説明

ナビゲーション装置及びナビゲーション方法

【課題】 矢印などの案内情報を運転の妨げにならないように実風景に重ねて表示するナビゲーション装置を提供する。
【解決手段】 経路作成部4は、自車位置取得部1と地図記憶部2と目的地設定部3から取得した自車位置情報と地図情報と目的地位置情報とに基づいて経路を作成する。案内情報特定部5は、案内情報を提示する地図上の位置と、提示する案内情報の種類を特定する。障害物検知部6は、画像認識などにより、自車の周辺ある障害物(歩行者や車両等)の位置と種類とを検知する。優先度決定部7は、各障害物の提示優先度を決定する。表示位置決定部8は、案内情報の表示位置として、検知した障害物と重ならない位置を求める。画像出力部9は、車両のフロントガラス内の決定された位置に、あるいは、前方画像を表示するディスプレイ内の決定された位置に、案内情報を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナビゲーション装置に関し、より特定的には、実風景上に案内情報を提示して利用者を誘導するナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地図画像や音声を用いて利用者を目的地まで誘導する車載用ナビゲーション装置が普及している。現在普及しているナビゲーション装置では、経路誘導に用いる地図画像や前方風景画像として、DVDなどに記憶された仮想画像が利用されている。そして、運転者などの利用者は、車内に設置されたディスプレイに映し出された地図画像等を見ることによって、進むべき方向を確認する。
【0003】
ところで、経路誘導に用いる画像として、仮想画像の代わりに、自車両に設置されたカメラによって実時間で撮影された実風景画像を用いることも提案されている(例えば特許文献1)。実風景画像を用いる場合、実風景画像に進行方向を示す矢印などの案内情報を重畳した画像が、経路誘導用の画像として利用者に提示される。
【0004】
運転者が画面を見ていられる時間は限られているために、ディスプレイに表示される画像は、即座に進むべき方向を把握出来る画像であることが望ましい。実風景画像を用いれば、仮想風景画像を用いた場合よりも実際の風景との差が少ないために、運転者は短時間でかつ正確に進むべき方向を把握し得るという利点がある。
【特許文献1】特開平7−63572号公報(第11頁、図11)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、実風景画像上に案内情報が提示される場合には、利用者に提示される画像に、歩行者や信号機等も映し出されることになるが、従来のナビゲーション装置では、これらを考慮することは考えられていなかった。しかしながら、表示された案内情報の後ろに歩行者や信号機が隠されてしまうと、歩行者等に対する運転者の注意が不十分になるおそれがある。よって、安全の観点から、歩行者等を考慮して案内情報を表示することが望ましい。
【0006】
また、天候や時間帯によって車外の明るさ等が変化するので、実風景画像が用いられる場合には、これらを考慮しなければ、利用者が認識できない画像表示がなされるおそれもある。
【0007】
それ故に、本発明の目的は、運転の妨げにならないように、実風景上に矢印などの案内情報を表示するナビゲーション装置を提供することである。また、本発明の別の目的は、利用者が認識しやすい案内情報を実風景上に表示するナビゲーション装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明のナビゲーション装置は、実風景に重ねて表示した案内情報によって利用者を誘導するナビゲーション装置であって、1以上の案内情報の中から提示する案内情報を特定する案内情報特定部と、自車前方の風景を平面的に捉えたときの平面上の障害物の位置を特定する障害物検知部と、平面上に案内情報を表示したときに障害物との重畳面積が少ない位置を特定し、特定した位置を表示位置とする表示位置決定部と、表示位置に前記案内情報を表示する画像出力部とを備える。
【0009】
また、本発明のナビゲーション装置は、地図を記憶する地図記憶部と、地図上における自車位置を取得する自車位置取得部と、地図上における目的地を設定する目的地設定部と、地図と現在地と目的地とに基づいて経路を作成する経路作成部とを更に備えていてもよい。
【0010】
また、障害物検知部は、自車前方の風景画像を撮影する撮影部と、撮影部で撮影された画像を解析して障害物を特定する画像解析部とを含んでいてもよい。
【0011】
また、本発明のナビゲーション装置は、案内情報特定部が特定した案内情報と障害物検知部が検知した各障害物に、利用者に提示すべき優先順位を付する優先度決定部を更に備えていてもよい。このときに、表示位置決定部は、案内情報より優先度が高い障害物との重畳面積が少ない位置を表示位置とする。
【0012】
表示位置決定部は、案内情報と障害物とが重畳するときに、案内情報の表示方法を、障害物の視認性が向上する表示方法に変更してもよい。
【0013】
より具体的には、表示位置決定部は、重畳面積が低減するように、案内情報の形状を変形することを決定してもよい。また、表示位置決定部は、表示位置において、案内情報を非表示にすることを決定してもよい。
【0014】
また、本発明のナビゲーション装置は、平面上における表示位置付近の色彩を判断する色彩判断部と、案内情報の色彩を、色彩判断部が判断した色彩とは異なる色彩にすることを決定する色彩決定部とをさらに備えていてもよい。
【0015】
また、本発明のナビゲーション装置は、車両前方から入射する光の光量を取得する光量取得部と、光量取得部が取得した光量に基づいて、案内情報の輝度を決定する輝度決定部とをさらに備えていてもよい。
【0016】
画像出力部は、案内情報を自車のフロントガラスに投影して表示するものであってもよい。また、画像出力部は、ディスプレイに表示した実風景画像上に案内情報を重ねて表示するものであってもよい。
【0017】
本発明に係るナビゲーション方法は、実風景に重ねて表示した案内情報によって利用者を誘導するナビゲーション装置で実行されるナビゲーション方法であって、1以上の案内情報の中から提示する案内情報を特定する案内情報特定ステップと、自車前方の風景を平面的に捉えたときの当該平面上の障害物の位置を特定する障害物検知ステップと、平面上に案内情報を表示したときに障害物との重畳面積が少ない位置を特定し、当該位置を表示位置とする表示位置決定ステップと、表示位置に案内情報を表示する画像出力ステップとを備えていてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るナビゲーション装置は、実風景上に、運転の妨げにならないように案内情報を表示することができる。すなわち、本発明に係るナビゲーション装置は、歩行者や信号機などの運転者が見落としてはならない障害物、及び、車線看板や町名看板など運転者に有用な情報を与える障害物を検知して、それらの障害物と重ならない位置に案内情報を表示する。したがって、本発明のナビゲーション装置を利用した運転者は、直感的にかつ正確に進むべき方向を把握できるだけでなく、周囲の安全にも配慮して運転を行うことができる。
【0019】
また、本発明の一局面によれば、検知された障害物に、利用者への提示優先順位が付される。そして、案内情報よりも優先度が高い障害物の視認性が、案内情報を表示することによって著しく低下しないように、案内情報の表示位置や表示方法が決定される。
【0020】
また、本発明のさらに他の局面によれば、背景の色彩情報や輝度情報を基に、案内情報の色彩と輝度とを決定する。よって、表示される案内情報は利用者が認識しやすいものになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るナビゲーション装置の構成図である。図1に示すナビゲーション装置は、自車位置取得部1、地図記憶部2、目的地設定部3、経路作成部4、案内情報特定部5、障害物検知部6、優先度決定部7、表示位置決定部8、及び、画像出力部9を備えている。
【0022】
自車位置取得部1は、自車の位置情報と自車の姿勢(向き・傾き)情報とを取得する。ここで、位置情報とは、経度及び緯度で特定される場所の情報である。位置情報は、例えば、GPS(Global Positioning System)を用いたり、車速センサとジャイロセンサを組み合わせて用いたりすることによって取得できる。姿勢情報とは、自車の向き(方位)や傾きを表す情報であって、ジャイロセンサなどを用いれば取得できる。
【0023】
自車位置取得部1で取得される位置・姿勢情報の精度は、一般に利用されているカーナビゲーション装置が備えている自車位置取得部で取得される程度の精度であればよい。位置・姿勢情報の精度を向上させる方法としては、例えば、車速や傾きなどの情報によって自車位置を特定する自律航法を採用し、自律航法で得られた位置情報をGPS受信機で取得した位置情報で補正する手法がある。
【0024】
なお、RealTime Kinematic−GPSを用いれば、経度緯度座標をより精度良く求めることができる。また、自律航法を採用する際に、光ジャイロを用いれば、ジャイロセンサに特有のドリフト誤差を抑えることが可能であり、姿勢情報の精度向上が期待できる。
【0025】
地図記憶部2は、一般的なナビゲーション装置に用いられているデジタル形式の地図情報等を記憶する記憶部である。具体的には、HDD(Hard Disk Drive)やDVD(Digital Versatile Disk)等が地図記憶部2となり得る。
【0026】
目的地設定部3は、利用者が目的地を設定する際に利用される。これを実現するために、目的地設定部3は、ポインティングデバイスやキーボードやリモートコントローラなどの入力部と表示部とを備えていればよい。より具体的には、ポインティングデバイスで差された地図上の位置の経緯及び緯度を取得したり、利用者が携帯電話等でインターネットサイトにアクセスして得た経度及び緯度を受信又は入力したりできる構成を備えていればよい。
【0027】
経路作成部4は、自車位置取得部1と地図記憶部2と目的地設定部3とから取得した、自車位置姿勢情報と地図情報と目的地位置情報とを用いて、現在位置から目的地までの経路を作成する。経路を作成する方法としては、一般的に知られているダイクストラ法などの方法を用いてもよい。
【0028】
案内情報特定部5は、案内情報を提示する地点、又は、案内情報を提示するために処理を開始する地点を特定する。また、案内情報特定部5は、複数の案内情報の中からいずれかを提示する場合には、提示する案内情報(経路誘導用画像)も特定する。
【0029】
障害物検知部6は、車両の周辺に存在する歩行者や信号機など、運転者が注意しなければならないものや配慮する必要があるもの(以下、これらを総称して障害物という)を検知し、検知した障害物の位置や種類を特定して、その情報(障害物情報)を作成する。ここで、障害物の位置とは、車両前方の風景を平面的に、つまり二次元画像として捉えたときの平面上の位置である。障害物検知部6は、具体的には、カメラと画像処理装置や、赤外線レーダ装置、また、歩行者が保有する携帯電話端末や障害物に取り付けた発信機から発信された信号を受信する受信機などが考えられる。障害物検知部6は、障害物の位置と大まかな種類とを特定できるものであれば、どのような検知形態を採るものであってもよい。
【0030】
優先度決定部7は、案内情報特定部5と障害物検知部6とでそれぞれ特定された案内情報と障害物とに、利用者にとっての重要度に応じた優先度(優先順位)を付ける。例えば、歩行者や信号機など、運転者が見落としてはならない障害物には高い優先度が付され、また、比較的遠くの前方を走行する車や自車から離れてゆく車などには、低い優先度が付される。
【0031】
なお、案内情報は、画像出力部9から出力されるまでユーザには認知されない仮想物であり、障害物は、利用者前方に実在する現実物である。このように、案内情報と障害物とではその特性が異なっているが、ナビゲーション装置が保持する全ての案内情報と検出可能な全ての障害物に対して、予め優先度を設定しておけば、設定されている優先度を参照して、提示する案内情報と検出された障害物とに優先度を付することができる。
【0032】
表示位置決定部8は、優先度決定部7によって決定された優先度に基づいて、案内情報を表示する位置を決定する。なお、ここでいう位置は、自車から見える風景を平面的に捕らえたときの、平面上の位置である。このときに、案内情報よりも優先度が高い障害物が案内情報の後ろに隠されてしまわないように、案内情報を表示する位置が選択される。基本的には、表示位置決定部8は、障害物が存在しない位置か、又は案内情報よりも優先度が低いと判断された障害物の上に案内情報を表示することを決定する。また、このような位置が無いために、優先度が高い障害物の上に案内情報を表示しなければならない場合には、表示位置決定部8は、案内情報の視認性が通常表示した場合よりも向上するような表示方法で案内表示を行うことを決定する。
【0033】
画像出力部9は、表示位置決定部8で決定された位置に案内情報を表示する。画像出力部9の具体例として、プロジェクタとスクリーンの組み合わせやディスプレイなどが挙げられる。なお、ナビゲーション装置は、画像出力部だけでなく、案内音声を出力するスピーカ(音声出力部)も備えていてもよい。
【0034】
なお、上記各部、特に、目的地設定部3、経路作成部4、案内情報特定部5、障害物検知部6、優先度決定部7、及び表示位置決定部8で行われる処理の全部又は一部は、コンピュータプログラムにより実現されてもよい。
【0035】
次に、本実施形態に係るナビゲーション装置のより具体的な機器構成を例に挙げて、ナビゲーション装置で行われる処理の詳細を説明する。図2に示すナビゲーション装置100は、車両位置・姿勢検出部10、HDD20、ポインティングデバイス30を備えたTFT液晶ディスプレイ35(以下、ディスプレイ35と記す)、カメラ40、演算処理部50、映像投影部90、及びスピーカ95を備える。
【0036】
ここで、図2に示す各部と図1に示す各部との対応を説明する。図2に示す車両位置・姿勢検出部10は、図1に示す自車位置取得部1に相当する。車両位置・姿勢検出部10は、GPS受信部11及びジャイロセンサ12を備える。HDD20は、図1に示す地図記憶部2に相当する。ポインティングデバイス30、ディスプレイ35、地図データ等を記憶したHDD20、及び演算処理部50で、図1に示す目的地設定部3が実現される。カメラ40及び演算処理部50で障害物検知部6が実現される。演算処理部50は、この他にも、図1に示す経路作成部4、案内情報特定部5、優先度決定部7、及び表示位置決定部8としての機能も果たす。そして、映像投影部90とスピーカ95とは、図1に示す画像出力部9に相当する。映像投影部90は、プロジェクタ91とスクリーン92とを備える。
【0037】
なお、ナビゲーション装置100は、電源を自車から取得する構成になっていることが望ましい。例えば、ナビゲーション装置100をアクセサリ電源に接続しておき、自車のエンジンがオン状態のときにはナビゲーション装置が動作モードに、また、オフ状態のときには省電力待機モードになるようにしてもよい。
【0038】
演算処理部50は、CPU51、ROM52、及びRAM53を備えている。ROM52には、画像表示位置のキャリブレーション、経路作成処理、障害物検知処理、優先度決定処理、及び案内情報表示位置決定処理などの処理を行うためのプログラムが記憶されている。
【0039】
HDD20は、地図データを記憶している。HDD20が保持する最低限の地図データとしては、経路探索処理に必要な道路ネットワーク情報データ、目的地を決定する際に利用されるランド情報情報データ、及び地名情報データなどが考えられる。
【0040】
HDD20は、案内情報のテンプレート画像も記憶している。図3(a)〜(c)は、案内情報のテンプレート画像の一例であって、(a)は右折誘導の際に表示する案内情報131、(b)は左折誘導の際に表示する案内情報132、(c)は目的地を示す案内情報133である。案内情報131又は案内情報132を提示する場合には、交差点までの距離を情報の付近に数値表示するようにしてもよい。案内情報133は、利用者の視野内に目的地が存在するときに提示する情報である。
【0041】
上記以外にも、HDD20は、優先度テーブル(図10参照)も記憶している。ここで、優先度テーブルとは、案内情報や障害物の名称と、その案内情報や障害物の優先度が記載されたテーブルである。
【0042】
映像投影部90は、Head Up Display(以下、HUDと記す)用のプロジェクタ91と背面投影型スクリーン92(以下、スクリーン92という)とを備えている。図4に示すように、プロジェクタ91とスクリーン92とは、車両101の内部に配置される。
【0043】
プロジェクタ91が出力した画像は、スクリーン92を透過してフロントガラス102に投影される。このときに、フロントガラス102で反射した画像は、虚像130として運転者に認識される。この虚像130は、利用者には、フロントガラス102の前方の、スクリーン92とフロントガラス102との間の距離だけ離れた位置に浮かび上がって見える。
【0044】
カメラ40は、撮影される画像と利用者が見ている風景とがほぼ一致するように、利用者の目線位置に固定されることが望ましい。カメラ40は、CCDカメラやCMOSカメラなど、撮影された画像を画素単位で解析可能なカメラであればよい。なお、カメラ40が障害物の検知のみに用いられて、撮影された画像が利用者の目に触れないのであれば、すなわち、ディスプレイ35に表示されないのであれば、カメラ40の解像度は、障害物を特定できる程度あれば十分である。
【0045】
図3(a)に示した案内情報131をプロジェクタ91がスクリーン92に投影したときに、カメラ40は図5に示すような案内情報135が表示された風景画像を撮影する。また、図5に示す風景は、利用者がフロントガラス102を通して見る風景でもある。図5において、町名看板140、信号機141、車線看板142、道路143、及び建物144は実在物である。そして、これらの実在物の手前に、虚像である案内情報135が浮かんで見えている。
【0046】
HUDを用いれば、図5に示すように、利用者の前方の実風景上に案内情報135を表示することができるので、利用者は、視線を移動させずに案内情報135を確認して、進路を把握することができる。なお、HUDは、主に航空機などに利用されてきたが、最近では車速等を焦点表示する車載用のものも一般的になっている。
【0047】
プロジェクタ91は、案内情報135の明るさを2000lm程度で表示できるものであれば、現在一般的に利用されているものを利用してもよい。画像の輝度は、プロジェクタ91とスクリーン92との距離によって変化する。すなわち、プロジェクタ91とスクリーン92との距離が長くなれば、スクリーン92上に投影される画像のサイズは大きくなって、画像の輝度は下がる。
【0048】
なお、一般に、日中の屋外の輝度は約10,000カンデラパー平方メートル(cd/m2)と知られているが、フロントガラス102に施された減光処理によって、車内から見た車外の輝度はこれよりも下がる。そのため、日中でも、フロントガラス102に1,800(cd/m2)の輝度値で案内情報131が投影されていれば、案内情報135を十分に認識することができる。
【0049】
次に、本実施形態に係るナビゲーション装置100で行われる処理を、図6及び図7のフローチャートと図8を用いてより具体的に説明する。ナビゲーション装置100が起動されると、まず、車両位置・姿勢検出部10は、GPS受信部11及びジャイロセンサ12を用いて位置情報と姿勢情報(初期位置・姿勢情報)を取得する(ステップS11)。このときに、姿勢情報は、前回エンジンを停止した際に取得していた姿勢情報をそのまま用いてもよいし、磁気コンパスを用いて真方向を求めてもよい。走行中の姿勢情報は、初期値からの変化量に基づいて求められる。
【0050】
次に、画像投影部90とカメラ40とを用いて、画像投影位置のキャリブレーションが行われる(ステップS12)。このキャリブレーションは、プロジェクタ91のどの位置から投影した画像が、利用者前方のどの位置に表示されて見えるかを把握するために行われる。より具体的には、キャリブレーションは、プロジェクタ91が投影した画像をカメラ40で撮影し、撮影された画像を解析することによって行われる。なおキャリブレーション方法の詳細な例については後述する。
【0051】
ステップS12でキャリブレーションが終了すると、ディスプレイ35には目的地設定用の画面が表示される。ここで、目的地設定用の画面とは、住所入力画面や地図画面である。利用者は、ポインティングデバイス30を用いて、ディスプレイ35に表示された都道府県名や市町村名から目的地の住所を選択したり、表示された地図上の目的地を差し示したりして、目的地の経度及び緯度を特定する。特定された目的地の経度及び緯度は、演算処理部50に入力されて、RAM53に記憶される。
【0052】
次に、演算処理部50は、ステップS11で取得した初期位置・姿勢情報と、ステップS13で設定した目的地情報と、HDD20に保持されている地図情報とを用いて、経路情報を作成する(ステップS14)。ダイクラストラ法などを用いた経路作成方法は、現在のナビゲーション装置でも一般的に利用されているので、本明細書では説明を省略する。
【0053】
なお、前方風景の輝度が高いと、画像投影部90から投影された画像の視認性が低下するので、例えば夕方であれば、西日が直接入射しない経路を選択するように重みを付けて経路を選択してもよい。
【0054】
経路が作成されると、演算処理部50は、作成した経路上の案内情報を提示する地点(以下、案内情報提示地点という)を、経度及び緯度で特定する(ステップS15)。特定された経度及び緯度はRAM53に記憶される。
【0055】
より具体的には、演算処理部50は、ステップS14で作成された経路情報に、案内情報提示地点の条件を照らし合わせて、条件に当てはまる地点の経緯度を、条件毎に特定する。ここで案内情報提示地点とは、例えば右折又は左折する交差点の手前700m、300m、100m、及び10mといった地点である。このような条件は予めRAM53等に記憶しておく。そして、演算処理部50で特定された案内情報提示地点データは、その地点で提示する案内情報のデータと関連付けられてRAM53等に記憶される。
【0056】
ステップS15において案内情報提示地点が特定されると、演算処理部50は、車両位置・姿勢検出部10から現在地情報を取得して(ステップS16)、現在の車両位置がステップS15で決定された案内情報提示地点か否かを判定する(ステップS17)。判定の結果、案内情報提示地点でなければ(ステップS17のNO)、再度現在地情報が取得される(ステップS16)。
【0057】
一方、案内情報提示地点であると判定された場合には(ステップS17のYES)、演算処理部50は、その地点で提示する案内情報を特定する(図7のステップS21)。このときにCPU51は、図8(a)に示すように、提示する案内情報に関する情報(名称やキーワード等)を、RAM53の対象物テーブルに書き込む。
【0058】
次に、障害物検知処理が行われる(ステップS22)。より具体的には、まず、カメラ40で車両前方の風景が撮影される。そして、撮影された画像が、演算処理部50で画像処理されて、画像内の信号や歩行者などの障害物が検出される。また、障害物が車やバイクである場合には、接近速度も測定される。CPU51は、検出された障害物の名称や接近速度などの情報を、図8(b)に示すように、RAM53の対象物テーブルに書き込む。なお、接近速度は、例えば、カメラ40が取得した画像から車両やバイクを抽出し、次に、車両等が存在する領域をステレオ撮影して車両等までの距離を測定し、時間当たりの距離の変化を算出することにより得られる。
【0059】
ステップS22で行われる画像処理方法としては、色情報やパターンマッチングによって物体の種類を特定する方法等が考えられる。例えば、車線看板は青色で矩形状をしているので、色情報とパターンマッチングを用いれば特定可能である。なお、パターンマッチングなどの障害物検知処理を行う際には、障害物でないものを障害物と誤認識することよりも、障害物を見逃してしまうことの方が利用者にとって危険であるため、障害物検出のためのパラメータ(閾値)の設定は甘めにしておくことが望ましい。
【0060】
次に、演算処理部50は、優先度決定処理を行い(ステップS23)、次いで表示位置選定処理を行う(ステップS24)。そして、プロジェクタ91は、優先度決定処理及び表示位置選定処理で決定された案内情報の表示位置に、決定された表示方法で案内情報を投影する(ステップS25)。投影が終わると、現在位置情報が取得されて(ステップS26)、現在地が目的地であるか否かが判断される(ステップS27)。目的地に到達していなければ(ステップS27のNO)、図6のステップS17に戻る。また、目的地に到達した場合には(ステップS27のYES)、ナビゲーション装置は経路誘導を終了する。
【0061】
ここで、ステップS23の優先度決定処理の詳細を、図9のフローチャートと図10及び図11を用いて説明する。
【0062】
まず、CPU51は、RAM53の対象物テーブルに記載された各対象物に、優先度を付ける(図9のステップS31)。このときに、図10に示す優先度テーブルが参照される。
【0063】
図10に示す優先度テーブルには、対象物の名称と接近速度、優先度、及び補足情報が記載されている。優先度テーブルの優先度欄に記載されている数値のうち、「0」は、最も優先度が高いことを示しており、数値が大きくなる程優先度が低いことを示している。
【0064】
図10に示す優先度テーブルでは、案内情報の優先度を、交差点までの距離に応じて変化させている。例えば、交差点手前700mで提示する案内情報よりも、交差点手前300mで提供する案内情報の方が、利用者には有益な情報であると考えられるために、交差点手前700mで提示する案内情報の優先度を「4」とし、交差点手前300mで表示する案内情報の優先度を「3」としている。
【0065】
なお、走行地などによって障害物の重要度は異なる場合もあるので、図10に示す優先度テーブルの内容や優先度の高さは、利用者が変更できるようにしておいてもよい。
【0066】
また、図10に示す優先度テーブルでは、障害物が車両である場合には、接近速度によって優先度を異ならせている。これは、同じ車線上で同方向に走行する車であっても、反対車線を走行する車であっても、自車との相対速度によって利用者への危険度が異なると考えられるためである。したがって、図10に示す優先度テーブルでは、相対速度が小さい車両ほど、優先度を高く設定している。
【0067】
なお、図10に示す優先度テーブルの右端欄にある補足情報を用いて、さらに優先度を詳細に設定することも考えられる。一例を挙げると、「右折レーン」を示す車線看板が障害物として検出されたときに、利用者にとってのその車線看板の重要度は、前方の交差点を右折する場合と直進する場合とで異なる。したがって、右折レーンの車線看板が検出されたときに右折する場合には、優先度テーブルに記載されている値よりも1つ高い優先度の値を対象物テーブルに書き込むようにしてもよい。
【0068】
図11(a)は、優先度が書き込まれた後の対象物テーブルを示している。対象物テーブルへの優先度の書き込みが終了すると、次に、演算処理部50は、対象物テーブルに記載されている障害物のうち、案内情報と優先度が同じものが存在するか否かを判断する(図9のステップS32)。案内情報と同じ優先度の障害物が存在した場合(ステップS32のYES)、演算処理部50は、該当する障害物の優先度が、現在の優先度よりも1つ高くなるように優先度の値を書き換える(ステップS34)。例えば、図11(a)に示す車両1の優先度は、案内情報と同じ「3」であるので、対象物テーブルの車両1の優先度は、図11(b)に示すように「2」に書き換えられる。
【0069】
案内情報と同じ優先度の全ての障害物について、優先度が変更された後には(ステップS33)、又は、案内情報と同じ優先度の障害物が始めから存在しなかったときには(ステップS32のNO)、対象物テーブルに記載されている優先度の値が確定値とされる(ステップS34)。以上に説明した処理後の優先度が記載された、図11(b)に示す対象物テーブルでは、案内情報の優先度よりも低い優先度の障害物は、町名看板だけになっている。
【0070】
以上によって、優先度決定処理が行われた後には、表示位置選定処理が行われる。表示位置選定処理については、図12及び図13のフローチャートと、図14とを用いて説明する。
【0071】
まず、演算処理部50は、障害物検知処理のためにカメラで撮影された画像における重要障害物が存在する領域(以下、重要障害物存在領域150という)を特定する(図12のステップS41)。ここで、重要障害物存在領域150とは、図14に示す破線で囲まれた四角形領域であって、提示する案内情報よりも優先度が高いと判断された障害物(重要障害物)を完全に含む領域である。図14に示す町名看板140のように、提示する案内情報よりも優先度が低い障害物が存在する領域は、重要障害物存在領域150には含まれない。
【0072】
次に、演算処理部50は、表示しようとしている案内情報の情報をHDD20から読み出して、その情報の大きさを特定する(ステップS42)。ここで、案内情報の大きさとは、通常表示する場合の案内情報の縦及び横方向の長さである。
【0073】
次に、演算処理部50は、案内情報を通常の大きさで表示できる領域(以下、通常表示可能領域という)を探索する(ステップS43)。具体的には、例えば、図14に示すように、ステップS42で特定された大きさの探索窓160を画面の左上から順にスライドさせて、探索窓160と重要障害物領域150との重畳面積が最小となる領域を検索し、重畳面積が0となる領域を通常表示可能領域とすることが考えられる。また、重畳面積が0となる領域が存在しなかった場合でも、CPU51は、重畳面積が最小となる領域の位置情報をRAM53に記憶する。
【0074】
重畳面積が0となる通常表示可能領域が存在すれば(ステップS44)、その位置を案内情報表示位置とすることが決定される(ステップS45)。また、通常表示可能領域が存在しなければ(ステップS44のNO)、その案内情報の優先度を対象物テーブルから読み出して、その値が所定値より低いか否かが判断される(図13のステップS51)。
【0075】
案内情報の優先度が所定値未満であると判断された場合には(ステップS51のYES)、案内情報を表示しないことが決定される(ステップS52)。例えば、所定値を2とした場合には、優先度が3及び4である交差点手前300m及び700mで提示する案内情報は表示されない。判断に用いる所定値は、利用者が変更できるようになっていてもよい。なお、案内情報を提示しないことが決定された場合には、音声による案内のみを行うようにしてもよい。
【0076】
また、案内情報の優先度が所定値未満でないと判断された場合には(ステップS51のNO)、ステップS43で特定された、探索窓160との重畳面積が最小であった領域に案内情報を表示するための処理が行われる。そのために、まず、ステップS43で特定された領域の大きさにまで案内情報を変形することが可能か否かが判断される(ステップS53)。
【0077】
図15(a)に示す通常の大きさの案内情報を変形する一つの方法としては、図15(b)に示すように、単純に画像の縦方向と横方向とを縮小する方法がある。また、別な方法として、図15(c)に示すように、案内情報の上の部分と下の部分とで縮小率をに変化させる方法もある。この方法は、通常の大きさで表示すると、案内情報の上の部分だけが障害物エリアに入ってしまう場合に有効である。
【0078】
案内情報の画像情報には、識別できる最低限の大きさまで変形した際の変形度合いを表す変形限界値情報を付加しておく。そして、ステップS53では、表示しようとしている領域の大きさにまで案内情報を縮小した場合に、変形値がその案内情報の変形限界値を超えるか否かが判断される。演算処理部50は、変形値が変形限界値を超えない場合には変形可能と判断して(ステップS53のYES)、案内情報の変形を決定する(ステップS54)。一方、変形値が変形限界値を超える場合には(ステップS53のNO)、演算処理部50は、表示方法を変更することを決定する(ステップS56)。なお、表示する案内情報が文字である場合には、変形によって認識できなくなる可能性が高いので、文字情報は変形不可能な情報として取り扱えばよい。
【0079】
変更後の表示方法は、通常の表示を行った場合よりも視認性が向上するような表示方法であればよい。視認性が向上する方法としては、例えば、表示時間を通常よりも短縮したり、点滅表示したり、案内表示の色彩を淡色化したりする方法などが考えられる。
【0080】
次に、前述したステップS12の画像投影位置のキャリブレーション方法の一例を、図16〜図18を用いて説明する。図16(a)に示す画像は、キャリブレーションに使用されるテストパターンの一例である。このテストパターン180は、方形の4隅のうち対角に位置する2隅がマーキングされている。このようなテストパターン180は、図17に示すように、プロジェクタ91からスクリーン92を介して、フロントガラス102に投影される。キャリブレーションは、プロジェクタ91が投影する画像と、投影した画像をカメラ40で撮影した画像とを用いて行われる。
【0081】
なお、テストパターンには、図16(b)に示すような方形の4隅をマーキングしたテストパターン181を用いてもよいし、図16(c)に示すような格子状のテストパターン182を用いてもよい。テストパターン182を用いる場合には、各グリッドの色を異ならせておけば、複雑な計算を行わなくとも、各グリッドが投影された位置を知ることができる。
【0082】
図18(a)及び(b)は、プロジェクタ91が投影する画像183と、そのときにカメラ40で撮影される画像184とを示している。プロジェクタ91が投影する画像位置と撮影された画像位置との対応関係を示すデータは、RAM53又はHDD20に記憶される。つまり、図18(a)に示す左上から一番目の画素は、カメラ40の画素部の左上から1番目とその右隣である2番目の画素に対応するというように、対応表が作成されて記憶される。キャリブレーションで設定された目盛りは、障害物検知処理(図7のステップ22)や表示位置選定処理(ステップS24)等で利用される。
【0083】
なお、カメラ40やプロジェクタ91の設置位置や向きが頻繁に変更されないのであれば、複数回の起動につき1回だけキャリブレーションが行われるようにしてもよい。また、キャリブレーション精度が保証される場合には、複数画素を単位として扱うようにして、情報処理量や保存するデータ量を低減してもよい。
【0084】
なお、本実施形態では、映像投影部90にHUDを用いた場合を例に説明したが、HUDを用いずに、カメラ40で撮影した前方風景画像に案内情報画像を重畳した画像を、ディスプレイ35に表示するようにしてもよい。なお、本発明のナビゲーション装置をバイクとヘルメットとに取り付ける構成にして、バイザーに案内情報を表示すれば、提供される情報量が少ないバイクのナビゲーション装置としても利用できる。
【0085】
本実施形態に係るナビゲーション装置は、実風景に重ねて案内情報を表示する際に、歩行者や信号機などの運転者が見落としてはならない障害物、及び、車線看板や町名看板など運転者に有用な情報を与える障害物を検知して、その優先度を決定する。そして、案内情報よりも優先度が高い障害物の視認性が、案内情報を表示することによって著しく低下しないように、案内情報の表示位置や表示方法が決定される。したがって、表示された案内情報が運転の妨げになるようなことがない。よって、本実施形態に係るナビゲーション装置を利用した運転者は、直感的にかつ正確に進むべき方向を把握出来るだけでなく、周囲の安全にも配慮して運転することができる。
【0086】
(第2の実施形態)
図19は、本発明の第2の実施形態に係るナビゲーション装置の構成図である。本実施形態に係るナビゲーション装置は、案内情報の視認性の向上を目的として、第1の実施形態に係るナビゲーション装置に、車外光量取得部201、彩度取得部202、及び輝度・彩度決定部203を付加した構成になっている。なお、本実施形態で説明するナビゲーション装置の構成要素のうち、第1の実施形態ですでに説明した構成要素と同じ構成要素には同じ符号を付けて説明を省略する。
【0087】
車外光量取得部201は、自車前方風景の輝度情報を取得する。彩度取得部202は、
表示位置決定部8で決定された案内情報を表示する領域付近の彩度情報を取得する。そして、輝度・彩度決定部203は、車外光量取得部201で取得された輝度情報と、彩度取得部202で取得された彩度情報とに基づいて、表示する案内情報の輝度と彩度とを決定する。画像出力部9は、表示位置決定部8で決定された位置に、輝度・彩度決定部203で決定された輝度及び彩度で案内情報を表示する。
【0088】
次に、ナビゲーション装置のより具体的な機器構成を例に挙げて、本実施形態に係るナビゲーション装置で行われる処理の詳細を説明する。図20に示すナビゲーション装置200は、第1の実施形態で図2を用いて説明したナビゲーション装置に、輝度計測部210を付加した構成になっている。
【0089】
ここで、図20に示す各部と図19に示す各部との対応を簡単に説明する。図20に示す輝度計測部210は、図19に示す車外光量取得部201に相当する。輝度計測部210は、自車両の前方方向から入射する光の輝度を計測するために設けられる。図19に示す彩度取得部202と輝度・彩度決定部203は、カメラ40と演算処理部50との組み合わせによって実現される。
【0090】
図21は、ナビゲーション装置200で行われる処理の一部を示すフロー図である。ナビゲーション装置200では、図6及び図21に示す処理が行われる。図21に示す処理は、図7に示す処理にステップS28の処理を追加したものである。ステップS28の処理の詳細は、図22のフロー図を用いて説明する。なお、図21に記載している処理のうち、第1の実施形態で図7を用いて説明した処理と同じ処理には、同じステップ番号を付して説明を省略する。
【0091】
案内情報を表示する位置は、図21のステップS24の表示位置決定処理によって決まることは、第1の実施形態で説明した通りである。この処理によって、図23に示す車両前方風景画像上の、太破線で囲まれた領域230に案内情報を表示することが決定された後に、CPU51は、輝度計測部210で計測された車外の輝度を取得する(図22のステップS61)。取得された輝度はRAM53に記憶される。
【0092】
次に、演算処理部50は、図23に示す画像のうち、案内情報を表示する領域230、又は、案内情報を表示する領域よりも一回り大きな領域240の色彩情報を取得する(ステップS62)。なお、色彩情報を取得する領域の広さを、領域230にするか領域240にするかは、予め定めておけばよい。
【0093】
色彩情報の検出方法としては、領域230又は240に含まれる各画素が取得した彩度の平均を求める方法などが考えられるが、領域230又は240の代表的な色の情報を取得できる方法であれば、どのような方法を用いても構わない。
【0094】
次に、演算処理部50は、取得した色彩情報に基づいて、表示する案内情報の色彩を決定する(図22のステップS63)。例えば、図23に示す画像において、案内情報を表示する領域230に、緑色の葉が茂った木が写っており、ステップS62で特定された領域230の色が緑色であったとする。この領域に、背景色と同色である緑色で案内情報が表示された場合には、利用者は案内情報を認識できないおそれがある。従って、演算処理部50は、案内情報の色を領域230の色彩とは異なる色彩で表示するために、案内情報の色彩を決定する。色彩の決定方法には、図24に示すCIE表色系などを用いて、色度の距離が離れているものを選択する方法などが考えられる。
【0095】
なお、ステップS62において、領域230又は240の内部全体の色情報を求めずに、領域230又は240の内部のうち、案内情報135の外側の色情報だけを求めるようにすれば、案内情報の色彩をより認識しやすい色彩にすることができる。
【0096】
色彩が決定されると、演算処理部50は、提示する案内情報の輝度を決定する(ステップS64)。このときに、案内情報の輝度値は、案内情報の周囲と案内情報とのコントラスト比が、利用者にとって適当なコントラスト比になるように設定するとよい。HUDを用いてフロントガラスに画像を投影する場合、最も低い輝度は、前方からフロントガラスに入射する光の輝度である。また、最も高い輝度は、プロジェクタが投影する白色画像の輝度である。演算処理部50は、前方から入射する光と投影する画像とのコントラスト比が所定値以上になるように、望ましくは1:20程度になるように、投影する画像の輝度を決定する。
【0097】
トンネルなど暗い場所を通過するときに、トンネル外の明るい場所と同じ輝度で案内情報が表示されると、案内情報が明るすぎて、利用者の運転の妨げになるおそれがある。また、常時同じ色で案内情報が表示されていると、背景に案内情報が埋もれてしまうおそれもある。本実施形態に係るナビゲーション装置は、背景の色彩情報や輝度情報を基に案内情報の色彩と輝度とを決定するために、提示される案内情報は利用者が認識しやすいものになる。
【0098】
なお、映像投影部90として、HUDを用いる場合には、予め、プロジェクタの投影出力と投影された画像の輝度との関係を求めておけば、所望の輝度値で表示するために必要な出力が分かる。画像の輝度は、輝度計測部210を用いて測定してもよいし、投影出力と画像投影位置までの距離と投影先(フロントガラス)の反射率を基に演算して求めてもよい。なお、輝度計測部210を設けない場合には、車外の輝度はカメラ40が撮影した画像のから求めるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明のナビゲーション装置は、実風景に重ねて表示した案内情報によって利用者を誘導する、車両等に搭載されるナビゲーション装置等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るナビゲーション装置の構成図
【図2】図1に示すナビゲーション装置の具体的な機器構成の一例を示す図
【図3】案内情報の例を示した図
【図4】HUDを使用した場合の画像投影方法を説明する図
【図5】案内情報が表示されているときの車両前方の風景図
【図6】図2に示すナビゲーション装置で行われる処理手順を示すフローチャート
【図7】図6の続図
【図8】案内情報や障害物の情報が記載された対象物テーブルを示す図
【図9】優先度決定処理の処理手順を示すフローチャート
【図10】優先度テーブルの一例を示す図
【図11】優先度が記載された対象物テーブルを示す図
【図12】表示位置選定処理の処理手順を示すフローチャート
【図13】図12の続図
【図14】案内情報の表示位置の決定方法を説明する図
【図15】案内情報の変形例を示す図
【図16】画像表示位置のキャリブレーションを行うためのテストパターン画像の一例を示す図
【図17】テストパターンの投影の様子を説明する図
【図18】投影するテストパターン画像とカメラで撮影されるテストパターンを示す図
【図19】本発明の第2の実施形態に係るナビゲーション装置の概念図
【図20】図19に示すナビゲーション装置の具体的な機器構成の一例を示した図
【図21】図20に示すナビゲーション装置で行われる処理手順を示すフローチャート
【図22】案内情報表示色・輝度決定処理の処理手順を示すフローチャート
【図23】表示する案内情報の色彩を決定する方法を説明するための図
【図24】CIE表色系図
【符号の説明】
【0101】
1 自車位置取得部
2 地図記憶部
3 目的地設定部
4 経路作成部
5 案内情報特定部
6 障害物検知部
7 優先度決定部
8 表示位置決定部
9 画像出力部
201 車外光量取得部
202 彩度取得部
203 輝度・彩度決定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実風景に重ねて表示した案内情報によって利用者を誘導するナビゲーション装置であって、
1以上の案内情報の中から提示する案内情報を特定する案内情報特定部と、
自車前方の風景を平面的に捉えたときの当該平面上の障害物の位置を特定する障害物検知部と、
前記平面上に前記案内情報を表示したときに前記障害物との重畳面積が少ない位置を特定し、当該位置を表示位置とする表示位置決定部と、
前記表示位置に前記案内情報を表示する画像出力部とを備えたナビゲーション装置。
【請求項2】
地図を記憶する地図記憶部と、
前記地図上における自車位置を取得する自車位置取得部と、
前記地図上における目的地を設定する目的地設定部と、
前記地図と前記自車位置と前記目的地とに基づいて経路を作成する経路作成部とを更に備えた、請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項3】
前記障害物検知部は、
自車前方の風景画像を撮影する撮影部と、
前記撮影部で撮影された画像を解析して前記障害物を特定する画像解析部とを含む、請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項4】
前記案内情報特定部が特定した案内情報と前記障害物検知部が検知した各障害物に、利用者に提示する優先順位を付する優先度決定部を更に備え、
前記表示位置決定部は、前記案内情報より優先度が高い障害物との重畳面積が少ない位置を表示位置とすることを特徴とする、請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項5】
前記表示位置決定部は、前記表示位置において前記案内情報と前記障害物とが重畳するときに、前記案内情報の表示方法を、前記障害物の視認性が向上する表示方法に変更することを特徴とする、請求項4に記載のナビゲーション装置。
【請求項6】
前記表示位置決定部は、前記案内情報と前記障害物との重畳面積が低減するように、前記案内情報の形状を変形することを決定することを特徴とする、請求項5に記載のナビゲーション装置。
【請求項7】
前記表示位置決定部は、前記案内情報を非表示にすることを決定することを特徴とする、請求項5に記載のナビゲーション装置。
【請求項8】
前記平面上における前記表示位置付近の色彩を判断する色彩判断部と、
前記案内情報の色彩を、前記色彩判断部が判断した色彩とは異なる色彩にすることを決定する色彩決定部とをさらに備えた、請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項9】
車両前方から入射する光の光量を取得する光量取得部と、
前記光量取得部が取得した光量に基づいて、前記案内情報の輝度を決定する輝度決定部とをさらに備えた、請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項10】
前記画像出力部は、前記案内情報を自車のフロントガラスに投影して表示することを特徴とする、請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項11】
前記画像出力部は、ディスプレイに表示した実風景画像上に前記案内情報を重ねて表示することを特徴とする、請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項12】
実風景に重ねて表示した案内情報によって利用者を誘導するナビゲーション装置で実行されるナビゲーション方法であって、
1以上の案内情報の中から提示する案内情報を特定する案内情報特定ステップと、
自車前方の風景を平面的に捉えたときの当該平面上の障害物の位置を特定する障害物検知ステップと、
前記平面上に前記案内情報を表示したときに前記障害物との重畳面積が少ない位置を特定し、当該位置を表示位置とする表示位置決定ステップと、
前記表示位置に前記案内情報を表示する画像出力ステップとを備えたナビゲーション方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2006−162442(P2006−162442A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−354519(P2004−354519)
【出願日】平成16年12月7日(2004.12.7)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】