説明

ハンドリング装置、制御装置及び制御方法

【課題】コンベアによって搬送されている各ワークを効率のよい順番で処理することができるハンドリング装置、制御装置及び制御方法を得る。
【解決手段】ベルトコンベア2によって搬送されているワーク10を撮像して該ワーク10の位置を示すワークデータを生成する視覚センサ3と、搬送されているワーク10に対して所定の作業を行うロボット4と、視覚センサ3から送信されたワークデータを蓄積してデータベースを作成し、該データベースを用いてロボット4の位置に搬送されたワーク10に所定の作業を行うように該ロボット4を制御するコントローラ5とを備え、コントローラ5がデータベースに格納されている各ワークデータに所定の演算を行って複数のワーク10に対してロボット4が作業を行う順番を並べ替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ベルトコンベアにより搬送される物品を効率よく処理するハンドリング装置、制御装置及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
視覚センサをベルトコンベアの上流に配置して、当該ベルトコンベアによって搬送されている物品(以下、ワークと記載する)を検出し、当該視覚センサの出力データを用いて、ロボットがワークに行う動作を制御するハンドリング装置が知られている。例えば、特許文献1に示されたハンドリング装置は、視覚センサがベルトコンベアによって搬送されている各ワークを撮像し、各々のワークに対応させたデータを作成してロボットコントローラへ送信する。ロボットコントローラは、受信データのデータベースを作成し、ベルトコンベアの搬送によってロボットの作業位置へ到達したワークに対し、前述のデータベースから読み出したデータに基づく処理を行っている。
【0003】
【特許文献1】特開2007−15055号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された装置は、視覚センサから送信されたデータを順次記憶してデータベースを構築し、データベースに格納されている内容に順応してロボットの動作制御を行っている。そのため、ベルトコンベアによって搬送されている複数のワークを搬送下流側から順に処理するとは限られず、ロボットの動作が煩雑になって搬送下流に載置されているワークを処理することができなくなる場合が生じる可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、ベルトコンベアによって搬送されている各ワークを効率のよい順番で処理することができるハンドリング装置、制御装置及び制御方法を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のハンドリング装置は、ワークを搬送する搬送手段と、ワークに対して所定の作業を行うロボットと、搬送手段によって搬送されているワークを撮像して該ワークの位置を示すワークデータを生成する視覚センサと、視覚センサから送信されたワークデータを蓄積してデータベースを作成し、ロボットの位置に搬送されたワークに所定の作業を行うようにデータベースを用いてロボットを制御する制御手段とを有し、制御手段は、データベースに格納されているワークデータを読み出して所定の演算を行い、複数のワークに対してロボットが作業を行う順番を並べ替える。
【0007】
好適には、制御手段が、搬送手段の搬送下流側のワークから作業を開始するように制御する。
【0008】
好適には、制御手段が、視覚センサから送信されたワークデータを視覚センサが撮像した画像毎にまとめたトラッキングデータをデータベースとして記憶する記憶部と、トラッキングデータに含まれている各ワークデータから各ワークの写像ベクトルのスカラ量を求め、各ワークの写像ベクトルのスカラ量に基づいてロボットが作業を行う順番を並べ替える演算部と、演算部によって並べ替えられた順番に応じて各ワークに作業を行うようにロボットを制御する駆動制御部とを有する。
【0009】
本発明の制御装置は、搬送手段によって搬送されている複数のワークを撮像する視覚センサから送信された複数のワークデータを、視覚センサが撮像した画像毎にまとめたトラッキングデータとして記憶する記憶手段と、記憶手段に記憶されているトラッキングデータの各ワークデータに所定の演算を行って、搬送手段によって搬送されている各ワークに作業を行う順番を並べ替える演算手段と、演算手段によって並べ替えられた順番に応じて各ワークに作業を行うようにロボットを制御する駆動制御手段とを有する。
【0010】
本発明の制御方法は、搬送手段によって搬送されている複数のワークを撮像する視覚センサから送信された複数のワークデータを視覚センサが撮像した画像毎にまとめたトラッキングデータとして記憶手段へ記憶させる工程と、記憶手段に記憶されているトラッキングデータの各ワークデータに、演算手段が所定の演算を行って、搬送手段によって搬送されている各ワークに作業を行う順番を並べ替える工程と、演算手段によって並べ替えられた順番に応じて各ワークに作業を行うように駆動制御手段がロボットを制御する工程とを有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、搬送されるワークに効率よく作業を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、この発明の実施の一形態を説明する。
第1の実施形態
図1は、本発明の第1の実施形態によるハンドリング装置の概略構成を示す説明図である。図示したハンドリング装置1は、ベルトコンベア2、視覚センサ3、ロボット4、ロボットコントローラ5、および、コンベアエンコーダ6によって構成されている。
【0013】
ベルトコンベア2は、例えば仕掛り物品などのワーク10を図中矢印で示したコンベアベクトルAの方向に搬送する搬送手段である。
視覚センサ3は、ベルトコンベア2の搬送上流側の位置において、当該ベルトコンベア2のベルト搬送面2aに搭載された複数のワーク10を撮像するように配設されている。また、視覚センサ3は、出力データであるワークデータ、および、撮像タイミングを示すトリガ信号を、後述するロボットコントローラ5へ出力するように、例えばイーサネット(登録商標)などのLANを介して接続されている。
【0014】
ロボット4は、ベルトコンベア2によって搬送されているワーク10を、例えば1個ずつ掴む保持部4a、および、保持部4aを所定の範囲内で移動可能に支持するアーム部4bを備えている。
【0015】
ロボットコントローラ5は、ロボット4の動作を制御するように接続された制御手段である。また、ロボットコントローラ5は、後述するコンベアエンコーダ6の出力信号、および、視覚センサ3から送信されたワークデータならびにトリガ信号を前述の通信線等を介して入力するように接続されている。
【0016】
コンベアエンコーダ6は、ベルトコンベア2の搬送距離を検出する、即ちベルト搬送面2aに載置されているワーク10の移動量を検出する移動量検出手段である。
【0017】
なお、図1にはロボット4を1台、および、当該ロボット4を制御するロボットコントローラ5を1台備えた構成を例示しているが、複数のロボット4およびロボットコントローラ5を有するように構成してもよい。詳しくは、視覚センサ3から通信線へ送信されたワークデータ及びトリガ信号を受信する、例えばルータを備える。このルータに複数のロボットコントローラ5を接続する。このように構成して、各ロボットコントローラ5が、自らの処理動作に用いるワークデータならびにトリガ信号を、上記のルータから入力して各々ロボット4を制御することも可能である。
【0018】
図2は、図1のハンドリング装置1を成す視覚センサ、ロボット、および、ロボットコントローラの構成を示すブロック図である。
視覚センサ3は、カメラ11および画像処理部12を備えている。カメラ11は、例えばCCDカメラ等からなる。
カメラ11は、ワーク10が載置されているベルト搬送面2aを撮像するように配設され、例えば図1に示したトラッキング範囲Sが1回の撮像範囲となるように設けられている。
画像処理部12は、カメラ11から出力された画像データを処理してワークデータを生成するように構成されている。
また、視覚センサ3は、カメラ11の撮像タイミングを示すトリガ信号、および前述のワークデータを通信線へ送信する、図示を省略した通信部等を備えている。
【0019】
ロボットコントローラ5は、入力部13、表示部14、演算部15、記憶部16、および、駆動制御部17を備えている。
入力部13は、ユーザに設定操作等を行わせるように構成され、当該設定内容を演算部15へ入力するように接続されている。
表示部14は、前述の操作/設定内容、またロボット4の動作状況等を表示するように、演算部15へ接続されている。
【0020】
演算部15は、データ管理部15a、トラッキングマネージャ15b、および、ワークマネージャ15cを備えている。
データ管理部15aは、記憶部16に各データを記憶させる動作処理や、記憶部16からデータを読み出す動作を行うように構成されている。
トラッキングマネージャ15bは、各トラッキングデータD1が示す位置、換言するとトラッキング範囲Sを監視するように構成されている。
ワークマネージャ15cは、トラッキング範囲Sに存在する複数のワーク10の中からロボット4に作業を行わせるワーク10を選択するように構成されている。
【0021】
記憶部16は、演算部15の制御によってトラッキングデータD1を記憶し、複数のトラッキングデータD1を記憶することによってデータベースが構築されている。
トラッキングデータD1は、視覚センサ3が1回の撮像で得た画像データから抽出したワーク10の個数、コンベアエンコーダ6の出力信号が示す移動量、及び、上記の1回の撮像で得た画像データから抽出した各ワーク10のワークデータによって構成されている。
駆動制御部17は、後述するロボット4の各部を駆動させる制御信号を生成し、当該ロボット4を稼働させるように接続構成されている。
ロボット4は、保持部4aを駆動する保持用モータ18、保持部4aを支えているアーム部4bを駆動するアーム用モータ19を備えている。
【0022】
図3は、図1のハンドリング装置1の動作を示すフローチャートである。
ステップS1では、視覚センサ3のカメラ11が、前述のようにベルトコンベア2の搬送上流側において、ベルト搬送面2aに載置されているワーク10を撮像する。
【0023】
ステップS2では、視覚センサ3の画像処理部12がカメラ11によって撮像された画像から各ワーク10の部分を抽出して、当該各ワーク10のワークデータを生成する。
ステップS3では、前述の図示を省略した視覚センサ3の通信部が、カメラ11の撮像タイミングを示すトリガ信号に対応させて上記のワークデータを送信する。
【0024】
ステップS4では、ロボットコントローラ5が、詳しくは図示を省略したロボットコントローラ5の受信部が、ステップS3の工程において送信されたワークデータを受信し、データ管理部15aが上記のワークデータを記憶部16に記憶させる。
このとき、一つのトリガ信号に対応させて送られてきた各ワークデータを、一つのトラッキングデータD1としてまとめて記憶し、データベースが構築されるように格納する。
【0025】
ステップS5では、ロボットコントローラ5のトラッキングマネージャ15cが、コンベアエンコーダ6の出力信号を監視する。
また、データ管理部15aは、トラッキングマネージャ15bの監視結果に応じて、図1に示したワーク検出エリアを移動しているワーク10を含んでいるトラッキングデータD1を記憶部16から読み出す。
ワークマネージャ15cは、データ管理部15aが記憶部16から読み出した前述のトラッキングデータD1を成す各ワークデータを用いて演算を行い、この演算結果に応じてロボット4がハンドリング作業を行う順番を並べ替える。
【0026】
ステップS6では、ロボットコントローラ5の駆動制御部17が、ステップS5において並べ替えた順番に応じて各ワーク10を保持するように、ロボット4の動作を制御する。
ハンドリング装置1は、概ねこのように動作する。
【0027】
次に各部の詳細動作を説明する。
視覚センサ3は、ベルトコンベア2の搬送上流側において、ベルト搬送面2aの上流端、もしくはその近傍の撮像原点20aから一定の撮像範囲の画像、例えばトラッキング範囲Sの画像を撮像する。
詳しくは、図2のカメラ11が、自らの撮像タイミングでベルト搬送面2aのトラッキング範囲Sを撮像する(ステップS1)。
【0028】
画像処理部12は、トラッキング範囲Sの画像に含まれているワーク10の形状を抽出し、この形状を画像処理部12が自ら記憶している品種毎の形状データ等と比較して、当該ワーク10の品種を特定する。
また、画像処理部12は、トラッキング範囲Sの画像の中からワーク10の任意の部分の座標値を検出し、当該ワーク10のワークデータを生成する(ステップS2)。
この座標値は、カメラ11もしくは視覚センサ3が自ら行う各処理において使用される座標系において表現された値である。
なお、視覚センサ3は、ワークデータにワークの姿勢を示す座標値を含めて生成してもよい。
視覚センサ3は、前述のように、生成したワークデータを順次ロボットコントローラ5へ送信する(ステップS3)。
【0029】
図4は、図1のハンドリング装置1の動作を示す説明図である。この図は、前述のステップS4の工程において、ロボットコントローラ5のデータ管理部15aが、視覚センサ3から送られた各ワークデータ10を記憶部16に格納する動作を表している。
【0030】
データ管理部15aは、前述の通信部等が視覚センサ3からトリガ信号毎に送信された複数のワークデータ10を受信すると、これらのワークデータ10を一つにまとめてトラッキングデータD1を生成する。
また、データ管理部15aは、コンベアエンコーダ6から入力したベルトコンベア2の移動量を示すデータを加味して、上記のトラッキングデータD1を生成し、これを記憶部16へ格納してデータベースを構築する。
【0031】
図4には、視覚センサ3が[i−1]番目に撮像した画像から生成されたトラッキングデータD1をトラッキングデータTrk[i−1]、[i]番目に撮像した画像から生成されたトラッキングデータD1をトラッキングデータTrk[i]、[i+1]番目に撮像した画像から生成されたトラッキングデータD1をトラッキングデータTrk[i+1]として示している。
【0032】
図4に示したトラッキングデータTrk[i]は、視覚センサ3が[i]番目に撮像したトラッキング範囲Sから、例えば10個のワーク10を検出したときのものを表しており、ワークデータWrk[0]〜Wrk[9]によって構成されている。
【0033】
データ管理部15aは、例えば、上記のトラッキングデータTrk[i]を生成するとき、視覚センサ3から[i]番目に送られたトリガ信号が受信されると、このトリガ信号に対応させたトラッキングデータTrk[i]を格納する領域を記憶部16に確保する。
また、データ管理部15aは、ここでコンベアエンコーダ6から入力した信号、即ちベルトコンベア2の移動量を示すデータを、前述のトラッキングデータTrk[i]の構成要素として記憶部16に格納する。
またさらに、データ管理部15aは、順次視覚センサ3から送られてくるワークデータWrk[0]〜[9]を、前述の記憶部16に確保したトラッキングデータTrk[i]の領域に記憶/格納する。
【0034】
なお、図4では分かり易くするため、[i]番目のトラッキング範囲Sに二つのワーク10を図示し、当該[i]番目のトラッキング範囲に載置されている全てのワーク10の図示を省略している。
また、視覚センサ3が撮像した順番を示す上記の[i−1]、[i]、[i+1]等は、トラッキング番号として各トラッキングデータD1に付記されるものである。
【0035】
視覚センサ3が順次ロボットコントローラ5へ送信しているワークデータは、例えば図4に示したワークデータWrk[0]〜[9]のように構成されている。
ワークデータWrk[0]〜[9]は、視覚センサ3が自らの動作処理において使用している座標系のX座標データ、Y座標データ、及びX−Y平面上における回転を表すC座標データを有する。
また、ワークデータWrk[0]〜[9]は、複数の付加データ、例えば付加データ(1)〜(3)を加えて構成されている。付加データ(1)〜(3)は、様々な動作処理に関連する条件等を表し、例えば、前述のように視覚センサ3が判別した品種などを示すデータである。この付加データ(1)〜(3)は、ユーザの所望により視覚センサ3に設定される。
【0036】
ベルトコンベア2の搬送上流側において視覚センサ3に撮像された各ワーク10は、所定の時間を要してロボット4の配設されている位置へ搬送される。
ロボットコントローラ5は、記憶部16に蓄積されているデータベースを用いてロボット4の動作を制御し、当該ロボット4の位置に搬送されたワーク10にハンドリング作業を行う。
ロボット4のハンドリング作業は、図1に示したワーク検出エリア開始点20bとワーク検出エリア終了点20cとの間に設けられたワーク検出エリアにおいて行われる。
【0037】
ロボットコントローラ5のトラッキングマネージャ15bは、各トラッキングデータD1に含まれている移動量を示すデータを監視し、搬送中の各ワーク10の位置を検知する。
具体的には、トラッキングマネージャ15bは、データベースに格納されている各トラッキングデータD1の移動量を示すデータを抽出する。
またさらにトラッキングマネージャ15bは、上記の抽出した移動量を示すデータを用いて、ワーク検出エリア内を移動中のトラッキング範囲Sが、どのトラッキングデータD1に対応しているかを認識する。
トラッキングマネージャ15bは、上記の認識したトラッキングデータD1を、データ管理部15aを用いて記憶部16から読み出す。
【0038】
ワークマネージャ15cは、前述の記憶部16から読み出したトラッキングデータD1、即ち、トラッキングマネージャ15bが認識したトラッキングデータD1を入力する。
ワークマネージャ15cは、入力したトラッキングデータD1に含まれている複数のワークデータの中から処理を行うものを選択する。
換言すると、ワーク検出エリアに到達している複数のワーク10の中からロボット4に保持させるものを選択する。
【0039】
図5は、図1のハンドリング装置1の動作を示す説明図である。
この図は、データベースに格納されている各ワークデータの順番とベルト搬送面2aに載置されている各ワーク10を対応させた状態B、および、ロボット4に保持させる順番とベルト搬送面2aに載置されている各ワーク10とを対応させた状態Cを表している。
なお、上記の状態Bは、視覚センサ3から送信されたワークデータを順次データベースに格納した順番の一例であり、図示した順番に限定されない。
【0040】
ワークマネージャ15cは、図3のステップS5の工程において、ロボット4に各ワーク10を保持させる順番を状態Cのように並べ替える。
具体的には、1つのトラッキング範囲Sにおいて、搬送下流側のワーク10から順番にロボット4が保持するように、各ワーク10に対応するワークデータの並べ替えを行う。
【0041】
図6は、図1のハンドリング装置1のロボットコントローラが行う演算処理を示す説明図である。
図示したOは、任意の基準点である。また、ベクトルCνは、例えばユーザ等によって定められた単位ベクトルであり、ベルトコンベア2の搬送動作を表すコンベアベクトルAと同一方向を示す。
基準点Oは、例えばワーク検出エリアの中を移動しているトラッキング範囲Sよりも搬送上流側に設定される。図6に例示した基準点Oは、ベルト搬送面2aの幅方向の中央部分に設けられている。
【0042】
例えば、ベルト搬送面2aの面上において、ワーク10の位置Pの座標を(Px,Py)、基準点Oの座標を(Ox,Oy)としたとき、基準点Oからワーク10までのベクトルPnは(Px−Ox,Py−Oy)となる。
ベクトルPnとベクトルCνの成す角度をθとしたとき、ワーク10の写像ベクトルPnは次の(1)式のように表される。
【0043】
【数1】

【0044】
ここで、ベクトルPnとベクトルCνの内積は(2)式のように表される。
【0045】
【数2】

【0046】
ベクトルCνは、前述のように単位ベクトルなのでスカラ量は“1”である。そのため、前述の内積は、次の(3)式のようになる。
【0047】
【数3】

【0048】
前述の(1)式と(3)式から、写像ベクトルPnのスカラ量は、次の(4)式のように表される。
【0049】
【数4】

【0050】
このように、ワーク10の写像ベクトルPnのスカラ量を、ベクトルPとベクトルCνとの内積によって求めることができる。
演算部15の例えばワークマネージャ15cは、このようにして一つのトラッキングデータD1に含まれている全てのワークデータに対して写像ベクトルPnのスカラ量を求める。
【0051】
各ワーク10の位置を、写像ベクトルPnのスカラ量によって表すことにより、視覚センサ3から送られたワークデータの座標系がベルトコンベア2の搬送方向に整合していない場合でも、ロボット4の動作制御に用いることができる。
また、視覚センサ3が撮像した画像の座標原点がどのように配置されていても、ロボット4の動作制御に用いることが可能になる。
【0052】
例えば、一つのトラッキングデータD1に含まれているワークデータの数量を10個としたとき、前述のようにして求めた各ワークデータの写像ベクトルPnのスカラ量を、次のデータ列(5)のように並べる。
【0053】
【数5】

【0054】
前述のように原点Oを搬送上流側に設定したときには、写像ベクトルPnのスカラ量は、搬送下流側に位置するワーク10が大きな値になる。
演算部15は、例えば選択ソート法を用いて各スカラ量の並べ替えを行う。演算部15の例えばワークマネージャ15cは、データ列(5)の中の各スカラ量を比較し、値の大きな順に並べ替える。
ワークマネージャ15cは、データ列(5)の中に並べられている各スカラ量に対応させて、順にワークデータを選択する。
ワークマネージャ15cは、このように、大きな写像ベクトルPnのスカラ量を有するワークデータから順に、ロボット4の動作制御に用いるワークデータとして選択する。
【0055】
図3のステップS6の工程において、駆動制御部17は、ワークマネージャ15cが順次選択したワークデータを用いてロボット4の動作を制御し、例えば図5の状態Cに示したように搬送下流に位置するワーク10から順番にハンドリング作業を行わせる。
【0056】
ワークマネージャ15cが、写像ベクトルPnのスカラ量に応じてデータ列(5)の中を並べ替え、並べ替えたデータ列(5)に対応させて各ワークデータを処理する順番を変更することにより、ロボット4が各ワーク10を保持する順番を変更することができる。
【0057】
以上の第1の実施形態のハンドリング装置1によれば、演算部15が、ロボット4の動作制御に用いるワークデータの順番を並べ替えるようにしたので、ベルトコンベア2に搬送され、ワーク検出エリアを移動中のワーク10に効率よく作業を行うことができる。
また、作業を行う順番を並べ替えて搬送下流側に位置するワーク10から作業を行うようにしたので、搬送中のワーク10に作業をし損ねることを抑制することができる。
また、ロボット4の無駄な動作を抑えることができる。
【0058】
第2の実施形態
本発明の第2の実施形態によるハンドリング装置は、前述の第1の実施形態で説明したハンドリング装置と同様に構成されている。第1の実施形態で説明した装置と同様な構成について重複説明を省略する。
また、第2の実施形態によるハンドリング装置は、第1の実施形態で説明した装置と概ね同様に動作する。ここでは、第1の実施形態で説明した装置と同様な動作について重複説明を省略し、第2の実施形態によるハンドリング装置の特徴となる動作を説明する。
【0059】
図7は、本発明の第2の実施形態によるハンドリング装置の動作を示す説明図である。
この図は、データベースに格納されている各ワークデータの順番とベルト搬送面2aに載置されている各ワーク10を対応させた状態B、および、ロボット4に保持させる順番とベルト搬送面2aに載置されている各ワーク10とを対応させた状態Dを表している。
なお、上記の状態Bは、図5に示した状態Bと同様に、視覚センサ3から送信されたワークデータを順次データベースに格納した順番の一例であり、図示した順番に限定されない。
【0060】
第2の実施形態によるハンドリング装置1のワークマネージャ15cは、第1の実施形態で説明した図3のステップS5の工程において、ロボット4に各ワーク10を保持させる順番を状態Dのように並べ替える。
具体的には、1つのトラッキング範囲Sにおいて、搬送下流側のワーク10から順番にロボット4が保持するように、各ワーク10に対応するワークデータの並べ替えを行う。
例えば、最も搬送下流側に載置されているワーク10を、前述の第1の実施形態で説明した演算によって求める。
次に、このワーク10から最も近い位置に載置されているワーク10を、例えば各ワークデータの座標値を比較して検知する。このようにして、近傍に載置されているワーク10を順に検知し、検知した順番に応じてワークデータを並べ替える。
【0061】
上記のように、ワークマネージャ15cがワークデータを並べ替えて、順に駆動制御部17へ出力することにより、ロボット4は、図7の状態Dに示した順番で、各ワーク10に作業を行う。
【0062】
以上の第2の実施形態のハンドリング装置1によれば、ロボットコントローラ5の演算部15が、ロボット4の動作制御に用いるワークデータの順番を並べ替えるようにしたので、ベルトコンベア2によって搬送されてワーク検出エリアを移動中のワーク10に効率よく作業を行うことができる。
また、作業を行う順番を並べ替えて搬送下流側に位置するワーク10から作業を開始し、順次近傍のワーク10に作業を行うようにしたので、搬送中のワーク10に作業をし損ねることを抑制することができる。
また、ロボット4の無駄な動作を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の第1の実施形態によるハンドリング装置の概略構成を示す説明図である。
【図2】図1のハンドリング装置1を成す視覚センサ、ロボット、および、ロボットコントローラの構成を示すブロック図である。
【図3】図1のハンドリング装置1の動作を示すフローチャートである。
【図4】図1のハンドリング装置1の動作を示す説明図である。
【図5】図1のハンドリング装置1の動作を示す説明図である。
【図6】図1のハンドリング装置1のロボットコントローラが行う演算処理を示す説明図である。
【図7】本発明の第2の実施形態によるハンドリング装置の動作を示す説明図である。
【符号の説明】
【0064】
1 ハンドリング装置、2 ベルトコンベア、3 視覚センサ、4 ロボット、4a 保持部、4b アーム部、5 ロボットコントローラ、10 ワーク、11 カメラ、12 画像処理部、13 入力部、14 表示部、15 演算部、15a データ管理部、15b トラッキングマネージャ、15c ワークマネージャ、16 記憶部、17 駆動制御部、18 保持用モータ、19 アーム用モータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを搬送する搬送手段と、
前記ワークに対して所定の作業を行うロボットと、
前記搬送手段によって搬送されているワークを撮像して該ワークの位置を示すワークデータを生成する視覚センサと、
前記視覚センサから送信された前記ワークデータを蓄積してデータベースを作成し、前記ロボットの位置に搬送されたワークに所定の作業を行うように前記データベースを用いて前記ロボットを制御する制御手段と、
を有し、
前記制御手段は、前記データベースに格納されている前記ワークデータを読み出して所定の演算を行い、複数のワークに対して前記ロボットが作業を行う順番を並べ替える、
ハンドリング装置。
【請求項2】
前記制御手段は、
前記搬送手段の搬送下流側のワークから作業を開始するように制御する、
請求項1記載のハンドリング装置。
【請求項3】
前記制御手段は、
前記視覚センサから送信されたワークデータを前記視覚センサが撮像した画像毎にまとめたトラッキングデータをデータベースとして記憶する記憶部と、
前記トラッキングデータに含まれている各ワークデータから各ワークの写像ベクトルのスカラ量を求め、前記各ワークの写像ベクトルのスカラ量に基づいて前記ロボットが作業を行う順番を並べ替える演算部と、
前記演算部によって並べ替えられた順番に応じて前記各ワークに作業を行うように前記ロボットを制御する駆動制御部と、
を有する、
請求項1または請求項2記載のハンドリング装置。
【請求項4】
搬送手段によって搬送されている複数のワークを撮像する視覚センサから送信された複数のワークデータを前記視覚センサが撮像した画像毎にまとめたトラッキングデータとして記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶されている前記トラッキングデータの各ワークデータに所定の演算を行って、前記搬送手段によって搬送されている各ワークに作業を行う順番を並べ替える演算手段と、
前記演算手段によって並べ替えられた順番に応じて前記各ワークに作業を行うようにロボットを制御する駆動制御手段と、
を有する、制御装置。
【請求項5】
搬送手段によって搬送されている複数のワークを撮像する視覚センサから送信された複数のワークデータを前記視覚センサが撮像した画像毎にまとめたトラッキングデータとして記憶手段へ記憶させる工程と、
前記記憶手段に記憶されている前記トラッキングデータの各ワークデータに、演算手段が所定の演算を行って、前記搬送手段によって搬送されている各ワークに作業を行う順番を並べ替える工程と、
前記演算手段によって並べ替えられた順番に応じて前記各ワークに作業を行うように駆動制御手段がロボットを制御する工程と、
を有する、制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−297881(P2009−297881A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−158038(P2008−158038)
【出願日】平成20年6月17日(2008.6.17)
【出願人】(000003458)東芝機械株式会社 (843)
【Fターム(参考)】