説明

ネットワーク管理方法およびネットワーク管理システム

【課題】 ネットワーク上に分散配置されたネットワーク管理エージェントを協調させてネットワークを管理するネットワーク管理システムの大規模化を容易にする。
【解決手段】 インターネット等のネットワーク上に分散配置された複数のネットワーク管理エージェントを協調させるときに、協調すべきネットワーク管理エージェントを、前記ネットワーク上に分散配置された情報収集エージェントに探索させる。前記情報収集エージェントは、他の情報収集エージェントと連携して、前記探索条件を送信したネットワーク管理エージェントと他のネットワーク管理エージェントの接続状況、およびネットワークの状態を取得し、前記探索条件と合致する前記他のネットワーク管理エージェントの情報を前記ネットワーク管理エージェントに返送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワーク管理方法およびネットワーク管理システムに関し、特に、インターネット上の複数箇所にネットワークを管理するネットワーク管理エージェントが分散配置されたマルチエージェントシステムにおいて、複数のネットワーク管理エージェントが協調してネットワークを管理するネットワーク管理方法に適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネットの急速な拡大は、その運用管理が困難、かつ高コスト化し、様々な問題が発生している。そのような問題の中で、特に、BGP(Border Gateway Protocol、たとえば、非特許文献1を参照)を用いたAS(Autonomous System)間での経路制御における障害は、その発見や調査に置いて、AS間での相互作業が必要であるため対策が難しく、また障害の影響が広範囲に渡ることもあるため、有効な対策が求められている。
【0003】
このような経路障害に対処する方法として、従来、広域IP網経路障害診断システム(ENCORE; Inter-AS Diagnostic Ensemble System using Cooperative Reflector Agents)が提案されている(たとえば、非特許文献2を参照)。前記ENCOREは、複数のASに配置されたネットワーク管理エージェント(ENCOREエージェント)が協調することにより、AS間の経路障害の検出、診断を行うシステムである。前記ENCOREにおいて、診断を効率的かつ柔軟に実行するためには、診断の内容や、前記ネットワーク管理エージェントやネットワーク等の環境の状態に応じて、協調するネットワーク管理エージェントの組み合わせ(エージェント群)を適切に選択し、そのエージェント群に協調作業を行わせる必要がある。
【0004】
しかしながら、従来の前記ENCOREによる経路障害の検出、診断では、診断を実行するたびに協調するエージェント群の選択を手動で行っている。前記ネットワーク管理エージェントがネットワーク上に分散配置されているマルチエージェントシステムの場合、前記協調するエージェント群を選択するための条件として、前記ネットワークの状態を考慮する必要がある。また、インターネット等の前記ネットワークの状態は常に変動しており、特定の時点において適切なエージェント群を選択するためには、その都度ネットワークの状態の測定も同時に行わなければならない。そのため、たとえば、前記ネットワーク管理エージェントの数が多い場合や、前記ネットワーク管理エージェントの状態あるいはネットワークの状態が頻繁に変動する場合は、適切なエージェント群を選択することが難しいという問題があった。
【0005】
また、前記ENCOREのような経路障害の検出、診断といった管理の他に、たとえば、トラフィックやユーザからのリクエストの量に応じた動的な負荷分散や経路制御、ネットワークへの侵入検知といった管理を行う場合にも、前記ネットワーク上に分散配置された複数のネットワーク管理エージェントが協調して管理をすることがある。そのような場合も、前記ENCOREの場合と同様に、エージェント群の選択は手動で行われており、前記ENCOREの場合と同様の問題がある。
【非特許文献1】Y.Rekhter and T.Li, "A Border Gateway Protocol 4(BGP-4)", RFC1771, 1995.
【非特許文献2】O.Akashi, T.Sugawara, K.Murakami, M.Maruyama and K.Koyanagi, "Agent System for Inter-AS routing Error Diagnosis", IEEE Internet Computing, Vol.6, No.3, pp.78-82, 2002
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする問題点は、前記背景技術で説明したように、前記ENCORE等のように、ネットワーク上に分散配置されている複数のネットワーク管理エージェントが協調して前記ネットワークの管理を行う場合、前記ネットワーク管理エージェントの数が多くなるとともに適切なエージェント群を選択することが難しくなり、ネットワーク管理システムの大規模化が難しいという点である。
【0007】
また、協調するエージェント群の選択を手動で行うとともに、選択する際にネットワークの状態の測定も同時に行わなければならないので、効率が悪く、ネットワーク管理システムの運用コストが高コスト化するという問題点もある。
【0008】
本発明の目的は、ネットワーク上に分散配置された複数のネットワーク管理エージェントが協調してネットワークを管理するネットワーク管理システムの大規模化が容易なネットワーク管理方法を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、ネットワーク上に分散配置された複数のネットワーク管理エージェントが協調してネットワークを管理するネットワーク管理システムの運用の効率化、および運用コストの低コスト化が可能なネットワーク管理方法を提供することにある。
【0010】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面によって明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願において開示される発明の概略を説明すれば、以下の通りである。
【0012】
(1)ネットワーク上に分散配置させたネットワーク管理エージェントを協調させて前記ネットワークの状態を計測、解析して、前記ネットワークを管理するネットワーク管理方法であって、協調すべきネットワーク管理エージェントの組み合わせ(以下、エージェント群)を探索し、決定するステップ1と、前記ステップ1で決定した前記エージェント群により前記ネットワークを管理するステップ2とを有し、前記ステップ1は、前記ネットワーク管理エージェントから、前記ネットワーク上に分散配置された情報収集エージェントに、前記エージェント群の探索条件を送信するステップ3と、前記探索条件を受信した前記情報収集エージェントが、他の情報収集エージェントを通して、特に指定したネットワーク管理エージェントと、他のネットワーク管理エージェントとの接続状況を調べるステップ4と、前記情報収集エージェントが、前記他のネットワーク管理エージェントの情報を取得するステップ5と、前記情報収集エージェントが、前記ステップ4で調べた接続状況と、前記ステップ5で取得した前記他のネットワーク管理エージェントの情報に基づき、前記探索条件に合致するネットワーク管理エージェントの情報を、探索結果として前記探索条件を送信したネットワーク管理エージェントに返送するステップ6とを有するネットワーク管理方法である。
【0013】
(2)前記(1)のネットワーク管理方法において、前記情報収集エージェントを前記ネットワーク管理エージェントと1対1となるように配置しておき、前記ステップ4は、前記探索条件を受信した情報収集エージェントと他の情報収集エージェントとの接続状況、または前記ネットワーク上の指定AS(Autonomous System)と他のASとの接続状況から、前記他のネットワーク管理エージェントとの接続状況を調べるネットワーク管理方法である。
【0014】
(3)前記(2)のネットワーク管理方法において、前記ステップ4および前記ステップ5は、BGP(Border Gateway Protocol)を用いた通信を行うことにより、前記ネットワーク管理エージェントの接続状況を調べるとともに、前記他のネットワーク管理エージェントの情報を取得するネットワーク管理方法である。
【0015】
(4)前記(2)または(3)のネットワーク管理方法において、前記ステップ4は、前記指定ASの近傍にいるASの接続状況から前記指定ASと前記他のASの接続状況を推測し、前記他のネットワーク管理エージェントとの接続状況を調べるネットワーク管理方法である。
【0016】
(5)前記(1)から(4)のネットワーク管理方法において、前記ステップ5は、前記ネットワーク上に設置された、前記各ネットワーク管理エージェントの情報を一括して管理する共有データベースから、前記他のネットワーク管理エージェントの情報を取得するネットワーク管理方法である。
【0017】
(6)ネットワークの状態を計測、解析して前記ネットワークを管理するネットワーク管理エージェントと、前記ネットワーク管理エージェントの状態および前記ネットワークの状態に関する情報を収集する情報収集エージェントと、BGP(Border Gateway Protocol)を用いた通信を行うBGPルータとを備えるAS(Autonomous System)が、前記ネットワーク上に前記分散配置されたネットワーク管理システムであって、前記情報収集エージェントは、前記BGPルータとの通信を行う手段と、前記BGPルータから取得したAS-path情報を解析してAS間トポロジ情報を作成する手段と、前記AS-path情報以外のネットワーク情報を収集する手段と、他の情報収集エージェントとの通信を行う手段と、前記ネットワーク管理エージェントから受信した探索条件に合致するネットワーク管理エージェントを探索する手段と、前記探索条件の受信、および探索結果を前記ネットワーク管理エージェントに送信(返送)する手段とを備えるネットワーク管理システムである。
【発明の効果】
【0018】
本発明のネットワーク管理方法は、ネットワーク上に分散配置された複数のネットワーク管理エージェントが協調して、たとえば、経路障害の検出および診断や、トラフィックやユーザからのリクエストの量に応じた動的な負荷分散や経路制御、ネットワークへの侵入検知といったネットワークの管理を行うネットワーク管理方法であり、前記(1)のように、ネットワーク上のあるネットワーク管理エージェントが協調すべき管理エージェントの組み合わせ(エージェント群)を選択するときに、前記情報収集エージェントに前記エージェント群の探索条件を送信し、前記情報収集エージェントに前記エージェント群を探索させる。このとき、前記情報収集エージェントは、他の情報収集エージェントと連携してネットワーク管理エージェントの接続状況やネットワークの状態を調べ、前記探索条件に合致する他のネットワーク管理エージェントの情報を、前記探索条件を送信したネットワーク管理エージェントに返送(返信)する。つまり、本発明のネットワーク管理方法では、従来手動で行っていたエージェント群の選択、ネットワークの状態の測定を、前記情報収集エージェントが行う。そのため、たとえば、前記ネットワーク管理エージェントの数が多い場合や、前記ネットワーク管理エージェントやネットワークの状態が常に変動している場合でも、効率よく前記エージェント群を選択することができるとともに、ネットワークの運用管理が効率的になるとともに、運用コストを低減することができる。
【0019】
また、前記(1)のネットワーク管理方法において、前記(2)のように、前記ネットワーク管理エージェントと前記情報収集エージェントが1対1となるように分散配置することで、前記ステップ4は、前記探索条件を受信した情報収集エージェントと他の情報収集エージェントとの接続状況、または前記ネットワーク上の指定AS(Autonomous System)と他のASとの接続状況から、前記他のネットワーク管理エージェントとの接続状況を調べることができる。そのため、前記探索条件に合致するネットワーク管理エージェントの情報の取得が容易になり、さらに効率よく前記エージェント群を選択することができる。
【0020】
また、前記(2)のネットワーク管理方法において、たとえば、前記ネットワーク管理エージェントおよび前記情報収集エージェントを、BGP(Border Gateway Protocol)を用いたAS(Autonomous System)上に設置しておくと、前記ステップ4およびステップ5は、前記(3)のように、前記BGPを用いた通信により行うことができる。そのため、前記情報収集エージェントは、前記BGPを用いた通信によるAS-path情報やBGPピア情報を取得でき、探索条件に合致するネットワーク管理エージェントの情報を容易に取得できる。またこのとき、前記ステップ4では、前記(4)のように、前記指定ASの近傍にいるASの接続状況から前記指定ASと前記他のASの接続状況を推測し、前記他のネットワーク管理エージェントとの接続状況を調べることで、さらに容易に取得できる。
【0021】
また、前記(1)から(4)のネットワーク管理方法において、前記情報収集エージェントが前記ステップ5で取得するネットワーク管理エージェントの情報は、たとえば、前記(5)のように、前記ネットワーク上に分散配置された各ネットワーク管理エージェントの情報を一括管理する共用DBから取得することが好ましい。このようにすることで、前記ステップ5におけるネットワーク管理エージェントの情報の取得(検索)を効率よくすることができる。
【0022】
また、前記(1)から(5)のようなネットワーク管理方法を適用したネットワーク管理システムを構築する場合、前記情報収集エージェントには、前記(6)のような各手段を設け、前記各手段に、前記(1)から(5)の各ステップのような処理を実行させればよい。
【0023】
以下、本発明について、図面を参照して実施の形態(実施例)とともに詳細に説明する。
なお、実施例を説明するための全図において、同一機能を有するものは、同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明のネットワーク管理方法では、インターネット等のネットワーク上に分散配置された複数のネットワーク管理エージェントが協調してネットワークの管理を行うときに、協調するネットワーク管理エージェントの探索条件を、前記ネットワーク上に分散配置された情報収集エージェントに送信して探索させる。このとき、前記情報収集エージェントは、前記探索条件を受信すると、他の情報収集エージェントと連携して、前記探索条件を送信したネットワーク管理エージェントと他のネットワーク管理エージェントの接続状況、およびネットワークの状態を取得し、前記探索条件と合致する前記他のネットワーク管理エージェントの情報を前記ネットワーク管理エージェントに返送する。このようにすることで、前記探索条件を送信したネットワーク管理エージェントは、自動的に他のネットワーク管理エージェントとの接続状況を取得でき、協調すべきネットワーク管理エージェントの組み合わせ(ネットワーク群)を選択できる。またこのとき、前記ネットワーク管理エージェントと前記情報収集エージェントを1対1の対応関係とし、かつ、前記ネットワーク管理エージェントと前記情報収集エージェントを、BGPを用いたAS上に設置することで、複数のネットワーク管理エージェントの接続状況の取得を容易にし、協調するネットワーク群の選択処理を効率的にする。
【実施例】
【0025】
図1および図2は、本発明による一実施例のネットワーク管理方法を適用したネットワーク管理システムの概略構成を示す模式図であり、図1はネットワーク管理システムの全体的な構成例を示す図、図2は情報収集エージェントのソフトウェア的な構成例を示す図である。
図1において、1はネットワーク(インターネット)、2x,2y,2zはAS(Autonomous System)、3x,3y,3zはネットワーク管理エージェント、4x,4y,4zは情報収集エージェント、5x,5y,5zはBGPルータ、6は共有データベース(DB)である。
【0026】
本実施例のネットワーク管理方法は、たとえば、BGPを用いたAS(Autonomous System)上に設置されたネットワーク管理エージェントのように、ネットワーク上に分散配置された複数のネットワーク管理エージェントが協調してネットワークを管理するネットワーク管理方法である。このとき、前記ネットワーク管理エージェントは、たとえば、経路障害の検出や診断、トラフィックやユーザからのリクエストの量に応じた動的な負荷分散や経路制御、ネットワークへの侵入検知といった管理を行う。またこのとき、前記ネットワーク管理エージェントは、協調すべきネットワーク管理エージェントの探索条件をネットワーク上に分散配置された情報収集エージェントに送信し、探索させる。
【0027】
本実施例1のネットワーク管理方法が適用されたネットワーク管理システムは、たとえば、図1に示すように、インターネット等のネットワーク1上に分散配置された前記各AS2x,2y,2zのそれぞれに、前記ネットワーク管理エージェント3x,3y,3zおよび前記情報収集エージェント4x,4y,4z、ならびにBGPルータ5x,5y,5zが設置されている。また、前記ネットワーク1上には、前記各AS2x,2y,2zの他に、たとえば、図1に示すように、各エージェントの情報やネットワークの情報を集中管理する共有データベース(DB)6が設置されている。なお、図1ではネットワーク1上に3つのAS2x,2y,2zが分散配置されている例を示しているが、これに限らず、さらに多数のASが分散配置されていてもよい。またその場合、各ASには、前記ネットワーク管理エージェントおよび情報収集エージェント、ならびにBGPルータが設置されているとする。
【0028】
また、前記情報収集エージェント4(4x)は、たとえば、図2に示すように、TCP/IP401、BGPルータ間通信機能402、AS間トポロジ解析機能403、ネットワーク情報収集機能404、エージェント間通信機能405、エージェント探索機能406、ネットワーク管理エージェント通信機能407、エージェント間通信ライブラリ408を備えている。
【0029】
このとき、前記BGPルータ間通信機能402は、前記情報収集エージェント4(4x)が前記BGPルータ5xとの通信を行うための機能である。また、前記AS間トポロジ解析機能403は、前記BGPルータ5xから取得したAS-path情報を解析してAS間トポロジ情報を作成するための機能である。また、前記ネットワーク情報収集機能404は、たとえば、AS番号(識別子)やIPアドレス等の前記AS間トポロジ情報以外のネットワーク情報を取得するための機能である。また、前記エージェント間通信機能405は、協調するネットワーク管理エージェントを探索する過程で他の情報収集エージェントと連携する必要がある場合に、エージェント間通信ライブラリ408を用いて前記他の情報収集エージェントと通信を行うための機能である。また、前記エージェント探索機能406は、前記ネットワーク管理エージェント3xから受信した探索条件に合致するネットワーク管理エージェントを探索するための機能である。また、前記ネットワーク管理エージェント間通信機能407は、前記ネットワーク管理エージェント3xからの探索条件の受信、探索条件に合致する他のネットワーク管理エージェントの情報を送信(返送)するための機能である。
【0030】
またこのとき、前記情報収集エージェント4(4x)は、たとえば、コンピュータ等の汎用的な装置(計算機)上でプログラム(ソフトウェア)を実行することで前記各機能の動作を実現させてもよいし、前記各機能の動作に相当する処理を実行するハードウェア的な手段を組み合わせた専用装置であってもよい。また、詳細な説明は省略するが、他の情報収集エージェント4y,4zも、情報収集エージェント4xと同じ構成であるとする。
【0031】
図3乃至図7は、本実施例のネットワーク管理方法を適用したネットワーク管理システムにおける情報収集エージェントの動作を説明するための模式図であり、図3はBGPルータから取得するAS-path情報の一例を示す図、図4は取得したAS-path情報から作成されるAS間トポロジ情報の一例を示す図、図5はAS-path以外で前記情報収集エージェントが収集するネットワーク情報の一例を示す図、図6はネットワーク管理エージェントの探索方法の一例を示す図、図7はネットワーク管理エージェントの探索方法の別の例を示す図である。
【0032】
本実施例のネットワーク管理方法では、たとえば、ネットワーク上の経路障害の検出、診断といった管理を行うときに、前記ネットワーク上のあるネットワーク管理エージェントは、協調する他のネットワーク管理エージェントの探索条件を前記情報収集エージェントに送信し、前記情報収集エージェントに探索させる。
【0033】
このとき、たとえば、前記情報収集エージェント4xは、前記ネットワーク管理エージェント間通信機能407により前記ネットワーク管理エージェント3xからの探索条件を受信すると、前記BGPルータ間通信機能402を利用して、前記BGPルータ5xからBGPのAS-path情報を取得する。そして、ASトポロジ解析機能403により前記取得したAS-path情報を解析し、自身が設置されたAS2xを中心としたAS間トポロジ情報を作成する。前記AS-path情報は、たとえば、接続したBGPルータ5xに対して“show bgp paths”コマンドを実行することにより得られる。このとき、前記“show bgp paths”コマンドを実行すると、たとえば、図3に示したような実行結果が得られ、各行が個々の経路情報を示している。そして、図3の右端に示されているPathカラムの値が、各経路に置いて経由したASのリスト、すなわちAS-path情報を示している。図3に示した例では、1行目の経路情報におけるAS-pathは「x-y-z-a-b」である。なお、図3に示した例では、ASのリスト中の右端のAS番号(b)が経路の発生元であり、左端のAS番号(x)が最終的な受信先、すなわち自身のASの番号を示している。そして、前記情報収集エージェント4xで、たとえば、図3に示したようなAS-path情報を取得した場合、前記AS間トポロジ解析機能403は、前記各経路情報におけるAS-pathを合成し、たとえば、図4に示すように、自身のAS(ASx2x)を中心としたAS間トポロジ(ネットワークトポロジ)を作成する。
【0034】
また、前記情報収集エージェント4xは、前記BGPルータ5xからAS-path情報を取得してAS間トポロジを作成するとともに、前記BGPルータ5xから前記AS-path情報以外のネットワーク情報、たとえば、BGPピア情報を取得する。前記BGPピア情報は、たとえば、接続したBGPルータ5xに対して“show bgp peers”コマンドを実行することにより得られる。このとき、“show bgp peers”コマンドを実行すると、たとえば、図5に示したような実行結果が得られる。なお、図5は、1つのBGPピアについて出力される情報の一部であり、前記BGPピアが複数の場合は、BGPピアの数だけ、図5に示したような情報(実行結果)が得られる。そして、前記情報収集エージェント4xは、図5に示したようなBGPピア情報を取得すると、前記ネットワーク情報収集機能404により、前記BGPピア情報からBGPピアのIPアドレスやAS番号等を収集する。
【0035】
また、前記情報収集エージェント4xは、前記ネットワーク管理エージェント3xから探索条件を受信すると、前記エージェント探索機能406により、受信した探索条件に合致するエージェントを探索する。このとき、前記情報収集エージェント4xは、たとえば、図6に示すように、前記ネットワーク管理エージェント3xから探索条件を受信すると、前記ネットワーク上に設置された前記共有DB6または前記情報収集エージェント4x自身が保持している内部情報を対象として合致するエージェントを探索する。またこのとき、前記エージェント探索機能406において、たとえば、前記情報収集エージェント4xが属するAS2x以外のASに属する情報収集エージェントの探索が必要な場合等の、他の情報収集エージェントとの協調が必要と判断された場合、前記情報収集エージェント4xは、エージェント間通信機能405を用いて、図6に示すように、受信した探索条件を他の情報収集エージェント4yに送信することで、探索を継続する。そして、前記情報収集エージェント4xは、探索が終了すると、探索結果を前記ネットワーク管理エージェント3xに送信(返送)する。
【0036】
またこのとき、たとえば、前記情報収集エージェント4xが他の情報収集エージェントとの協調が必要と判断し、他の情報収集エージェントに探索条件を送信しようとしたときに、図7に示すように、送信しようとした情報収集エージェント4yとの間の接続経路に障害が発生していて送信できない場合、前記情報収集エージェント4xは、たとえば、送信しようとした情報収集エージェント4yの近傍を探索する。そして、近傍に別の情報収集エージェント4zを発見した場合、図7に示したように、前記別の情報収集エージェント4zに探索条件を送信し、探索を継続する。
【0037】
前記ネットワーク管理エージェント3xから探索条件を受信した情報収集エージェント4xにおいて、上記のような処理を行うことにより、前記情報収集エージェント4xは、前記探索条件を送信したネットワーク管理エージェント3xと他のネットワーク管理エージェントの接続状態やネットワークの状態を自動的に収集することができる。そのため、前記情報収集エージェント4xにおける収集結果を前記ネットワーク管理エージェント3xに送信(返送)することで、前記ネットワーク管理エージェント3xは、自動的に、協調するネットワーク管理エージェントの適切な組み合わせ(エージェント群)を選択することができる。
【0038】
図8および図9は、本実施例のネットワーク管理方法における探索条件の例を示す図であり、図8は探索条件の一例を示す図、図9は探索条件の他の例を示す図である。
【0039】
本実施例のネットワーク管理方法を適用したネットワーク管理システムにおいて、前記ネットワーク管理エージェントが送信する探索条件としては、たとえば、AS間トポロジ情報を利用することができ、あるASの近傍のASに属するエージェントを探索するという条件を設定することができる。このとき、図8に示したASa2aの近傍のASを探索するために、前記近傍をあるASからのホップ数で特定し、たとえば、前記ASa2aのホップ数1の近傍のASの情報収集エージェントを探索条件とすれば、図8に示した例では、ASb2b,ASd2d,ASh2h,ASk2kの4つのASを検出し、それらのAS番号等の情報を返送する。またこのほかにも、たとえば、あるASの上流ASの情報収集エージェントを前記探索条件とすることもできる。この場合、たとえば、図9に示したASa2aに対して、上流ASのエージェントを探索させる探索条件を送信したとすると、前記ASa2aの情報収集エージェントは、上流側のASb2b,ASc2cを検出し、それらのAS番号等の情報を返送する。またそのほかにも、たとえば、探索条件を、多くのBGPピアを持つASのエージェントとすることもできる。
【0040】
図10は、本実施例のネットワーク管理方法において、ネットワーク管理システム上で行われるエージェント群の選択手順の一例を示す模式図である。
【0041】
前述のような前記情報収集エージェントの動作をふまえ、前記ネットワーク管理システム上で、あるネットワーク管理エージェントが協調する他のネットワーク管理エージェントを選択するまでの手順をまとめると、たとえば、図10に示したようになる。
【0042】
前記あるネットワーク管理エージェント3xが、たとえば、図10に示すように、探索条件を、ASy2yのホップ数1の近傍にいるエージェントとして前記情報収集エージェント4xに送信したとする。このとき、前記探索条件を受信した情報収集エージェント4xは、前記ASy2yの情報収集エージェント4yに対して受信した探索条件を送信し、ホップ数1の近傍にいるエージェントを問い合わせる。そうすると、前記ASy2yの情報収集エージェント4yは、自身(ASy2y)のホップ数1の近傍のASとして、ASa2a,ASc2c,ASf2fを検出し、検出結果を返答する。
【0043】
前記ASy2yの情報収集エージェント4yからの検出結果を受信した前記情報収集エージェント4xは、図10に示すように、共有DB6にアクセスし、前記検出結果、すなわち前記ASy2yのホップ数1の近傍のASa2a,ASc2c,ASf2fをキーにして前記ASa2a,ASc2c,ASf2fのネットワーク管理エージェントの情報を検索し、取得する。そして、取得したネットワーク管理エージェントの情報を前記ネットワーク管理エージェント3xに返送する。この結果、前記ネットワーク管理エージェント3xは、探索条件に合致したエージェント情報を取得できる。そして、前記ネットワーク管理エージェント3xは、取得したエージェント情報に基づいて協調すべきネットワーク管理エージェントの組み合わせ(エージェント群)を自動的(効率的)に選択(決定)することができる。このとき、前記ネットワーク管理システムにおいて、たとえば、経路障害の検出、診断といった管理を行うのであれば、前記ネットワーク管理エージェント3xを含むエージェント群は、たとえば、従来のENCORE(たとえば、前記非特許文献2を参照)等と同じ手順で行えばよい。
【0044】
以上説明したように、本実施例のネットワーク管理方法によれば、前記ネットワーク上に分散配置された情報収集エージェントにより、局所的なエージェント情報を収集し、その情報に基づいてネットワーク管理エージェント間の接続状態を調べることにより、経路障害の検出、診断の際に協調すべきネットワーク管理エージェントの組み合わせ(エージェント群)を適正に、かつ自動的に選択することができる。つまり、前記エージェント群の選択を手動で行わなくてもよいので、ネットワーク管理エージェントの数が多い場合や、前記ネットワーク管理エージェントやネットワークの状態が常に変動している場合でも、適正なエージェント群を容易に選択することができる。そのため、ネットワークの運用管理が効率的になるとともに、運用コストを低減することができる。
【0045】
以上、本発明を、前記実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々変更可能であることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明による一実施例のネットワーク管理方法を適用したネットワーク管理システムの概略構成を示す模式図であり、ネットワーク管理システムの全体的な構成例を示す図である。
【図2】本発明による一実施例のネットワーク管理方法を適用したネットワーク管理システムの概略構成を示す模式図であり、情報収集エージェントのソフトウェア的な構成例を示す図である。
【図3】本実施例のネットワーク管理方法を適用したネットワーク管理システムにおける情報収集エージェントの動作を説明するための模式図であり、BGPルータから取得するAS-path情報の一例を示す図である。
【図4】本実施例のネットワーク管理方法を適用したネットワーク管理システムにおける情報収集エージェントの動作を説明するための模式図であり、取得したAS-path情報から作成されるAS間トポロジ情報の一例を示す図である。
【図5】本実施例のネットワーク管理方法を適用したネットワーク管理システムにおける情報収集エージェントの動作を説明するための模式図であり、AS-path以外で前記情報収集エージェントが収集するネットワーク情報の一例を示す図である。
【図6】本実施例のネットワーク管理方法を適用したネットワーク管理システムにおける情報収集エージェントの動作を説明するための模式図であり、ネットワーク管理エージェントの探索方法の一例を示す図である。
【図7】本実施例のネットワーク管理方法を適用したネットワーク管理システムにおける情報収集エージェントの動作を説明するための模式図であり、ネットワーク管理エージェントの探索方法の別の例を示す図である。
【図8】本実施例のネットワーク管理方法における探索条件の例を示す図であり、探索条件の一例を示す図である。
【図9】本実施例のネットワーク管理方法における探索条件の例を示す図であり、探索条件の他の例を示す図である。
【図10】本実施例のネットワーク管理方法において、ネットワーク管理システム上で行われるエージェント群の選択手順の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0047】
1…ネットワーク(インターネット)
2x,2y,2z…AS(Autonomous System)
3x,3y,3z…ネットワーク管理エージェント
4x,4y,4z…情報収集エージェント
401…TCP/IP401
402…BGPルータ間通信機能
403…AS間トポロジ解析機能
404…ネットワーク情報収集機能
405…エージェント間通信機能
406…エージェント探索機能
407…ネットワーク管理エージェント通信機能
408…エージェント間通信ライブラリ
5x,5y,5z…BGPルータ
6…共有データベース(DB)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワーク上に分散配置させたネットワーク管理エージェントを協調させて前記ネットワークの状態を計測、解析して、前記ネットワークを管理するネットワーク管理方法であって、
協調すべきネットワーク管理エージェントの組み合わせ(以下、エージェント群)を探索し、決定するステップ1と、
前記ステップ1で決定した前記エージェント群により前記ネットワークを管理するステップ2とを有し、
前記ステップ1は、前記ネットワーク管理エージェントから、前記ネットワーク上に分散配置された情報収集エージェントに、前記エージェント群の探索条件を送信するステップ3と、
前記探索条件を受信した前記情報収集エージェントが、他の情報収集エージェントを通して、特に指定したネットワーク管理エージェントと、他のネットワーク管理エージェントとの接続状況を調べるステップ4と、
前記情報収集エージェントが、前記他のネットワーク管理エージェントの情報を取得するステップ5と、
前記情報収集エージェントが、前記ステップ4で調べた接続状況と、前記ステップ5で取得した前記他のネットワーク管理エージェントの情報に基づき、前記探索条件に合致するネットワーク管理エージェントの情報を、探索結果として前記探索条件を送信したネットワーク管理エージェントに返送するステップ6とを有することを特徴とするネットワーク管理方法。
【請求項2】
前記情報収集エージェントを前記ネットワーク管理エージェントと1対1となるように配置しておき、
前記ステップ4は、前記探索条件を受信した情報収集エージェントと他の情報収集エージェントとの接続状況、または前記ネットワーク上の指定AS(Autonomous System)と他のASとの接続状況から、前記他のネットワーク管理エージェントとの接続状況を調べることを特徴とする請求項1に記載のネットワーク管理方法。
【請求項3】
前記ステップ4および前記ステップ5は、BGP(Border Gateway Protocol)を用いた通信を行うことにより、前記他のネットワーク管理エージェントとの接続状況を調べるとともに、前記他のネットワーク管理エージェントの情報を取得することを特徴とする請求項2に記載のネットワーク管理方法。
【請求項4】
前記ステップ4は、前記指定ASの近傍にいるASの接続状況から前記指定ASと前記他のASの接続状況を推測し、前記他のネットワーク管理エージェントとの接続状況を調べることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のネットワーク管理方法。
【請求項5】
前記ステップ5は、前記ネットワーク上に設置された、前記各ネットワーク管理エージェントの情報を一括して管理する共有データベースから、前記他のネットワーク管理エージェントの情報を取得することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のネットワーク管理方法。
【請求項6】
ネットワークの状態を計測、解析して前記ネットワークを管理するネットワーク管理エージェントと、前記ネットワーク管理エージェントの状態および前記ネットワークの状態に関する情報を収集する情報収集エージェントと、BGP(Border Gateway Protocol)を用いた通信を行うBGPルータとを備えるAS(Autonomous System)が、前記ネットワーク上に前記分散配置されたネットワーク管理システムであって、
前記情報収集エージェントは、前記BGPルータとの通信を行う手段と、
前記BGPルータから取得したAS-path情報を解析してAS間トポロジ情報を作成する手段と、
前記AS-path情報以外のネットワーク情報を収集する手段と、
他の情報収集エージェントとの通信を行う手段と、
前記ネットワーク管理エージェントから受信した探索条件に合致するネットワーク管理エージェントを探索する手段と、
前記探索条件の受信、および探索結果を前記ネットワーク管理エージェントに送信(返送)する手段とを備えることを特徴とするネットワーク管理システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2006−157570(P2006−157570A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−346160(P2004−346160)
【出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】