説明

ナノ炭素の製造方法及び製造装置

【課題】製造に必要なエネルギーを低く抑えつつ、ナノ炭素を量産することができ、また二酸化炭素の発生量を抑えることができるナノ炭素の製造方法及び製造装置を提供する。
【解決手段】流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒1が収容され、低級炭化水素と酸素とが供給されて自己燃焼可能な流動層反応器2と、流動層反応器2に接続され、流動層反応器2内に低級炭化水素と酸素とを供給するガス供給部5と、流動層反応器2に接続され、流動層反応器2内の排ガスを外部に排出する排ガス路8と、流動層反応器2に接続され、流動層反応器2内に流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒1を補給する補給部2aとを有するナノ炭素の製造装置を用い、流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒1に低級炭化水素と酸素とを供給して流動層を形成し、低級炭化水素と酸素との自己燃焼を伴う低級炭化水素の分解反応によって、ナノ炭素と水素とを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒を用いて低級炭化水素を分解することにより、ナノ炭素と水素とを生成するナノ炭素の製造方法及び製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、オニオン状炭素等のナノ炭素は、高い導電性、優れた電磁波吸収特性等の機能性を有し、種々の分野への応用が期待されている。
従来、低級炭化水素を原料としてナノ炭素を製造する方法としては、例えば、アーク放電法、CVD(Chemical Vapor Deposition;化学気相成長)法、流動層反応器を使用した方法等による製造方法が知られている。アーク放電法による製造方法は例えば特許文献1に、CVD法による製造方法は例えば特許文献2及び3に、流動層反応器を使用した製造方法は例えば特許文献4にそれぞれ開示されている。
【0003】
図7は、特許文献1に開示されたアーク放電法によるカーボンナノチューブの製造装置を示す概略図である。図示するように、反応容器(真空チャンバー)100には、上部フランジ101、下部フランジ102、前部フランジ103、及び後部フランジ104が取り付けられている。反応容器100の内部には、炭素電極である棒状の陰極105と、炭素及び非磁性遷移金属を含有する棒状のカーボンナノチューブ製造用電極(陽極)106とが対向するように配置されている。陽極106は、進退機構107により陰極105からの離間量が一定に保たれるようになっている。陰極105は陰極端子108に接続され、陽極106は陽極端子109に接続されている。これらの陰極端子108、陽極端子109は、直流電源(不図示)に接続されている。
【0004】
上記図7に示すアーク放電法による製造装置では、ヘリウムガスで置換された反応容器100内において、陽極106と陰極105との間にアーク放電を発生させる。これにより、陽極106の先端が蒸発し、炭素蒸気と非磁性遷移金属との噴霧状微粒子が発生する。こうして発生した噴霧状微粒子が凝集して析出、堆積することにより、陰極105の付け根付近の外周面等に、単層カーボンナノチューブが堆積する。
【0005】
また、図8は、特許文献2に開示されたCVD法によるカーボンナノチューブの合成装置(水平電気炉)を示す概略図である。図示するように、反応管200の周辺には、反応管200内を加熱するための電熱ヒータ201が配置されている。反応管200内には、主触媒として鉄塩を含む基板202と、副触媒としてモリブデン酸塩を含む基板203とが配置されている。
【0006】
上記図8に示すCVD法による製造装置では、反応管200内を所定の温度に加熱した後、反応管200内にメタンガス等の炭素源をアルゴンガス等の不活性ガスとともに流し、所要温度で反応させることにより、カーボンナノチューブを気相成長させる。
【0007】
また、図9は、特許文献4に開示された流動層反応器を使用した繊維状ナノ炭素の製造装置を示す概略図である。図示するように、繊維状ナノ炭素の製造装置は、内部を加熱する加熱手段300を備えた流動層反応器301と、流動層反応器301内に還元ガス302を供給する第1のガス供給手段303と、流動層反応器301内に炭素原料304をガス状態で供給する炭素原料供給手段305と、流動層反応器301内に炭素を含有しない不活性ガス306を供給する第2のガス供給手段307と、流動層反応器301からガスG及び得られた繊維状ナノ炭素を含む飛散粒子308を排出する排出ライン309とを具備している。流動層反応器301は、流動層を形成する流動層部301Aと、流動層部301Aの上部に連通状態としたフリーボード部301Bとから形成されている。また、流動層反応器301内には、触媒が担持された担体をバインダーを介して結合してなる触媒兼用流動材310が充填されている。また、排出ライン309には、粒子を回収する粒子回収手段311が介装されている。
【0008】
上記図9に示す製造装置では、第1のガス供給手段303により、流動層反応器301内に還元性ガス302を供給して触媒の形態を金属とする。続いて、炭素原料供給手段305により、流動層反応器301内に炭素原料304をガス状態で供給し、所定の反応温度にて触媒に繊維状ナノ炭素を成長させる。その後、加熱手段300により、流動層反応器301内を反応温度よりも高温とすることで、触媒兼用流動材310を形成していたバインダーを熱分解等により微細化し、流動材としての機能を消失させる。流動機能が消失したものは、担体の凝集体又はこれらの結合体となり、微細化され、流動層反応器301のフリーボード部301BからガスGとともに、飛散粒子308として排出ライン309から外部へ排出される。排出された飛散粒子308は、粒子回収手段311により回収される。こうして回収された飛散粒子308から繊維状ナノ炭素が分離される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−95509号公報
【特許文献2】特開2005−343726号公報
【特許文献3】特開2010−18498号公報
【特許文献4】特開2003−342840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記従来のナノ炭素の製造方法には、ナノ炭素を製造するために電力や熱等のエネルギーを大量に必要とするという問題がある。すなわち、アーク放電法による製造方法では、電極間にアーク放電を発生させるために大電力が必要となる。また、CVD法による製造方法や流動層反応器を使用する製造方法では、ナノ炭素が生成する反応管や流動層反応器の内部を所定の反応温度に昇温するために、外部から多量の熱を供給する必要がある。熱供給のために燃料を使用する場合、燃料の燃焼によって二酸化炭素が大量に発生し、燃焼上好ましくない。
【0011】
さらに、従来のナノ炭素の製造方法では、大量のエネルギーを必要とするのみならず、ナノ炭素を量産することも困難であるため、製造されるナノ炭素は高価である。このため、従来の製造方法により製造されるナノ炭素では製品化が困難であるという問題がある。
【0012】
ところで、低級炭化水素の接触熱分解によりナノ炭素を製造する際には、目的物であるナノ炭素が得られるだけでなく、無定形炭素が触媒上に析出することがある。無定形炭素が触媒上に析出すると、触媒の活性が低下し、その結果、ナノ炭素の生成効率が低下する。このような無定形炭素は、気相における低級炭化水素の非接触熱分解反応若しくはラジカル反応、又は低級炭化水素と触媒との接触表面における副反応により析出すると考えられている。
従来の接触熱分解によるナノ炭素の製造方法では、上記無定形炭素の析出を十分に抑制することが困難であるため、ナノ炭素の生成効率が低下し、また、製造装置の信頼性及び耐久性が低下するという問題がある。
【0013】
本発明は、上記事情を背景としてなされたものであり、製造に必要なエネルギーを低く抑えつつ、ナノ炭素を量産することができ、また二酸化炭素の発生量を抑えることができるナノ炭素の製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。
また、本発明は、低級炭化水素の接触熱分解に際して触媒の活性を低下させる無定形炭素の析出を抑制し、効率よくナノ炭素を量産することができ、また二酸化炭素の発生量を抑えることができるナノ炭素の製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
すなわち、本発明のナノ炭素の製造方法のうち、第1の本発明のナノ炭素の製造方法は、流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒に低級炭化水素と酸素とを供給して流動層を形成し、前記低級炭化水素と前記酸素との自己燃焼を伴う前記低級炭化水素の分解反応によって、ナノ炭素と水素とを生成することを特徴とする。
【0015】
第2の本発明のナノ炭素の製造方法は、前記第1の本発明において、前記低級炭化水素及び前記酸素中における該酸素を25体積%以下の比率で供給することを特徴とする。
【0016】
第3の本発明のナノ炭素の製造方法は、前記第1又は第2の本発明において、前記分解反応における排ガスに含まれる二酸化炭素が10体積%以下であり、水が20体積%以下であることを特徴とする。
【0017】
第4の本発明のナノ炭素の製造方法は、前記第1〜第3の本発明のいずれかにおいて、前記流動触媒は、ニッケル微粒子が1〜200μmの大きさのシリカ担体に50質量%以下担持され、又は鉄微粒子が1〜200μmの大きさのアルミナ担体に50質量%以下担持されてなることを特徴とする。
【0018】
第5の本発明のナノ炭素の製造方法は、前記第1〜第4の本発明のいずれかにおいて、前記流動触媒に、200μm以下の大きさの、砂粒子、シリカ粒子及びアルミナ粒子から選択される1種又は2種以上からなる前記流動媒体を添加して、前記流動触媒とともに前記流動層を形成することを特徴とする。
【0019】
第6の本発明のナノ炭素の製造方法は、前記第1〜第5の本発明のいずれかにおいて、前記分解反応における温度を500〜1000℃とすることを特徴とする。
【0020】
第7の本発明のナノ炭素の製造方法は、前記第1〜第6の本発明のいずれかにおいて、前記分解反応における圧力を10気圧以下に設定することを特徴とする。
【0021】
第8の本発明のナノ炭素の製造方法は、前記第1〜第7の本発明のいずれかにおいて、前記流動触媒、又は前記流動媒体を併用する流動触媒に対して、前記低級炭化水素をメタン換算でSV値80,000NL/kg−catal./h以下の条件で供給することを特徴とする。
【0022】
第9の本発明のナノ炭素の製造方法は、前記第1〜第8の本発明のいずれかにおいて、前記分解反応における排ガスに含まれる未反応の前記低級炭化水素を還流させて前記分解反応に供することを特徴とする。
【0023】
第10の本発明のナノ炭素の製造方法は、前記第1〜第9の本発明のいずれかにおいて、前記分解反応を前段として、前記分解反応における排ガスと、前段で供給された酸素よりも低濃度の酸素とを、後段の流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒に供給して流動層を形成し、前記排ガスと前記酸素との自己燃焼を伴って前記排ガスに含まれる未反応の前記低級炭化水素を分解し、ナノ炭素と水素とをさらに生成することを特徴とする。
【0024】
第11の本発明のナノ炭素の製造方法は、前記第1〜第10の本発明のいずれかにおいて、前記分解反応によって生成されるナノ炭素が、直径1〜500nm、長さ100μm以下であることを特徴とする。
【0025】
第12の本発明のナノ炭素の製造装置は、流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒が収容され、低級炭化水素と酸素とが供給されて自己燃焼可能な流動層反応器と、前記流動層反応器に接続され、該流動層反応器内に低級炭化水素と酸素とを供給するガス供給部と、前記流動層反応器に接続され、該流動層反応器内の排ガスを外部に排出する排ガス路と、前記流動層反応器に接続され、該流動層反応器内に前記流動触媒、又は前記流動媒体を併用する流動触媒を補給する補給部と、を有することを特徴とする。
【0026】
第13の本発明のナノ炭素の製造装置は、前記第12の本発明において、前記流動層反応器から排出される前記排ガスに含まれる未反応の前記低級炭化水素を還流させて前記分解反応に供するガス還流路を有することを特徴とする。
【0027】
第14の本発明のナノ炭素の製造装置は、前記第13の本発明において、前記排ガスから前記水素を分離する水素分離部を有し、前記ガス還流路が、前記水素分離部の、水素を分離した排ガス排出側に接続されていることを特徴とする。
【0028】
第15の本発明のナノ炭素の製造装置は、前記第14の本発明において、前記水素分離部の、水素を分離した排ガス排出側の下流に、二酸化炭素を分離する二酸化炭素分離部が設けられており、前記ガス還流路が、前記二酸化炭素分離部の、二酸化炭素を分離した排ガス排出側に接続されていることを特徴とする。
【0029】
第16の本発明のナノ炭素の製造装置は、前記第15の本発明において、前記二酸化炭素分離部の、二酸化炭素を分離した排ガス排出側の下流に、水を分離する水分離部が設けられており、前記ガス還流路が、前記水分離部の、水を分離した排ガス排出側に接続されていることを特徴とする。
【0030】
第17の本発明のナノ炭素の製造装置は、前記第12〜第16の本発明のいずれかにおいて、前記流動層反応器の後段に、流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒が収容され、前記流動層反応器の排ガスと、酸素とが供給されて自己燃焼可能な第2流動層反応器を有し、該第2流動層反応器に接続され、該第2流動層反応器内に前記排ガスと酸素とを供給する第2ガス供給部と、前記第2流動層反応器に接続され、該第2流動層反応器内の排ガスを外部に排出する第2排ガス路と、前記第2流動層反応器に接続され、該第2流動層反応器内に前記流動触媒、又は前記流動媒体を併用する流動触媒を補給する第2補給部と、を有することを特徴とする。
【0031】
第18の本発明のナノ炭素の製造装置は、前記第12〜第17の本発明のいずれかにおいて、前記流動層反応器に収容される流動触媒、流動媒体、分解反応に供されてナノ炭素を含む触媒、分解反応に供されてナノ炭素を含む触媒に少なくともナノ炭素を除去する前処理を施した触媒のいずれか又は2以上の混合物を搬送するスクリューフィーダーを備えることを特徴とする。
【0032】
第19の本発明のナノ炭素の製造装置は、前記第12〜第18の本発明のいずれかにおいて、前記流動層反応器と、前記流動触媒を搬送しつつ前記分解反応を行わせるスクリューフィーダー移動反応床とを備えることを特徴とする。
【0033】
すなわち、本発明によれば、低級炭化水素と酸素とを流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒に供給して流動層を形成するため、低級炭化水素と酸素との自己燃焼を伴う低級炭化水素の分解反応が起き、ナノ炭素と水素とが生成される。低級炭化水素と酸素との自己燃焼により、低級炭化水素の分解反応に必要とされる熱量の一部又は全部が自給されるため、ナノ炭素の製造に必要なエネルギーが低く抑えられる。
また、低級炭化水素の分解反応により発生した二酸化炭素の一部が流動層に供給されるため、流動層における流動触媒上に無定形炭素が析出することが抑制される。これにより、流動触媒の活性の低下が抑制され、効率よくナノ炭素が量産される。
【0034】
なお、本発明で用いられる低級炭化水素としては、代表的にはメタンが挙げられ、その他にエタン、プロパン、ブタン等が例示される。低級炭化水素は、単一種であっても、複合種であってもよい。低級炭化水素は、天然ガス、都市ガス13A、ボイルオフガス、バイオガス等に含まれるものを用いることができる。
【0035】
また、本発明で用いられる流動触媒としては、上記低級炭化水素の分解に用い得るものであれば特定の触媒種に限定されるものではない。代表的には、流動触媒として、ニッケル、鉄等の金属を挙げることができ、これら触媒金属微粒子がシリカ担体、アルミナ担体等の担体の表面に担持されてなるものが挙げられる。具体的には、1〜500nmの大きさのニッケル微粒子が、1〜200μmのシリカ担体に50質量%以下担持されてなる流動触媒、1〜500nmの大きさの鉄微粒子が、1〜200μmの大きさのアルミナ担体に50質量%以下担持されてなる流動触媒を例示することができる。担体に対する触媒金属微粒子の量を50質量%以下とすることが望ましいのは、触媒金属微粒子が多量すぎると、該金属がシンタリングして結晶径が大きくなり、ナノ炭素が生成されなくなるためである。また、担体に対する触媒金属微粒子の量を50質量%を超えるものとすることは、工業的に困難であり、高コストである。なお、担体に対する触媒金属微粒子の量は、低級炭化水素の分解反応を効果的に進行させる観点から、1〜50質量%であることが望ましい。また、触媒金属微粒子の大きさが1〜500nmであることにより、流動層の形成に好適な流動性を確保することができる。
また、流動触媒は、上記担体に担持することなく、ナノ炭素と結合したシードの状態で提供されるものであってもよい。
【0036】
上記流動触媒には、これとともに流動層を形成する流動媒体が添加されて併用されてもよい。流動媒体を添加することにより流動性が向上し、低級炭化水素の分解反応が効率よく進行する流動層を形成することができる。流動媒体としては、砂粒子、シリカ粒子、アルミナ粒子等が例示され、これらのうちの1種であっても、2種以上の混合物であってもよい。なお、流動媒体の平均粒径は、200μm以下であることが望ましく、100〜200μmであることがより望ましく、100〜150μmであることが更に望ましい。流動触媒の平均粒径が前記範囲内であることにより、低級炭化水素の分解反応が効率よく進行する流動層が形成される。
【0037】
また、上記流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒に供給する低級炭化水素及び酸素中における酸素の比率は、低級炭化水素をメタン換算した場合25体積%以下であることが望ましく、5〜25体積%であることがより望ましい。酸素の比率が5体積%未満であると、熱供給が不十分になり反応温度が所定値より低下し、低級炭化水素と酸素との自己燃焼を伴う低級炭化水素の分解反応が十分に進行しないおそれがある。また、酸素の比率が25体積%を超えると、低級炭化水素の燃焼に伴う二酸化炭素の生成が過剰になり、ナノ炭素の生成効率が低下する。このため、流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒に供給するガスに含まれる酸素の濃度は、上記範囲であることがより望ましい。
【0038】
また、上記流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒に対しては、所定の流量で低級炭化水素をメタン換算で、SV値80,000NL/kg−catal./h以下の条件で供給することが望ましく、40,000〜80,000NL/kg−catal./hの条件で供給することがより望ましい。このSV値が40,000NL/kg−catal./h未満であると、十分な流動状態が得られなくなる。また、SV値が80,000NL/kg−catal./hを超えると、転化率が低下し、反応効率が悪くなる。このため、流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒に対して低級炭化水素を供給するSV値は、上記範囲であることがより望ましい。
【0039】
なお、低級炭化水素及び酸素を流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒に供給する態様は、流動層を形成することができる態様であれば、特に限定されるものではない。例えば、低級炭化水素と酸素とが混合された混合ガスを流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒に供給する態様であってもよいし、低級炭化水素と酸素とを別個独立に流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒に供給し、流動層内で両者が混合される態様であってもよい。効率的な燃焼を実現するためには、混合ガスを流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒に供給する前者の態様が望ましい。
【0040】
また、上記流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒に供給する低級炭化水素と酸素とを含むガスの温度は、低級炭化水素と酸素とが容易に自己燃焼する温度であることが望ましく、具体的には、400〜500℃であることが望ましい。流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒に供給するガスの温度を400〜500℃とすることにより、流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒に供給された低級炭化水素と酸素とが直ちに自己燃焼するため、外部から多量の熱を供給する必要がなく、ナノ炭素の製造に要するエネルギーを低く抑えることができる。また、流動層における反応温度を容易に適切な温度に設定することができる。
【0041】
低級炭化水素と酸素との自己燃焼を伴う低級炭化水素の分解反応に際しては、反応条件を適宜設定することにより、分解反応における温度を500〜1000℃とすることが望ましく、500〜900℃とすることがより望ましい。これにより、低級炭化水素の分解と、低級炭化水素と酸素との反応による自己燃焼が効率よくなされる。分解反応における温度の設定は、流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒に供給する各ガスの比率、温度、及び流量、流動層の圧力等を調整することにより行うことができる。また、必ずしもヒーター等の加熱手段により外部から流動層に熱を供給する必要はないが、加熱手段により外部から流動層に熱を供給してもよい。
【0042】
また、上記分解反応における圧力は、10気圧以下に設定することが望ましい。これは、流動層の圧力が10気圧を超えると、コストの上昇を招き、また、化学平衡上、高圧力下では低級炭化水素の分解によるナノ炭素と水素の生成効率が低下して反応としては不利になるためである。なお、上記分解反応における圧力は、反応器出口に水素透過膜を設けて出口ガスから水素を分離する場合分離効率を高くする観点から、3気圧以上であることが望ましい。
【0043】
低級炭化水素の分解反応における排ガスには、未反応の低級炭化水素、水素、二酸化炭素、一酸化炭素、水が含まれる。排ガス中に含まれる二酸化炭素の濃度は、10体積%以下であることが望ましく、1〜10体積%であることがより望ましい。これは、排ガス中の二酸化炭素の濃度が1体積%未満であると、自己燃焼により生成される二酸化炭素量が過小であることを意味しており、流動触媒の活性の低下を招く無定形炭素の析出を抑制する作用が十分に得られなくなる。また、10体積%を超えると、ナノ炭素の生成量が抑制され、ナノ炭素の生成量が減少する。また、排ガスに含まれる水の濃度は、20体積%以下であることが望ましく、1〜20体積%であることがより望ましい。これは、排ガス中の水の濃度が1体積%未満であると、流動触媒の活性の低下を招く無定形炭素の析出を抑制する作用が十分に得られなくなる。また、水の濃度が20体積%を超えると、メタンの水蒸気改質反応が進行して二酸化炭素の発生量が増加し、ナノ炭素の生成量が減少し、更にはナノ炭素の生成が困難になってしまう。また、水の量が多くなると、水の蒸発潜熱及び反応熱による吸熱が大きくなり、エネルギー消費が増大してしまう。このため、水の濃度は20体積%以下が望ましい。
【0044】
また、上記排ガスに含まれる未反応の低級炭化水素は、還流させて分解反応に供することが望ましい。これにより、ナノ炭素の原料となる低級炭化水素の損失を低減し、高い収率でナノ炭素を製造することができる。
なお、後述する分離工程を経る等して温度が低下した未反応の低級炭化水素を含む還流ガスは、上記分解反応によって高温になっている排ガスと熱交換器を介して熱交換を行うことにより、所定の温度に加熱するようにしてもよい。例えば、500〜800℃の排ガスとの熱交換により、還流ガスを400〜500℃に加熱することができる。このように還流ガスと排ガスとの熱交換を行うことにより、優れた熱効率でナノ炭素と水素とを製造することができる。
【0045】
また、未反応の低級炭化水素を還流する際には、排ガスから水素ガスを分離した上で還流ガスとして分解反応に供することが望ましく、水素が分離された排ガスから二酸化炭素を分離した上で分解反応に供することがより望ましく、二酸化炭素が分離された排ガスから水をさらに分離した上で分解反応に供することがさらに望ましい。還流されて分解反応に供される排ガスから低級炭化水素の分解及び低級炭化水素と酸素との自己燃焼を阻害する二酸化炭素、水を除去することにより、反応効率を高めることができる。
【0046】
また、流動触媒を用いた低級炭化水素の分解反応を前段と後段の2段に分け、前段の分解反応における排ガスを、後段の分解反応に供するようにしてもよい。すなわち、前段の分解反応における排ガスと酸素とを、後段の流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒に供給して流動層を形成し、前段の排ガスと低濃度の酸素との自己燃焼を伴って前段の排ガスに含まれる未反応の低級炭化水素を分解する。なお、後段の流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒に供給する酸素は、前段の流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒に供給する酸素よりも低い比率であることが望ましく、具体的には、10体積%以下であることが望ましく、2〜10体積%であることがより望ましい。これは、後段の流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒に供給する未反応の低級炭化水素は、前段の流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒に供給する低級炭化水素よりも低濃度であるため、これに応じて後段の酸素に供給する酸素も低い比率のものにすることが望ましいためである。前段の排ガスに含まれる未反応の低級炭化水素は、後段の分解反応により分解され、炭素と水素とがさらに生成される。
低級炭化水素の分解反応を前段と後段の2段に分けることで、各段における、触媒の種類と量及び反応温度を独立に制御できる利点が生じるため、低級炭化水素の処理量を多くすることができる。
上記分解反応は、前段、後段の2段に限定されず、3段以上の多段で構成することも可能である。また、各段で排出される未反応の低級炭化水素の一部、又は最終段における未反応の低級炭化水素の一部若しくは全部を、自段又は他段の分解反応に供してもよい。
【0047】
上記ナノ炭素の製造を行う反応器としては、流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒が収容され、低級炭化水素と酸素とが供給されて自己燃焼可能な流動層反応器を用いることができる。流動層反応器には、流動層反応器内に低級炭化水素と酸素とを供給するガス供給部を接続して両ガスの供給を可能な構成とし、流動層反応器内の排ガスを外部に排出する排ガス路を接続して排ガスの排出を可能な構成とする。
【0048】
ガス供給部は、流動層反応器の下部、中部、及び上部のいずれか1箇所又は複数箇所から低級炭化水素と酸素とを流動層反応器内に供給することができる。また、ガス供給部は、低級炭化水素と酸素とを流動層反応器内に間欠的に供給してもよいし、連続的に供給してもよい。
【0049】
なお、流動層反応器の下部より低級炭化水素と酸素とを供給する場合、流動層反応器内に収容された流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒は、流動層反応器の下部に配置された分散板により支持することができる。ガス供給部は、分散板を介して分散板の下方から流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒に低級炭化水素と酸素とを供給する。分散板を介して流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒に低級炭化水素と酸素とを供給することにより、流動層反応器内に流動層を安定的に形成することができる。
【0050】
また、上記排ガスに含まれる未反応の低級炭化水素を還流させる場合には、排ガス路から排出される未反応の低級炭化水素を還流させて分解反応に供するガス還流路を設けることが望ましい。ガス還流路を設けることにより、効率よく未反応の低級炭化水素を分解反応に供することができる。
【0051】
また、上記ガス還流路に対しては、排ガスから水素を分離する水素分離部を設け、ガス還流路が、水素分離部の、水素を分離した排ガス排出側に接続されている構成とすることが望ましい。水素分離部は、例えば水素を選択的に透過可能な水素透過膜を用いて構成することができる。水素分離部を設けることにより、排ガスから水素を回収することができる。回収された水素は、回収容器に回収してもよいし、次工程に移送してもよい。
【0052】
また、上記水素分離部に対しては、排ガスから二酸化炭素を分離する二酸化炭素分離部を設け、水素分離部の、水素を分離した排ガス排出側の下流に、二酸化炭素を分離する二酸化炭素分離部が設けられており、ガス還流路が、二酸化炭素分離部の、二酸化炭素を分離した排ガス排出側に接続されている構成とすることが望ましい。二酸化炭素分離部は、吸収、吸着、膜分離法を用いて構成することができる。二酸化炭素分離部を設けることにより、還流されて分解反応に供される排ガスから二酸化炭素を除去することができ、過剰な二酸化炭素により低級炭化水素の分解反応や低級炭化水素と酸素との燃焼が阻害されるのを防止することができる。
【0053】
さらに、上記二酸化炭素分離部に対しては、排ガスから水を分離する水分離部を設け、二酸化炭素分離部の、二酸化炭素を分離した排ガス排出側の下流に、水を分離する水分離部が設けられており、ガス還流路が、水分離部の、水を分離した排ガス排出側に接続されている構成とすることが望ましい。水分離部は、冷却媒体を流してガスを冷却する熱交換器等により構成することができる。水分離部を設けることにより、還流されて分解反応に供される排ガスから水を除去することができ、水により低級炭化水素の分解反応や低級炭化水素と酸素との燃焼が阻害されるのを防止することができる。
【0054】
なお、上記二酸化炭素分離部と水分離部とは、互いに別個独立に設けるのではなく、両分離部の分離機能を兼ね備えた単一の分離部を設けてもよい。このような単一の分離部としては、例えば、メタン分離膜等の低級炭化水素分離膜を用い、二酸化炭素、水の他に一酸化炭素、窒素等を含む低級炭化水素以外のガスと、低級炭化水素とを分離する分離部を構成することができる。
【0055】
また、流動触媒を用いた低級炭化水素の分解反応を前段と後段の2段に分け、前段の分解反応における排ガスを、後段の分解反応に供する場合には、前段の排ガスに含まれる未反応の低級炭化水素を分解する反応を行う構成を後段に設ければよい。後段の構成としては、前段の流動層反応器の後段に、流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒が収容され、前段の流動層反応器の排ガスと、酸素とが供給されて自己燃焼可能な第2流動層反応器を有し、さらに、第2流動層反応器に接続され、第2流動層反応器内に前段の排ガスと酸素とを供給する第2ガス供給部と、第2流動層反応器に接続され、第2流動層反応器内の排ガスを外部に排出する第2排ガス路と、前記第2流動層反応器に接続され、該第2流動層反応器内に前記流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒を補給する第2補給部と、を有する構成を用いることができる。
【0056】
また、上記流動層反応器に対しては、スクリューフィーダーを設け、これにより、流動層反応器に収容される流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒、分解反応に供されてナノ炭素を含む触媒、分解反応に供されてナノ炭素を含む触媒に少なくともナノ炭素を除去する前処理を施した触媒のいずれか又は2以上の混合物、を搬送することが望ましい。流動層反応器内において分解反応が行われる間、流動層を形成する流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒は、飛散して排ガスとともに流動層反応器外に排出されることになる。このため、分解反応を継続的に行うためには、流動層反応器内に前記流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒を補充することが望ましい。この際、スクリューフィーダーにより前記流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒を搬送することにより、外部よりも高圧な流動層反応器内に前記流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒を安定して定量的に供給することができる。
【0057】
また、上記流動層反応器に対しては、流動触媒を搬送しつつ低級炭化水素の分解反応を行わせる、外部加熱あるいは内部加熱機構を備えた、スクリューフィーダー移動反応床を設けるようにしてもよい。この場合、スクリューフィーダー移動反応床で、ナノ炭素と触媒金属微粒子とが結合した粒子を、ナノ炭素のシードとして生成させ、そのシードを流動層反応器に送り込み、流動層反応器内の広い空間において、十分な時間をかけて、シードを限界近くまで成長させることができるようになる。その効果の一つとして、ナノ炭素の生成量を顕著に増やすことができることである。二つ目の効果は、スクリューフィーダー移動反応床において、ナノ炭素と触媒金属微粒子とが結合した粒子の生成条件を制御することにより、嵩密度の小さいシードを生成させ、そのシードを流動層反応器中で嵩密度の小さいナノ炭素に成長させることができる。その結果、スクリューフィーダー移動反応床を設けないで直接流動層反応器中で生成させたナノ炭素よりも、小さな嵩密度をもつナノ炭素を得ることができる。この小さな嵩密度をもつナノ炭素は必然的に高い分散性をもつようになり、またナノ炭素に残留する触媒を容易に除去できるようになるので、ナノ炭素の高コスト要因となっている分散処理および精製処理のコストを大きく下げる特徴をもつことになる。
【0058】
上記本発明のナノ炭素の製造方法により製造されるナノ炭素は、例えば、直径1〜500nm、長さ100μm以下のものである。このような大きさを有するナノ炭素は、流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒との嵩比重や径の違い、体積膨張により、流動層の上層に移動し、流動層が形成された流動層部上の空間であるフリーボード部に到達する。フリーボード部に到達したナノ炭素は、流動層反応器の側壁にナノ炭素排出路を設けることにより、ナノ炭素排出路からオーバーフローさせて回収し、又は次工程に移送することができる。
【発明の効果】
【0059】
以上説明したように、本発明によれば、流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒に低級炭化水素と酸素とを供給して流動層を形成し、前記低級炭化水素と前記酸素との自己燃焼を伴う前記低級炭化水素の分解反応によって、ナノ炭素と水素とを生成するので、製造に必要なエネルギーを低く抑えつつ、ナノ炭素を量産することができ、また一部又は全部の燃料消費を不要にして二酸化炭素の発生を抑えることができる。
また、本発明によれば、前記分解反応により生じた二酸化炭素の一部が流動層に供給されるため、前記分解反応に際し前記流動触媒上に無定形炭素が析出することが抑制される。したがって、本発明によれば、流動触媒の活性の低下を抑制し、効率よくナノ炭素を量産することができ、また二酸化炭素の発生を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の一実施形態のナノ炭素の製造装置を示す概略図である。
【図2】同じく、低級炭化水素以外のガスが分離された排ガスを流動層反応器内に還流する構成を備えた他の実施形態のナノ炭素の製造装置を示す概略図である。
【図3】同じく、2段の流動層反応器を備えた他の実施形態のナノ炭素の製造装置を示す概略図である。
【図4】同じく、流動層反応器に流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒を補充供給するスクリューフィーダーを備えた他の実施形態のナノ炭素の製造装置を示す概略図である。
【図5】同じく、スクリューフィーダーを移動反応床として用いた他の実施形態のナノ炭素の製造装置を示す概略図である。
【図6】同じく、ナノ炭素の製造装置におけるマテリアルバランスのシミュレーションによる一例を示す図である。
【図7】従来のアーク放電法によるカーボンナノチューブの製造装置を示す概略図である。
【図8】従来のCVD法によるカーボンナノチューブの合成装置(水平電気炉)を示す概略図である。
【図9】従来の流動層反応器を使用した繊維状ナノ炭素の製造装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
(実施形態1)
以下、本発明の一実施形態を図1に基づいて説明する。
図1は、ナノ炭素の製造装置を示す概略図である。
ナノ炭素の製造装置は、流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒1が収容される流動層反応器2と、流動層反応器2内に反応ガスとして低級炭化水素3と酸素4とを供給するガス供給路5とを有している。
【0062】
ガス供給路5は、低級炭化水素3を供給する低級炭化水素供給路5aと、酸素4を供給する酸素供給路5bとから構成されている。低級炭化水素供給路5aの上流端には、低級炭化水素供給路5aに低級炭化水素を供給する低級炭化水素源(不図示)が接続されている。酸素供給路5bの上流端には、酸素供給路5bに酸素を供給する酸素源(不図示)が接続されている。低級炭化水素供給路5aと低級炭化水素源とは低級炭化水素供給部を構成し、酸素供給路5bと酸素源とは酸素供給部を構成する。これら低級炭化水素供給部と酸素供給部とは、本発明のガス供給部に相当する。
【0063】
流動層反応器2の下部には、分散板6が配置されている。分散板6によって、流動層反応器2内に収容された流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒1が支持される。分散板6は、例えば、上下に連結した微細な空孔を有する多孔質構造や、上面と下面とを貫通する貫通孔を有する構造等を有し、下方から上方にガスが通過して上方で分散されるようになっている。
【0064】
低級炭化水素供給路5aの下流端と酸素供給路5bの下流端とは、分散板6の下側の位置で流動層反応器2の下部に接続されている。また、分散板6下には、分散板6に向かう混合ガスに点火する点火装置7が設置されている。
【0065】
流動層反応器2の上部には、流動層反応器2内の排ガスが排出される排ガス路8が接続されている。排ガス路8には、排ガス9に含まれるナノ炭素や流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒を排ガス9から分離する粒子分離部10が接続されている。粒子分離部10は、サイクロン等により構成されている。粒子分離部10のナノ炭素分離側には、ナノ炭素回収路10aを介して、ナノ炭素回収容器11が接続されている。粒子分離部10の排ガス排出側には、ナノ炭素や流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒が分離された排ガス9が排出される排ガス路10bが接続されている。
【0066】
流動層反応器2の側壁には、流動層反応器2内に流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒1を補給する補給部2aが接続されている。なお、補給部2aは、流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒1を補給する単一のものであってもよいし、流動触媒を補給する補給部と、流動媒体を補給する補給部とを別個独立に設けてもよい。図では、これらを総括して示している。また、流動層反応器2の側壁には、流動層反応器2内において生成されたナノ炭素が排出されるナノ炭素排出路19が設けられている。ナノ炭素排出路19には、前記ナノ炭素回収容器11が接続されている。
【0067】
次に、上記図1に示すナノ炭素の製造装置を用いたナノ炭素の製造過程について説明する。
ナノ炭素の製造に際し、流動層反応器2内には、流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒1が収容されている。流動触媒としては、1〜500nmの大きさのニッケル微粒子が、1〜200μmの大きさのシリカ担体に1〜50質量%担持されてなる流動触媒、又は1〜500nmの大きさの鉄微粒子が、1〜200μmの大きさのアルミナ担体に1〜50質量%担持されてなる流動触媒を用いる。また、流動触媒には、流動媒体が添加されている。流動媒体としては、100〜200μmの大きさの砂粒子、シリカ粒子、アルミナ粒子、又はこれらの混合物を用いることができる。
なお、流動層反応器2内には、流動層反応器2内における流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒1の減少に応じて、補給部2aにより流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒1が補給される。補給部2aによる流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒1の補給は、一定の速度で連続的に行ってもよいし、定期的に又は不定期的に行ってもよい。
【0068】
流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒1が収容された流動層反応器2の下部には、低級炭化水素供給路5aからメタン等の低級炭化水素3を供給するとともに、酸素供給路5bから酸素4を流動層反応器2の下部に供給する。流動層反応器2の下部に供給された低級炭化水素3と酸素4とは混合されて混合ガスとなり、分散板6を上方に通過しつつ分散されて流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒1に供給される。混合ガスに含まれる酸素4の濃度は、低級炭化水素をメタン換算した場合5〜25体積%とする。また、低級炭化水素3は、メタン換算でSV値40,000〜80,000NL/kg−catal./hの条件で供給する。また、混合ガスは、400〜500℃に予熱して流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒1に供給するのが望ましい。
【0069】
分散板6に向かう混合ガスには、分散板6下の点火装置7により点火する。これにより、混合ガスの一部が燃焼し、低級炭化水素の分解反応が進行し得る温度に達した混合ガスが流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒1に供給される。なお、点火装置7による混合ガスへの点火は、必ずしも継続的に行う必要はない。流動層反応器2内に形成された流動層が混合ガスの燃焼温度に達していれば、点火装置7による混合ガスへの点火を行わなくてもよい。
【0070】
流動層反応器2内では、流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒1に混合ガスが供給されることにより流動層が形成される。このように、流動層反応器2内は、流動層が形成される流動層部と、流動層部上に位置する空間であるフリーボード部とで構成される。
流動層部では、流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒1と混合ガスとが接触し、低級炭化水素と酸素との自己燃焼を伴う低級炭化水素の分解反応が進行する。この際、反応条件を適宜設定することにより、分解反応における温度を500〜1000℃とし、圧力を10気圧以下とする。低級炭化水素の分解反応により、ナノ炭素が生成されるとともに、水素、二酸化炭素、一酸化炭素、水(水蒸気)等を含む排ガスが生成される。排ガスには、未反応の低級炭化水素も含まれる。生成されるナノ炭素は、直径1〜500nm、長さ100μm以下のものである。また、排ガスに含まれる二酸化炭素の濃度は1〜10体積%であり、排ガスに含まれる水の濃度は1〜20体積%である。
【0071】
流動層反応器2内において生成されたナノ炭素は、流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒1との嵩比重や径の違い、体積膨張のために流動層の上層に移動して、フリーボード部に到達する。フリーボード部に到達したナノ炭素は、ナノ炭素排出路19から排出される。排出されたナノ炭素20は、ナノ炭素回収容器11に回収される。なお、排出されたナノ炭素20を次工程に移送してもよい。
【0072】
また、流動層反応器2内において生成された排ガスは、排ガス路8から排出される。排ガス路8から排出された排ガス9は、排ガス路8を通して粒子分離部10に導入される。排ガス9には、飛散したナノ炭素や流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒が含まれている。粒子分離部10では、排ガス9からナノ炭素や流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒が分離される。分離されたナノ炭素12は、ナノ炭素回収路10aを介して、ナノ炭素回収容器11に回収される。ナノ炭素や流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒が分離された排ガス9は排ガス路10bから排出され、必要に応じて排ガス9から水素を分離回収する処理等が行われる。
【0073】
なお、流動層反応器2に対しては、流動触媒を搬送しつつ低級炭化水素の分解反応を行わせる、外部加熱あるいは内部加熱機構を備えた、スクリューフィーダー移動反応床を設置してもよい。この場合、スクリューフィーダー移動反応床で、ナノ炭素と触媒金属微粒子とが結合した粒子を、ナノ炭素のシードとして生成させ、そのシードを流動層反応器に送り込み、流動層反応器内の広い空間において、十分な時間をかけて、シードを限界近くまで成長させることができるようになる。その効果の一つとして、ナノ炭素の生成量を顕著に増やすことができることである。二つ目の効果は、スクリューフィーダー移動反応床において、ナノ炭素と触媒金属微粒子とが結合した粒子の生成条件を制御することにより、嵩密度の小さいシードを生成させ、そのシードを流動層反応器中で嵩密度の小さいナノ炭素に成長させることができる。その結果、スクリューフィーダー移動反応床を設けないで直接流動層反応器中で生成させたナノ炭素よりも、小さな嵩密度をもつナノ炭素を得ることができる。この小さな嵩密度をもつナノ炭素は必然的に高い分散性をもつようになり、またナノ炭素に残留する触媒を容易に除去できるようになるので、ナノ炭素の高コスト要因となっている分散処理および精製処理のコストを大きく下げる特徴をもつことになる。
【0074】
(実施形態2)
次に、他の実施形態を図2に基づいて説明する。
上記流動層反応器2から排出される排ガス9には、未反応の低級炭化水素が含まれている。未反応の低級炭化水素を再び分解反応に供することができれば、原料となる低級炭化水素の損失を低減し、ナノ炭素を高い収率で製造することができる。そこで、上記図1に示すナノ炭素の製造装置に対して、粒子分離部10から排出される排ガス9から水素、二酸化炭素、水等の低級炭化水素以外のガスを分離し、低級炭化水素以外のガスが分離された排ガス9を流動層反応器2内に還流する構成を設けてもよい。
本実施形態のナノ炭素の製造装置は、上記図1に示す構成に加えて、低級炭化水素以外のガスが分離された排ガス9を流動層反応器2内に還流する構成を備えるものである。
【0075】
図2は、本実施形態のナノ炭素の製造装置を示す概略図である。図示するように、上記図1に示すナノ炭素の製造装置における粒子分離部10の排ガス排出側には、排ガス路10bに代えて、以下に述べるように、水素分離部13、二酸化炭素・水分離部15、及びガス還流路17a、17b、17cが設けられている。なお、前記実施形態と同様の構成については同一の符号を付してその説明を省略又は簡略化する。
【0076】
粒子分離部10の、ナノ炭素や流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒が分離された排ガス排出側には、ガス還流路17aを介して、ナノ炭素や流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒が分離された排ガス9から水素を分離する水素分離部13が接続されている。水素分離部13の水素分離側には、水素14を排出する水素排出路13aを介して、水素回収容器(不図示)が接続されている。
【0077】
水素分離部13の、水素が分離された排ガス排出側には、ガス還流路17bを介して、水素が分離された排ガス9から二酸化炭素、水(水蒸気)を分離する二酸化炭素・水分離部15が接続されている。二酸化炭素・水分離部15の二酸化炭素・水分離側には、二酸化炭素及び水16を排出する二酸化炭素・水排出路15aが接続されている。二酸化炭素・水分離部15の、二酸化炭素及び水が分離された排ガス排出側は、ガス還流路17cを介して、分散板6の下側の位置で流動層反応器2の下部に接続されている。
【0078】
次に、上記図2に示すナノ炭素の製造装置を用いたナノ炭素の製造過程について説明する。
まず、上記図1に示す場合と同様に、流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒1が収容された流動層反応器2の下部に、低級炭化水素供給路5aからメタン等の低級炭化水素3を供給するとともに、酸素供給路5bから酸素4を供給する。
流動触媒としては、1〜500nmの大きさのニッケル微粒子が、1〜200μmの大きさのシリカ担体に1〜50質量%担持されてなる流動触媒、又は1〜500nmの大きさの鉄微粒子が、1〜200μmの大きさのアルミナ担体に1〜50質量%担持されてなる流動触媒を用いる。また、流動触媒には、流動媒体が添加されている。流動媒体としては、100〜200μmの大きさの砂粒子、シリカ粒子、アルミナ粒子、又はこれらの混合物を用いることができる。
流動層反応器2の下部に供給された低級炭化水素3と酸素4とは混合されて混合ガスとなり、分散板6により分散されて流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒1に供給される。低級炭化水素3は、メタン換算でSV値40,000〜80,000NL/kg−catal./hの条件で供給する。また、混合ガスは、400〜500℃に予熱して流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒1に供給するのが望ましい。混合ガスに含まれる酸素4の濃度は、低級炭化水素をメタン換算した場合5〜25体積%とする。
さらに、低級炭化水素3と酸素4とには、後述するように、低級炭化水素以外のガスが分離されて還流された排ガス9が混合される。分散板6に向かう混合ガスには、分散板6下の点火装置7により点火する。これにより、混合ガスの一部が燃焼し、低級炭化水素の分解反応が進行し得る温度に達した混合ガスが流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒1に供給される。
この際、反応条件を適宜設定することにより、分解反応における温度を500〜1000℃とし、圧力を10気圧以下とする。
なお、流動層反応器2内には、上記図1に示す場合と同様に、流動層反応器2内における流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒1の減少に応じて、補給部2aにより流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒1が補給される。
【0079】
流動層反応器2内では、上記図1に示す場合と同様に、流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒1に混合ガスが供給されることにより流動層が形成され、低級炭化水素と酸素との自己燃焼を伴う低級炭化水素の分解反応が進行する。低級炭化水素の分解反応により、ナノ炭素が生成されるとともに、水素、二酸化炭素、一酸化炭素、水(水蒸気)等を含む排ガスが生成される。排ガスには、未反応の低級炭化水素も含まれる。
低級炭化水素の分解反応により、ナノ炭素が生成されるとともに、水素、二酸化炭素、一酸化炭素、水(水蒸気)等を含む排ガスが生成される。排ガスには、未反応の低級炭化水素も含まれる。生成されるナノ炭素は、直径1〜500nm、長さ100μm以下のものである。また、排ガスに含まれる二酸化炭素の濃度は1〜10体積%であり、排ガスに含まれる水の濃度は1〜20体積%である。
【0080】
流動層反応器2内において生成されたナノ炭素は、上記図1に示す場合と同様に、ナノ炭素排出路19から排出される。排出されたナノ炭素20は、ナノ炭素回収容器11に回収される。
【0081】
また、流動層反応器2内において生成された排ガスは、上記図1に示す場合と同様に、排ガス路8から排出される。排出された排ガス9は、排ガス路8を通して粒子分離部10に導入される。粒子分離部10では、排ガス9からナノ炭素や流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒が分離される。分離されたナノ炭素12は、ナノ炭素回収容器11に回収される。
【0082】
さらに、粒子分離部10によりナノ炭素や流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒が分離された排ガス9は、ガス還流路17aを通して水素分離部13に導入される。水素分離部13では、ナノ炭素や流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒が分離された排ガス9から水素14が分離される。分離された水素14は、水素排出路13aを介して水素回収容器(不図示)に回収される。なお、分離された水素14を次工程に移送してもよい。
【0083】
水素分離部13により水素14が分離された排ガス9は、ガス還流路17bを通して二酸化炭素・水分離部15に導入される。二酸化炭素・水分離部15では、水素14が分離された排ガス9から二酸化炭素及び水16が分離される。分離された二酸化炭素及び水16は、二酸化炭素・水排出路15aから排出される。
【0084】
二酸化炭素・水分離部15により二酸化炭素及び水16が分離された排ガス9は、ガス還流路17cを通して還流ガス18として流動層反応器2の下部に導入される。流動層反応器2の下部に導入された還流ガス18は、低級炭化水素供給路5aから供給される低級炭化水素3及び酸素供給路5bから供給される酸素4と混合され、分散板6を介して流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒1に供給される。
【0085】
このように、流動層反応器2内から排出された排ガス9は、排ガス路8及びガス還流路17a、17b、17cを通して、粒子分離部10、水素分離部13、及び二酸化炭素・水分離部15による分離工程を順次経た後、流動層反応器2内に還流される。排ガス9を還流することにより、排ガス9に含まれる未反応の低級炭化水素が再び分解反応に供される。
上記水素等の分離工程を経て温度が低下した還流ガス18は、分離工程を経る前の排ガス9と熱交換器を介して熱交換を行って加熱してもよい。例えば、500〜800℃の排ガス9との熱交換により、還流ガス18を400〜500℃に加熱することができる。熱交換は、図示しない熱交換器を介して行うことができる。
【0086】
なお、上記では、単一の分離部として二酸化炭素・水分離部15を設けていたが、これに代えて、排ガス9から二酸化炭素を分離する二酸化炭素分離部と、排ガス9から水(水蒸気)を分離する水分離部とを別個独立に設けるようにしてもよい。この場合、例えば、水素分離部13の、水素が分離された排ガス排出側に二酸化炭素分離部を設け、二酸化炭素分離部の、二酸化炭素が分離された排ガス排出側に水分離部を設ける。
【0087】
(実施形態3)
次に、他の実施形態を図3に基づいて説明する。
上記低級炭化水素の分解反応は、多段で構成してもよく、複数段の流動層反応器を設置し、上流の流動層反応器から排出される排ガスが下流の流動層反応器に順次導入されるように構成してもよい。これにより、各流動層反応器内において、排ガスに含まれる低級炭化水素の分解反応を行うことができ、原料となる低級炭化水素の損失を低減し、ナノ炭素を高い収率で製造することができる。本実施形態では、前段と後段の2段の流動層反応器を備えた場合について説明する。
【0088】
図3は、本実施形態のナノ炭素の製造装置を示す概略図である。図示するように、前段には、図1に示す構成と同様の流動層反応器2、補給部2a、低級炭化水素供給路5a、酸素供給路5b、分散板6、点火装置7、排ガス路8、粒子分離部10、ナノ炭素回収路10a、ナノ炭素回収容器11、及びナノ炭素排出路19を備えた構成が設けられている。なお、前記実施形態と同様の構成については同一の符号を付してその説明を省略又は簡略化する。
【0089】
前段の粒子分離部10の排ガス排出側には、水素分離部13及び二酸化炭素・水分離部15が順次介設された排ガス供給路40を介して後段の構成が接続されている。後段の構成は、基本的に前段の構成と同様であり、前段の構成と同様の流動層反応器42、補給部42a、酸素供給路45b、分散板46、点火装置47、排ガス路48、粒子分離部50、ナノ炭素回収路50a、ナノ炭素回収容器51、及びナノ炭素排出路59を備えている。
【0090】
後段の流動層反応器42の下部には、分散板46の下側の位置で排ガス供給路40が接続されており、排ガス供給路40を介して前段の流動層反応器2において生成された未反応の低級炭化水素が供給される。すなわち、流動層反応器42の下部には、水素分離部13により水素14が分離され、二酸化炭素・水分離部15により二酸化炭素及び水16が分離されて、主成分として未反応の低級炭化水素を含んだ排ガス9が供給される。
【0091】
さらに、後段の流動層反応器42の下部には、酸素供給路45bから酸素44が供給される。流動層反応器42の下部に供給された排ガス9と酸素44とは混合されて混合ガスとなり、分散板46により分散されて流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒41に供給される。分散板46に向かう混合ガスには、分散板46下の点火装置47により点火する。これにより、混合ガスの一部が燃焼し、低級炭化水素の分解反応が進行し得る温度に達した混合ガスが流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒41に供給される。なお、流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒41に供給する酸素44は、前段において流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒1に供給する酸素4よりも低い比率に設定する。
なお、流動層反応器42内には、前段の構成と同様に、流動層反応器42内における流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒41の減少に応じて、補給部42aにより流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒41が補給される。
【0092】
後段の流動層反応器42内では、前段の流動層反応器2内と同様に、流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒41に混合ガスが供給されることにより流動層が形成され、低級炭化水素と酸素との自己燃焼を伴う低級炭化水素の分解反応が進行する。こうして、後段の流動層反応器42内において、前段の流動層反応器2から排出された排ガス9に含まれる未反応の低級炭化水素の分解反応が行われ、ナノ炭素が生成されるとともに、水素、二酸化炭素、一酸化炭素、水(水蒸気)等を含む排ガスが生成される。
【0093】
後段の流動層反応器42内において生成されたナノ炭素は、前段の構成と同様に、ナノ炭素排出路59から排出される。排出されたナノ炭素60は、ナノ炭素回収容器51に回収される。
【0094】
また、流動層反応器42内において生成された排ガスは、前段の構成と同様に、排ガス路48から排出される。排出された排ガス49は、排ガス路48を通して粒子分離部50に導入される。粒子分離部50では、排ガス49からナノ炭素や流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒が分離される。分離されたナノ炭素52は、ナノ炭素回収容器51に回収される。ナノ炭素や流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒が分離された排ガス49は、排ガス排出路50bを通して水素分離部53に導入される。水素分離部53では、ナノ炭素や流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒が分離された排ガス49から水素54が分離される。分離された水素54は、水素排出路53aを介して水素回収容器(不図示)に回収される。なお、分離された水素54を次工程に移送してもよい。水素分離部53で水素が分離された排ガス49は、必要に応じて二酸化炭素及び水を分離する処理等が行われて回収される。
【0095】
なお、上記では、2段の流動層反応器2、42を備える場合について説明したが、3段以上の流動層反応器を備える場合も同様に構成することができる。
【0096】
(実施形態4)
次に、他の実施形態を図4に基づいて説明する。
上述のように流動層反応器2、42内において低級炭化水素の分解反応が行われる間、流動層を形成する流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒1、41は、飛散して排ガス9、49とともに流動層反応器2、42外に徐々に排出されていく。そこで、上記ナノ炭素の製造装置に対して、流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒1、41を流動層反応器2、42内に補充供給するスクリューフィーダーを設置してもよい。
本実施形態のナノ炭素の製造装置は、図2に示す構成に加えて、流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒を流動層反応器2内に補充供給するスクリューフィーダーを備えるものである。
【0097】
図4は、本実施形態のナノ炭素の製造装置を示す概略図である。図示するように、上記図2に示すナノ炭素の製造装置に対して、流動層反応器2の上部側から流動層反応器2内に流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒を補充供給するスクリューフィーダー21が設置されている。すなわち、スクリューフィーダー21は、本発明の補給部に相当する。なお、前記実施形態と同様の構成については同一の符号を付してその説明を省略又は簡略化する。
【0098】
スクリューフィーダー21は、スクリューフィーダー本体21aと、スクリューフィーダー本体21aに内蔵されたスクリュー21bとを備えている。スクリュー21bは、外部のモーター22によって回転駆動されるようになっている。
【0099】
また、スクリューフィーダー本体21aの上流側には、ロータリーフィーダー24が接続されている。ロータリーフィーダー24には、流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒1が収容されるホッパー25が接続されている。流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒1には、前記実施形態で説明したものを用いることができる。
【0100】
次に、上記図4に示すナノ炭素の製造装置の動作について説明する。
本実施形態では、上記図2を用いて説明したようにナノ炭素が製造される間、流動層反応器2内における流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒1の減少に応じて、スクリューフィーダー21により流動層反応器2内に流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒1を補充供給する。なお、スクリューフィーダー21により補充供給する流動触媒は、未使用の流動触媒、分解反応に供されてナノ炭素を含む流動触媒、及び分解反応に供されてナノ炭素を含む流動触媒を前処理した流動触媒のいずれであってもよく、また、これらの混合物であってもよい。
【0101】
スクリューフィーダー本体21a内の上流には、流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒1が収容されたホッパー25からロータリーフィーダー24を介して流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒1が供給される。ロータリーフィーダー24により、スクリューフィーダー本体21a内の上流に流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒1を安定的に定量供給することができる。上流に供給された流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒1は、スクリュー21bの回転によりスクリューフィーダー本体21a内の下流に搬送される。下流に搬送された流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒1は、下流端部から流動層反応器2内に供給される。スクリューフィーダー21による流動層反応器2内への流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒1の供給は、流動層反応器2内における流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒1の減少に応じて、一定の供給速度で連続的に行ってもよいし、定期的に又は不定期的に行ってもよい。
【0102】
なお、上記流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒1が収容されるホッパー25に代えて、スクリューフィーダー本体21aの上流側に、ロータリーフィーダー(不図示)を介して、流動触媒が収容されるホッパー(不図示)と、流動媒体が収容されるホッパー(不図示)とがそれぞれ別個に接続された構成としてもよい。この構成においては、スクリューフィーダー本体21a内の上流に流動触媒と流動媒体とが別個に供給される。上流に供給された流動触媒と流動媒体とは、スクリュー21bの回転により、混合されつつスクリューフィーダー本体21aの下流に搬送され、下流端部から流動層反応器2内に供給される。
【0103】
なお、上記では、図2に示すナノ炭素の製造装置に対してスクリューフィーダー21を設置した場合について説明したが、図1に示すナノ炭素の製造装置に対しても同様にスクリューフィーダー21を設置し、流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒1を補充供給するようにしてもよい。
【0104】
なお、上記実施形態では、スクリューフィーダーを流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒を補給する補給部として利用するものについて説明したが、スクリューフィーダー21を、前記流動触媒を搬送しつつ前記分解反応を行う移動反応床として用いることが可能である。このような形態では、スクリューフィーダー21に外部加熱あるいは内部加熱機構を備えるものとする。また、スクリューフィーダーに、該フィーダー内部に低級炭化水素を供給するガス供給部を接続する。
【0105】
以下、スクリューフィーダーを移動反応床として用いた上記の形態を図5に基づいて説明する。
スクリューフィーダー21のスクリューフィーダー本体21a外周には、スクリューフィーダー本体21aの周囲を囲むようにヒーター23が配置されている。
スクリューフィーダー本体21aの下流側には、該フィーダー本体21a内部に低級炭化水素を供給するガス供給部36が接続されている。
【0106】
また、スクリューフィーダー本体21aの上流側には、ロータリーフィーダー24が接続されている。ロータリーフィーダー24には、流動触媒が収容されるホッパー25が接続されている。この実施形態では、流動触媒として触媒金属微粒子がそのまま使用される。例えば、1〜500nmの大きさのニッケル微粒子、1〜500nmの大きさの鉄微粒子が用いられている。
【0107】
流動層反応器2には、該流動層反応器2内に流動媒体を補給する補給部2bが接続されている。流動媒体としては、例えば、100〜200μmの大きさの砂粒子、シリカ粒子、アルミナ粒子、又はこれらの混合物を用いることができる。なお、流動媒体を、前記スクリューフィーダー21によって、流動触媒とともに搬送するようにしてもよい。
【0108】
スクリューフィーダー本体21a内の上流側には、ホッパー25からロータリーフィーダー24を介して流動触媒が供給される。流動触媒は、スクリュー21bの回転によりスクリューフィーダー本体21a内の下流側に搬送される。スクリューフィーダー本体21a内には、流動触媒の搬送とともに、ガス供給部36から低級炭化水素が供給される。この間、スクリューフィーダー本体21a内は、ヒーター23により所定の温度に加熱される。
【0109】
スクリューフィーダー本体21a内では、低級炭化水素の分解反応が進行して、ナノ炭素が生成されて流動触媒と結合し、シードが生成される。
スクリューフィーダー21では、スクリューによる搬送速度、ヒーター23による加熱温度、低級炭化水素のスクリューフィーダー本体21a内への導入量などの調整によってシードの生成を制御することができる。
【0110】
流動層反応器2内には、スクリューフィーダー21から上記シード38が供給されるとともに、補給部2bから流動媒体(不図示)が供給される。シード38と流動媒体とが供給された流動層反応器2内では、低級炭化水素の分解反応が進行する。低級炭化水素の分解反応の進行に伴い、流動層反応器2内のシード38ではナノ炭素が成長する。流動層反応器2内では、その広い空間において、十分な時間をかけて、シード38を限界近くまで成長させることができる。
【0111】
上述のように移動反応床としてのスクリューフィーダー21と流動層反応器2とを組み合わせることにより、ナノ炭素の生成量を顕著に増加させることができる。さらに、移動反応床としてのスクリューフィーダー21では、ナノ炭素と触媒金属微粒子とが結合した粒子の生成条件を制御することにより、嵩密度の小さいシード38を生成させることができる。その嵩密度の小さいシード38は、流動層反応器2内で嵩密度の小さいナノ炭素に成長させることができる。その結果、移動反応床としてのスクリューフィーダー21を用いずに流動層反応器2内で直接生成させたナノ炭素と比較して、小さな嵩密度をもつナノ炭素を得ることができる。この小さな嵩密度をもつナノ炭素は、必然的に高い分散性をもち、ナノ炭素に残留する触媒金属微粒子を容易に除去することができる。このため、ナノ炭素の高コスト要因となっている分散処理及び精製処理に要するコストを大きく低減することができる。
【0112】
次に、上記図4に示すナノ炭素の製造装置における、ナノ炭素製造時のマテリアルバランスを図6に基づいて説明する。
図6は、ナノ炭素の製造装置における各機器の通過前後でのマテリアルバランスのシミュレーションによる一例を示す概略図である。なお、図6中、楕円内に示す数値は当該楕円が付された箇所における物質の温度(℃)を示し、長方形内に示す数値は当該長方形が付された箇所における物質の圧力(atm)を示し、平行四辺形内に示す数値は当該平行四辺形が付された箇所における物質の流量(Nm/h又はkg/h)を示している。
【0113】
流動層反応器2の下部には、流量20.5Nm/hのメタン等の低級炭化水素3と、流量4.45Nm/hの酸素4とが混合された混合ガス26が供給される。なお、低級炭化水素3は、酸素4と混合される前に、加熱器27により20℃から450℃に加熱されている。また、低級炭化水素3と酸素4とには、後述するように、水素、二酸化炭素等が分離された排ガス9が還流ガス18として混合される。還流ガス18は、水素の分離後流量65.4Nm/hの排ガスから二酸化炭素等を分離したものである。
【0114】
流動層反応器2の下部では、分散板6下の点火装置7により混合ガス26に点火され、混合ガス26の一部が燃焼する。これにより、混合ガス26の温度は、600℃以上の反応温度となる。こうして反応温度600℃以上になった混合ガス26は、分散板6により分散されて流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒1に供給される。流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒1に混合ガス26が供給されることにより、流動層反応器2内の流動層部に流動層が形成される。
流動層が形成されている流動層反応器2内には、流量0.7kg/hで供給される流動触媒28と、同じく流量0.7kg/hで供給される流動媒体29とが混合された混合物30が連続的に投入される。
【0115】
流動層反応器2内に形成された流動層部では、低級炭化水素と酸素との自己燃焼を伴う低級炭化水素の分解反応が進行する。これにより、ナノ炭素、並びに、水素、未反応の低級炭化水素、二酸化炭素、一酸化炭素、水(水蒸気)、及び窒素等を含む排ガスが生成される。分解反応が進行する流動層部の温度は600℃、圧力は5.6atmである。
【0116】
流動層反応器2内において生成されたナノ炭素は、流動層反応器2内のフリーボード部に到達してナノ炭素排出路19から排出される。ナノ炭素排出路19から排出されたナノ炭素20は、冷却器31により100℃に冷却され、約11.5kg/hの流量で回収される。
【0117】
また、流動層反応器2内において生成された排ガスは、排ガス路から排出される。排出された排ガス9の温度は600℃、圧力は5.2atmである。排出された排ガス9は、冷却器32により550℃に冷却された後、水素分離部13に供給される。冷却器32による冷却後、水素分離部13への供給前の排ガス9の圧力は、5.0atmである。
【0118】
水素分離部13では、水素透過膜により排ガス9から水素14が分離される。水素分離膜の水素透過側には、冷却器33を介して、水素の透過を促進するために水素透過側を減圧する真空ポンプ34が接続されている。水素透過膜を透過して排ガス9から分離された水素14の温度は550℃、圧力は0.56atmである。
分離された水素14は、冷却器33により50℃に冷却された後、真空ポンプ34の排出側から排出される。排出される水素14の温度は48℃、流量は約40Nm/hである。
【0119】
また、水素分離部13の排ガス排出側から排出された排ガス9は、二酸化炭素・水分離部15に流量65.4Nm/hで供給される。二酸化炭素・水分離部15では、低級炭化水素分離膜(メタン分離膜)により、排ガス9から二酸化炭素及び水(水蒸気)16が分離される。なお、低級炭化水素分離膜により、二酸化炭素及び水(水蒸気)16のほか、一酸化炭素、窒素等の低級炭化水素以外のガスが排ガス9から分離される。
【0120】
二酸化炭素・水分離部15の排ガス排出側から排出された排ガス9は、コンプレッサー35により、圧力5.6atm、温度577℃に昇圧、昇温される。昇温、昇圧された排ガス9は、還流ガス18として、上述のように、流動層反応器2の下部に供給される低級炭化水素3と酸素4とに混合される。
【0121】
こうして、ナノ炭素の製造を行う間、流動層反応器2内の流動層に、低級炭化水素3、酸素4、及び還流ガス18の混合ガス26が供給される。流動層は混合ガス26の燃焼温度に既に達しているため、点火装置7による点火を必要とすることなく混合ガス26が自己燃焼する。これにより、外部からのエネルギーの供給を必要とすることなく、低級炭化水素の分解反応によりナノ炭素が生成される。
【0122】
以上、本発明について上記実施形態に基づいて説明を行ったが、本発明としては、上記説明の内容に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りは適宜の変更が可能である。
【符号の説明】
【0123】
1 流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒
2 流動層反応器
2a 補給部
2b 補給部
3 低級炭化水素
4 酸素
5 ガス供給路
5a 低級炭化水素供給路
5b 酸素供給路
6 分散板
7 点火装置
8 排ガス路
9 排ガス
10 粒子分離部
11 ナノ炭素回収容器
12 ナノ炭素
13 水素分離部
14 水素
15 二酸化炭素・水分離部
16 二酸化炭素及び水
17a ガス還流路
17b ガス還流路
17c ガス還流路
18 還流ガス
20 ナノ炭素
21 スクリューフィーダー
36 ガス供給部
38 シード
41 流動触媒
42 流動層反応器
42a 補給部
44 酸素
45b 酸素供給路
46 分散板
48 排ガス路
49 排ガス
52 ナノ炭素
60 ナノ炭素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒に低級炭化水素と酸素とを供給して流動層を形成し、前記低級炭化水素と前記酸素との自己燃焼を伴う前記低級炭化水素の分解反応によって、ナノ炭素と水素とを生成することを特徴とするナノ炭素の製造方法。
【請求項2】
前記低級炭化水素及び前記酸素中における該酸素を25体積%以下の比率で供給することを特徴とする請求項1記載のナノ炭素の製造方法。
【請求項3】
前記分解反応における排ガスに含まれる二酸化炭素が10体積%以下であり、水が20体積%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のナノ炭素の製造方法。
【請求項4】
前記流動触媒は、ニッケル微粒子が1〜200μmの大きさのシリカ担体に50質量%以下、又は鉄微粒子が1〜200μmの大きさのアルミナ担体に50質量%以下担持されてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のナノ炭素の製造方法。
【請求項5】
前記流動触媒に、200μm以下の大きさの、砂粒子、シリカ粒子及びアルミナ粒子から選択される1種又は2種以上からなる前記流動媒体を添加して、前記流動触媒とともに前記流動層を形成することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のナノ炭素の製造方法。
【請求項6】
前記分解反応における温度を500〜1000℃とすることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のナノ炭素の製造方法。
【請求項7】
前記分解反応における圧力を10気圧以下に設定することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のナノ炭素の製造方法。
【請求項8】
前記流動触媒、又は前記流動媒体を併用する前記流動触媒に対して、前記低級炭化水素をメタン換算でSV値80,000NL/kg−catal./h以下の条件で供給することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のナノ炭素の製造方法。
【請求項9】
前記分解反応における排ガスに含まれる未反応の前記低級炭化水素を還流させて前記分解反応に供することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のナノ炭素の製造方法。
【請求項10】
前記分解反応を前段として、前記分解反応における排ガスと、前段で供給された酸素よりも低濃度の酸素とを、後段の流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒に供給して流動層を形成し、前記排ガスと前記酸素との自己燃焼を伴って前記排ガスに含まれる未反応の前記低級炭化水素を分解し、ナノ炭素と水素とをさらに生成することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のナノ炭素の製造方法。
【請求項11】
前記分解反応によって生成されるナノ炭素が、直径1〜500nm、長さ100μm以下であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のナノ炭素の製造方法。
【請求項12】
流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒が収容され、低級炭化水素と酸素とが供給されて自己燃焼可能な流動層反応器と、
前記流動層反応器に接続され、該流動層反応器内に低級炭化水素と酸素とを供給するガス供給部と、
前記流動層反応器に接続され、該流動層反応器内の排ガスを外部に排出する排ガス路と、
前記流動層反応器に接続され、該流動層反応器内に前記流動触媒、又は前記流動媒体を併用する流動触媒を補給する補給部と、を有することを特徴とするナノ炭素の製造装置。
【請求項13】
前記流動層反応器から排出される前記排ガスに含まれる未反応の前記低級炭化水素を還流させて前記分解反応に供するガス還流路を有することを特徴とする請求項12記載のナノ炭素の製造装置。
【請求項14】
前記排ガスから前記水素を分離する水素分離部を有し、前記ガス還流路が、前記水素分離部の、水素を分離した排ガス排出側に接続されていることを特徴とする請求項13記載のナノ炭素の製造装置。
【請求項15】
前記水素分離部の、水素を分離した排ガス排出側の下流に、二酸化炭素を分離する二酸化炭素分離部が設けられており、前記ガス還流路が、前記二酸化炭素分離部の、二酸化炭素を分離した排ガス排出側に接続されていることを特徴とする請求項14記載のナノ炭素の製造装置。
【請求項16】
前記二酸化炭素分離部の、二酸化炭素を分離した排ガス排出側の下流に、水を分離する水分離部が設けられており、前記ガス還流路が、前記水分離部の、水を分離した排ガス排出側に接続されていることを特徴とする請求項15記載のナノ炭素の製造装置。
【請求項17】
前記流動層反応器の後段に、流動触媒、又は流動媒体を併用する流動触媒が収容され、前記流動層反応器の排ガスと、酸素とが供給されて自己燃焼可能な第2流動層反応器を有し、
該第2流動層反応器に接続され、該第2流動層反応器内に前記排ガスと酸素とを供給する第2ガス供給部と、
前記第2流動層反応器に接続され、該第2流動層反応器内の排ガスを外部に排出する第2排ガス路と、
前記第2流動層反応器に接続され、該第2流動層反応器内に前記流動触媒、又は前記流動媒体を併用する流動触媒を補給する第2補給部と、を有することを特徴とする請求項12〜16のいずれかに記載のナノ炭素の製造装置。
【請求項18】
前記流動層反応器に収容される流動触媒、流動媒体、分解反応に供されてナノ炭素を含む触媒、分解反応に供されてナノ炭素を含む触媒に少なくともナノ炭素を除去する前処理を施した触媒のいずれか又は2以上の混合物を搬送するスクリューフィーダーを備えることを特徴とする請求項12〜17のいずれかに記載のナノ炭素の製造装置。
【請求項19】
前記流動層反応器と、前記流動触媒を搬送しつつ前記分解反応を行わせるスクリューフィーダー移動反応床とを備えることを特徴とする請求項12〜18のいずれかに記載のナノ炭素の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−236727(P2012−236727A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105267(P2011−105267)
【出願日】平成23年5月10日(2011.5.10)
【出願人】(000004215)株式会社日本製鋼所 (840)
【出願人】(504238806)国立大学法人北見工業大学 (80)
【Fターム(参考)】