説明

ハイブリッド建設機械

【課題】油圧ポンプが吸収するパワーに応じてエンジン回転数を変更しても、油圧ポンプの吐出流量が変化せず、ハイブリッドではない通常の建設機械と同様の操作感覚が得られるハイブリッド建設機械を提供する。
【解決手段】 油圧アクチュエータに作動油を供給する可変容量型の油圧ポンプ1、油圧ポンプ1を回転駆動できるように備えられたエンジン2、油圧ポンプ1を回転駆動できるように備えられた電動モータ3、エンコンダイヤル4、コントローラ4及び操作レバー5を備える。コントローラは、エンジン2の発生するパワーに応じて、燃料消費量が少なくなるようにエンジン2の回転数を変更し、エンジン2の回転数とエンコンダイヤル4のダイヤル位置と操作レバー5の操作量に基づいて、油圧ポンプ1の容量を変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン及び電動モータの双方で油圧アクチュエータの油圧源である油圧ポンプを駆動するハイブリッド建設機械に係り、特に、油圧アクチュエータの操作性を変更することなく燃料消費量を低減する手段に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題や原油高騰の問題などに対処するため、各工業製品に対して省エネ志向が強まっている。これを受けて、これまでエンジンのみで油圧駆動システムを駆動する方式が主流であった建設機械についても、エンジン及び電動モータを併用するハイブリッド化が検討されている。建設機械をハイブリッド化した場合、排気ガスの低減効果のほか、エンジンの高効率駆動、伝達効率の向上及び回生電力の回収などの省エネルギ効果を期待できる。
【0003】
従来、この種のハイブリッド建設機械としては、油圧ポンプが吸収するパワーに応じて電動モータ(発電電動機)を力行又は回生させ、これによりエンジンと電動モータのパワー配分を変更し、エンジンを高効率範囲で運転することによって、燃料消費量の低減を図るものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−290607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のハイブリッド建設機械において、燃料消費量を更に少なくするためには、油圧ポンプが吸収するパワーに応じてエンジン回転数を変更すれば良い。しかしながら、特許文献1に記載の構成でエンジン回転数を変更すると、油圧ポンプの吐出流量も変化するため、レバー操作量に対する油圧アクチュエータの動作が、ハイブリッドではない通常の建設機械と異なるようになり、オペレータに操作上の違和感を与えることになる。
【0006】
本発明の目的は、油圧ポンプが吸収するパワーに応じてエンジン回転数を変更しても、油圧ポンプの吐出流量が変化せず、ハイブリッドではない通常の建設機械と同様の操作感覚が得られるハイブリッド建設機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するため、油圧アクチュエータの作動油を吐出する可変容量型の油圧ポンプと、前記油圧ポンプを駆動するエンジンと、前記エンジンにより駆動され、発電電力を蓄電装置に充電すると共に、前記蓄電装置に充電された電力により駆動され、前記エンジンによる前記油圧ポンプの駆動をアシストする電動モータと、前記油圧ポンプ、前記エンジン及び前記電動モータの駆動を制御するコントローラとを備えたハイブリッド建設機械において、前記コントローラは、前記エンジンが発生するパワーを演算するエンジンパワー演算手段と、前記エンジンパワーを発生するために必要な燃料が最小となる前記エンジンの第1回転数を演算する第1回転数演算手段と、前記エンジンの目標回転数の下限値である第2回転数を演算する第2回転数演算手段と、前記第1回転数と前記第2回転数とに基づいて前記エンジンの目標回転数を演算する目標回転数演算手段と、前記エンジンの実回転数が前記目標回転数に近づくように前記エンジンを制御するエンジン制御手段を備えることを特徴とする。
【0008】
また本発明は、前記構成のハイブリッド建設機械において、前記コントローラに、前記油圧ポンプから吐出される作動油の目標流量を演算する目標流量演算手段と、前記目標流量と前記エンジンの実回転数に基づいて前記油圧ポンプの容量を制御する油圧ポンプ制御手段を更に備えることを特徴とする。
【0009】
また本発明は、前記構成のハイブリッド建設機械において、前記コントローラに、前記油圧ポンプから吐出される作動油の目標流量を演算する目標流量演算手段と、前記目標流量と前記エンジンの目標回転数に基づいて前記油圧ポンプの容量を制御する油圧ポンプ制御手段を更に備えることを特徴とする。
【0010】
また本発明は、前記構成のハイブリッド建設機械において、前記目標流量演算手段は、エンジンコントロールダイヤルのダイヤル位置と操作レバーの操作量に基づいて目標流量を演算することを特徴とする。
【0011】
また本発明は、前記構成のハイブリッド建設機械において、前記エンジンパワー演算手段は、前記エンジンの燃料噴射量と回転数に基づいてエンジンパワーを演算することを特徴とする。
【0012】
また本発明は、前記構成のハイブリッド建設機械において、前記エンジンパワー演算手段は、前記油圧ポンプの吐出流量と吐出圧と前記電動モータのパワーと補機の負荷に基づいてエンジンパワーを演算することを特徴とする。
【0013】
また本発明は、前記構成のハイブリッド建設機械において、前記エンジンと前記電動モータの合計パワーの目標最大値を演算する目標最大合計パワー演算手段を備え、前記第2回転数演算手段は、前記目標最大合計パワーを前記エンジンと前記電動モータで発生させるために最低限必要な前記エンジンの回転数を演算することを特徴とする。
【0014】
また本発明は、前記構成のハイブリッド建設機械において、前記目標最大合計パワー演算手段は、エンジンコントロールダイヤルのダイヤル位置に基づいて目標最大合計パワーを演算することを特徴とする。
【0015】
また本発明は、前記構成のハイブリッド建設機械において、前記油圧ポンプの目標流量を確保するために最低限必要な前記エンジンの回転数を演算する第3回転数演算手段を更に備え、前記目標回転数演算手段は、前記第1回転数演算手段から出力される第1回転数と、前記第2回転数演算手段から出力される第2回転数と、前記第3回転数演算手段から出力される第3回転数の中から、最も大きい値を選択することを特徴とする。
【0016】
また本発明は、前記構成のハイブリッド建設機械において、前記第2回転数演算手段は、前記油圧ポンプの目標流量を確保するために最低限必要な前記エンジンの回転数を演算することを特徴とする。
【0017】
また本発明は、油圧アクチュエータの作動油を吐出する可変容量型の油圧ポンプと、前記油圧ポンプを駆動するエンジンと、前記エンジンにより駆動され、発電電力を蓄電装置に充電すると共に、前記蓄電装置に充電された電力により駆動され、前記エンジンによる前記油圧ポンプの駆動をアシストする電動モータと、前記油圧ポンプ、前記エンジン及び前記電動モータの駆動を制御するコントローラとを備えたハイブリッド建設機械において、前記エンジンが発生するパワーが増加した時に、前記エンジンの回転数が増加し、前記エンジンが発生するパワーが減少した時に、前記エンジンの回転数が減少することを特徴とする。
【0018】
また本発明は、前記構成のハイブリッド建設機械において、操作レバーの操作量が増加したとき又は前記エンジンの回転数が減少したときに、前記油圧ポンプの容量が増加し、操作レバーの操作量が減少したとき又は前記エンジンの回転数が増加したときに、前記油圧ポンプの容量が減少することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、エンジンパワーの増加に応じてエンジンの目標回転数(実回転数)が増加するので、燃料消費量を低減できる。また、エンジン回転数の増加に応じて油圧ポンプの傾転角が減少するので、油圧ポンプから吐出される作動油の吐出流量を一定にすることができ、レバー操作量に対する油圧アクチュエータの動作をハイブリッドではない通常の建設機械と同様にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施例1に係るハイブリッド建設機械のシステム構成を示すブロック図である。
【図2】エンジンパワー演算手段に備えられるマップの1例を示すグラフ図である。
【図3】第1回転数演算手段に備えられるマップの1例を示すグラフ図である。
【図4】目標最大合計パワー演算手段に備えられるマップの1例を示すグラフ図である。
【図5】第2回転数演算手段に備えられるマップの1例を示すグラフ図である。
【図6】目標流量演算手段に備えられるマップの1例を示すグラフ図である。
【図7】第3回転数演算手段に備えられるマップの1例を示すグラフ図である。
【図8】本発明の動作を示すグラフ図である。
【図9】実施例2に係るハイブリッド建設機械のシステム構成を示すブロック図である。
【図10】実施例3に係るハイブリッド建設機械のシステム構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、油圧ショベルを例にとって、本発明に係るハイブリッド建設機械の実施形態を説明する。
【実施例1】
【0022】
図1に示すように、実施例1に係るハイブリッド建設機械は、図示しない油圧アクチュエータの作動油を吐出する可変容量型の油圧ポンプ1と、油圧ポンプ1を駆動するエンジン2と、エンジンにより駆動され、発電電力を図示しない蓄電装置に充電すると共に、この図示しない蓄電装置に充電された電力により駆動され、エンジン2による油圧ポンプ1の駆動をアシストする電動モータ3と、これら油圧ポンプ1、エンジン2及び電動モータ3の駆動を制御するコントローラ1Aとを備える。また、オペレータが操作するエンジンコントロールダイヤル(以下、「エンコンダイヤル」と略称する。)4と、操作レバー5とを備える。
【0023】
コントローラ1Aは、エンジン2が発生するパワーを演算するエンジンパワー演算手段11と、エンジンパワーを発生するために必要な燃料が最小となるエンジンの実回転数を演算する第1回転数演算手段12と、エンジン2と電動モータ3の合計パワーの目標最大値を演算する目標最大合計パワー演算手段13と、エンジン2の目標回転数の下限値を定める第2回転数演算手段14と、油圧ポンプ1から吐出される作動油の目標流量を演算する目標流量演算手段15と、油圧ポンプ1の目標流量を確保するために最低限必要なエンジンの回転数を演算する第3回転数演算手段16と、第1回転数演算手段12で演算された第1回転数、第2回転数演算手段14で演算された第2回転数及び第3回転数演算手段16で演算された第3回転数の中から最も大きい値を選択する目標回転数演算手段17と、エンジンの実回転数が目標回転数演算手段17で演算された目標回転数に近づくようにエンジン3を制御するエンジン制御手段18と、エンジン2の実回転数が目標回転数演算手段17で演算された目標回転数に近づくように電動モータ3で発生させるトルクを制御する電動モータ制御手段19と、目標流量演算手段15から出力される目標流量とエンジン2の実回転数に基づいて油圧ポンプ1の傾転量(容量)を制御する油圧ポンプ制御手段20を備えている。
【0024】
可変容量型の油圧ポンプ1は、図示しないブーム、アーム、バケット等の油圧アクチュエータに作動油を供給するもので、その容量(1回転で吐出する作動油の量)は、斜板の傾転角を変更することによって変更することができる。
【0025】
エンジン2は、油圧ポンプ1を回転駆動できるように油圧ポンプ1と機械的に接続されている。エンジン2は、図示しない燃料タンクに蓄えられた燃料を消費してパワーを発生する。そのパワーは、燃料噴射量を変更することによって変更することができる。
【0026】
電動モータ3は、油圧ポンプ1を回転駆動できるように油圧ポンプ1と機械的に接続されている。よって、電動モータ3は、エンジン2とも機械的に接続されている。電動モータ3は、図示しない蓄電装置の電力を消費することによりパワーを発生(力行)することもできるし、慣性エネルギやエンジン2で発生したパワーを吸収して発電(回生)し、蓄電装置に蓄えることもできる。
【0027】
エンコンダイヤル4は、そのダイヤル位置を操作者が変更できるようになっている。ハイブリッドではない通常の油圧ショベルでは、エンコンダイヤル4のダイヤル位置に基づいてエンジン2の目標回転数を決定するが、本発明においては、エンコンダイヤル4のダイヤル位置に基づいてエンジン2と電動モータ3の目標最大合計パワーを決定する。目標最大合計パワーの決定方法については後述する。
【0028】
操作レバー5は、操作者がブーム、アーム、バケット等の油圧アクチュエータを操作するためのものである。
【0029】
エンジンパワー演算手段11は、エンジン2の燃料噴射量と回転数から、例えば図2のようなマップを用いてエンジンパワーを演算する。このマップは、あらかじめ実験等によって、エンジン2の燃料噴射量と回転数と発生パワーの関係を調べて、設定する。
【0030】
第1回転数演算手段12は、エンジンパワー演算手段11で演算したエンジンパワーから、例えば図3のようなマップを用いて、以下で説明する第1回転数を演算する。即ち、このマップは、あらかじめ実験等によって、エンジン2のパワーとそのパワーを発生するために必要な燃料が最小となるエンジン回転数の関係を調べて、その回転数を第1回転数として設定する。
【0031】
目標最大合計パワー演算手段13は、エンコンダイヤル4のダイヤル位置から、例えば図4のようなマップを用いて目標最大合計パワーを演算する。このマップは、あらかじめ実験等によって、エンコンダイヤル4のダイヤル位置とそのダイヤル位置におけるハイブリッドではない通常の油圧ショベルのエンジンで発生可能な最大パワーの関係を調べて、その最大パワーを目標最大合計パワーとして設定する。なお、本明細書において、「ハイブリッドではない通常の油圧ショベル」とは、そのエンジンパワーが、本発明のエンジン2と電動モータ3の合計パワーとほぼ等しい機種を意味する。
【0032】
第2回転数演算手段14は、目標最大合計パワー演算手段13で演算した目標最大合計パワーから、例えば図5のようなマップを用いて次の第2回転数を演算する。即ち、このマップは、あらかじめ実験等によって、エンジン2と電動モータ3の合計パワーとそのパワーを発生するために最低限必要なエンジン回転数の関係を調べて、その合計パワーを目標最大合計パワー、そのエンジン回転数を第2回転数として設定する。
【0033】
目標流量演算手段15は、エンコンダイヤル4のダイヤル位置と操作レバー5の操作量から、例えば図6のようなマップを用いて目標流量を演算する。このマップは、あらかじめ実験等によって、エンコンダイヤル4のダイヤル位置と操作レバー5の操作量とハイブリッドではない通常の油圧ショベルの油圧ポンプの流量の関係を調べて、その流量を目標流量として設定する。
【0034】
第3回転数演算手段16は、目標流量演算手段15で演算した目標流量から、例えば図7のようなマップを用いて次の第3回転数を演算する。即ち、このマップは、あらかじめ実験等によって、油圧ポンプ1の流量とその流量を確保するために最低限必要なエンジン回転数の関係を調べて、その流量を目標流量、そのエンジン回転数を第3回転数として設定する。
【0035】
目標回転数演算手段17は、第1回転数、第2回転数、第3回転数の最も大きい値を選択する。
【0036】
エンジン制御手段18は、エンジン2の実際の回転数が、目標回転数演算手段17で演算した目標回転数に近づくように、エンジン2の燃料噴射量や燃料噴射タイミングを制御する。例えば、回転数と目標回転数の偏差と偏差の積分値にそれぞれゲインを乗じ、それらを加算した値の燃料を噴射する。
【0037】
電動モータ制御手段19は、エンジン2の実際の回転数が、目標回転数演算手段17で演算した目標回転数に近づくように、電動モータ3で発生させるトルクを制御する。例えば、回転数と目標回転数の偏差と偏差の積分値にそれぞれゲインを乗じ、それらを加算した値のトルクを発生させる。なお、電動モータ3で発生させるトルクは、蓄電装置の残電力量が多い時は大きくしても良いし、残電力量が少ない時は小さく、または発電しても良い。
【0038】
油圧ポンプ制御手段20は、エンジン2の実際の回転数と、目標流量演算手段15で演算した目標流量から、マップを用いて油圧ポンプ1の目標傾転角を演算し、傾転角を変更する。このマップは、あらかじめ実験等によって、エンジン回転数と傾転角と流量の関係を調べて、設定する。傾転角の変更は、油圧制御、または、電気制御で行う。油圧制御の場合は、電磁弁を駆動することによって、傾転角を変更するための油圧を制御する。電気制御の場合は、傾転角を変更するための電動モータ(電動モータ3とは別の電動モータ)を駆動することによって、傾転角を変更する。
【0039】
なお、油圧ポンプ1で吸収するパワーが、目標最大合計パワー演算手段13で演算した目標最大合計パワーを上回らないように、油圧ポンプ制御手段20で傾転角の変更に制限をかけても良いし、目標流量演算手段15で演算する目標流量に、目標最大合計パワーを油圧ポンプ1の吐出圧で割った値で制限をかけても良い。
【0040】
また、図1の例では、油圧ポンプ1が1つしか備えられていないが、複数であっても良く、その場合は、目標流量演算手段15及び油圧ポンプ制御手段20についても、油圧ポンプ1の数量と同数だけ設ける。そして、第3回転数演算手段16では、複数の目標流量演算手段15で演算した複数の目標流量のうち、最も大きな目標流量から第3回転数を演算する。
【0041】
以下、図8を用いて、実施例1に係るハイブリッド建設機械の動作を説明する。なお、本例は、エンジン2で大きなパワーを発生する場合、回転数を高くした方が、燃料消費が小さくなる場合の例である。
【0042】
図8(a)に示すように、エンコンダイヤル4のダイヤル位置と操作レバー5の操作量が一定の期間に、油圧アクチュエータにかかる負荷が増加して油圧ポンプ1の吐出圧が増加すると、それに応じて、図8(b)に示すように、エンジンパワーが増加する。エンジンパワーが増加すると、それに応じて、図8(c)に示すように、第1回転数と目標回転数が増加する。このとき、第2回転数と第3回転数については、エンコンダイヤル4のダイヤル位置と操作レバー5の操作量が一定のため、変化しない。また、目標回転数が増加すると、それに応じて、図8(d)に示すように、エンジン回転数が増加し、燃料消費量を最小に抑えられる。また、エンジン回転数が増加すると、それに応じて、図8(e)に示すように、油圧ポンプ1の容量が減少する。その結果、図8(f)に示すように、油圧ポンプ1の流量は一定になり、レバー操作量に対する油圧アクチュエータの動作をハイブリッドではない通常の建設機械と同様にすることができる。
【実施例2】
【0043】
次に、図9を用いて、実施例2に係るハイブリッド建設機械の構成を示す。この図から明らかなように、本発明の実施例2は、油圧ポンプ制御手段20で、エンジン2の実回転数の代わりに、目標回転数演算手段17で演算した目標回転数を用いたことを特徴とする。その他については、実施例1に係るハイブリッド建設機械と同じであるので、対応する部分に同一の符号を付して、説明を省略する。目標回転数は実際の回転数よりも早く変化するため、油圧ポンプ1の傾転角の変更に時間がかかる場合に有効である。
【実施例3】
【0044】
次に、図10を用いて、実施例3に係るハイブリッド建設機械の構成を示す。この図から明らかなように、本発明の実施例3は、エンジンパワー演算手段11で、エンジン2の燃料噴射量と回転数の代わりに、油圧ポンプ1の流量と吐出圧と電動モータ3のパワーとエアコン等の補機の負荷を用いることを特徴とする。
【0045】
即ち、実施例3のエンジンパワー演算手段11は、まず、油圧ポンプ1の流量と吐出圧を乗じて油圧ポンプ1の吸収パワーを演算する。次に、電動モータ制御手段19の出力に基づいて電動モータ3の発生パワーを演算する。次に、エアコン等の補機の消費パワーを、例えばエアコンのスイッチの状態から演算する。最後に、油圧ポンプ1の吸収パワーと補機の消費パワーの和から、電動モータ3の発生パワーを減じた値を、エンジンパワーとする。その他については、実施例1に係るハイブリッド建設機械と同じであるので、対応する部分に同一の符号を付して、説明を省略する。
【0046】
なお、エンジンパワー演算手段11では、油圧ポンプ1の流量の代わりに、目標流量演算手段15で演算した目標流量を用いても良い。また、実施例2と同様に、油圧ポンプ制御手段20では、エンジン2の実際の回転数の代わりに、目標回転数演算手段17で演算した目標回転数を用いても良い。
【符号の説明】
【0047】
1 油圧ポンプ
2 エンジン
3 電動モータ
4 エンコンダイヤル
5 操作レバー
11 エンジンパワー演算手段
12 第1回転数演算手段
13 目標最大合計パワー演算手段
14 第2回転数演算手段
15 目標流量演算手段
16 第3回転数演算手段
17 目標回転数演算手段
18 エンジン制御手段
19 電動モータ制御手段
20 油圧ポンプ制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧アクチュエータの作動油を吐出する可変容量型の油圧ポンプと、前記油圧ポンプを駆動するエンジンと、前記エンジンにより駆動され、発電電力を蓄電装置に充電すると共に、前記蓄電装置に充電された電力により駆動され、前記エンジンによる前記油圧ポンプの駆動をアシストする電動モータと、前記油圧ポンプ、前記エンジン及び前記電動モータの駆動を制御するコントローラとを備えたハイブリッド建設機械において、
前記コントローラは、前記エンジンが発生するパワーを演算するエンジンパワー演算手段と、前記エンジンパワーを発生するために必要な燃料が最小となる前記エンジンの第1回転数を演算する第1回転数演算手段と、前記エンジンの目標回転数の下限値である第2回転数を演算する第2回転数演算手段と、前記第1回転数と前記第2回転数とに基づいて前記エンジンの目標回転数を演算する目標回転数演算手段と、前記エンジンの実回転数が前記目標回転数に近づくように前記エンジンを制御するエンジン制御手段を備えることを特徴とするハイブリッド建設機械。
【請求項2】
請求項1に記載のハイブリッド建設機械において、
前記コントローラに、前記油圧ポンプから吐出される作動油の目標流量を演算する目標流量演算手段と、前記目標流量と前記エンジンの実回転数に基づいて前記油圧ポンプの容量を制御する油圧ポンプ制御手段を更に備えることを特徴とするハイブリッド建設機械。
【請求項3】
請求項1に記載のハイブリッド建設機械において、
前記コントローラに、前記油圧ポンプから吐出される作動油の目標流量を演算する目標流量演算手段と、前記目標流量と前記エンジンの目標回転数に基づいて前記油圧ポンプの容量を制御する油圧ポンプ制御手段を更に備えることを特徴とするハイブリッド建設機械。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載のハイブリッド建設機械において、
前記目標流量演算手段は、エンジンコントロールダイヤルのダイヤル位置と操作レバーの操作量に基づいて目標流量を演算することを特徴とするハイブリッド建設機械。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のハイブリッド建設機械において、
前記エンジンパワー演算手段は、前記エンジンの燃料噴射量と回転数に基づいてエンジンパワーを演算することを特徴とするハイブリッド建設機械。
【請求項6】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のハイブリッド建設機械において、
前記エンジンパワー演算手段は、前記油圧ポンプの吐出流量と吐出圧と前記電動モータのパワーと補機の負荷に基づいてエンジンパワーを演算することを特徴とするハイブリッド建設機械。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のハイブリッド建設機械において、
前記エンジンと前記電動モータの合計パワーの目標最大値を演算する目標最大合計パワー演算手段を備え、
前記第2回転数演算手段は、前記目標最大合計パワーを前記エンジンと前記電動モータで発生させるために最低限必要な前記エンジンの回転数を演算することを特徴とするハイブリッド建設機械。
【請求項8】
請求項7に記載のハイブリッド建設機械において、
前記目標最大合計パワー演算手段は、エンジンコントロールダイヤルのダイヤル位置に基づいて目標最大合計パワーを演算することを特徴とするハイブリッド建設機械。
【請求項9】
請求項7又は請求項8に記載のハイブリッド建設機械において、
前記油圧ポンプの目標流量を確保するために最低限必要な前記エンジンの回転数を演算する第3回転数演算手段を更に備え、
前記目標回転数演算手段は、前記第1回転数演算手段から出力される第1回転数と、前記第2回転数演算手段から出力される第2回転数と、前記第3回転数演算手段から出力される第3回転数の中から、最も大きい値を選択することを特徴とするハイブリッド建設機械。
【請求項10】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のハイブリッド建設機械において、
前記第2回転数演算手段は、前記油圧ポンプの目標流量を確保するために最低限必要な前記エンジンの回転数を演算することを特徴とするハイブリッド建設機械。
【請求項11】
油圧アクチュエータの作動油を吐出する可変容量型の油圧ポンプと、前記油圧ポンプを駆動するエンジンと、前記エンジンにより駆動され、発電電力を蓄電装置に充電すると共に、前記蓄電装置に充電された電力により駆動され、前記エンジンによる前記油圧ポンプの駆動をアシストする電動モータと、前記油圧ポンプ、前記エンジン及び前記電動モータの駆動を制御するコントローラとを備えたハイブリッド建設機械において、
前記エンジンが発生するパワーが増加した時に、前記エンジンの回転数が増加し、前記エンジンが発生するパワーが減少した時に、前記エンジンの回転数が減少することを特徴とするハイブリッド建設機械。
【請求項12】
請求項11に記載のハイブリッド建設機械において、
操作レバーの操作量が増加したとき又は前記エンジンの回転数が減少したときに、前記油圧ポンプの容量が増加し、操作レバーの操作量が減少したとき又は前記エンジンの回転数が増加したときに、前記油圧ポンプの容量が減少することを特徴とするハイブリッド建設機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−57347(P2012−57347A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−201102(P2010−201102)
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】