ナビゲーション装置及びマップマッチング方法
【目的】 正しく下りあるいは上り道路リンクを走行中であると判定する「ナビゲーション装置及びマップマッチング方法」を提供することである。
【構成】 地図データべースに道路リンクの勾配情報を持たせて記憶しておく。加速度センサー10は自動車の加速度を検出し、勾配判定部30は加速度センサーにより検出された加速度を用いて現在走行中の道路リンクの傾斜角θあるいはθに応じた値(sinθ)を求め、ついで、該傾斜角度と車速とから所定時間ΔTにおける高さ方向移動距離を求めて高低差として累積し、該累積した高低差Hが設定値THより大きくなった時、走行中道路リンクは上りリンクあるいは下りリンクであると判定し、マップマッチング処理部31は該判定結果と勾配情報を用いてマップマッチング処理を行う。
【構成】 地図データべースに道路リンクの勾配情報を持たせて記憶しておく。加速度センサー10は自動車の加速度を検出し、勾配判定部30は加速度センサーにより検出された加速度を用いて現在走行中の道路リンクの傾斜角θあるいはθに応じた値(sinθ)を求め、ついで、該傾斜角度と車速とから所定時間ΔTにおける高さ方向移動距離を求めて高低差として累積し、該累積した高低差Hが設定値THより大きくなった時、走行中道路リンクは上りリンクあるいは下りリンクであると判定し、マップマッチング処理部31は該判定結果と勾配情報を用いてマップマッチング処理を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はナビゲーション装置及びマップマッチング方法に係わり、特に地図情報を用いて自動車位置周辺の地図をディスプレイ装置に表示すると共に、自車位置マークを該地図上に表示するナビゲーション装置及びマップマッチング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナビゲーション装置は、車両の現在位置に応じた地図データをDVD,HDD等の地図データ記憶部から読み出してディスプレイ画面に描画すると共に、走行に応じて車両マ−クを地図上で移動させ、あるいは車両マークをディスプレイ画面の一定位置(例えばディスプレイ画面の中心位置)に固定表示して地図をスクロ−ル表示する。
地図データは、(1) ノ−ドデータや道路リンクデータ、交差点データ等からなる道路レイヤと、(2) 地図上のオブジェクトを表示するための背景レイヤと、(3) 市町村名などを表示するための文字レイヤなどから構成され、ディスプレイ画面に表示される地図画像は、背景レイヤと文字レイヤに基づいて発生され、マップマッチング処理や誘導経路の探索処理は道路レイヤに基づいて行われる。
かかるナビゲ−ション装置において、車両の現在位置を測定することが不可欠である。このため、従来は、車両に搭載した距離センサと方位センサ(ジャイロ)を用いて車両位置を測定する測定法(自立航法)、衛星を用いたGPS(Global Positioning System)による測定法(衛星航法)、両者を併用した方法が実用化されている。
【0003】
最近の車載ナビゲーション装置は自立航法と衛星航法を併用しており、通常は、自立航法により車両の位置、方位を推定すると共に、マップマッチング処理により推定車両位置を修正して走行道路上の実車両位置を求めるようにしている。そして、何らかの原因でパターンマッチング法によるマップマッチングが不可能になると、マップマッチング処理を初期化すると共に車両位置をGPSにより測定された位置とし、以後、自立航法により車両の位置、方位を推定し、またマップマッチング処理を開始し、推定車両位置を走行道路上の実車両位置に修正する。
【0004】
自立航法においては、距離センサと相対方位センサの出力に基づき積算により以下のようにして車両位置を検出する。図7は自立航法による車両位置検出方法の説明図であり、距離センサは車両がある単位距離L0(たとえば10m)走行する毎にパルスを出力するものとし、また、基準方位(θ=0)をX軸の正方向、基準方位から反時計方向回りを+方向とする。前回の車両位置を点P0(X0,Y0)、点P0での車両進行方向の絶対方位をθ0、単位距離L0走行した時点での相対方位センサの出力をΔθ1であるとすると、車両位置の変化分は、
ΔX=L0・cos(θ0+Δθ1)
ΔY=L0・sin(θ0+Δθ1)
となり、今回の点P1での車両進行方向の推定方位θ1と推定車両位置(X1,Y1)は、
θ1=θ0+Δθ1 (1)
X1=X0+ΔX=X0+L0・cosθ1 (2)
Y1=Y0+ΔY=Y0+L0・sinθ1 (3)
としてベクトル合成により計算できる。従って、スタート地点での車両の絶対方位と位置座標をGPSにより与えれば、その後、車両が単位距離走行する毎に、(1)〜(3)式の計算を繰り返すことにより車両位置をリアルタイムで検出(推定)できる。
【0005】
しかし、自立航法では走行するにつれて誤差が累積して推定車両位置が道路から外れる。そこで、マップマッチング処理により推定車両位置を道路データと照合して道路上の実車両位置に修正する。
図8は投影法によるマップマッチングの説明図である。現車両位置が点Pi−1(Xi−1,Yi−1)にあり、車両方位がθi−1であったとする(図では、点Pi−1は道路RDaと一致していない場合を示す)。点Pi−1より一定距離L0(例えば10m)走行したときの相対方位がΔθiであれば、自立航法による推定車両位置Pi′(Xi′,Yi′)と、Pi′での推定車両方位θiは、次式
θi =θi−1+Δθi
Xi′=Xi−1+L0・cosθi
Yi′=Yi−1+L0・sinθi
により求められる。
【0006】
このとき、(a) 推定車両位置Pi′を中心に200m四方に含まれ、しかも、垂線を降ろすことのできるリンク(道路を構成するエレメント)であって、推定車両位置Pi′での推定車両方位θiとリンクの成す角度が一定値以内(たとえば450以内)で、かつ、推定車両位置Pi′からリンクに降ろした垂線の長さが一定距離(たとえば100m)以内となっているものを探す。ここでは道路RDa上の方位θa1のリンクLKa1(ノードNa0とNa1を結ぶ直線)と道路RDb上の方位θb1のリンクLKb1(ノードNb0とNb1を結ぶ直線)となる。ついで、(b) 推定車両位置Pi′からリンクLKa1,LKb1に降ろした垂線RLia、RLibの長さを求める。(c) しかる後、次式
Z=dL・20+dθ・20 (dθ≦250) (4)
Z=dL・20+dθ・40 (dθ>250) (4)′
により係数Zを演算する。なお、dLは推定車両位置Pi′からリンクに降ろした垂線の長さ(推定車両位置からリンクまでの距離)、dθは推定車両方位θiとリンクの成す角度であり、角度dθが大きいほど重み係数を大きくしている。
【0007】
(d) 係数値Zが求まれば、以下の1),2),3)の条件、
1)距離dL≦75m(最大引き付け距離75m)
2)角度差dθ≦300(最大引き付け角度300)
3)係数値Z≦1500
を満足するリンクを求め、係数値が最小のリンクをマッチング候補(最適道路)とする。ここではリンクLKa1となる。(e) そして、点Pi−1と点Pi′を結ぶ走行軌跡SHiを垂線RLiaの方向に点Pi−1がリンクLKa1上(またはリンクLKa1の延長線上)に来るまで平行移動して、点Pi−1とPi′の移動点PTi−1とPTi′を求め、(f) 最後に、点PTi−1を中心にPTi′がリンクLKa1上(またはリンクLKa1の延長線上)に来るまで回転移動して移動点を求め、実車両位置Pi(Xi,Yi)とする。なお、実車両位置Piでの車両方位はθiのままとされる。また、図9の如く、前回の車両位置である点Pi−1が道路RDaにあるときは、移動点PTi−1は点Pi−1と一致する。
【0008】
ところで、図10(A)に示すように高速道路HWYと一般道路GRDが上下立体構造で並走している区間や、(B)に示すように立体交差道路RD1,RD2の他に下の道路から上の道路への側道SRDが存在する立体交差において、誤って実際に走行していない道路にマップマッチングしてしまう事態が発生する。
このため、従来は、特許文献1に示すように地図データべースに道路リンクの勾配(上り、下り、平坦の別)を特定する情報を持たせ、また、加速度センサーにより検出した加速度を用いて現在走行中の道路リンクの上り/下りを検出し、該走行中道路リンクの勾配と地図情報に含まれるリンクの勾配情報とを参照して、図10(A),(B)においてマップマッチング処理を行っても誤マップマッチングをしないようにしている。
例えば、図11に示すように高速道路HWYと並走している一般道路GRDに高速道路のA地点からランプRMPを通って下りる場合、加速度センサーの出力を用いて現走行中道路リンク(ランプRMP)が下りであることを検出し、マップマッチング処理において、自車位置を下り勾配のランプRMPに引き付け、以後、下の一般道路GRDに引き付ける。
【特許文献1】特開平10−253373号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、加速度センサーを用いた従来のマップマッチング処理では走行道路の傾斜角度を検出し、該傾斜角度が設定角度より大きい時に現在、下りあるいは上りの道路リンクを走行中であると判定するものであった。
傾斜角度は、加速度センサーが出力する加速度と車速パルスより求めた瞬間速度の微分値(加速度)を用いて算出する。しかし、加速度センサーが出力する加速度は車両の停車、発進時に揺動する。図12の(B)は(A)に示す下り勾配ランプRMPをA地点から走行してB地点で停車し、再度走行を開始した時の加速度センサーの出力波形図である。この図から明らかなように加速度センサー出力に車両の発進、停車に起因するゆり戻し等の誤差が含まれ、これが地図データべースの勾配情報と照合する際、判定間違いを起こす原因になっている。
また、加速度センサーを用いた従来のマップマッチング処理では走行道路の傾斜角度を検出し、該傾斜角度が設定角度より大きい時に下りあるいは上り道路リンクを走行中であると判定するものであった。このため、従来技術では設定角度以下の傾斜角度で長距離に渡ってなだらかに傾斜している道路リンクを正しく下り或いは上り道路リンクと認識できず、誤マップマッチングを行なってしまう問題がある。
また、従来技術では傾斜が急で、該傾斜を過ぎると平坦になる道路リンクを正しく下り或いは上り道路リンクと認識できず、誤マップマッチングを行なってしまう問題がある。
【0010】
以上から本発明の目的は、車両の発進、停車に起因するゆり戻し等に影響されずに正しく下りあるいは上り道路リンクを走行中であると判定し、誤マップマッチングをしないようにすることである。
本発明の別の目的は、長距離に渡ってなだらかに傾斜している道路リンクであっても正しく下りあるいは上り道路リンクであると認識し、誤マップマッチングをしないようにすることである。
本発明の別の目的は、傾斜が急であっても正しく下りあるいは上り道路リンクであると認識し、誤マップマッチングをしないようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題は本発明によれば、地図情報に道路リンクの勾配を特定するデータを持たせるステップ、加速度センサーにより自動車の加速度を検出するステップ、該加速度を用いて現在走行中の道路リンクの傾斜角あるいは傾斜角に応じた値を求めるステップ、該傾斜角あるいは傾斜角に応じた値と車速とから所定時間における高さ方向移動距離を求めて高低差として累積するステップ、前記累積した高低差が設定値より大きくなった時、前記走行中道路リンクは上りリンクあるいは下りリンクであると判定するステップ、該判定結果及び前記勾配データを用いてマップマッチング処理を行うステップを備えたナビゲーション装置におけるマップマッチング方法により達成される。
上記課題は本発明によれば、地図情報を用いて自動車位置周辺の地図をディスプレイ装置に表示すると共に、自車位置マークを該地図上に表示するナビゲーション装置において、道路リンクの勾配を特定するデータを含む地図情報を記憶する記憶部、自動車の加速度を検出する加速度センサー、該加速度を用いて現在走行中の道路リンクの傾斜角あるいは傾斜角に応じた値を求める傾斜角度算出部、該傾斜角あるいは傾斜角に応じた値と車速とから所定時間における高さ方向移動距離を求めて高低差として累積する高低差算出部、前記累積した高低差が設定値より大きくなった時、前記走行中道路リンクは上りリンクあるいは下りリンクであると判定する判定部、該判定結果及び前記勾配データを用いてマップマッチング処理を行うマップマッチング処理部を備えたナビゲーション装置により達成される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、所定時間毎に累積した高低差が設定値以上の時に上りあるいは下り道路リンクを走行中であると判定するから、車両の発進、停車に起因するゆり戻し等が発生して傾斜角度を正しく算出できなくなってもその間の累積高低差は小さく全体の高低差に影響しないため正しく下りあるいは上り道路リンクを走行中であると判定し、誤マップマッチングをしないようにできる。
又、本発明によれば、傾斜角度によって道路リンクの上り、下りの判定を行わず、累積した高低差が設定値以上の時に上りあるいは下り道路リンクを走行中であると判定するから、長距離に渡ってなだらかに傾斜している道路リンクであっても正しく下りあるいは上り道路リンクであると認識し、誤マップマッチングをしないようにできる。
又、本発明によれば、傾斜角度によって道路リンクの上り、下りの判定を行わず、累積した高低差が設定値以上の時に上りあるいは下り道路リンクを走行中であると判定するから、傾斜が急であって直ぐに道路が平坦になっても正しく下りあるいは上り道路リンクであると認識し、誤マップマッチングをしないようにできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は本発明の実施形態説明図である。
地図情報を用いて自動車位置周辺の地図をディスプレイ装置に表示すると共に、自車位置マークを該地図上に表示するナビゲーション装置において、地図データべース4aに道路リンクの勾配を特定するデータを含む地図情報を記憶しておく。加速度センサー10は自動車の加速度を検出し、勾配判定部30における傾斜角度算出部30aは加速度センサーにより検出された加速度を用いて現在走行中の道路リンクの傾斜角θあるいはθに応じた値(sinθ)を求め、高低差累積部30bは該傾斜角度と車速とから所定時間ΔTにおける高さ方向移動距離を求めて高低差として累積する。上り/下り判定部30cは累積した高低差Hが設定値THより大きくなった時、走行中道路リンクは上りリンクあるいは下りリンクであると判定し、マップマッチング処理部31は該判定結果と勾配情報を用いてマップマッチング処理を行う。
なお、高低差累積部30bは、ΔT毎に測定されたi番目の傾斜角度をθi、車速度をViとすれば、下りあるいは上り始めてからの高低差の累積値Hを次式
【数1】
で算出する。車両の発進、停車に起因するゆり戻し等が発生して傾斜角度を正しく算出できなくなっても、ViΔTは小さいためその間の累積高低差は小さく全体の高低差Hに影響しない。すなわち、図2の高低差グラフに示すように、ゆり戻し等に起因する高低差変化の揺らぎが現れず、この結果、正しく下り/上り道路リンク走行中であると判定し、誤マップマッチングをしないようにできる。
【実施例1】
【0014】
図3は本発明のマップマッチング方法を採用するナビゲーションシステムの構成図であり、ナビゲーション制御装置1、リモコン2、ディスプレイ装置(カラーモニター)3、ハードディスク(HDD) 4、HDD制御装置5、マルチビームアンテナ6、GPS受信機7、自立航法用センサ8、オーディオ部9、加速度センサー10を有している。ハードディスク(HDD)4には、地図データべース4aが記憶されており、この地図データべースには、道路を構成するノード情報やリンク情報、交差点情報が含まれている。図4はリンクレコードの説明図で、リンクID、リンク両端のノード番号、リンク間距離、道路種別フラグ、交通規制フラグ、上り/下り/平坦の別を示す勾配情報等のデータで構成されている。
自立航法センサ8は、車両回転角度を検出する振動ジャイロ等の相対方位センサ(角度センサ)8a、所定走行距離毎に1個のパルスを発生する距離センサ8bを備えている。
【0015】
ナビゲーション制御装置1において、地図読出制御部21は、自車位置等に基づいて、HDD制御装置5を制御してHDD 4より所定の地図情報を読み出す。地図バッファ22はHDDから読み出された地図情報を記憶し、地図スクロールができるように自車位置あるいはフォーカス位置周辺の複数枚(複数ユニット)の地図情報、例えば3×3ユニットの地図情報を記憶する。
地図描画部23は、地図バッファ22に記憶された地図情報を用いて地図画像を発生し、VRAM24は地図画像を記憶し、読出制御部25は自車位置に基づいてVRAM24より切り出す1画面分の位置を変えて自車位置の移動に従って地図をスクロール表示する。
【0016】
交差点案内部26は接近中の交差点における交差点拡大図を表示して交差点での進行方向の案内をディスプレイ画像及び音声で行う。すなわち、実際の経路誘導時に、自車が接近中の交差点より所定距離内に接近した時、該交差点案内図(交差点拡大図、進行方向矢印)をディスプレイ画面に表示すると共に進行方向を音声で案内する。リモコン制御部27はリモコンの操作に応じて信号を受信して各部に指示する。なお、リモコンに変えてタッチパネルなどの入力装置を利用できる。GPS位置算出部28はGPS受信機から入力されるGPSデータに基づいて車両の現在位置(GPS位置)や車両方位を算出する。自立航法位置算出部29は、GPS位置を初期位置として自立航法により車両位置および方位を算出する。すなわち、自立航法位置算出部29は、自立航法センサ出力に基づいて自車位置(推定車両位置)および車両方位を計算する。勾配判定部30は加速度センサー10により検出された自動車の加速度を用いて現在走行中道路の上り/下り/平坦判別を行なって判定結果をマップマッチング処理部31に入力する。
勾配判定部30は図1において説明したように、加速度センサー10により検出された加速度を用いて現在走行中の道路リンクの傾斜角θiあるいはsinθiを求め、該傾斜角あるいはsinθiと車速とから所定時間ΔTにおける高さ方向移動距離を求めて高低差として累積する。そして、累積した高低差Hが設定値THより大きくなった時、走行中道路リンクは上りリンクあるいは下りリンクであると判定し、マップマッチング処理部31に入力する。
【0017】
図5は勾配判定部30による傾斜角θiの測定原理説明図であり、上り道路について説明するが下り道路リンクの傾斜角も同様に測定することができる。車両CARには鉛直方向に上記重力加速度Gが加わっており、その傾斜方向成分はG0で、
G0=G・sinθi
である。また、車両が増速中であるとすると、車両の移動に伴う進行方向の加速度はG1であり、この加速度G1は車速パルスの発生間隔から計算される瞬間車速の微分値として求まる。加速度センサー10が検出する加速度G2は次式
G2=G1−G0
で表現されるから、
G0=G1−G2=G・sinθi
であり、傾斜角θiは
sinθi=(G1−G2)/G (6)
あるいは
θi=sin-1(G1−G2)/G (7)
より求まる。ΔT毎に測定されたi番目の傾斜角をθi、車速度をViとすれば、上り始めてからの高低差の累積値Hは(5)式で表現される。したがって、勾配判定部30はこの累積した高低差Hが設定値THより大きくなった時、走行中道路リンクは上りリンクであると判定し、マップマッチング処理部31に入力する。
【0018】
図3に戻って、マップマッチング制御部31は、投影法によるマップマッチング処理を行なうものとし、地図バッファ22に読み出されている地図情報(勾配情報を含む)、推定された車両位置/車両方位、走行中道路の上り/下り/平坦判定結果を用いてマップマッチング処理を行って自車位置を走行中道路リンク上に位置修正する。例えば、従来と同様のマップマッチング処理を行ってマップマッチングの候補道路リンクを求め、ついで、検出された上り/下り/平坦の判定結果にマッチする候補道路をその中から求め、該候補道路が1つであればマッチング候補(最適道路)とするとして決定し、2以上の候補道路が存在すれば係数値Z((4),(4)′式参照)が最小の候補道路をマッチング候補として決定する。
誘導経路制御部32は、入力された出発地から目的地までの誘導経路(探索経路)の計算処理を行い、誘導経路メモリ33は誘導経路を記憶し、誘導経路描画部34は走行時、誘導経路メモリ33より誘導経路情報(ノード列)を読み出して誘導経路を描画する。操作画面発生部35は各種メニュー画面(操作画面)を発生し、画像合成部36は各種画像を合成して出力する。
【0019】
図6は本発明のマップマッチング処理フローである。
勾配判定部30は、加速度センサー10により検出された加速度を用いて所定時間ΔT(たとえば40mse)毎に走行道路リンクの勾配(傾斜)を算出し(ステップ101)、(1)式により高低差を累積する。ついで、高低差Hが閾値THより大きくなったかチェックし(ステップ103)、大きくなければ走行道路は平坦であると判定し(ステップ104)、閾値より大きければ加速度センサから出力される加速度の符号に基づいて走行道路リンクは上り道路リンク(符号は+)、下り道路リンク(符号は−)であると判定する(ステップ105)。ついで、マップマッチング処理時刻になったかチェックし(ステップ106)、処理時刻になっていればマップマッチング処理部31は地図情報(勾配情報を含む)及び推定された車両位置/車両方位、前記検出された走行中道路の上り/下り/平坦判定結果を用いてマップマッチング処理を行って自車位置を走行中道路リンク上に位置修正する(ステップ107)。
ついで、高低差クリア条件が成立したか監視し、たとえば、高低差の累積を開始してから設定距離走行したか監視し(ステップ108)、走行してなければステップ101に戻り以降の処理を繰返し、設定距離を走行していれば累積高低差を0にクリアすると共に、上り/下り/平坦判定結果をクリアし(ステップ109)、始めに戻る。なお、以上の処理はたとえば分岐点を通過してから行うようにする。
以上では、リンクの勾配情報をリンクレコードに持たせたが、道路構造物データリストを地図データべースに持たせ、該構造部データリストの構造物データでリンクの勾配を特定するように構成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態説明図である。
【図2】測定した高低差グラフ例である。
【図3】本発明のマップマッチング方法を採用するナビゲーションシステムの構成図である。
【図4】リンクレコードの説明図である。
【図5】勾配判定部による傾斜角θiの測定原理説明図である。
【図6】本発明のマップマッチング処理フローである。
【図7】自立航法による車両位置検出方法の説明図である。
【図8】投影法によるマップマッチングの説明図である。
【図9】投影法によるマップマッチングの別の説明図である。
【図10】誤って実際に走行していない道路にマップマッチングしてしまう立体道路例である。
【図11】勾配情報を用いた従来のマップマッチング説明図である。
【図12】加速度センサーの出力波形図である。
【符号の説明】
【0021】
4a 地図データべース
10 加速度センサー
30 勾配判定部
30a 傾斜角度算出部
30b 高低差算出部
30c 上り/下り判定部
31 マップマッチング処理部31
【技術分野】
【0001】
本発明はナビゲーション装置及びマップマッチング方法に係わり、特に地図情報を用いて自動車位置周辺の地図をディスプレイ装置に表示すると共に、自車位置マークを該地図上に表示するナビゲーション装置及びマップマッチング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナビゲーション装置は、車両の現在位置に応じた地図データをDVD,HDD等の地図データ記憶部から読み出してディスプレイ画面に描画すると共に、走行に応じて車両マ−クを地図上で移動させ、あるいは車両マークをディスプレイ画面の一定位置(例えばディスプレイ画面の中心位置)に固定表示して地図をスクロ−ル表示する。
地図データは、(1) ノ−ドデータや道路リンクデータ、交差点データ等からなる道路レイヤと、(2) 地図上のオブジェクトを表示するための背景レイヤと、(3) 市町村名などを表示するための文字レイヤなどから構成され、ディスプレイ画面に表示される地図画像は、背景レイヤと文字レイヤに基づいて発生され、マップマッチング処理や誘導経路の探索処理は道路レイヤに基づいて行われる。
かかるナビゲ−ション装置において、車両の現在位置を測定することが不可欠である。このため、従来は、車両に搭載した距離センサと方位センサ(ジャイロ)を用いて車両位置を測定する測定法(自立航法)、衛星を用いたGPS(Global Positioning System)による測定法(衛星航法)、両者を併用した方法が実用化されている。
【0003】
最近の車載ナビゲーション装置は自立航法と衛星航法を併用しており、通常は、自立航法により車両の位置、方位を推定すると共に、マップマッチング処理により推定車両位置を修正して走行道路上の実車両位置を求めるようにしている。そして、何らかの原因でパターンマッチング法によるマップマッチングが不可能になると、マップマッチング処理を初期化すると共に車両位置をGPSにより測定された位置とし、以後、自立航法により車両の位置、方位を推定し、またマップマッチング処理を開始し、推定車両位置を走行道路上の実車両位置に修正する。
【0004】
自立航法においては、距離センサと相対方位センサの出力に基づき積算により以下のようにして車両位置を検出する。図7は自立航法による車両位置検出方法の説明図であり、距離センサは車両がある単位距離L0(たとえば10m)走行する毎にパルスを出力するものとし、また、基準方位(θ=0)をX軸の正方向、基準方位から反時計方向回りを+方向とする。前回の車両位置を点P0(X0,Y0)、点P0での車両進行方向の絶対方位をθ0、単位距離L0走行した時点での相対方位センサの出力をΔθ1であるとすると、車両位置の変化分は、
ΔX=L0・cos(θ0+Δθ1)
ΔY=L0・sin(θ0+Δθ1)
となり、今回の点P1での車両進行方向の推定方位θ1と推定車両位置(X1,Y1)は、
θ1=θ0+Δθ1 (1)
X1=X0+ΔX=X0+L0・cosθ1 (2)
Y1=Y0+ΔY=Y0+L0・sinθ1 (3)
としてベクトル合成により計算できる。従って、スタート地点での車両の絶対方位と位置座標をGPSにより与えれば、その後、車両が単位距離走行する毎に、(1)〜(3)式の計算を繰り返すことにより車両位置をリアルタイムで検出(推定)できる。
【0005】
しかし、自立航法では走行するにつれて誤差が累積して推定車両位置が道路から外れる。そこで、マップマッチング処理により推定車両位置を道路データと照合して道路上の実車両位置に修正する。
図8は投影法によるマップマッチングの説明図である。現車両位置が点Pi−1(Xi−1,Yi−1)にあり、車両方位がθi−1であったとする(図では、点Pi−1は道路RDaと一致していない場合を示す)。点Pi−1より一定距離L0(例えば10m)走行したときの相対方位がΔθiであれば、自立航法による推定車両位置Pi′(Xi′,Yi′)と、Pi′での推定車両方位θiは、次式
θi =θi−1+Δθi
Xi′=Xi−1+L0・cosθi
Yi′=Yi−1+L0・sinθi
により求められる。
【0006】
このとき、(a) 推定車両位置Pi′を中心に200m四方に含まれ、しかも、垂線を降ろすことのできるリンク(道路を構成するエレメント)であって、推定車両位置Pi′での推定車両方位θiとリンクの成す角度が一定値以内(たとえば450以内)で、かつ、推定車両位置Pi′からリンクに降ろした垂線の長さが一定距離(たとえば100m)以内となっているものを探す。ここでは道路RDa上の方位θa1のリンクLKa1(ノードNa0とNa1を結ぶ直線)と道路RDb上の方位θb1のリンクLKb1(ノードNb0とNb1を結ぶ直線)となる。ついで、(b) 推定車両位置Pi′からリンクLKa1,LKb1に降ろした垂線RLia、RLibの長さを求める。(c) しかる後、次式
Z=dL・20+dθ・20 (dθ≦250) (4)
Z=dL・20+dθ・40 (dθ>250) (4)′
により係数Zを演算する。なお、dLは推定車両位置Pi′からリンクに降ろした垂線の長さ(推定車両位置からリンクまでの距離)、dθは推定車両方位θiとリンクの成す角度であり、角度dθが大きいほど重み係数を大きくしている。
【0007】
(d) 係数値Zが求まれば、以下の1),2),3)の条件、
1)距離dL≦75m(最大引き付け距離75m)
2)角度差dθ≦300(最大引き付け角度300)
3)係数値Z≦1500
を満足するリンクを求め、係数値が最小のリンクをマッチング候補(最適道路)とする。ここではリンクLKa1となる。(e) そして、点Pi−1と点Pi′を結ぶ走行軌跡SHiを垂線RLiaの方向に点Pi−1がリンクLKa1上(またはリンクLKa1の延長線上)に来るまで平行移動して、点Pi−1とPi′の移動点PTi−1とPTi′を求め、(f) 最後に、点PTi−1を中心にPTi′がリンクLKa1上(またはリンクLKa1の延長線上)に来るまで回転移動して移動点を求め、実車両位置Pi(Xi,Yi)とする。なお、実車両位置Piでの車両方位はθiのままとされる。また、図9の如く、前回の車両位置である点Pi−1が道路RDaにあるときは、移動点PTi−1は点Pi−1と一致する。
【0008】
ところで、図10(A)に示すように高速道路HWYと一般道路GRDが上下立体構造で並走している区間や、(B)に示すように立体交差道路RD1,RD2の他に下の道路から上の道路への側道SRDが存在する立体交差において、誤って実際に走行していない道路にマップマッチングしてしまう事態が発生する。
このため、従来は、特許文献1に示すように地図データべースに道路リンクの勾配(上り、下り、平坦の別)を特定する情報を持たせ、また、加速度センサーにより検出した加速度を用いて現在走行中の道路リンクの上り/下りを検出し、該走行中道路リンクの勾配と地図情報に含まれるリンクの勾配情報とを参照して、図10(A),(B)においてマップマッチング処理を行っても誤マップマッチングをしないようにしている。
例えば、図11に示すように高速道路HWYと並走している一般道路GRDに高速道路のA地点からランプRMPを通って下りる場合、加速度センサーの出力を用いて現走行中道路リンク(ランプRMP)が下りであることを検出し、マップマッチング処理において、自車位置を下り勾配のランプRMPに引き付け、以後、下の一般道路GRDに引き付ける。
【特許文献1】特開平10−253373号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、加速度センサーを用いた従来のマップマッチング処理では走行道路の傾斜角度を検出し、該傾斜角度が設定角度より大きい時に現在、下りあるいは上りの道路リンクを走行中であると判定するものであった。
傾斜角度は、加速度センサーが出力する加速度と車速パルスより求めた瞬間速度の微分値(加速度)を用いて算出する。しかし、加速度センサーが出力する加速度は車両の停車、発進時に揺動する。図12の(B)は(A)に示す下り勾配ランプRMPをA地点から走行してB地点で停車し、再度走行を開始した時の加速度センサーの出力波形図である。この図から明らかなように加速度センサー出力に車両の発進、停車に起因するゆり戻し等の誤差が含まれ、これが地図データべースの勾配情報と照合する際、判定間違いを起こす原因になっている。
また、加速度センサーを用いた従来のマップマッチング処理では走行道路の傾斜角度を検出し、該傾斜角度が設定角度より大きい時に下りあるいは上り道路リンクを走行中であると判定するものであった。このため、従来技術では設定角度以下の傾斜角度で長距離に渡ってなだらかに傾斜している道路リンクを正しく下り或いは上り道路リンクと認識できず、誤マップマッチングを行なってしまう問題がある。
また、従来技術では傾斜が急で、該傾斜を過ぎると平坦になる道路リンクを正しく下り或いは上り道路リンクと認識できず、誤マップマッチングを行なってしまう問題がある。
【0010】
以上から本発明の目的は、車両の発進、停車に起因するゆり戻し等に影響されずに正しく下りあるいは上り道路リンクを走行中であると判定し、誤マップマッチングをしないようにすることである。
本発明の別の目的は、長距離に渡ってなだらかに傾斜している道路リンクであっても正しく下りあるいは上り道路リンクであると認識し、誤マップマッチングをしないようにすることである。
本発明の別の目的は、傾斜が急であっても正しく下りあるいは上り道路リンクであると認識し、誤マップマッチングをしないようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題は本発明によれば、地図情報に道路リンクの勾配を特定するデータを持たせるステップ、加速度センサーにより自動車の加速度を検出するステップ、該加速度を用いて現在走行中の道路リンクの傾斜角あるいは傾斜角に応じた値を求めるステップ、該傾斜角あるいは傾斜角に応じた値と車速とから所定時間における高さ方向移動距離を求めて高低差として累積するステップ、前記累積した高低差が設定値より大きくなった時、前記走行中道路リンクは上りリンクあるいは下りリンクであると判定するステップ、該判定結果及び前記勾配データを用いてマップマッチング処理を行うステップを備えたナビゲーション装置におけるマップマッチング方法により達成される。
上記課題は本発明によれば、地図情報を用いて自動車位置周辺の地図をディスプレイ装置に表示すると共に、自車位置マークを該地図上に表示するナビゲーション装置において、道路リンクの勾配を特定するデータを含む地図情報を記憶する記憶部、自動車の加速度を検出する加速度センサー、該加速度を用いて現在走行中の道路リンクの傾斜角あるいは傾斜角に応じた値を求める傾斜角度算出部、該傾斜角あるいは傾斜角に応じた値と車速とから所定時間における高さ方向移動距離を求めて高低差として累積する高低差算出部、前記累積した高低差が設定値より大きくなった時、前記走行中道路リンクは上りリンクあるいは下りリンクであると判定する判定部、該判定結果及び前記勾配データを用いてマップマッチング処理を行うマップマッチング処理部を備えたナビゲーション装置により達成される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、所定時間毎に累積した高低差が設定値以上の時に上りあるいは下り道路リンクを走行中であると判定するから、車両の発進、停車に起因するゆり戻し等が発生して傾斜角度を正しく算出できなくなってもその間の累積高低差は小さく全体の高低差に影響しないため正しく下りあるいは上り道路リンクを走行中であると判定し、誤マップマッチングをしないようにできる。
又、本発明によれば、傾斜角度によって道路リンクの上り、下りの判定を行わず、累積した高低差が設定値以上の時に上りあるいは下り道路リンクを走行中であると判定するから、長距離に渡ってなだらかに傾斜している道路リンクであっても正しく下りあるいは上り道路リンクであると認識し、誤マップマッチングをしないようにできる。
又、本発明によれば、傾斜角度によって道路リンクの上り、下りの判定を行わず、累積した高低差が設定値以上の時に上りあるいは下り道路リンクを走行中であると判定するから、傾斜が急であって直ぐに道路が平坦になっても正しく下りあるいは上り道路リンクであると認識し、誤マップマッチングをしないようにできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は本発明の実施形態説明図である。
地図情報を用いて自動車位置周辺の地図をディスプレイ装置に表示すると共に、自車位置マークを該地図上に表示するナビゲーション装置において、地図データべース4aに道路リンクの勾配を特定するデータを含む地図情報を記憶しておく。加速度センサー10は自動車の加速度を検出し、勾配判定部30における傾斜角度算出部30aは加速度センサーにより検出された加速度を用いて現在走行中の道路リンクの傾斜角θあるいはθに応じた値(sinθ)を求め、高低差累積部30bは該傾斜角度と車速とから所定時間ΔTにおける高さ方向移動距離を求めて高低差として累積する。上り/下り判定部30cは累積した高低差Hが設定値THより大きくなった時、走行中道路リンクは上りリンクあるいは下りリンクであると判定し、マップマッチング処理部31は該判定結果と勾配情報を用いてマップマッチング処理を行う。
なお、高低差累積部30bは、ΔT毎に測定されたi番目の傾斜角度をθi、車速度をViとすれば、下りあるいは上り始めてからの高低差の累積値Hを次式
【数1】
で算出する。車両の発進、停車に起因するゆり戻し等が発生して傾斜角度を正しく算出できなくなっても、ViΔTは小さいためその間の累積高低差は小さく全体の高低差Hに影響しない。すなわち、図2の高低差グラフに示すように、ゆり戻し等に起因する高低差変化の揺らぎが現れず、この結果、正しく下り/上り道路リンク走行中であると判定し、誤マップマッチングをしないようにできる。
【実施例1】
【0014】
図3は本発明のマップマッチング方法を採用するナビゲーションシステムの構成図であり、ナビゲーション制御装置1、リモコン2、ディスプレイ装置(カラーモニター)3、ハードディスク(HDD) 4、HDD制御装置5、マルチビームアンテナ6、GPS受信機7、自立航法用センサ8、オーディオ部9、加速度センサー10を有している。ハードディスク(HDD)4には、地図データべース4aが記憶されており、この地図データべースには、道路を構成するノード情報やリンク情報、交差点情報が含まれている。図4はリンクレコードの説明図で、リンクID、リンク両端のノード番号、リンク間距離、道路種別フラグ、交通規制フラグ、上り/下り/平坦の別を示す勾配情報等のデータで構成されている。
自立航法センサ8は、車両回転角度を検出する振動ジャイロ等の相対方位センサ(角度センサ)8a、所定走行距離毎に1個のパルスを発生する距離センサ8bを備えている。
【0015】
ナビゲーション制御装置1において、地図読出制御部21は、自車位置等に基づいて、HDD制御装置5を制御してHDD 4より所定の地図情報を読み出す。地図バッファ22はHDDから読み出された地図情報を記憶し、地図スクロールができるように自車位置あるいはフォーカス位置周辺の複数枚(複数ユニット)の地図情報、例えば3×3ユニットの地図情報を記憶する。
地図描画部23は、地図バッファ22に記憶された地図情報を用いて地図画像を発生し、VRAM24は地図画像を記憶し、読出制御部25は自車位置に基づいてVRAM24より切り出す1画面分の位置を変えて自車位置の移動に従って地図をスクロール表示する。
【0016】
交差点案内部26は接近中の交差点における交差点拡大図を表示して交差点での進行方向の案内をディスプレイ画像及び音声で行う。すなわち、実際の経路誘導時に、自車が接近中の交差点より所定距離内に接近した時、該交差点案内図(交差点拡大図、進行方向矢印)をディスプレイ画面に表示すると共に進行方向を音声で案内する。リモコン制御部27はリモコンの操作に応じて信号を受信して各部に指示する。なお、リモコンに変えてタッチパネルなどの入力装置を利用できる。GPS位置算出部28はGPS受信機から入力されるGPSデータに基づいて車両の現在位置(GPS位置)や車両方位を算出する。自立航法位置算出部29は、GPS位置を初期位置として自立航法により車両位置および方位を算出する。すなわち、自立航法位置算出部29は、自立航法センサ出力に基づいて自車位置(推定車両位置)および車両方位を計算する。勾配判定部30は加速度センサー10により検出された自動車の加速度を用いて現在走行中道路の上り/下り/平坦判別を行なって判定結果をマップマッチング処理部31に入力する。
勾配判定部30は図1において説明したように、加速度センサー10により検出された加速度を用いて現在走行中の道路リンクの傾斜角θiあるいはsinθiを求め、該傾斜角あるいはsinθiと車速とから所定時間ΔTにおける高さ方向移動距離を求めて高低差として累積する。そして、累積した高低差Hが設定値THより大きくなった時、走行中道路リンクは上りリンクあるいは下りリンクであると判定し、マップマッチング処理部31に入力する。
【0017】
図5は勾配判定部30による傾斜角θiの測定原理説明図であり、上り道路について説明するが下り道路リンクの傾斜角も同様に測定することができる。車両CARには鉛直方向に上記重力加速度Gが加わっており、その傾斜方向成分はG0で、
G0=G・sinθi
である。また、車両が増速中であるとすると、車両の移動に伴う進行方向の加速度はG1であり、この加速度G1は車速パルスの発生間隔から計算される瞬間車速の微分値として求まる。加速度センサー10が検出する加速度G2は次式
G2=G1−G0
で表現されるから、
G0=G1−G2=G・sinθi
であり、傾斜角θiは
sinθi=(G1−G2)/G (6)
あるいは
θi=sin-1(G1−G2)/G (7)
より求まる。ΔT毎に測定されたi番目の傾斜角をθi、車速度をViとすれば、上り始めてからの高低差の累積値Hは(5)式で表現される。したがって、勾配判定部30はこの累積した高低差Hが設定値THより大きくなった時、走行中道路リンクは上りリンクであると判定し、マップマッチング処理部31に入力する。
【0018】
図3に戻って、マップマッチング制御部31は、投影法によるマップマッチング処理を行なうものとし、地図バッファ22に読み出されている地図情報(勾配情報を含む)、推定された車両位置/車両方位、走行中道路の上り/下り/平坦判定結果を用いてマップマッチング処理を行って自車位置を走行中道路リンク上に位置修正する。例えば、従来と同様のマップマッチング処理を行ってマップマッチングの候補道路リンクを求め、ついで、検出された上り/下り/平坦の判定結果にマッチする候補道路をその中から求め、該候補道路が1つであればマッチング候補(最適道路)とするとして決定し、2以上の候補道路が存在すれば係数値Z((4),(4)′式参照)が最小の候補道路をマッチング候補として決定する。
誘導経路制御部32は、入力された出発地から目的地までの誘導経路(探索経路)の計算処理を行い、誘導経路メモリ33は誘導経路を記憶し、誘導経路描画部34は走行時、誘導経路メモリ33より誘導経路情報(ノード列)を読み出して誘導経路を描画する。操作画面発生部35は各種メニュー画面(操作画面)を発生し、画像合成部36は各種画像を合成して出力する。
【0019】
図6は本発明のマップマッチング処理フローである。
勾配判定部30は、加速度センサー10により検出された加速度を用いて所定時間ΔT(たとえば40mse)毎に走行道路リンクの勾配(傾斜)を算出し(ステップ101)、(1)式により高低差を累積する。ついで、高低差Hが閾値THより大きくなったかチェックし(ステップ103)、大きくなければ走行道路は平坦であると判定し(ステップ104)、閾値より大きければ加速度センサから出力される加速度の符号に基づいて走行道路リンクは上り道路リンク(符号は+)、下り道路リンク(符号は−)であると判定する(ステップ105)。ついで、マップマッチング処理時刻になったかチェックし(ステップ106)、処理時刻になっていればマップマッチング処理部31は地図情報(勾配情報を含む)及び推定された車両位置/車両方位、前記検出された走行中道路の上り/下り/平坦判定結果を用いてマップマッチング処理を行って自車位置を走行中道路リンク上に位置修正する(ステップ107)。
ついで、高低差クリア条件が成立したか監視し、たとえば、高低差の累積を開始してから設定距離走行したか監視し(ステップ108)、走行してなければステップ101に戻り以降の処理を繰返し、設定距離を走行していれば累積高低差を0にクリアすると共に、上り/下り/平坦判定結果をクリアし(ステップ109)、始めに戻る。なお、以上の処理はたとえば分岐点を通過してから行うようにする。
以上では、リンクの勾配情報をリンクレコードに持たせたが、道路構造物データリストを地図データべースに持たせ、該構造部データリストの構造物データでリンクの勾配を特定するように構成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態説明図である。
【図2】測定した高低差グラフ例である。
【図3】本発明のマップマッチング方法を採用するナビゲーションシステムの構成図である。
【図4】リンクレコードの説明図である。
【図5】勾配判定部による傾斜角θiの測定原理説明図である。
【図6】本発明のマップマッチング処理フローである。
【図7】自立航法による車両位置検出方法の説明図である。
【図8】投影法によるマップマッチングの説明図である。
【図9】投影法によるマップマッチングの別の説明図である。
【図10】誤って実際に走行していない道路にマップマッチングしてしまう立体道路例である。
【図11】勾配情報を用いた従来のマップマッチング説明図である。
【図12】加速度センサーの出力波形図である。
【符号の説明】
【0021】
4a 地図データべース
10 加速度センサー
30 勾配判定部
30a 傾斜角度算出部
30b 高低差算出部
30c 上り/下り判定部
31 マップマッチング処理部31
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナビゲーション装置におけるマップマッチング方法において、
地図情報に道路リンクの勾配を特定するデータを持たせ、
加速度センサーにより自動車の加速度を検出し、
該加速度を用いて現在走行中の道路リンクの傾斜角あるいは傾斜角に応じた値を求め、
該傾斜角あるいは傾斜角に応じた値と車速とから所定時間における高さ方向移動距離を求めて高低差として累積し、
前記累積した高低差が設定値より大きくなった時、前記走行中道路リンクは上りリンクあるいは下りリンクであると判定し、
該判定結果及び前記勾配データを用いてマップマッチング処理を行う、
ことを特徴とするナビゲーション装置におけるマップマッチング方法。
【請求項2】
地図情報を用いて自動車位置周辺の地図をディスプレイ装置に表示すると共に、自車位置マークを該地図上に表示するナビゲーション装置において、
道路リンクの勾配を特定するデータを含む地図情報を記憶する記憶部、
自動車の加速度を検出する加速度センサー、
該加速度を用いて現在走行中の道路リンクの傾斜角あるいは傾斜角に応じた値を求める傾斜角度算出部、
該傾斜角あるいは傾斜角に応じた値と車速とから所定時間における高さ方向移動距離を求めて高低差として累積する高低差算出部、
前記累積した高低差が設定値より大きくなった時、前記走行中道路リンクは上りリンクあるいは下りリンクであると判定する判定部、
該判定結果及び前記勾配データを用いてマップマッチング処理を行うマップマッチング処理部、
を備えたことを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項1】
ナビゲーション装置におけるマップマッチング方法において、
地図情報に道路リンクの勾配を特定するデータを持たせ、
加速度センサーにより自動車の加速度を検出し、
該加速度を用いて現在走行中の道路リンクの傾斜角あるいは傾斜角に応じた値を求め、
該傾斜角あるいは傾斜角に応じた値と車速とから所定時間における高さ方向移動距離を求めて高低差として累積し、
前記累積した高低差が設定値より大きくなった時、前記走行中道路リンクは上りリンクあるいは下りリンクであると判定し、
該判定結果及び前記勾配データを用いてマップマッチング処理を行う、
ことを特徴とするナビゲーション装置におけるマップマッチング方法。
【請求項2】
地図情報を用いて自動車位置周辺の地図をディスプレイ装置に表示すると共に、自車位置マークを該地図上に表示するナビゲーション装置において、
道路リンクの勾配を特定するデータを含む地図情報を記憶する記憶部、
自動車の加速度を検出する加速度センサー、
該加速度を用いて現在走行中の道路リンクの傾斜角あるいは傾斜角に応じた値を求める傾斜角度算出部、
該傾斜角あるいは傾斜角に応じた値と車速とから所定時間における高さ方向移動距離を求めて高低差として累積する高低差算出部、
前記累積した高低差が設定値より大きくなった時、前記走行中道路リンクは上りリンクあるいは下りリンクであると判定する判定部、
該判定結果及び前記勾配データを用いてマップマッチング処理を行うマップマッチング処理部、
を備えたことを特徴とするナビゲーション装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−105760(P2006−105760A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−292285(P2004−292285)
【出願日】平成16年10月5日(2004.10.5)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年10月5日(2004.10.5)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】
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