説明

ナノ素材を用いた複合繊維フィルター、ナノ素材を用いた複合繊維フィルターの製造装置及びナノ素材を用いた複合繊維フィルターの製造方法

【課題】ナノ繊維とマイクロ繊維を複合させて高効率、高機能性及び抗菌性を有する複合繊維フィルターを製造する装置及び方法を提供する。
【解決手段】本発明は、複合繊維フィルターを製造するにあたり、一端が接地されて回転駆動される導電性材質の成形棒上に、溶融紡糸機で溶融紡糸してマイクロ繊維糸からなるマイクロ繊維層を形成し、前記マイクロ繊維層上に、電界紡糸可能な一定の誘電率を有する高分子樹脂溶液を電界紡糸機で電界紡糸してナノ繊維糸からなるナノ繊維層を積層形成することで、高効率及び高機能の複合繊維フィルターを製造し、さらにマイクロ繊維層のマイクロ繊維糸とナノ繊維層のナノ繊維糸とに銀ナノ成分を含ませて抗菌性機能を持たせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ素材を用いた複合繊維フィルター、ナノ素材を用いた複合繊維フィルターの製造装置及びナノ素材を用いた複合繊維フィルターの製造方法に係り、特に、ナノ繊維とマイクロ繊維を複合させて高効率、高機能性及び抗菌性を有する複合繊維フィルターを製造する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常製造されているほとんどのマイクロ繊維は、溶融紡糸(melt spinning)、乾式紡糸(dry spinning)、湿式紡糸(wet spinning)などのような紡糸方式、つまり高分子溶液を機械的な力で微細孔を通して強制圧出紡糸させることで、製造される。しかし、このような方式で製造されるマイクロ繊維の直径は、約5〜500μmであり、直径が1μm以下であるナノオーダーの繊維を製造することは容易ではない。そのため、このようなマイクロ繊維からなるフィルターは、マイクロサイズの汚染粒子をろ過(filtering)することはできるが、ナノサイズの微細汚染粒子をろ過することは事実上不可能である。
【0003】
このため、ナノサイズの繊維(不織布)を製造するための多様な方式が、開発使用されているのが現状である。有機ナノ繊維を形成する方法としては、例えば、ブロックセグメントによるナノ構造の物質形成、自己組織化(self−assembly)によるナノ構造の物質形成、シリカ触媒下で重合によるナノ繊維形成、溶融紡糸後炭化工程によるナノ繊維形成、高分子溶液または溶融体の電界紡糸によるナノ繊維形成などを挙げることができる。
【0004】
このように製造されるナノ繊維を用いてナノ繊維フィルターを実現する場合、マイクロ繊維フィルターに比べて、非ターゲット(non−target)が極めて大きく、表面官能基(Surface Functional Groups)に対する柔軟性に優れ、ナノレベルの気孔を有するため、有害な粒子やガスなどを効率的に除去することができる。
【0005】
しかし、ナノ繊維を用いたフィルターは、生産コストが極めて高く、生産のための様々な条件などを合わせるのが難しいため、相対的に低いコストで生産普及することができないという欠点がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ナノ繊維を用いたフィルターを実現する際には、上述した高いコストはもとより、差圧とろ過効率に関する問題が発生する可能性もある。よって、従来のマイクロ繊維製造技術とナノ繊維製造技術を融合することにより、コスト競争力はもとより差圧とろ過効率に関する問題を解決し、さらに高効率及び高機能が保障できる機能性フィルターが希求されている。かかる機能性フィルターは、産業分野全般に極めて有効に利用できると考えられる。
【0007】
そこで、本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的は、ナノ繊維とマイクロ繊維を複合させ、高効率、高機能性及び抗菌性を実現することが可能な、新規かつ改良されたナノ素材を用いた複合繊維フィルター、ナノ素材を用いた複合繊維フィルターの製造装置及びナノ素材を用いた複合繊維フィルターの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上説明したように、本発明の目的は、ナノ繊維とマイクロ繊維を複合させて高効率、高機能性及び抗菌性を有する複合繊維フィルター及びその製造装置及び方法を提供することにある。
【0009】
また、本発明の他の目的は、ナノ繊維とマイクロ繊維を複合させた複合繊維フィルターを高い生産性で製造できる複合繊維フィルターの製造装置及び方法を提供することにある。
【0010】
本発明の更に別の目的は、浄水フィルター用として高効率、高機能性及び抗菌性を有する複合繊維フィルター及びその製造装置及び方法を提供することにある。
【0011】
そこで、上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、複合繊維フィルターの製造方法において、一端が接地されて回転駆動される導電性材質の成形棒上に、溶融紡糸機で溶融紡糸してマイクロ繊維糸からなるマイクロ繊維層を形成し、前記マイクロ繊維層上に、電界紡糸(electrospinning)可能な所定の誘電率を有する高分子樹脂溶液を電界紡糸機で電界紡糸して、ナノ繊維糸からなるナノ繊維層を積層形成することを特徴とする、ナノ繊維を用いた複合繊維フィルターの製造方法が提供される。
【0012】
前記溶融紡糸機及び電界紡糸機を用いて前記マイクロ繊維層と前記ナノ繊維層とを交互に連続的に積層形成して、多層化してもよい。
【0013】
前記高分子樹脂溶液には、前記高分子樹脂の質量に対して、0.1mass%〜1.0mass%の分散剤含有銀ナノ粒子が混合されてもよい。
【0014】
前記ナノ繊維層の気孔率を、30〜70%とし、前記ナノ繊維層の純粋密度を、0.1〜0.22g/cmとしてもよい。
【0015】
前記ナノ繊維糸に含まれる高分子樹脂は、ポリアクリロニトリル樹脂又はポリアミド樹脂(ナイロン6等のナイロン樹脂)のいずれか一方から形成されてもよい。
【0016】
前記ナノ繊維糸に含まれる高分子樹脂は、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリカプロラクトン、ポリエチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン、ナイロン、ポリ酢酸ビニル、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリブチレンテレフタレート、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンイミン、ポリスルホン及びニトロセルロースからなる群より選択されたいずれか1種から形成されてもよい。
【0017】
前記溶融紡糸されるマイクロ繊維糸は、ポリプロピレン成分を含み、前記ポリプロピレンの質量に対して、0.1mass%〜1.0mass%の自体分散剤含有銀ナノ粒子が混合されてもよい。
【0018】
前記成形棒は、30〜50rpmで回転駆動してもよい。
【0019】
前記溶融紡糸機の溶融紡糸条件において、紡糸ノズル直径は0.1〜0.3mmであり、
紡糸距離は80〜230mmであってもよい。
【0020】
前記電界紡糸機の電界紡糸条件のパラメーターには、高分子樹脂溶液における高分子樹脂濃度、高分子樹脂溶液の紡糸速度、印加電圧、紡糸距離が含まれてもよい。
【0021】
前記電界紡糸機の電界紡糸条件のパラメーターには、銀濃度がさらに含まれてもよい。
【0022】
上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、上述の製造方法によって製造される複合繊維フィルターが提供される。
【0023】
上記課題を解決するために、本発明の更に別の観点によれば、複合繊維フィルターの製造方法において、一端が接地されて回転駆動される導電性材質の成形棒上に、第1溶融紡糸機で溶融紡糸して第1マイクロ繊維糸からなる第1マイクロ繊維層を形成し、前記第1マイクロ繊維層上に、電界紡糸可能な一定の誘電率を有する高分子樹脂溶液を電界紡糸機で電界紡糸して、ナノ繊維糸からなるナノ繊維層を積層形成し、前記ナノ繊維層上に、第2溶融紡糸機で溶融紡糸して第1マイクロ繊維糸とは異なる直径を有する第2マイクロ繊維糸からなる第2マイクロ繊維層を形成し、前記各繊維層は、前記成形棒上に連続的に積層形成されることを特徴とする、ナノ繊維を用いた複合繊維フィルターの製造方法が提供される。
【0024】
上記課題を解決するために、本発明の更に別の観点によれば、複合繊維フィルターの製造装置において、一端が接地された導電性材質の成形棒を、駆動部によって回転駆動可能に構成し、前記成形棒近傍に一つ以上の溶融紡糸機と電界紡糸機を設置して、前記溶融紡糸機の溶融紡糸と電界紡糸機の電界紡糸とにより、前記成形棒上に、マイクロ繊維糸からなるマイクロ繊維層とナノ繊維糸からなるナノ繊維層とを交互に連続的に積層形成することを特徴とする、ナノ繊維を用いた複合繊維フィルターの製造装置が提供される。
【0025】
第1溶融紡糸機及び電界紡糸機のそれぞれの対応位置には、前記成形棒と圧着回転可能な冷間圧延ロールがそれぞれ設けられてもよい。
【0026】
前記ナノ繊維を用いた複合繊維フィルターの製造装置は、前記交互に連続的に積層形成された円筒状繊維層を所定の有効長さに切断する切断機をさらに備えてもよい。
【0027】
上記課題を解決するために、本発明の更に別の観点によれば、複合繊維フィルターの製造方法において、回転駆動される成形棒上に、第1溶融紡糸機で溶融紡糸して第1マイクロ繊維糸からなる第1マイクロ繊維層を形成し、前記第1マイクロ繊維層上に、高分子樹脂の質量に対して、0.1mass%〜1.0mass%の自体分散剤含有銀ナノ粒子を混合したナノ繊維糸からなる平面状ナノ繊維不織布を一定の厚さに巻いたナノ繊維層を積層形成し、前記ナノ繊維層上に、第2溶融紡糸機で溶融紡糸して第1マイクロ繊維糸とは異なる直径を有する第2マイクロ繊維糸からなる第2マイクロ繊維層を積層形成し、前記各繊維層は、前記成形棒上に連続的に積層形成されることを特徴とする、ナノ繊維を用いた複合繊維フィルターの製造方法が提供される。
【0028】
上記課題を解決するために、本発明の更に別の観点によれば、マイクロ繊維不織布上に電界紡糸方式によりナノ繊維不織布を形成して積層(lamination)した後、前記マイクロ繊維不織布及び前記ナノ繊維不織布を一定の厚さになるまで円筒状に巻いてナノ複合浄水フィルターを製造し、前記ナノ繊維不織布を構成するナノ繊維は、高分子樹脂の質量に対して、0.1mass%〜1.0mass%の自体分散剤含有銀ナノ粒子を混合した繊維であり、前記ナノ繊維不織布の気孔率を30〜70%とし、前記ナノ繊維不織布の純粋密度を0.1〜0.22g/cmとすることを特徴とする、ナノ繊維を用いた複合繊維フィルターの製造方法が提供される。
【0029】
上記課題を解決するために、本発明の更に別の観点によれば、高分子樹脂の質量に対して、0.1mass%〜1.0mass%の自体分散剤含有銀ナノ粒子を混合したナノ繊維からなり、気孔率が30〜70%であり、純粋密度が0.1〜0.22g/cmである平面状ナノ繊維不織布を、平面状マイクロ繊維不織布と交互に重ねて多層化した後、折り曲げて円筒状のナノ複合繊維フィルターを製造することを特徴とする、複合繊維フィルターの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、ナノ繊維とマイクロ繊維を複合させて高効率、高機能性及び抗菌性を有する複合繊維フィルターを実現することができ、かかる複合繊維フィルターは、浄水用フィルターとしての用途やその他の用途にも用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0032】
本発明では、ナノ繊維不織布とマイクロ繊維をハイブリッド化して、微細な気孔を持ちながらも圧力の増加をもたらさない、新しい形態の高効率・高機能性複合繊維フィルターを実現する。
【0033】
図1は、本発明の一実施形態に係る複合繊維フィルターの製造装置100の構成図であり、図2は、同実施形態に係る複合繊維フィルターの製造装置100によって製造される円筒状複合繊維フィルター200の斜視図である。
【0034】
本実施形態に係る複合繊維フィルターの製造装置100は、図1に示すように、成形棒2を有する駆動部4、第1及び第2溶融紡糸機6、10、電界紡糸機8、冷間圧延ロール12a、12b及び切断機14を備え、自動化工程による連続的製造が可能である。
【0035】
駆動部4は、複合繊維フィルターの製造装置100内の制御部の制御下で、成形棒2を回転駆動させる。また、駆動部4は、成形棒2に既に形成された繊維層に対する水平移送が必要とされるとき、制御部の制御下で成形棒2内の凹片(recessed piece)を突出させて、冷間圧延ロール12aからの送風力作用により、成形棒2上に形成された繊維層を一側に徐々に水平移送させる。
【0036】
成形棒2は、第1及び第2溶融紡糸機6、10のコレクターとしての役割と、電界紡糸機8のコレクターとしての役割とを担当する。このために、棒体が導電性材質からなり、一端が接地される。また、成形棒2は、成形棒2上に形成された繊維層が一側に水平移送可能となるように、表面がスムーズになっている。
【0037】
前記成形棒2は、駆動部4の制御下で第1及び第2溶融紡糸機6、10による溶融紡糸と電界紡糸機8による電界紡糸とを両方とも収容できるようにする回転速度、好ましくは30〜50rpmで低速回転する。また、フィルターの生産速度をさらに高める必要がある場合は、第1及び第2溶融紡糸機6、10の作動時の成形棒2の回転速度を、電界紡糸機8の作動時の成形棒2の回転速度に比べて、相対的に上げる。
【0038】
第1及び第2溶融紡糸機6、10は、マイクロメートル単位(マイクロメートルオーダーの)繊維糸をエアブロン(air blown)方式で溶融紡糸する装置であり、電界紡糸機8は、ナノメートル単位(ナノメートルオーダーの)繊維糸を電界紡糸する装置である。第2溶融紡糸機10は、第1溶融紡糸機6と同様にマイクロメートル単位の繊維糸を溶融紡糸するが、第1溶融紡糸機6よりも相対的に大きな径の繊維糸を溶融紡糸するように構成することが好ましい。
【0039】
電界紡糸機8は、金属注射針紡糸口を有する注射器(syringe)を含む注射器ポンプと、一端が接地された、成形棒2としてのコレクター部と、0〜40kVの高圧電場を注射器ポンプ及びコレクター部に印加する高圧電源装置とで構成される。電界紡糸機8から、正(+)に帯電した高分子溶液が、注射器の金属注射針紡糸口とコレクター部の成形棒2との間にかけられた高圧電場により延伸紡糸されることで、ナノ繊維が成形棒2上に形成される。
【0040】
第1溶融紡糸機6及び電界紡糸機8のそれぞれの対応位置には、成形棒2と圧着回転(接触回転)可能な冷間圧延ロール12a、12bがそれぞれ設けられる。これらの冷間圧延ロール12a、12bは、成形棒2に形成された繊維層の表面を所定の圧力で加圧して、密度を密にかつ均一にする機能と、送風冷却させる機能とを備える。特に、両冷間圧延ロール12a、12bのうち第1溶融紡糸機6に対応した冷間圧延ロール12aは、テーパ部を有するボビンで構成し、成形棒2に形成された繊維層が成形棒2内の凹片の突出によって浮き上がるときに傾斜送風することで、その繊維層を押し出して、徐々に水平移送させる。冷間圧延ロール12bは、円柱状のロールである。
【0041】
切断機14は、成形棒2上に積層形成され、押し出され続けて移送された繊維フィルター層を、内部カッターによって所定の有効長さに切断し、図2に示す円筒状複合繊維フィルター200を完成させる。
【0042】
複合繊維フィルターの製造装置100の制御部は、駆動部4を制御して成形棒2を30〜50rpmの範囲で所定の回転速度で回転させ、先ず第1溶融紡糸機6のみを作動させてエアブロン溶融紡糸方式でマイクロメートル単位の繊維糸を成形棒2に紡糸させることにより、図2に示す内側のマイクロ繊維層20を形成する。このとき、冷間圧延ロール12aは、成形棒2と接触回転しながら、形成中の内側マイクロ繊維層20を圧迫する。
【0043】
内側マイクロ繊維層20が所定の厚さ(移送制御に移行する厚さ)に形成されると、制御部は駆動部4を制御して、成形棒2内の凹片を外部に突出させ、形成中の内側マイクロ繊維層20を微細に浮き上がらせる。この際、テーパ付き冷間圧延ロール12aからの傾斜送風力により、成形棒2上に形成された内側マイクロ繊維層20が、一側に徐々に水平移送される。このとき、第1溶融紡糸機6は、マイクロメートル単位の繊維糸を溶融紡糸し続け、一方、電界紡糸機8及び第2溶融紡糸機10は、制御部の制御下で作動しはじめ、電界紡糸及び溶融紡糸を行う。
【0044】
電界紡糸機8の電界紡糸及び第2溶融紡糸機10の溶融紡糸により、内側マイクロ繊維層20上には、図2に示すようにナノ繊維層22及び外側マイクロ繊維層20が順に積層形成される。この繊維層が徐々に水平移送されて切断機14内に入ると、切断機14内の内部カッターが前記円筒状の繊維層を所定の有効長さに切断し、図2に示す円筒状複合繊維フィルター200が得られる。
【0045】
本実施形態において、図1に示す複合繊維フィルターの製造装置100は、2台の溶融紡糸機と電界紡糸機を採用して円筒状複合繊維フィルター200を製作したが、一方、複合繊維フィルターの製造装置100が多数の溶融紡糸機と電界紡糸機を採用し、図3に示すようにマイクロ繊維層20とナノ繊維層22を交互に積層して多層化することもできることは、当業者にとっては明らかなことである。
【0046】
特に、図2及び図3において、ナノ繊維層22を構成する本実施形態に係るナノ繊維は、繊維糸の直径が数nm〜数百nm、好ましくは50nm〜800nmである。このようなナノ繊維糸は、極細であって大きな表面積と優れた柔軟性を有し、圧着加工に容易であり、フィルター用素材に適する。そこで、ナノ繊維糸からなるナノ繊維層22は、多数の気孔を有するため、低い圧力で微細粒子をほとんど除去することができる。
【0047】
本実施形態に係るナノ繊維層22の厚さは、数μm〜数百μmの範囲内であり、製造者は、該当フィルターのフィルター効率を考慮して、前記範囲内で適切に設定することができる。
【0048】
また、本実施形態に係るナノ繊維層22は、浄水用フィルターとして用いる際には、平均気孔直径を1〜3.5μmとし、気孔率を30〜70%とし、純粋密度を0.1〜0.22g/cmとし、見掛密度を0.18〜0.35g/cmとすることが好ましい。
【0049】
本発明では、ナノ繊維を用いたフィルターを実現するにあたって、マイクロ繊維製造技術とナノ繊維製造技術を融合してコスト競争力を持ちながらも差圧とろ過効率に関する問題を解決し、さらに高効率及び高機能を保障すると共に抗菌性を有する機能性フィルターを実現するために、下記のような原料素材と紡糸機の各種パラメーターを考慮する必要がある。
【0050】
マイクロ繊維層20には、溶融紡糸機からの溶融紡糸が可能である合成樹脂材質として、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン、ナイロン、ポリ酢酸ビニル、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリブチレンテレフタレート、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンイミン、ポリスルホン、ポリオレフィンなどを用いることが可能であり、中でもポリプロピレン(PP)を採用することが好ましい。
【0051】
そして、ナノ繊維層22には、電界紡糸を可能にする一定以上の誘電率(所定の値以上の誘電率)を有する高分子樹脂を採用することが好ましい。
【0052】
ナノ繊維層22を構成する一定以上の誘電率を有する高分子樹脂には、水を含む有機溶媒に溶解可能な高分子樹脂として、例えば、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile:PAN)樹脂またはポリアミド(ナイロン6等のナイロン繊維)を採用することが好ましい。
【0053】
水を含む有機溶媒に溶解可能な高分子樹脂の他の例としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリカプロラクトン、ポリエチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン、ナイロン、ポリ酢酸ビニル、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリブチレンテレフタレート、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンイミン、ポリスルホン、ニトロセルロースなどが挙げられる。上記例のうち、ポリスチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリスルホン、ニトロセルロースは、耐水性及び耐化学性(耐アルカリ性、耐酸性など)に優れているので、浄水用フィルターのナノ繊維層22に好適に適用することができる。
【0054】
また、マイクロ繊維層20及びナノ繊維層22を形成するにあたり、高効率と高機能を保障すると共に抗菌性を付与するために、本実施形態では、ナノ銀粒子を混合することが好ましい。つまり、マイクロ繊維糸の溶融のための溶融紡糸機には、ポリプロピレンチップが投入されて溶融するが、本実施形態では、該ポリプロピレンチップにナノ銀粒子を含ませる。ナノ銀粒子は、ポルリプロピレンチップの融点よりも遥かに低い温度で溶融する。
【0055】
また、ナノ繊維糸を電界紡糸するための注射機内の高分子樹脂溶液にも、ナノ銀粒子を含ませる。つまり、ナノ銀粒子が溶融紡糸機内及び注射機内に混合されているときに分散分布されることが極めて重要であり、このためにはアルコールのような溶媒を添加する必要がある。しかしながら、アルコールのような溶媒は、銀粒子の部分的沈澱を起こすので、本実施形態においては、アルコールのような溶媒を用いることなく分散分布が可能なナノ銀粒子を用いる。前記ナノ銀粒子は、分散剤を有する(分散剤を含有する)ナノ銀粒子である。
【0056】
一方、従来、ナノ銀粒子を分散するためにアルコール溶媒を用いた場合は、銀含有量が高分子樹脂の質量に対して、約0.1mass%しか及ばないことから、抗菌性に劣った。もし、抗菌性を高めるために0.1mass%を遥かに超えるナノ銀粒子を混合すると、沈澱が発生した。
【0057】
これに対し、本実施形態に係る自体分散剤含有ナノ銀粒子を用いた場合は、高分子樹脂の質量に対して、1mass%まで混合することができる。ナノ銀粒子をそれ以上混合することは意味がない。というのは、高分子樹脂の質量に対して、約0.5mass%のナノ銀粒子を混合するだけで、ほぼ100%に近い抗菌性を発揮することができるからである。
【0058】
したがって、本実施形態に係る自体分散剤含有ナノ銀粒子は、好ましくは高分子樹脂の質量に対して、0.1mass%〜1.0mass%の範囲で混合し、さらに好ましくは高分子樹脂の質量に対して、0.3mass%〜0.6mass%の範囲で混合する。
【0059】
抗菌性を付与するためのナノ銀粒子の混合にあたり、前記混合割合を、マイクロ繊維糸及びナノ繊維糸の双方に適用することができ、必要に応じて、マイクロ繊維糸またはナノ繊維のどちらか一方にのみ適用することもできる。また、どちらか一方にのみ適用する際には、相対的に高い表面積と空隙率を有するナノ繊維糸に適用することが好ましい。
【0060】
マイクロ繊維層20及びナノ繊維層22を形成するにあたり、フィルターの諸機能を充分に発揮するためには、繊維糸を均一に製造し、さらに可能な限り細く製造することが極めて重要である。
【0061】
先ず、マイクロ繊維層20を形成するにあたり、ポリプロピレンマイクロ繊維糸を均一に且つ従来よりも細くするためには、溶融紡糸機6、10の紡糸ノズルの直径、紡糸温度、紡糸距離などのパラメーターを考慮する必要がある。本願発明者らは、これらパラメーターを変えて、最適の溶融紡糸条件を確立した。
【0062】
本願発明者らは、円筒状複合繊維フィルター200を浄水用フィルターとして実現するための実験を行った。浄水用フィルターは、浄水作業時に加えられる圧力に耐えられる強度を有し、均一な平均直径を有することが好ましい。
【0063】
浄水用フィルターの実現に考慮されるパラメーターのうち、紡糸温度は280℃〜300℃とすることが好ましく、紡糸距離はマイクロ繊維の均一性確保に求められる変数ではないことが確認された。
【0064】
しかしながら、紡糸ノズルの直径は、マイクロ繊維の均一性確保に求められる極めて重要な変数であることが確認された。このとき、紡糸ノズルの直径は、0.1〜0.3mmであることが好ましく、0.1〜0.3mmの範囲内でも低い方に向かうほど均一性確保にさらに有利であることが確認された。
【0065】
実験例として、紡糸ノズルの直径を0.2mmとし、紡糸距離を少しずつ調節しながら溶融紡糸をした結果、平均直径12〜17μmの均一なマイクロ繊維を得ることができた。このとき、紡糸距離が増えるほどマイクロ繊維糸の直径が細くなることが確認され、また、生産効率を最適化するためには、比較的紡糸距離を短縮することが好ましいことが確認された。紡糸距離の範囲は、一例として、約80mm〜230mmである。
【0066】
本実施形態に係るマイクロ繊維層20を構成するマイクロ繊維糸は、前記12〜17μmの平均直径を持ちながらも均一にすることができ、従来の浄水用フィルターを構成するマイクロ繊維糸の通常の直径、例えば23〜50μmよりも格段に細くなり、従来に比べて相対的に大きな表面積、優れた柔軟性を有する。
【0067】
次に、本実施形態に係るナノ繊維層22を形成するにあたり、一定以上の誘電率を有する高分子樹脂のナノ繊維糸を均一に紡糸し、再現性を高めるための、電界紡糸機8の電界紡糸条件を構成するパラメーターを考慮しなければならない。パラメーターとしては、電圧、紡糸距離、紡糸速度、高分子樹脂液の濃度などが挙げられる。
【0068】
本発明の実施例では、一定以上の誘電率を有する高分子樹脂の好適な例であるポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile:PAN)樹脂またはポリアミド(ナイロン6等のナイロン樹脂)のうち、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile:PAN)樹脂を溶解させるための溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド(dimethylformamide:DMF)を用い、ポリアミド(ナイロン6)を溶解させるための溶媒としては、ギ酸(formic acid)を用いた。
【0069】
本願発明者らは、円筒状複合繊維フィルター200を浄水用フィルターとして実現するためのナノ繊維形成実験を行った。実験は、浄水用フィルターのナノ繊維層22を形成するための高分子樹脂として、ポリアクリロニトリル樹脂を用いた場合と、ポリアミド(ナイロン6)を用いた場合とに分けて行った。
【0070】
先ず、高分子樹脂としてポリアクリロニトリル樹脂を用いた場合の実験例を説明する。
【0071】
ポリアクリロニトリルPAN樹脂がN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)溶媒に溶解することで、PAN/DMF溶液(高分子溶液)が得られる。このとき、該PAN/DMF溶液を電界紡糸するに当たって考慮すべき重要なパラメーターは、PAN/DMF溶液における濃度、PAN/DMF溶液の紡糸速度、印加電圧、紡糸距離などであることが実験により確認された。
【0072】
このとき、ナノ繊維の直径は、溶液における濃度と溶液の紡糸速度が減少するほど減少し、印加電圧と紡糸距離が増加するほど減少する傾向を示した。
【0073】
浄水用フィルターとして最適化されたナノ繊維の例は、下記の通りである。
【0074】
(1)平均直径600nmのPANナノ繊維
電界紡糸条件のパラメーターにおいて、溶液における濃度は12mass%、溶液の紡糸速度は1.2mL/h、印加電圧は15kV、紡糸距離は15cmである。
【0075】
(2)平均直径300nmのPANナノ繊維
電界紡糸条件のパラメーターにおいて、溶液における濃度は10mass%、溶液の紡糸速度は1.2mL/h、印加電圧は15kV、紡糸距離は13cmである。
【0076】
前記最適化されたPANナノ繊維のうち、平均直径約300nmのPANナノ繊維は、繊維形状が均一であり、ビードの混在がなく、再現性に優れているという利点がある。また、平均直径約600nmのPANナノ繊維のシートは、操作が簡便であり、厚さ調節が簡単であって、ナノ/マイクロ複合繊維フィルターに最も好適に適用することができる。なお、前記PANナノ繊維は、炭素ナノ繊維製造工程などに容易に適用することができる。
【0077】
次に、高分子樹脂がポリアミド(ナイロン6)である場合の実験例を説明する。
【0078】
ポリアミド(ナイロン6)をギ酸溶媒に溶解させて高分子溶液を得、多様な条件下で電界紡糸を行った。実験の結果、優れた再現性を有する均一なナノ繊維を得るためには、電界紡糸の条件のパラメーターのうち、電圧は10〜19kV、紡糸距離は8〜20cm、紡糸速度は0.1〜0.3mL/h、高分子濃度は溶媒の15〜26mass%とすることが好ましいことが確認された。
【0079】
前記電界紡糸条件下で電界紡糸を行い、平均直径約200nmのポリアミド(ナイロン6)ナノ繊維を製造することができた。
【0080】
本実施形態においては、マイクロ繊維層20及びナノ繊維層22に抗菌性を付与するために、ナノ銀を添加して紡糸を行った。
【0081】
ナノ銀添加の際、繊維糸の紡糸が円滑に行われるかどうかを確認し、さらに紡糸が円滑に行われるとしても得られた繊維糸が抗菌性を有するかどうかを確認しなければならない。
【0082】
本願発明者らは、例えば、ポリアミド(ナイロン6)に粒径10〜20nmのナノ銀を添加して、電界紡糸機を用いて抗菌性ナノ繊維を製造することができた。実験の結果、電界紡糸機の印加電圧が高くなるほどナノ繊維糸の太さは細くなることが確認され、一方、銀濃度の変化によるナノ繊維の形態変化がないことから、問題がないことが確認された。
【0083】
その後、得られたポリアミド(ナイロン6)/銀ナノ繊維糸不織布に対して、銀成分の含有有無と、抗菌作用の有無とを確認するための実験を行った。
【0084】
図4A及び図4Bは、ポリアミド(ナイロン6)/銀ナノ繊維糸に対するTEM分析イメージを示す図であり、図5は、ポリアミド(ナイロン6)/銀ナノ繊維糸に対するEDS(Energy Dispersive Spectrosopy)分析イメージを示す図である。図4A及び図4Bでは、ポリアミド(ナイロン6)/銀ナノ繊維糸の表面及びその内部に粒径10〜20nmの銀粒子が浸透し分散されていることが確認でき、図5では、ナノ繊維糸に銀成分が含まれていることがスペクトルから確認できる。
【0085】
本願発明者らは、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)と肺炎桿菌(Klebsiella pneumonia)を用いた抗菌性実験を行った。黄色ブドウ球菌は陽性菌の一例であり、肺炎桿菌は陰性菌の一例である。
【0086】
図6Aは、黄色ブドウ球菌を用いた抗菌性実験結果を示す棒グラフであり、図6Bは、肺炎桿菌を用いた抗菌性実験結果を示す棒グラフである。
【0087】
図6A及び図6Bのグラフを参照すると、黄色ブドウ球菌及び肺炎桿菌を用いた抗菌性実験において、銀含有量が1000ppm以上であれば、90%以上の抗菌性(Growth inhibition rate)を示していることが確認できる。このとき、抗菌性[%]は(A−B/A)*100の式で算出される(ここで、Aは一般不織布で培養算出した生菌の数であり、Bは銀含有ナノ繊維不織布で培養算出した生菌の数である)。前記銀含有量1000ppmは、高分子樹脂の質量に対して、約0.3mass%に該当する値である。
【0088】
抗菌効果においては、抗菌性が約20〜30%であればあまり効果がないとされ、90%以上であれば効果が極めて良いとされる。よって、本発明の銀含有ナノ繊維不織布は、銀含有量が1000ppm以上であるとき優れた抗菌効果が得られることがわかる。
【0089】
図7A及び図7Bは、黄色ブドウ球菌と肺炎桿菌を用いたナノ繊維の抗菌ゾーン試験結果を示す図である。図7Aは、黄色ブドウ球菌を用いたナノ繊維の抗菌ゾーン試験結果を示す写真であり、図7Bは、肺炎桿菌を用いたナノ繊維の抗菌ゾーン試験結果を示す写真である。
【0090】
図7A及び図7Bにおいて、‘N’表示の試料不織布は、一般ナノ繊維不織布(左側)であり、表示無しの試料不織布(右側)は、約1500ppmの銀を含有した銀含有ナノ繊維不織布である。
【0091】
図7A及び図7Bから、銀含有ナノ繊維不織布(右側)にはその周辺にも菌が生息及び増殖できないことが確認される。
【0092】
図8は、本実施形態によってマイクロ繊維層20上にナノ繊維が電界紡糸されてナノ繊維層22が形成されたことを示すSEMイメージ写真であり、図9A〜図9Cは、内側のマイクロ繊維層20上にナノ繊維層22と外側のマイクロ繊維層20が順に積層形成されたことを示す部分断面写真である。
【0093】
本願発明者らは、従来のマイクロフィルターと図2の円筒状複合繊維フィルター200を用いて粒径によるろ過率を実験で求め、その結果を図10A及び図10Bに示す。
【0094】
図10Aのテーブル及び図10Bのグラフにおいて、「デジンマイクロフィルター(Daejin micro filter)」は従来のマイクロフィルターであり、「デジンナノフィルター(Daejin nano filter)」は図2の円筒状複合繊維フィルター200のサンプルである。両方を比較すると、円筒状複合繊維フィルター200のサンプルである「デジンナノフィルター(Daejin nano filter)」は0.1μmの粒子をほとんど99%以上がろ過するのに対し、従来のマイクロフィルターである「デジンマイクロフィルター(Daejin micro filter)」は3μm以上の粒子であっても約80%しかろ過できないことが確認される。
【0095】
このような比較から、本実施形態に係る円筒状複合繊維フィルター200の優れたろ過効率が証明される。
【0096】
また、本願発明者らは、従来のマイクロフィルターの流量(流速)による圧力損失と、図2の円筒状複合繊維フィルター200の流量(流速)による圧力損失とを実験で求め、その結果を図11A及び図11Bに示す。前記圧力損失は、フィルターに入る流量の圧力とフィルターから吐き出される流量の圧力間の差を意味するものであり、その数値が低いほど良い。
【0097】
図11A及び図11Bを参照すると、従来のマイクロフィルター「デジンマイクロフィルター(Daejin micro filter)」の流量(流速)による圧力損失と、本実施形態に係る複合繊維フィルター「デジンナノフィルター(Daejin nano filter)」の流量(流速)による圧力損失とは、流量(流速)12〜18L/minでは大差がない。特に、一般水道水における流量(流速)が12L/min程度となるが、ここで、従来のマイクロフィルター「デジンマイクロフィルター(Daejin micro filter)」の圧力損失は0.015であり、本発明の複合繊維フィルター「デジンナノフィルター(Daejin nano filter)」の圧力損失(差圧)は0.021である。
【0098】
したがって、本実施形態に係る複合繊維フィルターは、一般水道水の場合、従来のマイクロフィルターと類似した差圧を有するので、性能が良好である。一般水道水における逆浸透圧方式のフィルターの差圧が数十L/minであることを考慮すると、本実施形態に係る複合繊維フィルターの差圧性能は大幅に改善されたことがわかる。
【0099】
本実施形態に係る円筒状複合繊維フィルターは、円筒面を長さ方向に切開して展開すると、平面状の複合繊維フィルターが得られる。
【0100】
また、本実施形態に係る複合繊維フィルターは、浄水用はもとより空気清浄用及びその他濾材用に直接的に或いは応用して適用することができ、これは本技術分野で通常の知識を有する者にとっては明らかなことである。
【0101】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0102】
例えば、本発明では、マイクロ繊維不織布とナノ繊維の複合化方法として、上述した連続工程により複合繊維フィルターを製造する方法以外の他の例を挙げると、平面状ナノ繊維不織布を別途の工程で大量生産し、図1の成形棒2上に形成されたマイクロ繊維層20上に一定の厚さに巻き取った後、さらに図1のマイクロ繊維溶融紡糸機を用いてマイクロ繊維層を交互に積層形成する方法があり、この方法で複合繊維フィルターを製造することもできる。
【0103】
このとき、成形棒2は必ずしも導電性材質であるとは限らず、また、前記別途に生産する平面状ナノ繊維不織布を構成するナノ繊維は、本発明による高分子樹脂の質量に対して、0.1mass%〜1.0mass%の自体分散剤含有銀ナノ粒子を混合してなるものであり、さらに、前記平面状ナノ繊維不織布は、気孔率30〜70%、純粋密度0.1〜0.22g/cmであることが好ましい。
【0104】
また、本発明のまた他の実施例によれば、スパンボンド不織布(spunbond)のようなマイクロ繊維不織布上に、電界紡糸方式で本発明のナノ繊維不織布を形成して積層(ラミネーション)した後、これらを一定の厚さになるまで円筒状に巻いてナノ複合浄水フィルターを製造することもできる。このとき、前記ナノ繊維不織布を構成するナノ繊維は、高分子樹脂の質量に対して、0.1mass%〜1.0mass%の自体分散剤含有銀ナノ粒子を混合した繊維であり、前記ナノ繊維不織布の気孔率を30〜70%とし、純粋密度を0.1〜0.22g/cmとする。
【0105】
さらに、本発明では、平面状ナノ繊維不織布と平面状マイクロ繊維不織布とを交互に重ねて多層化した後、折り曲げて蛇腹状にした円筒状のナノ複合繊維フィルターを製造することができる。このとき、ナノ繊維不織布を構成するナノ繊維は、高分子樹脂の質量に対して、0.1mass%〜1.0mass%の自体分散剤含有銀ナノ粒子を混合したナノ繊維糸であり、前記ナノ繊維不織布の気孔率を30〜70%とし、純粋密度を0.1〜0.22g/cmとする。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】本発明の一実施形態に係る複合繊維フィルターの製造装置の構成図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る円筒状複合繊維フィルターの斜視図である。
【図3】ナノ繊維層が多層化された一例を示す円筒状複合繊維フィルターの断面図である。
【図4A】ポリアミド(ナイロン6)/銀ナノ繊維糸に対するTEM分析イメージを示す図である。
【図4B】ポリアミド(ナイロン6)/銀ナノ繊維糸に対するTEM分析イメージを示す図である。
【図5】ポリアミド(ナイロン6)/銀ナノ繊維糸に対するEDS分析イメージを示す図である。
【図6A】黄色ブドウ球菌及び肺炎桿菌を用いた抗菌性実験結果を示す棒グラフである。
【図6B】黄色ブドウ球菌及び肺炎桿菌を用いた抗菌性実験結果を示す棒グラフである。
【図7A】黄色ブドウ球菌と肺炎桿菌を用いたナノ繊維の抗菌ゾーン試験結果を示す図である。
【図7B】黄色ブドウ球菌と肺炎桿菌を用いたナノ繊維の抗菌ゾーン試験結果を示す図である。
【図8】内側のマイクロ繊維層上にナノ繊維層が積層形成されたことを示すSEMイメージ写真である。
【図9A】内側のマイクロ繊維層上にナノ繊維層と外側のマイクロ繊維層が順に積層形成されたことを示すSEMイメージ部分断面写真である。
【図9B】内側のマイクロ繊維層上にナノ繊維層と外側のマイクロ繊維層が順に積層形成されたことを示すSEMイメージ部分断面写真である。
【図9C】内側のマイクロ繊維層上にナノ繊維層と外側のマイクロ繊維層が順に積層形成されたことを示すSEMイメージ部分断面写真である。
【図10A】従来のフィルターの粒径によるろ過率と同実施形態に係る複合繊維フィルターの粒径によるろ過率とを実験で求め、その結果を示す図である。
【図10B】従来のフィルターの粒径によるろ過率と同実施形態に係る複合繊維フィルターの粒径によるろ過率とを実験で求め、その結果を示す図である。
【図11A】従来のフィルターの流量(流速)による圧力損失と同実施形態に係る複合繊維フィルターの流量(流速)による圧力損失とを実験で求め、その結果を示す図である。
【図11B】従来のフィルターの流量(流速)による圧力損失と同実施形態に係る複合繊維フィルターの流量(流速)による圧力損失とを実験で求め、その結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合繊維フィルターの製造方法において、
一端が接地されて回転駆動される導電性材質の成形棒上に、溶融紡糸機で溶融紡糸してマイクロ繊維糸からなるマイクロ繊維層を形成し、
前記マイクロ繊維層上に、電界紡糸可能な所定の誘電率を有する高分子樹脂溶液を電界紡糸機で電界紡糸して、ナノ繊維糸からなるナノ繊維層を積層形成する
ことを特徴とする、ナノ繊維を用いた複合繊維フィルターの製造方法。
【請求項2】
前記溶融紡糸機及び電界紡糸機を用いて前記マイクロ繊維層と前記ナノ繊維層とを交互に連続的に積層形成して、多層化する
ことを特徴とする、請求項1に記載のナノ繊維を用いた複合繊維フィルターの製造方法。
【請求項3】
前記高分子樹脂溶液には、
前記高分子樹脂の質量に対して、0.1mass%〜1.0mass%の分散剤含有銀ナノ粒子が混合される
ことを特徴とする、請求項1に記載のナノ繊維を用いた複合繊維フィルターの製造方法。
【請求項4】
前記ナノ繊維層の気孔率を、30〜70%とし、
前記ナノ繊維層の純粋密度を、0.1〜0.22g/cmとする
ことを特徴とする、請求項1または3に記載のナノ繊維を用いた複合繊維フィルターの製造方法。
【請求項5】
前記ナノ繊維糸に含まれる高分子樹脂は、
ポリアクリロニトリル樹脂又はポリアミド樹脂のいずれか一方からなる
ことを特徴とする、請求項1または3に記載のナノ繊維を用いた複合繊維フィルターの製造方法。
【請求項6】
前記ナノ繊維糸に含まれる高分子樹脂は、
ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリカプロラクトン、ポリエチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン、ナイロン、ポリ酢酸ビニル、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリブチレンテレフタレート、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンイミン、ポリスルホン及びニトロセルロースからなる群より選択されたいずれか1種からなる
ことを特徴とする、請求項1または3に記載のナノ繊維を用いた複合繊維フィルターの製造方法。
【請求項7】
前記溶融紡糸されるマイクロ繊維糸は、ポリプロピレン成分を含み、
前記ポリプロピレンの質量に対して、0.1mass%〜1.0mass%の自体分散剤含有銀ナノ粒子が混合される
ことを特徴とする、請求項1に記載のナノ繊維を用いた複合繊維フィルターの製造方法。
【請求項8】
前記成形棒は、30〜50rpmで回転駆動する
ことを特徴とする、請求項1に記載のナノ繊維を用いた複合繊維フィルターの製造方法。
【請求項9】
前記溶融紡糸機の溶融紡糸条件において、
紡糸ノズル直径は0.1〜0.3mmであり、
紡糸距離は80〜230mmである
ことを特徴とする、請求項1に記載のナノ繊維を用いた複合繊維フィルターの製造方法。
【請求項10】
前記電界紡糸機の電界紡糸条件のパラメーターには、
高分子樹脂溶液における高分子樹脂濃度、高分子樹脂溶液の紡糸速度、印加電圧、紡糸距離が含まれる
ことを特徴とする、請求項1に記載のナノ繊維を用いた複合繊維フィルターの製造方法。
【請求項11】
前記電界紡糸機の電界紡糸条件のパラメーターには、銀濃度がさらに含まれる
ことを特徴とする、請求項10に記載のナノ繊維を用いた複合繊維フィルターの製造方法。
【請求項12】
請求項1または3に記載の製造方法によって製造されることを特徴とする、複合繊維フィルター。
【請求項13】
複合繊維フィルターの製造方法において、
一端が接地されて回転駆動される導電性材質の成形棒上に、第1溶融紡糸機で溶融紡糸して第1マイクロ繊維糸からなる第1マイクロ繊維層を形成し、
前記第1マイクロ繊維層上に、電界紡糸可能な一定の誘電率を有する高分子樹脂溶液を電界紡糸機で電界紡糸して、ナノ繊維糸からなるナノ繊維層を積層形成し、
前記ナノ繊維層上に、第2溶融紡糸機で溶融紡糸して第1マイクロ繊維糸とは異なる直径を有する第2マイクロ繊維糸からなる第2マイクロ繊維層を形成し、
前記各繊維層は、前記成形棒上に連続的に積層形成される
ことを特徴とする、ナノ繊維を用いた複合繊維フィルターの製造方法。
【請求項14】
複合繊維フィルターの製造装置において、
一端が接地された導電性材質の成形棒を、駆動部によって回転駆動可能に構成し、
前記成形棒近傍に一つ以上の溶融紡糸機と電界紡糸機を設置して、
前記溶融紡糸機の溶融紡糸と電界紡糸機の電界紡糸とにより、前記成形棒上に、マイクロ繊維糸からなるマイクロ繊維層とナノ繊維糸からなるナノ繊維層とを交互に連続的に積層形成する
ことを特徴とする、ナノ繊維を用いた複合繊維フィルターの製造装置。
【請求項15】
第1溶融紡糸機及び電界紡糸機のそれぞれの対応位置には、
前記成形棒と圧着回転可能な冷間圧延ロールがそれぞれ設けられる
ことを特徴とする、請求項14に記載のナノ繊維を用いた複合繊維フィルターの製造装置。
【請求項16】
前記交互に連続的に積層形成された円筒状繊維層を所定の有効長さに切断する切断機をさらに備える
ことを特徴とする、請求項14または15に記載のナノ繊維を用いた複合繊維フィルターの製造装置。
【請求項17】
複合繊維フィルターの製造方法において、
回転駆動される成形棒上に、第1溶融紡糸機で溶融紡糸して第1マイクロ繊維糸からなる第1マイクロ繊維層を形成し、
前記第1マイクロ繊維層上に、高分子樹脂の質量に対して、0.1mass%〜1.0mass%の自体分散剤含有銀ナノ粒子を混合したナノ繊維糸からなる平面状ナノ繊維不織布を一定の厚さに巻いたナノ繊維層を積層形成し、
前記ナノ繊維層上に、第2溶融紡糸機で溶融紡糸して第1マイクロ繊維糸とは異なる直径を有する第2マイクロ繊維糸からなる第2マイクロ繊維層を積層形成し、
前記各繊維層は、前記成形棒上に連続的に積層形成される
ことを特徴とする、ナノ繊維を用いた複合繊維フィルターの製造方法。
【請求項18】
マイクロ繊維不織布上に電界紡糸方式によりナノ繊維不織布を形成して積層した後、前記マイクロ繊維不織布及び前記ナノ繊維不織布を所定の厚さになるまで円筒状に巻いてナノ複合浄水フィルターを製造し、
前記ナノ繊維不織布を構成するナノ繊維は、高分子樹脂の質量に対して、0.1mass%〜1.0mass%の自体分散剤含有銀ナノ粒子を混合した繊維であり、
前記ナノ繊維不織布の気孔率を30〜70%とし、前記ナノ繊維不織布の純粋密度を0.1〜0.22g/cmとする
ことを特徴とする、ナノ繊維を用いた複合繊維フィルターの製造方法。
【請求項19】
高分子樹脂の質量に対して、0.1mass%〜1.0mass%の自体分散剤含有銀ナノ粒子を混合したナノ繊維からなり、
気孔率が30〜70%であり、純粋密度が0.1〜0.22g/cmである平面状ナノ繊維不織布を、平面状マイクロ繊維不織布と交互に重ねて多層化した後、折り曲げて円筒状のナノ複合繊維フィルターを製造する
ことを特徴とする、ナノ繊維を用いた複合繊維フィルターの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図10A】
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【図11A】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図10B】
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【図11B】
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【公開番号】特開2008−95266(P2008−95266A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−216255(P2007−216255)
【出願日】平成19年8月22日(2007.8.22)
【出願人】(507283230)
【Fターム(参考)】