説明

ハイブリッド車用動力装置の搭載構造

【課題】本発明は、エンジンフードが高くなるのを抑えつつ、動力装置の占有スペースの増加を抑制するとともに、車体に伝わる振動を低減することを目的としている。
【解決手段】このため、エンジンルームに左右一対のサイドメンバを配置するとともに、エンジンルーム後部に車両幅方向に延びるサブフレームを配置し、エンジンと発電機とを備える発電装置と、走行用モータとデファレンシャル装置とを備える駆動装置とをエンジンルーム内に配置し、発電装置と駆動装置とをマウント機構を介して車体に取り付けたハイブリッド車用動力装置の搭載構造において、マウント機構は、発電装置用マウント部と駆動装置用マウント部とから構成されるとともに、発電装置と駆動装置との間に、両方の装置が動作した場合において両装置が接触しない程度の空間を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はハイブリッド車用動力装置の搭載構造に係り、特にエンジンフードの高さが高くなるのを抑え、動力装置の占有スペースの増加を抑制しつつ、動力装置から車体への振動の低減を図るハイブリッド車用動力装置の搭載構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド車は、エンジンフードに覆われたエンジンルームの車両幅方向両端部に左右一対のサイドメンバを配置するとともに、前記エンジンルームの後部に車両幅方向に延びるサブフレームを配置している。
そして、前記エンジンルーム内に発電装置と駆動装置とを備えるハイブリッド車用動力装置を配置している。
このとき、前記発電装置は、エンジンとこのエンジンの車両幅方向端部に連結する発電機とを備えている。
また、前記駆動装置は、前記発電装置の車両前後方向後方側に配置される走行用モータと該走行用モータの車両幅方向端部に連結するデファレンシャル装置とを備えている。
更に、前記発電装置と前記駆動装置とをマウント機構を介して車体に取り付けて前記ハイブリッド車用動力装置の搭載構造を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−68188号公報
【特許文献2】特開平11−99834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来のハイブリッド車用動力装置の搭載構造において、従来構造を開示する上記特許文献1には、エンジンルーム内にエンジンとこのエンジンの車両幅方向一端部に連結する発電機(11)とを配置し、この発電機の後端部にデファレンシャル装置が車両幅方向他端部に連結する走行用モータを一体的に取り付け、前記発電機と前記走行用モータとを車両前後方向に並べて配置し、前記エンジンと前記発電機と前記走行用モータから構成される動力装置を3つのマウントブラケットによって車体に支持した構造が記載されています。
しかし、上記特許文献1の開示するような構造では、車両を発進した際に、走行用モータに加わる過大なトルクが直接発電機やエンジンに伝達されてしまうため、走行用モータと発電機とエンジンとから過大な振動が車体へと伝達される虞があった。
また、このような構造では、重量物である走行用モータが発電機とエンジンとに連結されているため、車両の発進時に、走行用モータの反力によってエンジンと発電機とを含む動力装置を過大に振動または変位させる虞があった。
そして、これらを解決するために、マウントゴムを硬く(つまり、「マウントゴムのばね定数を高く」とも換言できる。)して、動力装置が受ける瞬間的な振動や変位を抑制する必要があった。
しかし、動力装置に硬いマウントゴム(または、「ばね定数の高いマウントゴム」とも換言できる。)を用いると、車両を走行したり、停止したりした場合に、硬いマウントゴムを介してエンジンの微振動が車体に伝わり易くなってしまい、ユーザの快適感を阻害する虞があった。
更に、前記走行用モータを発電機やエンジンに連結すると、エンジンの振動と走行用モータの振動とが互いに共振して、動力装置から車体への振動伝播が大きくなったり、動力装置の振動や変位が過大になったりする虞があった。
また、この動力装置の振動や変位が過大になることで、動力装置をエンジンルーム内に配置する際に、過大に変位する動力装置の移動量分を想定して、動力装置の周りに動力装置の振動や変位を吸収できる程度のスペースを確保する必要があり、エンジンルーム内に配置される動力装置の占有スペースが増加する虞があった。
【0005】
上述した特許文献1に記載の問題点を解決するために、上記特許文献2に開示する従来構造のような構造があった。
この特許文献2には、走行用モータ(本特許文献2では、「走行モータ(13)」)をマウントゴムを介して車体に取り付け、前記走行用モータの上側にエンジン(本特許文献2では、「発電用エンジン(10)」)とこのエンジンの車両幅方向端部に連結する発電機(本特許文献2では、「発電機(11)」)とを車体から車両上方に延びるポスト(5、6)を介して配置した構造が記載されています。
しかし、このような構造では、走行用モータの上方に発電機とエンジンとを積み重ねて配置しているため、エンジンと発電機と走行用モータとから成る動力装置の上方を覆うエンジンフードの高さが高くなるという問題があった。
また、このように走行用モータの上方にエンジンを配置した場合、エンジンの重心位置が高い位置となってしまい、エンジンのクランク軸線周りに生じる振動によって車両が振動し易くなるという問題があった。
更に、上記特許文献2では、高い位置に配置されたエンジンをマウントフレーム(2)から車両上方へ長く延びるポスト(5、6)で支持しているため、エンジンの振動がポスト(5、6)を介して車体により一層伝わり易くなり、ユーザの快適感を阻害するという問題があった。
【0006】
この発明は、ハイブリッド車用動力装置の搭載構造において、エンジンフードの高さが高くなるのを抑えつつ、動力装置が占有するスペースの増加を抑制するとともに、動力装置から車体に伝わる振動を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、この発明は、上述不都合を除去するために、エンジンフードに覆われたエンジンルームの車両幅方向両端部に左右一対のサイドメンバを配置するとともに、前記エンジンルームの後部に車両幅方向に延びるサブフレームを配置し、エンジンと該エンジンの車両幅方向端部に連結する発電機とを備える発電装置と、この発電装置の車両前後方向後方側に配置される走行用モータと該走行用モータの車両幅方向端部に連結するデファレンシャル装置とを備える駆動装置とを前記エンジンルーム内に配置し、前記発電装置と前記駆動装置とをマウント機構を介して車体に取り付けたハイブリッド車用動力装置の搭載構造において、前記マウント機構は、前記発電装置を前記サイドメンバまたは前記サブフレームに取り付ける発電装置用マウント部と、前記駆動装置を前記サイドメンバまたは前記サブフレームに取り付ける駆動装置用マウント部とから構成されるとともに、前記発電装置と前記駆動装置との間に、前記発電装置及び前記駆動装置の両方の装置が動作した場合において前記両装置が接触しない程度の空間を有することを特徴する。
【発明の効果】
【0008】
以上詳細に説明した如くこの発明によれば、発電装置と駆動装置との間で、エンジンから生じる振動とハイブリッド車の発進時に走行用モータから生じる比較的大きな振動とが互いに交流し合うのを防止できる。そのため、エンジンから生じる振動が発電装置から駆動装置に伝達されるのを防ぐことができるとともに、ハイブリッド車の発進時に走行用モータから生じる振動が駆動装置から発電装置に伝達されるのを防ぐことができる。
これによって、発電装置に、エンジンから生じる微振動を抑制するバネ定数が比較的小さいマウントゴムを用いることができるため、発電装置から車体に伝達される振動を低減できる。それに加えて、駆動装置には、走行用モータから生じる比較的大きい瞬間的な振動または反力を抑制するバネ定数が比較的大きなマウントゴムを用いることができるため、瞬間的な大きな振動または反力に対して駆動装置の振動や変位量を低減させることができる。さらに、前記空間によって発電装置と駆動装置とが互いに衝突し合うのが回避でき、発電装置と駆動装置とを保護できるとともに、互いの衝突によって発電装置と駆動装置とが大きく変位するのを防止でき、発電装置と駆動装置とから車体に伝達される振動伝播の増加を抑制できる。
また、駆動装置と発電装置とを車体の中で剛性の高いサイドメンバとサイドフレームに発電装置用マウント部と駆動装置用マウント部とを介して取り付けたため、駆動装置と発電装置とを安定して車体に支持できるとともに、各装置から車体に振動が伝わったとしても剛性の高いサイドメンバまたはサイドフレームで振動を低減することができる。
その結果、発電装置と駆動装置に作用する振動の特性にあったマウントゴムを用いることができるため、発電装置と駆動装置とから発生する振動が車体に伝わるのを抑制でき、ユーザに不快感を与えるのを防止できる。
また、このような構造では、駆動装置と発電装置とを車両前後に配置したため、特許文献2に開示される従来構造のように駆動装置を発電装置の上方に大きく突出させる必要がなくなる。
これによって、エンジンの重心位置を特許文献2に開示される従来構造に記載の位置よりも低い位置に配置でき、発電装置を車体に安定させることができ、発電装置を振動が増加するのを抑えることができる。
また、エンジンフードを上方へ移動させることなく、駆動装置と発電装置とをエンジンフードの下側に配置でき、エンジンフードの配置位置が高くなるのを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1はハイブリッド車の前部の側面図である。(実施例)
【図2】図2はハイブリッド車の前部の平面図である。(実施例)
【図3】図3はハイブリッド車の前部の正面図である。(実施例)
【図4】図4はハイブリッド車用動力装置の斜視図である。(実施例)
【図5】図5は図2のV−V線による断面図である。(実施例)
【図6】図6は図5の断面図にて走行用モータが車両前後方向に変位移動した状態を示す図である。(実施例)
【図7】図7は図5の断面図にて走行用モータが車両上下方向に変位移動した状態を示す図である。(実施例)
【図8】図8はハイブリッド車の電力の流れを示す概略図である。(実施例)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下図面に基づいてこの発明の実施例を詳細に説明する。
【実施例】
【0011】
図1〜図8はこの発明の実施例を示すものである。
図1〜図3、図5、図8において、1はハイブリッド車、2はハイブリッド車1の車体、3はハイブリッド車1用のハイブリッド車用動力装置、4はハイブリッド車1のエンジンフード、5はハイブリッド車1の前輪である。
そして、前記ハイブリッド車1の前部には、図2及び図4に示す如く、エンジンフード4とダッシュパネル6とによってエンジンルーム7を区画して形成する。
【0012】
前記ハイブリッド車1のエンジンフード4に覆われたエンジンルーム7の車両幅方向両端部に左右一対のサイドメンバ8、9を配置するとともに、前記エンジンルーム7の後部に車両幅方向に延びるサブフレーム10を配置する。
また、前記エンジンルーム7内には、発電装置11と駆動装置12とを配置する。
このとき、発電装置11は、エンジン13と該エンジン13の車両幅方向端部に連結する発電機14とを備えている。
前記駆動装置12は、前記発電装置11の車両前後方向後方側に配置される走行用モータ15と該走行用モータ15の車両幅方向端部に連結するデファレンシャル装置16とを備えている。
そして、前記発電装置11と前記駆動装置12とをマウント機構17を介して前記車体2に取り付けて前記ハイブリッド車用動力装置3を構成している。
【0013】
また、前記マウント機構17は、前記発電装置11を前記サイドメンバ8、9または前記サブフレーム10に取り付ける発電装置用マウント部18と、前記駆動装置12を前記サイドメンバ8、9または前記サブフレーム10に取り付ける駆動装置用マウント部19とから構成される。
そして、前記発電装置11と前記駆動装置12との間に、前記発電装置11及び前記駆動装置12の両方の装置11、12が動作した場合において前記両装置11、12が接触しない程度の空間20を有する構成とする。
【0014】
詳述すれば、前記発電装置用マウント部18は、図示しないマウントゴムを備えるエンジン側マウント部21と発電機側前方マウント部22と発電機側後方マウント部23との3個からなる。
そして、前記ハイブリッド車1において、前記エンジンルーム7の前部に前記ハイブリッド車用動力装置3の前記発電装置11を配置する際に、図8に示す如く、前記エンジン13の右側を右側のサイドメンバ9に取り付けるエンジン側マウント部21と、前記発電機14の左側前方を左側のサイドメンバ8に取り付ける発電機側前方マウント部22と、前記発電機14の左側後方を左側のサイドメンバ8に取り付ける発電機側後方マウント部23とによって配置する。
【0015】
また、前記駆動装置用マウント部19は、図示しないマウントゴムを備える走行用モータ側マウント部24とデファレンシャル装置側マウント部25と駆動装置側後方マウント部26との3個からなる。
そして、前記発電装置11の車両前後方向後方側に前記駆動装置12を配置する際には、前記走行用モータ15の左側を左側のサイドメンバ8に取り付ける走行用モータ側マウント部24と、デファレンシャル装置16の右側を右側のサイドメンバ9に取り付けるデファレンシャル装置側マウント部25と、前記走行用モータ15の後方、つまり前記駆動装置12の後方を前記サブフレーム10に取り付ける駆動装置側後方マウント部26とによって配置する。
このとき、前記デファレンシャル装置16を前記ハイブリッド車1の前輪5、5間に配置する。
【0016】
更に、前記エンジン13に制御用のコントローラ27を接続する一方、このコントローラ27をバッテリ装置28に接続する。
そして、このバッテリ装置28には、図8に示す如く、直流電路29、30によってインバータなどからなる車載部品31を接続する。
この車載部品31を、交流電路32、33によって前記発電装置11の前記エンジン13及び前記発電機14に接続する。このとき、前記ハイブリッド車1の発進時に、前記バッテリ装置28からエンジン13に電力が供給されてエンジン13が駆動する。
また、前記車載部品31を、交流電路34によって前記駆動装置12の前記走行用モータ15に接続する。このとき、前記ハイブリッド車1の停止時には、前記バッテリ装置28からエンジン13への電力供給が停止する。
【0017】
ここで、参考までに追記すれば、一般的に、パラレルハイブリッドタイプを除いたハイブリッド車では、ハイブリッド車を発進させる場合、バッテリ装置からインバータを介して走行用モータヘと電力を供給して、走行用モータによって駆動輪が駆動する。
このとき、走行用モータは、バッテリ装置から走行用モータに電力が供給され始めたタイミングで回転数が変動して、トルクが過大に変動する。
その結果、ハイブリッド車の発進時には、走行用モータが過大に変位したり、あるいは、過大に振動したりする。
しかし、ハイブリッド車が走行して、バッテリ装置から走行用モータに電力が安定して供給すると、走行用モータの回転数が安定して、走行用モータの振動が低減する。
その一方、ハイブリッド車が走行することで、エンジンにクランク軸周りの振動が発生する。
【0018】
そこで、この発明の要部を示す構造に記載の前記「空間20」とは、前記ハイブリッド車1の発進時に前記走行用モータ15が過大なトルクによって変位または振動したとしても、走行用モータ15または前記駆動装置12が前記発電装置11と接触しない「空間20」のことを言う。
また、この「空間20」とは、前記ハイブリッド車1の走行時に前記エンジン13によって前記発電装置11が変位または振動したとしても、発電装置11が前記駆動装置12と接触しない「空間20」のことを言う。
つまり、前記「空間20」は、発電装置11と駆動装置12とが振動または変位した大きさよりも大きい間隔を有するように設定する。
【0019】
一般的に、シリーズタイプの前記ハイブリッド車1では、前記エンジン13の駆動力によって前記発電機14を回転させて前記バッテリ装置28を充電し、このバッテリ装置28に充電された電力を前記走行用モータ15に送って駆動輪である前記前輪5、5を回転させる。
そのため、前記ハイブリッド車1の走行時に、前記エンジン13と前記発電機14とを備える前記発電装置11は、エンジン13のクランク軸線35周りに生じる回転によって微振動する。
つまり、前記発電装置11の微振動は、前記エンジン13のクランク軸線35周りの回転によって生じるものであり、図6及び図7に示す如く、前記エンジン13のクランク軸線35を挟んで車両前後方向の回転方向Aとなる。
それに対して、前記ハイブリッド車1の発進時に、前記走行用モータ15と前記デファレンシャル装置16とを備える前記駆動装置12は、前記バッテリ装置28からの電力供給によって前記走行用モータ15内に内蔵されるモータ(図示せず)の回転数が変動して、走行用モータ15に過大なトルクが作用して前記エンジン13の振動よりも大きな振動または反力が瞬間的に発生する。
つまり、前記駆動装置12においては、図6に示すように前記走行用モータ15が車両前後方向Bに変位(振動)する場合や、図7に示すように前記走行用モータ15が車両上下方向Cに変位(振動)する場合がある。
そして、図6に示すように前記走行用モータ15が車両前後方向Bに変位(「振動」とも換言できる。)する場合には、図6に1点鎖線または2点鎖線で示す如く、前記走行用モータ15が車両前後方向Bに変位し、前記発電装置11との空間20を増減させる動作を繰り返す。
また、図7に示すように前記走行用モータ15が車両上下方向Cに変位する場合には、図7に1点鎖線または2点鎖線で示す如く、前記走行用モータ15が車両上下方向Cに変位し、前記発電装置11との空間20を維持しつつ動作を繰り返す。
【0020】
これにより、この発明の要部を示す構造、つまり、前記マウント機構17を前記発電装置用マウント部18と前記駆動装置用マウント部19とから構成する一方、前記発電装置11と前記駆動装置12との間に、前記発電装置11及び前記駆動装置12の両装置11、12が動作した場合において前記両装置11、12が接触しない程度の空間20を有する構造によって、前記発電装置11と前記駆動装置12との間で、前記エンジン13から生じる振動と前記ハイブリッド車1の発進時に前記走行用モータ15から生じる比較的大きな振動とが互いに交流し合うのを防止できる。
そのため、前記エンジン13から生じる振動が前記発電装置11から前記駆動装置12に伝達されるのを防ぐことができるとともに、前記ハイブリッド車1の発進時に前記走行用モータ15から生じる振動が前記駆動装置12から前記発電装置11に伝達されるのを防ぐことができる。
これによって、前記発電装置11に、前記エンジン13から生じる微振動を抑制するバネ定数が比較的小さいマウントゴムを用いることができるため、前記発電装置11から前記車体2に伝達される振動を低減できる。
それに加えて、前記駆動装置12には、前記走行用モータ15から生じる比較的大きい瞬間的な振動または反力を抑制するバネ定数が比較的大きなマウントゴムを用いることができるため、瞬間的な大きな振動または反力に対して前記駆動装置12の振動や変位量を低減させることができる。
また、前記空間20によって前記発電装置11と前記駆動装置12とが互いに衝突し合うのが回避でき、前記発電装置11と前記駆動装置12とを保護できるとともに、互いの衝突によって前記発電装置11と前記駆動装置12とが大きく変位するのを防止でき、前記発電装置11と前記駆動装置12とから前記車体2に伝達される振動伝播の増加を抑制できる。
更に、前記発電装置11と前記駆動装置12とを前記車体2の中で剛性の高い左右一対の前記サイドメンバ8、9と前記サブフレーム10とに前記発電装置用マウント部18と前記駆動装置用マウント部19とを介して取り付けたため、前記発電装置11と前記駆動装置12とを安定して前記車体2に支持できるとともに、各装置11、12から車体2に振動が伝わったとしても剛性の高い左右一対の前記サイドメンバ8、9または前記サブフレーム10で振動を低減することができる。
その結果、前記発電装置11と前記駆動装置12とに作用する振動の特性にあったマウントゴムを用いることができるため、前記発電装置11と前記駆動装置12とから発生する振動が前記車体2に伝わるのを抑制することができ、ユーザに不快感を与えるのを防止できる。
更にまた、このような構造では、前記発電装置11と前記駆動装置12とを車両前後に配置したため、上述の特許文献2に開示した従来構造のように、駆動装置12を発電装置11の上方に大きく突出させる必要がなくなる。
これによって、前記エンジン13の重心位置を上述の特許文献2に開示した従来構造に記載の位置よりも低い位置に配置でき、前記発電装置11を前記車体2に安定した状態で配置させることができ、前記発電装置11を振動が増加するのを抑えることができる。
また、前記エンジンフード4を上方へ移動させることなく、前記発電装置11と前記駆動装置12とを前記エンジンフード4の下側に配置でき、エンジンフード4の配置位置が高くなるのを抑制できる。
【0021】
また、前記発電装置用マウント部18を前記発電装置11の車両幅方向両側に配置する。
そして、車両平面視にて、前記発電装置用マウント部18のうち前記発電装置11の車両幅方向一側に取り付けられるマウント部を前記エンジン13のクランク軸線35上に配置するとともに、その車両幅方向他側に取り付けられるマウント部を前記クランク軸線35が車両前後で挟むよう前記クランク軸線35の前側と後側にそれぞれ配置する。
つまり、前記発電装置用マウント部18を前記発電装置11の車両幅方向両側に配置する際には、図2及び図4、図8に示す如く、前記発電装置11の前記エンジン13の右側を前記エンジン側マウント部21によって右側のサイドメンバ9に取り付け、前記発電装置11の前記発電機14の左側前方を前記発電機側前方マウント部22によって左側のサイドメンバ8に取り付けるとともに、前記発電装置11の前記発電機14の左側後方を前記発電機側後方マウント部23によって左側のサイドメンバ8に取り付ける。
また、車両平面視にて、前記発電装置用マウント部18のうち前記発電装置11の車両幅方向一側に取り付けられるマウント部である前記エンジン側マウント部21を、図2に示す如く、前記エンジン13のクランク軸線35上に配置する。
そして、前記発電装置用マウント部18のうち前記発電装置11の車両幅方向他側に取り付けられるマウント部である前記発電機側前方マウント部22及び前記発電機側後方マウント部23を、図2に示す如く、前記クランク軸線35が車両前後で挟むよう前記クランク軸線35の前側と後側とにそれぞれ配置する。
【0022】
このため、この発明の上記の構造によって、車両平面視にて、前記発電装置11を支持する3つのマウント部、つまり、前記エンジン側マウント部21と前記発電機側前方マウント部22と前記発電機側後方マウント部23との重心を前記エンジン13のクランク軸線35上または近接させることができる。
これによって、これら3つのマウント部である前記エンジン側マウント部21と前記発電機側前方マウント部22と前記発電機側後方マウント部23とによって前記エンジン13のクランク軸線35周りに生じる振動を確実に抑制でき、前記発電装置11を安定して前記サイドメンバ8、9に取り付けることができる。
さらに、これら3つのマウント部である前記エンジン側マウント部21と前記発電機側前方マウント部22と前記発電機側後方マウント部23とを前記発電装置11の車両幅方向両側方に位置する前記サイドメンバ8、9に取り付けたため、上述の特許文献2に開示した従来構造に記載のように、発電装置の前方に向けてマウント部を配置する必要が無くなり、発電装置の前側にエンジンルーム内に搭載される搭載部品のスペースを確保できる。
これによって、前記エンジンルーム7内で前記発電装置11や前記駆動装置12から構成される前記ハイブリッド車用動力装置3が占有するスペースを減少できる。
【0023】
更に、前記駆動装置用マウント部19を前記駆動装置12の車両幅方向両側および車両前後方向後側に配置し、前記駆動装置用マウント部19のうち前記駆動装置12の車両幅方向走行用モータ側に取り付けられる前記走行用モータ側マウント部24の上方の空間、つまり上方空間36に前記車載部品31を配置する。
そして、この車載部品31を車両前後方向に延びる複数、例えば2本のパイプ37、38から成るステイ39を介して前記サイドメンバ8に取り付け、前記走行用モータ側マウント部24を前記パイプ37、38間に配置して、その上端部を前記パイプ37、38の間を車両幅方向で懸架する補強部材40に連結する。
つまり、前記駆動装置用マウント部19を前記駆動装置12の車両幅方向両側および車両前後方向後側に配置する際には、図2及び図4、図8に示す如く、前記駆動装置12の前記走行用モータ15の左側を前記走行用モータ側マウント部24によって左側の前記サイドメンバ8に取り付けるとともに、前記駆動装置12の前記デファレンシャル装置16の右側を前記デファレンシャル装置側マウント部25によって右側の前記サイドメンバ9に取り付け、前記走行用モータ15の後方、つまり前記駆動装置12の後方を前記駆動装置側後方マウント部26によって前記サブフレーム10に取り付ける。
また、前記走行用モータ側マウント部24の前記上方空間36には、図2及び図4に破線で示す如く、前記車載部品31を配置するとともに、この車載部品31を車両前後方向に延びる2本のパイプ37、38から成る前記ステイ39を介して左側の前記サイドメンバ7に取り付ける。
更に、図2及び図4に示す如く、2本のパイプ37、38間に前記走行用モータ側マウント部24を配置するとともに、2本のパイプ37、38の間を車両幅方向に延びる前記補強部材40で懸架し、前記走行用モータ側マウント部24の上端部を補強部材40に連結する。
【0024】
前記ハイブリッド車1の発進時には、前記走行用モータ15の回転数の変動によって前記駆動装置12に瞬間的に過大な反力が発生して、この駆動装置12が振動や変位する。
その際、前記走行用モータ15から発生した振動伝播は、この走行用モータ15から離れた前記デファレンシャル装置側マウント部25に比べて、前記走行用モータ15に直接連結される前記走行用モータ側マウント部24へと伝達され易くなる。
そのため、この走行用モータ側マウント部24は前記デファレンシャル装置側マウント部25に比べて振動または変位し易くなる。
そこで、この発明の上記の構造によって、前記走行用モータ側マウント部24の上部を前記車載部品31を保持する前記ステイ39の2本のパイプ37、38間に懸架する前記補強部材40に連結したことで、前記走行用モータ側マウント部24と剛性の高い前記ステイ39の2本のパイプ37、38とを一体化でき、前記走行用モータ側マウント部24の剛性を高めることができる。
これによって、この走行用モータ側マウント部24の剛性を高めることができ、走行用モータ側マウント部24を左側の前記サイドメンバ8または前記車体2に安定して取り付けることができる。
さらに、前記走行用モータ15の振動によって生じる前記駆動装置12の変位量を前記走行用モータ側マウント部24によって低減できるため、前記発電装置11と前記駆動装置12との間に形成する前記空間20を車両前後方向にて減少させることができ、前記駆動装置12を前記発電装置11の後端部に近接させることができる。
その結果、前記エンジンフード4の高さが高くなるのを抑えつつ、前記発電装置11と前記駆動装置12から成る前記ハイブリッド車用動力装置3の車両前後方向の寸法を小さくできて、このハイブリッド車用動力装置3が占有するスペースの増加を抑えることができる。
【0025】
追記すれば、前記ハイブリッド車1の走行中には、前記走行用モータ15の回転数が高まって、この走行用モータ15に生じるトルクが低下して、走行用モータ15は振動し難くなる。
それに反して、前記ハイブリッド車1の発進時には、前記走行用モータ15が停止している状態からこの走行用モータ15に前記バッテリ装置28の電力が供給され始めるため、前記走行用モータ15の回転数の変動が生じて、トルクが過大に変動して、これが過大な振動となって前記マウント機構17を介して前記車体2へと伝達される。
それに対して、前記ハイブリッド車1の停止時には、前記バッテリ装置28から前記走行用モータ15ヘ電力供給が停止されるため、この走行用モータ15が停止して、走行用モータ15自体から振動を発することはない。
【符号の説明】
【0026】
1 ハイブリッド車
3 ハイブリッド車用動力装置
4 エンジンフード
7 エンジンルーム
8、9 左右一対のサイドメンバ
10 サブフレーム
11 発電装置
12 駆動装置
13 エンジン
14 発電機
15 走行用モータ
16 デファレンシャル装置
17 マウント機構
18 発電装置用マウント部
19 駆動装置用マウント部
20 空間
21 エンジン側マウント部
22 発電機側前方マウント部
23 発電機側後方マウント部
24 走行用モータ側マウント部
25 デファレンシャル装置側マウント部
26 駆動装置側後方マウント部
31 車載部品
35 クランク軸線
36 上方空間
37、38 パイプ
39 ステイ
40 補強部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンフードに覆われたエンジンルームの車両幅方向両端部に左右一対のサイドメンバを配置するとともに、前記エンジンルームの後部に車両幅方向に延びるサブフレームを配置し、エンジンと該エンジンの車両幅方向端部に連結する発電機とを備える発電装置と、この発電装置の車両前後方向後方側に配置される走行用モータと該走行用モータの車両幅方向端部に連結するデファレンシャル装置とを備える駆動装置とを前記エンジンルーム内に配置し、前記発電装置と前記駆動装置とをマウント機構を介して車体に取り付けたハイブリッド車用動力装置の搭載構造において、前記マウント機構は、前記発電装置を前記サイドメンバまたは前記サブフレームに取り付ける発電装置用マウント部と、前記駆動装置を前記サイドメンバまたは前記サブフレームに取り付ける駆動装置用マウント部とから構成されるとともに、前記発電装置と前記駆動装置との間に、前記発電装置及び前記駆動装置の両方の装置が動作した場合において前記両装置が接触しない程度の空間を有することを特徴するハイブリッド車用動力装置の搭載構造。
【請求項2】
前記発電装置用マウント部を前記発電装置の車両幅方向両側に配置し、車両平面視にて、前記発電装置用マウント部のうち前記発電装置の車両幅方向一側に取り付けられるマウント部を前記エンジンのクランク軸線上に配置するとともに、その車両幅方向他側に取り付けられるマウント部を前記クランク軸線が車両前後で挟むよう前記クランク軸線の前側と後側にそれぞれ配置したことを特徴する請求項1に記載のハイブリッド車用動力装置の搭載構造。
【請求項3】
前記駆動装置用マウント部を前記駆動装置の車両幅方向両側および車両前後方向後側に配置し、前記駆動装置用マウント部のうち前記駆動装置の車両幅方向走行用モータ側に取り付けられる走行用モータ側マウント部の上方の空間に車載部品を配置し、この車載部品を車両前後方向に延びる複数のパイプから成るステイを介して前記サイドメンバに取り付け、前記走行用モータ側マウント部を前記パイプ間に配置して、その上端部を前記パイプの間を車両幅方向で懸架する補強部材に連結したことを特徴する請求項1に記載のハイブリッド車用動力装置の搭載構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−35443(P2013−35443A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173825(P2011−173825)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】