説明

ナノスフェア添加剤およびナノスフェア添加剤を含有した潤滑剤調合物

【課題】潤滑表面間の摩擦係数および摩耗を低減させる潤滑剤組成物の提供。
【解決手段】 当方法には、光架橋が可能なポリ(2−シンナモイルオキシアルキルアクリレート)のコア、およびジブロックアクリレートコポリマーのコロナから得られた、一定量の油溶性のナノスフェア成分を、潤滑粘度の基油を含んだ完全に調合された潤滑剤組成物に供給することが含まれる。ナノスフェア成分のコアの直径は、約10ナノメートルから約100ナノメートルである。ナノスフェア成分を含有した潤滑剤組成物が、潤滑されるべき表面に適用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載の実施態様は、ナノ粒子を含有する完全に調合された潤滑剤を使用した、摩擦調整および摩耗低減する方法に関する。特に、摩擦係数を低減させるため、また摩耗低減剤として、油溶性のナノスフェア成分が潤滑剤調合物中で使用される。
【背景技術】
【0002】
潤滑剤は、液体、ペースト、あるいは固体であり、液体の潤滑剤が最も多く使用される。潤滑油は、摩擦および摩耗を低減し、また燃費を節約するため、乗用車のエンジン、トランスミッション、ベアリング、ギア、工業用のギア、およびその他の機械に使用される。分散剤、清浄剤、摩擦調整剤、耐摩耗剤、抗酸化剤、および抗腐食添加剤を含み、これらに限定されることのない多くの成分が、完全に調合された潤滑油中に一般的に存在する。多くの潤滑剤の応用として、粘度指数向上剤もまた主要成分として含まれている。
【0003】
エネルギー源が激減し、より厳しい環境規制が導入されるようになったため、自動車の燃費を節約し、また自動車の排ガスの放出を低減させる必要がある。現在、燃費の節約を向上させるため、有機摩擦調整剤が潤滑油に添加されている。しかしながら、有機摩擦調整剤によって達成できる燃費の節約には限度がある。従って、燃費節約の向上を達成するためには、別の方法が必要である。
【0004】
燃費の節約を増加させる方法の一つに、より粘度グレードの低い潤滑油を供給することがある。より低い粘度の潤滑油を供給すると、燃費の節約を劇的に向上させることもあるが、このような潤滑油はまた、摩耗を増加させることもある。ジンクジアルキルジチオホスフェート(ZDTP)のような耐摩耗剤を使用することにより、摩耗は部分的に低減される。しかしながらZDTPはリンを含有しており、その分解生成物は排ガス規制用の自動車触媒システムに悪影響を及ぼす。従って、排ガス規制システムに悪影響を与えず、また乏しい天然資源をさらに消耗することなく摩擦および摩耗を低減させる方法が、ますます必要となる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記に関し、本明細書に記載の例示的実施態様は、潤滑表面間の摩擦係数および摩耗を低減させる方法を提供する。当方法には、光架橋が可能なポリ(2−シンナモイルオキシアルキルアクリレート)のコア、およびジブロックアクリレートコポリマーのコロナから得られた、一定量の油溶性のナノスフェア成分を、潤滑粘度の基油を含んだ完全に調合された潤滑剤組成物に供給することが含まれる。ナノスフェア成分のコアの直径は、約10ナノメートルから約100ナノメートルである。当方法によると、ナノスフェア成分を含有した潤滑剤組成物が、潤滑されるべき表面に適用される。
【0006】
別の実施態様では、潤滑剤組成物を含有したエンジンの作動中に、エンジンの潤滑剤組成物の摩擦係数を低減する方法が提供される。当方法には、潤滑粘度の基油と、摩擦係数を油溶性のナノスフェア成分を欠いた潤滑剤組成物の摩擦係数以下に減らすのに十分な、光架橋が可能なポリ(2−シンナモイルオキシアルキルアクリレート)のコアおよびジブロックアクリレートコポリマーのコロナから得られた一定量の油溶性のナノスフェア成分とを有する、完全に調合された潤滑剤組成物にエンジン部分を接触させることが含まれる。ナノスフェア成分のコアの直径は、約10ナノメートルから約100ナノメートルである。
【0007】
本開示のさらなる実施態様は、潤滑油を使用した可動部間の摩耗を減少させる方法を提供している。当方法には、一つ以上の可動部用の潤滑油として、基油および摩耗低減剤を含んだオイル添加剤パッケージを含む潤滑剤組成物を使用することが含まれる。当摩耗低減剤は、光架橋が可能なポリ(2−シンナモイルオキシアルキルアクリレート)のコアおよびジブロックアクリレートコポリマーのコロナから得られた油溶性のナノスフェア成分である。
【0008】
本開示のさらなる実施態様は、光架橋が可能なポリ(2−シンナモイルオキシアルキルアクリレート)のコア、およびジブロックアクリレートコポリマーのコロナから得られた、一定量の油溶性のナノスフェア成分を、潤滑粘度の基油を含んだ完全に調合された潤滑剤組成物に供給すること、およびナノスフェア成分を含有した潤滑剤組成物を潤滑するべき表面に適用することを含んで成り、ナノスフェア成分のコアの直径が潤滑剤組成物の膜の厚み以上であるような、隣接した潤滑表面の摩擦係数を低減させる方法を提供している。
【0009】
本開示のさらなる実施態様は、潤滑粘度の基油と、摩擦係数を、油溶性のナノスフェア成分を欠いた潤滑剤組成物の摩擦係数以下に減らすのに十分な、光架橋が可能なポリ(2−シンナモイルオキシアルキルアクリレート)のコアおよびジブロックアクリレートコポリマーのコロナから得られた一定量の油溶性のナノスフェア成分を含んで成る完全に調合された潤滑剤組成物にエンジン部分を接触させることを含んで成り、ナノスフェア成分のコアの直径が潤滑剤組成物の膜の厚み以上である、潤滑剤組成物を含有したエンジンの作動中に、エンジンの潤滑剤組成物の摩擦係数を低減させる方法を提供する。
【0010】
上記に簡単に説明されたように、本開示の実施態様は、潤滑剤組成物の摩擦係数を著しく向上させ、また比較的粘度の低い潤滑剤組成物の摩耗を減少させることができる、独自の完成した潤滑剤組成物を提供する。油溶性のナノスフェア成分を含有した添加剤パッケージは、可動部間の表面に適用される油性の流体と混合される。別の用途では、油溶性のナノスフェア成分を含有した添加剤パッケージが、完全に調合された潤滑剤組成物に供給される。
【0011】
本明細書に記載の方法は、自動車の公害防止装置の汚染の低減に特に適している。また一方では、当組成物は、潤滑剤組成物の摩擦係数特性および摩耗特性の改善に適したものである。フラーレンや無機のナノ粒子と異なり、本明細書に記載のナノスフェア成分は、潤滑剤の効果を高めるために有益となる、粒子のサイズや形状のより優れたコントロールを可能にする。本明細書に記載の実施態様を限定することなく実施態様を例示することを意図した、以下の詳細な説明を参照することにより明白である。
【0012】
前述の概要および以下の詳しい説明は、共に例示および説明のみを目的としたものであり、開示および請求された実施態様のさらなる説明を提供することを意図したものであると理解される。
【0013】
実施態様のさらなる利点は、図面と併せて考慮し、好適な実施態様の詳細な説明を参照することによって明白となる。ここで、以下のいくつかの図面を通して、同類の参照符号は同類あるいは同様の成分を指している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本開示の目的のため、「炭化水素に可溶な」、「油溶性の」、または「分散可能な」という用語は、化合物が、あらゆる比率で炭化水素化合物又は油中に可溶である、溶解可能である、混和性がある、あるいは懸濁可能であることを意味するように意図されたものではない。しかしながらこれらは、例えば、オイルが使用される環境下で、それらに意図さ
れた効果を与えるのに十分な程度に、オイル中で可溶であるまたは安定的に分散可能であることを意味する。さらに、別の添加剤を追加的に混入させることにより、必要に応じて、より高い量の特定の添加剤を混入させることが可能になる。
【0015】
本明細書で使用される、「炭化水素」という用語は、炭素、水素、および/または酸素を様々な組み合わせで含んでいる、任意の多数の化合物を意味する。「ヒドロカルビル」という用語は、炭素原子が分子の残りの部分に直接結合しており、また主に炭化水素の特性を有する基を指す。ヒドロカルビル基の例には以下のものが含まれる:
(1)炭化水素置換基、すなわち、脂肪族(例えばアルキルまたはアルケニル)置換基、脂環式(例えばシクロアルキル、シクロアルケニル)置換基、また芳香族、脂肪族、および脂環基によって置換された芳香族置換基、また環が分子の別の部分によって完成されている(例えば二つの置換基が一緒になって脂環式ラジカルを形成している)ような環状置換基;
(2)置換された炭化水素置換基、すなわち、本発明の文脈において、主に炭化水素である置換基(例えばハロ(特にクロロおよびフルオロ)、ヒドロキシ、アルコキシ、メルカプト、アルキルメルカプト、ニトロ、ニトロソ、およびスルホキシ)などを変化させないような、非炭化水素基を含んだ置換基;
(3)ヘテロ置換基、すなわち、主に本発明の文脈において、主に炭化水素の特性を有しながら、そうでなければ炭素原子から成る環または鎖の中に炭素以外の原子を含んでいるような置換基。ヘテロ原子には硫黄、酸素、および窒素があり、またピリジル、フリル、チエニルおよびイミダゾリルのような置換基が含まれる。通常、ヒドロカルビル基中、炭素原子10個につき二つ以下、好ましくは一つ以下の非炭化水素置換基が存在する。一般的にはヒドロカルビル基中に非炭化水素置換基は存在しない。
【0016】
図1に例証されたナノスフェア成分10には、実質的にオイルに不溶性のコア12およびコアに結合した油溶性のコロナ14が含まれる。ナノスフェア成分のコア12は、光架橋が可能なポリ(2−シンナモイルオキシアルキルアクリレート)、あるいはポリ(ヒドロキシルアルキルアクリレート)のヒドロキシル基またはPHAAと塩化シンナモイルとの反応によって作られたPCAAブロックから得られる。コア12のガラス転移温度は、ヒドロキシアルキルアクリレートの一部と塩化オクタノイルを反応させることによって調整され、ポリ[(2−シンナモイルエチルアクリレート)−ran−(2−オクタノイルエチルアクリレート)]のようなポリ[(2−シンナモイルアルキルアクリレート)−ran−(2−オクタノイルアルキルアクリレート)]、あるいは以下の化学式で例証されるP(CEA−r−OEA)が得られる:
【0017】
【化1】

【0018】
式中、xは約0.1から約1.0、またzは約20から約500である。コアの直径(CD)は、ジブロックのモル質量を変化させることによって選択され、一般的には約10ナノメートルから約50ナノメートルである。
【0019】
油溶性のブロックコポリマーは、コア12を取り囲むコロナ14として供給される。従
って、好適なブロックコポリマーは、ポリ[(2−エチルヘキシルアクリレート)−ran−(tert−ブチルアクリレート)]−block−ポリ(2−ヒドロキシエチルアクリレート)のようなポリ[(2−エチルアルキル アクリレート)−ran−(アルキル アクリレート)]−block−ポリ(2−ヒドロキシアルキルアクリレート)、あるいは以下の化学式で例証されるP(EXA−r−tBA)−b−PHEAから得られる:
【0020】
【化2】

【0021】
式中、yは約0.001から約0.5、mは約20から約500、またnは約20から約500である。全体的な平均直径が約20ナノメートルから約100ナノメートルとなるように、コロナ14は、ナノスフェア成分10の流体力学的直径(HD)を顕著に増加させる。
【0022】
大部分がパラフィン、芳香族化合物、およびナフテン(シクロパラフィン)から成る、潤滑基油中での可溶性により、ナノスフェア10にコロナ14を供給するため、P(EXA−r−tBA)ブロックが選択される。金属またはその他の基板の表面へのナノスフェアの吸着を促進するため、tBAが選択的に加水分解されて、アクリル酸あるいはAA基を生成するように、例えば1.5%未満の、tBAの小さなモル分率のyが、コロナ14のブロックコポリマー中に混入される。PHEAブロックは、変性が容易であるために選択された。PHEAのヒドロキシル基は、光架橋が可能なポリ(2−シンナモイルオキシエチルアクリレート)、またはPCEAブロックを生成するため、塩化シンナモイルと反応させられる。変性されたPHEAブロックのガラス転移温度は、ポリ((2−シンナモイルオキシエチルアクリレート)−ran−(2−オクタノイルオキシエチルアクリレート))、あるいはP(CEA−r−OEA)を生成するため、HEAのヒドロキシル基の一部を塩化オクタノイルと反応させることによって調整される。
【0023】
ナノスフェア10は、P(EXA−r−tBA)ブロックのブロック選択的溶媒であると考えられる、ヘキサンあるいはヘキサン含有量の高いテトラヒドロフラン/ヘキサン中で調製される。このようなブロック選択溶媒において、不溶性のPCEAまたはP(CEA−r−OEA)ブロックは、ジブロックおよび溶媒のn/m値に基づいて、球形あるいは円筒形の凝集体のいずれかのコアを形成する。可溶性のP(EXA−r−tBA)ブロックは、コロナ14を提供する。このような凝集体のコア12は、実質的に永久的なナノ粒子を供給するため、光化学的に架橋されて構造中に固定される。
【実施例】
【0024】
例1:P(EXA−r−tBA)−b−PHEAの合成
コロナ14を供給するポリマーP(EXA−r−tBA)−b−PHEAの基礎集合は、P(EXA−r−tBA)−b−P(HEA−TMS)を加水分解することによって調製される。ここでP(HEA−TMS)とはポリ(2−トリメチルシロキシエチルアクリレート)を意味する。P(EXA−r−tBA)−b−P(HEA−TMS)は、PBA−b−(P(HEA−TMS)の生成のための原子移動ラジカル重合(ATRP)プロセスによって合成される。ここで、PBAとはポリ(ブチルアクリレート)を意味する。開始システムには、メチル−2−ブロモプロピオネート(CH3CHBrCO2CH3)、臭化銅(I)、および化学式((CHNCHCHNCHのN,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)が含まれる。
【0025】
P(EXA−r−tBA)−b−P(HEA−TMS)は、トルエンのような非極性の溶媒中でEXAと少量のtBAのコポリマー化によって調製される。供給割合でのtBAのモル分率は、1.5%未満でなくてはならない。第一のブロックの精製の後、第一のブロックは、第二のモノマー、トリメチルシリルオキシエチルアクリレート、あるいはHEA−TMSのポリマー化のためのマクロイニシエーターとして使用される。TMS基は、酢酸を滴下して加えることにより、水性THF内の加水分解によって除去される。
【0026】
例2:P(EXA−r−tBA)−b−PCEAの合成
P(EXA−r−tBA)−b−PCEAを供給するため、例1に基づいて作られたP(EXA−r−tBA)−b−PHEAを、ピリジン中の塩化シンナモイルと反応させる。PCEAは、そのナノスフェア10を光架橋することが可能であることから好適である。コアを形成するブロックコポリマーのガラス転移温度Tを下げるため、過剰の塩化シンナモイルと反応させる前にヒドロキシル基の一部を塩化オクタノイルと反応させて、P(EXA−r−tBA)−b−P(CEA−r−OEA)が得られる。ブロックコポリマー内のCEAのモル分率は、効果的なコアの架橋を促進するため、50%を下回らないことが望ましい。
【0027】
理論によって拘束されることを望まないが、潤滑油は主として2つのメカニズムによって潤滑を実現すると考えられている。流体力学の法則に基づいて、二つの摺動面を押し分ける流体力学的圧力は、二つの面が最も近くなる部位で一番高い。この圧力は負荷を支え、流体力学的潤滑(HDL)システムにおける摺動面の直接的な接触を回避する。負荷が高いおよび/または低スピードの状態において、潤滑システムは混合潤滑(ML)あるいは境界潤滑(BL)システムに入り、また表面のおうとつは、不可避的に部分的あるいは広範囲にわたって接触する。両親媒性分子を含有した潤滑剤は、表面上に膜を形成することにより、おうとつの直接的接触を回避する。吸着した膜は、金属表面から簡単に削げ落ち、また可動部が互いから遠ざかった後に金属表面上に再形成することができるため、摩擦が低減される。さらに吸着した膜は、マイカ摺動面上に形成されたポリマーブラシについて実証されているように、通常互いに反発しあう。
【0028】
ブロックコポリマーナノスフェア成分10は、以下のメカニズムのうちの一つ以上によって摩擦調整剤および耐摩耗剤として機能すると考えられている:a)ナノスフェア成分により、摺動面を物理的に分離する、b)摺動面間の滑り摩擦を、面とナノスフェア成分間の転がり摩擦に転換する、またc)ナノスフェア成分または成分の一部による隣接した面をコーティングする。フラーレンや無機のナノ粒子と異なり、ブロックコポリマーナノスフェア成分10は、粒子のサイズや形状のより幅広いコントロールを可能にする。
【0029】
上述の油溶性のナノスフェア成分10は、潤滑組成物中に好適に混入される。従って、油溶性のナノスフェア成分10は、完成した潤滑油組成物に直接添加される。しかしながら、一つの実施態様では、油溶性のナノスフェア成分10は、鉱油、合成油(例えばジカルボン酸のエステル等)、ナフサ、アルキル化(例えばC10−C13のアルキル)ベンゼン、トルエンまたはキシレンなどのような、実質的に不活性な、通常は液体である有機希釈剤で希釈され、添加剤濃縮物を形成する。添加剤濃縮物は、約0重量%から約99重量%の希釈油、および油溶性のナノスフェア成分10を含有する。
【0030】
潤滑油調合物の調製において、一般的な方法として、約1重量%から約約99重量%の活性成分の濃縮物の形態の添加剤濃縮物が、例えば鉱物潤滑油のような炭化水素油やその他の適切な溶媒に添加される。通常、例えばクランクケースモーターオイルなどの完成し
た潤滑剤を形成するため、これらの濃縮物が、分散剤/防止剤(DI)パッケージ、およびDIパッケージ1重量パートに対して0.01重量部から50重量部の潤滑油を含有した粘度指数(VI)向上剤と共に、潤滑油に添加される。好適なDIパッケージは、例えば、米国特許第5,204,012号および6,034,040号に記載されている。DI添加剤パッケージに含まれているタイプの添加剤に、清浄剤、分散剤、耐摩耗剤、摩擦調整剤、シール膨張剤、抗酸化剤、発泡防止剤、潤滑剤、防錆剤、腐食防止剤、乳化破壊剤、粘度指数向上剤その他がある。これらの成分の内のいくつかは当技術分野に精通した技術者には周知のものであり、本明細書に記載の添加剤および組成物と共に、通例の量で使用される。
【0031】
上述のナノスフェア成分で作られた潤滑剤組成物は、幅広い用途で使用される。圧縮点火エンジンおよび火花点火エンジンについては、潤滑剤組成物は、公表されたAPI−CI−4あるいはGF−4規準に見合う、または超えることが望まれる。完全に調合された潤滑剤を供給するため、上記のAPI−CI−4あるいはGF−4規準に準じた潤滑剤組成物には、基油、DI添加剤パッケージ、および/またはVI向上剤が含まれる。本開示による潤滑剤の基油は、天然潤滑油、合成潤滑油およびそれらの混合物の中から選択された、潤滑粘度のオイルである。このような基油には、乗用車やトラックのエンジン、また船舶や列車のディーゼルエンジンなどのような、火花点火および圧縮点火内燃エンジン用のクランクケース潤滑油として従来使用されていたものが含まれる。
【0032】
上述のナノスフェア成分10は、完全に調合されたオートマチックトランスミッション液、完全に調合されたクランクケース液、完全に調合された高荷重ギア液内などで使用される。このようなナノスフェア成分には、摩擦係数および摩耗を低減する効果がある。
【0033】
当ナノスフェア成分は、完全に調合された潤滑剤組成物内に、約5重量%未満の量で存在する。別の例としては、当ナノスフェア成分は、完全に調合された潤滑剤組成物内に、約0.1重量%から約5重量%の量で存在する。さらに別の例としては、当ナノスフェア成分は、完全に調合された潤滑剤組成物内に、約0.5重量%から約2重量%の量で存在する。
【0034】
好適なナノスフェア成分のコアの直径は約10nmから約100nmであり、また流体力学的直径は約10nmから約120nmである。
【0035】
分散剤成分
DIパッケージ中に含有される分散剤には、分散される粒子と結合することのできる官能基を有する、油溶性ポリマーの炭化水素骨格が含まれるが、これらに限定はされない。一般的に、当分散剤は、アミン、アルコール、アミド、または通常架橋基によってポリマー骨格に接続しているエステルの極性部分を含んで成る。分散剤は、例えば、米国特許第3,697,574号および3,736,357号に記載のマンニッヒ分散剤;米国特許第4,234,435号および4,636,322号に記載の無灰コハク酸イミド分散剤;米国特許第3,219,666号、3,565,804号、および5,633,326号に記載のアミン分散剤;米国特許第5,936,041号、5,643,859号、および5,627,259号に記載のコッホ分散剤、また米国特許第5,851,965号、5,853,434号、および5,792,729号に記載のポリアルキレンコハク酸イミド分散剤などの中から選択される。
【0036】
酸化防止剤成分
酸化防止剤、または抗酸化剤は、ベースストックが使用中に劣化する傾向を低減させる。劣化は、金属表面に堆積するスラッジやワニス様の堆積物のような酸化の産物、および完成した潤滑剤の粘度の増加などによって証明される。このような酸化防止剤には、ヒンダードフェノール;硫化ヒンダードフェノール;約Cから約C12のアルキル側鎖を有するアルキルフェノールチオエステルのアルカリ土類金属塩;硫化アルキルフェノール;
例えば硫化カルシウムノニルフェノールなどの、硫化された、あるいは硫化されていないアルキルフェノールの金属塩;無灰油溶性フェネートおよび硫化フェネート;リン硫化、または硫化された炭化水素;リンエステル;金属チオカーバメート;および米国特許第4,867,890号に記載の油溶性銅化合物などが含まれる。
【0037】
使用されるその他の抗酸化剤には、立体障害フェノールおよびジアリールアミン、アルキル化フェノチアジン、硫化化合物、また無灰ジアルキルジチオカーバメートが含まれる。立体障害フェノールの非限定的な例には、米国特許第2004/266630に記載の2,6−ジ−第3級ブチルフェノール;2,6ジ−第3級ブチルメチルフェノール;4−エチル−2,6−ジ−第3級ブチルフェノール;4−プロピル−2,6−ジ−第3級ブチルフェノール;4−ブチル−2,6−ジ−第3級ブチルフェノール;4−ペンチル−2,6−ジ−第3級ブチルフェノール;4−ヘキシル−2,6−ジ−第3級ブチルフェノール;4−ヘプチル−2,6−ジ−第3級ブチルフェノール;4−(2−エチルヘキシル)−2,6−ジ−第3級ブチルフェノール;4−オクチル−2,6−ジ−第3級ブチルフェノール;4−ノニル−2,6−ジ−第3級ブチルフェノール;4−デシル−2,6−ジ−第3級ブチルフェノール;4−ウンデシル−2,6−ジ−第3級ブチルフェノール;4−ドデシル2,6−ジ−第3級ブチルフェノール;4,4−メチレンビス(6−t−ブチル−o−クレゾール);4,4−メチレンビス(2−t−アミル−o−クレゾール);2,2−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール、4,4−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール);およびそれらの混合物を含むがそれらに限定されないようなメチレン架橋の立体障害フェノールなどが含まれるが、これらに限定はされない。
【0038】
ジアリールアミン抗酸化剤には、以下の化学式を有するジアリールアミンが含まれるが、これに限定はされない:
【0039】
【化3】

【0040】
式中、R’およびR’’はそれぞれ独立して、6つから30の炭素原子を有する、置換または非置換アリール基を表す。アリール基の置換基の具体例には、1つから30の炭素原子を有するアルキル基のような脂肪族炭化水素基、ヒドロキシ基、ハロゲンラジカル、カルボン酸またはエステル基、あるいはニトロ基などが含まれる。
【0041】
アリール基は、置換されたまたは置換されていないフェニルあるいはナフチルであり、特にここで、一つまたは両方のアリール基が、4つから30の炭素原子、望ましくは4つから18の炭素原子、最も望ましくは4つから9つの炭素原子を有する、少なくとも一つのアルキル基によって置換されている。一つまたは両方のアリール基が置換されていること、例えばモノアルキル化ジフェニルアミン、ジアルキル化ジフェニルアミン、またはモノおよびジアルキル化ジフェニルアミンの混合物が望ましい。
【0042】
ジアリールアミンは、分子内に一つ以上の窒素原子を含有する構造のものである。従って、ジアリールアミンには少なくとも二つの窒素原子が含有され、ここで、例えば一つの窒素原子上に二つのアリールを有すると共に第二級窒素原子を有しているような様々なジアミンの場合と同様に、少なくとも一つの窒素原子に二つのアリール基が結合している。
【0043】
使用されるジアリールアミンの例には以下のものが含まれるが、これらに限定はされない:ジフェニルアミン;各種アルキル化ジフェニルアミン;3−ヒドロキシジフェニルアミン;N−フェニル−1,2−フェニレンジアミン;N−フェニル−1,4−フェニレンジアミン;モノブチルジフェニルアミン;ジブチルジフェニルアミン;モノオクチルジフェニルアミン;ジオクチルジフェニルアミン;モノノニルジフェニルアミン;ジノニルジフェニルアミン;モノテトラデシルジフェニルアミン;ジテトラデシルジフェニルアミン;フェニル−アルファ−ナフチルアミン;モノオクチルフェニル−アルファ−ナフチルアミン;フェニル−ベータ−ナフチルアミン;モノヘプチルジフェニルアミン;ジヘプチルジフェニルアミン;p−配向スチレン化ジフェニルアミン;混合ブチルオクチルジ−フェニルアミン;および混合オクチルスチリルジフェニルアミンなど。
【0044】
別の種類のアミン系抗酸化剤には、フェノチアジンまたは以下の化学式のアルキル化フェノチアジンが含まれる:
【0045】
【化4】

【0046】
式中、Rは直鎖または分岐鎖のCからC24のアルキル、アリール、ヘテロアルキルまたはアルキルアリール基であり、またRは水素、または直鎖あるいは分岐鎖のCからC24のアルキル、ヘテロアルキル、あるいはアルキルアリール基である。アルキル化フェノチアジンは、モノテトラデシルフェノチアジン、ジテトラデシルフェノチアジン、モノデシルフェノチアジン、ジデシルフェノチアジン、モノノニルフェノチアジン、ジノニルフェノチアジン、モノオクチル−フェノチアジン、ジオクチルフェノチアジン、モノブチルフェノチアジン、ジブチルフェノチアジン、モノスチリルフェノチアジン、ジスチリルフェノチアジン、ブチルオクチルフェノチアジン、およびスチリルオクチルフェノチアジンから成る群から選択される。
【0047】
硫黄を含有した抗酸化剤には、それらの製造に使用されるオレフィンの種類と抗酸化剤の最終的な硫黄含有量を特徴とする硫化オレフィンが含まれるが、それらに限定はされない。高分子量のオレフィン、すなわち、平均分子量が約168g/モルから約351g/モルであるようなオレフィンが好適である。使用されるオレフィンの例に、アルファオレフィン、異性化されたアルファオレフィン、分岐オレフィン、環状オレフィン、およびそれらの組み合わせが含まれる。
【0048】
アルファオレフィンには、CからC25の任意のアルファオレフィンが含まれるが、それらに限定はされない。アルファオレフィンは、硫化反応の前、または硫化反応の最中に異性化される。内部に二重結合および/または分岐を有するアルファオレフィンの、構造および/または配座異性体もまた使用される。例えばイソブチレンは、アルファオレフィン−1−ブテンの分岐オレフィン対応物である。
【0049】
オレフィンの硫化反応で使用される硫黄源には、以下のものが含まれる:硫黄元素、一塩化硫黄、二塩化硫黄、硫化ナトリウム、多硫化ナトリウム、および硫化プロセスの同じ段階または別の段階で加えられたそれらの混合物。
【0050】
不飽和オイルもまた、それらが不飽和であることから、硫化され抗酸化剤として使用される。使用されるオイルまたは脂質の例に、コーン油、カノーラ油、綿実油、グレープシードオイル、オリーブ油、ヤシ油、ピーナツ油、ココナッツ油、菜種油、ベニバナ種油、ゴマ油、大豆油、ヒマワリ油、獣脂、およびそれらの組み合わせが含まれる。
【0051】
完成した潤滑剤に供給される硫化オレフィンあるいは硫化脂肪油の量は、硫化オレフィンあるいは脂肪油の硫黄含有量、および完成した潤滑剤に供給される希望の硫黄量に基づいている。例えば、20重量%の硫黄を含んだ硫化脂肪油あるいはオレフィンは、1.0重量%の処理量で完成した潤滑剤に添加されたとき、2,000ppmの硫黄を完成した潤滑剤に供給する。10重量%の硫黄を含んだ硫化脂肪油あるいはオレフィンは、1.0重量%の処理量で完成した潤滑剤に添加されたとき、1,000ppmの硫黄を完成した潤滑剤に供給する。200ppmから2,000ppmの間の硫黄を完成した潤滑剤に供給するためには、硫化オレフィンあるいは硫化脂肪油を添加することが望ましい。上述のアミン系、フェノチアジン、および硫黄を含有した抗酸化剤は、例えば米国特許第6,599,865号に記載されている。
【0052】
抗酸化添加剤として使用される無灰ジアルキルジチオカーバメートには、添加剤パッケージ内で可溶性または分散可能な化合物が含まれる。また、無灰ジアルキルジチオカーバメートは、分子量が約250ダルトン以上、望ましくは分子量が約400ダルトン以上の、低揮発性であることが望まれる。使用される無灰ジチオカーバメートの例には、メチレンビス(ジアルキルジチオカーバメート)、エチレンビス(ジアルキルジチオカーバメート)、イソブチルジスルフィド−2,2’−ビス(ジアルキルジチオカーバメート)、ヒドロキシアルキル置換のジアルキルジチオカーバメート、不飽和化合物から調製されたジチオカーバメート、ノルボルニレンから調製されたジチオカーバメート、およびエポキシドから調製されたジチオカーバメートなどが含まれ、それらに限定はされない。ここでジアルキルジチオカーバメートのアルキル基は、1つから16の炭素を有することが望ましい。使用されるジアルキルジチオカーバメートの非限定的な例は、以下の特許に記載されている:米国特許第5,693,598号、4,876,375号、4,927,552号、4,957,643号、4,885,365号、5,789,357号、5,686,397号、5,902,776号、2,786,866号、2,710,872号、2,384,577号、2,897,152号、3,407,222号、3,867,359号、および4,758,362号。
【0053】
無灰ジチオカーバメートのさらなる例には、メチレンビス(ジブチルジチオカーバメート)、エチレンビス(ジブチルジチオカーバメート)、イソブチルジスルフィド−2,2’−ビス(ジブチルジチオカーバメート)、ジブチルN,N−ジブチル(ジチオカルバミル)コハク酸エステル、2−ヒドロキシプロピルジブチルジチオカーバメート、ブチル(ジブチルジチオカルバミル)アセテート、S−カーボメトキシ−エチル−N,N−ジブチルジチオカーバメートなどがある。最も望ましい無灰ジチオカーバメートは、メチレンビス(ジブチルジチオカーバメート)である。
【0054】
ナノスフェア成分に加え、ジンクジアルキルジチオホスフェート(「Zn DDP」)もまた潤滑油中で使用される。Zn DDPは、良好な耐摩耗および抗酸化剤特性を有し、またSeq.IVAおよびTU3摩耗試験のような、カムの摩耗試験に合格するために使用されている。米国特許第4,904,401号、4,957,649号、および6,114,288号を含む多くの特許が、Zn DDPの製造および用途を扱っている。非限定的な通常のZn DDPの種類には、第一級、第二級、および第一級と第二級のZn DDPの混合物などがある。
【0055】
同様に、摩擦調整剤として使用される化合物を含有している有機モリブデンもまた、抗酸化剤の機能を示す。米国特許第6,797,677号には、完成された潤滑剤配合物中で使用される、有機モリブデン化合物、アルキルフェノチジンおよびアルキルジフェニルアミンの組み合わせが記載されている。摩擦調整剤を含有した好適なモリブデンの例を、下記の「摩擦調整剤」の項に記載する。
【0056】
本明細書に記載のナノスフェア成分は、任意のすべての組み合わせおよび比率で、上記の任意のあるいはすべての抗酸化剤と共に使用される。フェノール系添加剤、アミン系添加剤、硫黄含有添加剤およびモリブデン含有添加剤などの様々な組み合わせが、ベンチテストやエンジンテスト、または分散剤、VI向上剤、基油、あるいはその他の任意の添加剤の変成に基づいて、完成した潤滑剤配合物用に最適化されるものと考えられている。
【0057】
摩擦調整剤成分
追加的な摩擦調整剤として使用される、硫黄およびリンを含有しない有機モリブデン化合物は、硫黄およびリンを含有しないモリブデン源を、アミノ基および/またはアルコール基を含有した有機化合物と反応させることによって調製される。硫黄およびリンを含有しないモリブデン源の例には、三酸化モリブデン、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウムおよびモリブデン酸カリウムが含まれる。アミノ基は、モノアミン、ジアミン、またはポリアミンなどである。アルコール基は、一置換のアルコール、ジオールあるいはビス−アルコール、またはポリアルコールなどである。ある例では、ジアミンと脂肪油の反応により、硫黄およびリンを含有しないモリブデン源と反応できるような、アミノ基とアルコール基の両方を含有した生産物が生成される。
【0058】
硫黄およびリンを含まない有機モリブデン化合物の例には、以下のものが含まれる:
1. 特定の塩基性窒素化合物を、米国特許第4,259,195号および4,261,843号に記載のモリブデン源と反応させることによって調製される化合物。
2. ヒドロカルビル置換のヒドロキシアルキル化アミンを、米国特許第4,164,473号に記載のモリブデン源と反応させることによって調製される化合物。
3. フェノールアルデヒドの縮合生成物、モノアルキル化アルキレンジアミン、および米国特許第4,266,945号に記載のモリブデン源を反応させることによって調製される化合物。
4. 脂肪油、ジエタノールアミン、および米国特許第4,889,647号に記載のモリブデン源と反応させることによって調製される化合物。
5. 脂肪油または酸を、2−(2−アミノエチル)アミノエタノール、および米国特許第5,137,647に記載のモリブデン源と反応させることによって調製される化合物。
6. 第二級アミンを、米国特許第4,692,256号に記載のモリブデン源と反応させることによって調製される化合物。
7. ジオール、ジアミノ、またはアミノアルコール化合物と、米国特許第5,412,130号に記載のモリブデン源を反応させることによって調製される化合物。
8. 脂肪油、モノ−アルキル化アルキレンジアミン、および米国特許第6,509,303号に記載のモリブデン源を反応させることによって調製される化合物。
9. 脂肪酸、モノ−アルキル化アルキレンジアミン、グリセリド、および米国特許第6,528,463号に記載のモリブデン源を反応させることによって調製される化合物。
【0059】
これらの物質の正確な化学組成は完全には知られておらず、また事実上いくつかの有機モリブデン化合物の多数の成分の混合物である可能性もあるが、脂肪油、ジエタノールアミン、および米国特許第4,889,647号に記載のモリブデン源を反応させることによって調製されるモリブデン化合物は、しばしば以下の構造式で例証され、式中Rは脂肪アルキル鎖である:
【0060】
【化5】

【0061】
硫黄を含有した有機モリブデン化合物は、多様な方法で使用され、また生成される。一つの方法には、硫黄およびリンを含まないモリブデン源を、アミノ基および一つ以上の硫黄源と反応させることが含まれる。硫黄源には、例えば二硫化炭素、硫化水素、硫化ナトリウムおよび硫黄元素が含まれるが、これらに限定はされない。一方、硫黄を含有したモリブデン化合物は、硫黄を含有したモリブデン源を、アミノ基またはチウラム基、および任意的に第二の硫黄源と反応させることによって調製される。
【0062】
硫黄およびリンを含まないモリブデン源の例には、三酸化モリブデン、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム、およびモリブデンハロゲン化物が含まれる。アミノ基はモノアミン、ジアミン、あるいはポリアミンである。ある例では、三酸化モリブデンと、第二級アミンおよび二硫化炭素の反応により、モリブデンジチオカーバメートが生成される。一方、(NHMo13n(HO)と二硫化テトラアルキルチウラムとの反応は、三核硫黄含有モリブデンジチオカーバメートを生成する。ここでnは0から2の間の数である。
【0063】
特許および特許出願に出てくる、硫黄を含有した有機モリブデン化合物の例には、以下のものが含まれる:
1. 三酸化モリブデンと第二級アミンおよび米国特許第3,509,051号および3,356,702号に記載の二硫化炭素とを反応させることによって調製される化合物。2. 硫黄を含まないモリブデン源と、第二級アミン、二硫化炭素、および米国特許第4,098,705号に記載の追加的な硫黄源とを反応させることによって調製される化合物。
3. ハロゲン化モリブデンと、第二級アミンおよび米国特許第4,178,258号に記載の二硫化炭素とを反応させることによって調製される化合物。
4. モリブデン源と、塩基性窒素化合物および米国特許第4,263,152号、4,265,773号、4,272,387号、4,285,822号、4,369,119号、および4,395,343号に記載の硫黄源とを反応させることによって調製される化合物。
5. テトラチオモリブデン酸アンモニウムと、米国特許第4,283,295号に記載の塩基性窒素化合物とを反応させることによって調製される化合物。
6. オレフィン、硫黄、アミン、および米国特許第4,362,633号に記載のモリブデン源を反応させることによって調製される化合物。
7. テトラチオモリブデン酸アンモニウムと、塩基性窒素化合物および米国特許第4,402,840号に記載の有機硫黄源とを反応させることによって調製される化合物。
8. フェノール系化合物、アミン、およびモリブデン源を、米国特許第4,466,901号に記載の硫黄源とを反応させることによって調製される化合物。
9. トリグリセリド、塩基性窒素化合物、モリブデン源、および米国特許第4,765,918号に記載の硫黄源を反応させることによって調製される化合物。
10. アルカリメタルアルキルチオキサントゲン酸塩と、米国特許第4,966,719号に記載のハロゲン化モリブデンとを反応させることによって調製される化合物。
11. 二硫化テトラアルキルチウラムと、米国特許第4,978,464号に記載のモ
リブデンヘキサカルボニルとを反応させることによって調製される化合物。
12. アルキルジキサントゲンと、米国特許第4,990,271号に記載のモリブデンヘキサカルボニルとを反応させることによって調製される化合物。
13. アルカリメタルアルキルキサントゲン酸塩と、米国特許第4,995,996号に記載のテトラ酢酸ジモリブデンとを反応させることによって調製される化合物。
14. (NHMo132HOと、アルカリメタルジアルキルジチオカーバメートまたは米国特許第6,232,276号に記載の二硫化テトラアルキルチウラムとを反応させることによって調製される化合物。
15. エステルまたは酸と、ジアミン、モリブデン源、および米国特許第6,103,674号に記載の二硫化炭素とを反応させることによって調製される化合物。
16. 米国特許第6,117,826号に記載されるように、アルカリメタルジアルキルジチオカーバメートを、3−クロロプロピオン酸、続いて三酸化モリブデンと反応させることによって調製される化合物。
【0064】
モリブデンジチオカーバメートは以下の構造式によって例証され:
【0065】
【化6】

【0066】
式中、Rは4つから18の炭素を含有するアルキル基あるいはHであり、またXはOあるいはSである。
【0067】
グリセリドは、単独で使用されることも、他の摩擦調整剤と組み合わせて使用されることもある。好適なグリセリドには以下の化学式のグリセリドが含まれる:
【0068】
【化7】

【0069】
式中、各Rは独立して、HおよびC(O)R’から成る群から選択されるが、ここでR’は3つから23の炭素原子を有する、飽和または不飽和アルキル基である。使用されるグリセリドの例に、モノラウリン酸グリセロール、モノミリスチン酸グリセロール、モノパルミチン酸グリセロール、モノステアリン酸グリセロール、およびヤシ酸、獣脂酸、オレイン酸、リノール酸、およびリノレン酸などから得られるモノグリセリドが含まれる。一般的な市販のモノグリセリドには、相当量の対応するジグリセリドおよびトリグリセリドが含有されている。これらの物質がモリブデン化合物の生産に害を及ぼすことはなく、実際にはより活性である場合もある。モノグリセリドとジグリセリドは任意の比率で使用される。しかしながら30%から70%の利用可能な位置に遊離ヒドロキシル基が含有される(すなわち上記の化学式で表されるグリセリドのR基全体の30%から70%が水素である)ことが望ましい。好適なグリセリドは、通常オレイン酸およびグリセロールから得られるモノ、ジ、トリグリセリドの混合物であるような、モノオレイン酸グリセロールである。
【0070】
その他の添加剤
非イオン性ポリオキシアルキレンポリオールおよびそのエステル、ポリオキシアルキレンフェノール、および陰イオン性のスルホン酸アルキルから成る群から選択された防錆剤が使用される。
【0071】
少量の乳化破壊成分が使用されることもある。好適な乳化破壊成分は、欧州特許第330,522号に記載されている。このような乳化破壊成分は、酸化アルキレンを、ビスエポキシドと多価アルコールの反応から得られる付加化合物と反応させることによって得られる。乳化破壊剤は、有効成分が0.1質量%を上回らない量で使用しなくてはならない。有効成分が0.001質量%から0.05質量%の処理率であると好都合である。
【0072】
別名潤滑油の流動性向上剤としても知られる流動点降下剤は、流体が流動するまたは注ぐことができるようになる最低温度を低下させる。このような添加剤は周知のものである。流体の低温での流動性を向上させる一般的な流動点降下剤に、CからC18ジアルキルフマル酸エステル/酢酸ビニルコポリマーやメタクリル酸ポリアルキルなどがある。
【0073】
泡の制御は、例えばシリコンオイルやポリジメチルシロキサンなど、ポリシロキサンタイプの消泡剤を含む多くの化合物によってなされる。
【0074】
例えば米国特許第3,794,081号および4,029,587号に記載の、シール膨張剤もまた使用される。
【0075】
粘度調整剤(VM)は、高温および低温での操作性を潤滑油に与えるために機能する。使用されるVMは、単官能性、あるいは多官能性を有する。
【0076】
分散剤としても機能する、多官能性の粘度調整剤もまた知られている。好適な粘度調整剤に、ポリイソブチレン、エチレンとプロピレンと高級アルファオレフィンのコポリマー、ポリメタクリレート、ポリアルキルメタクリレート、メタクリレートコポリマー、不飽和ジカルボン酸とビニル化合物のコポリマー、スチレンとアクリル酸エステルのインターポリマー、またスチレン/イソプレン、スチレン/ブタジエン、およびイソプレン/ブタジエンの部分的に水素化されたコポリマー、およびブタジエンとイソプレンおよびイソプレン/ジビニルベンゼンの部分的に水素化されたホモポリマーがある。
【0077】
使用される、官能化されたオレフィンコポリマーには、エチレンと、無水マレイン酸のような活性モノマーでグラフト化され、次にアルコールあるいはアミンで誘導体化されたプロピレンとのインターポリマーが含まれる。その他の、このようなコポリマーに、エチレンと、窒素化合物でグラフト化されたプロピレンとのコポリマーがある。
【0078】
上述の各添加剤は、使用される場合、潤滑剤に希望の特性を与えるために官能的に有効な量で使用される。従って、例えば添加剤が腐食防止剤である場合、この腐食防止剤の官能的に有効な量は、潤滑剤に希望の腐食防止特性を与えるのに十分なだけの量である。通常、これらの添加剤のそれぞれの使用時の濃度は、潤滑油組成物の重量に基づいて約20重量%までの範囲であり、一つの実施態様では、約0.001重量%から約20重量%、また一つの実施態様では、潤滑油組成物の重量に基づき、約0.01%から約10重量%である。
【0079】
ナノスフェア成分を、潤滑油組成物に直接添加することがある。しかしながら、一つの
実施態様では、添加剤濃縮物を形成するため、これらは鉱油、合成油、ナフサ、アルキル化(例えばC10からC13のアルキル)ベンゼン、トルエンまたはキシレンなどのような、実質的に不活性な、通常は液体である有機希釈剤で希釈される。これらの濃縮物には、通常約1重量%から約100重量%、また一つの実施態様では、約10重量%から約90重量%のナノスフェア成分が含有される。
【0080】
基油
本明細書に記載の組成物、添加剤および濃縮物の調合において使用するのに適した基油は、合成油、天然油、またはそれらの混合物の中から選択される。合成基油には、ジカルボン酸、ポリグリコールおよびアルコールのアルキルエステルや、末端ヒドロキシル基がエステル化やエーテル化などによって変成された、ポリブテン、アルキルベンゼン、リン酸の有機エステル、ポリシリコンオイル、および酸化アルキレンのポリマー、インターポリマー、コポリマー、およびそれらの誘導体などを含むポリアルファオレフィンが含まれる。当合成油にはまた、ガス・ツー・リキッド合成油も含まれる。
【0081】
天然基油には、動物性油および植物性油(例えばキャスターオイル、ラードオイル)、石油、および水素化精製、溶媒処理あるいは酸処理されたパラフィン系、ナフテン系およびパラフィン・ナフテン混合系の鉱物性潤滑油が含まれる。石炭あるいは頁岩から得られた、潤滑粘度のオイルもまた有用な基油である。当基油の粘度は、一般的に100℃で約2.5cStから約15cSt、望ましくは約2.5cStから約11cStである。
【0082】
以下の例は、実施の態様を例示することを目的とするものであり、実施態様をいかようにも制限する意図のものではない。
【0083】
例3
油溶性ナノスフェア成分の境界摩擦係数
次の例において、基油中のナノスフェアの濃度が約0.07重量パーセントになるように、溶液の70重量%が基油となるまでテトラヒドロフラン(THF)中で可溶化されたナノスフェアを含んだナノスフェア成分に基油(EXXON EHC45)を添加した。異なったサイズのナノスフェアを含有するナノスフェア成分溶液の境界摩擦係数を、温度30℃で、高周波往復試験装置(HFRR)で測定した。サンプル1は、コアの直径が20ナノメートル、コアプラスコロナの流体力学的直径が45ナノメートルのナノスフェアである。サンプル2は、コアの直径が40ナノメートル、コアプラスコロナの流体力学的直径が89ナノメートルのナノスフェアである。THFと基油の30/70重量%の混合物もまた対照群として試験した。HFRRで測定した境界摩擦係数を表1に表す。
【0084】
【表1】

【0085】
THFの引火点のため、サンプル1およびサンプル2を高温下でテストすることはできなかった。しかしながら、結果により、両方のサイズのナノスフェアに、純粋な滑り条件下で摩擦を低減する効果があることが示された。
【0086】
オイルを含有した各ナノスフェアサンプルの境界摩擦を、エンジンオイルやその他の潤滑剤の境界摩擦の研究に通常使用される条件により適切な温度下で測定するため、グループIIの基油中に懸濁する名の粒子の、1重量パーセントの溶液を調製した。ナノスフェア/基油(EXXON EHC45)溶液の境界摩擦係数を100℃で測定し、表2に表した。
【0087】
【表2】

【0088】
表2の結果に示されるように、両方のナノスフェア成分が、ナノスフェア成分を含んでいない基油に対し、摩擦を低減した。
【0089】
例4
油溶性ナノスフェア成分の摩擦係数
現実の潤滑条件のほとんどの場合に滑り接触と転がり接触の両方が含まれるため、転がり・滑り条件下で上述のナノスフェアを含有したオイルの摩擦係数を評価することが大切である。サンプル1およびサンプル2のナノスフェアを含んだ基油(EXXON EHC45)の摩擦係数を、英国、ロンドンのPCSインストゥルメント社(PCS Instruments)から市販されている小型けん引機(Mini−Traction Machine)(MTM)を使用して測定した。MTM内、100℃で、毎秒0.1メートルから2.0メートルのエントレインメント速度で、流体が接触部分を通って引かれる際、ディスクとスチールボールの間に35ニュートン(N)の負荷を加えた。ディスクとボールは、滑りと転がりの比率20%で摩擦が測定できるように、独立して回転させられた。
【0090】
図2は、100℃で、また35Nの負荷で、基油(EXXON EHC45)および基油中の1重量%のナノスフェア溶液について測定した摩擦を表す。摩擦は、滑りと転がりの比率20%で、流体の様々なエントレインメント速度で測定された。曲線Aは基油のみ、曲線Bは基油中の1重量%のサンプル1のナノスフェア溶液、曲線Cは、基油中の1重量%のサンプル2のナノスフェア溶液、曲線Dは、基油中の1重量%の従来型摩擦調整剤溶液の摩擦係数を表す。
【0091】
図2に見られるように、曲線A、B、およびCによって示される摩擦係数は、類似している。このような速度では、流体の膜は、その摩擦係数が、1000mm/s以上の速度での流体中の界面活性剤よりもむしろ流体の流動学的特性によって決定されるような状態で存在すると考えられている。
【0092】
しかしながら、低速度では、ナノスフェア溶液(曲線BおよびC)の摩擦係数は、速度の低減に伴って減少する。さらに、速度の低減に伴う摩擦係数の減少は、大きなナノスフェア(サンプル2)では高速で起こる。低速では、MTMは混合あるいは境界摩擦系で作動している。同様に従来型の摩擦調整剤(曲線D)の摩擦係数もまた、MTMにおいて低速で低減した。しかしながら、従来型の摩擦調整剤(曲線D)を含有した流体については、その摩擦係数は100mm/秒未満の速度では比較的一定していたが、ナノスフェアを含有した流体(曲線BおよびC)の摩擦係数は、このような速度では一定しなかった。従って、ナノスフェアの摩擦低減性は、従来型の摩擦調整剤の摩擦低減性とは異なることが分かった。
【0093】
ナノスフェアの活性に濃度依存性があるか否かを決定するため、基油(EXXON EHC45)中に0.5重量%のナノスフェア溶液を調製した。当溶液の摩擦特性を、1重量%の溶液と同じ条件下でMTMで測定した。1重量%および0.5重量%の溶液の摩擦データを図3に表す。ここで曲線BおよびCは1重量%の溶液、また曲線EおよびFは0.5重量%の溶液を表す。曲線Eはサンプル1のナノスフェアで、また曲線Fはサンプル2のナノスフェアで決定された。
【0094】
図3は、大きなナノスフェア(サンプル2)を含有した流体(曲線CおよびF)の摩擦低減特性が類似していることを示している。しかしながら、小さなナノスフェア(サンプル1)の濃度の低減は、曲線Eと曲線Bを比較すると分かるように、摩擦係数の動きに影響を与えた。特に低速において、サンプル1のナノスフェア(曲線E)の0.5重量%の溶液の摩擦係数は、1重量%の溶液(曲線B)よりも高い。摩擦が低減する速度は、サンプル1のナノスフェア溶液の両方の濃度で同じである。
【0095】
図2および3に例証されたMTMの摩擦係数データは、摩擦が低減し始める速度は、大きなナノスフェア(サンプル2)の方が小さなナノスフェア(サンプル1)よりも早いことを表している。通常、流体の弾性流体力学(EHD)膜の厚みは、速度の増加に伴って増加すると考えられている。膜の厚みと速度の間に関連があるか否かを決定するため、光学干渉計を用いて基油(EXXON EHC45)の膜の厚みを測定した。図4は、75℃(曲線G)、100℃(曲線H)、および125℃(曲線I)における、様々な速度での基油(EXXON EHC45)の膜の厚みを例証する。基油の温度が上昇するにつれて、基油の膜の厚みは減少した。また、速度が低減するのに伴い基油の膜の厚みも減少した。
【0096】
ナノスフェア溶液の摩擦挙動もまた、75℃および125℃で、MTMで測定した。図5は、75℃(曲線J)および125℃における基油(EXXON EHC45)中のサンプル2のナノスフェア1重量%溶液の、摩擦係数対速度曲線を例証している。比較的低速度で速度が減少した際に、両方の温度で摩擦は低減した。摩擦の低減が始まる速度は、75℃で約300mm/s、また125℃で約600mm/sであった。これらの温度と速度の組み合わせ下で、基油(EXXON EHC45)の膜の厚みは20nmから30nmの間であり、これはサンプル2のナノスフェアのコアの直径以下であった。
【0097】
1重量%のサンプル1のナノスフェア溶液および1重量%のサンプル2のナノスフェア溶液について、速度の低減に伴って摩擦が低減を始める温度と速度の組み合わせを、表3に表す。表3はまた、ナノスフェア成分10(図1)のコアの直径(CD)および流体力学的直径(HD)に加え、温度と速度の各組み合わせにおける、基油(EXXON EHC45)膜の予測される厚みを示している。
【0098】
【表3】

【0099】
表3に見られるように、臨界温度および速度の組み合わせ下における、基油のEHD膜の厚みは、ナノスフェアのコアの直径と同程度あるいはそれ以下であった。
【0100】
0.5重量%から約1.0重量%、またはそれ以上の油溶性のナノスフェア成分を含有した調合物は、従来型のリンおよび硫黄の耐摩耗剤の必要量を低減し、それにより摩擦係数性能や利点を同様あるいは向上させながら、またオイルの腐食性に悪影響をほとんど又は全く与えないで、自動車の公害防止機器の性能を向上させることができると予想される。
【0101】
例5
クラッチ材料上のナノスフェア成分の摩擦係数
基油および1重量%のサンプル2のナノスフェアを含有した基油で、様々なクラッチ材料の摩擦係数を評価した。MTMを使用し、100℃、負荷15ニュートン、および滑り速度10mm/秒で紙および炭素繊維の摩擦プレートを評価した。その結果を表4に表す。
【0102】
【表4】

【0103】
例6
スチール上でのナノスフェア成分の摩耗データ
HFRRを使用し、120℃、負荷700グラム、速度20 Hz、経路2mmで60分間にわたって、基油(EXXON EHC45)中のサンプル2のナノスフェア(1重量%)と、基油中の従来型の炭素ベースのナノスフェア粒子(1重量%)の摩耗特性の比較を行った。試験過程で、HFRRディスクに摩耗傷が形成された。結果として得られた摩耗傷の深さを、試験の後に測定した。結果として得られた摩耗傷のデータを表5に表す。
【0104】
【表5】

【0105】
上記の結果に見られるように、炭素ベースのナノスフェアの摩耗データは基油よりも悪かったが、サンプル2のナノスフェアは基油に関する摩耗データを著しく改善した。
【0106】
本明細書の全体にわたる数々の箇所で多くの米国特許および公報が参照されている。このような引用文献はすべて、当明細書で完全に説明されたものとして、この開示中に完全に明確に含まれている。
【0107】
上述の実施態様は、その実行において、かなり変更される可能性がある。従って当実施態様は、上記に説明された特定の例証に限定されることを意図したものではない。むしろ上述の実施態様は、法律上利用可能な均等の範囲も含んで、添付の請求項の精神および範囲内にある。
【0108】
当特許権者は、開示されたいかなる実施態様をも公共に献ずる意図はなく、また開示された修正または変更はある程度文字通りには請求項の範囲内に含まれないかもしれないが、それらも均等論により当明細書の一部であると見なされる。
【0109】
本発明の特徴及び態様を挙げれば以下のとおりである。
1. 光架橋が可能なポリ(2−シンナモイルオキシアルキルアクリレート)のコア、およびジブロックアクリレートコポリマーのコロナから得られた、一定量の油溶性のナノスフェア成分を、潤滑粘度の基油を含んだ完全に調合された潤滑剤組成物に供給すること、およびナノスフェア成分を含有した潤滑剤組成物を潤滑するべき表面に適用することを含んで成り、ここでナノスフェア成分のコアの直径が、約10ナノメートルから約100ナノメートルである、隣接した潤滑表面の摩擦係数の低減方法。
2. 潤滑表面がエンジンドライブトレインを含んで成る、上記1に記載の方法。
3. 潤滑表面が内燃エンジンの内壁面または成分を含んで成る、上記1に記載の方法。
4. 潤滑表面が圧縮点火エンジンの内壁面または成分を含んで成る、上記1に記載の方法。
5. 完全に調合された潤滑剤組成物中の油溶性のナノスフェア成分の量が約5重量パーセント以下である、上記1に記載の方法。
6. 完全に調合された潤滑剤組成物中の油溶性のナノスフェア成分の量が約0.1重量パーセントから約5重量パーセントである、上記1に記載の方法。
7. 完全に調合された潤滑剤組成物中の油溶性のナノスフェア成分の量が約0.5重量パーセントから約2重量パーセントである、上記1に記載の方法。
8. ナノスフェア成分の流体力学的直径が約10ナノメートルから約120ナノメートルである、上記1に記載の方法。
9. 潤滑粘度の基油と、摩擦係数を、油溶性のナノスフェア成分を欠いた潤滑剤組成物の摩擦係数以下に減らすのに十分な、光架橋が可能なポリ(2−シンナモイルオキシアルキルアクリレート)のコアおよびジブロックアクリレートコポリマーのコロナから得られた一定量の油溶性のナノスフェア成分を含んで成る、完全に調合された潤滑剤組成物にエ
ンジン部分を接触させることを含んで成り、ここでナノスフェア成分のコアの直径が約10ナノメートルから約100ナノメートルである、潤滑剤組成物を含有したエンジンの作動中に、エンジン潤滑剤組成物の摩擦係数を低減させる方法。
10. エンジンが高荷重ディーゼルエンジンを含んで成る、上記9に記載の方法。
11. 完全に調合された潤滑剤組成物中の油溶性のナノスフェア成分の量が約5重量パーセント以下である、上記9に記載の方法。
12. 完全に調合された潤滑剤組成物中の油溶性のナノスフェア成分の量が約0.5重量パーセントから約2重量パーセントである、上記9に記載の方法。
13. ナノスフェア成分の流体力学的直径が約10ナノメートルから約120ナノメートルである、上記9に記載の方法。
14. 潤滑油を使用した可動部間の摩耗を低減する方法であって、該方法が、一つ以上の可動部用の潤滑油として、基油および摩耗低減剤を含んだオイル添加剤パッケージを含んで成る潤滑剤組成物を使用することを含んで成り、ここで該摩耗低減剤が、光架橋が可能なポリ(2−シナモイルオキシアルキルアクリレート)のコアおよびジブロックアクリレートコポリマーのコロナから得られた油溶性のナノスフェア成分を含んで成る方法。
15. 可動部がエンジンの可動部を含んで成る、上記14に記載の方法。
16. エンジンが圧縮点火エンジンおよび火花点火エンジンから成る群の中から選択される、上記15に記載の方法。
17. エンジンにクランクケースを有する内燃エンジンが含まれ、また潤滑油が当エンジンのクランクケース内に存在するクランクケースオイルを含んで成る、上記15に記載の方法。
18. 潤滑油が、エンジンを含む自動車のドライブトレイン内に存在するドライブトレイン潤滑剤を含んで成る、上記15に記載の方法。
19. 摩耗低減剤が約5重量パーセント以下の範囲の量で潤滑剤組成物中に存在する、上記15に記載の方法。
20. 摩耗低減剤が約0.1重量パーセントから約5重量パーセントの範囲の量で潤滑剤組成物中に存在する、上記15に記載の方法。
21. 摩耗低減剤が約0.5重量パーセントから約2重量パーセントの範囲の量で潤滑剤組成物中に存在する、上記15に記載の方法。
22. ナノスフェア成分のコアの直径が約10ナノメートルから約100ナノメートルの範囲である、上記15に記載の方法。
23. ナノスフェア成分の流体力学的直径が約20ナノメートルから約120ナノメートルの範囲である、上記15に記載の方法。
24. 光架橋が可能なポリ(2−シンナモイルオキシアルキルアクリレート)のコア、およびジブロックアクリレートコポリマーのコロナから得られた、一定量の油溶性のナノスフェア成分を、潤滑粘度の基油を含んだ完全に調合された潤滑剤組成物に供給すること、およびナノスフェア成分を含有した潤滑剤組成物を潤滑するべき表面に適用することを含んで成り、ここでナノスフェア成分のコアの直径が潤滑剤組成物の膜の厚みよりも大きい、隣接した潤滑表面の摩擦係数の低減方法。
25. 潤滑粘度の基油と、摩擦係数を、油溶性のナノスフェア成分を欠いた潤滑剤組成物の摩擦係数以下に減らすのに十分な、光架橋が可能なポリ(2−シンナモイルオキシアルキルアクリレート)のコアおよびジブロックアクリレートコポリマーのコロナから得られた一定量の油溶性のナノスフェア成分を含んで成る、完全に調合された潤滑剤組成物にエンジン部分を接触させることを含んで成り、ここでナノスフェア成分のコアの直径が潤滑剤組成物の膜の厚みよりも大きい、潤滑剤組成物を含有したエンジンの作動中に、エンジン潤滑剤組成物の摩擦係数を低減させる方法。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本開示によるナノスフェアの、原寸に比例していない、概略図である。
【図2】ある基油および本開示による油溶性のナノスフェアを含有した基油の摩擦係数データを表すグラフである。
【図3】ある基油および本開示による油溶性のナノスフェアを含有した基油の摩擦係数データを表すグラフである。
【図4】異なった温度下での基油の膜の厚みを表すグラフである。
【図5】異なった温度下での基油中のナノスフェアの摩擦係数を表すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光架橋が可能なポリ(2−シンナモイルオキシアルキルアクリレート)のコア、およびジブロックアクリレートコポリマーのコロナから得られた、一定量の油溶性のナノスフェア成分を、潤滑粘度の基油を含んだ完全に調合された潤滑剤組成物に供給すること、およびナノスフェア成分を含有した潤滑剤組成物を潤滑するべき表面に適用することを含んで成り、ここでナノスフェア成分のコアの直径が、約10ナノメートルから約100ナノメートルである、隣接した潤滑表面の摩擦係数の低減方法。
【請求項2】
潤滑表面がエンジンドライブトレインを含んで成る、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
完全に調合された潤滑剤組成物中の油溶性のナノスフェア成分の量が約5重量パーセント以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ナノスフェア成分の流体力学的直径が約10ナノメートルから約120ナノメートルである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
潤滑粘度の基油と、摩擦係数を、油溶性のナノスフェア成分を欠いた潤滑剤組成物の摩擦係数以下に減らすのに十分な、光架橋が可能なポリ(2−シンナモイルオキシアルキルアクリレート)のコアおよびジブロックアクリレートコポリマーのコロナから得られた一定量の油溶性のナノスフェア成分とを含んで成る、完全に調合された潤滑剤組成物にエンジン部分を接触させることを含んで成り、ここでナノスフェア成分のコアの直径が約10ナノメートルから約100ナノメートルである、潤滑剤組成物を含有したエンジンの作動中に、エンジン潤滑剤組成物の摩擦係数を低減させる方法。
【請求項6】
エンジンが高荷重ディーゼルエンジンを含んで成る、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
完全に調合された潤滑剤組成物中の油溶性のナノスフェア成分の量が約5重量パーセント以下である、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
ナノスフェア成分の流体力学的直径が約10ナノメートルから約120ナノメートルである、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
潤滑油を使用した可動部間の摩耗を低減する方法であって、該方法が、一つ以上の可動部用の潤滑油として、基油および摩耗低減剤を含んだオイル添加剤パッケージを含んで成る潤滑剤組成物を使用することを含んで成り、ここで該摩耗低減剤が、光架橋が可能なポリ(2−シンナモイルオキシアルキルアクリレート)のコアおよびジブロックアクリレートコポリマーのコロナから得られた油溶性のナノスフェア成分を含んで成る。
【請求項10】
可動部がエンジンの可動部を含んで成る、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
光架橋が可能なポリ(2−シンナモイルオキシアルキルアクリレート)のコア、およびジブロックアクリレートコポリマーのコロナから得られた、一定量の油溶性のナノスフェア成分を、潤滑粘度の基油を含んだ完全に調合された潤滑剤組成物に供給すること、およびナノスフェア成分を含有した潤滑剤組成物を潤滑するべき表面に適用することを含んで成り、ここでナノスフェア成分のコアの直径が潤滑剤組成物の膜の厚みよりも大きい、隣接した潤滑表面の摩擦係数の低減方法。
【請求項12】
潤滑粘度の基油と、摩擦係数を、油溶性のナノスフェア成分を欠いた潤滑剤組成物の摩擦係数以下に減らすのに十分な、光架橋が可能なポリ(2−シンナモイルオキシアルキル
アクリレート)のコアおよびジブロックアクリレートコポリマーのコロナから得られた一定量の油溶性のナノスフェア成分を含んで成る、完全に調合された潤滑剤組成物にエンジン部分を接触させることを含んで成り、ここでナノスフェア成分のコアの直径が潤滑剤組成物の膜の厚みよりも大きい、潤滑剤組成物を含有したエンジンの作動中に、エンジン潤滑剤組成物の摩擦係数を低減させる方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−162023(P2007−162023A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−333482(P2006−333482)
【出願日】平成18年12月11日(2006.12.11)
【出願人】(391007091)アフトン・ケミカル・コーポレーション (123)
【氏名又は名称原語表記】Afton Chemical Corporation
【Fターム(参考)】