説明

ナビゲーション装置

【課題】無駄な経路計算を抑制してシステム負荷の軽減および製品寿命の向上を図りつつ、有用な交通情報の変化に迅速かつ適切に対応した経路誘導を実現することができる「ナビゲーション装置」を提供すること。
【解決手段】経路計算手段8による経路計算の過程で算出された複数の候補経路を、交通情報を監視すべき複数の監視対象経路に決定し、交通情報のうちの複数の監視対象経路上の交通情報のみの変化を契機として、現在の誘導経路とは異なる経路を新たな誘導経路の候補として提示可能とすること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナビゲーション装置に係り、特に、目的地までの最適な経路をユーザに提供するのに好適なナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、目的地までの誘導経路にしたがった経路誘導を行うナビゲーション装置においては、設定された経路計算条件の下で、この経路計算条件に応じた目的地までの最適な経路(最適経路)を求める経路計算を行い、この経路計算によって算出された最適経路をユーザに提示するようになっていた。そして、提示された最適経路がユーザ操作にともなって誘導経路に設定されたうえで、設定された誘導経路にしたがった経路誘導を開始して、自車が進行すべき方向を音声や画面を用いて適宜案内するようになっていた。
【0003】
また、従来から、ナビゲーション装置には、VICS(Vehicle Information and Communication System)(登録商標)によって配信されるVICS情報等の交通情報を取得して、取得した交通情報を考慮(換言すれば、加味)した経路計算を行う機能が備えられていた。この種のナビゲーション装置では、目的地の設定時において交通情報を考慮して最初の経路計算を行い、この最初の経路計算によって算出された最適経路を誘導経路とした経路誘導を開始した後においても、最新の交通情報を逐次取得しつつ、例えば、一定時間毎に定期的に、または、誘導経路上の交通情報が変化した場合に、最新の交通情報を考慮した最適経路の再計算を行うようになっていた。そして、この再計算によって現在の誘導経路とは異なる最適経路(例えば、新たに発生した交通規制や交通障害を回避して現在の誘導経路よりも所定時間以上短時間のうちに目的地に到着することができる経路)が算出された場合には、その最適経路を新たな誘導経路の候補としてユーザに提示するようになっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−119055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のナビゲーション装置には、誘導経路上に存在しない交通情報を継続的に監視する機能が備えられていなかったため、前述のような定期的な再計算によらなければ交通情報を考慮した最適経路を算出することができなかった。このため、従来は、誘導経路に含まれていない道路の渋滞が緩和した場合においても、前記定期的な再計算の実施タイミングによっては、渋滞が緩和した道路の方向に進むための分岐点を自車が通過してしまい、渋滞が緩和した道路を利用する最適経路を算出することができない可能性があった。
【0006】
また、従来は、誘導経路上に存在しない交通情報が、目的地までの走行に影響を及ぼす交通情報であるか否かも分からなかったため、目的地に向かうにあたり関係のない無用な交通情報が変化したとしても、システム負荷が高くなる再計算を行って、再計算の過程で算出された最適経路の候補が現在の誘導経路よりも最適か否かを判断して最適経路を再算出せざるを得なかった。
【0007】
さらに、今後は、現状において主流とされているハードディスクドライブを搭載したHDDナビに替わり、低コストなSDカードを搭載したSDカードナビの需要が益々高まると予想されるが、SDカードは、データの読み込み回数や書込み回数がハードディスクドライブに比べて大きく制限されているので、SDカードナビにおいては、データの読み込み回数や書込み回数を抑えることが重要となる。しかしながら、前述した定期的な経路の再計算をSDカードナビに適用した場合には、再計算が繰り返されることによってデータの読み込み回数が増加することになり、SDカードの寿命を減らしてしまう結果となる。
【0008】
そこで、本発明は、このような点に鑑みなされたものであり、無駄な経路計算を抑制してシステム負荷の軽減および製品寿命の向上を図りつつ、有用な交通情報の変化に迅速かつ適切に対応した経路誘導を実現することができるナビゲーション装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するため、本発明のナビゲーション装置は、次の(a)〜(c)の事項を特徴としている。(a)ナビゲーション装置は、経路計算の過程において条件対応最適経路の候補として算出された条件対応最適経路に相当する1つの候補経路を含む複数の候補経路を、交通情報を監視すべき複数の監視対象経路に決定する監視対象経路決定手段を備えている。(b)ナビゲーション装置は、監視対象経路決定手段によって決定された複数の監視対象経路上の交通情報を、交通情報取得手段によって取得された交通情報に基づいて監視する交通情報監視手段を備えている。(c)経路提示手段は、交通情報取得手段によって経路誘導中に取得された交通情報のうちの交通情報監視手段によって監視されている複数の監視対象経路上の交通情報のみの変化を契機として、現在の誘導経路とは異なる経路を新たな誘導経路の候補として提示可能とされている。
【0010】
そして、このような(a)〜(c)の事項を特徴としたナビゲーション装置によれば、交通情報のうちの複数の監視対象経路上の交通情報のみの変化を契機として新たな誘導経路の候補を提示することができるので、監視対象経路以外の経路上の無用な交通情報の変化を契機とした経路計算が行われることを回避することができる一方で、目的地に到着するまでに利用する可能性が高い複数の監視対象経路上の交通情報の変化を誘導経路の変更の有無に反映させることができる。これにより、無駄な経路計算を抑制してシステム負荷の軽減および製品寿命の向上を図りつつ、定期的な再計算に頼ることなく、有用な交通情報の変化に迅速かつ適切に対応した経路誘導を実現することができる。
【0011】
また、本発明のナビゲーション装置は、更に、次の(d)および(e)の事項を特徴としていてもよい。(d)ナビゲーション装置は、経路誘導中に、交通情報監視手段によって監視されている複数の監視対象経路上の交通情報が所定の変化を示した場合に、所定の変化後の複数の監視対象経路上の交通情報を考慮して複数の監視対象経路のうちの最適な経路である監視対象内最適経路を決定する監視対象内最適経路決定手段を備えている。(e)経路提示手段は、監視対象内最適経路決定手段によって決定された監視対象内最適経路が現在の誘導経路と異なる場合に、監視対象内最適経路を新たな誘導経路の候補として提示する。
【0012】
そして、このような(d)および(e)の事項を更なる特徴としたナビゲーション装置によれば、監視対象内最適経路決定手段によって決定された監視対象内最適経路を新たな誘導経路の候補として提示することが可能となるので、経路計算の回数を更に有効に制限することができる。
【0013】
さらに、本発明のナビゲーション装置は、更に、次の(f)の事項を特徴としていてもよい。(f)監視対象内最適経路は、複数の監視対象経路のうちの各監視対象経路上の交通情報を考慮した場合に目的地までの所要時間が最短となる経路である。
【0014】
そして、このような(f)の事項を更なる特徴としたナビゲーション装置によれば、新たな誘導経路の候補として更に相応しい監視対象内最適経路を提示することができる。
【0015】
さらにまた、本発明のナビゲーション装置は、更に、次の(g)の事項を特徴としていてもよい。(g)監視対象経路は、経路計算条件に交通情報を考慮する旨の条件が含まれない状態での静的な経路計算の過程において算出された候補経路に基づく監視対象経路である。
【0016】
そして、このような(g)の事項を更なる特徴としたナビゲーション装置によれば、例えば、渋滞が発生していなければ目的地への所要時間が最短となるような利用価値が高い経路が、経路計算時における一時的な渋滞によって監視対象経路から原始的に除外されてしまうことを回避することができるので、より有用な交通情報の変化のみを誘導経路の変更の有無に反映させることができる。
【0017】
また、本発明のナビゲーション装置は、更に、次の(h)および(i)の事項を特徴としていてもよい。(h)ナビゲーション装置は、経路誘導中に、交通情報監視手段によって監視されている複数の監視対象経路上の交通情報が所定の変化を示した場合に、経路計算手段に対して、経路計算条件に交通情報を考慮する旨の条件が含まれた状態での動的な経路計算によって条件対応最適経路を再計算させるための制御を行う交通情報変化時再計算制御手段を備えている。(i)経路提示手段は、再計算によって算出された条件対応最適経路が現在の誘導経路と異なる場合に、当該条件対応最適経路を新たな誘導経路の候補として提示する。
【0018】
そして、このような(h)および(i)の事項を更なる特徴としたナビゲーション装置によれば、交通情報変化時再計算制御手段の制御にしたがった再計算によって算出された条件対応最適経路を新たな誘導経路の候補として提示することが可能となるので、再計算を監視対象経路上の交通情報のみが所定の変化を示した必要時に限定して行うようにすることができる。
【0019】
さらに、本発明のナビゲーション装置は、更に、次の(j)および(k)の事項を特徴としていてもよい。(j)ナビゲーション装置は、経路誘導中に自車位置特定手段によって特定された自車位置に基づいて、複数の監視対象経路の要否を個別に判定する要否判定手段を備えている。(k)交通情報監視手段は、複数の監視対象経路のうちの要否判定手段によって不要と判定された監視対象経路を監視対象から除外する。
【0020】
そして、このような(j)および(k)の事項を更なる特徴としたナビゲーション装置によれば、目的地に到着するまでに利用する可能性が低くなった監視対象経路を事後的に監視対象から除外することができるので、より有用な交通情報の変化のみを、誘導経路の変更の有無に反映させることができる。
【0021】
さらにまた、本発明のナビゲーション装置は、更に、次の(l)の事項を特徴としていてもよい。(l)要否判定手段は、複数の監視対象経路のうち、現在の誘導経路上の自車が走行済みの分岐点において現在の誘導経路から分岐された監視対象経路を不要と判定する。
【0022】
そして、このような(l)の事項を更なる特徴としたナビゲーション装置によれば、監視対象経路の要否判定のための最適な判定基準を設けることができる。
【0023】
また、本発明のナビゲーション装置は、次の(m)の事項を特徴としていてもよい。(m)ナビゲーション装置は、要否判定手段によって不要と判定された監視対象経路を監視対象から除外する動作によって監視対象経路が所定数以下となった場合に、経路計算手段に対して条件対応最適経路を再計算させるための制御を行う監視対象減数時再計算制御手段を備えている。
【0024】
そして、このような(m)の事項を更なる特徴としたナビゲーション装置によれば、再計算を、監視対象経路が所定数以下となった必要時に限定して行いつつ、条件対応最適経路の候補の選択肢を維持して、より最適な経路が提示される可能性を確保しておくことができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、無駄な経路計算を抑制してシステム負荷の軽減および製品寿命の向上を図りつつ、有用な交通情報の変化に迅速かつ適切に対応した経路誘導を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係るナビゲーション装置の第1実施形態を示すブロック図
【図2】本発明に係るナビゲーション装置の第1実施形態において、複数の監視対象経路の一例を示す概念図
【図3】本発明に係るナビゲーション装置の第1実施形態において、監視対象内最適経路の決定動作の一例を示す概念図
【図4】本発明に係るナビゲーション装置の第1実施形態において、不要な監視対象経路の除外動作の一例を示す概念図
【図5】本発明に係るナビゲーション装置の第1実施形態において、監視対象減数時再計算制御手段の制御動作の一例を示す概念図
【図6】本発明に係るナビゲーション装置の第1実施形態を示すフローチャート
【図7】本発明に係るナビゲーション装置の第2実施形態を示すブロック図
【図8】本発明に係るナビゲーション装置の第2実施形態を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0027】
(第1実施形態)
以下、本発明に係るナビゲーション装置の第1実施形態について、図1乃至図6を参照して説明する。
【0028】
図1に示すように、本実施形態におけるナビゲーション装置1は、交通情報取得手段としての交通情報取得部2を有しており、この交通情報取得部2は、外部から送信された交通情報を取得して保持するようになっている。なお、交通情報取得部2は、図示しないビーコン受信機およびFM多重レシーバを介して交通情報としてのVICS情報を取得するものであってもよい。ここで、ビーコン受信機は、主に高速道路に設置されている電波ビーコンまたは主に一般道に設置されている光ビーコンによって送信されたVICS情報を受信することができる。また、FM多重レシーバは、ナビゲーション装置1側において選局されたFM放送局からFM多重放送によって送信された当該FM放送局のカバーエリア内のVICS情報を受信することができる。電波ビーコン、光ビーコンおよびFM放送局には、VICSセンタから所定時間間隔で逐次更新されたVICS情報が配信されるようになっており、この配信されたVICS情報が電波ビーコン、光ビーコンまたはFM放送局によってナビゲーション装置1側に逐次送信されることになる。各VICS情報には、リンクの識別番号(リンクID)が対応付けられているので、ナビゲーション装置1は、このリンクIDと、ナビゲーション装置1に格納された地図データ中の各リンクのリンクIDとを比較して、VICS情報に対応する地点もしくは区間を把握することができる。
【0029】
また、図1に示すように、ナビゲーション装置1は、記憶手段としての地図記憶部3を有しており、この地図記憶部3には、地図データが記憶されている。地図データは、その詳細度および領域面積に応じて複数層のレベルに階層化されて管理されている。また、地図データは、道路データ、背景データ、経路計算用のデータとしての道路ネットワークデータおよび検索データの各データを有している。このうち、道路データは、形状補間点、セグメント、リンク、ノード、リンク列、道路名称、通行条件および交通看板等を基本データ要素としており、リンクには、リンクIDが付与されている。また、背景データは、点、ポリライン、ポリゴンおよびテキスト等を基本データ要素としている。さらに、道路ネットワークデータは、ノード、リンクおよび通行条件等を基本データ要素としている。さらにまた、検索データは、エリア名称、住所、郵便番号およびPOI(Points of Interest)等を基本データ要素としている。さらにまた、地図記憶部3には、ナビゲーション装置1が、その地図表示機能、自車位置算出機能、経路計算機能、経路誘導機能および検索機能等の各種の機能を実行するための実行プログラムが記憶されている。この実行プログラムは、後述するナビゲーション装置1の各構成部によってその機能の実現のために適宜実行されることになる。なお、地図記憶部3は、ナビゲーション装置1に装着されたSDカードであってもよい。
【0030】
さらに、図1に示すように、ナビゲーション装置1は、自車位置特定手段としての自車位置特定部4を有しており、この自車位置特定部4は、自車位置すなわち自車の現在位置を特定するようになっている。この自車位置特定部4は、図示しないGPSレシーバによる受信情報や、ジャイロセンサや車速センサ等からなる自律航法センサの検出情報を用いて自車位置を特定するものであってもよい。ここで、GPSレシーバは、GPS衛星から配信されるGPS情報(時刻や軌道に関する情報)を受信することができる。自車位置特定部4は、このGPS情報に基づいて、自車位置を絶対座標として算出する衛星航法を行うことによって、自車位置を特定することができる。また、自律航法センサは、自車の加速度、車速および自車方位等を検出することができる。自車位置特定部4は、この自律航法センサの検出結果に基づいて、自車位置を前回の測位位置からの変化分である相対位置として算出する自律航法を行うことによっても、自車位置を特定することができる。さらに、自車位置特定部4は、地図記憶部3に記憶されている地図データを用いることによって、衛星航法または自律航法によって特定された自車位置を地図データにおける該当する道路上の位置に補正するマップマッチング処理を行うことによって、自車位置を更に高精度に特定することができる。
【0031】
さらにまた、図1に示すように、ナビゲーション装置1は、目的地設定手段としての目的地設定部5を有している。この目的地設定部5は、表示部6にナビゲーションの目的地を設定するための目的地設定用の操作画面を表示した上で、この操作画面に対するユーザの入力操作部7を用いた入力操作に応じた目的地を設定するようになっている。目的地の検索には、地図データにおける検索データが用いられるようになっている。なお、入力操作部7は、リモコン、表示部6のタッチパネル、リニアエンコーダまたはロータリエンコーダ等であってもよい。
【0032】
また、図1に示すように、ナビゲーション装置1は、経路計算手段としての経路計算部8を有している。この経路計算部8は、目的地設定部5によって目的地が設定された際に、地図記憶部3に記憶された道路ネットワークデータに基づいて、条件対応最適経路を算出するための経路計算を行うようになっている。ここで、条件対応最適経路は、目的地設定部5によって目的地が設定された際における自車位置から目的地設定部5によって設定された目的地までの経路であって、経路計算部8に予め設定された経路計算条件に応じた最適な経路のことをいう。なお、経路計算条件は、デフォルトで設定されたものであってもよいし、入力操作部7を用いてユーザが設定したものであってもよい。また、経路計算条件としては、例えば、目的地までの所要時間が最短となる経路を計算する旨の条件、目的地までの所要距離が最短となる経路を計算する旨の条件、一般道を優先的に走行する経路を計算する旨の条件、道幅が広い道路を優先的に走行する経路を計算する旨の条件等の種々の条件を考えることができる。さらに、経路計算条件には、前述した各条件に加えて、更に、交通情報を考慮する旨の条件を含めることができるようになっている。ここで、経路計算には、経路計算条件、リンク長および道路種別等に応じた道路や交差点の通過し難さを数値化したコストに基づいた公知のコスト計算が用いられるようになっている。この経路計算の過程では、自車位置から目的地までの想定される多数の経路の中から、設定された経路計算条件の下で経路のコストが相対的に小さくなるような複数の経路(以下、候補経路と称する)が条件対応最適経路の候補として算出されるようになっている。そして、経路計算においては、算出された複数の候補経路のうち、経路のコストが最小となるような1つの候補経路を、条件対応最適経路として算出するようになっている。なお、経路計算条件に交通情報を考慮する旨の条件が含まれている場合、経路計算においては、例えば、渋滞や混雑の発生しているリンクに対応するコストを大きな値に設定することによって、そのリンクを通り難くして(すなわち、そのリンクを含む経路が条件対応最適経路として選ばれ難くして)、渋滞や混雑を回避する条件対応最適経路が探索されることになる。
【0033】
さらに、図1に示すように、ナビゲーション装置1は、経路提示手段としての経路提示部10を有しており、この経路提示部10は、誘導経路の候補としての経路を、表示部6への表示によってユーザに提示するようになっている。この経路提示部10は、経路計算部8によって条件対応最適経路が算出された場合には、算出された条件対応最適経路を提示するようになっている。なお、経路提示部10による経路の提示は、提示された経路をユーザが入力操作部7を用いた入力操作によって誘導経路に設定可能な状態として行われるようになっている。
【0034】
さらにまた、図1に示すように、ナビゲーション装置1は、経路誘導手段としての経路誘導部11を有しており、この経路誘導部11は、ユーザが、経路提示部10によって提示された経路を誘導経路に設定するための入力操作を行った場合に、提示された経路を誘導経路に設定するようになっている。その上で、経路誘導部11は、設定された誘導経路にしたがった経路誘導を行うようになっている。この経路誘導は、例えば、表示部6に交差点拡大図を表示することや、音声出力部12を介して交差点右左折案内用の音声を出力すること等によって行われるようになっている。
【0035】
このような基本的な構成を備えた上で、さらに、図1に示すように、ナビゲーション装置1は、監視対象経路決定手段としての監視対象経路決定部14を有している。この監視対象経路決定部14は、経路計算部8による経路計算の過程において算出された前述した複数の候補経路を、交通情報(経路に対応する交通情報)を監視すべき経路である監視対象経路にそれぞれ決定するようになっている。なお、複数の候補経路のうちの1つ(コストが最小のもの)は、条件対応最適経路に相当するもの、すなわち、経路計算の終了とともに条件対応最適経路に確定されるものであるので、監視対象経路決定部14によって決定された複数の監視対象経路のうちの1つは、条件対応最適経路そのものとなる。この監視対象経路決定部14による監視対象経路の決定は、経路計算の終了と同時に行うようにしてもよい。
【0036】
上記構成に加えて、更に、ナビゲーション装置1は、図1に示すように、交通情報監視手段としての交通情報監視部15を有している。この交通情報監視部15は、監視対象経路決定部14によって決定された複数の監視対象経路上の交通情報を、交通情報取得部2によって取得された交通情報に基づいて監視するようになっている。例えば、交通情報監視部15は、交通情報取得部2によって所定時間ごとに逐次取得される交通情報の中から、複数の監視対象経路をそれぞれ構成する道路の道路情報(例えば、リンクID)が対応付けられた交通情報のみを当該道路情報に紐付けて逐次抽出することによって、各監視対象経路上の交通情報を監視するようにしてもよい。
【0037】
ここで、図2は、このような交通情報監視部15によって交通情報が監視されている複数の監視対象経路の一例を示したものである。図2においては、自車位置から目的地までの想定され得る多数の経路のうち、第1〜第4の監視対象経路が決定されていて、各監視対象経路上の交通情報が交通情報監視部15によって監視されている。また、図2においては、各監視対象経路のうちの条件対応最適経路たる第3の監視対象経路が、誘導経路として経路誘導部11に設定されており、この経路誘導部11によって、第3の監視対象経路に相当する誘導経路にしたがった経路誘導が行われている。
【0038】
上記構成に加えて、更に、本実施形態において、経路提示部10は、交通情報取得部2によって経路誘導中に取得された交通情報のうちの交通情報監視部15によって監視されている複数の監視対象経路上の交通情報のみの変化を契機として、現在の誘導経路とは異なる経路を新たな誘導経路の候補として提示可能とされている。
【0039】
より具体的には、図1に示すように、ナビゲーション装置1は、監視対象内最適経路決定手段としての監視対象内最適経路決定部17を有している。この監視対象内最適経路決定部17は、交通情報監視部15によって監視されている複数の監視対象経路上の交通情報が所定の変化を示した場合に、当該所定の変化後の複数の監視対象経路上の交通情報を考慮して(他の交通情報は考慮せずに)、監視対象内最適経路を決定するようになっている。ただし、監視対象内最適経路とは、交通情報監視部15によって監視されている複数の監視対象経路のうちの前記所定の変化後の各監視対象経路上の交通情報を考慮した場合の最適な経路のことをいう。なお、各監視対象経路は、元々は、複数の候補経路として算出されたものであるので、各監視対象経路は、経路計算条件に適合するものである。監視対象内最適経路は、そのような経路計算条件に適合する各監視対象経路のうち、前記所定の変化後の交通情報を考慮した場合に最適とみなされる経路である。具体的には、監視対象内最適経路は、複数の監視対象経路のうち、各監視対象経路上の交通情報を考慮した場合に目的地までの所要時間が最短となる経路であってもよい。あるいは、監視対象内最適経路は、複数の監視対象経路のうち、各監視対象経路上の交通情報を考慮した場合に目的地までの所要時間が最短となる経路であって、尚かつ、現在の誘導経路よりも目的地までの所要時間が所定時間(例えば、10分)以上短縮されるような経路であってもよい。
【0040】
また、監視対象内最適経路決定部17による監視対象内最適経路の決定動作のトリガーとなる監視対象経路上の交通情報の所定の変化については、設計コンセプトに応じて種々の変化態様を設定することができる。例えば、複数の監視対象経路のうち、条件対応最適経路すなわち現在の誘導経路に相当する監視対象経路上に、「順調」から「渋滞」もしくは「混雑」となるような交通情報(例えば、VICS情報)の変化が示され、尚かつ、他の少なくとも1つの監視経路上に、「渋滞」もしくは「混雑」から「順調」となるような交通情報の変化が示された場合を前記所定の変化としてもよい。また、前記所定の変化を示したか否かについては、交通情報監視部15が判定するようにしてもよいし、監視対象内最適経路決定部17が判定するようにしてもよい。さらに、その判定は、所定の判定周期毎に行うようにしてもよい。この場合、前記所定の変化を示したか否かの判定は、単位判定周期の始点における各監視対象経路上の交通情報に対する当該単位判定周期の終点における各監視対象経路上の交通情報の変化分を判定対象として行われることになる。
【0041】
さらに、本実施形態において、監視対象内最適経路決定部17は、監視対象内最適経路を決定する際に、例えば、前記所定の変化後の各監視対象経路上の交通情報に応じた各監視対象経路のコストを計算するようにしてもよい。この場合には、例えば、前記所定の変化によって渋滞が発生するようになった監視対象経路については、当初のコストすなわち当該監視対象経路が決定された際の経路計算時におけるコストよりも大きな値のコストが算出されることになる。そして、監視対象内最適経路決定部17は、算出された前記所定の変化後の交通情報に応じた各監視対象経路のコストを比較して、コストが最小の監視対象経路を監視対象内最適経路として決定すればよい。このような手法による監視対象内最適経路の決定は、コストの計算対象が予め複数の監視対象経路のみに限定されているため、通常の経路計算に比べてデータの読み込み回数が少なく、システム負荷も軽減された処理となる。なお、監視対象内最適経路の条件として、現在の誘導経路よりも目的地までの所要時間が所定時間以上短縮されることを含める場合、監視対象内最適経路の決定の際には、前記所定の変化後の交通情報に応じた複数の監視対象経路のコスト同士の比較に加えて、さらに、これらのコストを、現在の誘導経路の当初のコスト(現在の誘導経路が条件対応最適経路として算出された際のコスト)とも比較すればよい。この比較結果において、前記所定の変化後の交通情報に応じた複数の監視対象経路のコストのうちの最小のものが、現在の誘導経路の当初のコストに対して、目的地までの所要時間を所定時間以上短縮させる程度に低減されたコストでない場合には、監視対象内最適経路が決定されないことになる。この場合には、経路提示部10は、新たな誘導経路の候補の提示を行わず、現在の誘導経路が維持されるようにすればよい。
【0042】
そして、監視対象内最適経路決定部17は、監視対象内最適経路が決定されると、決定された監視対象内最適経路を経路提示部10へと出力するようになっている。なお、経路計算部8に設定された経路計算条件に、交通情報を考慮する旨の条件が含まれていない場合すなわち経路計算部8が交通情報を考慮しない静的な経路計算を行う場合であっても、監視対象内最適経路決定部17によって決定される監視対象内最適経路は、各監視対象経路上の交通情報が考慮されたものとなる。
【0043】
ここで、図3は、このような監視対象内最適経路決定部17による監視対象内最適経路の決定動作の一例を示したものである。図3は、図2の状態から自車が誘導経路上を進行して、図3に示す自車位置において複数の監視対象経路上の交通情報が所定の変化を示した場合における動作例である。図3においては、交通情報監視部15によって監視されている交通情報を考慮した場合におけるコストが最小となる監視対象経路が、第2の監視対象経路となっている。これにより、第2の監視対象経路が監視対象内最適経路に決定されている。
【0044】
さらに、本実施形態において、経路提示部10は、監視対象内最適経路決定部17によって監視対象内最適経路が決定された場合に、決定された監視対象内最適経路を経路誘導部11に設定されている誘導経路と比較することによって、監視対象内最適経路が現在の誘導経路と異なるか否かの判定(以下、監視対象内最適経路判定と称する)を行うようになっている。
【0045】
そして、経路提示部10は、監視対象内最適経路判定において肯定的な判定結果が得られた場合には、監視対象内最適経路を新たな誘導経路の候補として提示するようになっている。一方、経路提示部10は、監視対象内最適経路判定において否定的な判定結果が得られた場合には、新たな誘導経路の候補を提示しないようになっている。
【0046】
これにより、ユーザは、経路提示部10によって監視対象内最適経路が新たな誘導経路の候補として提示された場合には、当該監視対象内最適経路を誘導経路に設定するための入力操作を行うことによって誘導経路を変更することができる。
【0047】
したがって、本実施形態によれば、交通情報のうちの複数の監視対象経路上の交通情報のみの変化を契機として、監視対象内最適経路の決定および監視対象内最適経路判定を経た上で新たな誘導経路の候補を提示することができるので、監視対象経路以外の経路上の無用な交通情報の変化を契機とした経路計算が行われることを回避することができる。また、その一方で、目的地に到着するまでに利用する可能性が高い複数の監視対象経路上の交通情報の変化については、この変化に機動的に対応して誘導経路の変更の有無に反映させることができる。この結果、無駄な経路計算を抑制してシステム負荷の軽減および製品寿命の向上を図りつつ、定期的な再計算に頼ることなく、有用な交通情報の変化に迅速かつ適切に対応した経路誘導を実現することができる。また、無駄な経路計算を抑制することにともなって、データの読み込み回数が制限されたSDカードを記憶媒体として問題なく利用することができる。さらに、本実施形態によれば、経路計算によらず、監視対象内最適経路決定部17によって決定された監視対象内最適経路を新たな誘導経路の候補として提示することにより、経路計算の回数をより有効に制限することができる。
【0048】
なお、本実施形態においては、経路計算条件に交通情報を考慮する旨の条件が含まれていないことが望ましい。そのようにすれば、例えば、渋滞が発生していなければ目的地への所要時間が最短となるような利用価値が高い経路が、経路計算時における一時的な渋滞によって監視対象経路から原始的に除外されてしまうことを回避することができるので、より有用な交通情報の変化のみを誘導経路の変更の有無に反映させることができる。
【0049】
上記構成に加えて、更に、図1に示すように、ナビゲーション装置1は、要否判定手段としての要否判定部21を有している。この要否判定部21は、経路誘導中に自車位置特定部4によって特定された自車位置に基づいて、複数の監視対象経路の要否を個別に判定するようになっている。具体的には、要否判定部21は、複数の監視対象経路のうち、現在の誘導経路上の自車が走行済みの分岐点において現在の誘導経路から分岐されるような監視対象経路を不要と判定するようにしてもよい。そして、本実施形態において、交通情報監視部15は、複数の監視対象経路のうちの要否判定部21によって不要と判定された監視対象経路を、監視対象から除外するようになっている。これにより、目的地に到着するまでに利用する可能性が低くなった監視対象経路を事後的に監視対象から除外することができるので、より有用な交通情報の変化のみを、誘導経路の変更の有無に反映させることができる。
【0050】
ここで、図4は、このような要否判定部21の要否判定にともなう監視対象経路の除外動作の一例を示したものである。この図4は、自車が図2の状態から第3の監視対象経路を誘導経路とした経路誘導を受けつつ図4に示す分岐点Aを通過した場合における動作例を示している。図4においては、第1の監視対象経路および第2の監視対象経路が、現在の誘導経路上の自車が走行済みの分岐点において現在の誘導経路から分岐された監視対象経路となっている。図4において、第1の監視対象経路および第2の監視対象経路は、自車が分岐点Aに引き返すような通常では考えにくい運転操作をしない限り、利用することができない経路である。このような経路は、ユーザに利用される可能性が低いものであるので、交通情報を監視する必要性に乏しいものとなる。したがって、図4においては、このような第1の監視対象経路および第2の監視対象経路が、要否判定部21の要否判定によって不要と判定された上で、交通情報監視部15によって監視対象から除外されることになる。
【0051】
上記構成に加えて、更に、図1に示すように、ナビゲーション装置1は、監視対象減数時再計算制御手段としての監視対象減数時再計算制御部22を有している。この監視対象減数時再計算制御部22は、要否判定部21の要否判定に基づく交通情報監視部15による監視対象経路の除外動作によって監視対象経路が所定数以下となった場合に、経路計算部8に対して、条件対応最適経路を再計算させるための制御を行うようになっている。そして、この監視対象減数時再計算制御部22の制御により、経路計算部8は、前述したものと同様の経路計算によって、条件対応最適経路を再計算する。なお、この再計算の過程において算出された複数の候補経路は、監視対象経路決定部14によって新たな監視対象経路に決定され、そのうちの1つが条件対応最適経路として経路提示10によって提示されることになる。これにより、再計算を、監視対象経路が所定数以下となった必要時に限定して行いつつ、条件対応最適経路の選択肢を維持して、より最適な経路が提示される可能性を確保しておくことができる。
【0052】
ここで、図5は、このような監視対象減数時再計算制御部22の制御動作の一例を示したものである。この図5における監視対象減数時再計算制御部22の制御動作は、図4において第1の監視対象経路および第2の監視対象経路が監視対象から除外されたことにともなって実行されたものである。すなわち、図4における除外動作によって、第3の監視対象経路および第4の監視対象経路のみが残り、監視対象経路の数は、所定数としての2つとなった。これに対して、図5においては、再計算によって、第3の監視対象経路および第4の監視対象経路に加えて、更に、第5の監視対象経路が監視対象経路に加わっている。
【0053】
なお、上記構成以外にも、例えば、自車位置が現在の誘導経路から逸脱した場合には、経路提示部10が、逸脱後の自車位置が存在する地点から目的地側に延びる現在の誘導経路とは異なる監視対象経路を、新たな誘導経路の候補としてユーザに提示してもよい。そのような監視対象経路が複数存在する場合には、その複数の監視対象経路の中でコストが最小の監視対象経路を提示すればよい。
【0054】
次に、本実施形態の作用について図6を用いて説明する。
【0055】
本実施形態においては、まず、図6のステップ1(ST1)において、目的地設定部5により、表示部6に表示された目的地設定用の操作画面に対する入力操作部7を用いたユーザの入力操作に応じた目的地を設定する。
【0056】
次いで、ステップ2(ST2)において、経路計算部8により、ステップ1(ST1)における目的地の設定結果と、目的地の設定時における自車位置特定部4によって特定された自車位置と、予め設定された経路計算条件とに基づいて、地図記憶部3に記憶された道路ネットワークデータを用いた経路計算を開始する。
【0057】
次いで、ステップ3(ST3)において、経路計算部8により、経路計算の過程で、複数の候補経路を算出する。
【0058】
次いで、ステップ4(ST4)において、経路計算部8により、ステップ3(ST3)において算出された複数の候補経路のうちのコストが最小の経路を条件対応最適経路として算出するとともに、監視対象経路決定部14により、ステップ3(ST3)において算出された複数の候補経路を監視対象経路にそれぞれ決定する。
【0059】
次いで、ステップ5(ST5)において、経路提示部10により、ステップ4(ST4)において算出された条件対応最適経路を、誘導経路の候補として表示部6に表示することによって、条件対応最適経路の提示を行う。
【0060】
次いで、ステップ6(ST6)において、経路誘導部11および交通情報監視部15により、ステップ5(ST5)において提示された条件対応最適経路を誘導経路に設定するための入力操作が行われたか否かを判定し、行われた場合にはステップ7(ST7)に進み、行われていない場合にはステップ6(ST6)を繰り返す。
【0061】
次いで、ステップ7(ST7)において、経路誘導部11により、ステップ4(ST4)において算出された条件対応最適経路を誘導経路とした経路誘導を開始するとともに、交通情報監視部15により、ステップ4(ST4)において算出された複数の監視対象経路上の交通情報の監視を開始する。
【0062】
次いで、ステップ8(ST8)において、交通情報監視部15により、複数の監視対象経路上の交通情報が所定の変化を示したか否かを判定し、所定の変化を示した場合には、ステップ9(ST9)に進み、所定の変化を示していない場合には、ステップ17(ST17)に進む。
【0063】
ここで、ステップ9(ST9)からステップ15(ST15)までの一連の処理について先に説明すると、まず、ステップ9(ST9)においては、監視対象内最適経路決定部17により、交通情報監視部15のステップ8(ST8)における判定結果を受けて、複数の監視対象経路の中から前述した手法によって監視対象内最適経路を決定する。
【0064】
次いで、ステップ10(ST10)において、経路提示部10により、ステップ9(ST9)において決定された監視対象内最適経路が現在の誘導経路と異なるか否かを判定し、異なる場合には、ステップ11(ST11)に進み、異ならない場合には、ステップ16(ST16)に進む。
【0065】
次いで、ステップ11(ST11)において、経路提示部10により、ステップ9(ST9)において決定された監視対象内最適経路を新たな誘導経路の候補として提示する。
【0066】
次いで、ステップ12(ST12)において、経路誘導部11により、ステップ11(ST11)において提示された経路を新たな誘導経路に設定するための入力操作が行われた行われたか否かを判定し、行われた場合には、ステップ13(ST13)に進み、行われていない場合には、ステップ16(ST16)に進む。
【0067】
次いで、ステップ13(ST13)において、経路誘導部11により、ステップ11(ST11)において提示された経路を、現在の誘導経路に代わる新たな誘導経路に設定して誘導経路の変更を行い、変更後の誘導経路にしたがった経路誘導を開始する。
【0068】
次いで、ステップ14(ST14)において、経路誘導部11による経路誘導および交通情報監視部15による監視対象経路上の交通情報の監視を続行する。
【0069】
次いで、ステップ15(ST15)において、経路誘導部11および交通情報監視部15により、自車位置特定部4の特定結果に基づいて、自車が目的地に到着したか否かを判定し、到着した場合には、処理を終了し、到着していない場合には、ステップ8(ST8)に戻る。
【0070】
一方、ステップ10(ST10)からステップ16(ST16)に進んだ場合には、新たな誘導経路の候補を提示せず、現在の誘導経路を維持してステップ14(ST14)に進む。
【0071】
次に、ステップ17(ST17)からステップ20(ST20)までの一連の処理について説明すると、まず、ステップ17(ST17)においては、要否判定部21により、自車位置特定部4によって特定された現在の自車位置に基づいて、複数の監視対象経路の要否を前述した手法によって個別に判定する。
【0072】
次いで、ステップ18(ST18)において、交通情報監視部15により、ステップ17(ST17)において不要と判定された監視対象経路を監視対象から除外する。
【0073】
次いで、ステップ19(ST19)において、監視対象減数時再計算制御部22により、ステップ18(ST18)における処理によって監視対象経路が所定数以下となったか否かを判定し、所定数以下となった場合には、ステップ20(ST20)に進み、所定数以下となっていない場合には、ステップ14(ST14)に進む。
【0074】
次いで、ステップ20(ST20)において、監視対象減数時再計算制御部22の制御により、経路計算部8による条件対応最適経路の再計算を開始してステップ3(ST3)に戻る。
【0075】
(第2実施形態)
次に、本発明に係るナビゲーション装置の第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図7および図8を参照して説明する。
【0076】
なお、第1実施形態と基本的構成が同一もしくはこれに類する箇所については、同一の符号を用いて説明する。
【0077】
図7に示すように、本実施形態におけるナビゲーション装置30は、第1実施形態とは異なり、監視対象内最適経路決定部17の替わりに、交通情報変化時再計算制御手段としての交通情報変化時再計算制御部31を有している。
【0078】
交通情報変化時再計算制御部31は、経路誘導中に、交通情報監視部15によって監視されている複数の監視対象経路上の交通情報が所定の変化を示した場合に、経路計算部8に対して条件対応最適経路を再計算させるための制御を行うようになっている。ただし、この交通情報変化時再計算制御部31の制御は、経路計算条件に交通情報を考慮する旨の条件が含まれた状態での動的な経路計算によって条件対応最適経路を再計算させるための制御とされている。
【0079】
尤も、目的地が設定された当初から、経路計算条件に交通情報を考慮する旨の条件が含まれていれば、この交通情報変化時再計算制御部31の制御は、当初からの経路計算アルゴリズムをそのまま踏襲した経路計算を再度行わせるための制御となる。なお、ダイナミックルートガイダンスの機能に応じては、目的地の設定時の経路計算において考慮する交通情報の領域(例えば、VICS情報の全受信領域)よりも、経路誘導中の経路計算において考慮する交通情報の領域(例えば、VICS情報の全受信領域のうちの自車前方20kmの領域)の方が小さい場合もある。一方、当初から経路計算条件に交通情報を考慮する旨の条件が含まれていない場合すなわち経路計算部8が静的な経路計算を行うように設定されている場合には、再計算のときだけ経路計算条件に交通情報を考慮する旨の条件を自動的に追加すればよい。
【0080】
なお、監視対象経路上の交通情報が所定の変化を示したか否かの判定は、交通情報監視部15が行うようにしてもよいし、交通情報変化時再計算制御部31が行うようにしてもよい。その場合の具体的な判定方法は、第1実施形態と同様であってもよい。
【0081】
また、再計算の条件には、現在の誘導経路よりも目的地までの所要時間が所定時間以上短縮される経路を探索する旨の再計算独自の条件を含ませるようにしてもよい。
【0082】
さらに、本実施形態において、経路提示部10は、交通情報変化時再計算制御部31の制御にしたがった経路計算部8の再計算によって条件対応最適経路が算出された場合に、この算出された条件対応最適経路が現在の誘導経路と異なるか否かの判定(以下、条件対応最適経路判定と称する)を行うようになっている。
【0083】
そして、経路提示部10は、条件対応最適経路判定において肯定的な判定結果が得られた場合には、再計算によって算出された条件対応最適経路を新たな誘導経路の候補として提示するようになっている。一方、経路提示部10は、条件対応最適経路判定において否定的な判定結果が得られた場合には、新たな誘導経路の候補を提示しないようになっている。
【0084】
これにより、ユーザは、経路提示部10によって条件対応最適経路が新たな誘導経路の候補として提示された場合には、当該条件対応最適経路を誘導経路に設定するための入力操作を行うことによって誘導経路を変更することができる。
【0085】
なお、再計算の条件に、現在の誘導経路よりも目的地までの所要時間が所定時間以上短縮される経路を探索する旨の再計算独自の条件を含ませる場合には、再計算によって条件対応最適経路が算出されない場合がある。このような場合には、経路提示部10は、新たな誘導経路の候補を提示せずに、現在の誘導経路が維持されるようにすればよい。
【0086】
このように、本実施形態においては、経路計算部8によって再計算が行われることにはなるが、この再計算は、従来のような定期的な経路計算とは異なり、監視対象経路上の交通情報のみが所定の変化を示した必要時に限定して行われるため、経路計算の回数を抑制することができる。そして、このような再計算により、新たな誘導経路の候補に相応しい条件対応最適経路を提示することができる。
【0087】
その他の構成は、第1実施形態と基本的に同様であるので説明を省略する。
【0088】
次に、図8は、本実施形態の作用を示したフローチャートであるが、この図8を第1実施形態の図6と比べれば分かるように、図8においては、図6のステップ9(ST9)に相当する工程がステップ31(ST31)に置き換えられている。また、図8においては、図6のステップ10(ST10)に相当する工程がステップ32(ST32)に置き換えられている。さらに、図8においては、図6のステップ11(ST11)に相当する工程がステップ33(ST33)に置き換えられている。図8のその他の工程は、図6と同様であるので、以下においては、本実施形態に特有のステップ31(ST31)からステップ33(ST33)までの工程を中心に説明する。
【0089】
図8に示すように、本実施形態においては、ステップ8(ST8)において、交通情報監視部15により、複数の監視対象経路上の交通情報が所定の変化を示したか否かを判定し、所定の変化を示した場合には、ステップ31(ST31)に進む。
【0090】
次いで、ステップ31(ST31)において、経路計算部8により、交通情報変化時再計算制御部31の制御にしたがった動的な経路計算によって条件対応最適経路を再計算する。なお、図示はしないが、この再計算の過程においては、ステップ3(ST3)に示すように、複数の候補経路が算出されることになる。これら複数の候補経路は、再計算の終了時において監視対象経路決定部14によって新たな監視対象経路に決定されることになる。
【0091】
次いで、ステップ32(ST32)において、経路提示部10により、ステップ31(ST31)において算出された条件対応最適経路が現在の誘導経路と異なるか否かを判定し、異なる場合には、ステップ33(ST33)に進み、異ならない場合には、ステップ16(ST16)に進む。
【0092】
そして、ステップ33(ST33)において、経路提示部10により、ステップ31(ST31)において算出された条件対応最適経路を新たな誘導経路の候補として提示してステップ12(ST12)に進む。
【0093】
なお、本実施形態においては、ステップ13(ST13)において、新たな誘導経路にしたがった経路誘導が開始されるとともに、交通情報監視部15により、ステップ31(ST31)における再計算の過程で算出された候補経路に基づく新たな複数の監視対象経路上の交通情報の監視が開始されることになる。
【0094】
以上述べたように、本発明によれば、交通情報のうちの複数の監視対象経路上の交通情報のみの変化を、誘導経路の変更の有無に反映させることができるので、初期の目的を確実に達成することができる。
【0095】
なお、本発明は、前述した実施の形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々変更することができる。例えば、本発明のナビゲーション装置は、第1実施形態の構成と第2実施形態の構成とを併有するものであってもよい。ただし、その場合には、複数の監視対象経路上の交通情報の所定の変化が、第1実施形態に示した監視対象内最適経路決定部17による監視対象内最適経路の決定動作と、第2実施形態に示した交通情報変化時再計算制御部31による再計算制御との双方のトリガーになっていることを考慮して、1つのトリガーによって両立し得ない2つの動作が同時に行われようとすることを防止する必要がある。そこで、例えば、経路計算条件に交通情報を考慮する旨の条件が含まれていない場合には、前記所定の変化をトリガーとして第1実施形態に示した監視対象内最適経路決定部17による監視対象内最適経路の決定動作を行い、一方、経路計算条件に交通情報を考慮する旨の条件が含まれている場合には、前記所定の変化をトリガーとして第2実施形態に示した交通情報変化時再計算制御部31の再計算制御を行うようにしてもよい。あるいは、前記所定の変化の基準を、監視対象内最適経路決定部17と交通情報変化時再計算制御部31との間で互いに異ならせるようにしてもよい。この場合、例えば、交通情報変化時再計算制御部31は、すべての監視対象経路上の交通情報が道路渋滞で埋め尽くされるような顕著な悪化を示した場合に例外的に再計算制御を行うようにしてもよい。そのようにすれば、監視対象内最適経路決定部17と交通情報変化時再計算制御部31との双方をナビゲーション装置に搭載した場合に、相対的に交通情報変化時再計算制御部31を動作させる頻度を低めることができるので、経路計算(再計算)の回数はさらに少なくなる。
【0096】
また、第1実施形態および第2実施形態においては、交通情報監視部15が、交通情報取得部2によって取得された交通情報の中から複数の監視対象経路上の交通情報を抽出するようになっていたが、交通情報取得部2が、図示しない交通情報サーバ(VICSセンタ等)から、複数の監視対象経路上の交通情報のみを取得するように構成してもよい。そのための具体的な構成としては、例えば、監視対象経路決定部14によって複数の監視対象経路が決定された場合に、決定された監視対象経路を示す道路情報(リンクID等)を、交通情報サーバに通信を介して通知する監視対象経路通知手段をナビゲーション装置に設けるようにすればよい。そして、交通情報サーバが、この監視対象経路通知手段からの監視対象経路の通知に応答して、この監視対象経路に対応する交通情報のみをナビゲーション装置側に送信するように構成すればよい。このように構成すれば、ナビゲーション装置には、必要な交通情報のみが配信されることになるため、通信コストを削減することができる。
【0097】
さらに、第1実施形態および第2実施形態においては、1つの経路計算条件にしたがった1回の経路計算の過程で算出された複数の候補経路を監視対象経路に決定するように構成されている。これに対して、例えば、経路計算条件に交通情報を考慮する旨の条件が含まれている場合に、この経路計算条件にしたがった動的な経路計算を行って複数の候補経路を算出した後に、その経路計算条件から交通情報を考慮する旨の条件を除外した静的な経路計算を副次的に行って複数の候補経路を算出し、当該動的な経路計算によって算出された複数の候補経路のみではなく、当該静的な経路計算によって算出された複数の候補経路のうちのコストが最小の経路も監視対象経路に決定してもよい。このようにすれば、たとえ、経路計算条件に交通情報を考慮する旨の条件が含まれている場合であっても、監視対象経路としては、常に、交通情報の良否にかかわらず比較的に通行し易い経路(いわば、静的に最適な経路)を含めることができるので、利用可能性が高い経路を誘導経路の候補として残しておくことができる。
【0098】
さらにまた、本発明は、VICS情報以外の交通情報たとえばRDS/TMC(Radio Data System/Traffic Message Channel)等にも有効に適用することができる。
【符号の説明】
【0099】
1 ナビゲーション装置
2 交通情報取得部
3 地図記憶部
4 自車位置特定部
5 目的地設定部
8 経路計算部
10 経路提示部
11 経路誘導部
14 監視対象経路決定部
15 交通情報監視部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交通情報を取得する交通情報取得手段と、
経路計算用のデータが記憶された記憶手段と、
自車位置を特定する自車位置特定手段と、
目的地を設定する目的地設定手段と、
前記記憶手段に記憶された前記経路計算用のデータに基づいて、前記目的地設定手段によって設定された目的地までの経路計算条件に応じた最適な経路である条件対応最適経路を算出するための経路計算を行う経路計算手段と、
誘導経路の候補としての経路をユーザに提示可能とされ、前記経路計算手段によって前記条件対応最適経路が算出された場合には、算出された前記条件対応最適経路を提示する経路提示手段と、
この経路提示手段によって提示された経路を誘導経路に設定した上で、設定された誘導経路にしたがった経路誘導を行う経路誘導手段と
を備えたナビゲーション装置であって、
前記経路計算の過程において前記条件対応最適経路の候補として算出された前記条件対応最適経路に相当する1つの候補経路を含む複数の候補経路を、交通情報を監視すべき複数の監視対象経路に決定する監視対象経路決定手段と、
この監視対象経路決定手段によって決定された前記複数の監視対象経路上の交通情報を、前記交通情報取得手段によって取得された前記交通情報に基づいて監視する交通情報監視手段とを備え、
前記経路提示手段は、前記交通情報取得手段によって前記経路誘導中に取得された前記交通情報のうちの前記交通情報監視手段によって監視されている前記複数の監視対象経路上の交通情報のみの変化を契機として、現在の誘導経路とは異なる経路を新たな誘導経路の候補として提示可能とされていること
を特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
前記経路誘導中に、前記交通情報監視手段によって監視されている前記複数の監視対象経路上の交通情報が所定の変化を示した場合に、前記所定の変化後の前記複数の監視対象経路上の交通情報を考慮して前記複数の監視対象経路のうちの最適な経路である監視対象内最適経路を決定する監視対象内最適経路決定手段を備え、
前記経路提示手段は、前記監視対象内最適経路決定手段によって決定された前記監視対象内最適経路が現在の誘導経路と異なる場合に、前記監視対象内最適経路を新たな誘導経路の候補として提示すること
を特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項3】
前記監視対象内最適経路は、前記複数の監視対象経路のうちの各監視対象経路上の交通情報を考慮した場合に前記目的地までの所要時間が最短となる経路であること
を特徴とする請求項2に記載のナビゲーション装置。
【請求項4】
前記監視対象経路は、前記経路計算条件に交通情報を考慮する旨の条件が含まれない状態での静的な前記経路計算の過程において算出された前記候補経路に基づく監視対象経路であること
を特徴とする請求項2または請求項3に記載のナビゲーション装置。
【請求項5】
前記経路誘導中に、前記交通情報監視手段によって監視されている前記複数の監視対象経路上の交通情報が所定の変化を示した場合に、前記経路計算手段に対して、前記経路計算条件に交通情報を考慮する旨の条件が含まれた状態での動的な前記経路計算によって前記条件対応最適経路を再計算させるための制御を行う交通情報変化時再計算制御手段を備え、
前記経路提示手段は、前記再計算によって算出された前記条件対応最適経路が現在の誘導経路と異なる場合に、当該条件対応最適経路を新たな誘導経路の候補として提示すること
を特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項6】
前記経路誘導中に前記自車位置特定手段によって特定された前記自車位置に基づいて、前記複数の監視対象経路の要否を個別に判定する要否判定手段を備え、
前記交通情報監視手段は、前記複数の監視対象経路のうちの前記要否判定手段によって不要と判定された監視対象経路を監視対象から除外すること
を特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のナビゲーション装置。
【請求項7】
前記要否判定手段は、前記複数の監視対象経路のうち、現在の誘導経路上の自車が走行済みの分岐点において現在の誘導経路から分岐された監視対象経路を不要と判定すること
を特徴とする請求項6に記載のナビゲーション装置。
【請求項8】
前記監視対象から除外する動作によって前記監視対象経路が所定数以下となった場合に、前記経路計算手段に対して前記条件対応最適経路を再計算させるための制御を行う監視対象減数時再計算制御手段を備えたこと
を特徴とする請求項6または請求項7に記載のナビゲーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−58827(P2011−58827A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−205727(P2009−205727)
【出願日】平成21年9月7日(2009.9.7)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】