説明

ナノ粒子−分散剤複合体、ナノ粒子分散液およびナノ粒子−マトリックス材料複合体

【課題】分散媒中での分散性と長期安定性に優れたナノ粒子−分散剤複合体、その製造方法、高濃度でも無色透明なナノ粒子分散液およびナノ粒子−マトリックス材料複合体を提供する。
【解決手段】ナノ粒子が、複素環カチオン基と、硫黄原子またはリン原子を含むオキソ酸基もしくはそのアニオン部とを含む分散剤で被覆されているナノ粒子−分散剤複合体。前記ナノ粒子−分散剤複合体が、分散媒中に分散されているナノ粒子分散液。前記ナノ粒子−分散剤複合体が、マトリックス材料中に分散されているナノ粒子−マトリックス材料複合体。前記分散剤の存在下で、ナノ粒子前駆体から前記分散剤で被覆されたナノ粒子を形成する工程を含むナノ粒子−分散剤複合体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ粒子−分散剤複合体、ナノ粒子分散液およびナノ粒子−マトリックス材料複合体に関する。また、本発明は、ナノ粒子−分散剤複合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無機化合物粒子を溶媒、樹脂、ガラス、セラミックスなどのマトリックス材料に分散させた複合材料は、光学的特性、熱的特性、機械的特性、電気的特性、磁気的特性など、マトリックス材料単独では達成できないような特性を具有できるため、様々な用途で実用化されている。
【0003】
特に、無機ナノ粒子を用いると、そのサイズに起因した特異な機能や特性を附与できる可能性があることから、無機ナノ粒子は様々な分野で注目を集めている。
例えば、高屈折率無機ナノ粒子をマトリックス材料に均一分散する場合、粒径が数十ナノメートルより大きいナノ粒子を用いると可視光が散乱して濁って見えてしまうが、数十ナノメートルより小さいナノ粒子を用いることにより、光散乱を抑制した透明性の高い高屈折率光学材料が得られると期待されている。このため無機ナノ粒子およびこれをフィルムやレンズなどに分散した光学材料が、光散乱量や屈折率などを調整可能な材料として検討されてきた。
【0004】
しかしながら実際には、ナノ粒子は、単独では非常に不安定であり、種々の物質で表面被覆しても容易に凝集して粒径が大きくなってしまうため、このような光学用途のナノ粒子−マトリックス複合材料の実現は困難であった。
【0005】
これを回避する手段として、非特許文献1には、金属酸化物を結晶化させると同時に表面修飾を行うin situ表面修飾ナノ粒子合成による金属酸化物ナノ粒子の製造方法が記載されている。しかしながら、数ナノメートルのナノ粒子およびその分散液が得られてはいるものの、数十重量%の高濃度においては、いずれの場合も無色透明なナノ粒子分散液は得られていない。
【0006】
また、高濃度のナノ粒子分散液として、特許文献1には、複素環型カチオン性基を有する分散剤で被覆された金属酸化物ナノ粒子の高濃度水分散液が記載されている。しかしながら、特許文献3には、ナノ粒子分散液は水中での分散性と長期安定性には優れる記載はあるが、有機溶媒やポリマー中での分散性と長期安定性については記載されていない。また、数十重量%以上の高濃度ナノ粒子分散液では、透明性と着色抑制が不十分であると考えられる。さらには、市販のナノ粒子を分散剤で被覆して分散する方法のため、特許文献1と同様に製造過程における凝集による粒径の増加が否めない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−254245号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】P.D.Cozzoliら,J.Am.Chem.Soc.,125,14539−14548(2003)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、この様な背景技術に鑑みてなされたものであり、分散媒中での分散性と長期安定性に優れたナノ粒子−分散剤複合体、高濃度でも無色透明なナノ粒子分散液およびナノ粒子−マトリックス材料複合体を提供することにある。
【0010】
また、本発明の目的は、上記ナノ粒子−分散剤複合体を容易に得ることができる製造方法を提供することにある。
また、本発明の目的は、上記の分散剤として用いることができる新規な含窒素芳香族複素環カチオン基含有リン化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するナノ粒子−分散剤複合体は、ナノ粒子が、下記式(1)又は(2)で表される分散剤のうち少なくとも一種で被覆されていることを特徴とする。
【0012】
【化1】

【0013】
(式中、Aは複素環カチオン基、Rは水素原子もしくは置換または無置換の炭素数1以上30以下のアルキル基、Rは単結合もしくは置換または無置換の炭素数1以上30以下のアルキレン基、Yは硫黄原子またはリン原子を含むオキソ酸基のアニオン部である。)
【0014】
【化2】

【0015】
(式中、Aは複素環カチオン基、Rは水素原子もしくは置換または無置換の炭素数1以上30以下のアルキル基、Rは単結合もしくは置換または無置換の炭素数1以上30以下のアルキレン基、YHは硫黄原子またはリン原子を含むオキソ酸基、Xはプロトン酸からプロトンが解離したアニオンである。)
【0016】
上記の課題を解決するナノ粒子分散液は、前記ナノ粒子−分散剤複合体が、分散媒中に分散されていることを特徴とする。
上記の課題を解決するナノ粒子−マトリックス材料複合体は、前記ナノ粒子−分散剤複合体が、マトリックス材料中に分散されていることを特徴とする。
【0017】
上記の課題を解決するナノ粒子−分散剤複合体の製造方法は、下記式(1)又は(2)で表される分散剤のうち少なくとも一種の存在下で、ナノ粒子前駆体から前記分散剤で被覆されたナノ粒子を形成する工程を含むことを特徴とする。
【0018】
【化3】

【0019】
(式中、Aは複素環カチオン基、Rは水素原子もしくは置換または無置換の炭素数1以上30以下のアルキル基、Rは単結合もしくは置換または無置換の炭素数1以上30以下のアルキレン基、Yは硫黄原子またはリン原子を含むオキソ酸基のアニオン部である。)
【0020】
【化4】

【0021】
(式中、Aは複素環カチオン基、Rは水素原子もしくは置換または無置換の炭素数1以上30以下のアルキル基、Rは単結合もしくは置換または無置換の炭素数1以上30以下のアルキレン基、YHは硫黄原子またはリン原子を含むオキソ酸基、Xはプロトン酸からプロトンが解離したアニオンである。)
【0022】
また、上記の課題を解決するナノ粒子−分散剤複合体の製造方法は、ナノ粒子と、上記式(1)又は(2)で表される分散剤のうち少なくとも一種を接触させて、前記ナノ粒子を分散剤で被覆する工程を含むことを特徴とする。
【0023】
また、本発明は、下記式(3)で表される含窒素芳香族複素環カチオン基含有リン化合物に係る。
【0024】
【化5】

【0025】
(式中、Arは含窒素芳香族複素環カチオン基、Bは単結合もしくは酸素原子、Rは水素原子もしくは置換または無置換の炭素数1以上30以下のアルキル基、Rは単結合もしくは置換または無置換の炭素数1以上30以下のアルキレン基、Rは水素原子もしくは置換または無置換の炭素数1以上10以下のアルキル基、Rは水素原子もしくは置換または無置換の炭素数1以上10以下のアルキル基、Xはプロトン酸からプロトンが解離したアニオンである。)
【0026】
また、本発明は、下記式(5)で表される化合物と、下記式(6)で表される化合物を反応させることを特徴とする上記の含窒素芳香族複素環カチオン基含有リン化合物の製造方法に係る。
【0027】
【化6】

【0028】
(式中、Arは含窒素芳香族複素環基、Rは水素原子もしくは置換または無置換の炭素数1以上30以下のアルキル基である。)
【0029】
【化7】

【0030】
(式中、Bは単結合もしくは酸素原子、Rは単結合もしくは置換または無置換の炭素数1以上30以下のアルキレン基、Rは水素原子もしくは置換または無置換の炭素数1以上10以下のアルキル基、Rは水素原子もしくは置換または無置換の炭素数1以上10以下のアルキル基、XはXとしてプロトン酸のアニオン部になりうる基である。)
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、分散媒中での分散性と長期安定性に優れたナノ粒子−分散剤複合体および高濃度でも無色透明なナノ粒子分散液およびナノ粒子−マトリックス材料複合体を提供することができる。
【0032】
また、本発明は、上記ナノ粒子−分散剤複合体を容易に得ることができる製造方法を提供することができる。
また、本発明は、上記の分散剤として用いることができる新規な含窒素芳香族複素環カチオン基含有リン化合物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
本発明に係るナノ粒子−分散剤複合体は、ナノ粒子が、下記式(1)又は(2)で表される分散剤のうち少なくとも一種で被覆されていることを特徴とする。
【0034】
【化8】

【0035】
(式中、Aは複素環カチオン基、Rは水素原子もしくは置換または無置換の炭素数1以上30以下のアルキル基、Rは単結合もしくは置換または無置換の炭素数1以上30以下のアルキレン基、Yは硫黄原子またはリン原子を含むオキソ酸基のアニオン部である。)
【0036】
【化9】

【0037】
(式中、Aは複素環カチオン基、Rは水素原子もしくは置換または無置換の炭素数1以上30以下のアルキル基、Rは単結合もしくは置換または無置換の炭素数1以上30以下のアルキレン基、YHは硫黄原子またはリン原子を含むオキソ酸基、Xはプロトン酸からプロトンが解離したアニオンである。)
【0038】
本発明において、分散剤とは、ナノ粒子の表面を取り囲むように被覆して、ナノ粒子との複合体を形成し、分散媒やマトリックス材料などへのナノ粒子の分散性を向上させる化合物である。なお、本明細書において、「被覆」とは「表面修飾」も含む概念である。
【0039】
前記式(1)又は(2)で表される化合物からなる分散剤の複素環カチオン基(A)としては、例えばイミダゾリウム基、ピラゾリウム基、トリアゾリウム基、ピリジニウム基などが挙げられる。このような複素環カチオン基を分散剤に導入することにより、ナノ粒子の外殻に正電荷層を形成することが容易になり、ナノ粒子−分散剤複合体相互の電荷反発作用によって凝集を抑制して分散性を向上することが可能になる。また、この種の官能基はマイクロ波を効率良く吸収するため、マイクロ波を用いたナノ粒子合成に用いると迅速な温度上昇、反応時間の短縮などの効果が表れやすい。
【0040】
前記分散剤の複素環カチオン基は、イミダゾリウムカチオンであることが好ましい。
前記分散剤のR基としては、水素原子もしくは炭素数1以上30以下のアルキル基が好ましく、より好ましくは炭素数4以上30以下のアルキル基、さらに好ましくは炭素数8以上30以下のアルキル基、特に好ましくは炭素数8以上20以下のアルキル基である。R基を長くすると、ナノ粒子−分散剤複合体相互の立体障害作用が大きくなり、凝集を抑制して分散性を向上することが可能になる。また、長くしすぎても原料が高価になるばかりで、立体障害作用は頭打ちになる。なお、前記アルキル基は、無置換であっても、重合性基、官能基、ハロゲン基、炭化水素基などのうち少なくとも一つの置換基で置換されていてもかまわない。また、前記アルキル基の骨格の一部に少なくとも一つの不飽和基が含まれていてもかまわない。
【0041】
前記分散剤のR基としては、Rは単結合もしくは置換または無置換の炭素数1以上30以下のアルキレン基が好ましく、より好ましくは炭素数2以上20以下のアルキレン基、さらに好ましくは炭素数2以上8以下のアルキレン基、特に好ましくは炭素数2以上4以下のアルキレン基である。ここで、R基の単結合とは、複素環カチオン基(A)とオキソ酸基またはそのアニオン部(YHまたはY)が直接結合していることを示している。なお、前記アルキレン基は、無置換であることが好ましいが、重合性基、官能基、ハロゲン基、炭化水素基などのうち少なくとも一つの置換基で置換されていてもかまわない。また、前記アルキレン基の骨格の一部に、少なくとも一つの不飽和基が含まれていてもかまわない。
【0042】
前記分散剤のYH基およびY基は、それぞれ硫黄原子またはリン原子を含むオキソ酸基およびそのアニオン部であることが好ましい。Yとしては、例えばSO、SO、OPO(OH)、OPO(OR)、PO(OH)、PO(OR)、PHO、PRO(Rは、例えば炭化水素基、ポリアルキルエーテル基など)などが挙げられる。これらのオキソ酸基はナノ粒子との相互作用が比較的強いため、分散剤による被覆が容易になり、ナノ粒子の安定性を向上させることが可能になる。また、可視光波長域に吸収をもつような錯体を形成しにくいため、ナノ粒子−分散剤複合体、ナノ粒子分散液、ナノ粒子−マトリックス材料複合体の着色を抑制することが可能になる。
【0043】
前記分散剤のYはSOおよびPO(OH)のうち少なくとも一種であることが好ましい。
前記分散剤のXとしては、プロトン酸のアニオン部であれば特に限定されないが、強プロトン酸のアニオン部が好適である。例えば、Cl、Br、I、BF、PF、AsF、SbFなどの無機強酸のアニオン部、CFSO、CFCFSO、CF(CFSO、CF(CFSO、CClSO、CHSOなどのスルホン酸のアニオン部、(CFSOなどのスルホンイミドのアニオン部などが挙げられる。なお、有機溶媒や樹脂にナノ粒子を分散させる場合には、上記したスルホン酸のアニオン部やスルホンイミドのアニオン部など、Xが有機プロトン酸のアニオン部であることが好ましい。
【0044】
本発明における分散剤を用いると、上記のような電荷反発機能と立体障害機能の相乗効果による高度な凝集抑制と分散性向上、マイクロ波吸収機能による迅速な温度上昇と反応時間の短縮、着色抑制機能のほかにも、分散剤分子全体として界面活性剤様の疎水成分−親水成分相溶機能による分散性の向上の効果が期待できることから、高濃度でも無色透明なナノ粒子分散液やナノ粒子−マトリックス材料複合体の合成が可能になる。
【0045】
前記式(1)又は(2)で表される化合物からなる分散剤は、具体的には例えば、スルホン酸アニオン基含有イミダゾリウム塩化合物(3−(3−ヘキサデシル−1−イミダゾリオ)−1−プロパンスルホネート等)、スルホン酸基含有イミダゾリウム塩化合物(3−(3−ヘキサデシル−1−イミダゾリオ)−1−プロパンスルホン酸トリフレート等)、スルホン酸アニオン基含有ピラゾリウム塩化合物(3−(2−ヘキサデシル−1−ピラゾリオ)−1−プロパンスルホネート等)、スルホン酸基含有ピラゾリウム塩化合物(3−(2−ヘキサデシル−1−ピラゾリオ)−1−プロパンスルホン酸トリフレート等)、スルホン酸アニオン基含有トリアゾリウム塩化合物(3−(3−オクチル−1−トリアゾリオ)−1−ブタンスルホネート等)、スルホン酸基含有トリアゾリウム塩化合物(3−(3−オクチル−1−トリアゾリオ)−1−ブタンスルホン酸トリフレート等)、スルホン酸アニオン基含有ピリジニウム塩化合物(3−(4−オクチル−1−ピリジニオ)−1−プロパンスルホネート等)、スルホン酸基含有ピリジニウム塩化合物(3−(4−オクチル−1−ピリジニオ)−1−プロパンスルホン酸トリフレート等)などが挙げられる。
【0046】
また、その他のオキソ酸基またはそのアニオン部を有する分散剤として、例えばホスホン酸アニオン基含有イミダゾリウム塩化合物、ホスホン酸基含有イミダゾリウム塩化合物、リン酸アニオン基含有イミダゾリウム塩化合物、リン酸基含有イミダゾリウム塩化合物、ホスホン酸アニオン基含有ピラゾリウム塩化合物、ホスホン酸基含有ピラゾリウム塩化合物、リン酸アニオン基含有ピラゾリウム塩化合物、リン酸基含有ピラゾリウム塩化合物、ホスホン酸アニオン基含有トリアゾリウム塩化合物、ホスホン酸基含有トリアゾリウム塩化合物、リン酸アニオン基含有トリアゾリウム塩化合物、リン酸基含有トリアゾリウム塩化合物、ホスホン酸アニオン基含有ピリジニウム塩化合物、ホスホン酸基含有ピリジニウム塩化合物、リン酸アニオン基含有ピリジニウム塩化合物、リン酸基含有ピリジニウム塩化合物などが挙げられる。
【0047】
前記分散剤は、複数種類組み合わせて用いてもかまわない。
本発明におけるナノ粒子としては、その種類は特に限定されないが、無色透明性が要求される光学用途の場合には酸化物粒子であることが好ましく、さらには金属酸化物粒子であることが好ましい。
【0048】
ナノ粒子としては、例えば、酸化チタン(TiO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化ニオブ(Nb)、酸化スズ(SnO)、酸化アンチモン(Sb)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ケイ素(SiO)、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化ランタン(La)、酸化セリウム(CeO)、酸化ハフニウム(HfO)などの金属酸化物が挙げられるが、その種類は特に限定されない。
【0049】
前記金属酸化物は、酸化チタン、酸化アルミニウムおよび酸化ジルコニウムから選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
前記ナノ粒子は、複数種類組み合わせて用いてもかまわない。
【0050】
前記ナノ粒子としては、光学レンズや光学フィルムのように高透明性が要求される場合、粒径が大きくなると光散乱の影響で透明性が低下するため、光の波長よりも十分に小さい粒径のナノ粒子を使用することが望まれる。したがって、本発明におけるナノ粒子の粒径(体積平均粒径)は50nm以下であることが好ましく、より好ましくは20nm以下、さらに好ましくは10nm以下である。本発明における最も好ましいナノ粒子の粒径は6nm以下である。
【0051】
本発明のナノ粒子−分散剤複合体に含有されるナノ粒子と、式(1)又は(2)で表される分散剤の含有割合は、ナノ粒子に対して、分散剤は好ましくは0.001倍モル以上100倍モル以下、さらに好ましくは0.01倍モル以上10倍モル以下である。このような割合にすると、ナノ粒子の表面が分散剤で適度に被覆され、分散媒またはマトリックス材料中のナノ粒子の分散性を向上させることが可能になる。
【0052】
本発明に係るナノ粒子分散液は、前記ナノ粒子−分散剤複合体が、分散媒中に分散されていることを特徴とする。
本発明における分散媒としては、前記ナノ粒子−分散剤複合体を均一に分散する液体であれば、特に制限されない。
【0053】
前記分散媒は、有機化合物であることが好ましい。ナノ粒子分散液にこのような分散媒を用いると、樹脂や重合性有機化合物との相溶が容易になるため、ナノ粒子−マトリックス材料複合体を製造する場合には、その製造工程を簡便にすることが可能になる。
【0054】
例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、オクタノールなどのアルコール類、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、トルエン、ヘキサン、クロロホルム、ジクロロメタンなどが挙げられる。
【0055】
本発明に係るナノ粒子分散液に含有されるナノ粒子−分散剤複合体の含有量は、好ましくは0.01重量%以上99重量%以下、さらに好ましくは0.01重量%以上60重量%以下である。
【0056】
前記ナノ粒子分散液からナノ粒子−分散剤複合体を単離する場合には、前記分散媒の沸点が減圧下で100℃以下であることが好ましく、さらには常圧で100℃以下であることが好ましい。
【0057】
前記ナノ粒子分散液を高屈折率液体などの長期安定性が求められる用途に用いる場合には、揮発性の低い分散媒であることが好ましい。
前記分散媒は、複数種類組み合わせて用いてもかまわない。
【0058】
さらには、前記分散媒は、重合性有機化合物であることが好ましい。このような分散媒を用いると、ナノ粒子分散液をそのまま重合工程に利用できるため、ナノ粒子−マトリックス材料複合体を製造する場合には、その製造工程を簡便にすることが可能になる。
【0059】
重合性有機化合物は、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル化合物や酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、(メタ)アクリロニトリル、ビニルフタルイミド、ビニルピロリドン、ビニルカルバゾール、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレンなどのビニル化合物などが挙げられる。
【0060】
また、前記重合性有機化合物として、重合性基を複数有する重合性有機化合物を用いることも可能である。例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリ
スリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、ビスフェノールジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、トリメチロールプロパンジ(メタ)アリルエーテル、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アリルエーテル、テトラ(メタ)アリルオキシエタン、ジビニルベンゼンなどが挙げられる。
【0061】
前記重合性有機化合物は、複数種類組み合わせて用いてもかまわない。
前記ナノ粒子分散液には、凝集や着色が起こらない範囲で、前記ナノ粒子−分散剤複合体、前記分散媒以外の化合物が含まれていてもかまわない。
【0062】
本発明に係るナノ粒子−マトリックス材料複合体は、前記ナノ粒子−分散剤複合体が、マトリックス材料中に分散されていることを特徴とする。
本発明におけるマトリックス材料としては、前記ナノ粒子−分散剤複合体を分散する固体であれば、特に制限されない。
【0063】
前記マトリックス材料は、樹脂であることが好ましい。ナノ粒子−マトリックス材料複合体にこのようなマトリックス材料を用いると、本発明のナノ粒子−分散剤複合体との相溶が容易になるため、ナノ粒子の凝集を抑制することが容易になり、透明性の高いナノ粒子−マトリックス材料複合体を得ることが可能になる。
【0064】
マトリックス材料は、例えば、ポリ(メチル(メタ)アクリレート)、ポリ(エチル(メタ)アクリレート)、ポリ(ブチル(メタ)アクリレート)、ポリ(シクロヘキシル(メタ)アクリレート)、ポリ(イソボルニル(メタ)アクリレート)、ポリ(フェニル(メタ)アクリレート)、ポリ(ベンジル(メタ)アクリレート)、ポリ(2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート)、ポリ(2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート)などの(メタ)アクリルポリマー類;ポリ酢酸ビニル、ポリプロピオン酸ビニル、ポリビニルフタルイミド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルカルバゾール、ポリスチレンなどのビニルポリマー類;ポリカーボネート、環状オレフィンポリマー、ポリオレフィン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリエステル、ポリイミド類、エポキシ樹脂などの光学用ポリマーなどが挙げられる。
【0065】
前記マトリックス材料は、共重合体、ポリマーブレンド、ポリマーアロイなどのようにして、複数種類組み合わせて用いてもかまわない。
前記ナノ粒子−マトリックス材料複合体には、凝集や着色が起こらない範囲で、前記ナノ粒子−分散剤複合体、前記マトリックス材料以外の化合物が含まれていてもかまわない。
【0066】
本発明に係るナノ粒子−マトリックス材料複合体に含有されるナノ粒子−分散剤複合体の含有量は、好ましくは0.01体積%以上99体積%以下、さらに好ましくは0.01体積%以上70体積%以下である。
【0067】
次に、本発明に係る第一および第二のナノ粒子−分散剤複合体の製造方法について説明する。
本発明に係る第一のナノ粒子−分散剤複合体の製造方法は、上記式(1)又は(2)で表される分散剤のうち少なくとも一種の存在下で、ナノ粒子前駆体から前記分散剤で被覆されたナノ粒子を形成する工程を含むことを特徴とする。
【0068】
本発明におけるナノ粒子前駆体としては、ナノ粒子の原料となるものであれば特に限定されない。例えば、ハロゲン化物、硫酸塩、硝酸塩、水酸化物などの無機化合物や、酢酸塩、アルコキシドなどの有機金属錯体などが挙げられる。なお、これらは一部加水分解していてもかまわない。また、複数種類組み合わせて用いてもかまわない。
【0069】
ナノ粒子前駆体の具体例としては、塩化チタン、臭化チタン、ヨウ化チタン、硫酸チタン、硝酸チタン、水酸化チタン、酢酸チタン、チタニウムメトキシド、チタニウムエトキシド、チタニウムイソプロポキシド、チタニウムブトキシド、ビス(アセチルアセトナト)チタニウムオキシド、塩化チタントリイソプロポキシド、酸化塩化チタンなどならびに前記化合物において金属種をチタンからジルコニウム、アルミニウム、ニオブ、スズ、アンチモン、亜鉛、ケイ素、インジウム、ランタン、セリウム、ハフニウムなどに変えたものが挙げられる。
【0070】
本発明のナノ粒子−分散剤複合体の製造方法に用いられるナノ粒子前駆体と、式(1)又は(2)で表される分散剤の割合は、ナノ粒子前駆体に対して、分散剤は好ましくは0.001倍モル以上100倍モル以下、さらに好ましくは0.01倍モル以上10倍モル以下である。このような割合にすると、ナノ粒子前駆体の表面が分散剤で適度に被覆され、ナノ粒子形成後に分散媒またはマトリックス材料中のナノ粒子の分散性を向上させることが可能になる。
【0071】
前記製造方法のナノ粒子前駆体から分散剤で被覆されたナノ粒子を形成する工程は、in situ合成方法により行なわれることが好ましい。in situ合成方法は、ナノ粒子前駆体を分散剤で被覆しながらナノ粒子を形成する方法である。
【0072】
このようなin situ合成方法を用いると、凝集が起こりやすいナノ粒子が形成される前に分散剤で被覆でき、粒径の小さいナノ粒子の形成が容易になるため、ナノ粒子分散液やナノ粒子−マトリックス材料複合体の透明性を向上させることが可能になる。
【0073】
本発明においては、エネルギーを加えることにより、ナノ粒子前駆体からナノ粒子を生成させることが好ましい。
また、マイクロ波を照射することにより、ナノ粒子前駆体からナノ粒子を生成させることが好ましい。このような工程を用いると、迅速な温度上昇や反応時間の短縮が容易になる。
【0074】
マイクロ波とは、一般に周波数300MHzから3THzの電磁波のことであり、本発明において使用する周波数はこの範囲内であれば特に制限されない。工業用途としては、ISM(産業・科学・医療用)バンドの使用が好ましく、さらには2.45GHzの使用が好ましい。
【0075】
マイクロ波の照射強度は、0.1から50W/cmであることが好ましい。照射強度が0.1W/cmより大きいと、反応温度まで加熱することが容易になる。また、照射強度が50W/cmより小さいと、反応温度のオーバーシュートを抑制できるため、反応温度を一定に保つことが容易になる。
【0076】
なお、マイクロ波の照射方法は特に制限されない。例えば、出力一定連続照射、出力可変連続照射、周期一定パルス照射、周期可変パルス照射、PID制御照射などが挙げられる。
【0077】
さらに、本発明の第二のナノ粒子−分散剤複合体の製造方法として、ナノ粒子と、上記式(1)又は(2)で表される分散剤のうち少なくとも一種を接触させて、前記ナノ粒子を分散剤で被覆する工程を含む方法を用いてもよい。
【0078】
具体的には、ナノ粒子と、分散剤を混合して接触させる。この際、ナノ粒子、分散剤以外の化合物が含まれていてもかまわない。また、この方法は特に限定されないが、例えばスターラー、ビーズミル、ペイントシェーカー、ミキサーなどにより行なわれる。この工程は、ナノ粒子凝集体をほぐして粒径の小さなナノ粒子を生成しながら行うこともできる。
【0079】
次に、本発明の含窒素芳香族複素環カチオン基含有リン化合物について詳細に説明する。
本発明の含窒素芳香族複素環カチオン基含有リン化合物(以降、「化合物」とも略記する。)は、下記式(3)で表される化合物である。
【0080】
【化10】

【0081】
(式中、Arは含窒素芳香族複素環カチオン基、Bは単結合もしくは酸素原子、Rは水素原子もしくは置換または無置換の炭素数1以上30以下のアルキル基、Rは単結合もしくは置換または無置換の炭素数1以上30以下のアルキレン基、Rは水素原子もしくは置換または無置換の炭素数1以上10以下のアルキル基、Rは水素原子もしくは置換または無置換の炭素数1以上10以下のアルキル基、Xはプロトン酸からプロトンが解離したアニオンである。)
【0082】
また、本発明の含窒素芳香族複素環カチオン基含有リン化合物は、下記式(4)で表される化合物である。すなわち、前記Bが単結合であり、それ以外の構造は式(3)の化合物と同じ化合物である。
【0083】
【化11】

【0084】
前記含窒素芳香族複素環カチオン基がイミダゾリウムカチオンであることが好ましい。
前記式(3)で表される化合物のB基としては、単結合もしくは酸素原子が好ましい。ここでB基の単結合とは、アルキレン基(R)とPO基が直接結合していることを示している。
【0085】
前記化合物の含窒素芳香族複素環カチオン基(Ar)としては、例えばイミダゾリウム基、ピラゾリウム基、トリアゾリウム基、ピリジニウム基などが挙げられる。これらは縮環していてもかまわない。
【0086】
前記化合物のR基としては、水素原子もしくは炭素数1以上30以下のアルキル基が好ましい。なお、前記アルキル基は直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、さらには、無置換であっても、重合性基、官能基、ハロゲン基、炭化水素などのうち少なくとも一つの置換基で置換されていてもかまわない。また、前記アルキル基の骨格の一部に少なくとも一つの不飽和基が含まれていてもかまわない。
【0087】
具体的には例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基などが挙げられる。
【0088】
前記化合物のR基としては、単結合もしくは置換または無置換の炭素数1以上30以下のアルキレン基が好ましい。ここでR基の単結合とは、含窒素複素環カチオン基(Ar)とB基とが直接結合していることを示している。なお、前記アルキレン基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、さらには、無置換であっても、重合性基、官能基、ハロゲン基、炭化水素などのうち少なくとも一つの置換基で置換されていてもかまわない。また、前記アルキル基の骨格の一部に少なくとも一つの不飽和基が含まれていてもかまわない。
【0089】
具体的には例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、シクロヘキシレン基、2−エチルヘキシレン基、オクチレン基、デシレン基、ドデシレン基、ヘキサデシレン基などが挙げられる。
【0090】
前記化合物のR基およびR基としては、水素原子もしくは置換または無置換の炭素数1以上10以下のアルキル基が好ましい。なお、前記アルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、さらには、無置換であっても、重合性基、官能基、ハロゲン基、炭化水素などのうち少なくとも一つの置換基で置換されていてもかまわない。また、前記アルキル基の骨格の一部に少なくとも一つの不飽和基が含まれていてもかまわない。
【0091】
具体的には例えば、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、デシル基などが挙げられる。
【0092】
前記R基およびR基は、同一構造であっても、互いに独立した構造であってもかまわない。
前記化合物のX基としては、プロトン酸のアニオン部であれば特に限定されないが、強プロトン酸のアニオン部が好適である。具体的には例えば、Cl、Br、I、BF、PF、AsF、SbFなどの無機強酸のアニオン部、CFSO、CFCFSO、CF(CFSO、CF(CFSO、CClSO、CHSOなどのスルホン酸のアニオン部、(CFSOなどのスルホンイミドのアニオン部などが挙げられる。
【0093】
前記化合物は、具体的には例えば、ホスホン酸基含有イミダゾリウム塩化合物(3−(3−ヘキサデシル−1−イミダゾリオ)−1−プロパンホスホン酸ブロミド)、リン酸基含有イミダゾリウム塩化合物(3−(3−ヘキサデシル−1−イミダゾリオ)−1−プロパンリン酸ブロミド)、ホスホン酸基含有ピラゾリウム塩化合物(3−(2−ヘキサデシル−1−ピラゾリオ)−1−プロパンホスホン酸ブロミド)、リン酸基含有ピラゾリウム塩化合物(3−(2−ヘキサデシル−1−ピラゾリオ)−1−プロパンリン酸ブロミド)、ホスホン酸基含有トリアゾリウム塩化合物(3−(3−ヘキサデシル−1−トリアゾリオ)−1−プロパンホスホン酸ブロミド)、リン酸基含有トリアゾリウム塩化合物(3−(3−ヘキサデシル−1−トリアゾリオ)−1−プロパンリン酸ブロミド)、ホスホン酸基含有ピリジニウム塩化合物(3−(4−ヘキサデシル−1−ピリジニオ)−1−プロパンホスホン酸ブロミド)、リン酸基含有ピリジニウム塩化合物(3−(4−ヘキサデシル−1−ピリジニオ)−1−プロパンリン酸ブロミド)などが挙げられる。
【0094】
本発明の式(3)で表される含窒素芳香族複素環カチオン基含有リン化合物は、下記式(5)で表される化合物と、下記式(6)で表される化合物を反応させることにより製造することができる。
【0095】
【化12】

【0096】
(式中、Arは含窒素芳香族複素環基、Rは水素原子もしくは置換または無置換の炭素数1以上30以下のアルキル基である。)
【0097】
【化13】

【0098】
(式中、Bは単結合もしくは酸素原子、Rは単結合もしくは置換または無置換の炭素数1以上30以下のアルキレン基、Rは水素原子もしくは置換または無置換の炭素数1以上10以下のアルキル基、Rは水素原子もしくは置換または無置換の炭素数1以上10以下のアルキル基、XはXとしてプロトン酸のアニオン部になりうる基である。)
【0099】
また、本発明の式(4)で表される含窒素芳香族複素環カチオン基含有リン化合物は、下記式(5)で表される化合物と、下記式(7)で表される化合物を反応させることにより製造することができる。
【0100】
【化14】

【0101】
【化15】

【0102】
式(7)は、式(6)のBが単結合となった以外は、式(6)と同様である。
【0103】
さらに、本発明の式(3)で表される含窒素芳香族複素環カチオン基含有リン化合物において、含窒素芳香族複素環カチオン基がイミダゾリウムカチオンである場合には、下記式(8)で表される化合物と下記式(6)で表される化合物を反応させることにより製造することができる。
【0104】
【化16】

【0105】
(式中、Imはイミダゾール基、Rは水素原子もしくは置換または無置換の炭素数1以上30以下のアルキル基である。)
【0106】
【化17】

【0107】
前記式(5)で表される化合物の含窒素芳香族複素環基(Ar)としては、例えばイミダゾール基、ピラゾール基、トリアゾール基、ピリジン基などが挙げられる。これらは縮環していてもかまわない。
【0108】
前記式(6)で表わされる化合物のR基、B基、のR基、R基およびR基の選択肢は、前述の式(3)の説明の個所に記載したように、本化合物から合成した後の式(3)に記載した選択肢と同様である。
【0109】
前記化合物のX基は、Xとしてプロトン酸のアニオン部になりうる基であれば特に限定されないが、強プロトン酸のアニオン部になりうる基が好適である。具体的には例えば、Cl、Br、I、BF、PF、AsF、SbFなどの無機強酸のアニオン部になりうる基、CFSO、CFCFSO、CF(CFSO、CF(CFSO、CClSO、CHSOなどのスルホン酸のアニオン部になりうる基、(CFSONなどのスルホンイミドのアニオン部になりうる基などが挙げられる。
【0110】
前記化合物(3)または(4)の合成原料である式(5)で表される化合物は、例えば、T.G.Traylorら,J.Am.Chem.Soc.,115,4808−4813(1993)、Y.R.Mirzaeiら,J.Org.Chem.,9340−9345(2002)の文献を参考にして、含窒素芳香族複素環化合物と臭化アルキルから容易に合成することができる。
【0111】
前記化合物(3)または(4)のもう一つの原料である式(6)で表される化合物は、例えば、C.E.Dreefら,Tetrahedron Lett.,29,1199−1202(1988)、Y.Segallら,J.Agric.Food Chem.,39,380−385(1991)の文献を参考にして、ジブロモアルカンとリン酸トリエステルとから容易に合成することができる。
【0112】
前記式(5)で表される化合物と、前記式(6)で表される化合物を反応させる製造方法において、式(5)で表される化合物の使用量は、式(6)で表される化合物1モルに対して、0.1モル以上10モル以下であることが好ましく、より好ましくは0.5モル以上3モル以下である。
【0113】
前記式(5)で表される化合物と、前記式(7)で表される化合物を反応させる製造方法において、式(5)で表される化合物の使用量は、式(7)で表される化合物1モルに対して、0.1モル以上10モル以下であることが好ましく、より好ましくは、0.5モル以上3モル以下である。
【0114】
前記式(8)で表される化合物と、前記式(6)で表される化合物を反応させる製造方法において、式(8)で表される化合物の使用量は、式(6)で表される化合物1モルに対して、0.1モル以上10モル以下であることが好ましく、より好ましくは、0.5モル以上3モル以下である。
【0115】
本反応は特に溶媒を用いなくてもよいが、必要に応じて溶媒中で実施することもできる。反応溶媒としては、反応に関与しないものであれば特に制限はなく、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレンなどの芳香族炭化水素類、ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、デカンなどの脂肪族炭化水素類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、ジメトキシエタンなどのエーテル類などが挙げられる。
【0116】
前記溶媒は、複数種類組み合わせて用いてもかまわない。
反応温度は、通常は使用する溶媒の沸点まで可能であるが、好ましくは100℃から300℃、より好ましくは120℃から250℃、さらに好ましくは140℃から220℃の範囲がよい。
【0117】
反応時間は、基質の反応性にもよるが、0.1から500時間である。反応液を高速液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィーなどで分析することにより、反応の進行状況を追跡し、反応の終点を見出すことができる。通常は1から240時間である。
【0118】
前記反応液には、反応の進行を妨げない範囲で、反応基質や溶媒以外の化合物が含まれていてもかまわない。
反応終了後は、反応析出物(生成物)のろ取、抽出、蒸留、再結晶、クロマトグラフィーなどにより、目的とする含窒素芳香族複素環カチオン基含有リン化合物を単離することができる。
【実施例1】
【0119】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
[分散剤の製造方法]
以下に、本発明における分散剤の代表的な合成方法を示す。ここに挙げられていない分散剤についても、同様の方法で合成した。
【0120】
(N−ヘキサデシルイミダゾールの製造方法)
文献(T.G.Traylorら,J.Am.Chem.Soc.,115,4808−4813(1993))を参考にして、イミダゾールと臭化ヘキサデシルからN−ヘキサデシルイミダゾールを合成した。
【0121】
合成例1
(3−(3−ヘキサデシル−1−イミダゾリオ)−1−プロパンスルホネート(M−1)の製造方法)
文献(M.Yoshizawaら,J.Mater.Chem.,11,1057−1067(2001))を参考にして、下記化学式(M−1)で表される3−(3−ヘキサデシル−1−イミダゾリオ)−1−プロパンスルホネート(M−1)を合成した。
【0122】
【化18】

【0123】
N−ヘキサデシルイミダゾール12.3gをアセトン80mlに溶解し、氷水浴で冷却した。ここに1,3−プロパンスルトン5.13gをアセトン80mlに溶解した溶液を滴下し、滴下終了後室温でかくはんした。反応終了後、析出物をろ取した。これを減圧乾燥して、上記化学式(M−1)で表される3−(3−ヘキサデシル−1−イミダゾリオ)−1−プロパンスルホネート(M−1)15.4gを得た。
【0124】
合成例2
(3−(3−ヘキサデシル−1−イミダゾリオ)−1−プロパンスルホン酸トリフレート(M−2)の製造方法)
文献(A.C.Coleら,J.Am.Chem.Soc.,124,5962−5963(2002))を参考にして、下記化学式(M−2)で表される3−(3−ヘキサデシル−1−イミダゾリオ)−1−プロパンスルホン酸トリフレート(M−2)を合成した。
【0125】
【化19】

【0126】
3−(3−ヘキサデシル−1−イミダゾリオ)−1−プロパンスルホネート(M−1)4.15gとトリフルオロメタンスルホン酸1.67gをトルエン50mlに溶解し、60℃で3時間かくはんした。反応終了後、析出物をろ取した。これを減圧乾燥して、上記化学式(M−2)で表される3−(3−ヘキサデシル−1−イミダゾリオ)−1−プロパンスルホン酸トリフレート(M−2)5.32gを得た。
【0127】
[ナノ粒子−分散剤複合体およびナノ粒子分散液の製造方法]
実施例1
3−(3−ヘキサデシル−1−イミダゾリオ)−1−プロパンスルホネート(M−1)0.20g(0.49mmol)を1−ブタノール(BuOH)36mlに溶解し、氷水浴で冷却した。ここに濃塩酸5.8mlとTiClOH(濃度5.3M、和光純薬工業社製)3.4ml(18mmol)をそれぞれゆっくり滴下し、無色透明な混合液を得た。マイクロ波反応装置(CEM社製、Discover LabMate)を用いて、マイクロ波の出力を最大30W(0.7W/cm)で調整しながら70℃まで速やかに昇温し、一定温度になってから60分間照射した。放冷後、微量の白色析出物を除去し、TiOナノ粒子分散液を得た。
【0128】
また、このTiOナノ粒子分散液から分散媒を留去し、高濃度TiOナノ粒子分散液を得た。
さらには、この高濃度TiOナノ粒子分散液を減圧下で乾燥することによって、ナノ粒子−分散剤複合体粉末を得た。
【0129】
実施例2
実施例1において、分散剤としてM−1の代わりに3−(3−オクチル−1−イミダゾリオ)−1−プロパンスルホネート(M−3)0.15g(0.49mmol)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてナノ粒子分散液およびナノ粒子−分散剤複合体粉末を得た。
【0130】
【化20】

【0131】
実施例3
実施例1において、分散剤としてM−1の代わりに3−(3−ヘキサデシル−1−イミダゾリオ)−1−プロパンスルホン酸トリフレート(M−2)0.28g(0.49mmol)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてナノ粒子分散液およびナノ粒子−分散剤複合体粉末を得た。
【0132】
実施例4
実施例1において、分散剤としてM−1の代わりに4−(3−ブチル−1−イミダゾリオ)−1−ブタンスルホン酸トリフレート(M−4)0.20g(0.49mmol)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてナノ粒子分散液およびナノ粒子−分散剤複合体粉末を得た。
【0133】
【化21】

【0134】
実施例5
実施例1において、分散剤としてM−1の代わりに4−(3−(2−エチルヘキシル)−1−イミダゾリオ)−1−ブタンスルホネート(M−5)0.15g(0.49mmol)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてナノ粒子分散液およびナノ粒子−分散剤複合体粉末を得た。
【0135】
【化22】

【0136】
実施例6
実施例1において、分散剤としてM−1の代わりに3−(3−ヘキサデシル−1−イミダゾリオ)−1−プロパンホスホン酸ブロミド(M−6)0.24g(0.49mmol)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてナノ粒子分散液およびナノ粒子−分散剤複合体粉末を得た。
【0137】
【化23】

【0138】
実施例7
実施例1において、分散剤としてM−1の代わりに2−(3−ヘキサデシル−1−イミダゾリオ)−1−エタンホスホン酸クロリド(M−7)0.21g(0.49mmol)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてナノ粒子分散液およびナノ粒子−分散剤複合体粉末を得た。
【0139】
【化24】

【0140】
実施例8
実施例1において、ナノ粒子前駆体としてTiClOHの代わりにTiOCl−(HCl)(濃度5.0M、Fluka社製)3.7ml(19mmol)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてナノ粒子分散液およびナノ粒子−分散剤複合体粉末を得た。
【0141】
実施例9
実施例1において、分散媒として1−ブタノールの代わりに2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)36mlを用いたこととマイクロ波の最大出力を最大60W(1.3W/cm)としたこと以外は、実施例1と同様にしてナノ粒子分散液およびナノ粒子−分散剤複合体粉末を得た。
【0142】
実施例10
実施例1において、エネルギー源としてマイクロ波の代わりに油浴を用いて加熱したこと以外は、実施例1と同様にしてナノ粒子分散液およびナノ粒子−分散剤複合体粉末を得た。
【0143】
比較例1
実施例1において、分散剤としてM−1の代わりにドデシルベンゼンスルホン酸(DBSA)0.16g(0.49mmol)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてナノ粒子分散液およびナノ粒子−分散剤複合体粉末を得た。
【0144】
【化25】

【0145】
比較例2
実施例1において、分散剤としてM−1の代わりに1−メチル−3−(10−カルボキシデシル)イミダゾリウムブロミド(MCDIB)0.17g(0.49mmol)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてナノ粒子分散液およびナノ粒子−分散剤複合体粉末を得た。
【0146】
【化26】

【0147】
実施例11
分散剤として3−(3−ヘキサデシル−1−イミダゾリオ)−1−プロパンスルホネート(M−1)0.20g(0.49mmol)をブタノール30mlに溶解した。ここにTiOナノ粒子水分散液(平均粒径13nm、濃度20重量%)1.0g(2.5mmol)を滴下し、1時間かくはんした。微量の白色析出物を除去し、ナノ粒子分散液を得た。高濃度ナノ粒子分散液およびナノ粒子−分散剤複合体粉末は、実施例1と同様にして得た。
【0148】
実施例12
実施例11において、水分散液としてTiOナノ粒子水分散液の代わりにZrOナノ粒子水分散液(平均粒径2nm、濃度10重量%)2.0g(1.6mmol)を用いたこと以外は、実施例11と同様にしてナノ粒子分散液およびナノ粒子−分散剤複合体を得た。
【0149】
実施例13
分散剤として3−(3−ヘキサデシル−1−イミダゾリオ)−1−プロパンスルホネート(M−1)7.2g(17mmol)をブタノール57.6gに溶解した。ここにAl粉末(平均一次粒径7nmの凝集体)7.2g(71mmol)を加え、3時間ビーズミル分散を行った。ビーズおよび微量の白色物を除去し、ナノ粒子分散液を得た。高濃度ナノ粒子分散液およびナノ粒子−分散剤複合体粉末は、実施例1と同様にして得た。
【0150】
比較例3
実施例11において、分散剤としてM−1の代わりにドデシルベンゼンスルホン酸(DBSA)0.16g(0.49mmol)を用いたこと以外は、実施例11と同様にしてナノ粒子分散液およびナノ粒子−分散剤複合体粉末を得た。
【0151】
[ナノ粒子−マトリックス材料複合体の製造方法]
以下に、本発明におけるナノ粒子−マトリックス材料複合体の合成方法の一例を示す。
【0152】
実施例14
実施例9のナノ粒子分散液から水分を除去した分散液0.5gに、イルガキュア184(長瀬産業社製)7mgを溶解した。溶存酸素を除去した後、紫外線照射装置(HOYA−SCHOTT社製、EX250−W)により30mW/cmの光を1分間照射した。
得られたナノ粒子−マトリックス材料複合体(厚さ約1mm)は無色透明であった。
【0153】
[ナノ粒子の粒径の測定方法]
得られた実施例および比較例のナノ粒子分散液中のナノ粒子の粒径(体積平均粒径)は、粒径測定装置(Malvern Instruments社製、Zetasizer Nano S)を用いて、動的光散乱法により測定した。表1にその結果を示す。
【0154】
以上の各実施例、比較例の仕様および評価結果をまとめて表1に示す。
【0155】
【表1】

【0156】
(注)
(1)低濃度ナノ粒子分散液は、約5重量%ナノ粒子分散液を表す。
(2)高濃度ナノ粒子分散液は、約30重量%ナノ粒子分散液を表す。
(3)透明性の評価は、厚さ5から10mmの試料を観察し、○(明らかに濁りが認められない)、△(濁りがあるようにも見える)、×(明らかに濁りが認められる)の3段階で行った。
(4)着色抑制の評価は、厚さ5から10mmの試料を観察し、○(明らかに着色が認められない)、△(着色があるようにも見える)、×(明らかに着色が認められる)の3段階で行った。
【0157】
実施例1から10では、低濃度だけでなく高濃度(濃縮液)でも無色透明なナノ粒子分散液が得られた。実施例11から13では、in situ合成でないので粒径が若干大きめになったが、透明性が良く着色のない分散液が得られた。実施例13では、ナノ粒子凝集体がほぐれてナノ粒子となり、透明性が良く着色のない分散液が得られた。実施例14では、本発明の無色透明な高濃度ナノ粒子分散液を用いてそのまま重合可能なため、無色透明なナノ粒子−マトリックス材料複合体が得られた。
【0158】
一方、比較例1では、低濃度では無色透明な分散液が得られたものの、高濃度になると若干の白濁と着色が起こった。本発明の分散剤により、高濃度でも優れた無色透明性を示すことがわかる。比較例2では、透明性や分散性には優れているものの、着色が起こった。比較例3では、透明性は良いものの、着色が起こった。本発明の分散剤により、高濃度でも透明性を保ちながら優れた着色抑制性を示すことがわかる。
【0159】
実施例15
N−ヘキサデシルイミダゾール1.46g(5mmol)と3−ブロモプロピルホスホン酸1.01g(5mmol)をトルエン30mlに溶解し、84時間還流した。反応終了後、析出物をろ取し、これを減圧乾燥して、下記式(9)で表される3−(3−ヘキサデシル−1−イミダゾリオ)−1−プロパンホスホン酸ブロミド(白色粉末、1.00g、収率40%)を得た。
【0160】
融点103℃
H NMR(400MHz,CDCl)δ 9.64(s,1H),8.92(s,2H),7.89(s,1H),7.50(s,1H),4.50(t,2H),4.28(t,2H),2.31−2.20(m,2H),1.95−1.87(m,4H),1.32−1.24(m,26H),0.88(t,3H)
【0161】
【化27】

【0162】
実施例16
N−ヘキサデシルイミダゾール5.00g(17mmol)と2−クロロエチルホスホン酸2.47g(17mmol)をo−キシレン75mlに溶解し、78時間還流した。反応終了後、反応液を濃縮し、フラッシュカラムクロマトグラフィー(メタノール/水)により精製して、下記式(10)で表される2−(3−ヘキサデシル−1−イミダゾリオ)−1−エタンホスホン酸クロリドを得た。実施例15と類似のH NMRスペクトルにより、構造を確認した。
【0163】
【化28】

【0164】
実施例17
実施例16において、合成原料として、N−ドデシルイミダゾール2.36g(10mmol)と3−ブロモプロピルホスホン酸2.03g(10mmol)、溶媒としてトルエン40mlを用いて74時間還流したこと以外は、実施例16と同様にして、下記式(11)で表される3−(3−ドデシル−1−イミダゾリオ)−1−プロパンホスホン酸ブロミドを得た。実施例15と類似のH NMRスペクトルにより、構造を確認した。
【0165】
【化29】

【0166】
実施例18
実施例17において、合成原料として、N−ドデシルイミダゾールの代わりにN−(2−エチルヘキシル)イミダゾール1.80g(10mmol)を用いて26時間還流したこと以外は、実施例17と同様にして、下記式(12)で表される3−(3−(2−エチルヘキシル)−1−イミダゾリオ)−1−プロパンホスホン酸ブロミドを得た。実施例15と類似のH NMRスペクトルにより、構造を確認した。
【0167】
【化30】

【0168】
実施例19
実施例17において、合成原料として、N−ドデシルイミダゾールの代わりにN−ブチルイミダゾール1.24g(10mmol)を用いて25時間還流したこと以外は、実施例17と同様にして、下記式(13)で表される3−(3−ブチル−1−イミダゾリオ)−1−プロパンホスホン酸ブロミドを得た。実施例15と類似のH NMRスペクトルにより、構造を確認した。
【0169】
【化31】

【0170】
実施例20
N−ヘキサデシルイミダゾール4.39g(15mmol)をトルエン40mlに溶解し、ここに2−ブロモエチルホスホン酸ジエチル3.68g(15mmol)をトルエン40mlに溶解した溶液を室温で滴下し、滴下終了後86時間還流した。反応終了後は、実施例16と同様にして、下記式(14)で表される2−(3−ヘキサデシル−1−イミダゾリオ)−1−エタンホスホン酸ジエチルブロミドを得た。実施例15と類似のH NMRスペクトルにより、構造を確認した。
【0171】
【化32】

【産業上の利用可能性】
【0172】
本発明のナノ粒子およびナノ粒子−分散剤複合体は、それ自体、その分散液およびそのマトリックス材料複合体などの状態で、光学材料、高屈折率液体材料、フォトニック結晶材料、誘電体材料、電極材料、電子・半導体材料、太陽電池材料、化粧品材料、色材、塗料、コーティング材料、触媒材料をはじめとする様々な用途に利用することができる。
【0173】
また、本発明の製造方法は、分散媒中での分散性と長期安定性に優れたナノ粒子−分散剤複合体および高濃度でも無色透明なナノ粒子分散液およびナノ粒子−マトリックス材料複合体を簡便かつ迅速に製造することができる。
【0174】
本発明の含窒素芳香族複素環カチオン基含有リン化合物は、ナノ粒子分散剤、表面修飾剤、界面活性剤、樹脂添加剤、難燃剤、抽出剤、医薬・農薬、イオン液体、電解液、潤滑剤、合成原料をはじめとする様々な用途に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ粒子が、下記式(1)又は(2)で表される分散剤のうち少なくとも一種で被覆されていることを特徴とするナノ粒子−分散剤複合体。
【化1】

(式中、Aは複素環カチオン基、Rは水素原子もしくは置換または無置換の炭素数1以上30以下のアルキル基、Rは単結合もしくは置換または無置換の炭素数1以上30以下のアルキレン基、Yは硫黄原子またはリン原子を含むオキソ酸基のアニオン部である。)
【化2】

(式中、Aは複素環カチオン基、Rは水素原子もしくは置換または無置換の炭素数1以上30以下のアルキル基、Rは単結合もしくは置換または無置換の炭素数1以上30以下のアルキレン基、YHは硫黄原子またはリン原子を含むオキソ酸基、Xはプロトン酸からプロトンが解離したアニオンである。)
【請求項2】
前記複素環カチオン基がイミダゾリウムカチオンであることを特徴とする請求項1に記載のナノ粒子−分散剤複合体。
【請求項3】
前記分散剤のYがSOおよびPO(OH)のうち少なくとも一種であることを特徴とする請求項1または2に記載のナノ粒子−分散剤複合体。
【請求項4】
前記ナノ粒子が金属酸化物粒子であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のナノ粒子−分散剤複合体。
【請求項5】
前記金属酸化物が、酸化チタン、酸化アルミニウムおよび酸化ジルコニウムから選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項4に記載のナノ粒子−分散剤複合体。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載のナノ粒子−分散剤複合体が、分散媒中に分散されていることを特徴とするナノ粒子分散液。
【請求項7】
前記分散媒が有機化合物であることを特徴とする請求項6に記載のナノ粒子分散液。
【請求項8】
前記分散媒が重合性有機化合物であることを特徴とする請求項6または7に記載のナノ粒子分散液。
【請求項9】
請求項1乃至5のいずれかに記載のナノ粒子−分散剤複合体が、マトリックス材料中に分散されていることを特徴とするナノ粒子−マトリックス材料複合体。
【請求項10】
下記式(1)又は(2)で表される分散剤のうち少なくとも一種の存在下で、ナノ粒子前駆体から前記分散剤で被覆されたナノ粒子を形成する工程を含むことを特徴とするナノ粒子−分散剤複合体の製造方法。
【化3】

(式中、Aは複素環カチオン基、Rは水素原子もしくは置換または無置換の炭素数1以上30以下のアルキル基、Rは単結合もしくは置換または無置換の炭素数1以上30以下のアルキレン基、Yは硫黄原子またはリン原子を含むオキソ酸基のアニオン部である。)
【化4】

(式中、Aは複素環カチオン基、Rは水素原子もしくは置換または無置換の炭素数1以上30以下のアルキル基、Rは単結合もしくは置換または無置換の炭素数1以上30以下のアルキレン基、YHは硫黄原子またはリン原子を含むオキソ酸基、Xはプロトン酸からプロトンが解離したアニオンである。)
【請求項11】
前記ナノ粒子前駆体から分散剤で被覆されたナノ粒子を形成する工程は、in situ合成方法により行なわれることを特徴とする請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
エネルギーを加えることにより、前記ナノ粒子前駆体からナノ粒子を生成させることを特徴とする請求項10または11に記載の製造方法。
【請求項13】
マイクロ波を照射することにより、前記ナノ粒子前駆体からナノ粒子を生成させることを特徴とする請求項10乃至12のいずれかに記載の製造方法。
【請求項14】
ナノ粒子と、下記式(1)又は(2)で表される分散剤のうち少なくとも一種を接触させて、前記ナノ粒子を分散剤で被覆する工程を含むことを特徴とするナノ粒子−分散剤複合体の製造方法。
【化5】

(式中、Aは複素環カチオン基、Rは水素原子もしくは置換または無置換の炭素数1以上30以下のアルキル基、Rは単結合もしくは置換または無置換の炭素数1以上30以下のアルキレン基、Yは硫黄原子またはリン原子を含むオキソ酸基のアニオン部である。)
【化6】

(式中、Aは複素環カチオン基、Rは水素原子もしくは置換または無置換の炭素数1以上30以下のアルキル基、Rは単結合もしくは置換または無置換の炭素数1以上30以下のアルキレン基、YHは硫黄原子またはリン原子を含むオキソ酸基、Xはプロトン酸からプロトンが解離したアニオンである。)
【請求項15】
ナノ粒子凝集体をほぐして粒径の小さなナノ粒子を生成しながら前記分散剤と接触させることを特徴とする請求項14に記載の製造方法。
【請求項16】
下記式(3)で表される含窒素芳香族複素環カチオン基含有リン化合物。
【化7】

(式中、Arは含窒素芳香族複素環カチオン基、Bは単結合もしくは酸素原子、Rは水素原子もしくは置換または無置換の炭素数1以上30以下のアルキル基、Rは単結合もしくは置換または無置換の炭素数1以上30以下のアルキレン基、Rは水素原子もしくは置換または無置換の炭素数1以上10以下のアルキル基、Rは水素原子もしくは置換または無置換の炭素数1以上10以下のアルキル基、Xはプロトン酸からプロトンが解離したアニオンである。)
【請求項17】
前記Bは、単結合である請求項16に記載の化合物。
【請求項18】
前記含窒素芳香族複素環カチオン基がイミダゾリウムカチオンであることを特徴とする請求項16又は17に記載の化合物。
【請求項19】
下記式(5)で表される化合物と、下記式(6)で表される化合物を反応させることを特徴とする請求項16乃至18のいずれかに記載の含窒素芳香族複素環カチオン基含有リン化合物の製造方法。
【化8】

(式中、Arは含窒素芳香族複素環基、Rは水素原子もしくは置換または無置換の炭素数1以上30以下のアルキル基である。)
【化9】

(式中、Bは単結合もしくは酸素原子、Rは単結合もしくは置換または無置換の炭素数1以上30以下のアルキレン基、Rは水素原子もしくは置換または無置換の炭素数1以上10以下のアルキル基、Rは水素原子もしくは置換または無置換の炭素数1以上10以下のアルキル基、XはXとしてプロトン酸のアニオン部になりうる基である。)
【請求項20】
前記Bは、単結合である請求項19に記載の製造方法。
【請求項21】
前記Arは、イミダゾール基である請求項19に記載の製造方法。

【公開番号】特開2010−51952(P2010−51952A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−158201(P2009−158201)
【出願日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】