説明

ナビゲーション装置

【課題】充電可能な電動自転車において、上り坂におけるバッテリの放電区間だけではなく、下り坂や平坦な道路での充電区間も考慮した目的地までの経路探索が可能なナビゲーション装置を提供することを目的とするものである。
【解決手段】電動自転車のバッテリ残量を検出する手段と、各リンクの道路勾配等の地図情報を格納する手段と、道路勾配に対して増減する電動自転車の充電電力量や放電電力量の情報を格納する手段と、充電電力量・放電電力量より出発地から目的地までの経路のバッテリ残量を考慮した経路を探索する手段と、を有するものである。これにより、下り坂や平坦な道路による充電区間を考慮した最適な経路探索を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出発地から目的地までの経路探索を行うナビゲーション装置であって、電動自転車(アシスト付き自転車)において経路探索する際に下り坂や平坦な道路で充電可能な電動自転車における充電区間について考慮して経路探索を行うことができる電動自転車用ナビゲーション装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、坂道を登るときにモータなどでアシストする電動自転車(アシスト付自転車)が普及してきている。このような電動自転車は、モータとバッテリとで構成され、ペダルを踏む力、回転数によって自動的にモータを駆動させることで、上り坂などで自転車の利用者の負荷を軽減することができるように構成されている。このような電動自転車の利点を用いて、電動自転車に取り付けられたバッテリの残量やバッテリの種類に基づいて、現在位置から目的地までの複数経路のうちバッテリ切れ等で到達困難な経路を除外した経路を探索することができるナビゲーション装置が提案されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−127873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら従来の電動自転車用ナビゲーション装置における経路探索では、バッテリが常に放電され続けることを前提とした経路探索であったため、下り坂や平坦な道路を走行中にバッテリ充電可能な電動自転車にとっては到達可能な経路が存在した場合、推奨経路として案内することができなかった。
【0005】
そこで本発明は、現在位置から目的地までの経路において、バッテリを使用する一方の放電区間だけ考慮した経路探索ではなく、下り坂や平坦な道路(以下、本発明では経路候補の選択肢を広げるため、下り坂だけではなく平坦な道路も充電区間として考える)による充電区間を考慮した最適な経路探索を行うことができるナビゲーション装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明は、電動自転車と接続し現在位置から目的地まで経路探索可能なナビゲーション装置において、前記電動自転車に搭載されたバッテリ残量を検出する電力検出手段と、道路を構成する各リンクの座標や道路勾配など地図情報を格納した地図データ記憶手段と、道路勾配に対する充電電力量・放電電力量の情報を格納した充電・放電電力量記憶手段と、前記充電・放電電力量記憶手段に記憶された充電電力量・放電電力量を用いて出発地から目的地までの経路における前記バッテリ残量を考慮した経路を探索する経路探索手段と、を備えた構成を有する。

【0007】
このように構成された本発明のナビゲーション装置によれば、現在位置から目的地まで複数の経路候補がある中で、前記充電・放電電力量記憶手段に記憶された充電電力量・放電電力量の情報を用いて下り坂や平坦な道路における充電区間を考慮し、現在位置から目的地までの間にある上り坂及び下り坂を考慮した最適な経路を探索することができる。
【0008】
また、本発明の前記充電・放電電力量記憶手段は、前記電力検出手段で検出されるバッテリ残量の変動から前記各リンクにおける充電電力量・放電電力量を測定し前記充電・放電電力量記憶手段に記憶された充電電力量・放電電力量を更新する更新手段を備える構成を有している。
【0009】
このように構成された本発明のナビゲーション装置によれば、充電・放電電力量記憶手段に予め記憶された道路勾配に対する充電電力量・放電電力量を電力検出手段で検出されるバッテリ残量の変動を用いて更新することができるように構成されており、実走行において計測された道路勾配に対する充電電力量・放電電力量を用いて経路探索を行うことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、経路探索を行う際に電動自転車(アシスト付自転車)に搭載されているバッテリ残量を検出し、各リンクの勾配情報から探索経路上の充電電力量・放電電力量の予測を行うことで、目的地まで経路探索を行う際に上り坂における放電区間だけの経路ではなく、下り坂や平坦な道路の走行時における充電区間を考慮して経路探索を行うため、放電のみを考慮した経路よりも最短経路を選択でき、目的地に到着する前にバッテリ切れを防止し、且つ使用者に快適な走行を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施の形態におけるナビゲーション装置の構成を示すブロック図
【図2】本発明の第1の実施の形態におけるナビゲーション装置の動作説明のためのフロー図
【図3】本発明の第1の実施の形態におけるコスト算出処理の動作説明のためのフロー図
【図4】本発明の第2の実施の形態におけるナビゲーション装置の構成を示すブロック図
【図5】本発明の第2の実施の形態における充電・放電電力量統計データ更新処理の動作説明のためのフロー図
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態におけるナビゲーション装置について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の第1の実施形態におけるナビゲーション装置の構成を示すブロック図である。
【0013】
図1に示すように、本発明のナビゲーション装置1は、ナビゲーション装置1に対して使用者が目的地の設定を行う目的地設定部2と、現在位置を検出する現在位置検出部3と、電動自転車のバッテリ残量を検出するバッテリ残量検出部4と、道路を構成する各リンクの座標や道路勾配などの地図情報を格納する地図データ5と、道路勾配に対して増減する電動自転車の充電電力量や放電電力量の統計データを格納する充電・放電電力量データ6と、ナビゲーション装置1を構成する各部の動作を制御し、なお且つ経路探索部7aとバッテリ残量推定部7bを備えた制御部7と、探索結果のディスプレイ表示や音声出力を行う出力部8と、を備えて構成されている。
【0014】
ここで目的地設定部2は、例えばタッチパネルやリモートコントローラ等の入力装置を用いて、使用者による操作やデータ入力で指定された地点や施設を、目的地として設定することができるように構成されている。
【0015】
現在位置検出部3は、GPS(Global Positioning System)に代表される測位システムに収容される人工衛星からの電波を受信して、現在位置を検出することができるように構成されている。
バッテリ残量検出部4は、例えば、電動自転車のバッテリ端子の電圧や負荷電流を計測し、この値を元に電動自転車のバッテリ残量検出ができるように構成されている。
【0016】
地図データ5は、SDメモリーカードや光学ディスクなどの記録媒体を用いて構成され、この記録媒体には道路の位置、接続関係、道路勾配、道路幅員等の道路情報が記録されている。
充電・放電電力量統計データ6は、道路勾配に対して電動自転車を走行したときに変動する距離単位辺りの電力量の増減値が記録されている。
【0017】
制御部7は、ナビゲーション装置1を構成する各部構成の動作を制御することができると共に、経路探索部7a、バッテリ残量推定部7bと、を備えて構成されている。
【0018】
経路探索部7aは、目的地設定部2で設定された目的地と、現在位置検出部3で取得した出発地を結び、バッテリ残量検出部4で取得したバッテリ残量を用いて上り坂(放電区間)、下り坂及び平坦な道路(充電区間)について考慮した最適なルートを探索するように構成されている(図3参照)。
バッテリ残量推定部7bは、経路探索部7aの経路探索中に実行するように構成され、経路探索部7aでコスト評価中のリンクに設定されている道路勾配を元に、充電・放電電力量統計データ6を参照して、道路勾配に対する距離単位辺りの電力量の増減値を取得し、走行前のバッテリ残量に対して各リンク通過後に増減する充電・放電電力量の加算・減算を行い、各リンク通過後のバッテリ残量を推定するように構成されている。
【0019】
出力部8は、経路探索部7aで実行した探索結果を出力するための表示部8aと、経路探索の完了を案内するための音声出力部8bとで構成されている。
ここで、表示部8aは、液晶ディスプレイなどで構成されており、地図、経路、文字情報のメッセージ等を表示することができるように構成されている。
音声出力部8bは、スピーカから構成されており、探索完了の案内や経路案内時の音声案内等を行うことができるように構成されている。
【0020】
次に、このように構成されたナビゲーション装置1の動作について図面を用いて詳細に説明する。
図2は、第1の実施の形態におけるナビゲーション装置の動作を示すフローチャートである。
図2に示すように、ナビゲーション装置1は、目的地設定部2で目的地の設定を行うと(S1)、現在位置検出部3から現在位置の取得を行い(S2)、バッテリ残量検出部4からバッテリ残量を取得する(S3)。
【0021】
次に、S1、S2、S3より取得した情報を元に、経路探索部7aにてバッテリ残量に対し上り坂、下り坂及び平坦な道路を考慮した経路探索処理を実行する(S4)。
ここで、経路探索部7aの処理について図面を用いて説明する。図3は、本発明の第1の実施の形態におけるコスト算出処理の動作説明のためのフロー図である。
【0022】
経路探索部7aにおける上り坂、下り坂及び平坦な道路のコスト算出処理は、下記の手順で実行する。図3に示すように、まず現在位置検出部3から取得した現在位置を開始点とし(S10)、地図データ5から開始点と接続するリンクを取得し(S11)、取得したリンクについて地図データ5からリンク長(リンクの長さ)と道路勾配の情報を取得する(S12)。次に、バッテリ残量推定部7bで、充電・放電電力量統計データ6を参照
し、前記S12にて得られた道路勾配について、対応する単位距離辺りの電力量の増減値を取得し、この値とリンク長を積算することで、当該リンク通過により増減する充電・放電電力量を推定し(S13)、当該リンク通過後のバッテリ残量を算出する(S14)。ここで、S14にて算出したバッテリ残量と、S12で取得したリンク長に応じた探索コストを設定する(S15)。コスト設定について、バッテリが充電状態であったときはコストの重み付けを小さくし、バッテリが放電状態であったきはコストの重み付けを大きくする。同様に、リンク長が短い場合はコストの重み付けを小さくし、リンク長が長い場合はコストの重みを大きくする。このバッテリ残量に応じたコストとリンク長に応じたコストを加算した値を当該リンクのコストとして設定する。また、S14にて算出したバッテリ残量がマイナスだったとき(S16、YES)、上り坂の途中でのバッテリ切れを防止するために、リンク長と道路勾配に応じた探索コストの加算を行う(S17)。次に、対象リンクが最終リンクであるか確認を行い最終リンクではないとき(S18、NO)、S11の処理に戻り、これまで処理していたリンクに接続するリンクを対象リンクとしてS11〜S18の処理を実行する。また、対象リンクが最終リンクのとき(S18、YES)、コスト算出処理を終了する。
【0023】
このように経路探索部7aにおいてバッテリ残量に対し上り坂、下り坂及び平坦な道路のコスト算出処理を行い、現在位置から目的地までの最小コストとなる経路の探索を行う。なお、最適経路の選定については例えばダイクストラ法(Dijkstra‘s algorithm)等を用いて行い、開始点から徐々に探索範囲を広げていき、出発地から各ノードまでの最小コストを確定し、目的地となるノードに到達するまで処理を行うことで、目的地までの最適経路を決定する。
【0024】
S4において経路探索部7aによる経路探索処理終了後、音声出力部8bで探索が完了したことを案内し、現在位置から目的地までの探索結果を表示部8aに出力する(S5)。また、音声出力部8bは、誘導案内中に、経路探索時に考慮された放電区間と充電区間の切り替わるタイミングについて、使用者へ案内を行っても良い。
【0025】
このように構成された本発明の第1の実施の形態におけるナビゲーション装置1によれば、経路探索において、道路勾配に対応する充電・放電電力量を探索コストに反映させるように構成しているので、上り坂におけるバッテリの放電区間だけではなく、下り坂や平坦な道路での充電区間も考慮した目的地までの経路を探索し案内することができる。
【0026】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について図面を用いて説明する。
図4は、本発明の第2の実施例におけるナビゲーション装置の構成を示すブロック図である。
本発明の第2の実施形態では、第1の実施形態で示したナビゲーション装置1の構成に(図1参照)、新たに充電・放電電力量統計データ更新部7cを備えて構成されている。なお、第2の実施形態において第1の実施形態と同様の構成においては同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0027】
第2の実施形態における充電・放電電力量統計データ更新部7cは、予め設定された充電・放電電力量統計データ6を実走行に基づいてデータ更新するように構成されている。
ここで、充電・放電電力量統計データ更新部7cの動作についてフローチャートを用いて説明する。
図5は、充電・放電電力量統計データ更新部7cの動作を示すフローチャートである。充電・放電電力量統計データ更新部7cは、予め経路探索を行った誘導案内中の走行時にデータ更新を行うものとする。
図5に示すように、充電・放電電力量統計データ更新部7cは、地図データ5から経路
探索で探索を行った走行予定のリンクに対する道路勾配とリンク長を取得する(S20)。 なお、ここで述べるリンクとは、予め探索を行った走行予定の経路全体から、道路勾配が等しい区間毎に区切った経路の一部分とする。
【0028】
次に、バッテリ残量検出部4より、使用者の現在位置がリンクの始点(出発地側の端点)に到達したときのバッテリ残量を取得する(S21)。ここで走行予定のリンクを通過しなかったとき(S22、NO)、データの更新は不可と判断して処理を終了する。走行予定のリンクを通過したとき(S22、YES)、バッテリ残量検出部4より、リンクの終点(目的地側の端点)に到達したときのバッテリ残量を取得する(S23)。S21で取得したリンクの始点でのバッテリ残量とS23で取得したリンクの終点でのバッテリ残量から、リンクを通過するときに増減した充電・放電電力量を算出し(S24)、走行したリンクの勾配に対する単位距離あたりの電力量の増減値を算出する(S25)。S25にて算出した単位距離あたりの電力量の増減値を元に、充電・放電電力量統計データに記録されているデータの更新を行う(S26)。
【0029】
この充電・放電電力量統計データの更新は、充電・放電電力量統計データ6に、道路勾配に対する距離単位辺りの電力量の増減値だけではなく、各勾配の値に対して統計を行った母数の情報を持たせ、S25の処理を行う度に母数を更新するとともに、母数を増やした上での平均値を算出する方法がある。
【0030】
また、各勾配の値に対する単位距離あたりの電力量の増減値を、最近取得した情報の一定数のみ全て保持しておき、S25の処理を行う度に、一番古い情報を破棄して今回追加した単位距離あたりの電力量の増減値を加えた後の平均値を算出するのもよい。
【0031】
このように構成された本発明の第2の実施の形態におけるナビゲーション装置2によれば、電動自転車を長期間使用して得た実走行における充電・放電電力量の変化に対応させることができ、上り坂だけではなく下り坂や平坦な道路での充電区間も考慮した経路探索を行うことができる。
【0032】
なお、本発明は第1の実施形態、第2の実施形態に限定されるものではなく、例えば、実施の形態1、実施の形態2において、バッテリ残量推定部7bでバッテリ残量を算出する際、道路勾配に対する単位距離あたりの電力量の増減値を格納した充電・放電電力量統計データ6の各勾配に対する平均値を使用したが、この代わりに例えば回帰分析等の変数間の関係式を推定する統計手法を用いて、充電・放電電力量を算出するための回帰式を作成しても良い。なお、道路勾配を説明変数、充電・放電電力量を目的変数として、回帰係数を求めることで、勾配に対する充電・放電電力量の推定式を作成することができる。
また、説明変数として道路勾配を用いるだけでなく、道路幅員や気温等を説明変数に加えて、より多くの条件を指定した重回帰式を作成して、充電・放電電力量の推定を行うように構成しても同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明のナビゲーション装置は、下り坂や平坦な道路を走行中にバッテリを充電することができる電動自転車において、経路探索をしたときの技術として有用である。
【符号の説明】
【0034】
1 ナビゲーション装置
2 目的地設定部
3 現在位置検出部
4 バッテリ残量検出部
5 地図データ
6 充電・放電電力量統計データ
7 制御部
7a 経路探索部
7b バッテリ残量推定部
7c 充電・放電電力量統計データ更新部
8 出力部
8a 表示部
8b 音声出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動自転車と接続し現在位置から目的地まで経路探索可能なナビゲーション装置において、前記電動自転車に搭載されたバッテリ残量を検出する電力検出手段と、道路を構成する各リンクの座標や道路勾配など地図情報を格納した地図データ記憶手段と、道路勾配に対する充電電力量・放電電力量の情報を格納した充電・放電電力量記憶手段と、前記充電・放電電力量記憶手段に記憶された充電電力量・放電電力量を用いて出発地から目的地までの経路における前記バッテリ残量を考慮した経路を探索する経路探索手段と、
を備えたことを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
前記充電・放電電力量記憶手段は、前記電力検出手段で検出されるバッテリ残量の変動から前記各リンクにおける充電電力量・放電電力量を測定し前記記憶手段に記憶された充電電力量・放電電力量を更新する更新手段を備えることを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−13481(P2012−13481A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−148736(P2010−148736)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】