説明

ノンスラッジ高速排水処理システム

【課題】活性汚泥に替わる排水処理システムを提供する。
【解決手段】強力酸化分解菌群、高濃度酸素提供手段、および固液分離手段を備えるノンスラッジ高速排水処理システム。上記高濃度酸素提供手段は、酸素提供手段、および微細気泡発生手段を備え得る。上記微細気泡発生手段は、約3μmを超えない直径の気泡を発生し得る。上記固液分離手段は、多孔性膜の金属膜であり得る。好ましくは、上記強力酸化分解菌群は、完全培地において、30゜Cにおける世代時間が30分以下の増殖速度を示す桿菌であって、バチルス属に属する細菌を含み得る。あるいは、上記強力酸化分解菌群は、PVA分解菌であって、シュードモナス属またはアシネトバクター属に属する細菌であり得る。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は排水処理の分野に関する。より詳細には、強力酸化分解菌群、高濃度酸素提供手段、および固液分離手段を用いたノンスラッジ高速排水処理システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
有機性排水の処理技術として生物処理法が最も広く普及している。生物処理法には、活性汚泥法、生物膜法、安定化池法などの好気性処理、および嫌気性処理がある。その歴史は古く19世紀末まで遡る(非特許文献1)。
【0003】
活性汚泥法は、フロック状の生物増殖体(活性汚泥)を排水と混合して曝気を行い、次いで、生物増殖体を沈殿によって排水から分離する連続的処理プロセスである。図1の(a)に従来の活性汚泥法の代表的なプロセスフローを示す。これは標準活性汚泥法と呼ばれるプロセスである。排水(原水)1は、まず調整槽3に導入される。活性汚泥は、pHの変動、負荷変動有毒物質の突発的な流入や漏入に対して敏感であるため、原水の性状に応じて活性汚泥に悪影響を与えないよう調整する必要があるためである。次いで、必要に応じて中和槽5に導入された原水は、曝気槽(活性汚泥槽)7に導入され、曝気槽の流入端で返送汚泥11と混合される。それから、排水と活性汚泥の混合液は、曝気槽を通過する。この過程を通じて有機物質が漸次除去されていく。曝気槽を通過した活性汚泥は、沈殿槽9に導入され、沈殿によって処理水21から分離されて曝気槽に返送される。活性汚泥は、酸素の存在下で流入排水中の有機物を分解資化し、二酸化炭素を放出して活性汚泥が増殖する。
【0004】
従来の活性汚泥法においては、i)大量の汚泥が発生し、その処理に高い汚泥処理コストを必要とする;ii)ランニングコストが高い;iii)処理時間が長い;iv)運転管理に技術を要する(技術管理者が必要);v)汚泥処理設備は高額な投資となる、などの課題が存在する。
【0005】
【非特許文献1】
三上栄一、水処理技術における生物処理、用水と廃水、27(10)11(1985)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来の活性汚泥法がもつ課題を解決し、i)汚泥が発生しない(汚泥処理コストが不要);ii)ランニングコストの大幅ダウン(従来の1/10);iii)高速処理(従来の1/10);iv)操作が簡単(半無人化);v)既設設備をそのまま利用可能なシステムを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ノンスラッジ高速排水処理システムに関し、このシステムは、強力酸化分解菌群、高濃度酸素提供手段、および固液分離手段を備え得る。
【0008】
好ましくは、上記高濃度酸素提供手段は、酸素提供手段、および微細気泡発生手段を備え得る。
【0009】
好ましくは、上記微細気泡発生手段は、約3μmを超えない直径の気泡を発生し得る。
【0010】
好ましくは、上記固液分離手段は、多孔性膜であり得る。
【0011】
好ましくは、上記多孔性膜は、金属膜であり得る。
【0012】
好ましくは、上記金属膜は、ステンレス製の金網にステンレスの金属粒子を吹きつけた後、焼結することによって作製され得る。
【0013】
好ましくは、上記多孔性膜は、直径約0.2μmのポアサイズを有し得る。
【0014】
好ましくは、上記強力酸化分解菌群は、完全培地において、30゜Cにおける世代時間が30分以下の増殖速度を示す桿菌であって、好気条件下で油脂分を分解する桿菌を含み得る。
【0015】
好ましくは、上記桿菌は、プロテアーゼ、セルラーゼ、アミラーゼ、リパーゼ、および生物系界面活性剤からなる群から選択される、油脂分分解促進物質を生産し得る。
【0016】
好ましくは、上記桿菌は、生物系界面活性剤を生産し得る。
【0017】
好ましくは、上記桿菌は、アミラーゼおよびリパーゼを生産し得る。
【0018】
好ましくは、上記桿菌は、セルラーゼを生産し得る。
【0019】
好ましくは、上記桿菌は、プロテアーゼおよびアミラーゼを生産し得る。
【0020】
好ましくは、上記桿菌は、バチルス・ズブチリス FERM BP−7270号であり得る。
【0021】
好ましくは、前記桿菌は、バチルス・ズブチリス FERM BP−7271号であり得る。
【0022】
好ましくは、上記強力酸化分解菌群は、ポリビニルアルコール分解菌を含み得る。
【0023】
好ましくは、上記ポリビニルアルコール分解菌は、シュードモナス FERMP−19204株であり得る。
【0024】
好ましくは、上記ポリビニルアルコール分解菌は、アシネトバクター IAM−3株であり得る。
【0025】
好ましくは、上記ポリビニルアルコール分解菌は、アシネトバクターIAM−4株であり得る。
【0026】
本発明はまた、分解反応槽、高濃度酸素提供手段、および固液分離手段を備え、ノンスラッジ高速排水処理システムに関する。
【0027】
上記高濃度酸素提供手段と該固液分離手段とは、上記分解反応槽内の微生物濃度を少なくとも10,000ppmまで増加させるように組み合わされ得る。
【0028】
上記高濃度酸素提供手段は、前記分解反応槽内の液を対流させ得る。
【0029】
【発明の実施の形態】
本発明は、強力酸化分解菌、難分解性COD資化細菌などの有用微生物群と、高酸気装置と、固液分離膜との組み合わせにより、従来の活性汚泥と大型曝気槽に依存しない排水処理システムを提供する。
【0030】
本発明のノンスラッジ高速排水処理システムは、強力酸化分解菌群、高濃度酸素提供手段、および固液分離手段を備える。
【0031】
本明細書で用いる用語「強力酸化分解菌群」は、難分解性COD資化細菌などの有用微生物群を意味し、一般に、バチルス(Bacillus)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、アシネトバクター(Acinetobacter)属、アルスロバクター(Arthrobacter)属などに属する細菌を包含する。強力酸化分解菌群は、一般に、有機物を強力に酸化する能力を備え、それによって余剰汚泥発生量ゼロを達成可能である。強力酸化分解細菌群の例として、本発明者らによる特開2001−61468に記載される油脂分解性桿菌、本発明者らによる同日付けで出願し、同時係属中の「新規ポリビニルアルコール分解菌」と題する出願に記載されているポリビニルアルコール(以下PVA)分解菌が挙げられる。参考として、これらの特許文献は、それらの全体が本願明細書に援用される。
【0032】
上記油脂分解性桿菌の代表例として、バチルス・ズブチリス FERM BP−7270号、バチルス・ズブチリス FERM BP−7271号が挙げられる(それぞれ1999年8月11日に、工業技術院生命工学工業研究所(現在:産業技術総合研究所特許生物寄託センター)に寄託され、そして2000年8月10日に、原寄託よりブダペスト条約に基づく寄託へ移管されている)。
【0033】
上記PVA分解菌の代表例として、シュードモナスFERM P−19204株、アシネトバクターIAM−3株、IAM−4株が挙げられる。シュードモナスFERM P−19204株は、2003年2月7日付けで産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託されている。また、アシネトバクターIAM−3株およびIAM−4株は、京都大学工学研究科(京都市左京区吉田本町)に保存され、請求により分譲される。
【0034】
また、これら特許文献に記載の方法に準じて分離された任意の菌を強力酸化分解菌群として用いることができる。上記の菌を、当業者に周知の突然変異処理、馴養、遺伝子工学的手法などを用いて改変し、強力酸化分解菌群として用いることもできる。例えば、上記PVA分解菌を用いた場合、PVAに代表される難分解性物質を、容量負荷0.1〜0.8kg/m・日において、COD除去率90%以上で分解し得る。
【0035】
本発明で用いられる高濃度酸素提供手段は、代表的には、酸素提供手段、および微細気泡発生手段を備え得る。
【0036】
高濃度酸素提供手段は、強力酸化分解菌群を高濃度で培養し、有機物の完全酸化分解活性を維持するため、強力な空気(酸素)供給を提供する。この高濃度酸素提供手段は、曝気槽内に高濃度で存在する強力分解菌に対し、その分解活性が酸素供給律速とならないようにする。代表的には、上記微細気泡発生手段は、直径(φ)が約3μmより小さい微細気泡(超微細気泡)を発生し得る。微細気泡発生手段として、例えば、超微細気泡発生装置(鈴木産業株式会社、京都市西京区山田中吉見町5番地6)、特開平2001−314888号に記載の散気装置などを用いることができる。例えば、特開平2001−314888号に記載の散気装置は、ベル型の気液混合筒を持ち、超高速のスパイラル流を発生させ、上部(上半球)に配置した突起部に衝突させて微細泡を放出する。これによって、大量の溶存酸素を含む散気効率の高い渦流を好気反応槽内に対流させることができる。
【0037】
超微細気泡は、直径が0.1μmから3μmの径の気泡であり、微細気泡(直径が10〜100μm)より小さいものをいう。超微細気泡は、直径が小さいためにその浮力が小さく、旋回する水流に載り、処理槽内の下方に向かう流れに巻き込まれ易く、それによって処理槽内に滞留し、処理槽内に均一に拡散される。これにより、微細気泡は、水に溶解しているのではなく、むしろ水に分散して浮遊し、180〜200ppmに相当する濃度で水中に存在し得る。
【0038】
微細気泡発生手段は、酸素提供手段に連結してもよく、それによって、さらに高濃度酸素環境を提供し得る。微細気泡発生手段および酸素提供手段を備えた高濃度酸素提供手段は、純度約93%の酸素を180ppmの濃度で溶存させることができ、直径約3μmの気泡の中に酸素を投入し、それによって、従来の活性汚泥法に比べ約10倍のBOD処理能力を可能にする。例えば、標準活性汚泥BOD容積負荷0.5〜1.5kg/m・日を、約5kg/m・日に増加し得る。
【0039】
上記固液分離手段は、固液分離によって約13,000ppmを超える高濃度の微生物による排水処理を可能にする。上記固液分離手段として、精密濾過膜、限外濾過膜、逆浸透膜などを使用し得る。代表的には、固液分離手段として金属膜が用いられ、例えば、ステンレス製の金網にステンレスの金属粒子を吹きつけ、焼結して作製される。この固液分離金属膜は、樹脂膜にはない物理的強度を有し、過酷な条件下においても使用可能である。要約すれば、▲1▼耐熱性が高く、121℃での蒸気滅菌が可能;▲2▼耐薬品性が高く、強アルカリ、強酸を用いた洗浄か可能;▲3▼有機溶媒の取り扱いが可能;▲4▼機械的強度が大きく、高粘性の流体も取り扱いが可能;▲5▼膜そのものが微生物に資化されることがなく、保管の際に静菌剤に浸しておく必要がない、などである。膜のファウリング(fouling)が起これば、アルカリによる有機成分の分解と、酸による無機質スケールの溶解を行えばよい。劣化による機能の低下はほとんど無視できる。これら洗浄によって機能が低下する樹脂膜のような、スポンジボール、逆洗浄などの洗浄は不要である。上記金属膜は、多孔性膜であって、代表的には、直径約0.2μmのポアサイズを有する。
【0040】
本発明のノンスラッジ高速排水処理システムは、上記の強力酸化分解菌群、高濃度酸素提供手段、および固液分離手段を備えることによって、排水中の有機物を、最終的に炭酸ガスと水とに分解することによって余剰汚泥の発生をなくすことができる。
【0041】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態の一例を、図1の(b)に示す。調整槽3および中和槽5を設ける点は、上記従来の活性汚泥法と同じである。分解反応槽には、上記の強力酸化分解菌群を含む汚泥を滞留させる。分解反応槽17を通過した原水は、必要に応じて脱窒槽に送られ、次いで微生物分離槽19に流入する。微生物分離槽19に配置された金属膜23は、汚泥および遊離菌をも捕捉する。図中参照番号25として示されるのは、強力エアレーションシステムとしての高濃度酸素提供手段を概略的に示したものである。高濃度酸素提供手段25は、分解反応槽17、および必要に応じて脱窒槽または微生物分離槽19に連結され得る。なお、図1の(b)に参照番号43で示されるのは、必要に応じて強力酸化分解菌群に供給される添加物質(エンリッチャー)用タンクである。
【0042】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態の別の例を、図2に示す。この実施の形態では、高濃度酸素提供手段が、酸素発生器36、超微細気泡発生装置35、およびエアレーター33を備えている。酸素発生器および超微細気泡発生装置としては、市販の装置(例えば、鈴木産業株式会社(京都市西京区山田中吉見町5番地6)から市販されている)を、そしてエアレーターとして図3に示す構造の散気装置を用いることができる。この超微細気泡発生装置は、超微細気泡を発生させて溶存空気濃度を増加し、さらにこの超微細気泡発生装置の空気吸込み口に酸素発生器を付加することによって、約93%濃度の純酸素が投入され、分解反応槽17において、高濃度酸素環境(200ppm以上の溶存酸素濃度)が達成される。図3に示す構造の散気装置は、図示されるようなベル型の気液混合筒121を備え、この気液混合筒の中で超微細気泡の超高速スパイラル流を発生させ、気液混合筒の上部にある突起物117、118に気泡を衝突させて上部開口部115から超微細気泡を放出する。このことにより、大量の溶存酸素を含む散気効率の高い渦流を分解反応槽17に対流させることを可能にする。酸素発生器、超微細気泡発生装置、エアレーター、および固液分離装置の組み合わせにより、大型曝気槽に依存しない、コストパーフォーマンスに優れたシステムを提供する。
【0043】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態の別の例を、図4に示す。この実施の形態のノンスラッジ高速排水システムは、流入槽1’、分解反応槽17’、流出槽22’、固液分離手段23’および散気装置25’を備える。図4中、Pで示されるポンプによって流入槽から分解反応槽に排水を供給する。散気装置は、発生微細気泡の分解反応槽内上昇流を生じ、それによって分解反応槽内液を攪拌し、図4中矢印で示される分解反応槽内流れを引き起こす。分解反応槽で処理された排水は、ポンプPを介して金属膜で固液分離される。金属膜を通過した処理水は流出槽に導入される。
【0044】
【実施例】
(実施例1)
図4に示す実施の形態3のシステムを用いて排水の処理を行った。排水としては、合成排水(PVA50mg/L、ペプトン75mg/L、肉エキス50mg/L、尿素25mg/L、NaHPO25mg/L、KCl3.5mg/L、CaCl3.5mg/L、MgSO2.5mg/L、NaCl7.5mg/L)。分解反応槽17’の容量は15Lとした。金属膜としては、ステンレス製の金網(ポアサイズ0.1μm、30×50cm)を用いた。下水処理場から得た余剰汚泥を種汚泥とし、このシステムを60日間稼動させ、分解反応槽内の微生物濃度(MLSS)を経時的に測定した。図5に、分解反応槽内MLSSの経時的測定結果を示す。図示されるように、システムの稼動開始から60日後には、分解反応槽内MLSSは、10000mg/Lを超え、金属膜による固液分離により、微生物濃度の著しい上昇が観察された。
【0045】
なお、図6中aおよびbで示されるのは、邪魔板と金属膜との距離、および金属膜と分解反応槽の壁との距離である。このaおよびbを適宜選択することによって、分解反応槽内の液の効率的な対流および酸素移動効率を向上させる。運転した15L容量の分解反応槽では、aおよびbをそれぞれ2.5cmに設定した。
【0046】
図6は、分解反応槽内に存在する細菌の電子顕微鏡写真である。図6の左の細菌は、バチルス(Bacillus)属に属する細菌、そして図6の右の細菌は、アルスロバクター(Arthrobacter)属に属する細菌であると同定された。
【0047】
(実施例2)
図2に示す実施の形態2のシステムを用いて排水の処理を行った。排水としてはPVAを含む染色工場の排水を用いた。分解反応槽17を強力酸化分解菌(シュードモナスFERM P−19204株、アシネトバクターIAM−3株、IAM−4株)を含む第I槽とし、反応槽18を馴養したPVA汚泥を含む第II槽とし、微生物分離槽19を第III槽とし、各々の槽の容量は約4mとした。運転結果を図7に示す。図7の横軸は運転期間を示している。図7の上の2つのグラフは、定法に従って測定した各反応槽におけるPVA濃度(左)およびCOD濃度(右)を示し、そして図7の下の2つのグラフは、運転期間中のPVA負荷(左)およびCOD負荷(右)を示す。
【0048】
図2の上に示すように、各槽におけるPVA濃度およびCOD濃度は、調整槽、第I槽、第II槽、放出水という順番に、システムの下流側であるほど低く、システムは順調に稼動した。運転8日目に、システムに流入する排水量を0.85m/日から1.42m/日に増加したが、放出水中のPVA濃度およびCOD濃度はほとんど変わらなかった。図2の下に示すように、システムとしてのPVA処理効率およびCDD処理効率(I+II+III)は、運転9日目で、それぞれ、約0.1kg/m/日および約0.30.1kg/m/日であった。
【0049】
【発明の効果】
活性汚泥に替わるものとして、強力酸化分解菌群を用いた排水処理システムが提供される。これらの菌群の多くは比較的大型のバチルス属、アルスロバクター属に属する常温好気性菌で、増殖が速く、活性の高い酵素群を菌体外へ分泌するので、排水中の有機物を炭酸ガスと水に完全分解することが可能である。本発明の排水処理システムは、菌体フロックは形成されず管理が容易、余剰汚泥が発生しないなど、排水処理システムとしての優位性を提供する。
【0050】
強力酸化分解菌群は、難分解性CODを分解し、そして有機物を強力に酸化する能力を備えているので、それによって余剰汚泥発生量ゼロを達成し得る。高濃度酸素提供手段は、強力酸化分解菌群を高濃度で培養し、有機物の完全酸化分解活性を維持するため、強力な空気(酸素)供給を提供する。この高濃度酸素提供手段は、曝気槽内に高濃度で存在する強力分解菌に対し、その分解活性が酸素供給律速とならないようにする。固液分離手段は、固液分離によって約13,000ppmを超える高濃度の微生物による排水処理を可能にする。強力酸化分解菌、難分解性COD資化細菌などの有用微生物群と、高酸気装置と、固液分離膜との組み合わせにより、従来の活性汚泥と大型曝気槽に依存しない排水処理システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のシステムの一例を、従来技術と比較して示す図である。(a)は従来技術を、そして(b)は本発明のシステムを示す。
【図2】本発明のシステムの一例を示す図である。
【図3】本発明のシステムで用いる高濃度酸素提供手段の一例を示す図である。
【図4】本発明のシステムの一例を示す図である。
【図5】本発明のシステムの運転結果を示す図である。
【図6】本発明のシステムで用いられる細菌の一例の電子顕微鏡写真である。
【図7】本発明のシステムの運転結果を示す図である。
【符号の説明】
1 排水
1’流入槽
3 調整槽
5 中和槽
7 曝気槽
9 沈殿槽
11 返送汚泥
17、17’ 分解反応槽
19 微生物分離槽
21 処理水
22’流出槽
23 金属膜
23’固液分離手段
25 エアレーションシステム
25’散気装置
33 エアレーター
35 超微細気泡発生装置
36 酸素発生器
43 エンリッチャータンク
116 散気口
117、118 突起物
121 気液混合筒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノンスラッジ高速排水処理システムであって、
強力酸化分解菌群、高濃度酸素提供手段、および固液分離手段を備えた、システム。
【請求項2】
前記高濃度酸素提供手段が、酸素提供手段、および微細気泡発生手段を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記微細気泡発生手段が、約3μmを超えない直径の気泡を発生する、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記固液分離手段が、多孔性膜である、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記多孔性膜が、金属膜である、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記金属膜が、ステンレス製の金網にステンレスの金属粒子を吹きつけた後、焼結することによって作製される、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記多孔性膜が、直径約0.2μmのポアサイズを有する、請求項4に記載のシステム。
【請求項8】
前記強力酸化分解菌群が、完全培地において、30゜Cにおける世代時間が30分以下の増殖速度を示す桿菌であって、好気条件下で油脂分を分解する桿菌を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記桿菌が、プロテアーゼ、セルラーゼ、アミラーゼ、リパーゼ、および生物系界面活性剤からなる群から選択される、油脂分分解促進物質を生産する、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記桿菌が、生物系界面活性剤を生産する、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記桿菌が、アミラーゼおよびリパーゼを生産する、請求項9に記載のシステム。
【請求項12】
前記桿菌が、セルラーゼを生産する、請求項9に記載のシステム。
【請求項13】
前記桿菌が、プロテアーゼおよびアミラーゼを生産する、請求項9に記載のシステム。
【請求項14】
前記桿菌が、バチルス・ズブチリス FERM BP−7270号である、請求項8に記載のシステム。
【請求項15】
前記桿菌が、バチルス・ズブチリス FERM BP−7271号である、請求項8に記載のシステム。
【請求項16】
前記強力酸化分解菌群が、ポリビニルアルコール分解菌を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
前記ポリビニルアルコール分解菌が、シュードモナス FERM P−19204株である、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記ポリビニルアルコール分解菌が、アシネトバクター IAM−3株である、請求項16に記載システム。
【請求項19】
前記ポリビニルアルコール分解菌が、アシネトバクターIAM−4株である、請求項16に記載の細菌。
【請求項20】
ノンスラッジ高速排水処理システムであって、
分解反応槽、高濃度酸素提供手段、および固液分離手段を備え、
該高濃度酸素提供手段と該固液分離手段とが、該分解反応槽内の微生物濃度を少なくとも10,000ppmまで増加させるように組み合わされる、システム。
【請求項21】
前記高濃度酸素提供手段が、前記分解反応槽内の液を対流させる、請求項17に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−181393(P2006−181393A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−64211(P2003−64211)
【出願日】平成15年3月10日(2003.3.10)
【出願人】(503092755)有限会社アイピーバイオ (2)
【Fターム(参考)】