説明

ハードコートを含むオプティカルデバイスの内部構成部品

オプティカルデバイスの内部構成部品の上にハードコート表面層を設けることによって、オプティカルデバイスの内部構成部品を保護するための方法が記載されている。ハードコート表面層を有するある種の内部構成部品、さらにはオプティカルデバイスの内部構成部品の組立て方法もまた記載されている。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
米国特許第6,132,861号明細書(カン(Kang)ら);米国特許第6,238,798B1号明細書(カン(Kang)ら);米国特許第6,245,833B1号明細書(カン(Kang)ら);米国特許第6,299,799号明細書(クレーグ(Craig)ら)、国際公開第99/57185号パンフレット(ホワン(Huang)ら)、さらには(リウ(Liu)ら)、米国特許第6,660,388号明細書;米国特許第6,660,389号明細書;および米国特許第6,841,190号明細書には、コロイド状無機酸化物粒子、硬化可能なバインダー前駆体およびある種のフルオロケミカル化合物のブレンド物を含むハードコート組成物が記載されている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0002】
一実施態様においては、オプティカルデバイスの内部構成部品を含む物品が記載される。その内部構成部品には、少なくとも0.2重量%の、少なくとも1個の重合性部分を有する少なくとも1種のフルオロケミカル成分、および少なくとも50重量%の、1種または複数の、場合によってはフッ素化された架橋剤を含む重合性組成物の反応生成物を含むハードコート表面層が含まれる。その架橋剤は、典型的にはフッ素化されていない。フッ素化部分を含む架橋剤を使用する実施態様においては、そのハードコート組成物には、100重量%までの架橋剤が含まれていてよい。
【0003】
また別な実施態様においては、オプティカルデバイスの内部構成部品が記載され、そこでは、その内部構成部品にはハードコート表面層が含まれ、その表面層は、水に対して少なくとも70度の静的接触角を有している。
【0004】
一つの態様においては、その物品は、硬化されたハードコート表面層および複数のオプティカルデバイスの構成成分を含む保護膜を含むオプティカルデバイスの成分のシートであって、ここで、それらの構成成分は少なくとも一つの認識可能な境界を有し、そしてその構成成分はその硬化されたハードコート表面層に接合されている。
【0005】
また別な態様においては、その物品が波長選択フィルターであって、少なくとも50重量%の、2個以上の重合性部分を有する1種または複数の架橋剤、少なくとも0.5重量%の、少なくとも1個の重合性部分を有する少なくとも1種のフルオロケミカル成分または無機粒子の反応生成物、および吸収性成分を含む吸収層が含まれる。
【0006】
また別な態様においては、その物品が、ポリマーバインダー前駆体、任意成分の無機粒子、および場合によってはフルオロケミカル成分を含むハードコート表面層を含む、イメージセンサーまたはシリコンウェーハのような内部構成部品である。
【0007】
別の実施態様においては、オプティカルデバイスの内部構成部品を保護するための方法が記載される。その方法には、各種の技術手段によって、オプティカルデバイスの内部構成部品の上に記載されたハードコート表面層を与えることが含まれる。
【0008】
また別な実施態様においては、オプティカルデバイスの組立て方法が記載される。その方法には、オプティカルデバイスの内部構成部品を組み立てることが含まれ、そこでは、少なくとも1種の内部構成部品に記載のハードコート表面層が含まれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
各種のオプティカルデバイスが公知である。オプティカルデバイスでは、光を用いた検出、イメージング、投影、および照明などの目的の各種の構成要素を使用する。
【0010】
オプティカルデバイスの製造の際に、各種の個々の構成成分を組み合わせるが、それらの多くは内部構成部品である、すなわち、そのオプティカルデバイスの通常の使用方法では、外部環境に暴露されない。オプティカルデバイスの内部構成部品は、オプティカルデバイスを組み立てる際に、損傷や破片への暴露を受けやすい。組立方法の一例を図1に示す。この方法には、イメージセンサー550を(たとえば、フレキシブル)プリント回路基板590に、典型的には、はんだ付けによって取り付けることが含まれる。次いで、赤外線(IR)フィルター540を(たとえば、接着を用いて)そのイメージセンサー550に接合させる。次いで、円筒状ハウジング511に予め組み込まれたレンズ520を(たとえば、接着剤を用いて)そのIRフィルターと接合させる。アジア・オプティカル(Asia Optical)、フレクストロニック(Flextronic)、ライト−オン・テック(Lite−on Tech)、セムコ(SEMCO)、ハイセル(Hicel)、サムスン・テックウィン(Samsung Techwin)、ピクサート(Pixart)、アイ・シー・メディア(IC Media)、ウェスト・エレクトリック(West Electric)、サンシン(Sanshin)、パナソニック(Panasonic)およびシャープ(Sharp)など、多くの供給業者が、絞り、レンズ、フィルター、およびカバーガラスを備えた組立て済みカメラモジュールを製造している。組立て済みカメラモジュールは、組立てプロセスの一部として、イメージセンサーに取り付けることができる。電話機(handset)メーカー、たとえばノキア(Nokia)、モトローラ(Motorola)、サムスン(Samsung)、エル・ジー(LG)、ソニー・エリクソン(Sony Ericson)、シーメンス(Siemens)、パナソニック(Panasonic)、およびサンヨー(Sanyo)が、カメラモジュールを組み立てて、最終的なカメラとする。
【0011】
(たとえば、カメラの)オプティカルデバイスのそれぞれの内部構成部品は、それらの構成部品およびデバイスの設計が原因の欠陥閾値(defect threshold)を有している。たとえば、構成成分の焦点面から距離や撮像部品の解像度の様な因子は、デジタルカメラの欠陥閾値に含められる。組立の際に、個々の構成成分のいずれか一つが破片を含んだり損傷を受けたりすると、そのような欠陥のために、カメラ全体が欠陥品となってしまう可能性がある。多くの場合、デバイス全体を組み立てて試験をするまでは、欠陥のある構成成分を見つけ出すのは困難である。欠陥デバイスの数が10〜20%もの多さになって、メーカーにとってユニットあたり数十〜数百ドル以上の損失となることも、組立てプロセスでは珍しいことではない。汚染されたり損傷を受けた構成成分を頻繁に清浄化して再作業をするのは、実際的でなかったり、あるいは非常に高価になったりする。
【0012】
したがって、組立てプロセスの前およびプロセスの途中において欠陥部品の発生を抑制することが有利であり、さらにはオプティカル構成成分のクリーニング、修理、および再作業が容易となる。この問題の解決法として、内部構成部品の上にハードコート表面層を設けてオプティカルデバイスの内部構成部品を保護する方法が、本明細書には記載されている。ハードコート表面層を有する内部構成部品、さらにはオプティカルデバイスの内部構成部品の組立方法もまた、記載されている。ハードコートは、強靱な耐摩耗性層であって、汚染物(たとえば、溶媒)、引っ掻き、摩耗から内部構成部品を保護する。図2に見られるように、内部構成部品(たとえば、イメージセンサー)250には、その内部構成部品の少なくとも一つの表面、好ましくは全部の表面の上に配された、ハードコート組成物210が含まれる。イメージセンサーの電気接点205(たとえば、たとえばはんだバム(solder bumbs))が、ハードコート表面層から突出していて、それによって、組立ての際にそのイメージセンサーがプリント回路基板と電気的に接触することが可能となる。そのハードコートには、場合によっては無機粒子と組み合わさって、重合性バインダー前駆体が含まれる。ハードコート組成物がイージークリーンなハードコートであるのが好ましい。
【0013】
ハードコートの表面層が耐久性であるのが好ましいが、これは、実施例において記載される試験方法に従って実施する耐久性試験の後で、その表面が実質的に表面損傷をまったく示さないか、あるいは光学的性質における顕著な損失がない(たとえば、元の透過率の97%を維持している)ということを意味しているが、その試験では、スチールウールを使用して、加重200gで、少なくとも50、好ましくは少なくとも100、より好ましくは少なくとも500ワイプする。さらに、その表面層および物品は、そのような耐久性試験の後でも、低い表面エネルギー特性(たとえば、高接触角、撥インキ性、およびビーズアップ(bead up)など)を示し続けているのが好ましい。
【0014】
ハードコート層が抗汚れ性であることが望ましいような場合には、そのハードコート表面層に1種または複数のフッ素化成分が含まれているのが好ましい。そのフッ素化成分には一般的に、1個または複数の(ペル)フッ素化部分を含む、モノマー、オリゴマー、およびポリマーが含まれる。フッ素化成分にはさらに、ハードコートのバインダー前駆体組成物と共重合することが可能な1個または複数の部分が含まれているのが好ましい。共重合可能なフッ素化成分を有するハードコートは、本明細書においては「イージークリーンハードコート」と呼ぶ。
【0015】
イージークリーンハードコート表面層の表面エネルギーは、接触角や撥インキ性のような各種の方法によって特性を表すことができるが、それらは実施例に記載する試験方法に従って求められる。表面層が、水に対して少なくとも70度の静的接触角を示すのが好ましい。水との接触角は、より好ましくは少なくとも80度、さらにより好ましくは少なくとも90度(たとえば、少なくとも95度、少なくとも100度)である。
【0016】
それに代わるか、または追加の考え方として、ヘキサデカンとの前進接触角が少なくとも50度、少なくとも60度であればより好ましい。表面エネルギーが低いということは、抗汚れ性があること、さらには表面が容易にクリーンできるということを示唆している。低表面エネルギーのさらに別な指標としては、商品名「サンフォード・シャーピー・ファイン・ポイント・パーマネント・マーカー(Sanford Sharpie,Fine Point permanent marker)、no.30001」として市販されているマーカーからのインキが、ビードアップするのが好ましい。さらに、本明細書に記載の表面層および物品は「撥インキ性」を示すが、これは、キンバリー・クラーク・コーポレーション(Kimberly Clark Corporation)、ジョージア州ロズウェル(Roswell,GA)から商品名「サーパス・フェイシャル・ティッシュー(SURPASS FACIAL TISSUE)」として市販されているティッシューを用いてぬぐうことによって、インキが容易に除去される、ということを意味している。
【0017】
水に対する接触角がそのように高いということから、そのイージークリーンハードコート表面層は、湿分バリヤー性を与えることによって、オプティカルデバイスの内部構成部品を保護することも可能である。
【0018】
いくつかの実施態様においては、ハードコートは、図2に見られるような、単一層として設けられる。別の実施態様においては、ハードコートに多層構造が含まれていてもよい。たとえば、イージークリーンハードコートを含む表面層は、米国特許出願第10/841159号明細書(出願日:2004年5月7日)に記載されているように、(たとえば、非フッ素化)ハードコート層の一連のコーティング、乾燥、および硬化、それに続けてのフッ素化表面層のコーティング、乾燥、および硬化させるか;または、米国特許出願第11/121456号明細書(出願日:2005年5月4日)に記載されているように、共重合可能なフッ素化成分をハードコートの中に直接配合した、イージークリーンハードコートをコーティング、乾燥、および硬化させることによって、調製することができる。理論に拘束される訳ではないが、いずれの場合においても、フッ素化成分がそのコーティングの表面に存在していて、抗汚れ特性を与えている。多層イージークリーン構成は、ハードコート層の上に表面層の同時コーティングをし、それに続けて両方の層を乾燥および硬化させることにより、調製することが可能であると推測される。
【0019】
ハードコート層の全厚みは、典型的には、約1〜約100マイクロメートル、約2〜約50マイクロメートル、または約3〜約30マイクロメートルである。イージークリーンフッ素化表面層を(たとえば、非フッ素化ハードコート)に適用する場合には、そのイージークリーン層の厚みは、少なくとも約10ナノメートル、好ましくは少なくとも約25ナノメートルである。典型的には、硬化させた層が、約200ナノメートル未満、好ましくは約100ナノメートル未満、より好ましくは約75ナノメートル未満の厚みを有する。したがって、耐久性の大部分は、下層にある(たとえば、非フッ素化)ハードコート層によって得られている。
【0020】
内部構成部品の上にハードコートを設けるには、各種の方法を使用することができる。
【0021】
一つの態様においては、重合性液状物(たとえば、セラマー)ハードコート組成物を内部構成部品の上にコーティングし、その重合性ハードコート組成物を硬化させて、硬化膜を形成させることにより、ハードコートを形成する。コーティング組成物は、各種の慣用されるコーティング方法を用いて、内部構成部品に適用することができる。好適なコーティング方法としては、たとえば、スピンコーティング法、ナイフコーティング法、ダイコーティング法、ワイヤコーティング法、フラッドコーティング法、パジング法、スプレー法、ロールコーティング法、浸漬法、ブラシ法、フォーム塗布法、印刷法などが挙げられる。コーティングの後に、(存在するならば)溶媒を、加熱、真空および/またはその他の方法を用いてフラッシュさせる。コーティングは典型的には、強制空気循環炉を用いて乾燥させる。乾燥させたコーティングは、少なくとも部分的に、典型的には全面的に、好適な形態のエネルギーたとえば、熱エネルギー、可視光線、紫外光線または電子ビーム照射を使用して硬化させる。周囲条件において紫外光線を照射することがよく用いられるが、その理由は、この硬化方法は比較的にコストが低く、高速であるからである。好適なエネルギー源としては、UV「C」を約5〜60ミリジュール/平方センチメートル(mJ/cm2)の照射量で与える紫外光線硬化デバイスを挙げることができる。硬化は、酸素の含量が低い環境、たとえば約100ppm未満で起こさせるのが好ましい。窒素ガスが好ましい環境である。
【0022】
別の実施態様においては、適切な手段、たとえば加熱積層法、熱成形法、接着剤接合法、または超音波もしくは高周波接合技術によって、硬化されたハードコート層を含む保護膜を内部構成部品に取り付けることができる。接着剤は、その内部構成部品に適用してもよいし、あるいは保護膜に予め適用しておいてもよい。保護膜が、除去可能な剥離ライナーの上に設けられた硬化されたハードコート層を含んでいるだけでもよいし、あるいは、保護膜が、光透過性基材および/または接着剤層のような追加の層をさらに含んでいてもよい。たとえば図3には、内部構成部品(たとえば、イメージセンサー)350に接合させた保護膜物品380を示している。その保護膜物品には、架橋されたハードコート表面層310、およびハードコート表面層と内部構成部品との間に配された透明基材370が含まれている。接着剤層360が、保護膜を内部構成部品350に接合している。接着剤360の下側表面は、場合によっては微細構造化されていて、接着剤層が内部構成部品に接触したときに空気が逃げられるようになっていてもよい。イメージセンサーの電気接点205(たとえば、たとえばはんだバム)が、その保護膜から突出していて、それによって、組立ての際にそのイメージセンサーがプリント回路基板と電気的に接触することが可能となる。別な方法として、電気接点が反対側の(たとえば、上側の)表面に存在していてもよい。マスキングまたはエッチング技術を用いて、露出された電気接点を得ることもできる。
【0023】
保護コーティングの特に有利なひとつの使用法は、サプライチェーンの初期の段階で基材にそれを適用することであって、そこでその材料が、オプティカル構成成分のマザーシート、または予め二次加工したマスターに適用される。たとえば、保護コーティングを、充分に大きくて、それから多くの個々の構成成分を二次加工することが可能な、大きなポリマー「マスターシート」の上に直接コーティングすることができる(または別な方法として、その上にコーティングを有する膜をシートに積層することができる)。次いで、そのマスターシートを、各種の方法たとえば、かじり法、切断法、および機械加工法によって、個々の部品に二次加工することができる。第二の例は、ウェーハスケール加工に関する。シリコンフォトダイオードのようなある種のタイプのセンサーはまず、円筒状のインゴットから、直径約3〜10インチの薄いウェーハに調製する。それらのウェーハは、最終的には「さいの目」に切断して(シンギュレーションと呼ばれているプロセス)個々の構成成分のサイズの小片とし、次いでそれをパッケージングして、オプティカル構成成分の中に組み入れることができる。ウェーハスケールで保護コーティングを適用(前シンギュレーション)すると、サプライチェーンの始まりのところで個々の小片に保護機能を組み入れて、そのためにサプライチェーン全体を通じて部品の損傷を低減させることが可能であるという利点があるであろう。そのようなコーティングを追加の光学的要素たとえばフィルターと組み合わせて、同様の追加の光学的機能を与えることも可能である。
【0024】
本明細書に記載のハードコート表面層、さらには保護膜(たとえば、場合によっては基材および接着剤をさらに含む)は、その内部構成部品の光学的品質を損ねることはない。
【0025】
保護膜物品の表面層、さらには任意成分の基材および接着剤は光透過性であるが、これは、光線が基材を通して伝送され得るということを意味している。保護膜物品の基材は、それが取り付けられる内部オプティカル構成成分の所望の機能を変化させたり、損なったりすることは実質的にない。表面層、さらには任意成分の基材および接着性基材のヘイズ値は、好ましくは5%未満、より好ましくは2%未満、さらにより好ましくは1%未満、最も好ましくは0.5%未満である。それに加えて、透過率が約90%より高いのが好ましい。
【0026】
各種の任意の恒久的および除去可能なタイプの接着剤組成物を、基材の反対側(すなわち、ハードコートの反対側)の上に与えて、その物品を内部構成部品に容易に搭載できるようにしてもよい。好適な接着剤組成物としては、(たとえば、水素化)ブロックコポリマーたとえば、テキサス州ウェストホロウ(Westhollow,TX)のクレイトン・ポリマーズ(Kraton Polymers)から、商品名「クレイトン(Kraton)G−1657」として市販されているもの、さらには他の(たとえば、類似の)熱可塑性ゴムなどが挙げられる。その他の接着剤の例としては、アクリル系、ウレタン系、シリコーン系およびエポキシ系接着剤が挙げられる。好適な接着剤は、充分な光学的性質と光安定性を有していて、その接着剤が、時間の経過や屋外暴露によって黄変してそのためにその光学ディスプレイの表示品質を劣化させるようなことがない。接着剤は、トランスファーコーティング法、ナイフコーティング法、スピンコーティング法、ダイコーティング法など各種公知のコーティング技術を使用して適用することができる。接着剤の例については、米国特許出願公開第2003/0012936号明細書に記載がある。そのような接着剤のいくつかは、ミネソタ州セントポール(St.Paul,MN)のスリー・エム・カンパニー(3M Company)から商品番号8141、8142、および8161として市販されている。
【0027】
一実施態様においては、(たとえば、イージークリーン)ハードコートを含む保護膜には、UV硬化可能な接着剤が含まれる。そのUV硬化可能な接着剤を内部構成部品と接触させ、UVを照射して、そのUV硬化可能な接着剤を内部構成部品に接合させる。剥離ライナーを光線通過性として、UV接着剤がその剥離ライナーを通して硬化させるようにしてもよい。各種のUV接着剤組成物が公知であって、たとえば三菱レイヨン(Mitsubishi Rayon)から商品名「UR6530」として市販されている、UV硬化可能なコーティングを挙げることができる。
【0028】
また別な実施態様においては、保護膜をオプティカルデバイスの内部構成部品に熱的に接合させるが、それには、下部取付板および上部取付板を有する金型を設ける工程;前記接着剤層が内部構成部品に密着するように保護膜を導入する工程;上部および下部取付板を加熱する工程;金型を閉じて、それによって接着剤層を光学基材に接着させる工程;金型を開ける工程;そして、金型からオプティカルデバイスを取り出す工程;が含まれる。
【0029】
保護膜は、たとえば保護膜を(たとえば、レーザーまたはダイ)切断をしてその個々の構成成分に適したサイズの小片(たとえば、5mm×5mm)とし、当業者公知のロボット式のピックアンドプレース装着機を用いて、その保護膜を個々の内部構成部品に取り付けて接合させることにより、個々の内部構成部品に適用することができる。取扱いを容易とするために、(たとえば、イージークリーン)保護膜層を剥離ライナーの上に備えることも可能であり、その場合、ハードコート表面層(たとえば、基材および(存在させるなら)接着剤と共に)を内部構成部品に取り付けるのに適したサイズの小片に切断する。その(すなわち、未切断の)剥離ライナーは、保護膜層部品のためのキャリアウェブとしての機能を果たす。
【0030】
別な方法として、たとえばスプレー法またはディップコーティング法によって、保護膜を複数の(すなわち、二つ以上の)内部構成部品の上に同時に与えることも可能である。
【0031】
一実施態様においては、保護膜は、インモールドトランスファープロセスによってオプティカルデバイスの内部構成部品に適用することができる。そのようなプロセスでは、内部構成部品の成形と、その内部構成部品への保護膜の適用を同時に実施してもよい。そのような方法には以下の工程が含まれる:成形ダイのインナーキャビティの中に保護膜を導入する工程;成形ダイを閉じる工程;インナーキャビティを実質的に充満できる量の溶融ポリマー材料を射出する工程;溶融ポリマー材料を冷却する工程;適用された保護膜材料を含む内部構成部品を成形ダイから取り出す工程;および内部構成部品から剥離層を剥がす工程。たとえば、レンズ射出成形機の中に保護膜のシートを挿入し、その後で、採用された溶融ポリマーを射出して、複合レンズ(multiple lenses)を同時に形成させてもよい。射出成形の後で、図4に示すように、ハードコート保護膜410によって、2個またはそれ以上の個々のレンズ420が相互に結合されていてもよい。次いで、たとえばレーザーカッティングまたはダイカッティングを用いて保護膜を切断することによって、レンズを分離することができる。
【0032】
この態様であれば、オプティカルデバイスの複数の(たとえば、内部)構成成分のシートを作ることによって、製造および取扱いが容易となる。それらの構成成分は少なくとも一つの認識可能な境界を有していて、ハードコート表面層だけで相互に接続されている個々の構成成分となっていてもよいし、あるいは、それらの構成成分が接触状態となっていてもよい。それらの構成成分は典型的には、たとえば図4のレンズの場合のように、非平面状である。さらに、この構成成分のシートは、各種適切な接合手段、たとえば本明細書に記載されているような接合手段を用いて複数の構成成分を接合させるような他の方法によって形成されていてもよい。
【0033】
保護膜物品には各種の基材を使用することができる。好適な基材物資としては、以下のものが挙げられる:ガラス(たとえば、クラウンガラス、フリントガラス、ホウケイ酸ガラス)、さらには熱硬化性もしくは熱可塑性ポリマーたとえば、ポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリレート(たとえば、ポリメチルメタクリレートすなわち「PMMA」)、ポリオレフィン(たとえば、ポリプロピレンすなわち「PP」)、ポリウレタン、ポリエステル(たとえば、ポリエチレンテレフタレートすなわち「PET」)、ポリアミド、ポリイミド、フェノール樹脂、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリルコポリマー、エポキシなど。典型的には、基材は、ある程度は、目的とする用途のために望ましい光学的および機械的性質を基準に選択する。そのような機械的性質としては、典型的には、可撓性、寸法安定性および耐衝撃性が挙げられる。基材の厚みもまた、典型的には、目的とする用途に依存する。ほとんどの用途においては、基材の厚みが約0.5mm未満であるのが好ましく、より好ましくは約0.02〜約0.2mmである。自立性のポリマー膜が好ましい。PETのようなポリエステルまたはPP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)およびPVC(ポリ塩化ビニル)のようなポリオレフィンから製造した膜が特に好ましい。ポリマー材料は、慣用される膜製造技術たとえば、押出し法や、場合によってはその押出した膜を1軸または2軸配向させる方法を用いて、膜に成形することができる。基材とハードコート層との間の接着性を改良する目的で、基材を、たとえば、化学処理、コロナ処理たとえば空気または窒素コロナ、プラズマ、火炎、または化学線照射などで処理することもできる。所望により、任意要素のタイ層またはプライマーを、基材および/またはハードコート層に適用して、層間接着力を向上させることもできる。
【0034】
オプティカルデバイスの各種の内部構成部品は、ハードコート表面層を取り入れることによって、メリットが得られる。いくつかの実施態様においては、内部構成部品が、たとえば光学膜の場合のように、実質的に平面状の膜であってよい。別の実施態様においては、内部構成部品が、最大寸法が約5cm〜20cmの範囲の、小さな個別部材であってもよい。場合によっては、内部オプティカル構成成分がフレキシブルな膜であってもよい。しかしながら、別な実施態様においては、その内部構成部品が剛直である。
【0035】
内部構成部品がガラスのような無機物質からなっていてもよいが、内部構成部品には、典型的には、熱可塑性、熱硬化性、または架橋された重合樹脂のようなポリマー材料を含む。
【0036】
たとえば光学ディスプレイの場合においては、その内部構成部品は、たとえば多層光学膜、微細構造化膜たとえば輝度増強膜、(たとえば、反射性または吸収性)偏光膜、拡散膜、さらには(たとえば、2軸)抑制膜、および補償膜などの光学膜であってよい。内部構成部品にはさらに、モノリス基材膜、または保護膜物品の基材としての使用に関して先に説明したような各種の材料が含まれていてよい。
【0037】
「光学ディスプレイ」または「ディスプレイパネル」という用語は、各種慣用される、非照光式および特に照光式光学ディスプレイを指していて、それには、マルチキャラクターマルチラインディスプレイたとえば液晶ディスプレイ(「LCD」)、プラズマディスプレイ、フロントおよびリアプロジェクションディスプレイ、ブラウン管(「CRT」)、および標識、さらにはシングルキャラクターもしくはバイナリーディスプレイたとえば、発光ダイオード(「LED」)、信号ランプおよびスイッチなどが含まれるが、それらに限定される訳ではない。そのようなディスプレイパネルの露出されている表面を、「レンズ」と呼ぶこともある。
【0038】
米国特許出願公開第2003/0217806号明細書には、多層光学膜、すなわち、異なった屈折率のミクロ層を配列することによって少なくとも部分的には、所望の透過性および/または反射性を与える膜が記載されている。それらのミクロ層は異なった屈折率特性を有していて、そのために、いくつかの光は隣接するミクロ層の間の界面で反射される。それらのミクロ層は充分に薄いので、複数の界面で反射された光が増加的干渉または相殺的干渉を受けて、その膜本体に所望の反射的性質または透過的性質を与える。紫外、可視、または近赤外の波長の光を反射するように設計された光学膜では、それぞれのミクロ層は一般に、約1μm未満の光学的厚み(すなわち、物理的な厚みと屈折率を掛け合わせたもの)を有する。しかしながら、より厚い層が含まれていてもよいが、そのような層としてはたとえば、膜の外側表面でのスキン層、あるいは膜の内部に配されていてミクロ層のパケットを分離する、保護境界層などが挙げられる。多層光学膜本体にはさらに、積層物中の多層光学膜の2枚以上のシートを接合させるための、1層または複数の厚い接着剤層が含まれていてもよい。
【0039】
多層光学膜本体の反射性および透過性は、それぞれのミクロ層の屈折率の関数である。それぞれのミクロ層は、少なくとも膜の局所的な位置においては、面内屈折率のnx、ny、ならびに膜の厚み軸に関連する屈折率nzによって、その特性を表すことができる。これらの指数は、相互に直交するx−、y−、およびz−軸の方向に偏光された光に対する対象の物質の屈折率を示している。実際には、屈折率は、適切な材料の選択と加工条件によって調節される。膜は、2種のポリマーA、Bを交互に、典型的には数十層または数百層の共押出しをし、それに続けて場合によっては、その多層押出し物を一つまたは複数の増倍ダイ(multiplication die)を通し、次いで、その押出し物を延伸させるかまたは他の方法で配向させて、最終的な膜を形成することによって製造することが可能である。得られた膜は、典型的には、数十層または数百層の個々のミクロ層からなるが、それらの厚みおよび屈折率を調節することによって、たとえば可視または近赤外におけるスペクトルの所望の領域に、一つまたは複数の反射バンドを与えることができる。かなりの数の層を用いて高い反射率を達成するためには、隣接するミクロ層で、x−軸の方向における偏光の屈折率の差(Δnx)が少なくとも0.05を示すのが好ましい。二つの直交偏光で高い反射率を望む場合には、隣接するミクロ層がさらに、y−軸の方向における偏光の屈折率の差(Δny)も少なくとも0.05を示すのが好ましい。別な方法としては、一つの偏光状態の直角入射光を反射し、直交する偏光状態の直角入射光を透過するような多層スタックを作るために、屈折率の差を0.05未満、好ましくは約0とすることも可能である。所望により、z−軸の方向における偏光の、隣接するミクロ層の間の屈折率の差(δnz)を調節して、斜め入射光のp−偏光成分について、所望の反射性を達成することも可能である。
【0040】
ポリマー多層光学膜を組み立てるのに使用することが可能な物質の例は、国際公開第99/36248号パンフレット(ニービン(Neavin)ら)に見出すことができる。それらの物質の内の少なくとも一つは、大きな絶対値を有する応力光学係数を持つポリマーであるのが望ましい。別の言い方をすれば、そのポリマーが、延伸させたときに、大きな複屈折(少なくとも約0.05、より好ましくは少なくとも約0.1、さらには0.2)を示すのが好ましい。その多層膜の用途に応じて、膜の面の二つの直交方向の間、一つまたは複数の面内方向の間および膜面に垂直な方向、あるいはそれらの組合せで、複屈折を起こさせてもよい。未延伸ポリマー層の間の等方性屈折率が広く分離しているような特別なケースでは、ポリマーの少なくとも一つにおける大きな複屈折が好ましいという条件は緩和することが可能であるが、それでも複屈折が望ましいことが多い。そのような特別なケースは、2軸プロセスを使用し、膜を二つの直交する面内方向に延伸させて形成させた、ミラー膜のため、および偏光子膜のためのポリマーの選択において起きる可能性がある。さらに、そのポリマーは、延伸をさせた後でも複屈折を維持することが可能で、それによって、仕上がりの膜にも所望の光学的性質が付与されるのが望ましい。多層膜の他の層に第二のポリマーを選択し、それによって、仕上がりの膜においても、その第二のポリマーの屈折率が、少なくとも一つの方向においては、それと同じ方向における第一のポリマーの屈折率とは顕著に異なっているようにすることも可能である。利便性のためには、2種だけの異なったポリマー物質を使用し押出しプロセスの間にそれらの物質を交互に重ねて、A、B、A、Bのような交互の層を形成させることにより、膜を組立てることも可能である。しかしながら、2種だけの異なったポリマー物質を交互に重ねることは、必須条件ではない。それに代えて、多層光学膜のそれぞれの層が、膜のどこにも存在しない一つだけの物質またはブレンド物からなっていてもよい。共押出しされるポリマーが、同一または類似の溶融温度を有しているのが好ましい。
【0041】
充分な屈折率の差および充分な層間接着力の両方を与える2種のポリマーの組合せの例を以下に挙げる:(1)主として1軸延伸を用いたプロセスで製造される偏光多層光学膜のためには:、PEN/coPEN、PET/coPET、PEN/sPS、PET/sPS、PEN/イースター(Eastar)(登録商標)およびPET/イースター(Eastar)(登録商標)であるが、ここで「PEN」はポリエチレンナフタレートを指し、「coPEN」はナフタレンジカルボン酸をベースとしたコポリマーまたはブレンド物を指し、「PET」はポリエチレンテレフタレートを指し、「coPET」はテレフタル酸をベースとしたコポリマーまたはブレンド物を指し、「sPS」はシンジオタクチックポリスチレンおよびその誘導体を指し、そしてイースター(Eastar)(登録商標)は、イーストマン・ケミカル・カンパニー(Eastman Chemical Co.)から市販されているポリエステルまたはコポリエステル(シクロヘキサンジメチレンジオール単位と、テレフタレート単位とを含んでいると考えられる)を指す;(2)2軸延伸プロセスのプロセス条件を操作することにより製造される偏光多層光学膜のためには:PEN/coPEN、PEN/PET、PEN/PBT、PEN/PETG、およびPEN/PETcoPBTであるが、ここで、「PBT」はポリブチレンテレフタレートを指し、「PETG」は第二のグリコール(通常はシクロヘキサンジメタノール)を用いたPETのコポリマーを指し、そして「PETcoPBT」は、テレフタル酸またはそのエステルと、エチレングリコールおよび1,4−ブタンジオールの混合物とからのコポリエステルを指す;(3)ミラー膜(着色ミラー膜を含む)のためには:、PEN/PMMA、coPEN/PMMA、PET/PMMA、PEN/エクデル(Ecdel)(登録商標)、PET/エクデル(Ecdel)(登録商標)、PEN/sPS、PET/sPS、PEN/coPET、PEN/PETG、およびPEN/ティー・エッチ・ブイ(THV)(登録商標)であるが、ここで「PMMA」はポリメチルメタクリレートを指し、エクデル(Ecdel)(登録商標)は、イーストマン・ケミカル・カンパニー(Eastman Chemical Co.)から市販されている熱可塑性ポリエステルまたはコポリエステル(シクロヘキサンジカルボキシレート単位、ポリテトラメチレンエーテルグリコール単位、およびシクロヘキサンジメタノール単位を含むと考えられる)であり、そしてティー・エッチ・ブイ(THV)(登録商標)は、スリー・エム・カンパニー(3M Company)から市販されているフルオロポリマーである。
【0042】
好適な多層光学膜および関連の構成についてのさらなる詳細は、米国特許第5,882,774号明細書(ジョンザ(Jonza)ら)、ならびに国際公開第95/17303号パンフレット(オウダーキルク(Ouderkirk)ら)および国際公開第99/39224号パンフレット(オウダーキルク(Ouderkirk)ら)にも見出すことができる。ポリマー多層光学膜および膜本体には、それらの光学的、機械的、および/または化学的性質のために選択された追加の層およびコーティングが含まれていてもよい。米国特許第6,368,699号明細書(ギルバート(Gilbert)ら)を参照されたい。それらのポリマー膜および膜本体にはさらに、無機層、たとえば金属または金属酸化物コーティングまたは層が含まれていてもよい。
【0043】
オプティカルイメージングデバイスの場合には、そのようなデバイスの内部構成部品のいずれか一つまたは各種の組合せに対して、ハードコート表面層を適用することができる。たとえば、図5を参照すると、デジタルカメラには一般に、露出されたカバープレート510、内部レンズ520、任意要素の内部ローパスフィルター530、内部赤外(IR)フィルター540、および内部イメージセンサー550(すなわち、撮像部品)が含まれる。デジタルカメラ組立物にはさらに、イメージセンサーとIRフィルターとの間に位置するカバーガラス(図示せず)が含まれていてもよい。典型的には、円筒状の鏡筒を使用して、個々の特定のカメラの光学的設計を基準にして、それらの要素を、相互に対する相対的な位置に取付け、保持する。さらに、サブアセンブリーを採用して、いくつかの構成成分を予め組み立てておいて、最終段階でそれらを組み合わせるようにしても良い。
【0044】
一般的にはイメージセンサーがデジタルカメラにおける最も高価な構成成分であるので、先に図2および3で示したように、イメージセンサーの上にハードコート表面層を設けると、特に有利であろうと考えられる。ほとんどのデジタルカメラ、さらには他のオプティカルイメージングデバイスに採用されているイメージセンサーは、典型的には、電荷結合デバイス(CCD)または相補型金属酸化物半導体(CMOS)のいずれかである。CCDおよびCMOSいずれのイメージセンサーも、光を電子に変換し、次いでそれを構成成分回路によって加工する。センサーが光を電子に変換すると、それが画像の中のそれぞれのセルの値(蓄積電荷)を検出する。それらのセンサーが光を変換する方法が異なっている。CCDでは、電荷をチップを横切って輸送し、アレイのコーナーで読み取る。次いで、アナログデジタル変換器が、それぞれのフォトサイトにおける電荷の量を測定し、その測定値をバイナリー形式に変換することにより、それぞれのピクセルの値をデジタル値に変える。CMOSデバイスでは、それぞれのピクセルに数個のトランジスタを使用して、より古典的な電線の使用により電荷を増幅、移動させる。CMOSの信号はデジタルであるので、アナログデジタル変換器を必要としない。各種のイメージセンサーが、たとえばプリマックス(Primax)、東芝(Toshiba)、アジレント(Agilent)、マイクロン(Micron)、オムニビジョン(Omnivision)、エス・ティー・マイクロ(ST Micro)、ハイニックス(Hynix)、およびソニー(Sony)などから市販されている。
【0045】
イメージセンサーは、パッケージに包み込むこともできるし、あるいはむき出しのチップとして提供することもできる。イメージセンサーは、場合によっては、2枚のガラスシートの間に積層して、エポキシの中に埋め込んでもよい。電気接点は、シリコンの裏側に引き出して、シリコンの表側の、場合によっては感度の高い側を光検出のために露出させておく。このタイプのイメージセンサーは、シェルケース(Shellcase)から商品名「シェルOP(ShellOP)」として市販されている。この実施態様においては、ハードコート表面層をイメージセンサーの上に設けた後で積層させるか、またはガラスの上に設ける。しかしながら、図2および3におけるように、(たとえば、イージークリーン)ハードコートまたは保護膜をガラスおよびエポキシに代えて用いるのが好ましい。
【0046】
また別な実施態様においては、ハードコート表面層を、検出器に対して画像の焦点を合わせるのに使用される内部レンズの上に設ける。携帯電話のカメラの場合、そのようなレンズは一般に、ポリカーボネートまたはポリメチルメタクリレート(すなわち、アクリル)から作られる。しかしながら、より大きい光学ユニット用レンズは、各種のタイプのガラス、たとえばホウケイ酸ガラスから製造することができる。単一のカメラモジュールの中に、複合レンズが含まれていてもよい。2個以上のレンズを使用する実施態様においては、それらのレンズをサブアセンブリーの中に予め組み込んでおいて、そのようなサブアセンブリーを最終的なカメラモジュール組立て業者に提供することも多い。各種のレンズおよびレンズアセンブリーが公知であって、多くのメーカー、たとえば、ライカ(Leica)、シャープ(Sharp)、コニカ(Konica)、エンプラス(Enplas)、リコー(Ricoh)、セコニックス(Sekonix)、およびキャノン(Canon)などから、市販されている。
【0047】
また別な実施態様においては、イージークリーンな、すなわち、ハードコートのバインダーと共重合するフッ素化成分を含む、ハードコート表面層を用いて、赤外線フィルターを得てもよい。赤外線(IR)カットオフフィルターは、カラーCCDまたはCMOS撮像部品と共に使用して、真のカラー画像を作り出す。IRカットオフフィルターは、可視光線は透過するが、赤外線の透過を阻止する。一般的には、電子カメラ用のIRフィルターは、約650nm〜約1100nmの波長の範囲を阻止し、それによって、可視光線はセンサーまで透過させるが、検出器の感度範囲に入る近赤外線光を阻止する。これは、二つの光学技術、すなわち吸収または反射を用いて実施することができる。吸収型のフィルターは、近赤外線を吸収する特殊な光学ガラスを用いて製造される。反射型のフィルターは、高効率で赤外線を反射する、実質的にはショートパス干渉フィルターである。それらのものは、高屈折率と低屈折率を交互に有する多層膜から製造される。IRフィルターは、スリー・エム(3M)から商品名「ディー・エフ・エー(DFA)」として入手可能である。その他のIRフィルター供給業者としては、HOYA(Hoya)、旭テクノグラス(Asahi Techno Glass)、京浜光膜(Keihin Komaku)、松浪硝子(Matsunami Glass)、五鈴精工硝子(Isuzu Glass)、サネックス(Sunex)、およびライフタイム(Lifetime)などが挙げられる。
【0048】
米国特許出願公開第2005/00411292号明細書(出願日:2005年2月24日)には、米国特許出願公開第2005/00411292号明細書に記載されているような、(たとえば、可視光線波長で、不均質に(non−uniformly)吸収を有する顔料または染料を含んでいてよい、1種または複数の着色剤によって得られるような)吸収要素と組み合わせた、(たとえば、多層光学膜によって得られるような)反射干渉要素を含む光学膜が記載されている。顔料をマトリックスの中に分散させて、膜を形成させる。多層膜に代わるものとしては、当業者公知であるが、干渉要素に、代わりに、コレステリック(キラルネマチック)液晶膜が含まれていてもよい。別な方法としては、干渉要素に、たとえば米国特許第4,799,745号明細書(マイヤー(Meyer)ら)に記載されているような、金属/無機酸化物スタック、あるいは米国特許第5,440,446号明細書(ショー(Shaw)ら)、米国特許第5,725,909号明細書(ショー(Shaw)ら)、米国特許第6,010,751号明細書(ショー(Shaw)ら)、および米国特許第6,045,864号明細書(ライアンズ(Lyons)ら)に記載されている方法により調製した、それに代わるポリマー/無機酸化物スタック、を有するポリマーバッキングを含んでいてもよい。
【0049】
一実施態様においては、吸収型IRフィルターまたは反射型IRフィルターの吸収要素は、本明細書に記載のイージークリーンハードコート組成物に、吸収性染料または吸収性着色剤(すなわち、可視光線スペクトルで吸収を有するもの)を添加することによって得ることができる。硬化されたハードコート層がIRフィルターとしての機能を果たす。吸収性イージークリーンハードコート組成物を、基材または剥離ライナーの上にコーティングして、吸収性保護膜を形成させることも可能であるし、あるいは、吸収要素を、干渉要素(たとえば、多層膜)、活性領域の中の検出器の内部表面の上、または、活性領域を覆っている窓またはレンズ要素の上に、直接コーティングすることも可能である。
【0050】
干渉要素は実質的に、主として近赤外領域にあるスペクトル帯域中の直角入射光を反射し、可視光波長領域のほとんどまたは実質的にすべてにわたる直角入射光を実質的に透過する。その干渉要素が、可視光領域においては、少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約70%の平均透過率を与え、近赤外線領域に広がる反射帯域全体においては、約5%未満、より好ましくは約2%または1%未満の透過率を与えるのが好ましい。シリコンフォトダイオードを使用した検出器システムでは、5%、2%、および1%の透過率限度が、約800nm〜約1100nm、または約700nm〜約1200nmの範囲をカバーしているのが好ましい。多くの場合、干渉要素による吸収は無視してもよい程度であって、そのため、所定の波長における透過パーセントと反射パーセントとを加えると、約100%となる。
【0051】
ヒトの眼(明所視)の応答が望ましいようなフォトセンサーの場合には、グリーン顔料、イエロー顔料、または好ましくはそれらの組合せを、イージークリーン吸収性ハードコート組成物の中に分散させる。好適なグリーン顔料としては、フタロシアニングリーンおよびフタロシアニングリーン6Yが挙げられ、その一方で好適なイエロー顔料としては、PY−150、PY−138、PY−139、PY−185、PY−180、およびPY−110が挙げられる。
【0052】
吸収型フィルターに使用する赤外吸収性染料および顔料は公知である。(たとえば、米国特許第6,049,419号明細書を参照されたい)。好適な染料としては、たとえばフタロシアニン染料、たとえばゼネカ・コーポレーション(Zenaca Corporation)から、商品名「プロジェクト・シリーズ(Project Series)」、たとえば「プロジェクト(Project)830NP」、「プロジェクト(Project)860NP」および「プロジェクト(Project)900NP」として市販されているものが挙げられる。好適な赤外吸収性顔料としては、シアニン、金属酸化物およびスクアレインなどが挙げられる。好適な顔料としては、米国特許第5,215,838号明細書に記載されているようなもの、たとえば金属フタロシアニン類、たとえば、バナジルフタロシアニン、クロロインジウムフタロシアニン、チタニルフタロシアニン、クロロアルミニウムフタロシアニン、銅フタロシアニン、マグネシウムフタロシアニンなど;スクアレイン類、たとえばヒドロキシスクアレインなど;さらにはそれらの混合物が挙げられる。銅フタロシアニン顔料の例としては、ビー・エー・エス・エフ(BASF)から商品名「6912」として市販されている顔料が挙げられる。その他の赤外顔料としては、ホイバッハ・ランゲルスハイム(Heubach Langelsheim)から商品名「ホイコドール(Heucodor)」として市販されている金属酸化物顔料が挙げられる。
【0053】
光学物体に使用される染料または顔料の量は、染料または顔料のタイプおよび/または末端用途に依存して変わる。典型的には、膜の表面に適用する場合には、染料または顔料を、所望の赤外線吸収および可視光線の外観を得るのに適した、濃度とコーティング厚みでその表面上に存在させる。典型的には、染料または顔料が追加の層の中または多層光学物体の中に存在している場合には、光学物体の全重量を基準にして、約0.05〜約0.5重量%の濃度範囲とする。さらに、顔料を使用する場合には、典型的にはたとえば光の波長より短い小さい粒径とする必要がある。
【0054】
各種オプティカルイメージング、検出、投影および照明システムの内部構成部品は、本明細書に記載の(たとえば、イージークリーン)ハードコート表面層からメリットを受けることができる。
【0055】
たとえば、ハードコートをフォトセンサーの上に設けてもよい。フォトセンサーは、可視光線、赤外線(IR)透過、および/または紫外線(UV)エネルギーの存在を検出する電子構成成分である。ほとんどのフォトセンサーは、光導電性と呼ばれる性質を有する半導体からなり、そこでは、その物質にあたる照射強度に依存して、導電性が変化する。ほとんどの一般的なタイプのフォトセンサーはフォトダイオード、バイポーラフォトトランジスタ、およびフォトFET(光感受性電界効果トランジスタ)である。それらのデバイスは、通常のダイオード、バイポーラトランジスタ、および電界効果トランジスタと本質的には同じであるが、ただし、そのパッケージに透明な窓があって、放射エネルギーが内部の半導体材料の間の接点に到達できるようになっている。バイポーラーおよび電界効果フォトトランジスタは、それらの検出能力に加えて、増幅作用も有している。シリコンフォトダイオードが、非イメージング光検出システムに使用されるセンサーの一例であるが、そこでは、可視光線または近赤外光線が、電気信号に変換されて、たとえば輝度センサーにおいて光の強度を検出する。フォトセンサーは、広く各種の電子デバイス、回路およびシステムにおいて使用されるが、そのような用途としては以下のものが挙げられる:光ファイバーシステム、オプティカルスキャナー、ワイヤレスLAN、自動照明調節、マシンビジョンシステム、光電管(electric eye)、光ディスクドライブ、光記憶チップ、およびリモコンデバイス。
【0056】
内部オプティカル構成成分としては、各種のイメージングシステム、たとえばカメラ、望遠鏡、双眼鏡、顕微鏡、およびメディカルイメージングシステムなどの内部構成部品が挙げられる。投影システムとしては、シリコン上液晶(LCOS)、デジタル光加工(DLP)、および高温ポリ−シリコン(HTPS)などが挙げられる。ディスプレイとしては、CRT、プラズマ、有機発光ダイオード(OLED)、液晶ディスプレイ(LCD)、および電界放射ディスプレイ(field emissive display)などが挙げられる。センサーシステムとしては、バーコードスキャナー、CD−DVD、ガイダンスシステム、およびリモコンシステムなどが挙げられる。エネルギーおよび光管理システムとしては、ライトパイプ、人工照明(luminaries)、および太陽光集光器がなどが挙げられる。光源としては、発光ダイオード、蛍光灯、アーク灯、白熱灯、ハロゲン灯、OLED、およびエレクトロルミネセントランプなどが挙げられる。
【0057】
内部オプティカル構成成分としては、たとえば以下のようなものが挙げられる:カラーフィルターホイール(たとえば、デジタルライトプロジェクター(DLP)システム);偏光ビームスプリッターキューブ(たとえば、カラー分離/再結合のためにシリコン上液晶(LCOS)技術を採用したデジタル投影システム)、および光を分解し、方向変換させるために使用される各種その他のタイプのプリズム(たとえば、TIRプリズムは、デジタル投影システムにおいて光路の方向を変化させるために使用される);ミラー(たとえば、デジタル投影において光の方向を変換させたり曲げたりして所望の領域に向けるのに使用される、銀でフロントコーティングしたミラー)。さらに、偏光子は、たとえばLCOSシステムにおける一般的なオプティカル構成成分であり、そのようなものとしては、吸収型、ワイヤグリッド、および複屈折偏光子が挙げられる。さらなる内部オプティカル構成成分としては、窓、グレーチング、ディフューザー、リターダー、液晶パネル、光導波路、およびプリズムまたは小レンズアレイを有する構造化表面膜などが挙げられる。プリズム、ビームスプリッター、フィルター、および各種のミラーは、たとえばショット・ガラス(Schott Glass)およびバウシュ・アンド・ロム(Bausch & Lomb)などの会社から入手可能である。シリコンフォトダイオードはハママツ・コーポレーション(Hamamatsu Corporation)から得ることができる。偏光子は、住友化学(Sumitomo Chemical)やスリー・エム・カンパニー(3M Company)など数社から入手可能である。プリズム膜、たとえば輝度増強膜もまた、スリー・エム・カンパニー(3M Company)から入手可能である。
【0058】
図1に示した説明のための組立て方法のような、各種公知の組立て方法のいずれかを用いて、(たとえば、イージークリーン)ハードコート層を有する内部構成部品を組み立てて、オプティカルデバイスとすることができる。ハードコートによって得られた表面保護があるために、その方法では、1種または複数の内部構成部品が硬化されたハードコート表面層を持たない場合の同一の組立て方法の場合よりも、欠陥のないイメージングデバイスをより高収率で得ることができると考えられる。
【0059】
そのハードコートには、場合によっては、さらに好ましくは、無機粒子と組み合わさって、重合性バインダー前駆体が含まれる。イージークリーンハードコートには、バインダーと共重合する少なくとも1種のフッ素化成分がさらに含まれる。
【0060】
ハードコートには、各種のバインダーを用いることができる。バインダー前駆体、さらには任意成分のフッ素化成分には、少なくとも1個の重合性部分、すなわち適切なエネルギー源に暴露されると架橋反応に与ることができるような末端部分、もしくはモノマー、オリゴマー、もしくはポリマー骨格からペンダントされた部分が含まれる。本明細書で使用するとき、「モノマー」という用語は、自分自身または他のモノマーと結合して、オリゴマーまたはポリマーを形成することが可能な、単一の、一単位分子を指す。「オリゴマー」という用語は、2〜20個のモノマー単位が結合した化合物を指す。「ポリマー」という用語は、21個以上のモノマーが結合した化合物を指す。好適な硬化エネルギー源としては、電子ビーム、加熱(熱エネルギー)、紫外光線、可視光線、マイクロ波、赤外線エネルギーなどが挙げられる。
【0061】
バインダーは、ハードコート組成物をその保護膜の内部構成部品、剥離ライナーまたは基材の上にコーティングした後で、光硬化されることが可能な、フリーラジカル重合性バインダー前駆体から誘導するのが好ましい。フリーラジカル硬化性部分の代表例としては、(メタ)アクリレート基、オレフィン性炭素−炭素二重結合、アリルオキシ基、アルファ−メチルスチレン基、(メタ)アクリルアミド基、ビニルおよびビニルエーテル基、それらの組合せなどが挙げられる。
【0062】
しかしながら、別な方法として、たとえばエポキシドおよびビニルエーテルのような重合性部分を、カチオン的に重合させることも可能である。第三のタイプの重合性基は、縮合重合により重合され、多くの場合、加熱によって反応完結を促進させる。たとえば、そのような物質には、たとえば、シリカの表面上のシラノール、シルセスキオキサン、およびシロキサンタイプのコーティングのような表面基と縮合するシラン基(特にアルコキシシラン基)を含む。アルコキシシラン基の縮合は、ゾル−ゲルタイプの化学反応の一例である。バインダー前駆体、任意成分のフッ素化成分、および任意成分の無機粒子には、1種または複数の硬化メカニズムを用いる、複数のタイプの重合性基が含まれていてもよい。フッ素化成分の重合性基が、バインダーの重合性基と実質的に同じであるのが好ましい。たとえば、バインダーとフッ素化成分の両方が(メタ)アクリレート重合性部分を含んでいたり、バインダーとフッ素化成分の両方が、(たとえば、加水分解性)シラン部分を含んでいたりしてもよい。アクリレート部分が好適であることが多い。
【0063】
各種公知のハードコート組成物を使用することができるが、そのようなものとしては、以下の特許に記載のものが挙げられる:米国特許第6,132,861号明細書(カン(Kang)ら、’861号特許)、米国特許第6,238,798B1号明細書(カン(Kang)ら、’798号特許)、米国特許第6,245,833B1号明細書(カン(Kang)ら、’833号特許)および米国特許第6,299,799号明細書(クレーグ(Craig)ら、’799号特許);国際公開第99/57185号パンフレット(ホワン(Huang)ら);米国特許第5,677050号明細書(ビルカディ(Bilkadi));米国特許第4,885,332(ビルカディ(Bilkadi))号明細書、および米国特許第5,104,929号明細書(ビルカディ(Bilkadi));米国特許第6,660,388号明細書;米国特許第6,660,389号明細書;および米国特許第6,841,190号明細書(リウ(Liu)ら)、米国特許出願第11/026573号明細書(出願日:2004年12月30日);米国特許出願第11/009181号明細書(出願日:2004年12月10日);米国特許出願第11/121742号明細書(出願日:2005年5月4日);米国特許出願第11/087413号明細書(出願日:2005年3月23日);および米国特許出願第11/121456号明細書(出願日:2005年5月4日)。
【0064】
最終的なセラマー組成物または複合材料に望まれる性質に応じて、モノ−、ジ−、トリ−、テトラ−、ペンタ−、およびヘキサ官能性フリーラジカル硬化性モノマーを各種の量で(たとえば、フリーラジカル)重合性バインダー前駆体に組み入れることができる。
【0065】
ハードコートには、各種のバインダーを用いることができる。バインダーは、ハードコート組成物を基材の上にコーティングして光硬化させれることが可能な、フリーラジカル重合性前駆体から誘導されることができる。’799号特許に記載されている、アクリル酸のプロトン性基置換されたエステルまたはアミドのようなバインダー前駆体、または’799号特許などに記載されているエチレン性不飽和モノマーが好ましいことが多い。好適なバインダー前駆体としては以下のものが挙げられる:多価アルコールのポリアクリル酸またはポリメタクリル酸エステル、たとえばエチレングリコール、トリエチレングリコール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,3−シクロペンタンジオール、1−エトキシ−2,3−プロパンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,6−ヘキサメチレンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,6−シクロヘキサンジメタノール、レソルシノール、ピロカテコール、ビスフェノールA、およびビス(2−ヒドロキシエチル)フタレートなどのようなジオールの、ジアクリレートまたはジ(メタ)アクリレートエステル;たとえばグリセリン、1,2,3−プロパントリメタノール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、1,3,6,−ヘキサントリオール、1,5,10−デカントリオール、ピロガロール、フロログルシノール、および2−フェニル−2,2−メチロールエタノールのようなトリオールの、トリアクリル酸またはトリメタクリル酸エステル;1,2,3,4−ブタンテトロール、1,1,2,2,−テトラメチロールエタン、1,1,3,3,−テトラメチロールプロパン、およびペンタエリスリトールテトラアクリレートのようなテトラオールの、テトラアクリル酸テトラメタクリル酸エステル;アドニトールのようなペントールの、ペンタアクリル酸またはペンタメタクリル酸エステル;たとえばソルビトール、ジペンタエリスリトール、ジヒドロキシエチルヒダントイン;およびそれらの混合物のようなヘキサノールの、ヘキサアクリル酸またはヘキサメタクリル酸エステル。バインダーは、カン(Kang)らの’798号特許に記載されているような、単官能モノマーの1種または複数から誘導することも可能である。バインダーには、ビルカディ(Bilkadi)らに記載されているような、1種または複数のN,N−二置換アクリルアミドおよび/またはN−置換−N−ビニル−アミドモノマーも含まれる。ハードコートは、セラマー組成物中の固形分の全重量を基準にして、約20〜約80%のエチレン性不飽和モノマーおよび約5〜約40%のN,N−二置換アクリルアミドモノマーまたはN−置換−N−ビニル−アミドモノマーを含むセラマー組成物から誘導してもよい。
【0066】
ハードコートのバインダーは、本明細書において架橋剤としても述べているような、少なくとも1種の多官能(たとえば、フリーラジカル)重合性モノマーから誘導するのが好ましい。フッ素化架橋剤を使用してもよいが、非フッ素化架橋剤単独、またはフッ素化架橋剤との組合せで使用するのが、典型的には好ましい。いくつかの用途においては、5重量%程度の少量の架橋剤でも好適な耐久性を与えることもあるが、典型的には、架橋剤の濃度を最大とするのが好ましい。したがって、本明細書に記載のコーティング組成物には、典型的には、少なくとも20重量%の架橋剤を含む。架橋剤の全量は、重合性コーティング組成物の少なくとも50重量%含まれていてもよいし、たとえば少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、少なくとも90重量%、さらには約95重量%含まれていてもよい。
【0067】
有用なフリーラジカル重合性架橋剤としては、たとえば、以下のものからなる群より選択されるポリ(メタ)アクリルモノマーが挙げられる:(a)ジ(メタ)アクリル含有化合物、たとえば、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノアクリレートモノメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、アルコキシル化脂肪族ジアクリレート、アルコキシル化シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、アルコキシル化ヘキサンジオールジアクリレート、アルコキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、カプロラクトン変性ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートジアクリレート、カプロラクトン変性ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートジアクリレート、シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、エトキシル化(10)ビスフェノールAジアクリレート、エトキシル化(3)ビスフェノールAジアクリレート、エトキシル化(30)ビスフェノールAジアクリレート、エトキシル化(4)ビスフェノールAジアクリレート、ヒドロキシピバルアルデヒド変性トリメチロールプロパンジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール(200)ジアクリレート、ポリエチレングリコール(400)ジアクリレート、ポリエチレングリコール(600)ジアクリレート、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート;(b)トリ(メタ)アクリル含有化合物、たとえば、グリセロールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシル化トリアクリレート(たとえば、エトキシル化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシル化(6)トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシル化(9)トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシル化(20)トリメチロールプロパントリアクリレート)、ペンタエリスリトールトリアクリレート、プロポキシル化トリアクリレート(たとえば、プロポキシル化(3)グリセリルトリアクリレート、プロポキシル化(5.5)グリセリルトリアクリレート、プロポキシル化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシル化(6)トリメチロールプロパントリアクリレート)、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート;(c)さらに高級官能性の(メタ)アクリル含有化合物、たとえば、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、エトキシル化(4)ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート;(d)オリゴマー性(メタ)アクリル化合物、たとえば、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート;それらのポリアクリルアミド類似体;およびそれらの組合せ。そのような化合物は、たとえば、ペンシルバニア州エクストン(Exton,PA)のサルトマー・カンパニー(Sartomer Company);ジョージア州スマーナ(Smyrna,GA)のユー・シー・ビー・ケミカルズ・コーポレーション(UCB Chemicals Corporation);およびウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee,WI)のアルドリッチ・ケミカル・カンパニー(Aldrich Chemical Company)などの供給業者から広く入手可能である。さらなる有用な(メタ)アクリレート原料としては、たとえば米国特許第4,262,072号明細書(ウェンドリング(Wendling)ら)に記載されているようなヒダントイン部分含有ポリ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0068】
好適な架橋剤としては、少なくとも3個の(メタ)アクリレート官能基が挙げられる。好適な市販されている架橋剤としては以下のものが挙げられる:ペンシルバニア州エクストン(Exton,PA)のサルトマー・カンパニー(Sartomer Company)から、たとえば、商品名SR351」として入手可能なトリメチロールプロパントリアクリレート、商品名「SR444」として入手可能なペンタエリスリトールトリアクリレート、商品名「SR399LV」として入手可能なジペンタエリスリトールペンタアクリレート、「SR454」として入手可能なエトキシル化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート、および商品名「SR494」として入手可能なエトキシル化(4)ペンタエリスリトールトリアクリレート。
【0069】
ハードコートにおいては各種の無機酸化物粒子を使用することができる。それらの粒子は、典型的には、実質的に球状の形状と比較的均一なサイズを有している。それらの粒子は、実質的に単分散の粒径分布を有しているか、または2種以上の実質的に単分散分布のものをブレンドすることによって得られるポリモーダル分布とすることができる。無機酸化物粒子は、典型的には凝集していない(実質的に散在している)が、それは、凝集が起きると、無機酸化物粒子の沈殿や、ハードコートのゲル化が起きるからである。無機酸化物粒子は典型的にはコロイド的なサイズを有していて、約0.001〜約0.2マイクロメートル、約0.05マイクロメートル未満、および約0.03マイクロメートル未満の平均粒子直径を有している。これらの粒径とすることによって、バインダー樹脂の中への無機酸化物粒子の分散が容易となり、所望の表面性質と光学的透明度を有するセラマーが得られる。無機酸化物粒子の平均粒径は、透過型電子顕微鏡法を使用して、所定の直径を有する無機酸化物粒子の数を数えることにより、測定することができる。無機酸化物粒子としては以下のものが挙げられる:コロイドシリカ、コロイドチタニア、コロイドアルミナ、コロイドジルコニア、コロイドバナジア、コロイドクロミア、コロイド酸化鉄、コロイド酸化アンチモン、コロイド酸化スズ、およびそれらの混合物。無機酸化物粒子は、たとえばシリカのような単一の酸化物からなるか、または実質的になっていてもよいし、あるいは、たとえばシリカおよび酸化アルミニウムのような酸化物の組合せを含んでいたり、または1種のタイプの酸化物のコア(または金属酸化物以外の材料のコア)の上に他のタイプの酸化物を析出させたようなものであったりしてもよい。シリカは、一般的な無機粒子である。無機酸化物粒子は、液状媒体中に無機酸化物粒子のコロイド分散体を含むゾルの形態で得られることが多い。ゾルは各種の方法を用いて、各種の形態で調製することができるが、そのような形態としてはたとえば、ヒドロゾル(水を液状媒体として使用)、オルガノゾル(有機液状物を使用)、および混合ゾル(液状媒体に水と有機液状物の両方を含む)などが挙げられ、たとえば、米国特許第5,648,407号明細書(ゲッツ(Goetz)ら);米国特許第5,677,050号明細書(ビルカディ(Bilkadi)ら)および米国特許第6,299,799号明細書(クレーグ(Craig)ら)に記載がある。(たとえば、非晶質シリカの)水性ゾルを使用することもできる。一般的には、ゾルには、そのゾルの全量を基準にして、少なくとも2重量%、少なくとも10重量%、少なくとも15重量%、少なくとも25重量%、多くの場合少なくとも35重量%のコロイド状無機酸化物粒子が含まれる。コロイド状無機酸化物粒子の量は、典型的には50重量%以下(たとえば、45重量%)である。無機粒子の表面は、ビルカディ(Bilkadi)らの記載のように、「アクリレート官能化」されていてもよい。さらに、ゾルはバインダーのpHに合わせることも可能で、対イオンまたは水溶性化合物(たとえば、ナトリウムアルミネート)を含んでいてもよいが、これらのことはすべて、カン(Kang)らの’798号特許に記載がある。
【0070】
ハードコート、無機酸化物粒子の水性ゾルを、フリーラジカル硬化性バインダー前駆体(たとえば、適切な硬化エネルギー源に暴露されたときに架橋反応に与ることが可能な、1種または複数のフリーラジカル硬化性モノマー、オリゴマーまたはポリマー)と混合することにより、都合よく調製することができる。通常は、得られた組成物を、適用する前に乾燥させて、実質的にすべての水を除去する。この乾燥工程は、場合によっては「ストリッピング」と呼ばれる。得られたセラマー組成物を適用する前に、それに有機溶媒を加えて、粘度特性を改良してセラマー組成物を基材の上へコーティングしやすくすることもできる。コーティングの後で、セラマー組成物を乾燥させて添加された溶媒を全部除去し、次いで、その乾燥させた組成物を適切なエネルギー源に暴露させることによって少なくとも部分的に固化させ、フリーラジカル硬化性バインダー前駆体の少なくとも部分的な硬化を与えることも可能である。
【0071】
ハードコートの中の無機粒子、バインダーおよび各種の他の成分を選択して、硬化されたハードコートが基材の屈折率に近い屈折率を示すようにする。このことは、モアレ模様やその他の目に見える干渉縞のようなものを抑制するのに役立つ。
【0072】
先に述べたように、ハードコートを水性コーティング組成物から形成させ、ストリッピングによってコーティングする前にそれから水を除去し、場合によっては溶媒を用いて希釈して、組成物のコーティングに役立たせることもできる。当業者のよく知るところであるが、所望の溶媒および溶媒レベルの選択は、ハードコートの中の個々の成分の性質、ならびに所望の基材およびコーティング条件に依存するであろう。カン(Kang)らの’798号特許には、いくつかの有用な溶媒、溶媒レベル、およびコーティング粘度の記載がある。
【0073】
ハードコートを、コロイド状無機酸化物粒子の水性ゾルとバインダー前駆体とを組み合わせて調製する場合には、そのゾルは、粒子が負の表面電荷を有する様なpHを有するようにする。たとえば、無機粒子のほとんどがシリカ粒子である場合には、そのゾルは、pHが7を超える、8を超える、または9を超えるアルカリ性である。ゾルに、水酸化アンモニウムなどが含まれていて、それにより、NH+4が、負の表面電荷を有する粒子に対する対イオンとして使用されるようにしてもよい。コロイド状無機酸化物粒子を表面処理したい場合には、カン(Kang)らの’833号特許に記載されているように、適切な表面処理剤をゾルにブレンドすることができる。次いで、そのフリーラジカル硬化性バインダー前駆体をセラマー組成物に添加する。そのセラマー組成物をストリッピングして、実質的にすべての水を除去する。たとえば、約98%の水を除去する(したがって、セラマー組成物中には約2%の水が残る)ことが、適切であるということが見出された。実質的にすべての水が除去されたら直ちに、カン(Kang)らの’798号特許に記載されているタイプの有機溶媒を、典型的にはそのセラマー組成物が約5%〜約99重量%(約10〜約70%)の固形分を有するように添加する。
【0074】
ハードコート組成物には、各種の単官能フッ素化成分、多官能フッ素化成分、さらにはそれらの組合せが含まれていてよい。少なくともいくつかの実施態様においては、少なくとも1種の単官能フッ素化成分と少なくとも1種の多官能フッ素化成分を組み合わせるのが好ましいということが見出された。
【0075】
ハードコート組成物前駆体の中のフッ素化成分の全量は、典型的には、少なくとも0.5重量%(たとえば、少なくとも約1重量%、2重量%、3重量%、および4重量%)である。ハードコート前駆体組成物が少なくとも約5重量%のフッ素化成分を含んでいるのが好ましい。多官能フッ素化成分を使用する実施態様においては特に、そのハードコート前駆体組成物には、95重量%程度の多量の使用多官能フッ素化成分を含むのがよい。しかしながら、先にも説明したように、所望の低表面エネルギーを与える使用フッ素化成分を最小限の濃度で用いるのが、一般的にコスト的にはより有利である。したがって、フッ素化成分の全量は、典型的には30重量%を超えず、好ましくは約15重量%以下(たとえば、約14重量%、13重量%、12重量%、および11重量%未満)の量で存在させる。
【0076】
本発明のコーティング組成物には、各種のフルオロ化重合性化合物を用いることができる。そのような化合物は、次式Iで表すことができる:
(Rf)−[(W)−(RA)]w (式I)
ここで、Rfには、(ペル)フルオロアルキル基、(ペル)フルオロアルキレン基、または(ペル)フルオロポリエーテル基が含まれる。(ペル)フルオロポリエーテル基としては、たとえば−(Cp2p)−、−(Cp2pO)−、−(CF(Z))−、−(CF(Z)O)−、−(CF(Z)Cp2pO)−、−(Cp2pCF(Z)O)−、−(CF2CF(Z)O)−、またはそれらの組合せのような(ペル)フッ素化基が挙げられ;Wは結合基であり;RAには、(メタ)アクリル基または重合性(たとえば、加水分解性)シラン基のような重合性基が含まれ;そしてwは1または2である。
【0077】
各種の重合性シラン基が当業者には公知である。そのシラン基は、典型的には、少なくとも1個のハロゲン原子および/または少なくとも1個の酸素原子と結合されているが、この酸素原子は、好ましくはアシルオキシおよび/またはアルコキシ基の構成要素である。
【0078】
フッ素化成分は、直鎖状、分岐状、環状、またはそれらの組合せであってよく、飽和であっても不飽和であってもよい。
【0079】
結合基Wとしては、アルキレン、アリーレン、ヘテロアルキレン、またはそれらの組合せから選択される2価の基、およびカルボニル、カルボニルオキシ、カルボニルイミノ、スルホンアミド、またはそれらの組合せから選択される任意の2価の基が挙げられる。Wは非置換であってもよいし、あるいはアルキル、アリール、ハロもしくはそれらの組合せによって置換されていてもよい。W基には典型的には、30個以下の炭素原子が含まれる。いくつかの化合物においては、そのW基が、20個以下の炭素原子、10個以下の炭素原子、6個以下の炭素原子、または4個以下の炭素原子を有する。たとえば、Wは、アルキレンであっても、アリール基で置換されたアルキレンであっても、あるいはアリーレンと組み合わせたアルキレンであってもよい。さらに、Wはウレタン結合(すなわち、(−OCONH−))であってもよい。
【0080】
(ペル)フルオロポリエーテルのRf繰り返し単位においては、pは典型的には1〜10の整数である。いくつかの実施態様においては、pは、1〜8、1〜6、1〜4、または1〜3の整数である。基Zは、ペルフルオロアルキル基、ペルフルオロエーテル基、ペルフルオロポリエーテル、またはペルフルオロアルコキシ基であるが、それらはすべて、直鎖状、分岐状、または環状であってよい。Z基は、典型的には、12個以下の炭素原子、10個以下の炭素原子、または9個以下の炭素原子、4個以下の炭素原子、3個以下の炭素原子、2個以下の炭素原子、または1以下の炭素原子を有する。いくつかの実施態様においては、Z基は、4個以下、3個以下、2個以下、1個以下の酸素原子を含むか、または酸素原子を含まない。
【0081】
fは、1価または2価とすることができる。Rfが1価である、いくつかの化合物においては、その末端基を、(Cp2p+1)−、(Cp2p+1O)−、(X’Cp2pO)−、または(X’Cp2p+1)−とすることができるが、ここでX’は、水素、塩素、または臭素であり、pは1〜10の整数である。1価のRf基のいくつかの実施態様においては、その末端基がペルフルオロ化されており、pが、1〜10、1〜8、1〜6、1〜4、または1〜3の整数である。
【0082】
(ペル)フルオロポリエーテル化合物は上述の式Iによって表すことができるが、ここでRfは(ペル)フルオロポリエーテル基であり、RAは(メタ)アクリル基または−COCF=CH2であり;そしてwは1または2である。1価のRf基の例としては、CF3O(C24O)nCF2−、およびC37O(CF(CF3)CF2O)nCF(CF3)−が挙げられるが、ここでnは、0〜50、1〜50、3〜30、3〜15、または3〜10の平均値を有する。好適な2価のRf(ペル)フルオロポリエーテル基の構造としては以下のものが挙げられるが、これらに限定される訳ではない:−CF2O(CF2O)q(C24O)nCF2−、−(CF23O(C48O)n(CF23−、−CF2O(C24O)nCF2−、および−CF(CF3)(OCF2CF(CF3))sOCt2tO(CF(CF3)CF2O)nCF(CF3)−、ここでqは、0〜50、1〜50、3〜30、3〜15、または3〜10の平均値を有し;nは、0〜50、3〜30、3〜15、または3〜10の平均値を有し;sは、0〜50、1〜50、3〜30、3〜15、または3〜10の平均値を有し;n+sの合計が、0〜50または4〜40の平均値を有し;q+nの合計が、0より大であり;そしてtが、2〜6の整数である。
【0083】
式Iに従って合成された化合物は、典型的には、Rf基を混合して含む。その平均構造は、その混合物構成成分について平均した構造である。それらの平均構造においては、q、nおよびsの数値は、化合物が少なくとも約400の数平均分子量を有する限りにおいて、変化させることが可能である。式Iの化合物は多くの場合、400〜5000、800〜4000、または1000〜3000の分子量(数平均)を有する。
【0084】
(たとえば、式Iの)ペルフルオロポリエーテルアクリレート化合物は、たとえば下記の特許に記載されているような方法により合成することができる:米国特許第3,553,179号明細書および米国特許第3,544,537号明細書、さらには米国特許出願公開第2004/0077775号明細書、「フルオロケミカル・コンポジション・コンプライジング・ア・フルオリネーテッド・ポリマー・アンド・トリートメント・オブ・ア・フィブラス・サブストレート・ゼアウィズ(Fluorochemical Composition Comprising a Fluorinated polymer and Treatment of a Fibrous Substrate Therewith)」。
【0085】
いくつかの実施態様においては、その多官能ペルフルオロポリエーテルアクリレートには、末端HFPO−基が含まれる。本明細書で使用するとき、「HFPO−」は、メチルエステルであるF(CF(CF3)CF2O)aCF(CF3)C(O)OCH3のF(CF(CF3)CF2O)aCF(CF3)−を指しているが、ここで、「a」は、平均約6.2であり、そのメチルエステルは1,211g/モルの平均分子量を有していて、そのものは、米国特許第3,250,808号明細書(ムーア(Moore)ら)に報告された方法に従い、分別蒸留によって精製することにより調製することができる。そのような化合物のいくつかのものが、米国特許出願第11/121742号明細書(出願日:2005年5月4日)にも記載されている。
【0086】
例示化合物としてはたとえば、以下のものが挙げられる:HFPO−C(O)N(H)C(CH2OC(O)CH=CH22CH2CH3、HFPO−CO−NHCH(CH2OCO−CH=CH22、HFPO−C(O)N(H)CH2CH(OC(O)CH=CH2)CH2OC(O)CH=CH2、HFPO−CO−NH(CH23N(CH2CH2OCOCH=CH22、HFPO−CO−NHCH2CH2N(−CO−CH=CH2)(−CH2CH2OCOCH=CH2)、およびHFPO−C(=O)NHCH2CH2CH2NHCH3とTMPTAのモル比1:1の付加物。
【0087】
また別な実施態様においては、反応性(ペル)フルオロポリエーテルとポリ(メタ)アクリレートとのマイケル型付加反応によって調製することが可能な(ペル)フルオロポリエーテルアクリレート化合物、たとえば、HFPO−C(O)N(H)CH2CH2CH2N(H)CH3とトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)との付加物を、重合性フッ素化成分として使用してもよい。そのような(ペル)フルオロポリエーテルアクリレート化合物はさらに、米国特許出願第11/009181号明細書(出願日;2004年12月10日)「ポリメライザブル・コンポジションズ、メソッズ・オブ・メイキング・ザ・セイム、アンド・コンポジット・アーティクルズ・ゼアフロム(Polymerizable Compositions, Methods of Making the Same,and Composite Articles Therefrom)」にも記載されている。
【0088】
また別な実施態様においては、米国特許出願第11/087413号明細書(出願日:2005年3月23日)に記載されているような、重合性ペルフルオロポリエーテルウレタンを使用してもよい。式(1)複数のアクリレート末端基を有するペルフルオロポリエーテルウレタンの代表的な構造の一つ(2)を次に示す:
【化1】

このものは、HDIのビウレットと、1当量のHFPOオリゴマーアミド(F(CF(CF3)CF2O)6.5CF(CF3)C(O)NHCH2CH2OH)およびさらに2当量のペンタエリスリトールトリアクリレートとの反応生成物である。
【0089】
別な方法として、式Ri−(NHC(O)XQRfm,−(NHC(O)OQA)nに従う、モノアクリレート末端基を有するペルフルオロポリエーテルウレタンを使用してもよい。
【0090】
また別な実施態様においては、式(3A)の、1価のペルフルオロポリエーテル部分を有するペルフルオロポリエーテル−置換ウレタンアクリレートを使用してもよい:
f−Q−(XC(O)NHQOC(O)C(R)=CH2f (式3A)
ここで、Rfは、式:F(RfcO)xd2d−を含む基からなる1価のペルフルオロポリエーテル部分であるが、ここで、それぞれのRfcは独立して、1〜6個の炭素原子を有するフッ素化アルキレン基を表し、それぞれのxは独立して2以上の整数を表し、そしてdは1〜6の整数であり;aは2〜15であり;Qは独立して、原子価が少なくとも2の結合基であり、共有結合、アルキレン、アリーレン、アラルキレン、アルクアリーレン、場合によってはヘテロ原子たとえばO、N、およびSを含み、場合によってはカルボニルまたはスルホニル、およびそれらの組合せのようなヘテロ原子含有官能基を含む、直鎖または分岐鎖または環含有結合基からなる群より選択され;Xは独立して、O、SまたはNRであるが、ここでRは、Hまたは1〜4個の炭素原子の低級アルキルであり、そしてfは、1〜5である。
【0091】
式(3A)の記述にあてはまる、一つの好適なペルフルオロポリエーテル−置換ウレタン(メタ)アクリレートは、式(3B)により具体的に示される:
HFPO−Q−(XC(O)NHQOC(O)C(R)=CH2f (式3B)
ここで、HFPOはF(CF(CF3)CF2O)aCF(CF3)−であり;aは2〜15であり;Qは独立して、原子価が少なくとも2の結合基であり、共有結合、アルキレン、アリーレン、アラルキレン、アルクアリーレン、場合によってはヘテロ原子たとえばO、N、およびSを含み、場合によってはカルボニルまたは、およびそれらの組合せのようなヘテロ原子含有官能基を含む、直鎖または分岐鎖または環含有結合基からなる群より選択され;Xは独立して、O、SまたはNRであるが、ここでRは、Hまたは1〜4個の炭素原子の低級アルキルであり、そしてfは、1〜5である。使用しうる2種の好適なHFPO−置換ウレタンアクリレートとしては、HFPO−C(O)NHC24OC(O)NHC24OC(O)C(CH3)=CH2およびHFPO−C(O)NHC(C25)(CH2OC(O)NHC24OC(O)C(CH3)=CH22が挙げられる。
【0092】
本発明のまた別な実施態様においては、式(4)の1価のペルフルオロポリエーテル部分を有する、1種または複数のペルフルオロポリエーテルウレタンが使用される:
i−(NHC(O)XQRfm,−(NHC(O)OQ(A)pn,−(NHC(O)XQG)o,−(NCO)q (式4)
ここで、Riは、複数のイソシアネートの残基であり;Xは独立して、O、SまたはNRであるが、ここでRは、Hまたは1〜4個の炭素原子の低級アルキルであり;Rfは、式:F(RfcO)xd2d−を含む基からなる1価のペルフルオロポリエーテル部分であるが、ここで、それぞれのRfcは独立して、1〜6個の炭素原子を有するフッ素化アルキレン基を表し、それぞれのxは独立して2以上の整数を表し、そしてdは1〜6の整数であり;Qは独立して、原子価が少なくとも2の結合基であり、共有結合、アルキレン、アリーレン、アラルキレン、アルクアリーレン、場合によってはヘテロ原子たとえばO、N、およびSを含み、場合によってはカルボニルまたは、およびそれらの組合せのようなヘテロ原子含有官能基を含む、直鎖または分岐鎖または環含有結合基からなる群より選択され;Aは、(メタ)アクリル官能基−XC(O)C(R2)=CH2であるが、ここでR2は、1〜4個の炭素原子の低級アルキルまたはHまたはFであり;Gは、アルキル、アリール、アルクアリールおよびアラルキルからなる群より選択されるが、ここで、Gは場合によっては、O、N、およびSのようなヘテロ原子を含むか、場合によっては、カルボニルおよびスルホニルのようなヘテロ原子含有官能基、ならびにヘテロ原子とヘテロ原子含有官能基との組合せを含み;そしてGは場合によっては、場合によっては、(メタ)アクリル基、ビニル基、アリル基および−Si(OR33基(ここで、R3は1〜4個の炭素原子の低級アルキルである)からなる群より選択される、ペンダントするか末端の反応性基を含むが;ここでGはさらに、場合によってはフルオロアルキルまたはペルフルオロアルキル基を含み;mは少なくとも1であり;nは少なくとも1であり;oは0以上であり;pは2〜6であり;qは0以上であり;(m+n+o+q)=NNCOであるが、ここでNNCOは、元々Riに付いていたイソシアネート基の数であり;そして(m+n+o)/NNCOの大きさが0.67以上であり、ここで、添字m、n、o、およびqで表されるそれぞれのユニットは、Riユニットに結合されている。Rfcが−CF(CF3)CF2−であるのが好ましい。
【0093】
式(4)物質を作るのに使用されるモノアルコール、モノチオールまたはモノアミンHXQGとしては、C49SO2N(CH3)CH2CH2OH、H2NCH2CH2CH2(SiOCH33、HSCH2CH2CH2Si(OCH33、およびHEA(「ヒドロキシエチルアクリレート」)のような物質が挙げられる。
【0094】
さらに別な実施態様においては、式(5)の1種または複数のペルフルオロポリエーテルウレタンが使用される:
(Ric−(NHC(O)XQRfm,−(NHC(O)OQ(A)pn,−(NHC(O)XQG)o,(Rf(Q)(XC(O)NH)yz−、−NHC(O)XQD(QXC(O)NH)us−、D1(QXC(O)NH)yzz−NHC(O)OQ(A)t1Q(A)tOC(O)NH))v−,−(NCO)w (式5)
ここで、Riは、複数のイソシアネートの部分であり;cは1〜50であり;Xは独立して、O、SまたはNRであるが、ここでRはHまたは低級アルキルであり;Rfは、式:F(RfcO)xd2d−を含む基からなる1価のペルフルオロポリエーテル部分であるが、ここで、それぞれのRfcは独立して、1〜6個の炭素原子を有するフッ素化アルキレン基を表し、そしてそれぞれのxは独立して2以上の整数を表し、そしてdは1〜6の整数であり;Qは独立して、原子価が少なくとも2の結合基であり、共有結合、アルキレン、アリーレン、アラルキレン、アルクアリーレン、場合によってはヘテロ原子たとえばO、N、およびSを含み、場合によってはカルボニルまたは、およびそれらの組合せのようなヘテロ原子含有官能基を含む、直鎖または分岐鎖または環含有結合基からなる群より選択され;Aは、化学式:(−XC(O)C(R2)=CH2)を有する(メタ)アクリル官能基であるが、ここでR2は、1〜4個の炭素原子の低級アルキルまたはHまたはFであり;Gは、アルキル、アリール、アルクアリールおよびアラルキルからなる群より選択されるが、ここで、Gは場合によっては、O、N、およびSのようなヘテロ原子を含み、場合によってはカルボニルおよびスルホニルのようなヘテロ原子含有官能基、およびヘテロ原子とヘテロ原子含有官能基との組合せを有し;そしてここでGは場合によっては、(メタ)アクリル基、ビニル基、アリル基および−Si(OR33基(ここで、R3は1〜4個の炭素原子の低級アルキルである)からなる群より選択されるペンダントするか末端の反応性基を含み;ここで、Gはさらに場合によっては、フルオロアルキルまたはペルフルオロアルキル基を有し;Dは、アルキレン、アリーレン、アルクアリーレン、フルオロアルキレン、ペルフルオロアルキレンおよびアラルキレンからなる群より選択され、場合によってはO、N、およびSのようなヘテロ原子を含み;D1は、アルキル、アリール、アルクアリール、フルオロアルキル、ペルフルオロアルキルおよびアラルキル基からなる群より選択され、場合によってはO、N、およびSのようなヘテロ原子を含み;Q1は、Qと同じように定義される結合基であり;mまたはzは少なくとも1であり;nまたはvは少なくとも1であり;yは独立して2以上であり;o、s、v、w、zおよびzzは、0以上であり;(m+n+o+[(u+1)s]+2v+w+yz+y(zz))=cNNCOであるが、ここでNNCOは、元々Riに付いていたイソシアネート基の数であり;(m+n+o+([(u+1)s]+2v+yz+y(zz))/(cNNCO)の大きさが少なくとも0.75以上であり;pは2〜6であり;tは1〜6であり;そしてuは独立して1〜3であるが;ここで、添字m、n、o、s、v、w、zおよびzzで表されるそれぞれのユニットは、Riユニットに結合されており、そして好ましくはRfcは−CF(CF3)CF2−である。
【0095】
(ペル)フルオロポリエーテル部分を含むフッ素化成分に代わるものとして、(ペル)フルオロアルキル(メタ)アクリレートを使用することができる。好適なフルオロアルキル(メタ)アクリレートとしては、少なくとも2個、より好ましくは少なくとも3個の炭素原子を有するフルオロアルキル基が挙げられる。炭素原子の数は12までまたはそれ以上でよいが、フルオロアルキル基の炭素原子の数は、約6以下であるのが好ましい。
【0096】
さらに他の代わりの方法としては、そのフッ素化成分に、たとえば米国特許出願公開第2003/0168783号明細書に記載されているような、各種のフルオロ−シラン構成成分の一つが含まれていてもよい。一つの態様においては、フッ素化成分に、米国特許第5,851,674号明細書に記載されているようなフッ素化シロキサンが含まれていてもよいが、このものは、次式のフッ素化シランを含むコーティング組成物を適用することにより調製される:
f−R1−SiX3-x2x
ここで、Rfは、場合によっては1個または複数のヘテロ原子を含む(ペル)フッ素化基であり;R1は、1個または複数のヘテロ原子もしくは官能基により置換され、約2〜約16個の炭素原子を含む、2価のアルキレン基、アリーレン基、またはそれらの混合物であり;R2は低級アルキル基であり;Xは、ハライド、低級アルコキシ基、またはアシルオキシ基であり;そしてxは0または1である。
【0097】
ハードコート組成物には、炭化水素ベースのハードコート組成物またはセラマーとフッ素化化合物(たとえば、HFPO誘導体)との間の相溶性を改良するための、フッ素化相溶化剤が含まれていてもよい。相溶化剤は、全乾燥固形分の2〜15重量パーセント、より好ましくは約2〜10重量パーセントの間の範囲の量で添加するのがよい。相溶化剤は、HFPOモノ−またはマルチ−(メタ)アクリル化合物の量の、少なくとも3倍、好ましくは少なくとも5倍の量で存在させることができる。
【0098】
フリーラジカル反応性フルオロアルキルまたはフルオロアルキレン基含有相溶化剤は、それぞれ化学式:RfQ(X)nおよび(X)nQRf2Q(X)n)であるが、ここでRfはフルオロアルキルであり、Rf2はフルオロアルキレンであり、Qは、アルキレン、アリーレン、アリーレンアルキレン、またはアルキレンアリーレン基を含む結合基であって、たとえばO、N、およびSのようなヘテロ原子を含む直鎖または分岐鎖の結合基を含んでいてもよく、Xは、(メタ)アクリル、−SH、アリル、またはビニル基から選択されるフリーラジカル反応性基であり、そしてnは1〜3である。典型的なQ基としては、以下のものが挙げられる:−SO2N(R)CH2CH2−;−SO2N(CH2CH22−;−(CH2m−;−CH2O(CH23−;および−C(O)N(R)CH2CH2−(ここでRは、Hまたは1〜4個の炭素原子の低級アルキルであり、mは1〜6である)。フルオロアルキルまたはフルオロアルキレン基が、ペルフルオロアルキルまたはペルフルオロアルキレン基であれば好ましい。
【0099】
一つの好ましい実施態様においては、相溶化剤が、アクリレート部分に結合された少なくとも5個の炭素原子の炭素鎖を有する、ペルフルオロアルキルまたはペルフルオロアルキレン置換された相溶化剤であって、少なくとも30重量パーセントのフッ素を含む。ハードコート層18の組成物において使用するためのそれらの基準に適合する、一つの好ましいタイプのフルオロアルキル−またはフルオロアルキレン−置換された相溶化剤は、ペルフルオロブチル置換アクリレート相溶化剤である。それらの基準に適合し、本発明において有用なペルフルオロブチル−置換されたアクリレート相溶化剤の例を非限定的に挙げれば、C49SO2N(CH3)CH2CH2OC(O)CH=CH2、C49SO2N(CH2CH2OC(O)CH=CH22、またはC49SO2N(CH3)CH2CH2OC(O)C(CH3)=CH2の1種または複数である。
【0100】
使用可能な好適なフルオロアルキル−置換された相溶化剤の他の非限定的な例としては、ニューハンプシャー州ウィンダム(Windham,NH)のランカスター・シンセシス(Lancaster Synthesis)から入手可能な、1H,1H,2H,2H−ペルフルオロデシルアクリレートが挙げられる。ハードコート層18の組成物の中で使用することができる、各種その他のペルフルオロアルキル部分を含む(メタ)アクリル化合物は、米国特許第4,968,116号明細書(ヒューム−ロー(Hulme−Lowe)ら)および米国特許第5,239,026号明細書(ペルフルオロシクロヘキシルメチルメタクリレートを含む)(バビラッド(Babirad)ら)に記載がある。それらの基準に適合し、使用可能な他のフルオロケミカル(メタ)アクリレートとしては、たとえば、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロヘキサンジオールジアクリレートおよびω−ヒドロ2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチルアクリレート(H−C48−CH2O−C(O)−CH=CH2)が挙げられる。単独または混合物として使用可能なその他のフルオロケミカル(メタ)アクリレートが、米国特許第6,238,798号明細書(カン(Kang)ら)に記載されている。
【0101】
容易に硬化させるために、本発明による重合性組成物にはさらに、少なくとも1種のフリーラジカル熱重合開始剤および/または光重合開始剤がさらに含まれていてもよい。そのような重合開始剤および/または光重合開始剤を存在させる場合には、重合性組成物の全重量を基準にして、重合性組成物の典型的には約10重量パーセント未満、より典型的には約5パーセント未満でそれを含む。フリーラジカル硬化法は当業者には周知であり、たとえば、加熱硬化方法、さらには放射線硬化方法たとえば電子ビームまたは紫外線照射などが挙げられる。フリーラジカル加熱および光重合技術についてのさらなる詳細は、たとえば、米国特許第4,654,233号明細書(グラント(Grant)ら);米国特許第4,855,184号明細書(クラン(Klun)ら);および米国特許第6,224,949号明細書(ライト(Wright)ら)に見出すことができる。
【0102】
有用なフリーラジカル光重合開始剤としては、たとえば、アクリレートポリマーのUV硬化において有用であることが知られているものが挙げられる。そのような重合開始剤としては、以下のものが挙げられる:ベンゾフェノンおよびその誘導体;ベンゾイン、アルファ−メチルベンゾイン、アルファ−フェニルベンゾイン、アルファ−アリルベンゾイン、アルファ−ベンジルベンゾイン;ベンゾインエーテルたとえば、ベンジルジメチルケタール(ニューヨーク州タリータウン(Tarrytown,New York)のチバ・スペシャルティ・ケミカルズ・コーポレーション(Ciba Specialty Chemicals Corporation)から、商品名「イルガキュア(Irgacure)651」として市販)、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインn−ブチルエーテル;アセトフェノンおよびその誘導体、たとえば2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ・コーポレーション(Ciba Specialty Chemicals Corporation)から商品名「ダロキュア(DAROCUR)1173」として市販)、および1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(これまたチバ・スペシャルティ・ケミカルズ・コーポレーション(Ciba Specialty Chemicals Corporation)から商品名「イルガキュア(Irgacure)184」として市販);2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−(4−モルホリニル)−1−プロパノン(これまたチバ・スペシャルティ・ケミカルズ・コーポレーション(Ciba Specialty Chemicals Corporation)から商品名「イルガキュア(Irgacure)907」として市販);2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ・コーポレーション(Ciba Specialty Chemicals Corporation)から商品名「イルガキュア(Irgacure)369」として市販);芳香族ケトンたとえばベンゾフェノンおよびその誘導体ならびにアントラキノンおよびその誘導体;オニウム塩たとえばジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩;チタン錯体、たとえば、これまたチバ・スペシャルティ・ケミカルズ・コーポレーション(Ciba Specialty Chemicals Corporation)から商品名「CGI784DC」として市販されているもの;ハロメチルニトロベンゼン;ならびにモノ−およびビス−アシルホスフィン、たとえばチバ・スペシャルティ・ケミカルズ・コーポレーション(Ciba Specialty Chemicals Corporation)から、商品名「イルガキュア(Irgacure)1700」、「イルガキュア(Irgacure)1800」、「イルガキュア(Irgacure)1850」,「イルガキュア(Irgacure)819」、「イルガキュア(Irgacure)2005」、「イルガキュア(Irgacure)2010」、「イルガキュア(Irgacure)2020」、およびダロキュア(DAROCUR)4265」など。2種以上の光重合開始剤を組み合わせて使用してもよい。さらに、増感剤たとえば2−イソプロピルチオキサントン(ミシシッピー州パスカグーラ(Pascagoula,MS)のファースト・ケミカル・コーポレーション(First Chemical Corporation)から市販)を、たとえば「イルガキュア(Irgacure)369」のような光重合開始剤と併用して使用してもよい。
【0103】
当業者のよく知るところであるが、コーティング組成物には、その他任意の補助剤が含まれていてもよく、そのようなものとしてはたとえば、界面活性剤、帯電防止剤(たとえば、導電性ポリマー)、レベリング剤、光増感剤、紫外線(「UV」)吸収剤、安定剤、抗酸化剤、潤滑剤、顔料、染料、可塑剤、沈殿防止剤などが挙げられる。帯電防止特性が望まれる場合には、帯電防止剤を機能性コーティング層のいずれかに組み入れてもよいし、あるいは独立した層として適用してもよい。
【0104】
ハードコートコーティング組成物には、コーティングするのに役立つ溶媒が含まれているのが好ましい。フッ素化溶媒を場合によっては単独、または有機溶媒と組み合わせて使用してもよいが、ハードコートの成分が非フッ素化溶媒に充分に可溶性であるのが好ましい。したがって、ハードコートコーティング組成物は、フッ素化溶媒をまったく含まないのが有利である。好適な溶媒としては、ケトンたとえばメチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチレンケトン(MIBK)、およびメチルプロピルケトン(MPK);および酢酸エステルたとえば酢酸エチルが挙げられ、目的とするコーティング厚みが得られるような濃度(たとえば、2%〜3%固形分)で使用する。先に述べたような各種の補助剤は、典型的には、溶媒に溶解させてから添加する。
【0105】
イージークリーンハードコート組成物は、典型的には、親水性成分(たとえば、モノマー)をまったく含まないが、その理由は、そのようなものを加えると、抗汚れ性が低下し、さらにはある種の媒体(たとえば、基材)を汚染する傾向があるからである。親水性構成成分はさらに、水性のクリーニング剤に暴露させると分解しやすい。
【0106】
以下の実施例を用いて本発明の目的と利点をさらに説明するが、そられの実施例において記載される特定の物質およびその量、さらにはその他の条件や詳細が、本発明を不当に限定すると考えてはならない。
【実施例】
【0107】
試験方法
1.接触角:
IPAの中において1分間手で揺らすことにより、コーティングの洗浄を行ってから、水およびヘキサデカン接触角の測定にかけた。測定は、入手したままの試薬グレードのヘキサデカン(アルドリッチ(Aldrich))およびミリポア・コーポレーション(Millipore Corporation)(マサチューセッツ州ビルリカ(Billerica,MA))から入手した濾過システムを通して濾過した脱イオン水を用い、エイ・エス・ティー・プロダクツ(AST Products)(マサチューセッツ州ビルリカ(Billerica,MA))から製品番号VCA−2500XEとして入手可能なビデオ接触角アナライザー上で実施した。報告されている値は、少なくとも3滴の液滴について、液滴の左右両側の測定値を平均したものであり、表2に示す。液滴の容積は、静的測定の場合で5μL、前進および後退接触角の場合で1〜3μLであった。ヘキサデカンの場合には、前進および後退接触角のみを報告しているが、その理由は、静的測定の値と前進接触角の値がほとんど等しいことが判ったからである。
【0108】
2.耐久性試験:
硬化させた膜の耐摩耗性は、コーティング方向に対して横向きの方向に試験したが、それにはスタイラスに(ゴムガスケットにより)固定したスチールウールを膜の表面を横切るように振動させることができる、機械装置を用いた。スタイラスの振動は、スイープ幅10cmで、速度3.5ワイプ/秒としたが、ここで「ワイプ(wipe)」とは、10cmの移動1回分と定義される。そのスタイラスは、平坦で、直径6mmの円筒形状を有していた。その装置には、プラットフォームが備えられていて、その上に荷重を置いて、膜の表面に対して直角方向にスタイラスによってかけられる力を増すようになっている。スチールウールは、ワシントン州ベリングハム(Bellingham,WA)のローデス−アメリカン・ア・ディビジョン・オブ・ホーマックス・プロダクツ(Rhodes−American a division of Homax Products)から入手した商品名「#0000−スーパー−ファイン(#0000−Super−Fine)」で、入手したままのものを使用した。それぞれの実施例で一つだけのサンプルを試験し、スタイラスに掛けた荷重(グラム)と、試験に用いたワイプ数を報告した。
【0109】
3.コーティング膜のヘイズおよび透過率の値を、ビー・ワイ・ケー・ガードナー(BYK Gardner)ヘイズ−クラリティ−トランスミッション・メーター(Haze−Clarity−Transmission meter)を用いて測定した。数値はパーセントとして報告している。
【0110】
成分
F(CF(CF3)CF2O)aCF(CF3)COOCH3、ここでaの平均が約6.3、平均分子量が1,211g/モルであり、このものは米国特許第3,250,808号明細書(ムーア(Moore)ら)に記載の方法に従って調製可能であり、分別蒸留により精製した。
トリメチロールプロパントリアクリレート(「TMPTA」)は、ペンシルバニア州エクストン(Exton,PA)のサルトマー・カンパニー(Sartomer Company)から商品名「SR351」として入手した(AC−1)。
ω−ヒドロ2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチルアクリレート(H−C48−CH2O−C(O)−CH=CH2)は、サウスカロライナ州ウェスト・コロンビア(West Columbia,SC)のオークウッド・プロダクツ(Oakwood Products)から入手した(FC−6)。
N−メチル−1,3−プロパン−ジアミン、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオールおよび2−アミノ−1,3−プロパンジオールは、ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee,WI)のシグマ−アルドリッチ(Sigma−Aldrich)から入手した。
塩化アクリロイルはシグマ−アルドリッチ(Sigma−Aldrich)から入手した。
使用したUV光重合開始剤は、ニューヨーク州テリータウン(Terrytown,NY)のチバ・スペシャルティ・プロダクツ(Ciba Specialty Products)から商品名「ダロキュア(Darocur)1173」として入手した。
実施例において使用した「非フッ素化ハードコート組成物」は、米国特許第5,677,050号明細書(ビルカルディ(Bilkaldi)ら)のカラム10、ライン25〜29および実施例1の記載に従って製造した。
【0111】
以下に保護膜の調製について記述するが、それには、非フッ素化ハードコートの上に配したイージークリーンハードコートを含む2層ハードコートが含まれ、その非フッ素化ハードコートが低ヘイズの透明基材の上に配されている。
【0112】
1.HFPOC(O)−NH−CH2CH2−OH出発物質(すなわち、HFPO−AE−OH)の調製
HFPO−C(O)OCH3(Mw=1211g/モル、50.0g)を200mLの丸底フラスコに入れた。そのフラスコを窒素を用いてパージし、水浴中に漬けて、温度を50℃以下に維持した。このフラスコに、3.0g(0.045モル)の2−アミノエタノール(アルドリッチ(Aldrich)から入手)を添加した。その反応混合物を約1時間撹拌し、その後で反応混合物の赤外スペクトルを測定すると、1790cm-1のメチルエステル吸収帯が完全に無くなり、1710cm-1にアミドカルボニルの強い伸縮振動が存在していた。メチルt−ブチルエーテル(MTBE、200mL)をその反応混合物に加え、水/HCl(約5%)を用いてその有機相を2回抽出して、未反応のアミンおよびメタノールを除去した。MgSO4を用いて、そのMTBE層を乾燥させた。減圧下でMTBEを除去すると、透明で粘稠な液状物が得られた。1H核磁気共鳴分光光度法(NMR)および赤外分光光度法(IR)により、上述の化合物が形成されたことを確認した。
【0113】
単官能ペルフルオロポリエーテルアクリレート(FC−1)の調製
HFPO−C(O)N(H)CH2CH2OC(O)CH=CH2(HFPO−AEA)
機械的攪拌機、環流コンデンサー、滴下ロート、窒素ガス源に接続したホースアダプターを取り付けた3口丸底フラスコの中で、HFPO−AE−OH(600g)を酢酸エチル(600g)およびトリエチルアミン(57.9g)と組み合わせた。その混合物を窒素雰囲気下で撹拌し、加熱して40℃とした。塩化アクリロイル(51.75g)を、滴下ロートから約30分間かけて、滴下によりフラスコに加えた。その混合物を40℃で一夜撹拌した。次いでその混合物を放冷して室温とし、300mLの2NのHCl水溶液を用いて希釈し、分液ロートに移した。その水性層を除去し、新しい2NのHCl、300mLを用いて酢酸エチル層を抽出した。次いで、5重量%のNaHCO3水溶液を用いてその有機相を1回抽出し、MgSO4上で乾燥させ、濾過した。ロータリーエバポレーターを用いて揮発性成分を除去すると、596gの生成物が得られた(収率93%)。1HNMRおよびIR分光光度法により、上述の化合物が生成していることを確認した。
【0114】
2.HFPOC(O)−NH−CH2CH2−O−CH2CH2−OH出発物質(すなわち、HFPO−AEE−OH)の調製
HFPO−C(O)OCH3(Mw=1211g/モル、51.0g)を200mLの丸底フラスコに入れた。そのフラスコを窒素を用いてパージし、水浴中に漬けて、温度を50℃以下に維持した。このフラスコに、5.35g(0.045モル)の2−アミノエトキシエタノール(アルドリッチ(Aldrich)から入手)を加えた。その反応混合物を約1時間撹拌し、その後で反応混合物の赤外スペクトルを測定すると、1790cm-1のメチルエステル吸収帯が完全に無くなり、1710cm-1にアミドカルボニルの強い伸縮振動が存在していた。メチルt−ブチルエーテル(200mL)をその反応混合物に加え、水/HCl(約15%)を用いてその有機相を2回抽出して、未反応のアミンおよびメタノールを除去した。MTBE層を合わせて、MgSO4を用いて乾燥させた。減圧下でMTBEを除去すると、透明で粘稠な液状物が得られた。0.1mmHg、室温で16時間さらに乾燥させると、48gのものが得られた(収率90%)。1HNMRおよびIR分光光度法により、上述の化合物が生成していることを確認した。
【0115】
単官能ペルフルオロポリエーテルアクリレート(FC−2)の調製
HFPO−C(O)N(H)CH2CH2OCH2CH2OC(O)CH=CH2
機械的攪拌機、環流コンデンサー、滴下ロート、窒素ガス源に接続したホースアダプターを取り付けた3口丸底フラスコの中で、HFPO−AEE−OH(25g)を酢酸エチル(200g)およびトリエチルアミン(5g)と組み合わせた。その混合物を窒素雰囲気下で撹拌し、加熱して40℃とした。塩化アクリロイル(5.5g)を、滴下ロートから約30分間かけて、滴下によりフラスコに加えた。その混合物を40℃で一夜撹拌した。次いでその混合物を放冷して室温とし、300mLの2NのHCl水溶液を用いて希釈し、分液ロートに移した。その水性層を除去し、新しい2NのHCl、300mLを用いて酢酸エチル層を抽出した。次いで、5重量%のNaHCO3水溶液を用いてその有機相を1回抽出し、MgSO4上で乾燥させ、濾過した。ロータリーエバポレーターを用いて揮発性成分を除去すると、生成物が得られた。1HNMRおよびIR分光光度法により、上述の化合物が生成していることを確認した。
【0116】
3.ペルフルオロポリエーテルアミド−アミン出発物質の調製
HFPO−C(O)N(H)CH2CH2CH2N(H)CH3
1リットルの丸底フラスコに、291.24g(0.2405モル)のHFPO−C(O)OCH3(すなわち、Mw:1211g/モル)および21.2g(0.2405モル)のN−メチル−1,3プロパンジアミンを、いずれも室温で仕込むと、曇りのある溶液が形成された。そのフラスコを揺り混ぜて、その溶液の温度を45℃に上げると、無色透明な液状物となったので、それを55℃で一夜加熱した。次いで、その溶液を、75℃、28インチHg真空のロータリーエバポレーターにかけて、メタノールを除去すると、301.88g(99%)のやや黄色の、粘稠な液状物が得られたが、そのものは、NMR法により、純度98%の上述の化合物であることが同定された。
【0117】
多官能ペルフルオロポリエーテルアクリレート(FC−3)の調製
HFPO−C(O)N(H)CH2CH2CH2N(H)CH3のTMPTAとのマイケル付加物(モル比1:1)
250mLの丸底に、4.48g(15.2ミリモル、公称MW294から計算)のTMPTA、4.45gのテトラヒドロフラン(THF)、および1.6mgのフェノチアジン(シグマ−アルドリッチ(Sigma−Aldrich)から入手)を仕込み、55℃の油浴に漬けた。次いで、100mLジャーの中で、20g(15.78ミリモル、Mw:1267.15)のHFPO−C(O)N(H)CH2CH2CH2N(H)CH3を、32gのTHFの中に溶解させた。この溶液を、60mLの均圧側管つき滴下ロートに入れ、約3mLのTHFを用いてジャーを洗ってそれもまた滴下ロートに加え、そのロートの内容物をTMPTA/THF/フェノチアジン混合物に、空気雰囲気下で38分かけて添加した。反応液は最初は曇っていたが、約30分後には透明となった。滴下終了後20分後に、反応フラスコを真空28インチ、45〜55℃でロータリーエバポレーターにかけると、24.38gの透明で、粘稠な黄色液状物が得られたが、それは、NMRおよびHPLC/マス分光光度法により、上述の化合物であると同定された。
【0118】
4.HFPO−C(O)N(H)C(CH2OH)2CH2CH3出発物質の調製
撹拌バー、環流コンデンサー、加熱浴を備えた500mLの3口フラスコに、11.91g(0.1モル)のH2NC(CH2OH)2CH2CH3(シグマ−アルドリッチ(Sigma−Aldrich)から入手)および60gのTHFを仕込んだ。次いで、浴温度を約85℃に加熱して、滴下ロートから、121.1g(0.1モル)のHFPO−C(O)OCH3を約80分かけて添加した。その反応液は最初は曇っていたが、反応1時間後には透明となった。添加が完了してから、加熱浴の電源を切り、反応液を3日間放冷した。その物質を、アスピレーター減圧下、55℃で濃縮すると、130.03gの薄く色の付いたシロップ状物が得られた。NMR分析から、その生成物は、下記の構造IとIIの87:13混合物であることが判った。
【化2】

【0119】
多官能ペルフルオロポリエーテルアクリレートの調製
HFPO−C(O)N(H)C(CH2OC(O)CH=CH22CH2CH3(FC−4)
オーバーヘッド攪拌機を取り付けた250mLの3口丸底に、65g(0.05モル)のHFPO−C(O)N(H)C(CH2OH)2CH2CH3、上で得られた反応生成物の混合物、12.65g(0.125モル)のトリエチルアミンおよび65gの酢酸エチルを仕込んだ。そのフラスコに室温で、11.31g(0.125モル)の塩化アクリロイルを、均圧滴下ロートを用いて12分かけて添加すると、反応温度は25℃から最高40℃まで上昇した。追加の酢酸エチル5gを用いてロートを洗い、その洗い液もまた反応液に加え、次いでそれを40℃の浴に漬け、2時間10分さらに時間をかけて反応させた。次いでその有機層を、65gの2%硫酸水溶液、65gの2%重炭酸ナトリウム水溶液、65gの水に順で洗浄し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、16mgのメトキシヒドロキノン(MEHQ)を用いて処理し、45℃でロータリーエバポレーターを用いて濃縮すると、62.8gの粗生成物が得られた。次いでその物質35gを、600mLのシリカゲル(SX0143U−3、グレード62、60〜200メッシュ、イー・エム・サイエンス(EM Science))を使用し、溶出液として酢酸エチル:ヘプタン(25:75)を用いたクロマトグラフィーにかけた。最初の二つのフラクションを容積250mLとし、残りのフラクションの容積を125mLとした。フラクション4〜10を合わせ、8mgのMEHQをそのフラクションに加え、それを55℃でロータリーエバポレーターにより濃縮すると、25.36gの反応生成物が得られ、それをNMRにより分析すると、構造式IIIとIVの88:12の混合物であることが判った。
【化3】

【0120】
5.HFPO−C(O)N(H)C(CH2OH)2H出発物質の調製
HFPO−C(O)N(H)C(CH2OH)2CH2CH3の調製法と同様にして、51gのTHF中で、106.74g(0.088モル)のHFPO−C(O)CH3を、8.03g(0.088モル)の2−アミノ−1,3−プロパンジオールを反応させると、アミドジオール:エステルアミノ−アルコールが93:7の反応生成物が得られた。
【0121】
多官能ペルフルオロポリエーテルアクリレート(FC−5)の調製
HFPO−C(O)N(H)C(CH2OC(O)CH=CH22
HFPO−C(O)N(H)C(CH2OC(O)CH=CH22CH2CH3の調製法と同様にして、100gの酢酸エチル中で、50g(0.3936モル)のHFPO−C(O)N(H)C(CH2OH)2Hを、8.55g(0.0945モル)の塩化アクリロイルおよび9.56g(0.946モル)トリエチルアミンと反応させると、仕上げ処理とクロマトグラフィーの後では、ジアクリレートとアクリルアミド−アクリレートが93:7の混合物が得られた。
【0122】
コーティング溶液の調製:
表1Aおよび1Bに示した、原料と量(重量基準)とを用いて、重合性組成物により基材をコーティングした。すべての重合性成分は、メチルエチルケトン中で全固形分が10重量パーセントになるように希釈した。メチルエチルケトン中固形分10パーセントの光重合開始剤溶液を用い、固形分を基準にして2重量パーセントの光重合開始剤ダロキュア(Darocur)1173を、重合性組成物に添加した。光重合開始剤を添加した後に、その混合物を希釈してコーティング溶液の最終濃度とした。固形分濃度(すなわち、2重量%または2.5重量%)への希釈には、メチルイソブチルケトンを使用した。それぞれの実施例におけるコーティング溶液の最終的な固形分含量は、表1Aおよび1Bに記載されている。
【0123】
コーティング、乾燥、硬化プロセス
デラウェア州ウィルミントン(Wilmington,DE)のイー・アイ・デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー(e.i. Dupont de Nemours and Comapny)から商品名「メリネックス(Melinex)618」として入手した、厚み5.0ミルでプライマー処理表面を有する透明なポリエチレンテレフタレート(PET)膜から、基材を調製した。プライマー処理表面の上に非フッ素化ハードコート組成物をコーティングし、酸素50ppm未満のUVチャンバーで硬化させた。そのUVチャンバーでは、メリーランド州ゲーサーズバーグ(Gaithersburg,Maryland)のヒュージョン・UV・システムズ(Fusion UV systems)製の600ワットH型バルブを用い、フル出力で使用した。
【0124】
イージークリーンハードコートを、メリネックス(Melinex)618膜に、定量精密ダイコーティングプロセスにより塗布した。イージークリーンハードコートは、IPAで希釈して30重量%固形分とし、5ミルPETバッキング上に塗布して、乾燥時厚みが5ミクロンとなるようにした。流量計を用いてモニターし、加圧容器からの物質の流速を設定した。流速は、密閉容器の中の空気圧を変化させることによって調節したが、それによって液が、チューブから押し出され、フィルター、流量計を通ってから、ダイを通過した。乾燥、硬化させた膜は、取り上げロールに巻き上げ、後述するように、コーティング溶液のためのインプットバッキング(input backing)として使用した。
【0125】
イージークリーンハードコートのコーティングおよび乾燥パラメーターは下記の通りであった:
コーティング幅:6インチ(15cm)
ウェブ速度:30フィート(9.1m)/分
溶液の固形分%:30.2%
フィルター:2.5ミクロン(絶対)
加圧ポット:容積1.5ガロン(5.7L)
流速:35g/分
湿時コーティング厚み:24.9ミクロン
乾時コーティング厚み:4.9ミクロン
慣用オーブン温度:140゜F(60℃)ゾーン1
160゜F(53℃)ゾーン2
180゜F(82℃)ゾーン3
オーブン長さ:10フィート(3m)
【0126】
【表1】

【0127】
【表2】

【0128】
【表3】

【0129】
【表4】

【0130】
結果から、それらの保護膜物品は充分に低いヘイズを有していて、各種の内部構成部品で使用するのに適していることが判る。
【0131】
基材の上に配した非フッ素化ハードコートおよびその非フッ素化ハードコートの上に配したイージークリーンハードコートを有する保護膜を調製したのと同一の一般的手順を、フッ素化成分としてペルフルオロポリエーテルウレタンアクリレートを用いて繰り返した。
【0132】
ペルフルオロポリエーテルウレタン(メタ)アクリレート
電磁撹拌バーを加えた500mLの2口丸底フラスコに、25.00g(0.131当量、191EW)のDesN100、26.39g(0.0196当量、1344EW)のF(CF(CF3)CF2O)6.85CF(CF3)C(O)NHCH2CH2OH、および109.62gのMEKを仕込み、撹拌して、均質な溶液を形成させた。そのフラスコを80℃の浴に漬け、2滴のジブチルスズジラウレート触媒を加え、コンデンサーを取り付けた。反応液は最初は濁っていたが、2分以内に透明となった。約1.75時間のところでフラスコを浴から取り出し、ロスした溶媒を補うために2.42gのMEKを加えた。フラスコから2.0gのサンプルを取り出して、反応液の(1−(2.0/161.01)または0.9876重量分率を残し、57.51g(58.23gの98.76%)(0.116モル、494.3当量)のPET3Aを反応液に添加し、63℃の浴に漬けた。約5.25時間のところでは、FTIRでは2273cm-1におけるイソシアネートの吸収が認められなくなったので、0.56gのMEKを加えてロスした溶媒を補い、その物質を50%固形分とした。
【0133】
HFPO AEA:(HFPO−C(O)NHCH2CH2OC(O)CH=CH2)を米国特許出願第10/841159号明細書(出願日:2004年5月7日)(整理番号57927US002)「プレパレーション・オブ・モノファンクショナル・ペルフルオロポリエーテル・アクリレート(Preparation of Monofunctional Perfluoropolyether Acrylate)」の記載に従って調製した;(FC−1)。
【0134】
TMPTA:トリメチロールプロパントリアクリレート
精密定量ダイコーターを使用して、ハードコート層の上に、表面層のコーティング組成物をコーティングした。この工程においては、シリンジポンプを用いて、ダイに入る溶液を計量した。その溶液はMEKを用いて濃度1%に希釈し、ハードコート層の上にコーティングすると、60nmの乾燥時厚みが得られた。下記の条件を用いて、その物質を慣用される空気浮遊オーブンの中で乾燥させ、次いで、600ワットのヒュージョン・システムズ(Fusion Systems)バルブで窒素下に乾燥させた:
コーティング幅:4インチ(10cm)
ウェブ速度:20フィート/分
溶液の固形分%:1.0%
ポンプ:60ccシリンジポンプ
流速:1.2cc/分
湿時コーティング厚み:4.1ミクロン
乾時コーティング厚み:60nm
慣用オーブン温度:ゾーン1 65℃
ゾーン2 65℃。
いずれのゾーンも長さ10フィート(3m)。
【0135】
【表5】

【0136】
これらの結果から、ペルフルオロポリエーテルウレタンアクリレートを含むハードコートが大きな接触角を示すことが判る。測定した訳ではないが、これらのハードコート組成物は、充分に低いヘイズ値を有していて、オプティカルデバイスの内部構成部品に採用することが可能であると考えられる。
【0137】
カバーシートとして使用するのに適した、3インチ×4インチで厚み1mmのポリカーボネート(ジー・イー(GE)から商品名「レキサン(Lexan)」として市販されているもの)のシートに、先に記した非フッ素化ハードコート(47%固形分)組成物を用いてフラッドコーティングしたが、それには、シートを被覆するのに充分な量でシート全体に溶液のビードを散布し、その組成物を(推定厚み約4ミクロンとなるまで)乾燥させた。そのハードコート組成物を、ヒュージョン・UV(Fusion UV)モデルMC6RQNを用い、Hバルブ(15fpm)、100%窒素雰囲気下で、硬化させた。次いでその非フッ素化ハードコートに、83.7重量%のTMPTA、9.6重量%のペルフルオロポリエーテルウレタン(メタ)アクリレート、2.9重量%のHFPO−AEA、および3.8重量%のダロキュア(Darocure)1173からなり、IPAを用いて2.5%固形分になるよう希釈したイージークリーンハードコート組成物を用いて、フラッドコーティングした。この場合も、そのシートの非フッ素化ハードコート表面全体にわたって溶液のビードを散布した。その組成物を放置して乾燥させ、次いで、ヒュージョン・UV(Fusion UV)モデルMC6RQNを用い、Hバルブ(15fpm)、100%窒素雰囲気下で、UVチャンバーの中を2パスさせて、硬化させ、推測厚み約10nmとした。
【0138】
ポリカーボネートをコーティングさせるのに使用したのと、同一の非フッ素化ハードコートおよびイージークリーンハードコートを使用し、同様な方法でガラスシートのコーティングを行った。
【0139】
デジタルカメラのカメラレンズをカメラから取り外して、ポリカーボネートおよびガラスシートの場合と同一の非フッ素化ハードコート組成物を用いてコーティングした。過剰のハードコートをブラシで除去し、乾燥させ、ヒュージョン・UV(Fusion UV)モデルMC6RQNを用い、Hバルブ(15fpm)、100%窒素雰囲気下で硬化させた。次いでそのカメラレンズを、ポリカーボネートをコーティングさせるのに使用したのと同一のイージークリーンハードコートの中にディップコーティングさせ、過剰のコーティング溶液をブラシで除去し、コーティングを乾燥させ、ヒュージョン・UV(Fusion UV)モデルMC6RQNを用い、Hバルブ(15fpm)、100%窒素雰囲気下で、UVチャンバーの中を2パスさせて、硬化させた。
【0140】
以下に示す、UVスペクトルのA、B、C、およびV領域で受けるサンプルが受けるエネルギー(J/cm2)および出力(W/cm2)は、バージニア州スターリング(Sterling,VA)のイー・アイ・ティー(EIT)製のUV・パワー・パック(UV Power Puck)を用い、パックを15fpmのヒュージョン(Fusion)UVシステムコンベアの上に設置したときに記録した。
【0141】
【表6】

【0142】
ハードコート表面層を有するポリカーボネートシート、ガラスシート、およびレンズの試験を行うと、撥インキ性を示すことが見出された。
【図面の簡単な説明】
【0143】
【図1】オプティカルイメージングデバイスの組立方法を例示した概略図である。
【図2】ハードコート表面層を含むオプティカルデバイスの内部構成部品を説明する断面図である。
【図3】ハードコート表面層を有する保護膜物品を含むオプティカルデバイスの内部構成部品を説明する断面図である。
【図4】ハードコート保護膜に接合された複数の内部構成部品を含む例示物品である。
【図5】オプティカルイメージングデバイスを例示する断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オプティカルデバイスの内部構成部品を含む物品であって、
前記内部構成部品が、
i)少なくとも0.2重量%の、少なくとも1個の重合性部分を有する、少なくとも1種のフルオロケミカル成分、および
ii)少なくとも50重量%の、1種以上の場合によってはフッ素化された架橋剤、
を含む重合性組成物の反応生成物を含むハードコート表面層を含む、物品。
【請求項2】
前記内部構成部品が、オプティカルデバイスの中に組み入れられた後では、外部環境にさらされない、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記架橋剤が、フッ素化されていない、請求項1に記載の物品。
【請求項4】
前記架橋剤が、フッ素化部分を含み、そして前記組成物が100重量%までの架橋剤を含む、請求項1に記載の物品。
【請求項5】
前記硬化された重合性組成物と前記内部構成部品との間に配された第二のハードコート層および前記ハードコート表面層をさらに含む、請求項1に記載の物品。
【請求項6】
前記フルオロケミカル成分が、単官能フッ素化成分、多官能フッ素化成分、および少なくとも1種の単官能フッ素化成分と少なくとも1種の多官能フッ素化成分との混合物からなる群より選択される、請求項1に記載の物品。
【請求項7】
前記フルオロケミカル成分が、(ペル)フルオロポリエーテル(メタ)アクリレート、(ペル)フルオロアルキル(メタ)アクリレート、(ペル)フルオロアルキレン(メタ)アクリレート、およびそれらの混合物から選択される、請求項1に記載の物品。
【請求項8】
前記フルオロケミカル成分が、少なくとも1種のアクリレート重合性部分を含む、請求項7に記載の物品。
【請求項9】
前記フルオロケミカル成分が、ペルフルオロポリエーテルウレタン(マルチ)アクリレートを含む、請求項7に記載の物品。
【請求項10】
前記フルオロケミカル成分が−HFPO基を含む、請求項7に記載の物品。
【請求項11】
前記内部構成部品が、多層光学膜、微細構造化膜、偏光膜、拡散膜、リターダ膜、補償膜、モノリス透明膜からなる群より選択される光学膜である、請求項1に記載の物品。
【請求項12】
前記内部構成部品が、多層膜を含むフィルターである、請求項11に記載の物品。
【請求項13】
前記オプティカルデバイスが、ディスプレイデバイス、検出デバイス、イメージングデバイス、および投影デバイスからなる群より選択される、請求項1に記載の物品。
【請求項14】
前記内部構成部品が、イメージセンサー、フォトセンサー、シリコンウェーハ、内装レンズ、プリズム、ビームスプリッター、フィルター、ミラー、偏光子、ディフューザー、および補償器からなる群より選択される、請求項1に記載の物品。
【請求項15】
オプティカルデバイスの内部構成部品を含む物品であって、前記内部構成部品がハードコート表面層を含み、前記表面層が少なくとも70度の水との静的接触角を有する、物品。
【請求項16】
オプティカルデバイスの内部構成部品を保護する方法であって:
オプティカルデバイスの内部構成部品の上にハードコート表面層を設ける工程を含み、前記表面層が、
i)少なくとも0.2重量%の、少なくとも1個の重合性部分を有する、少なくとも1種のフルオロケミカル成分、および
ii)少なくとも50重量%の、2個以上の重合性部分を有する1種以上の架橋剤、
を含む重合性組成物の反応生成物を含む、方法。
【請求項17】
前記方法が、前記重合性組成物を用いて内部構成部品の少なくとも一つの表面の上にコーティングする工程、および前記組成物を硬化させる工程、を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記重合性部分が、(メタ)アクリル部分であり、前記重合性組成物が紫外線照射によって硬化される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記重合性組成物を光透過性基材の上にコーティングして硬化させ、前記硬化させた基材を前記内部構成部品に接合させる、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記重合性組成物をコーティングし、剥離ライナーの上で少なくとも部分的に硬化させ、そして前記少なくとも部分的に硬化させた組成物を前記内部構成部品に接合させる、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記ハードコート表面層を剥離ライナーの上に設け、前記ハードコート表面層を切断して前記内部構成部品の上に置くのに適したサイズとする、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
オプティカルデバイスの内部構成部品を組み立てることを含む、オプティカルデバイスを組み立てる方法であって、
少なくとも1種の内部構成部品が、
i)少なくとも0.2重量%の、少なくとも1個の重合性部分を有する、少なくとも1種のフルオロケミカル成分、および
ii)少なくとも50重量%の、2個以上の重合性部分を有する1種以上の架橋剤、
を含む重合性組成物の反応生成物を含んだ、ハードコート表面層を含む、方法。
【請求項23】
硬化されたハードコート表面層およびオプティカルデバイスの複数の構成成分を含む保護膜を含むオプティカルデバイスの構成成分のシートであって、前記構成成分が、少なくとも一つの認識可能な境界を有し、前記構成成分が、前記硬化されたハードコート表面層に接合される、シート。
【請求項24】
前記構成成分が個別である、請求項23に記載のシート。
【請求項25】
前記構成成分が非平面である、請求項23に記載のシート。
【請求項26】
前記構成成分がレンズである、請求項23に記載のシート。
【請求項27】
前記構成成分が接触状態にある、請求項23に記載のシート。
【請求項28】
前記構成成分が、少なくとも前記ハードコート層によって相互接続される、請求項23に記載のシート。
【請求項29】
前記複数の構成成分が、接着剤として用いた硬化されたハードコート層に接合される、請求項23に記載のシート。
【請求項30】
前記構成成分が内部構成部品である、請求項23に記載のシート。
【請求項31】
前記複数の構成成分を、保護膜で内張りされた金型中で前記構成成分を熱成形することにより、前記硬化されたハードコート層に接合する、請求項19に記載のシートを製造する方法。
【請求項32】
少なくとも50重量%の、2個以上の重合性部分を有する1種以上の架橋剤、
少なくとも0.5重量%の、少なくとも1個の重合性部分を有する、少なくとも1種のフルオロケミカル成分または無機粒子、および
吸収性成分、
の反応生成物を含む吸収層を含む、波長選択フィルター。
【請求項33】
前記吸収性成分が、着色剤または染料である、請求項32に記載のフィルター。
【請求項34】
前記吸収層が反射干渉要素の上に配される、請求項32に記載のフィルター。
【請求項35】
イメージセンサーまたはシリコンウェーハから選択されるオプティカルデバイスの内部構成部品であって、前記内部構成部品が、重合性バインダー前駆体の反応生成物を含むハードコート表面層を含む、内部構成部品。
【請求項36】
前記反応生成物が無機粒子をさらに含む、請求項35に記載の内部構成部品。
【請求項37】
前記反応生成物がフルオロケミカル成分をさらに含む、請求項35に記載の内部構成部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−527419(P2008−527419A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−549537(P2007−549537)
【出願日】平成17年12月21日(2005.12.21)
【国際出願番号】PCT/US2005/046981
【国際公開番号】WO2006/073920
【国際公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】