説明

ナノ粒子堆積装置およびナノ粒子堆積方法

【課題】ナノ粒子を高いスループットにて堆積させることができるナノ粒子堆積技術を提供する。
【解決手段】真空チャンバー10には、基板保持部30に保持された基板Wの直下にKセル40が配置されている。Kセル40のるつぼ41にはナノ粒子の原材料となるコバルトが投入される。るつぼ41の開口部はガス噴出治具50のガス噴出部51によって覆われている。ガス噴出部51は上端にアパーチャ52を形成したテーパ面を有しており、その内側が蒸気発生空間45とされる。るつぼ41を加熱してコバルトの蒸気が発生している蒸気発生空間45にガス供給部60からヘリウムガスを供給する。ヘリウムガスはアパーチャ52から噴出されて基板Wへと向かう気流を形成する。コバルトの蒸気はヘリウムガスの気流によってクラスターを形成しつつ基板Wまで運搬される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェハーなどの基板上にナノ粒子を堆積させるナノ粒子堆積装置およびナノ粒子堆積方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LSIのBEOL(Back-End-of-Line)配線材としてカーボンナノチューブを用いようとする試みに急速に関心が高まりつつある。従来の配線材には銅(Cu)が一般的に用いられてきていたが、高性能化のためのパターン微細化に伴って配線部の電流密度が増大してきており、近い将来、銅では耐えられないほどの大きな電流密度が要求されるものと予測される。カーボンナノチューブは、グラファイトのシート(グラフェンシート)を円筒状に巻いた形状を有しており、その直径は数nm〜数十nmである。カーボンナノチューブは電気的にも機械的にも非常に優れた特性を有することが見出されており、銅に比較して1000倍近くもの大きな電流密度に耐え得るポテンシャルを有する材料である。それ故、配線材としてのカーボンナノチューブに関心が高まっているのである。
【0003】
基板上にカーボンナノチューブを形成するプロセスとしては、まず下地となる基板上に触媒となるコバルト(Co)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)などのナノ粒子を形成する必要がある。次いで、ナノ粒子の金属触媒上にカーボンナノチューブを成長させる。LSI用途のカーボンナノチューブの成長手法としては、比較的量産に向いている化学気相蒸着(CVD)法が主に検討されている。
【0004】
ナノ粒子とは、大きさが0.数nm〜数十nm程度の微小サイズの粒子である。基板上にカーボンナノチューブの触媒となるナノ粒子を形成する技術としては、例えば特許文献1に開示されるようなものが提案されている。特許文献1に開示される技術では、減圧ヘリウム(He)ガス雰囲気とされたナノ粒子生成室にコバルトターゲットを配置し、それにレーザ光を照射する。そうするとレーザアブレーションによって飛散したコバルト蒸気がヘリウムガスによって冷却されつつコバルトのクラスターが生成される。
【0005】
生成されたコバルトのクラスターはインパクターによってサイズ分級され、所望サイズのクラスターが選別される。その後、サイズ分級されたクラスターが複数段の差動排気室を経て基板上に到達し、ナノ粒子として基板上に堆積される。
【0006】
また、特許文献2には、ガスデポジション法によって基板上に触媒金属の微粒子を分散させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−31529号公報
【特許文献2】特開2004−51432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示される技術においては、生成されたクラスターのロスが大きく、最終的に基板に到達するコバルトのクラスターが非常に少なくなるという問題あった。その理由は、まず第1に、レーザアブレーションでは四方八方にコバルト蒸気が飛散するのであるが、特許文献1開示の技術においては特定の方向(インパクターの方向)に飛散したコバルト蒸気のみが利用されることとなり、他の方向に飛散したコバルト蒸気が無駄になるためである。次に第2の理由は、特許文献1開示の技術では、インパクターによってサイズ分級して所望サイズのクラスターを選別するようにしているが、実際には所望サイズのクラスターも相当量インパクターによって捕集されるというものである。さらに第3の理由は、サイズ分級されたクラスターが複数段の差動排気室を通過するときに、特に粘性流から中間流の領域では雰囲気ガスとともにクラスターも一緒に排気されてしまうというものである。
【0009】
これらの理由によって、クラスターのロスが非常に多くなって最終的に基板に到達するコバルトのクラスターは少なくなり、その結果ナノ粒子の堆積速度が非常に遅くなってスループットが産業応用の実用には供さない程度にまで低くなるという問題が生じていたのである。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、ナノ粒子を高いスループットにて堆積させることができるナノ粒子堆積装置およびナノ粒子堆積方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、基板上にナノ粒子を堆積させるナノ粒子堆積装置において、基板を収容するチャンバーと、前記チャンバー内にて基板を保持する保持手段と、前記チャンバー内を排気する排気手段と、前記保持手段に保持される基板に対向して前記チャンバー内に配置され、原材料を収納するるつぼと、前記るつぼを加熱するるつぼ加熱手段と、前記るつぼの開口部から前記保持手段に保持された基板へと向かう気流を形成する気流形成手段と、を備えることを特徴とする。
【0012】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明に係るナノ粒子堆積装置において、前記気流形成手段は、先端に形成されたアパーチャから前記るつぼの開口部に向けて拡がるテーパ面を有し、当該テーパ面によって前記るつぼの開口部を覆う気流噴出治具と、前記るつぼの開口部と前記テーパ面との間の蒸気発生空間に所定の気体を送給する気体供給手段と、を備えることを特徴とする。
【0013】
また、請求項3の発明は、請求項2の発明に係るナノ粒子堆積装置において、前記気体供給手段は、送給する気体を加熱する気体加熱手段を備えることを特徴とする。
【0014】
また、請求項4の発明は、請求項3の発明に係るナノ粒子堆積装置において、前記気体加熱手段は、前記保持手段に保持された基板の温度以上であって前記るつぼの加熱温度以下に気体を加熱することを特徴とする。
【0015】
また、請求項5の発明は、請求項2から請求項4のいずれかの発明に係るナノ粒子堆積装置において、前記気流噴出治具は、前記気体供給手段から送給された気体を一時的に溜める環状のガス溜め部と、前記蒸気発生空間の周囲に接続され、前記ガス溜め部と前記蒸気発生空間とを連通する連通経路と、をさらに備え、気体が通過する際の圧力損失は前記ガス溜め部よりも前記連通経路の方が大きいことを特徴とする。
【0016】
また、請求項6の発明は、請求項1から請求項5のいずれかの発明に係るナノ粒子堆積装置において、前記保持手段は前記るつぼの上方に基板を保持することを特徴とする。
【0017】
また、請求項7の発明は、請求項1から請求項6のいずれかの発明に係るナノ粒子堆積装置において、前記保持手段に保持された基板を冷却する冷却手段をさらに備えることを特徴とする。
【0018】
また、請求項8の発明は、請求項1から請求項7のいずれかの発明に係るナノ粒子堆積装置において、コンダクタンスを変化させて前記チャンバー内の圧力を調整する排気コンダクタンス調整手段をさらに備えることを特徴とする。
【0019】
また、請求項9の発明は、請求項1から請求項8のいずれかの発明に係るナノ粒子堆積装置において、前記原材料は、コバルト、ニッケルおよび鉄からなる群から選択された少なくとも一種の金属を含むことを特徴とする。
【0020】
また、請求項10の発明は、チャンバー内に収容した基板上にナノ粒子を堆積させるナノ粒子堆積方法において、前記チャンバー内を真空排気する排気工程と、前記チャンバー内にて原材料を収納したるつぼを加熱して原材料の蒸気を発生させるるつぼ加熱工程と、前記るつぼの開口部に所定の気体を送給して前記開口部から前記チャンバー内に収容された基板へと向かう気流を形成し、当該気流によって前記原材料の蒸気を冷却しつつ前記基板にまで運ぶ気流形成工程と、を備えることを特徴とする。
【0021】
また、請求項11の発明は、請求項10の発明に係るナノ粒子堆積方法において、前記るつぼの開口部に送給する気体を加熱する気体加熱工程をさらに備えることを特徴とする。
【0022】
また、請求項12の発明は、請求項11の発明に係るナノ粒子堆積方法において、前記るつぼの開口部に送給される気体は、前記基板の温度以上であって前記るつぼの加熱温度以下に加熱されることを特徴とする。
【0023】
また、請求項13の発明は、請求項10から請求項12のいずれかの発明に係るナノ粒子堆積方法において、前記基板を冷却する冷却工程を備えることを特徴とする。
【0024】
また、請求項14の発明は、請求項10から請求項13のいずれかの発明に係るナノ粒子堆積方法において、前記気流形成工程は、前記るつぼが加熱されて所定温度にまで到達した時点で開始されることを特徴とする。
【0025】
また、請求項15の発明は、請求項10から請求項14のいずれかの発明に係るナノ粒子堆積方法において、前記原材料は、コバルト、ニッケルおよび鉄からなる群から選択された少なくとも一種の金属を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
請求項1から請求項9の発明によれば、るつぼを加熱して発生した原材料の蒸気をるつぼの開口部から基板へと向かう気流によって基板まで運ぶことができるため、原材料の蒸気のロスが少なくなり、その分だけ原材料の蒸気の利用効率が高まってナノ粒子を高いスループットにて堆積させることができる。
【0027】
特に、請求項2の発明によれば、アパーチャを形成したテーパ面によってるつぼの開口部を覆い、るつぼの開口部とテーパ面との間の蒸気発生空間に所定の気体を送給するため、るつぼの開口部から基板へと向かう気流を確実に形成して原材料の蒸気を運ぶことができる。
【0028】
特に、請求項3の発明によれば、蒸気発生空間に送給する気体を加熱するため、原材料の蒸気から生成されるクラスターのサイズ分布を狭くしてバラツキを小さくすることができる。
【0029】
特に、請求項5の発明によれば、気体が通過する際の圧力損失はガス溜め部よりもガス溜め部と蒸気発生空間とを連通する連通経路の方が大きいため、蒸気発生空間の周囲から均一に気体が送給される。
【0030】
特に、請求項7の発明によれば、保持手段に保持された基板を冷却するため、熱泳動力によってナノ粒子の堆積効率がさらに高まる。
【0031】
また、請求項10から請求項15の発明によれば、るつぼを加熱して発生した原材料の蒸気をるつぼの開口部から基板へと向かう気流によって冷却しつつ基板まで運ぶため、原材料の蒸気のロスが少なくなり、その分だけ原材料の蒸気の利用効率が高まってナノ粒子を高いスループットにて堆積させることができる。
【0032】
特に、請求項11の発明によれば、るつぼの開口部に送給する気体を加熱するため、原材料の蒸気から生成されるクラスターのサイズ分布を狭くしてバラツキを小さくすることができる。
【0033】
特に、請求項13の発明によれば、基板を冷却するため、熱泳動力によってナノ粒子の堆積効率がさらに高まる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係るナノ粒子堆積装置の全体概略構成を示す図である。
【図2】Kセルおよびガス噴出治具を拡大した図である。
【図3】ガス噴出治具の平面図である。
【図4】図1のナノ粒子堆積装置の動作手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0036】
図1は、本発明に係るナノ粒子堆積装置1の全体概略構成を示す図である。なお、図1には説明の便宜のためZ軸方向を鉛直方向とし、XY平面を水平面とするXYZ直交座標系を付している。
【0037】
本発明に係るナノ粒子堆積装置1は、基板上にナノ粒子を堆積させる装置である。基板としては液晶用ガラス基板の表面にシリコン膜などを形成したものや半導体ウェハーを用いることができる。本発明に係るナノ粒子堆積装置1は、カーボンナノチューブの触媒として機能するナノ粒子を基板上に堆積させるのに好適である。ナノ粒子堆積装置1は、真空チャンバー10に、主として真空排気系20、基板保持部30、Kセル40、ガス噴出治具50およびガス供給部60を付設して構成されている。また、ナノ粒子堆積装置1は、装置に設けられた各動作機構を制御してナノ粒子の堆積処理を実行させる制御部90を備える。
【0038】
真空チャンバー10は、金属製(例えば、ステンレススチール製)の筐体であり、その内部は外部空間から完全にシールされた密閉空間とされている。真空排気系20は、可変コンダクタンスバルブ(VCV)22、ターボ分子ポンプ(TMP)23およびロータリーポンプ(RP)24を備えて構成され、真空チャンバー10内を排気して所定の圧力に維持する。ターボ分子ポンプ23およびロータリーポンプ24は可変コンダクタンスバルブ22を介して真空チャンバー10に接続されている。
【0039】
ロータリーポンプ24は、真空チャンバー10内が大気圧であっても作動させることが可能であり、真空排気工程における初期の粗引きに使用される。ターボ分子ポンプ23は、タービン翼を高速回転させることによって気体分子を強制的に排出する真空ポンプである。ターボ分子ポンプ23は、ロータリーポンプ24のみでは到達不可能な比較的高い真空度に真空チャンバー10内を維持することができる。但し、ターボ分子ポンプ23は大気圧に近い低真空では作動させることができないため、ターボ分子ポンプ23の後背側にロータリーポンプ24を設けている。
【0040】
可変コンダクタンスバルブ22は、コンダクタンス(配管抵抗の逆数)を変化させて真空チャンバー10から排出される気体の流量を制御することができる。ロータリーポンプ24およびターボ分子ポンプ23を作動させつつ可変コンダクタンスバルブ22のコンダクタンスを変化させることによって真空チャンバー10内を所定の真空度に維持することができる。即ち、可変コンダクタンスバルブ22は、コンダクタンスを変化させて真空チャンバー10内の圧力を調整するための排気コンダクタンス調整手段として機能する。
【0041】
基板保持部30は、基板ステージ31およびステージ駆動部32を備えて構成され、真空チャンバー10の内部において処理対象となる基板W(本実施形態では半導体ウェハー)を保持する。基板ステージ31は、図示を省略する複数の爪によって基板Wの端縁部を掛止或いは拘止することによって基板Wを保持する。基板ステージ31は、表面(ナノ粒子を堆積させる側の面)を下側に向けた水平姿勢にて基板Wを保持する。ステージ駆動部32は、真空チャンバー10の天井部に固設されており、基板ステージ31を水平面内にてX軸方向およびY軸方向に沿って二次元移動させる。ステージ駆動部32としては、ボールネジを使用したネジ送り機構やベルトとプーリとを使用したベルト送り機構などの公知の種々のXY駆動機構を採用することができる。なお、ステージ駆動部32は、基板ステージ31を水平面内にて回転させる回転駆動機構を備えていても良い。
【0042】
また、基板保持部30には、保持する基板Wを冷却する冷却機構が設けられている。すなわち、基板保持部30には、冷却媒体を流すための冷却配管35が設けられている。冷却配管35は、基板ステージ31の内部を巡るように配設されている。基板ステージ31の内部において、少なくとも基板保持部30に保持される基板Wに対向する領域には冷却配管35が蛇行して或いは渦巻き状に配設される。冷却配管35の両端はステージ駆動部32を貫通して真空チャンバー10の外側に設けられる。冷却配管35の一端側から供給された冷却媒体は基板ステージ31の内部を流れて冷却配管35の他端側から排出される。本実施形態では冷却媒体として液体窒素を使用する。
【0043】
Kセル(Knudsen cell:クヌーセンセル)40は、ナノ粒子の原材料となる金属(本実施形態ではコバルト)を加熱してその蒸気を発生させる。図2は、Kセル40およびガス噴出治具50を拡大した図である。Kセル40は、所定容量のるつぼ41およびるつぼ加熱ヒーター42を備える。原材料を収納するるつぼ41は、耐熱性および耐食性に優れた素材にて形成されており、本実施形態ではアルミナ(Al23)にて形成されている。また、るつぼ加熱ヒーター42としては例えばタンタルヒーターを用いることができる。
【0044】
Kセル40は、真空チャンバー10内において、基板ステージ31の直下(Z軸方向に沿った下方)に配置されている。そして、るつぼ41は、その開口部が直上(Z軸方向に沿った上方)を向くように、つまり開口部が基板ステージ31に対向するように設置されている。よって、基板保持部30はるつぼ41の上方に基板Wを保持し、その基板Wの表面にるつぼ41の開口部が対向することとなる。
【0045】
図3は、ガス噴出治具50の平面図である。ガス噴出治具50は、ガス噴出部51、連通経路53およびガス溜め部54を備えて構成される。ガス噴出治具50は、耐熱性に優れた金属またはセラミックスにて形成される。ガス噴出治具50は、一体形成されるものであっても良いし、別部品であるガス噴出部51、連通経路53およびガス溜め部54を組み立てたものであっても良い。
【0046】
ガス噴出部51は、円錐台形状を有しており、その先端(上端)には円形の開口であるアパーチャ52が形成されている。ガス噴出部51の本体部分は円錐台の側面となり、アパーチャ52からるつぼ41の開口部に向けて拡がるテーパ面である。アパーチャ52の径はφ0.01mm〜φ40mmであり、本実施形態ではるつぼ41の開口部の径がφ17mmであるのに対してアパーチャ52の径がそれよりも小径のφ10mmとされている。
【0047】
ガス噴出治具50がKセル40に装着されると、テーパ面であるガス噴出部51がるつぼ41の開口部上方を覆い、るつぼ41の開口部とガス噴出部51の内側面との間に蒸気発生空間45が形成される。蒸気発生空間45は、非開放空間(半密閉空間)である。すなわち、蒸気発生空間45に連通するガス流出入口はガス供給部60からのガス流入口たる連通経路53およびガス流出口たるアパーチャ52のみであり、それら以外から蒸気発生空間45に気体が流出入することは無い。
【0048】
連通経路53は、ガス噴出部51の下端全周に沿って円錐台形状に設けられている。連通経路53の上端側は蒸気発生空間45の周囲に全周にわたって開口する。ガス溜め部54は連通経路53の下端全周に沿って円環状に設けられている。連通経路53の下端側はガス溜め部54に接続される。よって、連通経路53はガス溜め部54と蒸気発生空間45とを連通接続する。ガス溜め部54の外周側面の相対向する位置に2つのガス導入口55が設けられている。これらガス導入口55を介してガス供給部60からガス噴出治具50にガス供給がなされる。なお、ガス導入口55は2つに限定されるものではなく、1つでもあっても良いし、3つ以上であっても良いが、数が多いほどガス溜め部54に均一にガス供給を行うことができる。
【0049】
ガス溜め部54に比較して連通経路53の配管抵抗は大きく、気体が通過する際の圧力損失はガス溜め部54よりも連通経路53の方が大きい。つまり、連通経路53は狭く、ガス溜め部54よりも連通経路53の方が気体が通過しにくい。このため、ガス供給部60から2つのガス導入口55を介して送給された気体は連通経路53を流れるよりも先に一旦ガス溜め部54内を充満するように流れる。そして、その後に連通経路53を通過して蒸気発生空間45へと流れ込む。すなわち、ガス溜め部54はガス供給に際してのバッファ空間として機能し、一時的にガス溜め部54に溜められた気体が連通経路53を通過して蒸気発生空間45に流入することとなるため、蒸気発生空間45の周辺から均一に気体が流れ込むこととなる。
【0050】
また、上端にアパーチャ52が形成されたガス噴出部51の下端に連通経路53が接続され、さらに連通経路53の下端にガス溜め部54が接続されている。従って、ガス供給部60から供給された気体はガス噴出治具50の下方から上方へと向かう気流を形成してアパーチャ52から上方に向けて噴出されることとなる。
【0051】
図1に戻り、Kセル40は、真空チャンバー10内に設けられたセルステージ47に設置されている。セルステージ47は、真空チャンバー10の底部に立設されたガイド部材48により摺動自在に案内されて上下方向に移動可能とされる。セルステージ47はセル昇降部43によって昇降される。セル昇降部43としては、エアシリンダなどの公知の種々の昇降機構を用いることができる。また、セルステージ47と真空チャンバー10の底部との間には伸縮自在の蛇腹49が設けられている。蛇腹49の上端はセルステージ47の下側に接続され、蛇腹49の下端は真空チャンバー10の底部に接続される。
【0052】
セル昇降部43がKセル40を上昇させるときには、セルステージ47がガイド部材48に案内されて上昇するとともに、蛇腹49が伸張する。また、セル昇降部43がKセル40を下降させるときには、セルステージ47がガイド部材48に案内されて下降するとともに、蛇腹49が収縮する。よって、Kセル40が昇降する際にも、蛇腹49が伸縮することによって真空チャンバー10内の気密状態が維持される。
【0053】
ガス供給部60は、ガス流量制御部61、ガスバルブ62およびガス加熱ヒーター63を備え、ガス噴出治具50のガス溜め部54に所定の気体(本実施形態ではヘリウムガス(He))を送給する。ガス流量制御部61は、図示を省略するガス供給源から導かれた気体の流量を調整する。ガス流量制御部61としては、例えばマスフローコントローラー(MFC)を用いることができる。ガス加熱ヒーター63は、ガス流量制御部61を通過してガス噴出治具50に送給される気体を加熱する。ガスバルブ62は、ガス流量制御部61とガス加熱ヒーター63との間に設けられ、ガス噴出治具50へのガス送給の有無を切り替える。
【0054】
ガス流量制御部61、ガスバルブ62およびガス加熱ヒーター63は真空チャンバー10の外部に設けられている。そして、ガス加熱ヒーター63とガス溜め部54のガス導入口55とが真空チャンバー10のチャンバー壁を貫通するガス配管によって連通接続されている。なお、Kセル40が昇降するため、ガス溜め部54に接続されるガス配管は可撓性のチューブなどを用いることが好ましい。
【0055】
ガス供給部60からガス噴出治具50に気体を送給することによって、ガス噴出治具50の下方から上方へと向かう気流が形成され、アパーチャ52から上方に向けて噴出される。この気流はるつぼ41の開口部周辺の蒸気発生空間45から基板保持部30に保持された基板Wへと向かうものである。すなわち、ガス噴出治具50およびガス供給部60によってるつぼ41の開口部の直近位置から基板保持部30に保持された基板Wへと向かう気流が形成されることとなる。
【0056】
また、基板ステージ31とガス噴出治具50のアパーチャ52との間はシャッター39によって遮蔽可能とされている。シャッター39は、図示を省略する駆動機構によって移動される。シャッター39が基板ステージ31とアパーチャ52との間の遮蔽位置(図1の位置)に移動すると、アパーチャ52から基板ステージ31に保持される基板Wへと向かう気流が遮断される。一方、シャッター39が待避位置に移動すると、アパーチャ52からの気流が基板Wに到達する。
【0057】
また、制御部90は、ナノ粒子堆積装置1に設けられた種々の動作機構を制御する。制御部90のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同様である。すなわち、制御部90は、各種演算処理を行うCPU、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAMおよび制御用ソフトウェアやデータなどを記憶しておく磁気ディスクを備えている。
【0058】
上述した構成以外にも、ナノ粒子堆積装置1には、真空装置としての公知の種々の機構が設けられている。例えば、真空チャンバー10には、内部空間の真空度(圧力)を計測するための圧力計15が付設されている。圧力計15によって計測された真空チャンバー10内の真空度は制御部90に伝達される。なお、圧力計15としては、真空チャンバー10内の圧力に応じて異なる種類のものを使い分けるようにしても良い。その他にも、真空チャンバー10には、基板Wを搬出入するための搬送開口部、Kセル40から発生する熱による温度上昇を防止するための冷却機構および内部空間を大気開放するためのリークバルブ(いずれも図示省略)などが形設されている。
【0059】
次に、上記構成を有するナノ粒子堆積装置1における動作手順について説明する。図4は、ナノ粒子堆積装置1の動作手順を示すフローチャートである。以下に示す動作手順は、制御部90がナノ粒子堆積装置1の各動作機構を制御することによって実行される。
【0060】
まず、処理対象となる基板Wが真空チャンバー10に搬入されて基板保持部30に保持される(ステップS1)。基板Wはその表面を下側に向けて基板ステージ31に保持される。真空チャンバー10内の真空度維持のため、真空チャンバー10にロードロックチャンバーを付設し、そのロードロックチャンバーを介して基板Wの搬出入を行うようにしても良い。
【0061】
次に、Kセル40のるつぼ41にナノ粒子の原材料となる金属(本実施形態ではコバルト)が投入される(ステップS2)。原材料が投入されると、ガス噴出治具50のアパーチャ52と基板保持部30に保持された基板Wとの間の距離がセル昇降部43によって1cm〜40cmの範囲で調整される。基板Wに堆積されるナノ粒子のサイズはこの距離にも依存する。
【0062】
続いて、真空チャンバー10内が密閉空間とされ、真空チャンバー10の真空排気が行われる(ステップS3)。真空チャンバー10内の真空排気は、真空排気系20によって実行される。真空チャンバー10内が大気圧の状態から真空排気を行う場合には、可変コンダクタンスバルブ22を全開にしつつロータリーポンプ24を作動させて粗引きを行った後、所定の圧力となってからターボ分子ポンプ23を作動させ、処理を開始する前の状態として真空チャンバー10内の真空度を概ね10-4Pa以下にまで到達させる。上述したロードロックチャンバーを介して基板Wの搬出入を行う場合には、真空チャンバー10内がある程度の真空度となっているため、ステップS3の初期段階からロータリーポンプ24およびターボ分子ポンプ23の双方を作動させて真空チャンバー10内の真空度を10-4Pa以下にしても良い。
【0063】
真空チャンバー10内の真空度が10-4Pa以下に到達した後、Kセル40のるつぼ41をるつぼ加熱ヒーター42によって所定の温度にまで加熱する(ステップS4)。るつぼ41の加熱温度は原材料となる金属の融点よりも若干低い温度である。例えば、本実施形態においては原材料としてコバルト(融点1495℃)を用いているため、るつぼ41を約1450℃にまで加熱する。また、Kセル40の加熱と並行してガス加熱ヒーター63の加熱を行うとともに、冷却配管35に液体窒素を流して基板Wを冷却する。そして、この状態にてるつぼ41の温度が所定の温度に到達するまで待機する(ステップS5)。
【0064】
るつぼ41が加熱されて昇温するのにともなってるつぼ41に投入された原材料の温度も上昇する。るつぼ41が目標温度である1450℃に到達したときには、原材料であるコバルトも1450℃にまで昇温している。この温度は融点より低いためコバルトは固体のままではあるが、減圧雰囲気で融点直下まで加熱されているため昇華によって固体から直接コバルトの蒸気が発生する。よって、ステップS5にてるつぼ41の温度が1450℃に到達した時点では、蒸気発生空間45にコバルトの蒸気が存在することとなる。
【0065】
るつぼ41の温度が上記所定温度に到達した時点でガスバルブ62を開放してガス供給部60からガス噴出治具50への気体送給を開始する(ステップS6)。本実施形態ではガス噴出治具50にヘリウムガスが送給される。送給するヘリウムガスの流量はガス流量制御部61によって20cc/分〜200cc/分の範囲に調整される。ガス供給部60から送給されたヘリウムガスは一旦ガス溜め部54に満たされてから連通経路53を通過して蒸気発生空間45に流入する。蒸気発生空間45内のコバルト蒸気はヘリウムガスによって冷却されつつ気相中にコバルトのクラスターを生成する。
【0066】
ここで、るつぼ41は、その開口部が上方を向くように設置されている。よって、コバルトの蒸気の蒸発方向は下方から上方へと向かう方向となる。一方、ガス供給部60から供給されたヘリウムガスはガス噴出治具50の下方から上方へと向かう気流を形成してアパーチャ52から上方に向けて噴出される。すなわち、コバルトの蒸気の蒸発方向に沿ってガス供給部60およびガス噴出治具50がヘリウムガスの気流を形成する。このため、ヘリウムガスの気流によるコバルトのクラスター生成および生成されたクラスターの運搬が円滑に行われる。
【0067】
また、るつぼ41の開口部はアパーチャ52を形成したテーパ面であるガス噴出部51によって覆われ、蒸気発生空間45は半密閉空間とされている。るつぼ41を加熱してコバルトの蒸気が発生している半密閉空間たる蒸気発生空間45に下方の連通経路53からヘリウムガスを供給すれば、そのヘリウムガスは上方のアパーチャ52に向かって円滑に流れる。このため、コバルトの蒸気を無駄なくヘリウムガスの気流に乗せて運ぶことができる。
【0068】
また、ガス噴出治具50に送給されるヘリウムガスはガス加熱ヒーター63によって加熱されている。ガス加熱ヒーター63によるヘリウムガスの加熱温度は、基板保持部30に保持された基板Wの温度以上であってるつぼ41の加熱温度以下である。本実施形態では、るつぼ41が1450℃に加熱されており、ガス加熱ヒーター63はガス噴出治具50に送給するヘリウムガスを1200℃に加熱している。
【0069】
本願発明者等は、コバルトの蒸気に加熱された雰囲気ガスを供給すると、生成されるコバルトのクラスターのサイズ分布が狭小化することを見出した。すなわち、コバルトの蒸気が発生している蒸気発生空間45に加熱されたヘリウムガスを供給すると、生成されるコバルトのクラスターのサイズ分布が狭くなり、サイズのバラツキが小さくなるのである。
【0070】
蒸気発生空間45に流入したヘリウムガスはコバルトのクラスターとともにガス噴出治具50のアパーチャ52から上方に向けて噴出される。その結果、真空チャンバー10内の圧力は急激に上昇するのであるが、その圧力が所定範囲内に収まるように真空排気系20によって排気が継続して実行される。具体的には、圧力計15によって計測される真空チャンバー10内の圧力が0.01Pa〜100Paの範囲内に収まるように制御部90がロータリーポンプ24およびターボ分子ポンプ23を作動させつつ可変コンダクタンスバルブ22のコンダクタンスを制御する。
【0071】
真空チャンバー10内の圧力が安定した後、シャッター39が待避位置に移動するとともに、ステージ駆動部32が基板ステージ31を水平面内にて二次元走査させる(ステップS7)。シャッター39が待避位置に移動することによってアパーチャ52と基板Wとの間が開放され、アパーチャ52から噴出された気流が基板Wに到達する。このときに、蒸気発生空間45内にて生成されたコバルトのクラスターもヘリウムガスの気流によって基板ステージ31に保持された基板Wにまで運搬される。基板Wにまで到達したコバルトのクラスターは、コバルトのナノ粒子として基板Wの表面に堆積する。但し、ヘリウムガスの気流が到達するエリアは基板Wの面積に比較して小さい。このため、ステージ駆動部32によって基板ステージ31を二次元走査させることにより、アパーチャ52に対して基板Wを平行に相対移動させて基板Wの全面にコバルトのナノ粒子が堆積されるようにしている。
【0072】
また、ナノ粒子の堆積処理を行うときには、冷却配管35に沸点が−196℃の液体窒素を流して基板Wを冷却している。一方、アパーチャ52から噴出されるヘリウムガスはガス加熱ヒーター63によって加熱されており、ヘリウムガスの温度は基板Wの近傍であっても基板Wの温度よりも高い。このため、基板Wの表面近傍では温度勾配が生じ、それによってコバルトのクラスターに熱泳動力が作用する。熱泳動力とは、温度勾配のある場に存在する微粒子が高温側から低温側へと移動するように受ける力である。従って、アパーチャ52からヘリウムガスとともに噴出されて基板Wの表面近傍にまで到達したコバルトのクラスターは基板Wの表面へと向かう力を受けることとなり、ナノ粒子の堆積効率が高まることとなる。
【0073】
所定時間が経過し、基板Wの全面に必要なコバルトのナノ粒子の堆積量が得られたら、シャッター39が遮蔽位置に移動するとともに、ステージ駆動部32が基板ステージ31を原点位置に復帰させる。そして、ガスバルブ62を閉止してガス供給部60からのヘリウムガスの流入を停止するとともに、可変コンダクタンスバルブ22を全開にして真空チャンバー10内を再度真空排気する。また、それと同時に、ガス加熱ヒーター63およびKセル40の加熱も停止する。続いて、可変コンダクタンスバルブ22を閉止して真空排気を停止するとともに、ガス供給部60から不活性ガスを供給して真空チャンバー10内を大気圧に復帰させる。そして、処理後の基板Wを真空チャンバー10から搬出してナノ粒子の堆積処理が完了する(ステップS8)。
【0074】
本実施形態のナノ粒子堆積装置1は、上端にアパーチャ52を形成したガス噴出部51によってるつぼ41の開口部を覆い、ガス噴出部51の内側面とるつぼ41の開口部との間に半密閉空間である蒸気発生空間45を形成している。そして、蒸気発生空間45にガス供給部60からヘリウムガスを供給することによってるつぼ41の開口部から基板保持部30に保持された基板Wへと向かう気流を形成している。一方、減圧雰囲気に置かれたるつぼ41にて融点直下まで加熱された原材料からは昇華によって固体から直接コバルトの蒸気が緩やかに発生する。従って、発生したコバルトの蒸気の大部分がヘリウムガスによって冷却されてクラスターを形成しつつ、ヘリウムガスの気流によって基板Wまで運搬されることとなる。よって、発生したコバルトの蒸気のロスが少なくなり、その分だけ基板Wに到達するコバルトのクラスターが増加し、基板Wにナノ粒子を高いスループットにて堆積させることができる。
【0075】
また、本実施形態のナノ粒子堆積装置1は、サイズ分級のためのインパクターを備えていない。このため、インパクターによって捕集されるクラスターは無く、発生したコバルトの蒸気のロスはさらに少なくなる。その結果、ナノ粒子をより高いスループットにて基板Wに堆積させることができる。
【0076】
ナノ粒子堆積装置1は、インパクターを備えていないものの、ガス加熱ヒーター63によって加熱したヘリウムガスをコバルトの蒸気が発生している蒸気発生空間45に供給している。ヘリウムガスの加熱温度を最適化すれば、生成されるコバルトのクラスターのサイズ分布を相当程度にまで狭小化することができる。すなわち、ナノ粒子堆積装置1は、インパクターを備えていないものの、供給するヘリウムガスを加熱することによってクラスターのサイズのバラツキを小さくしてインパクターを用いるのと同様の効果を得ることができるのである。
【0077】
また、ナノ粒子堆積装置1は、ガス噴出治具50と基板Wとの間に差動排気室を設けていない。このため、差動排気によってヘリウムガスとともに排気されるクラスターは存在せず、発生したコバルトの蒸気のロスはさらに少なくなる。その結果、ナノ粒子をより高いスループットにて基板Wに堆積させることができる。
【0078】
さらに、ナノ粒子堆積装置1は、基板Wを冷却しつつナノ粒子の堆積処理を行っている。これにより、アパーチャ52からヘリウムガスとともに噴出されて基板Wの表面近傍にまで到達したコバルトのクラスターは基板Wの表面へと向かう熱泳動力を受けることとなり、ナノ粒子の堆積効率が高まる。その結果、ナノ粒子をより高いスループットにて基板Wに堆積させることができる。
【0079】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この発明はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態においては、ナノ粒子の原材料となる金属としてコバルトを用いていたが、これに限定されるものではなく、種々の金属を用いることができる。カーボンナノチューブ形成の触媒として機能するナノ粒子を基板W上に堆積させるのであれば、コバルト、ニッケル(融点1455℃)、鉄(融点1535℃)からなる群から選択された少なくとも一種の金属を原材料とするのが好適である。さらに、コバルト、ニッケル、鉄などの主成分に、モリブデン(Mo)、チタン(Ti)、チタンナイトライド(TiN)、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)、アルミナ(Al23)を微量に添加するようにしても良い。
【0080】
また、上記実施形態においては、ガス供給部60からガス噴出治具50にヘリウムガスを送給するようにしていたが、これに限定されるものではなく、アルゴンガス(Ar)、キセノンガス(Xe)、窒素ガス(N2)などの不活性ガスであれば良い。
【0081】
また、上記実施形態においては、冷却配管35に液体窒素を流して基板Wを冷却するようにしていたが、これに代えて冷却水などのその他の冷媒を流して基板Wを冷却するようにしても良い。或いは、ペルチェ素子によって基板Wを冷却するようにしても良い。
【0082】
また、上記実施形態においては、真空排気系20をターボ分子ポンプ23およびロータリーポンプ24の組み合わせによって構成していたが、これに限定されるものではなく、真空チャンバー10内を10-4Pa以下にまで減圧できるものであれば、例えば拡散ポンプ(DP)とロータリーポンプとの組み合わせによって構成するようにしても良い。
【0083】
また、上記実施形態においては、基板ステージ31の近傍にシャッター39を配置していたが、これに代えてガス噴出治具50のアパーチャ52の直上にシャッターを設けるようにしても良い。
【符号の説明】
【0084】
1 ナノ粒子堆積装置
10 真空チャンバー
20 真空排気系
22 可変コンダクタンスバルブ
23 ターボ分子ポンプ
24 ロータリーポンプ
30 基板保持部
31 基板ステージ
32 ステージ駆動部
35 冷却配管
39 シャッター
40 Kセル
41 るつぼ
42 るつぼ加熱ヒーター
45 蒸気発生空間
50 ガス噴出治具
51 ガス噴出部
52 アパーチャ
53 連通経路
54 ガス溜め部
60 ガス供給部
61 ガス流量制御部
63 ガス加熱ヒーター
90 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にナノ粒子を堆積させるナノ粒子堆積装置であって、
基板を収容するチャンバーと、
前記チャンバー内にて基板を保持する保持手段と、
前記チャンバー内を排気する排気手段と、
前記保持手段に保持される基板に対向して前記チャンバー内に配置され、原材料を収納するるつぼと、
前記るつぼを加熱するるつぼ加熱手段と、
前記るつぼの開口部から前記保持手段に保持された基板へと向かう気流を形成する気流形成手段と、
を備えることを特徴とするナノ粒子堆積装置。
【請求項2】
請求項1記載のナノ粒子堆積装置において、
前記気流形成手段は、
先端に形成されたアパーチャから前記るつぼの開口部に向けて拡がるテーパ面を有し、当該テーパ面によって前記るつぼの開口部を覆う気流噴出治具と、
前記るつぼの開口部と前記テーパ面との間の蒸気発生空間に所定の気体を送給する気体供給手段と、
を備えることを特徴とするナノ粒子堆積装置。
【請求項3】
請求項2記載のナノ粒子堆積装置において、
前記気体供給手段は、送給する気体を加熱する気体加熱手段を備えることを特徴とするナノ粒子堆積装置。
【請求項4】
請求項3記載のナノ粒子堆積装置において、
前記気体加熱手段は、前記保持手段に保持された基板の温度以上であって前記るつぼの加熱温度以下に気体を加熱することを特徴とするナノ粒子堆積装置。
【請求項5】
請求項2から請求項4のいずれかに記載のナノ粒子堆積装置において、
前記気流噴出治具は、
前記気体供給手段から送給された気体を一時的に溜める環状のガス溜め部と、
前記蒸気発生空間の周囲に接続され、前記ガス溜め部と前記蒸気発生空間とを連通する連通経路と、
をさらに備え、
気体が通過する際の圧力損失は前記ガス溜め部よりも前記連通経路の方が大きいことを特徴とするナノ粒子堆積装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載のナノ粒子堆積装置において、
前記保持手段は前記るつぼの上方に基板を保持することを特徴とするナノ粒子堆積装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載のナノ粒子堆積装置において、
前記保持手段に保持された基板を冷却する冷却手段をさらに備えることを特徴とするナノ粒子堆積装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかに記載のナノ粒子堆積装置において、
コンダクタンスを変化させて前記チャンバー内の圧力を調整する排気コンダクタンス調整手段をさらに備えることを特徴とするナノ粒子堆積装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれかに記載のナノ粒子堆積装置において、
前記原材料は、コバルト、ニッケルおよび鉄からなる群から選択された少なくとも一種の金属を含むことを特徴とするナノ粒子堆積装置。
【請求項10】
チャンバー内に収容した基板上にナノ粒子を堆積させるナノ粒子堆積方法であって、
前記チャンバー内を真空排気する排気工程と、
前記チャンバー内にて原材料を収納したるつぼを加熱して原材料の蒸気を発生させるるつぼ加熱工程と、
前記るつぼの開口部に所定の気体を送給して前記開口部から前記チャンバー内に収容された基板へと向かう気流を形成し、当該気流によって前記原材料の蒸気を冷却しつつ前記基板にまで運ぶ気流形成工程と、
を備えることを特徴とするナノ粒子堆積方法。
【請求項11】
請求項10記載のナノ粒子堆積方法において、
前記るつぼの開口部に送給する気体を加熱する気体加熱工程をさらに備えることを特徴とするナノ粒子堆積方法。
【請求項12】
請求項11記載のナノ粒子堆積方法において、
前記るつぼの開口部に送給される気体は、前記基板の温度以上であって前記るつぼの加熱温度以下に加熱されることを特徴とするナノ粒子堆積方法。
【請求項13】
請求項10から請求項12のいずれかに記載のナノ粒子堆積方法において、
前記基板を冷却する冷却工程を備えることを特徴とするナノ粒子堆積方法。
【請求項14】
請求項10から請求項13のいずれかに記載のナノ粒子堆積方法において、
前記気流形成工程は、前記るつぼが加熱されて所定温度にまで到達した時点で開始されることを特徴とするナノ粒子堆積方法。
【請求項15】
請求項10から請求項14のいずれかに記載のナノ粒子堆積方法において、
前記原材料は、コバルト、ニッケルおよび鉄からなる群から選択された少なくとも一種の金属を含むことを特徴とするナノ粒子堆積方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−174271(P2010−174271A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−15575(P2009−15575)
【出願日】平成21年1月27日(2009.1.27)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】