説明

ハイブリッド式建設機械

【課題】本発明は、回生電力によるバッテリの過充電を防止したハイブリッド式建設機械を提供することを課題とする。
【解決手段】 油圧発生機14は、エンジン11の出力を油圧に変換し油圧駆動部に供給する。電動発電機12はエンジンに接続され、電動機及び発電機の両方として機能する。蓄電器19は、電動発電機12に電力を供給して電動機として機能させる。電気駆動部は、蓄電器19及び電動発電機12からの電力により駆動され、且つ回生電力を発生して蓄電器19及び電動発電機12の少なくとも一方に供給する。電気遮断装置40は、電動発電機12と蓄電器19との間に設けられ、制御部30により開閉制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建設機械に係り、特に2つの動力源を併用して効率的に作業を行うハイブリッド式建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の動力と電動機の動力を併用して効率的に動作するハイブリッド式の作業機械が開発され用いられるようになっている。ハイブリッド式の作業機械として、いわゆるパラレル方式の駆動形態をとるものが知られている。
【0003】
パラレル方式の駆動形態では、油圧ポンプと、発電機作用と電動機作用を行なう動力機とが、共通の動力源としての内燃機関(エンジン)にパラレルに接続される。油圧ポンプによって油圧アクチュエータが駆動されるとともに、動力機の発電機作用によって蓄電装置に充電が行われる。この蓄電装置からの電力により動力機を電動機として動作させてエンジンをアシストする。なお、動力機としては、一台で発電機作用と電動機作用の双方を行なう兼用機(発電機兼電動機)を用いる場合と、別々の発電機と電動機を併用する場合とがある。
【0004】
このようなハイブリッド式の作業機械によると、エンジンの負荷を軽減し、エンジンを高効率範囲で運転することによって省エネルギーを実現することができる。しかし、従来のハイブリッド式の作業機械は、以下のような問題を有している。
【0005】
リチウムイオン蓄電器等のバッテリ(二次電池)やキャパシタ(電気二重層コンデンサ)等の蓄電装置の充放電特性は、その充電量に依存しており、充電量が低くなるほど最大充電力は大きく、最大放電力は小さくなる。そこで、このような蓄電装置の充電量に関係なくエンジンと蓄電装置のパワー配分を決めているため、負荷状況によっては蓄電装置の充電量が少な過ぎる、あるいは多すぎる状態となる。この結果、蓄電装置の能力を有効に利用できないとともに、蓄電装置の劣化を招くことがある。
【0006】
このような蓄電装置の劣化の問題は、ハイブリッド式自動車においても同様に生じる。そこで、走行用の電動機とエンジンにより駆動される発電機との間にスイッチを設け、惰行運転時や制動時にはスイッチをオフにすることで、発電機からの充電を阻止することが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2006−141116
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ハイブリッド式建設機械では、電気駆動部が複数あることが多く、電気駆動系からの回生電力が大きくなり、バッテリの充電可能量を上回るおそれがある。このような場合でも回生電力を全てバッテリの充電に回すと、バッテリが早期に劣化し、最悪の場合はバッテリが破壊してしまうおそれがある。
【0008】
本発明は上述の問題に鑑みなされたものであり、回生電力によるバッテリの過充電を防止したハイブリッド式建設機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の問題を解決するために、本発明によれば、エンジンの出力を油圧に変換し油圧駆動部に供給する油圧発生機と、前記エンジンに接続され、電動機及び発電機の両方として機能する電動発電機と、該電動発電機に電力を供給して電動機として機能させる蓄電器と、該蓄電器及び前記電動発電機からの電力により駆動され、且つ回生電力を発生して前記蓄電器及び前記電動発電機の少なくとも一方に供給する電気駆動部と、前記電動発電機の動作を制御する制御部と、前記電動発電機と前記蓄電器との間に設けられ、前記制御部により開閉制御される電気遮断装置とを有することを特徴とするハイブリッド式建設機械が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、蓄電器の充電率に基づいて蓄電器への電気通路を強制的に遮断することで、例えば電動発電機の発電電流による充電が行なわれないようにし、蓄電器の過充電を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0012】
まず、本発明が適用されるハイブリッド式建設機械の一例としてハイブリッド式パワーショベルについて説明する。
【0013】
図1はハイブリッド式パワーショベルの側面図である。パワーショベルの下部走行体1には、旋回機構2を介して上部旋回体3が搭載されている。上部旋回体3からブーム4が延在し、ブーム4の先端にアーム5が接続される。さらに、アーム5の先端にバケット6が接続される。ブーム4、アーム5及びバケット6は、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9によりそれぞれ油圧駆動される。また、上部旋回体3には、キャビン10及び動力源(図示せず)が搭載される。
【0014】
図2は、図1に示すパワーショベルの駆動系の構成を示すブロック図である。図2において、油圧系ラインは細い実線、電気系ラインは太い実線、電気制御系ラインは破線でそれぞれ示されている。
【0015】
機械式駆動部としてのエンジン11と、アシスト駆動部としての電動発電機12(アシストモータ12とも称する)は、ともに増力機としての減速機13(スプリッタとしても機能する)に接続されている。減速機13の出力軸には、油圧ポンプ14が接続されている。油圧発生機である油圧ポンプ14には、高圧油圧ライン16を介してコントロールバルブ17が接続されている。
【0016】
コントロールバルブ17は、油圧系の制御を行う制御装置である。コントロールバルブ17には、下部走行体1用の油圧モータ1A(右用)及び1B(左用)、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9が高圧油圧ラインを介して接続される。また、コントロールバルブ17には、ブーム回生バルブ7Aを介してブーム回生油圧モータ7Bが接続されている。
【0017】
電動発電機12には、インバータ18A及びコンバータ18Bを介して蓄電器としてのバッテリ19が接続されている。
【0018】
バッテリ19には、インバータ20及びコンバータ18Bを介して旋回モータ21が接続されている。旋回モータ21はパワーショベルにおける電気駆動部(電気負荷)であり、旋回テーブル22を回転させると共に回生電力を生成することができる。また、バッテリ19には、インバータ23を介して電気駆動部(電気負荷)であるブーム回生モータ24が接続されている。ブーム回生モータ24は、ブーム回生油圧モータ7Bに接続されており、ブーム回生油圧モータ7Bを駆動してブームシリンダ7を作動させることができると共に、ブーム回生油圧モータ7Bにより駆動されて回生電力を生成することができる。さらに、バッテリ19には、インバータ25を介して、電磁石よりなる電気駆動部(電気負荷)であるリフティングマグネット(略してリフマグと称する)25が接続されている。
【0019】
上述のように、電気負荷であるブーム回生モータ24、旋回モータ21、及びリフマグ26は、電力ライン27により電動発電機12に接続されており、電動発電機12からの電力により駆動可能である。また、バッテリ19は電力ライン28により電力ライン27の途中に接続されており、ブーム回生モータ24、旋回モータ21、及びリフマグ26は、バッテリ19からの電力によっても駆動可能である。さらに、バッテリ19は電力ライン27及び28により電動発電機12に接続されており、電動発電機12からの電力によりバッテリ19を充電することができると共に、バッテリ19からの電力で電動発電機12を駆動することもできる。
【0020】
以上の構成を有するパワーショベルは、エンジン11、電動発電機12、旋回モータ21及びブーム回生モータ24を動力源とするハイブリッド式の建設機械である。これらの動力源は、図1に示す上部旋回体3に搭載される。以下、各部について説明する。
【0021】
エンジン11は、例えば、ディーゼルエンジンで構成される内燃機関であり、その出力軸は減速機13の一方の入力軸に接続される。エンジン11は、建設機械の運転中は常時運転される。
【0022】
電動発電機12は、電動(アシスト)運転及び発電運転の双方が可能な電動機であればよい。ここでは、電動発電機12として、インバータ20によって交流駆動される電動発電機を示す。この電動発電機12は、例えば、磁石がロータ内部に埋め込まれたIPM(Interior Permanent Magnetic)モータで構成することができる。電動発電機12の回転軸は減速機13の他方の入力軸に接続される。
【0023】
減速機13は、2つの入力軸と1つの出力軸を有する。2つの入力軸には、エンジン11の駆動軸と電動発電機12の駆動軸がそれぞれ接続される。また、出力軸には油圧ポンプ14の駆動軸が接続される。エンジン11の負荷が大きい場合には、電動発電機12が電動(アシスト)運転を行い、電動発電機12の駆動力が減速機13の出力軸を経て油圧ポンプ14に伝達される。これによりエンジン11の駆動がアシストされる。一方、エンジン11の負荷が小さい場合は、エンジン11の駆動力が減速機13を経て電動発電機12に伝達されることにより、電動発電機12が発電運転による発電を行う。電動発電機12の電動(アシスト)運転と発電運転の切り替えは、コントローラ30により、エンジン11の負荷等に応じて行われる。
【0024】
油圧ポンプ14は、コントロールバルブ17に供給するための油圧を発生する油圧ポンプである。油圧ポンプ14で発生した油圧は、コントロールバルブ17を介して油圧負荷である油圧モータ1A、1B、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9の各々を駆動するために供給される。
【0025】
コントロールバルブ17は、高圧油圧ラインを介して接続される下部走行体1用の油圧モータ1A、1B、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9の各々に供給する油圧を運転者の操作入力に応じて制御することにより、これらを油圧駆動制御する油圧制御装置である。
【0026】
インバータ18は、上述の如く電動発電機12とバッテリ19との間に設けられ、コントローラ30からの指令に基づき、電動発電機12の運転制御を行う。これにより、インバータ18が電動発電機12の電動(アシスト)を運転制御している際には、必要な電力をバッテリ19から電動発電機12に供給する。また、電動発電機12の発電を運転制御している際には、電動発電機12により発電された電力をバッテリ19に充電する。
【0027】
蓄電器であるバッテリ19は、電動発電機12、旋回モータ21及びブーム回生モータ24の少なくともいずれかが電動運転あるいは力行運転を行っている際には、電動運転あるいは力行運転に必要な電力を供給するとともに、少なくともいずれかが発電運転あるいは回生運転を行っている際には、発電運転あるいは回生運転によって発生した発電電力あるいは回生電力を電気エネルギーとして蓄積するための電源である。
【0028】
インバータ20は、上述の如く旋回モータ21とバッテリ19との間に設けられ、コントローラ30からの指令に基づき、旋回モータ21に対して運転制御を行う。これにより、旋回モータ21が力行運転している際には、必要な電力がバッテリ19から旋回モータ21に供給される。また、旋回モータ21が回生運転をしている際には、旋回モータ21により発電された電力がバッテリ19に充電される。
【0029】
旋回モータ21は、力行運転及び回生運転の双方が可能な電動機であればよく、上部旋回体3の旋回機構2を駆動するために設けられている。力行運転の際には、旋回モータ21の回転駆動力が減速機にて増幅され、上部旋回体3は加減速制御されながら回転運動を行う。また、上部旋回体3の慣性回転により、減速機にて回転数が増大されて旋回モータ21に伝達され、回生電力を発生させることができる。ここでは、旋回モータ21として、PWM(Pulse Width Modulation)制御信号によりインバータ20によって交流駆動される電動機を示す。この旋回モータ21は、例えば、磁石埋込型のIPMモータで構成することができる。これにより、より大きな誘導起電力を発生させることができるので、回生時に旋回モータ21にて発電される電力を増大させることができる。
【0030】
なお、バッテリ19の充放電制御は、バッテリ19の充電状態、電動発電機12の運転状態(電動(アシスト)運転又は発電運転)、旋回用電動機21の運転状態(力行運転又は回生運転)に基づき、コントローラ30によって行われる。
【0031】
コントローラ30は、パワーショベルの駆動制御を行う制御装置であり、速度指令変換部、駆動制御装置、及び旋回駆動制御装置を含む。コントローラ30は、CPU(Central Processing Unit)及び内部メモリを含む演算処理装置で構成される。速度指令変換部、駆動制御装置、及び旋回駆動制御装置は、コントローラ30のCPUが内部メモリに格納された駆動制御用のプログラムを実行することにより実現される。
【0032】
次に、本発明の第1実施形態によるハイブリッド式建設機械について、図3を参照しながら説明する。図3は本発明の第1実施形態によるハイブリッド式建設機械の駆動系の構成を示すブロック図である。図3において、図2に示す構成部品と同等な部品には同じ符号を付し、その説明は省略する。
【0033】
本発明の第1実施形態によるハイブリッド式建設機械では、電力ラインを遮断することのできる電気遮断装置40が、バッテリ19に接続された電力ラインに設けられる。電気遮断装置40は、電力ライン27の途中に設けられた開閉器SW1と、電力ライン28の途中に設けられた開閉器SW2とを含む。開閉器SW1及びSW2の開閉動作はコントローラ30により制御される。
【0034】
なお、上述の開閉器SW1及びSW2は、コントローラ30からの信号により電気通路を開閉するものであればどのようなものでもよい。開閉器SW1及びSW2として、例えば、機械的に接点を開閉するリレー、あるいは電子的に開閉するソリッドステートリレー等、様々なものを用いることができる。
【0035】
開閉器SW1をON(閉)とすることにより、電動発電機(アシストモータ)12に電力を供給して電動(アシスト)運転することができ、且つ電動発電機12を発電機として運転して電力を出力させることができる。反対に、開閉器SW1をOFF(開)とすることにより、電動発電機(アシストモータ)12の電動(アシスト)運転を禁止し、且つ電動発電機12を発電機として運転することも禁止することができる。
【0036】
開閉器SW2をON(閉)とすることにより、バッテリ19の充放電が可能となる。すなわち、バッテリ19から電力を供給して各電気駆動部を駆動すると共に、バッテリ19に電力を供給して充電することができる。反対に、開閉器SW2をOFF(開)とすることにより、バッテリ19の充放電を禁止することができる。
【0037】
開閉器SW1及びSW2の開閉の組み合わせにより、駆動系を以下のように制御することができる。
【0038】
まず、開閉器SW1をONとし、且つ開閉器SW2をOFFとすることにより、バッテリ19の過充電を防止したり、充電率SOCの過度の上昇を抑制することができる。例えば、バッテリ19の充電率SOCが目標充電率より高くなった場合にSW2をOFFとすることで、例えば旋回モータ21により発生した回生電力がバッテリ19に供給されないようにし、バッテリ19を保護することができる。この場合、開閉器SW1はONとなっているので、回生電力は電動発電機12に供給され消費される。
【0039】
バッテリ19の蓄電率SOCが目標充電率より小さくなったら、開閉器SW2をONとすることでバッテリ19に電力を供給して充電可能な状態とする。これにより、例えば電動発電機12で発電された電力をバッテリ19に供給して充電することができる。
【0040】
また、旋回モータ21あるいはブーム回生モータ24のみを力行運転する際は、開閉器SW1をOFFとし、開閉器SW2をONとする。これにより、バッテリ19から放電された電力は電動発電機に供給されることなく、旋回モータ21あるいはブーム回生モータ24に供給されて、旋回テーブル22やブームシリンダ7を電気駆動することができる。
【0041】
以上のように、本実施形態において、制御部であるコントローラ30は、蓄電器であるバッテリ19の蓄電率に応じて電気遮断装置40の開閉動作を制御することで、バッテリ19を適切に保護することができる。
【0042】
次に、本発明の第2実施形態によるハイブリッド式建設機械について、図4を参照しながら説明する。図4は本発明の第2実施形態によるハイブリッド式建設機械の駆動系の構成を示すブロック図である。図4において、図3に示す構成部品と同等な部品には同じ符号を付し、その説明は省略する。
【0043】
本発明の第2実施形態によるハイブリッド式建設機械では、電力ラインを遮断することのできる電気遮断装置40Aが、バッテリ19に接続された電力ラインに設けられる。電気遮断装置40Aは、電力ライン27の途中に設けられた開閉器SW1と、電力ライン28の途中に設けられた開閉器SW2と、開閉器SW2に並列に接続された整流器RC1とを含む。開閉器SW1及びSW2の開閉動作はコントローラ30により制御される。
【0044】
開閉器SW1及びSW2の開閉の組み合わせにより、駆動系を以下のように制御することができる。
【0045】
まず、開閉器SW1をONとし、且つ開閉器SW2をOFFとすることにより、バッテリ19の過充電を防止したり、充電率SOCの過度の上昇を抑制することができる。例えば、バッテリ19の充電率SOCが目標充電率より高くなった場合にSW2をOFFとすることで、例えば旋回モータ21により発生した回生電力がバッテリ19に供給されないようにし、バッテリ19を保護することができる。この場合、開閉器SW1はONとなっているので、回生電力は電動発電機12に供給され消費される。ここで、開閉器SW1が壊れていたり誤動作してONとなっていなくても、整流器RC1が開閉器SW1に並列に接続されているので、回生電力を電動発電機12側へ確実に逃がすことができ、電気バッテリ19に加えて電気遮断装置40も保護することができる。
【0046】
バッテリ19の蓄電率SOCが目標充電率より小さくなったら、開閉器SW2をONとすることでバッテリ19に電力を供給して充電可能な状態とする。これにより、例えば電動発電機12で発電された電力をバッテリ19に供給して充電することができる。
【0047】
また、旋回モータ21あるいはブーム回生モータ24のみを力行運転する際は、開閉器SW1をOFFとし、開閉器SW2をONとする。これにより、バッテリ19から放電された電力は電動発電機に供給されることなく、旋回モータ21あるいはブーム回生モータ24に供給されて、旋回テーブル22やブームシリンダ7を電気駆動することができる。
【0048】
次に、本発明の第3実施形態によるハイブリッド式建設機械について、図5を参照しながら説明する。図5は本発明の第3実施形態によるハイブリッド式建設機械の駆動系の構成を示すブロック図である。図5において、図3に示す構成部品と同等な部品には同じ符号を付し、その説明は省略する。
【0049】
本発明の第3実施形態によるハイブリッド式建設機械では、電力ラインを遮断することのできる電気遮断装置40Bが、バッテリ19に接続された電力ラインに設けられる。電気遮断装置40Bは、電力ライン27の途中に設けられた電気切替装置42と、電力ライン28の途中に設けられた開閉器SW2とを含む。電気切替装置42は、開閉器SW1と、並列に接続された整流器RC1及びRC2とを含む。整流器RC1はバッテリ19から電動発電機12への方向にのみ電流が流れる回路を形成し、整流器RC2は電動発電機12からバッテリ19への方向にのみ電流が流れる回路を形成する。開閉器SW1及びSW2の開閉動作はコントローラ30により制御される。
【0050】
開閉器SW1及びSW2の開閉の組み合わせにより、駆動系を以下のように制御することができる。
【0051】
まず、開閉器SW1をNC側に切替え、且つ開閉器SW2をOFFとすることにより、バッテリ19の過充電を防止したり、充電率SOCの過度の上昇を抑制することができる。例えば、バッテリ19の充電率SOCが目標充電率より高くなった場合にSW2をOFFとし且つ開閉器SW1をNC側に切替えておくことで、例えば旋回モータ21により発生した回生電力がバッテリ19に供給されないようにし、バッテリ19を保護することができる。この場合、開閉器SW1はNC側に接続されているので、回生電力は整流器RC1及び開閉器SW1を通過して電動発電機12に供給され消費される。
【0052】
バッテリ19の蓄電率SOCが目標充電率より小さくなったら、開閉器SW2をONとし且つ開閉器SW1をNO側に切替えておくことで、電動発電機12で発電された電力をバッテリ19に供給して充電可能な状態とする。これにより、例えば電動発電機12で発電された電力をバッテリ19に供給して充電することができる。
【0053】
また、例えば旋回モータ21を力行運転するときには、開閉器SW2をOFFとし且つ開閉器SW1をNO側に切替える。これにより、バッテリ19に蓄積されている電力を電動発電機12側に供給することなく、旋回モータ21に供給することができる。
【0054】
また、バッテリ19の蓄電量が減少したら、開閉器SW2をOFFとし且つ開閉器SW1をNO側に切替えることで、バッテリ19から旋回モータ21への電力の供給を停止し、電動発電機12からの電力供給に変更することができる。この場合、整流器RC2が開閉器SW1と直列に接続されているので、例えば旋回モータ21の力行運転が急激に回生運転に変更しても、大きな回生電力が急激に電動発電機12に供給されることは無い。したがって、電動発電機12の手前に接続されているインバータ18Aを大きな回生電力から保護することができる。
【0055】
以上のように、本実施形態では、電気遮断装置40Bは電気切替装置42を含んでいる。電気切替装置42は、蓄電器であるバッテリ19から電動発電機12への方向にのみ電流が流れる回路と、電動発電機12からバッテリ19への方向にのみ電流が流れる回路との間で切替えることにより、バッテリ19を保護しながらインバータ18Aも保護することができる。
【0056】
次に、本発明の第4実施形態によるハイブリッド式建設機械について、図6を参照しながら説明する。図6は本発明の第4実施形態によるハイブリッド式建設機械の駆動系の構成を示すブロック図である。図6において、図3に示す構成部品と同等な部品には同じ符号を付し、その説明は省略する。
【0057】
本発明の第4実施形態によるハイブリッド式建設機械では、電力ラインを遮断することのできる電気遮断装置40が、バッテリ19に接続された電力ラインに設けられる。電気遮断装置40は、電力ライン27の途中に設けられた開閉器SW1と、電力ライン28の途中に設けられた開閉器SW2とを含む。開閉器SW1及びSW2の開閉動作はコントローラ30により制御される。
【0058】
以上の構成は上述の第1実施形態によるハイブリッド式建設機械と同じであるが、リフティングマグネット26がインバータ25を介して、インバータ18Aと電気遮断装置40との間に接続された点が異なる。すなわち、リフティングマグネット26を電気遮断装置40より電動発電機12側に接続することにより、開閉器SW2をOFFとしても、電動発電機12からインバータ18A及びインバータ25を介してリフティングマグネット26に電力を供給することができる。
【0059】
例えば、リフティングマグネット26を使用中に誤って開閉器SW2をOFFとしてしまった場合でも、電動発電機12からリフティングマグネット26に電力が供給されるので、リフティングマグネット26の電磁吸着力が無くなることはない。このため、リフティングマグネット26で持ち上げている吸着物が不意に落下することを防止することができる。これは、リフティングマグネット26のように不意に電力の供給が停止されると危険な状態となる電気駆動部に対して適用することが効果的であり、安全な運転を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】ハイブリッド式パワーショベルの側面図である。
【図2】図1に示すパワーショベルの駆動系の構成を表すブロック図である。
【図3】本発明の第1実施形態によるハイブリッド式建設機械の駆動系の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第2実施形態によるハイブリッド式建設機械の駆動系の構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の第3実施形態によるハイブリッド式建設機械の駆動系の構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の第4実施形態によるハイブリッド式建設機械の駆動系の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0061】
1 下部走行体
1A、1B 走行機構
2 旋回機構
3 上部旋回体
4 ブーム
5 アーム
6 バケット
7 ブームシリンダ
7A ブーム回生バルブ
7B ブーム回生油圧モータ
8 アームシリンダ
9 バケットシリンダ
10 キャビン
11 エンジン
12 電動発電機
13 減速機(スプリッタ)
14 油圧ポンプ
16 高圧油圧ライン
17 コントロールバルブ
18A,20,23,25 インバータ
18B コンバータ
19 バッテリ
21 旋回モータ
22 旋回テーブル
24 ブーム回生モータ
26 リフティングマグネット
27,28 電力ライン
30 コントローラ
40,40A,40B,40C 電気遮断装置
42 電気切替装置
SW1,SW2 開閉器
RC1,RC2 整流器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの出力を油圧に変換し油圧駆動部に供給する油圧発生機と、
前記エンジンに接続され、電動機及び発電機の両方として機能する電動発電機と、
該電動発電機に電力を供給して電動機として機能させる蓄電器と、
該蓄電器及び前記電動発電機からの電力により駆動され、且つ回生電力を発生して前記蓄電器及び前記電動発電機の少なくとも一方に供給する電気駆動部と、
前記電動発電機の動作を制御する制御部と、
前記電動発電機と前記蓄電器との間に設けられ、前記制御部により開閉制御される電気遮断装置と
を有することを特徴とするハイブリッド式建設機械。
【請求項2】
請求項1記載のハイブリッド式建設機械であって、
前記制御部は前記蓄電器の蓄電率に応じて前記電気遮断装置の開閉動作を制御することを特徴とするハイブリッド式建設機械。
【請求項3】
請求項1記載のハイブリッド式建設機械であって、
前記電気遮断装置は電気切替装置を含み、該電気切替装置は前記蓄電器から前記電動発電機への方向にのみ電流が流れる回路と前記電動発電機から前記蓄電器への方向にのみ電流が流れる回路との間で切替えることを特徴とするハイブリッド式建設機械。
【請求項4】
請求項1記載のハイブリッド式建設機械であって、
前記電気遮断装置は前記蓄電器と前記電動発電機との間で直列に接続された2つの開閉器を含み、前記電気駆動部は該2つの開閉器の間に接続されることを特徴とするハイブリッド式建設機械。
【請求項5】
請求項1記載のハイブリッド式建設機械であって、
前記電気駆動部の一部として電磁石よりなるリフティングマグネットを有し、
該リフティングマグネットは、前記電気遮断装置と前記電動発電機との間に接続されることを特徴とするハイブリッド式建設機械。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−235707(P2009−235707A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−81227(P2008−81227)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【出願人】(502246528)住友建機株式会社 (346)
【Fターム(参考)】