説明

ハイブリッド駆動装置

【課題】クラッチ及び回転電機の適切な冷却、クラッチ収容部材の適切な支持、及び装置全体の軸長短縮を一挙に達成可能なハイブリッド駆動装置の実現。
【解決手段】第一軸Iと第二軸Mとの間に設けられるクラッチCLと、回転電機MGと、ケース2と、を備えたハイブリッド駆動装置。内部に形成される油室内にクラッチCLを収容するクラッチハウジングCHを備え、回転電機MGのロータRoがクラッチハウジングCHの外周部に固定され、ケース2は軸方向他方側へ突出する第一軸方向突出部5を有し、クラッチハウジングCHは軸方向一方側へ突出する第二軸方向突出部42を有し、第一支持機構51が第二軸方向突出部42の小径部と第一軸方向突出部5とに接して配置され、第一シール機構61が第二軸方向突出部42の大径部と第一軸方向突出部5とに接して、第一支持機構51と軸方向に並んで配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関に駆動連結される第一軸と、回転電機と、第一軸と同軸上に配置され回転電機及び変速機構に駆動連結される第二軸と、第一軸と第二軸との間の駆動力の伝達及び遮断を切替可能に設けられるクラッチと、第一軸、第二軸、回転電機、及びクラッチを収容するケースと、を備えたハイブリッド駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関に駆動連結される第一軸と、回転電機と、第一軸と同軸上に配置され回転電機及び変速機構に駆動連結される第二軸と、第一軸と第二軸との間の駆動力の伝達及び遮断を切替可能に設けられるクラッチと、第一軸、第二軸、回転電機、及びクラッチを収容するケースと、を備えたハイブリッド駆動装置として、例えば下記の特許文献1に記載された装置が既に知られている。当該特許文献1の図1及び図2に示されているように、このハイブリッド駆動装置は、内燃機関(2)に駆動連結される第一軸と変速機構に駆動連結される第二軸(変速機入力軸7)とを、クラッチ(分離クラッチ4)を介して選択的に駆動連結可能に構成されており、回転電機(電動機5)は第二軸と一体回転するように駆動連結されている。このような構成は、いわゆる1モータパラレルタイプのハイブリッド駆動装置を実現可能な構成として良く知られている。この装置では、例えば、上記クラッチの解放状態で回転電機のトルクにより車両を発進させ、ある程度車速が上昇した後はクラッチの係合状態で内燃機関及び回転電機のトルクにより車両を走行させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−112351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、クラッチが駆動力の伝達及び遮断の切り替えを行う際には、一般に当該クラッチが有する複数の摩擦プレート同士がスリップする状態を経ることから、複数の摩擦プレートは発熱する。クラッチの性能を良好に維持するためには、発熱する複数の摩擦プレートを効果的に冷却することが望まれる。そのための解決案の1つとして、例えばハイブリッド駆動装置内に潤滑や冷却等の目的で封入される油でクラッチの近傍を満たし、多量の油でクラッチの複数の摩擦プレートを冷却する構成を採用することが考えられる。この場合、当該複数の摩擦プレートを冷却するための油を有効利用して、ハイブリッド駆動装置に通常備えられる軸受等の潤滑も合わせて行うことが、装置構成の簡略化等の観点から好ましい。特に、クラッチを効果的に冷却するべく、当該クラッチの近傍を油で満たす構成を実現するためにクラッチ収容部材を設けることが好ましい。その際、当該クラッチ収容部材をケース等の他の部材に対して適切かつ円滑に支持するため、当該部材を回転可能に支持する軸受等の支持機構の潤滑も合わせて行うことが好ましい。
【0005】
また、回転電機がトルクを出力する際には、いわゆる銅損や鉄損等の発生により当該回転電機は発熱する。回転電機の性能を良好に維持するためには、発熱する回転電機を適切に冷却することが望まれる。但し、装置内に封入される油には微小金属片等の異物が混入する可能性があり、仮にそのような異物が回転電機に付着した場合には、精密な制御が要求される回転電機に悪影響が及ぶ可能性がある。そのため、回転電機の冷却に関しては、装置内に封入される油を利用する冷却構造(油冷構造)ではなく、車両走行時の走行風等を利用する冷却構造(空冷構造)を採用することが好ましい。
更に、一般に装置全体の軸方向寸法は極力短縮されていることが好ましい。
【0006】
しかし、特許文献1には、これらの課題に対する解決案は何も示されていなかった。
【0007】
そこで、クラッチ及び回転電機をそれぞれ適切に冷却することが可能であると共に、クラッチの効果的な冷却のために設けられるクラッチ収容部材を適切かつ円滑に支持することが可能であり、更に装置全体の軸方向寸法を短縮することが可能なハイブリッド駆動装置の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る、内燃機関に駆動連結される第一軸と、回転電機と、前記第一軸と同軸上に配置され前記回転電機及び変速機構に駆動連結される第二軸と、前記第一軸と前記第二軸との間の駆動力の伝達及び遮断を切替可能に設けられるクラッチと、前記第一軸、前記第二軸、前記回転電機、及び前記クラッチを収容するケースと、を備えたハイブリッド駆動装置の特徴構成は、前記クラッチの軸方向両側及び径方向外側を包囲して前記クラッチを収容すると共に、前記第二軸に駆動連結され、その内部に油で満たされる油室を形成するクラッチハウジングを備え、前記クラッチハウジングを前記ケースに対して回転可能な状態で径方向及び軸方向に支持する第一支持機構と、前記ケースと前記クラッチハウジングとの間を油密状態とする第一シール機構と、を前記クラッチハウジングの軸方向一方側に備え、前記回転電機のロータが、前記クラッチハウジングの外周部に固定され、前記ケースは、前記クラッチハウジングの軸方向一方側において径方向に延びる一方側支持壁部と、当該一方側支持壁部から軸方向他方側へ突出する筒状の第一軸方向突出部と、を有し、前記クラッチハウジングは、前記クラッチの軸方向一方側に配置されて径方向に延びる一方側径方向延在部と、当該一方側径方向延在部から軸方向一方側へ突出する筒状の第二軸方向突出部と、を有し、前記第二軸方向突出部は、その外径が軸方向他方側が大径部、軸方向一方側が小径部となる段付形状に形成され、前記第一支持機構が、前記第二軸方向突出部の小径部の外周面と前記第一軸方向突出部の内周面とに接して配置され、前記第一シール機構が、前記第二軸方向突出部の大径部の外周面と前記第一軸方向突出部の内周面とに接して、前記第一支持機構と軸方向に並んで配置されている点にある。
【0009】
上記の特徴構成によれば、クラッチハウジングの内部に形成される油室が油で満たされるので、多量の油により、クラッチハウジング内に収容されるクラッチを効果的に冷却することができる。また、第二軸方向突出部の小径部の外周面と第一軸方向突出部の内周面とに接して配置される第一支持機構により、軸方向一方側でケースに対してクラッチハウジングを回転可能な状態で径方向及び軸方向に支持することができる。また、クラッチハウジング内の油室に満たされる油を、クラッチハウジングの外部となる軸方向一方側へと適切に導くことで、クラッチの冷却のための油を有効利用して、第一支持機構の潤滑を行うことができる。また、第二軸方向突出部の大径部の外周面と第一軸方向突出部の内周面とに接して配置される第一シール機構により、第一支持機構よりも軸方向他方側でケースとクラッチハウジングとの間を油密状態とすることができる。これにより、第一支持機構を潤滑した油がクラッチハウジングの外周部に固定される回転電機に至るのを抑制することができるので、回転電機の冷却構造を、車両走行時の走行風等を利用する空冷構造とすることができる。よって、異物等による悪影響を抑制した状態で、回転電機を適切に冷却することができる。更に、回転電機のロータが、クラッチハウジングの外周部に固定されるので、例えば回転電機とクラッチハウジングとが軸方向に並んで配置される場合と比較して、装置全体の軸方向寸法を短縮することができる。
従って、上記の特徴構成によれば、クラッチ及び回転電機をそれぞれ適切に冷却することが可能であると共に、クラッチの効果的な冷却のために設けられるクラッチハウジングを適切かつ円滑に支持することが可能であり、更に装置全体の軸方向寸法を短縮することが可能なハイブリッド駆動装置を提供することができる。
【0010】
ここで、前記一方側径方向延在部は、径方向内側端部が径方向外側端部よりも軸方向他方側に位置する形状に形成され、前記第一支持機構及び前記第一シール機構の一方又は双方が、前記一方側径方向延在部と軸方向に重複して配置されている構成とすると好適である。
【0011】
なお、本願において、2つの部材の配置に関して、ある方向に「重複」とは、当該方向の配置に関して2つの部材が同じ位置となる部分を少なくとも一部に有することを指す。
【0012】
この構成によれば、例えば一方側径方向延在部が径方向に延びる平坦な板状に形成され、当該板状に形成された一方側径方向延在部から第二軸方向突出部が軸方向一方側へ突出する場合と比較して、少なくとも第一シール機構が一方側径方向延在部と軸方向に重複して配置される分だけ、装置全体の軸方向寸法を短縮することができる。また、第一シール機構及び第一支持機構の双方が一方側径方向延在部と軸方向に重複して配置される場合には、装置全体の軸方向寸法をより一層短縮することができる。
【0013】
また、前記クラッチハウジングを前記ケースに対して回転可能な状態で径方向及び軸方向に支持する第二支持機構と、前記ケースと前記クラッチハウジングとの間を油密状態とする第二シール機構と、を前記クラッチハウジングの軸方向他方側に更に備え、前記ケースは、前記クラッチハウジングの軸方向他方側において径方向に延びる他方側支持壁部と、当該他方側支持壁部から軸方向一方側へ突出する筒状の第三軸方向突出部と、を有し、前記クラッチハウジングは、前記クラッチの軸方向他方側に配置されて径方向に延びる他方側径方向延在部と、当該他方側径方向延在部から軸方向他方側へ突出する筒状の第四軸方向突出部と、を有し、前記第四軸方向突出部は、その外径が軸方向一方側が大径部、軸方向他方側が小径部となる段付形状に形成され、前記第二支持機構が、前記第四軸方向突出部の小径部の外周面と前記第三軸方向突出部の内周面とに接して配置され、前記第二シール機構が、前記第四軸方向突出部の大径部の外周面と前記第三軸方向突出部の内周面とに接して、前記第二支持機構と軸方向に並んで配置されている構成とすると好適である。
【0014】
この構成によれば、第四軸方向突出部の小径部の外周面と第三軸方向突出部の内周面とに接して配置される第二支持機構により、軸方向他方側でケースに対してクラッチハウジングを回転可能な状態で径方向及び軸方向に支持することができる。また、第四軸方向突出部の大径部の外周面と第三軸方向突出部の内周面とに接して配置される第二シール機構により、第二支持機構よりも軸方向一方側でケースとクラッチハウジングとの間を油密状態とすることができる。よって、第二支持機構を潤滑するために当該第二支持機構に供給される油が、クラッチハウジングの外周部に固定される回転電機に至るのを抑制することができる。
【0015】
また、前記他方側径方向延在部は、径方向内側端部が径方向外側端部よりも軸方向一方側に位置する形状に形成され、前記第二支持機構及び前記第二シール機構の一方又は双方が、前記他方側径方向延在部と軸方向に重複して配置されている構成とすると好適である。
【0016】
この構成によれば、例えば他方側径方向延在部が径方向に延びる平坦な板状に形成され、当該板状に形成された他方側径方向延在部から第四軸方向突出部が軸方向他方側へ突出する場合と比較して、少なくとも第二シール機構が他方側径方向延在部と軸方向に重複して配置される分だけ、装置全体の軸方向寸法を短縮することができる。また、第二シール機構及び第二支持機構の双方が他方側径方向延在部と軸方向に重複して配置される場合には、装置全体の軸方向寸法をより一層短縮することができる。
【0017】
また、前記クラッチハウジングを前記ケースに対して回転可能な状態で径方向及び軸方向に支持する第二支持機構と、前記ケースと前記クラッチハウジングとの間を油密状態とする第二シール機構と、を前記クラッチハウジングの軸方向他方側に更に備え、前記ケースは、前記クラッチハウジングの軸方向他方側において径方向に延びる他方側支持壁部と、当該他方側支持壁部から軸方向一方側へ突出する筒状の第三軸方向突出部と、を有し、前記クラッチハウジングは、前記クラッチの軸方向他方側に配置されて径方向に延びる他方側径方向延在部と、当該他方側径方向延在部から軸方向他方側へ突出する筒状の第四軸方向突出部と、を有し、前記他方側径方向延在部は、前記第四軸方向突出部が設けられた第一円板状部と、前記第一円板状部に対して軸方向他方側にオフセットされて径方向外側に配置された第二円板状部と、前記第一円板状部と前記第二円板状部とを連結するように形成された段付円筒部と、を有し、前記第二支持機構が、前記第四軸方向突出部の外周面と前記第三軸方向突出部の内周面とに接して配置され、前記第二シール機構が、前記第三軸方向突出部の外周面と前記段付円筒部の内周面とに接して、前記第二支持機構と軸方向に重複して配置されている構成とすると好適である。
【0018】
この構成によれば、第四軸方向突出部の外周面と第三軸方向突出部の内周面とに接して配置される第二支持機構により、軸方向他方側でケースに対してクラッチハウジングを回転可能な状態で径方向及び軸方向に支持することができる。また、第三軸方向突出部の外周面と段付円筒部の内周面とに接して配置される第二シール機構により、第二支持機構よりも径方向外側でケースとクラッチハウジングとの間を油密状態とすることができる。よって、第二支持機構を潤滑するために当該第二支持機構に供給される油が、クラッチハウジングの外周部に固定される回転電機に至るのを抑制することができる。
また、この構成では、第二シール機構及び第二支持機構の双方が、他方側径方向延在部の一部を構成する段付円筒部と軸方向に重複して配置されることになるので、装置全体の軸方向寸法をより一層短縮することができる。
【0019】
また、前記クラッチが有する複数の摩擦プレートが、前記第一シール機構及び前記第二シール機構よりも径方向外側に配置されている構成とすると好適である。
【0020】
同軸上に配置される第一軸と第二軸との間の駆動力の伝達及び遮断を切替可能とするためのクラッチにおいて、当該クラッチが有する複数の摩擦プレートは、一般に軸方向に並べて配置されると共に軸方向にスライド自在に構成される。
この構成によれば、第一シール機構及び第二シール機構の径方向外側において軸方向に広くなる空間を利用して、当該空間に複数の摩擦プレートを適切に配置することができる。
【0021】
また、前記クラッチは、前記複数の摩擦プレート同士を押圧するためのピストンを有し、前記第二シール機構が、前記ピストンと軸方向に重複して配置されている構成とすると好適である。
【0022】
この構成によれば、第二シール機構をクラッチハウジングに収容されるピストンと軸方向に重複して配置することで、当該第二シール機構をクラッチハウジングと軸方向に重複して配置することができる。よって、装置全体の軸方向寸法をより一層短縮することができる。
【0023】
また、前記第一軸と前記クラッチのクラッチハブとを連結するように径方向に延びる連結部材と、前記連結部材の軸方向一方側の面及び軸方向他方側の面にそれぞれ接して配置され、前記連結部材と前記クラッチハウジングとの間を相対回転可能に支持する第三支持機構及び第四支持機構と、を備え、前記連結部材は、前記第一軸から径方向外側に延びる軸側連結部と、前記クラッチハブの一部であって径方向内側に延びるハブ側連結部と、からなり、前記ハブ側連結部は、前記軸側連結部の径方向外側端部に形成された切欠溝に対して軸方向一方側から当接した状態で前記軸側連結部に連結され、前記一方側径方向延在部は、その軸方向他方側の面から連続して軸方向一方側に引退するように形成された円筒状の軸方向引退面を有し、前記第三支持機構は、前記軸方向引退面により径方向に位置決めされ、前記第四支持機構は、前記第三支持機構よりも径方向外側に配置されると共に、前記軸側連結部の径方向外側端により径方向に位置決めされている構成とすると好適である。
【0024】
この構成によれば、軸側連結部の切欠溝部分において、軸側連結部により軸方向他方側からハブ側連結部を軸方向に支持した状態で、軸側連結部とハブ側連結部とを連結することができる。このとき、一般に加工が容易な軸状の部材である第一軸から径方向外側に延びる軸側連結部に切欠溝を設けることで、そのような切欠溝を比較的容易にかつ精度良く形成することができる。
また、一方側径方向延在部に形成される軸方向引退面により第三支持機構の径方向の位置決めをすることができると共に、軸側連結部の径方向外側端により第四支持機構の径方向の位置決めをすることができる。更に、例えば第三支持機構と第四支持機構とを軸側連結部の軸方向両側で軸方向に並べて配置する場合等と比較して、装置全体の軸方向寸法を短縮することができる。
【0025】
また、前記一方側支持壁部よりも軸方向一方側に配置されて前記第一軸と前記内燃機関との間に介挿されるダンパ装置を備え、前記ダンパ装置が、前記回転電機のステータから軸方向に突出するコイルエンド部と軸方向に重複して配置されている構成とすると好適である。
【0026】
この構成によれば、ダンパ装置により、内燃機関の出力回転の捩れ振動を減衰させつつ、当該内燃機関の出力回転を第一軸に伝達することができる。また、そのようなダンパ装置を回転電機のコイルエンド部と軸方向に重複して配置することにより、これらが軸方向に重複して配置される分だけ、装置全体の軸方向寸法を更に短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第一の実施形態に係るハイブリッド駆動装置の概略構成を示す模式図である。
【図2】第一の実施形態に係るハイブリッド駆動装置の部分断面図である。
【図3】第一の実施形態に係るハイブリッド駆動装置の要部断面図である。
【図4】第二の実施形態に係るハイブリッド駆動装置の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
1.第一の実施形態
本発明の第一の実施形態について、図面を参照して説明する。ハイブリッド駆動装置1は、車両の駆動力源として内燃機関E及び回転電機MGの一方又は双方を用いるハイブリッド車両用の駆動装置である。このハイブリッド駆動装置1は、いわゆる1モータパラレルタイプのハイブリッド駆動装置として構成されている。
【0029】
本実施形態に係るハイブリッド駆動装置1は、図1に示すように、内燃機関Eに駆動連結される入力軸Iと、回転電機MGと、当該回転電機MG及び変速機構TMに駆動連結される中間軸Mと、入力軸Iと中間軸Mとの間の駆動力の伝達及び遮断を切替可能に設けられるクラッチCLと、入力軸I、中間軸M、及びクラッチCL等を収容するケース2と、を備えている。このような構成において、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置1は、その内部に油を満たした状態でクラッチCLを収容するクラッチハウジングCHを備える(図2を参照)点、並びに、ケース2に対する当該クラッチハウジングCHの回転支持構造及びシール構造に特徴を有する。
【0030】
すなわち、ハイブリッド駆動装置1は、図2及び図3に示すように、クラッチCLの軸方向両側及び径方向外側を包囲してクラッチCLを収容すると共に、中間軸Mに駆動連結され、その内部に油で満たされる循環油室38を形成するクラッチハウジングCHを備える。また、クラッチハウジングCHをケース2に対して回転可能な状態で径方向及び軸方向に支持する第一軸受51と、ケース2とクラッチハウジングCHとの間を油密状態とする第一シール部材61と、をクラッチハウジングCHの軸方向一方側に備えると共に、当該クラッチハウジングCHの外周部に回転電機MGのロータRoが固定される。ケース2は、クラッチハウジングCHの軸方向一方側において径方向に延びる第一支持壁4と、当該第一支持壁4から軸方向他方側へ突出する筒状の軸方向突出部5と、を有する。また、クラッチハウジングCHは、クラッチCLの軸方向一方側に配置されて径方向に延びる一方側径方向延在部41と、当該一方側径方向延在部41から軸方向一方側へ突出する筒状の軸方向突出部42と、を有すると共に、軸方向突出部42は、軸方向他方側が大径部、軸方向一方側が小径部となる段付形状に形成されている。このような構成を前提として、第一軸受51が、軸方向突出部42の小径部の外周面と軸方向突出部5の内周面とに接して配置され、第一シール部材61が、軸方向突出部42の大径部の外周面と軸方向突出部5の内周面とに接して、第一軸受51と軸方向に並んで配置されている。これらの特徴的な構成の組み合わせにより、クラッチCL及び回転電機MGをそれぞれ適切に冷却することが可能であると共に、クラッチCLの効果的な冷却のために設けられるクラッチハウジングCHを適切かつ円滑に支持することが可能であり、更に装置全体の軸方向寸法を短縮することが可能なハイブリッド駆動装置1が実現されている。以下では、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置1について、詳細に説明する。
【0031】
1−1.ハイブリッド駆動装置の全体構成
まず、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置1の全体構成について説明する。図1に示すように、このハイブリッド駆動装置1は、車両の第一の駆動力源としての内燃機関Eに駆動連結される入力軸Iと、車両の第二の駆動力源としての回転電機MGと、変速機構TMと、回転電機MGに駆動連結されると共に変速機構TMに駆動連結される中間軸Mと、車輪Wに駆動連結される出力軸Oと、を備えている。また、ハイブリッド駆動装置1は、入力軸Iと中間軸Mとの間の駆動力の伝達及び遮断を切替可能に設けられるクラッチCLと、カウンタギヤ機構Cと、出力用差動歯車装置DFと、を備えている。これらの各構成は、駆動装置ケースとしてのケース2内に収容されている。本実施形態においては、入力軸Iが本発明における「第一軸」に相当し、中間軸Mが本発明における「第二軸」に相当する。
【0032】
なお、「駆動連結」は、2つの回転要素が駆動力を伝達可能に連結された状態を指し、当該2つの回転要素が一体的に回転するように連結された状態、或いは当該2つの回転要素が一又は二以上の伝動部材を介して駆動力を伝達可能に連結された状態を含む概念として用いている。このような伝動部材としては、回転を同速で又は変速して伝達する各種の部材が含まれ、例えば、軸、歯車機構、ベルト、チェーン等が含まれる。また、「駆動力」はトルクと同義で用いている。また、「回転電機」は、モータ(電動機)、ジェネレータ(発電機)、及び必要に応じてモータ及びジェネレータの双方の機能を果たすモータ・ジェネレータのいずれをも含む概念として用いている。
【0033】
内燃機関Eは、機関内部における燃料の燃焼により駆動されて動力を取り出す装置であり、例えば、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の公知の各種エンジンを用いることができる。本例では、内燃機関Eのクランクシャフト等の内燃機関出力軸EoがダンパDを介して入力軸Iに駆動連結されている。また、入力軸IはクラッチCLを介して回転電機MG及び中間軸Mに駆動連結されており、入力軸IはクラッチCLにより選択的に回転電機MG及び中間軸Mに駆動連結される。このクラッチCLの係合状態では、入力軸Iを介して内燃機関Eと回転電機MGとが駆動連結され、クラッチCLの解放状態では内燃機関Eと回転電機MGとが分離される。
【0034】
回転電機MGは、ステータStとロータRoとを有して構成され、電力の供給を受けて動力を発生するモータ(電動機)としての機能と、動力の供給を受けて電力を発生するジェネレータ(発電機)としての機能とを果たすことが可能とされている。そのため、回転電機MGは、不図示の蓄電装置と電気的に接続されている。本例では、蓄電装置としてバッテリが用いられている。なお、蓄電装置としてキャパシタ等を用いても好適である。回転電機MGは、バッテリから電力の供給を受けて力行し、或いは、内燃機関Eが出力するトルクや車両の慣性力により発電した電力をバッテリに供給して蓄電させる。回転電機MGのロータRoは、中間軸Mと一体回転するように駆動連結されている。この中間軸Mは、変速機構TMの入力軸(変速入力軸)となっている。
【0035】
変速機構TMは、中間軸Mの回転速度を所定の変速比で変速して変速出力ギヤGへ伝達する装置である。このような変速機構TMとして、本実施形態では、シングルピニオン型及びラビニヨ型の遊星歯車機構とクラッチ、ブレーキ及びワンウェイクラッチ等の複数の係合装置とを備えて構成され、変速比の異なる複数の変速段を切替可能に備えた自動変速機構が用いられている。なお、変速機構TMとして、その他の具体的構成を備えた自動変速機構や、変速比を無段階に変更可能な自動の無段変速機構、変速比の異なる複数の変速段を切替可能に備えた手動式の有段変速機構等を用いても良い。変速機構TMは、各時点における所定の変速比で、中間軸Mの回転速度を変速するとともにトルクを変換して、変速出力ギヤGへ伝達する。
【0036】
カウンタギヤ機構Cは、変速出力ギヤGの回転及びトルクを車輪W側へ伝達する。このカウンタギヤ機構Cは、カウンタ軸Csと第一ギヤC1と第二ギヤC2とを有して構成されている。第一ギヤC1は変速出力ギヤGに噛み合っている。第二ギヤC2は、出力用差動歯車装置DFが有する差動入力ギヤDiに噛み合っている。出力用差動歯車装置DFは、差動入力ギヤDiの回転及びトルクを複数の車輪Wに分配して伝達する。本例では、出力用差動歯車装置DFは、互いに噛み合う複数の傘歯車を用いた差動歯車機構とされており、カウンタギヤ機構Cの第二ギヤC2を介して差動入力ギヤDiに伝達されるトルクを分配して、それぞれ出力軸Oを介して左右2つの車輪Wに伝達する。これにより、ハイブリッド駆動装置1は、内燃機関E及び回転電機MGの一方又は双方のトルクを車輪Wに伝達させて車両を走行させる。
【0037】
なお、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置1では、入力軸Iと中間軸Mとが同軸上に配置されると共に、カウンタ軸Csと出力軸Oとが、それぞれ入力軸I及び中間軸Mとは異なる軸上に互いに平行に配置されている。このような構成は、例えばFF(Front Engine Front Drive)車両に搭載されるハイブリッド駆動装置1の構成として適している。
【0038】
1−2.ハイブリッド駆動装置の各部の構成
次に、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置1の各部の構成について説明する。図2に示すように、ケース2は、その内部に収容される回転電機MGや変速機構TM等の各収容部品の外周を覆うケース周壁3と、当該ケース周壁3の軸方向一方側(内燃機関E側であって図2における右側、以下同じ。)の開口を塞ぐ第一支持壁4と、当該第一支持壁4よりも軸方向他方側(内燃機関Eとは反対側であって図2における左側、以下同じ。)において軸方向で回転電機MGと変速機構TMとの間に配置される第二支持壁7と、を備えている。更に、図示はしていないが、このケース2は、ケース周壁3の軸方向他方側の端部を塞ぐ端部支持壁を備えている。
【0039】
第一支持壁4は、少なくとも径方向に延びる形状を有し、本実施形態では径方向及び周方向に延在している。第一支持壁4には軸方向の貫通孔が形成されており、この貫通孔に挿通される入力軸Iが第一支持壁4を貫通してケース2内に挿入されている。第一支持壁4は、軸方向他方側に突出する円筒状(ボス状)の軸方向突出部5に連結されている。軸方向突出部5は、第一支持壁4に一体的に連結されている。本例では、第一支持壁4は、入力軸Iが貫通されている部分において、径方向内側の部位が径方向外側の部位よりも軸方向他方側に位置するように、軸方向他方側に向かって凸となる皿状に湾曲した形状を有する壁部とされている。第一支持壁4は、クラッチCLに対して軸方向一方側に配置されており、より具体的にはクラッチハウジングCHに対して軸方向一方側に所定間隔を空けて隣接して配置されている。また、第一支持壁4には、その内部に排出油路72が形成された油路形成部材71が、径方向に沿って取り付けられている。本実施形態においては、第一支持壁4が本発明における「一方側支持壁部」に相当し、軸方向突出部5が本発明における「第一軸方向突出部」に相当する。
【0040】
第二支持壁7は、少なくとも径方向に延びる形状を有し、本実施形態では径方向及び周方向に延在している。第二支持壁7には軸方向の貫通孔が形成されており、この貫通孔に挿通される中間軸Mが第二支持壁7を貫通している。第二支持壁7は、軸方向一方側に突出する円筒状(ボス状)の軸方向突出部8に連結されている。軸方向突出部8は、第二支持壁7に一体的に連結されている。第二支持壁7は、クラッチCLに対して軸方向他方側に配置されており、より具体的にはクラッチハウジングCHに対して軸方向他方側に所定間隔を空けて隣接して配置されている。また、第二支持壁7の内部に形成されるポンプ室には、オイルポンプ18が収容されている。本実施形態においては、オイルポンプ18は、インナロータとアウタロータとを有する内接型のギヤポンプとされている。オイルポンプ18のインナロータは、その径方向の中心部でクラッチハウジングCHと一体回転するように駆動連結(ここでは、スプライン連結)されている。クラッチハウジングCHの回転に伴い、オイルポンプ18は油を吐出し、クラッチCLや変速機構TM等に油を供給するための油圧を発生させる。なお、第二支持壁7及び中間軸M等の内部には、それぞれ油路が形成されており、オイルポンプ18により吐出された油は、不図示の油圧制御装置及びこれらの油路を流通して、油供給対象となる各部位に供給される。本実施形態においては、第二支持壁7が本発明における「他方側支持壁部」に相当し、軸方向突出部8が本発明における「第三軸方向突出部」に相当する。
【0041】
入力軸Iは、内燃機関Eのトルクをハイブリッド駆動装置1に入力するための軸であり、軸方向一方側の端部において内燃機関Eに駆動連結されている。ここで、入力軸Iは、第一支持壁4を貫通する状態で配設されており、図2に示すように、第一支持壁4の軸方向一方側でダンパDを介して内燃機関Eの内燃機関出力軸Eoと一体回転するように駆動連結されている。ダンパDは、内燃機関出力軸Eoの捩れ振動を減衰させつつ、当該内燃機関出力軸Eoの回転を入力軸Iに伝達する装置であり、各種公知のものを用いることができる。本実施形態では、ダンパDは、周方向に沿って配置された複数のコイルスプリングを有して構成されており、内燃機関出力軸Eoに固定されるドライブプレートDPに固定一体化されると共に、入力軸Iにスプライン連結されている。ダンパDは、全体としてドライブプレートDPよりも小径に形成されており、ドライブプレートDPの軸方向他方側に配置されている。また、入力軸Iと第一支持壁4とに亘って、これらの間を液密状態として軸方向一方側(ダンパD及び内燃機関E側)への油の漏出を抑制するための第三シール部材63が配設されている。
【0042】
本実施形態では、入力軸Iの軸方向他方側端部の内径部には、軸方向に延びる軸端孔部12が形成されている。この軸端孔部12には、中間軸Mの軸方向一方側の端部が軸方向に進入される。また、入力軸Iは、その軸方向他方側端部に、当該入力軸Iから径方向に延びるフランジ部11を有する。フランジ部11は、入力軸Iと一体的に形成されている。フランジ部11は、クラッチハウジングCH内で、当該クラッチハウジングCH内に収容されるクラッチCLのクラッチハブ21に連結されている。フランジ部11の軸方向一方側には、第二軸受52が配設されると共に、フランジ部11の径方向外側であってかつクラッチCLが有するクラッチハブ21の軸方向他方側には、第三軸受53が配設されている。このような位置関係では、第三軸受53は第二軸受52よりも径方向外側に配置されていることになる。本実施形態においては、第二軸受52が本発明における「第三支持機構」に相当し、第三軸受53が本発明における「第四支持機構」に相当する。
【0043】
中間軸Mは、回転電機MGのトルク及びクラッチCLを介する内燃機関Eのトルクの一方又は双方を変速機構TMに入力するための軸であり、クラッチハウジングCHにスプライン連結されている。図2に示すように、この中間軸Mは、第二支持壁7を貫通する状態で配設されている。上記のとおり、第二支持壁7の径方向中心部には軸方向の貫通孔が形成されており、この貫通孔を介して中間軸Mが第二支持壁7を貫通している。中間軸Mは、第二支持壁7に対して回転可能な状態で径方向に支持されている。また、中間軸Mの軸方向一方側の端部は入力軸Iの軸端孔部12に軸方向に進入されている。このとき、中間軸Mの軸方向一方側の端面と入力軸Iの軸端孔部12における軸方向の底部を規定する面との間には、所定の隙間が形成されている。本実施形態においては、中間軸Mはその内径部に供給油路15及び排出油路16を含む複数の油路を有する。供給油路15は、中間軸Mの軸方向一方側において、軸方向に延びると共にクラッチCLの作動油室37に連通するように軸方向の所定位置で径方向に延びて中間軸Mの外周面に開口している。排出油路16は、中間軸Mの軸方向一方側において、供給油路15とは周方向の異なる位置を軸方向に延びて軸方向一方側の端面に開口している。
【0044】
クラッチCLは、上記のとおり入力軸Iと中間軸Mとの間の駆動力の伝達及び遮断を切替可能に設けられ、内燃機関Eと回転電機MGとを選択的に駆動連結する摩擦係合装置である。本実施形態では、クラッチCLは湿式多板クラッチ機構として構成されている。図3に示すように、クラッチCLは、クラッチハブ21、クラッチドラム26、複数の摩擦プレート31、及びピストン36を備えて構成されている。クラッチハブ21は、入力軸Iと一体回転するように当該入力軸Iのフランジ部11に連結されている。クラッチドラム26は、クラッチハウジングCHを介して中間軸Mと一体回転するように連結されている。本実施形態では、クラッチドラム26は円筒型の形状を有し、クラッチハウジングCHと一体的に形成されている。摩擦プレート31は、対となるハブ側摩擦プレートとドラム側摩擦プレートとを有する。ハブ側摩擦プレートは、クラッチハブ21により径方向内側から支持された状態で、当該クラッチハブ21に対して相対回転が規制されると共に軸方向にスライド自在に保持されている。ドラム側摩擦プレートは、クラッチドラム26により径方向外側から支持された状態で、当該クラッチドラム26に対して相対回転が規制されると共に軸方向にスライド自在に保持されている。ハブ側摩擦プレートとドラム側摩擦プレートとは、軸方向に交互に配置されている。これら全ての摩擦プレート31よりも軸方向一方側には、当該複数の摩擦プレート31同士を係合させる際の押さえ部材として機能するバッキングプレート32が保持されている。このバッキングプレート32は、スナップリングにより軸方向への移動が規制された状態で保持されている。ピストン36は、リターンスプリングにより軸方向他方側に付勢された状態で複数の摩擦プレート31に対して軸方向他方側に配置されている。
【0045】
本実施形態では、クラッチドラム26と一体化されたクラッチハウジングCHとピストン36との間には液密状態の作動油室37が形成される。この作動油室37には、オイルポンプ18により吐出され、不図示の油圧制御装置により所定の油圧に調整された圧油が、中間軸Mに形成された供給油路15及びクラッチハウジングCHに形成された連絡油路48を介して供給される。作動油室37の油圧が上昇してリターンスプリングの付勢力よりも大きくなると、ピストン36は作動油室37の容積を広げる方向(本例では、軸方向一方側)に移動して、バッキングプレート32との協働により複数の摩擦プレート31同士を互いに係合させる。その結果、入力軸Iから伝達された内燃機関EのトルクがクラッチCLを介して回転電機MG及び中間軸Mに伝達される。一方、ピストン36に対して作動油室37とは反対側には、循環油室38が形成される。この循環油室38には、オイルポンプ18により吐出され、不図示の油圧制御装置により所定の油圧に調整された圧油が、クラッチハウジングCHに形成された循環油路47(図2を参照)を介して供給される。
【0046】
上記のとおり、本実施形態においては、クラッチハブ21は入力軸Iと一体回転するように当該入力軸Iのフランジ部11に連結されている。ここで、クラッチハブ21は、図3に示すように、円筒状に形成され複数のハブ側プレートを保持する円筒状部と、当該円筒状部の軸方向一方側端部から径方向内側に延びて複数のハブ側プレート及び円筒状部を径方向に支持する円環板状の円環板状部22と、を有している。そして、クラッチハブ21の一部を構成する円環板状部22が入力軸Iのフランジ部11に連結されて、入力軸Iとクラッチハブ21とが一体的に連結されている。なお、本実施形態においては、入力軸Iのフランジ部11が本発明における「軸側連結部」に相当し、クラッチハブ21の円環板状部22が本発明における「ハブ側連結部」に相当する。また、フランジ部11と円環板状部22とにより、本発明における「連結部材」が構成されている。
【0047】
本実施形態においては、図3に示すように、フランジ部11はその径方向外側端部に切欠溝11aを有する。この切欠溝11aは、その径方向の底部を規定する面がフランジ部11の軸方向一方側の面と連続するように、フランジ部11の軸方向一方側端部に形成されている。また、この切欠溝11aの軸方向幅は、クラッチハブ21の円環板状部22の径方向内側端部の軸方向幅に略等しい。そして、円環板状部22は、フランジ部11に形成された切欠溝11aに対して軸方向一方側から当接した状態で、溶接等によりフランジ部11に連結されている。なお、本例では、入力軸I及び当該入力軸Iから径方向外側に延びるフランジ部11は、高精度な加工を行うことが可能な旋盤加工等の切削加工により形成されている。よって、入力軸I及びフランジ部11を形成するのに合わせて、比較的容易にかつ高精度に切欠溝11aを形成することが可能となっている。一方、入力軸I及びフランジ部11に比べて要求精度の低いクラッチハブ21は、低コストに製造可能なプレス加工により形成されている。
【0048】
本実施形態においては、フランジ部11と円環板状部22との連結箇所の近傍に、第二軸受52及び第三軸受53が配設されている。より具体的には、フランジ部11の軸方向一方側の面に接して第二軸受52が配設され、この第二軸受52は、その軸方向一方側では更にクラッチハウジングCH(後述する一方側径方向延在部41)に接している。また、円環板状部22の軸方向他方側の面に接して第三軸受53が配設され、この第三軸受53は、その軸方向他方側では更にクラッチハウジングCH(後述する他方側径方向延在部45)に接している。本例では、このような第二軸受52及び第三軸受53として、いずれも軸方向荷重を受けることが可能なスラストワッシャーを用いている。これにより、一体的に連結されるフランジ部11及び円環板状部22とクラッチハウジングCHとが、第二軸受52及び第三軸受53を介して相対回転可能に支持されている。なお、ここでは詳細な説明は省略するが、これらの第二軸受52及び第三軸受53の外表面には、径方向に延びる複数の径方向溝及び軸方向に延びる複数の軸方向溝が形成されている。これらの径方向溝及び軸方向溝は、第二軸受52及び第三軸受53を介して2つの部材が軸方向に突き当てられた時に、当該第二軸受52及び第三軸受53を通過して油が流通するための連通路となる。
【0049】
また、本実施形態においては、第二軸受52は、後述する一方側径方向延在部41の軸方向他方側の面から連続して形成される軸方向引退面41aにより径方向に位置決めされている。すなわち、第二軸受52は、その外周面を軸方向引退面41aに嵌合させた状態で固定されており、これにより径方向の位置決めがなされている。また、第三軸受53は、フランジ部11の径方向外側端により径方向に位置決めされている。すなわち、第三軸受53は、その内周面をフランジ部11の切欠溝11aよりも軸方向他方側の部位の外周面に嵌合させた状態で固定されており、これにより径方向の位置決めがなされている。
【0050】
図2及び図3に示すように、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置1は、クラッチCLを収容するクラッチハウジングCHを更に備えている。クラッチハウジングCHは、入力軸Iに対して相対回転すると共に中間軸Mと一体回転する状態で、入力軸Iと中間軸Mとに亘って配設されている。そして、クラッチハウジングCHは、同軸上に配置される入力軸I及び中間軸Mの径方向外側で、クラッチCLの軸方向両側及び径方向外側を包囲してクラッチCLを収容している。そのため、クラッチハウジングCHは、クラッチCLの軸方向一方側に配置されて径方向に延びる一方側径方向延在部41と、クラッチCLの軸方向他方側に配置されて径方向に延びる他方側径方向延在部45と、一方側径方向延在部41と他方側径方向延在部45とをこれらの径方向外側端部で軸方向に連結する円筒状部49と、を有して構成されている。
【0051】
一方側径方向延在部41は、少なくとも径方向に延びる形状を有し、本実施形態では径方向及び周方向に延在している。一方側径方向延在部41の径方向中心部には軸方向の貫通孔が形成されており、この貫通孔に挿通される入力軸Iが一方側径方向延在部41を貫通してクラッチハウジングCH内に挿入されている。一方側径方向延在部41は、軸方向一方側に突出する円筒状(ボス状)の軸方向突出部42に連結されている。軸方向突出部42は、入力軸Iの周囲を取り囲むように形成されている。軸方向突出部42と入力軸Iとの間には第五軸受55が配設されている。軸方向突出部42は、一方側径方向延在部41の径方向内側の端部において、当該一方側径方向延在部41に一体的に連結されている。本例では、一方側径方向延在部41は、全体として径方向内側の部位が径方向外側の部位よりも軸方向他方側に位置するように、軸方向他方側に向かって凸となる皿状に湾曲した形状を有する部材とされている。一方側径方向延在部41は、第一支持壁4に対して軸方向他方側に所定間隔を空けて隣接すると共に、軸方向突出部42が第一支持壁4の軸方向突出部5に対して径方向内側に所定間隔を空けて隣接する状態で配置されている。更に、一方側径方向延在部41は、クラッチハブ21及び入力軸Iのフランジ部11に対して軸方向一方側に所定間隔を空けて隣接して配置されている。また、軸方向突出部42と第一支持壁4の軸方向突出部5とに亘って、第一軸受51と、これらの間を液密状態として軸方向他方側(回転電機MG側)への油の漏出を抑制するための第一シール部材61と、が配設されている。本実施形態においては、軸方向突出部42が本発明における「第二軸方向突出部」に相当する。また、第一軸受51が本発明における「第一支持機構」に相当し、第一シール部材61が本発明における「第一シール機構」に相当する。
【0052】
また、本実施形態においては、一方側径方向延在部41は、その軸方向他方側の面から連続して軸方向一方側に引退するように形成された円筒状の軸方向引退面41aを有する。このような軸方向引退面41aは、一方側径方向延在部41の径方向内側端部に形成されている。上述したように、この軸方向引退面41aにより第二軸受52の径方向の位置決めがなされる。
【0053】
円筒状部49は、軸方向及び周方向に延在してクラッチCLの径方向外側を包囲する円筒型の形状を有している。円筒状部49は、一方側径方向延在部41と他方側径方向延在部45とをこれらの径方向外側端部で軸方向に連結している。軸方向延在部49は、本実施形態では一方側径方向延在部41の径方向外側端部から軸方向他方側に向かって延在している。本例では、円筒状部49は一方側径方向延在部41と一体的に形成されている。
【0054】
他方側径方向延在部45は、少なくとも径方向に延びる形状を有し、本実施形態では径方向及び周方向に延在している。本例では、他方側径方向延在部45は、全体として径方向内側の部位が径方向外側の部位よりも軸方向一方側に位置するように、径方向内側部分が径方向外側部分に対して軸方向一方側にオフセットされた形状を有する板状部材とされている。また、他方側径方向延在部45は、径方向外側端部の近傍において円筒状部49の軸方向他方側の部位と溶接等により連結されている。他方側径方向延在部45の径方向中心部には軸方向の貫通孔が形成されており、この貫通孔に挿通される中間軸Mが他方側径方向延在部45を貫通してクラッチハウジングCH内に挿入されている。他方側径方向延在部45は、径方向内側の端部においてその内周面が周方向全体に亘って中間軸Mの外周面に当接している。また、他方側径方向延在部45は、軸方向他方側に突出する円筒状(ボス状)の軸方向突出部46に連結されている。軸方向突出部46は、中間軸Mの周囲を取り囲むように形成されている。軸方向突出部46は、他方側径方向延在部45の径方向内側の端部において、当該他方側径方向延在部45に一体的に連結されている。本実施形態においては、軸方向突出部46が本発明における「第四軸方向突出部」に相当する。
【0055】
軸方向突出部46は、中間軸Mと一体回転するようにスプライン連結されている。他方側径方向延在部45は、第二支持壁7に対して軸方向一方側に所定間隔を空けて隣接すると共に、軸方向突出部46が第二支持壁7の軸方向突出部8に対して径方向内側に所定間隔を空けて隣接する状態で配置されている。更に、他方側径方向延在部45は、その径方向内側の部位においてクラッチハブ21及び入力軸Iのフランジ部11に対して軸方向他方側に所定間隔を空けて隣接して配置されている。また、軸方向突出部46と第二支持壁7の軸方向突出部8とに亘って、第四軸受54と、これらの間を液密状態として軸方向一方側(回転電機MG側)への油の漏出を抑制するための第二シール部材62と、が配設されている。本実施形態においては、第四軸受54が本発明における「第二支持機構」に相当し、第二シール部材62が本発明における「第二シール機構」に相当する。
【0056】
なお、本実施形態においては、この他方側径方向延在部45にクラッチドラム26が一体的に形成されている。より具体的には、他方側径方向延在部45の径方向外側の端部近傍において、当該他方側径方向延在部45から軸方向一方側に向かって延在するように円筒状のクラッチドラム26が一体形成されている。このとき、クラッチドラム26は、円筒状部49に対して径方向内側に、当該円筒状部49と径方向に所定間隔を空けて隣接して配置されている。このクラッチドラム26と円筒状部49との間に形成される隙間は、クラッチハウジングCH内の軸方向一方側端部において軸方向に開口している。また、本実施形態においては、他方側径方向延在部45とピストン36との間に作動油室37が形成されている。また、他方側径方向延在部45には、供給油路15と作動油室37とを連通するように、径方向に対して軸方向一方側に向かって僅かに傾斜しつつ全体として径方向に延びる連絡油路48が、軸方向突出部46との連結部に形成されている。
【0057】
以上のように、本実施形態に係るクラッチハウジングCHは、その軸方向一方側の一方側径方向延在部41が全体として径方向内側の部位が径方向外側の部位よりも軸方向他方側に位置していると共に、その径方向内側端部から軸方向一方側に突出する軸方向突出部42を有する。また、その軸方向他方側の他方側径方向延在部45は全体として径方向内側の部位が径方向外側の部位よりも軸方向一方側に位置していると共に、その径方向内側端部から軸方向他方側に突出する軸方向突出部46を有する。よって、クラッチハウジングCHは、軸方向及び径方向を含む平面における断面形状が、全体として略Ω(オメガ)字状に形成されている。なお、以下では「Ω字状」と言う場合には、同様に軸方向及び径方向を含む平面における断面形状を指しているものとする。
【0058】
クラッチハウジングCHの内部に形成される空間のうち、作動油室37を除いた大部分を占める空間が、先に説明した循環油室38となる。そして、本実施形態においては、オイルポンプ18により吐出されて所定の油圧に調整された油が、軸方向突出部46内を軸方向に延びるように形成された循環油路47を介して循環油室38に供給される。本実施形態においては、軸方向突出部42と入力軸Iとの間に配設される第五軸受55は、ある程度の液密性が確保可能に構成されたシール機能付軸受(ここでは、シールリング付ニードルベアリング)とされている。更に、他方側径方向延在部45は、径方向内側の端部においてその内周面が周方向全体に亘って中間軸Mの外周面に当接している。そのため、循環油路47を介して油が循環油室38に供給されることにより、クラッチハウジングCH内の循環油室38は、基本的には常時油で満たされた状態となる。これにより、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置1では、クラッチCLに備えられる複数の摩擦プレート31を、循環油室38に常時満たされる多量の油で効果的に冷却することが可能となっている。本実施形態においては、循環油室38が本発明における「油室」に相当する。
【0059】
なお、基本的には常時油で満たされた状態を維持しながらも、循環油室38には油が流通する。この油の流れを、図2及び図3において破線矢印で示している。すなわち、循環油路47から循環油室38に供給された油は、まず他方側径方向延在部45とフランジ部11との間、及びピストン36とクラッチハブ21との間を通って径方向外側に向かって流れて複数の摩擦プレート31の冷却を行う。また、油は、クラッチハブ21及びフランジ部11と一方側径方向延在部41との間を通って径方向内側に向かって流れ、フランジ部11の基端部に到達する。その後、油は、循環油室38から排出される。なお、油が同時に周方向に流れる場合も当然あり得るが、径方向及び軸方向の流れについては変わらない。
【0060】
図2に示すように、本例では、循環油室38からの油の排出経路は2系統に分かれている。第一の排出経路は、入力軸Iの外周面に開口する径方向の連通孔及び中間軸Mの内径部に形成された排出油路16を介するものである。本実施形態では、中間軸Mの軸方向一方側の端部の外径は入力軸Iの軸端孔部12の内径よりも僅かに小さくなるように形成されており、また中間軸Mの軸方向一方側の端面と入力軸Iの軸端孔部12における軸方向の底部を規定する面との間には、所定の隙間が形成されている。これにより、入力軸Iに形成される径方向の連通孔を通って循環油室38から排出される油を、中間軸Mと入力軸Iの軸端孔部12との間に形成される径方向の隙間及び軸方向の隙間を介して排出油路16へと適切に導くことが可能となっている。第二の排出経路は、第五軸受55から軸方向に漏出する油を対象とし、第一支持壁4に取り付けられた油路形成部材71の内部の排出油路72を介するものである。このような第二の排出経路は、入力軸Iと第一支持壁4との間に配設される第三シール部材63、及びクラッチハウジングCHの軸方向突出部42と第一支持壁4の軸方向突出部5との間に配設される第一シール部材61により画定される。これにより、第五軸受55から軸方向に漏出する油を、排出油路72へと適切に導くことが可能となっている。
【0061】
図2に示すように、回転電機MGは、クラッチハウジングCHの径方向外側に配置されている。回転電機MGは、ケース2に固定されたステータStと、このステータStの径方向内側に回転自在に支持されたロータRoと、を有する。ステータStは、円環板状の電磁鋼板を複数枚積層した積層構造体として構成されて第一支持壁4に固定されるステータコアと、当該ステータコアに巻装されるコイルと、を備えている。なお、コイルのうち、ステータコアの軸方向両側に突出する部分がコイルエンド部Ceである。回転電機MGのロータRoは、円環板状の電磁鋼板を複数枚積層した積層構造体として構成されたロータコアと、当該ロータコアに埋め込まれた永久磁石と、を備えている。
【0062】
本実施形態においては、回転電機MGは、クラッチハウジングCHと軸方向に重複して配置されている。すなわち、回転電機MGは、径方向から見てクラッチハウジングCHと重複して配置されている(2つの部材の配置に関して、以下同様)。本例では特に、回転電機MGのロータRoが、クラッチハウジングCHを構成する円筒状部49の外周部に固定されている。すなわち、ロータRoを構成する複数の電磁鋼板のそれぞれの内周面が、円筒状部49の外周面に当接した状態で固定されている。これにより、クラッチハウジングCHはロータRoを支持するロータ支持部材としても機能し、本実施形態ではクラッチハウジングCHとロータ支持部材とが共通化されて形成されていることになる。
【0063】
また、本実施形態においては、クラッチハウジングCHの軸方向他方側で、ケース2の第二支持壁7及び他方側径方向延在部45の双方に隣接して回転センサ19が設けられている。回転センサ19は、回転電機MGのステータStに対するロータRoの回転位相を検出するためのセンサである。本実施形態では、回転センサ19は、第二支持壁7の内部に収容されたオイルポンプ18の径方向外側に、当該オイルポンプ18と軸方向に重複して配置されている。本例では、第二支持壁7に回転センサ19のセンサステータが固定され、円筒状部49の軸方向他方側端部の内周面に回転センサ19のセンサロータが固定されている。このような回転センサ19としては、例えばレゾルバ等を用いることができる。
【0064】
また、本実施形態においては、第一支持壁4の軸方向一方側に所定の隙間を空けて、ダンパDが配置されている。ダンパDは、軸方向他方側に向かって凸となる皿状に湾曲した形状を有して形成された第一支持壁4の、軸方向一方側から見て軸方向他方側に引退した空間に配置されている。本例では、更にダンパDは、回転電機MGのステータStの軸方向一方側(内燃機関E側)のコイルエンド部Ceの径方向内側に、当該コイルエンド部Ceと軸方向に重複して配置されている。このように、コイルエンド部CeとダンパDとを軸方向に重複して配置することで、ハイブリッド駆動装置1全体の軸方向寸法の短縮が図られている。本実施形態においては、ダンパDが本発明における「ダンパ装置」に相当する。
【0065】
1−3.クラッチハウジングの回転支持構造及びシール構造
次に、本実施形態に係るクラッチハウジングCHの、ケース2に対する回転支持構造及びシール構造について説明する。本実施形態に係る回転支持構造及びシール構造は、概略的には、第一軸受51、第四軸受54、第一シール部材61、及び第二シール部材62により実現されている。すなわち、本実施形態に係る回転支持構造は、概略的には、クラッチハウジングCHの軸方向一方側で当該クラッチハウジングCHをケース2に対して回転可能な状態で軸方向及び径方向に支持する第一軸受51と、軸方向他方側で当該クラッチハウジングCHをケース2に対して回転可能な状態で軸方向及び径方向に支持する第四軸受54と、により実現されている。また、本実施形態に係るシール構造は、概略的には、クラッチハウジングCHに沿った方向で、第一軸受51よりも回転電機MGのロータRo側においてケース2とクラッチハウジングCHとの間を油密状態とする第一シール部材61と、第四軸受54よりも回転電機MGのロータRo側においてケース2とクラッチハウジングCHとの間を油密状態とする第二シール部材62と、により実現されている。以下、詳細に説明する。
【0066】
図3に示すように、クラッチハウジングCHは、一方側径方向延在部41と当該一方側径方向延在部41に一体的に連結された軸方向突出部42とを備えると共に、この軸方向突出部42が、第一支持壁4の軸方向突出部5に対して径方向内側に所定間隔を空けて隣接して配置されている。軸方向突出部42の外周面には軸方向の段差部42aが形成されている。ここで、外周面における「軸方向の段差部」とは、軸方向突出部42の軸方向の所定位置に形成される、当該位置において軸方向突出部42の外径が変化する部分である。本実施形態では、軸方向突出部42は、段差部42aよりも軸方向他方側の部位に対して軸方向一方側の部位が小径となるように形成されている。すなわち、軸方向突出部42は、その軸方向他方側の部位が大径部、軸方向一方側の部位が小径部となる段付形状に形成されている。
【0067】
段差部42aに対して軸方向一方側から当接した状態で、軸方向突出部42の小径部の外周面と第一支持壁4の軸方向突出部5の内周面とに接して、これらの間に第一軸受51が配設されている。本例では、このような第一軸受51として、径方向荷重及び軸方向荷重の双方を受けることが可能なボールベアリングを用いている。また本例では、クラッチハウジングCHの外周部に固定される回転電機MGのロータRoを高精度に支持するべく、比較的大型のボールベアリングを用いている。第一軸受51は、第一支持壁4の軸方向他方側の面にも当接している。これにより、クラッチハウジングCHを構成する一方側径方向延在部41は、第一支持壁4によって第一軸受51を介して回転可能な状態で径方向及び軸方向に支持されている。ここでは特に、一方側径方向延在部41は第一支持壁4によって軸方向一方側から軸方向に支持されている。この第一軸受51には、クラッチハウジングCH内の循環油室38から第五軸受55を通って軸方向に漏出する油が、一方側径方向延在部41と第一支持壁4との間の隙間を通って供給される。なお、第3シール部材63により、入力軸Iと第一支持壁4との間を通った軸方向一方側(内燃機関E側)への漏出が堰き止められて第一軸受51に油が供給される。これにより、複数の摩擦プレート31の冷却を行った後の油を有効利用して、第一軸受51の潤滑を行うことが可能となっている。
【0068】
本実施形態においては、全体としてΩ字状に形成されたクラッチハウジングCHに沿った方向で、第一軸受51よりも回転電機MGのロータRo側となる第一軸受51の軸方向他方側に、当該第一軸受51と軸方向に並んで第一シール部材61が配置されている。この第一シール部材61は、軸方向突出部42の大径部の外周面と第一支持壁4の軸方向突出部5の内周面とに接して、これらの間に配設されている。第一シール部材61は、軸方向突出部42と軸方向突出部5との間を液密状態として、回転電機MGのロータRo側(ここでは、軸方向他方側)への油の漏出を抑制する。これにより、第一軸受51を潤滑した油が、クラッチハウジングCHに沿った方向に流れて回転電機MGに至るのを抑制することができる。また、第一軸受51を潤滑した油を、油路形成部材71に形成された排出油路72へと適切に導いて排出することができる。
【0069】
図3に示すように、クラッチハウジングCHは、他方側径方向延在部45と当該他方側径方向延在部45に一体的に連結された軸方向突出部46とを備えると共に、この軸方向突出部46が、第二支持壁7の軸方向突出部8に対して径方向内側に所定間隔を空けて隣接して配置されている。軸方向突出部46の外周面には軸方向の段差部46aが形成されている。本実施形態では、軸方向突出部46は、段差部46aよりも軸方向一方側の部位に対して軸方向他方側の部位が小径となるように形成されている。すなわち、軸方向突出部46は、その軸方向一方側の部位が大径部、軸方向他方側の部位が小径部となる段付形状に形成されている。
【0070】
段差部46aに対して軸方向他方側から当接した状態で、軸方向突出部46の小径部の外周面と第二支持壁7の軸方向突出部8の内周面とに接して、これらの間に第四軸受54が配設されている。本例では、このような第四軸受54として、径方向荷重及び軸方向荷重の双方を受けることが可能なボールベアリングを用いている。また本例では、クラッチハウジングCHの外周部に固定される回転電機MGのロータRoを高精度に支持するべく、比較的大型のボールベアリングを用いている。第四軸受54は、第二支持壁7の軸方向一方側の面にも当接している。これにより、クラッチハウジングCHを構成する他方側径方向延在部45は、第二支持壁7によって第四軸受54を介して回転可能な状態で径方向及び軸方向に支持されている。ここでは特に、他方側径方向延在部45は第二支持壁7によって軸方向他方側から軸方向に支持されている。この第四軸受54には、オイルポンプ18を収容するポンプ室から第二支持壁7と軸方向突出部46との間を通って軸方向に漏出する油が供給される。これにより、第四軸受54の潤滑を行うことが可能となっている。
【0071】
本実施形態においては、全体としてΩ字状に形成されたクラッチハウジングCHに沿った方向で、第四軸受54よりも回転電機MGのロータRo側となる第四軸受54の軸方向一方側に、当該第四軸受54と軸方向に並んで第二シール部材62が配置されている。この第二シール部材62は、軸方向突出部46の大径部の外周面と第二支持壁7の軸方向突出部8の内周面とに接して、これらの間に配設されている。第二シール部材62は、軸方向突出部46と軸方向突出部8との間を液密状態として、回転電機MGのロータRo側(ここでは、軸方向一方側)への油の漏出を抑制する。これにより、第四軸受54を潤滑した油が、クラッチハウジングCHに沿った方向に流れて回転電機MGに至るのを抑制することができる。また、第四軸受54を潤滑した油を、第二支持壁7に形成された排出油路9へと適切に導いて排出することができる。
【0072】
このように、本実施形態においては、クラッチハウジングCHの一部を構成する一方側径方向延在部41が、第一軸受51を介して第一支持壁4によって軸方向一方側から軸方向に支持されると共に、クラッチハウジングCHの他の一部を構成する他方側径方向延在部45が、第四軸受54を介して第二支持壁7によって軸方向他方側から軸方向に支持されている。よって、クラッチハウジングCHを第一支持壁4及び第二支持壁7によって軸方向両側から支持することが可能となっている。ここで、本実施形態においては、上記のとおりクラッチハウジングCH内に形成される循環油室38は、クラッチCLの摩擦プレート31を効果的に冷却するべく基本的には常時油で満たされた状態となっている。そのため、クラッチハウジングCHが中間軸Mと一体回転する車両の通常走行時等には、いわゆるバルーニング現象が生じる可能性がある。つまり、循環油室38内に満たされた油に遠心力が作用して、その影響によりクラッチハウジングCHが軸方向に広がるように弾性変形する可能性がある。この場合であっても、本実施形態ではクラッチハウジングCHを第一支持壁4及び第二支持壁7によって軸方向両側から支持しているので、実際にバルーニング現象が生じてクラッチハウジングCHが軸方向に変形するのを、効果的に抑制することができる。
【0073】
更に、全体としてΩ字状に形成されたクラッチハウジングCHに沿った方向で、第一軸受51及び第四軸受54よりも回転電機MGのロータRo側に、第一シール部材61及び第二シール部材62がそれぞれ配設されている。よって、第一軸受51及び第四軸受54を潤滑した油が回転電機MGに至るのを抑制することができる。よって、回転電機MGの冷却構造を、車両走行時の走行風等を利用する空冷構造とすることができる。従って、精密制御が要求される回転電機MGを、異物等による悪影響を抑制した状態で適切に冷却することができる。
【0074】
本実施形態においては、第一軸受51は、一方側径方向延在部41と軸方向に重複して配置されている。より具体的には、第一軸受51は、一方側径方向延在部41の径方向外側部分と軸方向に重複して配置されている。また、第一軸受51に対して軸方向他方側に隣接して配置される第一シール部材61も、当然ながら一方側径方向延在部41と軸方向に重複して配置されている。第一シール部材61は、一方側径方向延在部41の径方向内側部分と軸方向に重複して配置されている。このようにして、本実施形態では、軸方向他方側に向かって凸となる皿状に湾曲した形状を有して形成された一方側径方向延在部41の、軸方向一方側から見て軸方向他方側に引退した空間に、第一軸受51及び第一シール部材61の双方が配置されている。これにより、クラッチハウジングCHの軸方向一方側において、簡易な構成で当該クラッチハウジングCHの回転支持構造及びシール構造を実現しながら、軸方向寸法の短縮が図られている。
【0075】
また、第四軸受54は、他方側径方向延在部45と軸方向に重複して配置されている。より具体的には、第四軸受54は、他方側径方向延在部45の径方向外側部分と軸方向に重複して配置されている。また、第四軸受54に対して軸方向一方側に隣接して配置される第二シール部材62も、当然ながら他方側径方向延在部45と軸方向に重複して配置されている。第二シール部材62は、他方側径方向延在部45の径方向中央部と軸方向に重複して配置されている。より具体的には、他方側径方向延在部45は、軸方向突出部46が設けられた第一円板状部45aと、当該第一円板状部45aに対して軸方向他方側にオフセットされて径方向外側に配置された第二円板状部45cと、第一円板状部45aと第二円板状部45cとの間のオフセット部を形成すると共にこれらを連結するように形成された段付円筒部45bと、を有しており、第二シール部材62は段付円筒部45bと軸方向に重複して配置されている。このようにして、本実施形態では、他方側径方向延在部45の第二円板状部45cに対して軸方向一方側にオフセットされた第一円板状部45aの軸方向他方側に形成される空間に、第四軸受54及び第二シール部材62の双方が配置されている。これにより、クラッチハウジングCHの軸方向他方側において、簡易な構成で当該クラッチハウジングCHの回転支持構造及びシール構造を実現しながら、軸方向寸法の短縮が図られている。
【0076】
このように、本実施形態においては、軸方向でクラッチハウジングCHが占める空間内から大幅に軸方向に突出することなく第一軸受51、第四軸受54、第一シール部材61、及び第二シール部材62の全てが配設されて、ケース2に対するクラッチハウジングCHの回転支持構造及びシール構造が実現されている。また、本実施形態では、上記のとおり回転電機MGのロータRoが、クラッチハウジングCHと軸方向に重複して当該クラッチハウジングCHを構成する円筒状部49の外周部に固定されている。よって、軸方向でクラッチハウジングCHが占める空間内に、クラッチハウジングCH及びこれに収容されるクラッチCL、回転電機MG、並びに複数の軸受51、54及びシール部材52、53をコンパクトに配置して、ハイブリッド駆動装置1全体の軸方向寸法を短縮することが可能となっている。更に、本実施形態においては、上記のとおり第一軸受51には循環油室38から排出される油が供給されて当該第一軸受51の潤滑が行われる。このような構成では、第一軸受51の潤滑のために専用の油路を設ける必要がない。よって、この点からもハイブリッド駆動装置1全体の軸方向寸法を短縮することが可能となっており、車両への搭載性の向上が図られている。
【0077】
なお、本実施形態においては、第一軸受51、第一シール部材61、第四軸受54、及び第二シール部材62は、互いに径方向に重複して配置されている。すなわち、これらは、軸方向から見て互いに重複して配置されている(2つの部材の配置に関して、以下同様)。また、軸方向で第一軸受51及び第一シール部材61と第四軸受54及び第二シール部材62との間に、これらの一又は二以上と径方向に重複して、第二軸受52及び第三軸受53が配置されている。そして、これらに第五軸受55を加えた、第一軸受51、第二軸受52、第三軸受53、第四軸受54、第五軸受55、第一シール部材61、及び第二シール部材62の各部品よりも径方向外側に、クラッチCLの複数の摩擦プレート31が配置されている。複数の摩擦プレート31は、少なくとも第二軸受52、第三軸受53、及び第二シール部材62と軸方向に重複して配置されている。本実施形態では、更に、このうち第二シール部材62がピストン36と軸方向に重複して配置されている。
【0078】
2.第二の実施形態
本発明の第二の実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態においても、本発明に係る変速装置を、ハイブリッド駆動装置1に適用した場合を例として説明する。本実施形態に係るハイブリッド駆動装置1の全体構成及び各部の構成は、基本的には上記第一の実施形態と同様である。但し、本実施形態では、クラッチハウジングCHの軸方向他方側における当該クラッチハウジングCHのケース2に対する回転支持構造及びシール構造の配置構成が、上記第一の実施形態とは一部異なっている。そこで、以下では上記第一の実施形態との相違点を中心に詳細に説明する。なお、特に明記しない点については、上記第一の実施形態と同様とする。
【0079】
図4に示すように、本実施形態においては、軸方向突出部46の外周面には軸方向の段差部(上記第一の実施形態における段差部46a、図3を参照)は形成されておらず、軸方向突出部46は軸方向全体に亘ってほぼ同径に形成されている。そして、他方側径方向延在部45の第一円板状部45aに対して軸方向他方側から当接した状態で、軸方向突出部46の外周面と第二支持壁7の軸方向突出部8の内周面とに接して、これらの間に第四軸受54が配設されている。本例では、このような第四軸受54として、径方向荷重及び軸方向荷重の双方を受けることが可能なボールベアリングを用いている。第四軸受54は、第二支持壁7の軸方向一方側の面にも当接している。これにより、クラッチハウジングCHを構成する他方側径方向延在部45は、第二支持壁7によって第四軸受54を介して回転可能な状態で径方向及び軸方向に支持されている。ここでは特に、他方側径方向延在部45は第二支持壁7によって軸方向他方側から軸方向に支持されている。この第四軸受54には、オイルポンプ18を収容するポンプ室から第二支持壁7と軸方向突出部46との間を通って軸方向に漏出する油が供給される。これにより、第四軸受54の潤滑を行うことが可能となっている。
【0080】
本実施形態においては、全体としてΩ字状に形成されたクラッチハウジングCHに沿った方向で、第四軸受54よりも回転電機MGのロータRo側となる第四軸受54の径方向外側に、当該第四軸受54と軸方向に重複して第二シール部材62が配置されている。この第二シール部材62は、第二支持壁7の軸方向突出部8の外周面と他方側径方向延在部45の段付円筒部45bの内周面とに接して、これらの間に配設されている。このような配置構成では、軸方向に重複して配置される第四軸受54及び第二シール部材62は、他方側径方向延在部45とも軸方向に重複して配置されていることになる。より具体的には、第四軸受54及び第二シール部材62は、いずれも他方側径方向延在部45の段付円筒部45bと軸方向に重複して配置されている。第二シール部材62は、段付円筒部45bと軸方向突出部8との間を液密状態として、回転電機MGのロータRo側への油の漏出を抑制する。
【0081】
本実施形態においても、軸方向でクラッチハウジングCHが占める空間内から大幅に軸方向に突出することなく第一軸受51、第四軸受54、第一シール部材61、及び第二シール部材62の全てが配設されて、ケース2に対するクラッチハウジングCHの回転支持構造及びシール構造が実現されている。また、本実施形態でも回転電機MGのロータRoは、クラッチハウジングCHと軸方向に重複して当該クラッチハウジングCHを構成する円筒状部49の外周部に固定されている。よって、軸方向でクラッチハウジングCHが占める空間内に、クラッチハウジングCH及びこれに収容されるクラッチCL、回転電機MG、並びに複数の軸受51、54及びシール部材52、53をコンパクトに配置して、ハイブリッド駆動装置1全体の軸方向寸法を短縮することが可能となっている。更に、本実施形態においても、第一軸受51には循環油室38から排出される油が供給されて当該第一軸受51の潤滑が行われる。よって、第一軸受51の潤滑のために専用の油路を設ける必要はなく、この点からもハイブリッド駆動装置1全体の軸方向寸法を短縮することが可能となっている。
【0082】
なお、本実施形態においては、第一軸受51、第一シール部材61、及び第二シール部材62は、互いに径方向に重複して配置されている。また、第二軸受52、第三軸受53、第四軸受54、及び第五軸受55は、互いに径方向に重複して配置されている。第二軸受52及び第三軸受53は、フランジ部11の軸方向両側に当該フランジ部11を挟んで並んで配置されている。本例では、このような第二軸受52及び第三軸受53として、いずれも軸方向荷重を受けることが可能なスラストベアリングを用いている。第二軸受52は、一方側径方向延在部41の軸方向他方側の面から連続して形成される軸方向引退面41a及び入力軸Iにより径方向に位置決めされている。すなわち、第二軸受52は、その外周面を軸方向引退面41aに嵌合させると共にその内周面を入力軸Iの外周面に接した状態で固定されており、これにより径方向の位置決めがなされている。また、第三軸受53は、他方側径方向延在部45の軸方向一方側の面から連続して形成される軸方向引退面45d及び入力軸Iにより径方向に位置決めされている。すなわち、第三軸受53は、その外周面を軸方向引退面45dに嵌合させると共にその内周面を入力軸Iの外周面に接した状態で固定されており、これにより径方向の位置決めがなされている。
【0083】
〔その他の実施形態〕
最後に、本発明に係るハイブリッド駆動装置の、その他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される特徴構成は、その実施形態でのみ適用されるものではなく、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される特徴構成と組み合わせて適用することも可能である。
(1)上記の各実施形態においては、第一軸受51及び第一シール部材61の双方が、一方側径方向延在部41と軸方向に重複して配置されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、例えば第一軸受51及び第一シール部材61のうち、軸方向他方側に配置される第一シール部材61のみが一方側径方向延在部41と軸方向に重複して配置された構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。或いは、第一軸受51及び第一シール部材61の双方が、一方側径方向延在部41と軸方向に重複することなく、当該一方側径方向延在部41よりも更に軸方向一方側に配置された構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。これらの場合であっても、少なくとも軸方向一方側におけるクラッチハウジングCHのケース2に対する回転支持構造及びシール構造を適切に実現できる。
【0084】
(2)上記の各実施形態においては、第四軸受54及び第二シール部材62の双方が、他方側径方向延在部45と軸方向に重複して配置されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、上記第一の実施形態のように例えば第四軸受54に対して第二シール部材62が軸方向一方側に配置される場合には、第二シール部材62のみが他方側径方向延在部45と軸方向に重複して配置された構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。或いは、第四軸受54及び第二シール部材62の双方が、他方側径方向延在部45と軸方向に重複することなく、当該他方側径方向延在部45よりも更に軸方向他方側に配置された構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。これらの場合であっても、少なくとも軸方向他方側におけるクラッチハウジングCHのケース2に対する回転支持構造及びシール構造を適切に実現できる。
【0085】
(3)上記第二の実施形態においては、第四軸受54と第二シール部材62とが軸方向に重複して配置されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、第四軸受54の径方向外側において、クラッチハウジングCHに沿った方向で少なくとも第四軸受54よりも回転電機MGのロータRo側に配置されていれば、第二シール部材62が第四軸受54と軸方向に重複することなく当該第四軸受54に対して軸方向一方側又は軸方向他方側にずれて配置された構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
【0086】
(4)上記の各実施形態においては、第二シール部材62がクラッチCLのピストン36と軸方向に重複して配置されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、第二シール部材62が、ピストン36と軸方向に重複することなく、当該ピストン36に対して軸方向一方側又は軸方向他方側にずれて配置された構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
【0087】
(5)上記の各実施形態においては、連結部材の一部を構成するフランジ部11がその径方向外側端部かつ軸方向一方側端部に切欠溝11aを有すると共に、その切欠溝11aに対して軸方向一方側から当接した状態で円環板状部22がフランジ部11に連結されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、例えばフランジ部11がその径方向外側端部かつ軸方向他方側端部に切欠溝を有すると共に、その切欠溝に対して軸方向他方側から当接した状態で円環板状部22がフランジ部11に連結された構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。或いは、連結部材の他の一部を構成する円環板状部22がその径方向内側端部に切欠溝を有すると共に、その切欠溝に対してフランジ部11が連結された構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
【0088】
(6)上記の各実施形態においては、一方側径方向延在部41は、その軸方向他方側の面から連続して軸方向一方側に引退するように形成された円筒状の軸方向引退面41aを有し、この軸方向引退面41aにより第二軸受52の径方向の位置決めがされている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、例えば一方側径方向延在部41がその軸方向他方側の面から軸方向他方側に突出するように形成された円筒状の軸方向突出部を有し、この軸方向突出部により第二軸受52の径方向の位置決めがされた構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
【0089】
(7)上記の各実施形態においては、ダンパDが回転電機MGのステータStの軸方向一方側のコイルエンド部Ceと軸方向に重複して配置されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、ダンパDが、回転電機MGのステータStの軸方向一方側のコイルエンド部Ceと軸方向に重複することなく、当該コイルエンド部Ceに対して軸方向一方側にずれて配置された構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
【0090】
(8)上記の各実施形態においては、第一支持機構及び第二支持機構の双方が、第一軸受51及び第二軸受52としてのボールベアリングを用いて構成されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、径方向荷重及び軸方向荷重の双方を受けることが可能な機構であれば、例えば径方向荷重を受けることが可能なニードルベアリング等のラジアル軸受と、軸方向荷重を受けることが可能なスラストベアリング等のスラスト軸受と、の組み合わせにより第一支持機構及び第二支持機構の一方又は双方を構成することも、本発明の好適な実施形態の一つである。
【0091】
(9)上記第一の実施形態においては、第二軸受52及び第三軸受53として、いずれもスラストワッシャーを用いている場合を例として説明し、一方、上記第二の実施形態においては、第二軸受52及び第三軸受53として、いずれもスラストベアリングを用いている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、これらは少なくとも軸方向荷重を受けることが可能なものであればいいので、第二軸受52及び第三軸受53の一方にスラストワッシャー、他方にスラストベアリングを用いる構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
【0092】
(10)上記の各実施形態においては、クラッチハブ21が入力軸Iと一体回転するように駆動連結されると共に、クラッチドラム26が中間軸Mと一体回転するように駆動連結されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、クラッチハブ21及びクラッチドラム26の、入力軸I及び中間軸Mとの駆動連結関係を入れ替え、クラッチハブ21が中間軸Mと一体回転するように駆動連結されると共に、クラッチドラム26が入力軸Iと一体回転するように駆動連結された構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
【0093】
(11)その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、本願の特許請求の範囲に記載された構成及びこれと均等な構成を備えている限り、特許請求の範囲に記載されていない構成の一部を適宜改変した構成も、当然に本発明の技術的範囲に属する。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明は、内燃機関に駆動連結される第一軸と、回転電機と、第一軸と同軸上に配置され回転電機及び変速機構に駆動連結される第二軸と、第一軸と第二軸との間の駆動力の伝達及び遮断を切替可能に設けられるクラッチと、第一軸、第二軸、回転電機、及びクラッチを収容するケースと、を備えたハイブリッド駆動装置に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0095】
1 ハイブリッド駆動装置
2 ケース
4 第一支持壁(一方側支持壁部)
5 軸方向突出部(第一軸方向突出部)
7 第二支持壁(他方側支持壁部)
8 軸方向突出部(第三軸方向突出部)
21 クラッチハブ
22 円環板状部(ハブ側連結部)
31 摩擦プレート
36 ピストン
41 一方側径方向延在部
41a 軸方向引退面
42 軸方向突出部(第二軸方向突出部)
45 他方側径方向延在部
45a 第二円板状部
45b 段付円筒部
45c 第一円板状部
46 軸方向突出部(第四軸方向突出部)
51 第一軸受(第一支持機構)
52 第二軸受(第三支持機構)
53 第三軸受(第四支持機構)
54 第四軸受(第二支持機構)
61 第一シール部材(第一シール機構)
62 第二シール部材(第二シール機構)
E 内燃機関
D ダンパ
MG 回転電機
St ステータ
Ce コイルエンド部
Ro ロータ
I 入力軸(第一軸)
M 中間軸(第二軸)
TM 変速機構
CL クラッチ
CH クラッチハウジング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関に駆動連結される第一軸と、回転電機と、前記第一軸と同軸上に配置され前記回転電機及び変速機構に駆動連結される第二軸と、前記第一軸と前記第二軸との間の駆動力の伝達及び遮断を切替可能に設けられるクラッチと、前記第一軸、前記第二軸、前記回転電機、及び前記クラッチを収容するケースと、を備えたハイブリッド駆動装置であって、
前記クラッチの軸方向両側及び径方向外側を包囲して前記クラッチを収容すると共に、前記第二軸に駆動連結され、その内部に油で満たされる油室を形成するクラッチハウジングを備え、
前記クラッチハウジングを前記ケースに対して回転可能な状態で径方向及び軸方向に支持する第一支持機構と、前記ケースと前記クラッチハウジングとの間を油密状態とする第一シール機構と、を前記クラッチハウジングの軸方向一方側に備え、
前記回転電機のロータが、前記クラッチハウジングの外周部に固定され、
前記ケースは、前記クラッチハウジングの軸方向一方側において径方向に延びる一方側支持壁部と、当該一方側支持壁部から軸方向他方側へ突出する筒状の第一軸方向突出部と、を有し、
前記クラッチハウジングは、前記クラッチの軸方向一方側に配置されて径方向に延びる一方側径方向延在部と、当該一方側径方向延在部から軸方向一方側へ突出する筒状の第二軸方向突出部と、を有し、
前記第二軸方向突出部は、軸方向他方側が大径部、軸方向一方側が小径部となる段付形状に形成され、
前記第一支持機構が、前記第二軸方向突出部の小径部の外周面と前記第一軸方向突出部の内周面とに接して配置され、
前記第一シール機構が、前記第二軸方向突出部の大径部の外周面と前記第一軸方向突出部の内周面とに接して、前記第一支持機構と軸方向に並んで配置されているハイブリッド駆動装置。
【請求項2】
前記一方側径方向延在部は、径方向内側端部が径方向外側端部よりも軸方向他方側に位置する形状に形成され、
前記第一支持機構及び前記第一シール機構の一方又は双方が、前記一方側径方向延在部と軸方向に重複して配置されている請求項1に記載のハイブリッド駆動装置。
【請求項3】
前記クラッチハウジングを前記ケースに対して回転可能な状態で径方向及び軸方向に支持する第二支持機構と、前記ケースと前記クラッチハウジングとの間を油密状態とする第二シール機構と、を前記クラッチハウジングの軸方向他方側に更に備え、
前記ケースは、前記クラッチハウジングの軸方向他方側において径方向に延びる他方側支持壁部と、当該他方側支持壁部から軸方向一方側へ突出する筒状の第三軸方向突出部と、を有し、
前記クラッチハウジングは、前記クラッチの軸方向他方側に配置されて径方向に延びる他方側径方向延在部と、当該他方側径方向延在部から軸方向他方側へ突出する筒状の第四軸方向突出部と、を有し、
前記第四軸方向突出部は、軸方向一方側が大径部、軸方向他方側が小径部となる段付形状に形成され、
前記第二支持機構が、前記第四軸方向突出部の小径部の外周面と前記第三軸方向突出部の内周面とに接して配置され、
前記第二シール機構が、前記第四軸方向突出部の大径部の外周面と前記第三軸方向突出部の内周面とに接して、前記第二支持機構と軸方向に並んで配置されている請求項1又は2に記載のハイブリッド駆動装置。
【請求項4】
前記他方側径方向延在部は、径方向内側端部が径方向外側端部よりも軸方向一方側に位置する形状に形成され、
前記第二支持機構及び前記第二シール機構の一方又は双方が、前記他方側径方向延在部と軸方向に重複して配置されている請求項3に記載のハイブリッド駆動装置。
【請求項5】
前記クラッチハウジングを前記ケースに対して回転可能な状態で径方向及び軸方向に支持する第二支持機構と、前記ケースと前記クラッチハウジングとの間を油密状態とする第二シール機構と、を前記クラッチハウジングの軸方向他方側に更に備え、
前記ケースは、前記クラッチハウジングの軸方向他方側において径方向に延びる他方側支持壁部と、当該他方側支持壁部から軸方向一方側へ突出する筒状の第三軸方向突出部と、を有し、
前記クラッチハウジングは、前記クラッチの軸方向他方側に配置されて径方向に延びる他方側径方向延在部と、当該他方側径方向延在部から軸方向他方側へ突出する筒状の第四軸方向突出部と、を有し、
前記他方側径方向延在部は、前記第四軸方向突出部が設けられた第一円板状部と、前記第一円板状部に対して軸方向他方側にオフセットされて径方向外側に配置された第二円板状部と、前記第一円板状部と前記第二円板状部とを連結するように形成された段付円筒部と、を有し、
前記第二支持機構が、前記第四軸方向突出部の外周面と前記第三軸方向突出部の内周面とに接して配置され、
前記第二シール機構が、前記第三軸方向突出部の外周面と前記段付円筒部の内周面とに接して、前記第二支持機構と軸方向に重複して配置されている請求項1又は2に記載のハイブリッド駆動装置。
【請求項6】
前記クラッチが有する複数の摩擦プレートが、前記第一シール機構及び前記第二シール機構よりも径方向外側に配置されている請求項3から5のいずれか一項に記載のハイブリッド駆動装置。
【請求項7】
前記クラッチは、前記複数の摩擦プレートを押圧するためのピストンを有し、
前記第二シール機構が、前記ピストンと軸方向に重複して配置されている請求項6に記載のハイブリッド駆動装置。
【請求項8】
前記第一軸と前記クラッチのクラッチハブとを連結するように径方向に延びる連結部材と、前記連結部材の軸方向一方側の面及び軸方向他方側の面にそれぞれ接して配置され、前記連結部材と前記クラッチハウジングとの間を相対回転可能に支持する第三支持機構及び第四支持機構と、を備え、
前記連結部材は、前記第一軸から径方向外側に延びる軸側連結部と、前記クラッチハブの一部であって径方向内側に延びるハブ側連結部と、からなり、
前記ハブ側連結部は、前記軸側連結部の径方向外側端部に形成された切欠溝に対して軸方向一方側から当接した状態で前記軸側連結部に連結され、
前記一方側径方向延在部は、その軸方向他方側の面から連続して軸方向一方側に引退するように形成された円筒状の軸方向引退面を有し、
前記第三支持機構は、前記軸方向引退面により径方向に位置決めされ、
前記第四支持機構は、前記第三支持機構よりも径方向外側に配置されると共に、前記軸側連結部の径方向外側端により径方向に位置決めされている請求項1から7のいずれか一項に記載のハイブリッド駆動装置。
【請求項9】
前記一方側支持壁部よりも軸方向一方側に配置されて前記第一軸と前記内燃機関との間に介挿されるダンパ装置を備え、
前記ダンパ装置が、前記回転電機のステータから軸方向に突出するコイルエンド部と軸方向に重複して配置されている請求項1から8のいずれか一項に記載のハイブリッド駆動装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−213189(P2011−213189A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−81513(P2010−81513)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】