説明

ドライブ回路

【課題】連続通弧により半導体スイッチが故障に至るような誤動作を回避するドライブ回路を提供する。
【解決手段】外部から入力された駆動信号に基づいて半導体スイッチ20を駆動させるドライブ回路10bであって、駆動信号に基づいて半導体スイッチ20の駆動制御を行うゲートドライバ16と、ゲートドライバ16による制御の状態にかかわらず、駆動信号の立ち上がりのタイミングに基づいて半導体スイッチ20のスイッチング周期の終了時までの所定期間に強制的に半導体スイッチ20をオフさせる強制オフ回路18とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置や電力系の駆動回路等に使用される半導体スイッチのドライブ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)等の半導体スイッチは、電力変換装置や電力系の駆動回路等における主スイッチング素子として利用されている。特にIGBTは、大電流制御に適しており、産業用等に広く使用されている。ドライブ回路は、この種の半導体スイッチの制御端子に接続され、当該制御端子に電圧を印加してオン/オフ制御を行い、半導体スイッチを駆動させる。
【0003】
図5は、従来のドライブ回路10aの構成を示すブロック図である。ドライブ回路10aは、図5に示すように、絶縁回路12、プリドライバ14、及びゲートドライバ16により構成され、半導体スイッチ20を駆動させる。
【0004】
絶縁回路12は、例えばフォトカプラであり、外部の低電圧系の回路と高電圧系のドライブ回路10aとの間を絶縁状態とするとともに信号の伝送を行う。これにより、絶縁回路12は、高い安全性を確保するとともにノイズ等の影響を抑えることができる。具体的には、絶縁回路12は、外部のCPU等により入力されたパルス信号である駆動信号に応じて所定電圧の信号をプリドライバ14に対して出力する。
【0005】
プリドライバ14は、絶縁回路12により出力された信号を適切な振幅に変換し、ゲートドライバ16を制御するための信号を出力する。また、ゲートドライバ16は、プリドライバ14により出力された信号に基づいて半導体スイッチ20の制御端子(ゲート)に電圧を印加し、半導体スイッチ20をオン/オフ制御して駆動させる。
【0006】
図6は、従来のドライブ回路10aにより半導体スイッチ20を駆動させた場合の各部の波形図である。なお、半導体スイッチ20は、IGBTであるとする。所定のデューティ比を有するパルス状の駆動信号は、スイッチング周期に基づいて外部からドライブ回路10a内の絶縁回路12に入力される。図6に示すように、駆動信号は、プリドライバ14及びゲートドライバ16を介して半導体スイッチ20のゲートに印加されるまでの間に、そのタイミング及びパルス幅においてわずかに遅れを生ずる。
【0007】
最初に、時刻tにおいて立ち上がりを有する駆動信号は、半導体スイッチ20をターンオンさせる。時刻tから時刻tまでの間に半導体スイッチ20のゲートに印加されたゲート電圧は、寄生容量(入力容量)を充電した後に、半導体スイッチ20をオンさせる。しかしながら、時刻tからtまでの間において、半導体スイッチ20の寄生容量(帰還容量)に蓄積された電荷が放電されドレイン電圧が下降するとともにドレイン電流が上昇し、ゲート電圧はしきい値近傍でクランプする。
【0008】
この間に、半導体スイッチ20は、ドレイン電圧とドレイン電流を乗じた値の電力損失を発生させる。この現象は、時刻tからtまでの間においても同様である。この時刻tからtまで(あるいは時刻tからtまで)の間の時間遅れをゲートONディレイと呼ぶこととする。なお、駆動信号の立ち上がり時刻から考えると、半導体スイッチ20がオンするまでに時刻tからtまでの間のディレイ(遅れ)があると言える。
【0009】
一方、駆動信号が立ち下がることにより半導体スイッチ20がターンオフされる。ターンオフ時において、ゲートドライバ16は、半導体スイッチ20のゲート電圧を低下させ、入力容量に蓄積された電荷を放電させて半導体スイッチ20をオフさせようとするが、これによりコレクタ(ドレイン)電圧を上昇させることになるため帰還容量を充電する必要があり、ゲート電圧がクランプする。この時刻tからtまで(あるいは時刻tからt10まで)の間の時間遅れをゲートOFFディレイと呼ぶこととする。
【0010】
その後、時刻tからtまで(あるいは時刻t10からt11まで)の間において、ドレイン電圧が上昇するとともにドレイン電流が下降し、半導体スイッチ20は、ドレイン電圧とドレイン電流を乗じた値の電力損失を発生させる。
【0011】
特許文献1には、駆動対象の電圧駆動型半導体スイッチング素子のターンオン時に生ずるノイズを抑制しながら、ターンオンの遅れや損失を低減し得るとともに、負荷短絡状態でのターンオン時の保護が容易なドライブ回路が記載されている。このドライブ回路は、駆動対象の半導体スイッチング素子のターンオン時にその制御端子を充電するために用いるMOSFETのゲート・ドレイン間にコンデンサを挿入するようにしたので、主パワー素子のターンオン時、制御端子充電用のMOSFETのドレイン電圧が変化する場合に発生するミラー効果が大きくなり、主パワー素子の制御端子の電圧上昇(下降)速度が大きい領域で、制御端子充電用MOSFETのオン抵抗の低下速度が遅く(速く)なり、主パワー素子の制御端子の電圧変化速度、すなわち主パワー素子の電流のdi/dt及びコレクタ・エミッタ間電圧の下降初期のdV/dtを小さく、且つ電流のピークを抑えてノイズを抑制することができる。また、このドライブ回路は、オン信号の入力時点から主パワー素子に電流が流れ始めるまでの期間、主パワー素子の制御端子を急速に充電する手段を別に設けたので、ターンオンが遅れることを防ぐことができる。
【0012】
また、特許文献2には、半導体スイッチ用の駆動電源を不要とし、信頼性が高く、応答速度が速く、スイッチング特性に合わせた適切な駆動制御が可能といった半導体スイッチ回路が記載されている。この半導体スイッチ回路は、電圧昇圧手段としてのFETにおける周波数の変更やオンオフデューティ比を変更することにより、ゲート電圧の立ち上がり速度を変更することができ、スイッチング速度変更可能な構成が実現している。すなわち、この半導体スイッチ回路は、電圧昇圧回路における動作を制御することにより、ゲートに対する電荷の充電を高速化し、スイッチング速度の制御を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2001−94406号公報
【特許文献2】特開2006−50776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
半導体スイッチ20は、駆動信号のパルスによるPWM制御で駆動するので、大きな負荷電流を必要とする場合には、駆動信号のパルス幅を長くし、半導体スイッチ20のデューティ比に占めるオン時間の割合を大きくする必要がある。しかしながら、ノイズ等の影響でドライブ回路10aが受けた駆動信号に誤りがある場合やドライブ回路10aを構成するプリドライバ14とゲートドライバ16における信号の遅れが大きい場合には、半導体スイッチ29は、駆動信号に応じた動作を行うことが困難となり、最悪の場合には連続通弧となって壊れるモードに陥る場合も考えられる。
【0015】
図7は、従来のドライブ回路10aによりオン時間を長くして半導体スイッチ20を駆動させた場合の各部の波形図である。この場合において、駆動信号は、プリドライバ14及びゲートドライバ16を介して半導体スイッチ20のゲートに印加されるまでの間に、そのタイミング及びパルス幅において図6の場合と同様に遅れを生ずる。図7に示すように駆動信号が立ち下がるターンオフ時において、ゲートドライバ入力電圧は、時刻tにおいて立ち下がり始める。しかしながら、半導体スイッチゲート電圧は、ゲートOFFディレイにより時刻tまで立ち下がらない。
【0016】
一方、駆動信号電圧は、スイッチング周期に基づいて時刻t以前の時刻tにおいて再び立ち上がる。したがって、ターンオフ時にゲート電圧が完全に下がらないうちに半導体スイッチ20のゲートに対して再び電圧がかけられることとなり、時刻tからtまでのドレイン電圧及びドレイン電流は変動する。その結果、その間における電力損失は、図7に示すように通常のスイッチング損失に比して大きなものとなってしまう。このような現象は、電力効率の低下を招くばかりでなく、半導体スイッチ20の発熱を促し、半導体スイッチ20自体を破損させる恐れがある。
【0017】
特に、ゲートOFFディレイは、温度の変動等に基づいて延びる場合があるため、このような連続通弧の状態を発生させやすい。さらに、ドライブ回路10aの異常時には半導体スイッチ20ばかりでなくその半導体スイッチ20を使用することにより電力の供給を受ける機材さえも故障する恐れがある。
【0018】
特許文献1あるいは特許文献2に記されているような従来技術のドライブ回路は、半導体スイッチの制御端子に対する充放電速度を上げることにより、制御回路から受け取った駆動信号に対するディレイを最小限に抑え、スイッチング速度を上げるとともに上述した故障モードを防ぐものであるが、ディレイを完全に無くすことは困難であり、デューティ比やスイッチング周期に応じて上述した故障モードは依然として存在する。
【0019】
以上述べたように、従来のドライブ回路は、駆動信号に対する半導体スイッチ動作までの遅れ時間、あるいはドライブ能力の低下等の原因により、半導体スイッチを誤動作させ、あるいは半導体スイッチ自体を故障させる可能性がある。特に半導体スイッチをブリッジ型で使用する大電力の電源装置においては、半導体スイッチの故障は重大事故へとつながる危険性があるため、安全性の確保の点からも当該故障を回避することは非常に重要な事項である。
【0020】
本発明は上述した従来技術の問題点を解決するもので、連続通弧により半導体スイッチが故障に至るような誤動作を回避するドライブ回路を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明に係るドライブ回路は、上記課題を解決するために、第1の発明は、外部から入力された駆動信号に基づいて半導体スイッチを駆動させるドライブ回路であって、前記駆動信号に基づいて前記半導体スイッチの駆動制御を行うゲートドライバと、前記ゲートドライバによる制御の状態にかかわらず、前記駆動信号の立ち上がりのタイミングに基づいて前記半導体スイッチのスイッチング周期の終了時までの所定期間に強制的に前記半導体スイッチをオフさせる強制遮断部とを備えることを特徴とする。
【0022】
第2の発明は、外部から入力された駆動信号に基づいて半導体スイッチを駆動させるドライブ回路であって、前記駆動信号に基づいて前記半導体スイッチの駆動制御を行うゲートドライバと、前記駆動信号に同期することにより前記半導体スイッチのスイッチング周期における終期に前記半導体スイッチをオフさせるための強制オフ信号を生成する内部発振器と、前記ゲートドライバによる制御の状態にかかわらず、前記内部発振器により生成された強制オフ信号に基づいて、所定期間だけ強制的に前記半導体スイッチをオフさせる強制遮断部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、連続通弧により半導体スイッチが故障に至るような誤動作を回避するドライブ回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施例1の形態のドライブ回路の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施例1の形態のドライブ回路により半導体スイッチを駆動させた場合の各部の波形図である。
【図3】本発明の実施例2の形態のドライブ回路の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施例3の形態のドライブ回路の構成を示すブロック図である。
【図5】従来のドライブ回路の構成を示すブロック図である。
【図6】従来のドライブ回路により半導体スイッチを駆動させた場合の各部の波形図である。
【図7】従来のドライブ回路によりオン時間を長くして半導体スイッチを駆動させた場合の各部の波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明のドライブ回路の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0026】
図1は、本発明の実施例1のドライブ回路10bの構成を示すブロック図である。図1を参照して、ドライブ回路10bの構成を説明する。本実施例のドライブ回路10bは、図1に示すように、絶縁回路12、プリドライバ14、ゲートドライバ16、及び強制オフ回路18により構成され、外部から入力された駆動信号に基づいて半導体スイッチ20を駆動させる。図5で説明した従来のドライブ回路10aと異なる点は、強制オフ回路18を新たに備えている点である。
【0027】
絶縁回路12及びプリドライバ14は、図5で説明したものと同一であり、重複した説明を省略する。ただし、プリドライバ14は、絶縁回路12により入力された信号に基づいてゲートドライバ16を制御するために生成した信号をゲートドライバ16のみならず強制オフ回路18に対しても出力する。また、ドライブ回路10bは、絶縁回路12の代わりに駆動信号を受けるための差動回路を備えていてもよい。
【0028】
ゲートドライバ16は、絶縁回路12及びプリドライバ14を介して伝達された駆動信号に基づいて半導体スイッチ20の駆動制御を行う。具体的には、ゲートドライバ16は、プリドライバ14により出力された信号に基づいて半導体スイッチ20の制御端子(ゲート)に電圧を印加し、半導体スイッチ20をオン/オフ制御して駆動させる。
【0029】
強制オフ回路18は、本発明の強制遮断部に対応し、ゲートドライバ16による半導体スイッチ20に対する制御の状態にかかわらず、駆動信号の立ち上がりのタイミングに基づいて、半導体スイッチ20のスイッチング周期の終了時までの所定期間に強制的に半導体スイッチ20をオフさせる。
【0030】
具体的には、強制オフ回路18は、例えば内部にタイマを有しており、駆動信号の立ち上がりを検出してから一定期間経過後に、スイッチング周期の終了時までの所定期間だけ強制的に半導体スイッチ20をオフさせる。ただし、本実施例において、強制オフ回路18は、外部の駆動信号を直接監視することができないため、絶縁回路12及びプリドライバ14を介して間接的に外部の駆動信号を監視し、プリドライバ14により出力された信号の立ち上がりを検出してから一定期間経過後に、スイッチング周期の終了時までの所定期間だけ強制的に半導体スイッチ20をオフさせる。
【0031】
ここで、ドライブ回路10bは、半導体スイッチ20の連続通弧を回避するために、確実にオフ期間を確保する必要がある。したがって、強制オフ回路18による強制オフの「所定期間」は、半導体スイッチ20のゲート電圧が低下して半導体スイッチ20が確実にオフするのに必要とする時間よりも長いものに設定される必要がある。ただし、当該「所定期間」は、あまり長い場合には必然的にデューティ比が小さくなり、大きな負過電流を流すことが困難となってしまうため、半導体スイッチ20をオフするのに要する時間は確保した上で極力短く設定する必要がある。強制オフ回路18は、当該「所定期間」が予め設定されており、「所定時間」が経過したときに次のスイッチング周期が始まるように強制オフの開始時刻を調節する。
【0032】
本実施例におけるドライブ回路10bは、強制オフ回路18を備えることにより、繰り返し動作するタイミングで駆動信号により生成される半導体スイッチ20に対するゲート駆動電圧を所定のパルス幅に制限することができる。すなわち、従来のドライブ回路が駆動信号の遅れを短くして連続通弧等の問題解決を図っていたのに対し、本発明のドライブ回路10bは、ゲートドライバ16に対して優先動作を行う強制オフ回路18を備えることにより、駆動信号以上のパルス幅で半導体スイッチ20が動作しないように制限をかけるという点に特徴がある。
【0033】
なお、強制オフ回路18は、例えば半導体スイッチ20の制御端子を強制的に負の電位に短絡して半導体スイッチ20をオフさせるFET(電界効果トランジスタ)を有することにより実現される。また、強制オフ回路18は、FETの代わりにバイポーラ・トランジスタを備えることもできるが、FETの方が高速動作が可能という利点がある。
【0034】
次に、上述のように構成された本実施の形態の作用を説明する。図2は、本実施例のドライブ回路10bにより半導体スイッチ20を駆動させた場合の各部の波形図である。所定のデューティ比を有するパルス状の駆動信号は、スイッチング周期に基づいて外部のマイコン等からドライブ回路10b内の絶縁回路12に入力される。図2に示すように、駆動信号は、プリドライバ14及びゲートドライバ16を介して半導体スイッチ20のゲートに印加されるまでの間に、そのタイミング及びパルス幅においてわずかに遅れを生ずる。
【0035】
最初に、時刻tにおいて立ち上がりを有する駆動信号は、半導体スイッチ20をターンオンさせる。時刻tからtまでの間に半導体スイッチ20において生ずるゲートONディレイは、図6で説明した現象と同様であり、重複した説明を省略する。
【0036】
強制オフ回路18は、プリドライバ14により出力された信号(ゲートドライバ入力電圧)の立ち上がりを検出するとともに、当該立ち上がりから一定期間経過後の時刻tに半導体スイッチ20に対して強制オフを開始する。図2に示すように、駆動信号は時刻tにおいてオン状態であり、それに伴いプリドライバ入力信号及びゲートドライバ入力電圧もオン(ハイ)である。したがって、ゲートドライバ16は、時刻tにおいて半導体スイッチ20をオンさせるように制御している。ところが、強制オフ回路18は、ゲートドライバ16の制御に優先して半導体スイッチ20をオフさせるため、半導体スイッチゲート電圧は時刻tから下がり始め、時刻tにおいて完全に半導体スイッチ20をオフさせる。
【0037】
強制オフ回路18は、時刻tからスイッチング周期の終了時である時刻tまでの「所定期間」、半導体スイッチ20のオフ制御を継続し、時刻tにおいて半導体スイッチ20に対するオフ制御動作を停止する。時刻tから時刻tまでの「所定期間」は、上述したように半導体スイッチ20が確実にオフするのに必要とする時間等に基づいて予め強制オフ回路18に設定されている。
【0038】
時刻tは、スイッチング周期の終わりの時刻であるとともに、次のスイッチング周期の始まりの時刻でもある。強制オフ回路18は、予めスイッチング周期やプリドライバ14を経た駆動信号の遅れ等の情報を有しており、プリドライバ14により出力された信号(ゲートドライバ入力電圧)の立ち上がりを検出した際に、スイッチング周期の終わりの時刻tを算出するとともに、そこから「所定期間」だけ逆算した時刻tを算出し、時刻tに強制オフ動作を開始する。
【0039】
その際に、時刻tからtまでの間において、ドレイン電圧が上昇するとともにドレイン電流が下降し、半導体スイッチ20は、ドレイン電圧とドレイン電流を乗じた値の電力損失(スイッチング損失)を発生させる。しかしながら、この損失は、図7で説明した従来のドライブ回路10aが半導体スイッチ20を連続通弧させた場合の損失(図7の時刻tからtまでの電力損失)に比して、格段に小さなものであり、連続通弧に起因する半導体スイッチ20の破損等を防止することができる。
【0040】
一方、デューティ比におけるオン期間の割合が短い場合には、駆動信号が立ち下がることにより、強制オフ回路18がオフ動作を開始する前にゲートドライバ16が半導体スイッチ20をターンオフさせる。すなわち、半導体スイッチ20は、ゲートドライバ16と強制オフ回路18とのいずれかがオフ制御を行うことによりターンオフされる。
【0041】
上述のとおり、本発明の実施例1の形態に係るドライブ回路10bによれば、駆動信号に対する半導体スイッチ動作までの遅れ時間やドライブ能力の低下等の原因に起因する連続通弧により半導体スイッチ20が故障に至るような誤動作を回避することができる。すなわち、本発明のドライブ回路10bは、半導体スイッチ20のゲートを短絡して半導体スイッチ20を強制的にオフさせる期間を確保するための強制オフ回路18を備えることにより、図7で説明したような半導体スイッチ20の連続通弧の状態を回避することができ、その結果として発熱による半導体スイッチ20の破損や半導体スイッチ20が適用される電源変換装置等の機材の故障を防止することができる。
【0042】
また、本発明のドライブ回路10bは、半導体スイッチ20の連続通弧の状態を回避することにより、電力損失を抑えることができる。
【0043】
なお、強制オフ回路18は、上述したように駆動信号の立ち上がりのタイミングに基づいて強制オフの開始時刻を決定するが、駆動信号の立ち上がりのタイミングから強制オフの開始時刻までの時間や強制オフの期間は、ユーザが例えば半導体スイッチ20を適用する機材に合わせて任意に強制オフ回路18に設定することができる。
【0044】
また、本発明のドライブ回路10bは、従来技術のように半導体スイッチの制御端子に対する充放電速度を上げることによりディレイを抑えるものではないため、ゲートOFFディレイの長短にかかわらず確実に半導体スイッチ20のオフ期間を確保し、連続通弧を回避することができるという点に特徴がある。
【実施例2】
【0045】
図3は、本発明の実施例2のドライブ回路10cの構成を示すブロック図である。実施例1のドライブ回路10bと異なる点は、絶縁回路13及びオア回路15を新たに備えている点である。その他の構成は実施例1と同様であり、重複した説明を省略する。
【0046】
絶縁回路13は、絶縁回路12と同様に例えばフォトカプラであり、外部の低電圧系の回路と高電圧系のドライブ回路10cとの間を絶縁状態とするとともに信号の伝送を行う。これにより、絶縁回路13は、高い安全性を確保するとともにノイズ等の影響を抑えることができる。具体的には、絶縁回路13は、外部のCPU等により入力された強制オフ信号に応じて所定電圧の信号をオア回路15に対して出力する。
【0047】
絶縁回路12及びプリドライバ14は、実施例1と同様であり、重複した説明を省略する。ただし、プリドライバ14は、絶縁回路12により入力された信号に基づいてゲートドライバ16を制御するために生成した信号をゲートドライバ16のみならずオア回路15に対しても出力する。
【0048】
オア回路15は、プリドライバ14と絶縁回路13とのいずれにより出力された電圧がハイ(信号がオン)である場合に、当該電圧を強制オフ回路18に対して出力する。ただし、強制オフ回路18は、オア回路15により出力された電圧(信号)がプリドライバ14と絶縁回路13とのいずれにより出力されたものであるのか区別することができるものとする。
【0049】
強制オフ回路18は、実施例1と同様に、ゲートドライバ16による半導体スイッチ20に対する制御の状態にかかわらず、駆動信号の立ち上がりのタイミングに基づいて、半導体スイッチ20のスイッチング周期の終了時までの所定期間に強制的に半導体スイッチ20をオフさせる。
【0050】
また、本実施例の強制オフ回路18は、外部からの強制オフ信号を絶縁回路13及びオア回路15を介して受信した場合に、ゲートドライバ16による制御の状態及び駆動信号の立ち上がりのタイミングにかかわらず、所定期間だけ強制的に半導体スイッチ20をオフさせる。すなわち、強制オフ回路18は、オア回路15によりプリドライバ14と絶縁回路13とのいずれかの信号が出力された場合に、当該信号に基づいて所定期間だけ強制的に半導体スイッチ20をオフさせる。
【0051】
具体的には、強制オフ回路18は、駆動信号の立ち上がりを検出した場合には一定期間経過後にスイッチング周期の終了時までの所定期間だけ強制的に半導体スイッチ20をオフさせ、強制オフ信号の立ち上がりを検出した場合には即座に半導体スイッチ20をオフさせる。ここで、強制オフ回路18は、強制オフ信号に基づいて半導体スイッチ20をオフさせた場合には、強制オフ信号が立ち下がるまで(ローレベルになるまで)半導体スイッチ20のオフ制御を継続する。
【0052】
なお、強制オフ信号は、外部のマイコン等により半導体スイッチ20のスイッチング周期における終期に所定期間だけ出力される(ハイになる)ように設定されている。
【0053】
次に、上述のように構成された本実施の形態の作用を説明する。基本的に実施例1と同様であり、各部の波形も図2と同様である。強制オフ回路18は、図2に示すように、プリドライバ14により出力された信号(ゲートドライバ入力電圧)の立ち上がりをオア回路15を介して検出するとともに、当該立ち上がりから一定期間経過後の時刻tに半導体スイッチ20に対して強制オフを開始する。ただし、強制オフ回路18は、外部からの強制オフ信号を絶縁回路13及びオア回路15を介して受信した場合には、ゲートドライバ16による制御の状態及び駆動信号の立ち上がりのタイミングにかかわらず、所定期間だけ強制的に半導体スイッチ20をオフさせる。ここで言う「所定期間」とは、強制オフ信号がオン(ハイレベル)である期間を指すものとする。
【0054】
すなわち、強制オフ回路18は、駆動信号あるいは強制オフ信号に基づいて、ゲートドライバ16の制御に優先して半導体スイッチ20を適切なタイミングでオフさせる。
【0055】
その後、強制オフ回路18は、所定期間、半導体スイッチ20のオフ制御を継続し、図2に示す時刻tにおいて半導体スイッチ20に対するオフ制御動作を停止する。強制オフ回路18が半導体スイッチ20に対するオフ制御を継続する「所定期間」は、駆動信号に基づいてオフ制御した場合には予め強制オフ回路18に設定された時間であり、強制オフ信号に基づいてオフ制御した場合には強制オフ信号がオン(ハイレベル)である期間である。
【0056】
一方、デューティ比におけるオン期間の割合が短い場合には、駆動信号が立ち下がることにより、強制オフ回路18がオフ動作を開始する前にゲートドライバ16が半導体スイッチ20をターンオフさせる。すなわち、半導体スイッチ20は、ゲートドライバ16と強制オフ回路18とのいずれかがオフ制御を行うことによりターンオフされる。
【0057】
その他の作用は実施例1と同様であり、重複した説明を省略する。
【0058】
上述のとおり、本発明の実施例2の形態に係るドライブ回路10cによれば、実施例1の効果に加え、ドライブ能力の低下等により駆動信号波形に誤りがある場合等においても、強制オフ回路18が強制オフ信号に基づいて半導体スイッチ20を強制的にオフするので、連続通弧により半導体スイッチ20あるいは半導体スイッチ20を適用する機材等が故障に至るような誤動作を回避することができる。
【実施例3】
【0059】
図4は、本発明の実施例3のドライブ回路10dの構成を示すブロック図である。実施例1のドライブ回路10bと異なる点は、内部発振器17を新たに備えている点である。その他の構成は実施例1と同様であり、重複した説明を省略する。
【0060】
内部発振器17は、絶縁回路12を介して受信した駆動信号に同期することにより半導体スイッチ20のスイッチング周期における終期に半導体スイッチ20をオフさせるための強制オフ信号を生成する。すなわち、内部発振器17は、駆動信号に同期した自走周波数に基づいて、スイッチング周期の終期においてハイレベルとなる強制オフ信号を生成する。
【0061】
強制オフ回路18は、ゲートドライバ16による半導体スイッチ20に対する制御の状態にかかわらず、内部発振器17により生成された強制オフ信号に基づいて、所定期間だけ強制的に半導体スイッチ20をオフさせる。
次に、上述のように構成された本実施の形態の作用を説明する。基本的に実施例1と同様であり、各部の波形も図2と同様である。内部発振器17は、絶縁回路12を介して受信した駆動信号に同期することにより半導体スイッチ20のスイッチング周期における終期に半導体スイッチ20をオフさせるための強制オフ信号を生成する。強制オフ回路18は、図2に示すように、内部発振器17により生成された強制オフ信号に基づいて時刻tに半導体スイッチ20に対して強制オフを開始し、所定期間オフ制御を継続する。ここで言う「所定期間」とは、強制オフ信号がオン(ハイレベル)である期間を指すものとする。すなわち、強制オフ回路18は、内部発振器17により生成された強制オフ信号に基づいて、ゲートドライバ16の制御に優先して半導体スイッチ20を適切なタイミングでオフさせる。
【0062】
その後、強制オフ回路18は、図2に示す時刻tにおいて半導体スイッチ20に対するオフ制御動作を停止する。
【0063】
一方、デューティ比におけるオン期間の割合が短い場合には、駆動信号が立ち下がることにより、強制オフ回路18がオフ動作を開始する前にゲートドライバ16が半導体スイッチ20をターンオフさせる。すなわち、半導体スイッチ20は、ゲートドライバ16と強制オフ回路18とのいずれかがオフ制御を行うことによりターンオフされる。
【0064】
その他の作用は実施例1と同様であり、重複した説明を省略する。
【0065】
上述のとおり、本発明の実施例3の形態に係るドライブ回路10dによれば、実施例1の効果に加え、強制オフ回路18は、強制オフ回路18自体が駆動信号に基づいて強制オフのタイミングを決める必要が無く、内部発振器17により生成された強制オフ信号のタイミングに基づいて半導体スイッチ20に対するオフ制御を行うことができる。これにより、連続通弧に起因する半導体スイッチ20あるいは半導体スイッチ20を適用する機材等が故障に至るような誤動作を回避することができる。
【0066】
また、本実施例のドライブ回路10dは、自己のドライブ回路10d内部で強制オフ信号を生成するので、実施例2のドライブ回路10cのように外部のマイコン等が強制オフ信号を生成する必要が無く、さらに絶縁回路13を必要としない点において利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明に係るドライブ回路は、電力変換装置や電力系の駆動回路等に使用される半導体スイッチの駆動制御を行うドライブ回路に利用可能である。
【符号の説明】
【0068】
10a,10b,10c,10d ドライブ回路
12 絶縁回路
13 絶縁回路
14 プリドライバ
15 オア回路
16 ゲートドライバ
17 内部発振器
18 強制オフ回路
20 半導体スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から入力された駆動信号に基づいて半導体スイッチを駆動させるドライブ回路であって、
前記駆動信号に基づいて前記半導体スイッチの駆動制御を行うゲートドライバと、
前記ゲートドライバによる制御の状態にかかわらず、前記駆動信号の立ち上がりのタイミングに基づいて前記半導体スイッチのスイッチング周期の終了時までの所定期間に強制的に前記半導体スイッチをオフさせる強制遮断部と、
を備えることを特徴とするドライブ回路。
【請求項2】
前記強制遮断部は、外部からの強制オフ信号を受信した場合に、前記ゲートドライバによる制御の状態及び前記駆動信号の立ち上がりのタイミングにかかわらず、所定期間だけ強制的に前記半導体スイッチをオフさせることを特徴とする請求項1記載のドライブ回路。
【請求項3】
外部から入力された駆動信号に基づいて半導体スイッチを駆動させるドライブ回路であって、
前記駆動信号に基づいて前記半導体スイッチの駆動制御を行うゲートドライバと、
前記駆動信号に同期することにより前記半導体スイッチのスイッチング周期における終期に前記半導体スイッチをオフさせるための強制オフ信号を生成する内部発振器と、
前記ゲートドライバによる制御の状態にかかわらず、前記内部発振器により生成された強制オフ信号に基づいて、所定期間だけ強制的に前記半導体スイッチをオフさせる強制遮断部と、
を備えることを特徴とするドライブ回路。
【請求項4】
前記強制遮断部は、前記半導体スイッチの制御端子を強制的に負の電位に短絡するFETを有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載のドライブ回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−245745(P2010−245745A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−91027(P2009−91027)
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】