説明

ハイブリッド共重合体

【課題】グラフト共重合体に付随する問題を提供しない重合体基礎要素としての天然物質に対するニーズに応える。
【解決手段】抗スケール剤および分散剤としての使用のためのハイブリッド共重合体が提供される。その重合体は、水性系で使用される組成物において有用である。その重合体は、自然に生じるヒドロキシル含有部分によって停止される鎖である、少なくとも1種の合成単量体成分を含む。それらのハイブリッド共重合体を製造するプロセスも提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成物質および天然由来物質のハイブリッド共重合体に関する。より特定的には、本発明は、これらのハイブリッド共重合体を製造するための合成重合体の生成の間に用いるためのヒドロキシル含有天然由来物質から形成された連鎖移動剤に向けられている。本発明は同様に、かかる重合体を含むスケール防止剤及び/又は分散剤配合物又は組成物、及びスケール最小化を含む水性系内でのその使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
多くの水性工業系はさまざまな物質が可溶、懸濁または分散状態に留まることを必要とする。このような水性系の例としては、ボイラー用水又は蒸気生成系、冷却水系、ガス洗浄系、パルプ及び製紙系、脱塩系、布地、食器類及び硬質表面清浄系、並びにガス井、油井及び地熱井の作成中に遭遇する孔井系が含まれる。これらの系中の水は、天然に又は汚染によって無機塩といったような成分を含有していることが多い。これらの塩は、上述のもののような水性系内で蓄積、沈殿及び汚損の問題を引き起こす可能性がある。
【0003】
無機塩は、標準的に金属カチオン(例えば、カルシウム、マグネシウム又はバリウム)と無機アニオン(例えば、ホスフェート、カーボネート又はスルフェートイオン)との反応によって形成される。形成された時点で、塩は不水溶性になるか又は低い水溶性をもつ傾向がある。溶液中のその濃度が増大するか或いはこれらの塩を含有する溶液のpH及び/又は温度が変化するにつれて、塩は溶液から沈殿し、結晶化し、表面に硬い堆積物又はスケールを形成する。かかるスケール形成は、熱交換装置、ボイラー、二次石油採収井及び自動食洗器などの機器内、並びにかかる硬水で洗浄される基材上において問題であり、かかる機器の性能及寿命を削減する。
【0004】
スケール形成に加えて、工業用冷却塔及び熱交換器を含む炭素鋼製の数多くの冷却水系が腐食問題に悩まされている。この腐食を予防しようという試みは、オルトホスフェート及び/又は亜鉛化合物といった様々な抑制物質を水に添加することによって行われることが多い。しかしながらホスフェートの添加は、リン酸カルシウムといった不溶性の高いリン酸塩の形成を増大させる。亜鉛化合物の添加は、水酸化亜鉛及びリン酸亜鉛といった不溶性塩の沈殿を導く可能性がある。
【0005】
泥、シルト及び粘土などといったその他の無機粒子も同様に冷却水系中に一般的に見受けられる。これらの粒子は、表面上に積もる傾向があり、こうしてそれらが効果的に分散させられないかぎり、水流及び熱伝達を制限する。
【0006】
スケール形成塩及び無機粒子を含有する水性系の安定化には様々な機序が関与する。抑制は、スケール形成塩の有害効果を除去するための従来の1つの機序である。抑制においては、水性系中のスケール形成塩の可溶性を増大させる合成重合体(単複)が添加される。
【0007】
もう一つの安定化機序は、沈殿した塩結晶の分散である。カルボン酸基を有する合成重合体は、炭酸カルシウムといった沈殿塩用の優れた分散剤として機能する。この機序では、結晶は水溶液中に溶解するのではなくむしろ分散状態に留まる。
【0008】
第3の安定化機序には、表面、その他の形成しつつある結晶及び/又は既存の粒子に対するスケールの接着性を低くする重合体によるスケール結晶構造の干渉及び歪が関与している。
【0009】
合成重合体は、清浄組成物中に数多くの有用な機能を付与することもできる。例えば、それは、粉末洗剤の処理の際に独立した形又は併用のいずれかで粘度低下剤として機能することができる。それらは、再堆積防止剤、分散剤、スケール及び堆積抑制剤、結晶改質剤及び/又は、界面活性剤に対して最適な洗浄作用特性を付与しながらビルダーとして用いられる物質を部分的又は全面的に置換する能力をもつ洗剤助剤としての役割も同様に果たすことができる。
【0010】
洗浄配合物は、その洗浄能力を増強するためにホスフェート又はカーボネートといったビルダーを含有している。これらのビルダーは、炭酸カルシウム及びオルトリン酸カルシウムの形でのリン酸カルシウムといった不溶性塩を沈殿させることができる。沈殿物は衣類又は皿上に堆積物を形成し、これが結果としてこれらの物品上の見苦しい膜や点になる。同様にして、不溶性塩は孔井油田の利用分野において大きな問題を発生させる。従って、水処理、油田及び清浄用配合物において不溶性塩のスケーリングを最小化させることになる重合体に対するニーズが存在する。
【0011】
長年にわたって水性処理系中におけるスケール形成を最小化させるために合成重合体が用いられてきた。しかしながら、需要の増加と厳しい原油供給に起因して、最近これらの合成重合体を製造するための単量体が不足してきている。従って、少なくとも部分的に再生型天然供給源由来のハイブリッド重合体でこれらの合成重合体を置換する必要性が存在する。同様に、再生型天然供給源由来の重合体は、非常に低い生物分解性しか持たない傾向にある合成重合体よりも優れた生物分解性プロファイルを有するはずである。
【0012】
重合体基礎要素として天然物質を用いようとする数多くの試みが過去に行われてきた。これらは主として、砂糖及びデンプンと言った天然物質に合成単量体をグラフトすることに集中していた。例えば米国特許第5,854,191号、5,223,171号、5,227,446号及び5,296,470号明細書は、洗浄の利用分野におけるグラフト共重合体の使用を開示している。
【0013】
グラフト共重合体は、サッカリド又はポリサッカリド主鎖から単量体側鎖を成長させるための開始部位(例えば、遊離ラジカル)を選択的に生成させることによって製造される(CONCISE ENCYCLOPEDIA OF POLYMER SCIENCE AND ENGINEERING, J.I. Kroschwitz. ed., Wiley-Interscience, New York, 436頁(1990年))。これらのグラフト技術は、標準的に、これらの開始部位をサッカリド又はポリサッカリド主鎖上に作り出すために硫酸第1鉄といったFe(II)塩又はCe(IV)塩(例えば、硝酸セリウム又は硫酸セリウム)を用いている(例えば米国特許第5,304,620号を参照のこと)。かかる酸化還元プロセスは容易に制御されておらず、効率が悪くかつ望ましくないホモ重合体を生成する。同様に、結果として得られた溶液中にセリウム塩が不要の副産物として残留し、これが性能に対して潜在的なマイナス効果を示す傾向がある。従って、グラフト共重合体に付随するこれらの問題を提供しない重合体基礎要素としての天然物質に対するニーズが存在する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、ヒドロキシル含有天然物質で終端した合成単量体鎖から誘導されたハイブリッド共重合体組成物を開示している。連鎖移動剤としてヒドロキシル含有天然物質を用いることによって、特に連鎖移動剤の分子量が低い場合、結果として得られる重合体の分子量を制御することができる。さらに、グラフト共重合体とは異なり、特殊な開始系は全く必要ない。上述の通り、グラフト共重合体は標準的に、金属イオンを含有する特殊な酸化還元開始系を必要とする。対照的に、本発明に従ったハイブリッド共重合体は、従来の遊離ラジカル開始系を用いている。
【0015】
かかる物質は、当該技術において開示されているグラフト共重合体とは構造的にも異なっている。グラフト共重合体は、一つの単量体又は重合体の主鎖と該主鎖上に付着したもう一つの単量体(単複)から誘導された単数又は複数の側鎖として定義されている(Odian,George、重合の原理、第2版、Wiley-Interscience、New York、424頁(1981年)。グラフト共重合体(たとえば米国特許第5,854,191号、5,223,171号、5,227,446号及び5,296,470号明細書などに記述されているもの)は、標準的に天然重合体主鎖と合成単量体から誘導された短い側鎖を有している。これとは対照的に、本発明のハイブリッド共重合体は、連鎖の末端に天然物質から誘導された部分を内含する合成単量体の長鎖を有している。Mark、Hreman F.の「重合体科学及び技術の百科事典」第3版、第11巻、Wiley-Interscience, New York、380頁(2004年)によると、連鎖移動剤の断片は、末端基として重合体鎖に取込まれる。従って、特定の末端基を重合物質中に導入するために移動反応を用いることが可能である。
【0016】
これらのハイブリッド共重合体は、ホスフェート、スルフェート、カーボネート及びシリケートをベースとするスケールを含む、数多くの異なるスケールを最小化するという点で効果的である。これらのスケール最小化重合体は、水処理組成物、油田関連組成物、セメント組成物、清浄用配合物及びその他の水性処理組成物を含む、様々な系内において有用である。本発明に従った重合体は、スケール形成の抑制、沈殿物の分散及び結晶構造の干渉と歪によりスケールを最小化する上で特に有用であることが分かっている。
【0017】
ヒドロキシル含有天然由来物質を合成重合体の製造中に連鎖移動剤として使用し、新規のハイブリッド重合体物質を製造できることが現在分かっている。これらのヒドロキシル含有天然由来物質には、グリセロール、クエン酸及びグルコン酸、並びに単糖類、オリゴ糖類及び砂糖、マルトデキストリンそしてデンプンといった多糖類が含まれる。結果として得られる物質は、合成重合体の性能特性を有しているが、低コストで入手が容易かつ環境にやさしい再生可能な供給源から誘導された物質を用いている。これらの物質を、水処理、洗剤、油田及びその他の分散剤利用分野において使用することが可能である。
【0018】
水性処理組成物として存在する場合、該ハイブリッド共重合体は、水性処理組成物の約0.001重量%〜約25重量%の量で存在する。もう一つの態様においては、該重合体は、組成物の約0.5%重量〜約5重量%の量で存在する。
【0019】
1つの態様において、該ハイブリッド共重合体の数平均分子量は約1000〜約100,000である。もう一つの態様においては、該重合体の数平均分子量は約2000〜約25,000である。
【0020】
該ハイブリッド共重合体は清浄用配合物中において有用である。かかる組成物中において、該重合体は、清浄用配合物の約0.01%〜約10%の量で存在する。これらの清浄用配合物は、燐ベースの及び/又はカーボネートのビルダーを含むことができる。該清浄用配合物には、自動食洗器用洗剤配合物が含まれる。自動食洗器用洗剤配合物は同様に、ビルダー、界面活性剤、酵素、溶剤、ヒドロトロープ、フィラー、漂白剤、香料及び/又は着色剤を有することもできる。
【0021】
ハイブリッド共重合体は、同様に、炭酸カルシウム及びリン酸カルシウムスケールを予防するため水処理系中においても有用である。このような系中では、該重合体は少なくとも約0.5mg/Lの量で存在する。ハイブリッド共重合体は、同様に、水処理系中においてカルシウムスケールを予防するため、水処理組成物又は配合物中においても有用である。これらの水処理組成物中では、該重合体は組成物の約10重量%〜約25重量%の量で存在する。
【0022】
本発明はさらに、ハイブリッド共重合体を有する鉱物分散剤を提供する。この分散剤は、様々な鉱物例えばタルク、二酸化チタン、雲母、沈殿炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、沈殿シリカ、シリケート、酸化鉄、粘土、カオリン粘土又はそれらの組合せを分散させることができる。
【0023】
もう一つの態様においては、ハイブリッド共重合体は、カーボネート及び/又はスルフェートスケールを最小化するための水性系用の処理組成物として使用することができる。
【0024】
もう一つの利用分野においては、ハイブリッド共重合体は、水処理系、油田系又は清浄系といた水性処理系中において有用であり得る。水性処理系が油田系の場合、最小化されるスルフェートスケールは硫酸バリウムスケールであり得る。
【0025】
さらにもう一つの利用分野においては、該ハイブリッド共重合体をファイバーグラス用のバインダーとして利用し得る。ファイバーグラス断熱製品は、一般に重合体バインダーでガラス繊維同士を結合させることによって形成される。標準的に、形成された直後でまだそれが熱いうちにマット状にされたガラス繊維上に、水性重合体バインダーが噴霧される。重合体バインダーは、繊維が互いに交叉する接合点に蓄積して、これらの点に繊維を保持する傾向をもつ。熱い繊維からの熱が、バインダー中の大部分の水分を蒸発させる。ファイバーグラスバインダーは、最終ファイバーグラス製品が梱包及び発送用に圧縮され、その後設置時にその最大垂直方向寸法に復帰できるような形で柔軟性を有していなければならない。
【0026】
従って本発明は、単量体溶液及び天然由来ヒドロキシル含有連鎖移動剤が開始剤溶液の存在下で重合される、ハイブリッド共重合体の調製方法を提供する。該開始剤は、金属イオンベースの酸化還元系ではない。単量体溶液は、共重合体の合計重量に基づき約25重量%〜約99.9重量%の量で存在し、連鎖移動剤は、約0.1重量%〜約75重量%の量で存在する。
【0027】
本発明は、同様に、共重合体の主鎖としての合成重合体及び共重合体の連鎖終端部分としての天然由来ヒドロシル含有する重合体を有するハイブリッド共重合体も提供する。
【0028】
本発明はさらに、水処理系内のカーボネート及びホスフェートスケールを予防する上で用いられる水処理組成物において、重合体が組成物中に組成物の約10重量%〜約25重量%の量で存在する水処理組成物に向けられている。
【0029】
本発明はさらに、重合体が清浄用配合物の約0.01重量%〜約10重量%の量で存在する上述のハイブリッド共重合体を含んで成る清浄用配合物にも向けられている。清浄用配合物は単数又は複数の燐ベースの及び/又はカーボネートのビルダーを含むことができる。清浄用配合物は単数又は複数の界面活性剤を含むことができる。
【0030】
清浄剤配合物には、自動食洗器洗剤配合物が含まれる。これらの自動食洗器洗剤配合物は同様に、ビルダー、界面活性剤、酵素、溶剤、ヒドロトロープ、フィラー、漂白剤、香料及び/又は着色料を内含することができる。
【0031】
清浄用配合物は同様に、粉末又は液体又は単位用量洗剤配合物を含む。
【0032】
上述のハイブリッド共重合体は、鉱物分散剤中で使用することができる。鉱物分散剤には、タルク、二酸化チタン、雲母、沈殿炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、沈殿シリカ、シリケート、酸化鉄、粘土、カオリン粘土又はそれらの組合せが含まれる。
【0033】
上述のハイブリッド共重合体は、水性系内の炭酸カルシウム結晶成長を改質することができる水性系処理組成物中で使用することが可能である。水性系の例としては、水処理系、油田系又は清浄系が含まれる。もう一つの態様においては、水性系処理組成物は、スルフェートスケールを最小化することができる。さらなる態様においては、水性系は、油田系であり得、最小化されるスルフェートスケールは硫酸バリウムスケールである。
【0034】
上述のハイブリッド共重合体はさらに、ファイバーグラス用のバインダーの中で使用することができる。これは、超吸収剤又は粘弾性改良剤としても同様に使用可能である。
【0035】
発明の詳細な説明
本発明に従ったハイブリッド共重合体は、製造プロセス中に連鎖移動剤としてヒドロキシ含有天然由来物質を用いることによって製造される。これらのヒドロキシ含有天然由来物質は、例えばグリセロール、クエン酸、乳酸、酒石酸、グルコン酸、グルコヘプトン酸、単糖類及び砂糖などの二糖類といった小型分子から、オリゴ糖類及び多糖類(例えばマルトデキストリン及びデンプン)といったさらに大型の分子までの範囲を網羅する。これらの例には、スクロース、フルクトース、マルトース、グルコース及びサッカロース、並びにマンニトール、ソルビトールなどといった糖類の反応生成物が含まれる。連鎖移動剤には、酸化的、加水分解的又は酵素的に分解された単糖類、オリゴ糖類及び多糖類、並びに化学的に変性された単糖類、オリゴ糖類及び多糖類が含まれる。かかる化学的に変性された誘導体には、カルボキシレート、スルホネート、ホスフェート、ホスホネート、アルデヒド、シラン、アルキルグリコシド、アルキル‐ヒドロキシアルキル、カルボキシ‐アルキルエーテル及びその他の誘導体が含まれる。
【0036】
連鎖移動剤としての天然物質の使用は、現行の合成物質に代わる魅力的で容易に利用可能な代替物である。例えば、グリセロールはバイオディーゼル製造の副産物である。グリセロールは同じく、石鹸及び脂肪酸の製造に用いられる油脂の副産物でもある。これは砂糖の発酵によっても同様に製造され得る。クエン酸は粗糖液の発酵によって工業的に製造される。酪酸は、ホエー、コーンスターチ、ポテト、糖蜜などの発酵によって商業的に製造される。酒石酸はワイン製造プロセスの1つの副産物である。
【0037】
本発明において有用な多糖類は、植物、動物及び微生物供給源から誘導可能である。かかる多糖類の例には、デンプン、セルロース、ガム(例えば、アラビア、グアール及びキサンタンガム)、アルギンネート、ペクチン及びジェランが含まれる。デンプンには、トウモロコシ及び従来のハイブリッドトウモロコシ、例えばワキシーマイズ及び高アミロース(アミロース40%超)トウモロコシなどから誘導させるもの、並びに従来のハイブリッド又は遺伝子操作された物質を含む、ポテト、タピオカ、小麦、コメ、エンドウマメ、サゴ、カラスムギ、オオムギ、ライムギ及びアマランスなどといったその他のデンプンが含まれる。
【0038】
D−キシランといった植物細胞壁多糖類又はヘミセルロースも同様に含まれる。植物細胞壁多糖類の例には、コーン繊維の成分であるコーン繊維ガムといったアラビノ−キシランが含まれる。これらの多糖類の重要な特徴は、ヒドロキシル基が豊富なことである。これらのヒドロキシル基は、重合プロセス中の連鎖移動のための部位を提供する。分子中における第2及び第3ヒドロキシル基の数が多くなればなるほど、連鎖移動剤としての効率は高くなる。
【0039】
連鎖移動剤として有用なその他の多糖類には、α−1.4結合により主として連結されたD−グルコース単位を有する重合体でありかつ約20未満のデキストロース当量(「DE」)を有するマルトデキストリンが含まれる。マルトデキストリンは、白色の粉末又は濃縮溶液として入手可能であり、デンプンと酸及び/又は酵素の部分的加水分解によって調製される。一つの態様においては、連鎖移動剤はグリセロール、クエン酸、マルトデキストリン及び/又は低分子量酸化デンプンである。本発明に従った有用な連鎖移動剤は、約20,000未満の分子量を有する。もう一つの態様においては、該連鎖移動剤は、約2000未満の分子量を有する。さらにもう一つの態様においては、本発明に従った連鎖移動剤は、1000未満の分子量を有する。
【0040】
多糖類は、エーテル化(例えば、酸化プロピレン、酸化エチレン、2,3‐エポキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドでの処理を介する)、エステル化(例えば、無水酢酸、コハク酸オクテニル無水物(「OSA」)との反応を介する)、酸加水分解、デキストリン化、酸化又は酵素処理(例えば、α−アミラーゼ、βアミラーゼ、プラナーゼ、イソアミラーゼ又はグルコアミラーゼ)、又これらの処理の様々な組合せによって改質又は誘導され得る。
【0041】
ヒドロキシル含有天然由来連鎖移動剤は、重合体の合計重量に基づいて約0.1〜約75重量%用いることができる。一つの態様では、該範囲は、重合体の合計重量に基づき連鎖移動剤の約1〜約50重量%である。
【0042】
1つの実施形態では、ハイブリッド共重合体は、合成成分として少なくとも1つの親水性酸単量体から調製される。かかる親水性酸単量体の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、α−クロロ−アクリル酸、α−シアノアクリル酸、ベータ−メチルアクリル酸(クロトン酸)、α−フェニルアクリル酸、β−アクリルオキシプロピオン酸、ソルビン酸、α−クロロソルビン酸、アンゲリカ酸、桂皮酸、p−クロロ桂皮酸、β−スチリルアクリル酸(1−カルボキシ−4−フェニルブタジエン−1,3)、イタコン酸、マレイン酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸、アコニット酸、フマル酸、トリカルボキシエチレン、2−アクリルオキシプロピオン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、メタリルスルホン酸ナトリウム、スルホン化スチレン、アリルオキシベンゼンスルホン酸及びマレイン酸が含まれるが、これらに制限されるわけではない。酸含有基に対して誘導体化され得るマレイン酸無水物又はアクリルアミドといった部分を用いることができる。酸含有親水性単量体の組合せも同様に使用することが可能である。一つの態様では、該酸含有親水性単量体はアクリル酸、マレイン酸、メタクリル酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸又はそれらの混合物である。
【0043】
上述の親水性単量体に加えて、疎水性単量体も同様に合成成分として使用することが可能である。これらの疎水性単量体には、例えば、飽和又は不飽和アルキルを伴うエチレンに不飽和単量体、ヒドロキシアルキル、アルキルアルコキシ基、アリールアルコキシ、アルカリルアルコキシ、アリール及びアリールアルキル基、スルホン酸アルキル、スルホン酸アリール、シロキサン及びそれらの組合せが含まれる。疎水性単量体の例には、スチレン、α−メチルスチレン、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸2‐エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ベヘニル、メタクリル酸2‐エチルヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ベヘニル、2‐エチルヘキシルアクリルアミド、オクチルアクリルアミド、ラウリルアクリルアミド、ステアリルアクリルアミド、ベヘニルアクリルアミド、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ペンチル、アクリル酸ヘキシル、1‐ビニルナフタレン、2‐ビニルナフタレン、3‐メチルスチレン、4‐プロピルスチレン、t‐ブチルスチレン、4‐シクロヘキシルスチレン、4‐ドデシルスチレン、2‐エチル‐4‐ベンジルスチレン、及び4‐(フェニルブチル)スチレンが含まれる。疎水性単量体の組合せも同様に使用可能である。
【0044】
重合プロセスは、溶液又は懸濁液プロセスであり得る。該プロセスには、上述の親水性及び/又は疎水性単量体のうちの単数又は複数のものを伴う遊離ラジカル開始剤及び連鎖移動剤又は連鎖停止剤として用いられるヒドロキシル含有天然産物を用いた重合が関与する。これらの連鎖移動剤は、反応の開始時或いは反応中に単量体(単複)が添加されるにつれて添加され得る。
【0045】
この系の一つの利点は、それが標準的な遊離ラジカル開始剤を使用するという点にある。グラフト系とは異なり、Ce(IV)塩といった特殊な酸化還元系は必要とされない。その代わり、過硫酸ナトリウムといった使い易い熱活性化開始剤を用いることができる。当業者であれば、大半の開始系がここで利用可能であることを認識するだろう。
【0046】
高度の連鎖移動は、架橋と不溶性ゲルの形成を導く可能性がある。一つの実施形態においては、単量体と開始剤を同一のおおよその時間にわたり確実に供給させることによってこれを避けることができる。開始剤の供給が単量体の供給に比べてはるかに長期間続く場合、特にオリゴ多糖類及び多糖類(約1000超の分子量を有するもの)が連鎖移動剤として用いられる場合に架橋ゲルが形成され得る。
【0047】
以上で指摘した通り、一部のケースでは反応生成物はこれらのハイブリッド共重合体を製造する間にハイブリッドゲルを形成する。これは、使用される合成単量体の反応性が極度に高い場合(例えば、低pHで反応させられるアクリル酸(プロトン化形態)又は天然連鎖移動剤が約1000超の分子量を有する場合)に特に言えることである。単量体の供給が終了した後でかつ残りの開始剤が供給され続けている間に架橋ゲルが形成し始める。ゲル生成物は水中で溶解不能であり従って以下に記述する利用分野において使用できないことから、これはほとんどの場合望ましくないことである。これに対する例外は、油田産業において油井を処理するために使用される超吸収剤、粘弾性改良剤及びゲルの製造の場合である。
【0048】
反応性単量体のためにプロセス中に望ましくないゲルが形成し始めた場合、数多くの方法によりこれを除去することが可能である。これには、以下の実施例10B(重合中における単量体の中和)に例示されている単量体の中和作業による単量体反応性の低減が含まれる。実施例10Aに指摘されている通り、アクリル酸ナトリウムはアクリル酸よりもはるかに反応性が低く、従ってアクリル酸が形成し得るゲルを形成することはない。もう一つの実施形態においては、同様に、チオール、次亜リン酸ナトリウム及びアルコールなどの追加の連鎖移動剤も使用可能である。チオール及びアルコール(例えば以下の実施例10Cを参照のこと)は、分子量を制御し架橋ゲルの形成を予防する上で特に有用である。最後に、これらのゲルは、開始剤と単量体の供給物を同一の時限にわたり圧送できるような形で開始剤の供給を短縮することによって除去することが可能である(実施例10A中に例示されている)。
【0049】
スケール形成塩及び無機粒子を含有する水性系の安定化には多様な機序が関与する。抑制は、スケール形成塩の有害な効果を除去するための従来の一つの機序である。抑制においては、水性系中のスケール形成塩の溶解度を増大させる合成重合体が添加される。
【0050】
もう一つの安定化機序は、沈殿塩結晶の分散である。カルボン酸基を有する合成重合体は、炭酸カルシウムといった沈殿塩用の優れた分散剤として機能する。この機序では、結晶は、水溶液中に溶解するよりはむしろ分散状態に留まる。
【0051】
第三の安定化機序には、重合体によるスケールの結晶構造の干渉及び歪が関与し、こうしてこれが、表面その他の形成中の結晶及び/又は既存の粒子に対するスケールの接着性を弱くする。
【0052】
本発明に従ったハイブリッド共重合体は、広範な条件下において非常に優れたスケール抑制と堆積制御を提供する。例えば、本発明の重合体は、以上で定義した3つの機序全てを用いて炭酸カルシウムスケールの形成及び堆積を最小化することが発見された。
【0053】
本発明の重合体はさらに、油田処理の利用分野においてスルフェートスケールを最小化する上でも効果的である。ハイブリッド共重合体は同様に、鉱物、粘土、塩、鉱石及び金属酸化物といった粒子物質の分散においても非常に効果的である。特定の例としては、タルク、二酸化チタン、雲母、シリカ、シリケート、カーボンブラック、酸化鉄、カオリン粘土、二酸化チタン、炭酸カルシウム及び酸化アルミニウムが含まれる。これらの粒子は、コーティング、プラスチック、ゴム、ろ過製品、化粧品、食品及び紙塗工などといた、多様な利用分野において見られる。
【0054】
水処理系:
水処理系には、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム及びリン酸カルシウムといったカルシウム塩の沈殿に起因するカルシウムスケールの予防が含まれる。これらの塩は逆溶解性である、すなわちその溶解度は温度が上昇するにつれて減少する。高温及び高塩濃度が存在する工業的利用分野の場合、これは通常、沈殿が伝熱面で発生という形で現れる。かくして沈殿してゆく塩は表面上に堆積し、結果としてカルシウムスケールの層をもたらす。カルシウムスケールは同様に、系内の伝熱損失を導き、製造プロセスの過熱をひき起こす。このスケール生成は局部腐食も促進させ得る。
【0055】
炭酸カルシウムとは異なり、リン酸カルシウムは一般に自然に発生する問題ではない。しかしながら、オルトホスフェートは、鉄金属の腐食抑制剤として、標準的に2.0〜20.0mg/Lのレベルで、工業系(及び時として都市上水系)に添加されるのが普通である。従って、燐酸カルシウム沈殿は、以上で論述したこれらのスケール生成問題を結果としてもたらすのみならず、溶液からオルトホスフェートが除去されるにつれて厳しい腐食問題がもたらされる結果ともなり得る。その結果、工業用冷却系には、系を運転停止し、清浄しかつ水を交換しなければならない定期的なメンテナンスが求められる。メンテナンス用運転停止の間の時間の延長は、コストを節約し望ましいことである。
【0056】
工業用水処理系中においては可能な限り多くの水を再利用することが有利である。それでも、水は蒸発といった様々な機序に起因して経時的に失われる可能性がある。その結果、溶解された及び懸濁された固体は経時的により濃縮された状態となる。濃縮サイクルとは、特定体積の水の中の固形分が濃縮される回数を意味している。何回の濃縮サイクルが許容されるかは、水構成の質によって決定される。水構成が硬質である(品質が低い)冷却塔の利用分野では、2〜4サイクルが正常であるとみなされ、一方、5回以上は応力を受けた状態を表わすと考えられる。本発明に従ったハイブリッド共重合体は、応力を受けた状態の下でも充分な性能を発揮する。
【0057】
水処理系におけるメンテナンス間の時間を延長させる一つの方法は、カルシウム塩の形成を抑制するか又は結晶成長を改質する上で機能する重合体を使用することである。結晶成長改質重合体は、結晶の形態を正規構造(例えば、立方晶)から針状又は房状といった不整構造へと改変させる。形状の変化のため、堆積した結晶は、単に水が表面を通過して流れる結果起きる機械的な攪拌によって表面から容易に除去される。本発明のハイブリッド共重合体は、オルトリン酸カルシウムといったリン酸カルシウムベースのスケール形成の抑制において特に有用である。さらに、本発明のこれらの重合体は、同様に、炭酸カルシウムスケールの結晶成長も改質する。
【0058】
本発明の重合体は、水性系にそのまま(neat)添加することができ、そうでなければ様々な水処理組成物へと配合された後に水性系に添加することも可能である。堆積物質を低レベルに維持するために大量の水が連続的に処理される或る種の水性系では、重合体を0.5mg/Lといった低レベルで使用することができる。使用される重合体の量に関する上限は処理される特定の水性系に左右される。例えば、粒子物質を分散させるために使用する場合は、重合体を約0.5〜約2,000mg/Lの範囲のレベルで使用することができる。鉱物スケールの形成又は堆積を抑制するために使用する場合は、重合体を約0.5〜約100mg/Lの範囲のレベルで使用することができる。もう一つの実施形態においては、重合体を約3〜約20mg/Lの範囲で、そしてもう一つの実施形態では、約5〜約10mg/Lの範囲のレベルで使用することができる。
【0059】
ひとたび調製されると、ハイブリッド共重合体及びその他の水処理化学薬品を内含する水処理組成物中にハイブリッド共重合体を取込むことが可能である。これらのその他の化学薬品には、例えばオルトホスフェート、亜鉛化合物及びトリルトリアゾールといった腐食抑制剤が含まれ得る。上述の通り、水処理組成物中で利用されている本発明の重合体の量は、処理対象である特定の水性系について望まれる処理レベルに基づいて変動する可能性がある。水処理組成物は一般に、約10〜約25重量パーセントのハイブリッド共重合体を含有する。
【0060】
ハイブリッド共重合体は、伝熱装置、ボイラー、二次石油採収井、自動食洗器、及び硬水で洗浄される基材中などといった鉱物塩の安定化が重要であるあらゆる水性系中で用いることができる。ハイブリッド共重合体は、その他のスケール抑制剤がうまく作用できない応力を受けた条件下で特に効果的である。
【0061】
ハイブリッド共重合体は、鉄、亜鉛、ホスホネート及びマンガンを含む(ただしそれらに制限されない)水中に見られる多くの鉱物を安定化させることができる。該重合体は同様に水性系中に見られる粒子を分散させることができる。
【0062】
本発明のハイブリッド共重合体は、多くのタイプのプロセス中においてスケールを抑制し、鉱物を安定化しかつ粒子を分散させるために使用することができる。かかるプロセスの例としては、サトウキビ圧搾機スケール防止剤;土壌改良;採鉱、油田、パルプ及び製紙業、並びにその他の類似プロセスといった工業プロセス中で使用するための水の処理;汚水処理;地下水浄化;逆浸透法及び脱塩といったプロセスによる浄水;空気洗浄器系;腐食抑制;ボイラー水処理;生物分散剤として;及びスケール及び腐食堆積物の化学清浄が含まれる。当業者であれば、ハイブリッド共重合体が有用であろうと考えられるその他数多くの類似の利用分野を思いつくことができる。
【0063】
清浄用配合物:
本発明の重合体は、同様に、ホスフェートベースのビルダーを含有する多種多様な清浄用配合物中でも用いることができる。例えば、これらの配合物は、粉末、液体又は、錠剤或いはカプセルといた単位用量の形をしていて良い。さらに、これらの配合物は同様に、衣類、皿類及び浴室及び厨房の表面といった硬質表面などの多様な基材を清浄するために使用することができる。該配合物は、工業及び施設清浄の利用分野において表面を清浄するためにも使用することできる。
【0064】
清浄用配合物においては、重合体を洗浄液中で最終用途レベルにまで希釈することができる。該重合体は標準的に、水性洗浄溶液中に0.01〜1000ppmで用量決定される。重合体は繊維、食洗器及び硬質表面清浄の利用分野においてホスフェートベースのスケールの堆積を最小化させることができる。重合体は同様に、繊維上への付着物を最小化させるのを補助する。その上、重合体は皿上での膜や斑点の形成を最小化させる。皿には、ガラス、プラスチック、磁器、刃物類(cutlery)などが含まれる。重合体はさらに、これらの系中において乾燥プロセスのスピードアップも補助する。理論によって拘束されるわけではないが、これらの重合体のもつ疎水性が、上述のような表面上での乾燥速度の加速を補助するものと考えられている。
【0065】
洗剤配合物中の任意の構成成分には、イオン交換体、アルカリ、腐食防止物質、再堆積防止物質、蛍光増白剤、芳香剤、染料、フィラー、キレート剤、酵素、繊維漂白剤及び増白剤、泡立ち制御剤、溶剤、ヒドロトロープ、漂白剤、漂白前駆物質、緩衝剤、土壌除去剤、土壌放出剤、繊維柔軟剤及び乳白剤が含まれるがこれらに制限されるわけではない。これらの任意の構成成分は、洗剤配合物の最大90重量%までを構成していて良い。
【0066】
本発明の重合体は、食器手洗い用、食洗器用及び硬質表面の清浄用配合物中に取込まれ得る。該重合体は、自動食洗器配合物中に用いられるすすぎ補助配合物中にも取込まれ得る。自動食洗器配合物は、ホスフェート及びカーボネートといったビルダー、漂白剤及び漂白活性化剤及びシリケートを含有することができる。これらの配合物は同様に、酵素、緩衝剤、香料、消泡剤、プロセス助剤などといったその他の成分も含むことができる。次亜塩素酸漂白剤を含む食洗器ゲル系は、漂白剤の安定性を維持するのに必要な高いpHのために重合体に対して特に確実である。これらの系の中では、エステル基(例えば芳香族)を含まない疎水物が特に有用である。
【0067】
硬質表面清浄用配合物は、付加成分及び担体を含有することができる。付加成分の例としては、制限無く、緩衝剤、ビルダー、キレート剤、フィラー塩、分散剤、酵素、酵素増強剤、香料、増粘剤、粘土、溶剤、界面活性剤及びそれらの混合物が含まれる。
【0068】
当業者であれば、所要の重合体量は清浄用配合物そして重合体が配合物に提供する利益によって左右されることを認識することだろう。一つの態様において、使用レベルは、清浄用配合物の約0.01重量%〜約10重量%であり得る。もう一つの実施態様においては、使用レベルは、清浄用配合物の約0.1重量%〜約2重量%である。
【0069】
油田スケールの利用分野:
油田の利用分野ではスケールが大きな問題である。地下石油採収作業には、地層を通した石油を移動させ、流体が除去されるにつれて貯留層内の圧力を維持するために油層中へ水性溶液を注入することが関与し得る。注入される水は、地表水(湖沼又は河川)であれ海水(海洋作業)であれ、スルフェート及びカーボネートといった可溶性塩を含み得る。これらの塩は、石油含有貯留層(地層水)内に既に存在するイオンと相容性をもたない傾向がある。地層水は、ストロンチウム、バリウム、亜鉛及びカルシウムなど、通常の地表水中では遥かに低いレベルでしか遭遇することのない或る種のイオンを高濃度で含有している可能性がある。硫酸バリウム及び炭酸カルシウムなどといった部分的に可溶性である無機塩は、温度及び圧力といった溶解度に影響を及ぼす条件が、製造井の孔井内部及びトップサイドで変化するにつれて製造水から沈殿することが多い。これは、地層水、海水又は製造水など相容性の無い水に遭遇した場合に特に良く見られる。
【0070】
硫酸バリウムと硫酸ストロンチウムは、予防するのが困難な非常に硬く可溶性の非常に低いスケールを形成する。硫酸バリウム又はその他の無機過飽和塩は、地層上に沈殿してスケールを形成し、かくして地層を閉塞させ貯留層からの石油の採収が制限される。不溶性塩は、同様に、製造チュービング表面及び付随する抽出機器上にも沈殿する可能性があり、製造性、製造効率を制限し安全性を脅かす。或る種の含油地層水は、400ppm又はそれ以上という高濃度のバリウムを含有していることが知られている。硫酸バリウムはとりわけ不溶性の高い塩を形成し、その可溶性は温度と共に急速に低下することから、スケール形成を抑制しかつ油層及びトップサイドプロセス及び安全用機器の閉塞を予防することは困難である。
【0071】
スルフェートスケールの溶解は困難で、高いpH、長い接触時間、熱及び循環を必要とし、トップサイドにおいてのみ実施可能である。代替的には、フライス作業そして一部のケースでは高圧水洗浄を用いることができる。これらは費用が高く侵襲的な手法であり、プロセスの運転停止を必要とする。本発明のハイブリッド共重合体は、スルフェートスケール、特に孔井のスルフェートスケールを最小化する。
【0072】
粒子用分散剤:
本発明に従った重合体は、紙塗工、塗料及びその他のコーティングの利用分野といった利用分野において顔料用の分散剤として使用することができる。本発明の重合体によって分散され得る顔料の例としては、二酸化チタン、カオリン粘土、改質カオリン粘土、炭酸カルシウム及び合成炭酸カルシウム、酸化鉄、カーボンブラック、タルク、雲母、シリカ、シリケート、及び酸化アルミニウムが含まれる。標準的に、顔料が疎水性になればなるほど、本発明に従った重合体はより高い性能を粒子の分散において発揮する。これらの粒子物質は、コーティング、プラスチック、ゴム、ろ過製品、化粧品、紙塗工、及び食品を含む(ただしこれらに制限されない)さまざまな利用分野において見られる。
【0073】
ファイバーグラスサイジング:
ファイバーグラスは通常、フェノールホルムアルデヒド樹脂又はポリアクリル酸ベースの樹脂を用いてサイジングされる。前者は最終用途での使用の間にホルムアルデヒドを放出するという欠点を有する。ポリアクリル酸樹脂系は、原油価格の上昇に起因して不経済になってきた。従って、この業界には再生型サイジング物質のニーズが存在する。本発明のハイブリッド重合体はこの利用分野にうまく適合する。本発明のハイブリッド重合体は、それら単独で或いはフェノールホルムアルデヒド又はポリアクリル酸バインダー系と組み合わせて使用することが可能である。
【0074】
バインダー組成物は一般に、成形されつつあるファイバーグラスマットに対して適切なスプレーアプリケータを用いて塗布される。スプレーアプリケータは、成形されたファイバーグラスマット全体にわたりバインダー溶液を均等に分配するのを助ける。固形分は標準的に、合計溶液の約5〜25重量パーセントの量で水性溶液中に存在する。バインダーは、同様に、エアーレススプレー、エアースプレー、パッド法、飽和法及びロールコーティングを含む(ただしこれらに制限されない)当該技術分野において既知のその他の方法によっても塗布可能である。
【0075】
繊維由来からの残留熱がバインダーから離れるように水分を蒸発させる。結果として得られたハイソリッドバインダーコーティング型ファイバーグラスマットは、ガラス繊維の復元力によって垂直方向に拡張できる。次にグラスファイバーマットを加熱してバインダーを硬化させる。標準的に、硬化オーブンは、130℃〜325℃の温度で作動する。しかしながら、本発明のバインダー組成物は約110℃〜約150℃というさらに低い温度で硬化され得る。一つの態様においては、バインダー組成物は約120℃で硬化され得る。ファイバーグラスマットは、標準的に、約5秒〜約15分で硬化される。一つの態様においては、ファイバーグラスマットは約30秒〜約3分で硬化される。硬化温度及び硬化時間は同様に、使用される触媒の温度及びレベルにも左右される。次に、ファイバーグラスマットを発送用に圧縮することができる。ファイバーグラスマットの重要な特性は、ひとたび圧縮が取り除かれると、マットがその垂直最大高さまで実質的に復帰することである。ハイブリッド重合体ベースのバインダーは、壁/天井内での使用のためにロールを開梱した後にファイバーグラス断熱材が元に戻ることができるようにする可撓性フィルムを生成する。
【0076】
共重合体バインダー組成物を用いて処理されたファイバーグラス又はその他の不織物質は、ロール又は芯材の形の断熱材又は防音材として;屋根及び床製品、天井タイル、床タイル用の強化マットとして;プリント回路板及びバッテリーセパレータ用のマイクロガラスベースの基板として;そしてフィルターストック及びテープストック用及び非セメント質及びセメント質の両方の組積み工コーティングの補強用として、有用である。
【実施例】
【0077】
以下の実施例は、本発明の例示を意図するものであるが、いかなる形であれ本発明の範囲を制限するように意図されたものではない。本発明の広さ及び範囲は、専ら本書に添付のクレームによってのみ制限されるものとする。
【0078】
実施例1 − ハイブリッド共重合体の合成
連鎖移動剤として200グラムのクエン酸(CA)50%溶液(0.52モル)を収容する反応装置を100℃まで加熱した。238グラムの2‐アクリルアミド‐2‐メチルプロパンスルホン酸ナトリウム(NaAMPS)50%溶液(0.52モル)を含有する単量体溶液を、1.5時間にわたり反応装置に添加した。100グラムの脱イオン水中の6.2グラムの過硫酸ナトリウムから成る開始剤溶液を同時に2時間にわたり反応装置に添加した。クエン酸とNaAMPSのモル数に基づくクエン酸連鎖移動剤のモルパーセントは50%であった。反応生成物をさらに2時間100℃で保持した。最終ハイブリッド共重合体は、明るい黄色の溶液であった。
【0079】
実施例2〜4 − ハイブリッド共重合体の合成
連鎖移動剤としてより少ない量のクエン酸を用いて実施例1を反復した。溶液中に残されたクエン酸の残留量を液体クロマトグラフィー(「LC」)によって測定した。重合体内に取り込まれたクエン酸の量を、初期投入物に対して添加されたクエン酸とGCにより測定された残留量の差異により計算した。これらの重合体の数平均分子量(Mn)を、ゲル浸透クロマトグラフィー(「GPC」)により測定した。
【0080】
【表1】

【0081】
該データは、共重合体に取り込まれたクエン酸の量がCA+NaAMPSの合計モル数に基づいたCAのモル%の増加につれて増大することを示している。同様に、重合体の分子量は、増加する量のCAが反応に添加された場合に減少する。この分子量の低下は、連鎖移動剤としてクエン酸が重合体に取り込まれていることを明らかに実証している。
【0082】
実施例5 − ハイブリッド共重合体の合成
200グラムの50%クエン酸(CA)溶液(0.52モル)と212.4グラムの50%NaOH溶液(2.65モル)を収容する反応装置を100℃まで加熱した。100グラムのアクリル酸(1.39モル)を含有する単量体溶液を、1.5時間にわたり反応装置に添加した。30グラムの脱イオン水中の6.6グラムの過硫酸ナトリウムから成る開始剤溶液を同時に2時間にわたり反応装置に添加した。反応生成物をさらに2時間100℃で保持した。最終生成物は、無色透明の溶液であった。
【0083】
実施例6 − ハイブリッド共重合体の合成
連鎖移動剤として25グラムの48%グルコン酸溶液と25グラムの水を収容する反応装置を100℃まで加熱した。238グラムの2‐アクリルアミド‐2‐メチルプロパンスルホン酸ナトリウム(NaAMPS)50%溶液(0.52モル)を含有する単量体溶液を、1.5時間にわたり反応装置に添加した。100グラムの脱イオン水中の6.2グラムの過硫酸ナトリウムから成る開始剤溶液を同時に2時間にわたり反応装置に添加した。反応生成物をさらに2時間100℃で保持した。
【0084】
実施例7 − ハイブリッド共重合体の合成
50グラムの48%グルコン酸溶液を収容する反応装置を100℃まで加熱した。238グラムの2‐アクリルアミド‐2‐メチルプロパンスルホン酸ナトリウム(NaAMPS)50%溶液(0.52モル)を含有する単量体溶液を、1.5時間にわたり反応装置に添加した。100グラムの脱イオン水中の6.2グラムの過硫酸ナトリウムから成る開始剤溶液を同時に2時間にわたり反応装置に添加した。反応生成物をさらに2時間100℃で保持した。
【0085】
実施例8 − ハイブリッド共重合体の合成
119グラムの水に溶解された多糖類連鎖移動剤としての23.8グラムのマルトデキストリン(Cargill MD(商標)01918、アイオワ州シダーラピッズのCargill Inc.から入手可能な普通コーンスターチの酵素変換により得られた噴霧乾燥マルトデキストリン)を収容した反応装置を100℃まで加熱した。238グラムの2‐アクリルアミド‐2‐メチルプロパンスルホン酸ナトリウム(NaAMPS)50%溶液(0.52モル)を含有する単量体溶液を、1.5時間にわたり反応装置に添加した。100グラムの脱イオン水中の6.2グラムの過硫酸ナトリウムから成る開始剤溶液を同時に2時間にわたり反応装置に添加した。反応生成物をさらに2時間100℃で保持した。最終生成物は、明るいオレンジ色の液体であった。溶液は一年以上にわたり安定しており、いかなる架橋の兆候も示さなかった。
【0086】
実施例9 − ハイブリッド共重合体の合成
多糖類連鎖移動剤としての100グラムのマルトデキストリン(Cargill MD(商標)01918デキストリン、アイオワ州シダーラピッズのCargill Inc.から入手可能な普通コーンスターチの酵素変換により得られた噴霧乾燥マルトデキストリン)を当初100℃まで加熱した反応装置中で135グラムの水に溶解させた。その後、108グラムのメタクリル酸を含有する単量体溶液を1.5時間にわたり反応装置に添加した。28グラムの脱イオン水中の6.2グラムの過硫酸ナトリウムから成る開始剤溶液を、単量体溶液と同時に、ただし2時間にわたり反応装置に添加した。反応生成物をさらに2時間100℃で保持した。次に、90.7グラムの50%NaOH溶液を添加して重合体を中和させた。
【0087】
実施例10A − ハイブリッド共重合体の合成
50グラムの水を収容する反応装置を100℃まで加熱した。50グラムのアクリル酸、多糖類連鎖移動剤としての25グラムのマルトデキストリン(Cargill MD(商標)01960デキストリン、アイオワ州シダーラピッズのCargill Inc.から入手可能なデンプンの酵素変換により得られた噴霧乾燥マルトデキストリン)、及び60グラムの水を含有する溶液を、45分間にわたり反応装置に添加した。28グラムの脱イオン水中の3.3グラムの過硫酸ナトリウムから成る開始剤溶液を同一の時間枠にわたり同時に反応装置に添加した。(開始剤の補給が単量体の補給以降も継続する場合、反応生成物は、大半の場合に望ましくないものである架橋ゲルとなることが指摘された。)反応生成物をさらに2時間100℃で保持した。次に、42.5グラムの50%NaOH溶液を添加して重合体を中和させた。
【0088】
最終生成物は、数ヶ月にわたり安定している均質なコハク色の溶液であった。対照的に、ポリアクリル酸ナトリウム(ALCOSPERSE(登録商標)602N重合体、テネシー州チャタヌガーのAlco Chemicalより入手可能)とマルトデキストリン(Cargill MD(商標)01960デキストリン)との混合物は、24時間未満の時間で層分離した。最終ハイブリッド共重合体に層分離が不在であることは、アクリル酸重合体がマルトデキストリンに化学的に結合していることを例示している。
【0089】
実施例10B − 反応性を低下させた単量体からのハイブリッド共重合体の合成
75グラムの水と27.8グラムの50%NaOHを収容する反応装置を100℃まで加熱した。50グラムのアクリル酸、多糖類連鎖移動剤としての25グラムのマルトデキストリン(Cargill MD(商標)01960デキストリン)、及び60グラムの水を含有する溶液を45分間にわたり反応装置に添加した。28グラムの脱イオン水中の3.3グラムの過硫酸ナトリウムから成る開始剤溶液を60分間にわたり同時に反応装置に添加した(単量体補給の添加を超えた開始剤補給物添加の延長)。反応生成物をさらに1時間100℃で保持した。重合体は架橋の兆候を全く示さない透明なコハク色の溶液であった。このことは、(ここでも反応の最中に単量体を中和させることにより)単量体の反応性を低下させることによって架橋を除去し得ることを例示している(中和剤が反応後に添加された実施例10Aとは逆)。
【0090】
実施例10C − 架橋剤の添加を伴うハイブリッド共重合体の合成
50グラムの水を収容する反応装置を100℃まで加熱した。50グラムのアクリル酸、多糖類連鎖移動剤としての25グラムのマルトデキストリン(Cargill MD(商標)01960デキストリン)、及び60グラムの水を含有する溶液を45分間にわたり反応装置に添加した。28グラムの脱イオン水中の3.3グラムの過硫酸ナトリウムから成る開始剤溶液を60分間にわたり同時に反応装置に添加した。単量体溶液を添加した後、反応生成物は架橋ゲルを形成する兆候を示し始めた。この時点で、開始剤溶液の添加を継続する間に0.5グラムのイソプロパノールを添加した。反応生成物はほぼ瞬間的に溶液に戻った。反応生成物をさらに1時間100℃で保持した。次に、27.8グラムの50%NaOH溶液と25グラムの水を添加して重合体を中和させた。最終生成物は透明の暗黄色溶液であった。このことは、実施例10Aで指摘された架橋が、イソプロパノールといった従来の架橋剤を添加することによって除去され得ることを例示している。
【0091】
実施例11− 多数の合成単量体を用いたハイブリッド共重合体の合成
50グラムの水と連鎖移動剤としての50グラムのグリセロールを収容する反応装置を85℃まで加熱した。25グラムのアクリル酸と25グラムのスチレンを含有する溶液を45分間にわたり反応装置に添加した。30グラムの脱イオン水中の3.3グラムの過硫酸ナトリウムから成る開始剤溶液を60分間にわたり同時に反応装置に添加した。反応生成物をさらに2時間85℃で保持した。次に、28グラムの50%NaOH溶液と53グラムの水を60分間にわたり反応装置に添加した。最終生成物は不透明の黄色溶液であった。
【0092】
実施例12− 連鎖誘導剤としてデンプンを用いたハイブリッド共重合体の合成
50グラムの水を収容する反応装置を85℃まで加熱した。50グラムのアクリル酸、多糖類連鎖移動剤としての25グラムの分解酸化デンプン(カルボン酸基を伴う低分子量デンプン)、及び60グラムの水を含む溶液を45分間にわたり反応装置に添加した。28グラムの脱イオン水中の6.2グラムの過硫酸ナトリウムから成る開始剤溶液を45分間にわたり同時に反応装置に添加した。(開始剤の補給が単量体の補給以降も続行された場合、反応生成物は使用不能なものである架橋ゲルとなるということが指摘された。)反応生成物をさらに2時間100℃で保持した。次に重合体を、42.5グラムの50%NaOH溶液を添加することによって中和した。
【0093】
実施例13− 超吸収剤及び粘弾性改良剤の合成
50グラムの水を収容する反応装置を100℃まで加熱した。50グラムのアクリル酸、多糖類連鎖移動剤としての25グラムのマルトデキストリン(Cargill MD(商標)01960)、及び60グラムの水を含む溶液を45分間にわたり反応装置に添加した。28グラムの脱イオン水中の3.3グラムの過硫酸ナトリウムから成る開始剤溶液を60分間にわたり同時に反応装置に添加した。大半の場合望ましくないものである架橋ゲルが形成される。しかしながら、このタイプの物質を中和させ噴霧乾燥させることが可能である。噴霧乾燥された生成物を超吸収剤又は粘弾性改良剤として使用することが可能である。
【0094】
実施例14− 分散性評価
実施例1及び4の重合体を粘土懸濁/分散性試験で評価した。いかなる重合体も含まない対照も同様に試験した。これらの物質を、ポリアクリル酸ナトリウム試料(NapAA)(ALCOSPERSE(登録商標)602N、テネシー州チャタヌガーのAlco Chemicalより入手可能)に対して比較した。脱イオン水に2%の粘土(ピンク粘土:ありふれた黒粘土、50:50)を加えることによって試料を調製した。試料を磁気撹拌プレート上で20分間撹拌し、その後0.1%の活性重合体を添加し、試料をさらに1分間撹拌した。次に懸濁液を100mlのメスシリンダー中に注ぎ、休ませた。図1は、全ての重合体の1時間経過後の写真である。
【0095】
図1は、本発明の重合体が優れた分散剤であることを示している。さらにこれらは、性能面で、このタイプの利用分野において標準的に用いられている合成重合体(NaPAA)に匹敵するものである。
【0096】
実施例15− 再堆積防止剤
本発明の重合体を、一般的な粉末洗剤配合物中で再堆積防止特性について試験した。粉末洗剤配合物は以下の通りであった:
【0097】
成分 wt%
ネオドール25−7 10
炭酸ナトリウム 46
ケイ酸ナトリウム 3
硫酸ナトリウム 40
【0098】
試験は、3枚の綿製及び3枚のポリエステル/綿製の生地見本を用いて実寸の洗濯機中で実施された。使用された土壌は17.5グラムのピンク粘土、17.5グラムのありふれた黒粘土及び6.9gの油混合物(植物/鉱物、72:25)であった。試験は、1回分の洗濯あたり100gの粉末洗剤を用いて3サイクルについて行われた。重合体の用量は、洗剤の1.0重量%で決定された。洗浄条件として、33.9℃(93°F)の温度、150ppmの硬度及び10分の洗浄サイクルが用いられた。
【0099】
最初のサイクルの前及び3回目のサイクルの後のL(輝度)a(色成分)b(色成分)値を、分光光度計を用いてそれぞれL1、a1、b1及びL2、a2、b2として測定した。次に、ΔE(色差)値を下記の等式を用いて計算した:
ΔE=[(L1−L22+(a1−a22+(b1−b220.5
該データは、洗浄液中においてたとえ低濃度であっても本発明の重合体が再堆積防止/土壌懸濁特性を呈することを示している(ΔEが低くなると、優れた再堆積防止特性を示す)。
【0100】
【表2】

【0101】
例16 − 硬質表面清浄配合物
酸清浄剤
成分 wt%
クエン酸(50%溶液) 12.0
リン酸 1.0
3モルのEOを伴うC12〜C15直鎖アルコールエトキシラート 5.0
アルキルベンゼンスルホン酸 3.0
実施例4の重合体 1.0
水 78.0
アルカリ性清浄剤
成分 wt%
水 89.0
トリポリリン酸ナトリウム 2.0
ケイ酸ナトリウム 1.9
NaOH(50%) 0.1
ジプロピレングリコールモノメチルエーテル 5.0
オクチルポリエトキシエタノール、12〜13モルEO 1.0
実施例5の重合体 1.0
【0102】
実施例17 − 自動食洗器粉末配合物
成分 wt%
トリポリリン酸ナトリウム 25.0
炭酸ナトリウム 25.0
7モルのEOを伴うC12~15直鎖アルコールエトキシラート 3.0
実施例10Aの重合体 4.0
硫酸ナトリウム 43.0
【0103】
実施例18 − 水処理組成物
水処理重合体は、ひとたび調製されたならば、水溶性重合体及びその他の水処理化学薬品を含む水処理組成物中に取り込まれるのが好ましい。かかるその他の化学薬品としては、オルトホスフェート、亜鉛化合物及びトリルトリアゾールと言った腐食抑制剤が含まれる。以上に示した通り、水処理組成物中で利用される本発明の重合体のレベルは、処理対象の特定の水性系について望まれる処理レベルによって決定される。水処理組成物は一般に、水溶性重合体を10〜25重量パーセントに含む。従来の水処理組成物は当業者にとって既知であり、水処理組成物の例が以下の4つの配合物の形で記されている。本発明の重合体を含有するこれらの組成物は、例えば油田で利用される。
【0104】
配合物1 配合物2
実施例9の重合体 11.3% 実施例6の重号体 11.3%
水 47.7% 水 59.6%
HEDP 4.2% HEDP 4.2%
NaOH 10.3% TKPP 18.4%
モリブデン酸ナトリウム 24.5% NaOH 7.2
トリルチアゾール 2.0% トリルチアゾール 2.0%
pH 13.0 pH 12.64
【0105】
配合物3 配合物4
実施例12の重体 22.6% 実施例1の重体 11.3%
水 51.1% 水 59.0%
HEDP 8.3% HEDP 4.2%
NaOH 14.0% NaOH 19.3%
トリルトリアゾール 4.0% トリルチアゾール 2.0%
pH 12.5 ZnCl2 4.2%
pH 13.2
ここで、HEDPは1−ヒドロキシエチリデン−1,1ジホスホン酸であり、TKPPはトリ−カリウムポリホスフェートである。
【0106】
実施例19 − セメント組成物
上述の実施例1で記述された重合体(重合体の9重量%水溶液)を様々な量で塩基セメントスラリーのテスト分量に添加した。塩基セメント組成物には、Lone StarクラスH水硬性セメント及び乾燥セメントの38重量%の水が含まれていた。該塩基組成物は1ガロンあたり16.4ポンドの密度を有していた。本発明の重合体を含有するこれらの組成物は、例えば油田で利用されている。
【0107】
実施例20 − 無リン自動食洗器粉末配合物
成分 wt%
クエン酸ナトリウム 30
実施例1の重合体 10
二ケイ酸ナトリウム 10
過ホウ酸塩一水和物 6
テトラアセチルエチレンジアミン 2
酵素 2
硫酸ナトリウム 30
【0108】
実施例21 − 手洗い布地用洗剤
成分 wt%
直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩 15〜30
非イオン界面活性剤 0〜3
トリポリリン酸ナトリウム(STPP) 3〜20
ケイ酸ナトリウム 5〜10
硫酸ナトリウム 20〜50
ベントナイト粘土/方解石 0〜15
実施例4の重合体 1〜10
水 残り
【0109】
実施例22 − 柔軟材を伴う布地用洗剤
成分 wt%
直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩 2
アルコールエトキシラート 4
STPP 23
実施例11の重合体 1
炭酸ナトリウム 5
過ホウ酸四水和物 12
モンモリロナイト粘土 16
硫酸ナトリウム 20
香料、FWA、酵素、水 残り
【0110】
実施例23 − 洗濯用固形/ペースト状石鹸
成分 wt%
直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩 15〜30
ケイ酸ナトリム 2〜5
STPP 2〜10
実施例10Aの重合体 2〜10
炭酸ナトリウム 5〜10
方解石 0〜20
尿素 0〜2
グリセロール 0〜2
カオリン 0〜15
硫酸ナトリウム 5〜20
香料、FWA、酵素、水 残り
【0111】
実施例24 − 液体洗剤配合物
成分 wt%
直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩 10
硫酸アルキル 4
アルコール(C12〜C15)エトキシラート 12
脂肪酸 10
オレイン酸 4
クエン酸 1
NaOH 3.4
プロパンジオール 1.5
エタノール 5
実施例11の重合体 1
エタノールオキシダーゼ 5u/ml
水、香料、微量物質 100充分量
【0112】
本発明について詳細にわたり記述し例示してきたが、それが単に例示並びに実施例を目的とするものであって、制限として考慮されるべきものではないことを理解すべきである。本発明の精神並びに範囲は、以下に提示されているいずれかのクレームの条項によってのみ制限されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】1時間経過後の全ての重合体の写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイブリッド共重合体の製造方法であって、
開始剤溶液の存在下で連鎖移動剤を含有する天然由来のヒドロキシルを用いて単量体溶液を重合させる段階を含み、そこでは
該開始剤溶液が金属イオンベースの酸化還元系ではなく、そして
該共重合体の合計重量に基づき、該単量体溶液が約25重量%〜約99.9重量%の量で存在し、該連鎖移動剤が約0.1重量%〜約75重量%の量で存在する、
製造方法。
【請求項2】
共重合体の主鎖としての合成重合体、及び
該共重合体の連鎖終端部分としての天然由来のヒドロキシル含有重合体、
を含んで成るハイブリッド共重合体。
【請求項3】
請求項2に記載の重合体を含んで成る、水処理系内のカーボネート及びホスフェートスケールを予防する際に使用するための水処理組成物であって、該重合体が該組成物の約10重量%〜約25重量%の量で該組成物中に存在する、水処理組成物。
【請求項4】
請求項2に記載の重合体を含んで成る清浄用配合物であって、該重合体が該清浄用配合物の約0.01重量%〜約10重量%の量で存在する、清浄用配合物。
【請求項5】
単数又は複数の燐ベースのビルダー及び/又はカーボネートビルダーをさらに含んで成る、請求項4に記載の清浄用配合物。
【請求項6】
前記清浄用配合物が自動食洗器洗剤配合物である、請求項4に記載の清浄用配合物。
【請求項7】
ビルダー、界面活性剤、酵素、溶剤、ヒドロトロープ、充填剤、漂白剤、香料及び/又は着色料をさらに含んで成る、請求項6に記載の自動食洗器洗剤配合物。
【請求項8】
単数又は複数の界面活性剤をさらに含んで成る、請求項4に記載の清浄用配合物。
【請求項9】
請求項4に記載の清浄用配合物を含んで成る、粉末又は液体又は単位用量洗剤配合物。
【請求項10】
請求項2に記載の重合体を含んで成る鉱物分散剤。
【請求項11】
分散されている鉱物がタルク、二酸化チタン、雲母、沈殿炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、沈殿シリカ、シリケート、酸化鉄、粘土、カオリン粘土又はそれらの組み合せである、請求項10に記載の鉱物分散剤。
【請求項12】
請求項2の重合体を含んで成る水性系処理組成物であって、水性系中で炭酸カルシウム結晶の成長を改質することができる水性系処理組成物。
【請求項13】
前記水性系が水処理系、油田系または清浄系である、請求項12に記載の水性系処理組成物。
【請求項14】
請求項2に記載の重合体を含んで成る水性系処理組成物であって、スルフェートスケールを最小化することができる水性系処理組成物。
【請求項15】
前記水性系が油田系でありかつ最小化されるホスフェートスケールが硫酸バリウムスケールである、請求項14に記載の水性系処理組成物。
【請求項16】
請求項2に記載の重合体を含んで成る、ファイバーグラス用バインダー。
【請求項17】
請求項2に記載の重合体を含んで成る、超吸収剤又は粘弾性改良剤。

【図1】
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【公開番号】特開2007−46051(P2007−46051A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−198098(P2006−198098)
【出願日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【出願人】(590000824)ナショナル スターチ アンド ケミカル インベストメント ホールディング コーポレイション (112)
【Fターム(参考)】