説明

ドラムブレーキ

【課題】ブレーキレバーとバッキングプレートの中心部との距離を従来のドラムブレーキに比べて長くすることができ、それによって小型化を容易に実現できるドラムブレーキを提供する。
【解決手段】板部68aに曲成されたストッパー部50aは、シューウェブ38に設けられた挿通穴72を通りブレーキシュー18のシューリム42に沿ってバッキングプレート16側へ伸長されたものであるため、ストッパー部50aは、パーキングブレーキレバー54と当接する当接位置を板部68aのブレーキシュー18のシューリム42側とは反対側の側面からバッキングプレート16側へ伸長された従来のストッパー部に比べブレーキシュー18のシューリム42側に移動させることができるので、パーキングブレーキレバー54とバッキングプレート16の中心部との距離を従来のドラムブレーキに比べ長くすることができ、ドラムブレーキ10の小型化を容易に実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドラムブレーキの設計の自由度を広げる技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ドラムブレーキの一種に、たとえば特許文献1および特許文献2に示すように、(a) シューホールドダウン装置によってバッキングプレートに拡開可能に配設された一対のブレーキシューと、(b) その一対のブレーキシューの一方の一端部において、所定の取付軸まわりに回動可能に配設され且つそのブレーキシュー側へ付勢されたブレーキレバーと、(c) 前記一対のブレーキシューの一端部間を接近させるリターンスプリングの付勢力によってそのブレーキレバーの基端部と一対のブレーキシューの他方の一端部とが当接され、非制動時における一対のブレーキシューの間隔が規定されるストラットとを備えるものがある。
【0003】
上記のようなドラムブレーキにおいて、前記シューホールドダウン装置は、(d) 前記バッキングプレートから立設されて前記ブレーキシューを貫通するシューホールドダウンピンと、(e) そのシューホールドダウンピンが貫通させられる板部と、そのシューホールドダウンピンの先端部とその板部との間に介在させられて前記ブレーキシューを前記バッキングプレート側に押圧するシューホールドダウンスプリングとを有し、(f) 前記シューホールドダウンスプリングにより前記ブレーキシューに押圧される前記板部に前記バッキングプレート外周側へ向かって回動する前記ブレーキレバーを当接させるストッパー部が曲成されている。
【特許文献1】特開平11−280802号公報
【特許文献2】実開昭63−22437号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のようなドラムブレーキのシューホールドダウン装置では、特許文献1の図3および特許文献2の図5に示すように、前記ストッパー部は、前記板部の前記一方のブレーキシューのシューリム側とは反対側の側面から前記バッキングプレート側へ伸長されているため、前記ストッパー部と当接することにより前記ブレーキレバーの位置が前記バッキングプレートの中心部と近くなるので、ドラムブレーキ制動時の前記ブレーキレバーの可動範囲を確保するのが困難となり、ドラムブレーキの小型化すなわち小径化の障害となっていた。
【0005】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであって、その目的とするところは、ブレーキレバーとバッキングプレートの中心部との距離を従来のドラムブレーキに比べて長くすることができ、それによって小型化を容易に実現できるドラムブレーキを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するための請求項1に係る発明の要旨とするところは、(a) シューホールドダウン装置によってバッキングプレートに拡開可能に配設された一対のブレーキシューと、(b) その一対のブレーキシューの一方の一端部において、所定の取付軸まわりに回動可能に配設され且つそのブレーキシュー側へ付勢されたブレーキレバーと、(c) 前記一対のブレーキシューの一端部間を接近させるリターンスプリングの付勢力によってそのブレーキレバーの基端部と一対のブレーキシューの他方の一端部とが当接され、非制動時における一対のブレーキシューの間隔が規定されるストラットとを備えるドラムブレーキであって、前記シューホールドダウン装置は、(d) 前記バッキングプレートから立設されて前記ブレーキシューを貫通するシューホールドダウンピンと、(e) そのシューホールドダウンピンが貫通させられる板部と、そのシューホールドダウンピンの先端部とその板部との間に介在させられて前記ブレーキシューを前記バッキングプレート側に押圧するシューホールドダウンスプリングとを有し、(f) 前記シューホールドダウンスプリングにより前記ブレーキシューに押圧される前記板部に前記バッキングプレート外周側へ向かって回動するそのブレーキレバーを当接させるストッパー部が曲成されており、(g) 前記シューホールドダウンスプリングの前記板部に曲成された前記ストッパー部は、前記一方のブレーキシューのシューウェブに設けられた挿通穴を通りそのブレーキシューのシューリムに沿ってバッキングプレート側へ伸長されたものであることにある。
【0007】
また、請求項2に係る発明の要旨とするところは、請求項1に係る発明において、前記バッキングプレートの外周部には、前記ストッパー部に係合して前記バッキングプレートから離れる方向に移動させる工具を挿通可能にする挿通穴が備えられているものである。
【0008】
また、請求項3に係る発明の要旨とするところは、請求項2に係る発明において、(a) 前記ストッパー部の先端部には、前記ストッパー部から前記バッキングプレートに平行になるように曲げられた係合部が備えられ、(b) その係合部には、その厚み方向に貫通する工具係合用貫通穴が備えられているものである。
【0009】
また、請求項4に係る発明の要旨とするところは、請求項1乃至3のいずれか1に係る発明において、(a) 前記シューホールドダウンスプリングは、一対の板部の一端が連結されたU字状の板ばねであって、(b) 前記ストッパー部は、前記板部の先端に備えられているものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明のドラムブレーキによれば、前記シューホールドダウン装置は、(d) 前記バッキングプレートから立設されて前記ブレーキシューを貫通するシューホールドダウンピンと、(e) そのシューホールドダウンピンが貫通させられる板部と、そのシューホールドダウンピンの先端部とその板部との間に介在させられて前記ブレーキシューを前記バッキングプレート側に押圧するシューホールドダウンスプリングとを有し、(f) 前記シューホールドダウンスプリングにより前記ブレーキシューに押圧される前記板部に前記バッキングプレート外周側へ向かって回動する前記ブレーキレバーを当接させるストッパー部が曲成されており、(g) 前記シューホールドダウンスプリングの前記板部に曲成された前記ストッパー部は、前記一方のブレーキシューのシューウェブに設けられた挿通穴を通りそのブレーキシューのシューリムに沿ってバッキングプレート側へ伸長されたものであるため、前記ストッパー部は、前記ブレーキレバーと当接する当接位置を前記板部の前記一方のブレーキシューのシューリム側とは反対側の側面からバッキングプレート側へ伸長された従来のストッパー部に比べ前記一方のブレーキシューのシューリム側に移動させることができるので、前記ブレーキレバーと前記バッキングプレートの中心部との距離を従来のドラムブレーキに比べ長くすることができ、ドラムブレーキの小型化を容易に実現することができる。
【0011】
また、請求項2に係る発明のドラムブレーキによれば、前記バッキングプレートの外周部には、前記ストッパー部に係合して前記バッキングプレートから離れる方向に移動させる工具を挿通可能にする挿通穴が備えられているため、その挿通穴を前記ブレーキシューを点検する穴として使用することができる。
【0012】
また、請求項3に係る発明のドラムブレーキによれば、(a) 前記ストッパー部の先端部には、前記ストッパー部から前記バッキングプレートに平行になるように曲げられた係合部が備えられ、(b) その係合部には、その厚み方向に貫通する工具係合用貫通穴が備えられているため、前記工具の先端部が前記工具係合用貫通穴の内周面に係合させられることによって、前記ストッパー部を前記バッキングプレートから離れる方向に容易に移動することができる。
【0013】
また、請求項4に係る発明のドラムブレーキによれば、(a) 前記シューホールドダウンスプリングは、一対の板部の一端が連結されたU字状の板ばねであって、(b) 前記ストッパー部は、前記板部の先端に備えられているものであるため、前記U字状の板ばねにおいて、弾性係数の比較的小さい先端に前記ストッパー部を配設することができるので、前記ストッパー部を前記バッキングプレートから離れる方向に容易に移動することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において、図は簡略化されており、それら各部の寸法等は必ずしも正確に描かれていない。
【実施例】
【0015】
図1は、本発明の一実施例のパーキングロック機能を備えたシュー間隙自動調節機構付ドラムブレーキであるリーディング・トレーリング型の車両用ドラムブレーキ(以下、ドラムブレーキという)10であって、ブレーキドラム12を取り外して示す正面図である。また、ブレーキドラム12は、図1の1点鎖線で示す2つの同心円で表されており、その2つの円のうちの中心側の円はブレーキドラム12の内周面14を示している。
【0016】
ドラムブレーキ10には、略円板形状を成し、たとえば図示しない車軸管、アクスルハウジング、サスペンション装置などの車体側部材すなわち非回転部材に一体的に固設されたバッキングプレート16が備えられている。
【0017】
また、ドラムブレーキ10には、バッキングプレート16の外周部に凸側が外側になる姿勢で互いに接近離間可能に略対称的に配設された円弧形状の一対のブレーキシュー18,20と、その一対のブレーキシュー18,20の一端部すなわち図1の上端部の間においてバッキングプレート16に位置固定に設けられたホイールシリンダ22と、一対のブレーキシュー18,20の一端部を互いに接近する方向に常時付勢してホイールシリンダ22に当接させるために、その一端部間に張設されたコイル状のリターンスプリング24と、一対のブレーキシュー18,20の一端部間に掛け渡された、非制動時における一対のブレーキシュー18,20の間隔が規定され且つ非制動時における一対のブレーキシュー18,20とブレーキドラム12との間すなわちシュー間隙を自動的に調節するシュー間隙自動調節機構(ストラット)26と、一対のブレーキシュー18,20の他端部すなわち図1の下端部の間においてバッキングプレート16に位置固定に設けられたアンカ28と、一対のブレーキシュー18,20の下端部間に張設されてそれら下端部をアンカ28に常時当接させるスプリング30とが備えられている。
【0018】
また、ドラムブレーキ10には、図3の一点鎖線で示すように、固定ボルト32によってブレーキドラム12と一体的に固定された車軸34と、その車軸34を相対回転可能に嵌合するバッキングプレート16の中心部に固定されたベアリングケース36とが備えられている。
【0019】
一対のブレーキシュー18,20は、何れも、バッキングプレート16の板面と略平行な平板状を成し且つ図1に示す正面図において全体が円弧形状に湾曲したシューウェブ38,40と、それらの円弧形状を成す外周側端縁に沿って断面が図2に示すように略T字状を成すように一体的に固設された帯板状のシューリム42,44と、それらシューリム42,44の外周面に接着剤などで一体的に固着された摩擦材から成るライニング46,48とによってそれぞれ構成されている。また、一対のブレーキシュー18,20は、シューウェブ38およびシューウェブ40にそれぞれ配設されたシューホールドダウン装置50,52によってバッキングプレート16側へ押圧されることによりそのバッキングプレート16に対して面方向の相対移動可能に保持されている。また、ブレーキシュー18の一端部には、平板状のパーキングブレーキレバー(ブレーキレバー)54の基端部54aが略円柱形状の取付軸56によりその取付軸56回りに相対回動可能に連結されている。バッキングプレート16、シューウェブ38,40、シューリム42,44は、いずれも鋼板から打ち抜かれ且つ所定の曲げ、絞り成形が施されたプレス部品である。
【0020】
図2に示すように、シュー間隙自動調節機構(ストラット)26は、一対のブレーキシュー18,20の一端部間に配設された平板状のストラット部材58と、そのストラット部材58の一端部58aに備えられたアジャストレバー60とによって構成されている。
【0021】
ストラット部材58の他端部58bには、図2に示すように、切欠62が備えられており、その切欠60の内周面にブレーキシュー18のシューウェブ38およびパーキングブレーキレバー54の基端部54aであって取付軸56に近い部分が係合されている。図2には示されていないがシューホールドダウン装置50には、シューリム42側のパーキングブレーキレバー54の側面54bと当接するストッパー部50aが備えられており、そのストッパー部50aによって、ブレーキシュー20側のパーキングブレーキレバー54の側面54cはブレーキシュー側20のシューウェブ38の側面38aよりもブレーキシュー20側に配置させられている。そのため、リターンスプリング24の付勢力によってシュー間隙自動調節機構26がパーキングブレーキレバー54の側面54cとブレーキシュー20の一端部とに当接され、非制動時における一対のブレーキシュー18,20の間隔が規定される。
【0022】
ストラット部材58の中間部58cには、図2に示すように、バッキングプレート16から離れる方向に突設された引掛突起部58dが備えられており、ストラット部材58は、その引掛突起部58dとブレーキシュー18との間に張設されたストラットリターンスプリング64によって、ブレーキシュー18側に常時付勢されている。上記したように、パーキングブレーキレバー54はストッパー部50aに当接することによりパーキングブレーキレバー54の側面54cがシューウェブ38の側面38aよりもブレーキシュー20側に配置されるため、ストラットリターンスプリング64およびリターンスプリング24の付勢力によって、パーキングブレーキレバー54はブレーキシュー18のシューリム42側に常時付勢されている。
【0023】
ストラット部材58の一端部58aには、図2に示すように、アジャストレバー60の中央部からアジャストレバー60の厚み方向に突設された略円柱形状の軸部60aをその軸部60a回りに相対回転可能且つシュー間隙自動調節機構26の長手方向に所定範囲移動可能なガイド穴58eが備えられている。
【0024】
アジャストレバー60の一端部60bには、図2に示すように、ブレーキシュー20のシューウェブ40に設けられた嵌合穴40aの内周面と嵌合するようにバッキングプレート16から離れる方向に伸長されたレバー部60cが備えられており、一対のブレーキシュー18,20の拡開時、アジャストレバー60はそのレバー部60cを介して一対のブレーキシュー18,20の拡開量すなわち一対のブレーキシュー18,20の一端部間の離間量に応じてその軸部60a回りに回動するものである。
【0025】
アジャストレバー60の他端部60dには、図2に示すように、ストラット部材58の中間部58cに配設された三角歯状の掛止歯58fと噛み合う三角歯状の係合歯60eが配設されており、その係合歯60eは、ストラット部材58の中間部58cに備えられた掛止穴58gとアジャストレバー60の軸部60aとの間に張設され、係合歯60eを掛止歯58fに接近する方向に常時付勢するコイル状のスプリング66によって、掛止歯58f側へ移動して掛止歯58fと噛み合うと、アジャストレバー60はその軸部60a回りの相対回転が不能となる。
【0026】
バーキングブレーキレバー54の先端部には、よく知られた図示されていないパーキングブレーキケーブルが連結されており、図示されていないパーキングレバーの操作によりパーキングブレーキケーブルを介してパーキングブレーキレバー54の先端部がバッキングプレート16の中心側へ回動させられると、ブレーキシュー20がシュー間隙自動調節機構26に押されてバッキングプレート16の外周側へ移動させられるとともにブレーキシュー18が取付軸56に押されてバッキングプレート18の外周側へ移動させられるので、一対のブレーキシュー18,20が拡開されて制動力が発生させられるようになっている。このパーキングブレーキ作動時において、アジャストレバー60の係合歯60eは、ストラット部材58の掛止歯58fと噛み合っており、パーキングブレーキレバー54がストラット部材58をブレーキシュー20側に押す力は、アジャストレバー60を介してブレーキシュー20に伝達される。
【0027】
ホイールシリンダ22は、図示されていないブレーキペダル操作に伴ってそのホイールシリンダ22のピストンが突き出され、一対のブレーキシュー18,20の一端部が互いに離隔する方向に拡開されると、ストラット部材58がシューリターンスプリング64の付勢力によって、ブレーキシュー18と共にバッキングプレート16外周側へ移動するとともに、アジャストレバー60がレバー部60cによってブレーキシュー20と共にスプリング66の付勢力に抗してストラット部材58の掛止歯58fから離れる方向すなわちバッキングプレート16外周側へ移動し、一対のブレーキシュー18,20が拡開する。尚、シューリターンスプリング64の付勢力は、スプリング66の付勢力よりも大きいものである。
【0028】
そのため、ホイールシリンダー22による一対のブレーキシュー18,20の拡開によって、掛止歯58fから係合歯60eが外れアジャストレバー60は一対のブレーキシュー18,20の拡開量に応じてその軸部60a回りに回動する。このブレーキの作動毎において、アジャストレバー60の係合歯60eの回動量(移動量)が掛止歯58fの1歯分以内であればブレーキ解除時にスプリング66の付勢力によって係合歯60eと掛止歯58fとが再度噛み合ってもアジャストレバー60の回動位置は変化しないが、1歯分以上となるとその掛止歯58fを乗り越えてアジャストレバー60が1歯分だけ回動させられる。これにより、ブレーキシュー18および20の摩耗によってその拡開量が所定以上となると、アジャストレバー60が1歯分だけ回動させられて、レバー部60cの先端部がバッキングプレート16の外周側へ移動するため、ブレーキシュー18および20とブレーキドラム12の内周面14との間隙が自動的に調節される。
【0029】
図1に示すように、シューホールドダウン装置50および52は、相互に同様に構成されているので、以下においてはその一方のシューホールドダウン装置50を用いてシューホールドダウン装置50,52を説明する。
【0030】
図3乃至図5に示すように、シューホールドダウン装置50は、帯板状のばね材をU字状に曲成することにより相対向する平板状の一対の板部68a,68bとその一対の板部68a,68bの一端を連結する湾曲した連結部68cとを有するシューホールドダウンスプリング68と、バッキングプレート16から立設されてシューウェブ38に設けられた貫通穴38bおよび一対の板部68a,68bに設けられた貫通穴68d,68eを挿通する略円柱形状の軸部70aとその貫通穴68eの周辺部と係合する先端部70bとを有するシューホールドダウンピン70とを備え、シューホールドダウンスプリング68の弾性復帰力を用いて板部68aを介してシューウェブ38をバッキングプレート16側に押圧することによりブレーキシュー18を拡開可能に保持するものである。
【0031】
シューホールドダウンスプリング68には、図5および図6に示すように、ブレーキシュー18のシューウェブ38に押圧される板部68aの先端からシューウェブ38とシューリム42とによって形成された挿通穴72を通りシューリム42の内周面に沿ってバッキングプレート16側へ伸長された前記ストッパー部50aが備えられており、そのストッパー部50aによってシューホールドダウンスプリング68が軸部70b回りに回動するとストッパー部50aが挿通穴72の内周面に当接されるため、シューホールドダウンスプリング68の軸部70b回りの回動が抑制される。
【0032】
ストッパー部50aには、その先端部においてストッパー部50aからバッキングプレート16に略平行になるように曲げられた係合部50bと、その中間部においてパーキングブレーキレバー54の側面54bと当接するためにパーキングブレーキレバー54側に伸長された当接部50cとが備えられており、ストッパー部50aの当接部50cは、図6に示すように、パーキングブレーキレバー54の側面54bと当接する当接位置が従来のストッパー部のような板部68aのブレーキシュー18のシューリム42側とは反対側の側面からバッキングプレート16側へ伸長されたものに比べシューリム42側に移動させることができるので、パーキングブレーキレバー54とベアリングケース36すなわちバッキングプレート18の中心部との距離を従来のドラムブレーキに比べ長くすることができ、ドラムブレーキ10の小型化を容易に実現することができる。また、パーキングブレーキレバー54とバッキングプレート18の中心部との距離を従来のドラムブレーキに比べ長くすることができため、パーキングブレーキレバー54の設計の自由度が広がり十分な強度を持ったパーキングブレーキレバー54をドラムブレーキ10内に配設させることができる。
【0033】
図6および図7に示すように、バッキングプレート16の外周部には、ストッパー部50aの係合部50bに係合してストッパー部50aがバッキングプレート16から離れる方向に移動させられる棒状の工具74例えばドライバー等を挿通可能にする挿通穴16aが備えられており、従来のドラムブレーキに設けられた工具74を挿通可能にする挿通穴は、前記従来のストッパー部の位置によりバッキングプレート16の中心部に近い位置に配設されるため、ブレーキシューの点検のためにさらにバッキングプレート16に点検穴を備えてなければならなかったが、本発明のドラムブレーキ10の挿通穴16aは、ストッパー部50aすなわち係合部50dの位置がブレーキシュー18に近いため、ブレーキシュー18を点検する穴として使用することができる。また、挿通穴16a内には、ドラムブレーキ10内に水等の侵入を防止するゴム製のシール部材76が嵌合されており、工具74使用時或いはブレーキシュー18点検時においてシール部材76は取り外されるものである。
【0034】
ストッパー部50aは、図4および図5に示すように、板部68aの先端から伸長されたものであり、シューホールドダウンスプリング68であるU字状の板ばねにおいて、弾性係数の比較的小さい先端にストッパー部50aが配設されているため、ストッパー部50aをバッキングプレート16から離れる方向に容易に移動することができると共に移動後のシューホールドダウンスプリング68の塑性変形を抑制することができる。
【0035】
ストッパー部50aの係合部50bには、図6または図7に示すように、その係合部50bの厚み方向に貫通する工具係合用貫通穴50dが備えられており、工具74の先端部を工具係合用貫通穴50dの内周面に係合させることによって、係合部50bを介してストッパー部50aをバッキングプレート18から離れる方向に移動する過程において、工具74が係合部50bから外れにくくなり、ストッパー部50aをバッキングプレート16から離れる方向に容易に移動することができる。
【0036】
図6または図7に示すように、シューウェブ38の厚み方向において、当接部50cの幅はシューウェブ38の厚みよりも小さくされており、工具74を係合部50bに当接させて係合部50bをバッキングプレート16から離れる方向にシューウェブ38の厚み程度移動させることによって、当接部50cがブレーキレバー54の側面54bから外れパーキングブレーキレバー54の側面54bがシューリム42の内周面まで移動可能となる。
【0037】
以上のように構成されたドラムブレーキ10は、ブレーキドラム12の内周面14と一対のブレーキシュー18,20のライニング46,48との間すなわちシュー間隙が詰まり過ぎて小さくなる、若しくは、ブレーキドラム12の内周面14が段付き摩耗して溝内にライニング46,48が入り込んで、補修によるブレーキドラム12の取り外しが困難な状態において、図7に示すように、バッキングプレート16の挿通穴16aから工具74を挿通させてストッパー部50aをバッキングプレート16から離れる方向すなわち矢印A方向に移動させて当接部50cをブレーキブレーキレバー54の側面54bから移動させると、パーキングブレーキレバー54の側面54bは、リターンスプリング24およびシューリターンスプリング64の付勢力によって、図7の矢印B方向すなわちシューリム42の内周面側に移動する。
【0038】
パーキングブレーキレバー54の側面54bが移動することによって、一対のブレーキシュー18,20の一端部間がリターンスプリング24およびシューリターンスプリング64の付勢力によりそのパーキングブレーキレバー54の移動量分だけ接近するので、ブレーキドラム12の内周面14とライニング46,48と間に隙間を設けることができ、ドラムブレーキ10がらブレーキドラム12を容易に取り外すことができる。
【0039】
本実施例のドラムブレーキ10によれば、シューホールドダウン装置50は、(d) バッキングプレート16から立設されてブレーキシュー18を貫通するシューホールドダウンピン70と、(e) そのシューホールドダウンピン70が貫通させられる板部68a,68bと、そのシューホールドダウンピン70の先端部70bとその板部68a,68bとの間に介在させられてブレーキシュー18をバッキングプレート16側に押圧するシューホールドダウンスプリング68とを有し、(f) シューホールドダウンスプリング68によりブレーキシュー18に押圧される板部68aにバッキングプレート16外周側へ向かって回動するパーキングブレーキレバー54を当接させるストッパー部50aが曲成されており、(g) シューホールドダウンスプリング68の板部68aに曲成されたストッパー部50aは、ブレーキシュー18のシューウェブ38に設けられた挿通穴72を通りブレーキシュー18のシューリム42に沿ってバッキングプレート16側へ伸長されたものであるため、ストッパー部50aは、パーキングブレーキレバー54と当接する当接位置を板部68aのブレーキシュー18のシューリム42側とは反対側の側面からバッキングプレート16側へ伸長された従来のストッパー部に比べシューリム42側に移動させることができるので、パーキングブレーキレバー54とバッキングプレート16の中心部との距離を従来のドラムブレーキに比べ長くすることができ、ドラムブレーキ10の小型化を容易に実現することができる。
【0040】
また、本実施例のドラムブレーキ10によれば、バッキングプレート16の外周部には、ストッパー部50aに係合してバッキングプレート16から離れる方向に移動させる工具74を挿通可能にする挿通穴16aが備えられているため、その挿通穴16aをブレーキシュー18を点検する穴として使用することができる。
【0041】
また、本実施例のドラムブレーキ10によれば、(a) ストッパー部50aの先端部には、ストッパー部50aからバッキングプレート16に略平行になるように曲げられた係合部50bが備えられ、(b) その係合部50bには、その厚み方向に貫通する工具係合用貫通穴50dが備えられているため、工具74の先端部が工具係合用貫通穴50dの内周面に係合させることによって、ストッパー部50aをバッキングプレート16から離れる方向に容易に移動することができる。
【0042】
また、本実施例のドラムブレーキ10によれば、(a) シューホールドダウンスプリング68は、一対の板部68a,68bの一端が連結されたU字状の板ばねであって、(b) ストッパー部50aは、板部68aの先端に備えられているものであるため、そのU字状の板ばねにおいて、弾性係数の比較的小さい先端にストッパー部50aを配設することができるので、ストッパー部50aをバッキングプレート16から離れる方向に容易に移動することができる。
【0043】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて説明したが、本発明はその他の態様においても適応される。
【0044】
たとえば、本発明のドラムブレーキ10において、シューホールドダウン装置50のシューホールドダウンスプリング68は、一対の板部68a,68bの一端が連結されたU字状の板ばねであったが、それ以外例えば一対の円板部材とその一対の円板部材の間に配設されるコイル状のスプリングとによって構成されるシューホールドダウンスプリングが使用されても良い。
【0045】
その他一々例示はしないが、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明が適用されたリーディング・トレーリング型ドラムブレーキを示す正面図である。
【図2】図1の実施例のドラムブレーキに備えられたシュー間隙自動調節機構(ストラット)の構成を説明するための図1のII-II視断面図である。
【図3】図1のIII-III視断面図である。
【図4】図3のシューホールドダウン装置を拡大した拡大図である。
【図5】図1のシューホールドダウン装置を単独で示す図である。
【図6】図1のVI-VI視断面図である。
【図7】ストッパー部が工具によってバッキングプレートから離れる方向へ移動し、ストッパー部の当接部がパーキングブレーキレバーから外れた状態を示す図6に対応する図である。
【符号の説明】
【0047】
10:ドラムブレーキ
16:バッキングプレート
16a:挿通穴
18,20:一対のブレーキシュー
24:リターンスプリング
26:シュー間隙自動調節機構(ストラット)
38,40:シューウェブ
42,44:シューリム
50,52:シューホールドダウン装置
50a:ストッパー部
50b:係合部
50d:工具係合用貫通穴
54:パーキングブレーキレバー(ブレーキレバー)
54a:基端部
56:取付軸
68:シューホールドダウンスプリング
68a,68b:板部
70:シューホールドダウンピン
70b:先端部
72:挿通穴
74:工具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シューホールドダウン装置によってバッキングプレートに拡開可能に配設された一対のブレーキシューと、該一対のブレーキシューの一方の一端部において、所定の取付軸まわりに回動可能に配設され且つ該ブレーキシュー側へ付勢されたブレーキレバーと、前記一対のブレーキシューの一端部間を接近させるリターンスプリングの付勢力によって該ブレーキレバーの基端部と一対のブレーキシューの他方の一端部とが当接され、非制動時における一対のブレーキシューの間隔が規定されるストラットとを備えるドラムブレーキであって、
前記シューホールドダウン装置は、
前記バッキングプレートから立設されて前記ブレーキシューを貫通するシューホールドダウンピンと、
該シューホールドダウンピンが貫通させられる板部と、該シューホールドダウンピンの先端部と該板部との間に介在させられて前記ブレーキシューを前記バッキングプレート側に押圧するシューホールドダウンスプリングとを有し、
前記シューホールドダウンスプリングにより前記ブレーキシューに押圧される前記板部に前記バッキングプレートの外周側へ向かって回動する前記ブレーキレバーを当接させるストッパー部が曲成されており、
前記シューホールドダウンスプリングの前記板部に曲成された前記ストッパー部は、前記一方のブレーキシューのシューウェブに設けられた挿通穴を通り該ブレーキシューのシューリムに沿って前記バッキングプレート側へ伸長されたものであることを特徴とするドラムブレーキ。
【請求項2】
前記バッキングプレートの外周部には、前記ストッパー部に係合して前記バッキングプレートから離れる方向に移動させる工具を挿通可能にする挿通穴が備えられているものである請求項1のドラムブレーキ。
【請求項3】
前記ストッパー部の先端部には、前記ストッパー部から前記バッキングプレートに平行になるように曲げられた係合部が備えられ、
該係合部には、その厚み方向に貫通する工具係合用貫通穴が備えられているものである請求項2のドラムブレーキ。
【請求項4】
前記シューホールドダウンスプリングは、一対の板部の一端が連結されたU字状の板ばねであって、
前記ストッパー部は、前記板部の先端に備えられているものである請求項1乃至3のいずれか1のドラムブレーキ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−168228(P2009−168228A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−9865(P2008−9865)
【出願日】平成20年1月18日(2008.1.18)
【出願人】(390005670)豊生ブレーキ工業株式会社 (104)
【Fターム(参考)】