説明

ドーパミン、ノルエピネフリンおよびセロトニンの輸送体に選択的なヘテロ環式化合物およびその治療的使用

本発明の一態様は、モノアミン輸送体の阻害剤として有用であるピペリジン化合物に関する。本発明はまた、本発明のピペリジン化合物を含む医薬組成物に関する。本発明の別の一態様は、哺乳類において中枢神経系の疾患を治療する方法における前記化合物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【従来技術】
【0001】
関連出願
本出願は2003年10月22日出願の米国仮特許出願第60/513,521号の出願日の利益を主張する。
【0002】
公的支援
本発明は米国国立衛生研究所および米国国立薬物乱用研究所(助成番号DA10458およびDA11548)によって提供された支援を用いて行われた;したがって、米国政府は本発明に一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
精神疾患および神経疾患は全世界で非常に多数の人々を悩ませ、過度の苦痛をもたらすことが知られている。1つの重篤でしばしば破壊的である精神疾患がうつ病である。この疾患は、米国に蔓延する最も一般的なおよび破壊的な疾患の1つであり、さらに3500-4000万人の米国人が生涯のある時期に罹患すると推定される。他の重要な精神疾患および神経疾患は、不安症、気分障害、人格障害、性心理障害、統合失調症、薬物乱用および依存、および摂食障害である。これらの疾患はすべての年齢の人が罹患することが知られており、およびそれら疾患は数週間から最大数十年の期間継続し得る。
【0004】
神経科学および分子生物学の進歩は、精神疾患および神経疾患の原因となるさまざまな生化学物質の役割のよりよい理解に繋がっている。研究の努力によって、ドーパミン、ノルエピネフリンおよびセロトニンがこれらの疾患の多数において役割を果たすことが明らかになった。これらの生化学物質は、多様な決定的に重要な生理的プロセスに関与する重要な神経伝達物質である。
【0005】
ドーパミンは、運動、感情反応、および喜びおよび苦痛を経験する能力を調節する脳のプロセスに影響する。ドーパミンの調節は、我々の精神的および身体的健康に決定的な役割を果たす。ドーパミン輸送体(DAT)は、シナプスのドーパミンの作用を終了させるための、および脳における細胞外ドーパミンの恒常性レベルを維持するための、主な機構であると考えられている(非特許文献1)。ドーパミン輸送体は、メチルフェニデート、ペモリン、およびブプロピオンを含むいくつかの薬物の重要な標的となっている。
【0006】
ノルエピネフリン(NE)、別名ノルアドレナリンは、ホルモンとしての役割を兼ねて二役を果たす神経伝達物質である。神経伝達物質としては、ノルエピネフリンは覚醒、夢、および気分を調節するのに役立つ。ホルモンとしては、血圧を上昇させ、血管を収縮させおよび心拍数を上昇させる作用を果たし、そのすべてがストレスに対する反応である。
【0007】
セロトニン(5-ヒドロキシトリプタミン、5-HT)は動物および植物に広く分布する。人体では、セロトニンは主に腸壁(胃腸の運動性の増大を引き起こす)、血管(大血管が収縮する)、および中枢神経系(CNS)に見出される。セロトニンはさまざまな食品起源から得ることができる;しかし、内因性セロトニンはin situでトリプトファンから、酵素トリプトファンヒドロキシラーゼおよび芳香族L-アミノ酸デカルボキシラーゼの作用を介して合成される。セロトニンの機能は多数あり、食欲、睡眠、記憶および学習の調節、体温調節、気分、行動(性行動および幻覚行動を含む)、心臓血管機能、筋収縮、内分泌調節、およびうつ病を含む。
【0008】
精神疾患および神経疾患を治療する能力は、ここ数十年間で顕著に向上している。ドーパミン、ノルエピネフリンまたはセロトニンの活性を選択的に調節する化合物は有効な治療薬であることが見出されている。たとえば、うつ病の大部分の型は、機能上重要なアドレナリン受容体またはセロトニン受容体でのノルエピネフリンおよび/またはセロトニンの欠乏を伴う。したがって、治療手法は、ノルエピネフリンを模倣する薬剤(刺激剤)、NEおよび5-HTのレベルをそれらの代謝を阻害することによって上昇させる医薬 (MAOI) 、およびNEおよび5-HTの取込みを阻害することによって受容体でのそれらレベルを上昇させる薬物の使用を含む。
【0009】
抗うつ剤の1つの分類は、ノルエピネフリンの取込みおよびさまざまな程度に5-HTの取込みを阻害することによって機能する三環系抗うつ剤 (TCA) である。TCAの類の中で、イミプラミンおよびアミトリプチリンといった三級アミンは、デシプラミンといった二級アミンと比較してより選択的な5-HTの阻害剤である。トラゾドンおよびフルオキセチンは、共に米国で市販されており、セロトニンのレベルの調節に役立つ。トラゾドンは5-HTの作用を媒介する一方、フルオキセチンは5-HT再取込みの選択的阻害剤である。
【0010】
ナルコレプシーは、脳化学における異常によって引き起こされると考えられている疾患である。ナルコレプシーは、米国でおよそ1,000人に1人が罹患すると推定されている潜在的に生活に支障を与え生涯におよぶ症状である。ナルコレプシーの二つの基本症状は、日中過眠症および脱力発作である。ナルコレプシーの患者は、眠りに落ちるのに抵抗することができず、さらに前夜の睡眠時間に関係なくそうなる。しばしば、ナルコレプシーの患者は、たとえば食事中または会話の最中といった不適切な時に眠りに落ちる。現在、ナルコレプシーの治癒法は知られていない;しかし、症状の重篤性は、投薬および生活様式の調整によって成功の程度はさまざまであるが最小化される。
【0011】
日中過眠症の影響はプロビジルの投与によって軽減される。プロビジルは覚醒促進剤であり、ナルコレプシーの患者が日常活動に参加するのを可能にする。しかし、プロビジルは、一部の患者では副作用に繋がる。これらの副作用は、吐き気、感染、緊張感、不安および/または不眠を含む。
【0012】
精神疾患および神経疾患の治療における近年の進歩にもかかわらず、多数の患者は薬物に反応しないかまたは薬物が耐えられない副作用を有するため、満足できる治療の選択肢を持たない。たとえば、うつ病の臨床的に診断された例の最大30%が、すべての既知の形態の薬物療法に抵抗性であると推定されている。加えて、抗うつ薬のうち多数は抗コリン作用、心毒性、鎮静作用、および/または体重増加に結びついている。したがって、これらの患者を治療するための新薬が、より副作用の少ない医薬に加えて必要とされる。
【非特許文献1】Giros et al. Nature 1996, 379, 696
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は一般的に、モノアミン輸送体の阻害剤として有用であるピペリジン化合物に関する。好ましい1実施形態では、本発明の化合物は、ピペリジンの窒素原子は、メチル基で置換されているピペリジン環を含む。ある実施形態では、ピペリジン環の窒素原子は、対応するN-オキサイドに酸化されていてもよい。ある実施形態では、ピペリジン環は、必要に応じて置換されたフェニル基で4位にて置換される。好ましい1実施形態では、ピペリジン環は4位にて3-クロロフェニル基で置換される。本発明のピペリジン化合物はまた、必要に応じて置換されたアルキルチオエーテル、スルホキシドまたはスルホン基で3位にて置換される。好ましい1実施形態では、ピペリジン環の3位の置換基はチオエーテル基を含む。本発明はまた、本発明のピペリジン化合物を含む医薬組成物に関する。
【0014】
本発明の別の1態様は、哺乳類において中枢神経系の疾患を治療する方法における前述の化合物の使用に関する。ある実施形態では、前記哺乳類中枢神経系疾患は、うつ病、不安症、気分障害、人格障害、性心理障害、統合失調症、摂食障害、薬物依存、薬物乱用、薬物耽溺、ADHD、月経前不快気分症、パーキンソン病、アルツハイマー病、双極性障害、慢性疼痛、偏頭痛、てんかん、多発性硬化症、脳卒中、外傷、躁病、強迫性障害、肥満、コカイン耽溺およびナルコレプシーより成る群から選択される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は一般的に、さまざまな精神疾患および神経疾患の治療に有用であるピペリジン包含化合物に関する。本発明の化合物はモノアミン輸送体を阻害することが示されている。したがって、本発明の化合物は、他の精神疾患に加えて、睡眠障害、うつ病、および薬物乱用を治療するのに用いることができる。本化合物はまた、哺乳類において中枢神経系の疾患を治療するのに使用できる。ある実施形態では、前記哺乳類中枢神経系疾患は、うつ病、不安症、気分障害、人格障害、性心理障害、統合失調症、摂食障害、薬物依存、薬物乱用、薬物耽溺、ADHD、月経前不快気分症、パーキンソン病、アルツハイマー病、双極性障害、慢性疼痛、偏頭痛、てんかん、多発性硬化症、脳卒中、外傷、躁病、強迫性障害、肥満、コカイン耽溺およびナルコレプシーより成る群から選択される。
【0016】
ある実施形態では、本発明の化合物は、3ヶ所で置換されたピペリジン核を有する。好ましい実施形態では、ピペリジン環の窒素原子はアルキル基で置換される。より好ましい1実施形態では、ピペリジン環の窒素原子はメチル基で置換される。ある実施形態では、ピペリジン環の窒素原子は、対応するN-オキサイドに酸化されてもよい。ピペリジン環は4位で置換されてもよい。ある実施形態では、ピペリジン環は、必要に応じて置換されたフェニル基で4位にて置換される。好ましい1実施形態では、ピペリジン環は4位にて3-クロロフェニル基で置換される。本発明のピペリジン化合物は、必要に応じて置換されたアルキルチオエーテル、スルホキシドまたはスルホン基で3位にて置換される。好ましい1実施形態では、ピペリジン環の3位の置換基はチオエーテル基を含む。
【0017】
本発明はまた、本発明のピペリジン化合物を含む医薬組成物に関する。ある実施形態では、医薬組成物はピペリジン化合物の医薬品として許容される塩を含む。
【0018】
本発明のピペリジン化合物は、ドーパミン、セロトニンおよびノルエピネフリンの取込みを阻害する能力について試験される。研究は、一部の場合には、ピペリジン環の3位に位置する置換基にチオエーテル基を有することが好ましいことを示す。阻害試験はまた、一部の場合には、ピペリジン環の3位に付いている置換基の末端に付いたアミド基を有するのが有利であることを示した。
【0019】
本発明はまた、本発明の化合物の治療的効果量を投与する工程を含む、ドーパミン、セロトニンまたはノルエピネフリンの受容体または輸送体の活性を調節する方法に関する。ある実施形態では、本発明は、耽溺、不安症、またはうつ病を治療する方法に関する。
【0020】
定義
便宜上、本明細書、実施例、および付属の請求項で用いられる一部の用語をここに集める。
【0021】
ここで用いられる「ヘテロ原子」の語は、炭素または水素以外の任意の元素の原子を意味する。好ましいヘテロ原子は、ホウ素、窒素、酸素、リン、硫黄、およびセレンである。
【0022】
「アルキル」の語は、直鎖アルキル基、分枝鎖アルキル基、シクロアルキル (アリサイクリック) 基、アルキル置換シクロアルキル基、およびシクロアルキル置換アルキル基を含む、飽和脂肪族基のラジカルをいう。好ましい実施形態では、直鎖または分枝鎖アルキルは骨格に30個以下の炭素原子を有し (たとえば、直鎖についてはC1-C30、分枝鎖についてはC3-C30) 、およびより好ましくは20個以下の炭素原子を有する。同様に、好ましいシクロアルキルは、環構造に3-10個の炭素原子を有し、およびより好ましくは環構造に5、6、または7個の炭素原子を有する。代表的なアルキル基は:メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、などを含む。
【0023】
炭素数が別に指定されない限り、ここで用いられる「低級アルキル」は、上記に定義される通りであるが、骨格構造に1から10個の炭素、より好ましくは1から6個の炭素原子を有するアルキル基を意味する。同様に、「低級アルケニル」および「低級アルキニル」は同様の鎖長を有する。好ましいアルキル基は低級アルキルである。好ましい実施形態では、ここでアルキルと指定されている置換基は低級アルキルである。
【0024】
ここで用いられる「アラルキル」の語は、アリール基 (たとえば、芳香族基またはヘテロ芳香族基) で置換されたアルキル基をいう。
【0025】
「アルケニル」および「アルキニル」の語は、長さおよび可能な置換について上記のアルキルと類似の不飽和脂肪族基であるが、少なくとも1の二重結合または三重結合をそれぞれ有するものをいう。
【0026】
ここで用いられる「アリール」の語は、0から4個のヘテロ原子を含み得る5、6、および7員単環芳香族基、たとえば、ベンゼン、アントラセン、ナフタレン、ピレン、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、トリアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、およびピリミジン、などを含む。環構造中にヘテロ原子を有するそれらのアリール基はまた、「アリール複素環」、「ヘテロ芳香族」、または「ヘテロアリール」ともいう。芳香族環は、環の1個以上の位置で、上記のような置換基、たとえば、ハロゲン、アジド、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アルコキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスホネート、ホスフィネート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、スルホンアミド、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロシクリル、芳香族またはヘテロ芳香族部分、-CF3、-CN、などで置換され得る。「アリール」の語はまた、2個以上の炭素が2つの隣接する環に共通する(それらの環は「融合環」である)2つ以上の環を有する多環系を含み、ここでたとえば環のうち少なくとも1つは芳香族であり、その他の環式環はシクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリールおよび/またはヘテロシクリルであってよい。
【0027】
オルト、メタ、パラの語は、1, 2-、1, 3-、および1, 4-二置換ベンゼンにそれぞれ適用される。たとえば、1, 2-ジメチルベンゼンおよびオルト-ジメチルベンゼンという名称は同義である。
【0028】
「ヘテロシクリル」または「ヘテロ(複素)環式基」の語は、3ないし10員環構造、より好ましくは3ないし7員環であって、その環構造が1から4個のヘテロ原子を含むものをいう。ヘテロ(複素)環はまた多環であってよい。ヘテロシクリル基は、たとえば、チオフェン、チアントレン、フラン、ピラン、イソベンゾフラン、クロメン、キサンチン、フェノキサチン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、イソチアゾール、イソキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドリジン、イソインドール、インドール、インダゾール、プリン、キノリジン、イソキノリン、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、カルバゾール、カルボリン、フェナントリジン、アクリジン、ピリミジン、フェナントロリン、フェナジン、フェナルサジン、フェノチアジン、フラザン、フェノキサジン、ピロリジン、オキソラン、チオラン、オキサゾール、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、ラクトン類、アゼチジノン類およびピロリジノン類といったラクタム類、スルタム類、スルトン類、などを含む。ヘテロ(複素)環式環は、1個以上の位置で、上記のような置換基、たとえば、ハロゲン、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスホネート、ホスフィネート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロシクリル、芳香族またはヘテロ芳香族部分、-CF3、-CN、などで置換され得る。
【0029】
「ポリシクリル」または「多環基」の語は、たとえば二個以上の炭素が二つの隣接する環に共通し、それらの環は「融合環」である、二個以上の環 (たとえば、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリールおよび/またはヘテロシクリル) をいう。隣接しない原子を介して結合した環は「架橋」環と称する。多環のうちの環のそれぞれは、上記のような置換基、たとえば、ハロゲン、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスホネート、ホスフィネート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロシクリル、芳香族またはヘテロ芳香族部分、-CF3、-CN、などで置換され得る。
【0030】
ここで用いられる「ニトロ」の語は-NO2を意味する;「ハロゲン」の語は-F、-Cl、-Br、または-Iを示す;「スルフヒドリル」の語は-SHを意味する;「ヒドロキシル」の語は-OHを意味する;および「スルホニル」の語は-SO2-を意味する。
【0031】
「アミン」および「アミノ」の語は本分野で認められており、非置換および置換アミンの両方、たとえば、下記一般式で表すことができる部分を称する:
【化1】

ここで、R9、R10、およびR'10はそれぞれ独立に、原子価則によって許容される基を表す。
【0032】
「アシルアミノ」の語は本分野で認められており、下記一般式で表すことができる部分を称する:
【化2】

ここで、R9は上記で定義された通りであり、R'11は水素、アルキル、アルケニル、または- (CH2) m-R8を表し、mおよびR8は上記で定義された通りである。
【0033】
「アミド」は、アミノ置換カルボニルとして本分野で認められており、下記一般式で表すことができる部分を含む:
【化3】

ここで、R9、R10は上記で定義された通りである。アミドの好ましい実施形態は、不安定である可能性があるイミドは含まない。
【0034】
「アルキルチオ」の語は、硫黄ラジカルが結合した、上記で定義された通りのアルキル基をいう。好ましい実施形態では、「アルキルチオ」部分は-S-アルキル、-S-アルケニル、-S-アルキニル、および-S- (CH2) m-R8のうちの1つで表され、mおよびR8は上記で定義された通りである。代表的なアルキルチオ基は、メチルチオ、エチルチオ、などを含む。
【0035】
「カルボニル」の語は本分野で認められており、下記一般式で表すことができる部分を含む:
【化4】

ここで、Xは結合であるかまたは酸素または硫黄を表し、R11は水素、アルキル、アルケニル、- (CH2) m-R8、または医薬品として許容される塩を表し、R'11は水素、アルキル、アルケニル、または- (CH2) m-R8を表し、mおよびR8は上記で定義された通りである。Xが酸素でありおよびR11またはR'11が水素でない場合、この式は「エステル」を表す。Xが酸素であり、およびR11が上記で定義された通りである場合は、この部分はここではカルボキシル基と呼ばれ、および特にR11が水素である場合、この式は「カルボン酸」を表す。Xが酸素であり、およびR'11が水素である場合、この式は「ギ酸」を表す。一般に、上記の式の酸素原子が硫黄によって置換される場合、この式は「チオールカルボニル」基を表す。Xが硫黄でありおよびR11またはR'11が水素でない場合、この式は「チオールエステル」を表す。Xが硫黄でありおよびR11が水素である場合、この式は「チオールカルボン酸」を表す。Xが硫黄でありおよびR'11が水素である場合、この式は「チオールギ酸」を表す。一方、Xが結合であり、およびR11が水素でない場合、上記の式は「ケトン」基を表す。Xが結合であり、およびR11が水素である場合、上記の式は「アルデヒド」基を表す。
【0036】
ここで用いられる「アルコキシル」またはアルコキシ」の語は、酸素ラジカルが結合した、上記で定義された通りのアルキル基をいう。代表的なアルコキシル基は、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、tert-ブトキシなどを含む。「エーテル」は、1個の酸素によって共有結合で結ばれた二個の炭化水素である。したがって、アルキルの、そのアルキルをエーテルにする置換基は、アルコキシルであるかまたはそれに類似しており、たとえば-O-アルキル、-O-アルケニル、-O-アルキニル、-O- (CH2) m-R8のうちの1つで表すことができ、mおよびR8は上記で定義された通りである。
【0037】
「スルホネート」の語は本分野で認められており、下記一般式で表すことができる部分を含む:
【化5】

ここで、R41は、電子対、水素、アルキル、シクロアルキル、またはアリールである。
【0038】
「オキサジアゾール」の語は本分野で認められており、窒素原子2個、酸素原子1個、および炭素原子2個を含む5員環を称する。オキサジアゾールの代表的な例は、下記一般式で表される3-メチル-1,2,4-オキサジアゾール-5-イルである:
【化6】

【0039】
トリフリル、トシル、メシル、およびノナフリルの語は本分野で認められており、トリフルオロメタンスルホニル、p-トルエンスルホニル、メタンスルホニル、およびノナフルオロブタンスルホニル基をそれぞれいう。トリフレート、トシレート、メシレート、およびノナフレートの語は本分野で認められており、トリフルオロメタンスルホネートエステル、p-トルエンスルホネートエステル、メタンスルホネートエステル、およびノナフルオロブタンスルホネートエステル官能基、および前記の基を含む分子をそれぞれいう。
【0040】
Me、Et、Ph、Tf、Nf、Ts、およびMsという短縮形は、メチル、エチル、フェニル、トリフルオロメタンスルホニル、ノナフルオロブタンスルホニル、p-トルエンスルホニル、およびメタンスルホニル、をそれぞれ表す。当業者である有機化学者によって利用される短縮形のより包括的な一覧は、Journal of Organic Chemistry ; の各巻の第1号に登場する; この一覧は典型的にはStandard List of Abbreviationsと題する表で提示される。前記一覧に含まれる短縮形、および当業者である有機化学者によって利用されるすべての短縮形は、参照によって本開示に含まれる。
【0041】
「硫酸塩」の語は本分野で認められており、下記一般式で表すことができる部分を含む:
【化7】

ここで、R41は上記で定義された通りである。
【0042】
「スルホニルアミノ」の語は本分野で認められており、下記一般式で表すことができる部分を含む:
【化8】

【0043】
「スルファモイル」の語は本分野で認められており、下記一般式で表すことができる部分を含む:
【化9】

ここで用いられる「スルホニル」の語は、下記一般式で表すことができる部分を称する:
【化10】

ここで、R44は、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、またはヘテロアリールより成る群から選択される。
【0044】
ここで用いられる「スルホキシド」の語は、下記一般式で表すことができる部分を称する:
【化11】

ここで、R44は、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アラルキル、またはアリールより成る群から選択される。
【0045】
「セレノアルキル」は、結合したセレノ基で置換されたアルキル基をいう。アルキル上で置換された典型的な「セレノエーテル」は、-Se-アルキル、-Se-アルケニル、-Se-アルキニル、および-Se- (CH2) m-R7のうち1つから選択され、mおよびR7は上記で定義される。
【0046】
類似の置換はアルケニル基およびアルキニル基に行うことができ、たとえば、アミノアルケニル、アミノアルキニル、アミドアルケニル、アミドアルキニル、イミノアルケニル、イミノアルキニル、チオアルケニル、チオアルキニル、カルボニル置換アルケニルまたはアルキニルを生じる。
【0047】
ここで用いられる通り、たとえばアルキル、m、n、などといった個々の表現の定義は、それが任意の構造中で1回より多く存在する場合は、同一の構造中の他所での定義とは独立していることが意図される。
【0048】
「置換」または「-で置換された」は、そのような置換は置換原子および置換基の許容される原子価に基づくこと、および置換の結果として安定化合物が生じ、それはたとえば転位、環化、脱離、などによる変化を自然に起こさないこと、という黙示的但し書きを含むと理解される。
【0049】
ここで用いられる通り、「置換された」の語は、有機化合物のすべての許容される置換基を含むと考えられる。幅広い解釈では、許容される置換基は、有機化合物の、非環式および環式、分枝および非分枝、炭素環式およびヘテロ(複素)環式、芳香族および非芳香族置換基を含む。例証となる置換基は、たとえば、上述のものを含む。許容される置換基は、適当な有機化合物について、1個以上、および同一または異なることができる。本発明の目的のために、たとえば窒素といったヘテロ原子は、水素置換基および/または、ここに記載の有機化合物の、そのヘテロ原子の原子価を満足させる任意の許容される置換基を有していてよい。本発明は、許容される有機化合物の置換基によって何ら限定されないことが意図される。
【0050】
ここで用いられる「保護基」の語句は、潜在的に反応性の官能基を、望まれない化学的変化から守る一時的な置換基を意味する。そのような保護基の例は、カルボン酸のエステル、アルコールのシリルエーテル、および、アルデヒドおよびケトンのアセタールおよびケタールをそれぞれ含む。保護基の化学の分野は総説がある (Greene, T. W.; Wuts, P. G. M. Protective Groups in Organic Synthesis, 2nd ed.; Wiley: New York, 1991) 。
本発明のある種の化合物は、特定の幾何学的形または立体異性形で存在する可能性がある。本発明は、cis-およびtrans-異性体、R-およびS-光学異性体、ジアステレオマー、 (D) -異性体、 (L) -異性体、そのラセミ混合物、およびその他の混合物を含むそのような化合物すべてを、本発明の範囲内にあると考える。別の不斉炭素原子が、アルキル基のような置換基中に存在し得る。そのような異性体のすべて、およびその混合物は、本発明に含まれることが意図される。
【0051】
たとえば、本発明の化合物の特定の光学異性体が目的とされる場合、それは不斉合成によって調製することができ、または、キラル補助基を用いた誘導体化によって調製することができ結果として生じるジアステレオマー混合物が分離され補助基が切断されて純粋な目的の光学異性体を与える。代替的に、当該分子がアミノ基のような塩基性官能基、またはカルボキシル基のような酸性官能基を含む場合、適当な光学活性な酸または塩基を用いてジアステレオマー塩が形成され、その後、そのようにして形成されたジアステレオマーの分離を、本分野でよく知られている分画結晶化法またはクロマトグラフィー法によって行い、その結果、純粋な光学異性体が回収される。
【0052】
上述の化合物の考えられる同等物は、シグマ受容体への結合において当該化合物の効力に悪影響を及ぼさない、他の面ではそれと合致しおよびそれと同一の一般的性質を有する (たとえば、鎮痛薬として機能する) 、置換基の1種類以上の単純な変形が行われている化合物を含む。一般に、本発明の化合物は、たとえば下記に示す通りの一般的な反応スキームで説明される方法によって、またはその改変によって、容易に入手可能な開始材料、試薬、および従来の合成手順を用いて調製することができる。これらの反応においては、それ自体が既知であるがここでは言及されない変形を利用することも可能である。
【0053】
本発明の目的のために、化学元素は、元素周期表CAS版、Handbook of Chemistry and Physics, 67th Ed., 1986-87、内表紙、に従って同定される。
【0054】
睡眠-覚醒調節
モノアミンであるセロトニン(5-HT)、ノルエピネフリン(NE)およびヒスタミン(HA)、ヒポクレチン(オレキシン)を含む神経ペプチド、およびアセチルコリン、GABA、およびアデノシンを含む他の伝達物質は、睡眠-覚醒調節に特に関与している。対照的に、多数の著者がドーパミン(DA)には睡眠-覚醒調節においてわずかな役割だけを割り当てている。Steinfels et al. Brain Research 1983, 258, 217を参照。アセチルコリン、NE、5-HT、および HA(Steininger et al. Brain Research 1999, 840, 138を参照)神経細胞の電気的活動は、睡眠-覚醒状態にわたって頑健な変化を示し、睡眠および覚醒の段階にわたるDA神経細胞の発火頻度における限定的な変化と対照的である。後者は、アセチルコリン、5-HT、NE、またはHAにおける変化は覚醒の皮質脳波(EEG)脱同期特性の調節により重要に関与しており、一方でドーパミン活性は行動の運動に関係する側面を媒介すると考えられている現在の見解の基礎を成す。Steinfels et al., Brain Research 1983,258, 217を参照。
【0055】
電気生理学的指標と睡眠段階との間に共分散が無いことは、しかし、覚醒状態調節におけるドーパミンの役割を消去しない。実際、ドーパミンの終末での放出は、覚醒状態に伴って変化する。Trulson, M. Brain Res. Bull. 1985, 15, 221を参照。加えて、前脳に投射する腹側被蓋におけるドーパミン細胞集団の病変は、行動覚醒に顕著な低下を生じ、および、ヒトパーキンソン病患者は、一貫したドーパミン性病変を示すが他のモノアミンでは一貫しない変化を示し、重度の睡眠障害を経験する。Aldrich M, In: Principles and practice of sleep medicine (Kryger MH, Roth T, Dement WE, eds), pp1051. Philadelphia: Saunders, 2000を参照。
アンフェタミンおよびモダフィニルといった有効な覚醒促進化合物の分子的基礎について不確かさもまた残っている。アンフェタミンはDA、NE、および5-HTに関する原形質膜輸送体を遮断し、および小胞性モノアミン輸送体(VMAT2)を阻害し、モノアミンをVMAT2によって送り込まれたシナプス小胞内から放出する。
【0056】
ノルアドレナリン作動性機構がアンフェタミン様刺激剤の覚醒促進作用を説明することが提案されている。しかし、ドーパミン特異的再取込み遮断薬は、NE輸送体選択的遮断薬よりも良好に、正常および睡眠障害ナルコレプシー動物において覚醒を促進できる。さらに、アンフェタミンの覚醒促進作用は、ネコにおいて青斑核のノルアドレナリン作動性細胞の病変によって生じた脳ノルエピネフリンの重度の低下後に維持される。
【0057】
ナルコレプシーに伴う眠気の治療に用いられる覚醒促進化合物であるモダフィニル(US Modafinil in Narcolepsy Multicenter Study Group,1998)の作用機序はますます不確かである。研究は、モダフィニルは、α-1ノルアドレナリン作動性伝達またはペプチドのヒポクレチンを含む視床下部細胞を活性化することによって覚醒を増大すること(Chemelli et al. Cell 1999, 98, 437を参照) 、またはGABA作動性緊張度を調節することによって作用し得ること(Ferraro et al. Eur. J. Pharmacol. 1996, 306, 33を参照) を示唆している。アンフェタミンおよびモダフィニルの覚醒促進作用に関する分子的基礎を特定するために、Wisorおよび共同研究者らは過眠症についての遺伝モデルであるナルコレプシーイヌにおいて、およびドーパミン輸送体(DAT)ノックアウトマウスにおいて、これらの化合物に対する反応を試験した。Wisor, J. P.; Nishino, S.; Sora, I.; Uhl, G. H.; Mignot, E.; Edgar, D. M.J ofNeuroscience 2001,21, 1787を参照
Wisorおよび共同研究者らの試験では、ナルコレプシーイヌにおけるポリグラフ記録および尾状核微小透析液ドーパミン測定は、覚醒促進抗ナルコレプシー化合物モダフィニルおよびアンフェタミンはヒポクレチン受容体2に非依存的に細胞外ドーパミンを増加させることを明らかにした。マウスでは、ドーパミン輸送体(DAT)遺伝子の欠失は、運動作用とは独立して、ノンレム睡眠時間を減少させおよび覚醒強化を高めた。DATノックアウトマウスはまた、モダフィニル、メタンフェタミン、および選択的DAT遮断薬GBR12909の通常は頑健な覚醒促進作用に反応せず、しかしカフェインの覚醒促進作用には過敏性であった。したがって、ドーパミン輸送体は睡眠調節およびに重要な役割を果たし、およびアンフェタミンおよびモダフィニルの特異的確性促進作用に必須である。
【0058】
DAT遺伝子欠失はベースライン睡眠およびその主要な治療用覚醒促進剤への反応性を変化させるという知見は重要な臨床上の応用を有する。重度のおよびしばしば未治療の睡眠障害は、パーキンソン病およびハンチントン舞踏病によって引き起こされるドーパミン機能異常を有する患者に一般的である。ドーパミン代謝および受容体異常もまた、ナルコレプシーといった日中過眠症に、および正常な加齢において生じる。現在のデータは、特異的DAT遺伝子多型マーカー(Gill et al. Mol. Psychiatry 1997, 2, 311を参照)および睡眠障害が注意欠陥多動性障害に関連するという観察と併せて、DAT遺伝子座でのヒト変異は睡眠-覚醒疾患への脆弱性の素因を有し得ることを示唆する。最後に、DATノック亜鬱を用いた観察は、より有効な覚醒促進薬の開発のための新しい主要な標的を提供する。モダフィニルの臨床安全性プロファイル、低い乱用潜在性および臨床的成功は、古典的アンフェタミン様刺激剤と比較して、選択的DAT阻害剤が有用な臨床用途および低副作用プロファイルを有するであろうことを示唆する。アンフェタミン様化合物は現在、幅広い睡眠および精神疾患の、非常に多数の患者に処方されているため、高度に選択的はDAT阻害剤の有用性は再考に値する。
【0059】
ナルコレプシーは、日中過眠症(EDS)および、REM睡眠の解離性出現、すなわち脱力発作(感情的興奮によって誘導される筋弛緩の突然の発現) 、入眠時幻覚、および睡眠麻痺によって特徴づけられる睡眠障害である。中枢神経系(CNS)刺激剤であるアンフェタミンおよびアンフェタミン様化合物(メチルフェニデートおよびペモリン) は、ナルコレプシーでのEDSに最も一般的に用いられる薬物治療である。EDSを治療するために有効な用量でのアンフェタミン様刺激剤は、しかし、REM睡眠関連症状に対しては有益な効果がほとんどなく、および抗うつ剤またはモノアミンオキシダーゼ阻害剤はまたしたがって、これらの症状を治療するために必要である。これらの薬理的手法の成功は、しかし、複数の副作用の存在および薬物耐性の発生によって制限される。
【0060】
アンフェタミン様刺激剤は、現在入手可能な最も強力なおよび有効な覚醒促進化合物であるが、しかしその睡眠および覚醒に対する作用機序に関してはほとんど知られていない。これらの物質は、モノアミン放出の増大、モノアミン再取込みの遮断、およびモノアミンオキシダーゼの阻害といった複数の薬理的性質を有する(総説はParkes JD. Daytime Drowsiness. In: Parkes JD. Sleep and Its Disorders. London: WB Saunders, 1985b, pp. 267を参照) 。これらの性質は、中枢モノアミン伝達の全体的促進に寄与し、およびいずれかの単独のモノアミン(DA、NE、またはセロトニン[5-HT]) に選択的でない。これらの化合物が覚醒を促進する具体的な薬理的性質は未だに議論されており、および、NEまたはDA伝達のどちらかまたは両方が関与することが示唆されている。長年の間、薬理学者たちは自発運動活性に対するまたはバルビツール酸誘導性運動抑制に対するこれらの化合物のげっ歯類における作用を研究しており、およびこれらの作用をその「覚醒」作用の指標として用いている。アンフェタミン様刺激剤、DA取込み阻害剤、およびDA作用薬は高用量で、同様のCNS刺激剤作用を有し、覚醒促進のドーパミン媒介を示唆する。他の研究者らはまた、自発運動活性化についてCNS刺激剤のアドレナリン媒介を示唆しているが(Taylor, J. R.; Robbins, T. W. Psychopharmacology 1984, 84, 405を参照) 、しかしこの作用はこれらの化合物の覚醒促進作用を直接表さない可能性がある。さらに,自発運動活性を増大させるためには、覚醒をin vivoで誘導するための用量に対してはるかに高用量のCNS刺激剤が一般的に必要である。加えて、モダフィニルのような一部の覚醒誘導化合物は、ポリグラフ記録が証拠となるように、自発運動活性を有意に高めることなく覚醒を促進する。Shelton et al. Sleep 1995, 18, 817を参照。 したがって、これらの議論に対処するために、選択的 DA および NE 化合物 および EEG 記録を用いる別の試験が必要である。
【0061】
上記の通り、アンフェタミン様刺激剤は、ナルコレプシーにおいて眠気を治療するために一般的に用いられている。これらの化合物は、脱力発作といったレム(REM)睡眠関連症状に対してはほとんど効果が無く、およびこれらの症状を治療するために抗うつ剤(モノアミン取込み阻害剤)が通常は必要である。アンフェタミン様刺激剤および抗うつ剤はモノアミン作動性伝達を促進するが、これらの化合物はそれぞれのモノアミンに関して非選択的であり、およびこれらの化合物がどのように覚醒を誘導しおよびREM睡眠を調節するかを媒介する正確な機構は不明である。これらの作用の媒介におけるドーパミン作動性およびノルアドレナリン作動性伝達の相対的重要性を評価するために、Nishinoおよび共同研究者らは5種類のドーパミン(DA)取込み阻害剤(マジンドール、GBR-12909、ブプロピオン、ノミフェンシンおよびアミネプチン) 、2種類のノルエピネフリン(NE)取込み阻害剤(ニソキセチンおよびデシプラミン) 、d-アンフェタミン、および非アンフェタミン刺激剤のモダフィニルを、対照およびナルコレプシーイヌで試験した。Nishino, S.; Mao, J.; Sampathkumaran, R.; Shelton, J. ; Mignot, E. Sleep Research Online 1998, 1, 49を参照。すべての刺激剤およびドーパミン取込み阻害剤は、対照およびナルコレプシー動物において覚醒を用量依存的に増大させることが見出された。DA取込み阻害剤およびモダフィニルの覚醒についてのin vivo効力は、DAへのin vitro親和性と有意に相関し、およびNE輸送体とは相関しなかった。DA取込み阻害剤はまたREM睡眠を中等度に減少させたが、しかしこの作用は徐波睡眠(SWS)抑制に二次的である可能性が高く、それは選択的DA取込み阻害剤がREM睡眠およびSWSの両方を比例的に減少させたためである。対照的に、選択的NE取込み阻害剤は覚醒に対してほとんど作用を有しなかったが、しかしREM睡眠を強力に減少させた。これらの結果は、DA伝達のシナプス前活性化が覚醒の薬理的調節に決定的に重要である一方、NE系のシナプス前活性化がREM睡眠調節に決定的に重要であることを示唆する。これらの結果はまた、DA伝達のシナプス前活性化は、現在入手可能なCNS刺激剤の覚醒促進作用を媒介する主要な薬理的性質であることを示唆する。
【0062】
Nishinoおよび共同研究者らによる試験の結果は、取込み阻害剤または放出促進剤を用いたDA伝達の増加は、EEG覚醒を正常状態および病的状態において優先的に調節することを実証する。対照的に、NE系のシナプス前調節は、REM睡眠およびREM睡眠関連現象に対して優先的効果を有する。ナルコレプシーの2つの軸性症状であるEDSおよび脱力発作は、このように薬理的に別々に調節され、およびドーパミン作動系およびノルアドレナリン作動系の両方の機能異常がナルコレプシーの病態生理に関与するであろう。この解釈は、大部分のヒトナルコレプシー患者においてなぜ2つの異なる種類の医薬、すなわちアンフェタミン様刺激剤および三環系抗うつ剤を、EDSおよびREM睡眠関連症状の治療にそれぞれ用いなければならないかをさらに説明する。
【0063】
本発明の化合物
本発明の一態様は下記式Iによって表される化合物に関する:
【化12】

ここで、
R1は、出現毎に独立して、Hまたはアルキルを表す;
R2は、H、アルキル、アリール、アラルキル、または-C(O)R5である;
R3は、アリール、ヘテロアリール、またはアラルキルである;
R4は、水素、ヒドロキシル、アリール、ヘテロアリール、OR5、CO2R6、C(O)N(R6)2、C(O)NHOH、OC(O)R5またはオキサジアゾールである;
R5は、アルキル、アリール、ヘテロアリール、またはアラルキルである;
R6は、出現毎に独立して、水素、アルキル、アリール、またはアラルキルを表し、ここで、任意の2つのR6が共有結合して環を形成してもよい;
Xは、S、-S(O)-、または-S(O2)-である;
nは1、2、3、または4である;さらに
mは1、2、3、または4である。
【0064】
ある実施形態では、本発明は、XがSまたは-S(O)-であることを特徴とする化合物Iに関する。
【0065】
ある実施形態では、本発明は、R2がメチル、エチルまたはプロピルであることを特徴とする化合物Iに関する。
【0066】
ある実施形態では、本発明は、R2がメチルであることを特徴とする化合物Iに関する。
【0067】
ある実施形態では、本発明は、R3が必要に応じて置換されたフェニルであることを特徴とする化合物Iに関する。
【0068】
ある実施形態では、本発明は、R3がハロフェニルであることを特徴とする化合物Iに関する。
【0069】
ある実施形態では、本発明は、R3が3-クロロフェニルであることを特徴とする化合物Iに関する。
【0070】
ある実施形態では、本発明は、R4がC(O)N(R6)2であることを特徴とする化合物Iに関する。
【0071】
ある実施形態では、本発明は、R4がC(O)N(R6)2であり、さらにR6が出現毎に独立して水素またはアルキルを表すことを特徴とする化合物Iに関する。
【0072】
ある実施形態では、本発明は、XがSであり、nが1であり、mが1であり、R1が水素であり、R2がメチルであり、さらにR3が3-クロロフェニルであることを特徴とする化合物Iに関する。
【0073】
ある実施形態では、本発明は、XがSであり、nが1であり、mが1であり、R1が水素であり、R2がメチルであり、R3が3-クロロフェニルであり、さらにR4がC(O)N(R6)2であることを特徴とする化合物Iに関する。
【0074】
ある実施形態では、本発明は、XがSであり、nが1であり、mが1であり、R1が水素であり、R2がメチルであり、R3が3-クロロフェニルであり、さらにR4がC(O)N(H)iPrであることを特徴とする化合物Iに関する。
【0075】
ある実施形態では、本発明は、XがSであり、nが1であり、mが1であり、R1が水素であり、R2がメチルであり、R3が3-クロロフェニルであり、さらにR4がC(O)N(H)CH3であることを特徴とする化合物Iに関する。
【0076】
ある実施形態では、本発明は、Xが-S(O)-であり、nが1であり、R1が水素であり、R2がメチルであり、さらにR3が3-クロロフェニルであることを特徴とする化合物Iに関する。
【0077】
ある実施形態では、本発明は、Xが-S(O)-であり、nが1であり、mが2であり、R1が水素であり、R2がメチルであり、R3が3-クロロフェニルであり、さらにR4がOC(O)R5であることを特徴とする化合物に関する。
【0078】
ある実施形態では、本発明は、Xが-S(O)-であり、nが1であり、mが2であり、R1が水素であり、R2がメチルであり、R3が3-クロロフェニルであり、R4がOC(O)R5であり、さらにR5がCH3であることを特徴とする化合物Iに関する。
【0079】
ある実施形態では、本発明は、Xが-S(O)-であり、nが1であり、mが2であり、R1が水素であり、R2がメチルであり、R3が3-クロロフェニルであり、R4がOC(O)R5であり、さらにR5がフェニルであることを特徴とする化合物Iに関する。
【0080】
ある実施形態では、本発明は、Xが-S(O)-であり、nが1であり、mが1であり、R1が水素であり、R2がメチルであり、R3が3-クロロフェニルであり、さらにR4がC(O)N(H)OHであることを特徴とする化合物Iに関する。
【0081】
重要なことには、式Iの化合物について記載した上記の実施形態はまた、下記に列挙する式II、III、IV、V、およびVIの化合物についても想定される。
【0082】
本発明の別の1態様は下記式IIによって表される化合物に関する:
【化13】

ここで、
R1は、出現毎に独立して、Hまたはアルキルを表す;
R2は、H、アルキル、アリール、アラルキル、または-C(O)R5である;
R3は、アリール、ヘテロアリール、またはアラルキルである;
R4は、水素、ヒドロキシル、アリール、ヘテロアリール、OR5、CO2R6、C(O)N(R6)2、C(O)NHOH、OC(O)R5またはオキサジアゾールである;
R5は、アルキル、アリール、ヘテロアリール、またはアラルキルである;
R6は、出現毎に独立して、水素、アルキル、アリール、またはアラルキルを表し、ここで、任意の2つのR6が共有結合して環を形成してもよい;
Xは、S、-S(O)-、または-S(O2)-である;
nは1、2、3、または4である;さらに
mは1、2、3、または4である。
【0083】
ある実施形態では、本発明は、XがSまたは-S(O)-であることを特徴とする化合物IIに関する。
【0084】
ある実施形態では、本発明は、R2がメチル、エチルまたはプロピルであることを特徴とする化合物IIに関する。
【0085】
ある実施形態では、本発明は、R2がメチルであることを特徴とする化合物IIに関する。
【0086】
ある実施形態では、本発明は、R3が必要に応じて置換されたフェニルであることを特徴とする化合物IIに関する。
【0087】
ある実施形態では、本発明は、R3がハロフェニルであることを特徴とする化合物IIに関する。
【0088】
ある実施形態では、本発明は、R3が3-クロロフェニルであることを特徴とする化合物IIに関する。
【0089】
ある実施形態では、本発明は、R4がC(O)N(R6)2であることを特徴とする化合物IIに関する。
【0090】
ある実施形態では、本発明は、R4がC(O)N(R6)2であり、さらにR6が出現毎に独立して水素またはアルキルを表すことを特徴とする化合物IIに関する。
【0091】
ある実施形態では、本発明は、XがSであり、nが1であり、mが1であり、R1が水素であり、R2がメチルであり、さらにR3が3-クロロフェニルであることを特徴とする化合物IIに関する。
【0092】
ある実施形態では、本発明は、XがSであり、nが1であり、mが1であり、R1が水素であり、R2がメチルであり、R3が3-クロロフェニルであり、さらにR4がC(O)N(R6)2であることを特徴とする化合物IIに関する。
【0093】
ある実施形態では、本発明は、XがSであり、nが1であり、mが1であり、R1が水素であり、R2がメチルであり、R3が3-クロロフェニルであり、さらにR4がC(O)N(H)iPrであることを特徴とする化合物IIに関する。
【0094】
本発明の別の1態様は式IIIによって表される化合物に関する:
【化14】

ここで、
R1は、出現毎に独立して、Hまたはアルキルを表す;
R2は、H、アルキル、アリール、アラルキル、または-C(O)R5である;
R3は、アリール、ヘテロアリール、またはアラルキルである;
R4は、水素、ヒドロキシル、アリール、ヘテロアリール、OR5、CO2R6、C(O)N(R6)2、C(O)NHOH、OC(O)R5またはオキサジアゾールである;
R5は、アルキル、アリール、ヘテロアリール、またはアラルキルである;
R6は、出現毎に独立して、水素、アルキル、アリール、またはアラルキルを表し、ここで、任意の2つのR6が共有結合して環を形成してもよい;
Xは、S、-S(O)-、または-S(O2)-である;
nは1、2、3、または4である;さらに
mは1、2、3、または4である。
【0095】
ある実施形態では、本発明は、XがSまたは-S(O)-であることを特徴とする化合物IIIに関する。
【0096】
ある実施形態では、本発明は、R2がメチル、エチルまたはプロピルであることを特徴とする化合物IIIに関する。
【0097】
ある実施形態では、本発明は、R2がメチルであることを特徴とする化合物IIIに関する。
【0098】
ある実施形態では、本発明は、R3が必要に応じて置換されたフェニルであることを特徴とする化合物IIIに関する。
【0099】
ある実施形態では、本発明は、R3がハロフェニルであることを特徴とする化合物IIIに関する。
【0100】
ある実施形態では、本発明は、R3が3-クロロフェニルであることを特徴とする化合物IIIに関する。
【0101】
ある実施形態では、本発明は、R4がC(O)N(R6)2であることを特徴とする化合物IIIに関する。
【0102】
ある実施形態では、本発明は、R4がC(O)N(R6)2であり、さらにR6が出現毎に独立して水素またはアルキルを表すことを特徴とする化合物IIIに関する。
【0103】
ある実施形態では、本発明は、XがSであり、nが1であり、mが1であり、R1が水素であり、R2がメチルであり、さらにR3が3-クロロフェニルであることを特徴とする化合物IIIに関する。
【0104】
ある実施形態では、本発明は、XがSであり、nが1であり、mが1であり、R1が水素であり、R2がメチルであり、R3が3-クロロフェニルであり、さらにR4がC(O)N(R6)2であることを特徴とする化合物IIIに関する。
【0105】
ある実施形態では、本発明は、XがSであり、nが1であり、mが1であり、R1が水素であり、R2がメチルであり、R3が3-クロロフェニルであり、さらにR4がC(O)N(H)iPrであることを特徴とする化合物IIIに関する。
【0106】
本発明の別の1態様は式IVによって表される化合物に関する:
【化15】

ここで、
R1は、出現毎に独立して、Hまたはアルキルを表す;
R2は、H、アルキル、アリール、アラルキル、または-C(O)R5である;
R3は、アリール、ヘテロアリール、またはアラルキルである;
R4は、水素、ヒドロキシル、アリール、ヘテロアリール、OR5、CO2R6、C(O)N(R6)2、C(O)NHOH、OC(O)R5またはオキサジアゾールである;
R5は、アルキル、アリール、ヘテロアリール、またはアラルキルである;
R6は、出現毎に独立して、水素、アルキル、アリール、またはアラルキルを表し、ここで、任意の2つのR6が共有結合して環を形成してもよい;
Xは、S、-S(O)-、または-S(O2)-である;
nは1、2、3、または4である;さらに
mは1、2、3、または4である。
【0107】
ある実施形態では、本発明は、XがSまたは-S(O)-であることを特徴とする化合物IVに関する。
【0108】
ある実施形態では、本発明は、R2がメチル、エチルまたはプロピルであることを特徴とする化合物IVに関する。
【0109】
ある実施形態では、本発明は、R2がメチルであることを特徴とする化合物IVに関する。
【0110】
ある実施形態では、本発明は、R3が必要に応じて置換されたフェニルであることを特徴とする化合物IVに関する。
【0111】
ある実施形態では、本発明は、R3がハロフェニルであることを特徴とする化合物IVに関する。
【0112】
ある実施形態では、本発明は、R3が3-クロロフェニルであることを特徴とする化合物IVに関する。
【0113】
ある実施形態では、本発明は、R4がC(O)N(R6)2であることを特徴とする化合物IVに関する。
【0114】
ある実施形態では、本発明は、R4がC(O)N(R6)2であり、さらにR6が出現毎に独立して水素またはアルキルを表すことを特徴とする化合物IVに関する。
【0115】
ある実施形態では、本発明は、XがSであり、nが1であり、mが1であり、R1が水素であり、R2がメチルであり、さらにR3が3-クロロフェニルであることを特徴とする化合物IVに関する。
【0116】
ある実施形態では、本発明は、XがSであり、nが1であり、mが1であり、R1が水素であり、R2がメチルであり、R3が3-クロロフェニルであり、さらにR4がC(O)N(R6)2であることを特徴とする化合物IVに関する。
【0117】
ある実施形態では、本発明は、XがSであり、nが1であり、mが1であり、R1が水素であり、R2がメチルであり、R3が3-クロロフェニルであり、さらにR4がC(O)N(H)iPrであることを特徴とする化合物IVに関する。
【0118】
本発明の別の1態様は式Vによって表される化合物に関する:
【化16】

ここで、
R1は、出現毎に独立して、Hまたはアルキルを表す;
R2は、H、アルキル、アリール、アラルキル、または-C(O)R4である;
R3は、アリール、ヘテロアリール、またはアラルキルである;
R4は、アルキル、アリール、ヘテロアリール、またはアラルキルである;
Xは、S、-S(O)-、または-S(O2)-である;
nは、出現毎に独立して、1、2、3、または4を表す;さらに
Yはアルキルである。
【0119】
ある実施形態では、本発明は、XがSまたは-S(O)-であることを特徴とする化合物Vに関する。
【0120】
ある実施形態では、本発明は、R2がメチルであることを特徴とする化合物Vに関する。
【0121】
ある実施形態では、本発明は、R3が必要に応じて置換されたフェニルであることを特徴とする化合物Vに関する。
【0122】
ある実施形態では、本発明は、R3が3-クロロフェニルであることを特徴とする化合物Vに関する。
【0123】
本発明の別の1態様は式VIによって表される化合物に関する:
【化17】

ここで、
R1は、出現毎に独立して、Hまたはアルキルを表す;
R2は、H、アルキル、アリール、アラルキル、または-C(O)R5である;
R3は、アリール、ヘテロアリール、またはアラルキルである;
R4は、水素、ヒドロキシル、アリール、ヘテロアリール、OR5、CO2R6、C(O)N(R6)2、C(O)NHOH、OC(O)R5またはオキサジアゾールである;
R5は、アルキル、アリール、ヘテロアリール、またはアラルキルである;
R6は、出現毎に独立して、水素、アルキル、アリール、またはアラルキルを表し、ここで、任意の2つのR6が共有結合して環を形成してもよい;
Xは、S、-S(O)-、または-S(O2)-である;
nは1、2、3、または4である;さらに
mは1、2、3、または4である。
【0124】
ある実施形態では、本発明は、XがSまたは-S(O)-であることを特徴とする化合物VIに関する。
【0125】
ある実施形態では、本発明は、R2がメチル、エチルまたはプロピルであることを特徴とする化合物VIに関する。
【0126】
ある実施形態では、本発明は、R2がメチルであることを特徴とする化合物VIに関する。
【0127】
ある実施形態では、本発明は、R3が必要に応じて置換されたフェニルであることを特徴とする化合物VIに関する。
【0128】
ある実施形態では、本発明は、R3がハロフェニルであることを特徴とする化合物VIに関する。
【0129】
ある実施形態では、本発明は、R3が3-クロロフェニルであることを特徴とする化合物VIに関する。
【0130】
ある実施形態では、本発明は、R4がC(O)N(R6)2であることを特徴とする化合物VIに関する。
【0131】
ある実施形態では、本発明は、R4がC(O)N(R6)2であり、さらにR6が出現毎に独立して水素またはアルキルを表すことを特徴とする化合物VIに関する。
【0132】
ある実施形態では、本発明は、XがSであり、nが1であり、mが1であり、R1が水素であり、R2がメチルであり、さらにR3が3-クロロフェニルであることを特徴とする化合物VIに関する。
【0133】
ある実施形態では、本発明は、XがSであり、nが1であり、mが1であり、R1が水素であり、R2がメチルであり、R3が3-クロロフェニルであり、さらにR4がC(O)N(R6)2であることを特徴とする化合物VIに関する。
【0134】
ある実施形態では、本発明は、XがSであり、nが1であり、mが1であり、R1が水素であり、R2がメチルであり、R3が3-クロロフェニルであり、さらにR4がC(O)N(H)iPrであることを特徴とする化合物VIに関する。
【0135】
ある実施形態では、本発明は、化合物が、哺乳類のドーパミン、セロトニンまたはノルエピネフリンの受容体または輸送体に基づくアッセイにおいて1μM未満のEC50を有することを特徴とする、式I、II、III、IV、V、またはVIの化合物に関する。
【0136】
ある実施形態では、本発明は、化合物が、哺乳類のドーパミン、セロトニンまたはノルエピネフリンの受容体または輸送体に基づくアッセイにおいて10nM未満のEC50を有することを特徴とする、式I、II、III、IV、V、またはVIの化合物に関する。
【0137】
ある実施形態では、本発明は、化合物が、哺乳類のドーパミン、セロトニンまたはノルエピネフリンの受容体または輸送体に基づくアッセイにおいて100nM未満のEC50を有することを特徴とする、式I、II、III、IV、V、またはVIの化合物に関する。
【0138】
ある実施形態では、本発明は、化合物が、哺乳類のドーパミン、セロトニンまたはノルエピネフリンの受容体または輸送体に基づくアッセイにおいて1μM未満のIC50を有することを特徴とする、式I、II、III、IV、V、またはVIの化合物に関する。
【0139】
ある実施形態では、本発明は、化合物が、哺乳類のドーパミン、セロトニンまたはノルエピネフリンの受容体または輸送体に基づくアッセイにおいて10nM未満のIC50を有することを特徴とする、式I、II、III、IV、V、またはVIの化合物に関する。
【0140】
ある実施形態では、本発明は、化合物が、哺乳類のドーパミン、セロトニンまたはノルエピネフリンの受容体または輸送体に基づくアッセイにおいて100nM未満のIC50を有することを特徴とする、式I、II、III、IV、V、またはVIの化合物に関する。
【0141】
治療の方法
本発明の別の1態様は、哺乳類へ式I、II、III、IV、V、またはVIの化合物の治療的効果量を投与する工程を含む、哺乳類においてドーパミン、セロトニンまたはノルエピネフリンの受容体または輸送体の活性を調節する方法に関する。
【0142】
ある実施形態では、本発明は、哺乳類が霊長類、ウマ、イヌまたはネコであることを特徴とする前述の方法に関する。
【0143】
ある実施形態では、本発明は、哺乳類がヒトであることを特徴とする前述の方法に関する。
【0144】
ある実施形態では、本発明は、化合物が経口投与されることを特徴とする前述の方法に関する。
【0145】
ある実施形態では、本発明は、化合物が静脈内投与されることを特徴とする前述の方法に関する。
【0146】
ある実施形態では、本発明は、化合物が舌下投与されることを特徴とする前述の方法に関する。
【0147】
ある実施形態では、本発明は、化合物が眼内投与されることを特徴とする前述の方法に関する。
【0148】
ある実施形態では、本発明は、化合物が経皮投与されることを特徴とする前述の方法に関する。
【0149】
ある実施形態では、本発明は、化合物が直腸内投与されることを特徴とする前述の方法に関する。
【0150】
ある実施形態では、本発明は、化合物が膣内投与されることを特徴とする前述の方法に関する
ある実施形態では、本発明は、化合物が局所投与されることを特徴とする前述の方法に関する。
【0151】
ある実施形態では、本発明は、化合物が筋肉内投与されることを特徴とする前述の方法に関する。
【0152】
ある実施形態では、本発明は、化合物が皮下投与されることを特徴とする前述の方法に関する。
【0153】
ある実施形態では、本発明は、化合物が口腔内投与されることを特徴とする前述の方法に関する。
【0154】
ある実施形態では、本発明は、化合物が経鼻投与されることを特徴とする前述の方法に関する。
【0155】
本発明の別の1態様は、哺乳類に式I、II、III、IV、V、または VIの化合物の治療的効果量を投与する工程を含む、耽溺、不安症、うつ病、性機能障害、高血圧、偏頭痛、アルツハイマー病、肥満、嘔吐、精神疾患、鎮痛、統合失調症、パーキンソン病、下肢静止不能症候群、睡眠障害、注意欠陥多動性障害、過敏性腸症候群、早漏、月経不快気分症候群、尿失禁、炎症性疼痛、神経障害性疼痛、レッシュ・ナイハン病、ウィルソン病、またはトゥーレット症候群に罹患した哺乳類を治療する方法に関する。
【0156】
ある実施形態では、本発明は、哺乳類が霊長類、ウマ、イヌまたはネコであることを特徴とする前述の方法に関する。
【0157】
ある実施形態では、本発明は、哺乳類がヒトであることを特徴とする前述の方法に関する。
【0158】
ある実施形態では、本発明は、化合物が経口投与されることを特徴とする前述の方法に関する。
【0159】
ある実施形態では、本発明は、化合物が静脈内投与されることを特徴とする前述の方法に関する。
【0160】
ある実施形態では、本発明は、化合物が舌下投与されることを特徴とする前述の方法に関する。
【0161】
ある実施形態では、本発明は、化合物が眼内投与されることを特徴とする前述の方法に関する。
【0162】
ある実施形態では、本発明は、化合物が経皮投与されることを特徴とする前述の方法に関する。
【0163】
ある実施形態では、本発明は、化合物が直腸内投与されることを特徴とする前述の方法に関する。
【0164】
ある実施形態では、本発明は、化合物が膣内投与されることを特徴とする前述の方法に関する。
【0165】
ある実施形態では、本発明は、化合物が局所投与されることを特徴とする前述の方法に関する。
【0166】
ある実施形態では、本発明は、化合物が筋肉内投与されることを特徴とする前述の方法に関する。
【0167】
ある実施形態では、本発明は、化合物が皮下投与されることを特徴とする前述の方法に関する。
【0168】
ある実施形態では、本発明は、化合物が口腔内投与されることを特徴とする前述の方法に関する。
【0169】
ある実施形態では、本発明は、化合物が経鼻投与されることを特徴とする前述の方法に関する。
【0170】
医薬組成物
別の1態様では、本発明は、1種類以上の医薬品として許容されるキャリヤー(添加剤) および/または希釈剤と共に製剤化された、1種類以上の上記の化合物の治療的効果量を含む医薬品として許容される組成物を提供する。下記に詳細に示す通り、本発明の医薬組成物は、固体または液体形状での投与のために特別に製剤化することができ、下記の投与に適合させたものを含む: (1) 経口投与、たとえば、水薬 (水系または非水系液剤または懸濁剤) 、錠剤、たとえば、口腔、舌下、および全身吸収を目的とするもの、ボーラス、散剤、顆粒剤、舌への投与用のペースト; (2) 非経口投与、たとえば皮下、筋肉内、静脈内または硬膜外注射によって、たとえば、滅菌液剤または懸濁剤、または徐放性製剤として; (3) 局所使用、たとえば、皮膚に使用するクリーム、軟膏、または徐放性パッチまたはスプレーとして; (4) 膣内にまたは直腸内投与、たとえば、ペッサリー、クリーム、または泡として; (5) 舌下投与; (6) 眼内投与; (7) 経皮投与;または (8) 経鼻投与。
【0171】
ここで用いられる「治療的効果量」の語句は、本発明の化合物を含む化合物、材料、または組成物が、任意の医療処置に適用可能な合理的な利益/リスク比で、少なくとも、動物の中の細胞の部分集団においていくらかの目的の治療効果を生じるために有効である量を意味する。
【0172】
「医薬品として許容される」の語句はここでは、健全な医療上の判断の範囲内で、ヒトおよび動物の組織と接触させる使用に適当であり、過剰な毒性、刺激性、アレルギー反応、またはその他の問題または合併症がなく、合理的な利益/リスク比に相応した、化合物、材料、組成物、および/または剤形をいうのに用いられる。
【0173】
ここで用いられる「医薬品として許容されるキャリヤー」の語句は、1つの臓器または身体の部分から別の臓器または身体の部分に当該化合物を運搬または輸送するのに関与する、たとえば、液体または固体の増量剤、希釈剤、添加物、製造補助剤 (たとえば、滑沢剤、タルクマグネシウム、ステアリン酸カルシウムまたはステアリン酸亜鉛、またはステアリン酸) または溶媒封入物質のような、医薬品として許容される材料、組成物、媒体を意味する。各キャリヤーは、製剤のその他の成分と適合性であり患者に有害でないという意味で「許容される」ものでなければならない。医薬品として許容されるキャリヤーとして用いることができる材料の一部の例は下記を含む: (1) 糖類、たとえば乳糖、グルコースおよびスクロース; (2) デンプン、たとえばトウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプン; (3) セルロース、およびその誘導体、たとえばナトリウムカルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、および酢酸セルロース; (4) トラガント末; (5) 麦芽; (6) ゼラチン; (7) タルク; (8) 添加物、たとえばカカオ脂および坐剤ロウ; (9) 油、たとえば落花生油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、および大豆油; (10) グリコール、たとえばプロピレングリコール; (11) ポリオール、たとえばグリセリン、ソルビトール、マンニトール、およびポリエチレングリコール; (12) エステル、たとえばオレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル; (13) 寒天; (14) 緩衝剤、たとえば水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム; (15) アルギン酸; (16) パイロジェンフリー水; (17) 等張生理食塩水; (18) リンゲル液; (19) エチルアルコール; (20) pH緩衝溶液; (21) ポリエステル、ポリカーボネートおよび/またはポリ無水物;および (22) 医薬製剤に用いられるその他の無毒性の適合性物質。
【0174】
上記に示す通り、本化合物のある実施形態は、アミノまたはアルキルアミノといった塩基性官能基を含んでいてよく、および、したがって医薬品として許容される酸と共に、医薬品として許容される塩を形成することができる。「医薬品として許容される塩」の語はこの点で、本発明の化合物の、相対的に無毒性の、無機および有機酸付加塩をいう。これらの塩は、in situで投与媒体中で、または剤形製造過程で、または精製した本発明の化合物を遊離塩基の形で、適当な有機酸または無機酸と別々に反応させ、およびそのように生じた塩を続く精製の間に単離することによって、調製することができる。代表的な塩は、臭化水素酸塩、塩酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、酢酸塩、吉草酸塩、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリル酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、リン酸塩、トシル酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、ナフテン酸塩、メシル酸塩、グルコヘプトン酸塩、ラクトビオン酸塩、およびラウリルスルホン酸塩などを含む (たとえば、Berge et al. (1977)"Pharmaceutical Salts”, J. Pharm. Sci. 66: 1-19を参照) 。
【0175】
本化合物の医薬品として許容される塩は、たとえば、無毒性の有機酸または無機酸からの、従来の無毒性塩またはその化合物の第四級アンモニウム塩を含む。たとえば、そのような従来の無毒性塩は、たとえば塩酸, 臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸、などといった無機酸に由来するもの;および有機酸、たとえば酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パルミチン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2-アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イソチオ酸などといった有機酸から調製された塩を含む。
【0176】
別の場合には、本発明の化合物は1個以上の酸性官能基を含んでいてよく、および, したがって, 医薬品として許容される塩基と、医薬品として許容される塩を形成することができる。「医薬品として許容される塩」の語はこの場合、本発明の化合物の、相対的に無毒性の、無機および有機塩基付加塩をいう。これらの塩は同様に、in situで投与媒体中で、または剤形製造過程で、または精製した本化合物を遊離酸の形で、たとえば医薬品として許容される金属陽イオンの水酸化物、炭酸塩、または重炭酸塩といった適当な塩基と、アンモニアと、または医薬品として許容される有機一級、二級、または三級アミンと、別々に反応させることによって調製することができる。代表的なアルカリまたはアルカリ土類塩は、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、およびアルミニウム塩などを含む。塩基付加塩の形成に有用である代表的な有機アミンは、エチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジン などを含む。 (たとえば、Berge et al. , 上記を参照)
湿潤剤、乳化剤、および滑沢剤、たとえばラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウム、および着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味料、香料、保存料および酸化防止剤もまた、本組成物中に存在していてよい。
【0177】
医薬品として許容される酸化防止剤の例は下記を含む: (1) 水溶性酸化防止剤、たとえばアスコルビン酸、システイン塩酸塩、炭酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど; (2) 脂溶性酸化防止剤、たとえばアスコルビン酸パルミチン酸エステル、ブチルヒドロキシアニソール (BHA) 、ブチルヒドロキシトルエン (BHT) 、レシチン、没食子酸プロピル、アルファ-トコフェロール、など;および (3) 金属キレート剤、たとえばクエン酸、エチレンジアミン四酢酸 (EDTA) 、ソルビトール、酒石酸、リン酸、など。
【0178】
本発明の製剤は、経口、経鼻、局所 (口腔および舌下を含む) 、直腸内、膣内および/または非経口投与に適当であるものを含む。製剤は単位用量剤形で便利に与えることができ、および薬学の分野でよく知られている任意の方法によって調製することができる。キャリヤー材料と組み合わせて単一用量剤形を製することができる有効成分の量は、治療する宿主、特定の投与形態に応じて変化する。キャリヤー材料と組み合わせて単一用量剤形を製することができる有効成分の量は、一般的に、治療効果を生じる化合物の量となる。一般的に、百パーセントのうち、この量は有効成分の約0. 1パーセントから約99パーセント、好ましくは約5パーセントから約70パーセント、非常に好ましくは約10パーセントから約30パーセントの範囲である。
【0179】
ある実施形態では、本発明の製剤は、シクロデキストリン、リポソーム、ミセル形成剤たとえば胆汁酸、および高分子キャリヤーたとえばポリエステルおよびポリ無水物より成る群から選択された添加物;および本発明の化合物を含む。ある実施形態では、前述の製剤は、本発明の化合物に経口での生物学的利用能を与える。
【0180】
これらの製剤または組成物を調製する方法は、本発明の化合物を、キャリヤーおよび、必要に応じて、1種類以上の副成分と会合させる工程を含む。一般的に、その製剤は、本発明の化合物を液体キャリヤー、または微細に分割された固体キャリヤー、または両方と均一におよび密に会合させ、その後、必要に応じて、製品を成形することによって調製される。
【0181】
本発明の経口投与に適した製剤は、それぞれ有効成分として本発明の化合物の規定量を含む、カプセル剤、カシェ剤、丸剤、錠剤、トローチ剤 (香味つき基剤、通常スクロースおよびアラビアゴムまたはトラガントを用いる) 、散剤、顆粒剤の形、または水系または非水系液体中の液剤または懸濁剤として、または水中油型または油中水型液体の乳剤として、またはエリキシル剤またはシロップ剤として、または香錠剤として (不活性基剤、たとえばゼラチンおよびグリセリン、またはスクロースおよびアラビアゴム) および/または含漱剤としてなどであってよい。本発明の化合物はまた、ボーラス、舐剤、またはペーストとして投与することができる。
【0182】
経口投与用の本発明の固体剤形 (カプセル剤、錠剤、丸剤、糖衣錠剤、散剤、顆粒剤、トローチなど) では、有効成分は、1種類以上の医薬品として許容されるキャリヤー、たとえばクエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウム、および/または下記のうち任意のものと混合される: (1) 賦形剤または増量剤、たとえばデンプン、乳糖、スクロース、グルコース、マンニトール、および/またはケイ酸; (2) 結合剤、たとえば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースおよび/またはアラビアゴム; (3) 湿潤剤、たとえばグリセロール; (4) 崩壊剤、たとえば寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモデンプンまたはタピオカデンプン、アルギン酸、ある種のケイ酸塩、および炭酸ナトリウム; (5) 溶液抑制剤、たとえばパラフィン; (6) 吸収加速剤、たとえば四級アンモニウム化合物、および界面活性剤、たとえば、ポロクサマーおよびラウリル硫酸ナトリウム;(7)湿潤剤、たとえば、セチルアルコール、モノステアリン酸グリセロール、および非イオン性界面活性剤; (8) 吸収剤、たとえばカオリンおよびベントナイト粘土; (9) 滑沢剤、たとえばタルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸、およびその混合物;(10)着色剤;および(11)徐放剤、たとえばクロスポビドンまたはエチルセルロース。
【0183】
カプセル剤、錠剤、および丸剤の場合、医薬組成物はまた緩衝剤を含んでいてよい。同様の種類の固体組成物もまた、ラクトースすなわち乳糖、および高分子量ポリエチレングリコールなどといった添加物を用い、硬質および軟質ゼラチンカプセル剤で、賦形剤として用いることができる。
【0184】
錠剤は、必要に応じて1種類以上の副成分と共に、圧縮または成形によって製造することができる。圧縮錠剤は、結合剤 (たとえば、ゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース) 、滑沢剤、不活性な希釈剤、保存料、崩壊剤 (たとえば、デンプングリコール酸ナトリウムまたは架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム) 、界面活性または分散剤を用いて調製することができる。成形錠剤は、不活性な液体希釈剤で湿らせた粉末化合物の混合物を適当な機械で成形することによって製造できる。
【0185】
本発明の医薬組成物の錠剤、およびその他の固体剤形、たとえば糖衣錠剤、カプセル剤、丸剤、および顆粒剤は、必要に応じてコーティングおよび被覆、たとえば腸溶コーティングおよび医薬製剤技術でよく知られているその他のコーティングを用いて得るまたは調製することができる。それらはまた、たとえば、目的の放出プロファイルを与えるためのさまざまな割合のヒドロキシプロピルメチルセルロース、その他のポリマーマトリクス、リポソームおよび/またはマイクロスフィアを用いて、有効成分の遅放性または徐放性を与えるように製剤化することができる。それらはまた迅速な放出のために製剤化することができ、たとえば、凍結乾燥することができる。それらはまた、たとえば、細菌を保持するフィルターを通した濾過によって、または使用直前に滅菌水または他の注射用滅菌媒体に溶解することができる滅菌固体組成物の形での滅菌剤の組み込みによって、滅菌することができる。これらの組成物はまた、必要に応じて不透明化剤を含んでいてよく、および消化管の特定の部分で、必要に応じて徐放性に、有効成分だけを、または優先的に、放出する組成のものであってよい。使用することができる埋め込み組成物の例は、ポリマー物質およびロウを含む。有効成分はまた、適切な場合には、上記の添加物の1種類以上を用いた、マイクロカプセル化形態であってよい。
【0186】
本発明の化合物の経口投与のための液体剤形は、医薬品として許容される乳剤、マイクロエマルション、液剤、懸濁剤、シロップ剤およびエリキシル剤を含む。有効成分に加えて、液体剤形は本分野で一般的に用いられる不活性な賦形剤、たとえば水またはその他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、たとえばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1, 3-ブチレングリコール、油 (特に、綿実油、落花生油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、およびゴマ油) 、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコール、およびソルビタンの脂肪酸エステル、およびその混合物を含んでいてよい。
【0187】
不活性な希釈剤の他に、経口組成物はまた、湿潤剤、乳化剤および懸濁化剤、甘味料、香料、着色料、着香料、および保存料といった助剤を含んでいてもよい。
【0188】
懸濁剤は、活性化合物に加えて、懸濁化剤、たとえば、エトキシルイソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天、およびトラガント、およびその混合物を含んでいてよい。
【0189】
本発明の医薬組成物の直腸内または膣内投与のための製剤は、坐剤として提供することができ、これは1種類以上の本発明の化合物を、たとえば、カカオ脂、ポリエチレングリコール、坐剤用ロウまたはサリチル酸塩を含む1種類以上の適当な非刺激性添加物またはキャリヤーと混合することによって調製することができ、および固体室温にて固体であるが、体温では液体であり、したがって、直腸または膣腔内で溶解しおよび活性化合物を放出する。
【0190】
膣内投与に適した本発明の製剤はまた、本分野で適当であることが知られているキャリヤーを含む、ペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト剤、泡、またはスプレー製剤を含む。
【0191】
本発明の化合物の経皮投与のための剤形は、散剤、スプレー、軟膏、ペースト剤、クリーム、ローション、ゲル、液剤、パッチ、および吸入剤を含む。活性化合物は、医薬品として許容されるキャリヤーと、および必要な任意の保存料、緩衝剤、または推進剤と、滅菌条件下で混合することができる。
【0192】
軟膏、ペースト剤、クリーム、およびゲルは、本発明の活性化合物に加えて、添加物、たとえば動植物脂肪、油、ロウ、パラフィン、デンプン、トラガント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルク、および酸化亜鉛、またはその混合物を含んでいてよい。
【0193】
散剤およびスプレーは、本発明の化合物に加えて、添加物、たとえば乳糖、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、およびポリアミド粉末、またはこれらの物質の混合物を含んでいてよい。スプレーは、さらに従来の推進剤たとえば塩化フッ化炭化水素および揮発性非置換炭化水素、たとえばブタンおよびプロパンを含んでいてよい。
【0194】
経皮パッチは、本発明の化合物の身体への徐放を与える付加的な利点を有する。そのような剤形は、化合物を適当な媒体に溶解または分散することによって得ることができる。吸収促進剤もまた、皮膚を通した化合物の流入を増加させるために用いることができる。そのような流入の速度は、速度調節膜を用意するかまたは化合物を高分子マトリクスまたはゲル中に分散させることによって調節することができる。
【0195】
眼科用製剤、眼軟膏、散剤、液剤などもまた本発明の範囲内にあると考えられる。
【0196】
非経口投与に適した本発明の医薬組成物は、本発明の1種類以上の化合物を、医薬品として許容される1種類以上の滅菌等張水系または非水系液剤、分散剤、懸濁剤または乳剤、あるいは、滅菌注射用液または分散剤中に使用直前に再構成することができる滅菌粉末、と組み合わせて含んでいてよく、それら滅菌粉末は、糖類、アルコール、酸化防止剤、緩衝剤、静菌剤、製剤を対象レシピエントの血液と等張にする溶質、あるいは懸濁化剤または増粘剤を含んでいてよい。
【0197】
本発明の医薬組成物に使用することができる適当な水系および非水系キャリヤーの例は、水、エタノール、ポリオール (たとえばグリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、など) 、およびその適当な混合物、植物油、たとえばオリーブ油、および注射用有機エステル、たとえばオレイン酸エチルを含む。適当な流動性は、たとえば、レシチンのようなコーティング材料の使用によって、分散剤の場合には必要な粒子径の維持によって、および界面活性剤の使用によって、維持することができる。
【0198】
これらの組成物はまた、保存料、湿潤剤、乳化剤、および分散化剤といった助剤を含んでいてよい。対象化合物に対する微生物の作用の防止は、さまざまな抗菌剤および抗真菌剤、たとえば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、などの添加によって確保することができる。また、等張剤、たとえば糖類、塩化ナトリウムなどを組成物に含めることが望ましい。加えて、注射用剤形の持続性吸収は、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンといった、吸収を遅らせる物質の添加によって実現することができる。
【0199】
一部の場合には、医薬の効果を持続させるために、皮下または筋肉内注射からの医薬の吸収を遅らせることが望ましい。これは、水溶性が低い結晶性または非晶性材料の液体懸濁剤の使用によって達成することができる。医薬吸収の速度はその結果、溶解速度に依存し、さらに溶解速度は結晶の大きさおよび結晶形に依存するであろう。代替的に、非経口投与される剤形の持続性吸収は、その医薬を油媒体に溶解または懸濁することによって達成される。
【0200】
注射用デポ形態は、ポリラクチド-ポリグリコリドといった生分解性高分子中に対象化合物のマイクロカプセル化マトリクスを形成することによって製造される。ポリマーに対する薬物の比、および使用した特定のポリマーの性質に依存して、薬物放出の速度を調節することができる。他の生分解性ポリマーの例は、ポリ (オルトエステル) およびポリ (無水物) を含む。デポ注射用製剤はまた、体組織に適合性であるリポソームまたはマイクロエマルションに薬物を封入することによって調製される。
【0201】
本発明の化合物が医薬として、ヒトおよび動物に投与される場合、それ自体を、またはたとえば0. 1ないし99% (より好ましくは、10ないし30%) の有効成分を医薬品として許容されるキャリヤーと組み合わせて含む医薬組成物として投与することができる。
【0202】
本発明の調製物は、経口的に、非経口的に、局所に、または直腸内に投与することができる。それらはもちろん各投与経路に適した剤形で投与される。たとえば、それらは、錠剤またはカプセル剤の形態で、注射、吸入、眼科用ローション、軟膏、坐剤、などによって、注射、注入、または吸入による投与;ローションまたは軟膏によって局所;および坐剤によって直腸内に投与される。経口投与が好ましい。
【0203】
ここで用いられる「非経口投与」および「非経口的に投与される」の語句は、経腸および局所投与以外の、通常は注射による投与形態を意味し、限定はされないが、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、関節包内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、角皮内、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、および胸骨内注射および輸液を含む。
【0204】
ここで用いられる「全身投与」、「全身的に投与される」、「末梢投与」および「末梢に投与される」の語句は、化合物、医薬、または他の材料が、患者の全身に入りしたがって代謝およびその他の同様の処理に供されるような、たとえば皮下投与のような、直接に中枢神経系へ以外の投与を意味する。
【0205】
これらの化合物は、ヒトおよびその他の動物へ治療のために、経口的に、経鼻的にたとえばスプレーによって、直腸内に、膣内に、非経口的に、大槽内に、および局所的にたとえば散剤、軟膏またはドロップによって、口腔におよび舌下にを含む任意の適当な投与経路によって、投与することができる
選択した投与経路にかかわらず、適当な水和形で用いることができる本発明の化合物、および/または本発明の医薬組成物は、当業者に既知である従来の方法によって、医薬品として許容される剤形に製剤化される。
【0206】
本発明の医薬組成物中の有効成分の実際の用量レベルは、特定の患者、組成物、および投与形態について、患者に対して毒性にならずに、目的の治療反応を達成するのに有効である有効成分の量を得られるように変えることができる。
【0207】
選択された用量レベルは、使用する本発明の特定の化合物、またはそのエステル、塩、またはアミドの活性、投与経路、投与時間、使用する特定の化合物の排泄速度または代謝速度、治療期間、使用する特定の化合物と組み合わせて用いられる他の医薬、化合物および/または材料、治療を受ける患者の年齢、性別、体重、症状、全身的健康、および以前の病歴、および医療分野においてよく知られている同様の因子、を含むいろいろな因子に依存する。
【0208】
当業者である医師または獣医師は、必要な医薬組成物の有効量を容易に決定し製剤化することができる。たとえば、医師または獣医師は、医薬組成物に使用される本発明の化合物の用量を、目的の治療効果を達成するために必要であるよりも低いレベルで開始し、目的の効果が達成されるまで徐々に用量を増やすことができる。
【0209】
一般的に、本発明の化合物の適当な1日量は、治療効果を生じるのに有効である最低の用量である化合物の量である。そのような有効量は一般的に上記の因子に依存する。一般的に、本発明の化合物の患者に対する静脈内、脳室内、および皮下投与量は、適応の目的の効果を得るために使用する場合、1日当たりの体重キログラム当たり約0. 0001mgから約100mgの範囲である。必要に応じて、活性化合物の有効1日量は、1日を通じて適当な間隔で別々に、必要に応じて単位剤形で投与される、2、3、4、5、6またはそれより多数の部分投与量として投与することができる。しかし、好ましい投薬は1日1回投与である。
【0210】
本発明の化合物を単独で投与することが可能である一方、当該化合物を医薬製剤 (組成物) として投与することが好ましい。
【0211】
本発明に記載の化合物は、他の医薬から類推して、ヒトまたは動物用薬における使用に便利な任意の方法での投与のために製剤化することができる。
【0212】
別の1態様では、本発明は、1種類以上の医薬品として許容されるキャリヤー (添加剤) および/または希釈剤と共に製剤化された、1種類以上の対象化合物の治療的効果量を上記の通り含む、医薬品として許容される組成物を提供する。下記に詳細に示す通り、本発明の医薬組成物は、下記に適合させたものを含む、固体または液体の形状での投与のために特別に製剤化することができる: (1) 経口 投与, たとえば、(1) 経口投与、たとえば、水薬 (水系または非水系液剤または懸濁剤) 、錠剤、ボーラス、散剤、顆粒剤、舌への投与用のペースト; (2) 非経口投与、たとえば、皮下、筋肉内、静脈内注射によって、たとえば、滅菌液剤または懸濁剤として; (3) 局所使用、たとえば、皮膚、肺、または粘膜に使用するクリーム、軟膏、またはスプレーとして;または (4) 膣内にまたは直腸内投与、たとえば、ペッサリー、クリームまたは泡として; (5) 舌下または口腔内投与; (6) 眼内投与; (7) 経皮投与;または (8) 経鼻投与。
【0213】
「治療」の語はまた、予防、治療、および治癒も包含することが意図される。
【0214】
この治療を受ける患者は、必要とする任意の動物であり、霊長類、特にヒト、およびその他の哺乳類たとえばウマ、ウシ、ブタ、およびヒツジ;および家禽および一般的に愛玩動物を含む。
【0215】
本発明の化合物は、それ自体で、または医薬品として許容されるキャリヤーとの混合物として投与することができ、またペニシリン、セファロスポリン、アミノグリコシド、および糖ペプチドといった抗菌剤と併せて投与することもできる。併用治療は、このように、先に投与されたものの治療効果が完全に消えないうちに次のものが投与される方法での、活性化合物の、連続的な、同時の、および別々の投与を含む。
【0216】
本発明の活性化合物を動物飼料へ添加することは、好ましくは活性化合物を有効量で含む適当な飼料プレミックスを調製し、そのプレミックスを完成飼料に組み込むことによって達成される。
【0217】
代替的に、有効成分を含む中間濃縮物または飼料添加剤を飼料に混合することができる。そのような飼料プレミックスおよび完成飼料を調製および投与できる方法は参考書に記載されている (たとえば”Applied Animal Nutrition”, W. H. Freedman and CO., San Francisco, U. S. A., 1969 または"Livestock Feeds および Feeding"0 および B books, Corvallis, Ore., U. S. A., 1977) 。
ミセル
近年、製薬産業はマイクロエマルジョン化技術を、一部の親油性(水に不溶性)の薬剤の生物学的利用能を改善するために導入した。例は、トリメトリン(Dordunoo, S. K., et al., Drug Development and Industrial Pharmacy, 17 (12) 、 1685-1713,1991およびREV5901(Sheen, P. C., et al., J Pharm Sci80 (7) , 712-714,1991) を含む。特に、マイクロエマルジョン化は、循環系の代わりにリンパ系への吸収を優先的に導き、それによって肝臓をバイパスし、および肝循環における化合物の分解を防ぐことによる生物学的利用能の向上を与える。
【0218】
発明の1態様では、製剤は本発明の化合物および少なくとも1つの両親媒性キャリヤーから形成されたミセルを含み、そのミセルは約100nmより小の平均直径を有する。より好ましい実施形態は約50nm未満の平均直径を有するミセルを提供し、およびさらにより好ましい実施形態は約30nm未満、またはさらに約20nm未満の平均直径を有するミセルを提供する。
【0219】
すべての適当な両親媒性キャリヤーが考慮される一方、現在好ましいキャリヤーは通常、一般的に安全と認められる (Generally-Recognized-as-Safe、GRAS)ものであり、および、本発明の化合物を可溶化すること、および以後の工程で溶液が複雑な水相 (たとえばヒト胃腸管で見られるもののような) と接触する際にマイクロエマルジョン化することの両方が可能なものである。通常は、これらの必要条件を満たす両親媒性成分は、HLB(親油性に対する親水性バランス)値2-20を有し、およびそれらの構造はC-6からC-20の範囲の直鎖脂肪族ラジカルを含む。例はポリエチレン-グリコール化脂肪グリセリドおよびポリエチレングリコールである。
【0220】
特に好ましい両親媒性キャリヤーは、飽和およびモノ不飽和ポリエチレングリコール化脂肪酸グリセリド、たとえば、完全にまたは一部が水素化されたさまざまな植物油から得られるものである。そのような油は、有利にトリ、ジ、およびモノ脂肪酸グリセリド、および対応する脂肪酸のジおよびモノポリエチレングリコールエステルから成り、カプリン酸4-10%、カプリン酸3-9%、ラウリン酸40-50%、ミリスチン酸14-24%、パルミチン酸4-14%、およびステアリン酸5-15%を含む好ましい脂肪酸組成を有する。両親媒性キャリヤーの別の有用な種類は、部分エステル化ソルビタンおよび/またはソルビトールを含み、飽和またはモノ不飽和脂肪酸(SPAN系)または対応するエトキシル化類縁体(TWEEN系) を含む。
市販の両親媒性キャリヤーが特に考慮され、Gelucire系、Labrafil、Labrasol、またはLauroglycol(すべてGattefosse Corporation (仏国Saint Priest) により製造販売) 、モノオレイン酸PEG、ジオレイン酸PEG、モノラウリン酸およびジラウリン酸PEG、レシチン、ポリソルベート80など(米国および世界の数社により製造販売) を含む。
【0221】
ポリマー
本発明における使用に適した親水性ポリマーは、容易に水に溶解し、小胞を形成する脂質と共有結合でき、およびin vivoで毒性作用無しに耐容される(すなわち、生体適合性である) ものである。適当なポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG) 、ポリ乳酸(別名ポリラクチド) 、ポリグリコール酸(別名ポリグリコリド) 、ポリ乳酸-ポリグリコール酸共重合体、およびポリビニルアルコールを含む。好ましいポリマーは、約100または120ダルトンから最大約5,000または10,000ダルトン、およびより好ましくは約300ダルトンないし約5,000ダルトンの分子量を有するものである。特に好ましい1実施形態では、ポリマーは、約100ないし約5,000ダルトンの分子量を有する、およびより好ましくは約300ないし約5,000ダルトンの分子量を有するポリエチレングリコールである。特に好ましい1実施形態では、ポリマーは750ダルトン(PEG(750)) のポリエチレングリコールである。ポリマーはまた、含まれるモノマーの数によって定義できる;本発明の好ましい1実施形態は、少なくとも約3個のモノマーのポリマー、たとえば3個のモノマーから成るPEGポリマー(約150ダルトン) を利用する。
本発明における使用に適する他の親水性ポリマーは、ポリビニルピロリドン、ポリメトキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、および、ヒドロキシメチルセルロースまたはヒドロキシエチルセルロースといった誘導体化セルロースを含む。
【0222】
ある実施形態では、本発明の製剤は、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアルキレン、アクリルおよびメタクリルエステルのポリマー、ポリビニルポリマー、ポリグリコリド、ポリシロキサン、ポリウレタンおよびその共重合体、セルロース、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、乳酸およびグリコール酸のポリマー、ポリ無水物、ポリ(オルト)エステル、ポリ(butic acid) 、ポリ(吉草酸) 、ポリ(ラクチド-カプロラクトン共重合体) 、多糖、タンパク質、ポリヒアルロン酸、ポリシアノアクリレート、およびその配合物、混合物、または共重合体より成る群から選択される生体適合性ポリマーを含む。
【0223】
シクロデキストリン
シクロデキストリンは、6、7または8個のグルコース単位から成る環状オリゴ糖であり、それぞれギリシャ文字のアルファ、ベータまたはガンマで表される。グルコース単位6個より少ないシクロデキストリンは存在が知られていない。グルコース単位はアルファ-1,4-グルコシド結合によって繋がっている。糖単位の椅子型配座の結果として、すべての二次水酸基(C-2、C-3の)は環の片側に位置し、一方、C-6のすべての一次水酸基は反対側に位置する。結果として、外側面は親水性であり、シクロデキストリンは水溶性になる。対照的に、シクロデキストリンの凹部は、C-3およびC-5原子の水素によって、およびエーテル様酸素によって覆われているため、疎水性である。これらのマトリクスは、たとえば、17ベータ-エストラジオールといったステロイド化合物を含む、さまざまな相対的に疎水性の化合物との錯体形成を可能にする(たとえば、van Uden et al. Plant Cell Tiss. Org. Cult. 38 : 1-3-113 (1994)を参照) 。錯体形成はファンデルワールス相互作用によっておよび水素結合形成によって起こる。シクロデキストリンの化学の全般的総説については、Wenz, Agnew. Chem. Int. Ed. Engl., 33: 803-822 (1994) を参照。
【0224】
シクロデキストリン誘導体の生理化学的性質は、置換の種類および程度に大きく依存する。たとえば、水への溶解度は、不溶性(たとえば、トリアセチル-ベータ-シクロデキストリン)から147%可溶性(w/v)(G-2-ベータ-シクロデキストリン) の範囲にわたる。加えて、シクロデキストリン誘導体は多数の有機溶媒に可溶である。シクロデキストリンの性質は、さまざまな製剤成分の溶解度を上昇または低下させることにより、その溶解度の調節を可能にする。
【0225】
多数のシクロデキストリンおよびその調製方法が記載されている。たとえば、Parmeter(I) , et al.(米国特許第3,453,259号明細書)およびGramera, et al.(米国特許第3,459,731号明細書)は、電気的中性の シクロデキストリンを記載した。他の誘導体は、陽イオン的性質を有するシクロデキストリン[Parmeter(II) 、米国特許第3,453,257号明細書],不溶性架橋化シクロデキストリン(Solms、米国特許第3,420,788号明細書) 、および陰イオン的性質を有するシクロデキストリン[Parmeter(III) 、米国特許第3,426,011号明細書]を含む。陰イオン的性質を有するシクロデキストリン誘導体の中で、カルボン酸、亜リン酸、亜ホスフィン酸、ホスホン酸、リン酸、チオリン酸、チオ硫酸、およびスルホン酸が親シクロデキストリンに付加されているParmeter(III) 、上記を参照]。さらに,スルホアルキルエーテルシクロデキストリン誘導体が、Stella, et al.(米国特許第5,134,127号明細書) によって記載されている。
【0226】
リポソーム
リポソームは、水系の内部区画を封入する少なくとも1つの脂質二重層膜から成る。リポソームは、膜の種類によって、および大きさによって特徴づけることができる。小型の単層小胞(SUV)は1枚の膜を有しおよび典型的には直径0.02ないし0.05μmの範囲である;大型の単層小胞(LUV)は典型的には0.05μmより大きい。少数層の大型小胞および多層小胞は、複数の、通常は同心状の、膜層を有し、および典型的には0.1μmより大きい。いくつかの非同心状の膜を有するリポソーム、すなわち、大きい小胞の中に含まれるいくつかの小さい小胞は、多小胞性小胞と呼ばれる。
【0227】
本発明の1態様は、本発明の化合物を含むリポソームを含む製剤に関し、リポソーム膜はより大きい運搬用量を有するリポソームを提供するために製剤化される。代替的にまたは加えて、本発明の化合物は、リポソームのリポソーム二重層の内部に含ませるか、または二重層上に吸着させてもよい。本発明の化合物は、脂質界面活性剤と凝集しおよびリポソームの内腔内に保持され得る;これらの場合には、リポソーム膜は、有効成分-界面活性剤凝集物の破壊作用に耐えるように製剤化される。
【0228】
本発明の1実施形態によると、リポソームの脂質二重層は、ポリエチレングリコール (PEG) で誘導体化された脂質を含み、 そのためPEG鎖は、脂質二重層の内表面からリポソームによって封入される内腔内へ伸び、さらに脂質二重層の外側から周囲の環境へ伸びる。
本発明のリポソームの内部に含まれる有効成分は、可溶化形である。界面活性剤および有効成分の凝集物(たとえば、目的の有効成分を含むエマルジョンまたはミセル)は、本発明に記載のリポソームの内腔に捕捉され得る。界面活性剤は、有効成分を分散および可溶化させる作用を有し、さまざまな鎖長 (たとえば約C14-約C20) の生体適合性リソホスファチジルコリン (LPC) を含む任意の適当な脂肪族、環式脂肪族または芳香族界面活性剤から選択できる。PEG脂質のようなポリマー誘導体化脂質はまた、ミセル/膜の融合を阻害するように作用し、さらに界面活性剤分子へのポリマーの付加が界面活性剤のCMCを減少させおよびミセル形成を助けるため、ミセル形成に利用できる。マイクロモルの範囲のCMCを有する界面活性剤が好ましい;より大きいCMCの界面活性剤は、本発明のリポソーム内に捕捉されたミセルを調製するために利用できるが、しかし、ミセル界面活性剤モノマーはリポソーム二重層安定性に影響を与える可能性があり、所望の安定性を有するリポソームを設計する上での因子となる。
【0229】
本発明に記載のリポソームは、本分野で公知であるさまざまな手法の任意のものによって調製することができる。たとえば、米国特許第4,235,871号明細書;国際公開第96/14057号パンフレット;New RRC, Liposomes: A practical approach, IRL Press, Oxford (1990) 、 pages 33-104; Lasic DD, Liposomes from physics to applications, Elsevier Science Publishers BV, Amsterdam, 1993を参照。
たとえば、本発明のリポソームは、リポソームでの所望の誘導体化脂質の最終モルパーセントに対応する脂質濃度で、たとえば、予め形成されたリポソームを、脂質を組み込んだポリマーから構成されるミセルへ曝露することにより、親水性ポリマーを用いて誘導体化した脂質を予め形成されたリポソーム中に拡散させることによって調製することができる。親水性ポリマーを含むリポソームはまた、本分野で公知である通り、ホモジナイズ、脂質分野の水和、または押出技術によって形成できる。
【0230】
別の典型的な製剤化手順では、まず、有効成分を、超音波処理により、疎水性分子を容易に可溶化するリソホスファチジルコリンまたは他の低CMC界面活性剤(ポリマーグラフト化脂質を含む)中に分散させる。結果として生じる有効成分のミセル懸濁物を、次いで、適当なモルパーセントのポリマーグラフト化脂質またはコレステロールを含む乾燥脂質試料を再水和するのに用いる。本分野で公知である通りの押出技術用いて、脂質および有効成分懸濁物を次いでリポソーム中に形成し、さらに結果として、カプセル化されなかった溶液からの標準的カラム分離によって分離されたリポソームが得られる。
【0231】
本発明の1態様では、リポソームは、選択されたサイズ範囲で実質的に均一な大きさを有するように調製される。1つの効果的なサイズ処理法は、リポソームの水系懸濁液を、選択された均一の孔径を有する一連のポリカーボネート膜を通して押し出すことを含む;膜の孔径は、その膜を通した押し出しによって生じるリポソームの最大サイズに概ね対応する。たとえば、米国特許第4,737,323号明細書(1988年4月12日) を参照。
放出制御剤
本発明の製剤の放出特性は、封入材料、封入剤の濃度、および放出制御剤の存在に依存する。たとえば、胃内のように低pHでだけ、または腸内でのように高pHでだけ放出するpH感受性コーティングを用いて、放出がpH依存性となるように操作できる。胃を通過後まで放出が起きるのを防ぐために、腸溶コーティングを用いることができる。複数のコーティング、または、異なる材料に封入されたシアナミドの混合物を、胃での最初の放出に次いで後の放出を腸で得るために用いることができる。放出はまた、カプセルからの拡散による水取込みまたは薬物の放出を増加させることができる塩または孔形成剤を含めることによって操作できる。薬物の溶解度を改変する添加物もまた、放出速度を調節するのに用いることができる。マトリクスの分解またはマトリクスからの放出を促進する物質もまた組み込むことができる。それらは、化合物に応じて、薬物に添加でき、分離した相として(すなわち、粒子として) 添加でき、またはポリマー相に一緒に溶解することができる。すべての場合で、量は0.1ないし30パーセント(w/wポリマー) であろう。分解促進剤の種類は、硫酸アンモニウムおよび塩化アンモニウムといった無機塩、クエン酸、安息香酸、およびアスコルビン酸といった有機酸、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、および水酸化亜鉛といった無機塩基、および硫酸プロタミン、スペルミン、コリン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、およびトリエタノールアミンといった有機塩基、および、Tween.RTM.およびPluronic.RTMといった界面活性剤を含む。マトリクスに微小構造を加える孔形成剤(すなわち、無機塩および糖といった水溶性化合物)が粒子状物質として添加される。範囲は1ないし30パーセント(w/wポリマー) であろう。
【0232】
取込みはまた、腸内での粒子の滞留時間を変化させることによって操作可能である。これは、たとえば、粘膜接着性ポリマーで粒子をコーティングするかまたはそれを封入材料として選択することによって達成できる。例として、遊離カルボキシル基を有するポリマーの大部分、たとえばキトサン、セルロース、および特にポリアクリレート(ここでは、ポリアクリレートとはアクリレート基および修飾アクリレート基を含むポリマー、たとえばシアノアクリレートおよびメタクリレートを称する) が挙げられる。
【0233】
コンビナトリアルライブラリ
対象化合物は、この項に記載するコンビナトリアル合成の方法を用いて合成できる。化合物のコンビナトリアルライブラリは、医薬、農薬、または他の生物学的または医学的に関連する活性または材料関連品質のスクリーニングに用いることができる。本発明の目的のためのコンビナトリアルライブラリは、化学的に関連する化合物の混合物であり、目的の性質について一緒にスクリーニングすることができる;前記ライブラリは、溶液中に存在させまたは固相担体に共有結合させてもよい。単一の反応での多数の関連化合物の調製は、実施する必要のあるスクリーニング処理の数を大幅に減らしおよび単純化する。適当な生物学的、医薬的、農薬的、または物理的性質についてのスクリーニングは、従来の方法によって行うことができる。
【0234】
ライブラリにおける多様性は、いろいろな異なるレベルで作り出すことができる。たとえば、コンビナトリアル手法で用いられる基質アリール基は、中核のアリール部分に関して多様化することができ、たとえば環構造に関する多様化、および/またはその他の置換基について変化させることができる。
【0235】
有機低分子のコンビナトリアルライブラリを作製するためには本分野の色々な技術が利用可能である。たとえば、Blondelle et al. (1995) Trends Anal. Chem. 14: 83;Affymax社の米国特許第5,359,115号および第5,362,899号明細書:Ellman社の米国特許第5,288,514号明細書:Still et al. PCT国際公開第94/08051号パンフレット; Chen et al. (1994) JACS 116: 2661: Kerr et al. (1993) JACS 115: 252;PCT国際公開第92/10092号、第93/09668号および第91/07087号パンフレット;およびLerner et al. PCT国際公開第93/20242号パンフレットを参照) 。その結果、約16ないし1,000,000以上の規模の多様な分子のさまざまなライブラリを合成し、および特定の活性または性質についてスクリーニングすることができる。
【0236】
典型的な1実施形態では、たとえば基質の位置の1つに位置する、たとえば加水分解または光分解が可能な基によって高分子ビーズへ結合している、置換された多様な分子のライブラリを、StillらのPCT国際公開第94/08051号パンフレットに記載されている技術に適用された問題の反応を用いて合成することができる。Stillらの技術によると、ライブラリは1組のビーズ上に合成され、各ビーズはビーズ上の多様な分子の特定の1つを同定する1組のタグを含む。酵素阻害因子を発見するのに特に適している1実施形態では、ビーズは透過性膜の表面上に分散することができ、および多様な分子はビーズのリンカーの分解によってビーズから遊離する。各ビーズからの多様な分子は膜上を測定ゾーンへ拡散し、そこで酵素測定法と相互作用する。いくつかのコンビナトリアル方法論の詳細な説明を下記に示す。
A)直接的特徴づけ
コンビナトリアル化学の分野で拡大している傾向は、たとえば、フェムトモル以下の量の化合物を特徴づけるのに用いることができる、質量分析 (MS) といった技術の感度を利用すること、およびコンビナトリアルライブラリから選択された化合物の化学組成を直接決定することである。たとえば、ライブラリが不溶性担体マトリクス上で供給される場合、化合物の別々の集団をまず担体から遊離し、およびMSによって特徴づけることができる。別の実施形態では、MS試料調製技術の一部として、特にマトリクスに化合物をつなぐ際に不安定な結合が用いられる場合、MALDIといったMS技術を用いてマトリクスから化合物を遊離することができる。たとえば、ライブラリから選択されたビーズを、マトリクスから多様な分子を遊離しその多様な分子をMS分析用にイオン化するため、MALDI段階で照射することができる。
【0237】
B)マルチピン合成
本方法のライブラリは、マルチピンライブラリ形式を取ることができる。要約すると、Geysenおよび共同研究者らは (Geysen et al. (1984) PNAS81 : 3998-4002) 、マイクロタイタープレート形式に配列した、ポリアクリル酸で処理したポリエチレンピン上での平行合成によって、化合物ライブラリを作製する方法を紹介した。Geysenの技術は、マルチピン法を用いて週当たり何千もの化合物を合成およびスクリーニングするのに用いることができ、および繋がれた化合物は多数の測定に再使用することができる。純度の査定およびさらなる評価のために、合成後に化合物を担体から切断することができるように、適当なリンカー部分もまたピンに付属させることができる (Bray et al. (1990) Tetrahedron Lett 31: 5811-5814; Valerio et al. (1991) Anal Biochem 197: 168-177; Bray et al. (1991) Tetrahedron Lett 32: 6163-6166を参照) 。
C)Divide-Couple-Recombine
さらに別の1実施形態では、Divide-Couple-Recombineの戦略を利用して、化合物の多様化したライブラリを1組のビーズ上に提供することができる (たとえば、Houghten(1985) PNAS 82: 5131-5135;および米国特許第4,631,211号;第5,440,016号;第5,480,971号明細書を参照) 。要約すると、名称が示唆するように、ライブラリに変質が導入される各合成段階で、ライブラリ中の特定の位置に導入される異なる置換基の数と等しい別々の群にビーズが分割され、異なる置換基が別々の反応で結合され、およびビーズは次の反復のために1つのプールに再混合される。
【0238】
1実施形態では、Divide-Couple-Recombineの戦略は、Houghtenによって最初に開発された、化合物合成が多孔質ポリプロピレンバッグ中に封入された樹脂上で起こる(Houghten et al. (1986) PNAS82 : 5131-5135) いわゆる「ティーバッグ」法と類似の手法を用いて実施することができる。置換基はバッグを適当な反応溶液中に置くことによって化合物担体樹脂に結合され、一方、樹脂洗浄および保護基除去といったすべての共通段階は同時に1個の反応容器内で実施される。合成の終了時には、各バッグは単一の化合物を含む。
【0239】
D)光制御空間指定化学合成(Light-Directed Spatially Addressable Parallel Chemical Synthesis)によるコンビナトリアルライブラリ
化合物の同定が合成基質上の位置によって与えられるコンビナトリアル合成の仕組みを、空間指定(spatially-addressable)合成という。1実施形態では、コンビナトリアルプロセスは、固相担体上の特定位置への化学試薬の付加を調節することによって実施される (Dower et al. (1991) Annu Rep Med Chem 26: 271-280; Fodor, S. P. A. (1991) Science 251: 767; Pirrung et al. (1992)米国特許第5,143,854号明細書; Jacobs et al. (1994) Trends Biotechnol 12: 19-26) 。光リソグラフィーの空間分解能は小型化を可能にする。この技術は、光不安定な保護基を用いた保護/脱保護反応の使用を通じて実施することができる。
【0240】
この技術の重要な点は、Gallop et al. (1994) J Med Chem 37 :1233-1251に説明されている。合成の基質を、光不安定なニトロベラトリルオキシカルボニル (NVOC) 基で保護されたアミノリンカーまたは別の光不安定なリンカーの共有付加によって、結合のために準備する。光を用いて結合のための合成担体の特定の領域を選択的に活性化する。光不安定な保護基の光による除去 (脱保護) の結果として、選択された範囲の活性化が起こる。活性化後に、それぞれ光不安定な保護基をアミノ末端に有するアミノ酸アナログの組の最初のものが、表面全体に曝露される。結合は前の段階で光によって位置指定された領域にだけ起こる。反応を停止し、プレートを洗浄し、基質を再び第二の覆いを通して照射し、第二の保護基つき構造ブロックを用いた反応のために別の領域を活性化する。覆いのパターンと反応剤の配列が、生成物およびその位置を定義する。この処理は光リソグラフィー技術を利用するため、合成できる化合物の数は、適当な分解能で位置指定できる合成部位の数によってのみ制限される。各化合物の位置は正確に知られている;ゆえに、各化合物の他の分子との相互作用を直接に評価することができる。
【0241】
光制御化学合成では、生成物は照射のパターンおよび反応剤の添加の順序に依存する。リトグラフィーのパターンを変えることによって、多数の異なる組の被験化合物を同時に合成することができる;この特性は、多数の異なる被覆戦略の生成に結びつく。
【0242】
E)コード化コンビナトリアルライブラリ
さらに別の1実施形態では、本方法はコード化タグ化系を用いて与えられる化合物ライブラリを利用する。コンビナトリアルライブラリに由来する活性化合物の同定の最近の改良は、任意のビーズが経験した反応段階、および、推論によって、それが有する構造を、独自にコード化するタグを用いる化学的見出し付けを使用する。概念的には、この手法は、活性が発現ペプチドに由来するが活性ペプチドの構造は対応するゲノムDNA配列から推論される、ファージディスプレイライブラリを模倣する。合成コンビナトリアルライブラリの最初のコード化は、DNAをコードとして用いた。配列決定可能な生体オリゴマー (たとえば、オリゴヌクレオチドおよびペプチド) を用いるコード化、および追加の配列決定不能なタグを用いたバイナリコード化を含む、コード化のさまざまな別の形式が報告されている。
【0243】
1) 配列決定可能な生体オリゴマーを用いたタグ化
オリゴヌクレオチドを用いてコンビナトリアル合成ライブラリをコード化することの原理は1992年に記載され(Brenner et al. (1992) PNAS 89: 5381-5383) 、 およびそのようなライブラリの1例が翌年に現れた (Needles et al. (1993) PNAS 90: 10700-10704) 。それぞれが特定のジヌクレオチド (それぞれTA、TC、CT、AT、TT、CA、およびAC) でコードされた、Arg、Gln、Phe、Lys、Val、D-Val、およびThr (三文字アミノ酸コード) のすべての組み合わせから成る、名目上77 (=823, 543) 個のペプチドのコンビナトリアルライブラリが、固相担体上での一連の交互の回のペプチドおよびオリゴヌクレオチド合成によって調製された。この研究で、オリゴヌクレオチド合成のためには保護されたOH基を、およびペプチド合成のためには保護されたNH2基を生じる試薬を用いて (ここでは1:20の比で) ビーズを同時に予備インキュベートすることによって、ペプチドまたはオリゴヌクレオチド合成に向けてビーズ上のアミン結合機能性が特異的に差別化された。完了時に、タグはそれぞれ69量体から成り、その14単位がコードを有した。ビーズに結合したライブラリを蛍光標識化抗体とインキュベートし、および強く蛍光を発した結合抗体を含むビーズを、蛍光発色細胞分取 (FACS) によって採取した。DNAタグはPCRによって増幅および配列決定し、および予測されたペプチドが合成された。そのような方法に続いて、タグのオリゴヌクレオチド配列が特定のビーズが受けた連続的な組み合わせ反応を特定し、およびしたがってビーズ上の化合物の同定を与える、本方法での使用のための化合物ライブラリを得ることができる。
【0244】
オリゴヌクレオチドタグの使用は、極めて高感度のタグ分析を可能にする。それでさえ、本方法は、タグおよびライブラリメンバーの交互同時合成に必要な、直交する組の保護基の慎重な選択を要する。さらに、タグ、特にリン酸塩および糖アノマー結合の化学的不安定性は、非オリゴマー性ライブラリの合成に使用することができる試薬および条件の選択を制限するであろう。好ましい実施形態では、ライブラリは分析のためにライブラリメンバーの選択的な脱離を可能にするリンカーを使用する。
【0245】
ペプチドもまた、コンビナトリアルライブラリ用のタグ化分子として用いられている。二つの典型的な手法が本分野で記載されており、その両方が固相への分枝リンカーを使用し、その上でコード鎖およびリガンド鎖が交互に合成される。第1の手法では(Kerr JM et al. (1993) J Am Chem Soc 115:2529-2531) 、合成における直交性は、酸に不安定な保護をコード鎖に、および塩基に不安定な保護を化合物鎖に用いることによって達成される。
【0246】
別の1手法では(Nikolaiev et al. (1993)Pept Res 6:161-170) 、コード部分および被験化合物が両方とも樹脂上の同一の官能基に結合することができるように、分枝リンカーが使用される。1実施形態では、切断可能なリンカーを分枝点とビーズとの間に配置することができ、そのため切断によって、コードおよび化合物の両方を含む分子が遊離する(Ptek et al. (1991) Tetrahedron Lett 32: 3891-3894) 。別の1実施形態では、切断可能なリンカーは、コードを残して被験化合物をビーズから選択的に分離することができるように配置することができる。この最後の構造は、コード基の干渉の可能性無しでの被験化合物のスクリーニングを可能にするため、特に価値が高い。ペプチドライブラリメンバーおよびその対応するタグの独立した切断および配列決定の分野での例は、タグがペプチド構造を正確に予想できることを裏付けている。
【0247】
2) 配列決定不能なタグ化:バイナリコード化
被験化合物ライブラリをコード化する別の形式は、バイナリコードとして用いられる1組の配列決定不能な電気泳動タグ化分子を使用する(Ohlmeyer et al. (1993) PNAS 90: 10922-10926) 。典型的なタグは、フェムトモル未満のレベルで電子捕捉ガスクロマトグラフィー (ECGC) によってトリメチルシリルエーテルとして検出可能な、ハロゲン化芳香族アルキルエーテルである。アルキル鎖長、およびハロゲン化芳香族置換基の性質および位置における変化は、少なくとも40種類のそのようなタグの合成を可能にし、タグは原理的には、240個 (たとえば1012の上) の異なる分子をコードすることができる。原報では(Ohlmeyer et al., 上記) タグは、光切断可能なo-ニトロベンジルリンカーを介して、ペプチドライブラリの利用可能なアミン基の約1%に結合した。この手法は、ペプチド様または他のアミン含有分子のコンビナトリアルライブラリを作製する場合には便利である。しかし、本質的に任意のコンビナトリアルライブラリのコード化を可能にする、より多用途の系が開発されている。ここでは、化合物は光切断可能なリンカーを介して固相担体に結合し、タグはビーズマトリクス中へのカルベン挿入部を介するカテコールエーテルリンカーを通じて結合する (Nestler et al. (1994) J Ors Chem 59: 4723-4724) 。この直交結合戦略は、溶液中の測定およびタグの組の酸化的脱離後のECGCによる次のコード解読のための、ライブラリメンバーの脱離を可能にする。
【0248】
本分野のいくつかのアミド結合ライブラリが、アミン基に結合したelectrophoricタグを用いるバイナリコード化を使用しているが、これらのタグを直接にビーズマトリクスへ結合させることは、コード化されたコンビナトリアルライブラリ中に作製することができる構造に、はるかに大きな汎用性を提供する。この方法で結合されて、タグとそのリンカーはビーズマトリクス自体とほぼ同程度に反応性が低い。電気泳動タグが直接に固相へ結合している、二種類のバイナリコード化コンビナトリアルライブラリが報告されており(Ohlmeyer et al. (1995) PNAS 92:6027-6031)、および本化合物ライブラリを作製するための指針を与える。ライブラリメンバーを光不安定なリンカーによって固相担体に結合させ、さらに、激しい酸化によってのみ切断可能なリンカーを介してタグを結合させる直交結合戦略を用いて両方のライブラリを構成した。ライブラリメンバーを固相担体から繰り返して部分的に光溶出することができるため、ライブラリメンバーは複数の測定に利用することができる。連続的な光溶出はまた、非常に高処理量である反復スクリーニング戦略を可能にする:第1に、複数のビーズを96ウェルマイクロタイタープレートに入れる;第2に、化合物を部分的に脱離させ、測定プレートに移す;第3に、金属結合測定法によって活性ウェルを特定する;第4に、対応するビーズを単独で新しいマイクロタイタープレートに再配列させる;第5に、単一の活性化合物を特定する;および第六に、構造を解読する。
【実施例】
【0249】
本発明を一般的に説明したが、下記の実施例を参照することによって本発明はより容易に理解され、実施例は単に本発明の一部の態様および実施形態の説明の目的のために含められ、本発明を制限しないことが意図される。
【0250】
実施例1
(3R,4)-4-(4-クロロフェニル)-3-(ヒドロキシメチル)-1-メチルピペリジン
【化18】

(3R,4S)-4-(4-クロロフェニル)-1-メチルピペリジン-3-カルボン酸メチルエステル(2.0g、6.57mmol)を含む、0℃に冷却された無水THF(40mL)溶液へ、LiAIH4(374mg、9.86mmol) を加えた。結果として得られた溶液を室温まで温め、および一晩攪拌し、次いでNH4Clの飽和溶液(30mL) で反応停止した。混合した溶液をCH2Cl2(3x25mL) で抽出した。合わせた有機抽出物をNa2SO4上で乾燥し、濃縮しおよびシリカゲルでのカラムクロマトグラフィーによってEtOAc/MeOH/Et3N(8:1:1)を溶離液として用いて精製し、白色固体として産物を得た(1.45g,92%)。

【0251】
実施例2
(3R, 4S)-4-(4-クロロフェニル)-3-(ヨードメチル)-1-メチルピペリジン
【化19】

PPh3(2.41g、9.18mmol)を含む無水CH2Cl2(60mL)溶液へヨウ素(2.33g、9.18mmol)を窒素下で室温にて加えた。室温にて15分攪拌後、イミダゾール(0.71g、10.43mmol)を一度に加え、次いでアルコール(1.0g、4.17mmol)を含む20mLのCH2CI2溶液を室温にて加えた。結果として得られた溶液を次いで加熱して2.5時間還流した。室温へ冷却後、反応混合物を5%チオ硫酸ナトリウム水溶液で洗浄して過剰のヨウ素を除去した。有機相をNa2SO4上で乾燥し、濃縮し、およびシリカゲルでのカラムクロマトグラフィーによってまずEtOAcを溶離液として用いてすべての形成されたリン酸トリフェニルを除去しおよび次いでEtOAc/Et3N(98/2から95/5)を溶離液として用いて精製し、無色の油として産物を与えた(1.25g、86%)。

【0252】
実施例3
[(3R,4S)-4-(4-クロロフェニル)-1-メチル-ピペリジン-3-イルメチルスルファニル]-酢酸メチルエステル
【化20】

上記のヨウ化物(617mg、1.76mmol)を含む無水MeCN(20mL)溶液へ、316μLのチオグリコール酸メチル(374mg、3.52mmol)を窒素下で室温にて加え、次いで炭酸セシウム(1.43g、4.40mmol) を加えた。室温にて一晩攪拌後、溶媒を蒸発させおよび残渣をCH2Cl2/H2O(1/1、40mL) で分画した。水層をCH2Cl2(3x25mL) で抽出し、および合わせた有機相を無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、および減圧下で乾燥した。粗産物は、シリカゲルでのカラムクロマトグラフィーによってEtOAc/Et3N(98/2から10/1)の混合物を溶離液として用いて精製し、無色の油として産物を得た(505mg、88%)。Rf[EtOAc/Et3N(10/1)]=0.41またはRf[EtOAc/MeOH/Et3N(8/1/1)]=0.63。

【0253】
実施例4
2-[(3R,4S)-4-(4-クロロフェニル)-1-メチル-ピペリジン-3-イルメチルスルファニル]-アセトアミド
【化21】

ドライアイス-アセトンバスで冷却した試験管中の[(3R,4S)-4-(4-クロロフェニル)-1-メチル-ピペリジン-3-イルメチルスルファニル]-酢酸メチルエステル(176mg、0.54mmol)を含むt-BuOH(3mL)の溶液へ、過剰のアンモニウムガスを導入した。次いで試験管を密閉し、および反応混合物を室温にて72時間攪拌した。溶媒を減圧下で蒸発させた。粗産物は、シリカゲルでのカラムクロマトグラフィーによってEtOAc/MeOH/Et3N(8/1/1)の混合物を溶離液として用いて精製し、白色固体として産物を与えた(160mg、95%)。

【0254】
実施例5
2-[(3R,4S)-4-(4-クロロフェニル)-1-メチル-ピペリジン-3-イルメタンスルフィニル]-アセトアミド
【化22】

2-[(3R,4S)-4-(4-クロロフェニル)-1-メチル-ピペリジン-3-イルメチルスルファニル]- アセトアミド(59mg、0.189mmol)を含む酢酸(2.0mL)溶液へ、19μLの35%H2O2を室温にて加えた。室温にて2. 5時間攪拌後、溶媒を減圧下で蒸発させた。粗産物は、調製TLCによって、EtOAc/MeOH/Et3N(8/1/1)の混合物を展開溶媒とし用いて精製し、白色固体として産物を与えた(43mg、69%)。

HRMS-FABm/z[M+H]+はC15H22ClN2O2Sについて計算,329.1091;結果329.1100。HPLC条件は下記の通りカラム:WatersμBondapakC18300x7.8mm;流速:2.8mL/分;280nmにて検出;グラジエント20%アセトニトリル水溶液(0.05%CF3COOH)から90%アセトニトリル水溶液(0.05% CF3COOH)へ30分で;HPLC純度:100%;tR=8.72分。
【0255】
実施例6
2-[(3R, 4S)-4-(4-クロロフェニル)-1-メチル-ピペリジン-3-イルメタンスルフィニルl-アセトアミドN-オキサイド
【化23】

[(3R,4S)-4-(4-クロロフェニル)-1-メチル-ピペリジン-3-イルメチルスルファニル]-アセトアミド(28mg、0.0895mmol)を含む酢酸(1.0mL)溶液へ、20μLの35%H2O2を40℃にて加えた。この温度にて一晩攪拌後、溶媒を減圧下で蒸発させた。粗産物は、調製TLCによって、EtOAc/MeOH/Et3N(8/1/1)の混合物を展開溶媒とし用いて精製し、アセトアミドN-オキサイドを白色固体と(10mg,32%)をRf[EtOAc/MeOH/Et3N(8/1/1)]=0.46、およびアセトアミド(8mg,27%)をRf[EtOAc/MeOH/Et3N(8/1/1)]=0.14として与えた。

【0256】
実施例7
2-[(3R,4S)-4-(4-クロロフェニル)-1-メチル-ピペリジン-3-イルメタンスルフィニル]-酢酸メチルエステル
【化24】

[(3R,4S)-4-(4-クロロフェニル)-1-メチル-ピペリジン-3-イルメチルスルファニル]-酢酸メチルエステル(44mg, 0.134mmol)を含む酢酸(2.0mL)溶液へ、14μLの35%H2O2を室温にて加えた。室温にて2. 5時間攪拌後、溶媒を減圧下で蒸発させた。粗産物は、調製TLCによって、EtOAc/Et3N(10/1)の混合物を展開溶媒とし用いて精製し、白色固体として産物を与えた(37mg, 80%)。

【0257】
実施例8
2-[(3R,4S)-4-(4-クロロフェニル)-1-メチル-ピペリジン-3-イルメチルスルファニル]-N-ヒドロキシ-アセトアミド
【化25】

水酸化カリウムのメタノール溶液を、766mg(13.68mmol)のKOHを5.0mLのMeOHに溶解することによって作製した。ヒドロキシルアミン塩酸(41.5mg,0.598mmol)を含む2.0mLMeOHの5-10℃へ冷却された溶液へ、388μLの上記水酸化カリウム(59.4mg,1.06mmol) メタノール溶液を加え、次いで[(3R,4S)-4-(4-クロロフェニル)-1-メチル-ピペリジン-3-イルメチルスルファニル]-酢酸メチルエステル(98mg,0.299mmol)を含むMeOH(2.0mL) 溶液を加えた。次いで反応混合物を室温にて2時間攪拌した。沈殿物をろ別し、およびCH2Cl2で洗浄した。合わせた有機物の溶媒を、減圧下で蒸発させた。粗産物は、調製TLCによって、EtOAc/MeOH/Et3N(6/2/2)の混合物を展開溶媒として用いて精製して無色の油を与え、それをさらにHPLCにより精製した(75mg、76%) 。

HPLC条件は下記の通りカラム:WatersμBondapakC18300x7.8mm;流速:2.8mL/分;280nmにて検出;グラジエント:20%アセトニトリル水溶液(0.05%CF3COOH)から80%アセトニトリル水溶液(0.05%CF3COOH)へ30分で;HPLC純度:99%;tR=10.78分。
【0258】
実施例9
2-[(3R,4S)-4-(4-クロロフェニル)-1-メチル-ピペリジン-3-イルメタンスルフィニル]-N-ヒドロキシ-アセトアミド
【化26】

2-[(3R,4S)-4-(4-クロロフェニル)-1-メチル-ピペリジン-3-イルメチルスルファニル]-N-ヒドロキシ-アセトアミド(33mg,0.10mmol)を含む酢酸(1.0mL)溶液へ、10μLの35%H2O2を室温にて加えた。室温にて2時間攪拌後、溶媒を減圧下で蒸発させた。粗産物は、調製TLCによって、EtOAc/MeOH/Et3N/NH3-H2O(60/19/19/2)の混合物を展開溶媒とし用いて精製して無色の油を与え、それをさらにHPLCにより精製した(22mg,64%)。

HPLC条件は下記の通りカラム:WatersμBondapakC18300x7.8mm;流速:2.8mL/分;280nmにて検出;グラジエント20%アセトニトリル水溶液(0.05%CF3COOH)から50%アセトニトリル水溶液(0.05%CF3COOH)へ30分;HPLC純度:98.4%;tR10.15分。
【0259】
実施例10
2-[(3R,4S)-4-(4-クロロフェニル)-1-メチル-ピペリジン-3-イルメチルスルファニル]-エタノール
【化27】

[(3R,4S)-4-(4-クロロフェニル)-1-メチル-ピペリジン-3-イルメチルスルファニル]-酢酸メチルエステル(271mg,0.827mmol)を含む、0℃へ冷却された無水THF(10mL)溶液へ、LiAlH4(47.1mg,1.24mmol) を加えた。結果として得られた溶液を室温まで温め、および一晩攪拌し、次いでNH4Clの飽和溶液(10mL) で反応停止した。混合溶液をCH2Cl2(3x25mL) で抽出した。合わせた有機抽出物をNa2SO4上で乾燥し、濃縮しおよびシリカゲルでのカラムクロマトグラフィーによってEtOAc/Et3N(10:1)からEtOAc/MeOH/Et3N(8:1:1)を溶離液として用いて精製し、無色の油として産物を与えた(203mg, 82%)。

【0260】
実施例11
酢酸2-[(3R,4S)-4-(4-クロロフェニル)-1-メチル-ピペリジン-3-イルメチルスルファニル]-エチルエステル
【化28】

上記のアルコール(92mg,0.307mmol)を含むピリジン(8mL)溶液へ、2.0mLのAc2Oを窒素下で室温にて加え、次いで1.0mgのDMAPを加えた。室温にて2時間攪拌後、溶媒を蒸発させ、および残渣を酢酸エチルで希釈し、および飽和NAHCO3水溶液(2×15mL)で洗浄し、および有機相を無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、ろ過しおよび減圧下で濃縮した。粗産物を調製TLCによって、EtOAc/Et3N(10/1)を展開溶媒として用いて精製し、無色の油を与えた(74mg,70%)。

【0261】
実施例12
酢酸2-[(3R,4S)-4-(4-クロロフェニル)-1-メチル-ピペリジン-3-イルメタンスルフィニル]-エチルエステル
【化29】

上記のエステル(28mg,0.0819mmol)を含む酢酸(1.0mL)溶液へ、9μLの35%H2O2を室温にて加えた。室温にて2.5時間攪拌後、溶媒を減圧下で蒸発させた。粗産物は、調製TLCによってEtOAc/Et3N(10/1)を展開溶媒として用いて精製し、無色の油を与え(18mg,82%)、および開始材料7.0gが回収された。Rf [EtOAc/Et3N(10/1)]=0.17。

【0262】
実施例13
安息香酸2-[(3R,4S)-4-(4-クロロフェニル)-1-メチル-ピペリジン-3-イルメチルスルファニル]-エチルエステル
【化30】

上記のアルコール(89mg、0.297mmol)を含む無水THF(8mL)溶液へ、83μLのEt3Nおよび1.0mgのDMAPを窒素下で0℃にて加え、次いで52μLの塩化ベンゾイル(62.5mg、0.445mmol) を加えた。0℃から室温へ一晩攪拌後、溶媒を蒸発させおよび残渣を酢酸エチルで希釈し、および飽和NaHCO3水溶液(2x10mL) で洗浄し、および有機層を無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、ろ過しおよび減圧下で乾燥した。粗産物は、調製TLCによって、EtOAc/Et3N(10/1)の混合物を展開溶媒とし用いて精製し、無色の油を与えた(81mg、68%)。

【0263】
実施例14
安息香酸2-[(3R,4S)-4-(4-クロロフェニル)-1-メチル-ピペリジン-3-イルメタンスルフィニル]-エチルエステル
【化31】

上記のエステル(56mg、0.139mmol)を含む酢酸(2.0mL)溶液へ、14μLの35%H2O2を室温にて加えた。室温にて2. 5時間攪拌後、溶媒を減圧下で蒸発させた。粗産物は、調製TLCによって、EtOAc/Et3N(10/1)の混合物を展開溶媒とし用いて精製し、無色の油として産物を得た(45mg, 77%)。

【0264】
実施例15
2-[(3R,4S)-4-(4-クロロフェニル)-1-メチル-ピペリジン-3-イルメタンスルフィニル]-エタノール
【化32】

上記のアルコール(63mg、0.21mmol)を含む酢酸(2.0mL)溶液へ、20.8μLの35%H2O2を室温にて加えた。室温にて2. 5時間攪拌後、溶媒を減圧下で蒸発させた。粗産物は、調製TLCによって、EtOAc/MeOH/Et3N(8/1/1)の混合物を展開溶媒とし用いて精製し、無色の油として産物を得た(46mg、69%)。

【0265】
実施例16
(3R,4S)-4-(4-クロロフェニル)-3-(2-メトキシエチルスルファニルメチル)-1-メチル-ピペリジン
【化33】

上記のアルコール(153mg、0.51mmol)を含む無水THF(6mL)溶液へ、NaH(43mg、57-63%油中懸濁液、1.02mmol)を窒素下で0℃にて加えた。混合物を10分間攪拌後、MeI(38.1μL、0.61mmol)を滴下して加え、次いでヨウ化テトラ-n-ブチルアンモニウム(19mg、0.051mmol) を加えた。室温にて一晩攪拌後、反応をNH4Cl水溶液で停止し、および混合物をEtOAc(3x25mL) で抽出した。合わせた抽出物を5%チオ硫酸ナトリウム水溶液で洗浄し、および無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、ろ過しおよび減圧下で乾燥した。粗産物は、シリカゲルでのカラムクロマトグラフィーによってEtOAc/Et3N(98/2から10/1)の混合物を溶離液として用いて精製し、無色の油として産物を得た(104 mg, 65%) 。Rf[EtOAc/Et3N(10/1)]=0.44またはRf[EtOAc/MeOH/Et3N(8/1/1)]=0.68。

【0266】
実施例17
(3R,4S)-4-(4-クロロフェニル)-3-(2-メトキシエタンスルフィニルメチル)-1-メチル-ピペリジン
【化34】

上記のエーテル(56mg、0.178mmol)を含む酢酸(2.0mL)溶液へ、17.6μLの35%H2O2を室温にて加えた。室温にて2. 5時間攪拌後、溶媒を減圧下で蒸発させた。粗産物は、調製TLCによって、EtOAc/Et3N(10/1)の混合物を展開溶媒とし用いて精製し、無色の油として産物を得た(36mg、61%)。Rf[EtOAc/Et3N(10/1)]=0.28。

【0267】
実施例18
(3R,4S)-[4-(4-クロロフェニル)-1-メチル-ピペリジン-3-イルメチルスルファニル]-酢酸
【化35】

上記のメチルエステル(94.0mg、0.287mmol)を含むTHF/H2O(1/1、2mL)溶液へ、LiOH-H2O(24.1mg、0.574mmol)を窒素下で室温にて加えた。室温にて、TLCによって判定して反応が完了するまで攪拌後、混合物を10%HCl水溶液で中和し、および次いでCH2Cl2(3x25mL) で抽出した。合わせた抽出物を無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、ろ過し、および減圧下で濃縮し、無色の油として産物を与えた(85mg、94%)。

【0268】
実施例19
2-[(3R,4S)-4-(4-クロロフェニル)-1-メチル-ピペリジン-3-イルメチルスルファニル]-N-メチル-アセトアミド
【化36】

[(3R,4S)-4-(4-クロロフェニル)-1-メチル-ピペリジン-3-イルメチルスルファニル]-酢酸メチルエステル(124mg;0.378mmol)を、2.0Mメチルアミンを含むMeOH溶液5.0mLに溶解した。結果として得られた混合物を室温にて24時間攪拌した。開始材料がほぼ消失するまで、反応をTLCによって監視した。溶媒を次いで減圧下で蒸発させた。粗産物は、調製TLCによって、EtOAc/Et3N(10/1)の混合物を展開溶媒として用いて精製し、白色固体として産物を与えた(88.5mg,72%)。

【0269】
実施例20
2-[(3R,4S)-4-(4-クロロフェニル)-1-メチル-ピペリジン-3-イルメタンスルフィニル]-N-メチル-アセトアミド
【化37】

2-[(3R,4S)-4-(4-クロロフェニル)-1-メチル-ピペリジン-3-イルメチルスルファニル]-N-メチル-アセトアミド(44mg,0.135mmol)を含む酢酸(1.5mL)溶液へ、14μLの35%H2O2を室温にて加えた。室温にて2. 5時間攪拌後、溶媒を減圧下で蒸発させた。粗産物は、調製TLCによって、EtOAc/MeOH/Et3N(8/1/1)の混合物を展開溶媒とし用いて精製し、無色の油の産物を与えた(37mg,80%)。

【0270】
実施例21
2-[(3R,4S)-4-(4-クロロフェニル)-1-メチル-ピペリジン-3-イルメチルスルファニル]-N,N-ジメチル-アセトアミド
【化38】

[(3R,4S)-4-(4-クロロフェニル)-1-メチル-ピペリジン-3-イルメチルスルファニル]-酢酸メチルエステル(92mg;0.281mmol)を、2.0Mジメチルアミンを含むMeOH溶液4.0mLに溶解した。結果として得られた混合物を室温にて攪拌した。開始材料がほぼ消失するまで、反応をTLCによって監視した。溶媒を次いで減圧下で蒸発させた。粗産物は、調製TLCによって、EtOAc/Et3N(10/1)の混合物を展開溶媒として用いて精製し、無色の油として産物を得た(87mg,91%)。

【0271】
実施例22
2-[(3R,4S)-4-(4-クロロフェニル)-1-メチル-ピペリジン-3-イルメタンスルフィニル]-N,N-ジメチル-アセトアミド
【化39】

2-[(3R,4S)-4-(4-クロロフェニル)-1-メチル-ピペリジン-3-イルメチルスルファニル]-N,N-ジメチル-アセトアミド(54mg,0.158mmol)を含む酢酸(1.5mL)溶液へ、15.7μLの35%H2O2を室温にて加えた。室温にて2. 5時間攪拌後、溶媒を減圧下で蒸発させた。粗産物は、調製TLCによって、EtOAc/MeOH/Et3N(8/1/1)の混合物を展開溶媒とし用いて精製し、無色の油の産物を与えた(49mg,87%)。

【0272】
実施例23
2-[(3R,4S)-4-(4-クロロフェニル)-1-メチル-ピペリジン-3-イルメチルスルファニル]-N-イソプロピル-アセトアミド
【化40】

[(3R,4S)-4-(4-クロロフェニル)-1-メチル-ピペリジン-3-イルメチルスルファニル]-酢酸メチルエステル(116mg;0.354mmol)を、MeOH1.0mLおよびイソプロピルアミン2.0mLの混合物に溶解した。結果として得られた溶液を室温にて攪拌した。開始材料がほぼ消失するまで、反応をTLCによって監視した。溶媒を次いで減圧下で蒸発させた。粗産物は、調製TLCによって、EtOAc/Et3N(10/1)の混合物を展開溶媒とし用いて精製し、白色固体として産物を与えた(103mg,82%)。

【0273】
実施例24
2-[(3R,4S)-4-(4-クロロフェニル)-1-メチル-ピペリジン-3-イルメタンスルフィニル]-N-イソプロピル-アセトアミド
【化41】

2-[(3R,4)-4-(4-クロロフェニル)-1-メチル-ピペリジン-3-イルメチルスルファニル]-N-イソプロピル-アセトアミド(58mg,0.163mmol)を含む酢酸(2.0mL)溶液へ、16.2μLの35%H2O2を室温にて加えた。室温にて2. 5時間攪拌後、溶媒を減圧下で蒸発させた。粗産物は、調製TLCによって、EtOAc/MeOH/Et3N(8/1/1)の混合物を展開溶媒とし用いて精製し、無色の油の産物を与えた(52mg,86%)。

【0274】
実施例25
2-[(3R,4S)-4-(4-クロロフェニル)-1-メチル-ピペリジン-3-イルメチルスルファニル]-1-ピペリジン-1-イル-エタノン
【化42】

[(3R,4S)-4-(4-クロロフェニル)-1-メチル-ピペリジン-3-イルメチルスルファニル]-酢酸メチルエステル(117mg;0.357mmol)を、MeOH1.0mLおよびピペリジン2.0mLの混合物に溶解した。結果として得られた溶液を室温にて攪拌した。開始材料がほぼ消失するまで、反応をTLCによって監視した。溶媒を次いで減圧下で蒸発させた。粗産物は、調製TLCによって、EtOAc/Et3N(10/1)の混合物を展開溶媒とし用いて精製し、淡黄色の油として産物を与えた(125mg,92%)。

【0275】
実施例26
2-[(3R,4S)-4-(4-クロロフェニル)-1-メチル-ピペリジン-3-イルメタンスルフィニル]-1-ピペリジン-1-イルエタノン
【化43】

2-[(3R,4S)-4-(4-クロロフェニル)-1-メチル-ピペリジン-3-イルメチルスルファニル]-1-ピペリジン-1-イル-エタノン(56mg,0.147mmol)を含む酢酸(2.0mL)溶液へ、14.5μLの35%H2O2を室温にて加えた。室温にて2. 5時間攪拌後、溶媒を減圧下で蒸発させた。粗産物は、調製TLCによって、EtOAc/MeOH/Et3N(84/8/8)の混合物を展開溶媒とし用いて精製し、無色の油の産物を与えた(44mg,75%)。

【0276】
実施例27
(3R,4S)-4-(4-クロロフェニル)-1-メチル-3-(3-メチル-1,2,4-オキサジアゾール-5-イルメチルスルファニルメチル)-ピペリジン
【化44】

アセトアミドオキシム(67.8mg,0.915mmol)を含む無水THF(8.0mL)溶液へ、NaH(38.5mg,57-63%油中懸濁液、0.915mmol)を室温にて加えた。結果として生じた混合物を還流して2.5時間攪拌し、および次いで室温へ冷却した。反応混合物へ、4Aモレキュラーシーブ(700mg) を加え、次いで[(3R,4S)-4-(4-クロロフェニル)-1-メチル-ピペリジン-3-イルメチルスルファニル]-酢酸メチルエステル(150mg,0.4575mmol)を含むTHF2.0mLの溶液を加えた。結果として生じた混合物を、還流して16時間攪拌し、および次いで室温へ冷却した。反応混合物をろ過し、およびTHFで洗浄した。合わせた有機層の溶媒を次いで減圧下で蒸発させた。粗産物は、シリカゲルでのカラムクロマトグラフィーによって、EtOAc/Et3N(98:2)を溶離液として用いて精製し、無色の油として産物を与えた(127mg,79%)。Rf[EtOAc/Et3N(10/1)]=0.54。

【0277】
実施例28
(3R,4S)-4-(4-クロロフェニル)-1-メチル-3-(3-メチル-1,2,4-オキサジアゾール-5-イルメタンスルフィニルメチル)-ピペリジン
【化45】

(3R,4S)-4-(4-クロロフェニル)-1-メチル-3-(3-メチル-1,2,4-オキサジアゾール-5-イルメチルスルファニルメチル)-ピペリジン(58mg,0.165mmol)を含む酢酸(2.0mL)溶液へ、16.3μLの35%H2O2を室温にて加えた。室温にて3時間攪拌後、溶媒を減圧下で蒸発させた。粗産物は、調製TLCによって、EtOAc/Et3N(10/1)の混合物を展開溶媒として用いて精製し、無色の油の産物を与え(35.4mg,66%)、および7mgの開始材料が回収された。Rf[EtOAc/Et3N(10/1)]=0.30。

【0278】
実施例29
[(3R,4S)-4-(4-クロロフェニル)-ピペリジン-3-イルメチルスルファニル]-酢酸メチルエステル
【化46】

[(3R,4S)-4-(4-クロロフェニル)-1-メチル-ピペリジン-3-イルメチルスルファニル]-酢酸メチルエステル(342mg,1.04mmol)を含む無水CH2Cl2(10mL)溶液へ、1,8-ビスジメチルアミノナフタレン(プロトンスポンジ、122.6mg,0.57mmol)およびクロロギ酸α-クロロエチル(0.85mL,1.12g,7.83mmol)を室温にて加えた。結果として生じた混合物を還流して2.5時間攪拌し、および次いで室温へ冷却した。反応混合物へ、1M無水塩酸を含むエーテル(10mL) 溶液を加えた。懸濁液を、シリカゲル層を通してろ過し、および残渣をCH2Cl2(2x10mL) で洗浄した。ろ液を濃縮しおよびMeOH15mLと混合した。結果として生じた混合物を還流して1時間攪拌し、および次いで減圧下で蒸発させた。残渣をKOHの0.5M溶液(4mL)と混合し、およびEtOAc(3x25mL) で抽出した。合わせた有機抽出物を塩水で洗浄し、Na2SO4上で乾燥し、濃縮しおよびシリカゲルでのカラムクロマトグラフィーによってEtOAc/Et3N(98:2)toEtOAc/MeOH/Et3N(90:5:5)を溶離液として用いて精製し、無色の油として産物を与えた(261mg,80%)。

【0279】
実施例30
2-[(3R,4S)-4-(4-クロロフェニル)-ピペリジン-3-イルメチルスルファニル]-アセトアミド
【化47】

ドライアイス-アセトンバスで冷却した試験管中の[(3R,4S)-4-(4-クロロフェニル)-ピペリジン-3-イルメチルスルファニル]-酢酸メチルエステル(152.5mg,0.486mmol)を含むt-BuOH(3mL)溶液へ、過剰のアンモニウムガスを導入した。次いで試験管を密閉し、および反応混合物を室温にて72時間攪拌した。溶媒を減圧下で蒸発させた。粗産物は、シリカゲルでのカラムクロマトグラフィーによって、EtOAc/MeOH/Et3N(6/2/2)の混合物を溶離液として用いて精製し、淡黄色の油として産物を与え、それをさらにHPLCによって精製し、目的産物を無色の油として与えた(130mg,90%)。

HPLC条件は下記の通り: カラム:WatersμBondapakC18300x7.8mm;流速:2.8mL/分;検出280nm;グラジエント10%アセトニトリル水溶液(0.05%CF3COOH)から40%アセトニトリル水溶液(0.05%CF3COOH)へ30分で、および60分で運転停止;HPLC純度:98%;tR=26.63分。
【0280】
実施例31
2-[(3R,4S)-4-(4-クロロフェニル)-ピペリジン-3-イルメタンスルフィニル]-アセトアミド
【化48】

2-[(3R,4S)-4-(4-クロロフェニル)-ピペリジン-3-イルメチルスルファニル]-アセトアミド(68mg,0.228mmol)を含む酢酸(2.0mL)溶液へ、22.6μLの35%H2O2を室温にて加えた。室温にて2. 5時間攪拌後、溶媒を減圧下で蒸発させた。粗産物は、調製TLCによって、EtOAc/MeOH/Et3N/NH3-H2O(60/19/19/2)の混合物を展開溶媒とし用いて精製し、無色の油として産物を得、それをさらにHPLCによって精製し、目的産物を白色固体として与えた(52mg,73%)。

HPLC条件は下記の通り: カラム:WatersμBondapakC18300x7.8mm;流速:2.8mL/分;検出280nm;グラジエント10%アセトニトリル水溶液(0.05%CF3COOH)から40%アセトニトリル水溶液(0.05%CF3COOH)へ30分で、および60分で運転停止;HPLC純度:97%;tR=21.73分。
【0281】
実施例32
[3H]ドーパミン、[3H]5-ヒドロキシトリプタミン、および[3H]ノルエピネフリンのシナプトソーム取込み
化合物は遊離塩基として試験した。生体アミン高親和性取込みに拮抗する候補化合物の作用は、Wang et al. Wang, S.; Sakamuri, S.; Enyedy,I. J.; Kozikowski, A. P.; Deschaux,O. ; Bandyopadhyay, B. C.; Tella, S. R.; Zaman, W. A.; Johnson, K. M. J. Med. Chem. 2000, 43, 351-360によって以前に記載された通り測定した。線条体、中脳、および頭頂/後頭皮質を解剖し、およびラットDAT、SERT、およびNETの起源としてそれぞれ用いた。これらの脳領域を、テフロン(登録商標)-ガラス乳棒を用いて、氷冷0.32Mスクロース中でホモジナイズし、および10分間1000gにて遠心分離した。上清を17500gにて20分間遠心分離した。このP2シナプトソーム沈殿物を、(mMで)NaCl(125)、KCl(4.8)、MgSO4(1.2)、CaCl2(1.3)、KH2PO4(1.2)、グルコース(5.6)、ニアラミド(0.01)、およびHEPES(25)(pH7.4) から成る氷冷改変KRH緩衝液30容に再懸濁した。シナプトソーム懸濁液の部分標本を、その緩衝液および薬剤と共に30分間4℃にて、および次いで15分間37℃にて、[3H]生体アミン(終濃度は[3H]DAおよび[3H]5-HTについて5nMまで、[3H]NEについて9nM) の添加によって取込みを開始する前に予備インキュベートした。5分後、NaClの代替としてグルコサミンを含む冷緩衝液5mLの添加によっておよび次いで最終的にGF/Cグラスファイバーフィルターでの迅速減圧ろ過によって取込みを停止し、その後、5mL容の氷冷したナトリウムを含まない緩衝液で2回洗浄した。結合および遊離の[3H]生体アミンは、WhatmanGF/CフィルターでのBrandelM24R細胞採集器を用いた迅速減圧ろ過で分離し、次いで冷緩衝液5mLで2回洗浄した。フィルター上の放射能をその後、シンチレーション液5mlにフィルターを一晩入れることによって抽出した。バイアルをボルテックス処理し、および計測した。[3H]DAの特異的取込みは、30μMコカインによる阻害に感受性であるものとして定義された。10μMフルオキセチンおよび3μMデシプラミンはそれぞれ、[3H]5-HTおよび[3H]NEの特異的取込みを定義するのに用いられた。それぞれの場合で、0℃でインキュベートされた同一の試験管の平均値を引いて計算されたものと事実上同一であった。IC50値は、コンピュータープログラムLIGANDを用いて決定した。古典的競合阻害についてのCheng-Prusoff式を用いてKiを取込み実験のIC50値から計算した。使用したKm値は、[3H]DAについて67nM、[3H]5-HTについて53nM、および[3H]NEについて54nMであった。取込みは非平衡過程であるにもかかわらず、[3H]アミンの添加前の相対的に長い (45分) インキュベート期間は化合物と生体アミン輸送体との間の平衡が生じるのに適当な時間である可能性が高いため、Ki測定はこれらの化合物と生体アミン輸送体との間の親和性の適切な推定値と考えられる。
【0282】
上記の試験の結果を図1-10に示す。Ki値は、それぞれIC50概算値を区分する予備スクリーニング試験に基づいて選択された6種類の薬剤濃度 (3連で) から成る2から4回の独立した実験からの平均SEMであり、ClogP値はインターネット上で入手可能なソフトウェアを用いて計算した。<http://www.daylight.com/daycgi/clogp>および<http://esc.syrres.com/interkow/kowdemo.htm>を参照。
【0283】
参考文献
引用されたすべての特許および出版物は参照により本開示に含まれる。
【0284】
同等物
当業者は、定型の実験しか用いずに、本明細書に記載の本発明の特定の実施形態の多数の同等物を認識する、または確認することができる。そのような同等物は下記の請求項によって包含されることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0285】
【図1】図1はさまざまな化合物に関してモノアミン輸送体での再取込みの阻害についてのデータ一覧を示す。
【図2】図2はさまざまな化合物に関してモノアミン輸送体での再取込みの阻害についてのデータ一覧を示す。
【図3】図3はさまざまな化合物に関してモノアミン輸送体での再取込みの阻害についてのデータ一覧を示す。
【図4】図4はさまざまな化合物に関してモノアミン輸送体での再取込みの阻害についてのデータ一覧を示す。
【図5】図5はさまざまな化合物に関してモノアミン輸送体での再取込みの阻害についてのデータ一覧を示す。
【図6】図6はさまざまな化合物に関してモノアミン輸送体での再取込みの阻害についてのデータ一覧を示す。
【図7】図7はさまざまな化合物に関してモノアミン輸送体での再取込みの阻害についてのデータ一覧を示す。
【図8】図8はさまざまな化合物に関してモノアミン輸送体での再取込みの阻害についてのデータ一覧を示す。
【図9】図9はさまざまな化合物に関してモノアミン輸送体での再取込みの阻害についてのデータ一覧を示す。
【図10】図10はさまざまな化合物に関してモノアミン輸送体での再取込みの阻害についてのデータ一覧を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式Iによって表される化合物。
【化1】

(R1は、出現毎に独立して、Hまたはアルキルを表す;
R2は、H、アルキル、アリール、アラルキル、または-C(O)R5である;
R3は、アリール、ヘテロアリール、またはアラルキルである;
R4は、水素、ヒドロキシル、アリール、ヘテロアリール、OR5、CO2R6、C(O)N(R6)2、C(O)NHOH、OC(O)R5またはオキサジアゾールである;
R5は、アルキル、アリール、ヘテロアリール、またはアラルキルである;
R6は、出現毎に独立して、水素、アルキル、アリール、またはアラルキルを表し、ここで、任意の2つのR6が共有結合して環を形成してもよい;
Xは、S、-S(O)-、または-S(O2)-である;
nは1、2、3、または4である;さらに
mは1、2、3、または4である。)
【請求項2】
下記一般式IIによって表される化合物。
【化2】

(R1は、出現毎に独立して、Hまたはアルキルを表す;
R2は、H、アルキル、アリール、アラルキル、または-C(O)R5である;
R3は、アリール、ヘテロアリール、またはアラルキルである;
R4は、水素、ヒドロキシル、アリール、ヘテロアリール、OR5、CO2R6、C(O)N(R6)2、C(O)NHOH、OC(O)R5またはオキサジアゾールである;
R5は、アルキル、アリール、ヘテロアリール、またはアラルキルである;
R6は、出現毎に独立して、水素、アルキル、アリール、またはアラルキルを表し、ここで、任意の2つのR6が共有結合して環を形成してもよい;
Xは、S、-S(O)-、または-S(O2)-である;
nは1、2、3、または4である;さらに
mは1、2、3、または4である。)
【請求項3】
下記一般式IIIによって表される化合物。
【化3】

(R1は、出現毎に独立して、Hまたはアルキルを表す;
R2は、H、アルキル、アリール、アラルキル、または-C(O)R5である;
R3は、アリール、ヘテロアリール、またはアラルキルである;
R4は、水素、ヒドロキシル、アリール、ヘテロアリール、OR5、CO2R6、C(O)N(R6)2、C(O)NHOH、OC(O)R5またはオキサジアゾールである;
R5は、アルキル、アリール、ヘテロアリール、またはアラルキルである;
R6は、出現毎に独立して、水素、アルキル、アリール、またはアラルキルを表し、ここで、任意の2つのR6が共有結合して環を形成してもよい;
Xは、S、-S(O)-、または-S(O2)-である;
nは1、2、3、または4である; さらに
mは1、2、3、または4である。)
【請求項4】
下記一般式IVで表される化合物。
【化4】

(R1は、出現毎に独立して、Hまたはアルキルを表す;
R2は、H、アルキル、アリール、アラルキル、または-C(O)R5である;
R3は、アリール、ヘテロアリール、またはアラルキルである;
R4は、水素、ヒドロキシル、アリール、ヘテロアリール、OR5、CO2R6、C(O)N(R6)2、C(O)NHOH、OC(O)R5またはオキサジアゾールである;
R5は、アルキル、アリール、ヘテロアリール、またはアラルキルである;
R6は、出現毎に独立して、水素、アルキル、アリール、またはアラルキルを表し、ここで、任意の2つのR6が共有結合して環を形成してもよい;
Xは、S、-S(O)-、または-S(O2)-である;
nは1、2、3、または4である;さらに
mは1、2、3、または4である。)
【請求項5】
下記一般式Vで表される化合物。
【化5】

(R1は、出現毎に独立して、Hまたはアルキルを表す;
R2は、H、アルキル、アリール、アラルキル、または-C(O)R4である;
R3は、アリール、ヘテロアリール、またはアラルキルである;
R4は、アルキル、アリール、ヘテロアリール、またはアラルキルである;
Xは、S、-S(O)-、または-S(O2)-である;
nは、出現毎に独立して、1、2、3、または4を表す; さらに
Yはアルキルである。)
【請求項6】
下記一般式VIで表される化合物。
【化6】

(R1は、出現毎に独立して、Hまたはアルキルを表す;
R2は、H、アルキル、アリール、アラルキル、または-C(O)R5である;
R3は、アリール、ヘテロアリール、またはアラルキルである;
R4は、水素、ヒドロキシル、アリール、ヘテロアリール、OR5、CO2R6、C(O)N(R6)2、C(O)NHOH、OC(O)R5またはオキサジアゾールである;
R5は、アルキル、アリール、ヘテロアリール、またはアラルキルである;
R6は、出現毎に独立して、水素、アルキル、アリール、またはアラルキルを表し、ここで、任意の2つのR6が共有結合して環を形成してもよい;
Xは、S、-S(O)-、または-S(O2)-である;
nは1、2、3、または4である;さらに
mは1、2、3、または4である。)
【請求項7】
Xが、Sまたは-S(O)-であることを特徴とする請求項1から6いずれか1項記載の化合物。
【請求項8】
R2が、メチル、エチルまたはプロピルであることを特徴とする請求項1から6いずれか1項記載の化合物。
【請求項9】
R2がメチルであることを特徴とする請求項1から6いずれか1項記載の化合物。
【請求項10】
R3が、必要に応じて置換されたフェニルであることを特徴とする請求項1から6いずれか1項記載の化合物。
【請求項11】
R3がハロフェニルであることを特徴とする請求項1から6いずれか1項記載の化合物。
【請求項12】
R3が3-クロロフェニルであることを特徴とする請求項1から6いずれか1項記載の化合物。
【請求項13】
R4がC(O)N(R6)2であることを特徴とする請求項1から6いずれか1項記載の化合物。
【請求項14】
R4がC(O)N(R6)2であり、さらにR6が出現毎に独立して水素またはアルキルを表すことを特徴とする請求項1から6いずれか1項記載の化合物。
【請求項15】
XがSであり、nが1であり、mが1であり、R1が水素であり、R2がメチルであり、さらにR3が3-クロロフェニルであることを特徴とする請求項1から6いずれか1項記載の化合物。
【請求項16】
XがSであり、nが1であり、mが1であり、R1が水素であり、R2がメチルであり、R3が3-クロロフェニルであり、さらにR4がC(O)N(R6)2であることを特徴とする請求項1から6いずれか1項記載の化合物。
【請求項17】
XがSであり、nが1であり、mが1であり、R1が水素であり、R2がメチルであり、R3が3-クロロフェニルであり、さらにR4がC(O)N(H)iPrであることを特徴とする請求項1から6いずれか1項記載の化合物。
【請求項18】
XがSであり、nが1であり、mが1であり、R1が水素であり、R2がメチルであり、R3が3-クロロフェニルであり、さらにR4がC(O)N(H)CH3であることを特徴とする請求項1から6いずれか1項記載の化合物。
【請求項19】
Xが-S(O)-であり、nが1であり、R1が水素であり、R2がメチルであり、さらにR3が3-クロロフェニルであることを特徴とする請求項1から6いずれか1項記載の化合物。
【請求項20】
Xが-S(O)-であり、nが1であり、mが2であり、R1が水素であり、R2がメチルであり、R3が3-クロロフェニルであり、さらにR4がOC(O)R5であることを特徴とする請求項1から6いずれか1項記載の化合物。
【請求項21】
Xが-S(O)-であり、nが1であり、mが2であり、R1が水素であり、R2がメチルであり、R3が3-クロロフェニルであり、R4がOC(O)R5であり、さらにR5がCH3であることを特徴とする請求項1から6いずれか1項記載の化合物。
【請求項22】
Xが-S(O)-であり、nが1であり、mが2であり、R1が水素であり、R2がメチルであり、R3が3-クロロフェニルであり、R4がOC(O)R5であり、さらにR5がフェニルであることを特徴とする請求項1から6いずれか1項記載の化合物。
【請求項23】
Xが-S(O)-であり、nが1であり、mが1であり、R1が水素であり、R2がメチルであり、R3が3-クロロフェニルであり、さらにR4がC(O)N(H)OHであることを特徴とする請求項1から6いずれか1項記載の化合物。
【請求項24】
Xが、Sまたは-S(O)-であることを特徴とする請求項2記載の化合物。
【請求項25】
R2が、メチル、エチルまたはプロピルであることを特徴とする請求項2記載の化合物。
【請求項26】
R2がメチルであることを特徴とする請求項2記載の化合物。
【請求項27】
R3が、必要に応じて置換されたフェニルであることを特徴とする請求項2記載の化合物。
【請求項28】
R3がハロフェニルであることを特徴とする請求項2記載の化合物。
【請求項29】
R3が3-クロロフェニルであることを特徴とする請求項2記載の化合物。
【請求項30】
R4がC(O)N(R6)2であることを特徴とする請求項2記載の化合物。
【請求項31】
R4がC(O)N(R6)2であり、さらにR6が出現毎に独立して水素またはアルキルを表すことを特徴とする請求項2記載の化合物。
【請求項32】
XがSであり、nが1であり、mが1であり、R1が水素であり、R2がメチルであり、さらにR3が3-クロロフェニルであることを特徴とする請求項2記載の化合物。
【請求項33】
XがSであり、nが1であり、mが1であり、R1が水素であり、R2がメチルであり、R3が3-クロロフェニルであり、さらにR4がC(O)N(R6)2であることを特徴とする請求項2記載の化合物。
【請求項34】
XがSであり、nが1であり、mが1であり、R1が水素であり、R2がメチルであり、R3が3-クロロフェニルであり、さらにR4がC(O)N(H)iPrであることを特徴とする請求項2記載の化合物。
【請求項35】
Xが、Sまたは-S(O)-であることを特徴とする請求項3記載の化合物。
【請求項36】
R2が、メチル、エチルまたはプロピルであることを特徴とする請求項3記載の化合物。
【請求項37】
R2がメチルであることを特徴とする請求項3記載の化合物。
【請求項38】
R3が、必要に応じて置換されたフェニルであることを特徴とする請求項3記載の化合物。
【請求項39】
R3がハロフェニルであることを特徴とする請求項3記載の化合物。
【請求項40】
R3が3-クロロフェニルであることを特徴とする請求項3記載の化合物。
【請求項41】
R4がC(O)N(R6)2であることを特徴とする請求項3記載の化合物。
【請求項42】
R4がC(O)N(R6)2であり、さらにR6が出現毎に独立して水素またはアルキルを表すことを特徴とする請求項3記載の化合物。
【請求項43】
XがSであり、nが1であり、mが1であり、R1が水素であり、R2がメチルであり、さらにR3が3-クロロフェニルであることを特徴とする請求項3記載の化合物。
【請求項44】
XがSであり、nが1であり、mが1であり、R1が水素であり、R2がメチルであり、R3が3-クロロフェニルであり、さらにR4がC(O)N(R6)2であることを特徴とする請求項3記載の化合物。
【請求項45】
XがSであり、nが1であり、mが1であり、R1が水素であり、R2がメチルであり、R3が3-クロロフェニルであり、さらにR4がC(O)N(H)iPrであることを特徴とする請求項3記載の化合物。
【請求項46】
Xが、Sまたは-S(O)-であることを特徴とする請求項4記載の化合物。
【請求項47】
R2が、メチル、エチルまたはプロピルであることを特徴とする請求項4記載の化合物。
【請求項48】
R2がメチルであることを特徴とする請求項4記載の化合物。
【請求項49】
R3が、必要に応じて置換されたフェニルであることを特徴とする請求項4記載の化合物。
【請求項50】
R3がハロフェニルであることを特徴とする請求項4記載の化合物。
【請求項51】
R3が3-クロロフェニルであることを特徴とする請求項4記載の化合物。
【請求項52】
R4がC(O)N(R6)2であることを特徴とする請求項4記載の化合物。
【請求項53】
R4がC(O)N(R6)2であり、さらにR6が出現毎に独立して水素またはアルキルを表すことを特徴とする請求項4記載の化合物。
【請求項54】
XがSであり、nが1であり、mが1であり、R1が水素であり、R2がメチルであり、さらにR3が3-クロロフェニルであることを特徴とする請求項4記載の化合物。
【請求項55】
XがSであり、nが1であり、mが1であり、R1が水素であり、R2がメチルであり、R3が3-クロロフェニルであり、さらにR4がC(O)N(R6)2であることを特徴とする請求項4記載の化合物。
【請求項56】
XがSであり、nが1であり、mが1であり、R1が水素であり、R2がメチルであり、R3が3-クロロフェニルであり、さらにR4がC(O)N(H)iPrであることを特徴とする請求項4記載の化合物。
【請求項57】
Xが、Sまたは-S(O)-であることを特徴とする請求項5記載の化合物。
【請求項58】
R2がメチルであることを特徴とする請求項5記載の化合物。
【請求項59】
R3が、必要に応じて置換されたフェニルであることを特徴とする請求項5記載の化合物。
【請求項60】
R3が3-クロロフェニルであることを特徴とする請求項5記載の化合物。
【請求項61】
Xが、Sまたは-S(O)-であることを特徴とする請求項6記載の化合物。
【請求項62】
R2が、メチル、エチルまたはプロピルであることを特徴とする請求項6記載の化合物。
【請求項63】
R2がメチルであることを特徴とする請求項6記載の化合物。
【請求項64】
R3が、必要に応じて置換されたフェニルであることを特徴とする請求項6記載の化合物。
【請求項65】
R3がハロフェニルであることを特徴とする請求項6記載の化合物。
【請求項66】
R3が3-クロロフェニルであることを特徴とする請求項6記載の化合物。
【請求項67】
R4がC(O)N(R6)2であることを特徴とする請求項6記載の化合物。
【請求項68】
R4がC(O)N(R6)2であり、さらにR6が出現毎に独立して水素またはアルキルを表すことを特徴とする請求項6記載の化合物。
【請求項69】
XがSであり、nが1であり、mが1であり、R1が水素であり、R2がメチルであり、さらにR3が3-クロロフェニルであることを特徴とする請求項6記載の化合物。
【請求項70】
XがSであり、nが1であり、mが1であり、R1が水素であり、R2がメチルであり、R3が3-クロロフェニルであり、さらにR4がC(O)N(R6)2であることを特徴とする請求項6記載の化合物。
【請求項71】
XがSであり、nが1であり、mが1であり、R1が水素であり、R2がメチルであり、R3が3-クロロフェニルであり、さらにR4がC(O)N(H)iPrであることを特徴とする請求項6記載の化合物。
【請求項72】
哺乳類のドーパミン、セロトニンまたはノルエピネフリンの受容体または輸送体に基づくアッセイにおいて1μM未満のEC50を有することを特徴とする請求項1から6いずれか1項記載の化合物。
【請求項73】
哺乳類のドーパミン、セロトニンまたはノルエピネフリンの受容体または輸送体に基づくアッセイにおいて10nM未満のEC50を有することを特徴とする請求項1から6いずれか1項記載の化合物。
【請求項74】
哺乳類のドーパミン、セロトニンまたはノルエピネフリンの受容体または輸送体に基づくアッセイにおいて100nM未満のEC50を有することを特徴とする請求項1から6いずれか1項記載の化合物。
【請求項75】
哺乳類のドーパミン、セロトニンまたはノルエピネフリンの受容体または輸送体に基づくアッセイにおいて1μM未満のIC50を有することを特徴とする請求項1から6いずれか1項記載の化合物。
【請求項76】
哺乳類のドーパミン、セロトニンまたはノルエピネフリンの受容体または輸送体に基づくアッセイにおいて10nM未満のIC50を有することを特徴とする請求項1から6いずれか1項記載の化合物。
【請求項77】
哺乳類のドーパミン、セロトニンまたはノルエピネフリンの受容体または輸送体に基づくアッセイにおいて100nM未満のIC50を有することを特徴とする請求項1から6いずれか1項記載の化合物。
【請求項78】
請求項1から6いずれか1項記載の化合物の治療的効果量を哺乳類に投与する工程を含む、哺乳類においてドーパミン、セロトニンまたはノルエピネフリンの受容体または輸送体の活性を調節する方法。
【請求項79】
前記哺乳類が、霊長類、ウマ、イヌまたはネコであることを特徴とする請求項78記載の方法。
【請求項80】
前記哺乳類がヒトであることを特徴とする請求項78記載の方法。
【請求項81】
化合物が経口投与されることを特徴とする請求項78記載の方法。
【請求項82】
化合物が静脈内投与されることを特徴とする請求項78記載の方法。
【請求項83】
化合物が舌下投与されることを特徴とする請求項78記載の方法。
【請求項84】
化合物が眼内投与されることを特徴とする請求項78記載の方法。
【請求項85】
化合物が経皮投与されることを特徴とする請求項78記載の方法。
【請求項86】
化合物が直腸内投与されることを特徴とする請求項78記載の方法。
【請求項87】
化合物が膣内投与されることを特徴とする請求項78記載の方法。
【請求項88】
化合物が局所投与されることを特徴とする請求項78記載の方法。
【請求項89】
化合物が筋肉内投与されることを特徴とする請求項78記載の方法。
【請求項90】
化合物が皮下投与されることを特徴とする請求項78記載の方法。
【請求項91】
化合物が口腔内投与されることを特徴とする請求項78記載の方法。
【請求項92】
化合物が経鼻投与されることを特徴とする請求項78記載の方法。
【請求項93】
請求項1から6いずれか1項記載の化合物の治療的効果量を哺乳類に投与する工程を含む、耽溺、不安症、うつ病、性機能障害、高血圧、偏頭痛、アルツハイマー病、肥満、嘔吐、精神疾患、鎮痛、統合失調症、パーキンソン病、下肢静止不能症候群、睡眠障害、注意欠陥多動性障害、過敏性腸症候群、早漏、月経不快気分症候群、尿失禁、炎症性疼痛、神経障害性疼痛、レッシュ・ナイハン病、ウィルソン病またはトゥーレット症候群に罹患した哺乳類を治療する方法。
【請求項94】
前記哺乳類が、霊長類、ウマ、イヌまたはネコであることを特徴とする請求項93記載の方法。
【請求項95】
前記哺乳類がヒトであることを特徴とする請求項93記載の方法。
【請求項96】
化合物が経口投与されることを特徴とする請求項93記載の方法。
【請求項97】
化合物が静脈内投与されることを特徴とする請求項93記載の方法。
【請求項98】
化合物が舌下投与されることを特徴とする請求項93記載の方法。
【請求項99】
化合物が眼内投与されることを特徴とする請求項93記載の方法。
【請求項100】
化合物が経皮投与されることを特徴とする請求項93記載の方法。
【請求項101】
化合物が直腸内投与されることを特徴とする請求項93記載の方法。
【請求項102】
化合物が膣内投与されることを特徴とする請求項93記載の方法。
【請求項103】
化合物が局所投与されることを特徴とする請求項93記載の方法。
【請求項104】
化合物が筋肉内投与されることを特徴とする請求項93記載の方法。
【請求項105】
化合物が皮下投与されることを特徴とする請求項93記載の方法。
【請求項106】
化合物が口腔内投与されることを特徴とする請求項93記載の方法。
【請求項107】
化合物が経鼻投与されることを特徴とする請求項93記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2007−509168(P2007−509168A)
【公表日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−536849(P2006−536849)
【出願日】平成16年10月22日(2004.10.22)
【国際出願番号】PCT/US2004/035162
【国際公開番号】WO2005/041875
【国際公開日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(399129308)ジョージタウン ユニヴァーシティー (2)
【Fターム(参考)】