ノズル
【課題】燃料温度変化に伴う燃料通路の全圧力損失の変動を抑制して、燃料温度変化による燃料噴射量変動を抑制可能なノズルを提供する。
【解決手段】ニードル3の平面部3aおよびガイド孔2aにより囲まれる空間として形成される燃料通路Pにおいて、平面部3aに、燃料通路Pに対して凹である凹部3cを形成した。燃料流れが燃料通路Pに至ると、凹部3cの端面3c1において燃料通路Pの断面積が急拡大するために、端面3c1の近くに渦が発生する。それにより、燃料通路P内の流れ状態は乱流となる。これにより、燃料温度上昇に伴う燃料通路Pの全圧力損失の変化度合いを小さくして、ニードル3の弁部3b付近の燃料圧力変動を抑制することができる。したがって、従来のノズル102における問題、すなわち燃料温度が上昇するに連れて燃料噴射量が増加し、エンジンのトルク特性や排気成分が変化するという問題の発生を防止することができる。
【解決手段】ニードル3の平面部3aおよびガイド孔2aにより囲まれる空間として形成される燃料通路Pにおいて、平面部3aに、燃料通路Pに対して凹である凹部3cを形成した。燃料流れが燃料通路Pに至ると、凹部3cの端面3c1において燃料通路Pの断面積が急拡大するために、端面3c1の近くに渦が発生する。それにより、燃料通路P内の流れ状態は乱流となる。これにより、燃料温度上昇に伴う燃料通路Pの全圧力損失の変化度合いを小さくして、ニードル3の弁部3b付近の燃料圧力変動を抑制することができる。したがって、従来のノズル102における問題、すなわち燃料温度が上昇するに連れて燃料噴射量が増加し、エンジンのトルク特性や排気成分が変化するという問題の発生を防止することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関に取り付けられてその燃焼室内に燃料を噴射するためのノズルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のノズルとして、たとえば燃料噴射装置であるインジェクタに装着されて、ボディ内に軸方向に移動自在に嵌合されたニードルを移動させることにより、ボディの先端部に形成された噴孔からの燃料噴射を制御するノズルが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1におけるノズルは、先端に設けられた噴孔と、この噴孔に連通するサック室と、サックに連通するガイド孔とを備えたボディと、ガイド孔内にガイド孔の軸方向に摺動自在に嵌合されてサック室内とガイド孔内の空間との連通遮断を切り替えるニードルと、を備え、ニードルのガイド孔に嵌合している軸部の外周部には軸部よりも径方向において内側にニードルの軸方向に伸びる平面部が設けられ、ガイド孔とニードルの平面部とにより囲まれる空間がサック室へ燃料を供給する燃料通路を形成している。ボディにはサック室の上流側に弁座が設けられ、ニードルには、この弁座と当接する弁部が設けられている。ニードルには、その両端部に作用する燃料圧力によりニードルの軸方向の力が作用している。ニードルの一端であるサック室側端部においては、弁部に作用する燃料圧力により弁部が弁座から離れる方向の力が作用している。一方、ニードルの他端である弁部と反対側端部においては、端面に作用する燃料圧力により弁部を弁座へ押し付ける方向の力が作用している。
【0004】
ニードルの一端であるサック室側端部に作用する燃料圧力は、常時高圧、たとえばコモンレール圧力と同等の圧力となっている。一方、ニードルにおける弁部と反対側端部である制御側端部に作用する燃料圧力は、コモンレール圧力と同等の高圧および燃料タンク内圧力と同等の低圧のどちらか一方に、電磁弁あるいはピエゾ素子等の電気アクチュエータの作動により切り替えられる。制御側端部圧力が高圧に切り替えられると、弁部が弁座から離れる方向の力よりも弁部を弁座へ押し付ける力が大きくなり、ニードルが移動して弁部が弁座に当接し、サック室内とガイド孔内との連通が遮断されサック室への燃料供給が遮断されるので噴孔から燃料は噴射されない。制御側端部圧力が低圧に切り替えられると、弁部が弁座から離れる方向の力が弁部を弁座へ押し付ける力を上回り、ニードルが移動して弁部が弁座から離れ、サック室内とガイド孔内とが連通してサック室内へ燃料が供給されるので噴孔から燃料が噴射される。
【特許文献1】特開2000−161174号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のノズルにおいて、燃料は、ガイド孔とニードルの平面部とにより囲まれる空間からなる燃料通路を通過してサック室へ供給される。この燃料通路を燃料が流れる際の全圧力損失、すなわち燃料通路の流方向の両端間における圧力損失は、層流損失および乱流損失の和になる。従来のノズルの場合、燃料通路における燃料の流れは層流状態である。したがって、従来のノズルにおいては、燃料通路の全圧力損失は層流損失となっている。層流損失は、燃料通路の断面形状を円環状と近似すると(数1)のように表される。
(数1)12μl/πdh3
ここで、μは燃料の粘性係数、lは燃料通路長さ、πは円周率、dは円環の代表直径、hは円環の幅である。(数1)から明らかなように、燃料の粘性係数が変化すると層流損失の大きさが変化する。
【0006】
ところで、ノズルを通過する燃料温度はエンジンの運転時間経過や運転条件により変化する。たとえば、冬季の寒冷地域において、エンジン始動時には−10℃前後であるが、始動後運転時間が経過するに連れて上昇し、全負荷運転状態では110℃以上に達する。一方、無負荷時、つまりアイドリング運転中においては70℃程度まで低下する。したがって、エンジン運転中においても、70℃〜110℃の間で変動することになる。
【0007】
また、燃料の粘性係数は温度に依存し、燃料温度が高くなるほど粘性係数は低下する。
【0008】
以上から、従来のノズルにおいては、燃料通路の全圧力損失は、燃料温度が上昇するに連れて、燃料の粘性係数が小さくなるので層流損失が減少して、小さくなる。すなわち、ノズルのサック室内の燃料圧力は、燃料温度が上昇するに連れて高くなる。
【0009】
そうすると、ニードルのサック室側端部において燃料圧力により作用する弁部が弁座から離れる方向の力の大きさが増大する。すなわち、燃料温度が上昇するに連れて、ニードルの制御側端部圧力を高圧に切り替えてニードルを弁座に当接させて噴射を停止する際に、ニードルが弁座に向かって移動する動きに対する抵抗が増大することになる。このため、燃料温度が上昇するに連れて、噴孔から燃料噴射が開始してからニードルの弁部がボディの弁座に当接するまでの時間、言い換えると噴孔からの燃料噴射が停止するまでの時間が長くなり、言い換えると、燃料噴射量が増加することになり、エンジンのトルク特性や排気成分が変化するという問題が生じる。
【0010】
本発明は、このような問題に鑑みなされたもので、その目的は、燃料温度変化に伴う燃料通路の全圧力損失の大きさの変動を抑制して、燃料温度変化による燃料噴射量変動を抑制可能なノズルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、先端に設けられた噴孔と、噴孔に連通するサック室と、サックに連通するガイド孔とを備えたボディと、ガイド孔内にガイド孔の軸方向に摺動自在に嵌合されてサック室内とガイド孔内の空間との連通遮断を切り替えるニードルと、を備えたノズルであって、ニードルのガイド孔に嵌合している軸部の外周部には軸部よりも径方向において内側にニードルの軸方向に伸びる平面部が設けられ、ガイド孔とニードルの平面部とにより囲まれる空間がサック室へ燃料を供給する燃料通路を形成し、平面部およびガイド孔のうちで平面部とニードルの径方向において対向する部分である通路部の少なくともどちらか一方に、燃料通路に対して凹である凹部および燃料通路に対して凸である凸部の少なくともどちらか一方を備えることを特徴としている。
【0012】
上述の構成によれば、燃料通路内を燃料が流れる場合、燃料が凹部の開口部を通過するときに、あるいは燃料が凸部を乗り越えるときに、凹部あるいは凸部の下流側に剥離により渦が発生する。これにより、燃料通路内の流れ状態が層流から乱流に変化する。燃料通路の全圧力損失は層流損失および乱流損失の和として表される。このうち層流損失は、燃料温度が上昇すると、それに連れて燃料の粘性係数が小さくなるので減少する。一方、乱流損失は、燃料温度が上昇すると、それに連れて燃料の粘性係数が小さくなり流速が増大するので、凹部あるいは凸部における渦発生が促進されて増大する。すなわち、燃料温度が上昇するに連れて、層流損失は減少していくのに対して乱流損失は反対に増加していく。したがって、燃料温度上昇に伴う全圧力損失の変動割合が従来のノズルの場合に比べて小さくなるので、燃料温度上昇に伴うサック室内燃料圧力の変動割合を従来のノズルの場合に比べて小さくできる。したがって、ニードルの制御側端部圧力を高圧に切り替えてニードルを弁座に当接させて噴射を停止する際に、ニードルが弁座に向かって移動する動きに対する抵抗の大きさを従来のノズルの場合に比べて小さくできる。これにより、燃料温度の変化に伴う、噴孔からの燃料噴射が開始されてからニードルの弁部がボディの弁座に当接して噴孔からの燃料噴射が停止するまでの時間の変動割合を、従来のノズルの場合に比べて小さくすることができる。したがって、燃料温度の変動に伴う燃料噴射量変動を抑制可能なノズルを提供することができる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、凹部および凸部は燃料通路の少なくとも上流側端部近傍に形成されることを特徴としている。
【0014】
このような構成によれば、燃料通路の上流側端部近傍で燃料流れに渦を発生させ、この渦が燃料通路の下流側へ流れていくので、燃料通路の全長にわたって燃料流れを確実に乱流状態とすることができる。したがって、燃料温度の変動に伴う燃料噴射量変動を抑制可能なノズルを提供することができる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、凹部はニードルの軸方向と直交する方向に伸びる断面V字状あるいは断面U字状の溝であることを特徴としている。
【0016】
ニードルの平面部あるいはボディのガイド孔内周へ溝を設ける加工は、通常容易に行うことができる。したがって、燃料温度の変動に伴う燃料噴射量変動を抑制可能なノズルを、そのコスト上昇を抑制しつつ製作することができる。
【0017】
この場合、本発明の請求項4に記載のノズルのように、溝を互いに平行に複数個形成する構成とすれば、燃料通路における燃料流れを乱流状態とするための渦を発生させる部位が増えることになり、燃料温度の変動に伴う燃料噴射量変動を抑制可能なノズルを確実に実現することができる。
【0018】
請求項5に記載の発明は、凹部はその内壁面形状が球面状に形成された穴であることを特徴としている。
【0019】
ニードルの平面部あるいはボディのガイド孔内周へ内壁面形状が球面状の穴を設ける加工は、切削加工あるいは放電除去加工等により容易に行うことができる。したがって、燃料温度の変動に伴う燃料噴射量変動を抑制可能なノズルを、そのコスト上昇を抑制しつつ製作することができる。
【0020】
この場合、本発明の請求項6に記載のノズルのように、穴を複数個形成する構成とすれば、燃料通路における燃料流れを乱流状態とするための渦を発生させる部位が増えることになり、燃料温度の変動に伴う燃料噴射量変動を抑制可能なノズルを確実に実現することができる。
【0021】
請求項7に記載の発明は、凸部はニードルの軸方向と直交する方向に伸びる断面V字状あるいは断面U字状の突出壁であることを特徴としている。
【0022】
ニードルの平面部へ突出壁を設ける加工は、切削加工あるいは放電除去加工等により容易に行うことができる。したがって、燃料温度の変動に伴う燃料噴射量変動を抑制可能なノズルを、そのコスト上昇を抑制しつつ製作することができる。
【0023】
この場合、本発明の請求項8に記載のノズルのように、突出壁を互いに平行に複数個形成する構成とすれば、燃料通路における燃料流れを乱流状態とするための渦を発生させる部位が増えることになり、燃料温度の変動に伴う燃料噴射量変動を抑制可能なノズルを確実に実現することができる。
【0024】
請求項9に記載の発明は、凸部はその外壁面形状が球面状に形成された突起であることを特徴としている。
【0025】
ニードルの平面部へ突起を設ける加工は、切削加工あるいは放電除去加工等により容易に行うことができる。したがって、燃料温度の変動に伴う燃料噴射量変動を抑制可能なノズルを、そのコスト上昇を抑制しつつ製作することができる。
【0026】
この場合、本発明の請求項10に記載のノズルのように、突起を複数個形成する構成とすれば、燃料通路における燃料流れを乱流状態とするための渦を発生させる部位が増えることになり、燃料温度の変動に伴う燃料噴射量変動を抑制可能なノズルを確実に実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明が適用されたノズルの一実施形態をエンジンの燃料噴射弁100に組み込まれたノズル1を例に各図を参照して説明する。
【0028】
(第1実施形態)
燃料噴射弁100は、たとえば、ディーゼルエンジンに搭載されるコモンレール式燃料噴射装置に用いられるものであり、図示しないコモンレールから供給される高圧燃料をエンジンの燃焼室に噴射するものである。
【0029】
燃料噴射弁100は、図1に示すように、ノズル1、プレート7、および、図示しないピエゾアクチュエータ、バルブ装置、ロアボディなどを収容し積層し、リテーニングナット101を図示しないロアボディに締結して形成されている。
【0030】
燃料噴射弁100へは、図示しないコモンレールから図示しない配管を介して高圧燃料が供給されている。
【0031】
ノズル1は、図1に示すように、ボディ2、ニードル3、スプリングシート4、コイルスプリング5およびシリンダ6から構成されている。
【0032】
ボディ2は、図1に示すように、金属材料から直径が段階的に変化する円柱状に形成され、内部にはボディ2の一端側に開口し且つ外周と同軸上のノズル孔2dが形成されている。ボディ2のノズル孔2dの開口端側端面、つまり図1において上側の端面に、図1に示すように、プレート7を密着させて配置することにより、ノズル孔2dは閉ざされた空間となる。ボディ2のノズル孔2dの開口端側端面と反対側の端部、つまり図1において下側の端部には、ノズル孔2d内空間とボディ2の外側空間とを連通する貫通孔である噴孔2cが形成されている。ノズル孔2dには、噴孔2cよりもノズル孔2dの開口端側に、後述するニードル3が当接可能な弁座2bが形成されている。弁座2bは、噴孔2cからノズル孔2dの開口端に向かうに連れてその直径が大きくなる円錐面状に形成されている。ノズル孔2dには、弁座2bよりもノズル孔2dの開口端側に、ニードル3をボディ2の軸方向において摺動自在に嵌合し支持するガイド孔2aが形成されている。ノズル孔2dには、ニードル3、スプリングシート4、コイルスプリング5、およびシリンダ6が収容されている。
【0033】
ニードル3は、金属材料から略円柱状に形成されている。ニードル3は、ボディ2のノズル孔2d内において、図2に示すように、ニードル3の軸部3dがガイド孔2aと軸方向に摺動自在に嵌合しつつ収容されている。ニードル3の噴孔2c側の先端部には、ボディ2の弁座2bと当接可能な弁部3bが設けられている。弁部3bは、ニードル3の軸方向において噴孔2cに向かうに連れて直径が小さくなる円錐面状に形成されている。ボディ2のノズル孔2dにニードル3が嵌合した状態で、弁座2bをなす円錐面と弁部3bをなす円錐面とは互いに同軸上であり、弁座2bをなす円錐面の中心角は弁部3bをなす円錐面の中心角よりも大きく設定されている。ニードル3が噴孔2cに近づくように軸方向に移動すると、やがてニードル3の弁部3bとボディ2の弁座2bが当接する。両者の接触状態は円形の線接触となっている。ニードル3の弁部3bとボディ2の弁座2bとが当接すると、すなわち閉弁状態において、ノズル孔2dの噴孔2cに臨む部分とニードル3とに囲まれた空間として、図1に示すように、サック室Sが形成される。ニードル3の弁部3bがボディ2の弁座2bから離れているとき、すなわち開弁時にはサック室Sはノズル孔2dと連通し、ニードル3の弁部3bとボディ2の弁座2bとが当接している閉弁時にはサック室Sはノズル孔2dから遮断されている。
【0034】
ニードル3の軸部3dの外周部には、軸部3dよりもニードル3の径方向において内側に平面部3aが設けられている。平面部3aは、ニードル3の軸方向において軸部3dの全長に亘って形成されている。すなわち、平面部3aは、軸部3dの外周にたとえば切削加工を施して平面を形成するようにして設けられている。平面部3aは、本発明の第1実施形態によるノズル1においては、図2に示すように、軸部3dの外周に等角度間隔で4面形成されている。つまり、軸部3dを成す円筒面は、4つの平面部3aにより等角度間隔に4分割されている。4分割されたこれらの円筒面がガイド孔2aと嵌合している。
【0035】
ニードル3の平面部3aとボディ2のガイド孔2aとに囲まれる空間、すなわちニードル軸方向断面形状が、図2に示すように、略半月形である空間が燃料通路Pを構成している。後述するプレート7の燃料供給孔7aを介してノズル孔2d内に燃料が流入すると、これらの燃料通路Pも燃料で満たされる。そして、ニードル3が軸方向に移動して開弁状態となると、ノズル孔2d内の燃料はサック室Sから噴孔2cを経てノズル1の外部、つまりエンジンの燃焼室内に噴射される。このとき、プレート7の燃料供給孔7aを介してノズル孔2d内に流入した燃料は、燃料通路Pを流れてサック室Sへ至る。
【0036】
ニードル3の平面部3aには、図1に示すように、燃料通路Pに対して凹である凹部3cが形成されている。凹部3は、図3に示すように、平面部3aよりもニードル3の径方向において内側に形成されている。凹部3cの燃料通路P上流側端部および下流側端部には、図2に示すように、端面3c1、端面3c2がそれぞれ形成されている。
【0037】
ニードル3には、軸部3aよりも軸方向において弁部3bと反対側に、図1に示すように、軸部3a側から順番にスプリングシート4、コイルスプリング5、シリンダ6が直列にニードル3の外側に嵌合されている。ノズル1が燃料噴射弁100に組み付けられた状態においてコイルスプリング5は圧縮状態となっており、その弾性変形反力により、ニードル3の弁部3bがボディ2の弁座2bに当接して閉弁しているとともに、シリンダ6がプレート7に押圧接触している。このとき、ニードル3のプレート7側端面とプレート7との間には、図1に示すように、隙間Cが形成されている。
【0038】
プレート7は、たとえば金属材料により円盤状に形成されている。プレート7には、図1に示すように、燃料供給孔7a、制御孔7b、制御孔7cが形成されている。燃料噴射弁100の完成状態において、燃料供給孔7aは、図1に示すように、ボディ2のノズル孔2dとシリンダ6の外周面との間の空間に連通している。制御孔7bは、図1に示すように、シリンダ6の内周面とニードル3の端面およびプレート7により囲まれた空間Bに連通している。制御孔7cは、図1に示すように、ボディ2のノズル孔2dとシリンダ6の外周面との間の空間に連通している。燃料供給孔7aへは、燃料噴射弁100を構成する図示しないロアボディを介して、図示しないコモンレールから高圧燃料が供給されている。制御孔7bおよび制御孔7cは、燃料噴射弁100を構成する図示しない弁機構に連通している。この弁機構は、燃料噴射弁100を構成する図示しないロアボディを介して、図示しない外部の低圧燃料通路に連通している。また、この弁機構は、燃料噴射弁100を構成する図示しないピエゾアクチュエータにより駆動されて作動する。図示しない弁機構は、図示しないピエゾアクチュエータにより駆動されて、制御孔7bと制御孔7cとを連通する停止モードと、制御孔7bを上述した図示しない外部の低圧燃料通路に連通し且つ制御孔7cを遮断する噴射モードとを切り替えている。
【0039】
停止モードにおいては、制御孔7bと制御孔7cとが連通しているので、空間Bは制御孔7cおよび制御孔7bを介してノズル孔2d内空間に連通している。すなわち、空間B内の燃料圧力は、ノズル孔2d内の燃料圧力、つまり高圧となっている。ここで、停止モード時にニードル3の軸方向に作用する力について説明する。ニードル3には、ニードル3の弁部3b側端面の弁座2bとの当接部よりも外周側部分において燃料圧力から受ける開弁方向(図1において上向き)の力F1、ニードル3のプレート7側端面において燃料圧力から受ける閉弁方向(図1において下向き)の力F2、圧縮状態にあるコイルスプリング4による弾性力から受ける閉弁方向(図1において下向き)の力F3、の3つの力が作用している。これら3つの力F1、F2、F3の間には、(F2+F3>F1)なる関係が成立している。これにより、3つの力の合成力Ftの作用方向は閉弁方向(図1において下向き)となり、ニードル3がボディ2の弁座2bに着座し、噴孔2cからの燃料噴射は行われない。
【0040】
噴射モードにおいては、制御孔7bが図示しない外部の低圧燃料通路に連通し且つ制御孔7cが遮断されている。すなわち、空間Bが制御孔7bを介して外部の低圧燃料通路に連通するので、ニードル3のプレート7側端面において燃料圧力から受ける閉弁方向(図1において下向き)の力が、停止モード時におけるF2よりも減少してF4となる。そうすると、ニードル3に作用する3つの力F1、F4、F3の関係は、(F4+F3<F1)となる。これにより、3つの力の合成力Ftの作用方向は開弁方向(図1において上向き)となり、ニードル3がボディ2の弁座2bから離れて、高圧燃料が燃料通路Pを経てサック室Sへ流入し噴孔2cから噴射される。ここで、ニードル3がボディ2の弁座2bから離れた瞬間に、ニードル3が弁部3b側端部において燃料圧力から受ける開弁方向(図1において上向き)の力は、燃料圧力を受ける面積が弁部3b側端面全体に増えるため、F1からF5へ増大する。したがって、噴射モードの燃料噴射中におけるニードル3に作用する3つの力F5、F4、F3の関係は、(F4+F3<F5>F1)となる。
【0041】
噴射モードで燃料噴射中に、燃料噴射弁100の図示しない弁機構が停止モードに切り替えられると、ニードル3に作用する3つの力F5、F2、F3の関係は、(F2+F3<F5)となり、ニードル3が閉弁方向(図1において下向き)に移動する。さらに、ニードル3が弁座2bに着座すると、ニードル3が弁部3b側端部において燃料圧力から受ける開弁方向(図1において上向き)の力はF5からF1に減少し、ニードル3に作用する3つの力F1、F2、F3の関係は、(F2+F3<F1)となり、閉弁状態が維持される。
【0042】
次に、本発明の第1実施形態によるノズル1の特徴である、燃料通路Pの構成、すなわちニードル3の平面部3aに凹部3cを設けたことの作用および効果について説明する。
【0043】
先ず、図4に示すように、平面部3aに凹部3cが無い場合、つまり従来のノズル102の場合について説明する。従来のノズル102においては、燃料は燃料通路P内を図4中の矢印で示すように流れ、その流れ状態は層流である。燃料通路Pにおける全圧力損失ΔPは、乱流損失LTと層流損失LLの和である。したがって、従来のノズル102においては、燃料通路Pの全圧力損失ΔPは層流損失LLとなる。層流損失LLは、燃料通路の断面形状を円環状と近似すると(数2)のように表される。
(数2)LL=12μl/πdh3
ここで、μは燃料の粘性係数、lは燃料通路長さ、πは円周率、dは円環の代表直径、hは円環の幅である。(数2)によれば、燃料の粘性係数が変化すると層流損失の大きさが変化することがわかる。すなわち、燃料の粘性係数が小さくなるに連れて層流損失LLは減少する。ところで、燃料通路内の燃料温度はエンジンの運転時間経過や運転条件により変化する。たとえば、冬季の寒冷地域において、エンジン始動時には−10℃前後であるが、始動後運転時間が経過するに連れて上昇し、全負荷運転状態では110℃以上に達する。一方、無負荷時、つまりアイドリング運転中においては70℃程度まで低下する。したがって、エンジン運転中においても、70℃〜110℃の間で変動することになる。また、燃料の粘性係数は温度に依存し、燃料温度が高くなるほど粘性係数は低下する。したがって、従来のノズル102においては、図5に示すように、燃料通路の全圧力損失ΔP、つまり層流損失LLは、燃料温度が上昇するに連れて減少し、所定の温度変化に対応する全圧力損失ΔPの変化幅dPが大きくなる。このため、燃料通路のサック室側端部の圧力は、燃料温度が上昇するに連れて、上昇する。これにともなって、ニードルのサック室側端部において燃料圧力により作用する弁部が弁座から離れる方向の力の大きさが増大する。すなわち、燃料温度が上昇するに連れて、ニードルの制御側端部圧力を高圧に切り替えてニードルを弁座に当接させて噴射を停止する際に、ニードルが弁座に向かって移動する動きに対する抵抗が増大することになる。このため、燃料温度が上昇するに連れて、噴孔から燃料噴射が開始してからニードルの弁部がボディの弁座に当接するまでの時間、言い換えると噴孔からの燃料噴射が停止するまでの時間が長くなり、言い換えると、燃料噴射量が増加することになり、エンジンのトルク特性や排気成分が変化するという問題が生じる。
【0044】
これに対して、本発明の第1実施形態によるノズル1の場合、燃料は燃料通路P内を図3中の矢印で示すように流れる。すなわち燃料通路Pを平面部3aに沿ってきた燃料流れは、凹部3cの端面3c1において燃料通路Pの断面積が急拡大するために、端面3c1の近くで、図3に中において矢印で示すように、渦が発生する。それにより、燃料通路P内の流れ状態は乱流となる。この場合、燃料通路Pの全圧力損失ΔPは乱流損失LTと層流損失LLとの和となる。層流損失LLは、先に説明したように、燃料温度が上昇するに連れて減少する。一方、乱流損失LTは、層流損失LLが減少して流速が増大することによって増加する。すなわち、本発明の第1実施形態によるノズル1の場合、燃料温度上昇に連れて層流損失LLは減少するのに対して乱流損失LTは増大する。したがって、両者の和である全圧力損失ΔPは、図6中において一点鎖線で示すように変化し、その所定の温度変化に対応する全圧力損失ΔPの変化幅dPは、従来のノズル102の場合と比べて小さくなる。これにより、燃料温度上昇に伴うニードル3の弁部3b付近の燃料圧力上昇度合いを、従来のノズル102の場合に比べて小さくすることができる。したがって、従来のノズル102における問題、すなわち燃料温度が上昇するに連れて、燃料噴射が停止するまでの時間が長くなって燃料噴射量が増加し、エンジンのトルク特性や排気成分が変化するという問題の発生を防止することができる。
【0045】
また、本発明の第1実施形態によるノズル1においては、凹部3は、燃料通路Pのほぼ全長にわたって設けられている。言い換えると、燃料通路Pの上流側端部近傍には確実に対応して形成されている。これにより、燃料流れが燃料通路Pに至ると直ちに凹部3cにより流路断面積が急拡大して渦が発生し、これらの渦が燃料通路Pの下流側へ流れることで、燃料通路Pのほぼ全域において流れ状態を乱流流れとすることができる。したがって、燃料通路Pにおける全圧力損失ΔPが燃料温度上昇に伴って大きく変動することを抑制することができる。
【0046】
また、本発明の第1実施形態によるノズル1においては、ニードル3が開弁状態のときに、燃料通路P内の燃料流れが凹部3cの端面3c2に衝突することにより、ニードル3に対して閉弁方向(図1において下向き)の力F6が作用する。燃料噴射弁100の図示しない弁機構が噴射モードから停止モードに切り替えられたときのニードル3に作用する各力の関係は、(F2+F3+F6<F5)となる。このように、燃料通路P内の燃料流れが凹部3cの端面3c2に衝突してニードル3に及ぼす力は、ニードル3の閉弁動作を助長する役割を果たすので、これによっても、燃料温度上昇に伴う燃料噴射期間増大を抑制することができる。
【0047】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態によるノズル1は、本発明の第1実施形態によるノズル1に対して燃料通路Pの構成を変更したものである。
【0048】
本発明の第2実施形態によるノズル1においては、凹部として、図7に示すように、ニードル3の軸方向に直交する方向に伸びる断面略U字条の溝3eを複数個、具体的には3本設けている。溝3eは、燃料通路Pの上流側、つまり、図7において上側の端部近傍をはじめとして、燃料通路Pの途中に設けられている。
【0049】
この場合、燃料流れが燃料通路Pに至ると最上流側の溝3e(図7において一番上側の溝3e)により流路断面積が急拡大して渦が発生する。さらに最上流側の溝3eの下流側に位置する2つの溝3eにおいても、同様に渦が発生する。これにより、燃料通路Pのほぼ全域において流れ状態を乱流流れとすることができる。したがって、本発明の第1実施形態によるノズル1の場合と同様に、燃料通路Pにおける全圧力損失ΔPが燃料温度上昇に伴って大きく変動することを抑制することができる。
【0050】
なお、本発明の第2実施形態によるノズル1において、溝3eの断面形状を略U字状としているが、U字状に限定する必要は無く、たとえば、図8(a)に示すようなV字状、あるいは図8(b)に示すような半円形状としてもよい。また、本発明の第2実施形態によるノズル1において、溝3eの個数を3本としているが、3本に限る必要は無く、2本あるいは4本以上であっても良い。
【0051】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態によるノズル1は、本発明の第1実施形態によるノズル1に対して燃料通路Pの構成を変更したものである。
【0052】
本発明の第3実施形態によるノズル1においては、凹部として、図9に示すように、ニードル3の平面部3aに内壁面形状が球面状である穴3fを複数個設けている。複数の穴3fは、燃料通路Pの上流側、つまり、図9において上側の端部近傍をはじめとして、燃料通路Pの途中に至るまで規則的に配置されている。穴3fは、その断面形状が図10に示すように、半円状であり、たとえば、先端が半球状の電極を用いて放電加工等により形成される。
【0053】
この場合、燃料流れが燃料通路Pに至ると最上流側の各穴3f(図9において一番上側の各穴3f)により流路断面積が急拡大して渦が発生する。さらに最上流側の穴3fよりも下流側に位置する各穴3fにおいても、同様に渦が発生する。これにより、燃料通路Pのほぼ全域において流れ状態を乱流流れとすることができる。したがって、本発明の第1実施形態によるノズル1の場合と同様に、燃料通路Pにおける全圧力損失ΔPが燃料温度上昇に伴って大きく変動することを抑制することができる。
【0054】
なお、本発明の第3実施形態によるノズル1において、穴3fの断面形状を半円状としているが、半円状に限定する必要は無く、たとえば、図11(a)に示すようなU字状、あるいは図11(b)に示すようなV字状としてもよい。また、本発明の第3実施形態によるノズル1において、穴3fを燃料通路Pの途中まで設けているが、燃料通路Pの全長にわたって形成してもよい。さらに、穴3fの直径および深さ寸法、個数配置密度等は、適用されるニードル3における燃料流速等に応じて適宜選定されるものである。
【0055】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態によるノズル1は、本発明の第1実施形態によるノズル1に対して燃料通路Pの構成を変更したものである。
【0056】
本発明の第4実施形態によるノズル1においては、ニードル3の平面部3aに、凹部に替えて、燃料通路P側に凸である凸部を形成している。本発明の第4実施形態によるノズル1においては、凸部として、図12に示すように、ニードル3の軸方向と直交する方向に伸びる突起壁3hを複数個、具体的には3列設けている。突起壁3hは、燃料通路Pの上流側、つまり、図12において上側の端部近傍をはじめとして、燃料通路Pの途中に設けられている。突起壁3hの断面形状は、図13に示すように、略U字状である。
【0057】
この場合、燃料流れが燃料通路Pに至ると最上流側の突起壁3h(図12において一番上側の突起壁3h)を乗り越えたところで渦が発生する。さらに最上流側の突起壁3hの下流側に位置する2つの突起壁3hにおいても、同様に渦が発生する。これにより、燃料通路Pのほぼ全域において流れ状態を乱流流れとすることができる。したがって、本発明の第1実施形態によるノズル1の場合と同様に、燃料通路Pにおける全圧力損失ΔPが燃料温度上昇に伴って大きく変動することを抑制することができる。
【0058】
なお、本発明の第4実施形態によるノズル1において、突起壁3hの断面形状を略U字状としているが、略U字状に限定する必要は無く、先に説明した、溝3eおよび穴3fの場合と同様に、半円形状、あるいはV字状等としてもよい。また、本発明の第3実施形態によるノズル1において、突起壁3hの個数を3列としているが、必要に応じて増減してもよい。
【0059】
(第5実施形態)
本発明の第5実施形態によるノズル1は、本発明の第4実施形態によるノズル1に対して燃料通路Pの構成を変更したものである。
【0060】
本発明の第5実施形態によるノズル1においては、ニードル3の平面部3aに形成される凸部として、突起壁3hに替えて、図14に示すように、ニードル3の平面部3aに外壁面形状が球面状の突起3jを複数個設けている。複数の突起3jは、燃料通路Pの上流側、つまり、図14において上側の端部近傍をはじめとして、燃料通路Pの途中に至るまで規則的に配置されている。突起3jは、その断面形状が図15に示すように半円状である。
【0061】
この場合、燃料流れが燃料通路Pに至ると最上流側の各突起3j(図14において一番上側の各突起3j)を乗り越えたところで渦が発生する。さらに最上流側の突起3jの下流側に位置する各突起3jにおいても、同様に渦が発生する。これにより、燃料通路Pのほぼ全域において流れ状態を乱流流れとすることができる。したがって、本発明の第1実施形態によるノズル1の場合と同様に、燃料通路Pにおける全圧力損失ΔPが燃料温度上昇に伴って大きく変動することを抑制することができる。
【0062】
なお、本発明の第5実施形態によるノズル1において、突起3jの断面形状を半円状としているが、半円状に限定する必要は無く、たとえば、U字状、あるいはV字状としてもよい。また、本発明の第5実施形態によるノズル1において、突起3jを燃料通路Pの途中まで設けているが、燃料通路Pの全長にわたって形成してもよい。さらに、突起3jの直径および深さ寸法、個数配置密度等は、適用されるニードル3における燃料流速等に応じて適宜選定されるものである。
【0063】
なお、以上説明した各実施形態およびその変形例等によるノズル1においては、一つのニードル3の平面部3aに凹部のみ、あるいは凸部のみを形成しているが、一つのニードル3の平面部3aに凹部および凸部の両方を混在させて形成してもよい。
【0064】
また、以上説明した各実施形態およびその変形例等によるノズル1においては、燃料通路P側に凹である凹部あるいは凸である凸部を、ニードル3の平面部3aに形成しているが、凹部あるいは凸部を、ボディ2のガイド孔2aに設ける構成としてもよい。さらには、燃料通路P側に凹である凹部あるいは凸である凸部を、ニードル3の平面部3aおよびボディ2のガイド孔2aの両方に設ける構成としてもよい。
【0065】
また、以上説明した各実施形態およびその変形例等によるノズル1が装着された燃料噴射弁100の弁機構(図示せず)を駆動するアクチュエータをピエゾアクチュエータ(図示せず)としたが、他の種類のアクチュエータ、たとえば電磁ソレノイド等であってもよい。
【0066】
また、以上説明した各実施形態およびその変形例等によるノズル1が装着された燃料噴射弁100をコモンレール式燃料噴射装置に用いられるものとしたが、他の種類の燃料噴射装置であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の第1実施形態におけるノズル1を備える燃料噴射弁100の断面図である。
【図2】図1中のII−II線断面図である。
【図3】図1中のIII−III線断面図である。
【図4】従来のノズル102の断面図である。
【図5】燃料通路Pにおける圧力損失と燃料温度との関係を示すグラフである。
【図6】燃料通路Pにおける圧力損失と燃料温度との関係を示すグラフである。
【図7】本発明の第2実施形態におけるノズル1の部分断面図である。
【図8】(a)は、本発明の第2実施形態におけるノズル1の変形例によるノズル1の部分断面図、(b)は、本発明の第2実施形態におけるノズル1の他の変形例によるノズル1の部分断面図である。
【図9】本発明の第3実施形態におけるノズル1のニードル3の部分斜視外観図である。
【図10】図9のX−X線断面図である。
【図11】(a)は、本発明の第3実施形態におけるノズル1の変形例によるノズル1の部分断面図、(b)は、本発明の第3実施形態におけるノズル1の他の変形例によるノズル1の部分断面図である。
【図12】本発明の第4実施形態におけるノズル1のニードル3の部分斜視外観図である。
【図13】図12のXIII−XIII線断面図である。
【図14】本発明の第5実施形態におけるノズル1のニードル3の部分斜視外観図である。
【図15】図12のXV−XV線断面図である。
【符号の説明】
【0068】
1 ノズル
2 ボディ
2a ガイド孔
2b 弁座
2c 噴孔
2d ノズル孔
3 ニードル
3a 平面部
3b 弁部
3c 凹部
3c1、3c2 端面
3d 軸部
3e 溝
3f 穴
3h 突起壁
3j 突起
4 スプリングシート
5 コイルスプリング
6 シリンダ
7 プレート
7a 燃料供給孔
7b 制御孔
7c 制御孔
100 燃料噴射弁
101 リテーニングナット
B 空間
C 隙間
P 燃料通路
S サック室
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関に取り付けられてその燃焼室内に燃料を噴射するためのノズルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のノズルとして、たとえば燃料噴射装置であるインジェクタに装着されて、ボディ内に軸方向に移動自在に嵌合されたニードルを移動させることにより、ボディの先端部に形成された噴孔からの燃料噴射を制御するノズルが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1におけるノズルは、先端に設けられた噴孔と、この噴孔に連通するサック室と、サックに連通するガイド孔とを備えたボディと、ガイド孔内にガイド孔の軸方向に摺動自在に嵌合されてサック室内とガイド孔内の空間との連通遮断を切り替えるニードルと、を備え、ニードルのガイド孔に嵌合している軸部の外周部には軸部よりも径方向において内側にニードルの軸方向に伸びる平面部が設けられ、ガイド孔とニードルの平面部とにより囲まれる空間がサック室へ燃料を供給する燃料通路を形成している。ボディにはサック室の上流側に弁座が設けられ、ニードルには、この弁座と当接する弁部が設けられている。ニードルには、その両端部に作用する燃料圧力によりニードルの軸方向の力が作用している。ニードルの一端であるサック室側端部においては、弁部に作用する燃料圧力により弁部が弁座から離れる方向の力が作用している。一方、ニードルの他端である弁部と反対側端部においては、端面に作用する燃料圧力により弁部を弁座へ押し付ける方向の力が作用している。
【0004】
ニードルの一端であるサック室側端部に作用する燃料圧力は、常時高圧、たとえばコモンレール圧力と同等の圧力となっている。一方、ニードルにおける弁部と反対側端部である制御側端部に作用する燃料圧力は、コモンレール圧力と同等の高圧および燃料タンク内圧力と同等の低圧のどちらか一方に、電磁弁あるいはピエゾ素子等の電気アクチュエータの作動により切り替えられる。制御側端部圧力が高圧に切り替えられると、弁部が弁座から離れる方向の力よりも弁部を弁座へ押し付ける力が大きくなり、ニードルが移動して弁部が弁座に当接し、サック室内とガイド孔内との連通が遮断されサック室への燃料供給が遮断されるので噴孔から燃料は噴射されない。制御側端部圧力が低圧に切り替えられると、弁部が弁座から離れる方向の力が弁部を弁座へ押し付ける力を上回り、ニードルが移動して弁部が弁座から離れ、サック室内とガイド孔内とが連通してサック室内へ燃料が供給されるので噴孔から燃料が噴射される。
【特許文献1】特開2000−161174号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のノズルにおいて、燃料は、ガイド孔とニードルの平面部とにより囲まれる空間からなる燃料通路を通過してサック室へ供給される。この燃料通路を燃料が流れる際の全圧力損失、すなわち燃料通路の流方向の両端間における圧力損失は、層流損失および乱流損失の和になる。従来のノズルの場合、燃料通路における燃料の流れは層流状態である。したがって、従来のノズルにおいては、燃料通路の全圧力損失は層流損失となっている。層流損失は、燃料通路の断面形状を円環状と近似すると(数1)のように表される。
(数1)12μl/πdh3
ここで、μは燃料の粘性係数、lは燃料通路長さ、πは円周率、dは円環の代表直径、hは円環の幅である。(数1)から明らかなように、燃料の粘性係数が変化すると層流損失の大きさが変化する。
【0006】
ところで、ノズルを通過する燃料温度はエンジンの運転時間経過や運転条件により変化する。たとえば、冬季の寒冷地域において、エンジン始動時には−10℃前後であるが、始動後運転時間が経過するに連れて上昇し、全負荷運転状態では110℃以上に達する。一方、無負荷時、つまりアイドリング運転中においては70℃程度まで低下する。したがって、エンジン運転中においても、70℃〜110℃の間で変動することになる。
【0007】
また、燃料の粘性係数は温度に依存し、燃料温度が高くなるほど粘性係数は低下する。
【0008】
以上から、従来のノズルにおいては、燃料通路の全圧力損失は、燃料温度が上昇するに連れて、燃料の粘性係数が小さくなるので層流損失が減少して、小さくなる。すなわち、ノズルのサック室内の燃料圧力は、燃料温度が上昇するに連れて高くなる。
【0009】
そうすると、ニードルのサック室側端部において燃料圧力により作用する弁部が弁座から離れる方向の力の大きさが増大する。すなわち、燃料温度が上昇するに連れて、ニードルの制御側端部圧力を高圧に切り替えてニードルを弁座に当接させて噴射を停止する際に、ニードルが弁座に向かって移動する動きに対する抵抗が増大することになる。このため、燃料温度が上昇するに連れて、噴孔から燃料噴射が開始してからニードルの弁部がボディの弁座に当接するまでの時間、言い換えると噴孔からの燃料噴射が停止するまでの時間が長くなり、言い換えると、燃料噴射量が増加することになり、エンジンのトルク特性や排気成分が変化するという問題が生じる。
【0010】
本発明は、このような問題に鑑みなされたもので、その目的は、燃料温度変化に伴う燃料通路の全圧力損失の大きさの変動を抑制して、燃料温度変化による燃料噴射量変動を抑制可能なノズルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、先端に設けられた噴孔と、噴孔に連通するサック室と、サックに連通するガイド孔とを備えたボディと、ガイド孔内にガイド孔の軸方向に摺動自在に嵌合されてサック室内とガイド孔内の空間との連通遮断を切り替えるニードルと、を備えたノズルであって、ニードルのガイド孔に嵌合している軸部の外周部には軸部よりも径方向において内側にニードルの軸方向に伸びる平面部が設けられ、ガイド孔とニードルの平面部とにより囲まれる空間がサック室へ燃料を供給する燃料通路を形成し、平面部およびガイド孔のうちで平面部とニードルの径方向において対向する部分である通路部の少なくともどちらか一方に、燃料通路に対して凹である凹部および燃料通路に対して凸である凸部の少なくともどちらか一方を備えることを特徴としている。
【0012】
上述の構成によれば、燃料通路内を燃料が流れる場合、燃料が凹部の開口部を通過するときに、あるいは燃料が凸部を乗り越えるときに、凹部あるいは凸部の下流側に剥離により渦が発生する。これにより、燃料通路内の流れ状態が層流から乱流に変化する。燃料通路の全圧力損失は層流損失および乱流損失の和として表される。このうち層流損失は、燃料温度が上昇すると、それに連れて燃料の粘性係数が小さくなるので減少する。一方、乱流損失は、燃料温度が上昇すると、それに連れて燃料の粘性係数が小さくなり流速が増大するので、凹部あるいは凸部における渦発生が促進されて増大する。すなわち、燃料温度が上昇するに連れて、層流損失は減少していくのに対して乱流損失は反対に増加していく。したがって、燃料温度上昇に伴う全圧力損失の変動割合が従来のノズルの場合に比べて小さくなるので、燃料温度上昇に伴うサック室内燃料圧力の変動割合を従来のノズルの場合に比べて小さくできる。したがって、ニードルの制御側端部圧力を高圧に切り替えてニードルを弁座に当接させて噴射を停止する際に、ニードルが弁座に向かって移動する動きに対する抵抗の大きさを従来のノズルの場合に比べて小さくできる。これにより、燃料温度の変化に伴う、噴孔からの燃料噴射が開始されてからニードルの弁部がボディの弁座に当接して噴孔からの燃料噴射が停止するまでの時間の変動割合を、従来のノズルの場合に比べて小さくすることができる。したがって、燃料温度の変動に伴う燃料噴射量変動を抑制可能なノズルを提供することができる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、凹部および凸部は燃料通路の少なくとも上流側端部近傍に形成されることを特徴としている。
【0014】
このような構成によれば、燃料通路の上流側端部近傍で燃料流れに渦を発生させ、この渦が燃料通路の下流側へ流れていくので、燃料通路の全長にわたって燃料流れを確実に乱流状態とすることができる。したがって、燃料温度の変動に伴う燃料噴射量変動を抑制可能なノズルを提供することができる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、凹部はニードルの軸方向と直交する方向に伸びる断面V字状あるいは断面U字状の溝であることを特徴としている。
【0016】
ニードルの平面部あるいはボディのガイド孔内周へ溝を設ける加工は、通常容易に行うことができる。したがって、燃料温度の変動に伴う燃料噴射量変動を抑制可能なノズルを、そのコスト上昇を抑制しつつ製作することができる。
【0017】
この場合、本発明の請求項4に記載のノズルのように、溝を互いに平行に複数個形成する構成とすれば、燃料通路における燃料流れを乱流状態とするための渦を発生させる部位が増えることになり、燃料温度の変動に伴う燃料噴射量変動を抑制可能なノズルを確実に実現することができる。
【0018】
請求項5に記載の発明は、凹部はその内壁面形状が球面状に形成された穴であることを特徴としている。
【0019】
ニードルの平面部あるいはボディのガイド孔内周へ内壁面形状が球面状の穴を設ける加工は、切削加工あるいは放電除去加工等により容易に行うことができる。したがって、燃料温度の変動に伴う燃料噴射量変動を抑制可能なノズルを、そのコスト上昇を抑制しつつ製作することができる。
【0020】
この場合、本発明の請求項6に記載のノズルのように、穴を複数個形成する構成とすれば、燃料通路における燃料流れを乱流状態とするための渦を発生させる部位が増えることになり、燃料温度の変動に伴う燃料噴射量変動を抑制可能なノズルを確実に実現することができる。
【0021】
請求項7に記載の発明は、凸部はニードルの軸方向と直交する方向に伸びる断面V字状あるいは断面U字状の突出壁であることを特徴としている。
【0022】
ニードルの平面部へ突出壁を設ける加工は、切削加工あるいは放電除去加工等により容易に行うことができる。したがって、燃料温度の変動に伴う燃料噴射量変動を抑制可能なノズルを、そのコスト上昇を抑制しつつ製作することができる。
【0023】
この場合、本発明の請求項8に記載のノズルのように、突出壁を互いに平行に複数個形成する構成とすれば、燃料通路における燃料流れを乱流状態とするための渦を発生させる部位が増えることになり、燃料温度の変動に伴う燃料噴射量変動を抑制可能なノズルを確実に実現することができる。
【0024】
請求項9に記載の発明は、凸部はその外壁面形状が球面状に形成された突起であることを特徴としている。
【0025】
ニードルの平面部へ突起を設ける加工は、切削加工あるいは放電除去加工等により容易に行うことができる。したがって、燃料温度の変動に伴う燃料噴射量変動を抑制可能なノズルを、そのコスト上昇を抑制しつつ製作することができる。
【0026】
この場合、本発明の請求項10に記載のノズルのように、突起を複数個形成する構成とすれば、燃料通路における燃料流れを乱流状態とするための渦を発生させる部位が増えることになり、燃料温度の変動に伴う燃料噴射量変動を抑制可能なノズルを確実に実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明が適用されたノズルの一実施形態をエンジンの燃料噴射弁100に組み込まれたノズル1を例に各図を参照して説明する。
【0028】
(第1実施形態)
燃料噴射弁100は、たとえば、ディーゼルエンジンに搭載されるコモンレール式燃料噴射装置に用いられるものであり、図示しないコモンレールから供給される高圧燃料をエンジンの燃焼室に噴射するものである。
【0029】
燃料噴射弁100は、図1に示すように、ノズル1、プレート7、および、図示しないピエゾアクチュエータ、バルブ装置、ロアボディなどを収容し積層し、リテーニングナット101を図示しないロアボディに締結して形成されている。
【0030】
燃料噴射弁100へは、図示しないコモンレールから図示しない配管を介して高圧燃料が供給されている。
【0031】
ノズル1は、図1に示すように、ボディ2、ニードル3、スプリングシート4、コイルスプリング5およびシリンダ6から構成されている。
【0032】
ボディ2は、図1に示すように、金属材料から直径が段階的に変化する円柱状に形成され、内部にはボディ2の一端側に開口し且つ外周と同軸上のノズル孔2dが形成されている。ボディ2のノズル孔2dの開口端側端面、つまり図1において上側の端面に、図1に示すように、プレート7を密着させて配置することにより、ノズル孔2dは閉ざされた空間となる。ボディ2のノズル孔2dの開口端側端面と反対側の端部、つまり図1において下側の端部には、ノズル孔2d内空間とボディ2の外側空間とを連通する貫通孔である噴孔2cが形成されている。ノズル孔2dには、噴孔2cよりもノズル孔2dの開口端側に、後述するニードル3が当接可能な弁座2bが形成されている。弁座2bは、噴孔2cからノズル孔2dの開口端に向かうに連れてその直径が大きくなる円錐面状に形成されている。ノズル孔2dには、弁座2bよりもノズル孔2dの開口端側に、ニードル3をボディ2の軸方向において摺動自在に嵌合し支持するガイド孔2aが形成されている。ノズル孔2dには、ニードル3、スプリングシート4、コイルスプリング5、およびシリンダ6が収容されている。
【0033】
ニードル3は、金属材料から略円柱状に形成されている。ニードル3は、ボディ2のノズル孔2d内において、図2に示すように、ニードル3の軸部3dがガイド孔2aと軸方向に摺動自在に嵌合しつつ収容されている。ニードル3の噴孔2c側の先端部には、ボディ2の弁座2bと当接可能な弁部3bが設けられている。弁部3bは、ニードル3の軸方向において噴孔2cに向かうに連れて直径が小さくなる円錐面状に形成されている。ボディ2のノズル孔2dにニードル3が嵌合した状態で、弁座2bをなす円錐面と弁部3bをなす円錐面とは互いに同軸上であり、弁座2bをなす円錐面の中心角は弁部3bをなす円錐面の中心角よりも大きく設定されている。ニードル3が噴孔2cに近づくように軸方向に移動すると、やがてニードル3の弁部3bとボディ2の弁座2bが当接する。両者の接触状態は円形の線接触となっている。ニードル3の弁部3bとボディ2の弁座2bとが当接すると、すなわち閉弁状態において、ノズル孔2dの噴孔2cに臨む部分とニードル3とに囲まれた空間として、図1に示すように、サック室Sが形成される。ニードル3の弁部3bがボディ2の弁座2bから離れているとき、すなわち開弁時にはサック室Sはノズル孔2dと連通し、ニードル3の弁部3bとボディ2の弁座2bとが当接している閉弁時にはサック室Sはノズル孔2dから遮断されている。
【0034】
ニードル3の軸部3dの外周部には、軸部3dよりもニードル3の径方向において内側に平面部3aが設けられている。平面部3aは、ニードル3の軸方向において軸部3dの全長に亘って形成されている。すなわち、平面部3aは、軸部3dの外周にたとえば切削加工を施して平面を形成するようにして設けられている。平面部3aは、本発明の第1実施形態によるノズル1においては、図2に示すように、軸部3dの外周に等角度間隔で4面形成されている。つまり、軸部3dを成す円筒面は、4つの平面部3aにより等角度間隔に4分割されている。4分割されたこれらの円筒面がガイド孔2aと嵌合している。
【0035】
ニードル3の平面部3aとボディ2のガイド孔2aとに囲まれる空間、すなわちニードル軸方向断面形状が、図2に示すように、略半月形である空間が燃料通路Pを構成している。後述するプレート7の燃料供給孔7aを介してノズル孔2d内に燃料が流入すると、これらの燃料通路Pも燃料で満たされる。そして、ニードル3が軸方向に移動して開弁状態となると、ノズル孔2d内の燃料はサック室Sから噴孔2cを経てノズル1の外部、つまりエンジンの燃焼室内に噴射される。このとき、プレート7の燃料供給孔7aを介してノズル孔2d内に流入した燃料は、燃料通路Pを流れてサック室Sへ至る。
【0036】
ニードル3の平面部3aには、図1に示すように、燃料通路Pに対して凹である凹部3cが形成されている。凹部3は、図3に示すように、平面部3aよりもニードル3の径方向において内側に形成されている。凹部3cの燃料通路P上流側端部および下流側端部には、図2に示すように、端面3c1、端面3c2がそれぞれ形成されている。
【0037】
ニードル3には、軸部3aよりも軸方向において弁部3bと反対側に、図1に示すように、軸部3a側から順番にスプリングシート4、コイルスプリング5、シリンダ6が直列にニードル3の外側に嵌合されている。ノズル1が燃料噴射弁100に組み付けられた状態においてコイルスプリング5は圧縮状態となっており、その弾性変形反力により、ニードル3の弁部3bがボディ2の弁座2bに当接して閉弁しているとともに、シリンダ6がプレート7に押圧接触している。このとき、ニードル3のプレート7側端面とプレート7との間には、図1に示すように、隙間Cが形成されている。
【0038】
プレート7は、たとえば金属材料により円盤状に形成されている。プレート7には、図1に示すように、燃料供給孔7a、制御孔7b、制御孔7cが形成されている。燃料噴射弁100の完成状態において、燃料供給孔7aは、図1に示すように、ボディ2のノズル孔2dとシリンダ6の外周面との間の空間に連通している。制御孔7bは、図1に示すように、シリンダ6の内周面とニードル3の端面およびプレート7により囲まれた空間Bに連通している。制御孔7cは、図1に示すように、ボディ2のノズル孔2dとシリンダ6の外周面との間の空間に連通している。燃料供給孔7aへは、燃料噴射弁100を構成する図示しないロアボディを介して、図示しないコモンレールから高圧燃料が供給されている。制御孔7bおよび制御孔7cは、燃料噴射弁100を構成する図示しない弁機構に連通している。この弁機構は、燃料噴射弁100を構成する図示しないロアボディを介して、図示しない外部の低圧燃料通路に連通している。また、この弁機構は、燃料噴射弁100を構成する図示しないピエゾアクチュエータにより駆動されて作動する。図示しない弁機構は、図示しないピエゾアクチュエータにより駆動されて、制御孔7bと制御孔7cとを連通する停止モードと、制御孔7bを上述した図示しない外部の低圧燃料通路に連通し且つ制御孔7cを遮断する噴射モードとを切り替えている。
【0039】
停止モードにおいては、制御孔7bと制御孔7cとが連通しているので、空間Bは制御孔7cおよび制御孔7bを介してノズル孔2d内空間に連通している。すなわち、空間B内の燃料圧力は、ノズル孔2d内の燃料圧力、つまり高圧となっている。ここで、停止モード時にニードル3の軸方向に作用する力について説明する。ニードル3には、ニードル3の弁部3b側端面の弁座2bとの当接部よりも外周側部分において燃料圧力から受ける開弁方向(図1において上向き)の力F1、ニードル3のプレート7側端面において燃料圧力から受ける閉弁方向(図1において下向き)の力F2、圧縮状態にあるコイルスプリング4による弾性力から受ける閉弁方向(図1において下向き)の力F3、の3つの力が作用している。これら3つの力F1、F2、F3の間には、(F2+F3>F1)なる関係が成立している。これにより、3つの力の合成力Ftの作用方向は閉弁方向(図1において下向き)となり、ニードル3がボディ2の弁座2bに着座し、噴孔2cからの燃料噴射は行われない。
【0040】
噴射モードにおいては、制御孔7bが図示しない外部の低圧燃料通路に連通し且つ制御孔7cが遮断されている。すなわち、空間Bが制御孔7bを介して外部の低圧燃料通路に連通するので、ニードル3のプレート7側端面において燃料圧力から受ける閉弁方向(図1において下向き)の力が、停止モード時におけるF2よりも減少してF4となる。そうすると、ニードル3に作用する3つの力F1、F4、F3の関係は、(F4+F3<F1)となる。これにより、3つの力の合成力Ftの作用方向は開弁方向(図1において上向き)となり、ニードル3がボディ2の弁座2bから離れて、高圧燃料が燃料通路Pを経てサック室Sへ流入し噴孔2cから噴射される。ここで、ニードル3がボディ2の弁座2bから離れた瞬間に、ニードル3が弁部3b側端部において燃料圧力から受ける開弁方向(図1において上向き)の力は、燃料圧力を受ける面積が弁部3b側端面全体に増えるため、F1からF5へ増大する。したがって、噴射モードの燃料噴射中におけるニードル3に作用する3つの力F5、F4、F3の関係は、(F4+F3<F5>F1)となる。
【0041】
噴射モードで燃料噴射中に、燃料噴射弁100の図示しない弁機構が停止モードに切り替えられると、ニードル3に作用する3つの力F5、F2、F3の関係は、(F2+F3<F5)となり、ニードル3が閉弁方向(図1において下向き)に移動する。さらに、ニードル3が弁座2bに着座すると、ニードル3が弁部3b側端部において燃料圧力から受ける開弁方向(図1において上向き)の力はF5からF1に減少し、ニードル3に作用する3つの力F1、F2、F3の関係は、(F2+F3<F1)となり、閉弁状態が維持される。
【0042】
次に、本発明の第1実施形態によるノズル1の特徴である、燃料通路Pの構成、すなわちニードル3の平面部3aに凹部3cを設けたことの作用および効果について説明する。
【0043】
先ず、図4に示すように、平面部3aに凹部3cが無い場合、つまり従来のノズル102の場合について説明する。従来のノズル102においては、燃料は燃料通路P内を図4中の矢印で示すように流れ、その流れ状態は層流である。燃料通路Pにおける全圧力損失ΔPは、乱流損失LTと層流損失LLの和である。したがって、従来のノズル102においては、燃料通路Pの全圧力損失ΔPは層流損失LLとなる。層流損失LLは、燃料通路の断面形状を円環状と近似すると(数2)のように表される。
(数2)LL=12μl/πdh3
ここで、μは燃料の粘性係数、lは燃料通路長さ、πは円周率、dは円環の代表直径、hは円環の幅である。(数2)によれば、燃料の粘性係数が変化すると層流損失の大きさが変化することがわかる。すなわち、燃料の粘性係数が小さくなるに連れて層流損失LLは減少する。ところで、燃料通路内の燃料温度はエンジンの運転時間経過や運転条件により変化する。たとえば、冬季の寒冷地域において、エンジン始動時には−10℃前後であるが、始動後運転時間が経過するに連れて上昇し、全負荷運転状態では110℃以上に達する。一方、無負荷時、つまりアイドリング運転中においては70℃程度まで低下する。したがって、エンジン運転中においても、70℃〜110℃の間で変動することになる。また、燃料の粘性係数は温度に依存し、燃料温度が高くなるほど粘性係数は低下する。したがって、従来のノズル102においては、図5に示すように、燃料通路の全圧力損失ΔP、つまり層流損失LLは、燃料温度が上昇するに連れて減少し、所定の温度変化に対応する全圧力損失ΔPの変化幅dPが大きくなる。このため、燃料通路のサック室側端部の圧力は、燃料温度が上昇するに連れて、上昇する。これにともなって、ニードルのサック室側端部において燃料圧力により作用する弁部が弁座から離れる方向の力の大きさが増大する。すなわち、燃料温度が上昇するに連れて、ニードルの制御側端部圧力を高圧に切り替えてニードルを弁座に当接させて噴射を停止する際に、ニードルが弁座に向かって移動する動きに対する抵抗が増大することになる。このため、燃料温度が上昇するに連れて、噴孔から燃料噴射が開始してからニードルの弁部がボディの弁座に当接するまでの時間、言い換えると噴孔からの燃料噴射が停止するまでの時間が長くなり、言い換えると、燃料噴射量が増加することになり、エンジンのトルク特性や排気成分が変化するという問題が生じる。
【0044】
これに対して、本発明の第1実施形態によるノズル1の場合、燃料は燃料通路P内を図3中の矢印で示すように流れる。すなわち燃料通路Pを平面部3aに沿ってきた燃料流れは、凹部3cの端面3c1において燃料通路Pの断面積が急拡大するために、端面3c1の近くで、図3に中において矢印で示すように、渦が発生する。それにより、燃料通路P内の流れ状態は乱流となる。この場合、燃料通路Pの全圧力損失ΔPは乱流損失LTと層流損失LLとの和となる。層流損失LLは、先に説明したように、燃料温度が上昇するに連れて減少する。一方、乱流損失LTは、層流損失LLが減少して流速が増大することによって増加する。すなわち、本発明の第1実施形態によるノズル1の場合、燃料温度上昇に連れて層流損失LLは減少するのに対して乱流損失LTは増大する。したがって、両者の和である全圧力損失ΔPは、図6中において一点鎖線で示すように変化し、その所定の温度変化に対応する全圧力損失ΔPの変化幅dPは、従来のノズル102の場合と比べて小さくなる。これにより、燃料温度上昇に伴うニードル3の弁部3b付近の燃料圧力上昇度合いを、従来のノズル102の場合に比べて小さくすることができる。したがって、従来のノズル102における問題、すなわち燃料温度が上昇するに連れて、燃料噴射が停止するまでの時間が長くなって燃料噴射量が増加し、エンジンのトルク特性や排気成分が変化するという問題の発生を防止することができる。
【0045】
また、本発明の第1実施形態によるノズル1においては、凹部3は、燃料通路Pのほぼ全長にわたって設けられている。言い換えると、燃料通路Pの上流側端部近傍には確実に対応して形成されている。これにより、燃料流れが燃料通路Pに至ると直ちに凹部3cにより流路断面積が急拡大して渦が発生し、これらの渦が燃料通路Pの下流側へ流れることで、燃料通路Pのほぼ全域において流れ状態を乱流流れとすることができる。したがって、燃料通路Pにおける全圧力損失ΔPが燃料温度上昇に伴って大きく変動することを抑制することができる。
【0046】
また、本発明の第1実施形態によるノズル1においては、ニードル3が開弁状態のときに、燃料通路P内の燃料流れが凹部3cの端面3c2に衝突することにより、ニードル3に対して閉弁方向(図1において下向き)の力F6が作用する。燃料噴射弁100の図示しない弁機構が噴射モードから停止モードに切り替えられたときのニードル3に作用する各力の関係は、(F2+F3+F6<F5)となる。このように、燃料通路P内の燃料流れが凹部3cの端面3c2に衝突してニードル3に及ぼす力は、ニードル3の閉弁動作を助長する役割を果たすので、これによっても、燃料温度上昇に伴う燃料噴射期間増大を抑制することができる。
【0047】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態によるノズル1は、本発明の第1実施形態によるノズル1に対して燃料通路Pの構成を変更したものである。
【0048】
本発明の第2実施形態によるノズル1においては、凹部として、図7に示すように、ニードル3の軸方向に直交する方向に伸びる断面略U字条の溝3eを複数個、具体的には3本設けている。溝3eは、燃料通路Pの上流側、つまり、図7において上側の端部近傍をはじめとして、燃料通路Pの途中に設けられている。
【0049】
この場合、燃料流れが燃料通路Pに至ると最上流側の溝3e(図7において一番上側の溝3e)により流路断面積が急拡大して渦が発生する。さらに最上流側の溝3eの下流側に位置する2つの溝3eにおいても、同様に渦が発生する。これにより、燃料通路Pのほぼ全域において流れ状態を乱流流れとすることができる。したがって、本発明の第1実施形態によるノズル1の場合と同様に、燃料通路Pにおける全圧力損失ΔPが燃料温度上昇に伴って大きく変動することを抑制することができる。
【0050】
なお、本発明の第2実施形態によるノズル1において、溝3eの断面形状を略U字状としているが、U字状に限定する必要は無く、たとえば、図8(a)に示すようなV字状、あるいは図8(b)に示すような半円形状としてもよい。また、本発明の第2実施形態によるノズル1において、溝3eの個数を3本としているが、3本に限る必要は無く、2本あるいは4本以上であっても良い。
【0051】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態によるノズル1は、本発明の第1実施形態によるノズル1に対して燃料通路Pの構成を変更したものである。
【0052】
本発明の第3実施形態によるノズル1においては、凹部として、図9に示すように、ニードル3の平面部3aに内壁面形状が球面状である穴3fを複数個設けている。複数の穴3fは、燃料通路Pの上流側、つまり、図9において上側の端部近傍をはじめとして、燃料通路Pの途中に至るまで規則的に配置されている。穴3fは、その断面形状が図10に示すように、半円状であり、たとえば、先端が半球状の電極を用いて放電加工等により形成される。
【0053】
この場合、燃料流れが燃料通路Pに至ると最上流側の各穴3f(図9において一番上側の各穴3f)により流路断面積が急拡大して渦が発生する。さらに最上流側の穴3fよりも下流側に位置する各穴3fにおいても、同様に渦が発生する。これにより、燃料通路Pのほぼ全域において流れ状態を乱流流れとすることができる。したがって、本発明の第1実施形態によるノズル1の場合と同様に、燃料通路Pにおける全圧力損失ΔPが燃料温度上昇に伴って大きく変動することを抑制することができる。
【0054】
なお、本発明の第3実施形態によるノズル1において、穴3fの断面形状を半円状としているが、半円状に限定する必要は無く、たとえば、図11(a)に示すようなU字状、あるいは図11(b)に示すようなV字状としてもよい。また、本発明の第3実施形態によるノズル1において、穴3fを燃料通路Pの途中まで設けているが、燃料通路Pの全長にわたって形成してもよい。さらに、穴3fの直径および深さ寸法、個数配置密度等は、適用されるニードル3における燃料流速等に応じて適宜選定されるものである。
【0055】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態によるノズル1は、本発明の第1実施形態によるノズル1に対して燃料通路Pの構成を変更したものである。
【0056】
本発明の第4実施形態によるノズル1においては、ニードル3の平面部3aに、凹部に替えて、燃料通路P側に凸である凸部を形成している。本発明の第4実施形態によるノズル1においては、凸部として、図12に示すように、ニードル3の軸方向と直交する方向に伸びる突起壁3hを複数個、具体的には3列設けている。突起壁3hは、燃料通路Pの上流側、つまり、図12において上側の端部近傍をはじめとして、燃料通路Pの途中に設けられている。突起壁3hの断面形状は、図13に示すように、略U字状である。
【0057】
この場合、燃料流れが燃料通路Pに至ると最上流側の突起壁3h(図12において一番上側の突起壁3h)を乗り越えたところで渦が発生する。さらに最上流側の突起壁3hの下流側に位置する2つの突起壁3hにおいても、同様に渦が発生する。これにより、燃料通路Pのほぼ全域において流れ状態を乱流流れとすることができる。したがって、本発明の第1実施形態によるノズル1の場合と同様に、燃料通路Pにおける全圧力損失ΔPが燃料温度上昇に伴って大きく変動することを抑制することができる。
【0058】
なお、本発明の第4実施形態によるノズル1において、突起壁3hの断面形状を略U字状としているが、略U字状に限定する必要は無く、先に説明した、溝3eおよび穴3fの場合と同様に、半円形状、あるいはV字状等としてもよい。また、本発明の第3実施形態によるノズル1において、突起壁3hの個数を3列としているが、必要に応じて増減してもよい。
【0059】
(第5実施形態)
本発明の第5実施形態によるノズル1は、本発明の第4実施形態によるノズル1に対して燃料通路Pの構成を変更したものである。
【0060】
本発明の第5実施形態によるノズル1においては、ニードル3の平面部3aに形成される凸部として、突起壁3hに替えて、図14に示すように、ニードル3の平面部3aに外壁面形状が球面状の突起3jを複数個設けている。複数の突起3jは、燃料通路Pの上流側、つまり、図14において上側の端部近傍をはじめとして、燃料通路Pの途中に至るまで規則的に配置されている。突起3jは、その断面形状が図15に示すように半円状である。
【0061】
この場合、燃料流れが燃料通路Pに至ると最上流側の各突起3j(図14において一番上側の各突起3j)を乗り越えたところで渦が発生する。さらに最上流側の突起3jの下流側に位置する各突起3jにおいても、同様に渦が発生する。これにより、燃料通路Pのほぼ全域において流れ状態を乱流流れとすることができる。したがって、本発明の第1実施形態によるノズル1の場合と同様に、燃料通路Pにおける全圧力損失ΔPが燃料温度上昇に伴って大きく変動することを抑制することができる。
【0062】
なお、本発明の第5実施形態によるノズル1において、突起3jの断面形状を半円状としているが、半円状に限定する必要は無く、たとえば、U字状、あるいはV字状としてもよい。また、本発明の第5実施形態によるノズル1において、突起3jを燃料通路Pの途中まで設けているが、燃料通路Pの全長にわたって形成してもよい。さらに、突起3jの直径および深さ寸法、個数配置密度等は、適用されるニードル3における燃料流速等に応じて適宜選定されるものである。
【0063】
なお、以上説明した各実施形態およびその変形例等によるノズル1においては、一つのニードル3の平面部3aに凹部のみ、あるいは凸部のみを形成しているが、一つのニードル3の平面部3aに凹部および凸部の両方を混在させて形成してもよい。
【0064】
また、以上説明した各実施形態およびその変形例等によるノズル1においては、燃料通路P側に凹である凹部あるいは凸である凸部を、ニードル3の平面部3aに形成しているが、凹部あるいは凸部を、ボディ2のガイド孔2aに設ける構成としてもよい。さらには、燃料通路P側に凹である凹部あるいは凸である凸部を、ニードル3の平面部3aおよびボディ2のガイド孔2aの両方に設ける構成としてもよい。
【0065】
また、以上説明した各実施形態およびその変形例等によるノズル1が装着された燃料噴射弁100の弁機構(図示せず)を駆動するアクチュエータをピエゾアクチュエータ(図示せず)としたが、他の種類のアクチュエータ、たとえば電磁ソレノイド等であってもよい。
【0066】
また、以上説明した各実施形態およびその変形例等によるノズル1が装着された燃料噴射弁100をコモンレール式燃料噴射装置に用いられるものとしたが、他の種類の燃料噴射装置であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の第1実施形態におけるノズル1を備える燃料噴射弁100の断面図である。
【図2】図1中のII−II線断面図である。
【図3】図1中のIII−III線断面図である。
【図4】従来のノズル102の断面図である。
【図5】燃料通路Pにおける圧力損失と燃料温度との関係を示すグラフである。
【図6】燃料通路Pにおける圧力損失と燃料温度との関係を示すグラフである。
【図7】本発明の第2実施形態におけるノズル1の部分断面図である。
【図8】(a)は、本発明の第2実施形態におけるノズル1の変形例によるノズル1の部分断面図、(b)は、本発明の第2実施形態におけるノズル1の他の変形例によるノズル1の部分断面図である。
【図9】本発明の第3実施形態におけるノズル1のニードル3の部分斜視外観図である。
【図10】図9のX−X線断面図である。
【図11】(a)は、本発明の第3実施形態におけるノズル1の変形例によるノズル1の部分断面図、(b)は、本発明の第3実施形態におけるノズル1の他の変形例によるノズル1の部分断面図である。
【図12】本発明の第4実施形態におけるノズル1のニードル3の部分斜視外観図である。
【図13】図12のXIII−XIII線断面図である。
【図14】本発明の第5実施形態におけるノズル1のニードル3の部分斜視外観図である。
【図15】図12のXV−XV線断面図である。
【符号の説明】
【0068】
1 ノズル
2 ボディ
2a ガイド孔
2b 弁座
2c 噴孔
2d ノズル孔
3 ニードル
3a 平面部
3b 弁部
3c 凹部
3c1、3c2 端面
3d 軸部
3e 溝
3f 穴
3h 突起壁
3j 突起
4 スプリングシート
5 コイルスプリング
6 シリンダ
7 プレート
7a 燃料供給孔
7b 制御孔
7c 制御孔
100 燃料噴射弁
101 リテーニングナット
B 空間
C 隙間
P 燃料通路
S サック室
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に設けられた噴孔と、前記噴孔に連通するサック室と、前記サックに連通するガイド孔とを備えたボディと、
前記ガイド孔内に前記ガイド孔の軸方向に摺動自在に嵌合されて前記サック室内と前記ガイド孔内の空間との連通遮断を切り替えるニードルと、を備えたノズルであって、
前記ニードルの前記ガイド孔に嵌合している軸部の外周部には前記軸部よりも径方向において内側に前記ニードルの軸方向に伸びる平面部が設けられ、
前記ガイド孔と前記ニードルの前記平面部とにより囲まれる空間が前記サック室へ燃料を供給する燃料通路を形成し、
前記平面部および前記ガイド孔のうちで前記平面部と前記ニードルの径方向において対向する部分である通路部の少なくともどちらか一方に、前記燃料通路に対して凹である凹部および前記燃料通路に対して凸である凸部の少なくともどちらか一方を備えることを特徴とするノズル。
【請求項2】
前記凹部および前記凸部は前記燃料通路の少なくとも上流側端部近傍に形成されることを特徴とする請求項1に記載のノズル。
【請求項3】
前記凹部は前記ニードルの軸方向と直交する方向に伸びる断面V字状あるいは断面U字状の溝であることを特徴とする請求項1または請求項2のどちらか一つに記載のノズル。
【請求項4】
前記溝は互いに平行に複数個形成されることを特徴とする請求項3に記載のノズル。
【請求項5】
前記凹部はその内壁面形状が球面状に形成された穴であることを特徴とする請求項1または請求項2のどちらか一つに記載のノズル。
【請求項6】
前記穴は複数個形成されることを特徴とする請求項5に記載のノズル。
【請求項7】
前記凸部は前記ニードルの軸方向と直交する方向に伸びる断面V字状あるいは断面U字状の突出壁であることを特徴とする請求項1または請求項2のどちらか一つに記載のノズル。
【請求項8】
前記突出壁は互いに平行に複数個形成されることを特徴とする請求項7に記載のノズル。
【請求項9】
前記凸部はその外壁面形状が球面状に形成された突起であることを特徴とする請求項1または請求項2のどちらか一つに記載のノズル。
【請求項10】
前記突起は複数個形成されることを特徴とする請求項9に記載のノズル。
【請求項1】
先端に設けられた噴孔と、前記噴孔に連通するサック室と、前記サックに連通するガイド孔とを備えたボディと、
前記ガイド孔内に前記ガイド孔の軸方向に摺動自在に嵌合されて前記サック室内と前記ガイド孔内の空間との連通遮断を切り替えるニードルと、を備えたノズルであって、
前記ニードルの前記ガイド孔に嵌合している軸部の外周部には前記軸部よりも径方向において内側に前記ニードルの軸方向に伸びる平面部が設けられ、
前記ガイド孔と前記ニードルの前記平面部とにより囲まれる空間が前記サック室へ燃料を供給する燃料通路を形成し、
前記平面部および前記ガイド孔のうちで前記平面部と前記ニードルの径方向において対向する部分である通路部の少なくともどちらか一方に、前記燃料通路に対して凹である凹部および前記燃料通路に対して凸である凸部の少なくともどちらか一方を備えることを特徴とするノズル。
【請求項2】
前記凹部および前記凸部は前記燃料通路の少なくとも上流側端部近傍に形成されることを特徴とする請求項1に記載のノズル。
【請求項3】
前記凹部は前記ニードルの軸方向と直交する方向に伸びる断面V字状あるいは断面U字状の溝であることを特徴とする請求項1または請求項2のどちらか一つに記載のノズル。
【請求項4】
前記溝は互いに平行に複数個形成されることを特徴とする請求項3に記載のノズル。
【請求項5】
前記凹部はその内壁面形状が球面状に形成された穴であることを特徴とする請求項1または請求項2のどちらか一つに記載のノズル。
【請求項6】
前記穴は複数個形成されることを特徴とする請求項5に記載のノズル。
【請求項7】
前記凸部は前記ニードルの軸方向と直交する方向に伸びる断面V字状あるいは断面U字状の突出壁であることを特徴とする請求項1または請求項2のどちらか一つに記載のノズル。
【請求項8】
前記突出壁は互いに平行に複数個形成されることを特徴とする請求項7に記載のノズル。
【請求項9】
前記凸部はその外壁面形状が球面状に形成された突起であることを特徴とする請求項1または請求項2のどちらか一つに記載のノズル。
【請求項10】
前記突起は複数個形成されることを特徴とする請求項9に記載のノズル。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2009−115000(P2009−115000A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−290064(P2007−290064)
【出願日】平成19年11月7日(2007.11.7)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月7日(2007.11.7)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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