説明

ドア装置とそれを備えたスマートエントリーシステム

【課題】ドアノブの操作を検出するスイッチとして、接点接合式や静電容量式等があるが、経年変化による接点不良や、雨による誤作動といった課題があった。
【解決手段】圧電センサ4が可撓性を有してドアノブ3に付設可能となり、ドアノブ3の微小変位を高感度に検出可能となる。従って、ドアノブ3に単に触れただけでも十分な信号出力が得られ、ドアノブ3に対するタッチが検出可能となる。また、電極を表出させる必要がないので、外乱や、付着する塵埃や雨や雪等の影響を受けにくい。さらに、圧電センサ4は、柔軟な変形が可能なことから設置場所の制約条件が少なく、かつ配置スペースも少なくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワースライドドアやパワーハッチバックドアといった自動開閉可能なドア装置において、ドアノブを備えたハンドル装置にセンサを設けて、該ハンドル装置の操作を感知するハンドル装置を備えたドア装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のドアノブを操作してドアのロック解除を行うに際し、ドアノブへの接触や操作を検知するセンサを設けて、このセンサから検知信号が出力されたときに、所定の条件の下でドアロックを解除する機能を持たせたものがある。
【0003】
例えば、センサにメンブレンスイッチ等の接点接合式スイッチを用いてドアロックの解除を行う車両用ドアノブ装置が特許文献1に開示されている。このメンブレンスイッチは、周知の構造であって、スペーサを介して対向配置される対のフレキシブルフィルム状のプレートの対向内面に、所定の間隔をもって配置される対の電極部を印刷したものである。このメンブレンスイッチは、常時は、オフ状態にあり、電極部上に位置するよう一方のプレートに載置されるシリコンゴム等の弾性体がトリガーによって押圧されることで電極部同士が接触し、これにより、オン状態となる。
【0004】
また、センサに静電容量形のセンサを用いてドアロックの解除を行う自動車用人体接近検出センサが特許文献2に開示されている。自動車用人体接近検出センサを用いたアウタハンドルは、中空形状に形成されており、その中空部分には非接触センサとしての静電容量形センサを構成する平行ケーブルがアウタハンドルの把持部の長手方向に沿って延在するように受容されている。平行ケーブルは、基端部がアウタハンドルの枢支部の近傍に設けられた開口を介して外部に延出するように設けられたシールド線と連結され、そのシールド線の他端が回路基板に接続される。
【0005】
ところで、近年、ドアノブのキー孔にキーを挿入してドアのロック解除する一般的なドアロックの解除方法に対して、キー孔にキーを差し込むことなく、個人認識用のカードや送信機等を用いてドアロックを解除させる、所謂キーレスエントリー装置が、自動車や住宅等のドアに適用されるようになってきた。この種の車両用電波錠装置が特許文献3に開示されている。この車両用電波錠装置は、車両のドアノブが引かれることにより制御部が作動される一方、車両側の送受信器からの送受信コードを受信することにより携帯送受信器が送信状態となり、携帯送受信器からの固有コードに基づいて制御部が解錠処理を行う。そして、ドアノブが引かれたことを検出する検出手段を設け、この検出手段からの検出信号に基づいて車両側の送受信器から送受信コードを発信するようにしている。
【特許文献1】特開2002−322834号公報
【特許文献2】特開平10−308149号公報
【特許文献3】特開平8−53964号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記した従来のドアハンドル装置に用いられる接点接合式スイッチは、経年変化による接点不良や、接触のみ等の軽いタッチでは動作しない不具合がある。また、接点接合までのストロークが存在するため、タッチした瞬間からスイッチが動作するまでの時間差がどうしても生じ、これがレスポンスを悪化させる要因となる。例えば、ドアノブを掴んで引くときに、急峻にドアを引くと、ロック手段の解除が間に合わずにロック状態のままとなったり、がたつきを生じることになる。そのため、ドアノブを掴んで所定時間
待ってから引き出すといった操作フィーリングに悪い影響を与える。
【0007】
一方、静電容量形のセンサでは、降雨や洗車によりドアノブが濡れると誤作動するといった問題や、手袋を装着しているとドアノブに触れても作動しないといった問題があった。また、人により静電容量が異なり、履いている靴によっても変化するため、感度の調整が極めて難しいという問題があった。
【0008】
検出感度を高めてかつノイズ成分との分離が行え、わずかに触っただけでも反応するタッチ感をもってオンオフ切り換え可能な接触スイッチとしては、圧電センサを用いることが好ましい。
【0009】
しかし、一般的な圧電センサは、セラミックス等からなる圧電素子を配列してなる剛体であり、センサの配置領域に制約のある場合には、所望の場所に圧電センサを配置して組込みできない問題がある。
【0010】
また、非接触方式である光学式センサを用いることも考えられるが、センサに付着する塵埃や雨や雪等の気象条件等により誤動作が多く、実用的なものではない。
【0011】
このような事情から、接点接合式スイッチ、製電容量形センサ、一般的な圧電センサ或いは光学式センサを用いたドアハンドル装置や、これらドアハンドル装置を備えたキーレスエントリー装置では、良好な操作フィーリング、動作信頼性、及び組込み性を実現することが困難となっていた。
【0012】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、柔軟な構造を有し軽いタッチでも十分な検出感度の得られる圧電センサを用いて、開閉動作を検出するドア装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記従来の課題を解決するために、本発明に係るドア装置は、パワースライドドアやパワーハッチバックドアといった自動開閉可能なドア装置において、可撓性の圧電センサと、前記圧電センサの一部を支持する弾性体と、前記圧電センサの出力信号を検出する検出手段とを備えたドアハンドル装置を有し、前記弾性体は、その一端を前記検出手段に固定され、かつ固定された部分と離れた位置で前記圧電センサを支持し、前記検出手段は、前記弾性体が変形したときの前記圧電センサの信号を検出し、前記ドアノブを車外側から引くか、または、前記ドアノブを車外側から押すことにより生じる前記ドアノブの変位に伴い前記弾性体が変形したときの前記圧電センサの信号に基づいて、前記ドアノブへの人の接触、または前記ドアノブの操作を検出してドアの開閉を制御することを特徴とする。
【0014】
このドアハンドル装置では、圧電センサが可撓性を有してドアノブに付設可能となり、ドアノブの微小変位を高感度に検出可能となる。そして、圧電センサの信号に基づいて、前記ドアノブへの人の接触、または前記ドアノブの操作を検出してドアの開閉を制御する。
【発明の効果】
【0015】
本発明のドアハンドル装置は、圧電センサが可撓性を有してドアノブに付設可能となり、ドアノブの微小変位を高感度に検出可能となる。従って、ドアノブに単に触れただけでも十分な信号出力が得られ、ドアノブに対するタッチが検出可能となり、ドアノブにタッチするだけでパワースライドドアやパワーハッチバックドアを開閉することが可能となり、利便性が向上する。また、電極を表出させる必要がないので、外乱や、付着する塵埃や雨や雪等の影響を受けにくい。さらに、圧電センサは、柔軟な変形が可能なことから設置
場所の制約条件が少なく、かつ配置スペースも少なくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
第1の発明は、パワースライドドアやパワーハッチバックドアといった自動開閉可能なドア装置において、可撓性の圧電センサと、前記圧電センサの一部を支持する弾性体と、前記圧電センサの出力信号を検出する検出手段とを備えたドアハンドル装置を有し、前記弾性体は、その一端を前記検出手段に固定され、かつ固定された部分と離れた位置で前記圧電センサを支持し、前記検出手段は、前記弾性体が変形したときの前記圧電センサの信号を検出し、前記ドアノブを車外側から引くか、または、前記ドアノブを車外側から押すことにより生じる前記ドアノブの変位に伴い前記弾性体が変形したときの前記圧電センサの信号に基づいて、前記ドアノブへの人の接触、または前記ドアノブの操作を検出してドアの開閉を制御することを特徴とする。
【0017】
このドア装置では、圧電センサが可撓性を有してドアノブに付設可能となり、ドアノブの微小変位を高感度に検出可能となる。従って、ドアノブに単に触れただけでも十分な信号出力が得られ、ドアノブに対するタッチが検出可能となり、ドアノブにタッチするだけでパワースライドドアやパワーハッチバックドアを開閉することが可能となる。また、電極を表出させる必要がないので、外乱や、付着する塵埃や雨や雪等の影響を受けにくい。さらに、圧電センサは、柔軟な変形が可能なことから設置場所の制約条件が少なく、かつ配置スペースも少なくなる。
【0018】
第2の発明は、特に第1の発明のドア装置が、ドアノブを車外側から引いた場合と押した場合の圧電センサの出力信号の極性の違いに基づき、前記ドアノブを車外側から引くとドアを開動作し、前記ドアノブを車外側から押すとドアを閉動作することを特徴としたもので、ドア操作とドア開閉の対応が判りやすくなり、利便性がさらに向上する。
【0019】
第3の発明は、特に第1または第2の発明のドア装置が、圧電センサの出力信号の大きさに応じてドアの開閉速度を制御することを特徴としたもので、例えば、ドアを急いで開閉したい場合は、ドアノブを強く操作して圧電センサからの出力信号を増大させればよく、利便性が向上する。
【0020】
第4の発明は、請求項1〜3のいずれか1項記載のドア装置を備えたスマートエントリーシステムである。
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0022】
(実施の形態1)
本発明の第1の実施の形態を図1から図7を参照して説明する。
【0023】
図1は本発明の第1の実施の形態におけるドアハンドル装置を備えた自動車ドアの外観図である。図中、ドア1にはハンドルブラケット2が装着されている。ハンドルブラケット2はドアノブ3を有している。図2はハンドルブラケット2を車外側から見た外観図、図3はハンドルブラケット2を車内側から見た外観図である。図中、可撓性を有したケーブル状の圧電センサ4が検知手段5と共にハンドルブラケット2に装着されている。検知手段5には電源と検出信号出力用のケーブル6、コネクタ7が接続されている。圧電センサ4は板バネでできた弾性体8の先端部に支持・固定されている(図中の支持部8b)。圧電センサ4は弾性体8の先端部側から延出する方向において屈曲部4aを備えている。弾性体は他端を検知手段5に片持ち梁状に固定されている(図中の8a)。図中に示すように、弾性体8の圧電センサ4の支持部8bと検知手段5の固定部8bとは、離れた位置
に設けており、本実施の形態では板状の長手方向の両端にそれぞれを設けている。しかし必ずしも両端に位置させなくてもよく、同一場所としなければよい。また、弾性体8はドアノブ3と連動して作動するアーム部9と上端9aで接触している。この際、ドアノブ3非使用時において弾性体8は所定の押圧を付勢されてアーム部上端9aに接触している。アーム部9にはバネ10により所定のバネ圧が印加されて常時ドアノブ3が閉止方向に押圧されるようになっている。
【0024】
図3に示すように、圧電センサ4、弾性体8、検出手段5は一体として成型されセンサユニット500を形成している。そして、センサユニット500は検出手段5に備えられた取り付け金具5a、5bを介してビス5cでハンドルブラケット2に取り付けられている。
【0025】
図4は圧電センサ4の断面図である。圧電センサ4は、中心電極4b、圧電体4c、外側電極4d、被覆層4eとを同軸状に成形したもので、全体として可撓性に優れた構成を有している。中心電極4bは通常の金属単線導線を用いてもよいが、ここでは絶縁性高分子繊維の周囲に金属コイルを巻いた電極を用いている。絶縁性高分子繊維と金属コイルとしては、電気毛布において商業的に用いられているポリエステル繊維と銀を5wt%含む銅合金がそれぞれ好ましい。
【0026】
圧電体4cはポリエチレン系樹脂と圧電セラミック(ここでは、チタン酸ジルコン酸鉛)粉末とを混錬したもので、中心電極4bと共に連続的に押し出されて可撓性のある圧電体4cを形成する。尚、圧電セラミックとしては、環境面への配慮から非鉛系の材料、たとえば、チタン酸ビスマスナトリウム系やニオブ酸アルカリ系の圧電セラミック材料を用いることが好ましい。
【0027】
中心電極4bの周囲に圧電体4cを押し出し加工した後、中心電極4bと圧電体4cの表面に接触させた擬似電極との間に数kVの直流電圧を印加して圧電体4cの分極を行う。これにより圧電体4cが圧電効果を備える。外側電極4dは高分子層の上に金属膜の接着された帯状電極を用い、これを圧電体4cの周囲に巻きつけるようにして構成する。高分子層としてはポリエチレン・テレフタレート(PET)を用い、この上にアルミニウム膜を接着した電極は、120℃で高い熱的安定性を有するとともに商業的にも量産されているので、外側電極4dとして好ましい。尚、外部環境の電気的雑音からシールドするために、外側電極4dは部分的に重なるようにして圧電体4cの周囲に巻きつけることが好ましい。被覆層4eは信頼性面で塩化ビニールを使用するのがよいが、環境面への配慮から熱可塑性エラストマー等の非塩ビ系材料を用いることが好ましい。
【0028】
検出手段5はオペアンプと周辺部品で構成される少なくとも1つのバンドパスフィルタ部と、必要であればオペアンプと周辺部品で構成され、ドア1の固有振動周波数を含む信号成分を除去するバンドエリミネーションフィルタ部またはローパスフィルタ部とを備えている。そとて、上記フィルタ部の出力信号に基づきドアノブ3への物体の接触、ドアノブ3による開動作と閉動作の少なくとも1つを検出するための判定部を備える。判定部としてはコンパレータを使用する。上記フィルタ部や判定部は、それぞれ1mA以下の低消費電流型の素子を使用している。
【0029】
前記バンドパスフィルタ部の特性としては、実験的にドアノブ3を操作した際の圧電センサ4からの出力信号を周波数解析することにより、特徴的な周波数帯として例えば、3Hz〜8Hzの周波数領域を通過するような特性となるように設定する。
【0030】
また、前記バンドエリミネーションフィルタ部またはローパスフィルタ部の設定については、例えば、ドア1を故意に叩いたりした際の圧電センサ4からの出力信号を周波数解
析することにより、特徴的な周波数帯として例えば、10Hz以上の周波数領域を除去するような特性となるように設定する。尚、固有振動の強度が小さく、圧電センサ4の出力信号への影響が小さい場合は、バンドエリミネーションフィルタ部またはローパスフィルタ部を設けなくてもよい。
【0031】
さらに、車種やドアのサイズ、重量等によりドアの固有振動特性が異なることが想定されるため、上記のような実験的な解析に基づき、バンドパスフィルタ部やバンドエリミネーションフィルタ部、ローパスフィルタ部の設定の最適化を行うことが好ましい。
【0032】
外来の電気的ノイズを除去するため検知手段5はシールド部材で全体を覆って電気的にシールドすることが好ましい。また、検知手段5の入出力部に貫通コンデンサやEMIフィルタ等を付加して強電界対策を行ってもよい。
【0033】
次に作用について説明する。ドア開動作のため、ドアノブ3を車外側に引くか、または、軽くドアノブ3の内側に手を触れると、ドアノブ3が車外側に変位するとともに、ドアノブ3と連動してアーム部9が変位する。図5および図6はこの時のドアノブ3、圧電センサ4、弾性体8、アーム部9の変位の様子を示した概略図である。ここで、図6は図5をS方向から見た概略図である。図示したように、ドアノブ3が車外側に変位すると、アーム部9の上端9aが下がり、上端9aに所定の押圧で付勢された弾性体8も固定部を中心して先端部側が固定軸9bを中心にして回転しながら最大変位を示して下方へ変位する。そのため、圧電センサ4も変形し、屈曲部4aの曲率半径が大きくなる方向に変形する。
【0034】
この際、たとえば、図6に示したように、上端9aと弾性体8との接触位置の関係から、上端9aはΔxの変位でも弾性体8の先端部ではΔxより大きいΔyとなり、上端9aの直接的な変位よりも大きな変位が弾性体8によりもたらされる。
【0035】
図7はこの際、検知手段5内で増幅、濾波された信号V、判定部の判定出力Jを示す特性図である。図中、縦軸は上から順にV、J、横軸は時刻tである。ドアノブ3の操作による変位があり、圧電センサ4が変形すると、圧電センサ4からは圧電効果により圧電センサ4の変形の加速度に応じた信号が出力される。この時、出力信号には約3〜8Hzの周波数を有した信号が現れ、その信号は検知手段5内で増幅、濾波され、図7のVに示すような信号が得られる。
【0036】
判定部はVのV0からの振幅の絶対値|V−V0|がD0以上ならばドアノブ3への物体の接触、ドアノブ3による開動作、ドアノブ3による閉動作の少なくとも1つが生じたと判定し、時刻t1で判定出力としてLo→Hi→Loのバルス信号を出力する。
【0037】
尚、ドアノブ3を車外側から押してもアーム部9と弾性体8を介して圧電センサ4が変形する。この場合、圧電センサ4の屈曲部4aは曲率半径が小さくなる方向に変形するので、圧電センサ4の出力特性から、屈曲部4aの曲率半径が大きくなる方向に変形した場合とは逆の極性の出力信号が圧電センサ4から出力される。これにより、濾波信号Vには図7の基準電位V0よりマイナス側の信号が現れる。そして、判定部はVのV0からの振幅の絶対値|V−V0|がD0以上ならばドアノブ3への物体の接触、ドアノブ3による開動作、ドアノブ3による閉動作の少なくとも1つが生じたと判定し、|V−V0|がD0以上の期間はHi信号を出力する。このように、ドアノブ3を車外側から押した場合も検出可能であり、利便性がよい。特に、両手に物を持っている時や、力の弱い子供やお年寄りが利用する場合は、ドアノブ3を車外側に引く動作よりも車外側から押す動作の方がやり易いので、使い勝手が向上する。
【0038】
上記作用により、このドアハンドル装置では、圧電センサが可撓性を有してドアノブ3に付設可能となり、ドアノブ3の微小変位を高感度に検出可能となる。従って、ドアノブ3に単に触れただけでも十分な信号出力が得られ、ドアノブ3に対するタッチが検出可能となる。また、電極を表出させる必要がないので、外乱や、付着する塵埃や雨や雪等の影響を受けにくい。さらに、圧電センサは、柔軟な変形が可能なことから設置場所の制約条件が少なく、かつ配置スペースも少なくなる。
【0039】
また、圧電センサ4が、一端を固定して片持ち梁状とした略板状の弾性体8に支持され、ドアノブ3非使用時において前記弾性体8の一部は所定の押圧を付勢されてアーム部9上端に接触するもので、圧電センサ4が弾性体8を介してアーム部9上端に接触するので、たとえば、圧電センサ4がアーム部9と接して磨耗したり、操作による衝撃を直接受けたりするといったことがなく、信頼性が向上する。
【0040】
また、ドアノブ3非使用時において弾性体8の一部が所定の押圧を付勢されてアーム部9上端に接触した状態なので、ドアノブ3開動作時にはドアノブ3の変位に伴いアーム部9上端に弾性体8と圧電センサ4とが追従して変位するとともに、圧電センサ4の変形に応じて、検出手段5が開検出の信号を出力する。そして、所定の変位後は弾性体8は変位せず、圧電センサ4も変形をとどめるので、変位量が大きすぎて圧電センサ4が断線したりすることがないので、センサユニット500としての信頼性が向上する。
【0041】
また、アーム部9と弾性体8と圧電センサ4との位置関係を調節することで、検出領域や変位量の調整が可能で、構造や寸法等の異なるさまざまなドアハンドル装置に対してもセンサユニット500の最適化が可能となる。
【0042】
また、アーム部9上端と弾性体8との接触位置の関係から、アーム部9上端の変位よりも弾性体8の先端部の変位が大きくなり、圧電センサ4の変位がより大きくなって、感度が向上する。
【0043】
また、圧電センサ4は弾性体8の先端部側から延出する方向において屈曲部を備えたもので、同じ変位を受けた場合に直線部よりも屈曲部が変形に対する出力信号が大きくとれるので、圧電センサ4の感度が向上する。圧電センサ4の感度が向上すると、センサユニット500内に収めた検出手段5においても、例えば、信号処理の増幅率を低減できるので電気的なノイズの影響を低減することができたり、オペアンプ等の増幅器の実装個数を削減できてユニットの小型化も可能となる。
【0044】
また、圧電センサ4、弾性体8、検出手段5は一体として成型されセンサユニット500を形成しており、センサユニット500としてドア1に取り付け可能なので、ドアハンドル装置としての組み立てが効率的にできる。
【0045】
(実施の形態2)
本発明の第2の実施の形態を図8及び図9を参照して説明する。
【0046】
図8(a)は本発明の第2の実施の形態におけるハンドルブラケット2を車内側から見た外観図、図8(b)は図8(a)をS方向から見た概略図、図9(a)は同実施の形態2におけるハンドルブラケット2のドアノブ3操作時のドアノブ3、圧電センサ4、弾性体8、アーム部9の変位の様子示す概略図、図9(b)は図9(a)をS方向から見た概略図である。本実施の形態が第1の実施の形態と相違する点は、図8及び図9に示すように、圧電センサ4の屈曲部4aが圧電センサ4を少なくとも1回以上旋回(図8及び図9では、2回半旋回)させて構成した点にある。ここで、圧電センサ4は屈曲部4aで旋回後、束ねて弾性体8と支持部8cで支持されるとともに、検出手段5から延出したガイド
部5dと支持部5eで支持される。この支持部8cと、5eでは結束バンドなどを用いて、それぞれ弾性体8、ガイド5dと、旋回させた圧電センサ4の積層状態を保持して固定する。固定はこの方法に限るわけではなくフック状の固定具に引っ掛けるような構成などでもよく、遊嵌状態で固定されるとよいが、接着剤で支持部と圧電センサを固定してしまうようなものでないのが好ましい。これは接着剤などで、圧電センサ4自体の形状を固定してしまう構成であれば、圧電体の変形が妨げられることになり、圧電センサの変形が抑制され出力が小さくなるので好ましくない。
【0047】
支持部8cと支持部5eの圧電センサとの接触面は、屈曲部4aの一部に接していればよいが、支持部8cと対向する積層された圧電センサ4の屈曲部4aよりも広い面積となるほうが確実に屈曲部4aに同時に変形を生じさせることができるので好ましい。
【0048】
また、旋回回数を増すと屈曲部4aを備えた変形部分全体の剛性が増し、変形しづらくなるので、このことを避けるために圧電センサ4の外側電極4dとして、編組線を用いている。この際、編組線を構成する素線として、例えば錫メッキ銅線の直径が50μm以下の極細線を用い、圧電体4c周囲への編み込みを4〜10mmピッチとすると、第1の実施の形態で用いた帯状電極を巻き付ける構成よりも圧電センサ4の柔軟性が増して可撓性が向上するので、上記のように圧電センサ4を屈曲部4aで旋回させる構成にしても屈曲部4aの剛性の増加を抑えて容易に変形できる構成を実現できる。
【0049】
また、上記のような編組線を用いれば、外側電極4dを形成する加工速度も帯状電極を巻き付ける構成と同等以上の速度を実現でき、生産性を向上できる。また、上記編組線により帯状電極を巻き付ける構成と同等の強電界ノイズへの耐性を確保できる。
【0050】
また、圧電センサ4は、外側電極4dとして帯状電極を巻き付ける構成の場合、帯状電極は部分的に重なって巻き付けているため、圧電センサ4が屈曲して配設されると、屈曲している部位では被覆層4の中で帯状電極が部分的に緩みを生じている。従って、圧電センサ4の屈曲部位が変形する場合、帯状電極が部分的に緩んでいるので、帯状電極と圧電体4cとが擦れて摩擦電気を発生し、ノイズとなって誤検出の原因となることがある。一方、上述したような極細線からなる編組線を外側電極4dに使用すると、圧電体4cと編組線との密着が良好であるため、屈曲部位でも編組線が部分的に緩みを生じることはなく、屈曲部位が変形してもノイズとなる摩擦電気の発生が抑制され、誤検出を防止できる。
【0051】
上記構成により、ドア開動作のため、図8の状態から図9のようにドアノブ3を車外側に引くか、または、軽くドアノブ3の内側に手を触れると、ドアノブ3が車外側に変位するとともに、ドアノブ3と連動してアーム部9の上端9aが下がり、上端9aに所定の押圧で付勢された弾性体8も固定部を中心して先端部側が固定軸9bを中心にして回転しながら最大変位を示して下方へ変位する。そのため、圧電センサ4も変形し、特に、図9(b)に示す屈曲部4aの両サイド部4b、4cの曲率半径が大きくなる方向に変形する。そして、圧電効果により圧電センサ4の変形の加速度に応じて電圧信号が発生する。
【0052】
上記作用により、第1の実施の形態のように圧電センサ4を単にUターンさせた屈曲部よりも、圧電センサ4を少なくとも1回以上旋回させて構成した屈曲部の方が、同じ変位を受けた場合に屈曲箇所が多くなり、圧電効果による電荷発生量が屈曲箇所分だけ増加して出力信号がより大きくとれるので、圧電センサ4の感度がさらに向上し、ドアノブ操作やドアノブへの接触の検出時間をさらに短縮することができる。
【0053】
尚、ドアノブ3を車外側から押してもアーム部9と弾性体8を介して圧電センサ4が変形する。特に、両サイド部4b、4cの曲率半径が図8の状態から小さくなる方向に変形するので、上記と同様に、圧電効果により圧電センサ4から大きな電圧信号が出力され、
ドアノブ3を車外側から押す場合も、圧電センサ4の感度がさらに向上し、ドアノブ操作やドアノブへの接触の検出時間をさらに短縮することができる。
【0054】
また、本実施の形態では、図8及び図9に示したように、屈曲部4aで圧電センサ4を旋回させる際に、圧電センサ4の巻き付け形状が同形状となるよう順次積層した構成だったが、例えば、圧電センサ4を蚊取り線香のように渦巻状に旋回させて屈曲部4aを形成したり、手毬を作る時のようにさまざまな方向から圧電センサ4を球面状に旋回させて屈曲部4aを形成してもよく、圧電センサ4の屈曲部4aが変形を受けたときに屈曲箇所が多くなる構成であれば他のさまざまな旋回構成を使ってもよい。
【0055】
また、本発明の他の実施の形態として、図10に示したように、ドアノブ3と連動して作動する2つのアーム部9それぞれに対応して弾性体8を設け、圧電センサ4を2つの弾性体8にそれぞれ支持・固定する構成としてもよく、ドアノブの変位を複数箇所で検出するので、検出の冗長性が高まり、検出の信頼性が向上する。
【0056】
また、上記実施の形態のドアハンドル装置をサイドドアやテールゲート等のドアでのスマートエントリーシステムに適用した自動車や、玄関ドアなどのドアでのスマートエントリーシステムに適用した建物を提供できる。
【0057】
また、上記実施の形態のドアハンドル装置の出力信号に基づき、他の機器のさまざまな制御を行う構成としてもよい。例えば、上記実施の形態のドアハンドル装置を自動車のバワースライドドアやパワーハッチバックドア、建物の自動ドア等のドアに配設し、ドアノブの操作を検出してドアの自動開閉を制御する構成としてもよく利便性が向上する。この際、上記実施の形態の作用の説明で述べたように、ドアノブ3を車外側から引いた場合と押した場合では圧電センサ4の出力信号の極性が逆になることを利用して、例えば、ドアノブ3を車外側から引くとドアを開動作し、ドアノブ3を車外側から押すとドアを閉動作するといったように、圧電センサ4の出力信号の極性に基づきドアの開閉制御を行う構成としてもよい。
【0058】
また、圧電センサ4の出力信号の大きさに応じてドアの開閉速度を制御する構成としてもよい。例えば、圧電センサ4の出力信号が大きいほどドアの開閉速度を早くする構成により、ドアを急いで開閉したい場合は、ドアノブ3を強く操作して圧電センサ4からの出力信号を増大させればよく、利便性が向上する。
【0059】
その他、ドアハンドル装置の出力信号に基づき、パワーウィンドウの開閉や、照明のオン・オフ、調光、AV機器のオン・オフを行う等、さまざまな機器の制御に応用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0060】
以上のように、本発明にかかるドアハンドル装置は、圧電センサが可撓性を有してドアノブに付設可能となり、ドアノブの微小変位を高感度に検出可能となる。従って、ドアノブに単に触れただけでも十分な信号出力が得られ、ドアノブに対するタッチが検出可能となるので、例えば、ドア以外での多分野にわたる高感度なスイッチとしても適用できるので、物の出し入れ、または人体の出入りするドアのハンドル部材に適用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の第1の実施の形態におけるドアハンドル装置を備えた自動車ドアの外観図
【図2】本発明の実施の形態1におけるハンドルブラケット2を車外側から見た外観図
【図3】本発明の実施の形態1におけるハンドルブラケット2を車内側から見た外観図
【図4】本発明の実施の形態1における圧電センサ4の断面図
【図5】ドアノブ3操作時のドアノブ3、圧電センサ4、弾性体8、アーム部9の変位の様子示す概略図
【図6】図5をS方向から見た概略図
【図7】本発明の実施の形態1における検出手段で増幅・濾波した信号V、判定部の判定出力Jを示す特性図
【図8】(a)本発明の実施の形態2におけるハンドルブラケット2を車内側から見た外観図(b)図8(a)をS方向から見た概略図
【図9】(a)本発明の実施の形態2におけるハンドルブラケット2のドアノブ3操作時のドアノブ3、圧電センサ4、弾性体8、アーム部9の変位の様子示す概略図(b)図9(a)をS方向から見た概略図
【図10】本発明の他の実施の形態におけるハンドルブラケット2の外観図
【符号の説明】
【0062】
1 ドア
3 ドアノブ
4 圧電センサ
4a 屈曲部
5 検出手段
8 弾性体
8a 固定部
8b 支持部
9 アーム部
9a 上端
9b 固定軸
500 センサユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワースライドドアやパワーハッチバックドアといった自動開閉可能なドア装置において、可撓性の圧電センサと、前記圧電センサの一部を支持する弾性体と、前記圧電センサの出力信号を検出する検出手段とを備えたドアハンドル装置を有し、前記弾性体は、その一端を前記検出手段に固定され、かつ固定された部分と離れた位置で前記圧電センサを支持し、前記検出手段は、前記弾性体が変形したときの前記圧電センサの信号を検出し、前記ドアノブを車外側から引くか、または、前記ドアノブを車外側から押すことにより生じる前記ドアノブの変位に伴い前記弾性体が変形したときの前記圧電センサの信号に基づいて、前記ドアノブへの人の接触、または前記ドアノブの操作を検出してドアの開閉を制御することを特徴としたドア装置。
【請求項2】
ドアノブを車外側から引いた場合と押した場合の圧電センサの出力信号の極性の違いに基づき、前記ドアノブを車外側から引くとドアを開動作し、前記ドアノブを車外側から押すとドアを閉動作することを特徴とした請求項1または2記載のドア装置。
【請求項3】
圧電センサの出力信号の大きさに応じてドアの開閉速度を制御することを特徴とした請求項1または2記載のドア装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載のドア装置を備えたスマートエントリーシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−77797(P2007−77797A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−288570(P2006−288570)
【出願日】平成18年10月24日(2006.10.24)
【分割の表示】特願2005−319042(P2005−319042)の分割
【原出願日】平成17年11月2日(2005.11.2)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】