説明

ノズルプレートの製造方法および液滴噴射ヘッドの製造方法

【課題】ガラスを用い、ノズル孔が吐出により適したテーパー面を有するノズルプレートを、より簡便に製造することができるノズルプレートの製造方法およびその製造方法を含む液滴噴射ヘッドの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係るノズルプレートの製造方法は、ガラス基板にレーザービームを照射し、前記ガラス基板の前記レーザービームが集光した焦点領域において、前記ガラス基板の改質部分を形成する照射工程と、前記ガラス基板のノズル孔が形成される領域が、前記改質部分となるように、前記レーザービームを前記ガラス基板に対して相対的に走査する走査工程と、前記ガラス基板をウェットエッチングし、前記改質部分を除去するエッチング工程と、前記ガラス基板を所望の厚みまで研削し、ノズル孔を有するノズルプレートを形成する研削工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルプレートの製造方法および液滴噴射ヘッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、画像記録装置およびディスプレー製造装置等に用いることができるインクジェットプリンター等の液滴噴射装置の液滴噴射ヘッド(「インクジェット記録ヘッド」又は「記録ヘッド」とも言う)は、例えばインク等の液滴が飛翔するための吐出口であるノズル孔を有したノズルプレートを備えることが知られている。
【0003】
ノズルプレートの材質としては、例えば、単結晶シリコン、ポリイミド等の重合体物質およびステンレス鋼などのSUSなどが用いられる。例えば、特許文献1には、ポリイミドからなるノズルプレートを、マキシマレーザーを用いて形成するノズルプレートの製造方法が開示されている。
【0004】
しかしながら、近年、材料コストの低減化や、検査工程の簡便化などの観点から、ノズルプレートをガラスによって製造することが期待されている。ガラス部材にノズル孔を形成する従来の方法としては、エッチングマスクを形成し、ドライエッチングまたは、ウェットエッチングを行う方法が知られている。しかしながら、ドライエッチングを行う場合は、マスクを形成する工程や、ドライエッチング工程のための加工装置が必要となるため、製造コストを抑えることができない。また、ウェットエッチングを行った場合でも、マスク工程は必要となる。更に、ノズル孔の内面は、液滴の吐出のために、テーパー面を有していることが好ましいが、従来の製造方法においてウェットエッチングによりノズル孔を形成した場合、ノズル孔の内面であるテーパー面は、アール状に形成されてしまう。
【0005】
したがって、低コスト材料であるガラスを用い、ノズル孔が吐出により適したテーパー面を有するノズルプレートを、より簡便に製造することができるノズルプレートの製造方法が期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−117230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の態様の1つは、ガラスを用い、ノズル孔が吐出により適したテーパー面を有するノズルプレートを、より簡便に製造することができるノズルプレートの製造方法を提供することにある。
【0008】
本発明の態様の1つは、上記ノズルプレートの製造方法を含む、液滴噴射ヘッドの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明に係るノズルプレートの製造方法は、
ガラス基板にレーザービームを照射し、前記ガラス基板の前記レーザービームが集光した焦点領域において、前記ガラス基板の改質部分を形成する照射工程と、
前記ガラス基板のノズル孔が形成される領域が、前記改質部分となるように、前記レーザービームを前記ガラス基板に対して相対的に走査する走査工程と、
前記ガラス基板をウェットエッチングし、前記改質部分を除去するエッチング工程と、
前記ガラス基板を所望の厚みまで研削し、ノズル孔を有するノズルプレートを形成する研削工程と、
を含む。
【0010】
本発明によれば、ガラスを用い、マスク工程やドライエッチング工程を必要とせず、ノズル孔が吐出により適したテーパー面を有するノズルプレートを、より簡便に製造することができる。
【0011】
(2)本発明に係るノズルプレートの製造方法において、
前記照射工程における前記レーザービームの照射条件は、波長が、400nm以上、10000nm以下であって、パルス幅が、10フェトム秒以上、1000フェトム秒以下であってもよい。
【0012】
(3)本発明に係るノズルプレートの製造方法において、
前記ノズル孔の内面は、テーパー面を有していてもよい。
【0013】
(4)本発明に係るノズルプレートの製造方法において、
前記エッチング工程におけるエッチャントは、フッ酸を含み、前記フッ酸の濃度は、20%以上、35%以下であってもよい。
【0014】
(5)本発明に係るノズルプレートの製造方法において、
前記走査工程は、前記ガラス基板の厚み方向において、前記焦点領域の位置を変更する工程と、前記厚み方向の垂直方向において、前記焦点領域の位置を変更する工程と、を含んでいてもよい。
【0015】
(6)本発明に係るノズルプレートの製造方法において、
前記走査工程は、前記焦点領域のスポット径を変化させながら、前記ガラス基板の厚み方向において、前記焦点領域の位置を変更する工程を含んでいてもよい。
【0016】
(7)本発明に係るノズルプレートの製造方法において、
前記走査工程において、前記焦点領域のスポット径は、Φ1μm以上、Φ10μm以下の範囲で変化してもよい。
【0017】
(8)本発明に係る液滴噴射ヘッドの製造方法は、
上記のいずれかに記載のノズルプレートの製造方法を含む。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態に係るノズルプレートの製造方法を模式的に示す断面図。
【図2】本実施形態に係るノズルプレートの製造方法を模式的に示す断面図。
【図3】本実施形態に係るノズルプレートの製造方法を模式的に示す断面図。
【図4】液滴噴射ヘッドを模式的に示す分解斜視図。
【図5】本実施形態に係る液滴噴射ヘッドの製造方法を模式的に示す断面図。
【図6】本実施形態に係る液滴噴射ヘッドの製造方法を模式的に示す断面図。
【図7】液滴噴射装置を模式的に示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明を適用した実施形態の一例について図面を参照して説明する。ただし、本発明は以下の実施形態のみに限定されるものではない。本発明は、以下の実施形態およびその変形例を自由に組み合わせたものを含むものとする。
【0020】
1. ノズルプレートの製造方法
以下、図面を参照して、本実施形態に係るノズルプレートの製造方法について説明する。
【0021】
図1(A)〜図2(C)は、本実施形態に係るノズルプレートの製造方法を模式的に説明する断面図である。
【0022】
図1(A)〜図2(C)に示すように、本実施形態に係るノズルプレートの製造方法は、ガラス基板にレーザービームを照射する照射工程と、前記レーザービームを前記ガラス基板に対して相対的に走査する走査工程と、前記ガラス基板をウェットエッチングし、前記改質部分を除去するエッチング工程と、前記ガラス基板を所望の厚みまで研削し、ノズル孔を有するノズルプレートを形成する研削工程と、を含む。
【0023】
図1(A)は、本実施形態に係る照射工程を説明する図である。
【0024】
まず、図1(A)に示すように、ガラス基板10を準備する。ガラス基板10としては、酸化ケイ素を主成分とする各種のガラスが板状に加工された基板を用いることができる。ガラス基板10は、後の工程で用いるレーザービーム30が有する波長の光を反射または散乱しにくい材質であることが好ましい。ガラス基板10の具体的な材質としては、ケイ酸塩ガラス、ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラス、結晶化ガラス、石英ガラス(水晶を含む)、鉛ガラス、およびフッ化物ガラスなどを例示することができる。
【0025】
図1(A)に示すように、ガラス基板10は、エッチングバリア層1を有していてもよい。エッチングバリア層1は、図1(A)に示すように、ガラス基板10のレーザービームが照射される面と反対側の面に設けられていても良い。エッチングバリア層1は、後述されるエッチング工程において、ガラス基板10よりもエッチングされにくい部材から構成されていればよい。例えば、エッチングバリア層1の具体的な材質としてはフォトレジスト、金属膜などを例示することができる。
【0026】
図1(A)に示すように、ガラス基板10は、後述されるノズル孔13が形成される領域11を有している。以下、ノズル孔13が形成される領域11を、「第1の領域11」とも言う。第1の領域11の形状は、ノズル孔13の形状であればよく、特に限定されない。例えば、図1(A)に示すように、第1の領域11の境界面が、テーパー面となる領域であってもよい。また、図示はされないが、ガラス基板10の厚み方向から見た、第1の領域11の境界面の形状は、円状もしくは楕円状であってもよく、一方の面における形状の幅が、他方の面における形状の幅よりも小さくなるように形成されていてもよい。
【0027】
なお、図1(A)においては、第1の領域11が、ガラス基板10を貫通するように設けられている。しかしながら、ガラス基板10は、後の工程で所望の厚みに研削される。したがって、研削された厚みにおいてガラス基板10を貫通するノズル孔13が形成されればよい。よって、第1の領域11は、ガラス基板10を貫通していないくてもよい(図示せず)。なお、第1の領域11は、単一のガラス基板10において、単数形成されていてもよいし、複数形成されていてもよい。
【0028】
次に、図1(A)に示すように、レーザー照射工程を行う。この工程は、図1(A)に示すように、ガラス基板10のレーザービーム30が集光した焦点領域36において、ガラス基板10の改質部分16を形成する。図1(A)に示すように本工程では、ガラス基板10にレーザービーム30を照射する。レーザービーム30としては、いわゆる超短パルスレーザービームが用いられる。このようなパルス幅の短いレーザービーム30が、ガラスに対して照射されると、照射された部位のガラスを構成する原子に作用して、当該ガラスに化学的もしくは物理的な変化を及ぼすことができる。したがって、本工程では、レーザービーム30は、ガラス基板10のガラス(酸化ケイ素が主成分である。)の構造を化学的もしくは物理的に変化させて、その部分の性質が変化した改質部分16を形成することができる。これにより、例えば、改質部分16の化学的な安定性(エッチング速度など)を変化させることができる。
【0029】
上述したように、本工程でレーザービーム30が集光した焦点領域36に、改質部分16が形成される。焦点領域36とは、レーザービームのエネルギーの密度の高い領域である。焦点領域36の光のエネルギー密度は、レーザービーム30のパルス幅を小さくするほど大きくすることができる。このような焦点領域36は、一定のスポット径を有する一定の体積を有しており、レーザービーム30の強度、パルス幅、および集光性等を調節することによって、焦点領域36の大きさ(体積)を調節することができる。このとき、焦点領域36がガラスに構造変化を起こす程度の光のエネルギーとなるように設定することもできる。焦点領域36は、焦点領域36近傍で、レーザービーム30の進行方向およびレーザービーム30の進行方向に垂直な方向に有限の大きさを有して形成されることができる(これらは、それぞれ、焦点深度、およびスポット径に対応する。)。したがって、レーザービーム30の焦点領域36の位置を調節することにより、ガラス基板10の平面における任意の位置、および断面における任意の深さに改質部分16を形成することができる。
【0030】
ここで、レーザービーム30を集光させ、焦点領域36を形成する方法は、特に限定されず、公知の光学的方法を用いることができる。例えば、図示されないレーザービームの光源から、ガラス基板10への光路間において、光を集光させることができる光学素子20を介することにより、焦点領域36を形成してもよい。本実施形態に係る光学素子20は、光を集光させ、焦点領域36を形成することができる限り、特に限定されないが、例えば、凸レンズ、プリズム集光器、回折レンズおよび回折格子などのいずれか1つを用いることができる。
【0031】
ガラス基板10に改質部分16を形成するためのレーザービーム30の照射条件は、光学的な焦点領域36の形状およびガラス基板10の材質にも依存するが、例えば、波長が、400nm以上、10000nm以下、周波数が、1kHz以上、100kHz以下、パルス幅が、10フェトム秒以上、1000フェトム秒以下とすることができる。より好適な照射条件としては、波長が、600nm以上、1000nm以下、周波数が、5kHz、パルス幅が、100フェトム秒以上、300フェトム秒以下とすることができる。前記条件を用いることにより、効率良く改質が可能となる。
【0032】
本実施形態で用いうるレーザービーム30の光源としては、特に限定されないが、例えば、チタンサファイヤレーザーを用いたIMRA AMERICA,INC.社製の型番FX−10、などを挙げることができる。
【0033】
例えば、ガラス基板10に、厚さ0.7mmのホウケイ酸ガラスの基板を選択した場合、レーザービーム30の波長を800nm、パルス幅を200フェムト秒、パルスエネルギーを100μJとすることができる。このようにすれば、ガラス基板10に改質部分16を形成することができる。
【0034】
次に、図1(B)に示すように、走査工程を行う。この工程は、図1(A)に示すように、ガラス基板10のノズル孔13が形成される領域(第1領域11)が、改質部分16となるように、レーザービーム30をガラス基板10に対して相対的に走査する。よって、本工程は、ガラス基板10を固定してレーザービーム30を走査する方法、レーザービーム30を固定してガラス基板10を走査する方法、レーザービーム30およびガラス基板10を走査する方法、および焦点領域36の形状を変化させる方法等のいずれかを含むことができる。よって、本実施形態の一形態として、ガラス基板10を固定し、レーザービーム30を走査する方法を、図1(B)に示す。図1(B)に示すように、ガラス基板10の厚み方向を第1の方向110とし、第1の方向110と垂直方向を第2の方向120としたとき、図1(C)に示すように、第1の領域11の全領域が、焦点領域36によって改質部分16となるように、光学素子20を第1の方向110および第2の方向120に適宜走査することができる。走査条件は、例えば、ガラス基板10に、厚さ0.7mmのホウケイ酸ガラスの基板を選択し、上記のレーザービーム照射条件を選択した場合、所定の焦点領域36を改質部分16とするために、レーザービーム30を、走査速度を5mm/秒、および走査周波数を5kHzとして、走査することもできる。また、必要に応じて複数回走査することもできる。走査回数は任意である。
【0035】
次に、図2(A)に示すように、エッチング工程をおこなう。本工程は、ガラス基板10をウェットエッチングし、改質部分16を除去する。これにより、図2(B)に示すように、ガラス基板10において、改質部分16が除去された第2の領域12が形成される。第2の領域12は、第1の領域11と同じ外形を有する。第2の領域12は貫通孔であってもよいし、貫通していない凹部であってもよい。
【0036】
上述したように、改質部分16のガラスは、構造が変化しているため、それ以外の領域のガラスよりもエッチング速度が非常に大きくなっている。改質部分16のエッチング速度は、例えば、それ以外の領域のエッチング速度に比較して、10倍〜1000倍程度大きくすることができる。
【0037】
本工程のウェットエッチングの処理の時間としては、任意であるが、例えば、10分〜2時間程度とすることができる。なお、改質部分16以外の領域のガラスも同時にエッチングされることがあるが、上述のように両領域のエッチング速度の差は十分に大きいため、実際上支障がない。改質部分16以外の領域のガラスのエッチングを防ぎたい場合は、適宜、レジストマスクや金属マスクを利用して本工程を行うことができる。
【0038】
なお、本工程において、図2(A)に示すように、ガラス基板10のエッチングバリア層1が形成された面とは反対側の面のみにエッチャント(現像液)を接触させるようにしてエッチングを行っても良い。これによれば、図2(B)に示すように、改質部分16が除去された後に形成される第2の領域12の内面において、テーパー面を作りやすくなる。
【0039】
改質部分16を除去する工程で用いるエッチャントとしては、フッ酸を含む。エッチャントにおけるフッ酸の濃度は、20%以上、35%以下である。例えば、ガラス基板10に、厚さ0.7mmのホウケイ酸ガラスの基板を選択した場合は、フッ酸の25%水溶液を用いて行うことができる。
【0040】
以上の工程により、第2の領域12をガラス基板10に形成することができる。第2の領域12を形成した後、エッチングバリア層1は、適宜除去されてもよい。
【0041】
次に、図2(C)に示すように、研削工程をおこなう。本工程はガラス基板10を所望の厚みまで研削し、ノズル孔13を有するノズルプレート50を形成する。なお、本工程は、研磨工程も含む。ガラス基板10を研削する方法は、公知のガラス素材の研削方法および研磨方法を用いることができる。例えば、回転可能な研削パッドをガラス基板10の研削する面に配置し、パッドを接触させながら回転させると同時に研磨剤を供給する方法で行うことができる。また、研磨剤の粒度やパッドの種類を変えて、粗研磨工程、精密研磨工程といったように複数の工程に分けて研磨を行ってもよい。研磨剤としては、例えば、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化マンガン、コロイダルシリカ、ダイヤモンドなどが挙げられる。パッドは硬質パッドと軟質パッドとに分けられるが、必要に応じて適宜選択して用いることができる。硬質パッドとしては、硬質ベロア、ウレタン発泡、ピッチ含有スウェード等を素材とするパッドが挙げられ、軟質パッドとしては、スウェードやベロア等を素材とするパッドが挙げられる。
【0042】
以上に説明した本実施形態の製造方法によってノズルプレート50を形成することができる。図2(C)に示すように、ノズルプレート50は、ノズル孔13を有する。ノズル孔13は、ノズルプレート50の厚み方向に伸び、ノズルプレート50を貫通し、開口部13aおよび13bを有する。また、ノズル孔13は、開口部13aおよび13bを接続する内面13cを有する。開口部13aおよび13bのノズルプレート50の厚み方向から見た形状は、ノズル孔より液体を吐出できる限り、特に限定されないが、略円形(楕円を含む)を有していてもよい。図2(C)に示すように、ノズル孔13の一方の開口部13aの開口幅Wは、他方の開口部13bの開口幅Wよりも大きくてもよい。言い換えれば、ノズル孔13の一方の開口部13aの開口面積は、他方の開口部13bの開口面積よりも大きくてもよい。また、ノズル孔13の内面13cは、テーパー面から形成される。内面13cのノズルプレート50の厚み方向における断面形状は、台形であってもよい。つまりは、図2(C)に示すように、断面視において、内面13cは、開口部13aと開口部13bとを直線で結ぶことができる。
【0043】
本実施形態に係るノズルプレートの製造方法は、例えば以下のような特徴を有する。
【0044】
本実施形態に係るノズルプレートの製造方法によれば、ガラス基板にノズル孔を形成する工程において、エッチングマスクを形成する工程を必要しない。また、ウェットエッチングと比べて装置コストやランニングコストが高いドライエッチング工程を必要としない。したがって、より簡便にノズルプレートを製造することができる。
【0045】
また、本実施形態に係るノズルプレートの製造方法によれば、ノズルプレート50のノズル孔13が、液滴の吐出により適したテーパー面を有することができる。従来のように、ガラス基板をマスキングし、等方エッチングによって、ノズル孔の内面がテーパー面を有するように形成する製造方法によれば、テーパー面がアール状の面となってしまう。また、異方エッチングを行った場合、ノズル孔にテーパー面を形成することはできない。これに対し、本実施形態に係るノズルプレートの製造方法によれば、レーザービーム照射工程において、改質された改質部分のみをエッチングにより選択的に除去することができる。したがって、内面13cがアール状とならないテーパー面からなるノズル孔13を容易に形成することができる。
【0046】
以上により、本実施形態に係るノズルプレートの製造方法によれば、ガラスを用い、マスク工程やドライエッチング工程を必要とせず、ノズル孔が吐出により適したテーパー面を有するノズルプレートを、より簡便に製造することができる。
【0047】
(変形例)
本実施形態に係るノズルプレートの製造方法は、以下のように変形することができる。以下、図面を参照して、本実施形態に係るノズルプレートの製造方法について説明する。
【0048】
図3は、本実施形態に係るノズルプレートの製造方法の変形例を模式的に説明する断面図である。なお、上述された製造方法において説明された構成およびその製造方法等と同様のものは、同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0049】
本変形例においては、走査工程が、焦点領域136のスポット径を変化させながら、ガラス基板10の厚み方向において、焦点領域136の位置を変更する工程を含むことができる。
【0050】
図3(A)に示すように、ガラス基板10に照射されるレーザービーム30は、光学素子120を介してガラス基板10に照射される。ここで、本変形例に係る光学素子120は、焦点領域136のスポット径を変化させることができる光学素子であることができる。本変形例に係る光学素子120は、焦点領域136のスポット径を変化および調整できる限り、特に限定されない。例えば、光学素子120は、複数のレンズを有するレンズユニットであってもよい。変化するスポット径は、ノズル孔13の設計上の形状によって調整されるため、特に限定されないが、例えば、Φ1μm以上、Φ10μm以下の範囲で変化してもよい。
【0051】
図3(A)に示すように、照射工程において、最初のスポット径(S)は、第1の領域11のレーザービーム30が照射される面における幅であることができる。本変形例に係る走査工程においては、レーザービーム30をガラス基板10に対して相対的に走査する際、第1の方向110においてのみ走査する。図3(B)に示すように、第1の方向110に焦点領域136を走査する際、焦点領域136のスポット径を、深度に応じて段階的に変化させればよい。例えば、図3(B)に示すように、レーザービーム30の焦点深度が深いときに、焦点領域136のスポット径(S2)は、最初のスポット径(S)よりも小さくなるように調整されていてもよい。また、図示はされないが、その逆であってもよい。
【0052】
本変形例においては、以上の走査方法によって、第1の領域11に改質部分16を形成することができる。
【0053】
本変形例に係るノズルプレートの製造方法は、上記のノズルプレートの製造方法の特徴に加えて、例えば以下のような特徴を有する。
【0054】
本変形例に係るノズルプレートの製造方法によれば、走査工程における動作軸をガラス基板10の深度方向(第1の方向110)のみとすることができる。これによれば、ノズル孔13のテーパー面を、焦点領域136のスポット径を調整することのみによって形成することができるため、より製造方法が簡便になり、テーパー面の製造精度を向上することができる。
【0055】
2. 液滴噴射ヘッドの製造方法
以下、図面を参照して、本実施の形態に係る液滴噴射ヘッドの製造方法について説明する。本実施の形態に係る液滴噴射ヘッドの製造方法は、上述されたノズルプレートの製造方法を含む。
【0056】
図4は、本実施形態に係る液滴噴射ヘッドの製造方法によって製造された液滴噴射ヘッド300の一例を模式的に示す分解斜視図である。図5−6は、本実施形態に係る液滴噴射ヘッド300の製造方法を模式的に示す断面図である。以下、図面を参照して、本実施形態に係る液滴噴射ヘッドの製造方法によって製造された液滴噴射ヘッド300の一例を説明した後に、本実施形態に係る液滴噴射ヘッドの製造方法について説明する。
【0057】
図4に示すように、本実施形態に係る液滴噴射ヘッドの製造方法によって製造された液滴噴射ヘッド300は、ノズルプレート50と、ノズルプレート50の上方に形成された基板60と、基板60の上方に形成された振動板70と、振動板70の上方に形成された圧電素子80と、振動板70の上方において、圧電素子80を覆うように設けられた封止板90と、を含む。
【0058】
基板60は、図4に示すように、ノズルプレート50の上方に形成され、圧力室61を有する。図4に示すように、基板60は、圧力室61の側壁を構成する壁部62を有する。また、基板60は、圧力室61と供給路63および連通路64を介して連通したマニュホールド65を有していてもよい(図示せず)。マニュホールド65には、図示されない貫通孔が形成されてもよく、該貫通孔を通って外部からマニュホールド65内に液体が供給されてもよい。これによれば、マニュホールド65に液体を供給することによって、供給路63および連通路64を介して圧力室61に液体を供給することができる。圧力室61の形状は、特に限定されない。圧力室61の形状は、例えば、上面11の法線方向から見た場合の平面視において平行四辺形であってもよく、矩形であってもよい。圧力室61の数は特に限定されず、1つであってもよいし、複数設けられていてもよい。基板60の材質は、特に限定されない。基板60は、例えば、単結晶シリコン、ニッケル、ステンレス、ステンレス鋼、ガラスセラミックス等から形成されてもよい。
【0059】
図4に示すように、振動板70は、プレート状の部材であって、圧電素子80が面の上方に形成される第1の面11と、第1の面11と反対の面である第2の面12と、を有する。液滴噴射ヘッド300において、振動板70は、変形部を構成する。言い換えれば、後述される圧電素子80の変形によって、振動板70は変形することができる。これにより、下方に形成される流路形成板20の圧力室21の体積を変化させることができる。振動板70の構造および材料は、可撓性を有し、変形することができる限り、特に限定されない。例えば、振動板70は、複数の膜の積層体で形成されていてもよい。このとき、振動板70は、例えば、二酸化シリコン(SiO)と二酸化ジルコニウム(ZrO)を積層したものや、ニッケルなどの金属膜、ポリイミドなどの高分子材料膜などを含む積層体であってもよい。
【0060】
また、図4に示すように、振動板70には、マニュホールド65と連通する開口部71が形成される。開口部71の形状は、マニュホールド65に液体を供給でき得る限り特に限定されない。また、図示はされないが、開口部71の周辺領域には、ニッケル、金を含む導電層が形成されていてもよい。
【0061】
次に、振動板70の上方には、圧電素子80が形成される。なお、本実施形態において圧電素子80の形態は、電極によって挟まれた圧電体層を有する限り、特に限定されるものではない。つまりは、圧電素子80は、屈曲振動モード(ベントモード)のユニモルフ型圧電素子であってもよい。また、図示はされないが、圧電素子80は、伸縮振動モード(ピストンモード)の積層型圧電素子であってもよい。
【0062】
本実施形態の液滴噴射ヘッドの製造方法の説明においては、圧電素子80が、屈曲振動モード(ベントモード)のユニモルフ型圧電素子の場合であって、複数の圧電素子80を有する液滴噴射ヘッド300の場合に、上部電極である第2電極83が共通電極となるように形成された構造を一例として例示して説明する。しかしながら、本実施形態に係る液滴噴射ヘッドの製造方法によって製造された液滴噴射ヘッド300は、以下の形態に限定されるものではない。例えば、下部電極となる第1電極81が共通電極となるように形成された液滴噴射ヘッドであってもよい。なお、圧電素子80の詳細は、液滴噴射ヘッドの製造方法において後述される。
【0063】
次に、図4に示すように、液滴噴射ヘッド300は、封止板90を有することができる。封止板90は、図4に示すように、圧電素子80の上方に形成される。封止板90は、圧電素子80を所定の空間領域に封止することができる封止領域91を有している。封止領域91は、圧電素子80の振動運動を阻害しない程度の空間領域であればよい。また、封止板90は、図4に示すように、基板60のマニュホールド65および振動板70の開口部71と連通した開口部92を有していてもよい。封止板90の構造及び材料は、特に限定されない。例えば、封止板90は、例えば、単結晶シリコン、ニッケル、ステンレス、ステンレス鋼、ガラスセラミックス等から形成されてもよい。
【0064】
また、図4に示すように、封止板90の開口部92の上方には、可撓膜95および固定膜96が形成されてもよい。可撓膜95は、開口部92を封止するように形成される。可撓膜95は、例えばポリフェニレンサルファイド(PPS)フィルムから形成されてもよい。また、固定膜96は、開口部92の上方で、可撓膜95を介して開口部97を有する。固定膜96は、可撓膜95を固定することができる限り特に限定されず、例えば、ステンレス鋼などの金属等の材料から形成されてもよい。ここで、基板60のマニュホールド65、振動板70の開口部71および封止板90の開口部92によって構成される空間をリザーバとするとき、リザーバの一方面は、可撓膜95のみによって封止さている。
【0065】
図4に示すように、例えば、封止板90の上には、電気的接続部(図示せず)を介して駆動回路200が実装されてもよい。駆動回路200は、図示はされないが、例えばワイヤボンディング等によって、圧電素子80と電気的に接続されている。また、液滴噴射ヘッド300は、例えば、各種樹脂材料、各種金属材料からなり、上述された構成を収納することができる筐体を有していてもよい(図示せず)。
【0066】
以下に、図面を参照して、本実施形態に係る液滴噴射ヘッドの製造方法を説明する。
【0067】
なお、本実施形態に係る液滴噴射ヘッドの製造方法は、基板60を形成するために用いられる材質が単結晶シリコン等を用いる場合と、ステンレス等を用いる場合とによって異なる。以下において、単結晶シリコンを用いた場合の液滴噴射ヘッドの製造方法を一例として記載する。本実施形態に係る液滴噴射ヘッドの製造方法は、特に以下の製造方法に限定されず、ニッケルやステンレス鋼、ステンレス等を材料として用いる場合は、公知の電鋳法等の工程を含んでいてもよい。
【0068】
また、本実施形態に係る液滴噴射ヘッドの製造方法の説明においては、工程の一例として、まず圧電素子80を形成した工程の後に、基板60を形成する。その後、封止板80を搭載し、上述されたノズルプレートの製造方法によって製造されたノズルプレート50を接着する。しかしながら、各工程の先後は、以下に記載の製造方法に限定されるものではない。なお、既に上述された構成の詳細な説明は、同様の符号を付して省略する。
【0069】
まず、図5(A)に示すように、基板60の材料基板であって、圧力室61等が形成されていない基板60aを準備する。基板60aには、圧力室61等が形成される領域61a等が区画されている。その基板60aの上方において、図5(A)に示すように、振動板70を形成する。振動板70の形成方法は公知の成膜方法を用いることができる。振動板70は、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)法やPVD(Physical Vapor Deposition)法などの蒸着法、スパッタ法、MOD(Metal Organic Deposition)法などにより形成される。図示はされないが、振動板70は、所望の形状にパターニングされていてもよい。
【0070】
なお、本実施形態におけるパターニング工程は、公知のフォトリソグラフィー技術または公知のエッチング技術によって行われる。エッチングでもってパターニングを行う場合、ドライエッチングでもよいし、ウェットエッチングでもよい。また、適宜、レジストの形成・除去工程および現像工程などを含んでいてもよい。
【0071】
次に、図5(B)に示すように、振動板70の上方において、圧電素子80を形成する。圧電素子80は、基板60aの、圧力室61が形成される領域61aの上方に配置される。図5(B)に示すように、圧電素子80は、第1電極81と第2電極83とによって挟まれた圧電体層82を有していればよく、その形態は特に限定されない。例えば、図5(B)に示すように、圧電素子80は、第1電極81、圧電体層82および第2電極83を含む。
【0072】
振動板70の上方に、下部電極となる第1電極81を形成する。第1電極81の形成方法は、公知の成膜方法およびパターニング方法を用いることができる。例えば、第1電極81の材料導電膜をCVD法やPVD法などの蒸着法、めっき法、スパッタ法、MOD法などにより成膜して、所望の形状にパターニングし、形成される。
【0073】
第1電極81の構造および材料は、導電性を有する限り、特に限定されない。例えば、第1電極81は、単層で形成されていてもよい。あるいは、第1電極81は、複数の膜の積層体で形成されていてもよい。第1電極81は、例えば、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、金(Au)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、酸化ストロンチウム(SRO)および酸化ランタンニッケル(LNO)等の導電性酸化物、などのいずれかを含む導電層であってもよい。
【0074】
図5(B)に示すように、第1電極81は、駆動回路200と電気的に接続されたリード部210との電気的接続部81aを有していてもよい。リード部210は、第1電極81と同じ金属で形成されてもよいし、ニッケル/クロム合金(NiCr)と金(Au)などを含む積層体からなる金属層で形成されていてもよい。
【0075】
次に、第1電極81を覆うように、圧電体層82を形成する。圧電体層82の構造および材料は、圧電特性を有していればよく、特に限定されない。圧電体層82の製造方法は、特に限定されないが、公知の圧電材料から、例えばゾルゲル法などの公知の方法によって形成される。例えば、第1電極81の上方において、圧電体層82の原料膜である前駆体膜を形成する。該前駆体膜は、公知の方法で成膜されることができ、例えば、ゾルゲル法、CVD法、MOD法、スパッタ法、レーザーアブレーション法などにより形成される。ここで、前駆体膜を熱処理することで、結晶化してもよい。これによって、圧電体膜を形成することができる。また、この結晶化工程は、部分的に行われてもよく、第2電極83のパターニングの後に行われても良い。熱処理の条件は、前駆体膜を結晶化できる温度であれば、特に限定されない。熱処理は、例えば、酸素雰囲気中において、500〜800度で行われることができる。次に、圧電体膜を所望の形状にパターニングして、圧電体層82を形成することができる。
【0076】
圧電体層82は、例えば、ペロブスカイト型酸化物の圧電材料を用いることができる。圧電体層82の圧電材料には、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr、Ti)O:PZT)、ニオブ酸チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr、Ti、Nb)O:PZTN)、チタン酸バリウム(BaTiO:BT)、ニオブ酸カリウムナトリウム((Na、K)NbO:NKN)およびチタン酸ビスマスナトリウム((Bi、Na)TiO:BNT)などを用いることができる。
【0077】
次に、圧電体層82の上方において、第1電極81の少なくとも一部とオーバーラップするように第2電極83を形成する。第2電極83の形成方法は、公知の成膜方法およびパターニング方法を用いることができる。例えば、第2電極83の材料導電膜をCVD法やPVD法などの蒸着法、めっき法、スパッタ法、MOD法などにより成膜して、所望の形状にパターニングし、形成される。
【0078】
第2電極83の構造および材料は、導電性を有する限り、特に限定されない。例えば、第2電極83は、単層で形成されていてもよい。あるいは、第2電極83は、複数の膜の積層体で形成されていてもよい。第2電極83は、例えば、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、金(Au)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、酸化ストロンチウム(SRO)および酸化ランタンニッケル(LNO)等の導電性酸化物、などのいずれかを含む導電層であってもよい。
【0079】
図示はされないが、第2電極83は、駆動回路200と電気的に接続されたリード部とのコンタクト部を有していてもよい。リード部は、第2電極83と同じ金属で形成されてもよいし、ニッケル/クロム合金(NiCr)と金(Au)などを含む積層体からなる金属層で形成されていてもよい。
【0080】
以上のいずれかの構成により、圧電素子80を形成してもよい。
【0081】
次に、図6(A)に示すように、封止領域91が形成された封止板90を圧電素子80の上方より搭載する。ここで、圧電素子80は、封止領域91内に封止されることができる。封止板90は、例えば、接着剤によって圧電素子80を封止してもよい。
【0082】
次に、図6(B)に示すように、基板60aを所定の厚みに薄くし、圧力室61などを区画する。例えば、所定の厚みを有した基板60aに対し、所望の形状にパターニングされるようにマスク(図示せず)を基板10が形成された面と反対の面に形成し、エッチング処理することによって、圧力室61、壁部62、供給路63、連通路64およびマニュホールド65(図示せず)を区画する。圧力室61の形状は、特に限定されない。圧力室61の形状は、例えば、平面視において平行四辺形であってもよく、矩形であってもよい。圧力室61の数は特に限定されず、1つであってもよいし、複数設けられていてもよい。以上によって、基板10の下方に圧力室61を有した圧力室板60を形成することができる。
【0083】
次に、図6(C)に示すように、ノズル孔13を有したノズルプレート50を、例えば接着剤等により所定の位置に接合する。本実施形態に係る液滴噴射ヘッドの製造方法において、ノズルプレート50は、上述されたノズルプレート50の製造方法によって製造される。これにより、ノズル孔13は、圧力室61と連通し、圧力室61内に供給された液体を、例えば、ノズルプレート50の下方(圧力室61とは反対の方向)に向けて吐出することができる。
【0084】
以上のいずれかの方法により、液滴噴射ヘッド300を製造することができる。なお、前述の通り、液滴噴射ヘッド300の製造方法は、上述の製造方法に限定されない。
【0085】
以上によって、本実施形態に係る液滴噴射ヘッドの製造方法によれば、ノズルプレート50の製造方法において、ガラスを用い、マスク工程やドライエッチング工程を必要とせず、ノズル孔が吐出により適したテーパー面を有するノズルプレートを、より簡便に製造することができる。
【0086】
3. 液滴噴射装置
次に、本実施形態に係る液滴噴射ヘッドの製造方法によって製造された液滴噴射ヘッドを有する液滴噴射装置1000について説明する。ここでは、液滴噴射装置1000がインクジェットプリンターである場合について説明する。図7は、液滴噴射装置1000を模式的に示す斜視図である。
【0087】
液滴噴射装置1000は、ヘッドユニット1030と、駆動部1010と、制御部1060と、を含む。また、液滴噴射装置1000は、装置本体1020と、給紙部1050と、記録用紙Pを設置するトレイ1021と、記録用紙Pを排出する排出口1022と、装置本体1020の上面に配置された操作パネル1070と、を含むことができる。
【0088】
ヘッドユニット1030は、例えば、上述した液滴噴射ヘッド300から構成されるインクジェット式記録ヘッド(以下単に「ヘッド」ともいう)を有する。ヘッドユニット1030は、さらに、ヘッドにインクを供給するインクカートリッジ1031と、ヘッドおよびインクカートリッジ1031を搭載した運搬部(キャリッジ)1032と、を備える。
【0089】
駆動部1010は、ヘッドユニット1030を往復動させることができる。駆動部1010は、ヘッドユニット1030の駆動源となるキャリッジモータ1041と、キャリッジモータ1041の回転を受けて、ヘッドユニット1030を往復動させる往復動機構1042と、を有する。
【0090】
往復動機構1042は、その両端がフレーム(図示せず)に支持されたキャリッジガイド軸1044と、キャリッジガイド軸1044と平行に延在するタイミングベルト1043と、を備える。キャリッジガイド軸1044は、キャリッジ1032が自在に往復動できるようにしながら、キャリッジ1032を支持している。さらに、キャリッジ1032は、タイミングベルト1043の一部に固定されている。キャリッジモータ1041の作動により、タイミングベルト1043を走行させると、キャリッジガイド軸1044に導かれて、ヘッドユニット1030が往復動する。この往復動の際に、ヘッドから適宜インクが吐出され、記録用紙Pへの印刷が行われる。
【0091】
制御部1060は、ヘッドユニット1030、駆動部1010および給紙部1050を制御することができる。
【0092】
給紙部1050は、記録用紙Pをトレイ1021からヘッドユニット1030側へ送り込むことができる。給紙部1050は、その駆動源となる給紙モータ1051と、給紙モータ1051の作動により回転する給紙ローラ1052と、を備える。給紙ローラ1052は、記録用紙Pの送り経路を挟んで上下に対向する従動ローラ1052aおよび駆動ローラ1052bを備える。駆動ローラ1052bは、給紙モータ1051に連結されている。制御部1060によって供紙部1050が駆動されると、記録用紙Pは、ヘッドユニット1030の下方を通過するように送られる。
【0093】
ヘッドユニット1030、駆動部1010、制御部1060および給紙部1050は、装置本体1020の内部に設けられている。
【0094】
液滴噴射装置1000では、本発明に係る液滴噴射ヘッド300を有することができる。本発明に係る液滴噴射ヘッド300は、上述のように、本実施形態に係るノズルプレートの製造方法によって製造されたノズルプレート50を有する。
【0095】
なお、上述した例では、液滴噴射装置1000がインクジェットプリンターである場合について説明したが、本発明のプリンタは、工業的な液体吐出装置として用いられることもできる。この場合に吐出される液体(液状材料)としては、各種の機能性材料を溶媒や分散媒によって適当な粘度に調整したもの、または、メタルフレーク等を含むものなどを用いることができる。
【0096】
上記のように、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは、当業者には容易に理解できよう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0097】
1 エッチングバリア層、10 ガラス基板、11 第1の領域、12 第2の領域、
13 ノズル孔、13a 開口部、13b 開口部、13c 内面、16 改質部分、
20 光学素子、30 レーザービーム、36 焦点領域、50 ノズルプレート、
60 基板、60a 基板、61 圧力室、61a 領域、62 壁部、
63 供給路、64 連通路、65 マニュホールド、70 振動板、71 開口部、
80 圧電素子、81 第1電極、81a 電気的接続部、82 圧電体層、
83 第2電極、90 封止板、91 封止領域、92 開口部、95 可撓膜、
96 固定膜、97 開口部、110 第1の方向、120 第2の方向、
200 駆動回路、210 リード部、300 液滴噴射ヘッド、
1000 液滴噴射装置、1010 駆動部、1020 装置本体、1021 トレイ、
1022 排出口、1030 ヘッドユニット、1031 インクカートリッジ、
1032 キャリッジ、1041 キャリッジモータ、1042 往復動機構、
1043 タイミングベルト、1044 キャリッジガイド軸、1050 給紙部、
1051 給紙モータ、1052 給紙ローラ、1060 制御部、
1070 操作パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板にレーザービームを照射し、前記ガラス基板の前記レーザービームが集光した焦点領域において、前記ガラス基板の改質部分を形成する照射工程と、
前記ガラス基板のノズル孔が形成される領域が、前記改質部分となるように、前記レーザービームを前記ガラス基板に対して相対的に走査する走査工程と、
前記ガラス基板をウェットエッチングし、前記改質部分を除去するエッチング工程と、
前記ガラス基板を所望の厚みまで研削し、ノズル孔を有するノズルプレートを形成する研削工程と、
を含む、ノズルプレートの製造方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記照射工程における前記レーザービームの照射条件は、波長が、400nm以上、10000nm以下であって、パルス幅が、10フェトム秒以上、1000フェトム秒以下である、ノズルプレートの製造方法。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記ノズル孔の内面は、テーパー面を有する、ノズルプレートの製造方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項において、
前記エッチング工程におけるエッチャントは、フッ酸を含み、前記フッ酸の濃度は、20%以上、35%以下である、ノズルプレートの製造方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項において、
前記走査工程は、前記ガラス基板の厚み方向において、前記焦点領域の位置を変更する工程と、前記厚み方向の垂直方向において、前記焦点領域の位置を変更する工程と、を含む、ノズルプレートの製造方法。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか1項において、
前記走査工程は、前記焦点領域のスポット径を変化させながら、前記ガラス基板の厚み方向において、前記焦点領域の位置を変更する工程を含む、ノズルプレートの製造方法。
【請求項7】
請求項6において、
前記走査工程において、前記焦点領域のスポット径は、Φ1μm以上、Φ10μm以下の範囲で変化する、ノズルプレートの製造方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載のノズルプレートの製造方法を含む、液滴噴射ヘッドの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−178010(P2011−178010A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−43845(P2010−43845)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】