説明

ネットワークシステム及びネットワークシステムにおける無線端末の位置検出方法

【課題】複数の無線基地局が無線端末の送信データから求めた測定データから無線端末の位置を検出し、この送信データを利用した位置情報のフィルタリング機能を有し、ネットワークシステムの処理負荷、ネットワークにおける転送量及びインターネット端末の処理負荷を、低下させるネットワークシステムを提供する。
【解決手段】本発明のネットワークシステムは、無線端末、無線基地局、測位情報管理サーバ及びユーザ端末から構成され、複数の無線基地局が、無線端末がユーザ端末に送信する送信データ又はユーザ端末からの受信データを受信したことを示す応答信号を受信し、送信データ又は応答信号をユーザ端末に転送するとともに、無線端末から自身に対する距離又は方位を検出するための測定データを、送信データ又は応答信号から抽出し、測位情報管理サーバが、複数の無線基地局からの測定データから無線端末の位置を検出して位置情報として出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システムを利用する無線端末個々の位置を、容易かつ高精度に検出する測位情報提供システム及び測位情報提供方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、PHS(Personal Handy-phone System)、携帯電話及び無線LAN(Local Area Network)に代表される無線端末を用いた移動体無線通信ネットワークにおいて、無線端末個々の位置を検出し、無線端末に通知する位置情報サービスが広く行われている(例えば、非特許文献1、非特許文献2及び非特許文献3参照)。
上記の各非特許文献に記載された移動体無線通信ネットワークにおいては、GPS(Global Positioning System)衛星から受信した情報、周辺無線基地局のID(IDentification)、無線リンクの信号レベル、無線フレームの送信から受信までのRTT(Round Trip Time)などの情報を測定データとして無線端末が取得する。
【0003】
無線端末は、取得した測定データを無線基地局へ送信する。測定データを受信すると、無線基地局は、受信した当該測定データを測位サーバヘ送信する。
そして、測位サーバは、測定データを位置情報へ変換し、変換した位置情報をアプリケーションサーバまたは無線端末へ送信する。
また、無線端末が測位データを取得できない場合、無線端末が接続している無線基地局のIDを測定データとして、無線基地局位置がそのまま位置情報となるセルベース測位を行う場合もある。
【0004】
無線端末が測定データを取得する契機は、無線端末の操作またはあらかじめ与えられたスケジュールに基づく、無線端末側が契機となる場合と、ネットワーク側の端末またはサーバからの指示に基づく、ネットワーク側が契機となる場合がある。
【非特許文献1】”位置情報サービス”、NTT DoCoMo テクニカルジャーナル、Vol.9、No.2
【非特許文献2】”FOMA 位置情報機能の拡充”、NTT DoCoMo テクニカルジャーナル、Vol.14、No.1
【非特許文献3】歴本純一、塩野崎敦、末吉隆彦、味八木隆、”PlaceEngine:実世界集合知に基づくWiFi 位置情報基盤”、インターネットコンファレンス 2006
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術における位置情報サービスは、ネットワーク方式において、無線端末、もしくは無線端末が接続中の単一無線基地局が測定データを取得し、専用の無線メッセージにより、測定した測定データを無線基地局を介し、測位サーバヘ送信することが前提となっている。
そのため、従来の上記ネットワーク方式においては、測定データを無線端末の位置する周辺における複数の無線基地局で取得した場合を想定していないため、各無線基地局で別々に取得した複数の測定データの対応付け、および測定データの集約を行うことができない。
【0006】
また、無線基地局がデータまたはデータの応答を受信すると同時に、当該通信で用いたパラメータを測定データとして取得した場合においても、データまたはデータの応答と位置情報とが別々に独立して処理されている。
このため、従来の上記ネットワーク方式においては、無線端末が送信する送信データまたは受信データの応答信号と、検出された無線端末の位置情報と、が同時に取得できたとしても、この両者を関連させて対応付けて用いることができない。
さらに、従来の上記ネットワーク方式においては、無線基地局で送信データまたは受信データの応答信号を受信した際、無線端末の測定データを同時に取得するため、この測定データを用いた位置情報提供サービスを行う場合、何らかのフィルタリング機能を設けなくては、ネットワーク装置の処理負荷、ネットワークにおける転送量、インターネット端末の処理負荷それぞれが増大してしまう。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、複数の無線基地局が各々無線端末の送信する送信データから取得した測定データを集約して用いて無線端末の位置情報を求め、当該送信データと位置情報とを対応付け、この測定データを利用した位置情報のフィルタリング機能を有し、ネットワークシステムの処理負荷、ネットワークにおける転送量及びインターネット端末の処理負荷を、従来例に比較して低下させるネットワークシステム及びネットワークシステムにおける無線端末の位置測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のネットワークシステムは、無線端末、無線基地局、測位情報管理サーバ及びユーザ端末から構成されるネットワークシステムであり、複数の前記無線基地局が、前記無線端末が前記ユーザ端末に送信する送信データ、前記ユーザ端末からの受信データを受信したことを示す応答信号、前記無線端末が前記無線基地局に送信する制御情報、あるいは前記無線基地局からの受信制御情報を受信したことを示す応答信号を受信し、前記送信データ、制御情報あるいは応答信号をユーザ端末に転送するとともに、前記無線端末から自身に対する距離または方位を検出するために必要な測定データを、前記送信データあるいは応答信号から抽出し、前記測位情報管理サーバが、複数の前記無線基地局から入力される測定データから前記無線端末の位置を検出して位置情報として出力することを特徴とする。
【0009】
本発明のネットワークシステムは、前記無線基地局が、抽出した前記測定データに対し、測定時刻あるいは測定時刻を示す同期識別情報を付加して、前記測位情報管理サーバに送信し、前記測位情報管理サーバが、前記測定時刻あるいは測定時刻を示す同期信号により、前記無線基地局各々から入力される前記測定データを結合して、前記無線端末の位置を求めることを特徴とする。
【0010】
本発明のネットワークシステムは、前記無線端末からの前記送信データ及び応答信号を前記ユーザ端末に転送するインターネットゲートウェイをさらに有し、前記送信データと前記位置情報とを、前記端末識別番号と前記測定時刻あるいは測定時刻を示す同期信号とにより組み合わせて、前記ユーザ端末へ送信することを特徴とする。
【0011】
本発明のネットワークシステムは、前記無線端末からの前記送信データ及び応答信号を前記ユーザ端末に転送するインターネットゲートウェイをさらに有し、前記応答信号と前記位置情報とを、前記端末識別番号と前記測定時刻あるいは測定時刻を示す同期信号とにより組み合わせて、前記ユーザ端末へ送信することを特徴とする。
【0012】
本発明のネットワークシステムは、前記測位情報管理サーバが、無線端末毎に位置情報を内部記憶部に蓄積し、前記ユーザ端末から位置情報要求信号を受信すると、内部記憶部から前記位置情報要求信号に含まれる前記端末識別情報に対応する無線端末の位置情報を前記ユーザ端末に対して送信することを特徴とする。
【0013】
本発明のネットワークシステムは、前記測位情報管理サーバが算出した位置情報をランダムに削除することを特徴とする。
【0014】
本発明のネットワークシステムは、前記無線基地局が、前記測定データを前記無線端末から送信される前記送信データ及び応答信号の種別により削除することを特徴とする。
【0015】
本発明のネットワークシステムは、前記無線基地局が前記無線端末毎に位置情報算出を行うか否かを示すテーブルを有しており、位置情報検出を行わない前記無線端末の測定データの抽出を行わないことを特徴とする。
【0016】
本発明のネットワークシステムにおける無線端末の位置検出方法は、無線端末、無線基地局、測位情報管理サーバ及びユーザ端末から構成される無線端末の位置検出方法であり、複数の前記無線基地局が、前記無線端末が前記ユーザ端末に送信する送信データあるいは前記ユーザ端末からの受信データを受信したことを示す応答信号を受信し、前記送信データあるいは前記応答信号をユーザ端末に転送するとともに、前記無線端末から自身に対する距離または方位を検出するために必要な測定データを、前記送信データあるいは応答信号から抽出する過程と、前記測位情報管理サーバが、複数の前記無線基地局から入力される測定データから前記無線端末の位置を検出して位置情報として出力する過程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明によれば、複数の無線基地局において、位置測定用の特別な信号を送受信するのではなく、無線端末と他のユーザ端末とにおける通常の送受信データ、すなわち無線端末の送信する送信データ及び応答信号から、位置を検出するために用いる測定データを同時に取得し、この複数の測定データから無線端末の位置を検出するネットワークシステムを実現した。
すなわち、本発明によれば、無線端末周辺の各無線基地局で測定データを取得する際、測定時刻または同期用の識別情報を付与することにより、測位情報管理サーバが各無線基地局で別々に取得した複数の測定データの対応付けおよび集約を行い、これらの測定データを用いて無線端末の位置を検出することができる。
【0018】
また、本発明によれば、無線基地局で送信データ(または受信データの応答信号)を受信すると同時に、当該通信で用いたパラメータを測定データとして取得すると、送信データ(または受信データの応答)と位置情報とに同一の識別子(例えば、測定時刻あるいは同期識別情報)を付与し、さらに同一インターネットゲートウェイヘ到達するよう経路制御を行うための情報を付与することで、送信データ(または受信データの応答信号)と位置情報とをインターネットゲートウェイにおいて対応付け、これらのデータを組としてユーザ端末に送信することができる。
さらに、本発明によれば、測定データや位置情報を無線基地局(あるいは無線基地局管理サーバ)、測位情報管理サーバにおいて、予め設定した条件によって自動的にフィルタリングできるため、ネットワークシステムの処理負荷、ネットワーク転送量、ユーザ端末の処理負荷を調節することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態によるネットワークシステムを図面を参照して説明する。図1または図2は同実施形態によるネットワークシステムの構成例を示すブロック図である。
この図1及び図2において、上記ネットワークシステムは、無線端末11、無線基地局12、無線基地局管理サーバ13、測位情報管理サーバ14、インターネットゲートウェイ15、ユーザ情報管理サーバ16、インターネット網17及びインターネット端末18を有している。
上記ネットワークシステムは、移動する複数の無線端末11と、複数のインターネット端末18とが相互にデータの送受信を行う構成となっている。
すなわち、無線端末11及びインターネット端末18間のデータ通信は、無線基地局12、無線基地局管理サーバ13、インターネットゲートウェイ15、インターネット網17を介して伝達して行われる。
【0020】
無線基地局12は、互いに地理的に隣接して設けられ、すなわち、無線端末11からの電波の受信をカバーするエリア毎に設けられており、これらのエリアが互いに地理的に重なるように、連続して複数設けられている。
各無線端末11は、在圏する位置に対して近傍にある無線基地局12と無線によりデータの送受信を行う。
【0021】
無線基地局管理サーバ13は、複数の無線基地局12と接続されており、少なくとも、各無線端末11と通信可能な無線基地局12を特定するための特定情報や、各無線端末11に対してセキュアに接続するためのセキュア情報などを、任意に設定された保持情報J1として保持している。
この接続情報の必要性としては、無線端末11が複数の無線基地局12のエリア間を移動するので、インターネット端末18が目的の無線端末11に対して通信可能な無線基地局12を特定する必要があるためである。
【0022】
インターネットゲートウェイ15は、複数のインターネット端末18に対して、インターネット網17を介して接続されており、無線端末11が送信したデータを、目的とするインターネット端末18へ転送するために必要な転送情報や、インターネット端末18とセキュアに接続するために必要なセキュア情報などを、任意に設定された保持情報J2として保持している。
ここで、無線基地局管理サーバ13、インターネットゲートウェイ15各々が上記保持情報を装置内部の記憶部に蓄積しておく。
また、破線にて示すネットワーク装置であるユーザ情報管理サーバ16を他の構成として設置し、このユーザ情報管理サーバ16の記憶部に上記保持情報を蓄積しておき、無線基地局管理サーバ13、インターネットゲートウェイ15各々が必要に応じてアクセスして読み出して保持情報を取得し、それぞれの保持情報J1またはJ2として用いても良い。
【0023】
本実施形態においては、無線端末11の位置する位置測定を、複数の無線基地局12が無線端末11から受信した無線信号から得られた位置検出のための情報を基に行う。
例えば、無線基地局12は、無線端末11が送信した無線信号を受信した際、上記位置検出のための情報として、この無線信号が到達したときの信号の電波強度、位相、タイミング、方位角(無線基地局12が複数のアンテナを有している場合に電波の発信元の方位角を測定する)、および無線基地局のID(IDentifier)のいずれかまたはその組み合わせを測定データとして取得する。
また、無線基地局12は、他の無線基地局12における複数の測定データを対応付けるための同期情報として測定時刻(タイムスタンプ)や、測定時刻に対応した同期識別情報、無線端末11を特定する端末識別情報を、この測定データに対して付与する。
【0024】
測位情報管理サーバ14は、無線端末11の現在位置を検出するために用いる測定データを、ユーザに提供する位置情報(無線端末11の絶対位置、この無線端末11の端末識別情報、無線基地局12のID、測定時刻あるいは同期識別情報などを含む)に変換する処理を行う。
この測位情報管理サーバ14は、無線基地局管理サーバ13とインターネットゲートウェイ15とに接続されており、無線基地局12が取得した測定データを、ユーザに提供する位置情報に変換して内部の記憶部に記憶し、必要に応じて、例えば無線基地局12の現在位置が変更する毎に無線端末11の位置情報を書き換える。ここで、ユーザに提供する位置情報は、測定データを変換した緯度・経度に変換した位置と、その位置を検出した測定時刻(測定時刻あるいは同期識別情報)とを少なくとも含んでいる。
【0025】
また、測定時刻は、無線基地局12が取得できない場合、上記測位情報管理サーバ14が、測定データから位置のデータに変換する際、この位置のデータに対応して付加するようにしても、他のネットワーク装置(例えば、無線基地局管理サーバ13)にて測定時刻を付加してもよい。
上記位置のデータとしては、表現形式として、緯度・経度の数値データ、あるいは位置を示す他の座標でのデータ、住所などの文章で情報、さらに地図上にて位置を示す点を表示した画像情報のような形態を用いる。
【0026】
また、測位情報管理サーバ14は、上述したように、測定データを位置のデータに変換する処理の流れを示すアルゴリズム、及び変換に必要な各無線基地局12の絶対位置(例えば、緯度・経度で表される情報)と無線基地局12のIDとを対応付けるテーブル等を記憶している。
上記アルゴリズムとは、無線端末11毎に得られた複数の測定データを基に、測定時刻を同期させ、各無線基地局12から無線端末11までの相対位置を3点測量の原理(例えば、無線端末11からの電波強度を受信後、サーバで電波強度を距離へ変換し、電波強度と距離とのテーブルが記憶されており、電波強度に対応した距離を読み出し、無線基地局12それぞれからの距離を半径とした円が重なる領域を求め、この領域の重心を無線端末11の各無線基地局12からの相対的な位置とすること、または、たとえば各無線基地局12において無線端末11から受信した電波の到来した方位角を計算し、無線基地局12それぞれからの到来方向へ伸ばした3直線が交差する3点を求め、この3点が成す三角形の領域の重心を無線端末11の各無線基地局12からの相対的な位置とすること)により計算し、さらに上記テーブルにおける無線基地局12の位置を用いて(測定データに付加されている無線基地局12のIDにより、無線基地局12の絶対位置と、無線基地局12のIDとを対応付けるテーブルから、対応する無線基地局12の絶対位置を読み出し)、緯度・経度等の絶対位置の情報に変換し、無線端末11の位置を特定する処理を示す。
【0027】
ただし、無線基地局12または無線基地局管理サーバ13に十分な上記アルゴリズムによる無線端末11の絶対位置の計算リソースがある場合、上述した測位情報管理サーバ14の無線端末11の絶対位置の計算を、無線基地局12または無線基地局管理サーバ13において行うようにしても良い。
【0028】
<バックグラウンド測位の説明>
本実施形態におけるネットワークシステムは、無線基地局12のバックグラウンド契機による位置測定で得られた位置データを用い、上述した処理により無線端末11の絶対位置を求め、得られた絶対位置をユーザに通知する位置情報提供サービスを実現している。
上記バックグラウンド契機の位置情報サービス(バックグラウンド測位)とは、無線端末11や、無線端末11の位置を知りたいユーザのインターネット端末18からの位置測定の指示によるものではなく、位置の測定を意識したデータでなく、送受信しているデータや、データの送受信のための制御信号及び確認信号の送信を無線端末11が行った際、データや制御信号及び確認信号から得られる位置データにより、その無線端末11の絶対位置を求め、求めた絶対位置を提供するサービスである。
【0029】
本実施形態においては、各々の無線基地局12において測定データの取得時に、取得した測定データに対し、測定時刻または同期識別情報を付与することができる。
これにより、測位情報管理サーバ14は、複数の測定データの統合を行い、この複数の測定データを無線基地局12の位置情報への変換処理が、各々の無線基地局12からの伝送経路において発生した遅延の影響を受けずに行うことが可能となり、求めた無線基地局12の位置情報の信頼性が向上する。
【0030】
また、本実施形態においては、専用の無線信号(制御信号)を用いずに、無線基地局12の位置測定が可能となるため、複数の無線基地局12で位置測定用の測定データを取得する形態の移動体無線通信ネットワークにおいて、本来のデータや制御情報の送受信に加えて追加の無線帯域の消費、および無線端末の回路規模の増加や電力消費の増大を伴うことなく、無線端末11の位置の測定及び、ユーザヘの必要に応じた位置情報の提供が可能となる。
【0031】
具体的には、無線端末11に位置の測定処理に必要な回路(例えば、GPS機能など)とこの回路を駆動するための電力、および測定開始タイミングを決定するために用いる時計機能や測定タイミングの決定を行う処理回路が不要となる。
また、本実施形態においては、ネットワークシステムから無線端末11を呼び出し、この無線端末11に位置測定の指示を与えるための無線通信や、測定データのネットワークシステムへの送信のための無線通信を伴わずに、位置情報の通知サービスを実現することができる。
【0032】
これにより、本実施形態における無線端末11は、新たな実装(GPS機能など)を追加する必要がないため小型の構成が可能となる。
また、本実施形態における無線端末11は、自身で位置情報を求めることが無いため、従来例のように位置情報を求める計算処理や、位置情報を求めるために必要なメッセージの送受信処理量が増加しないので、電力消費が従来例に比較して減少し、電池交換する頻度が低下して長寿命の端末を実現できる。
さらに、本実施形態における無線端末11は、上述したように、位置情報を求めるためのメッセージを無線にて送受信する必要がないため、1台の無線基地局12あたりの無線端末11の収容台数を、従来例に比較して増加させることができる。
また、本実施形態によれば、位置情報取得時の無線通信におけるセキュリテイについては、本来備わっているデータの送受信などのメッセージ送受信と同時に行うため、本来のデータ送受信などと同等の強度を実現できる。
【0033】
<位置情報検出及び位置情報通知の動作説明>
以下、本発明の一実施形態によるネットワークシステムにおける無線端末11の上記バックグラウンド測位の処理を図面を参照して説明する。図3は同実施形態によるネットワークシステムにおける無線端末11の絶対位置の検出処理の動作例を示すシーケンス図である。
無線端末11は、測位の依頼を行う内容はない、他の無線端末11やインターネット端末18へのデータや、無線基地局12に対する制御信号及び応答信号などを送信データ(任意のメッセージ)として、無線基地局12に対して送信する(シーケンスF1)。
無線端末11からの送信データを受信すると、無線基地局12は、この受信を契機として、上述したメッセージ処理(シーケンスF2)以外に、位置測定用の測定データの検出及び収集と、測定時刻の取得、あるいは同期用の同期識別情報の確保を行う(シーケンスF3)。ここで、確保とは、同期識別情報が測定時刻に対応しているため、取得した後に他の測定時刻の識別子として使用されないように、使用不可とする処理を示している。
【0034】
次に、無線基地局12は、自身のID、測定時刻(あるいは同期識別情報)及び端末識別情報を測定データに付加して無線基地局管理サーバ13へ送信する(シーケンスF4)。
測定データを受信すると、基地局管理サーバ13は、無線基地局12のID及び無線端末11の識別情報、測定時刻が付加された測定データを測位情報管理サーバ14へ送信する(シーケンスF5)。
そして、測位情報管理サーバ14は、内部の無線端末11の位置を求めるアルゴリズムに従って、複数の無線基地局12からの測定データを、前記端末識別情報及び測定時刻(あるいは同期識別情報)により結合(対応付け)し、対応付けられた測定データから無線端末11の絶対位置(緯度・経度など)を算出し、無線基地局12のID及び測定時刻とともに、無線端末11の識別情報毎に内部記憶部に位置情報として記憶して蓄積する(シーケンスF6、ここで、必要に応じて蓄積、例えば、算出された位置が前回算出した位置と異なる場合に蓄積、あるいは予め設定した時間範囲において新しい順に蓄積する)。
【0035】
次に、測位情報管理サーバ14は、測位した無線端末11の位置情報を、
a.プッシュ提供
b.データと位置情報との同時提供
c.データの応答と位置情報との同時提供
d.バックグラウンド測位による位置情報のオンデマンド提供
の4種類の提供方法(詳細は後述)により、ユーザへの通知を行う。図3のシーケンス図により説明したフローは、測位情報管理サーバ14が測定データが入力されると、インターネットゲートウェイ15を介して、直ちにインターネット端末18へ無線端末11の位置情報を送信するプッシュ提供の動作を示している。
【0036】
a.プッシュ提供
図4により、インターネット端末18に対し、無線端末11の位置情報を、プッシュ提供によってインターネット端末18へ提供する場合のシーケンスの流れを説明する。
ここで、プッシュ提供とは、図3のシーケンス図により説明したように、無線端末11やインターネット端末18などの端末の要求に応じてではなく、無線端末11がデータの送信や制御情報あるいはデータの応答信号などの任意のメッセージの送信を行った際、バックグラウンド契機により、無線基地局12が測定した測定データにより、測位情報管理サーバ14が求めた位置情報を、位置情報の算出後に、直ちに無線端末11とデータの送受信を行っている(あるいは無線端末11の位置情報の送信依頼を予めしている)インターネット端末18へ通知する提供方法である。
【0037】
このプッシュ提供を用いた位置情報の通知サービスにより、インターネット端末18が位置情報の要求を送信することなく、無線端末11の最新の位置情報が取得できた時点で、この無線端末11とデータの送受信を行っているインターネット端末18へ、直ちに取得した位置情報を提供することが可能となる。
【0038】
b.データと位置情報との同時提供
図5により、インターネット端末18に対し、送信するデータに無線端末11の位置情報を付加し、インターネット端末18へ提供する、データと位置情報との同時提供の場合のシーケンスの流れを説明する。
まず、無線端末11は、インターネット端末18へ送信するデータを、無線基地局12に対して送信する(シーケンスF11)。
そして、無線基地局12は、上記データの受信時において、この受信データから位置を測位するために用いる測定データを取得し(シーケンスF12)、データと測定データとの両方を無線基地局管理サーバ13ヘ送信する。
【0039】
無線基地局管理サーバ13においては、入力される測定データを測位情報管理サーバ14ヘ送信し、一方、インターネット端末18へ送信するデータを、インターネットゲートウェイ15ヘ送信する。
次に、測位情報管理サーバ14は、複数の無線基地局12が生成した測定データを、各無線端末11のIDと、測定データの測定時刻(または同期用の識別情報)とを用いて統合し、各無線基地局12のIDと絶対位置を用いて無線端末11の絶対位置である位置情報へ変換した後、インターネットゲートウェイ15ヘ送信する。
インターネットゲートウェイ15においては、無線基地局管理サーバ13から受信したデータと、測位情報管理サーバ14から受信した位置情報とを、無線端末11の識別情報や上記測定時刻(あるいは同期識別情報)を用いて結合し(シーケンスF13)、インターネット端末18へ送信する(シーケンスF14)。
【0040】
インターネットゲートウェイ15は、上述したように、データと位置情報との同時提供において、位置情報とデータとを結合する必要がある。
このため、位置情報とデータとが最終的に同一のインターネットゲートウェイ15を経由するような以下の経路制御が必要となる。
すなわち、無線基地局12または無線基地局管理サーバ13が測定データに加え、合流先のインターネットゲートウェイ15を識別する識別子を測位情報管理サーバ14ヘ送信し、測位情報管理サーバ14が当該合流先のインターネットゲートウェイ15の識別子を元に転送先のインターネットゲートウェイ15を選択する第1の方法がある。
【0041】
この第1の方法において、無線基地局管理サーバ13は、インターネット端末18へ送信するデータに、位置情報を付加することを示す付加有情報を付加した後、組となる測定データに付加した識別子の示すインターネットゲートウェイ15に対して送信する。
このとき、無線基地局12または無線基地局管理サーバ13は、測定データに対してデータの送信先のインターネット端末18の送信先識別情報を付加する。これにより、測位情報管理サーバ14は、測定データから求めた位置情報に対し、上記送信先識別情報を付加し、インターネットゲートウェイ15へ位置情報を送信する。
そして、インターネットゲートウェイ15は、上記付加有情報が付加されたデータに対し、同一の送信先識別情報(例えば、インターネット端末18のアドレス)を有する位置情報を付加して、この送信先識別情報が指し示すインターネット端末18に対してこのデータを送信する。
【0042】
また、無線基地局12のID、測定データ、測定時刻(あるいは同期識別情報)などの何らかのパケット固有の情報を用いた振り分けルールを、無線基地局管理サーバ13と測位情報管理サーバ14とにおいて共有し、合流先のインターネットゲートウェイ15を決定する第2方法がある。この第2の方法においても、上記第1の方法と同様に、インターネットゲートウェイ15においてデータの付加有情報と送信先識別情報とを用いて、データと対応する位置情報とを組とし、インターネット端末18に対して、位置情報を付加したデータを送信することになる。
上述した第1及び第2の方法のいずれかにより、同時提供するデータと位置情報とを結合させるインターネットゲートウェイ15の選択方法(転送の経路制御方法)が必要となる。
【0043】
このデータと位置情報との同時提供の方法により、インターネット端末18は、無線端末11が送信したデータと、このデータを送信した無線端末11の位置情報を同時に取得することが可能となる。
また、データと位置情報との同時提供の方法により、インターネット端末18は、自身に対して無線端末11が送信したデータに、そのデータを送信した時の無線端末11の位置情報を付加したデータが得られるため、データに対して位置情報を組み合わせることにより、データに対して位置情報を複合的に利用することが可能となる。
【0044】
例えば、冷蔵コンテナの温度通知アプリケーションであれば、移動する冷蔵コンテナ内の温度センサに無線端末11を接続し、冷蔵コンテナの管理を行う管理センタにインターネット端末18を設置する。冷蔵コンテナ内の温度センサは無線端末11を通じてインターネット端末18へ温度を通知する。この温度のデータを送信する際に、無線基地局12で位置を測定、インターネットゲートウェイ15でデータと位置情報とを結合して送信することにより、インターネット端末18、および冷蔵コンテナの管理センタでは現在の冷蔵コンテナの温度と場所(現在の冷凍コンテナの位置)との組み合わせ情報を取得することが可能となる。結果として、冷蔵コンテナによる輸送される食品のトレーサビリティおよび品質管理の向上につながる。
【0045】
c.データの応答と位置情報との同時提供
図6により、無線端末11に対してデータを送信したインターネット端末18に対し、無線端末11からのデータを受信したことを示す応答信号に対し、無線端末11の位置情報を付加し、インターネット端末18へ提供する、データの応答信号と位置情報との同時提供の場合のシーケンスの流れを説明する。
インターネット端末18は、無線端末11に対し、データを送信する(シーケンスF21)。
無線端末11は、インターネット端末18が送信したデータを、インターネット17、インターネットゲートウェイ15、無線基地局管理サーバ13及び無線基地局12を介して受信する(シーケンスF22)。
【0046】
そして、無線基地局12は、自身が転送したデータが無線端末11へ正しく届いたかどうかを確認するため、無線端末11からのデータに対する応答信号を待ち受けている。
このため、無線端末11は、データを受信するときであっても、データに対する応答信号を無線基地局12に送信する必要がある(シーケンスF23)。
したがって、無線基地局12は、無線端末11から送信されたデータの応答信号を受信する際、測位用の測定データをこの応答信号から取得する(シーケンスF24)。
【0047】
無線基地局12は、データに対する応答信号を無線端末11から受信すると、当該データの応答信号を無線基地局管理サーバ13を介し、インターネットゲートウェイ15ヘ転送するとともに、無線基地局管理サーバ13を介して測定データを測位情報管理サーバ14ヘ転送する。
測位情報管理サーバ14は、複数の無線基地局が生成した測定データを、無線端末11の識別情報、測定時刻(または同期用の識別情報)を用いて統合し、各無線基地局12のIDと絶対位置を用いて無線端末11の絶対位置情報へ変換後、インターネットゲートウェイ15ヘ送信する。
インターネットゲートウェイ15においては、無線基地局管理サーバ13から受信したデータの応答信号と、測位情報管理サーバから受信した位置情報とを、すでにb.データと位置情報との同時提供において述べたように、応答信号(b.データと位置情報との同時提供におけるデータに対応)の送信元を示す無線端末11の識別情報や、測定時刻(または同期識別情報)を用いて結合し(シーケンスF25)、インターネット端末18へ送信する。
【0048】
インターネットゲートウェイ15は、上述したように、応答信号と位置情報との同時提供において、位置情報と応答信号とを結合する必要がある。
このため、位置情報と応答信号とが最終的に同一のインターネットゲートウェイ15を経由するような以下の経路制御が必要となる。
すなわち、無線基地局12または無線基地局管理サーバ13が測定データに加え、合流先のインターネットゲートウェイ15を識別する識別子を測位情報管理サーバ14ヘ送信し、測位情報管理サーバ14が当該合流先のインターネットゲートウェイ15の識別子を元に転送先のインターネットゲートウェイ15を選択する第1の方法がある。
【0049】
この第1の方法において、無線基地局管理サーバ13は、インターネット端末18へ送信する応答信号に、位置情報を付加することを示す付加有情報を付加した後、組となる測定データに付加した識別子の示すインターネットゲートウェイ15に対して送信する。
このとき、無線基地局12または無線基地局管理サーバ13は、測定データに対して応答信号の送信先のインターネット端末18の送信先識別情報を付加する。これにより、測位情報管理サーバ14は、測定データから求めた位置情報に対し、上記送信先識別情報を付加し、インターネットゲートウェイ15へ位置情報を送信する。
そして、インターネットゲートウェイ15は、上記付加有情報が付加された応答信号に対し、同一の送信先識別情報(例えば、インターネット端末18のアドレス)を有する位置情報を付加して、この送信先識別情報が指し示すインターネット端末18に対してこの応答信号を送信する。
【0050】
また、無線基地局12のID、測定データ、測定時刻(あるいは同期識別情報)などの何らかのパケット固有の情報を用いた振り分けルールを、無線基地局管理サーバ13と測位情報管理サーバ14とにおいて共有し、合流先のインターネットゲートウェイ15を決定する第2方法がある。この第2の方法においても、上記第1の方法と同様に、インターネットゲートウェイ15において応答信号の付加有情報と送信先識別情報とを用いて、応答信号と対応する位置情報とを組とし、インターネット端末18に対して、位置情報を付加した応答信号を送信することになる。
上述した第1及び第2の方法のいずれかにより、b.データと位置情報との同時提供と同様な同時提供する応答信号と位置情報とを結合させるインターネットゲートウェイ15の選択方法(転送の経路制御方法)が必要となる。
【0051】
これにより、インターネット端末18は、自身が送信したデータを無線端末11が受信した時点(無線端末11がこのデータに対する応答信号を送信した時点)における無線端末11の位置情報を取得することが可能となる。
つまり、インターネット端末18が無線端末11に対してデータを送信し、そのデータを受信した時の無線端末11の位置の情報を取得することで、b.データと位置情報との同時提供と同様に、自身の送信したデータと無線端末11の位置情報とを対応付けて利用することが可能となる。
【0052】
d.バックグラウンド測位による位置情報のオンデマンド提供
図7により、バックグラウンド測位で取得した無線端末11の位置情報を、インターネット端末18がオンデマンドで取得する場合のシーケンスの流れを説明する。
無線基地局12がメッセージを送信し(シーケンスF31)、無線基地局12がこのメッセージから測定データを取得し(シーケンスF32)、測位情報管理サーバ14がこの測定データから位置情報に変換するまでの処理は、a.プッシュ提供の場合と同様である。
【0053】
そして、測位情報管理サーバにおいては、最新のいくつかの位置情報を測定時刻とともに、無線端末11を識別する端末識別情報に対応させ、内部の記憶部に蓄積して測位の処理を終了する(シーケンスF33)。
次に、インターネット端末18は、無線端末11の位置情報が必要になった際、無線端末11の端末識別情報とともに位置情報要求信号を、インターネット17及びインターネットゲートウェイ15を介して、測位情報管理サーバ14へ送信する(シーケンスF34)。
【0054】
位置情報要求信号が入力されると、測位情報管理サーバ14は、各無線端末11の端末識別情報に対応して上記記憶部に蓄積している最新の位置情報(位置情報の履歴)から、この端末識別情報に対応する位置情報を読み出し、この読み出した位置情報を、上記位置情報要求信号に対する応答として、インターネット端末18へ送信する。
これにより、インターネット端末18は、要求した無線端末11の位置情報を受信して取得する(シーケンスF35)。
【0055】
ただし、測位情報管理サーバ14を複数設け、測定データからの位置情報の算出を分散化する場合、無線端末11の端末識別情報などの無線端末11固有の情報を利用した振り分け方法により、常に同じ無線端末11の位置情報が同一の測位情報管理サーバ14の記憶部に蓄積されることが望ましい。この振り分け方法として、例えば、無線基地局管理サーバ13内の記憶部に、無線端末11の端末識別番号と、この無線端末11の位置情報を計算する測位情報管理サーバ14との対応テーブルが記憶されており、無線基地局管理サーバ13が無線基地局12から送信されてきたデータや応答信号に付与されている端末識別情報により、上記対応テーブルを参照して、この無線端末11に対応する測位情報管理サーバ14に測定データを送信するようにする。
【0056】
また、測位情報管理サーバ14を複数設け、測定データからの位置情報の算出を分散化する場合、無線端末11の端末識別情報などの無線端末11固有の情報を利用した振り分け方法により、常に同じ無線端末11の位置情報が同一の測位情報管理サーバ14の記憶部に蓄積されることが望ましい。そして、インターネットゲートウェイ15は、例えば、内部の記憶部に、無線端末11の端末識別番号と、この無線端末11の位置情報を蓄積している測位情報管理サーバ14との対応テーブルを記憶しており、インターネット端末18から送信されてきた位置情報要求信号に付与されている無線端末11の端末識別情報により、上記対応テーブルを参照して、この無線端末11に対応する測位情報管理サーバ14に位置情報要求信号を送信するようにする。
【0057】
また、上述した無線基地局管理サーバ13、インターネットゲートウェイ15における振り分けが不可能な場合は、インターネットゲートウェイ15は、インターネット端末18からの位置情報要求信号の受信時に、すべての測位情報管理サーバに対して当該無線端末に関する情報がないか問い合わせることとする。
これにより、本実施形態の位置情報のオンデマンド提供によれば、インターネット端末18がプッシュ提供に対応していない場合においても、インターネット端末18は位置情報を要求したタイミングで、予め設定した時間範囲における要求した数の最新の位置情報(位置情報の履歴)を位置情報要求信号に応じて取得することが可能となる。
【0058】
<測定データあるいは位置情報のフィルタリング>
次に、無線基地局12、測位情報管理サーバ14における位置情報のフィルタリングの処理について説明する。
本実施形態のネットワークシステムにおける位置情報の生成は、無線基地局12において無線端末11からのメッセージを受信したことを契機としている。
このため、無線端末11の数が非常に多いなどの場合によって、全ての無線端末11の位置情報をそれぞれインターネット端末18に提供することは、ネットワークシステムの処理負荷、ネットワーク転送量、インターネット端末18の処理負荷の増大につながることがある。
【0059】
そのため、本実施形態のネットワークシステムにおいて、無線基地局12、無線基地局管理サーバ13、あるいは測位情報管理サーバ14において、不要な位置情報のみをフィルタリングする構成について説明する。
まず、単一の測定データ(測定データ各々)もしくは位置情報のみからフィルタリングを行う方法として、無線基地局12あるいは無線基地局管理サーバ13において、測定データをランダムに破棄するか、あるいは測位情報管理サーバ14において求められた位置情報をランダムに破棄することが考えられる。
【0060】
また、無線基地局12が測定データを取得した際、受信したメッセージの種別や内容が条件に適合しない場合に破棄することが考えられる。例えば、メッセージの種別が制御信号の場合には削除することを無線基地局12内の記憶部に記憶しておき、メッセージに付加された種別を判別する情報を抽出して、抽出した種別削除か否かの判定を行う。また、無線端末11が送信するデータ量が大きく、多くのパケットに分割されるとデータ送信の付加が増加するため、送信する情報量によって閾値を設定しておき、この閾値を越えた場合、測定データの削除を行う構成としても良い。
【0061】
また、無線端末11の契約種別に従って破棄、すなわち位置情報を測位することを予め契約によって決定しておき、無線端末11の端末識別情報に契約種別を示す種別情報を付加しておき、無線基地局12は内部に記憶している種別情報と、測定データの削除(あるいは最初から測定データを取得しない)との対応を示す種別テーブルを参照し、種別テーブルにおいて種別情報が削除に対応していると判定された場合に、測定データを削除する構成としても良い。
【0062】
上述した構成により、例えば、無線端末11と無線基地局12とにおおける一連の認証用メッセージの交換時において、無線基地局12は、認証に用いた最後のメッセージのみ測定データの生成に用いる、もしくは最後のメッセージのみを契機に位置情報への変換を行うなどの構成として、ネットワークの処理負荷の削減を実現できる。
他の構成として、無線基地局12は、無線端末11の認証等の制御用のメッセージ契機の測定データや位置情報は全て破棄し、データやそれに対する応答のみを契機に位置情報を生成して提供する、データの内容が事前に与えられた情報と一致する場合のみを契機に位置情報を生成して提供するといった方法もある。
【0063】
次に、無線端末11毎の過去の位置情報を利用したフィルタリング方法としては、時間あたりの位置情報の取得頻度を無線基地局12に予め設定しておき、無線基地局12は、各無線端末11の測定データの取得回数が設定した時間あたりの取得頻度を一定以上越える高頻度になる場合、その無線端末11のメッセージから取得した当該測定データを破棄する。この場合、無線基地局12は、取得頻度を判定する期間において、無線端末11の端末識別情報毎に所得回数を積算し、次の判定期間のはじめに「0」にリセットする。
【0064】
また、測位情報管理サーバ14は、直前に計算した位置情報よりも位置が大きく変化していなければ、新たに求めた当該位置情報を破棄する構成としても良い。
また、測位情報管理サーバ14は、新たに求めた当該位置情報が特定の値の範囲におさまる場合以外(例えば、経度・緯度にて設定された表示する地図範囲外となっている場合)、当該位置情報を破棄する構成としてもよい。
また、測位情報管理サーバ14は、他の無線端末11の位置情報と比較し、条件に適合する場合以外は破棄する。例えば、測位情報管理サーバ14は、他の無線端末11の位置を基準とし、その位置からどの程度の距離にある場合に地図に表示する場合、設定された距離より遠い場合には位置情報を削除する。
上述したように、本実施形態においては、測定データ及び位置情報を削除するフィルタリングが可能となる。
【0065】
フィルタリング方法については、ネットワークシステムのリソースに余裕がある場合、無線端末11毎にフィルタリングの条件を個別に設定(カスタマイズ)することにより、インターネット端末18が必要とする無線端末11の位置情報のみを提供することができ、インターネット端末18の処理負荷を低減させることが可能となる。
しかし、ネットワークシステムにおける無線基地局12、無線基地局管理サーバ13及び測位情報管理サーバ14のリソースに余裕がない場合、無線基地局12もしくは無線基地局管理サーバ13において、メッセージの種別により一律に破棄することで、ネットワークシステムの各サーバ間の転送量や測位情報管理サーバ14の位置情報生成の負荷を低減させることができる。
【0066】
このフィルタリング機能により、測定データを位置情報に変換する前の段階で、無線基地局12、無線基地局管理サーバ13、測位情報管理サーバ14において、無駄な情報(測定データあるいは位置情報)をフィルタリングして削除することで、ネットワークシステムの処理負荷、転送負荷を低減させ、従来例より少ないサーバ台数を用いて、ネットワークシステムを構成することが可能となる。
また、計算後の位置情報に対して、ユーザ固有の情報や位置情報の履歴を用いたインテリジェントなフィルタリングを行うことにより、インターネット端末18の位置情報を受信する処理負荷、転送負荷を低減させ、インターネット端末18を利用するユーザの設備コストの低減を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の一実施形態によるネットワークシステムの構成例を示すブロック図である。
【図2】本発明の他の実施形態によるネットワークシステムの構成例を示すブロック図である。
【図3】図1のネットワークシステムの位置情報の生成及び通知を説明するシーケンス図である。
【図4】図1のネットワークシステムにおける位置情報のプッシュ提供の流れを示す概念図である。
【図5】図1のネットワークシステムにおけるデータと位置情報との同時提供の流れを示す概念図である。
【図6】図1のネットワークシステムにおけるデータに対する応答信号と位置情報との同時提供の流れを示す概念図である。
【図7】図1のネットワークシステムにおけるバックグラウンド測位による位置情報のオンデマンド提供の流れを示す概念図である。
【符号の説明】
【0068】
11…無線端末
12…無線基地局
13…無線基地局管理サーバ
14…測位情報管理サーバ
15…インターネットゲートウェイ
16…ユーザ情報管理サーバ
17…インターネット網
18…インターネット端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線端末、無線基地局、測位情報管理サーバ及びユーザ端末から構成されるネットワークシステムであり、
複数の前記無線基地局が、
前記無線端末が前記ユーザ端末に送信する送信データ、前記ユーザ端末からの受信データを受信したことを示す応答信号、前記無線端末が前記無線基地局に送信する制御情報、あるいは前記無線基地局からの受信制御情報を受信したことを示す応答信号を受信し、前記送信データ、制御情報あるいは応答信号をユーザ端末に転送するとともに、前記無線端末から自身に対する距離または方位を検出するために必要な測定データを、前記送信データあるいは応答信号から抽出し、
前記測位情報管理サーバが、
複数の前記無線基地局から入力される測定データから前記無線端末の位置を検出して位置情報として出力する
ことを特徴とするネットワークシステム。
【請求項2】
前記無線基地局が、抽出した前記測定データに対し、前記無線端末を識別する端末識別情報と測定時刻あるいは測定時刻を示す同期識別情報とを付加して、前記測位情報管理サーバに送信し、
前記測位情報管理サーバが、前記測定時刻あるいは測定時刻を示す同期信号により、前記無線基地局各々から入力される前記測定データを結合して、前記無線端末の位置を求めることを特徴とする請求項1記載のネットワークシステム。
【請求項3】
前記無線端末からの前記送信データ及び応答信号を前記ユーザ端末に転送するインターネットゲートウェイをさらに有し、
前記送信データと前記位置情報とを、前記端末識別情報と前記測定時刻あるいは測定時刻を示す同期信号とにより組み合わせて、前記ユーザ端末へ送信することを特徴とする請求項2に記載のネットワークシステム。
【請求項4】
前記無線端末からの前記送信データ及び応答信号を前記ユーザ端末に転送するインターネットゲートウェイをさらに有し、
前記応答信号と前記位置情報とを、前記端末識別番号と前記測定時刻あるいは測定時刻を示す同期信号とにより組み合わせて、前記ユーザ端末へ送信することを特徴とする請求項2に記載のネットワークシステム。
【請求項5】
前記測位情報管理サーバが、無線端末毎に位置情報を内部記憶部に蓄積し、前記ユーザ端末から位置情報要求信号を受信すると、内部記憶部から前記位置情報要求信号に含まれる前記端末識別情報に対応する無線端末の位置情報を前記ユーザ端末に対して送信することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のネットワークシステム。
【請求項6】
前記測位情報管理サーバが算出した位置情報をランダムに削除することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のネットワークシステム。
【請求項7】
前記無線基地局が、前記測定データを前記無線端末から送信される前記送信データ及び応答信号の種別により削除することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のネットワークシステム。
【請求項8】
前記無線基地局が前記無線端末毎に位置情報算出を行うか否かを示すテーブルを有しており、位置情報検出を行わない前記無線端末の測定データの抽出を行わないことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のネットワークシステム。
【請求項9】
無線端末、無線基地局、測位情報管理サーバ及びユーザ端末から構成されるネットワークシステムにおける無線端末の位置検出方法であり、
複数の前記無線基地局が、
前記無線端末が前記ユーザ端末に送信する送信データあるいは前記ユーザ端末からの受信データを受信したことを示す応答信号を受信し、前記送信データあるいは前記応答信号をユーザ端末に転送するとともに、前記無線端末から自身に対する距離または方位を検出するために必要な測定データを、前記送信データあるいは応答信号から抽出する過程と、
前記測位情報管理サーバが、
複数の前記無線基地局から入力される測定データから前記無線端末の位置を検出して位置情報として出力する過程と
を有することを特徴とするネットワークシステムにおける無線端末の位置検出方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−8355(P2010−8355A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−170764(P2008−170764)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】