に対して十分な強度を確保できる強固なドアパネル本体20を安価に提供でき、さらに、外側板21と内側板23との間に充填された発泡材24により、ドアパネル本体20自体から発生する音を効果的に減衰させることができ、効果的に低騒音化を図ることができる。
【0044】
多層構造のドアパネル本体20を構成する外側板21と内側板23との間に連続的に形成された空間部22にて、外側板21および内側板23の少なくとも一方に配管41を接触させて配設したので、空気の流れが接触するドアパネル本体20自体に熱交換機能をもたせることができ、効率の良い熱交換が可能なドアパネルを提供できる。
【0045】
発泡材24により、ドアパネル自体から発生する音を効果的に減衰させることができるとともに、発泡材24の膨張力により配管41を外側板21または内側板23に押圧固定することができ、特別な配管押さえ手段を不要にできるとともに、配管41と外側板21または内側板23との間の熱伝達性能を確保できる。
【0046】
低温流体によりドアパネル本体20自体を冷却して冷却板として機能させることにより、ドアパネル本体20の通気穴30を通過する気体を直接的に効率良く冷却できる。この場合、冷却効率の向上により、通気穴30を微細径のものにでき、粉塵の吸込を抑えることができる。
【0047】
配管41に高温流体を供給する場合は、その高温流体から放熱板として機能するドアパネル本体20を介して外部に熱を放出することができ、高温流体を効率良く冷却できる。
【0048】
なお、上記の実施の形態では、配管41の内部に熱媒体を供給するようにしたが、配管41の内部に熱媒体の替わりに電熱ヒータを挿入しても良い。
【0049】
さらには、空間部22にて外側板21および内側板23の少なくとも一方に接触させて熱交換体としてのペルチェ素子を配設し、いわゆるペルチェ効果による冷却作用をさせるようにしても良い。この場合、配管41は不要となる。
【0050】
本発明に係るドアパネルは、油圧ショベルなどの作業機械のサイドドア、リアドアなどに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明に係るドアパネルの一実施の形態を示す一部切欠の斜視図である。
【図2】同上ドアパネルの分解斜視図である。
【図3】同上ドアパネルの凸部を破断した斜視図である。
【図4】同上ドアパネルの配管引出部分の斜視図である。
【図5】同上ドアパネルを備えた作業機械の平面図である。
【図6】同上ドアパネルの断面図である。
【図7】同上ドアパネルのフレームに対する取付状態を示す斜視図である。
【図8】同上ドアパネルのヒンジ取付部分の断面図である。
【図9】従来の作業機械を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0052】
21 外側板
22 空間部
23 内側板
24 発泡材
41 熱交換体としての配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側板と、
外側板の内側に一体化された内側板と、
外側板と内側板との間に連続的に形成された空間部と、
空間部にて外側板および内側板の少なくとも一方に接触させて配設された熱交換体と
を具備したことを特徴とするドアパネル。
【請求項2】
空間部に充填された発泡材
を具備したことを特徴とする請求項1記載のドアパネル。
【請求項3】
熱交換体は、外側板および内側板を冷却する低温流体を供給する配管である
ことを特徴とする請求項1または2記載のドアパネル。
【請求項4】
熱交換体は、冷却する必要のある高温流体を供給する配管である
ことを特徴とする請求項1または2記載のドアパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−191441(P2009−191441A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−30087(P2008−30087)
【出願日】平成20年2月12日(2008.2.12)
【出願人】(000190297)キャタピラージャパン株式会社 (1,189)
【Fターム(参考)】